説明

ダマスコンのウッディーなにおいを有するα−デカロン

本発明は、ウッディーなタイプの貴重な付香成分である、新規の群の化合物、2,3,8a−トリメチル置換されたα−デカロンに関する。本発明はまた、香料産業における該化合物の使用ならびに該化合物を含有する組成物または物品に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、香料の分野に関する。より具体的には、本発明は新規の群の化合物、2,3,8a−トリメチル置換されたα−デカロンに関する。前記の化合物は、貴重なウッディーなにおいの物質である。
【0002】
本発明は、香料産業における前記化合物の使用ならびに前記化合物を含有する組成物または物品に関する。
【0003】
従来技術
我々が知る限り、本発明による化合物はいずれも、従来技術において知られていない。香料において関心が持たれるこれらの最も近い類似体は、2,2,8a−トリメチル置換された(つまり、ビシナルな置換基ではなくジェミナルな置換基を有する)α−デカロンであり、かつこれらはUS4377714の第1表に報告されている。しかし、この従来技術の刊行物には、式(I)の化合物の官能的性質、または香料分野での前記化合物の使用の示唆はない。
【0004】
さらに、これらの従来技術の化合物のにおいは、本発明の化合物とは相当に異なっており(以下を参照のこと)、このため本発明による化合物と従来技術の化合物とはそれぞれ異なった使用のために適切である、つまり異なった官能的印象を付与する。
【0005】
発明の詳細な説明
我々は意外にも、式
【化1】

[式中、点線は、単結合または二重結合を表し、R1は、メチル基または水素原子を表し、かつR2は、メチル基または水素原子を表す]の化合物が、たとえばウッディなにおいを、その他のにおいのノートと共に付与するための付香成分として使用することができることを見いだした。
【0006】
本発明の特別な実施態様によれば、式
【化2】

[式中、点線は、単結合または二重結合を表し、かつ一方のR2は、水素原子であり、かつ他方のR2は、水素原子またはメチル基である]の化合物が特に有利である。
【0007】
本発明のさらなる実施態様によれば、式
【化3】

[式中、点線は、単結合または二重結合を表す]の化合物もまた、特に有利である。
【0008】
さらに、本発明の特別な実施態様によれば、ペルヒドロ−2,3,8a−トリメチル−1−ナフタレノン、つまり式中で点線が単結合を表す化合物が、調香師により特に有利であると評価されている。
【0009】
前記化合物は、ベチバータイプのウッディなノートを有しており、ダマスコンおよびイオノンのコノテーションにより特徴付けられ、かつ良好に知覚されるウォータリーなコノテーションも有している。本発明の化合物のにおいは、調香師により、合成化合物にしては極めてユニークであるとみなされている。というのは、該化合物は、それ自体極めてまれなウッディー/ベチバータイプのノートを併せ持っており、ダマスコン−バイオレットおよびウォータリーなノートを有し、従ってユニークなにおいのプロファイルをもたらすからである。
【0010】
本発明の化合物のにおいを、最も近い従来技術の化合物であるペルヒドロ−2,3,8a−トリメチル−1−ナフタレノン(上記の刊行物を参照のこと)と比較すると、本発明の化合物はそれ自体、少なくとも、従来技術の類似体のにおいの主要な記述子であるにおいのスイート−フルーティーな、ミントのような、かつカンファーのノートを有していないことにより区別される。さらに、従来技術の化合物は、本発明の化合物に典型的な、ウッディーなダマスコンの特性およびノートを有していない。別の文献では、前記の2つの化合物は、本発明の化合物および従来技術の化合物を、ぞれぞれ異なった使用に適切なものとする、つまり異なった官能的印象を付与する、異なったにおいを有している。
【0011】
