説明

テラヘルツ波発生装置

【課題】良好なテラヘルツ波の出力特性を有し、良好なテラヘルツイメージングを可能にするテラヘルツ波発生装置を提供する。
【解決手段】テラヘルツ波を発生させるテラヘルツ波発生装置であって、電圧が印加された状態でパルス光の照射を受けるとテラヘルツ波を発生する光伝導スイッチアレイ11と、当該装置に入射されるパルス光を回折により光量の等しいパルス光に分岐させ、光伝導スイッチアレイ11に分岐されたパルス光を照射させるDOE(Diffractive Optical Element)9とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、テラヘルツ波発生装置のテラヘルツ波出力の均一性を高める技術及びそれを用いたテラヘルツイメージング装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、0.1〜10THzの周波数を有する電磁波、いわゆるテラヘルツ波の研究開発が盛んである。このテラヘルツ波は、電波のもつ透過性と光のもつ集光性とを有し、X線より安全な透過分析をすることができる。更には、多くの材料が、0.1〜10THzの周波数帯に固有の吸収スペクトルを有することから、テラヘルツ波を用いた透過分析により、材料、材質の特定が可能である。このため、テラヘルツ波はセキュリティ、バイオ、メディカル、食品加工、鮮度分析、産業応用などの分野で用いられることが期待されている。特にテラヘルツ波を用いて、被測定物をイメージングすることは、X線に変わる安全な透視技術として有望である。良好なイメージング特性を得るためには、テラヘルツエミッタが空間的に均一な出力であること、および、テラヘルツ検出系が空間的に均一な感度を有することが重要である。
【0003】
テラヘルツ波を発生させる代表的手段として、図19に示すような光伝導スイッチがある(例えば非特許文献1参照)。
【0004】
この光伝導スイッチでは、半絶縁性GaAs基板101(又は半絶縁性GaAs基板上に低温成長GaAsを形成した基板)上に金等により構成される電極102及び103が形成されている。電極102及び103には対向する凸部102A及び103Aがあり、これら凸部102A及び103Aは電磁波放射用のダイポールアンテナとなっている。電極102及び103には電圧源104が接続されている。電圧源104によりバイアス電圧が電極102及び103の間に印加されているが、電極間の半絶縁性GaAs基板101に自由キャリアがほとんど無いため、(光の無照射時には)電流は流れない。この凸部102A及び103Aの間にフェムト秒レーザ光105(波長約800nm、パルス幅約100fs)を照射すると、照射されたスポット106では自由キャリア(電子・正孔)が生じ、凸部102A及び103Aの間にパルス状電流が流れる。このパルス状電流により電磁波が発生し、主に半絶縁性GaAs基板101の裏面(電極102及び103が形成されていない面)から放射される。この電磁波の周波数は1〜2THzまで有し、所謂、テラヘルツ波となる。
【0005】
テラヘルツ波を用いた測定で信号対雑音比を向上させるためには、テラヘルツ波の出力が高いほうが望ましい。図19の構造をアレイ化することにより、高出力化することができる。その例(光伝導スイッチアレイ)を図20に示す。類似の構造は、例えば特許文献1に記載されている。
【0006】
この構造では、半絶縁性GaAs基板107(または半絶縁性基板に低温成長GaAsを成長させた基板)上に金等により構成される電極108及び109が形成されている。電極108及び109は凸部(108A〜108E、109A〜109E)を5組有し電磁波放射用の5組のダイポールアンテナとなっている。電極108及び109の間には電圧源110によりバイアス電圧が印加されている。凸部108A〜108E及び109A〜109Eの間にフェムト秒レーザ光111A〜111Eを照射すると、照射されたスポット112A〜112Eでは自由キャリア(電子・正孔)が生じ、電流が流れ、テラヘルツ波が放射される。従って、対向して配置された1組の凸部と、半絶縁性GaAs基板107とから1つの光伝導スイッチが構成される。テラヘルツ波の出力は、理想的には、(光伝導スイッチ1個あたりの出力)×(光伝導スイッチの数)2になる。光伝導スイッチの数の自乗になる理由は、電界強度が光伝導スイッチの数に比例するので、電力(∝電界強度の自乗)は光伝導スイッチの数の自乗となるからである。
【0007】
この従来の構造が適用されたテラヘルツイメージング装置の構成を図21に示す。
このテラヘルツイメージング装置では、チタンサファイア結晶を用いたフェムト秒レーザ1から出射されたレーザ光は、λ/2偏光板2で偏光方向の回転を受ける。これによって、レーザ光はs偏光成分とp偏光成分とを有する光となる(s偏光成分:p偏光成分=1:100)。これら二成分は偏光ビームスプリッタ3で分離された後、p偏光成分はポンプ光、s偏光成分はプローブ光となる。
【0008】
ポンプ光は、ミラー4で光路を変えた後、凹レンズ129とコリメートレンズ130とから構成されるビームエキスパンダーによりビーム径が拡大される。その後、マイクロレンズ131によりコリメータ光が光伝導スイッチアレイ11の各ダイポールに集められる。
【0009】
この照射より、光伝導スイッチアレイ11にテラヘルツ波が発生する。テラヘルツ波が被測定物12を通過するとき、被測定物12のテラヘルツ波の吸収、散乱により、テラヘルツ波は変調を受ける。すなわち、被測定物12をテラヘルツ波で画像化(イメージング)することになる。
【0010】
空間変調されたテラヘルツ波は、ポリエチレンレンズ13(ポリエチレンはテラヘルツ帯の電磁波を透過しレンズ作用を有する)により集光され、高抵抗Siウエハー14(高抵抗Siはテラヘルツ波を透過させ、800nm帯の光を反射するため、これらの光の結合に使用される)を通過した後、電気光学効果を有するZnTeウエハー15に結像する。
【0011】
