説明

ディスプレイ、インストルメントパネル、光学系および光学機器

異なる奥行きに画像を表示するために設けられた多重奥行きディスプレイは、全ての画像を表示する単一ディスプレイ装置61を有している。当該ディスプレイ装置61の前方には、光学系62,63,64が配置されている。当該光学系は、互いに距離をおいて配置された第1および第2の部分反射体62,63と、上記装置61によって表示される第1および第2の画像または連続画像に対して第1および第2の光路を提供する、偏光光学64とを有している。上記第1の光路65は、上記第1の反射体62を介した部分的な透過と、上記第2の反射体63からの部分的な反射と、上記第1の反射体62からの部分的な反射と、上記第2の反射体65を介して視野領域へ向かう部分的な透過とを含んでいる。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
〔技術分野〕
本発明はディスプレイに関するものである。このようなディスプレイを用いて、例えば、奥行き感または変動された奥行き感(impression of depth or changed depth)を与えることが可能である。このようなディスプレイは、例えば、情報表示の応用(コンピュータ支援設計、ゲームおよびテレビを含む)や、警告または他のメッセージがバックグラウンドから飛び出す必要がある応用において用いられ得る。本発明は、さらに、このようなディスプレイを備えるインストルメントパネルに関する。本発明は、さらに、このようなシステムを含む光学系および光学機器に関する。
【0002】
〔背景技術〕
自動車および航空機のような乗り物には、離散型の機械ダイアルまたは電気ダイアルに代わって、例えばインストルメントクラスタの画像を提供する電子ディスプレイを備えていることが知られている。しかしながら、このようなディスプレイは、通常、ディスプレイ機に対して異なる奥行きに画像を生成することが不可能なために、リアル性が制限されている。このディスプレイのリアル性が制限されていることに加えて、異なる奥行きに画像を生成することができない点によって、画像の視認性または鮮明度が低減する。立体ディスプレイおよび裸眼立体ディスプレイが公知であり、三次元画像の印象を生成可能であるが、このようなディスプレイは、実際の奥行きの印象を生成するものではなく、情報に正確に焦点を当てて再生することは不可能である。さらに、このようなディスプレイは、自由な視点(freedom of viewing position)を制限し、ユーザを混乱させ、眼精疲労および頭痛さえも引き起こし得る。
【0003】
添付の図面の図1は、US4,736,214に開示されたタイプの、バックグラウンド画像およびフォアグラウンド画像を異なる画像奥行きで表示するディスプレイを示す図である。このディスプレイは、投写フィルム2によって伝送される画像を投写するプロジェクタ1を含み、ここでは各フレームが分割されていて、バックグラウンド画像3およびフォアグラウンド画像4を提供している。プロジェクタ1は、各フレームの画像を同時に、後部投写スクリーン5と、ミラー6,7と、部分伝送ミラー8とを含む光学系上に投写させる。2つの奥行き面を有する動画を生成するために、これらバックグラウンド画像とフォアグラウンド画像とは、異なる長さの光学経路を介して投写される。このような装置は、観客9に異なる奥行きで画像を示すことが可能であるが、当該装置が比較的大きく、且つ、比較的高価な機材を用いる必要があるために、アプリケーションは制限されている。
【0004】
添付の図面の図2は、WO9942889、WO03040820、WO04001488、WO04002143、および、WO04008226に開示されたタイプのディスプレイを示す図である。このタイプのディスプレイは、デュアルパネル型構成であり、空間光変調器11,12を重ね合わせたバックライト10を備えている。空間光変調器11,12は、バックライト10からの光を一対の画像または連続した画像で変調して、この一対の画像または連続した画像が異なる奥行きで表示されるようにする。しかしながら、このような構成は、いくつかの不都合を有している。例えば、空間光変調器11,12は、同一の規則正しいブラックマスクの模様を有することもあるので、結果的にモアレ縞が生じ、このようなモアレ縞の発生を低減するためにさらなる光学素子13が必要となる。同様に、2つ(または2つ以上)の空間光変調器を用いるため、結果として光透過率は大幅に低減され、視認に必要な画像または所望の画像を得るには、極めて明るいバックライト10が必要となる。
【0005】
このような構成は、「減光」型であり、例えば、第2の変調器12内の視野方向(line of sight)内の画素を視認者が視認可能であるためには、第1の変調器11内の画素は「オン」であるか、または、光が透過されている必要がある。従って、光の対象を暗いバックグラウンド上で見ることは不可能である。同様に、光が、離間された2つの変調器11,12を通り抜ける時には、画像境界にパララックス作用が生じる。
【0006】
複数の空間光変調器を用いることによって、実質的には、上記ディスプレイのコストは、単一の空間光変調器を用いた従来のディスプレイと比べると増大する。奥行き面の数を増やすには、空間光変調器の数を増やさなければならず、結果的に、コストが直線的に増加することになり、実験上(experiental)、奥行き面の数に合わせて輝度が低減することになる。さらに、このような構成では、複数の空間光変調器を同時に制御する必要がある。
【0007】
US2,402,9626にも、同様のタイプのマルチパネルディスプレイが開示されている。当該ディスプレイは、賭博ゲーム装置における使用を意図したものである。
【0008】
EP01059626およびEP0454423には、時計または携帯型ゲームのような特定のアプリケーション用の多層ディスプレイが開示されており、当該多層ディスプレイは、固定された電極パターンを有している。EP1265097には、自動車のインストルメントクラスタ用ディスプレイが開示されており、このディスプレイは、特定の車両機能を表すためのパターン形成されたディスプレイが重ね合わされたマトリクス−アドレス可能なディスプレイを含む。これらディスプレイは、上述のマルチパネルディスプレイと同様の欠点を有している他、電極パターンによって決定される制限された画像だけを表示することしかできない。
【0009】
EP1093008、JP0226211、WO0911255、JP62235929およびUS22105516には、散乱型多層と偏光子のない表示パネルとに基づいたボリュームディスプレイ(volumetric display)が開示されている。このディスプレイは、表示された画像の輝度を、光吸収性表示パネルと比べて改善することを目的としたものである。しかしながら、このタイプのディスプレイは、様々な欠点を有している。例えば、光が周囲に透過されるように、非散乱状態によって暗状態が形成される。これは、多くのアプリケーション(特に夜間走行中の自動車のディスプレイ)では望ましいことでない。この多重ディスプレイはまた、比較的高価である。さらに、このタイプのディスプレイは、通常、比較的遅いスイッチング時間を有しており、例えば自動車環境内のような広範囲の温度変動幅での使用には適していない。
【0010】
添付の図面の図3は、例えば、US4333715、US22163482およびUS4670744に開示されているような、公知のタイプのタイムシーケンシャル型投写ボリュームディスプレイを示す図である。異なる面の画像が、プロジェクタ15によって順次表示され、複数の投写スクリーン16に投写される。これら投写スクリーン16は、能動型であり、これらスクリーンは、プロジェクタ15が、スクリーンの位置で視認させることを目的とした画像を同時に投写することを可能にするスクリーンである。投写スクリーン16は、スイッチがオンされる時には反射型または離散型であり、スイッチがオフされる時にはほぼ透明である。しかしながら、このようなディスプレイは、大きな容積を必要とするために、用途が制限されている。このようなディスプレイは、また、投写スクリーンとプロジェクタによって投写される画像とを同時に起動させることが必要であるため不便である。
【0011】
2003年の東京モーターショーで展示されたダイムラークライスラー(DaimlerChrysler)社のF500 Mind Car実験車は、半透明ミラー(half-silvered mirror)によって、標準インストルメントクラスタと液晶液晶ディスプレイ(LCD)パネルとを重ね合わせたインストルメントクラスタを開示していた。しかしながら、このような構成では、互いに斜めに配置される必要のある2つのディスプレイを収容するために、大きな容積を必要とする。また、上述のように、多重ディスプレイを用いることで、このようなシステムは比較的高価なものとなる。
【0012】
添付の図面の図4〜図6は、WO09810584に開示されたタイプのディスプレイを示す図である。図4に示すディスプレイは、部分反射光学素子21の形をしたビーム合成素子を有するハウジング20を含む。ハウジング20は、視認開口(viewing aperture)22と、フォアグラウンド画像を表示するディスプレイ装置23が中に配置された開口と、バックグラウンド画像を表示するディスプレイ装置24が中に設置された開口とを有している。視認者からディスプレイ装置23までの光学経路と、視認者からディスプレイ装置24までの光学経路とは異なっており、装置23は実際の位置に出現するが、装置24は、装置23の後方に出現して、仮想のバックグラウンド画像25を供給する。
【0013】
