説明

チップ形固体電解コンデンサ

【課題】各種電子機器に使用されるチップ形固体電解コンデンサの更なる低ESL化を図ることを提供することを目的とする。
【解決手段】対向する辺に略同形状、同面積の陽極電極部を突出して設けた陽極体を絶縁部により陽極電極部と陰極形成部に分離し、この陰極形成部に固体電解質層、陰極層を形成して陰極電極部を設けたコンデンサ素子1と、このコンデンサ素子1を複数個隣接配置して各陽極/陰極電極部に接合された陽極/陰極端子7、8と、この陽極/陰極端子7、8の一部を除いて複数のコンデンサ素子1を一体被覆した外装樹脂10からなる構成により、コンデンサ素子1の状態で同一ライン上に陽極/陰極部を近接配置でき、かつ実装面となる下面の対向する各辺に陽極/陰極端子7、8が交互に近接配置されるため、陽極/陰極端子7、8間を流れる電流を互いに打ち消し合い、ESLを複数分の1に低減できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は各種電子機器に使用されるコンデンサの中で、導電性高分子を固体電解質に用いたチップ形固体電解コンデンサに関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子機器の高周波化に伴って電子部品の一つであるコンデンサにも従来よりも高周波領域でのインピーダンス特性に優れたコンデンサが求められてきており、このような要求に応えるために電気伝導度の高い導電性高分子を固体電解質に用いた固体電解コンデンサが種々検討されている。
【0003】
また、近年、パーソナルコンピュータのCPU周り等に使用される固体電解コンデンサには小型大容量化が強く望まれており、更に高周波化に対応して低ESR(等価直列抵抗)化のみならず、ノイズ除去や過渡応答性に優れた、低ESL(等価直列インダクタンス)化が強く要求されており、このような要求に応えるために種々の検討がなされている。
【0004】
図4(a)、(b)は本発明者らが提案した、この種の従来のチップ形固体電解コンデンサの構成を示した斜視図と底面図、図5(a)〜(c)は同チップ形固体電解コンデンサに使用される陰極リードフレームの斜視図、同陽極リードフレームの斜視図、同両リードフレームを重ね合わせた状態の斜視図である。
【0005】
図4と図5において、11はコンデンサ素子を示し、このコンデンサ素子11は弁作用金属であるアルミニウム箔を粗面化して表面に誘電体酸化皮膜を形成した陽極体の所定の位置に絶縁性のレジスト部11aを設けて陽極電極部11bと陰極形成部に分離し、この陰極形成部の誘電体酸化皮膜上に導電性高分子からなる固体電解質層、カーボンと銀ペーストからなる陰極層を順次積層形成して陰極電極部11cを形成することにより構成されたものである。
【0006】
12は陽極リードフレームを示し、この陽極リードフレーム12は上記コンデンサ素子11の陽極電極部11bが接合される陽極接合部12bが平面部12aの一端に設けられると共に、実装用の陽極端子部12cが下面に複数個設けられている。なお、この陽極端子部12cは1枚の基材を折り曲げることにより平面部12aから実装面側に突出するように形成されたものである。
【0007】
13は陰極リードフレームを示し、この陰極リードフレーム13は上記コンデンサ素子11の陰極電極部11cを搭載して接合すると共に上記陽極リードフレーム12の平面部12a上に図示しない絶縁層を介して載置される平面部13a、ならびに実装用の陰極端子部13bが下面に複数個設けられている。なお、この陰極端子部13bは1枚の基材を折り曲げることにより平面部13aから実装面側に突出するように形成されたものである。また、13cはコンデンサ素子11の陰極電極部11cを位置決め固定するために設けられたガイド壁である。また、上記図示しない絶縁層は、厚さが10μm程度のポリイミドフィルム、あるいは樹脂を印刷することによって形成すれば良いものである。
【0008】
14は上記陽極端子部12cと陰極端子部13bの実装面が露呈する状態で複数のコンデンサ素子11、陽極リードフレーム12、陰極リードフレーム13を一体に被覆した絶縁性の外装樹脂であり、図4(a)においては、内部構造を分かり易くするために、この外装樹脂14を除いた状態で図示したものである。
【0009】
このように構成された従来のチップ形固体電解コンデンサは、陰極リードフレーム13に流れる電流の向きと反対方向に電流が流れるように陽極リードフレーム12を重ね合わせて配置した構成により、お互いのリードフレームに流れる電流が打ち消し合うようになるためにESLを大幅に低減する(参考:270pH)ことができるようになるというものであった。
