テンプレート、テンプレートの表面処理方法、テンプレート表面処理装置及びパターン形成方法
【課題】生産性の高いパターン形成方法を実現するテンプレート、テンプレートの表面処理方法、テンプレートの表面処理装置及びパターン形成方法を提供する。
【解決手段】実施形態によれば、凹凸パターンが設けられた転写面を有し、前記凹凸パターンの凹部に、光によって硬化する前の状態の光硬化性樹脂液を充填し、前記光によって前記光硬化性樹脂液を硬化させて形成される樹脂の表面に前記凹凸パターンを反映した形状を形成するためのテンプレートが提供される。前記テンプレートは、基材と、表面層と、を備える。前記基材は、凹凸が設けられた主面を有し、前記光硬化性樹脂液が硬化する光に対して透過性である。前記表面層は、前記基材の前記凹凸を覆い、前記凹凸の形状を反映した前記凹凸パターンを形成する。前記表面層の、前記光によって硬化する前の状態の前記光硬化性樹脂液に対する接触角は30度以下である。
【解決手段】実施形態によれば、凹凸パターンが設けられた転写面を有し、前記凹凸パターンの凹部に、光によって硬化する前の状態の光硬化性樹脂液を充填し、前記光によって前記光硬化性樹脂液を硬化させて形成される樹脂の表面に前記凹凸パターンを反映した形状を形成するためのテンプレートが提供される。前記テンプレートは、基材と、表面層と、を備える。前記基材は、凹凸が設けられた主面を有し、前記光硬化性樹脂液が硬化する光に対して透過性である。前記表面層は、前記基材の前記凹凸を覆い、前記凹凸の形状を反映した前記凹凸パターンを形成する。前記表面層の、前記光によって硬化する前の状態の前記光硬化性樹脂液に対する接触角は30度以下である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、テンプレート、テンプレートの表面処理方法、テンプレート表面処理装置及びパターン形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
パターン形成方法として、テンプレートに設けられた凹凸パターンを樹脂に転写する方法(例えばインプリント方法)がある。この方法においては、短波長の光源やレンズ等を必要としないため、従来のリソグラフィと比較すると装置価格の低減が可能である。この方法は、半導体デバイスの微細化に伴って増大するコストを抑制する技術として期待されている。生産性の高いインプリント方法が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−326367号公報
【特許文献2】特開2010−214859号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の実施形態は、生産性の高いパターン形成方法を実現するテンプレート、テンプレートの表面処理方法、テンプレート表面処理装置及びパターン形成方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の実施形態によれば、凹凸パターンが設けられた転写面を有し、前記凹凸パターンの凹部に、光によって硬化する前の状態の光硬化性樹脂液を充填し、前記光によって前記光硬化性樹脂液を硬化させて形成される樹脂の表面に前記凹凸パターンを反映した形状を形成するためのテンプレートが提供される。前記テンプレートは、基材と、表面層と、を備える。前記基材は、凹凸が設けられた主面を有し、前記光硬化性樹脂液が硬化する光に対して透過性である。前記表面層は、前記基材の前記凹凸を覆い、前記凹凸の形状を反映した前記凹凸パターンを形成する。前記表面層の、前記光によって硬化する前の状態の前記光硬化性樹脂液に対する接触角は30度以下である。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】図1(a)〜図1(e)は、第1の実施形態に係るテンプレートの構成及びそれを用いたパターン形成方法を例示する工程順模式的断面図である。
【図2】図2(a)〜図2(c)は、剥離力の測定結果を例示するグラフ図である。
【図3】図3(a)〜図3(c)は、付着仕事の測定結果を例示するグラフ図である。
【図4】図4(a)〜図4(c)は、接触角の測定結果を例示するグラフ図である。
【図5】接触角と充填時間との関係を例示するグラフ図である。
【図6】図6(a)〜図6(c)は、第2の実施形態に係るテンプレートの表面処理方法を例示する工程順模式的断面図である。
【図7】図7(a)〜図7(e)は、第2の実施形態に係るテンプレートの表面処理方法を例示する模式図である。
【図8】図8(a)及び図8(b)は、第3の実施形態に係るテンプレートの表面処理装置を例示する模式図である。
【図9】図9(a)及び図9(b)は、第3の実施形態に係る別のテンプレートの表面処理装置を例示する模式的側面図である。
【図10】第3の実施形態に係る別のテンプレートの表面処理装置を例示する模式的側面図である。
【図11】第3の実施形態に係る別のテンプレートの表面処理装置を例示する模式的側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下に、各実施の形態について図面を参照しつつ説明する。
なお、図面は模式的または概念的なものであり、各部分の厚みと幅との関係、部分間の大きさの比率などは、必ずしも現実のものと同一とは限らない。また、同じ部分を表す場合であっても、図面により互いの寸法や比率が異なって表される場合もある。
なお、本願明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
【0008】
(第1の実施形態)
図1(a)〜図1(e)は、第1の実施形態に係るテンプレートの構成及びそれを用いたパターン形成方法を例示する工程順模式的断面図である。
図1(a)に表したように、本実施形態に係るテンプレート10は、基材20と、表面層25と、を備える。
【0009】
テンプレート10は、転写面10aを有する。転写面10aには、凹凸パターン11が設けられている。凹凸パターン11は、例えば、凹部11dと、凸部11pと、を有する。例えば、凹部11dが複数設けられ、凸部11pが複数設けられる。また、例えば、連続的な凹部11dと、複数の凸部11pと、が設けられても良い。また、例えば、連続的な凸部11pと、複数の凹部11dと、が設けられても良い。
【0010】
凹凸パターン11は、例えば、トレンチ状や穴状である。凹部11dの深さ(凸部11pの高さ)は、例えば20ナノメートル(nm)以上200nm以下程度である。凹部11dの幅は、例えば10nm以上100nm以下程度である。凸部11pの幅は、例えば10nm以上100nm以下程度である。ただし、実施形態はこれに限らず、凹部11dの深さ、凹部11dの幅、及び、凸部11pの幅は、任意である。
【0011】
後述するように、テンプレート10は、テンプレート10の凹凸パターン11の凹部11dに光硬化性樹脂液30が充填されて、光硬化性樹脂液30を光によって硬化させて形成される樹脂の表面に、凹凸パターン11を反映した形状を形成するためのテンプレートである。ここで、光硬化性樹脂液30は、光によって硬化する前の状態の樹脂液であるものとする。
【0012】
光硬化性樹脂液30には、例えば、アクリル系樹脂及びエポキシ系樹脂などの樹脂液が用いられる。光硬化性樹脂液30は、例えば、紫外光により硬化する。
【0013】
基材20は、光硬化性樹脂液30が硬化する光に対して透過性である。基材20には、例えば、石英が用いられる。基材20は、凹凸21が設けられた主面20aを有する。凹凸21は、基材凹部21dと、基材凸部21pと、を有する。凹凸21の形状が、凹凸パターン11の形状に反映される。
【0014】
表面層25は、基材20の凹凸21を覆う。表面層25は、凹凸21の形状を反映した凹凸パターン11を形成する。すなわち、表面層25の表面が、上記の凹凸パターン11となる。
【0015】
基材20の主面20aの凹凸21の形状は、テンプレート10の転写面10aの凹凸パターン11の形状と比べ、表面層25の厚さの2倍に相当する幅の分だけ、狭まるようにして異なる。
表面層25の厚さは、凹凸21の深さ分よりも薄い。これにより、凹凸21の形状を反映した凹凸パターン11を形成することができる。表面層25の厚さは、例えば、1nm以上5nm以下程度である。ただし、実施形態はこれに限らず、表面層25の厚さは、凹凸21の形状を反映した凹凸パターン11を形成することができれば任意である。
【0016】
表面層25の、光によって硬化する前の状態の光硬化性樹脂液30に対する接触角は30度以下である。
これにより、生産性の高いパターン形成方法を実現するテンプレートが提供できる。この特性については後述する。
【0017】
以下、テンプレートを用いたパターン形成方法の1つの例について説明する。
図1(b)に表したように、パターンを形成する被処理基板40の主面上に光硬化性樹脂液30を配置する(ステップS110)。ここで、光硬化性樹脂液30は、光によって硬化する前の状態の樹脂液であるものとする。光硬化性樹脂液30の配置には、例えば、インクジェット法などが用いられる。ただし、実施形態はこれに限らず、光硬化性樹脂液30の配置には、任意の手法を用いることができる。
【0018】
そして、被処理基板40上の光硬化性樹脂液30に、テンプレート10の転写面10aを対向させる。
【0019】
図1(c)に表したように、テンプレートの凹凸パターン11の凹部11dに、光硬化性樹脂液30を充填する(ステップS120)。
【0020】
図1(d)に表したように、凹部11dに光硬化性樹脂液30が充填された状態で、光硬化性樹脂液30に光35を照射して光硬化性樹脂液30を硬化させる(ステップS130)。これにより、凹凸パターン11を反映したパターン形状を有する樹脂31が形成される。樹脂31は、光硬化性樹脂液30が光35によって硬化して形成される。
【0021】
図1(e)に表したように、テンプレート10と樹脂31とを互いに離す(ステップS140)。これにより、被処理基板40の主面上に、テンプレート10の凹凸パターン11を反映した形状を有する樹脂31が形成される。すなわち、凹凸パターン11が樹脂31に転写される。この樹脂31を例えばマスクとして用いて、被処理基板40を加工する。
【0022】
なお、図1(c)に例示したプロセスにおいて、場合によっては、テンプレート10の凸部11pと被処理基板40との間に光硬化性樹脂液30が存在する。このときは、凸部11pに対向する被処理基板40の上に、残膜が形成される。この残膜は、必要に応じて、ドライエッチングなどの手法によって除去することができる。
【0023】
上記のパターン形成方法において、光35によって硬化した樹脂31と、テンプレート10と、の間の密着性が高いと、上記のステップS140において、凹凸パターン11の凹部11dに、樹脂31の一部が残ることがある。すなわち、樹脂31の層が破壊され、樹脂31の一部が、凹部11dに埋め込まれて残る。凹部11dに残った樹脂31は、次の転写プロセスにおいて不良を発生させる。このため、硬化した樹脂31と、テンプレート10と、の間の密着性を低くするために、離型層を設ける構成がある。
【0024】
この離型層は、例えば、基材20の凹凸21を覆うように設けられる。離型層としては、例えばフッ素系の表面処理層などが用いられる。これにより、硬化した樹脂31と、テンプレート10と、の間の密着性を低下させ、凹凸パターン11の凹部11dに樹脂31の一部が残ることを抑制する。
【0025】
しかしながら、発明者の実験によると、テンプレート10にこのような離型層を設けた場合、テンプレート10の凹部11dに樹脂液が充填されるのに要する時間が非常に長くなり、これがインプリント方式のパターン形成方法の生産性の向上を阻害する大きな要因になることが判明した。