添付の図面の図5に示すディスプレイは、単一のディスプレイ装置30を含み、当該ディスプレイ装置は、飛び越し走査された(interlaced)フォアグラウンド画像(31で示す)とバックグラウンド画像(32で示す)とを表示するための比較的大きな領域に分割されている。各フォアグラウンド素子31からの光は、部分的に反射するミラー33とアレイ状の光学拡大素子34とを通って、視野領域まで直接移動するが、各バックグラウンド素子32からの光は、ミラー35および部分反射するミラー33によって反射されるので、視野領域まで長い光路を有する。
【0014】
添付の図面の図6は、プロジェクタ40と、第1の投写スクリーン42および第2の投写スクリーン43が搭載された回転ロッド41とを含む他の一ディスプレイを示す図である。このプロジェクタは、第1の画像および第2の画像または連続した画像を、同時に、プロジェクタの前方にある各スクリーン42,43に投写する。
【0015】
図4に示すディスプレイは、比較的大きな容積を有していると共に、多数のディスプレイ装置を用いているので比較的高価であるという欠点を有している。図5に示したディスプレイは、ディスプレイ装置30の飛び越し走査された部分が比較的大きく、画像を全ディスプレイ領域に満たすにはさらなる拡大素子34が必要であるという欠点を有している。このような素子を設けると、結果的に、素子34のFナンバーのために視認者の移動の自由は低減される。素子34は、ディスプレイ装置30の領域と正確に揃っている必要があるので、製造中は不都合であると共にコストが増大する。上記ディスプレイ装置の各バックグラウンド部分に2つのミラー部材が必要であるので、製品の寸法は大きくなり、コストも増大する。視認者は上記ディスプレイに相対的に移動するので、軸上の視認のために完全な補償体(compensation)が設けられたとしても、素子34内の収差は、画像歪みを生じさせる。
【0016】
添付の図面の図6に示すディスプレイは、比較的大きな容積を有しており、異なる画像奥行きを提供する機械的なシステムを必要としている。このディスプレイは、また、この機械的なアッセンブリの回転位置と投写された画像とを同期化させるための手段が必要であるという不具合がある。
【0017】
US2005/0156813には、添付の図面の図7に示すタイプのディスプレイが開示されている。このディスプレイは、フォアグラウンド画像を表示する部分46とバックグラウンド画像を表示する部分47とを有するLCDパネル45を含む。パネル45は、添付の図面の図7の平面上に偏向方向を有する両画像で変調された光を供給する。部分46からの光は、反射偏光子48を通ってディスプレイの視野領域まで移動する。
【0018】
部分47からの光は、光の偏向方向を90°変動させるリターダ49を通るので、この光は、添付の図面の図7の平面に対して垂直になる。結果として生じる光は、ミラー50によって反射偏光子48に反射されるので、結果としてこの反射された光は、再び偏光子48によって視野領域に反射される。
【0019】
このようなディスプレイは、単一のLCDパネルから異なる複数の画像奥行きを設けるが、このパネルの各部分(separate portions)は、2つの画像を形成する必要があるので、所定の寸法の多重奥行き画像を生成するには、より大きな表示パネルを必要とする。ミラー50を設けることによっても、上記ディスプレイの視角は大幅に制限される。画面方向が視認方向に対して垂直ではあり得ないため、この画面の方向も制限される。
【0020】
〔発明の開示〕
本発明の第1の形態によると、第1の光路を提供する光学系であって、当該第1の光路は、上記光学系の物理的長さよりも長く、上記光学系は、互いに距離をおいて配置された第1および第2の部分反射体を含んでおり、且つ、上記第1の反射体への第1の光の入射に対して上記第1の光路を設け、当該第1の光路は、上記第1の反射体を介して上記第2の反射体へ向かう少なくとも部分的な透過と、上記第2の反射体から上記第1の反射体へ向かう少なくとも部分的な反射と、上記第1の反射体から上記第2の反射体へ向かう少なくとも部分的な反射と、上記第2の反射体を介した少なくとも部分的な透過とを含んでおり、上記光学系は、上記第1および第2の反射体による反射中に反射されなかった上記第1の光が、上記第2の反射体から放射されるのを実質的に防ぐように構成されており、上記第2の部分反射体への最初の光入射は上記光学系から離れない光学系が提供される。
【0021】
従って、製造コストが比較的安価で、かつ比較的簡素な光学系を提供することができる。この光学系は、その物理的長さよりも長い光路を設けることができる。このような構成は、画像ディスプレイ装置よりも離れた位置にあるディスプレイに画像を提供するアプリケーション、および光学機器の長さを短縮するアプリケーションなど、多くのアプリケーションを含んでいる。
【0022】
上記光学系は、第1の光の偏光を、第1の経路に沿って通過している間に変化させるように構成することができる。上記光学系は、第1の光の偏光を、第1の経路に沿って通過している間に、第2の反射体への入射と第1の反射体からの反射との間において変化させるように構成することができる。
【0023】
上記光学系は、上記第1の経路の長さとは異なる長さを有する第2の光路を設けるように構成することができる。当該第2の光路は、上記第1の反射体を介して上記第2の反射体へ向かう少なくとも部分的な透過と、上記第2の反射体を介した少なくとも部分的な透過とを含んでいてもよい。上記光学系は、当該第2の反射体によって透過されなかった上記第2の光が、上記第2の反射体から放射されるのを実質的に防ぐように構成することができる。上記光学系は、第1の光が第1の光路に沿って伝播する第1のモードと、光が第2の光路に沿って伝播する第2のモードとの間で切り替え可能である。
【0024】
さらに、長さがそれぞれ異なる2つの光路を有する光学系であって、これら2つの長さのうち少なくとも1つは、当該光学系の物理的長さとは異なる長さである光学系を提供することができる。当該光学系もまた、比較的小型で、製造コストが安価である。直視型ディスプレイ装置と共に用いられた場合は、視認者からそれぞれ異なる距離で配置された画像を有する直視型ディスプレイであって、これら画像のうち少なくとも1つは、ディスプレイ装置の物理的位置の奥行き方向に置き換えることのできる直視型ディスプレイを提供することができる。
【0025】
上記第1および第2の反射体は実質的に平面であってもよい。
【0026】
上記第1および第2の反射体は実質的に平行であってもよい。
【0027】
上記第1および第2の反射体は、反射直線偏光子および部分透過ミラーをそれぞれ含んでいてもよく、上記光学系は、上記第1の反射体との間に配置された上記第2の反射体を有する円偏光子と、上記第1の反射体と上記第2の反射体との間に配置された4分の1波長板と、上記第1の反射体と上記円偏光子との間に配置された、切り替え可能な2分の1波長板とを含んでいてもよい。
【0028】
上記第1および第2の反射体は、部分透過ミラーおよび少なくとも1つの反射円偏光子をそれぞれ含んでいてもよい。上記光学系は、4分の1波長板を含んでいてもよい。上記光学系は、切り替え可能な2分の1波長板を含んでいてもよい。上記第1および第2の反射体は、反射偏光子を含んでいてもよく、上記光学系は、切り替え可能な指向性2分の1波長板を含んでいてもよい。
【0029】
上記第1および第2の反射体は、反射直線偏光子を含んでいてもよく、上記光学系は、ファラデー回転子および切り替え可能な2分の1波長板を含んでいてもよい。
【0030】
本発明の第2の形態によると、本発明の上記第1の形態に係る光学系を含んだ光学機器が提供される。
【0031】
上記光学機器は、光強度を有する、屈折性、反射性、または回折性素子を少なくとも1つ含んでいてもよい。例えば、上記光学機器は、望遠ミラー、単眼ミラー、一対の双眼ミラーまたはカメラを含んでいてもよい。
【0032】
本発明の第3の形態によると、第1の画像または連続画像を有する第1の光を変調するディスプレイ装置と、上記第1の画像または連続の位置の知覚される奥行きを大きくするように構成された光学系とを含んだディスプレイであって、当該光学系は、互いに距離をおいて配置された第1および第2の部分反射体を含んでおり、且つ、上記第1の光に対して、上記装置から視野領域へと第1の光路を設け、当該第1の光路は、上記第1の反射体を介して上記第2の反射体へ向かう少なくとも部分的な透過と、上記第2の反射体から上記第1の反射体へ向かう少なくとも部分的な反射と、上記第1の反射体から上記第2の反射体へ向かう少なくとも部分的な反射と、上記第2の反射体を介して上記視野領域へ向かう少なくとも部分的な透過とを含んでいるディスプレイが提供される。
【0033】
上記光学系は、上記第1および第2の反射体による反射中に反射されなかった上記第1の光が、上記視野領域へ透過されるのを実質的に防ぐように構成することができる。
【0034】
上記光学系は、上記第1の光の偏光を、上記第1の経路に沿って通過している間に変化させるように構成することができる。上記光学系は、上記第1の光の上記偏光を、上記第1の経路に沿って通過している間に、上記第2の反射体への入射と上記第1の反射体からの反射との間において変化させるように構成することができる。
【0035】
上記装置は、第2の画像または連続画像を有する第2の光を変調するように構成することができ、上記光学系は、上記装置から上記視野領域へ、上記第1の経路の長さとは異なる長さを有する第2の光路を設け、上記第1の画像または連続の位置の知覚される奥行きとは異なる、上記第2の画像または連続の位置の知覚される奥行きを提供するように構成することができる。上記第2の光路は、上記第1の反射体を介して上記第2の反射体へ向かう少なくとも部分的な透過と、上記第2の反射体を介して上記視野領域へ向かう少なくとも部分的な透過とを含んでいてもよい。上記光学系は、上記第2の反射体によって透過されなかった上記第2の光が、上記視野領域へ透過されるのを実質的に防ぐように構成することができる。