【0010】
なお、この出願の発明に関連する先行技術文献情報としては、例えば、特許文献1が知られている。
【特許文献1】特開2006−80427号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら上記従来のチップ形固体電解コンデンサでは、従来品と比較してESLを大幅に低減することができるという効果は有するものの、更に高いレベルで要求される低ESL化に対しては、更なる改良が必要であるという課題があった。
【0012】
本発明はこのような従来の課題を解決し、更なる低ESL化を実現することが可能なチップ形固体電解コンデンサを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するために本発明は、表面に誘電体酸化皮膜層が形成されたアルミニウム箔からなる陽極体の所定の位置に絶縁部を設けて陽極電極部と陰極形成部に分離し、この陰極形成部に導電性高分子からなる固体電解質層、カーボンと銀ペーストからなる陰極層を順次積層形成することにより陰極電極部が形成されたコンデンサ素子と、このコンデンサ素子の陽極電極部と陰極電極部を夫々上面に接合した陽極端子ならびに陰極端子と、この陽極端子ならびに陰極端子の少なくとも実装面となる底面を除いて上記コンデンサ素子と陽極端子ならびに陰極端子を一体に被覆した絶縁性の外装樹脂からなるチップ形固体電解コンデンサにおいて、上記陽極体として、少なくとも対向する辺に略同形状、同面積の陽極電極部を夫々突出して設けたものを用いてコンデンサ素子を構成し、かつ、このコンデンサ素子を同一面上に複数個隣接配置して外装樹脂で一体に被覆した構成にしたものである。
【発明の効果】
【0014】
以上のように本発明によるチップ形固体電解コンデンサは、陽極体の少なくとも対向する辺に略同形状、同面積の陽極電極部を夫々突出して設けた構成により、コンデンサ素子の状態で同一ライン上またはこの近傍の極めて近接した位置に陽極部と陰極部を配置することができるようになり、このコンデンサ素子を陽極端子と陰極端子上に複数個隣接配置して接合することにより、実装面となる底面の対向する各辺に陽極端子と陰極端子が交互に近接配置された多端子構造を実現することができるようになるため、陽極端子/陰極端子間を流れる電流をお互いに打ち消し合って、ESLを大幅に低減することができるようになるばかりでなく、このように隣接配置された複数個のコンデンサ素子を外装樹脂で一体に被覆することにより、ESLを更に1/複数個に低減することができるようになるという効果が得られるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
(実施の形態)
以下、実施の形態を用いて、本発明の特に全請求項に記載の発明について説明する。
【0016】
図1(a)〜(d)は本発明の一実施の形態によるチップ形固体電解コンデンサの構成を示した平面図と正面図と底面図と側面図、図2は同チップ形固体電解コンデンサに使用される陽極端子と陰極端子を示した平面図、図3(a)〜(d)は同チップ形固体電解コンデンサに使用されるコンデンサ素子の製造プロセスを示した製造工程図である。
【0017】
図1〜図3において、1はコンデンサ素子を示し、このコンデンサ素子1は対向する辺に略同形状、同面積の陽極電極部2aを夫々突出して設けたアルミニウム箔からなる陽極体2の表面に図示しない誘電体酸化皮膜層を形成した後に、所定の位置に絶縁性のレジスト部3を設けて陽極電極部2aと陰極形成部4に分離し、この陰極形成部4の表面に導電性高分子からなる固体電解質層5a、カーボンと銀ペーストからなる陰極層5bを順次積層形成して陰極電極部6を形成することにより構成されたものである。
【0018】
7は上記コンデンサ素子1の陽極電極部2aを上面に接合した平板状の陽極端子、8はコンデンサ素子1の陰極電極部6を上面に接合した平板状の陰極端子であり、この陽極端子7と陰極端子8は1枚の基材9を打ち抜き加工することによって夫々が独立するように形成されると共に、コンデンサ素子1を2個隣接配置して接合できるように構成されているものである。また、上記陽極端子7と陽極電極部2aの接合は抵抗溶接(溶接痕7a)で、陰極端子8と陰極電極部6の接合は図示しない導電性銀ペーストによって行われているものである。