【0026】
発明者は、以下の実験を行った。この実験では、石英ガラスの基材20を用いた。基材20には、凹凸21が設けられている。凹凸21の深さ(基材凹部21dの深さ)は、60nmである。基材凹部21dの幅(底部の幅)は、24nmであり、基材凸部21pの幅は、24nmである。凹凸21はトレンチ状の形状を有している。
【0027】
このような基材20をそのままテンプレートとして用い、アクリル系モノマーを含む光硬化性樹脂液(第1樹脂液A1)が、凹凸21の凹部(基材凹部21d)に充填されるまでの時間(充填時間)を測定したところ、約20秒であった。
【0028】
一方、この基材20の凹凸21の表面に、フッ素系のシランカップリング剤(第1処理剤)を用いて離型層を形成した。そして、充填時間を測定すると、300秒以上であった。このように、離型層(例えばフッ素系シランカップリング剤による層)を設けると、充填時間が著しく長くなる。
【0029】
このように、硬化した樹脂31との離型性に着目して上記のような離型層を設ける構成においては、離型層の表面エネルギーは小さく設定される。結果として、離型層が樹脂液を弾き、離型層で覆われたテンプレート10の凹部11dに樹脂液が侵入することが阻害される。すなわち、離型層は、充填性を低下させる。すなわち、従来の離型層は、離型性だけを向上しており、充填性に関して関心が払われていない。
【0030】
発明者は、テンプレート10の凹部11dに樹脂液が充填されるのに要する時間が、パターン形成における全体の生産性に大きく影響を与えることを見出した。テンプレート10と硬化した樹脂31との離型性を高く維持しつつ、凹部11dに樹脂液が充填されるのに要する時間を短縮する充填性の高い新たな構成が望まれる。発明者は、このような新たな課題を見出し、この課題を解決すべく、実施形態に係る構成を構築した。すなわち、実施形態においては、表面層25と、光によって硬化する前の状態の光硬化性樹脂液30と、の濡れ性に関する特性が適切に制御されている。これにより、テンプレート10の表面層25と、光によって硬化する前の状態の光硬化性樹脂液30との間では、高い離型性を得つつ、高い充填性を得ることができ、なおかつテンプレート10の表面層25と、光によって光硬化性樹脂液30が硬化した樹脂31との間でも、高い離型性を得ることができる。
【0031】
以下、発明者が実施した、離型性と充填性とに関する実験について説明する。
実験においては、複数の種類の表面処理剤(第1〜第4処理剤)と、複数の種類の光硬化性樹脂液30(第1〜第3樹脂液)と、が用いられた。
【0032】
第1処理剤は、フッ素系の処理剤である。第1処理剤は、フッ素を含む第1表面処理層T1を形成する。第1処理剤は、上記の充填時間を測定した実験で用いられた表面処理剤である。
【0033】
第2処理剤は、ヘキサメチルジシラザン(HMDS)である。すなわち、第2処理剤は、メチル基を有する第2表面処理層T2を形成する。
【0034】
第3処理剤は、メチルトリメトキシシランである。すなわち、第3処理剤は、官能基としてメチル基を有するシランカップリング剤であり、メチル基を有する第3表面処理層T3を形成する。
【0035】
第4処理剤は、フェニルトリメトキシシランである。すなわち、第4処理剤は、官能基としてフェニル基を有するシランカップリング剤であり、フェニル基を有する第4表面処理層T4を形成する。
【0036】
これらの処理剤を用いて、石英ガラスの基板を処理し、基板上に第1〜第4表面処理層T1〜T4をそれぞれ形成した。また、表面処理を施さない試料(未処理試料T0)も作製した。
【0037】
第1処理剤(フッ素系シランカップリング剤)、第3処理剤(メチル基シランカップリング剤)及び第4処理剤(フェニル基シランカップリング剤)は、液相での処理(ウエット処理)により、基板上に表面処理層を形成する。シランカップリング剤においては、シランカップリング剤の加水分解と、縮合反応により、表面処理層が形成される。
【0038】
第2処理剤(HMDS)は、気相での処理(ドライ処理)により、基板上に表面処理層を形成する。気相処理の場合、例えば、パーティクルや凝集物の生成が少ないという利点がある。
【0039】
第2処理剤においては、洗浄した基板を、50℃の加熱で発生する第4処理剤の蒸気に曝露し、この後、110℃で10分間の加熱処理を行った。この加熱処理で、表面に付着した余分な第2処理剤が除去される。これにより、第2処理剤による第2表面処理層T2が形成される。
【0040】
一方、シランカップリング剤の第3処理剤を酢酸水溶液に希釈して、処理溶液を調製した。酢酸の濃度は、0.1wt%である。第3処理剤の濃度は、0.5wt%である。この処理溶液中に、洗浄した基板を浸漬させ、その後取り出し、110℃で10分間の加熱処理を行った。これにより、縮合反応が促進される。これにより、第3処理剤による第3表面処理層T3が形成される。同様にして、第4処理剤による第4表面処理層T4が形成される。また、同様にして、第1処理剤を用いて基板を処理し、第1表面処理層T1が形成される。
【0041】
一方、光硬化性樹脂液30として、第1〜第3樹脂液A1〜A3を用いた。第1樹脂液A1は、上記の充填時間を測定した実験で用いられたものであり、アクリル系モノマーを含む光硬化性の樹脂液である。第2樹脂液A2は、第1樹脂液A1にフッ素系化合物を添加したものである。フッ素系化合物は、離型性を向上させると考えられる。第3樹脂液A3は、第1樹脂液A1とは異なる成分を有するアクリル系の光硬化性の樹脂液にフッ素系界面活性剤を添加したものである。
【0042】
これらの表面処理層と、樹脂液と、において、離型性と充填性とを評価した。
樹脂液が硬化して形成された樹脂と、表面処理層と、における離型性に関する指標として、剥離力を測定した。この実験では、石英ガラスの基板を表面処理剤で処理した。同じ種類の表面処理剤で処理した基板どうしの間に樹脂液を挟み、樹脂液を硬化させた。具体的には、基板上に5マイクロリットルの樹脂液を滴下し、その上に基板を置き、基板どうしを押し付け、この状態で紫外光を照射して樹脂液を硬化させ、樹脂を形成した。そして、2枚の基板どうしを引き剥がすときの剥離力Frを測定した。この剥離力Frが小さいほど離型性が良い。
【0043】
さらに、複数の種類の表面処理層と、複数の種類の樹脂と、の付着仕事Wa(work of adhesion)を測定した。すなわち、表面処理層及び樹脂のそれぞれにおいて、水、エチレングリコール、及びホルムアルデヒドの接触角を測定した。そして、接触角の測定結果から、Kaelble−Uyのモデルにより、表面処理層のそれぞれ及び樹脂のそれぞれの表面エネルギーを求めた。そして、求めた表面エネルギーから、表面処理層のそれぞれと、樹脂のそれぞれと、の組み合わせにおける付着仕事Waを求めた。
【0044】
また、充填性に関係があると考えられる接触角θを測定した。すなわち、石英ガラスの基板上に上記の表面処理層を形成し、この表面処理層と、上記の樹脂液と、の組み合わせの接触角θを測定した。
【0045】
また、表面処理層を形成しない未処理試料T0(石英ガラスの基板)に関しても、剥離力Fr、付着仕事Wa及び接触角θを評価した。
【0046】
図2(a)〜図2(c)は、剥離力の測定結果を例示するグラフ図である。
図2(a)、図2(b)及び図2(c)は、それぞれ、第1樹脂液A1、第2樹脂液A2及び第3樹脂液A3における剥離力Frの測定結果を示している。
【0047】
図2(a)は、第1樹脂液A1による樹脂と、各表面処理層T0〜T4と、のそれぞれにおける剥離力Frを示している。図2(a)に表したように、未処理試料T0の剥離力Frは、約7.7kgfである。これに対し、フッ素系の第1表面処理層T1の剥離力Frは、約3.3kgfであり、非常に小さい。メチル基の第2表面処理層T2及び第3表面処理層T3においては、剥離力Frは、5.0kgf〜5.5kgf程度である。このように、第2表面処理層T2及び第3表面処理層T3においては、未処理試料T0に対して、剥離力Frは20%〜40%程度低下する。ベンゼン基の第4表面処理層T4の剥離力Frは、未処理試料T0の剥離力Frと同様である。第4表面処理層T4においては、離型性は向上しないと考えられる。
【0048】
図2(b)及び図2(c)に表したように、第2樹脂液A2及び第3樹脂液A3においても、メチル基の第2表面処理層T2の剥離力Frは、未処理試料T0よりも小さかった。
【0049】
このように、メチル基の第2表面処理層T2及び第3表面処理層T3においては、離型性が向上すると考えられる。
【0050】
図3(a)〜図3(c)は、付着仕事の測定結果を例示するグラフ図である。
図3(a)、図3(b)及び図3(c)は、それぞれ、第1樹脂液A1、第2樹脂液A2及び第3樹脂液A3の樹脂のそれぞれにおける付着仕事Waの測定結果を示している。
【0051】
図3(a)に表したように、第1樹脂液A1の樹脂と未処理試料T0との付着仕事Waは、約80ミリジュール/平方メートル(mJ/m2)である。これに対し、第1樹脂液A1の樹脂とフッ素系の第1表面処理層T1との付着仕事Waは、約35mJ/m2であり、非常に小さい。メチル基の第2表面処理層T2及び第3表面処理層T3においては、付着仕事Waは、60mJ/m2以上70mJ/m2以下程度である。このように、第2表面処理層T2及び第3表面処理層T3においては、未処理試料T0に対して、付着仕事Waを低減できる。
【0052】
図3(b)及び図3(c)に表したように、第2樹脂液A2及び第3樹脂液A3においても、フッ素系の第1表面処理層T1においては、付着仕事Waは著しく小さい。そして、メチル基の第2表面処理層T2及び第3表面処理層T3においては、付着仕事Waが未処理試料T0に比べてやや小さくなる。
【0053】
このように、メチル基の第2表面処理層T2及び第3表面処理層T3においては、離型性が向上すると考えられる。
【0054】
図4(a)〜図4(c)は、接触角の測定結果を例示するグラフ図である。
図4(a)、図4(b)及び図4(c)は、それぞれ、第1樹脂液A1、第2樹脂液A2及び第3樹脂液A3における接触角θの測定結果を示している。
【0055】
図4(a)に表したように、第1樹脂液A1と未処理試料T0との接触角θは、約20度であった。これに対し、第1樹脂液A1とフッ素系の第1表面処理層T1との接触角θは、60度〜70度であり、非常に大きい。第1樹脂液A1とメチル基の第2表面処理層T2との接触角θは、約27度であった。
【0056】
図3(b)及び図3(c)に表したように、第2樹脂液A2及び第3樹脂液A3においても、フッ素系の第1表面処理層T1においては、接触角θは著しく大きい。そして、メチル基の第2表面処理層T2においては、接触角θは、23度〜26度である。この場合も、第2表面処理層T2においては、未処理試料T0に対して接触角θはやや大きくなる。
【0057】
既に説明したように、未処理試料T0と第1樹脂液A1との組み合わせにおいて、第1樹脂液A1の充填時間は、約20秒であった。一方、フッ素系の第1表面処理層T1(離型層となる)を設けたテンプレートにおいては、充填時間は、約300秒であった。このような充填時間の違いは、第1樹脂液A1との接触角θの違いに起因していると考えられる。
【0058】
図5は、接触角と充填時間との関係を例示するグラフ図である。
同図の横軸は接触角θである。縦軸は充填時間Tfである。
図5に表したように、接触角θが、約20度の場合は、充填時間Tfは約20秒である。そして、接触角θが60度〜70度の場合は、充填時間Tfは、300秒以上である。この図から、接触角θが、23度〜27度の第2表面処理層T2においては、充填時間Tfは、20秒〜30秒程度となる。
