説明

テロメラーゼ阻害剤

本発明は、四本鎖DNAと相互作用し、かつテロメラーゼ活性阻害剤として作用する金属錯体、そのような錯体の合成、および癌治療におけるそれらの使用法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、テロメラーゼ阻害剤としての新規化合物およびそれらの使用法に関する。本発明は、癌治療に使用する化合物を提供する。
【背景技術】
【0002】
真核生物の染色体は、コードDNA(すなわち、遺伝子)配列および非コードDNA配列を有する。非コードDNAは、染色体の末端に存在するDNAの長い配列であるテロメアを含む。テロメアは、5'TTAGGG3'という短い配列の多数の縦列リピート配列からなっており、染色体の末端を保護している。しかしながら、DNAの複製サイクルが繰り返されることにより、テロメアは短くなり(一回の有糸分裂毎に100bpと概算されている)、最終的には細胞の老化またはアポトーシスに至る。
【0003】
テロメラーゼは逆転写酵素であり、DNA鎖の3'末端にテロメアリピート配列を付加する。テロメラーゼは、ヒトの癌細胞においては、正常体細胞と比較して、活性が85〜90%上昇している。従って、テロメラーゼ阻害は、正常細胞よりも癌細胞に対して選択的毒性を発揮する可能性がある癌の化学療法に関する格好の標的だと認識されている。
【0004】
テロメラーゼは、テロメア性DNAの完全性を維持し、テロメアの危機的短縮を阻止しているが、これは、細胞が老化およびアポトーシスの臨界点に達しないようにするためである。一般的に、ヒトのテロメア性DNAは、癌細胞では、3〜6kBである。3'末端の100〜200塩基は一本鎖である。結晶学的研究およびNMR解析から、この配列の反復はグアニンに富んだ四重構造に折りたたまれることが示されている。テロメラーゼの基質は、テロメア性DNAに付随している3'一本鎖部分であることから、低分子化合物によってこれらの四重構造を安定化させることでテロメラーゼを阻害することができ、それにより、腫瘍細胞におけるテロメア維持を選択的に干渉できる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
癌治療の新規および有効な方法の開発は、当該分野における確たる要求である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
金属サレン錯体は、二本鎖DNAと相互作用することがこれまでに明らかにされている。しかしながら、金属サレン錯体などの金属錯体が特異的な電気的、構造的および光学的特性を有しているにもかかわらず、四本鎖DNAの安定化剤としてのそれらの能力については、これまでのところ研究されていない。本発明は、四本鎖DNAと良好に相互作用し、かつ、テロメラーゼ活性の阻害を示す新規な金属錯体を提供する。結果的に、これらの化合物は癌治療に使用できる。
【0007】
故に、第一の態様からみると、化学式(I)で表される化合物が提供され、
【化1】

【0008】
ここで、Aは、C5〜C6アリールもしくはヘテロアリール基であるか、または存在せず、
BおよびCは、それぞれ独立して、C5〜C6アリールもしくはヘテロアリール基であり、
Mは、金属イオンまたは M=Oであり;
R1およびR2は、それぞれ独立して、水素、C1-20アルキル、C3-12炭素環、ハロゲン、C1-20ハロアルキル、OR13、CN、NO2、NR13R13、COR13、CO2R13、O−(CH2n−N(R143もしくは(CH2n−R15、CONR13R13、C3-12複素環、C1-20アルキルC3-12炭素環、C1-12アルキルC3-12複素環であるか、あるいは、R1およびR2は、共同して、原子数5〜18の炭素環基もしくは複素環基を形成し、それらはA環に融合しており、1個もしくはそれ以上のR13基で随意に置換されており、
あるいは、R1およびR2は、それぞれ独立して
【化2】

【0009】
であり、
R3、R4、R5およびR6は、それぞれ独立して、水素、ハロゲン化物、C1-20アルキル、OR13もしくはCNであり、あるいは、R3およびR5、および/または、R4およびR6は、共同して、原子数5〜6の炭素環もしくは複素環を形成し、
あるいは、R1およびR3、および/または、R2およびR4は、共同して、原子数5〜18の炭素環基もしくは複素環基を形成し、それらはA環に融合しており、1個もしくはそれ以上のR13基で随意に置換されており、
X1およびX2は、それぞれ独立して、O、SまたはNR13であり、
R7、R8、R9、R10、R11またはR12は、それぞれ独立して、水素、ハロゲン化物、OR14、O−(CH2n−N(R143もしくはO−(CH2n−R15であるか、あるいは、R7およびR8、または、R10およびR11のうちの一組もしくはそれ以上は、共同して、原子数5〜12の炭素環もしくは複素環を形成し、
G1およびG2は、それぞれ独立して、OR14、O−(CH2n−N(R143もしくはO−(CH2n−R15であり、このとき、R14は、水素もしくはC1-20アルキルであり、また、R15は、HN−C(=NH)−NH2、[−NH−C(−SR13)−NH−]、原子数5もしくは6の炭素環もしくは複素環であり、
あるいは、G1およびG2は、共同して、以下の化合物を形成し、
【化3】

【0010】
ここで、nは1〜6であり、Mは、金属イオン、M=Oであるかまたは空位であり;
R13は、それぞれ独立して、水素、C1-12アルキル、C3-12炭素環、C3-12複素環、C1-6アルキルC3-12炭素環、C1-6アルキルC3-12複素環、ハロゲン化物、CO2H、OH、NH2もしくはCONH2であり;R30、R31、R32、R33およびR34は、それぞれ独立して、C1-12アルキル、C3-12炭素環、C3-12複素環、C1-6アルキルC3-12炭素環、C1-6アルキルC3-12複素環、ハロゲン化物、CO2H、OH、NH2もしくはCONH2である。
【0011】
R1およびR2は、共に以下の式で表される場合もあり、
【化4】

【0012】
金属イオンMは、2個のN原子間、ならびに、R1基およびR2基の2個のX1原子間に配位することができる。さらに、R7、R8、R9、R10、R11またはR12のうちの任意の基は、R30、R31、R32またはR33 のうちの任意の基と結合して架橋構造を形成できる。
【0013】
本発明の目的遂行のためには、A、BまたはCの基は、それぞれ独立して、好ましくは、原子数6のアリールもしくはヘテロアリール基であり、より好ましくは、フェニルもしくはピリジンから選択される基である。好ましくは、A、BまたはCの基は、それぞれ独立して、ナフチルなどの芳香環に融合した原子数6のアリールもしくはヘテロアリール基である。
【0014】
Mは、好ましくは、Ni、Co、Cu、Mn、Cr、V、Pt、Rh、Ir、Au、Pd、ZnまたはV=Oから選択される。
【0015】
置換基R1およびR2は、好ましくは、水素、F、Cl、CO2H、O−(CH2q−N(CH33、O−(CH2q−C5-6炭素環、O−(CH2q−C5-6複素環、CONH−(CH2m−炭素環またはCONH−(CH2m−複素環から選択され、ここで、mは1〜6であり、qは、1〜6、好ましくは2、3、4もしくは5である。
【0016】
R1およびR2、または、R1およびR3、またはR2およびR4が共同して炭素環基または複素環基を形成する場合には、該炭素環基または複素環基は、A環に融合した原子数5〜14の基であることが好ましく、より好ましくは、A環に融合した原子数5〜10の基である。
【0017】
G1またはG2は、好ましくは以下の式で表される基から選択され、
【化5】

【0018】
ここで、pは0または1であり、nは1〜6、好ましくは2、3、4もしくは5である。
【0019】
好ましくは、本発明の第一の態様は、以下の化学式(Ia)で表される化合物に関し、
【化6】

【0020】
ここで、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10、R11、R12、X1 、X2、M、G1およびG2は、上に定義したとおりである。
【0021】
好ましくは、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10、R11、およびR12 は水素であり、R1、X1 、X2、M、G1およびG2は、上に定義したとおりである。
【0022】
本発明の第一の態様の別の特徴においては、化学式(I)で表される化合物からA環が消失している。そのような化合物は、以下の化学式(Ib)または(Ic)を有する。
【化7】

【0023】
ここで、B、C、R5、R6、R7、R8、R9、R10、R11、R12、X1 、X2、M、G1およびG2 は上に定義したとおりである。
【0024】
本発明のさらに別の特徴においては、R3およびR5は、共同して、原子数5〜6の炭素環または複素環を形成し、さらに、R4およびR6は、共同して、原子数5〜6の炭素環または複素環を形成し、B環は存在せず、C環は次の置換基によって置換されており、
【化8】

【0025】
ここで、Yは、−CH2−、CR26、またはCOであり、Xは、NH、NまたはOであり、Dは、原子数5〜10の炭素環基または複素環基であり、R16、R17、R18およびR19は、水素、C1-6アルキル、C3-12炭素環、C3-12複素環、C1-6アルキルC3-12炭素環、C1-6アルキルC3-12複素環、ハロゲン化物、CO2H、OH、NH2もしくはCONH2であり、さらに、G3は、H、OH、NH2、OR20、O−(CH2n−N(R203もしくはO−(CH2n−R21であり、
ここで、R20はC1-12アルキルであり、R21は原子数が5または6の炭素環基または複素環基であり、さらに、R26は、水素もしくはC1-12アルキルである。
【0026】
従って、本発明は、化学式(IIa)または(IIb)で表される化合物を提供する。
【化9】

【0027】
好ましくは、化合物は、以下に示す化学式(IIa)で表される化合物であり、
【化10】

【0028】
このとき、EおよびFは、それぞれ独立して、原子数5〜6の炭素環または複素環であり、R22、R23、R24およびR25は、水素、ハロゲン化物、OH、OR20、O−(CH2n−N(R203、O−(CH2n−R21 またはCNであり、
このとき、Pは、OR13、CO2R13、CN、NO2、ハロゲン化物、SCN、H2O、NO3、OH、CH3CNもしくはOCNであり、また、
R1、R2、R13、R16、R17、R18、R19、G3およびM は上に定義したとおりである。
【0029】
好ましくは、G3は、OR20、O−(CH2n−N(R203またはO−(CH2n−R21である。
【0030】
別の場合においては、C環は、次の化学式で表される基で置換されており、
【化11】