一方プローブ光は、光路長を調整するミラー5で反射された後、ミラー6で光路を変え、凹レンズ7とコリメートレンズ8とによりビーム径が拡大される。拡大されたビームは高抵抗Siウエハー14によりテラヘルツ波と同一光路になり、ZnTeウエハー15に照射される。なお、テラヘルツ波とプローブ光とが同時にZnTeウエハー15に照射されるように、つまり重畳されるようにミラー5の光路長(ミラー5の位置)が調整されている。
【0012】
ZnTeウエハー15内部では、テラヘルツ波によりポッケルス効果が生じて複屈折を起こし、元々s波成分しかないプローブ光に、p波成分が追加される。その追加されたp波成分はテラヘルツ波の電界強度が大きいほど、大きくなる。従って、空間強度変調を受けたテラヘルツ波によって、プローブ光のp波成分が空間変調を受ける。偏光板16をp波成分のみ通過するようにすることで、イメージセンサ17に入射するプローブ光は、被測定物12のテラヘルツ透過量で変調されていることと等価になり、イメージセンサ17の出力像は被測定物12のテラヘルツイメージング像になる。
【0013】
一般にフェムト秒レーザ1から出射されるレーザ光の径はそれほど大きくない。このため、上記構成を有するテラヘルツイメージング装置では、ビームを拡大し、多くの照射位置に光を導くビームエキスパンダー、およびコリメータ光を各ダイポールに集めるマイクロレンズ131の配置が必要となる。
【特許文献1】特開2000−49402号公報
【非特許文献1】谷正彦、山口真理子、米良泰次郎、宮丸文章、山本晃司、萩行正憲、電子情報通信学会誌、vol.87 No.8 p.718 (2004)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかしながら、フェムト秒レーザ光の強度はビーム中心で強く周辺にいくほど弱くなるため、その拡大レーザ光も同様に中心が強く周辺ほど弱い。このため、照射されるビームの強度は、図20で示した光伝導スイッチアレイにおいて、スポット112Cで最も強く、周辺のスポット112A及び112Eで最も弱くなる。その結果、光伝導スイッチアレイを均一に励起することができず、光伝導スイッチアレイからのテラヘルツ波の出力が不均一になり、良好なテラヘルツ波の出力特性が得られない。とりわけ、テラヘルツイメージングのように、比較的大きな試料にテラヘルツ光を照射する場合などには、大きな問題となる。
【0015】
また同様に検出系においても、フェムト秒レーザ光のビーム拡大では、ビーム中央に比べて周辺にいくほどビームの強度が弱くなる。この結果、信号がノイズに埋もれやすく、感度が不均一になる。
【0016】
そこで、本発明は、かかる問題点に鑑み、良好なテラヘルツ波の出力特性を有し、良好なテラヘルツイメージングを可能にするテラヘルツ波発生装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記目的を達成するために、本発明のテラヘルツ装置は、テラヘルツ波を発生させる装置であって、電圧が印加された状態でパルス光の照射を受けるとテラヘルツ波を発生する第1光伝導スイッチ及び第2光伝導スイッチと、パルス光を回折により光量の略等しい第1パルス光及び第2パルス光に分岐させ、前記第1光伝導スイッチに前記第1パルス光を照射し、かつ前記第2光伝導スイッチに前記第2パルス光を照射させる光分岐手段とを備えることを特徴とする。ここで、前記光分岐手段は、DOE(Diffractive Optical Element)から構成されてもよい。
【0018】
この構造においては、各光伝導スイッチに照射されるパルス光の光量が一定であるため、各光伝導スイッチから放射されるテラヘルツ波の強度が等しくなり、光伝導スイッチアレイから出力されるテラヘルツ波の出力が均一になる。その結果、良好なテラヘルツ波の出力特性を有し、良好なテラヘルツイメージングを可能にするテラヘルツ波発生装置を実現できる。
【0019】
また、前記テラヘルツ波発生装置は、さらに、前記第1光伝導スイッチ及び第2光伝導スイッチに互いに独立な電圧を印加する電圧印加手段を備えてもよい。
【0020】
これにより、各光伝導スイッチに照射されるパルス光の強度の不均一性を考慮することなく、容易な電圧制御でテラヘルツ波の走査が可能となる。
【0021】
また、前記光分岐手段は、250〜850nmの波長域のパルス光を分岐する機能を有してもよい。
【0022】
一般にフェムト秒レーザは、チタンサファイア結晶を用いたものを使用されることが多い。チタンサファイアレーザは、750〜850nmの波長範囲で可変である。非線形光学結晶を用いれば、2次高調波(375〜425nm)、及び3次高調波(250〜283nm)も容易に得ることができる。従って、光分岐手段が上記波長帯に対応していれば、種々のテラヘルツ波発生装置に対応できるので、応用性が広いテラヘルツ波発生装置を実現できる。
【0023】
また、前記第1光伝導スイッチ及び第2光伝導スイッチの光照射を受ける部分は、GaAs、GaN、AlGaN、InGaN、AlInGaN、SiCのうちの少なくとも1つから構成されてもよい。
【0024】
これらの半導体材料は量産レベルにまで技術確立されている。従って、パルス光の入射強度の空間的均一性とあいまって、より良好なテラヘルツ性能を得ることが可能なテラヘルツ波発生装置を実現できる。
【0025】
また、テラヘルツ波を被測定物に照射して被測定物のイメージングを行う装置であって、上記テラヘルツ波発生装置を備えてもよい。
【0026】
これにより、各光伝導スイッチに入射されるパルス光の強度の不均一性が無くなり、被測定物に均一にテラヘルツ波が照射されるので、良好なテラヘルツイメージングが可能になり、良好なテラヘルツイメージング像を得ることができる。また、各光伝導スイッチに照射されるパルス光の強度の不均一性を考慮することなく容易な手段で、テラヘルツ波を特定位置に集中して照射し、走査できるので、画像の解像度、S/Nが向上する。
【0027】