【0059】
このように、メチル基を有する第2表面処理層T2においては、接触角θを未処理試料T0とほぼ同じ程度に維持し、充填性を維持しつつ、剥離力Fr及び付着仕事Waを未処理試料T0よりも低減し、離型性を改善することができる。
【0060】
このように、実施形態に係るテンプレート10においては、表面層25(表面処理層)の光硬化性樹脂液30に対する接触角θは、30度以下に設定される。図5から接触角θが30度以下に設定することで、50秒以下の充填時間Tfが得られる。すなわち、実施形態における充填時間は、未処理試料T0とほぼ同じで、フッ素系の表面処理層の場合に比べて著しく短縮される。そして、このような特性を有する表面層25により、離型性が向上する。
【0061】
このように、実施形態に係るテンプレート10によれば、生産性の高いパターン形成方法を実現するテンプレートが提供できる。そして、生産性の高いパターン形成方法が提供できる。
【0062】
テンプレート10の凹部11dに光硬化性樹脂液30を充填する際に、被処理基板40とテンプレート10とを互いに加圧することがある。この加圧力が過度に大きいと、テンプレート10の凹凸パターン11(微細パターン)のパターンが破壊される。実施形態に係るテンプレート10においては、充填性が良好なので、加圧力を小さくすることができる。このため、実施形態においては、テンプレート10の凹凸パターン11のパターン破壊が抑制される。
【0063】
また、実施形態においては、充填性が良好なので、テンプレート10の凹部11dに光硬化性樹脂液30を充填する際に用いる光硬化性樹脂液30の量が少ない場合においても、十分に充填することが可能である。すなわち、少量の光硬化性樹脂液30であっても充填むらが少ない状態で、凹部11dに光硬化性樹脂液30を充填できる。
【0064】
そして、図3(a)〜図3(c)に関して説明したように、第2表面処理層T2及び第3表面処理層T3においては、付着仕事Waは80mJ/m2未満である。具体的には、例えば、付着仕事Waは、60mJ/m2以上70mJ/m2以下である。これにより、未処理試料T0(付着仕事Waが約80mJ/m2)よりも付着仕事Waを低減でき、剥離性が向上できる。このように、実施形態においては、表面層25の、樹脂31(光硬化性樹脂液30が硬化して形成される樹脂)に対する付着仕事Waは、80mJ/m2未満であることが望ましい。
【0065】
そして、上記のように、表面層25(表面処理層)の光硬化性樹脂液30に対する接触角θを30度以下に設定するために、官能基としてメチル基を有する表面処理剤を用いることが好ましい。
【0066】
実施形態に係るテンプレート10において、表面層25は、Rn−Si−X4−n(nは1以上3以下の整数、Xは官能基、Rは有機官能基)で表される化合物が縮合反応して基材20と結合して形成される層を含むことができる。このRn−Si−X4−nで表される化合物において、Xは、例えば、アルコキシ基、アセトキシ基またはハロゲン原子である。すなわち、シランカップリング剤を用いて形成された表面層25を用いることができる。
【0067】
そして、上記の化合物において、Rは、CH3(CH2)k(kは0以上の整数)で表されるアルキル基とすることができる。特に、Rは、メチル基であることが望ましい。これにより、特に、充填性を維持しつつ離型性を改善することが容易になる。
【0068】
また、実施形態に係るテンプレート10において、表面層25は、R3−Si−NH-Si-R’3(R’は有機官能基、Rは有機官能基)で表される化合物が基材20と結合して形成される層を含むことができる。例えば、この化合物において、R’は、アルキル基である。また、Rは、CH3(CH2)k(kは0以上の整数)で表されるアルキル基である。特に、Rは、メチル基とすることができる。
【0069】
また、実施形態に係るテンプレート10において、表面層25は、R3−Si−NR’2(R’は有機官能基、Rは有機官能基)で表される化合物が基材20と結合して形成される層を含むことができる。例えば、この化合物において、R’は、アルキル基である。また、Rは、CH3(CH2)k(kは0以上の整数)で表されるアルキル基である。特に、Rは、メチル基とすることができる。
【0070】
すなわち、表面層25は、例えばHMDS(上記の第2処理剤)により形成されることができる。例えば、HMDSを用いた気相での処理により、例えば、パーティクルや凝集物の生成が少なくなる。さらに、気相でメチル基を有する表面層25を形成する表面処理剤として、上記のHMDSの他に、TMSDMA(トリメチルシリルジメチルアミン)などを用いることができる。
【0071】
(第2の実施形態)
本実施形態は、凹凸パターン11が設けられた転写面10aを有し、凹凸パターン11の凹部11dに光硬化性樹脂液30を充填し光硬化性樹脂液30を硬化させて形成される樹脂31の表面に凹凸パターン11を反映した形状を形成するためのテンプレート10の表面処理方法である。
【0072】
図6(a)〜図6(c)は、第2の実施形態に係るテンプレートの表面処理方法を例示する工程順模式的断面図である。
図6(a)に表したように、本表面処理方法においては、凹凸21が設けられた主面20aを有し、光硬化性樹脂液30が硬化する光(例えば紫外光)に対して透過性の基材20が用いられる。基材20の主面20aには、例えば、有機物汚染51、または、パーティクル52などが付着している場合がある。必要に応じて、これらを除去するための洗浄を行う。
【0073】
これにより、図6(b)に表したように、基材20に表面に、例えば水酸基が形成される。
【0074】
そして、図6(c)に表したように、基材20の凹凸21を覆うように、光硬化性樹脂液30に対する接触角θが30度以下の表面層25を形成する。これにより、凹凸21の形状を反映した凹凸パターン11が形成される。表面層25は、例えば、シランカップリング剤により形成される。
【0075】
図7(a)〜図7(e)は、第2の実施形態に係るテンプレートの表面処理方法を例示する工程順模式図である。
これらの図では、シランカップリング剤を用いた表面層25の形成方法を例示している。
図7(a)に表したように、基材20の表面に水酸基が形成されている。この例では、水酸基は、シラノール基である。例えば、基材20の表面への、紫外線照射、プラズマ処理及び薬液処理の少なくともいずれかにより、水酸基を形成できる。
【0076】
図7(b)及び図7(c)に表したように、シランカップリング剤が加水分解する。そして、縮合反応により、図7(d)に表したように、シランカップリング剤の一部が、基材20と結合する。さらに、図7(e)に表したように、シランカップリング剤どうしが重合する。これにより、表面層25が形成される。表面層25においては、有機官能基Rが表面に露出した状態となる。有機官能基Rを適切に設定することで、接触角θを30度以下に設定できる。
【0077】
表面層25の形成は、表面層25を気相成長させることを含むことが望ましい。例えばHMDSやTMSDMAを用いることで、表面層25を気相で形成できる。これにより、パーティクルや凝集物の生成が少なく、均一な表面層25を形成し易くなる。
【0078】
(第3の実施形態)
本実施形態に係るテンプレート表面処理装置は、上記の実施形態に係るテンプレート10を表面処理するための表面処理装置である。
【0079】
図8(a)及び図8(b)は、第3の実施形態に係るテンプレートの表面処理装置を例示する模式図である。
図8(a)は平面図であり、図8(b)は側面図である。
図8(a)及び図8(b)に表したように、本実施形態に係るテンプレート表面処理装置111は、第1処理部61と、第2処理部62と、を備える。
【0080】
第1処理部61は、基材20(即ち、テンプレート10であり、以下これを省略する。)の主面20aに水酸基を形成する。すなわち、図7(a)に例示したように、基材20の主面20aに、例えばシラノール基を形成する。なお、基材20は、凹凸21が設けられた主面20aを有し、光硬化性樹脂液30が硬化する光35に対して透過性である。ここで、光硬化性樹脂液30は、光によって硬化する前の状態の樹脂液であるものとする。
【0081】
第2処理部62は、第1処理部61により水酸基が形成された主面20aの凹凸21を覆うように、表面層25を形成する。表面層25の光硬化性樹脂液30に対する接触角は、30度以下である。すなわち、第2処理部62は、図7(b)〜図7(e)に関して説明した反応を実施させる。
第2処理部62により形成された表面層25により、凹凸21の形状を反映した凹凸パターン11が形成される。
【0082】
この例では、第1処理部61として、紫外線61uを基材20照射する光照射部61aが用いられている。第2処理部62として、表面層25となる原料ガス62gを基材20に向けて供給する原料ガス供給部62aが用いられている。
【0083】
本具体例のテンプレート表面処理装置111は、第1チャンバ61C、第2チャンバ62C、搬入部71、搬出部72、及び、搬送ユニット73をさらに備えている。
【0084】
第1チャンバ61Cの内部に第1処理部61が配置される。第1チャンバ61Cの内部に、第1保持部61sが設けられている。また、第1保持部61sの上に基材20が載置される。基材20の上方に第1処理部61が配置されている。
【0085】
第2チャンバ62Cと、第2処理部62の原料ガス供給部62aと、が連通している。第2チャンバ62Cには、第2保持部62sが設けられている。また、第2保持部62sの上に基材20が載置される。基材20の上方に、第2処理部62から原料ガス62gを供給する開口部が設けられている。
【0086】
搬入部71において、処理前の基材20が所定の位置にセットされる。搬出部72において、処理後の基材20(テンプレート10)が搬出される。搬送ユニット73は、基材20を搬送する搬送アーム73aを有している。搬送アーム73aは、例えば、搬入部71、第1チャンバ61C、第2チャンバ62C及び搬出部72の相互の間において、基材20を移動させることができる。搬入部71と第1チャンバ61Cとの間に第1シャッタ74aが設けられている。また、第1チャンバ61Cと第2チャンバ62Cとの間に第2シャッタ74bが設けられ、第2チャンバ62Cと搬出部72との間に第3シャッタ74cが設けられている。
【0087】
基材20は、上記のシャッタを介して、搬入部71、第1チャンバ61C、第2チャンバ62C及び搬出部72の相互の間を移動する。
【0088】
例えば、基材20が、搬送アーム73aにより、搬入部71から第1チャンバ61Cの第1保持部61sにセットされる。
【0089】
第1チャンバ61Cの第1処理部61(光照射部61a)から基材20に向けて、紫外線61uが照射される。この紫外線61uの波長は、例えば172nmである。紫外線61uにより、基材20の主面20aに水酸基が形成される。
【0090】
すなわち、紫外線61uが基材20の主面20aに照射されると、雰囲気中の酸素が反応してオゾンが生成され、さらには、酸化力の強い酸素ラジカルが生成される。その結果、例えば、基材20の主面20a上に存在した有機物が除去され、基材20の表面が清浄化される。そして、清浄化された基材20の主面20aには水酸基が形成される。
【0091】
図7(a)に関して説明したように、基材20として石英が用いられている場合は、水酸基として、シラノール基(Si−OH)が形成される。
【0092】
このように、第1処理部61による処理により、基材20の主面20aにおける水酸基の量が増加する。第1処理部61は、例えば、主面20aを清浄化する。
【0093】
第1処理部61での処理が終了した基材20は、搬送アーム73aにより、第1チャンバ61Cから第2チャンバ62Cに搬送される。基材20は、第2保持部62sにセットされる。