【0031】
さらに、G3は、NまたはNH2である。
【0032】
本発明は、特に、本発明に従う以下の好ましい化合物に関する:
【化12−1】

【化12−2】

【化12−3】

上掲の好ましい化合物中にはMの存在が示されているが、本発明は、上掲の錯体の合成中に中間体などとして有用な対応する化合物であって、Mが空位であるものも包含することは明らかである。
【0033】
これまでに報告されている結晶学的研究およびNMR研究、また、コンピューターモデリングにおいて、グアニンに富んだテロメアの四本鎖構造の詳細な図が呈示されている。このことにより、四本鎖構造の安定化に有効な化合物の特徴を確認することができた。本発明に従う化合物は、次のようなものを提供する。
【0034】
1)4個組グアニンの表面(すなわち、A、BおよびC環)の表面上に重なることができるπ−脱局在システム;
2)4個組の中心に存在する一部の正電荷について、通常その位置を占有しているカリウムもしくはナトリウム(金属M)の陽イオン正電荷を置換することにより、安定性を高める;さらに、
3)四本鎖構造の溝およびループ、ならびに負の電荷を帯びた骨格ホスフェート(G1およびG2基)と相互作用する、正の電荷を帯びた置換基。
【0035】
本発明に従う化合物とグアニンに富んだテロメアの四本鎖構造との相互作用によって四本鎖が安定化し、テロメラーゼ酵素とテロメアとの相互作用が阻害され、最終的に、細胞の老化およびアポトーシスが起こる。
【0036】
既に述べているように、金属サレンおよび金属サルフェン錯体は、二本鎖DNAと相互作用することがこれまでに示されている。ある化合物が、インターカレーションなどの方法で二本鎖DNAと相互作用するからといって、治療剤として使用できる化合物が提供されるわけではないことは自明であり、そのような化合物は、癌ではない細胞と相互作用し、損傷を与える。本発明に従う化合物はかさ高い基(例えば、G1およびG2など)を有しており、そのことによって、平面上環系であるA、BおよびCの平面から外側に垂れており、かつ、四本鎖の溝およびループと相互作用すると考えられる。本発明に従う化合物中にG1およびG2が存在することにより、該化合物の二本鎖DNAへの侵入が妨げられ、故に、本発明に従う化合物と二本鎖DNA(さらに、癌ではない細胞)との相互作用が最小限に抑えられる。故に、本発明に従う化合物は、四本鎖DNAとの相互作用と比較すると、二本鎖DNAへの侵入は顕著ではない。故に、本発明に従う化合物は、癌様細胞などのテロメラーゼ活性が高い細胞に対して選択性を示し、このことは、当該分野において既知である金属サレン化合物および金属サルフェン化合物とは異なる点である。
【0037】
本発明の目的遂行のためには、アルキルは、炭素数が1〜20である直鎖および分岐鎖アルキルラジカルに関連するものであり、好ましくは、炭素数が1〜15、好ましくは炭素数が1〜10、好ましくは炭素数が1〜8、より好ましくは、炭素数が1〜6、最も好ましくは炭素数が1〜4であり、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、sec−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、n−ヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチルなどが挙げられるが、これらに限定されるわけではない。アルキルラジカルとしては、炭素数が1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19または20のものを用いることができる。
【0038】
「ハロアルキル」とは、上に定義したようなアルキルラジカルであって、炭素数が1〜20であり、1個もしくはそれ以上のハロゲン原子で置換されているものを意味し、例えば、CH2CH2Br、CF3またはCCl3などが挙げられる。
【0039】
「炭素環」とは、原子数が3〜10の炭化水素を意味し、好ましくは、環系の原子数は、4、5、6、7または8である。炭素環は、不飽和、部分的飽和または飽和のものを用いることができる。炭素環には、シクロアルキル基およびアリール基を包含する。
【0040】
「シクロアルキル」とは、炭素数が3〜12、好ましくは4〜8、最も好ましくは5〜6であるシクロアルキルラジカルを意味し、例えば、シクロプロピル、シクロブチル、CH2−シクロプロピル、CH2−シクロブチル、シクロペンチルまたはシクロヘキシルなどが挙げられるが、これらに限定されるわけではない。シクロアルキル基は、随意に置換することができ、あるいは、1個もしくはそれ以上の炭素環基または複素環基に融合させることができる。シクロアルキルラジカルとしては、炭素数が3、4、5、6、7、8、9、10、11または12のものを用いることができる。
【0041】
「アリール」とは、原子数3〜10、好ましくは原子数6〜10の芳香族性炭化水素環を意味し、1個の環を有するか、あるいは、1個もしくはそれ以上の飽和または不飽和環に融合しており、例えば、フェニル、ナフチル、アントラセニルもしくはフェナントラセニルなどが挙げられるが、これらに限定されるわけではない。
【0042】
「複素環」とは、原子数3〜10、好ましくは原子数が4、5、6、7または8である環系を意味し、N、OまたはSから選択される1個もしくはそれ以上のヘテロ原子を有する。複素環は、不飽和、部分的飽和または飽和のものを用いることができる。複素環系としては、環が1個のもの、あるいは、1個もしくはそれ以上の不飽和または飽和環に融合したものがある。複素環には、ヘテロアリール基を包含する。
【0043】
「ヘテロアリール」とは、原子数3〜10、好ましくは原子数6〜10の芳香族性アリールを意味し、N、OまたはSから選択される1個もしくはそれ以上のヘテロ原子を有し、さらに、環が1個のもの、あるいは、1個もしくはそれ以上の飽和または不飽和環に融合したものがある。
【0044】
炭素環基または複素環基の例としては次のようなものが挙げられるが、これらに限定されるわけではない:シクロヘキシル、フェニル、アクリジン、ベンズイミダゾール、ベンゾフラン、ベンゾチオフェン、ベンゾキサゾール、ベンゾチアゾール、カルバゾール、シンノリン、ジオキシン、ジオキサン、ジオキソラン、ジチアン、ジチアジン、ジチアゾール、ジチオラン、フラン、イミダゾール、イミダゾリン、イミダゾリジン、インドール、インドリン、インドリジン、インダゾール、イソインドール、イソキノリン、イソクサゾル、イソチアゾール、モルホリン、ナフチリジン、オキサゾール、オキサジアゾール、オキサチアゾール、オキサチアゾリジン、オキサジン、オキサジアジン、フェナジン、フェノチアジン、フェノキサジン、フタラジン、ピペラジン、ピペリジン、プテリジン、プリン、ピラン、ピラジン、ピラゾール、ピラゾリン、ピラゾリジン、ピリダジン、ピリジン、ピリミジン、ピロール、ピロリジン、ピロリン、キノリン、キノキサリン、キナゾリン、キノリジン、テトラヒドロフラン、テトラジン、テトラゾール、チオフェン、チアジアジン、チアジアゾール、チアトリアゾール、チアジン、チアゾール、チオモルホリン、チアナフタレン、チオピラン、トリアジン、トリアゾールおよびトリチアンなど。
【0045】
「ハロゲン」または「ハロゲン化物」とは、F、Cl、BrまたはIを意味し、好ましくはFまたはClを意味する。
【0046】
第一の態様に従う化合物は塩として提供でき、好ましくは、化学式(I)、(IIa)または(IIb)で表される化合物の医薬品的に許容される塩として提供できる。医薬品的に許容されるこれらの化合物の塩の例としては、有機酸(例えば、酢酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、乳酸、シュウ酸、コハク酸、フマル酸、マレイン酸、安息香酸、サリチル酸、フェニル酢酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、およびp−トルエンスルホン酸など)由来のもの、無機酸(塩酸および硫酸など)由来のものであって、それぞれ、メタンスルホナート、ベンゼンスルホナート、p−トルエンスルホナート、塩酸塩、硫酸塩などを与えるもの、あるいは、有機塩基および無機塩基などの塩基由来のものが含まれる。本発明に従う化合物の塩の形成に用いられる適切な無機塩基の例としては、アンモニア、リチウム、ナトリウム、カルシウム、カリウム、アルミニウム、鉄、マグネシウム、亜鉛などのヒドロキシド類、カルボナート類、ビカルボナート類などが挙げられる。塩類は、適切な有機塩基から形成することもできる。本発明に従う化合物を用いて医薬品的に許容される塩基付加塩を形成する場合に適切な塩基としては、有機塩基類が挙げられ、それらは、非毒性であって塩の形成に十分な強度を有する。そのような有機塩基類は当該分野において既知であり、アルギニンおよびリジンなどのアミノ酸類、モノ−、ジ−もしくはトリ−ヒドロキシアルキルアミン類(例えば、モノ−、ジ−もしくはトリ−エタノールアミンなど)、コリン、モノ−、ジ−もしくはトリ−トリアルキルアミン類(例えば、メチルアミン、ジメチルアミンおよびトリメチルアミンなど)、グアニジン;N−メチルグルコサミン;N−メチルピペラジン;モルホリン;エチレンジアミン;N−ベンジルフェネチルアミン;トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンなどが挙げられる。
【0047】
塩類は、当該分野において既知の方法を用い、従来法に従って調製できる。該塩基性化合物の酸付加塩類は、本発明の第一の態様に従い、水性もしくは水性アルコール溶媒、または、所望する酸を含むその他の適切な溶媒中に遊離塩基化合物を溶解することによって調製できる。本発明に従う化合物が酸性官能基を有する場合には、該化合物の塩基性塩は、該化合物を適切な塩基と反応させることによって調製できる。酸性塩または塩基性塩は直接分離でき、あるいは、溶媒留去などによって溶液を濃縮することによって得られる。本発明に従う化合物は、溶媒和型または水和型としても存在し得る。
【0048】
本発明は、上述の化合物のプロドラッグ、例えば、それらのエステルまたはアミドなども包含する。プロドラッグとは、生理的条件下またはソルボリシスにより、発明に従う化合物のひとつ、または、本発明に従う化合物の医薬品的に許容される塩に転換される任意の化合物である。プロドラッグは、対象に投与されたときには不活性であるが、イン・ビボ(in vivo)で本発明に従う活性化合物に転換される。
【0049】
本発明に従う化合物は、1個もしくはそれ以上の不斉炭素原子を有しており、ラセミ型もしくは光学活性型として存在している。本発明に従う化合物は、トランスもしくはシス型として存在している。本発明の第一の態様においては、これらの化合物の全てを包含する。
【0050】
本発明に従う化合物には、ひとつもしくはそれ以上の結晶型が存在する。故に、本発明は、本発明に従う化合物の単一の結晶型、または、ひとつもしくはそれ以上の結晶型の混合物に関する。
【0051】
本発明の第二の態様では、本発明の第一の態様である化合物の調製法を提供する。本発明の第一の態様に従う化合物は、以下の一般的様式および手順に示されているように、また、実施態様を参考にし、同様な化合物に関して当業者において既知である調製法に従って調製できる。
【0052】
特に、第一の態様に従う化合物は、化学式(III)で表される化合物にL−G1基およびL−G2基を同時分離または順次付加することによって得られる。
【化13】

【0053】
ここで、Lは、ハロゲン化物などの遊離基であり、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10、R11、R12、G1、G2 、X1、X2およびMは、本発明の第一の態様において定義したとおりである。
G1およびG2が同一である場合には、化学式(III)で表される化合物を過量のL−G1またはL−G2と共にインキュベートすることによって化学式(I)で表される化合物が生成できることは明らかである。しかしながら、G1およびG2が別異である場合には、L−G1およびL−G2は別々に添加する。例えば、化学式(III)で表される化合物にL−G1基を加えてインキュベートすることによって化学式(IV)で表される化合物を生成し、
【化14】

【0054】
続いて、L−G2基を加えてインキュベートすることにより、化学式(I)で表される化合物を生成する。この場合には、化学式(III)で表される化合物中の複数の水酸基を別異の保護基で保護することにより、L−G1基およびL−G2基を順次付加できる。そのような保護基としては、アリル保護基、p−メトキシベンジルクロロメチルエーテル、シリルエーテルおよび当業者において既知のその他の標準的なアルコール保護基などが挙げられる。
【0055】
化学式(III)で表される化合物は、化学式(VI)で表される化合物に対し、金属、化学式(VII)で表される化合物、および化学式(VIII)で表される化合物を反応させることによって調製できる。
【化15】

【0056】
ここで、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10、R11、R12、G1、G2 、X1、X2およびMは、本発明の第一の態様において定義したとおりである。
やはり、化学式(VII)および(VIII)で表される化合物が同一である場合には、化学式(VI)で表される化合物に対し、過量の化学式(VII)で表される化合物または過量の化学式(VIII)で表される化合物を加えてインキュベートすることができる。しかしながら、化学式(VII)および(VIII)で表される化合物が別異である場合には、化学式(VII)で表される化合物および化学式(VIII)で表される化合物を別々に加える。例えば、化学式(VI)で表される化合物に化学式(VII)で表される化合物を加えてインキュベートすることにより、化学式(V)で表される化合物が生成し、
【化16】