【0036】
上記ディスプレイは、上記第1の画像または連続を表示する第1のモードと、上記第2の画像または連続を表示する第2のモードとを切り替えて、知覚される画像位置の奥行きを変化させることができる。
【0037】
上記ディスプレイは、上記第1および第2の画像または連続を同時または時間系列的に表示して、上記第1および第2の画像または連続のうちのいずれか一方が、上記第1および第2の画像または連続の他方の上に重ね合わせられたように見せるように構成することができる。上記ディスプレイは、スケールを示す他方の画像または連続と、ポインタを示す一方の画像または連続とに対して画像データを生成する画像発生器を含んでいてもよい。上記一方の画像または連続に対する上記画像データは、視認可能な警告を示すことができる。
【0038】
上記第1および第2の反射体は実質的に平面であってもよい。
【0039】
上記第1および第2の反射体は実質的に平行であってもよい。上記第1および第2の反射体は、上記装置のディスプレイ表面に実質的に平行であってもよい。
【0040】
上記装置は発光装置であってもよい。
【0041】
上記装置は透過型空間光変調器を含んでいてもよい。上記変調器は液晶デバイスを含んでいてもよい。
【0042】
上記第1および第2の反射体は、上記装置の画像表示領域上の実質的に全体に位置していてもよい。
【0043】
上記第1および第2の反射体は、上記装置と円偏光子との間に配置された、反射直線偏光子および部分透過ミラーをそれぞれ含んでいてもよく、上記光学系は、上記第1の反射体と上記第2の反射体との間に配置された4分の1波長板と、上記第1の反射体と上記円偏光子との間に配置された切り替え可能な2分の1波長板とを含んでいてもよい。
【0044】
上記第1および第2の反射体は、部分透過ミラーおよび少なくとも1つの反射円偏光子をそれぞれ含んでいてもよい。上記光学系は、4分の1波長板を含んでいてもよい。上記光学系は、切り替え可能な2分の1波長板を含んでいてもよい。
【0045】
上記第1および第2の反射体は反射偏光子を含んでいてもよく、上記光学系は切り替え可能な指向性2分の1波長板を含んでいてもよい。
【0046】
上記第1および第2の反射体は、反射直線偏光子を含んでいてもよく、上記光学系は、ファラデー回転子および切り替え可能な2分の1波長板を含んでいてもよい。
【0047】
上記第1および第2の反射体は、部分透過ミラーおよび反射直線偏光子をそれぞれ含んでいてもよく、上記光学系は、上記第1の反射体と上記第2の反射体との間に配置された4分の1波長板と、上記第1の反射体と上記装置との間に配置された、パターン化リターダまたは偏光回転子とを含んでいてもよい。
【0048】
上記ディスプレイは、上記装置のための直線出口偏光子、または上記装置の直線出口偏光子を含んでいてもよい。
【0049】
上記ディスプレイは、平行バックライトを含んでいてもよく、上記光学系は、拡散器を含んでいてもよい。上記部分透過ミラーは、開口のアレイを有するミラーを含んでいてもよく、上記拡散器は、上記開口と位置合わせされたレンズのアレイを含んでいてもよい。これらのレンズは、収束レンズであってもよい。
【0050】
上記パターン化リターダまたは回転子は、パターン化されていない均一な状態へ切り替え可能である。
【0051】
上記パターン化リターダまたは回転子は、パターン化された4分の1波長板を含んでいてもよい。
【0052】
上記パターン化リターダまたは回転子は、均一な4分の1波長板、およびパターン化された2分の1波長板またはパターン化された90°偏光回転子を含んでいてもよい。
【0053】
上記パターン化リターダまたは回転子は、液晶セルを含んでいてもよい。上記液晶セルは、パターン化された電極構成を含んでいてもよい。
【0054】
上記装置は、スキャンリフレッシュ(scan-refreshed)することができ、上記光学系は、セグメント化された、切り替え可能な、偏光に作用する素子を含んでいてもよい。これらのセグメントは、上記装置によって表示される画像の関連部分がリフレッシュされた時に切り替えられるように構成されている。
【0055】
上記変調器は、スキャンリフレッシュすることができ、上記装置は、フレームリフレッシュの連続対間において照射するように構成されたバックライトを含んでいてもよい。
【0056】
本発明の第4の形態によると、本発明の上記第3の形態に係るディスプレイを含んだ車両用のインストルメントパネルが提供される。
【0057】
従って、比較的安価なディスプレイを提供することができる。一般的には、複数の表示パネルを用いる必要がないため、コストを削減することができる。また、これによって、公知の多重ディスプレイ装置構成の比較的低い光スループットを回避することができる。奥行きの立体的錯覚を起こす3Dディスプレイに関連した眼精疲労は、虚像を1つ以上生成することによって防止することができる。また、上記ディスプレイは、比較的広い視野領域において視認可能であるため、視認者の視野自由度が大幅に高まる。
【0058】
このような構成は、複数の画像または複数の連続を表示するために用いられた場合は「付加的」であるため、明るい物体は暗い背景の前面に現れる。さらに、一般的には、公知の様々な複数の表示パネル構成と比較して、モアレ効果が低減される。画像または連続画像を表示するために用いられない光は、周囲環境へ透過されるのではなく、上記ディスプレイ内に吸収される。
【0059】
このような構成は可動部品を必要とせず、また多くの実施形態において、製造中に光学素子同士を位置合わせする必要がない。このような構成は、放射型または透過型ディスプレイ装置と共に用いることができる。
【0060】
また、光路が、当該光路を提供する光学系の物理的長さよりも長い光学系を提供することができる。このような光学系を、例えば光学機器内において用いることによって、その光学機器を小型化することができる。上記光学系は、光学機器の長さを短縮できるだけではなく、幅を大きくする必要がない。上記光路は、横方向へ逸脱させる必要はなく、効果的に「それ自身を折り畳む」ことができる。このため、幅を広げることなく、また2つまたは2つ以上の光路部分間に横方向において距離を置く必要なく、長さを短縮することができる。
【0061】
〔図面の簡単な説明〕
図1は、従来の多重画像奥行きディスプレイ(multiple image depth display)の一例を示す断面図である。
【0062】
図2は、従来の多重画像奥行きディスプレイの一例を示す断面図である。
【0063】
図3は、従来の多重画像奥行きディスプレイの一例を示す断面図である。
【0064】
図4は、従来の多重画像奥行きディスプレイの一例を示す断面図である。
【0065】
図5は、従来の多重画像奥行きディスプレイの一例を示す断面図である。
【0066】
図6は、従来の多重画像奥行きディスプレイの一例を示す断面図である。
【0067】
図7は、従来の多重画像奥行きディスプレイの一例を示す断面図である。
【0068】
図8(a)および図8(b)は、本発明の一般的な実施形態を構成するディスプレイを示す図であり、奥行き追加モードおよび「無奥行き」モードをそれぞれ示す図である。
【0069】
図9(a)〜図9(c)は、本発明の第1の実施形態を構成するディスプレイを示す図である。
【0070】
図10(a)〜図10(d)は、上記第1の実施形態の動作を示す図である。
【0071】
図11は、さらに変形された、本発明の第1の実施形態を構成するディスプレイを示す図である。
【0072】
図12(a)および図12(b)は、本発明の第2の実施形態を構成するディスプレイの構造および動作を示す図である。
【0073】
図13(a)〜図13(c)は、ディスプレイを示す図(図13(a)および図13(b))、および、本発明の第3の実施形態を構成する変形されたディスプレイを示す図(図13(c))である。
【0074】
図14(a)および図14(b)は、本発明の第4の実施形態を構成するディスプレイの構造および動作を示す図である。
【0075】
図15(a)は、カラーフィルタの性能を示す図であり、図15(b)は、上記第4の実施形態の他の一実施例を構成する変形されたディスプレイを示す図である。
【0076】
図16は、本発明の第5の実施形態を構成するディスプレイを示す図である。
【0077】
図17(a)および図17(b)は、本発明の第6の実施形態を構成するディスプレイを示す図である。
【0078】
図18(a)および図18(b)は、図17(a)および図17(b)のディスプレイの第1の奥行きモードの動作を示す図である。
【0079】
図19(a)および図19(b)は、図17(a)および図17(b)のディスプレイの第2の奥行きモードの動作を示す図である。
【0080】
図20(a)および図20(b)は、本発明の第7の実施形態を構成するディスプレイを示す図である。
【0081】
図21(a)および図21(b)は、図20(a)および図20(b)に示したディスプレイの変形例を示す図である。
【0082】
図22は、図20(a)および図20(b)のディスプレイのさらなる変形例を示す図である。
【0083】
図23(a)〜図23(e)は、本発明の飛び越し走査された画像実施形態において用いる光学素子の実施例を示す図である。
【0084】
図24(a)および図24(b)は、本発明の第8の実施形態を構成するディスプレイを示す図である。
【0085】
図25(a)および図25(b)は、本発明の第9の実施形態を構成するディスプレイを示す図である。
【0086】
図26は、本発明の第9の実施形態を構成するディスプレイを示す図である。
【0087】