本発明の別の化合物は、2,3,8a−トリメチル−3,4,4a,5,8,8a−ヘキサヒドロ−1(2H)−ナフタレノンである。前記の化合物もまた、アガーウッドタイプのウッディなノートを有している。この化合物の官能的特性は、最も近い類似体、つまり2,2,8a−トリメチル−3,4,4a,5,8,8a−ヘキサヒドロ−1(2H)−ナフタレノン(US4377714)のものとは、従来技術の類似体のにおいの主要な記述子である、ミントのような、かつカンファーおよびシトラスのノートを有していないことにより区別される。
【0012】
従って、式(III)の本発明の化合物は、従来技術の最も近い構造類似体のものとは異なった、および予期していなかったにおいを有している。
【0013】
本発明の化合物の別の例として、たとえばウッディで、アンバーのような、パチュリーのにおいを有する2,3,6,8a−テトラメチル−3,4,4a,5,8,8a−ヘキサヒドロ−1(2H)−ナフタレノンを挙げることができ、かつこれ自体、全く異なったにおいの特性を有することにより、従来技術の最も近い類似体(つまり2,2,5/6,8a−テトラメチル−3,4,4a,5,8,8a−ヘキサヒドロ−1(2H)−ナフタレノンから区別される。
【0014】
もう一つの例は、ウッディな芳香族の、セージ−ローレルのにおいを有する2,2,3α,8aα−テトラメチル−3,4,4aα,5,8,8a−ヘキサヒドロ−1(2H)−ナフタレノンであり、かつその最も近い従来技術の類似体(つまり、2,2,8a−トリメチル−3,4,4a,5,8,8a−ヘキサヒドロ−1(2H)−ナフタレノン)とは、全く異なったにおいの特性を有する(たとえば、ミントのようなにおいを有していない)ことにより区別される。
【0015】
最後に、ウッディな芳香族の、セージおよびわずかにスルフリルのにおいを有する化合物であるペルヒドロ−2,2,3α,8aα−テトラメチル−4aα−H−1−ナフタレノンを挙げることができ、かつそれ自体、その最も近い従来技術の類似体(つまり、ペルヒドロ−2,2,8a−トリメチル−4a−H−1−ナフタレノン)からは、全く異なったにおいの特性を有する(たとえばミントのようなにおいを有していない)ことにより区別される。
【0016】
従って、式(I)または(II)の化合物もまた、従来技術の最も近い構造類似体のものとは異なった、および予期されなかったにおいを有している。
【0017】
上記のとおり、本発明は、付香成分としての式(I)の化合物の使用にも関する。換言すれば、本発明は、付香組成物または付香された物品のにおいの特性を付与、強化、改善または変性する方法に関し、この方法は、前記組成物または物品に、有効量の少なくとも1の式(I)の化合物を添加することを含む。「式(I)の化合物の使用」とは、ここでは、化合物(I)を含有する任意の組成物の使用でもあると理解すべきであり、かつこれは活性成分として香料産業において有利に使用することができる。
【0018】
前記の組成物は、実際に付香成分として有利に使用することができ、かつ本発明の対象でもある。
【0019】
従って、本発明のもう1つの対象は、
i)付香成分として、少なくとも1の上記の本発明による化合物、
ii)香料キャリアおよび香料ベースからなる群から選択される少なくとも1の成分、および
iii)場合により少なくとも1の香料補助剤
を含有する付香組成物である。
【0020】
「香料キャリア」とはここでは、香料の観点から実質的に中性である、つまり付香成分の官能的特性を顕著に変えることのない材料を意味している。前記のキャリアは、液状であっても、固体であってもよい。
【0021】
液状のキャリアとして、非限定的な例として、乳化剤系、つまり溶剤および界面活性剤の系、または香料において通常使用される溶剤を挙げることができる。香料において通常使用される溶剤の性質および種類の詳細な記載は、包括的なものにはなり得ない。しかし、非限定的な例として、ジプロピレングリコール、フタル酸ジエチル、ミリスチン酸イソプロピル、安息香酸ベンジル、2−(2−エトキシエトキシ)−1−エタノールまたはクエン酸エチルを挙げることができ、これらが最も一般的に使用されている。