また、前記テラヘルツイメージング装置は、さらに、プローブ光を発生する光源と、被測定物を透過又は反射した後のテラヘルツ波を前記プローブ光と重畳する重畳光学手段と、前記重畳されたテラヘルツ波とプローブ光とが入射され、前記テラヘルツ波の電界に応じて前記プローブ光の特定の物理量を変調する電気光学変調手段と、前記変調後のプローブ光を撮像するイメージセンサとを備え、前記テラヘルツイメージング装置は、テラヘルツ波を被測定物で走査してテラヘルツイメージングを行い、前記イメージセンサのフレーム時間は、前記テラヘルツ波の走査時間より長くてもよい。
【0028】
これにより、イメージセンサの1フレームの中にテラヘルツイメージング像すべてが取り込まれ、被測定物の全体像が見えるようになる。また、各光伝導スイッチに入射されるパルス光の強度の不均一性を考慮する必要がなくなるため、補正が不要になり、高速走査が可能になる。
【0029】
また、前記テラヘルツイメージング装置は、前記第1光伝導スイッチ及び前記第2光伝導スイッチに同一の電圧を印加し、テラヘルツ波を被測定物で走査することなく被測定物にテラヘルツ波を照射してテラヘルツイメージングを行った後、前記第1光伝導スイッチ及び前記第2光伝導スイッチに異なる電圧を印加し、テラヘルツ波を被測定物で走査してテラヘルツイメージングを行ってもよい。
【0030】
この手順でテラヘルツイメージングを行うことによりテラヘルツ像の解析が容易になる。
【0031】
また、前記テラヘルツイメージング装置は、さらに、前記プローブ光を光量の等しい複数の光に分岐し、前記プローブ光を拡大するプローブ光拡大手段を備えてもよい。
【0032】
これにより、プローブ光の強度が空間的に均一になり、画面の隅々まではっきりしたテラヘルツイメージング像が得られる。つまり、テラヘルツ検出感度が均一化する。
【0033】
また、前記プローブ光拡大手段は、前記イメージセンサの画素数に等しい数に前記プローブ光を分岐してもよい。
【0034】
これにより、イメージセンサの各画素に入力されるプローブ光の強度がほぼ等しくなり、良好なテラヘルツイメージング像を得ることができる。
【発明の効果】
【0035】
本発明によれば、良好なテラヘルツ波の出力特性を有し、良好なテラヘルツイメージングを可能にするテラヘルツ波発生装置を実現できる。その結果、鮮明なテラヘルツ画像が得られるテラヘルツイメージング装置を実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
以下、本発明の実施の形態におけるテラヘルツイメージング装置について、図面を参照しながら説明する。
【0037】
(第1の実施の形態)
図1は本実施の形態におけるテラヘルツイメージング装置の構成を示す図である。
【0038】
このテラヘルツイメージング装置では、チタンサファイア結晶を用いたフェムト秒レーザ1から出射されたレーザ光18(波長800nm、2mJ/パルス、1KHz、パルス幅120fs、p偏光)は、λ/2偏光板2で偏光方向の回転を受ける。これによって、レーザ光はs偏光成分とp偏光成分とを有する光となる(s偏光成分:p偏光成分=1:100)。これら二成分は偏光ビームスプリッタ3で分離された後、p偏光成分はポンプ光18A、s偏光成分はプローブ光18Bとなる。
【0039】
ポンプ光18Aは、ミラー4で光路を変えられた後、DOE(Diffractive Optical Element)9の回折現象によって、光量がほぼ等しい5本のポンプ光18A2に分岐される。5本のポンプ光18A2は、レンズ10(レンズ10の焦点はDOE9の位置)によって、ほぼ平行な5本のポンプ光18A3に変換された後、光伝導スイッチアレイ11に照射される。
【0040】
この照射より、光伝導スイッチアレイ11にテラヘルツ波19が発生する。DOE9により5本のポンプ光18A3はほぼ均一な光量の光となるため、出射テラヘルツ波19は空間的に均一なエネルギー分布となる。
【0041】
テラヘルツ波19が被測定物12を通過するとき、被測定物12のテラヘルツ波19の吸収、散乱により、テラヘルツ波19は変調を受ける。すなわち、被測定物12をテラヘルツ波19で画像化(イメージング)することになる。
【0042】
空間変調されたテラヘルツ波19Bは、ポリエチレンレンズ13(ポリエチレンはテラヘルツ帯の電磁波を透過しレンズ作用を有する)により集光され、高抵抗Siウエハー14(高抵抗Siはテラヘルツ波を透過させ、800nm帯の波長の光を反射するため、テラヘルツ波及びプローブ光の結合に使用される)を通過した後、電気光学効果を有するZnTeウエハー15に結像する。なお、ZnTeウエハー15は、本発明の電気光学変調手段の一例であり、電気光学効果を有する素子であればこれに限られない。
【0043】
一方プローブ光18Bは、光路長を調整するミラー5で反射された後、ミラー6で光路を変え、凹レンズ7とコリメートレンズ8とによりビーム径が拡大される。拡大されたプローブ光18B2は高抵抗Siウエハー14によりテラヘルツ波19Bと同一光路になり、ZnTeウエハー15に照射される。なお、テラヘルツ波19Bとプローブ光18B2とが同時にZnTeウエハー15に照射されるように、つまり重畳されるようにミラー5の光路長(ミラー5の位置)が調整されている。なお、ミラー5及び6、凹レンズ7、コリメートレンズ8、ポリエチレンレンズ13並びに高抵抗Siウエハー14は本発明の重畳光学手段の一例であり、テラヘルツ波19Bとプローブ光18B2とを重畳する光学素子の集合であればこれに限られない。
【0044】
ZnTeウエハー15内部では、テラヘルツ波19Bによりポッケルス効果が生じて複屈折を起こし、元々s偏光成分しかないプローブ光18B2に、p偏光成分が追加される。その追加されたp偏光成分はテラヘルツ波19Bの電界強度が大きいほど、大きくなる。従って、空間強度変調を受けたテラヘルツ波19Bによって、プローブ光18B2のp偏光成分が空間変調を受ける。偏光板16をp偏光成分のみ通過するようにすることで、イメージセンサ17に入射するプローブ光18B3は、被測定物12のテラヘルツ透過量で変調されていることと等価になり、イメージセンサ17の出力像は被測定物12のテラヘルツイメージング像になる。
