説明

テレビ信号送受信システム及び監視装置

【課題】テレビ信号をミリ波帯にアップコンバートして無線伝送するテレビ信号送受信システムにおいて、テレビ信号伝送用の電波を侵入検出用として利用することにより、セキュリティシステムを簡単且つ低コストに構築できるようにする。
【解決手段】テレビ信号をミリ波帯にアップコンバートして送信する送信装置と、送信装置からの送信電波を受信してテレビ信号を復元する受信装置とを備えたシステムに、送信装置からの送信電波を受信して送信装置からテレビ信号と一緒に送信されたパイロット信号を抽出する受信部70を備えた監視装置60を設ける。監視装置60には操作部80が設けられており、操作部80から監視指令が入力されると、制御部64が、パイロット信号の信号レベルから室内に人が侵入したか否かを判定し、人の侵入を検知すると、警報機66から警報音を発生し、送受信機68から外部装置にその旨を通知する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、テレビ信号をミリ波帯にアップコンバートして建造物内の受信端末まで無線伝送するテレビ信号送受信システム、及び、このシステムにおいて建造物内への不正侵入を監視する監視装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、テレビ共同受信システムの加入者宅内に、テレビ共同受信システムにて配信されたテレビ信号をミリ波帯にアップコンバートして無線送信する送信装置を設置し、加入者宅のテレビ受信機器には、その送信装置からの送信電波を受信してダウンコンバートすることより元のテレビ信号を復元する受信装置を接続するようにしたテレビ信号送受信システムが知られている(例えば、特許文献1等参照)。
【0003】
このテレビ信号送受信システムによれば、建造物内の各部屋の天井等に送信装置を設け、その部屋に設置されるテレビ受信機器に受信装置を設けることで、室内にテレビ信号伝送用の伝送線を引き回すことなく、テレビ受信機器にテレビ信号を伝送できるようになるため、テレビ受信機器の設置や配置変更を簡単に行うことができる。
【0004】
ところで、この種のテレビ信号送受信システムが構築される一般家庭では、留守中や就寝中に泥棒が侵入するのを防止するために、玄関や勝手口等、不審者が侵入し易い経路に侵入センサを設置し、この侵入センサにて何者かの不正侵入が検出されると、威嚇用の警報音を発したり、異常を住人に通知する、セキュリティシステムが構築されることがある。
【0005】
このセキュリティシステムにおいては、監視領域や検出感度の設定のし易さなどから、侵入センサとして、電磁波(赤外線や電波)を監視対象領域に放射し、監視対象領域を通過(或いは反射)した電磁波を受信することにより、物体の移動を検知する、電磁波送受信タイプのものを使用するのが一般的である(例えば、特許文献2等参照)。
【特許文献1】特開2003−168986号公報
【特許文献2】特開2005−316549号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、この電磁波送受信タイプの侵入センサは、電磁波の送信部と受信部とから構成されることから、比較的高価であり、また設置が面倒であるという問題があった。特に、建造物内の各部屋毎に侵入者を監視できるようにするために、各部屋毎に侵入センサを設置するには、費用が嵩むことから、一般家庭で、各部屋毎に侵入者を監視し得るセキュリティシステムを構築することは難しいという問題があった。
【0007】
本発明はこうした問題に鑑みなされたものであり、テレビ信号をミリ波帯にアップコンバートして建造物内の受信端末まで無線伝送するテレビ信号送受信システムにおいて、テレビ信号伝送用のミリ波帯の電波を侵入検出用の電磁波として利用することにより、従来の電磁波送受信タイプの侵入センサを用いることなく、簡単に且つ低コストでセキュリティシステムを構築できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
かかる目的を達成するためになされた請求項1に記載の発明は、テレビ信号をミリ波帯へアップコンバートして建造物内に無線送信する送信装置と、前記建造物内に設置され、前記送信装置からの送信電波を受信してダウンコンバートすることにより、前記テレビ信号を復元する受信装置と、を備えたテレビ信号送受信システムにおいて、前記送信装置からの送信電波を受信し、該受信信号のレベル変化から前記建造物内での物体の移動を検知して報知する監視装置を設けたことを特徴とする。