【0019】
10はこのように同一面上に2個のコンデンサ素子1を隣接配置して接合した陽極端子7と陰極端子8の一部が夫々外表面に露呈する状態で2個のコンデンサ素子1を一体に被覆した絶縁性の外装樹脂(図1(a)においては、内部構造を分かり易くするために、この外装樹脂10を除いた状態で図示している)であり、これにより面実装対応のチップ形固体電解コンデンサを構成したものである。
【0020】
このように構成された本実施の形態によるチップ形固体電解コンデンサは、実装面となる底面の対向する各辺に陽極端子7と陰極端子8を交互に近接配置した多端子構造を実現することができるようになるため、陽極端子7/陰極端子8間を流れる電流をお互いに打ち消し合って、ESLを大幅に低減することができるようになるばかりでなく、このように構成されたコンデンサ素子を同一面上に2個隣接配置して外装樹脂で一体に被覆することにより、ESLを更に1/2に低減することができるようになるという格別の効果を奏するものであり、このチップ形固体電解コンデンサのESLを測定したところ34pHという低い値を示し、従来品(270pH)と比べてESLを大幅に低減することができるものである。
【0021】
なお、本実施の形態においては、陽極端子7と陰極端子8上に近接配置して外装樹脂10で一体に被覆するコンデンサ素子1の数は2個としたが、本発明はこれに限定されるものではなく、3個以上であっても良いものであり、数を増やすにつれてESLも低下していくものである。
【産業上の利用可能性】
【0022】
本発明によるチップ形固体電解コンデンサは、ESLを大きく低減することが可能になるという効果を有し、特に高周波応答性が要求される分野等として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】(a)本発明の一実施の形態によるチップ形固体電解コンデンサの構成を示した平面図、(b)同正面図、(c)同底面図、(d)同側面図
【図2】同チップ形固体電解コンデンサに使用される陽極端子と陰極端子を示した平面図
【図3】(a)〜(d)同チップ形固体電解コンデンサに使用されるコンデンサ素子の製造プロセスを示した製造工程図
【図4】(a)従来のチップ形固体電解コンデンサの構成を示した斜視図、(b)同底面図
【図5】(a)同チップ形固体電解コンデンサに使用される陰極リードフレームを示した斜視図、(b)同陽極リードフレームを示した斜視図、(c)同両リードフレームを重ね合わせた状態を示した斜視図
【符号の説明】
【0024】
1 コンデンサ素子
2 陽極体
2a 陽極電極部
3 レジスト部
4 陰極形成部
5a 固体電解質層
5b 陰極層
6 陰極電極部
7 陽極端子
7a 溶接痕
8 陰極端子
9 基材
10 外装樹脂

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に誘電体酸化皮膜層が形成されたアルミニウム箔からなる陽極体の所定の位置に絶縁部を設けて陽極電極部と陰極形成部に分離し、この陰極形成部に導電性高分子からなる固体電解質層、カーボンと銀ペーストからなる陰極層を順次積層形成することにより陰極電極部が形成されたコンデンサ素子と、このコンデンサ素子の陽極電極部と陰極電極部を夫々上面に接合した陽極端子ならびに陰極端子と、この陽極端子ならびに陰極端子の少なくとも実装面となる底面を除いて上記コンデンサ素子と陽極端子ならびに陰極端子を一体に被覆した絶縁性の外装樹脂からなるチップ形固体電解コンデンサにおいて、上記陽極体として、少なくとも対向する辺に略同形状、同面積の陽極電極部を夫々突出して設けたものを用いてコンデンサ素子を構成し、かつ、このコンデンサ素子を同一面上に複数個隣接配置して外装樹脂で一体に被覆したチップ形固体電解コンデンサ。
【請求項2】
陽極体の対向する辺に夫々突出して設けた陽極電極部が、各辺の対角位置となる一端部に夫々非対称に突出して設けられた請求項1に記載のチップ形固体電解コンデンサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−21772(P2008−21772A)
【公開日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−191405(P2006−191405)
【出願日】平成18年7月12日(2006.7.12)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】