【0057】
続いて、化学式(VIII)で表される化合物を加えてインキュベートすることにより、化学式(III)で表される化合物が生成する。この場合、化学式(VI)で表される化合物中のアミノ基を別異の保護基(例えば、Fmoc、ベンジル、もしくはBOC、または当業者において既知のその他の標準的なアミノ保護基など)で保護する。別の方法としては、化学式(VI)で表される化合物への化学式(VII)で表される化合物の付加は、過量の化学式(VIで表される化合物中に、高希釈した化学式(VII)で表される化合物をゆっくり加えるなどの条件下下で行うことができ、そのような条件は、化学式(V)で表される化合物の一置換体がアミノ保護基を使用することなく生成することにより、化学式(VII)および化学式(VIII)で表される化合物を順次添加できるようにするためである。本発明の目的遂行に対しては、「インキュベート」とは、本発明の中間体化合物を反応させることを含む。
【0058】
本発明の第三の態様においては、本発明の第一の態様に従う化合物に、医薬品的に許容されるキャリヤー、希釈剤または賦形剤を組み合わせて含む組成物が提供される。
【0059】
組成物は、ひとつもしくはそれ以上の追加の活性成分、例えば、化学療法剤および/または抗増殖剤なども含有する場合がある。特に、本発明に従う組成物は、アルキル化剤(例えば、シクロホスファミド、イフォスファミド、メルファラン、クロラムブシル、BCNU、CCNU、デカルバジン、プロカルバジン、ブスルファンまたはチオテパなど)、代謝拮抗物質(例えば、シタラビン、ゲムシタビン、6−メルカプトプリン、6−チオグアニン、フルダラビンおよびクラドリビンなど)、アンスラサイクリン(例えば、イダルビシン、エピルビシンなど)、抗生物質(例えば、ブレオマイシンなど)、カンプトテシン、エトポシド、ビンカアルカロイド、タクサン(例えば、タキソール、パクリタクセルおよびドセタクセルなど)、および/または、プラチニウム(例えば、シスプラチンまたはオキサリプラチン)などのうちのひとつもしくはそれ以上を含むものがある。本発明に従う組成物は、細胞周期制御を阻害する、DNA損傷の修復を阻害する、癌関連遺伝子を阻害する、または、その他任意の癌選択的プロセスを阻害する作用を有するひとつもしくはそれ以上の化合物を含有する場合がある。
【0060】
投与法に応じ、組成物中には、第一の態様に従う化合物が0.1%〜99%(w/w)、好ましくは0.1〜60%(w/w)、より好ましくは0.2〜12%(w/w)、最も好ましくは0.25〜8%(w/w)含まれている。
【0061】
適切なキャリアーおよび/または希釈剤は当該分野において既知であり、そのようなものとしては、医薬品等級のデンプン、マンニトール、ラクトース、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、タルク、セルロース、グルコース、ショ糖(もしくはその他の糖類)、炭酸マグネシウム、ゼラチン、油、アルコール、界面活性剤、乳化剤もしくは水(好ましくは滅菌済みのもの)などが挙げられる。組成物は、組成物の混合調製物、または、同時、別々に、もしくは順次使用(投与を含む)用の組み合わせ調製物とすることができる。
【0062】
上述の指示において使用するための本発明に従う組成物は、従来から行われている任意の方法で投与でき、そのような方法としては、例えば、経口(吸入を含む)、非経口、経粘膜(例えば、頬内、舌下、鼻内など)、経肛門または経皮投与などが挙げられ、投与法に組成物を適合させる。
【0063】
経口投与用には、組成物を液体または固体として製剤化することができ、例えば、溶液、シロップ、懸濁液もしくはエマルション、錠剤、カプセル剤および舌下錠などが挙げられる。
【0064】
一般的に、液体製剤は、適切な水性もしくは非水性液体キャリヤー中に化合物もしくは生理的に許容される塩を懸濁したものまたは溶解したものを含み、そのようなキャリヤーとしては、例えば、水、エタノール、グリセリン、ポリエチレングリコールまたは油脂などが挙げられる。製剤には、懸濁化剤、保存剤、香味剤または着色剤を含む場合もある。
【0065】
錠剤型組成物は、固体製剤の調製に通常使用されている任意の適切な医薬品用キャリヤーを用いて調製できる。そのようなキャリヤーの例としては、ステアリン酸マグネシウム、デンプン、ラクトース、ショ糖および微結晶性セルロースなどが挙げられる。
【0066】
カプセル型組成物は、通常使用されているカプセル封入法を用いて調製できる。例えば、活性成分を含有する粉末、顆粒もしくはペレットは、標準的なキャリヤーを用いて調製し、次に、それらを硬ゼラチンカプセルに充填することができる。別の方法としては、任意の適切な医薬品用キャリヤー(例えば、水性ガム類、セルロース類、シリケート類または油類など)を用いて分散剤もしくは懸濁剤を調製し、次に、それらを軟ゼラチンカプセルに充填することができる。
【0067】
経口投与用組成物は、消化管を通過する際の活性成分の分解に対して保護されるように設計され、そのような方法としては、例えば、錠剤またはカプセル製剤に外皮膜を施すことなどが挙げられる。
【0068】
一般的な非経口組成物は、滅菌水性もしくは非水性キャリヤー、または非経口用として許容される油中に、化合物もしくは生理的に許容される塩を懸濁したものまたは溶解したものを含み、ここで、そのような油類としては、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、レシチン、ラッカセイ油またはゴマ油などが挙げられる。別の方法としては、溶液を凍結乾燥し、投与直前に適切な溶媒で再構成することができる。
【0069】
経鼻または経口投与用組成物は、エアロゾル、滴剤、ゲルおよび粉末ととして適切に製剤化できる。一般的に、エアロゾル製剤は、生理的に許容される水性もしくは非水性溶媒中に活性物質が溶解した溶液、または非常に均質に懸濁した液を含み、通常、密封容器中に単回もしくは複数回投与量が充填されている。そのような容器は、噴霧装置を用いて使用するためのカートリッジまたはリフィルの形態にできる。別の方法としては、密封容器は、単回投与用鼻内吸入器または、計量バルブ付きディスペンサーなどのような単位分散用デバイスであり、それらは、一度容器の内容物が排出されてしまったら廃棄されることを意図したものである。投与様式がエアロゾルディスペンサーの場合には、医薬品的に許容される噴射剤を含む。エアロゾル投与剤型は、ポンプ式噴霧器様式にすることもできる。
【0070】
頬内もしくは舌下投与に適した組成物としては、錠剤、ロゼンジ、トローチ剤などが挙げられ、このとき、活性材料は、糖、ならびに、アカシア、トラガカントあるいは、ゼラチンおよびグリセリンなどのキャリヤーを用いて製剤化する。
【0071】
肛門もしくは膣投与用組成物は、坐剤(従来から使用されているカカオ脂などの坐剤基剤を含む)、ペッサリー、膣用錠、発泡剤または浣腸剤の剤型にする。
【0072】
経皮投与用に適した組成物としては、軟膏、ゲル、パッチ、および粉末注射剤を含む注射剤などが挙げられる。
【0073】
組成物は、錠剤、カプセルまたはアンプルなどの単位投与剤型にすると都合がよい。
【0074】
本発明の第四の態様においては、本発明の第三の態様に従う組成物の製造プロセスを提供する。製造は、当該分野において既知の標準的な技術によって実施でき、本発明の第一の態様に従う化合物、ならびに、医薬品的に許容されるキャリヤーもしくは希釈剤、さらに、場合にによってはひとつもしくはそれ以上の追加の活性成分を混合することを含む。組成物は、錠剤、液体、カプセルおよび粉末を含む任意の剤型、あるいは、食品(たとえば、機能性食品など)のかたちにできる。後者の場合、食品それ自身が医薬品的に許容されるキャリヤーとして作用できる。
【0075】
本発明の第五の態様は、医薬品として使用するための、第一の態様に従う化合物または第三の態様に従う組成物に関する。特に、本発明の第五の態様は、癌治療に使用するための第一の態様に従う化合物または第三の態様に従う組成物を提供する。
【0076】
本発明の目的遂行のためには、第一の態様に従う化合物または第三の態様に従う組成物は、副腎癌、AIDS関連リンパ腫、肛門癌、毛細管拡張性失調症、膀胱癌、脳腫瘍、乳癌、上皮性悪性腫瘍、子宮頸癌、慢性リンパ球性白血病、慢性骨髄性白血病、直腸結腸癌、頭蓋咽頭腫、皮膚型T細胞リンパ腫/菌状息肉腫、子宮内膜および子宮癌、食道癌、ユーイング肉腫、輸卵管癌、胆嚢癌、胃癌、妊娠性絨毛性疾患および絨毛癌、毛様細胞白血病、ホジキン病、カポジ肉腫、腎臓癌、咽頭癌、白血病、リー・フロイメニ症候群、肝臓癌、肺癌、リンパ腫、髄芽腫、メラノーマ、中皮腫、遷移状態、骨髄腫、骨髄増殖性症候群、神経芽細胞腫、非ホジキンリンパ腫、非小細胞性肺癌、口腔咽頭癌、骨肉腫、卵巣癌、膵臓癌、副甲状腺癌、陰茎癌、下垂体癌、前立腺癌、網膜芽細胞腫、横紋筋肉腫、肉腫、小腸癌、小細胞性肺癌、精巣癌、胸腺腫、尿道癌、膣癌、外陰部癌またはウィルムス腫瘍に対する治療を提供できる。
【0077】
本発明に従う化合物は、テロメアのグアニンに富んだ四本鎖構造と相互作用し、安定化させる。故に、本発明は、テロメアのグアニンに富んだ四本鎖構造を安定化させるための、第一の態様に従う化合物または第三の態様に従う組成物を提供する。さらに、本発明は、テロメラーゼ阻害に使用するための、第一の態様に従う化合物または第三の態様に従う組成物を提供する。さらにまた、本発明は、癌細胞の老化またはアポトーシスの促進に使用するための、第一の態様に従う化合物または第三の態様に従う組成物を提供する。
【0078】
本発明に従う化合物は、癌治療のために提供される。本発明の目的遂行においては、「治療」とは、緩和、重篤度の軽減、進行の減速、または症状の軽減を意味する。いくつかの場合においては、疾病の度合いは、治癒が不可能な程度であっても構わない。この場合には、「治療」という語は、衰えまたは悪化を防ぐことを意味しており、例えば、患者の寿命および/または生活の質を改善するために、緩和処置を要せずに疾病の進行を停止させること、または疾病の進行を減速させることなどの行為がある。
【0079】
本発明に従う化合物は、ひとつもしくはそれ以上の他の活性成分(例えば、化学療法剤または抗増殖剤など)と同時に、続けて、または特定の順序で投与できる。特に、本発明に従う化合物は、アルキル化剤(例えば、シクロホスファミド、イフォスファミド、メルファラン、クロラムブシル、BCNU、CCNU、デカルバジン、プロカルバジン、ブスルファンまたはチオテパなど)、代謝拮抗物質(例えば、シタラビン、ゲムシタビン、6−メルカプトプリン、6−チオグアニン、フルダラビンおよびクラドリビンなど)、アンスラサイクリン(例えば、イダルビシン、エピルビシンなど)、抗生物質(例えば、ブレオマイシンなど)、カンプトテシン、エトポシド、ビンカアルカロイド、タクサン(例えば、タキソール、パクリタクセルおよびドセタクセルなど)、および/または、プラチニウム(例えば、シスプラチンまたはオキサリプラチン)などのうちのひとつもしくはそれ以上と共に投与できる。本発明に従う化合物または組成物は、癌治療に伴う副作用の治療に使用するためのひとつもしくはそれ以上の活性成分、例えば、制吐剤、抗生物質などと組み合わせて投与できる。
【0080】
通常、本発明に従う化合物は、日投与法に従って投与するが、その量は、成人患者に対し、化学式(I)もしくは(II)で表される化合物、または、遊離塩基として計算された生理学的に許容されるそれらの塩を、例えば、経口投与量としては1mg〜2000mg、好ましくは30mg〜1000mg(例えば、10mg〜250mgなど)、あるいは、静脈投与、皮下投与もしくは筋肉内投与量としては0.1mg〜100mg、好ましくは0.1mg〜50mg(例えば、1mg〜25mgなど)、1日1〜4回投与する。好ましくは、化合物は、一週間もしくはそれ以上などの連続治療期間を通して投与する。
【0081】
本発明の第六の態様は、癌治療用の薬剤製造において、本発明の第一の態様の化合物を使用することに関する。
【0082】
さらに、本発明の第六の態様に従う薬剤は、化学療法剤または抗増殖剤などのようなひとつもしくはそれ以上の活性成分を含む。特に、本発明の第六の態様に従う薬剤は、アルキル化剤(例えば、シクロホスファミド、イフォスファミド、メルファラン、クロラムブシル、BCNU、CCNU、デカルバジン、プロカルバジン、ブスルファンまたはチオテパなど)、代謝拮抗物質(例えば、シタラビン、ゲムシタビン、6−メルカプトプリン、6−チオグアニン、フルダラビンおよびクラドリビンなど)、アンスラサイクリン(例えば、イダルビシン、エピルビシンなど)、抗生物質(例えば、ブレオマイシンなど)、カンプトテシン、エトポシド、ビンカアルカロイド、タクサン(例えば、タキソール、パクリタクセルおよびドセタクセルなど)、および/または、プラチニウム(例えば、シスプラチンまたはオキサリプラチン)などのうちのひとつもしくはそれ以上を含む。
薬剤は、投与法に応じて、第一の態様に従う化合物を0.1%〜99%(w/w)、好ましくは0.1〜60%(w/w)、より好ましくは0.2〜12%(w/w)、最も好まくは0.25〜8%(w/w)含有している。
【0083】
本発明の第七の態様は、本発明の第一の態様において定義された化合物または本発明の第三の態様において定義された組成物を、それらを必要とする患者に投与することを含む癌の治療法に関する。
【0084】
好ましくは、第一の態様に従う化合物の治療有効量を提供する。
【0085】
上述したような疾患の治療に有効な、第一の態様に従う化合物の量は、治療すべき疾患の性質および重篤度、それを必要とする患者の体重によって異なる。しかしながら、体重70kgの成人に対する単回投与量には、通常、本発明に従う化合物を一日あたり0.01〜100mg、例えば、0.1〜50mg、好ましくは0.5〜6mg含む。単位投与量は一日1回、またはそれ以上に分けて投与でき、例えば、一日2、3もしくは4回、通常は一日1〜3回、より好ましくは一日1もしくは2回に分けて投与する。一日投与量の総量範囲は、約0.0001〜0.2mg/kg、より一般的には0.001〜0.1mg/kg、好ましくは0.01〜0.21g/kgである。好ましくは、単位投与量はカプセルまたは錠剤の形状で提供する。
【0086】
第一の態様に従う化合物または第三の態様に従う組成物は、別異の癌治療の前に、それらと組み合わせて、および/または、それらに続いて提供できることは明らかである。故に、本発明に従う化合物および組成物は、化学療法、放射線療法、手術などの前に、それらと組み合わせて、および/またはそれらに続いて投与できる。本発明に従う化合物および組成物は、癌療法の副作用の治療に使用するためのひとつもしくはそれ以上の活性成分(例えば、制吐剤、抗生物質など)と組み合わせて投与できる。
【0087】
本発明に従う化合物および組成物は、医師が決定した期間中に、単回治療クールとして、または反復治療クールとして提供できる。
【0088】
本発明に従う各態様についての全ての好ましい特徴は、必要な変更を加え、他の全ての態様に適用できる。
【0089】
本発明は多様な方法で実用化でき、多数の特定の実施形態を実施例によって記載することにより、添付の図面を参照しながら本発明を説明する。
【実施例】
【0090】
N,N'−ビス−4−(ヒドロキシサリシリデン)フェニレンジアミン−ニッケル(II)(1)の合成
【化17】