【0009】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のテレビ信号送受信システムにおいて、前記送信装置は、前記テレビ信号と一定周波数のパイロット信号とをアップコンバートして無線送信するよう構成され、前記監視装置は、前記受信信号をダウンコンバートすることにより、前記パイロット信号を抽出し、該パイロット信号のレベル変化から前記建造物内での物体の移動を検知することを特徴とする。
【0010】
一方、請求項3に記載の発明は、テレビ信号をミリ波帯へアップコンバートして建造物内に無線送信する送信装置からの送信電波に基づき、前記建造物内への不正侵入を監視する監視装置であって、前記送信装置からの送信電波を受信し、該受信信号の信号レベルを検出するミリ波受信手段と、該ミリ波受信手段にて検出された受信信号の信号レベルに基づき、前記建造物内で物体が移動した否かを判定する判定手段と、該判定手段にて物体の移動が判定されると、その旨を報知する報知手段と、を備えたことを特徴とする。
【0011】
次に、請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の監視装置において、前記ミリ波受信手段は、前記受信信号をダウンコンバートすることにより、一定周波数のパイロット信号を抽出し、該パイロット信号の信号レベルを検出することを特徴とする。
【0012】
また次に、請求項5に記載の発明は、請求項3又は請求項4に記載の監視装置において、前記ミリ波受信手段、前記判定手段、及び、前記報知手段を備え、前記建造物内の監視対象領域に設置されて該監視対象領域での物体の移動を検知する装置本体と、前記監視対象領域の外に配置されて、前記装置本体を遠隔操作によって起動/停止させる操作部と、を備えたことを特徴とする。
【0013】
また、請求項6に記載の発明は、請求項5に記載の監視装置において、前記操作部は、操作者から識別用の情報を取得する情報取得手段を備え、前記装置本体は、該情報取得手段にて取得された情報が予め登録された使用者固有の情報であるとき、前記操作部からの指令に従い起動/停止することを特徴とする。
【0014】
また、請求項7に記載の発明は、請求項3〜請求項6の何れかに記載の監視装置において、前記報知手段は、前記判定手段にて物体の移動が判定されると、該判定結果を、報知用の外部機器に無線にて送信することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
請求項1に記載のテレビ信号送受信システムには、送信装置からの送信電波を受信してテレビ信号を復元する受信装置とは別に、送信装置からの送信電波を受信し、その受信信号のレベル変化から建造物内での物体の移動を検知して報知する監視装置が設けられている。
【0016】
このため、本発明のテレビ信号送受信システムによれば、建造物内で送信装置からの送信電波が届く領域内に監視装置を設置し、監視装置を動作させれば、その電波が伝送される空間内で物体が動いたときに、監視装置がその旨を検知して報知することになる。
【0017】
よって、本発明のテレビ信号送受信システムによれば、侵入検出用の電磁波を送信する送信機を別途設けることなく、建造物内で不審者の不正侵入を監視するセキュリティシステムを実現できることになり、セキュリティシステムを簡単且つ低コストで構築することが可能となる。
【0018】
なお、監視装置による物体移動(換言すれば不正侵入)の報知は、警報音を発生するだけでも、或いは、所定の通信回線を使って使用者等に通知するだけでもよいが、より好ましくは、警報音の発生と使用者等への通知との両方を行うようにするとよい。
【0019】
ここで、監視装置は、送信装置からの送信電波を受信し、その受信信号のレベル変化から物体の移動を検知することから、送信装置からの送信電波にレベル変動が生じると、物体の移動(換言すれば不審者の不正侵入)を誤検出してしまうことがある。
【0020】
このため、監視装置が物体の移動を判定するのに使用する信号は、できるだけレベル変動がないものにする必要があるが、送信装置がミリ波帯にアップコンバートするテレビ信号は、放送局側の都合によって停波することがあり、また、放送局からの送信電波が受信点に届くまでのマルチパス等によってレベル変動することがある。
【0021】
そこで、請求項2に記載のように、送信装置が、テレビ信号と一定周波数のパイロット信号とをアップコンバートして無線送信するように構成されている場合には、監視装置は、受信信号をダウンコンバートすることによりパイロット信号を抽出し、そのパイロット信号のレベル変化から、建造物内での物体の移動を検知するようにするとよい。
【0022】
つまり、テレビ信号をミリ波帯にアップコンバートして送受信するシステムでは、受信装置側で元のテレビ信号を正確に復元できるようにするために、送信装置側で、テレビ信号と一緒に一定周波数のパイロット信号をアップコンバートして、送信することが知られているが、このパイロット信号は、テレビ信号の停波若しくはマルチパスの影響を受けてレベル変動することがない。