【0094】
第2処理部62(この例では、原料ガス供給部62a)は、表面層25を形成するための化合物を第2チャンバ62C内に供給する。供給される化合物は、例えば、Rn−Si−X4−n(nは、1以上3以下の整数である。Xは、アルコキシ基、アセトキシ基またはハロゲン原子である。Rは、アルキル基である。)で表される化合物である。また、ここで供給される化合物は、その他に、例えば、R3−Si−NH-Si-R’3(R’は有機官能基、Rは有機官能基)で表される化合物、あるいは、R3−Si−NR’2(R’は有機官能基、Rは有機官能基)で表される化合物を用いることができる。
【0095】
これにより、図7(b)〜図7(e)に関して説明した反応が行われ、表面層25が形成される。
【0096】
すなわち、図7(b)に表したように、例えば原料ガス62gのRn−Si−X4−nの官能基Xが、雰囲気中の水分と加水分解反応し、シラノール基を生じる。
【0097】
図7(c)及び図7(d)に示したように、基材20の主面20aに形成されたシラノール基と、原料ガス62gのシラノール基と、反応し、原料ガス62gの化合物の一部が基材20と結合する。
【0098】
そして、図7(e)に表したように、基材20に結合した複数の化合部の一部のそれぞれのシラノール基同士が脱水縮合反応する。これにより、表面層25が形成される。このようにして形成された表面層25の、光硬化性樹脂液30に対する接触角は30度以下である。これにより、テンプレート10が作製される。
処理が終了して得られたテンプレート10は、搬出部72から搬出される。
【0099】
図9(a)及び図9(b)は、第3の実施形態に係る別のテンプレートの表面処理装置を例示する模式的側面図である。
これらの図は、第1処理部61の別の例を示している。
図9(a)に表したように、本実施形態に係る別のテンプレート表面処理装置112においては、第1処理部61として、薬液供給部61bが用いられている。薬液供給部61bは、水酸基を形成するための薬液61lを、主面20aに向けて供給する。薬液61lの供給には、例えば、スピン塗布またはスプレー塗布などの方法が用いられる。また、ここでは、薬液61l中に基材20を浸漬しても良い。
【0100】
図9(b)に表したように、本実施形態に係る別のテンプレート表面処理装置113においては、第1処理部61として、プラズマ処理部61cが用いられている。プラズマ処理部61cは、プラズマ61pを生成する。このプラズマ61pにより、基材20(即ち、テンプレート10である。)の主面20aが処理される。これにより、水酸基が形成される。
このように、第1処理部61には、水酸基を形成する任意の構成が適用できる。
【0101】
図10は、第3の実施形態に係る別のテンプレートの表面処理装置を例示する模式的側面図である。
この図は、第2処理部62の別の例を示している。
図10に表したように、本実施形態に係る別のテンプレート表面処理装置114においては、第2処理部62として、原料液供給部62bが用いられている。原料液供給部62bは、表面層25となる原料液62lを基材20(即ち、テンプレート10である。)に向けて供給する。原料液62lの供給には、例えば、スピン塗布またはスプレー塗布などの方法が用いられる。また、原料液62l中に基材20を浸漬しても良い。これにより、表面層25が形成される。なお、必要に応じて、リンス液を供給する部分及び洗浄液を供給する部分などをさらに設けても良い。
【0102】
このように、第2処理部62には、表面層25となる原料ガス62g及び原料液62lの少なくともいずれかを供給可能な任意の構成が適用できる。
【0103】
図11は、第3の実施形態に係る別のテンプレートの表面処理装置を例示する模式的側面図である。
図11に表したように、本実施形態に係るテンプレート表面処理装置115においては、第2チャンバ62Cが省略されている。そして、第1チャンバ61Cに第1処理部61(この例では薬液供給部61b)及び第2処理部62(この例では原料液供給部62b)が設けられている。
【0104】
このように、実施形態に係るテンプレート表面処理方法において、種々の変形が可能である。
なお、本実施形態において、表面層25の形成は、減圧下で行ってもよい。
【0105】
(第4の実施形態)
本実施形態は、第1の実施形態に係るテンプレート10を用いたパターン形成方法である。図1(c)〜図1(e)に関して説明したように、本表面処理方法では、テンプレート10の凹凸パターン11の凹部11dに、光硬化性樹脂液30を充填する(ステップS120)。そして、凹部11dに光硬化性樹脂液30が充填された状態で光硬化性樹脂液30に光35を照射して光硬化性樹脂液30を硬化させて(ステップS130)、凹凸パターン11を反映した形状を有する樹脂31を形成する。そして、テンプレート10と樹脂31とを互いに離す(ステップS140)。
【0106】
本表面処理方法においては、テンプレート10の表面層25の光硬化性樹脂液30に対する接触角θが30度以下であるため、ステップS120における充填時間を短縮しつつ、ステップS140における離型において、不良の発生が抑制できる。本表面処理方法によれば、生産性の高いパターン形成方法が実現できる。
【0107】
実施形態によれば、生産性の高いパターン形成方法を実現するテンプレート、テンプレートの表面処理方法、テンプレート表面処理装置及びパターン形成方法が提供される。
【0108】
なお、本願明細書において、「垂直」及び「平行」は、厳密な垂直及び厳密な平行だけではなく、例えば製造工程におけるばらつきなどを含むものであり、実質的に垂直及び実質的に平行であれば良い。
【0109】
以上、具体例を参照しつつ、本発明のいくつかの実施形態について説明した。しかし、本発明の実施形態は、これらの具体例に限定されるものではない。例えば、テンプレートに含まれる基材及び表面層などの各要素の具体的な構成に関しては、当業者が公知の範囲から適宜選択することにより本発明を同様に実施し、同様の効果を得ることができる限り、本発明の範囲に包含される。
また、各具体例のいずれか2つ以上の要素を技術的に可能な範囲で組み合わせたものも、本発明の要旨を包含する限り本発明の範囲に含まれる。
【0110】
その他、本発明の実施の形態として上述したテンプレート、テンプレートの表面処理方法、テンプレート表面処理装置及びパターン形成方法を基にして、当業者が適宜設計変更して実施し得る全てのテンプレート、テンプレートの表面処理方法、テンプレート表面処理装置及びパターン形成方法も、本発明の要旨を包含する限り、本発明の範囲に属する。
【0111】
その他、本発明の思想の範疇において、当業者であれば、各種の変更例及び修正例に想到し得るものであり、それら変更例及び修正例についても本発明の範囲に属するものと了解される。
【0112】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0113】
10…テンプレート、 10a…転写面、 11…凹凸パターン、 11d…凹部、 11p…凸部、 20…基材、 20a…主面、 21…凹凸、 21d…基材凹部、 21p…基材凸部、 25…表面層、 30…光硬化性樹脂液、 31…樹脂、 35…光、 40…被処理基板、 51…有機物汚染、 52…パーティクル、 61…第1処理部、 61C…第1チャンバ、 61a…光照射部、 61b…薬液供給部、 61c…プラズマ処理部、 61l…薬液、 61p…プラズマ、 61s…第1保持部、 61u…紫外線、 62…第2処理部、 62C…第2チャンバ、 62a…原料ガス供給部、 62b…原料液供給部、 62g…原料ガス、 62l…原料液、 62s…第2保持部、 71…搬入部、 72…搬出部、 73…搬送ユニット、 73a…搬送アーム、 74a〜74c…第1〜第3シャッタ、 111〜115、…テンプレート表面処理装置、 θ…接触角、 A1〜A3…第1〜第3樹脂液、 Fr…剥離力、 R、R’…有機官能基、 T0…未処理試料、 T1〜T4…第1〜第4表面処理層、 Tf…充填時間、 Wa…付着仕事
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、テンプレート、テンプレートの表面処理方法、テンプレート表面処理装置及びパターン形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
パターン形成方法として、テンプレートに設けられた凹凸パターンを樹脂に転写する方法(例えばインプリント方法)がある。この方法においては、短波長の光源やレンズ等を必要としないため、従来のリソグラフィと比較すると装置価格の低減が可能である。この方法は、半導体デバイスの微細化に伴って増大するコストを抑制する技術として期待されている。生産性の高いインプリント方法が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−326367号公報
【特許文献2】特開2010−214859号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の実施形態は、生産性の高いパターン形成方法を実現するテンプレート、テンプレートの表面処理方法、テンプレート表面処理装置及びパターン形成方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の実施形態によれば、凹凸パターンが設けられた転写面を有し、前記凹凸パターンの凹部に、光によって硬化する前の状態の光硬化性樹脂液を充填し、前記光によって前記光硬化性樹脂液を硬化させて形成される樹脂の表面に前記凹凸パターンを反映した形状を形成するためのテンプレートが提供される。前記テンプレートは、基材と、表面層と、を備える。前記基材は、凹凸が設けられた主面を有し、前記光硬化性樹脂液が硬化する光に対して透過性である。前記表面層は、前記基材の前記凹凸を覆い、前記凹凸の形状を反映した前記凹凸パターンを形成する。前記表面層の、前記光によって硬化する前の状態の前記光硬化性樹脂液に対する接触角は30度以下である。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】図1(a)〜図1(e)は、第1の実施形態に係るテンプレートの構成及びそれを用いたパターン形成方法を例示する工程順模式的断面図である。
【図2】図2(a)〜図2(c)は、剥離力の測定結果を例示するグラフ図である。
【図3】図3(a)〜図3(c)は、付着仕事の測定結果を例示するグラフ図である。
【図4】図4(a)〜図4(c)は、接触角の測定結果を例示するグラフ図である。
【図5】接触角と充填時間との関係を例示するグラフ図である。
【図6】図6(a)〜図6(c)は、第2の実施形態に係るテンプレートの表面処理方法を例示する工程順模式的断面図である。
【図7】図7(a)〜図7(e)は、第2の実施形態に係るテンプレートの表面処理方法を例示する模式図である。
【図8】図8(a)及び図8(b)は、第3の実施形態に係るテンプレートの表面処理装置を例示する模式図である。
【図9】図9(a)及び図9(b)は、第3の実施形態に係る別のテンプレートの表面処理装置を例示する模式的側面図である。
【図10】第3の実施形態に係る別のテンプレートの表面処理装置を例示する模式的側面図である。
【図11】第3の実施形態に係る別のテンプレートの表面処理装置を例示する模式的側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下に、各実施の形態について図面を参照しつつ説明する。
