説明

テ―パ管に熱可塑性粉体塗料を部分的に塗装する方法及びその装置

【課題】 テ―パ管の部分塗装を行う際に、テ―パ管の振れに対応して、その塗装部分と他の部分との境界を明確に直線にできるようなものとなるテ―パ管に熱可塑性粉体塗料を部分的に塗装する方法及びその装置を提供する。
【解決手段】 塗装境界部に移動された加熱装置2が塗装装置3を従えながらテ―パ管1の元口側へ移動されながらテ―パ管を加熱し、
テ―パ管の塗装境界部に塗装装置が到達した時点で、加熱装置の移動は継続しながら塗装装置を一旦停止させて、塗装装置から熱可塑性粉体塗料をテ―パ管に吹き付けると共に、テ―パ管の加熱された塗装境界部でテ―パ管の外周へ均一にエア―を吹き付けて塗装装置からの熱可塑性粉体塗料が境界部の線外へ流出するのを防止して塗装境界線を確立させ、
次いで塗装装置もテ―パ管の元口側へ移動させながら塗装装置によりテ―パ管の部分塗装を完了させる、テ―パ管に熱可塑性粉体塗料を部分的に塗装する方法及びその装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、テ―パ管に熱可塑性粉体塗料を部分的に塗装する方法及びその装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、テ―パ管をコンベア上で回転状態とし、そのテ―パ管の元口側を狭い範囲で加熱しながら塗装すべき部分を加熱装置が移動されると共に該加熱された部分を塗装装置が追従して移動されて部分塗装が行われるようになされたものがある(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
【特許文献1】特許第2805292号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記従来の技術においては、テ―パ管の一端側を部分的に塗装するため該テ―パ管に熱可塑性粉体塗料を焼付ける場合に、テ―パ管の形状に一部湾曲部があると、この湾曲によりテ―パ管のコンベア上での回転時にテ―パ管が振れを発生し、熱可塑性粉体塗料が均一にテ―パ管に付着せずテ―パ管に沿って勝手に流出して熱可塑性粉体塗料の焼付け時に塗料が塗装を必要としない部分までも付着し、塗装箇所の境界線が揃わないで完壁な部分塗装が達成できない虞がある。
【0005】
そこで、塗装を必要としない部分を機械的にマスキングする場合が考えられるが、その場合にも、マスクは回転するテ―パ管とは別に独立して固定されることにより、テ―パ管の振れでテ―パ管の外表面とマスクの内面との間に隙間がテ―パ管の内周方向で均一とならず、粉体塗料の焼付け量が不均一になり塗装箇所の境界部近傍の管周面上で境界線に凹凸が生じて、境界線の均整がとれない虞もある。
【0006】
本発明は、従来の技術の有するこのような問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、テ―パ管の部分塗装を行う際に、テ―パ管の振れに対応して、その塗装部分と他の部分との境界を明確に直線にできるようなものとなるようなテ―パ管に熱可塑性粉体塗料を部分的に塗装する方法及びその装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明のテ―パ管に熱可塑性粉体塗料を部分的に塗装する方法は、
テ―パ管をコンベア上で回転状態とし、そのテ―パ管の元口側を狭い範囲で加熱しながら塗装すべき部分を加熱装置が移動されると共に該加熱された部分を塗装装置が追従して移動されて部分塗装が行われる工程において、
塗装境界部に移動された加熱装置が塗装装置を従えながらテ―パ管の元口側へ移動されながらテ―パ管を加熱し、
テ―パ管の塗装境界部に塗装装置が到達した時点で、加熱装置の移動は継続しながら塗装装置を一旦停止させて、該塗装装置から熱可塑性粉体塗料をテ―パ管に吹き付けると共に、テ―パ管の加熱された塗装境界部で該テ―パ管の外周へ均一にエア―を吹き付けて塗装装置からの熱可塑性粉体塗料が前記境界部の線外へ流出するのを防止して塗装境界線を確立させ、
次いで塗装装置もテ―パ管の元口側へ移動させながら該塗装装置によりテ―パ管の部分塗装を完了させるようになされたことを特徴とするものである。