【0023】
このため、請求項2に記載のように、監視装置側では、このパイロット信号を利用して物体の移動を検知するようにすれば、建造物内への不審者の不正侵入を正確に判定して、周囲或いは使用者等に報知することができるようになる。
【0024】
次に、請求項3に記載の監視装置においては、ミリ波受信手段が、テレビ信号送受信システムを構成している送信装置からの送信電波を受信し、その受信信号の信号レベルを検出する。すると、判定手段が、その検出された受信信号の信号レベルに基づき、建造物内で物体が移動した否かを判定し、判定手段にて物体の移動が判定されると、報知手段が、その旨を報知する。
【0025】
従って、本発明の監視装置によれば、請求項1に記載のテレビ信号送受信システムと同様、侵入検出用の電磁波を送信する送信機を別途設けることなく、建造物内で不審者の不正侵入を監視するセキュリティシステムを実現できることになり、セキュリティシステムを簡単且つ低コストで構築することが可能となる。
【0026】
また次に、請求項4に記載の監視装置においては、ミリ波受信手段が、受信信号をダウンコンバートすることにより、一定周波数のパイロット信号を抽出し、そのパイロット信号の信号レベルを検出する。
【0027】
従って、この監視装置によれば、請求項2に記載のテレビ信号受信システムと同様、 建造物内への不審者の不正侵入を、より正確に判定することができるようになる。
ところで、本発明の監視装置は、使用者が監視対象領域にいるときに動作させると、使用者の動きを不正侵入と判定して、その旨を報知することになるので、使用者が監視対象領域にいないときにだけ動作させる必要がある。
【0028】
そして、このためには、使用者が監視装置の起動/停止を自由に切り換えることができるようにする必要があるが、その切り換え用の操作部(操作スイッチ)を監視装置に直接設けると、使用者がその操作部を操作する際に、監視装置が物体の移動を検知してしまうことになる。
【0029】
そこで、監視装置は、請求項5に記載のように、装置本体と操作部とから構成し、操作部を、装置本体が設置される監視対象領域の外に配置するようにするとよい。つまり、このようにすれば、使用者が操作部を操作した際に、装置本体が使用者の動きを不正侵入として誤検出してしまうのを防止できる。
【0030】
なお、この場合、操作部は、使用者以外の者(つまり不正侵入者)が操作できないようにする必要があり、このためには、請求項6に記載のように、操作部には、操作者から識別用の情報を取得する情報取得手段を設け、装置本体は、この情報取得手段にて取得された情報が予め登録された使用者固有の情報であるときに、操作部からの指令に従い起動/停止するように構成することが望ましい。
【0031】
つまり、監視装置をこのように構成すれば、操作部の操作者が予め登録された使用者であるときに限って、操作部からの指令に従い監視装置(装置本体)が起動/停止することになるため、使用者以外の者が監視装置を不正に起動/停止させるのを防止できる。
【0032】
また、報知手段は、請求項7に記載のように、判定手段にて物体の移動が判定されると、その判定結果を、報知用の外部機器に無線で送信するようにしてもよい。そして、このようにすれば、報知手段を、報知用の外部機器を使って使用者等に不正侵入を通知するように構成する際、監視装置と報知用の外部機器とを通信線で接続する必要がないため、監視装置を所望の場所に簡単に設置することができるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
以下に本発明の一実施形態を図面と共に説明する。
図1は、本発明が適用されたテレビ信号送受信システム全体の構成を表すブロック図である。
【0034】
図1に示すように、本実施形態のテレビ信号送受信システムは、建造物の屋根上に設置されたBS/CSアンテナ2及びUHFアンテナ4により、BS/CS放送及び地上デジタル放送のテレビ放送電波を受信し、各アンテナ2、4から出力される受信信号を、混合器6、増幅器8、分配器9等が設けられた伝送路(同軸ケーブル)を介して、建造物内の各部屋まで伝送する共同受信システムの端末側で利用されるものであり、同軸ケーブルを介して各部屋まで伝送されてきたテレビ放送の受信信号(テレビ信号)を、ミリ波帯に周波数変換(アップコンバート)して、室内に無線送信する送信装置10と、送信装置10と同じ室内に設けられ、この送信装置10からの送信電波を受信し、その受信信号を周波数変換(ダウンコンバート)することにより、元のテレビ信号を復元する受信装置30とから構成されている。なお、この受信装置30にて復元されたテレビ信号は、テレビ受像機や録画装置等のテレビ受信機器100に入力される。
【0035】