図27(a)および図27(b)は、図25(a)、図25(b)および図26に示すディスプレイの一変形例を示す図である。
【0088】
図28は、図25(a)、図25(b)および図26に示すディスプレイのさらなる一変形例を示す図である。
【0089】
図29は、図25(a)、図25(b)および図26に示すディスプレイのさらなる一変形例を示す図である。
【0090】
図30は、図25(a)、図25(b)および図26に示すディスプレイのさらなる一変形例を示す図である。
【0091】
図31は、図25(a)、図25(b)および図26に示すディスプレイのさらなる一変形例を示す図である。
【0092】
図32は、図25(a)、図25(b)および図26に示すディスプレイのさらなる一変形例を示す図である。
【0093】
図33は、図25(a)、図25(b)および図26に示すディスプレイのさらなる一変形例を示す図である。
【0094】
図34は、図25(a)、図25(b)および図26に示すディスプレイのさらなる一変形例を示す図である。
【0095】
図35は、グレースケールまたは変形されたガンマ関数を示す値に対する、表示輝度を示すグラフである。
【0096】
図36は、上記ディスプレイ内の使用に適したLCD画素配置を示す図である。
【0097】
図37は、上記ディスプレイ内の使用に適したLCD画素配置を示す図である。
【0098】
図38は、本発明の複数の実施形態を構成するディスプレイのアプリケーションを示す図である。
【0099】
図39および図40は、本発明の複数の実施形態を構成するディスプレイの動作を示す図である。
【0100】
図41(a)および図41(b)は、本発明のいくつかの実施形態に適用可能な一変形例を示す図である。
【0101】
図42(a)〜図42(d)は、本発明のいくつかの実施形態に適用可能なクロストーク補正を示す図である。
【0102】
図43(a)および図43(b)は、制御ボタンをシミュレートするディスプレイのアプリケーションを示す図である。
【0103】
図44は、公知のタイプの天体望遠ミラーを示す図である。
【0104】
図45は、本発明の第10の実施形態を構成する天体望遠ミラーを示す図である。
【0105】
図46は、本発明の第11の実施形態を構成する地上望遠ミラーを示す図である。
【0106】
図47は、公知のタイプのデジタルカメラを示す図である。
【0107】
図48は、本発明の本発明の第12の実施形態を構成するデジタルカメラを示す図である。
【0108】
〔発明を実施する最良の形態〕
図8(a)および図8(b)は、ディスプレイの構成を示す図であり、当該ディスプレイの2つの動作モードを示している。このディスプレイは、バックライト60を含み、当該バックライトは、液晶デバイス(LCD)61の形の空間光変調器(SLM)の後方に配置されている。LCD61の前方には(その視認者側)には、第1の部分反射体62および第2の部分反射体63が配置されており、LCD61は、反射体62と63との間に配置された偏光変調光学素子64を備えている。反射体62,63は、奥行きが変わった画像を形成するために適切に離間されることによって互いに分離されており、互いに平行且つ像面に対して平行である。例えば、部分反射体62,63は、光の1つの偏光状態を反射させると共に直交状態を伝達(transmit)させるように配置されており、他のいくつかのタイプの部分反射するミラー(または反射素子の組み合わせ)であってもよい。偏光光学素子64は、光学素子64をいずれかの方向または両方の方向に通り抜ける光の少なくとも1つの偏光状態を変動させるように配置されている。
【0109】
素子61〜64は、LCD61によって表示される、第1の画像および第2の画像または連続した画像が、様々な光路に沿って1人以上の視認者が位置している広範囲の視野領域に移動するように配置されている。第1の画像および第2の画像または連続した画像用の光路の例を65,66にそれぞれ示している。第1の画像または連続した画像では、光は、少なくとも部分的に、第1の反射体62によって第2の反射体63に透過される。第2の反射体63は、この光を、少なくとも部分的に第1の反射体62に反射させ、第1の反射体62は、入射光線の少なくとも一部を第2の反射体63に反射し返す。第2の反射体63は、反射された光の少なくとも一部を視野領域に透過させるので、上記第1の画像または連続した画像によって符号化された(encoded)光は、視認者に届く前に「ジグザグ」経路をたどる。このディスプレイは、上記第1の画像または連続した画像を符号化する光が、透過によって反射体62,63を介して視認者に直接移動しないように、配置されている。
【0110】
光路66によって示すように、第2の画像または連続した画像によって符号化された光は、基本的に直接路を通って視野領域に進むように、少なくとも部分的に反射体62,63によって透過される。経路65,66が異なる(特に長さが異なる)ために、第2の画像または連続した画像は、ほぼLCD61の位置に出現するが、第1の画像または連続した画像の奥行きは変動されて、位置67に出現する。従って、上記ディスプレイは、デュアル奥行きのディスプレイとして機能し、視認者が画像を異なる平面に見ることが可能になる。
【0111】
光が経路65をたどるかまたは経路66をたどるかは、異なる多数の方法によって決定され得る。これら方法の例は、経路65,66を、異なる回数用いること、または異なる色によって用いること、もしくはLCD61の異なる経路から出現する光によって用いることを含む。
【0112】
このようなディスプレイは、(視認者が異なる奥行き面の画像を同時に有効に視ることが可能な)デュアル奥行きディスプレイとは違う方法で動作され得る。例えば、上記ディスプレイは、光が経路65をたどり、経路66をたどらないように動作してもよい。この場合、このディスプレイは、奥行きが変動された(depth-shifting)ディスプレイとして機能し、画像は、LCD61よりも視認者からさらに離れた平面からやってくるように見える。このような構成によって、上記ディスプレイは、さらに遠くに見える画像および当該ディスプレイに搭載することが不可能または不都合である位置の画像を表示することが可能になる。
【0113】
上記ディスプレイが、異なる奥行きの画面間を切り替わるように動作することも可能である。例えばゲーム機は、通常動作中には、画面67に現れる画像を表示している。しかし、プレーヤーが勝利したときには、奥行き面が切り替えられて、画像が前方に飛び出すように見える。
【0114】
ディスプレイをデュアル奥行きディスプレイとして動作する場合には、異なる面の画像が、タイムシーケンシャル的に表示され得る。従って、LCD61は、第1の画像および第2の画像の表示を交互に行い、必要に応じて、偏光光学素子64は同時に切り替えられるので、第1の画像からの光は光路65をたどるが、第2の画像からの光は光路66をたどる。フリッカーの視認を回避するために画像間の切り替えを十分に急速にすれば、視認者は、意図した異なる奥行き面の複数の画像を見る。
【0115】
このタイプの動作は、LCD61の全画画像がフルカラーおよびフル解像度で表示されるという利点を有している。しかしながら、このタイプの動作では、LCD61は、フリッカーの出現を排除するために十分に高いフレームレート(例えば100Hz以上の係数(order of))で動作可能である必要がある。LCDは、このようなフレームレートで動作するように存在している。しかしながらこのディスプレイは、LCDSLMの使用に限定されるものではなく、バックライトを有する光放射装置および光減衰装置を含む他の好適な装置を用いてもよい。例えば、用いられ得る他のタイプのディスプレイ装置は、ブラウン管、プラズマディスプレイ装置、投写型ディスプレイシステム、および、有機発光ダイオード(OLED)ディスプレイ装置を含む。
【0116】
あるいは、デュアル奥行きディスプレイは、偏光光学素子および異なる波長の光へ異なる影響を及ぼす反射体に基づいていてもよい。例えば、反射体62,63および光学素子64は、いくつかの波長の光(例えば赤色)が経路66をたどり、他のある波長の光(例えば青色および緑色)が経路65をたどるように配置されていてもよい。これにより、視認者は、様々な色が異なる奥行き面に現れる画像を見ることになる。
【0117】
このタイプの動作は、タイムシーケンシャル型ディスプレイでは、高フレームレートを必要としない。また画像は、LCD61のようなディスプレイ装置のフル空間解像度で表示される。しかしながら、光路65をたどる波長域および光路66をたどる波長域の2つの波長域に分割される各原色(赤,緑,青)の波長域が十分に狭くなるように選択されていない限り、フルカラー画像は、異なる奥行き面に表示され得ない。
【0118】
デュアル奥行きディスプレイに適した他の一動作モードでは、第1の画像および第2の画像は、LCD61上で空間的に飛び越し走査されている。こうして、反射体62,63および光学素子64は、第1の画像を表示している画素からの光が経路65をたどり、第2の画像を表示している画素からの光が経路66をたどるように配置される。画像は、LCD61上で行と列とに飛び越し走査され得る。このような配置は、高いフレームレートを必要とせず、フルカラーの画像を表示する。しかしながら、画像の解像度は、LCD61の基本空間解像度よりも低い。つまり、デュアル奥行きディスプレイの場合には、各画像が表示される解像度は、LCD61の基本解像度の半分である。
【0119】