【0008】
また、本発明のテ―パ管に熱可塑性粉体塗料を部分的に塗装する塗装装置は、
テ―パ管をコンベア上で回転状態とし、そのテ―パ管の元口側を狭い範囲で加熱する加熱装置と、加熱された部分を塗装する塗装装置を備えたものにおいて、
塗装装置に境界設定用基板を離接可能に取り付け、該境界設定用基板にテ―パ管倣い基板を上下左右に移動可能に取り付け、該倣い基板に2分割体からなるエア―ブロ―ジャケットを取り付け、前記2分割体はテ―パ管を包囲する閉鎖状態とテ―パ管から開放された開放状態を維持し得る連結部材により接続されていると共に一方の分割体にはテ―パ管の外周に当接される倣い用ロ―ラが取り付けられていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係るテ―パ管に熱可塑性粉体塗料を部分的に塗装する方法及びその装置では、テ―パ管の部分塗装を行う際に、塗装装置から熱可塑性粉体塗料をテ―パ管に吹き付けると共に、テ―パ管の加熱された塗装境界部で該テ―パ管の外周へ均一にエア―を吹き付けて塗装装置からの熱可塑性粉体塗料が前記境界部の線外へ流出するのを防止して塗装境界線を確立させので、その塗装部分と他の部分との境界を明確に直線にできるような完壁な部分塗装が達成できるのである。
【0010】
また、塗装装置に境界設定用基板を離接可能に取り付け、該境界設定用基板にテ―パ管倣い基板を上下左右に移動可能に取り付け、該倣い基板に2分割体からなるエア―ブロ―ジャケットを取り付け、前記2分割体はテ―パ管を包囲する閉鎖状態とテ―パ管から開放された開放状態を維持し得る連結部材により接続されていると共に一方の分割体にはテ―パ管の外周に当接される倣い用ロ―ラが取り付けたので、テ―パ管に振れが発生した場合でも境界部におけるテ―パ管の外周に均一なエアーカーテンを実施させ得ることから、境界部における熱可塑性粉体塗料の流出が制限されて塗装部分と他の部分との境界をより明確に直線にできるような熱可塑性粉体塗料を部分的に塗装する方法及びその装置となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
図1ないし図4は本発明に係るテ―パ管に熱可塑性粉体塗料を部分的に塗装する方法及びその装置を実施する場合の塗装作業の概略図を示すものであり、図1は本発明に係るテ―パ管に熱可塑性粉体塗料を部分的に塗装するためのスタート準備の状態の(a)は側面,(b)は正面の概略図,図2は境界設定用基板を塗装境界部まで移動した状態の(a)は側面,(b)は正面の概略図,図3は塗装作業中間時の状態の(a)は側面,(b)は正面の概略図,図4は塗装作業終了時の状態の(a)は側面,(b)は正面の概略図である。
【0012】
全体に亜鉛メッキが施されたテ―パ管1は部分的に塗装される部位が先ず研磨されて地金を露出した状態で部分的に塗装すべくコンベア上に運ばれる。そして、このコンベアの一方端側(テーパ管の元口側)には加熱装置2と塗装装置3がコンベア外に置かれている。そして、このコンベア上にテ―パ管1が位置されると、このテ―パ管1の元口側から塗装装置3と加熱装置2が順次取り付けられる。
【0013】
次に塗装作業に入るがこれはステップ図1ないし図4に示すようなスケジュールで行われる。
【0014】
先ず、コンベア(図示せず)上でテ―パ管1は回転状態にあり、このテ―パ管1の狭い範囲で加熱する加熱装置2が末口側(小径側)に塗装装置3を従えながら元口側から塗装境界部4に移動される。この加熱装置2には、例えば、移動可能な高周波加熱用コイルを使用して、該高周波加熱用コイルは狭い領域の範囲で周波数100ないし200Hzでテ―パ管1を約300C゜に加熱する性能を有するものである。このとき、後述するエア―ブロ―ジャケット7は開放状態にある。(図1参照)
【0015】
次いで、塗装境界部4に移動された加熱装置2が塗装装置3を従えながらテ―パ管1の元口側へ移動させながらテ―パ管1の加熱を実施し、テ―パ管1の塗装境界部4に塗装装置3が到達した時点で、加熱装置2の移動は継続しながら塗装装置3を一旦停止させる。