また、本実施形態のテレビ信号送受信システムには、送信装置10からの送信電波を受信することにより、送信装置10が設けられた室内に不正に侵入してきた侵入者を検知して、警報を発する監視装置60も準備されており、この監視装置60を、送信装置10が設置された所望の部屋に設けることにより、建造物内の所望の部屋で、室内への不正侵入を検知できるようになっている。
【0036】
次に、送信装置10、受信装置30、及び、監視装置60について説明する。
まず図2は、送信装置10の構成を表すブロック図である。
図2に示すように、送信装置10には、上記各アンテナ2、4からの受信信号よりも周波数が低い一定周波数(例えば300MHz)のパイロット信号を発生する発振器(パイロット発振器)12が設けられている。そして、このパイロット発振器12が発生したパイロット信号は、混合回路14により、同軸ケーブルを介してアンテナ2、4側から伝送されてきた受信信号と混合され、増幅回路16にて所定レベルまで増幅される。
【0037】
また、送信装置10には、混合回路14にてパイロット信号が混合された受信信号をミリ波帯(例えば60GHz帯)にアップコンバートするのに必要な一定周波数のミリ波信号を発生する発振器(ミリ波発振器)18が設けられている。そして、このミリ波発振器18が発生したミリ波信号は、混合回路14からの受信信号と共に、ミキサ20に入力される。この結果、ミキサ20からは、受信信号をミリ波信号でアップコンバートした信号が出力される。
【0038】
また、ミキサ20からの信号出力経路には、ミキサ20からの出力信号のうち、ミリ波帯にアップコンバートされた受信信号のみを選択的に通過させるバンドパスフィルタ(以下、BPFと記載する)22が設けられており、このBPF22を通過したミリ波帯の受信信号は、増幅回路24にて増幅された後、送信アンテナ26に入力され、送信アンテナ26から電波として放射される。
【0039】
次に、図3は、受信装置30の構成を表すブロック図である。
図3に示すように、受信装置30には、送信装置10の送信アンテナ26から放射されたミリ波帯の電波を受信するための受信アンテナ32が設けられている。そして、この受信アンテナ32からの受信信号は、送信装置10にてミリ波帯にアップコンバートされた受信信号のみを選択的に通過させるBPF34を介して、増幅回路36に入力され、この増幅回路36で所定レベルまで増幅された後、ダウンコンバート用のミキサ40に入力される。
【0040】
また、受信装置30には、増幅回路36から出力されるミリ波帯の受信信号をダウンコンバートするのに必要なミリ波信号を発生する発振器(ミリ波発振器)38が設けられており、このミリ波発振器38が発生したミリ波信号もミキサ40に入力される。この結果、ミキサ40からは、受信信号をミリ波信号でダウンコンバートした信号が出力される。
【0041】
なお、ミリ波発振器38の発振周波数は、送信装置10側のミリ波発振器38の発振周波数とは若干異なる周波数(例えば、1.5GHz程度異なる周波数)に設定されている。
【0042】
次に、ミキサ40からの信号出力経路には、ミキサ40からの出力信号のうち、アンテナ2、4からの受信信号(つまりテレビ信号)のみを選択的に通過させるBPF42と、この受信信号と混合されたパイロット信号のみを選択的に通過させるBPF44とが設けられている。
【0043】
また、受信装置30には、送信装置10に設けられたパイロット発振器12と同じ周波数で発振するパイロット発振器46が設けられており、このパイロット発振器46が発生したパイロット信号と、BPF44を通過したパイロット信号は、ミキサ48に入力される。
【0044】
ミキサ48は、送信装置10側のミリ波発振器18と、受信装置30側のミリ波発振器38との発振周波数の差の周波数(例えば、1.5GHz程度の信号)を有する補正信号を生成するためのものであり、このミキサ48からの出力は、補正信号のみを選択的に通過させるBPF50を介して、増幅回路52に入力され、増幅回路52にて所定レベルまで増幅された後、ミキサ54に入力される。
【0045】
このミキサ54には、BPF42を通過した受信信号も入力される。この結果、ミキサ54では、受信信号の周波数が、送信装置10側でアップコンバートする前の元の周波数に正確に補正されることになる。そして、この周波数補正後の受信信号は、受信信号のみを選択的に通過させるBPF56を介して、テレビ受信機器100へ出力される。
【0046】
このように、本実施形態のテレビ信号送受信システムにおいては、送信装置10から一定周波数のパイロット信号を送信することにより、受信装置30側で、このパイロット信号を使って、送信装置10側でアップコンバートされる前の元の受信信号(テレビ信号)を正確に復元できるようにされている。
【0047】