【0022】
固体のキャリアとして、非限定的な例として、吸収性のゴムまたはポリマー、あるいはカプセル化材料を挙げることができる。このような材料の例は、たとえば壁形成性および可塑性の材料を含んでいてよく、たとえば単糖類、二糖類または三糖類、天然もしくは変性デンプン、ヒドロコロイド、セルロース誘導体、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、タンパク質またはペクチン、またはH.Scherz著のHydrokolloids:Stabilisatoren,Dickungs− und Gehermittel in Lebensmittel、食料品の化学、食料品の品質(Lebensmittelchemie,Lebensmittelqualitaet)シリーズの第2巻、Behr’s Verlag GmbH&Co.Hamburg、1996年のような参考テキストに引用されている材料である。カプセル化は、当該分野における当業者に周知の方法であり、かつたとえば噴霧乾燥、凝集または押し出しのような技術を使用して実施することができるか、またはコアセルベーションおよび錯体コアセルベーション技術を含む被覆カプセル化からなる。
【0023】
一般に、「香料ベース」とは、ここでは少なくとも1の付香補助成分を含有する組成物を意味している。
【0024】
前記の付香補助成分は、式(I)の成分ではない。さらに、「付香補助成分」とは、ここでは、快適な効果を付与するために付香調製物もしくは組成物中で使用される化合物を意味している。換言すれば、このような、付香成分とみなされる補助成分は、当業者によって組成物に肯定的な、または快適なにおいを付与するか、肯定的に、または快適に変性するものであると認識されるべきであり、単ににおいを有するというだけではいけない。
【0025】
ベース中に存在する付香補助成分の性質および種類は、ここでより詳細な記載を保証するものではないが、これはいずれにしても包括的なものとはならず、当業者であれば、自身の一般的な知識に基づいて、および意図される使用または適用および所望の官能的効果により選択することができる。一般的に、これらの付香補助成分は、アルコール、アルデヒド、ケトン、エステル、エーテル、アセテート、ニトリル、テルペン炭化水素、窒素もしくは硫黄を有する複素環式化合物および精油として分類される化学クラスに属し、かつ前記の付香補助成分は、天然に由来するものであっても、合成によるものであってもよい。これらの補助成分の多くはいずれにしても、たとえばS.Arctander著のPerfume and Flavor Chemicals、1969年、Montclair、New Jersey、USAのような参考テキスト、またはそのより最近の版に、または類似の性質のその他の文献、ならびに香料の分野における多数の特許文献に列挙されている。前記の補助成分は、制御された方式で種々のタイプの付香化合物を放出することで知られている化合物であってもよいと理解される。
【0026】
香料キャリアおよび香料ベースの両方を含有する組成物に関して、前記のものとは別の適切な香料キャリアは、エタノール、水/エタノール混合物、リモネンまたはその他のテルペン、イソパラフィン、たとえば商品名Isopar(登録商標)(製造元:Exxon Chemical)で知られているもの、またはグリコールエーテルおよびグリコールエーテルエステル、たとえば商品名Dowanol(登録商標)(製造元:Dow Chemical Company)であってもよい。
【0027】
一般に、「香料補助剤」とは、ここでは、さらに追加の利点、たとえば色、特別の耐光性、化学的安定性等を付与することができる成分を意味する。付香ベース中で一般的に使用される補助剤の性質およびタイプの詳細な記載は、包括的なものにはなりえないが、前記の成分は当業者に周知であることに言及しておかなくてはならない。
【0028】