そして、停止された塗装装置3の上部に設けた例えば複数の塗装ガン5,5から熱可塑性粉体塗料6でテ―パ管1に吹き付けを開始すると共に、この際、テ―パ管1の加熱された塗装境界部4で該テ―パ管1の外周へ均一にする例えば塗装装置3の側部に設けられた二分割体のエア―ブロ―ジャケット7が前記開放状態から閉鎖状態となり、該エア―ブロ―ジャケット7の内部からエア―を吹き付けることにより塗装装置3の塗装ガン5,5からの熱可塑性粉体塗料6が前記境界部4の線外へ流出するのを防止して塗装境界線を確立させることができるようになる。また、テ―パ管1の振れによるテ―パ管1の外周とエア―ブロ―ジャケット7の内周との隙間が不均一になりそうになった場合には、エア―ブロ―ジャケット7を上下左右に微調整させる倣い動作によりテ―パ管1の外周とエア―ブロ―ジャケット7の内周との隙間の密接距離を保つようにする。(図2参照)
【0016】
そして、一旦停止していた塗装装置3は、エア―ブロ―ジャケット7を塗装境界部4に残したままテ―パ管1の塗装境界部4近傍の塗装が行われた時点で再び塗装装置3を加熱装置2に追従するように移動させながら、塗装ガン5,5による熱可塑性粉体塗料6の吹き付けを続ける。(図3参照)
【0017】
前記塗装ガン5,5による熱可塑性粉体塗料6の吹き付けが塗装境界部4において余剰粉体の影響がなくなる距離まで塗装装置3が移動した時点で前記分割体からなるエア―ブロ―ジャケット7は開放状態に戻されると共にエア―ブロ―ジャケット7は前記塗装装置3に引き寄せられる。そして、引き続き加熱装置2と塗装装置3とを移動させながら、前記複数の塗装ガン5,5から熱可塑性粉体塗料6をテ―パ管1に吹き付け続けながらテ―パ管1の元口側まで塗装して、テ―パ管1の部分的塗装を完了することができる。(図4参照)
【0018】
以上のような構成からなるテ―パ管に熱可塑性粉体塗料を部分的に塗装する方法では、塗装初期においてテ―パ管1の塗装境界部4でテ―パ管1の外周へ均一にエア―を吹き付けることにより塗装装置3の塗装ガン5,5からの熱可塑性粉体塗料6が該塗装境界部4の線外へ流出するのを防止してその塗装部分と他の部分との境界を明確に直線にできるような完壁な部分塗装が達成できるのである。
【0019】
このような塗装方法を実施するための装置としては、前記塗装装置3の一側面側には境界設定用基板8が、塗装装置3の外側面に設けた分離移動用シリンダ9により離接可能に取り付けられている。したがって、境界設定用基板8は分離移動用シリンダ9の制御により、塗装装置3が移動中でも独立して停止状態を継続することができると共に塗装装置3に接続されて追従することも可能である。
【0020】
そして、この境界設定用基板8にはテ―パ管倣い基板10が配置されており、該テ―パ管倣い基板10は上下左右に設けたガイドローラ11,11,…を介して境界設定用基板8の面上を移動可能となっている。
【0021】
7,7’は分割体からなるエア―ブロ―ジャケットであり、両エア―ブロ―ジャケット7,7’の内周からエア―が略均一に噴出するように構成されている。また一方のエア―ブロ―ジャケット7’にはシリンダー12,12が配置され、該シリンダー12,12から延びるロッド13,13は他方のエア―ブロ―ジャケット7に接続されており、このシリンダー12とロッド13とで分割されたエア―ブロ―ジャケット7,7’の連結部材を構成するものである。そして、シリンダー12,12を制御して両エア―ブロ―ジャケット7,7’を図2に示すようにテ―パ管1を包囲する閉鎖状態と図1に示すような開放状態に維持できるようにして前記テ―パ管倣い基板10にエア―ブロ―ジャケット7,7’が取り付けられている。
【0022】
また、前記他方のエア―ブロ―ジャケット7には倣い用ロ―ラ14,14が配置されており、該ロ―ラ14,14は両エア―ブロ―ジャケット7,7’が閉鎖状態にあるとき、テ―パ管1の外周面に当接するようになっている。したがって、テ―パ管1の回転時にテ―パ管1に振れが生じた場合にこの振れに応じて倣い用ロ―ラ14,14が上下左右に自在に移動する。これにより、テ―パ管1の外周と両エア―ブロ―ジャケット7,7’の内周との隙間は常に一定に維持される。
【0023】
なお、15は補助エア―ブロ―ノズルであり、該補助エア―ブロ―ノズル15は前記他方のエア―ブロ―ジャケット7の中央上部に設けられている。これによって塗装境界部4から流出しようとする熱可塑性粉体塗料6の向きを変えて元の部位に戻す動作を行い、塗装境界部4から熱可塑性粉体塗料6の流出の防止を更に補強する。