【0045】
図2は、テラヘルツエミッタ部分の斜視図である。
このテラヘルツエミッタ部分は、DOE9、レンズ10、光伝導スイッチアレイ11及び外部回路11Dから構成されている。なお、このテラヘルツエミッタ部分は本発明のテラヘルツ波発生装置の一例である。
【0046】
光伝導スイッチアレイ11では、半絶縁性GaAs基板11E(厚み300μm)上にAu/Ni電極11B及び11Cが形成されている(厚み2000Å)。外部回路11Dにより、Au/Ni電極11B及び11Cの間にはバイアス電圧(約30V)が印加されている。Au/Ni電極11B及び11Cには相向かい合う5組の突起部11F及び11Gがあり、Au/Ni電極11B及び11Cにより5組のダイポールアンテナが形成されている。従って、対向して配置された1組の突起部11F及び11Gと、半絶縁性GaAs基板11Eとから1つの光伝導スイッチが構成される。向かいあう突起部11F及び11Gの間(ギャップ)の距離は5μmであり、隣り合うダイポールアンテナの間隔(隣り合う突起部の間隔)は100μmである。DOE9で分岐された光量の等しいポンプ光18A3が各ダイポールアンテナのギャップ部分に照射されるよう正確にレンズ10、Au/Ni電極11B及び11C、並びにDOE9はアライメントされている。各光伝導スイッチは、Au/Ni電極11B及び11Cの間に電圧が印加された状態でギャップ部分へのポンプ光18A3の照射を受けるとテラヘルツ波を発生する。
【0047】
なお、本発明の光分岐手段としてDOE9及びレンズ10を例示したが、プローブ光を回折により光量の略等しい複数のプローブ光に分岐させ、分岐されたプローブ光を各ダイポールアンテナのギャップ部分にそれぞれ照射させる光学系であればこれに限られない。
【0048】
図3はDOE9の斜視図である。図4(a)はDOE9のアレイ方向中央付近の断面図であり、図4(b)は図4(a)におけるDOE9の一部分を拡大した断面図である。
【0049】
今回、DOE9の基材9Aとして石英(厚さ500μm)を用いた。このDOE9には、図3及び4でわかるように、基材9A表面に多数の凹凸(高低差:数10〜数100nm)が形成されており、この凹凸は、巨視的には周期b=2860nmを有している。しかし、詳細に見た凹凸は、DOE9の中央付近と周辺付近で異なるため、周辺部の拡大図は図4(b)とは完全には一致しない。巨視的な凹凸の周期は、ポンプ光が各光伝導スイッチのギャップ部分に照射されるように、光伝導スイッチの配置に応じて決定され、例えば隣り合うダイポールアンテナの間隔と等しくされる。DOEの分岐メカニズムに関しては、例えばDonald C. O'Shea, Thomas J. Suleski, Alan D. Kathman, and Dennis W. Prather, "Diffractive Optics", SPIE PRESS, Tutorial Texts in Optical Engineering Volume TT62, Chapter 5.に詳しく述べられている。この文献によれば、分岐方向を表面法線方向からθmラジアンの方向とすると、
sin(θm)=m(λ/n)/b (式1)
が成立する。ここで、mは回折次数、λは入射光の波長、nはDOEの屈折率、bは巨視的な周期である。今回、b=2860nm、λ=800nm 、n=1.4より、回折の方向として、下記の[表1]に示す9本がある。
【0050】
【表1】

更に、基材9A表面における多数の高低差、具体的には凹凸の深さやデュティを細かく調整することにより、m=0、±1、±2の5本の出力のみ出力強度を強くすることができる。この結果、入力光を5本に分岐するDOE9が実現される。DOE9とレンズ10との距離を500μmとすることにより、100μm間隔の平行ポンプ光18A3が得られる。
【0051】
ここで、DOEによる均等な強度の光への分岐について図5〜8を参照して以下に詳細に述べる。図5(a)は回折格子により入射光が分岐される様子を示す図であり、図5(b)は光の強度の空間分布及び電界の時間変化を示す図である。図6及び7は光の強度の空間分布及び電界の時間変化を示す図である。図8は、回折格子の構成を示す図である。
【0052】
例えば周期Λを有する回折格子により、入射光が3つの光(P1、P2及びP3)に分岐されたとする(図5)。分岐された結果、光P1及び光P3の強度は等しく、光P2の半分であるとする。一般には分岐された光は同位相と考えられ、光P1、P2及びP3の電界は、それぞれ、
1=(A/√2)sinωt (式2)
2=Asinωt (式3)
3=(A/√2)sinωt (式4)
とおける。ここでωは入射光の角周波数、Aは定数である。なお、ここで√2とはルート2すなわち2の平方根(≒1.414・・・)を表す。
【0053】
DOEの役目は、簡単には部分的に(本場合はE2のみに)位相を変え合成することである。仮に、P2を位相差Φだけ付加する場合を考えると(図6)、式の上では以下の(式5)、(式6)及び(式7)になる。
1=(A/√2)sinωt (式5)
2=Asin(ωt−Φ) (式6)
3=(A/√2)sinωt (式7)
図5(b)と図6の場合を合成させると、図7のようになり、
1=(A/√2)sinωt+(A/√2)sinωt=(√2)・Asinωt
(式8)
2=Asinωt+Asin(ωt−Φ)=2cos(Φ/2)・Asin(ωt−Φ/2) (式9)
3=(A/√2)sinωt+(A/√2)sinωt=(√2)・Asinωt
(式10)
となる。従って、
2cos(Φ/2)=√2
∴Φ=π/2 (式11)
となれば、E1、E2及びE3の絶対値は等しくなる。すなわち、図7のように等しい強度の光P1、P2及びP3が得られる。続いて回折格子で位相差Φを付加する方法を述べる。
【0054】