【0091】
1,2−フェニレンジアミン(0.2800g、2.53mmol)および2,4−ジヒドロキシベンズアルデヒド(0.6901g、4.89mmol)はメタノール(50ml)に溶解し、加熱して30分間環流させた(70〜75℃)。次に、この黄色混合物にNi(OAc)2・4H2O(1.2621g、4.96mmol)を加えた。すぐに赤色固体が沈澱した。反応は、さらに3時間環流させた(70〜75℃)。その後、反応混合物を室温まで冷却させた。赤色沈殿物をろ取し、メタノール(100ml)、ジエチルエーテル(50ml)および水(50ml)で洗浄し、赤色固体として化合物1を得た。収量:0.5630g、収率53%。 IR (cm-1): 3410, 2910, 1601, 1541, 1488, 1442, 1369, 1287, 1266, 1236, 1197, 1126, 1025, 954, 860, 840, 786, 737, 657. 1H NMR (400 MHz, DMSO-d6): δ 6.21 (s, 2H, ArH); 6.23 (d, J =2.2 Hz, 2H, ArH); 7.23-7.20 (dd, J = 3.1, 5.9 Hz, 2H, ArH); 7.40 (d, J = 8.5 Hz, 2H, ArH); 8.00-7.98 (dd, J = 3.5, 6.2 Hz, 2H, ArH); 8.55 (s, 2H, -CH=N-); 10.19 (s, -OH). 13C DEPT45 NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 102.8, 107.0, 114.7, 125.7, 135.1, 153.5. ESI-MS Calcd for C20H54N2NiO4 (M+): 405.03. Found: 405.21. Anal. Calcd for C20H54N2NiO4・2H2O: C, 54.46; H, 4.11; N, 6.35. Found: C, 54.02; H, 4.12; N, 6.16.
N,N'−ビス−4−[ヒドロキシサリシリデン]−4−フルオロ−1,2−フェニレンジアミン−ニッケル(II)(2)の合成
【化18】

【0092】
4−フルオロ−1,2−フェニレンジアミン(0.2988g、2.29mmol)および2,4−ジヒドロキシベンズアルデヒド(0.6528g、4.63mmol)をメタノール(50ml)に溶解し、加熱して30分間環流させた(70〜75℃)。次に、この黒色混合物にNi(OAc)2・4H2O(1.1792g、4.64mmol)を加えた。反応はさらに3時間環流させた(70〜75℃)。この後、反応混合物を室温まで冷却させた。黒色沈殿物をろ取し、メタノール(50ml)、ジエチルエーテル(50ml)および水(50ml)で洗浄し、黒色固体として化合物2を得た。収量:0.5200g、収率49%。IR (cm-1): 3063, 1601, 1550, 1490, 1439, 1370, 1278, 1220, 1167, 1118, 979, 838, 809, 786, 730, 650, 533, 506. 1H NMR (500 MHz, DMSO-d6): δ 6.21 (s, 2H, ArH), 6.24-6.23 (t br, 1H, ArH), 6.25 (d, J = 2.2, 1H, ArH), 7.14-7.10 (td, J = 2.4, 8.5, 1H, ArH), 7.39-7.36 (dd, J = 3.5, 8.5, 2H, ArH), 7.93-7.91 (dd, J = 2.5, 11.6, 1H, ArH), 8.03-8.00 (dd, J = 5.3, 9.2 ,1H, ArH), 8.47 (s, 1H, -CH=N-), 8.51 (s, 1H, -CH=N-), 10.24 (s, -OH). 13C NMR (400 MHz, DMSO-d6): δ 102.5, 103.4, 107.7, 108.1, 112.8 (2JCF = 23 Hz), 114.4 (4JCF = 8 Hz), 115.9 (3JCF = 9 Hz), 135.8 (2JCF = 18 Hz), 138.8, 143.7 (3JCF = 9 Hz), 154.1, 154.8, 159.5, 161.9, 164.2, 166.2 (1JCF = 256 Hz), 166.8. 19F NMR (500 MHz, DMSO-d6, 390K): δ -116.83 (m br). ESI-MS Calcd for C20H13FN2NiO4 (M+): 423.02 a.m.u. Found: 423.01 a.m.u. Anal. Calcd for C20H13FN2NiO4・2H20: C, 52.33; H, 3.73; N, 6.10. Found: C, 51.65; H, 3.73; N, 6.13.
N,N’−ビス[4−[[1−(2−エチル)ピペリジン]オキシ]サリシリデン]フェニレンジアミン−ニッケル(II)(3)の合成
【化19】

【0093】
乾燥DMF(25ml)中に化合物1(0.1310g、0.30mmol)、1−(2−クロロエチル)ピペリジンヒドロクロリド(0.2199g、1.17mmol)およびK2CO3(0.2869g、2.05mmol)を懸濁させ、これをN2下、72時間撹拌した。72時間経過後、橙色沈澱が生じ、これをろ取してDMF(5ml)およびジエチルエーテル(5ml)で洗浄した。得られた固体をCH2Cl2に溶解し、水で洗浄した。減圧下、有機層を溶媒留去し、橙色固体として化合物3を得た。収量:0.0886g、収率47%。IR (cm-1): 3258, 2930, 2790, 1605, 1577, 1514, 1500, 1473, 1433, 1385, 1368, 1319, 1268, 1248, 1200, 1153, 1122, 1090, 1032, 997, 941, 915, 853, 834, 818, 777, 767, 651, 621, 584, 554, 536, 516. 1H NMR (500 MHz, DMSO-d6): δ 1.38-1.37 (br m, 4H, piperidine H-4), 1.52-1.47 (m, 8H, piperidine H-3, H-5), 2.42 (br, 8H, piperidine H-2, H-6), 2.65-2.63 (t, J = 5.8 Hz, 4H, CH2N-), 7.09-4.07 (t, J = 5.8 Hz, 4H, CH2O-), 6.33-6.30 (dd, J = 2.2, 8.9 Hz, 2H, ArH), 6.35 (d, J = 1.8 Hz, 2H, ArH), 7.26-7.24 (dd, J = 3.2, 6.2 Hz, 2H, ArH), 7.47 (d, J = 8.9 Hz, 2H, ArH), 8.05-8.03 (dd, J = 3.3, 6.2 Hz, 2H, ArH), 8.66 (s, 2H, -CH=N-). 13C DEPT45 NMR (400 MHz, CDCl3-d6) δ 25.0, 26.7, 55.8, 58.5, 66.7, 104.0, 109.9, 115.3, 127.4, 135.1, 153.2. ESI-MS Calcd for
C34H40N4NiO4 (M+): 627.4 a.m.u. Found: 627.3 a.m.u. mp: 211.0-213.7.Anal. Calcd for C34H40N4NiO4: C, 65.09; H, 6.43; N, 8.93; Found: C, 65.29; H, 6.40; N, 8.54.
N,N’−ビス[4−[[1−(2−エチル)ピペリジン]オキシ]サリシリデン]−4−フルオロ−1,2−フェニレンジアミン−ニッケル(II)(4)の合成
【化20】

【0094】
乾燥DMF(30ml)中に化合物2(0.1310g、0.31mmol)、1−(2−クロロエチル)ピペリジンヒドロクロリド(0.2335g、1.24mmol)およびK2CO3(0.3036g、2.17mmol)を懸濁させ、これをN2下、72時間撹拌した。72時間経過後、橙色沈澱が生じ、これをろ取してDMF(5ml)およびジエチルエーテル(5ml)で洗浄した。得られた固体をCH2Cl2に溶解し、水で洗浄した。減圧下、有機層を溶媒留去し、橙色固体として化合物4を得た。収量:0.11g、収率55%。 IR (cm-1): 2933, 2781, 1662, 1605, 1581, 1504, 1470, 1432, 1370, 1318, 1278, 1246, 1214, 1177, 1120, 1025, 982, 964, 945, 834, 788, 769, 656, 541, 518. 1H NMR (500 MHz, DMSO-d6): δ 1.39-1.38 (m, 4H, piperidine H-4), 1.51-1.49 (m, 8H, piperidine H-3, H-5), 2.42 (br, 8H, piperidine H-2, H-6), 2.66-2.64 (t, J = 5.6 Hz, 4H, -CH2N-), 4.10-4.07 (m, Hz, 4H, -CH2O-), 6.33-6.31 (br dd, 2H, ArH), 6.35 (br, 2H, ArH), 7.17-7.14 (br td, J = 8.3 Hz, 1H, ArH), 7.45-7.42 (br td, J = 7.18, 2H, ArH), 7.96-7.94 (br, 1H, ArH), 8.06-8.03 (dd, J = 9.1, 5.3 Hz, 1H, ArH), 8.61 (s, 1H, -CH=N-), 8.57 (s, 1H, -CH=N-). 13C DEPT45 NMR (400 MHz, CDCl3-d6) δ 24.1, 25.8, 54.9, 57.6, 57.6, 65.9, 101.5, 102.9, 109.8, 113.1 (2JCF = 24 Hz), 114.6 (3JCF = 10 Hz), 134.2 (2JCF =
16 Hz), 151.9, 152.4. 19F NMR (500 MHz, CDCl3-d6): δ -115.53 (m br). ESI-MS Calcd for C34H39FN4NiO4 (M+): 645.4 a.m.u. Found: 645.2 a.m.u. mp: 204.9-206.5. Anal. Calcd for C34H39FN4NiO4: C, 63.27; H, 6.09; N, 8.68; Found: C, 62.99; H, 6.12; N, 8.72
2−ヒドロキシ−4−(2−(ピペリジン−1−イル)エトキシ)ベンズアルデヒド(5)の合成
化合物5は、Barberaら、Liquid Cryst.,2003,30(6),651-661に報告されている合成法に変更を加えることによって調製した。
【0095】
乾燥アセトン(150ml)中に2,4−ジヒドロキシベンズアルデヒド(3.00g、21.29mmol)、1−(2−クロロエチル)ピペリジンヒドロクロリド(3.9969g、21.28mmol)およびNaHCO3(3.5764g、42.57mmol)を懸濁させたものを68時間環流させた(60〜65℃)。68時間後、ろ過によって過量の塩を除去し、アセトンを留去して乾燥させ、次に、酢酸エチルを溶媒としたシリカゲルカラムクロマトグラフィーによって精製した。溶出フラクションを濃縮することにより、黄色固体として化合物5を得た(1.6501g、収率29%)。 1H NMR (400 MHz, CDCl3): δ 1.34-1.40 (m, 2H, -O-CH2-CH2-CH2-N-), 1.51-1.56 (q, 4H, piperidine H-3, H-5), 2.42-2.45 (br, 4H, piperidine H-2, H-6), 2.69-2.72 (t, 2H, -CH2N-, 3JHH = 6.0 Hz), 4.06-4.09 (t, 2H, -CH2O-, 3JHH = 6.0 Hz), 6.34-6.35 (d, 1H, ArH, 3JHH = 2.4 Hz), 6.44-6.47 (dd, 1H, ArH, 3JHH = 2.4 Hz, 4JHH = 8.8 Hz), 7.32-7.35 (d, 1H, ArH, 3JHH = 8.8 Hz), 9.63 (s, 1H, -CH=O). 13C NMR (400 MHz, CDCl3): 23.0, 24.8, 54.0, 56.4, 65.4, 100.2, 107.7, 114.1, 134.1, 163.4, 165.0, 193.3.
N,N'−ビス−4−(ヒドロキシサリシリデン)フェニレンジアミン−オクソバナジウム(IV)(6)の合成
化合物6は、Plittら、J.Inorg.Biochem.,2005,99,1230-1237報告されている合成法に変更を加えることによって調製した。
【0096】
1,2−フェニレンジアミン(0.3931g、3.63mmol)のメタノール(10ml)溶液を2,4−ジヒドロキシベンズアルデヒド(1.0033g、7.26mmol)のメタノール性溶液(10ml)溶解物中に加え、1時間環流させた。黄色溶液を室温まで冷却し、次に、このメタノール性溶液にVOSO4・H2O(0.5914g、3.63mmol)の水(20ml)溶液、その後Et3N(1ml)を加え、さらに3時間環流させた。生成した緑色沈殿物をろ取し、メタノール(50ml)、水(25ml)およびエーテル(50ml)で洗浄することにより、緑色固体として化合物6を得た。収量:1.2703g、収率84%。 IR (KBr, cm-1): 1600 (C=N), 1542 (Ar), 1493 (Ar), 984 (V=O), 849 (Ar), 803 (Ar), 748 (Ar). FAB+-MS Calcd for C20H18N2O7V (M+): 413.23. Found: 414 a.m.u. UV/Vis (DMSO) λ (nm) (log ε, M-1*cm-1): 336 (4.23), 398 (4.36). Anal. Calcd for C20H18N2O7V ・2H2O: C, 53.46; H, 4.04; N, 6.23. Found: C, 53.83; H, 3.79; N, 5.90.
N,N'−ビス[4−[(2−エチル)モルホリン]オキシ]サリシリデン−1,2−フェニレンジアミン−ニッケル(II)(7)の合成
【化21】