なお、図面は模式的または概念的なものであり、各部分の厚みと幅との関係、部分間の大きさの比率などは、必ずしも現実のものと同一とは限らない。また、同じ部分を表す場合であっても、図面により互いの寸法や比率が異なって表される場合もある。
なお、本願明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
【0008】
(第1の実施形態)
図1(a)〜図1(e)は、第1の実施形態に係るテンプレートの構成及びそれを用いたパターン形成方法を例示する工程順模式的断面図である。
図1(a)に表したように、本実施形態に係るテンプレート10は、基材20と、表面層25と、を備える。
【0009】
テンプレート10は、転写面10aを有する。転写面10aには、凹凸パターン11が設けられている。凹凸パターン11は、例えば、凹部11dと、凸部11pと、を有する。例えば、凹部11dが複数設けられ、凸部11pが複数設けられる。また、例えば、連続的な凹部11dと、複数の凸部11pと、が設けられても良い。また、例えば、連続的な凸部11pと、複数の凹部11dと、が設けられても良い。
【0010】
凹凸パターン11は、例えば、トレンチ状や穴状である。凹部11dの深さ(凸部11pの高さ)は、例えば20ナノメートル(nm)以上200nm以下程度である。凹部11dの幅は、例えば10nm以上100nm以下程度である。凸部11pの幅は、例えば10nm以上100nm以下程度である。ただし、実施形態はこれに限らず、凹部11dの深さ、凹部11dの幅、及び、凸部11pの幅は、任意である。
【0011】
後述するように、テンプレート10は、テンプレート10の凹凸パターン11の凹部11dに光硬化性樹脂液30が充填されて、光硬化性樹脂液30を光によって硬化させて形成される樹脂の表面に、凹凸パターン11を反映した形状を形成するためのテンプレートである。ここで、光硬化性樹脂液30は、光によって硬化する前の状態の樹脂液であるものとする。
【0012】
光硬化性樹脂液30には、例えば、アクリル系樹脂及びエポキシ系樹脂などの樹脂液が用いられる。光硬化性樹脂液30は、例えば、紫外光により硬化する。
【0013】
基材20は、光硬化性樹脂液30が硬化する光に対して透過性である。基材20には、例えば、石英が用いられる。基材20は、凹凸21が設けられた主面20aを有する。凹凸21は、基材凹部21dと、基材凸部21pと、を有する。凹凸21の形状が、凹凸パターン11の形状に反映される。
【0014】
表面層25は、基材20の凹凸21を覆う。表面層25は、凹凸21の形状を反映した凹凸パターン11を形成する。すなわち、表面層25の表面が、上記の凹凸パターン11となる。
【0015】
基材20の主面20aの凹凸21の形状は、テンプレート10の転写面10aの凹凸パターン11の形状と比べ、表面層25の厚さの2倍に相当する幅の分だけ、狭まるようにして異なる。
表面層25の厚さは、凹凸21の深さ分よりも薄い。これにより、凹凸21の形状を反映した凹凸パターン11を形成することができる。表面層25の厚さは、例えば、1nm以上5nm以下程度である。ただし、実施形態はこれに限らず、表面層25の厚さは、凹凸21の形状を反映した凹凸パターン11を形成することができれば任意である。
【0016】
表面層25の、光によって硬化する前の状態の光硬化性樹脂液30に対する接触角は30度以下である。
これにより、生産性の高いパターン形成方法を実現するテンプレートが提供できる。この特性については後述する。
【0017】
以下、テンプレートを用いたパターン形成方法の1つの例について説明する。
図1(b)に表したように、パターンを形成する被処理基板40の主面上に光硬化性樹脂液30を配置する(ステップS110)。ここで、光硬化性樹脂液30は、光によって硬化する前の状態の樹脂液であるものとする。光硬化性樹脂液30の配置には、例えば、インクジェット法などが用いられる。ただし、実施形態はこれに限らず、光硬化性樹脂液30の配置には、任意の手法を用いることができる。
【0018】
そして、被処理基板40上の光硬化性樹脂液30に、テンプレート10の転写面10aを対向させる。
【0019】
図1(c)に表したように、テンプレートの凹凸パターン11の凹部11dに、光硬化性樹脂液30を充填する(ステップS120)。
【0020】
図1(d)に表したように、凹部11dに光硬化性樹脂液30が充填された状態で、光硬化性樹脂液30に光35を照射して光硬化性樹脂液30を硬化させる(ステップS130)。これにより、凹凸パターン11を反映したパターン形状を有する樹脂31が形成される。樹脂31は、光硬化性樹脂液30が光35によって硬化して形成される。
【0021】
図1(e)に表したように、テンプレート10と樹脂31とを互いに離す(ステップS140)。これにより、被処理基板40の主面上に、テンプレート10の凹凸パターン11を反映した形状を有する樹脂31が形成される。すなわち、凹凸パターン11が樹脂31に転写される。この樹脂31を例えばマスクとして用いて、被処理基板40を加工する。
【0022】
なお、図1(c)に例示したプロセスにおいて、場合によっては、テンプレート10の凸部11pと被処理基板40との間に光硬化性樹脂液30が存在する。このときは、凸部11pに対向する被処理基板40の上に、残膜が形成される。この残膜は、必要に応じて、ドライエッチングなどの手法によって除去することができる。
【0023】
上記のパターン形成方法において、光35によって硬化した樹脂31と、テンプレート10と、の間の密着性が高いと、上記のステップS140において、凹凸パターン11の凹部11dに、樹脂31の一部が残ることがある。すなわち、樹脂31の層が破壊され、樹脂31の一部が、凹部11dに埋め込まれて残る。凹部11dに残った樹脂31は、次の転写プロセスにおいて不良を発生させる。このため、硬化した樹脂31と、テンプレート10と、の間の密着性を低くするために、離型層を設ける構成がある。
【0024】
この離型層は、例えば、基材20の凹凸21を覆うように設けられる。離型層としては、例えばフッ素系の表面処理層などが用いられる。これにより、硬化した樹脂31と、テンプレート10と、の間の密着性を低下させ、凹凸パターン11の凹部11dに樹脂31の一部が残ることを抑制する。
【0025】
しかしながら、発明者の実験によると、テンプレート10にこのような離型層を設けた場合、テンプレート10の凹部11dに樹脂液が充填されるのに要する時間が非常に長くなり、これがインプリント方式のパターン形成方法の生産性の向上を阻害する大きな要因になることが判明した。
【0026】
発明者は、以下の実験を行った。この実験では、石英ガラスの基材20を用いた。基材20には、凹凸21が設けられている。凹凸21の深さ(基材凹部21dの深さ)は、60nmである。基材凹部21dの幅(底部の幅)は、24nmであり、基材凸部21pの幅は、24nmである。凹凸21はトレンチ状の形状を有している。
【0027】
このような基材20をそのままテンプレートとして用い、アクリル系モノマーを含む光硬化性樹脂液(第1樹脂液A1)が、凹凸21の凹部(基材凹部21d)に充填されるまでの時間(充填時間)を測定したところ、約20秒であった。
【0028】
一方、この基材20の凹凸21の表面に、フッ素系のシランカップリング剤(第1処理剤)を用いて離型層を形成した。そして、充填時間を測定すると、300秒以上であった。このように、離型層(例えばフッ素系シランカップリング剤による層)を設けると、充填時間が著しく長くなる。
【0029】
このように、硬化した樹脂31との離型性に着目して上記のような離型層を設ける構成においては、離型層の表面エネルギーは小さく設定される。結果として、離型層が樹脂液を弾き、離型層で覆われたテンプレート10の凹部11dに樹脂液が侵入することが阻害される。すなわち、離型層は、充填性を低下させる。すなわち、従来の離型層は、離型性だけを向上しており、充填性に関して関心が払われていない。
【0030】
発明者は、テンプレート10の凹部11dに樹脂液が充填されるのに要する時間が、パターン形成における全体の生産性に大きく影響を与えることを見出した。テンプレート10と硬化した樹脂31との離型性を高く維持しつつ、凹部11dに樹脂液が充填されるのに要する時間を短縮する充填性の高い新たな構成が望まれる。発明者は、このような新たな課題を見出し、この課題を解決すべく、実施形態に係る構成を構築した。すなわち、実施形態においては、表面層25と、光によって硬化する前の状態の光硬化性樹脂液30と、の濡れ性に関する特性が適切に制御されている。これにより、テンプレート10の表面層25と、光によって硬化する前の状態の光硬化性樹脂液30との間では、高い離型性を得つつ、高い充填性を得ることができ、なおかつテンプレート10の表面層25と、光によって光硬化性樹脂液30が硬化した樹脂31との間でも、高い離型性を得ることができる。
【0031】
以下、発明者が実施した、離型性と充填性とに関する実験について説明する。
実験においては、複数の種類の表面処理剤(第1〜第4処理剤)と、複数の種類の光硬化性樹脂液30(第1〜第3樹脂液)と、が用いられた。
【0032】
第1処理剤は、フッ素系の処理剤である。第1処理剤は、フッ素を含む第1表面処理層T1を形成する。第1処理剤は、上記の充填時間を測定した実験で用いられた表面処理剤である。
【0033】
第2処理剤は、ヘキサメチルジシラザン(HMDS)である。すなわち、第2処理剤は、メチル基を有する第2表面処理層T2を形成する。
【0034】
第3処理剤は、メチルトリメトキシシランである。すなわち、第3処理剤は、官能基としてメチル基を有するシランカップリング剤であり、メチル基を有する第3表面処理層T3を形成する。
【0035】
第4処理剤は、フェニルトリメトキシシランである。すなわち、第4処理剤は、官能基としてフェニル基を有するシランカップリング剤であり、フェニル基を有する第4表面処理層T4を形成する。
【0036】
これらの処理剤を用いて、石英ガラスの基板を処理し、基板上に第1〜第4表面処理層T1〜T4をそれぞれ形成した。また、表面処理を施さない試料(未処理試料T0)も作製した。
【0037】
第1処理剤(フッ素系シランカップリング剤)、第3処理剤(メチル基シランカップリング剤)及び第4処理剤(フェニル基シランカップリング剤)は、液相での処理(ウエット処理)により、基板上に表面処理層を形成する。シランカップリング剤においては、シランカップリング剤の加水分解と、縮合反応により、表面処理層が形成される。
【0038】
第2処理剤(HMDS)は、気相での処理(ドライ処理)により、基板上に表面処理層を形成する。気相処理の場合、例えば、パーティクルや凝集物の生成が少ないという利点がある。
【0039】
第2処理剤においては、洗浄した基板を、50℃の加熱で発生する第4処理剤の蒸気に曝露し、この後、110℃で10分間の加熱処理を行った。この加熱処理で、表面に付着した余分な第2処理剤が除去される。これにより、第2処理剤による第2表面処理層T2が形成される。
【0040】
一方、シランカップリング剤の第3処理剤を酢酸水溶液に希釈して、処理溶液を調製した。酢酸の濃度は、0.1wt%である。第3処理剤の濃度は、0.5wt%である。この処理溶液中に、洗浄した基板を浸漬させ、その後取り出し、110℃で10分間の加熱処理を行った。これにより、縮合反応が促進される。これにより、第3処理剤による第3表面処理層T3が形成される。同様にして、第4処理剤による第4表面処理層T4が形成される。また、同様にして、第1処理剤を用いて基板を処理し、第1表面処理層T1が形成される。
【0041】