図8のように、屈折率nを有する回折格子1001の凹凸に比べ、微小な凹凸部1004(深さh)を回折格子1001に付加する。この微小な凹凸部1004は、回折格子1001の凹凸のエッジから、入射光の波長の数倍、離れているものとする。なお、このように微小な凹凸部1004が付加された回折格子1001が本実施の形態におけるDOEとなる。DOEに入射した光のうち、微小な凹凸部1004近傍の2成分の光(光1002及び1003)を考える。光1002に比べ光1003は、距離hだけ多く屈折率nの材料中を通過する。したがって、光1002及び光1003には位相差Φが生じ、その値は
Φ=2πh/(λ/n)―2πh/λ=(2πh/λ)・(n−1) (式12)
となる。ここで、λは入射光の波長である。この微小な凹凸部1004は回折格子1001の凹凸のエッジから離れているので、光1002及び光1003は回折効果を受けずに直進すると考えてよい。すなわち、光1002及び光1003は合成され、E2のみに関与する。
【0055】
(式12)が(式11)を満たす場合は、
h=λ/[4(n−1)] (式13)
となる。例えばλ=800nmの入射光で屈折率1.5のDOEの場合はh=400nmの微小な凹凸部1004であればよい。このような設計にすることで、等しい強度の分岐光が得られるDOEを実現できる。
【0056】
以上は、DOEの役割を簡単に示したものである。実際は、位相差を与える微小な凹凸部は複雑であり、例えば、7×7に分岐する場合が、住友電工SEIテクニカルレビュー第162号71ページ(2003年3月)に詳細に記載されている。この文献はインターネットで入手可能である(http://www.sei.co.jp/tr/pdf/industrial/sei10354.pdf)。
【0057】
次に、図9を参照してDOEを用いた効果を示す。図9(a)は、従来のテラヘルツイメージング装置(レンズによりポンプ光を拡大する装置)による被測定物のイメージング結果である。図9(b)は、本実施の形態のテラヘルツイメージング装置(DOE9によりポンプ光を拡大する装置)による被測定物のイメージング結果である。なお、被測定物としては、穴径2mmのピンホールを用いた。
【0058】
従来のテラヘルツイメージング装置の場合、光伝導スイッチアレイ11に入射する光量は周辺のダイポールアンテナほど小さくなる。従って、テラヘルツ波の出力も周辺ほど弱くなる。この結果、被測定物の周辺ははっきりとテラヘルツイメージングすることが困難である(図9(a))。一方、DOE9を用いたテラヘルツイメージング装置の場合、光伝導スイッチアレイ11全体が均一にポンプ光に照射され、出射テラヘルツ波も均一となる。この結果、アレイ方向の画像はクリアになる(図9(b))。なお、本実施の形態のテラヘルツイメージング装置では光伝導スイッチアレイ11として光伝導スイッチが1次元方向にのみ配置された1次元光伝導スイッチアレイを用いているため、イメージング結果である画像(図9(a)及び図9(b))の上下方向がクリアではない。これは、光伝導スイッチアレイ11として光伝導スイッチが2次元方向に配置された2次元光伝導スイッチアレイを用いることにより、改善することができる。
【0059】
(第2の実施の形態)
図10は、本実施の形態におけるテラヘルツイメージング装置の構成を示す図である。
【0060】
このテラヘルツイメージング装置は、概ね、第1の実施の形態のテラヘルツイメージング装置と同じ構成である。異なる点は、テラヘルツエミッタ部が、ビームステアリング可能な構造になっていること、及びそのステアリングビームを検出できるようなレンズ構成になっている点である。
【0061】
このテラヘルツイメージング装置では、光伝導スイッチアレイ21から放射されたテラヘルツ波が被測定物12に集光され、かつ電気的に集光場所が動かされる。被測定物12を通過したテラヘルツ波は第1ポリエチレンレンズ13Aによってコリメート化され、第2ポリエチレンレンズ13BによってZnTeウエハー15に結像される。以降は、第1の実施の形態のテラヘルツイメージング装置と同じメカニズムにより、イメージセンサ17からテラヘルツイメージング像が得られる。
【0062】
図11は、テラヘルツエミッタ部分の斜視図である。
このテラヘルツエミッタ部分は、DOE9、レンズ10、光伝導スイッチアレイ21並びに外部回路21B2、21C2、21D2、21E2及び21F2から構成されている。
【0063】
光伝導スイッチアレイ21では、半絶縁性GaAs基板21A(厚み300μm)上にAu/Ni電極21B〜21Gが形成されている(厚み2000Å)。Au/Ni電極21B〜21Fには、独立に駆動できる外部回路21B2〜21F2が接続されている。Au/Ni電極21B〜21Gには相向かい合う5組の突起部21H及び21Iがあり、Au/Ni電極21B〜21Gにより5組のダイポールアンテナが形成されている。従って、対向して配置された1組の突起部21H及び21Iと、半絶縁性GaAs基板21Aとから1つの光伝導スイッチが構成される。向かいあう突起部21H及び21Iの間(ギャップ)の距離は5μmであり、隣り合うダイポールアンテナの間隔(隣り合う突起部の間隔)は100μmである。DOE9で分岐されたレーザ光が各ダイポールアンテナのギャップ部分に照射されるよう正確にレンズ10、Au/Ni電極21B〜21G、並びにDOE9はアライメントされている。なお、外部回路21B2〜21F2は本発明の電圧印加手段の一例である。
【0064】
図12は、外部回路21B2〜21F2の詳細な構成中を示す図である。
外部回路21B2〜21F2は、定常電源21B3〜21F3と正弦波電源21B4〜21F4とから構成されている。さらに正弦波電源21B4〜21F4は制御器21Hに接続されており、その正弦波の位相は制御器21Hにより制御可能である。
【0065】