少なくとも1の式(I)の化合物および少なくとも1の香料キャリアを含有する本発明による組成物、ならびに少なくとも1の式(I)の化合物、少なくとも1の香料キャリア、少なくとも1の香料ベース、および場合により少なくとも1の香料補助剤を含有する付香組成物は、本発明の特別な実施態様である。
【0029】
ここで、上記の組成物中に、2以上の式(I)の化合物が含有されている可能性は、これによって調香師が本発明の種々の化合物のにおいの調性を有するアコード、香水を製造することを可能にするために、ひいては彼らの仕事に新たなツールをもたらすために、重要であることに言及することは有用である。
【0030】
有利には、本発明の化合物が、原料、中間体または最終生成物として関与しうる化学合成から、たとえば適切な精製を行うことなく直接得られる任意の混合物は、本発明による付香組成物とはみなし得ない。
【0031】
さらに、本発明の化合物は前記の化合物(I)が添加される消費製品のにおいを好適的に付与または変性するための現代の香料の全ての分野において有利に使用することができる。従って、以下のものを含む:
i)付香成分として、上記で定義したとおりの少なくとも1の式(I)の化合物、または本発明による付香組成物および
ii)消費製品ベース
付香された物品もまた、本発明の対象である。
【0032】
明瞭さのために、「消費製品ベース」とは、ここでは、付香成分と相容性の消費製品を意味していることに言及しておかなくてはならない。換言すれば、本発明による付香された物品は、官能性調製物、ならびに場合により消費製品に相応する付加的な利点をもたらす剤、たとえば洗剤またはエアー・フレッシュナー、および少なくとも1の本発明の化合物の嗅覚効果に有効な量を含有する。
【0033】
消費製品の成分の性質および種類は、ここでより詳細な記載を保証するものではないが、これはいずれにしても包括的なものとなるものではなく、当業者であれば、自身の一般的な知識に基づいて、および前記製品の性質および所望の効果により選択することができる。
【0034】
適切な消費製品ベースの例は、固体もしくは液体の洗剤および繊維柔軟剤ならびにその他の、香料において通例の物品、つまり香水、コロンまたはアフターシェーブローション、付香されたセッケン、シャワー用もしくはバス用ソルト、ムース、オイルもしくはジェル、衛生用品、またはヘアケア製品、たとえばシャンプー、ボディー・ケア製品、消臭剤または制汗剤、エアー・フレッシュナーおよびまた化粧品を含む。洗剤として、種々の表面を洗浄するため、またはクリーニングするための洗剤組成物またはクリーニング製品のような適用が意図され、たとえばテキスタイル、食器または硬質表面の処理のための適用が意図され、この場合、家庭用の使用であるか工業用の使用であるかを問わない。その他の付香された物品は、繊維リフレッシュナー、アイロン水、紙、拭き取りクロスまたは漂白剤である。
【0035】
上記の消費製品のいくつかは、本発明の化合物に対して攻撃的な媒体であることがあるので、本発明の化合物を、たとえばカプセル化によって、早すぎる分解から保護する必要がありうる。
【0036】
本発明による化合物が種々の前記の物品または組成物中に配合されうる比率は、広い範囲の値で変化する。これらの値は、付香されるべき物品の性質および所望の官能的効果ならびに本発明による化合物を、当該分野で慣用の付香補助成分、溶剤または添加剤と混合する場合に得られるベースにおける補助成分の性質に依存する。
【0037】
たとえば、付香組成物の場合、一般的な濃度は、本発明による化合物が配合される組成物の質量に対して本発明による化合物0.001質量%〜25質量%の範囲であるか、またはそれ以上であってもよい。これより低い濃度、たとえば0.01〜10質量%のオーダーの濃度は、これらの化合物を付香された物品に配合する場合に使用することができ、この場合のパーセンテージは物品の質量に対するものである。
【0038】