次に、図4は、監視装置60の構成を表すブロック図である。
図4に示すように、監視装置60は、送信装置10の送信アンテナ26から放射されたミリ波帯の電波を受信するための受信アンテナ62と、この受信アンテナ62からの受信信号をダウンコンバートすることにより、パイロット信号を抽出し、そのパイロット信号の信号レベルを検出するミリ波受信部70と、ミリ波受信部70にて検出されたパイロット信号の信号レベルに基づき、当該監視装置60が設置された室内で物体が移動したかどうかを監視する、マイクロコンピュータからなる制御部64と、この制御部64が室内で物体が移動したと判断したとき(つまり、室内に侵入者がいると判断したとき)に警報音を発生するための警報機66と、制御部64が室内に侵入者がいると判断したときその旨を外部機器に無線で通報したり、外部機器からの指令信号を受信するための送受信機68と、制御部64を動作させて室内を監視するか否かを手動で設定するための操作部80と、から構成されている。
【0048】
また、ミリ波受信部70は、受信アンテナ62からの受信信号の中から、送信装置10にてミリ波帯にアップコンバートされたパイロット信号を選択的に通過させるBPF71と、BPF71を通過したミリ波帯のパイロット信号を所定レベルまで増幅する増幅回路72と、送信装置10のミリ波発振器18と同じ周波数で発振するミリ波発振器73と、このミリ波発振器73が発生したミリ波信号と増幅回路72で増幅されたミリ波帯のパイロット信号とを混合することにより、パイロット信号を、送信装置10側でアップコンバートされる前の元の周波数帯に周波数変換するミキサ74と、ミキサ74にて周波数変換されたパイロット信号を選択的に通過させるBPF75と、BPF75を通過したパイロット信号を振幅検波することにより、そのパイロット信号の信号レベルに応じた電圧信号を発生する検波回路76とから構成されており、この検波回路76からの電圧信号(検波電圧)が、パイロット信号の信号レベルを表す検出信号として制御部64に入力される。
【0049】
なお、BPF71、75は、ダウンコンバート前/後のパイロット信号をそれぞれ通過させるためのものであるが、送信装置10側のミリ波発振器18や監視装置60側のミリ波発振器73の発振周波数に誤差があってもパイロット信号を通過させることができるように、その通過帯域幅は、数十〜数百MHzに設定されている。
【0050】
一方、操作部80には、制御部64を起動又は停止させる指令を入力するための操作スイッチ82と、操作スイッチ82の操作者から指紋を採取するための指紋センサ84と、制御部64が室内を監視中であるか否かを表示するための動作表示ランプ86と、指紋センサ84にて採取された指紋データから操作者が予め登録された使用者であることが確認されたときに点灯される操作許可ランプ88と、が設けられており、操作スイッチ82及び指紋センサ84からの入力信号は信号線を介して制御部64に入力され、動作表示ランプ86及び操作許可ランプ88は、制御部64から信号線を介して入力される駆動信号に従い点灯/消灯される。
【0051】
また、監視装置60において、受信アンテナ62、ミリ波受信部70、制御部64、警報機66、及び、送受信機68は、装置本体90として、一つの筐体内に組み込まれており、操作部80は、この装置本体90とは別体で構成されている。そして、装置本体90は、監視対象となる室内で送信装置10を見通せる位置に設置され、操作部80は、装置本体90が設置される部屋の出入り口付近の外側に配置される。
【0052】
次に、監視装置60の制御部64において室内の監視のために実行される監視処理、及び、その監視処理を起動又は停止するために実行される監視開始/停止設定処理について説明する。
【0053】
まず図5は、制御部64において常時実行される監視開始/停止設定処理を表すフローチャートである。
図5に示すように、この処理が開始されると、まずS110(Sはステップを表す)にて、情報取得手段としての指紋センサ84から指紋情報が入力されたか否かを判断する。そして、指紋情報が入力されていなければ、S120にて、送受信機68が、外部装置から当該監視装置60に対して送信された動作指令を受信したか否かを判断し、送受信機68が動作指令を受信していなければ、再度S110に移行する。
【0054】
つまり、監視開始/停止設定処理では、上記のようにS110、S120の処理を繰り返し実行することにより、操作部80の指紋センサから操作者の指紋情報が入力されるか、或いは、送受信機68にて外部装置からの動作指令が受信されるのを待つ。
【0055】
次に、S120にて、送受信機68が動作指令を受信したと判断されると、S130に移行して、外部装置からの動作指令は、監視開始を指示する指令であるか、監視停止を指示する指令であるかを判断する。
【0056】