Nan M. Froberg, Bin Bin Hu, Xi-Cheng Zhang, and David H. Auston, "Terahertz radiation from a Photoconductive Antenna Array", Journal of Quantum Electronics, vol.28 p.2291(1992).に示されているように、制御器21Hにより、正弦波電源21B4〜21F4の電圧や、正弦波電源間の位相差を適宜調整すれば、各ダイポールアンテナのAu/Ni電極21B〜21Gに互いに独立な電圧を印加し、光伝導スイッチアレイ21から放射されるテラヘルツ波の方向を、操作することが可能である。この文献によれば、例えば、電極間に印加するバイアスを正弦波状の空間強度変調を有するバイアスとした場合、その正弦波周期を変えることにより放射方向を変化できる。従って、電圧周期を空間的に調整すれば、レンズのようにテラヘルツ波を一点に集め、かつ動かすことも可能である。従来、光伝導スイッチアレイ21の各ギャップに入射する光の強度が不均一であったため、外部回路の調整が難しかった。しかし、今回、光伝導スイッチアレイ21の各ギャップに入射する光の強度が均一になったため、外部回路の制御が容易になる。
【0066】
以上のように本実施の形態のテラヘルツイメージング装置によれば、第1の実施の形態のテラヘルツイメージング装置に比べて、テラヘルツ波が被測定物12上に集光される。このように集光された光は強度が強いので、ノイズに埋もれることなく微弱なテラヘルツ波の強度変化も検出することが可能である。この結果、第1の実施の形態のテラヘルツイメージング装置に比べて、階調性の高いテラヘルツイメージング像を得ることができる。
【0067】
なお、本実施の形態のテラヘルツイメージング装置において、被測定物12でテラヘルツ波を走査してテラヘルツイメージングを行うとした。しかし、図13に示すフローチャートに従ってテラヘルツイメージングを行ってもよい。具体的には、まず、光伝導スイッチアレイ21の各ダイポールアンテナに同じ電圧を印加し(ステップS11)、テラヘルツ波を走査させずに被測定物12全体を一括してテラヘルツイメージングを行い、被測定物12全体のテラヘルツイメージング像をイメージセンサ17から得る(ステップS12)。次に、光伝導スイッチアレイ21の各ダイポールアンテナに異なる電圧、例えば位相の異なる正弦波の電圧を印加し(ステップS13)、必要部分のみ強度の強いテラヘルツ波を走査し、被測定物12の特定部分に対して高感度のテラヘルツイメージング像をイメージセンサ17から得る(ステップS14)。この場合には、被測定物12を詳細に調べることができる。
【0068】
また、本実施の形態のテラヘルツイメージング装置において、被測定物12上の集光点の走査時間がイメージセンサ17の1フレーム分の信号電荷の蓄積に要する1フレーム時間、つまり1フレームの撮像に要する時間より長いと、イメージセンサ17の1フレーム中には全体像は出力されない。例えば、被測定物12がピンホールである場合には、図14(a)に示されるようなイメージング結果が得られる。従って、集光点の走査時間、つまりテラヘルツ波の走査時間はイメージセンサ17の1フレーム時間より短くされる。その結果、イメージセンサ17の各フレームにはテラヘルツイメージング全体像を出力することが可能となる。例えば、被測定物12がピンホールである場合には、図14(b)に示されるようなイメージング結果が得られる。
【0069】
(第3の実施の形態)
図15は、本実施の形態におけるテラヘルツイメージング装置の構成を示す図である。
【0070】
このテラヘルツイメージング装置は、概ね、第1の実施の形態のテラヘルツイメージング装置と同じ構成である。異なる点は、プローブ光の拡大にレンズでなく、DOE31及びコリメートレンズ32を用いている点である。具体的には、凹レンズ7とコリメートレンズ8の代わりにDOE31及びコリメートレンズ32を用いている点である。なお、DOE31は本発明のプローブ光拡大手段の一例である。
【0071】
以上のように本実施の形態のテラヘルツイメージング装置によれば、プローブ光がDOE31により等しい光量の複数の光に分岐され、拡大される。従って、プローブ光の強度の面内均一性を向上させることができ、より良好なテラヘルツイメージング像を得ることができる。
【0072】
なお、本実施の形態のテラヘルツイメージング装置において、DOE31の分岐数(縦×横)は、イメージセンサ17の画素数(縦×横)と同じにされる。具体的には、イメージセンサ17にVGA用31万画素品を用い、DOE31による分岐は、縦480本×縦640本にされる。これにより、画素一つ一つのプローブ光強度が同じになり、より鮮明なテラヘルツ画像を得ることができる。
【0073】
(第4の実施の形態)
図16は、本実施の形態におけるテラヘルツイメージング装置の構成を示す図である。
【0074】
このテラヘルツイメージング装置は、概ね、第2の実施の形態のテラヘルツイメージング装置と同じ構成である。異なる点は、プローブ光の拡大にレンズでなく、DOE31及びコリメートレンズ32を用いている点である。具体的には、凹レンズ7とコリメートレンズ8の代わりにDOE31及びコリメートレンズ32を用いている点である。
【0075】
以上のように本実施の形態のテラヘルツイメージング装置によれば、プローブ光がDOE31により等しい光量の複数の光に分岐され、拡大される。従って、プローブ光の強度の面内均一性を向上させることができ、より良好なテラヘルツイメージング像を得ることができる。
【0076】
なお、本実施の形態のテラヘルツイメージング装置において、DOE31の分岐数(縦×横)は、イメージセンサ17の画素数(縦×横)と同じにされる。具体的には、イメージセンサ17にVGA用31万画素品を用い、DOE31による分岐は、縦480本×縦640本にされる。これにより、画素一つ一つのプローブ光強度が同じになり、より鮮明なテラヘルツ画像を得ることができる。
【0077】
以上、本発明のテラヘルツ波発生装置及びそれを用いたテラヘルツイメージング装置について、実施の形態に基づいて説明したが、本発明は、この実施の形態に限定されるものではない。本発明の要旨を逸脱しない範囲内で当業者が思いつく各種変形を施したものも本発明の範囲内に含まれる。