一方、光硬化性樹脂液30として、第1〜第3樹脂液A1〜A3を用いた。第1樹脂液A1は、上記の充填時間を測定した実験で用いられたものであり、アクリル系モノマーを含む光硬化性の樹脂液である。第2樹脂液A2は、第1樹脂液A1にフッ素系化合物を添加したものである。フッ素系化合物は、離型性を向上させると考えられる。第3樹脂液A3は、第1樹脂液A1とは異なる成分を有するアクリル系の光硬化性の樹脂液にフッ素系界面活性剤を添加したものである。
【0042】
これらの表面処理層と、樹脂液と、において、離型性と充填性とを評価した。
樹脂液が硬化して形成された樹脂と、表面処理層と、における離型性に関する指標として、剥離力を測定した。この実験では、石英ガラスの基板を表面処理剤で処理した。同じ種類の表面処理剤で処理した基板どうしの間に樹脂液を挟み、樹脂液を硬化させた。具体的には、基板上に5マイクロリットルの樹脂液を滴下し、その上に基板を置き、基板どうしを押し付け、この状態で紫外光を照射して樹脂液を硬化させ、樹脂を形成した。そして、2枚の基板どうしを引き剥がすときの剥離力Frを測定した。この剥離力Frが小さいほど離型性が良い。
【0043】
さらに、複数の種類の表面処理層と、複数の種類の樹脂と、の付着仕事Wa(work of adhesion)を測定した。すなわち、表面処理層及び樹脂のそれぞれにおいて、水、エチレングリコール、及びホルムアルデヒドの接触角を測定した。そして、接触角の測定結果から、Kaelble−Uyのモデルにより、表面処理層のそれぞれ及び樹脂のそれぞれの表面エネルギーを求めた。そして、求めた表面エネルギーから、表面処理層のそれぞれと、樹脂のそれぞれと、の組み合わせにおける付着仕事Waを求めた。
【0044】
また、充填性に関係があると考えられる接触角θを測定した。すなわち、石英ガラスの基板上に上記の表面処理層を形成し、この表面処理層と、上記の樹脂液と、の組み合わせの接触角θを測定した。
【0045】
また、表面処理層を形成しない未処理試料T0(石英ガラスの基板)に関しても、剥離力Fr、付着仕事Wa及び接触角θを評価した。
【0046】
図2(a)〜図2(c)は、剥離力の測定結果を例示するグラフ図である。
図2(a)、図2(b)及び図2(c)は、それぞれ、第1樹脂液A1、第2樹脂液A2及び第3樹脂液A3における剥離力Frの測定結果を示している。
【0047】
図2(a)は、第1樹脂液A1による樹脂と、各表面処理層T0〜T4と、のそれぞれにおける剥離力Frを示している。図2(a)に表したように、未処理試料T0の剥離力Frは、約7.7kgfである。これに対し、フッ素系の第1表面処理層T1の剥離力Frは、約3.3kgfであり、非常に小さい。メチル基の第2表面処理層T2及び第3表面処理層T3においては、剥離力Frは、5.0kgf〜5.5kgf程度である。このように、第2表面処理層T2及び第3表面処理層T3においては、未処理試料T0に対して、剥離力Frは20%〜40%程度低下する。ベンゼン基の第4表面処理層T4の剥離力Frは、未処理試料T0の剥離力Frと同様である。第4表面処理層T4においては、離型性は向上しないと考えられる。
【0048】
図2(b)及び図2(c)に表したように、第2樹脂液A2及び第3樹脂液A3においても、メチル基の第2表面処理層T2の剥離力Frは、未処理試料T0よりも小さかった。
【0049】
このように、メチル基の第2表面処理層T2及び第3表面処理層T3においては、離型性が向上すると考えられる。
【0050】
図3(a)〜図3(c)は、付着仕事の測定結果を例示するグラフ図である。
図3(a)、図3(b)及び図3(c)は、それぞれ、第1樹脂液A1、第2樹脂液A2及び第3樹脂液A3の樹脂のそれぞれにおける付着仕事Waの測定結果を示している。
【0051】
図3(a)に表したように、第1樹脂液A1の樹脂と未処理試料T0との付着仕事Waは、約80ミリジュール/平方メートル(mJ/m2)である。これに対し、第1樹脂液A1の樹脂とフッ素系の第1表面処理層T1との付着仕事Waは、約35mJ/m2であり、非常に小さい。メチル基の第2表面処理層T2及び第3表面処理層T3においては、付着仕事Waは、60mJ/m2以上70mJ/m2以下程度である。このように、第2表面処理層T2及び第3表面処理層T3においては、未処理試料T0に対して、付着仕事Waを低減できる。
【0052】
図3(b)及び図3(c)に表したように、第2樹脂液A2及び第3樹脂液A3においても、フッ素系の第1表面処理層T1においては、付着仕事Waは著しく小さい。そして、メチル基の第2表面処理層T2及び第3表面処理層T3においては、付着仕事Waが未処理試料T0に比べてやや小さくなる。
【0053】
このように、メチル基の第2表面処理層T2及び第3表面処理層T3においては、離型性が向上すると考えられる。
【0054】
図4(a)〜図4(c)は、接触角の測定結果を例示するグラフ図である。
図4(a)、図4(b)及び図4(c)は、それぞれ、第1樹脂液A1、第2樹脂液A2及び第3樹脂液A3における接触角θの測定結果を示している。
【0055】
図4(a)に表したように、第1樹脂液A1と未処理試料T0との接触角θは、約20度であった。これに対し、第1樹脂液A1とフッ素系の第1表面処理層T1との接触角θは、60度〜70度であり、非常に大きい。第1樹脂液A1とメチル基の第2表面処理層T2との接触角θは、約27度であった。
【0056】
図3(b)及び図3(c)に表したように、第2樹脂液A2及び第3樹脂液A3においても、フッ素系の第1表面処理層T1においては、接触角θは著しく大きい。そして、メチル基の第2表面処理層T2においては、接触角θは、23度〜26度である。この場合も、第2表面処理層T2においては、未処理試料T0に対して接触角θはやや大きくなる。
【0057】
既に説明したように、未処理試料T0と第1樹脂液A1との組み合わせにおいて、第1樹脂液A1の充填時間は、約20秒であった。一方、フッ素系の第1表面処理層T1(離型層となる)を設けたテンプレートにおいては、充填時間は、約300秒であった。このような充填時間の違いは、第1樹脂液A1との接触角θの違いに起因していると考えられる。
【0058】
図5は、接触角と充填時間との関係を例示するグラフ図である。
同図の横軸は接触角θである。縦軸は充填時間Tfである。
図5に表したように、接触角θが、約20度の場合は、充填時間Tfは約20秒である。そして、接触角θが60度〜70度の場合は、充填時間Tfは、300秒以上である。この図から、接触角θが、23度〜27度の第2表面処理層T2においては、充填時間Tfは、20秒〜30秒程度となる。
【0059】
このように、メチル基を有する第2表面処理層T2においては、接触角θを未処理試料T0とほぼ同じ程度に維持し、充填性を維持しつつ、剥離力Fr及び付着仕事Waを未処理試料T0よりも低減し、離型性を改善することができる。
【0060】
このように、実施形態に係るテンプレート10においては、表面層25(表面処理層)の光硬化性樹脂液30に対する接触角θは、30度以下に設定される。図5から接触角θが30度以下に設定することで、50秒以下の充填時間Tfが得られる。すなわち、実施形態における充填時間は、未処理試料T0とほぼ同じで、フッ素系の表面処理層の場合に比べて著しく短縮される。そして、このような特性を有する表面層25により、離型性が向上する。
【0061】
このように、実施形態に係るテンプレート10によれば、生産性の高いパターン形成方法を実現するテンプレートが提供できる。そして、生産性の高いパターン形成方法が提供できる。
【0062】
テンプレート10の凹部11dに光硬化性樹脂液30を充填する際に、被処理基板40とテンプレート10とを互いに加圧することがある。この加圧力が過度に大きいと、テンプレート10の凹凸パターン11(微細パターン)のパターンが破壊される。実施形態に係るテンプレート10においては、充填性が良好なので、加圧力を小さくすることができる。このため、実施形態においては、テンプレート10の凹凸パターン11のパターン破壊が抑制される。
【0063】
また、実施形態においては、充填性が良好なので、テンプレート10の凹部11dに光硬化性樹脂液30を充填する際に用いる光硬化性樹脂液30の量が少ない場合においても、十分に充填することが可能である。すなわち、少量の光硬化性樹脂液30であっても充填むらが少ない状態で、凹部11dに光硬化性樹脂液30を充填できる。
【0064】
そして、図3(a)〜図3(c)に関して説明したように、第2表面処理層T2及び第3表面処理層T3においては、付着仕事Waは80mJ/m2未満である。具体的には、例えば、付着仕事Waは、60mJ/m2以上70mJ/m2以下である。これにより、未処理試料T0(付着仕事Waが約80mJ/m2)よりも付着仕事Waを低減でき、剥離性が向上できる。このように、実施形態においては、表面層25の、樹脂31(光硬化性樹脂液30が硬化して形成される樹脂)に対する付着仕事Waは、80mJ/m2未満であることが望ましい。
【0065】
そして、上記のように、表面層25(表面処理層)の光硬化性樹脂液30に対する接触角θを30度以下に設定するために、官能基としてメチル基を有する表面処理剤を用いることが好ましい。
【0066】
実施形態に係るテンプレート10において、表面層25は、Rn−Si−X4−n(nは1以上3以下の整数、Xは官能基、Rは有機官能基)で表される化合物が縮合反応して基材20と結合して形成される層を含むことができる。このRn−Si−X4−nで表される化合物において、Xは、例えば、アルコキシ基、アセトキシ基またはハロゲン原子である。すなわち、シランカップリング剤を用いて形成された表面層25を用いることができる。
【0067】
そして、上記の化合物において、Rは、CH3(CH2)k(kは0以上の整数)で表されるアルキル基とすることができる。特に、Rは、メチル基であることが望ましい。これにより、特に、充填性を維持しつつ離型性を改善することが容易になる。
【0068】
また、実施形態に係るテンプレート10において、表面層25は、R3−Si−NH-Si-R’3(R’は有機官能基、Rは有機官能基)で表される化合物が基材20と結合して形成される層を含むことができる。例えば、この化合物において、R’は、アルキル基である。また、Rは、CH3(CH2)k(kは0以上の整数)で表されるアルキル基である。特に、Rは、メチル基とすることができる。
【0069】
また、実施形態に係るテンプレート10において、表面層25は、R3−Si−NR’2(R’は有機官能基、Rは有機官能基)で表される化合物が基材20と結合して形成される層を含むことができる。例えば、この化合物において、R’は、アルキル基である。また、Rは、CH3(CH2)k(kは0以上の整数)で表されるアルキル基である。特に、Rは、メチル基とすることができる。
【0070】
すなわち、表面層25は、例えばHMDS(上記の第2処理剤)により形成されることができる。例えば、HMDSを用いた気相での処理により、例えば、パーティクルや凝集物の生成が少なくなる。さらに、気相でメチル基を有する表面層25を形成する表面処理剤として、上記のHMDSの他に、TMSDMA(トリメチルシリルジメチルアミン)などを用いることができる。
【0071】
(第2の実施形態)
本実施形態は、凹凸パターン11が設けられた転写面10aを有し、凹凸パターン11の凹部11dに光硬化性樹脂液30を充填し光硬化性樹脂液30を硬化させて形成される樹脂31の表面に凹凸パターン11を反映した形状を形成するためのテンプレート10の表面処理方法である。
【0072】
図6(a)〜図6(c)は、第2の実施形態に係るテンプレートの表面処理方法を例示する工程順模式的断面図である。
図6(a)に表したように、本表面処理方法においては、凹凸21が設けられた主面20aを有し、光硬化性樹脂液30が硬化する光(例えば紫外光)に対して透過性の基材20が用いられる。基材20の主面20aには、例えば、有機物汚染51、または、パーティクル52などが付着している場合がある。必要に応じて、これらを除去するための洗浄を行う。