【0097】
DMF(35ml)中に化合物1(0.3610g、0.89mmol)、4−(2−クロロエチル)モルホリンヒドロクロリド(0.9781g、5.26mmol)およびK2CO3(1.0125g、7.33mmol)を懸濁させたものを90℃で一晩加熱した。反応完了後、ろ過によって塩を除去した。DMFは減圧蒸留した。得られた固体は、CH2Cl2:n−ペンタン混合物を用いて再結晶することにより、赤色固体の化合物7を得た。収量:0.4865g、収率86%。 IR (KBr, cm-1): 2801 (CH2), 1615 (C=N), 1577 (Ar), 1515 (Ar), 1117 (C-O), 854 (Ar), 753 (Ar). 1H NMR (400 MHz, DMSO-d6): 2.48 (br s, 8H, -CH2-O-CH2-), 2.51-2.52 (t, 4H, -CH2N-, 3JHH = 1.8 Hz), 3.58-3.60 (t, 8H, -CH2-N-CH2-, 3JHH = 5.3 Hz), 4.10-4.13 (t, 4H, CH2O-, 3JHH = 4.4 Hz), 6.31-6.34 (dd, 2H, ArH, 3JHH = 8.8 Hz, 4JHH = 6.4 Hz), 6.36 (br d, 2H, ArH), 7.24-7.26 (dd, 2H, ArH, 3JHH = 6.3 Hz, 4JHH = 3.3 Hz), 7.46-7.48 (d, 2H, ArH, 3JHH = 8.8 Hz), 8.02-8.04 (dd, 2H, ArH, 3JHH = 6.9 Hz, 4JHH = 3.6 Hz), 8.64 (s, 2H, -CH=N-). 13C NMR (400 MHz, DMSO-d6): δ 54.0, 57.4, 66.3, 102.0, 108.2, 115.8, 127.2, 143.1, 155.1, 165.1, 167.8. ESI-MS Calcd for C32H36N4NiO6 (M+): 631.3 a.m.u. Found: 631 a.m.u. Anal. Calcd. For C32H36N4NiO6・1H2O: C, 59.2; H, 5.90; N, 8.63. Found: C, 59.3
6; H, 5.47; N, 8.55.
N,N'−ビス[4−[(2−エチル)モルホリン]オキシ]サリシリデン−4−フルオロ−1,2−フェニレンジアミン−ニッケル(II)(8)の合成
【化22】

【0098】
DMF(50ml)中に化合物2(0.2986g、0.68mmol)、4−(2−クロロエチル)モルホリンヒドロクロリド(0.8073g、4.34mmol)およびK2CO3(0.9170g、6.63mmol)を懸濁させたものを90℃で20時間加熱した。反応完了後、ろ過によってK2CO3を除去した。DMFは減圧蒸留した。得られた固体は、CH2Cl2:ペンタン混合物を用いて2回再結晶することにより、赤色固体の化合物8を得た。収量:0.3651g、収率83%。IR (KBr, cm-1): 2954 (CH2), 1610 (C=N), 1584 (Ar), 1505 (Ar), 1116 (C-O), 832 (Ar), 788 (Ar). 1H NMR (400 MHz, CDCl3): 2.57-2.59 (t, 8H, -CH2-O-CH2-, 3JHH = 4.4 Hz), 2.79-2.82 (t, 4H, -CH2N-, 3JHH = 5.6 Hz), 3.74-3.76 (t, 8H, -CH2-N-CH2-, 3JHH = 4.6 Hz), 4.07-4.10 (t, 4H, CH2O-, 3JHH = 5.6 Hz), 6.23-6.26 (dd, 1H, ArH, 3JHH = 8.8 Hz, 4JHH = 2.3 Hz), 6.27-6.29 (dd, 1H, ArH, 3JHH = 8.8 Hz, 4JHH = 2.3 Hz), 6.49-6.50 (br, 2H, ArH), 6.80-6.84 (td, 1H, ArH, 3JHH = 9.4 Hz, 3JHF= 2.2 Hz), 7.05-7.24 (d, 2H, ArH, 3JHH = 25.3 Hz, 4JHH = 8.9 Hz), 7.21-7.24 (dd, 1H, ArH, 3JHF = 9.6 Hz, 4JHH = 2.2 Hz), 7.56-7.60 (dd, 1H, ArH, 3JHH = 9.1 Hz, 4JHF = 4.9 Hz), 7.80 (s, 1H, -CH=N-), 7.86 (s, 1H, -CH=N-). 13C NMR (400 MHz, CDCl3): δ 54.1, 57.3, 56.8, 66.9, 101.5, 101.7, 102.8, 108.8
, 109.3, 113.3 (2JCF = 24 Hz), 114.6 (4JCF = 15 Hz), 114.7 (3JCF = 10.3 Hz), 134.3 (2JCF = 17 Hz), 139.0, 143.8 (3JCF = 9 Hz), 152.0, 152.4, 160, 162.5, 164.7, 166.4 (1JCF = 253 Hz), 168.6. 19F NMR (500 MHz, CDCl3): δ -114.2 (br). FAB+-MS Calcd for C32H35FN4NiO6 (M+): 649.3 a.m.u. Found: 649 a.m.u. Anal. Calcd. For C32H35FN4NiO6・2H2O: C, 56.08; H, 5.74; N, 8.17. Found: C, 55.95; H, 5.68; N, 8.09.
N,N'−ビス[4−[[1−(2−エチル)ピペリジン]オキシ]サリシリデン]フェニレンジアミン−亜鉛(II)(9)の合成
1,2−フェニレンジアミン(1.0363g、1.04mmol)および5(0.4605g、1.85mmol)をエタノール(25ml)に溶解し、2時間加熱環流させた。溶液の色はすぐに黄色になった。減圧下、エタノールを留去し、生成した黄色固体をメタノール(15ml)に溶解し、この黄色溶液中にZn(OAc)2・2H2O(0.2277g、1.04mmol)を一度に加えた。これを3時間環流させた。溶液を室温まで冷却させた後、黄色沈殿物をろ取し、メタノール(50ml)で洗浄することによって明黄色固体を得た。収量0.3908g、収率59%。 IR (KBr, cm-1): 2934 (CH2), 2784 (CH-O), 1608 (C=N), 1581 (Ar), 1522 (Ar), 1190 (C-O), 1124 (Ar), 1038 (Ar), 746 (Ar). 1H NMR (400 MHz, DMSO-d6): δ 1.38-1.39 (br, 4H, piperidine H-4), 1.48-1.53 (m, 8H, piperidine H-3, H-5), 2.43 (br, 8H, piperidine H-2, H-6), 2.64-2.66 (t, 4H, -CH2N-, 3JHH = 5.7 Hz), 4.05-4.08 (t, 4H, -CH2O-, 3JHH = 5.7 Hz), 6.14-6.17 (dd, 2H, ArH, 3JHH = 9.0, 4JHH = 2.2 Hz), 6.19 (br d, 2H, ArH), 7.28-7.30 (br, 4H, ArH), 7.78-7.81 (dd, 2H, 3JHH = 6.0, 4JHH = 3.0 Hz), 8.9 (s, 2H, -CH=N-). 13C DEPT45 NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 24.4, 26.0, 54.8, 57.7, 65.8, 104.6, 105.2, 114.7, 116.3, 126.8, 137.9, 139.8, 161.4, 164.6, 174.7. FAB+-MS Calcd for C34H40N4ZnO4 (M+): 634.1 a.m.u. Found: 633 a.m.u. Anal. Calcd for C3
4H40N4ZnO4: C, 64.40; H, 6.36; N, 8.84; Found: C, 64.55; H, 6.18; N, 9.05.
N,N'−ビス[4−[[1−(2−エチル)ピペリジン]オキシ]サリシリデン]フェニレンジアミン−オクソバナジウム(IV)(10)の合成
【化23】

【0099】
DMF(35ml)中に化合物6(0.3233g、0.78mmol)、1−(2−クロロエチル)ピペリジンヒドロクロリド(0.5753g、3.12mmol)およびK2CO3(0.7700g、5.57mmol)を懸濁させたものを室温で72時間加熱した。72時間後、ろ過によって過量の塩を除去し、DMFを減圧蒸留した。得られた生成物は、CH2Cl2とペンタンとの混合物を用いて再結晶することにより、緑色固体の化合物10を得た。収量:0.3021g、収率61%。 IR (KBr, cm-1): 1613 (C=N), 1521 (Ar), 1422 (Ar), 1125 (C-O), 985 (V=O), 839 (Ar), 798 (Ar), 747 (Ar). FAB+-MS Calcd for C34H40N4O5V (M+): 635.65. Found: 636 a.m.u. UV/Vis (DMSO) λ (nm) (log ε, M-1*cm-1): 334 (4.29), 398 (4.42). Anal. Calcd for C34H40N4O5V: C, 64.24; H, 6.34; N, 8.81. Found: C, 64.10; H, 6.45; N, 8.68.
4−ヒドロキシ−フェニル−1,10−フェナントロリン−2−カルボキサミド(11)の合成
【化24】

【0100】
1,10−フェナントロリン−2−カルボニルクロリド(1g、4.4mmol)を乾燥脱気DCM(40ml)に懸濁させ、この溶液に、用時蒸留したトリエチルアミン(1.78ml、13.5mmol)を加えた。トリメチルシリル保護した4−アミノフェノール(1.6g、8.9mmol)を乾燥脱気DCM(10ml)に溶解し、これを、窒素雰囲気下、管状輸送装置を通してフェナントロリン溶液に滴下した。この溶液を12時間加熱環流させることにより、淡色の沈澱を伴う褐色溶液が得られた。反応混合物をろ過し、得られた暗褐色溶液を減圧濃縮した。次に、これをシリカゲルカラムにかけ、エタノール1%、酢酸エチル99%からなる溶液を用いて溶出させたところ、黄色固体のPhenL4(11)が得られた(収量=0.98g、収率70%)。 1H NMR (DMSO-d6): δ = 10.9 (s, Hh, 1H), 9.37 (s, Hk, 1H) 9.21-9.19 (dd, Ha, Jab = 4.4 Hz, Jac = 1.6 Hz, 1H), 8.76-8.74 (d, Hg, Jgf = 8.4 Hz, 1H), 8.60-8.56 (dd, Hc, Jcb = 8.0, Hz, Jca = 1.6 Hz, 1H), 8.48-8.46 (d, Hf, Jfg = 8.4 Hz, 1H), 8.13 (m, Hd, He, 2H), 7.89-7.86 (dd, Hb, Jba = 4.4, Jbc = 8.0 Hz, 1H), 7.73-7.71 (d, Hi, Hm, Jij = Jlm = 8.8 Hz, 2H), 6.83-6.81 (d, Hj, Hl, Jij = Jlm = 8.8 Hz, 2H) ppm. 13C NMR (DMSO-d6): δ = 162.34 (C=O), 154.43, 150.38 (C-Ha), 149.29, 138.86 (C-Hg), 137.80 (C-Hc), 131.43, 130.85, 130.43, 129.52 (C-Hd), 128.75, 127.15 (C-He), 124.69 (C-Hb), 122.34 (C-Hi/m), 121.69 (C-Hf), 115.70 (C-Hj/l) ppm. IR (KBr): v = 3425, 3232, 1648 (C=O), 1595, 1536, 1514, 1439, 1265, 1226, 1134, 1083, 1037, 865, 825, 717. ES MS: m/z [PhenL4 + H+] = 316. Elemental analysis for C19H13N3O2.C2H5O: Expected C, 69.79%; H, 5.30%; N, 11.63%. Found C, 69.85%, H, 4.99%, N, 11.74%.
1,10−フェナントロリン−2−カルボキサミド−フェニル−4−エトキシ−ピペリジン(12)の合成
【化25】