図9(a)および図9(b)は、図8(a)および図8(b)に示したタイプのディスプレイを示す図である。この実施形態では、第1の部分反射体62は、光の一直線偏光状態を伝播(transmit)させると共に直交状態を反射させる反射偏光子を含む。このような偏光子は、例えば、Moxtek Inc.によって製造されたタイプのワイヤグリッド偏光子または3Mによって製造されたDBEF(方向性の輝度上昇フィルム:指向性輝度 (enhancing film))を含む。LCD61が出口偏光子を必要とする場合には、反射偏光子62は、出口偏光子として用いられるか、または当該出口偏光子に加えて設けられえる。
【0120】
反射偏光子62の上方には、固定された4分の1波長板68が配置されており、当該4分の1波長板は、直線偏光と円偏光との間を変換することが出来るように配置されている。4分の1波長板68は、適切な厚さの複屈折材料のフィルムだけを含むが、このようなフィルムは、正確には、単一波長だけのために4分の1波長の機能を実施する。4分の1波長板68が、可視スペクトル中の波長範囲のための理想的な4分の1波長板として機能するには、複数の複屈折層から形成されていることが可能である。このようなフィルムは、Polatechno Limited(日本)、または、住友化学株式会社(日本)から入手可能である。
【0121】
4分の1波長板68の上方には、切り替え可能な2分の1波長板69が配置されている。このような切り替え可能な2分の1波長板は、電気的にオン状態とオフ状態とに切り替え可能である液晶セルを含み得る。このアプリケーションに適したセルの例は、垂直配向ネマチック型(VAN)セル、フレデリックセル、および、Piセル、または、光学補償複屈折(optically compensated birefringence)(OCB)セルを含む。このようなセルは公知であり、「Liquid Crystal Displays:Addressing Schemes and Electro-Optic Effects」Ernst Lueder,Wiley-SID Series in Display Technology 2001のような液晶ディスプレイに関する標準的な公開文献に開示されている。Piセルは、オン状態とオフ状態との間を素早く切り替え可能であることから、このアプリケーションに好適である。
【0122】
切り替え可能な2分の1波長板69の上方には、ガラス層70の形をした、または、通り抜ける光の偏光状態にほぼ何の影響も及ぼさない他の透明な材料の形をしたスペーサが配置されている。スペーサ70は任意であり、見掛け上の奥行き(apparent depth)を所望の奥行きに増大させるために設けられ得る。
【0123】
第2の部分反射体63は、部分的に反射させると共に部分的に透過させるミラーを含む。ミラー63は、約半分の入射光線を反射させ、約半分の入射光線を透過させる「50%」ミラーとして示されている。しかしながら、異なる奥行きで表示される画像の所望の相対光度を得るために、光の、透過されるか、または反射される割合(fraction)は決定される。
【0124】
上記ミラーは、透明な基板上にアルミニウムのような金属の薄層を塗布することによって製造するか、または透明な誘電体層の被膜物(誘電体ミラー)を含むことが可能である。部分的な反射は、反射層を均一に部分的に透明に製造することによって、または透明な隙間または孔を備える完全な反射ミラーを用いることによって、実現可能である。これら孔または隙間が、裸眼に映るものよりも小さい規模であるならば、これら孔または隙間のパターンは視認されず、上記ミラーは、部分的に反射しているように見えると共に部分的に透明に見える。
【0125】
金属層から形成されているミラーでは、部分反射体を均一化するために孔または隙間を用いることが好ましい。これは、層厚を正確に制御して、均一層において再現可能かつ均一な反射率を得ることが困難である場合があることと、部分的に均一に反射するミラーにおける反射率の偏光状態への依存度よりも、孔を有するミラーにおける反射率の偏光状態への依存度の方が弱い場合があることと、の2つの理由による。
【0126】
ミラー63上には、円偏光子71が配置されている。当該円偏光子は、左円偏光を透過させ、右円偏光を吸収する。光学素子の順序は、ディスプレイの動作を変更せずに様々に変化させることができる。例えば、反射偏光子62と部分的に反射するミラー63との間における任意の位置に、ガラス層70を配置することができる。また、4分の1波長板68の位置と切り替え可能な2分の1波長板69との位置を交換することもできる。
【0127】
図10(a)および図10(b)には、奥行きシフトモードにおけるディスプレイの動作が示されている。偏光子62は、図の平面内に配向された透過軸73を有しており、4分の1波長板68は、透過軸73に対して45°の角度で配向された速軸74を有している。LCD61からの光は、図の平面内において(≪)電界ベクトルと共に偏光されるため、反射偏光子62を透過する。4分の1波長板68は、直線偏光を右円偏光Rに変換し、右円偏光Rは、ミラー63によって部分的に反射および部分的に透過される。このモードでは、2分の1波長板69はオフにされるため、図10(a)では省略されている。
【0128】
透過された光は、吸収されるため、円偏光子71によって遮断される。一方、反射された光は、左円偏光Lに変換される。4分の1波長板68は、上記光を、図(A)の平面に対して垂直な方向に直線偏光される状態に変換する。この光は、反射偏光子62によって反射され、そして4分の1波長板68によって左円偏光に変換される。ミラー64によって透過された上記光の部分は、また、円偏光子71によって透過され、さらにディスプレイの視野領域に向かって伝播する。ミラー63によって反射された光部分は、右円偏光に変換される。当該右円偏光は、4分の1波長板68によって、図の平面に対して平行な方向に直線偏光される光へ変換される。この光は、偏光子62によって、LCD61内へ再び透過される。
【0129】
当該動作モードでは、視野領域に透過する光は、部分反射体62および63によって反射された光のみである。従って、視認者は、前述したように、図9(a)に示されている位置67において、LCD61の画像を視認する。この画像は、その実際の位置から、部分反射体62と63との間隔の約二倍の距離分、「下方へ」効果的に変位される。実際の変位はまた、ディスプレイの様々な素子の屈折指数によって決定される。
【0130】
図10(c)および図10(d)は、2分の1波長板69がオンである場合のディスプレイの動作を示している。図10(d)に示されているように、2分の1波長板69の速軸の配向は任意であってもよい。しかし、実際は、例えばディスプレイ内において用いられる光学素子の不完全性、あるいはそれら光学素子の視野角への依存度に応じて、好ましい配向がある場合もある。このアプリケーションでは、2分の1波長板は、右円偏光Rと左円偏光Lとの間で変換を行う。
【0131】
図10(c)に示されているように、図の平面内の偏光方向に直線偏光される光は、反射偏光子62によって透過され、そして4分の1波長板68によって右円偏光に変換される。2分の1波長板69は、これを左円偏光に変換する。当該左円偏光は、ミラー63によって部分的に透過され、部分的に反射される。透過された光は、ディスプレイ視野領域に向かって円偏光子71を通過する。反射された光は、右円偏光に変換され、そして2分の1波長板69によって左円偏光に変換される。4分の1波長板68はこれを、図の平面に対して垂直な方向に直線偏光される光へ変換する。この光は、反射偏光子62によって反射され、そして4分の1波長板68によって左円偏光に変換される。
【0132】
2分の1波長板69は、上記光を右円偏光に変換する。当該右円偏光は、ミラー63によって部分的に透過され、部分的に反射される。透過された光は、円偏光子71によって吸収されるため遮断され、視野領域への透過が防がれる。反射された光は、左円偏光に変換され、そして2分の1波長板69によって右円偏光に変換される。4分の1波長板68は、これを、図の平面に対して平行な方向に直線偏光される光に変換する。この光は、反射偏光子62によって、LCD61内へ再び透過される。
【0133】
図9a、図9bおよび図10a〜図10dに示されている二重奥行きモードにあるディスプレイは、これを動作させるためには、時間系列的に動作される。従って、奥行きをシフトすることによって視認される画像と、奥行きをシフトせずに視認される画像とが、LCD61によって交互に表示される。奥行きがシフトされる画像が表示される際には、2分の1波長板がオフにされ、ディスプレイは図10(a)に示されているように動作する。シフトされない次の画像が表示される際には、2分の1波長板69がオンにされ、ディスプレイは図10(c)に示されているように動作する。2分の1波長板69およびLCD61は、視認者によって知覚されるフリッカーが全くまたはほぼ生じないように、十分に高い切り替えレートまたはフレームレートで動作しなければならない。実際のレートとしては、画像の輝度および環境要因から判断して、80Hz〜120Hzを用いることができる。
【0134】
ミラー63が入射光の約50%を反射し、約50%を透過させ、第1および第2の画像が表示される時間の長さが実質的に同等である場合、視認者によって視認される、奥行きがシフトされる画像の輝度は、LCD61によって表示される当初の輝度の約四分の一であり、シフトされない画像の輝度は、LCD61によって表示される輝度の約半分である。従って、ディスプレイの総時間平均輝度は、LCD61によって表示される輝度の約3/8である。しかし、これら画像の表示時間およびミラー64の反射率/透過率を様々に変更して、画像の相対輝度およびディスプレイの総時間平均輝度を選択することができる。例えば、奥行きがシフトされる画像が表示される時間が、シフトされない画像が表示される時間の二倍である場合、これら画像の見かけ上の輝度は実質的に同等であるが、時間平均輝度は、LCD輝度の三分の一である。また、ミラー63の透過率を50%以上に上げた場合は、ディスプレイの輝度が全体的に上昇するように、シフトされない画像の輝度の上昇は、奥行きがシフトされる画像の輝度の低下よりも大きくなる。