ところで本発明を以下の実施例によりさらに詳細に記載するが、その際、略号は当該分野において慣用の意味を有し、温度は摂氏(℃)で記載されている。NMRスペクトルデータは、CDCl3中で(その他の記載がなければ)1Hおよび13C用の360もしくは400MHzの装置で記録した。化学シフトδは、標準としてのTMSに関してppmで記載されており、結合定数Jは、Hzで記載されている。
【0039】
例1
本発明による化合物の製造
A)2,3,8a−トリメチル−3,4,4a,5,8,8a−ヘキサヒドロ−1(2H)−ナフタレノン
1リットルの丸底フラスコ中に、室温でCH2Cl2(400ml)、BHT(100mg)およびヘキサン中のEtAlCl2の1M溶液(80ml、0.08モル)を順次添加した。2,5,6−トリメチルシクロヘキス−2−エン−1−オン(55.2g、0.4モル、2つの異性体の3:2の混合物)を滴加し、その一方で内部温度を30℃未満に維持した。次いでブタジエン(43.2g、0.8モル)を一度に添加した。反応混合物を室温で15日間攪拌した。次いで該反応混合物を5%の冷HCl水溶液に注ぎ、かつエーテルで2回抽出した。有機層を飽和NaHCO3水溶液、水および塩水で洗浄し、かつ固体の硫酸ナトリウム上で乾燥させた。粗生成物を蒸留して、液体が50g得られ、これを次いでシリカゲル上でクロマトグラフィー処理し(ヘプタン:酢酸エチル49:1)、次いでバルブ・ツー・バルブ式蒸留により(沸点=90℃/0.021ミリバール)精製して、表題化合物(39.43g、0.205モル、51%)が、ジアステレオ異性体の3:2の混合物として得られた。
MS(主要なジアステレオ異性体):192(M+、57);177(24);174(18);159(52);149(100);135(19);121(77);107(53);93(77);79(66);77(43)。
1H−NMR(異性体の混合物):0.79(d、J=7、1.2H);0.96(d、1.2H);1.01(d、J=7、1.8H);1.08(s、1.2H);1.09(d、J=7、1.8H);1.29(s、1.8H);1.32〜2.2.63(m、9H);5.50〜5.70(m、2H)。
【0040】
B)ペルヒドロ−2,3,8a−トリメチル−1−ナフタレノン
2,3,8a−トリメチル−3,4,4a,5,8,8a−ヘキサヒドロ−1(2H)−ナフタレノン(10g、52ミリモル)を室温および大気圧で、5%Pd−C(1.0g)の存在下に酢酸エチル(100ml)中で水素化した。粗生成物をバルブ・ツー・バルブ式蒸留により精製して(78℃/0.035ミリバール)、所望の化合物(9.88g、51ミリモル、98%)が、ジアステレオ異性体の3:2の混合物として得られた。
MS(主要な異性体):194(M+、19);179(11);161(6);152(42);139(100);109(18);95(53);81(33);67(21);55(16);41(16)。
1H−NMR(異性体の混合物):0.72〜1.21(m、12H);1.30〜3.00(m、10H)。
【0041】
例2
本発明による化合物の製造
I)ディールス・アルダー・カップリングのための一般的な手順
500mlの反応器にAlEtCl2、またはAlCl3、BHT0.1gおよびトルエン、またはCH2Cl2を装入した。次いで、強力に攪拌しながら、適切なシクロヘキサノンを滴加して温度を30℃未満に維持した。その後、ジエンを滴加し、かつ反応が終了したら、反応混合物を5%のHCl水溶液で加水分解し、Et2Oで2回抽出した。次いで有機層を飽和NaHCO3水溶液、水、塩水で洗浄し、次いでNa2SO4上で乾燥させた。溶剤を気化させ、クロマトグラフィー処理し(SiO2、ヘプタン/AcOEt98:2で溶離)、かつ蒸留して、最終生成物が得られた。
【0042】
2,3,6,8A−テトラメチル−3,4,4A,5,8,8A−ヘキサヒドロ−1(2H)−ナフタレノン:
以下の量で製造した:
2,5,6−トリメチル−2−シクロヘキセン−1−オン(44.16g、0.32ミリモル)
三塩化アルミニウム(10.7g、0.08ミリモル)
イソプレン(326g、4.8モル)
トルエン(500ml)。
【0043】