【0101】
化合物11(150mg、0.47mmol)は、乾燥脱気DMF(20ml)に懸濁させた。 この懸濁液にNaH(鉱物油中に60%分散)(85mg、2.3mmol)を加え、110℃に加熱した。クロロエチルピペリジン(175mg、0.95mmol)をDMF(40ml)に溶解し、これを2時間かけて懸濁液に滴下したところ、この間に、溶液の色が濃赤色から透明な黄橙色に変化した。添加完了後、反応混合物を放置して冷却し、室温で3日間撹拌し続けた。次に、反応混合物をろ過したところ、黄色溶液が得られ、これを35℃で加熱しながら減圧濃縮することにより、黄色固体が得られた。この黄色固体をメタノールに溶解した溶液にHCl(水溶液)を加え、さらに、Et3Nを加えて溶液を中和した。得られた溶液を減圧濃縮し、シリカゲルカラムにかけ、0.5%のEt3N添加酢酸エチル中、エタノール濃度を0〜10%まで変化させた溶液を用いて溶出させた。あわせたフラクションを溶媒留去することにより、黄色固体のPhenL5(12)を得た(収量=175mg、収率85%)。 1H NMR (DMSO-d6): δ = 10.8 (s, Hh, 1H), 9.23-9.21 (dd, Ha, Jab = 4.8 Hz, Jac = 1.2 Hz, 1H), 8.77-8.75 (d, Hg, Jgf = 6.8 Hz, 1H), 8.60-8.58 (dd, Hc, Jcb = 6.8, Hz, Jca = 1.2 Hz, 1H), 8.48-8.46 (d, Hf, Jfg = 6.8 Hz, 1H), 8.14 (m, Hd, He, 2H), 7.84-7.83 (dd, Hb, Jba = 4.4, Jbc = 8.0 Hz, 1H), 7.84-7.83 (d, Hi, Jij = 7.2 Hz, 2H), 7.03-7.00 (d, Hj, Jij = 7.2 Hz, 2H), 4.10-4.08 (t, Hk, Jkl = 4.8 Hz, 2H), 2.68-2.66 (t, Hl, Jlk = 4.8 Hz, 2H), 2.45 (m, Hm, 4H), 1.50 (m, Hn, 4H), 1.39 (m, Ho, 2H) ppm. 13C NMR (DMSO-d6): δ = 162.66 (C=O), 155.66, 150.81 (C-Ha), 145.60, 144.35, 138.96 (C-Hg), 137.28 (C-Hc), 132.01, 130.48, 129.65, 128.99 (C-Hd), 126.92 (C-He), 124.42 (C-Hb), 122.12 (C-Hi), 121.56 (C-Hf), 115.29 (C-Hj), 66.41 (C-Hk), 58.32 (C-Hl), 54.92 (C-Hm), 26.42 (C-Hn), 24.58 (C-Ho) ppm. IR (KBr): v = 3356, 2923, 1664 (C=O), 1540, 1509, 1491, 1265, 1242, 1229, 1137, 1043, 1034, 950, 853, 833, 821, 719. ES MS: m/z [PhenL5 + H+] = 427. Elemental analysis for C26H26N4O2.H2O: Expected C, 70.25%; H, 6.35%; N, 12.60%. Found C, 70.07%, H, 5.99%, N, 12.45%.
1,10−フェナントロリン−2−カルボキサミド−フェニル−4−エトキシ−ピペリジンプラチナ(II)クロリド(13)の合成
【化26】

【0102】
化合物12(40mg、0.09mmol)をエタノール(15ml)に溶解することにより、淡黄色溶液を得た。この溶液にK2PtCl4(30mg、0.09mmol)の水溶液を加え、得られた混合物を6時間加熱環流することにより、赤褐色の溶液が得られた。これを室温で一晩撹拌し続けた。反応混合物をろ過することによって赤色溶液が得られ、これを減圧濃縮することにより、明赤色固体を得た。この固体を少量のメタノールで2回、エーテルで1回洗浄することにより、明橙色固体のPhenL5Pt(13)を得た(収量=25mg、収率44%)。 1H NMR (DMSO-d6): δ = 9.23-9.21 (dd, Ha, 1H), 9.01-8.99 (m, Hc, Hg, 2H), 8.29 (m, Hd, He, 2H), 8.13-8.11 (dd, Hb, 1H), 8.08-8.07 (d, Hf, 2H), 7.22 (d, Hi, 2H), 6.89 (d, Hj, 2H), 4.10-4.08 (t, Hk, Jkl = 4.8 Hz, 2H), 2.68-2.66 (t, Hl, Jlk = 4.8 Hz, 2H), 2.45 (m, Hm, 4H), 1.50 (m, Hn, 4H), 1.39 (m, Ho, 2H) ppm. 13C NMR (DMSO-d6): δ = 150.88, 139.80, 127.40, 130.30, 128.98, 127.67, 124.24, 113.95 ppm. IR (KBr): v (cm-1) = 3424, 1626 (C=O), 1603, 1504, 1235. ES MS: m/z [PhenL5PtCl + H+] = 657. Elemental analysis for C26H25N4O2PtCl・3KCl: Expected C, 35.50%; H, 2.86%; N, 6.36%. Found C, 35.10%, H, 2.94%, N, 6.11%.
1,10−フェナントロリン−2−カルボキサミド−フェニル−4−エトキシ−ピペリジンパラジウム(II)クロリド(14)の合成
【化27】