【0135】
前述のように、光学素子の順序は、ディスプレイの動作の仕方を変化させることなく様々に変えることができる。しかし、これら素子の理想の動作との違い、および波長依存状態に応じて、いかなる特殊な実施例においても「最適な」順序がある場合がある。互いに機能がわずかに異なる光学素子を、交互に配置してもよい。例えば、図9(c)に示されているように、ミラー63と円偏光子71との間に、切り替え可能な2分の1波長板69を配置することができる。この構造では、光は、切り替え可能な2分の1波長板69を一度のみ透過するため、その動作のあらゆる不完全性からの影響が低減される。
【0136】
前述のように、このようなディスプレイにおいては、任意のタイプの透過型または放射型ディスプレイ装置を用いることができる。例えば、図9(c)は、バックライト60およびLCD61の代わりに、陰極線管(cathode ray tube; CRT)72の使用を示している。
【0137】
切り替え可能な2分の1波長板69として液晶セルが用いられる場合は、補償フィルムを1つ以上付加することによって性能を上げることができる。例えば、液晶セルは、公称的に「オフ」である場合(一般的には、その液晶層全体に電圧が印加された場合)、残留リターダンス(residual retardance)を有している可能性がある。具体的な例を挙げると、ゼロリターダンスと275nmリターダンスとの間で切り替えを行うように設計されたセルの場合、当該セルをリターダンスが公称的にゼロとなるように切り替えた場合、残留リターダンスは50nmとなる。このような残留リターダンスによって、画像奥行き面間において可視的なクロストークが生じ得る。しかしこれは、「オン」状態におけるリターダンスが325nmとなるようにセルを構成し、また、上記セルと上記セルの速軸に対して垂直な速軸とに50nmの固定リターダを直列に備えることによって、実質的に除去することができる。これによって、「オン」状態における総リターダンスは所望の275nmとなり、残留リターダンスはキャンセルされて、「オフ」状態におけるリターダンスがゼロとなる。さらに、印加電圧を変更することによって両状態における実際のリターダンスを調節し、所望の性能または最適な性能を得ることができる。
【0138】
ディスプレイ面に垂直な軸に対する一部の素子の配向は、図10(b)および図10(d)に示されている実施例とは異なっていてもよい。例えば、4分の1波長板68を90°回転させて、4分の1波長板68をそれぞれ透過する光の偏光状態が、図10(a)および図10(c)に示されている状態に直交するようにすることができる。これにより、2分の1波長板69がオンである時には、奥行きがシフトされた画像が視認され、2分の1波長板69がオフである時には、シフトされない画像が視認される。また、円偏光子71は、右円偏光を透過させて左円偏光を反射または吸収するタイプの円偏光子であってもよい。2分の1波長板69は、理論的には、性能に影響を与えることなく回転させることが可能である。しかし、実際には、理想的な動作からの逸脱および波長依存度に応じて、好ましい配向がある場合もある。
【0139】
前述のように、LCDは、既に偏光された光を放射するため、反射偏光子62を介して光が失われることはほぼないという利点を有しているが、上記ディスプレイ装置はLCDである必要はない。しかし、LCDを高速で駆動させて、フリッカーフリーかつ時間系列的なディスプレイを提供し、さらに高速なディスプレイ装置(例えば、リアプロジェクター、陰極線管、プラズマディスプレイ、および有機LEDディスプレイ)をも用いることができるようにすることは、より困難である傾向がある。
【0140】
反射体62および63は、図では、互いに平行かつLCD61の画像表面に平行であるが、このような構成である必要はない。例えば、一部のアプリケーションでは、奥行きがシフトされる画像とシフトされない画像とが互いに平行に現れないようにする必要があり、このために反射体を適切に配向することができる。
【0141】
上記ディスプレイの一部の素子は、2つ以上の部分からなっている場合がある。これらの部品は、図9(a)〜図9(c)に示されている位置とは異なる位置に配置されていてもよい。例えば、円偏光子71は、4分の1波長板および直線偏光子を有しており、これら2つの素子は離れて配置されていてもよい。例えば、直線偏光子は、図において円偏光子が示されている位置に配置されていてもよく、また4分の1波長板は、その下において、ガラス層70または切り替え可能な2分の1波長板69によって直線偏光子から離れて配置されていてもよい。
【0142】
図9(a)〜図9(c)および図10(a)〜図10(d)に示されているディスプレイは、それぞれ異なる複数の奥行き面において同時に視認される画像を提供するものとして説明されている。しかし、これらのディスプレイは、本明細書において説明されている他の全てのディスプレイと同様に、前述した方法における任意の方法で動作させることができる。例えば、一方の面から他方の面へと画像を切り替えて、前後に動いているように見えるように構成することができる。ゲーム機に関する説明において挙げた実施例では、プレーヤーが勝った時に画像が前方に飛び出すように制御して、視認者の注意を引くように構成することができる。また、ディスプレイ領域を2つ以上のセグメントに分割して、これらをそれぞれ独立して制御し、これによって例えば、表示される画像が現れる奥行きをセグメント毎に独立して選択できるように構成することができる。
【0143】
図9(a)〜図9(c)および図10(a)〜図10(d)に示されている実施形態は、奥行きがそれぞれ異なる2つの画面に画像を表示することができる。これと同じ技術を用いて、ディスプレイからの奥行きがそれぞれ全て異なる3つ以上の画面を生成することができる。図11に、その実施例を示す。
【0144】
図11に示されているディスプレイでは、図9a〜図9bに示されている素子と同一タイプの素子60〜素子63および素子68〜素子71が、図9a〜図9bに示されている素子と同一の相対位置に配置されている。図11では、素子62、63、および68〜71は、LCD61の上方に配置された「スタック1」と示されている。別のセットの素子は、図11では「スタック2」と示されている。スタック2は、スタック1の上方に位置しており、反射偏光子62'、固定4分の1波長板68'、切り替え可能な2分の1波長板69'、ガラススペーサ70'、「50%」ミラー63'、および円偏光子71'を含んでいる。つまり、スタック1の素子がスタック2において複製されており、ガラススペーサ70'の厚さとガラススペーサ70の厚さとが異なっている点を除いては、実質的に同一である。従って、この構成は、ディスプレイからの奥行きがそれぞれ異なる4つの画面に画像を表示することができる。
【0145】
2分の1波長板69と69'との両方がオンである場合、光は、層内を「経路1」に沿って視野領域へと直接通過する。このため、表示される画像は、LCD61の画像生成面の実際の位置から実質的に発せられているものと知覚される。2分の1波長板69'がオンであり2分の1波長板69がオフである場合、光は、「経路2」を辿り、ミラー63および反射偏光子62において反射する。表示される画像は、画面67bにあるように見える。2分の1波長板69'がオフであり2分の1波長板69がオンである場合は、光は「経路3」を辿り、ミラー63'および反射偏光子62'において反射する。表示される画像は、画面67aにおいて知覚される。2分の1波長板69と69'との両方がオフである場合、光は「経路4」を辿り、ミラー63、反射偏光子62、ミラー63'、および反射偏光子62'において反射する。従って、表示される画像は、画面67cにおいて知覚される。
【0146】
図11に示されているディスプレイは、所望の効果を得るために、前述した方法のうちの任意の方法で動作させることができる。例えば、4つの画像または連続した画像を時間系列的に表示し、そして切り替え可能な2分の1波長板69および69'を同時に制御することによって、視認者は、4つの異なる奥行き画面において同時かつ効果的に画像を視認することができる。あるいは、これらの画面を切り替えて、画像が視認者に向かってきたり離れたりする印象を与えることもできる。
【0147】
図12(a)および図12(b)に示されているディスプレイは、バックライト(図示せず)、およびディスプレイ装置としてLCD61を有している。しかし、本明細書に記載の全ての実施形態と同様に、任意の適切なディスプレイ装置を用いることができる。本実施形態では、第1の部分反射体62は、部分反射ミラーを有している。当該部分反射ミラーは、本実施例では、入射光の実質的に50%を透過させ、入射光の実質的に50%を反射するように構成されている(光損失は無視する)。また、第2の部分反射体63は、コレステリック反射体を有している。当該コレステリック反射体は、円偏光状態(この場合は右R)を透過させ、直交円偏光状態(本実施例では左L)を反射する。コレステリック反射体63は、自然ならせん構造をした液晶層を含んでいる。このような反射体は、例えば、前述したLuederの文献によって周知かつ開示されている。このような反射体は、電界を印加することによってオフになるように構成することができ、あるいは、固定して切り替え不可となるようにすることもできる。この場合、液晶層は重合によって固定することができる。
【0148】