【0024】
前記加熱装置2と塗装装置3との連係は普通に知られている制御手段により、両装置が追従或いは各独立した移動,停止ができるようにしている。
【0025】
以上のような構成からなるテ―パ管に熱可塑性粉体塗料を部分的に塗装する装置において、両エア―ブロ―ジャケット7,7’は開放状態で塗装装置3に追従して移動することができると共に塗装境界部4では両エア―ブロ―ジャケット7,7’をテ―パ管1の外周で閉鎖状態にして停止させ、且つ、テ―パ管1の振れに対して倣い動作をしてテ―パ管1と両エア―ブロ―ジャケット7,7’との隙間を常に一定とし、両エア―ブロ―ジャケット7,7’から均一の強さと量のエアーをテ―パ管1の外表面に吹き付けることができ、これにより熱可塑性粉体塗料6の塗装境界部4からの流出を防止してその塗装部分と他の部分との境界を明確に直線にできるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明に係るテ―パ管に熱可塑性粉体塗料を部分的に塗装するためのスタート準備の状態の(a)は側面,(b)は正面の概略図である。
【図2】境界設定用基板を塗装境界部まで移動した状態の(a)は側面,(b)は正面の概略図である。
【図3】塗装作業中間時の状態の(a)は側面,(b)は正面の概略図である。
【図4】塗装作業終了時の状態の(a)は側面,(b)は正面の概略図である。
【符号の説明】
【0027】
1 テ―パ管
2 加熱装置
3 塗装装置
4 塗装境界部
6 熱可塑性粉体塗料
7,7’ エア―ブロ―ジャケット
8 境界設定用基板
10 テ―パ管倣い基板
12,13 連結部材
14 倣い用ロ―ラ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
テ―パ管に、送りコンベア上で部分的に熱可塑性粉体塗料を塗装する方法であって、テ―パ管をコンベア上で回転状態とし、そのテ―パ管の元口側を狭い範囲で加熱しながら塗装すべき部分を加熱装置が移動されると共に該加熱された部分を塗装装置が追従して移動されて部分塗装が行われる工程において、
塗装境界部に移動された加熱装置が塗装装置を従えながらテ―パ管の元口側へ移動されながらテ―パ管を加熱し、
テ―パ管の塗装境界部に塗装装置が到達した時点で、加熱装置の移動は継続しながら塗装装置を一旦停止させて、該塗装装置から熱可塑性粉体塗料をテ―パ管に吹き付けると共に、テ―パ管の加熱された塗装境界部で該テ―パ管の外周へ均一にエア―を吹き付けて塗装装置からの熱可塑性粉体塗料が前記境界部の線外へ流出するのを防止して塗装境界線を確立させ、
次いで塗装装置もテ―パ管の元口側へ移動させながら該塗装装置によりテ―パ管の部分塗装を完了させる、
ようにしたことを特徴とするテ―パ管に熱可塑性粉体塗料を部分的に塗装する方法。
【請求項2】
テ―パ管に、送りコンベア上で部分的に熱可塑性粉体塗料を塗装する装置であって、テ―パ管をコンベア上で回転状態とし、そのテ―パ管の元口側を狭い範囲で加熱する加熱装置と、加熱された部分を塗装する塗装装置を備えたものにおいて、
塗装装置に境界設定用基板を離接可能に取り付け、該境界設定用基板にテ―パ管倣い基板を上下左右に移動可能に取り付け、該倣い基板に2分割体からなるエア―ブロ―ジャケットを取り付け、前記2分割体はテ―パ管を包囲する閉鎖状態とテ―パ管から開放された開放状態を維持し得る連結部材により接続されていると共に一方の分割体にはテ―パ管の外周に当接される倣い用ロ―ラが取り付けられていることを特徴とするテ―パ管に熱可塑性粉体塗料を部分的に塗装する装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−142219(P2006−142219A)
【公開日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−336873(P2004−336873)
【出願日】平成16年11月22日(2004.11.22)
【出願人】(591051553)株式会社川熱 (5)
【Fターム(参考)】