表題化合物が、異性体の混合物(3.5/61.7/1.6/31.5)として、86%の収率で得られた。
沸点=42℃/0.005ミリバール
1H−NMR:0.78〜1.12(m、7H);1.22〜1.70(m、7H);1.70〜2.62(m、7H);5.30(m、1H)。
【0044】
2,2,3,8A−テトラメチル−3,4,4A,5,8,8A−ヘキサヒドロ−1(2H)−ナフタレノン:
以下の量で製造した:
2,5,6,6−テトラメチル−2−シクロヘキセン−1−オン(30.4g、0.20モル)
二塩化エチルアルミニウム(ヘキサン中1モルの溶液、100ml、0.10モル)
ブタジエン(40ml、0.40モル)
ジクロロメタン(300ml)。
【0045】
表題化合物が、63%の収率で得られた。
沸点=84℃/0.028ミリバール
1H−NMR:0.95(d、J=7Hz、3H);1.02(s、3H);1.12(s、3H);1.18(s、3H);1.50〜1.68(m、2H);1.78〜1.88(m、2H);2.00〜2.15(m、2H);2.20〜2.28(m、1H);2.32〜2.42(m、1H);5.60(ブロードs、2H)。
13C−NMR:219.65(s);124.35(d);124.01(d);46.77(s);45.56(s);34.95(d);33.41(d);32.98(t);32.04(t);28.24(t);26.33(q);23.30(q);21.71(q);16.88(q)。
【0046】
II)ナフタレノンの、ペルヒドロナフタレノンへの水素化のための一般的な手順
100mlのフラスコ中に、適切なナフタレノン、酢酸エチル、およびナフタレノンに対して10%w/wのPd/C5%を装入した。該混合物をH2下に室温で、理論量の水素が消費されるまで攪拌した。その後、反応混合物をナイロン6/6により濾過した。溶剤の気化および蒸留により、最終生成物が得られた。
【0047】
ペルヒドロ−2,2,3α,8aα−テトラメチル−4aα−H−1−ナフタレノン:
2,2,3,8A−テトラメチル−3,4,4A,5,8,8A−ヘキサヒドロ−1(2H)−ナフタレノンから約98%の収率で製造された。
沸点=84℃/0.079ミリバール。
【0048】
例3
付香組成物の製造
以下の成分を混合することにより男性用「オードトワレ」を製造した:
成分 質量部
1,1−ジメチル−2−フェニルエチルアセテート 10
ゲラニルアセテート 10
10%*4−(4−ヒドロキシ−1−フェニル)−2−ブタノン 10
ベルガモット精油 200
シトラール 30
レモン精油 500
2−メチル−4−(2,2,3−トリメチル−3−シクロペンテン−1−イル)−4−ペンテン−1−オール1) 80
Habanolide(登録商標)2) 100
10%*ガルバヌム精油 90
チョウジ 90
Helvetolide(登録商標)3) 30
ラベンダー精油 200
リナロール 70
Lyral(登録商標)4) 340
マジョラム 120
50%*オーク・モス 50
クリスタル・モス 50
ナツメグ精油 170
2−エトキシ−2,6,6−トリメチル−9−メチレン−ビシクロ[3.3.1]ノナン1) 170
シス−3−ヘキセノールサリチレート 10
Sandela(登録商標)5) 180
Sclareolate(登録商標)6) 420
イラン抽出物 100
3030
*は、ジプロピレングリコール中
1)製造元:Firmenich SA、スイス国ジュネーブ在
2)ペンタデセノリド;製造元:Firmenich SA、スイス国ジュネーブ在
3)(1S,1′R,)−2−[1−(3′,3′−ジメチル−1′−シクロヘキシル)エトキシ]−2−メチルプロピルプロパノエート;製造元:Firmenich SA、スイス国ジュネーブ在
4)4/3−(4−ヒドロキシ−4−メチルペンチル)−3−シクロヘキセン−1−カルボアルデヒド;製造元:International Flavors & Fragrances、USA