図12(a)および図12(b)に示されているディスプレイでは、固定4分の1波長板68は、LCD61とミラー62との間に配置されている。LCD61は、透過軸73と共に出口偏光子(exit polariser)を有しており、4分の1波長板68は、透過軸73に対して45°の角度を成す速軸74と共に配向されている。上記ディスプレイは、前出の実施形態と同様に、反射体62と63との間に、切り替え可能な2分の1波長板69を有しており、その速軸は所望の通りに配向することができる。
【0149】
図12(a)および図12(b)は、画像ディスプレイの奥行きシフトモードにおける動作を示している。電界ベクトルの向きが図の平面に平行である直線偏光は、4分の1波長板68によって右円偏光Rに変換される。この光の約半分は、ミラー62によって透過される。残りの約半分は反射され、そして4分の1波長板68によって、電界ベクトルが図の平面に垂直である直線偏光に変換され、そしてLCD61の出口偏光子によって吸収される。2分の1波長板69はアクティブであり、透過された上記光を左円偏光Lに変換する。この偏光状態は、コレステリック反射体63によって反射され、そして右円偏光Rに変換される。この光の約半分はミラー62によって透過され、そして4分の1波長板68によって、電界ベクトルが図の平面に対して垂直である直線偏光に変換され、そしてLCD61の出口偏光子によって吸収される。ミラー62への入射光の半分は、反射され、そして左円偏光Lに変換される。これは、2分の1波長板69によって右円偏光状態Rに変換され、そしてコレステリック反射体63によって視野領域に向かって透過される。
【0150】
奥行きがシフトされない動作モード(図示せず)では、2分の1波長板69はオフにされるため、2分の1波長板69を介して伝播する光の偏光状態に与える影響は実質的にはない。前述同様、LCD61によって放射された光は右円偏光に変換される。当該右円偏光は、実質的に偏光を変化させることなく、オフにされた2分の1波長板69によって透過され、そしてコレステリック反射体63によって視野領域へ向かって透過される。
【0151】
知覚される画像の奥行きを所望の通りにシフトさせるためには、反射体62および63を適切な距離をおいて配置させる。これは、例えばガラスから形成された、透明なスペーサ(図示せず)を用いて調節することができる。また、これら素子の順序は、図12(a)および図12(b)に示されている順序から変更することができる。例えば、2分の1波長板69は、4分の1波長板68とミラー62との間に配置してよく、あるいは、ミラー62の位置とコレステリック反射体63の位置とを交換することができる。さらに、コレステリック反射体63を、4分の1波長板と反射偏光子との組み合わせと置き換えることもできる。
【0152】
図13(a)および図13(b)に示されているディスプレイは、切り替え可能な2分の1波長板69が省略されている点と、コレステリック反射体63が切り替え可能なタイプである点とにおいて、図12(a)および図12(b)に示されているディスプレイとは異なっている。コレステリック反射体63は、オフである時には、その偏光状態とは無関係に光を透過させ、オンである時には、左円偏光Lを透過させて右円偏光Rを反射する。奥行きがシフトされるモードの一般的な構成および動作は図13aに示されており、4分の1波長板およびLCD61の出口偏光子の配向は図13bに示されている。
【0153】
奥行きがシフトされるモードでは、コレステリック反射体63がオンにされる。LCD61は、電界ベクトルが図の平面内に配向された直線偏光を放射する。この直線偏光は、4分の1波長板68によって右円偏光Rに変換される。この約半分は、偏光状態への実質的な変化なく、ミラー62によって透過され、約半分は、4分の1波長板68に向かって反射される。4分の1波長板68は、反射された上記光を、電界ベクトル方向が図の平面に対して垂直である直線偏光に変換する。この光は、LCD61の出口偏光子によって吸収される。
【0154】
ミラー62によって透過された上記光は、コレステリック反射体63によって反射される。この光の半分は、前述と同様に、ミラー68によって透過され、そして吸収される。この光の反射された部分は、左円偏光状態に変換され、そして反射体63によって視野領域へ向かって透過される。
【0155】
シフトされないモードでは、コレステリック反射体63はオフにされる。従って、LCD61によって放射されてミラー62によって透過される部分の光は、反射体63を介して視野領域へ透過される。
【0156】
切り替え可能なコレステリック反射体は、波長の比較的狭い周波数帯(典型的には100nm程度)において動作するように形成することができる。従って、切り替え可能なコレステリック反射体63は、そのような切り替え可能な反射体のスタックとして形成する必要がある。例えば、このような反射体を3つ設けて、光の三原色である赤色、緑色、および青色を選択的に反射することができる。このような反射体は、例えば、"Reflective multicolour displaying using cholesteric liquid crystals," M. Okada et al、SID 1997 Digest and "Multiple color resolution reflective cholesteric liquid crystal displays," D. Davies et al、SID 1997 Digestにおいて開示されている。このような構成においては、異なる色は異なるモードで動作するように、これら3つの色を互いに独立して切り替えることができる。モード間において、それぞれ異なる時点で色を切り替えることによって、フリッカーの視認性を低減することができる。
【0157】
このタイプのディスプレイは、3つ以上の奥行き面を示すように改変することができる。例えば、図13Cには、3つの異なる奥行き面を示すことのできる上記タイプのディスプレイが示されている。このディスプレイは、切り替え可能なコレステリック反射体63が、互いに距離をおいて配置された2つのコレステリック反射体63aおよび63bによって置き換えられている点において、図13aに示されているディスプレイとは異なっている。反射体63aおよび63bが両方ともオフである場合、光は「直接」経路66をたどるため、表示される画像の奥行きは実質的にシフトしない。反射体63aがオンであり、反射体63bがオフである場合、ディスプレイは図13aに示されているように動作する。この場合、光は、より長い経路65aをたどり、表示される画像の奥行きが比較的大きくシフトする。反射体63bがオンであり、反射体63aがオフである場合、光は経路65bをたどり、奥行きがシフトされる異なる画面が得られる。
【0158】
図14(a)および図14(b)に示されているディスプレイは、図13(a)〜図13(c)に示されているディスプレイと同様であるが、切り替え可能なコレステリック反射体または反射体は、一対の固定「単色」コレステリック反射体63cおよび63dと置き換えられている。反射体63cおよび63dは、互いに最小の距離をおいて直接隣接している。反射体63cは、赤色右円偏光を反射し、その他全ての光を透過させる。反射体63dは、青色右円偏光を反射し、その他全ての光を透過させる。
【0159】
LCD61によって放射された緑色光は、4分の1波長板68によって右円偏光Rに変換され、その約半分は透過され、約半分はミラー62によって反射される。反射された光は、4分の1波長板68を介して戻り、そして前述のようにLCD61内に吸収される。透過された光は、直接光路66に沿って、視野領域へ向かって反射体63cおよび63dを通過する。
【0160】
LCD61によって放射された赤色および青色光もまた同様に、4分の1波長板68によって右円偏光Rに変換され、ミラー62によって部分的に透過される。赤色光は、反射体63cによって反射され、青色光は、反射体63dによって再びミラー62に向かって反射され、光の一部は透過および吸収され、一部は反射される。反射された赤色および青色光の偏光は、この反射によって左円偏光状態Lに変化し、この反射された赤色および青色光は、反射体63cおよび63dによって光路65に沿って透過される。
【0161】
従って、光路65および66は、異なる色に対して異なる長さを有している。従って、視認者は、赤色および青色を含んだ奥行きの深い方の画像と、緑色を含んだ奥行きの浅い方の画像との、2つの奥行き面を有する画像を視認する。
【0162】
赤色および青色コレステリック反射体の使用は、単なる典型例であって、これとは異なる色の組み合わせの反射体を用いてもよい。また、例えば、三原色が異なる画面に現れるように、異なる面において反射体同士を離して配置することができる。また、このタイプの反射体を用いた場合には、異なる色を異なる時間に切り替えることができる。例えば、二重奥行きディスプレイは、状態Aと状態Bとを素早く切り替えることができる。状態Aでは、「前方」奥行き面に対しては赤色および青色成分が表示され、「後方」奥行き面に対しては緑色成分が表示される。状態Bでは、後方奥行き面に対しては赤色および青色成分が表示され、前方奥行き面に対しては緑色成分が表示される。
【0163】
図15(b)に示されているディスプレイは、図14(a)に示されている一般的なタイプのディスプレイと同一であるが、2つの異なる奥行きに「フルカラー」画像を供給する。当該ディスプレイは、コレステリック反射体スタック63を有している。コレステリック反射体スタック63は、比較的狭い赤色波帯R1、比較的狭い緑色波帯G2、および比較的狭い青色波帯B1において右円偏光状態の光を反射するように構成されている。LCD61の画素は、図15(a)に示されているように、波帯R1、R2、G1、G2、B1、およびB2に光を透過させるためのカラーフィルタを有している。例えば、LCD61は、例えば反復パターン(例えば、R1、G1、B1、R2、G2、B2)を透過させる縦列または横列の反復パターンを有する、カラーフィルタ構造を有していてもよい。コレステリック反射体スタック63は、各色の帯のいずれか1つをそれぞれ反射する3つの反射体を含んでいてもよい。しかし、図15(a)のC1およびC2で示される反射スペクトルを有する2つのコレステリック反射体を設けて、一方の反射体が波帯B1を反射し、他方の反射体が波帯G2およびR1を反射するように構成することも可能である。