そして、送受信機68が受信した動作指令が監視開始を指示する指令であれば、S140にて、後述の監視処理を起動し、S150にて、操作部80の動作表示ランプ86を点灯した後、再度S110に移行する。
【0057】
また逆に、送受信機68が受信した動作指令が監視停止を指示する指令であれば、S160にて、監視処理を停止し、S170にて、操作部80の動作表示ランプ86を消灯した後、再度S110に移行する。
【0058】
なお、S150、S170にて動作表示ランプ86を点灯又は消灯した際、操作許可ランプ88が点灯していれば、操作許可ランプ88を消灯させる。
一方、S110にて、指紋センサ84から指紋情報が入力されたと判断されると、S180に移行して、その入力された指紋情報と予めメモリに登録されている使用者の指紋情報とを比較することにより、現在操作部80を操作している操作者は当該監視装置の操作が許可された使用者であるか否かを判断する、指紋認証処理を実行する。
【0059】
そして、続くS190では、S180の指紋認証処理によって、操作者が当該監視装置の操作が許可された使用者であると認証できたか否かを判断し、認証できていなければ、再度S110に移行し、認証できていれば、S200に移行して、操作部80の操作許可ランプ88を点灯することにより、操作者に操作許可を通知する。
【0060】
次に、S200にて操作許可ランプ88を点灯すると、S210に移行して、使用者が操作スイッチ82を操作することにより監視開始又は監視停止の指令を入力したか否かを判断する。そして、使用者が操作スイッチ82を操作して指令を入力していなければ、S220に移行して、操作許可ランプ88を点灯してから予め設定された操作許可時間が経過したか否かを判断し、操作許可時間が経過していなければ、再度S210に移行する。
【0061】
つまり、このS210、S220の処理では、所定の操作許可時間内に使用者が操作スイッチ82を介して監視開始又は監視停止の指令を入力するのを待つのである。そして、S220にて、操作許可時間が経過したと判断されると、S230にて、操作許可ランプ88を消灯し、再度S110に移行する。
【0062】
また次に、S210にて、使用者が操作スイッチ82を介して監視開始又は監視停止の指令を入力したと判断されると、S130に移行して、送受信機68にて動作指令が受信されたときと同様に、その操作指令は、監視開始を指示する指令であるか、監視停止を指示する指令であるかを判断する。
【0063】
そして、操作スイッチ82からの操作指令が監視開始を指示する指令であれば、S140にて監視処理を起動し、S150にて、操作部80の動作表示ランプ86を点灯、操作許可ランプ88を消灯した後、再度S110に移行する。
【0064】
また逆に、操作スイッチ82からの操作指令が監視停止を指示する指令であれば、S160にて、監視処理を停止し、S170にて、操作部80の動作表示ランプ86及び操作許可ランプ88を消灯した後、再度S110に移行する。
【0065】
次に、図6は、上述した監視開始/停止設定処理にて起動/停止される監視処理を表すフローチャートである。
図6に示すように、この処理が起動されると、まずS310にて、ミリ波受信部70(詳しくは検波回路76)からの検波電圧を所定回数サンプリングし、続くS320にて、そのサンプリングした検波電圧の平均値を求め、この平均値を中心とする所定範囲内の上下限値を侵入判定電圧として算出する。
【0066】
つまり、図1に点線で示すように、送信装置10から監視装置60に至るミリ波信号(電波)の伝送経路には、送信装置10からの送信電波が直接監視装置60に入射する経路の他に、その電波が部屋の壁や部屋に置かれた物体で反射して間接的に監視装置60に入射する経路が多数存在し、しかも、その経路は、室内に置かれた物体の位置によって変化する。
【0067】
そして、このように電波の経路が変化すると、監視装置60内で得られるパイロット信号の信号レベル(検波電圧)も変化することから、本実施形態では、監視処理の開始直後に、そのときの室内の状態に応じたパイロット信号の信号レベル(検波電圧)から、侵入判定用の信号レベル(侵入判定電圧の上下限値)を設定し、その後、その設定した侵入判定電圧と検波電圧とを用いて、室内での物体の移動(つまり室内への人の侵入)を正確に検知できるようにしているのである。
【0068】
次に、S330では、ミリ波受信部70の検波回路76から検波電圧を読み込み、S340にて、その読み込んだ検波電圧が、S320にて設定した侵入判定電圧の上下限値で決まる正常範囲内にあるか否かを判断し、検波電圧が正常範囲内にあれば、再度S330に移行する。つまり、本実施形態では、S330とS340の処理によって、室内での物体の移動(つまり人の侵入)を監視する。
【0069】