【0078】
例えば、上記実施の形態において、プローブ光及びポンプ光を発生する光源として波長800nmのフェムト秒レーザが用いられたが、非線形結晶(例えばBaB24)が用いられ、SHG(400nm)及びTHG(266nm)を発生させてもよい。この場合、それらの波長用のDOEが用いられる。例えば、250〜850nmの波長域のレーザ光を分岐する機能を有するDOEが用いられる。
【0079】
また、上記実施の形態において、光伝導スイッチアレイの光照射を受ける部分は、半絶縁性GaAsから構成されるとしたが、低温成長GaAs、InGaAs、GaN、AlGaN、InGaN、AlInGaN、SiC及びダイアモンドなどから構成されても同様な効果を得ることができる。
【0080】
また、上記実施の形態において、1次元的にポンプ光を分岐するDOEが用いられるとしたが、2次元的にポンプ光を分岐するDOEが用いられても同様な効果を得ることができる。すなわち、図17に示されるようなDOEが用いられてもよい。
【0081】
図17は、2次元的にポンプ光を分岐するDOEを有するテラヘルツエミッタ部分の斜視図である。
【0082】
このテラヘルツエミッタ部分は、DOE2009、レンズ2010、光伝導スイッチアレイ2011及び外部回路2011Dから構成されている。
【0083】
光伝導スイッチアレイ2011は、半絶縁性GaAs基板2011E(厚み300μm)上にAu/Ni電極2011B及び2011Cが形成されている(厚み2000Å)。半絶縁性GaAs基板2011E上には、Au/Ni電極2011B及び2011Cが上下方向に3ペア形成されている。各ぺアは左右方向に5個の光伝導スイッチ(図中では相向かい合う5組の突起部2011F及び2011G)を形成している。したがって、光伝導スイッチアレイ2011は、5個/ペア×3ペア=15個の光伝導スイッチが2次元アレイ状に並んだものである。外部回路2011Dにより、Au/Ni電極2011B及び2011Cの間にはバイアス電圧(約30V)が印加されている。各光伝導スイッチ(ダイポールアンテナ)の向かいあう突起部2011F及び2011Gの間(ギャップ)の距離は5μmであり、隣り合う光伝導スイッチ(ダイポールアンテナ)の間隔(隣り合う突起部の間隔)は100μmである。DOE2009で15本に分岐されたポンプ光2018A2及び2018A3が各ダイポールアンテナのギャップ部分に照射されるよう正確にレンズ2010、Au/Ni電極2011B及び2011C、並びにDOE2009はアライメントされている。
【0084】
なお、上記第1〜第4の実施形態におけるテラヘルツイメージング装置について、光伝導スイッチアレイの構成として例えば図18(a)のように1つの基板2101上に1対の対向電極2102及び2103を有するものを複数個組み合わせて用いてもよいし、図18(b)のように1つの基板2111上に複数対の対向電極2112及び2113を有するものを用いてもよい。また、図18(c)のように1つの基板2121上に複数対の対向電極2122及び2123を有し、別の基板2131上に1対の対向電極2132及び2133を有するものを組み合わせて用いてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0085】
本発明は、テラヘルツ波発生装置に利用でき、特に非破壊測定、医療、バイオ、農業、食品、環境などの分野に用いられるテラヘルツ波発生装置に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0086】
【図1】本発明の第1の実施の形態におけるテラヘルツイメージング装置の構成を示す図である。
【図2】同実施の形態におけるテラヘルツイメージング装置のテラヘルツエミッタ部分の斜視図である。
【図3】DOEの斜視図である。
【図4】(a)DOEのアレイ方向中央付近の断面図である。(b)DOEの一部分を拡大した断面図(図4(a)の一部分を拡大した断面図)である。
【図5】(a)回折格子により入射光が分岐される様子を示す図である。(b)光の強度の空間分布及び電界の時間変化を示す図である。
【図6】光の強度の空間分布及び電界の時間変化を示す図である。
【図7】光の強度の空間分布及び電界の時間変化を示す図である。
【図8】回折格子の構成を示す図である。
【図9】(a)従来のテラヘルツイメージング装置による被測定物のイメージング結を示す図である。(b)同実施の形態のテラヘルツイメージング装置による被測定物のイメージング結果を示す図である。
【図10】本発明の第2の実施の形態におけるテラヘルツイメージング装置の構成を示す図である。
【図11】同実施の形態におけるテラヘルツイメージング装置のテラヘルツエミッタ部分の斜視図である。
【図12】外部回路の詳細な構成を示す図である。
【図13】同実施の形態におけるテラヘルツイメージング装置のテラヘルツイメージング手順の変形例を示すフローチャートである。
【図14】(a)従来のテラヘルツイメージング装置による被測定物のイメージング結果を示す図である。(b)同実施の形態のテラヘルツイメージング装置による被測定物のイメージング結果を示す図である。
【図15】本発明の第3の実施の形態におけるテラヘルツイメージング装置の構成を示す図である。
【図16】本発明の第4の実施の形態におけるテラヘルツイメージング装置の構成を示す図である。
【図17】本発明の実施の形態におけるテラヘルツイメージング装置のテラヘルツエミッタ部分の変形例の斜視図である。
【図18】本発明の実施の形態におけるテラヘルツイメージング装置のテラヘルツエミッタ部分の、他の一例を示す斜視図である。
【図19】従来の光伝導スイッチの概観構成を示す図である。
【図20】従来の光伝導スイッチアレイの概観構成を示す図である。
【図21】従来のテラヘルツイメージング装置の構成を示す図である。
【符号の説明】
【0087】
1 フェムト秒レーザ
2 λ/2偏光板