【0073】
これにより、図6(b)に表したように、基材20に表面に、例えば水酸基が形成される。
【0074】
そして、図6(c)に表したように、基材20の凹凸21を覆うように、光硬化性樹脂液30に対する接触角θが30度以下の表面層25を形成する。これにより、凹凸21の形状を反映した凹凸パターン11が形成される。表面層25は、例えば、シランカップリング剤により形成される。
【0075】
図7(a)〜図7(e)は、第2の実施形態に係るテンプレートの表面処理方法を例示する工程順模式図である。
これらの図では、シランカップリング剤を用いた表面層25の形成方法を例示している。
図7(a)に表したように、基材20の表面に水酸基が形成されている。この例では、水酸基は、シラノール基である。例えば、基材20の表面への、紫外線照射、プラズマ処理及び薬液処理の少なくともいずれかにより、水酸基を形成できる。
【0076】
図7(b)及び図7(c)に表したように、シランカップリング剤が加水分解する。そして、縮合反応により、図7(d)に表したように、シランカップリング剤の一部が、基材20と結合する。さらに、図7(e)に表したように、シランカップリング剤どうしが重合する。これにより、表面層25が形成される。表面層25においては、有機官能基Rが表面に露出した状態となる。有機官能基Rを適切に設定することで、接触角θを30度以下に設定できる。
【0077】
表面層25の形成は、表面層25を気相成長させることを含むことが望ましい。例えばHMDSやTMSDMAを用いることで、表面層25を気相で形成できる。これにより、パーティクルや凝集物の生成が少なく、均一な表面層25を形成し易くなる。
【0078】
(第3の実施形態)
本実施形態に係るテンプレート表面処理装置は、上記の実施形態に係るテンプレート10を表面処理するための表面処理装置である。
【0079】
図8(a)及び図8(b)は、第3の実施形態に係るテンプレートの表面処理装置を例示する模式図である。
図8(a)は平面図であり、図8(b)は側面図である。
図8(a)及び図8(b)に表したように、本実施形態に係るテンプレート表面処理装置111は、第1処理部61と、第2処理部62と、を備える。
【0080】
第1処理部61は、基材20(即ち、テンプレート10であり、以下これを省略する。)の主面20aに水酸基を形成する。すなわち、図7(a)に例示したように、基材20の主面20aに、例えばシラノール基を形成する。なお、基材20は、凹凸21が設けられた主面20aを有し、光硬化性樹脂液30が硬化する光35に対して透過性である。ここで、光硬化性樹脂液30は、光によって硬化する前の状態の樹脂液であるものとする。
【0081】
第2処理部62は、第1処理部61により水酸基が形成された主面20aの凹凸21を覆うように、表面層25を形成する。表面層25の光硬化性樹脂液30に対する接触角は、30度以下である。すなわち、第2処理部62は、図7(b)〜図7(e)に関して説明した反応を実施させる。
第2処理部62により形成された表面層25により、凹凸21の形状を反映した凹凸パターン11が形成される。
【0082】
この例では、第1処理部61として、紫外線61uを基材20照射する光照射部61aが用いられている。第2処理部62として、表面層25となる原料ガス62gを基材20に向けて供給する原料ガス供給部62aが用いられている。
【0083】
本具体例のテンプレート表面処理装置111は、第1チャンバ61C、第2チャンバ62C、搬入部71、搬出部72、及び、搬送ユニット73をさらに備えている。
【0084】
第1チャンバ61Cの内部に第1処理部61が配置される。第1チャンバ61Cの内部に、第1保持部61sが設けられている。また、第1保持部61sの上に基材20が載置される。基材20の上方に第1処理部61が配置されている。
【0085】
第2チャンバ62Cと、第2処理部62の原料ガス供給部62aと、が連通している。第2チャンバ62Cには、第2保持部62sが設けられている。また、第2保持部62sの上に基材20が載置される。基材20の上方に、第2処理部62から原料ガス62gを供給する開口部が設けられている。
【0086】
搬入部71において、処理前の基材20が所定の位置にセットされる。搬出部72において、処理後の基材20(テンプレート10)が搬出される。搬送ユニット73は、基材20を搬送する搬送アーム73aを有している。搬送アーム73aは、例えば、搬入部71、第1チャンバ61C、第2チャンバ62C及び搬出部72の相互の間において、基材20を移動させることができる。搬入部71と第1チャンバ61Cとの間に第1シャッタ74aが設けられている。また、第1チャンバ61Cと第2チャンバ62Cとの間に第2シャッタ74bが設けられ、第2チャンバ62Cと搬出部72との間に第3シャッタ74cが設けられている。
【0087】
基材20は、上記のシャッタを介して、搬入部71、第1チャンバ61C、第2チャンバ62C及び搬出部72の相互の間を移動する。
【0088】
例えば、基材20が、搬送アーム73aにより、搬入部71から第1チャンバ61Cの第1保持部61sにセットされる。
【0089】
第1チャンバ61Cの第1処理部61(光照射部61a)から基材20に向けて、紫外線61uが照射される。この紫外線61uの波長は、例えば172nmである。紫外線61uにより、基材20の主面20aに水酸基が形成される。
【0090】
すなわち、紫外線61uが基材20の主面20aに照射されると、雰囲気中の酸素が反応してオゾンが生成され、さらには、酸化力の強い酸素ラジカルが生成される。その結果、例えば、基材20の主面20a上に存在した有機物が除去され、基材20の表面が清浄化される。そして、清浄化された基材20の主面20aには水酸基が形成される。
【0091】
図7(a)に関して説明したように、基材20として石英が用いられている場合は、水酸基として、シラノール基(Si−OH)が形成される。
【0092】
このように、第1処理部61による処理により、基材20の主面20aにおける水酸基の量が増加する。第1処理部61は、例えば、主面20aを清浄化する。
【0093】
第1処理部61での処理が終了した基材20は、搬送アーム73aにより、第1チャンバ61Cから第2チャンバ62Cに搬送される。基材20は、第2保持部62sにセットされる。
【0094】
第2処理部62(この例では、原料ガス供給部62a)は、表面層25を形成するための化合物を第2チャンバ62C内に供給する。供給される化合物は、例えば、Rn−Si−X4−n(nは、1以上3以下の整数である。Xは、アルコキシ基、アセトキシ基またはハロゲン原子である。Rは、アルキル基である。)で表される化合物である。また、ここで供給される化合物は、その他に、例えば、R3−Si−NH-Si-R’3(R’は有機官能基、Rは有機官能基)で表される化合物、あるいは、R3−Si−NR’2(R’は有機官能基、Rは有機官能基)で表される化合物を用いることができる。
【0095】
これにより、図7(b)〜図7(e)に関して説明した反応が行われ、表面層25が形成される。
【0096】
すなわち、図7(b)に表したように、例えば原料ガス62gのRn−Si−X4−nの官能基Xが、雰囲気中の水分と加水分解反応し、シラノール基を生じる。
【0097】
図7(c)及び図7(d)に示したように、基材20の主面20aに形成されたシラノール基と、原料ガス62gのシラノール基と、反応し、原料ガス62gの化合物の一部が基材20と結合する。
【0098】
そして、図7(e)に表したように、基材20に結合した複数の化合部の一部のそれぞれのシラノール基同士が脱水縮合反応する。これにより、表面層25が形成される。このようにして形成された表面層25の、光硬化性樹脂液30に対する接触角は30度以下である。これにより、テンプレート10が作製される。
処理が終了して得られたテンプレート10は、搬出部72から搬出される。
【0099】
図9(a)及び図9(b)は、第3の実施形態に係る別のテンプレートの表面処理装置を例示する模式的側面図である。
これらの図は、第1処理部61の別の例を示している。
図9(a)に表したように、本実施形態に係る別のテンプレート表面処理装置112においては、第1処理部61として、薬液供給部61bが用いられている。薬液供給部61bは、水酸基を形成するための薬液61lを、主面20aに向けて供給する。薬液61lの供給には、例えば、スピン塗布またはスプレー塗布などの方法が用いられる。また、ここでは、薬液61l中に基材20を浸漬しても良い。
【0100】
図9(b)に表したように、本実施形態に係る別のテンプレート表面処理装置113においては、第1処理部61として、プラズマ処理部61cが用いられている。プラズマ処理部61cは、プラズマ61pを生成する。このプラズマ61pにより、基材20(即ち、テンプレート10である。)の主面20aが処理される。これにより、水酸基が形成される。
このように、第1処理部61には、水酸基を形成する任意の構成が適用できる。
【0101】
図10は、第3の実施形態に係る別のテンプレートの表面処理装置を例示する模式的側面図である。
この図は、第2処理部62の別の例を示している。
図10に表したように、本実施形態に係る別のテンプレート表面処理装置114においては、第2処理部62として、原料液供給部62bが用いられている。原料液供給部62bは、表面層25となる原料液62lを基材20(即ち、テンプレート10である。)に向けて供給する。原料液62lの供給には、例えば、スピン塗布またはスプレー塗布などの方法が用いられる。また、原料液62l中に基材20を浸漬しても良い。これにより、表面層25が形成される。なお、必要に応じて、リンス液を供給する部分及び洗浄液を供給する部分などをさらに設けても良い。
【0102】
このように、第2処理部62には、表面層25となる原料ガス62g及び原料液62lの少なくともいずれかを供給可能な任意の構成が適用できる。
【0103】
図11は、第3の実施形態に係る別のテンプレートの表面処理装置を例示する模式的側面図である。
図11に表したように、本実施形態に係るテンプレート表面処理装置115においては、第2チャンバ62Cが省略されている。そして、第1チャンバ61Cに第1処理部61(この例では薬液供給部61b)及び第2処理部62(この例では原料液供給部62b)が設けられている。
【0104】
このように、実施形態に係るテンプレート表面処理方法において、種々の変形が可能である。
なお、本実施形態において、表面層25の形成は、減圧下で行ってもよい。
【0105】
(第4の実施形態)
本実施形態は、第1の実施形態に係るテンプレート10を用いたパターン形成方法である。図1(c)〜図1(e)に関して説明したように、本表面処理方法では、テンプレート10の凹凸パターン11の凹部11dに、光硬化性樹脂液30を充填する(ステップS120)。そして、凹部11dに光硬化性樹脂液30が充填された状態で光硬化性樹脂液30に光35を照射して光硬化性樹脂液30を硬化させて(ステップS130)、凹凸パターン11を反映した形状を有する樹脂31を形成する。そして、テンプレート10と樹脂31とを互いに離す(ステップS140)。
【0106】
本表面処理方法においては、テンプレート10の表面層25の光硬化性樹脂液30に対する接触角θが30度以下であるため、ステップS120における充填時間を短縮しつつ、ステップS140における離型において、不良の発生が抑制できる。本表面処理方法によれば、生産性の高いパターン形成方法が実現できる。
【0107】