一方、S340にて、検波電圧が正常範囲内にないと判断された場合、つまり、検波電圧が侵入判定電圧の上限値よりも高いか或いは下限値よりも低いと判断された場合には、室内での物体の移動(つまり人の侵入)を監視する。
室内で物体が移動した(換言すれば室内に人が侵入した)と判断して、S350に移行し、送受信機68から外部装置にその旨を表す報知信号を送信させる。
【0070】
また、S350にて、外部装置に報知信号を送信させた後は、S360にて、警報機66を駆動して警報音を発生させる。そして、続くS370では、S360にて警報音を発生させてから、予め設定された警報時間が経過したか否かを判断することにより、警報時間が経過するのを待ち、警報時間が経過したと判断すると、S380にて、警報機66の駆動を停止した後、S330に移行する。
【0071】
以上説明したように、本実施形態のテレビ信号送受信システムには、送信装置10からの送信電波を受信してテレビ信号を復元する受信装置30とは別に、送信装置10からの送信電波を受信してパイロット信号を復元し、そのパイロット信号の信号レベルが侵入判定電圧の電圧範囲から外れたか否かによって、監視対象となる室内への人の侵入を検知する監視装置60が設けられている。
【0072】
このため、本実施形態のテレビ信号送受信システムによれば、侵入検出用の電磁波を送信する送信機を別途設けることなく、室内への不審者の不正侵入を監視するセキュリティシステムを実現できることになり、セキュリティシステムを簡単且つ低コストで構築することが可能となる。
【0073】
また本実施形態では、監視装置60が室内への人の侵入を検知すると、威嚇のために警報機66から警報音を発生させるだけでなく、送受信機68から報知信号を無線送信させることで、外部装置に室内への人の侵入を通知する。
【0074】
従って、監視装置60は、室内への人の侵入を検知した際、外部装置を介して、建造物の他の部屋にいる住人や外出中の住人、或いは、警備会社等に、その旨を通知することができ、延いては、防犯機能を高めることができる。
【0075】
なお、送受信機68としては、無線で公衆電話回線網に接続されて、監視対象領域となる室内の異常を音声又は画像で外部の電話端末に通知することのできる携帯型の電話端末や、インターネットに接続されたホームサーバに対して無線LANを介して室内の異常を通知することのできる無線LAN端末、或いは、400MHz帯の電波を使って通信可能な外部の特定小電力機器に対して室内の異常を通知することのできる特定小電力通信用の通信端末等を使用することができる。
【0076】
また、本実施形態では、監視装置60を、送信装置10から送信されるパイロット信号を用いて侵入判定を行うように構成していることから、マルチパスの影響を受けるテレビ信号を用いて侵入判定を行うようにした場合に比べて、室内への人の侵入を正確に検出することができる。
【0077】
また、本実施形態では、監視装置60の操作部80を装置本体90とは別体で構成し、操作部80を装置本体90が設置される部屋の外側に配置するようにしているので、操作部80を操作する操作者の動きが装置本体90で検出されて、室内への侵入が誤判定されてしまうのを防止できる。
【0078】
また、操作部80には、指紋センサ84が設けられており、この指紋センサ84を介して得られる指紋情報に基づき、操作部80の操作者が、予め操作が許可された使用者か否かを識別できるようにされているので、監視装置60が不正に操作されるのを防止できる。
【0079】
なお、本実施形態においては、ミリ波受信部70が、本発明のミリ波受信手段に相当し、制御部64にて実行される監視処理(特に、S330及びS340の処理)が、本発明の判定手段に相当し、この監視処理にて不正侵入の報知のために実行されるS350〜S380の処理と警報機66及び送受信機68が、本発明の報知手段に相当する。
【0080】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内にて種々の態様をとることができる。
例えば、上記実施形態では、操作部80の操作者を識別するのに必要な情報を取得する情報取得手段として、指紋センサ84を使用するものとして説明したが、この情報取得手段としては、例えば、操作者の声紋情報を取得するためのマイクロフォンであっても、操作者の顔面等、所定部位の画像情報を取得するためのカメラであっても、或いは、操作者からパスワードを取得するためのキーボードであってもよい。
【0081】