3 偏光ビームスプリッタ
4、5、6 ミラー
7、129 凹レンズ
8、32、130 コリメートレンズ
9、31、2009 DOE
9A 基材
10、2010 レンズ
11、21、2011 光伝導スイッチアレイ
11B、11C、21B、21C、21D、21E、21F、21G、21H、21I、2011B、2011C Au/Ni電極
11D、21B2、21C2、21D2、21E2、21F2、2011D 外部回路
11E、21A、101、107、2011E 半絶縁性GaAs基板
11F、11G、21H、21I、2011F、2011G 突起部
12 被測定物
13 ポリエチレンレンズ
13A 第1ポリエチレンレンズ
13B 第2ポリエチレンレンズ
14 高抵抗Siウエハー
15 ZnTeウエハー
16 偏光板
17 イメージセンサ
18 レーザ光
18A、18A2、18A3、2018A2、2018A3 ポンプ光
18B、18B2、18B3 プローブ光
19、19B テラヘルツ波
21B3、21C3、21D3、21E3、21F3 定常電源
21B4、21C4、21D4、21E4、21F4 正弦波電源
21H 制御器
102、103、108、109 電極
102A、103A、108A、108B、108C、108D、108E、109A、109B、109C、109D、109E 凸部
104、110 電圧源
105、111A、111B、111C、111D、111E フェムト秒レーザ光
106、112A、112B、112C、112D、112E スポット
1001 回折格子
1002、1003 光
1004 凹凸部
2101、2111、2121、2131 基板
2102、2103、2112、2113、2122、2123、2132、2133 対向電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
テラヘルツ波を発生させる装置であって、
電圧が印加された状態でパルス光の照射を受けるとテラヘルツ波を発生する第1光伝導スイッチ及び第2光伝導スイッチと、
パルス光を回折により光量の略等しい第1パルス光及び第2パルス光に分岐させ、前記第1光伝導スイッチに前記第1パルス光を照射し、かつ前記第2光伝導スイッチに前記第2パルス光を照射させる光分岐手段とを備える
ことを特徴とするテラヘルツ波発生装置。
【請求項2】
前記テラヘルツ波発生装置は、さらに、前記第1光伝導スイッチ及び第2光伝導スイッチに互いに独立な電圧を印加する電圧印加手段を備える
ことを特徴とする請求項1に記載のテラヘルツ波発生装置。
【請求項3】
前記光分岐手段は、250〜850nmの波長域のパルス光を分岐する機能を有する
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のテラヘルツ波発生装置。
【請求項4】
前記第1光伝導スイッチ及び第2光伝導スイッチの光照射を受ける部分は、GaAs、GaN、AlGaN、InGaN、AlInGaN、SiCのうちの少なくとも1つから構成される
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のテラヘルツ波発生装置。
【請求項5】
前記光分岐手段は、DOE(Diffractive Optical Element)から構成される
ことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のテラヘルツ波発生装置。
【請求項6】
テラヘルツ波を被測定物に照射して被測定物のイメージングを行う装置であって、
請求項1〜5のいずれか1項に記載のテラヘルツ波発生装置を備える
ことを特徴とするテラヘルツイメージング装置。
【請求項7】
前記テラヘルツイメージング装置は、さらに、
プローブ光を発生する光源と、
被測定物を透過又は反射した後のテラヘルツ波を前記プローブ光と重畳する重畳光学手段と、
前記重畳されたテラヘルツ波とプローブ光とが入射され、前記テラヘルツ波の電界に応じて前記プローブ光の特定の物理量を変調する電気光学変調手段と、
前記変調後のプローブ光を撮像するイメージセンサとを備え、
前記テラヘルツイメージング装置は、テラヘルツ波を被測定物で走査してテラヘルツイメージングを行い、
前記イメージセンサのフレーム時間は、前記テラヘルツ波の走査時間より長い
ことを特徴とする請求項6に記載のテラヘルツイメージング装置。
【請求項8】
前記テラヘルツイメージング装置は、前記第1光伝導スイッチ及び前記第2光伝導スイッチに同一の電圧を印加し、テラヘルツ波を被測定物で走査することなく被測定物にテラヘルツ波を照射してテラヘルツイメージングを行った後、前記第1光伝導スイッチ及び前記第2光伝導スイッチに異なる電圧を印加し、テラヘルツ波を被測定物で走査してテラヘルツイメージングを行う
ことを特徴とする請求項7に記載のテラヘルツイメージング装置。
【請求項9】
前記テラヘルツイメージング装置は、さらに、前記プローブ光を光量の等しい複数の光に分岐し、前記プローブ光を拡大するプローブ光拡大手段を備える
ことを特徴とする請求項7に記載のテラヘルツイメージング装置。
【請求項10】
前記プローブ光拡大手段は、前記イメージセンサの画素数に等しい数に前記プローブ光を分岐する
ことを特徴とする請求項9に記載のテラヘルツイメージング装置。
【請求項11】
前記第1光伝導スイッチと前記第2光伝導スイッチとは、1つの基板上に形成されている
ことを特徴とする請求項1に記載のテラヘルツ波発生装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2008−277565(P2008−277565A)
【公開日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−119712(P2007−119712)
【出願日】平成19年4月27日(2007.4.27)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】