5)2(4)−(5,5,6−トリメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イル)−1−シクロヘキサノール;製造元:Givaudan−Roure SA、スイス国バーニア在
6)プロピル(S)−2−(1,1−ジメチルプロピル)プロパノエート;製造元:Firmenich SA、スイス国ジュネーブ在。
【0049】
ペルヒドロ−2,3,8a−トリメチル−1−ナフタレノン700質量部を、上記のオードトワレに添加することにより、該オードトワレには、快適で、強いウッディー−ダマスコンのアスペクトが付与され、その一方で、香気の新鮮さが増強された。さらに、この新鮮なウッディー−ダマスコンのノートは、ボトムノートまで良好に感じることができ、これはウッディーな特性を有するとして知られている公知の合成付香成分を添加することによっては得られない効果である。
【0050】
同量のペルヒドロ−2,2,8a−トリメチル−1−ナフタレノンを添加することにより付与される効果ははるかに弱く、これはダマスコンの、ウォータリーで新鮮な効果を有していなかった。全体的な印象は、はるかに乾燥した、かつ重い香りであり、これはミントのようなノートおよびパチュリーのクラッシックなアンダーノートを有しているが、ボリュームに欠けていた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】

【化1】

[式中、点線は、単結合または二重結合を表し、R1は、メチル基または水素原子を表し、かつR2は、メチル基または水素原子を表す]の化合物。
【請求項2】

【化2】

[式中、点線は、単結合または二重結合を表し、かつ一方のR2は、水素原子であり、かつ他方のR2は、水素原子またはメチル基である]の化合物である、請求項1記載の化合物。
【請求項3】

【化3】

[式中、点線は、単結合または二重結合を表す]の化合物であることを特徴とする、請求項1記載の化合物。
【請求項4】
ペルヒドロ−2,3,8a−トリメチル−1−ナフタレノンである、請求項1記載の化合物。
【請求項5】
請求項1から4までのいずれか1項記載の式(I)の化合物の付香成分としての使用。
【請求項6】
i)少なくとも1の、請求項1から4までのいずれか1項記載の式(I)の化合物、
ii)香料キャリアおよび香料ベースからなる群から選択される少なくとも1の成分、および
iii)場合により少なくとも1の香料補助剤
を含有する組成物の形の付香成分。
【請求項7】
i)少なくとも1の、請求項1から4までのいずれか1項記載の式(I)の化合物、および
ii)消費製品ベース
を含有する、付香された物品。
【請求項8】
消費製品ベースが、固体もしくは液体の洗剤、繊維柔軟剤、香水、コロンもしくはアフターシェーブローション、付香されたセッケン、シャワー用もしくはバス用のソルト、ムース、オイルもしくはジェル、衛生用品、ヘアケア製品、シャンプー、ボディ・ケア製品、消臭剤もしくは制汗剤、エア・フレッシュナー、化粧品、繊維リフレッシュナー、アイロン水、紙、拭き取りクロスまたは漂白剤であることを特徴とする、請求項7記載の付香された物品。

【公表番号】特表2009−508844(P2009−508844A)
【公表日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−530680(P2008−530680)
【出願日】平成18年9月5日(2006.9.5)
【国際出願番号】PCT/IB2006/053113
【国際公開番号】WO2007/031904
【国際公開日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【出願人】(390009287)フイルメニツヒ ソシエテ アノニム (146)
【氏名又は名称原語表記】FIRMENICH SA
【住所又は居所原語表記】1,route des Jeunes, CH−1211 Geneve 8, Switzerland
【Fターム(参考)】