【0103】
化合物12(50mg、0.12mmol)およびテトラブチルアンモニウムアセタート(93mg、0.29mmol)を乾燥脱気DMF(15ml)に溶解することにより、淡黄色溶液を得た。このリガンド溶液を撹拌しながら、パラジウム(II)シクロオクタジエンジクロリド(33mg、0.12mmol)のDMF(5ml)溶解液を管状輸送装置を通して添加した。30分後、反応物の色が明赤橙色に変わった。これを室温で一晩撹拌し続けた。反応混合物をろ過し、得られた明赤橙色溶液は、35℃に加熱しながら減圧濃縮した。得られた橙色固体は、少量のメタノールで3回、エーテルで1回洗浄することにより、PhenL5Pd(14)を得た(収量=12mg、収率20%)。 1H NMR (DMSO-d6): δ = 8.93-8.90 (m, Ha, Hc, Hg, 3H), 8.31 (m, Hd, He, 2H), 8.12-8.10 (m, Hb, Hf, 2H), 7.21 (d, Hi, Jij = 7.2 Hz, 2H), 6.85 (d, Hj, Jij = 7.2 Hz, 2H), 4.10-4.08 (t, Hk, Jkl = 4.8 Hz, 2H), 2.68-2.66 (t, Hl, Jlk = 4.8 Hz, 2H), 2.45 (m, Hm, 4H), 1.50 (m, Hn, 4H), 1.39 (m, Ho, 2H) ppm. 13C NMR (DMSO-d6): δ = 140.59, 151.67, 129.78, 128.72, 127.14, 127.93, 124.24, 113.68 ppm. IR (KBr): v (cm-1) = 3433, 1622 (C=O), 1600, 1235, 863, 700. ES MS: m/z [PhenL5PdCl + H+] = 567.
貯蔵溶液の調製
化合物3および4は、DMSO(75容量%)、H2O(20%)および1mMのHCl(5%)を混合した溶液に溶解し、8mMの貯蔵溶液を調製した。錯体は、DMSOまたはメタノールに溶解し、10、5または2.5mMの貯蔵溶液を調製した。全ての溶液は−80℃で保存し、使用直前に溶解および希釈した。
【0104】
FRET測定
全てのオリゴヌクレオチドおよびそれらの蛍光コンジュゲートは、Eurogentec社(英国)またはInvitrogen社(英国)から購入した。DNAは溶解し、貯蔵20μM溶液として調製した。全ての希釈操作は、50mMのカコジル酸カリウム緩衝液(pH7.4)を用いて行った。化合物がG−四本鎖DNAを安定化させる能力については、蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)アッセイに変更を加え、96ウェル様式中でのハイスループットスクリーンとして用いることによって調査した。FRETプローブとして使用したラベルされたオリゴヌクレオチドF21T(5−FAM−dGGG(TTAGGG)3−TAMRA−3);ドナーフルオロフォアFAM(6−カルボキシフルオレセイン);アクセプターフルオロフォアTAMRA(6−カルボキシ−テトラメチルローダミン)は、50mMのカコジル酸カリウム緩衝液(pH7.4)を用い、貯蔵溶液から希釈して正しい濃度(400nM)に調製し、次に、92℃で5分間加熱(FRETプロトコールA)することにより、または、85℃で10分間加熱(FRETプロトコールB)することによってアニールさせ、続いて、加熱ブロック内で室温まで冷却した。化合物は、使用日に貯蔵濃縮液(上述)から調製した。最終溶液は、始めはDMSO中で1:10希釈し、その後の段階では、全て50mMのカコジル酸カリウム緩衝液(pH7.4)を用いた。従って、反応溶液(20μMのリガンド濃度において)中のHClの最高濃度は200μMであり、これは使用する緩衝液の許容範囲内である。96ウェルプレート(MJ Research社、マサチューセッツ州ウォルサム)は、希釈ロボットを用いて調製することにより、各ウェル中のDNA濃度は200nMになり、また、適切な薬物濃度が得られた。測定は、DNA Engine Opticon(MJ Research社)を用い、励起波長を450〜495nm、検出波長を515〜545nmとして行った。蛍光の読み取りは、30〜100℃の間で0.5℃間隔で行い、各読み取りの前30秒間は一定温度で維持し、安定した値が得られるようにした。データの最終分析は、Origin 7.0プログラム(OriginLab社、マサチューセッツ州ノーザンプトン)に記されたスクリプトを用いて行った。また、Origin 7.0プログラム中の優れた曲線あてはめ機能を用いることにより、[conc]ΔTm=20の値の計算に対する適切な曲線を得た。
【0105】
TRAP(テロメア反復増幅プロトコール)アッセイ
2種類のTRAPアッセイプロトコールを用い、本発明に従う化合物存在下におけるテロメラーゼの活性を評価した。TRAPアッセイプロトコールAおよびBは、公開されている標準的なTRAPプロトコールに変更を加えたものである。
【0106】
TRAPアッセイプロトコールA
化合物存在下におけるテロメラーゼ活性は、公開されている標準的なTRAPプロトコールに変更を加えたものを用いて評価し、酵素源としては、対数増殖過程にあるA2780ヒト卵巣腫瘍細胞由来の細胞抽出物を用いた。TRAPアッセイは2段階で行い、すなわち、第一段階であるプライマー伸長段階、およびそれに続き、検出を可能にするためのテロメラーゼ生成物のPCR増幅である。第一段階では、TSフォワードプライマー(0.1μg;5−AATCCGTCGAGCAGAGTT−3)、TRAP緩衝液(20mMのTris-HCl(pH8.3)、68mMのKCl、1.5mMのMgCl2、1mMのEGTA、0.05%(v/v)のTween-20)、BSA(0.05μg)およびdNTPs(それぞれ125μM))を含む主反応混合物(40μl)を調製した。次に、薬物(HCl塩の溶液として調製)添加またはなしの状態で、タンパク質(1μg)を反応混合物と30℃で10分間インキュベートした。テロメラーゼを94℃、4分間加熱インキュベートして不活化し、20℃まで冷却した後、ACXプライマー(0.1μg;5'−GTG[CCCTTA]3CCCTAA−3')および2UのTaqポリメラーゼ(RedHot社、英国スレイ)を含む10μlのPCR反応混合物を各管に加え、第二段階用のPCRプロトコールを開始し、このとき、熱循環サイクルは、最初の94℃、5分間の変性期間の後、3つに分けて行った(94℃で30秒、65℃で60秒、72℃で60秒を1サイクルとし、これを30サイクル繰り返し)。次に、PCR増幅反応生成物を10%(w/v)の非変性PAGEゲルに流し、SYBR Green I(Sigma社)を用いて染色することによって可視化した。次に、ゲルスキャナーおよびGeneToolsソフトウェア(Syngene社、英国ケンブリッジ)を用いてTRAP生成物を定量することにより、telEC50値を計算した。測定は、タンパク質抽出物のみを省いた同等なTRAP−PCR条件を用いて実験した負の対照に対して行い、観察されたラダーがPCR反応のアーチファクトによるものではないことを確認した。
【0107】
TRAPアッセイプロトコールB
化合物存在下におけるテロメラーゼ活性は、既に公開されている標準的なTRAPプロトコールに変更を加えたものを用いて評価し、酵素源としては、対数増殖過程にあるA2780ヒト卵巣腫瘍細胞由来の細胞抽出物を用いた。TRAPアッセイは2つの主要な段階を経て行い、すなわち、第一段階であるプライマー伸長段階、およびそれに続き、検出を可能にするためのテロメラーゼ生成物のPCR増幅である。段階1:TSフォワードプライマー(0.1μg;5'−AATCCGTCGAGCAGAGTT−3')、TRAP緩衝液(20mMのTris-HCl(pH8.3)、68mMのKCl、1.5mMのMgCl2、1mMのEGTA、0.05%(v/v)のTween-20)、BSA(0.05μg)およびdNTPs(それぞれ125μM))を含む主反応混合物(40μl)を調製した。次に、薬物(HCl塩の溶液として調製)添加またはなしの状態で、タンパク質(1μg)を反応混合物と30℃で10分間インキュベートした。段階2:テロメラーゼを94℃、4分間加熱インキュベートして不活化し、20℃に冷却した後、QIAquickヌクレオチド除去スピンチューブを用い、溶出段階で40μlのPCR等級の水を使用した以外は使用法に記載されているプロトコールに従い、テロメラーゼ生成物の精製を行った。サンプルはSpeedVac遠心分離器を用いて乾燥させた。段階3:TSフォワードプライマー(0.1μg;5'−AATCCGTCGAGCAGAGTT−3')、TRAP緩衝液(20mMのTris-HCl(pH8.3)、68mMのKCl、1.5mMのMgCl2、1mMのEGTA、0.05%(v/v)のTween-20)、BSA(0.05μg)およびdNTPs(それぞれ125μM))を含む主反応混合物(50μl)、ACXプライマー(0.1μg;5−GTG[CCCTTA]3CCCTAA−3)および2μMのTaqポリメラーゼ(RedHot社、英国スレイ)を各管に加え、PCRプロトコールを開始した。、このとき、熱循環サイクルは、最初の94℃、5分間の変性期間の後、3つに分けて行った(94℃で30秒、61℃で60秒、72℃で60秒を1サイクルとし、これを30サイクル繰り返し)。PCR増幅反応生成物を10%(w/v)の非変性PAGEゲルに流し、SYBR Green I(
Sigma社)を用いて染色することによって可視化した。次に、ゲルスキャナーおよびGeneToolsソフトウェア(Syngene社、英国ケンブリッジ)を用いてTRAP生成物を定量することにより、telEC50値を計算した。測定は、タンパク質抽出物のみを省いた同等なTRAP−PCR条件を用いて実験した負の対照に対して行い、観察されたラダーがPCR反応のアーチファクトによるものではないことを確認した。
【0108】
コンピューターモデル図
ニッケル−サルフェン錯体とDNAとの積み重ねの状態を調べることを目的として、定性的コンピューターモデルを作成した。これはMaestro,Jaguarを用いて行った。金属錯体は、LAV3P基本セットおよびHFイニシャルゲスLFT+dd法を利用したDFTを用いて最適化した。最適化した金属錯体を用いたドッキングを図5に示す。定性的モデルに使用した四本鎖DNAの構造は、ヒトテロメアリピート配列5'−D(ApGpGpGpTpTpApGpGpGpTpTpApGpGpGpTpTpApGpGpG)−3'(PDBコード:1KF1)に対応していた。これらの初期分子モデル化研究は、これまでのところ定量的には行われていないが、これは、四本鎖に関してニッケル原子をパラメーター化するという問題における重要な任務である。本段階ではモデル化は定性的ではあるが、側鎖を有するNi錯体の性質により、示された位置に入り込んでいる(図5参照)。
【0109】
スルホローダミンB(SRB)増殖阻害アッセイ
増殖阻害はスルホローダミンBアッセイを用いて測定した。細胞は、単回投与量の薬物に接触させ、4日間接触させた後に細胞生存率を測定した。IC50値(細胞増殖が50%阻害される濃度)の確立を目的として、広範囲の薬物濃度でこの実験を行った。96ウェルのマイクロタイタープレートに4000個の細胞を播種し、一晩放置して付着させた。HCl塩またはKOH塩(上述の貯蔵溶液の調製を参照)として溶解した化合物は、滅菌水で溶解して1mM溶液にした後に培地に溶解し、最終濃度を0.05、0.25、1、5および25μMにし、これらを細胞の入ったウェルに加えた(ひとつの濃度につき8ウェルを使用)。96時間インキュベートした後、残った細胞を10%(w/v)の氷冷トリクロロ酢酸で固定し(30分間)、1%(w/v)の酢酸で調製した0.4%のスルホローダミンBで染色した(15分間)。各薬物濃度に対する540nmでの平均吸光度は、対照である未処理ウェルの吸光度に対する%で表し、化合物に対するIC50値(細胞増殖を50%阻害するのに必要な濃度)を求めた。
【0110】
結果
【化28】

【0111】
化合物1および2は、ピペリジンを用いて機能化し(図式1に示す)、置換された誘導体3および4を得た。酸性寄りの条件下(pH範囲は5〜6)では、錯体3および4は水溶性が増し、四本鎖DNAの安定化能および調査対象であるテロメラーゼの阻害能が高まった。
【0112】
リガンド骨格上のフェニル環の電気分布が変化することにより、ニッケル(II)錯体がG−四本鎖上に重なる能力が変わるか否かを調べることを目的として、化合物4内にフッ素置換基を導入した(図式1参照)。フッ素の電子吸引効果によってπ系内の電子密度が低下し、それによって4個のグアニンで構成される電子に富んだπ系とのより強力な相互作用が生じる。さらに、錯体内にフッ素が存在することから、これらの化合物種とDNAとの相互作用を研究するための新たなスペクトル測定手段(例えば、19F−NMRスペクトル測定など)が提供される。
【0113】
化合物3および4がG−四本鎖DNA(配列:5'−FAM−d(GGG[TTAGGG]3)−TAMRA−3')を安定化する能力については、まず始めに、FRET(蛍光共鳴エネルギー移動)溶融アッセイによって調べた(FRETプロトコールAを使用)。この実験により、2つのニッケル(II)錯体は、四本鎖DNAに対して非常に強い安定化をもたらすことが示され(錯体なしにおけるTm=59℃;濃度0.1μMまでにおけるΔTm=20℃、表1参照)、一方、二本鎖DNA(配列:5'−FAM−dTATAGCTATA−HEG−TATTAGCTATA−TAMRA−3';錯体なしにおけるTm=60℃)については、非常に低レベルの安定化に対してであっても高濃度のDNAを必要とすることから、50倍以上の選択性があることが示唆される。比較のために、三置換アクリジン化合物であるBRACO-19に対するデータを示す。
【表1】

【0114】
本発明に従う金属−サルフェン化合物が四本鎖および二本鎖DNAを安定化させる能力に関する更なる調査は、FRETプロトコールBを用いて行った。これらの化合物に関するデータは表2に示している。
【表2−1】

【表2−2】

さらに、化合物3および4について、2段階TRAPアッセイプロトコールAを用いて調べた。図2は、化合物3の濃度が高くなる(すなわち、テロメラーゼ阻害が強まる)につれ、TSプライマー上のテロメラーゼの活性によって産生されたオリゴヌクレオチドをPCR増幅させることによって生成されるラダーの強度が低下することを示している。負の対照は、タンパク質抽出物を加えないこと以外は同一の条件下で実験し、PCRアーチファクトが存在しないことを確認した。ラダーの強度は、正および負の対照に関して標準化し、用量反応曲線をあてはめて50%酵素阻害濃度(EC50値)を計算した。このアッセイを広範囲に使用し、テロメラーゼ阻害の定性的および定量的推定値を求めた。2つの錯体共に、0.1μM付近のtelEC50値を伴う高い活性を示した(化合物3および4に対し、それぞれ、telEC50=0.14±0.01および0.12±0.01μM)。このことは、3,6,9−置換アクリジンリード化合物(BRACO-19)から得られた結果と一致している。
【0115】
別のTaq阻害アッセイを行い、Taqポリメラーゼの非特異的阻害を測定した。結果から、Taqアッセイの阻害は、TRAP阻害に必要な濃度の約50倍高い濃度で生じたことが示された(化合物3および4に対し、それぞれ、5.69±0.15および4.78±1.08mM)。
【0116】
本明細書に示した結果から、平面ニッケル(II)錯体である3および4は、G−四本鎖DNAに対する優れた安定化剤であることが示された。コンピューターモデル図(図1)から、Ni2+は四本鎖構造の中心のイオンチャネルの上方に直接存在していることが予測される。故に、Ni2+イオンは、通常、イオンチャネル内および末端に配置されている複数の金属イオンのうちのひとつの交換において重要な役割を担っていると考えられる。調査を行った化合物は、四本鎖DNAと二本鎖DNAの選択性に関して驚くほどの差を示した。金属サルフェン錯体に関するこれまでの報告では、二本鎖DNAに結合することが示されていたが、化合物3および4のような特異的ペンダント側鎖を持ったサルフェン錯体に関する報告はなされていない。故に、発明者らは、これらの構造が、化合物3および4が示す四本鎖に対する選択性の要であると考えている。
【0117】
全化合物に関し、多様な癌様細胞系および正常細胞系(IMR90)に対する毒性を調べた。スルホローダミンB(SRB)増殖阻害アッセイを用い、特定の細胞系に対する薬物の急性細胞毒性を確立した。化合物3および4に関する結果を以下の表3に示す。
【表3】

【0118】
事前のイン・ビボ(in vivo)試験は錯体3を用いて行い、MAC15A腫瘍の化学療法について調べた。MAC15Aマウス結腸腺癌腫をNMRI系統マウスの皮下に移植した。マウスを以下のように処置した:
群1−未処置対照
群2−錯体3を0〜3日の間、20mg/kg腹腔内投与
結果を以下の表4にまとめている。
【表4】

【0119】
7日目に処置群2のうちの1匹のマウスが死に、体重が15%以上減少していた。結果は図5に示しているが、ここで、AA2は化合物3のことである。
【0120】

本発明に従うフェナントロリンリガンドについても試験を行った。これらの化合物を調製するために使用した合成経路は、以下の図式2によって示される:
【化29】

【0121】
パラジウム(II)錯体およびプラチナ(II)錯体は、リガンドL1〜L4を用い、パラジウム(II)シクロオクタジエンジクロリドおよびK2PtCl4をそれぞれ使用することによって生成した。L1およびL2のPt(II)/Pd(II)錯体は、溶液中では、図式3でPt(II)錯体について示しているように、二量体と平衡状態にある。
【化30】

【0122】
化合物13および14に関し、FRETプロトコールAを用いて行った実験の結果を表5にまとめている。
【表5】

【0123】
さらに、2個のフェナントロリンリガンド(L3およびL4、これらは、L1およびL2よりも遊離リガンドとしての溶解性が高い)およびL1、L2およびL4のプラチナ(II)錯体(それぞれ、化合物15、16および14)がG−四本鎖DNA(配列:5'−FAM−d(GGG[TTAGGG]3)−TAMRA−3')を安定化する能力について、FRET(蛍光共鳴エネルギー移動)溶融アッセイ(プロトコールB)によって調べ、結果を表6にまとめた:
【表6】