実施形態によれば、生産性の高いパターン形成方法を実現するテンプレート、テンプレートの表面処理方法、テンプレート表面処理装置及びパターン形成方法が提供される。
【0108】
なお、本願明細書において、「垂直」及び「平行」は、厳密な垂直及び厳密な平行だけではなく、例えば製造工程におけるばらつきなどを含むものであり、実質的に垂直及び実質的に平行であれば良い。
【0109】
以上、具体例を参照しつつ、本発明のいくつかの実施形態について説明した。しかし、本発明の実施形態は、これらの具体例に限定されるものではない。例えば、テンプレートに含まれる基材及び表面層などの各要素の具体的な構成に関しては、当業者が公知の範囲から適宜選択することにより本発明を同様に実施し、同様の効果を得ることができる限り、本発明の範囲に包含される。
また、各具体例のいずれか2つ以上の要素を技術的に可能な範囲で組み合わせたものも、本発明の要旨を包含する限り本発明の範囲に含まれる。
【0110】
その他、本発明の実施の形態として上述したテンプレート、テンプレートの表面処理方法、テンプレート表面処理装置及びパターン形成方法を基にして、当業者が適宜設計変更して実施し得る全てのテンプレート、テンプレートの表面処理方法、テンプレート表面処理装置及びパターン形成方法も、本発明の要旨を包含する限り、本発明の範囲に属する。
【0111】
その他、本発明の思想の範疇において、当業者であれば、各種の変更例及び修正例に想到し得るものであり、それら変更例及び修正例についても本発明の範囲に属するものと了解される。
【0112】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0113】
10…テンプレート、 10a…転写面、 11…凹凸パターン、 11d…凹部、 11p…凸部、 20…基材、 20a…主面、 21…凹凸、 21d…基材凹部、 21p…基材凸部、 25…表面層、 30…光硬化性樹脂液、 31…樹脂、 35…光、 40…被処理基板、 51…有機物汚染、 52…パーティクル、 61…第1処理部、 61C…第1チャンバ、 61a…光照射部、 61b…薬液供給部、 61c…プラズマ処理部、 61l…薬液、 61p…プラズマ、 61s…第1保持部、 61u…紫外線、 62…第2処理部、 62C…第2チャンバ、 62a…原料ガス供給部、 62b…原料液供給部、 62g…原料ガス、 62l…原料液、 62s…第2保持部、 71…搬入部、 72…搬出部、 73…搬送ユニット、 73a…搬送アーム、 74a〜74c…第1〜第3シャッタ、 111〜115、…テンプレート表面処理装置、 θ…接触角、 A1〜A3…第1〜第3樹脂液、 Fr…剥離力、 R、R’…有機官能基、 T0…未処理試料、 T1〜T4…第1〜第4表面処理層、 Tf…充填時間、 Wa…付着仕事
【特許請求の範囲】
【請求項1】
凹凸パターンが設けられた転写面を有し、前記凹凸パターンの凹部に、光によって硬化する前の状態の光硬化性樹脂液を充填し、前記光によって前記光硬化性樹脂液を硬化させて形成される樹脂の表面に前記凹凸パターンを反映した形状を形成するためのテンプレートであって、
凹凸が設けられた主面を有し、前記光硬化性樹脂液が硬化する光に対して透過性の基材と、
前記基材の前記凹凸を覆い、前記凹凸の形状を反映した前記凹凸パターンを形成する表面層と、
を備え、
前記表面層の、前記光によって硬化する前の状態の前記光硬化性樹脂液に対する接触角は30度以下であることを特徴とするテンプレート。
【請求項2】
前記表面層の前記樹脂に対する付着仕事は、80ミリジュール/平方メートル未満であることを特徴とする請求項1記載のテンプレート。
【請求項3】
前記表面層は、
Rn−Si−X4−n(nは1以上3以下の整数、Xは官能基、Rは有機官能基)で表される化合物が縮合反応して前記基材と結合して形成される層を含むことを特徴とする請求項1または2に記載のテンプレート。
【請求項4】
前記Xは、アルコキシ基、アセトキシ基またはハロゲン原子であることを特徴とする請求項3記載のテンプレート。
【請求項5】
前記表面層は、
R3−Si−NH-Si-R’3(R’は有機官能基、Rは有機官能基)で表される化合物が前記基材と結合して形成される層を含むことを特徴とする請求項1または2に記載のテンプレート。
【請求項6】
前記表面層は、
R3−Si−NR’2(R’は有機官能基、Rは有機官能基)で表される化合物が前記基材と結合して形成される層を含むことを特徴とする請求項1または2に記載のテンプレート。
【請求項7】
前記R’は、アルキル基であることを特徴とする請求項5または6に記載のテンプレート。
【請求項8】
前記Rは、CH3(CH2)k(kは0以上の整数)で表されるアルキル基であることを特徴とする請求項3〜7のいずれか1つに記載のテンプレート。
【請求項9】
前記Rは、メチル基であることを特徴とする請求項3〜8のいずれか1つに記載のテンプレート。
【請求項10】
凹凸パターンが設けられた転写面を有し、前記凹凸パターンの凹部に、光によって硬化する前の状態の光硬化性樹脂液を充填して、前記光によって前記光硬化性樹脂液を硬化させて形成される樹脂の表面に前記凹凸パターンを反映した形状を形成するためのテンプレートの表面処理方法であって、
凹凸が設けられた主面を有し、前記光硬化性樹脂液が硬化する光に対して透過性の基材の前記凹凸を覆うようにして、前記前記光によって硬化する前の状態の光硬化性樹脂液に対する接触角が30度以下の表面層を形成し、前記凹凸の形状を反映した前記凹凸パターンを形成することを特徴とするテンプレートの表面処理方法。
【請求項11】
前記表面層の前記形成は、前記表面層を気相成長させることを含むことを特徴とする請求項10記載のテンプレートの表面処理方法。
【請求項12】
凹凸パターンが設けられた転写面を有し、前記凹凸パターンの凹部に、光によって硬化する前の状態の光硬化性樹脂液を充填し、前記光によって、前記光硬化性樹脂液を硬化させて形成される樹脂の表面に前記凹凸パターンを反映した形状を形成するためのテンプレートの表面処理装置であって、
凹凸が設けられた主面を有し前記光硬化性樹脂液が硬化する光に対して透過性の基材の前記主面に水酸基を形成する第1処理部と、
前記第1処理部により前記水酸基が形成された前記主面の前記凹凸を覆うように、前記前記光によって硬化する前の状態の光硬化性樹脂液に対する接触角が30度以下の表面層を形成する第2処理部と、
を備えたことを特徴とするテンプレート表面処理装置。
【請求項13】
請求項1〜9のいずれか1つに記載のテンプレートの前記凹凸パターンの前記凹部に、前記光硬化性樹脂液を充填する工程と、
前記凹部に前記光硬化性樹脂液が充填された状態で、前記光によって硬化する前の状態の光硬化性樹脂液に光を照射し、前記光硬化性樹脂液を硬化させて、前記凹凸パターンを反映した形状を有する前記樹脂を形成する工程と、
前記テンプレートと、前記樹脂と、を互いに離す工程と、
を備えたことを特徴とするパターン形成方法。
【請求項1】
凹凸パターンが設けられた転写面を有し、前記凹凸パターンの凹部に、光によって硬化する前の状態の光硬化性樹脂液を充填し、前記光によって前記光硬化性樹脂液を硬化させて形成される樹脂の表面に前記凹凸パターンを反映した形状を形成するためのテンプレートであって、
凹凸が設けられた主面を有し、前記光硬化性樹脂液が硬化する光に対して透過性の基材と、
前記基材の前記凹凸を覆い、前記凹凸の形状を反映した前記凹凸パターンを形成する表面層と、
を備え、
前記表面層の、前記光によって硬化する前の状態の前記光硬化性樹脂液に対する接触角は30度以下であることを特徴とするテンプレート。
【請求項2】
前記表面層の前記樹脂に対する付着仕事は、80ミリジュール/平方メートル未満であることを特徴とする請求項1記載のテンプレート。
【請求項3】
前記表面層は、
Rn−Si−X4−n(nは1以上3以下の整数、Xは官能基、Rは有機官能基)で表される化合物が縮合反応して前記基材と結合して形成される層を含むことを特徴とする請求項1または2に記載のテンプレート。
【請求項4】
前記Xは、アルコキシ基、アセトキシ基またはハロゲン原子であることを特徴とする請求項3記載のテンプレート。
【請求項5】
前記表面層は、
R3−Si−NH-Si-R’3(R’は有機官能基、Rは有機官能基)で表される化合物が前記基材と結合して形成される層を含むことを特徴とする請求項1または2に記載のテンプレート。
【請求項6】
前記表面層は、
R3−Si−NR’2(R’は有機官能基、Rは有機官能基)で表される化合物が前記基材と結合して形成される層を含むことを特徴とする請求項1または2に記載のテンプレート。
【請求項7】
前記R’は、アルキル基であることを特徴とする請求項5または6に記載のテンプレート。
【請求項8】
前記Rは、CH3(CH2)k(kは0以上の整数)で表されるアルキル基であることを特徴とする請求項3〜7のいずれか1つに記載のテンプレート。
【請求項9】
前記Rは、メチル基であることを特徴とする請求項3〜8のいずれか1つに記載のテンプレート。
【請求項10】
凹凸パターンが設けられた転写面を有し、前記凹凸パターンの凹部に、光によって硬化する前の状態の光硬化性樹脂液を充填して、前記光によって前記光硬化性樹脂液を硬化させて形成される樹脂の表面に前記凹凸パターンを反映した形状を形成するためのテンプレートの表面処理方法であって、
凹凸が設けられた主面を有し、前記光硬化性樹脂液が硬化する光に対して透過性の基材の前記凹凸を覆うようにして、前記前記光によって硬化する前の状態の光硬化性樹脂液に対する接触角が30度以下の表面層を形成し、前記凹凸の形状を反映した前記凹凸パターンを形成することを特徴とするテンプレートの表面処理方法。
【請求項11】
前記表面層の前記形成は、前記表面層を気相成長させることを含むことを特徴とする請求項10記載のテンプレートの表面処理方法。
【請求項12】
凹凸パターンが設けられた転写面を有し、前記凹凸パターンの凹部に、光によって硬化する前の状態の光硬化性樹脂液を充填し、前記光によって、前記光硬化性樹脂液を硬化させて形成される樹脂の表面に前記凹凸パターンを反映した形状を形成するためのテンプレートの表面処理装置であって、
凹凸が設けられた主面を有し前記光硬化性樹脂液が硬化する光に対して透過性の基材の前記主面に水酸基を形成する第1処理部と、
前記第1処理部により前記水酸基が形成された前記主面の前記凹凸を覆うように、前記前記光によって硬化する前の状態の光硬化性樹脂液に対する接触角が30度以下の表面層を形成する第2処理部と、
を備えたことを特徴とするテンプレート表面処理装置。
【請求項13】
請求項1〜9のいずれか1つに記載のテンプレートの前記凹凸パターンの前記凹部に、前記光硬化性樹脂液を充填する工程と、
前記凹部に前記光硬化性樹脂液が充填された状態で、前記光によって硬化する前の状態の光硬化性樹脂液に光を照射し、前記光硬化性樹脂液を硬化させて、前記凹凸パターンを反映した形状を有する前記樹脂を形成する工程と、
前記テンプレートと、前記樹脂と、を互いに離す工程と、
を備えたことを特徴とするパターン形成方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−204613(P2012−204613A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−67905(P2011−67905)
【出願日】平成23年3月25日(2011.3.25)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年3月25日(2011.3.25)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]