また、上記実施形態では、操作部80は、装置本体90と信号線で接続されるものとして説明したが、操作部80と装置本体90とに赤外線や電波を使って無線通信することのできる通信機を組み込むようにしてもよい。そしてこのようにすれば、操作部80の設置作業がより簡単になり、例えば、使用者が操作部80を携帯することもできるようになる。また、このように操作部80を携帯させる場合、操作部80の機能を携帯電話に組み込むようにすれば、使用者の使い勝手を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】実施形態のテレビ信号送受信システム全体の構成を表すブロック図である。
【図2】送信装置の構成を表すブロック図である。
【図3】受信装置の構成を表すブロック図である。
【図4】監視装置の構成を表すブロック図である。
【図5】監視装置の制御部において常時実行される監視開始/停止設定処理を表すフローチャートである。
【図6】監視装置の制御部において実行される監視処理を表すフローチャートである。
【符号の説明】
【0083】
2…BS/CSアンテナ、4…UHFアンテナ、6…混合器、8…増幅器、10…送信装置、12…パイロット発振器、14…混合回路、16…増幅回路、18…ミリ波発振器、20…ミキサ、22…BPF、24…増幅回路、26…送信アンテナ、30…受信装置、32…受信アンテナ、34…BPF、36…増幅回路、38…ミリ波発振器、40…ミキサ、42…BPF、44…BPF、46…パイロット発振器、48…ミキサ、50…BPF、52…増幅回路、54…ミキサ、56…BPF、60…監視装置、62…受信アンテナ、64…制御部、66…警報機、68…送受信機、70…ミリ波受信部、71…BPF、72…増幅回路、73…ミリ波発振器、74…ミキサ、75…BPF、76…検波回路、80…操作部、82…操作スイッチ、84…指紋センサ、86…動作表示ランプ、88…操作許可ランプ、90…装置本体、100…テレビ受信機器。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
テレビ信号をミリ波帯へアップコンバートして建造物内に無線送信する送信装置と、
前記建造物内に設置され、前記送信装置からの送信電波を受信してダウンコンバートすることにより、前記テレビ信号を復元する受信装置と、
を備えたテレビ信号送受信システムにおいて、
前記送信装置からの送信電波を受信し、該受信信号のレベル変化から前記建造物内での物体の移動を検知して報知する監視装置を設けたことを特徴とするテレビ信号送受信システム。
【請求項2】
前記送信装置は、前記テレビ信号と一定周波数のパイロット信号とをアップコンバートして無線送信するよう構成され、
前記監視装置は、前記受信信号をダウンコンバートすることにより、前記パイロット信号を抽出し、該パイロット信号のレベル変化から前記建造物内での物体の移動を検知することを特徴とする請求項1に記載のテレビ信号送受信システム。
【請求項3】
テレビ信号をミリ波帯へアップコンバートして建造物内に無線送信する送信装置からの送信電波に基づき、前記建造物内への不正侵入を監視する監視装置であって、
前記送信装置からの送信電波を受信し、該受信信号の信号レベルを検出するミリ波受信手段と、
該ミリ波受信手段にて検出された受信信号の信号レベルに基づき、前記建造物内で物体が移動した否かを判定する判定手段と、
該判定手段にて物体の移動が判定されると、その旨を報知する報知手段と、
を備えたことを特徴とする監視装置。
【請求項4】
前記ミリ波受信手段は、前記受信信号をダウンコンバートすることにより、一定周波数のパイロット信号を抽出し、該パイロット信号の信号レベルを検出することを特徴とする請求項3に記載の監視装置。
【請求項5】
前記ミリ波受信手段、前記判定手段、及び、前記報知手段を備え、前記建造物内の監視対象領域に設置されて該監視対象領域での物体の移動を検知する装置本体と、
前記監視対象領域の外に配置されて、前記装置本体を遠隔操作によって起動/停止させる操作部と、
を備えたことを特徴とする請求項3又は請求項4に記載の監視装置。
【請求項6】
前記操作部は、操作者から識別用の情報を取得する情報取得手段を備え、
前記装置本体は、該情報取得手段にて取得された情報が予め登録された使用者固有の情報であるとき、前記操作部からの指令に従い起動/停止することを特徴とする請求項5に記載の監視装置。
【請求項7】
前記報知手段は、前記判定手段にて物体の移動が判定されると、該判定結果を、報知用の外部機器に無線にて送信することを特徴とする請求項3〜請求項6の何れかに記載の監視装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−217082(P2008−217082A)
【公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−49584(P2007−49584)
【出願日】平成19年2月28日(2007.2.28)
【出願人】(000113665)マスプロ電工株式会社 (395)
【Fターム(参考)】