【0124】
さらに、これらの化合物について、2段階TRAPアッセイ(TRAPプロトコールBを使用)においてもテロメラーゼ阻害を示すか否かを調べた。
【0125】
これらの化合物に関するTRAPプロトコールBの結果を表7に示す。フェナントロリン錯体である15、16および14は、全て、20〜60μMの範囲内で50%テロメラーゼ阻害(telEC50値)を示した。
【表7】

【図面の簡単な説明】
【0126】
【図1】ニッケル(II)錯体3が、テロメア性DNAの4つのリピート配列から形成されるヒトの水平分子内四本鎖構造と結合している様子を示す図。
【図2】化合物3についてのTRAPゲルの写真。TSプライマー上のテロメラーゼの活性によって生成したオリゴヌクレオチドをPCR増幅させることによって産生された特徴的なラダーが示されている。
【図3】リガンド濃度の変化に伴って観察された四本鎖および二本鎖構造の融点変化(ΔTm)を示すグラフ。
【図4】ニッケル(II)錯体3が、テロメア性DNAの4つのリピート配列から形成されるヒトの水平分子内四本鎖構造と結合している様子を二つの視点(a)および(b)から見た図。モデルは、金属錯体と四本鎖DNAとの非常に良好な積み重なりを示しており、また、DNAの側鎖と溝との間の良好な相互作用を示している。
【図5】MAC15A腫瘍に対する化合物3の効果を示すグラフ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
化学式(I)で表される化合物または医薬品的に許容されるそれらの塩であって
【化1】

ここで、Aは、C5〜C6アリールもしくはヘテロアリール基であるかまたは存在せず、
BおよびCは、それぞれ独立して、C5〜C6アリールもしくはヘテロアリール基であり、
Mは、金属イオンまたは M=Oであり;
R1およびR2は、それぞれ独立して、水素、C1-20アルキル、C3-12炭素環、ハロゲン、C1-20ハロアルキル、OR13、CN、NO2、NR13R13、COR13、CO2R13、O−(CH2n−N(R143もしくは(CH2n−R15、CONR13R13、C3-12複素環、C1-12アルキルC3-12炭素環、C1-12アルキルC3-12複素環、であるか、あるいは、R1およびR2は、共同して、原子数5〜18の炭素環基もしくは複素環基を形成し、それらはA環に融合しており、1個もしくはそれ以上のR13基で随意に置換されており、
あるいは、R1およびR2は、それぞれ独立して
【化2】

であり、
R3、R4、R5およびR6は、それぞれ独立して、水素、ハロゲン化物、C1-12アルキル、OR13もしくはCNであり、あるいは、R3およびR5、および/または、R4およびR6は、共同して、原子数5〜6の炭素環もしくは複素環を形成し、
あるいは、R1およびR3、および/または、R2およびR4は、共同して、原子数5〜18の炭素環基もしくは複素環基を形成し、それらはA環に融合しており、1個もしくはそれ以上のR13基で随意に置換されており、
X1およびX2は、それぞれ独立して、O、SまたはNR13であり、
R7、R8、R9、R10、R11またはR12は、それぞれ独立して、水素、ハロゲン化物、OR14、O−(CH2n−N(R143もしくはO−(CH2n−R15であるか、あるいは、R7およびR8またはR10およびR11のうちの一組もしくはそれ以上は、共同して、原子数5〜12の炭素環もしくは複素環を形成し、
G1およびG2は、それぞれ独立して、OR14、O−(CH2n−N(R143もしくはO−(CH2n−R15であり、このとき、R14は、水素もしくはC1-12アルキルであり、また、R15は、HN−C(=NH)−NH2、原子数5もしくは6の炭素環もしくは複素環であり、
あるいは、G1およびG2は、共同して、以下の化合物を形成し、
【化3】

ここで、nは1〜6であり、Mは、金属イオン、M=O、もしくは空位であり;
R13は、それぞれ独立して、水素、C1-6アルキル、C3-12炭素環、C3-12複素環、C1-6アルキルC3-12炭素環、C1-6アルキルC3-12複素環、ハロゲン、CO2H、OH、NH2もしくはCONH2であり;R30、R31、R32、R33およびR34は、それぞれ独立して、C1-12アルキル、C3-12炭素環、ハロゲン、C3-12複素環、C1-6アルキルC3-12炭素環、C1-6アルキルC3-12複素環、ハロゲン、CO2H、OH、NH2もしくはCONH2である
ことを特徴とする化合物またはそれらの塩。
【請求項2】
A、BまたはC基は、それぞれ独立して、原子数6のアリールまたはヘテロアリール基であることを特徴とする請求項1記載の化合物。
【請求項3】
Mは、Ni、Pt、Co、Cu、Mn、Cr、V、Pt、Rh、Ir、Au、Pd、ZnまたはV=Oから選択されることを特徴とする請求項1記載の化合物。
【請求項4】
R1およびR2は、水素、F、Cl、CO2H、O−(CH2q−N(CH33、O−(CH2q−C5-6−炭素環、O−(CH2q−C5-6−複素環、CONH−(CH2m−炭素環またはCONH−(CH2m−複素環から選択され、ここで、mは1〜6であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載の化合物。
【請求項5】
G1またはG2は、以下の式で表される基から選択され、
【化4】

ここで、pは0または1であり、さらに、nは1〜6である
ことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項記載の化合物。
【請求項6】
化学式(Ia)で表される化合物であって、
【化5】

ここで、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10、R11、R12、X1 、X2、M、G1およびG2は、請求項1〜5のいずれか1項に記載したとおりである
ことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項記載の化合物。
【請求項7】
化学式(Ib)または(Ic)で表される化合物であって、
【化6】

ここで、B、C、R5、R6、R7、R8、R9、R10、R11、R12、X1 、X2、M、G1およびG2 は、請求項1〜5のいずれか1項に記載したとおりである
ことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項記載の化合物。
【請求項8】
化学式(IIa)または(IIb)で表される化合物であって、
【化7】

ここで、Yは、−CH2−、CR26、またはCOであり、Xは、NH、NまたはOであり、Dは、原子数5〜10の炭素環基または複素環基であり、R16、R17、R18およびR19は、水素、C1-6アルキル、C3-12炭素環、C3-12複素環、C1-6アルキルC3-12炭素環、C1-6アルキルC3-12複素環、ハロゲン、CO2H、OH、NH2もしくはCONH2であり、さらに、G3は、H、OH、NH2、OR20、O−(CH2n−N(R203もしくはO−(CH2n−R21であり、
このとき、R20はC1-12アルキルであり、R21は原子数が5または6の炭素環基または複素環基であり、さらに、R26は、水素もしくはC1-12アルキルである
ことを特徴とする化合物。
【請求項9】
化学式(IIa)で表される請求項8に従う化合物であって、
【化8】

ここで、Yは、−CH2−、CR26、またはCOであり、Xは、NHまたはOであり、Dは、原子数5〜10の炭素環基または複素環基であり、R16、R17、R18、R19、R22、R23、R24およびR25は、水素、ハロゲン化物、OH、OR20、O−(CH2n−N(R203、O−(CH2n−R21もしくはCNであり、さらに、G3は、OR20、O−(CH2n−N(R203もしくはO−(CH2n−R21であり、
このとき、R20はC1-12アルキルであり、R21は原子数が5または6の炭素環基または複素環基であり、EおよびFは、それぞれ独立して、原子数が5または6の炭素環基または複素環基であり、さらに、R26は、水素もしくはC1-12アルキルであり、
さらに、Pは、OR13、CO2R13、CN、NO2、ハロゲン化物、SCN、H2O、NO3、OH、CH3CNもしくはOCNである
ことを特徴とする化合物。
【請求項10】
次の化学式で表される化合物群
【化9−1】

【化9−2】

から選択されることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項記載の化合物。
【請求項11】
次の化学式で表される化合物群
【化10】

から選択されることを特徴とする請求項8または9記載の化合物。
【請求項12】
請求項1〜7および10のいずれか1項に記載されている化学式(I)で表される化合物の合成プロセスであって、次の化学式(III)で表される化合物にL−G1基およびL−G2基を同時に別個に、または順次付加する工程を含み、
【化11】

ここで、Lは、ハロゲン化物などの脱離基であり、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10、R11、R12、G1、G2、XおよびMは、請求項1〜5のいずれか1項に定義したとおりであることを特徴とするプロセス。
【請求項13】
G1およびG2が同一であるとき、化学式(III)で表される化合物を過量のL−G1基またはL−G2基とインキュベートすることにより、化学式(I)で表される化合物を合成できることを特徴とする請求項12記載のプロセス。
【請求項14】
化学式(III)で表される化合物をL−G1基とインキュベートして化学式(IV)で表される化合物を生成し、
【化12】

続いて、L−G2基とインキュベートすることにより、化学式(I)で表される化合物を合成することを特徴とする請求項12記載のプロセス。
【請求項15】
化学式(III)で表される化合物の合成プロセスであって、化学式(IV)で表される化合物に金属、化学式(VII)で表される化合物および化学式(VIII)で表される化合物を反応させ、
【化13】

このとき、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10、R11、R12、G1、G2、XおよびMは、請求項1〜5のいずれか1項に定義したとおりであることを特徴とするプロセス。
【請求項16】
請求項1〜11のいずれか1項に記載されている化合物に、医薬品的に許容されるキャリヤー、希釈剤もしくは賦形剤を組み合わせたものを含むことを特徴とする医薬品組成物。
【請求項17】
ひとつもしくはそれ以上の追加の活性成分をさらに含むことを特徴とする請求項16記載の医薬品組成物。
【請求項18】
請求項16または17記載の組成物を製造するためのプロセスであって、請求項1〜11のいずれか1項に記載されている化合物に、医薬品的に許容されるキャリヤーもしくは希釈剤、ならびに、ひとつもしくはそれ以上の追加の活性成分を随意に組み合わせる操作を含むことを特徴とする組成物の製造プロセス。
【請求項19】
医薬品として使用することを特徴とする、請求項1〜11のいずれか1項記載の化合物、または請求項16または17記載の組成物。
【請求項20】
テロメラーゼ酵素の阻害に使用することを特徴とする請求項19記載の化合物。
【請求項21】
癌治療に使用することを特徴とする請求項19記載の化合物。
【請求項22】
請求項1〜11のいずれか1項記載の化合物を癌治療用薬剤の製造に使用する方法。
【請求項23】
前記薬剤が、ひとつもしくはそれ以上の追加の活性成分をさらに含むことを特徴とする請求項22記載の方法。
【請求項24】
請求項1〜11のいずれか1項記載の化合物および追加の活性成分を個別に、特定の順序で、または同時に使用することを特徴とする請求項22記載の方法。
【請求項25】
癌の治療法であって、請求項1〜11のいずれか1項記載の化合物、もしくは請求項16または17記載の組成物をそれらを必要とする患者に投与することを含むことを特徴とする治療法。
【請求項26】
前記化合物または組成物は、化学療法、放射線療法および/または手術の前に、それらと組み合わせて、および/または続いて投与することを特徴とする請求項25記載の治療法。
【請求項27】
ひとつもしくはそれ以上の実施例および/または図を参照にして明細書中に実質的に記載されていることを特徴とする化合物。
【請求項28】
ひとつもしくはそれ以上の実施例および/または図を参照にして明細書中に実質的に記載されていることを特徴とするプロセス。
【請求項29】
ひとつもしくはそれ以上の実施例および/または図を参照にして明細書中に実質的に記載されていることを特徴とする組成物。
【請求項30】
ひとつもしくはそれ以上の実施例および/または図を参照にして明細書中に実質的に記載されていることを特徴とする使用法。
【請求項31】
ひとつもしくはそれ以上の実施例および/または図を参照にして明細書中に実質的に記載されていることを特徴とする治療法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4(a)】
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【図4(b)】
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【図5】
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【公表番号】特表2009−533336(P2009−533336A)
【公表日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−503652(P2009−503652)
【出願日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【国際出願番号】PCT/GB2007/001256
【国際公開番号】WO2007/128968
【国際公開日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【出願人】(508301009)インペリアル イノヴェイションズ リミテッド (1)
【氏名又は名称原語表記】IMPERIAL INNOVATIONS LIMITED
【出願人】(508301054)
【氏名又は名称原語表記】FUNDACIO PRIVADA INSTITUT CATALA D’INVESTIGACIO QUIMICA
【出願人】(500069552)キャンサー リサーチ テクノロジー リミテッド (4)
【出願人】(506249196)ザ・スクール・オブ・ファーマシー (2)
【氏名又は名称原語表記】THE SCHOOL OF PHARMACY
【Fターム(参考)】