【0164】
LCD61は、空間的に多重化またはインターレースされた細片として、2つの画像を表示する。これら2つの画像の一方は、波帯R1、G2、およびB1内の光によって符号化され、他方の画像は、波帯R2、G1、およびB2内の光によって符号化される。上記第1の画像を符号化する光は光路65をたどり、上記第2の画像を符号化する光は光路66をたどる。従って、2つのフルカラー画像またはほぼフルカラーの画像または連続画像が、異なって知覚される奥行きに表示される。
【0165】
このようなディスプレイは、各波帯の光によって順々にLCD61を照射するように制御できるバックライトと共に使用できるように、改変することができる。そのような構成のLCD61はカラーフィルタを必要とせず、また、2つの画像の赤色、緑色および青色部分を時間系列的かつバックライトによる照射の色と同期して動作させることができる。あるいは、図15(a)および図15(b)に示されているカラーフィルタ構造を、交互になった画像フレームに異なる赤色、緑色、および青色波帯の光を供給するバックライトと共に用いて、2つの画像または連続画像が時間系列的かつバックライトの動作と同期して表示されるようにすることができる。
【0166】
図16に示されているディスプレイは、LCD61の前に配置されている光学構造が、部分反射体および切り替え可能な指向性2分の1波長リターダ69として反射偏光子62および63を含んでいる点において、これまで説明した実施形態とは異なる。これらの反射偏光子は、電界ベクトルが図の平面方向を向く光を透過し、直交偏光状態を反射するように構成されている。切り替え可能な指向性リターダ69は、それを通過する光の偏光に実質的に何らの影響も与えない「オフ」状態と、「オン」状態との間で切り替え可能である。「オン」状態では、リターダ69は、ディスプレイ面垂線(display plane normal)に対して+30°傾斜した方向に伝播する光に対して2分の1波長板として機能し、ディスプレイ面垂線に対して−30°傾斜した方向に伝播する光の偏光には実質的に何らの影響も与えない。リターダ69は、例えば、GB 2 405516に開示されているタイプの液晶セルを含んでいてもよい。
【0167】
図16は、リターダ69がオン状態にある奥行きシフトモードにおける、ディスプレイの動作を示している。視認条件としては、ディスプレイを視認する視認者が、+30°付近の角度に位置している。
【0168】
LCD61から発せられる光は、その電界ベクトルが図の平面内にあるように直線偏光される。リターダ69は、電界ベクトルが図の平面に対して垂直にあるように、リターダ69を通過する光の偏光を+30°回転させる。この光は、反射偏光子63から反射され、そしてその偏光が影響を受けないように、再びリターダ69を−30°の角度で通過する。次に、この光は、反射偏光子62によって反射され、そしてその偏光が90°回転されるように、リターダ69を+30°の角度で通過する。これによって得られる光は、反射偏光子63により、視野領域に向かって透過される。
【0169】
リターダ69は、オフである場合は、リターダ69を通過する光の偏光に何らの影響も与えない。従って、LCD61によって放射されて偏光子62を通過する光は、また、反射偏光子62および63透過軸が平行であるため、偏光子63を通過する。
【0170】
この構造は、両動作モードにおいて、実質的に完全な輝度の画像(full-brightness image)を提供できるという利点を有している。実際には、光は、様々な光学素子を通過する際、または様々な光学素子によって反射される際に失われる。しかし、それら光学素子の規定の動作によって、減衰は起こらない。
【0171】
図17(a)および図17(b)に示されているディスプレイは、LCD61の前の光学構造が、反射偏光子62および63を有しており、反射偏光子62と63との間には固定ファラデー回転子75および切り替え可能な2分の1波長板69が配置されている点において、前述のディスプレイとは異なっている。偏光子62の透過軸73の方向は、図の平面内にあり、反射偏光子63の透過軸76の方向は、透過軸73に対して45°の角度である。2分の1波長板69は、オンにされると、透過軸73に対して垂直な速軸77を有する。上記ファラデー回転子は、光が回転子75を介していずれかの方向に通過した後に、直線偏光された光の偏光を+45°回転させる。
【0172】
ファラデー回転子は、ファラデー回転子を通過する光の偏光状態を回転させる材料の層を含んでおり、この回転は、上記層に印加される磁界に比例する角度で行われる。このような装置は、例えば"Optics," E. Hecht et al、fourth edition、Addison Wesley(2003)など、標準的な参照文献において説明されており、公知である。
【0173】
図18(a)および図18(b)は、奥行きシフトモードにおける、図17(a)および図17(b)に示されているディスプレイの動作を示している。この奥行きシフトモードでは、2分の1波長板69はオフであるため、2分の1波長板69を通過する光の偏光には実質的に何らの影響も与えない。LCD61から発されて反射偏光子62を通過する直線偏光の電界ベクトルの方向は、図の平面内にある。回転子75は、電界ベクトルの方向が+45°となるように、また反射偏光子63によって反射して戻されるように、電界ベクトルを回転させる。上記光は、再び回転子75を通過し、その電界ベクトルの方向が図の平面に対して垂直となって発される。上記光は、偏光子62によって反射され、回転子75を通過する。回転子75は、電界ベクトルの方向が−45°の角度となるように、偏光面を回転させる。反射偏光子63は、この光を視野領域に向かって透過させる。
【0174】
図19(a)および図19(b)は、非シフトモードにおける動作を示している。このモードでは、2分の1波長板69はオンである。電界ベクトルの方向が図の平面内にある光が、回転子75を通過する。回転子75は、電界ベクトルの方向が+45°の角度になるように、偏光面を回転させる。2分の1波長板69は、2分の1波長板69から出る光の電界ベクトル方向が−45°になるように、上記偏光面をさらに回転させる。この光は、反射体偏光子63によって、視野領域に向かって透過される。
【0175】
前述の実施形態と同様に、光は、様々な光学素子の動作によって失われることはない。従って、表示される画像は、奥行きがシフトされるモードとシフトされないモードとの両方において比較的明るい。
【0176】
図20(a)および図20(b)に示されているディスプレイでは、効果的な様々な奥行きに表示される画像の対が、空間多重化を用いることによって、LCD61によって同時に表示される。LCD61は、縦横に配置された画素によってピクセル化されている。これらの画像は、例えば、奥行きがシフトされる画像の縦に細長い片を表示する「D画素」と、シフトされない画像の縦方向に細長い片を表示する「T画素」とによって、縦列または横列にインターレースされて表示される。あるいは、チェッカー盤模様を用いることもできる。LCDは、入口偏光子80および出口偏光子81を有している。出口偏光子81は、図の平面内に配向された透過軸83を有している。
【0177】
出口偏光子81の上方には、パターン化された4分の1波長リターダ82が配置されている。パターン化された4分の1波長リターダ82は、その速軸同士が交互になった4分の1波長リターダ領域を含んでいる。従って、D画素の上方に位置する84などのリターダ部分の速軸は、D画素から放射される光を右円偏光Rに変換するように配向されている。T画素の上方に位置する85などのリターダ部分の速軸は、T画素から出る光が左円偏光Lに変換されるように配向されている。
【0178】
パターン化された4分の1波長リターダ82の上方には、「50%」ミラー62が配置されている。ミラー62の上方には4分の1波長板68が配置されており、その速軸74は出口偏光子81の透過軸83に対して45°の角度で配向されている。4分の1波長板68の上方には反射偏光子63が配置されており、その透過軸76は透過軸83と平行である。
【0179】
D画素およびT画素からの光は、それぞれ、右円偏光および左円偏光に変換されるように、出口偏光子81および4分の1波長板82を通過する。この光の約半分はミラー62によって反射されて、光学系から効果的に失われる。上記入射光の約半分は、ミラー62によって4分の1波長板68へ透過される。D画素からの光は、電界ベクトル方向が図の平面に対して垂直である直線偏光に変換される。この光は、4分の1波長板68を介して反射偏光子63に反射し返され、そして反射偏光子63において偏光が右円偏光状態Rに変換される。上記4分の1波長板からの光は、部分的にミラー62によって透過され、効果的に光学系に失われる。ミラー62への光入射は部分的に反射され、左円偏光状態Lに変換される。この光は、4分の1波長板68によって、電界ベクトルが図の平面に平行である直線偏光状態に変換され、そして偏光子63によって視野領域へ透過される。
【0180】
ミラー62から透過されたT画素からの光は、4分の1波長板68によって、直電界ベクトルが図の平面に平行である直線偏光に変換される。従って、この光は、反射偏光子63によって視野領域へ透過される。
【0181】
画像が表示されるLCD61内の平面と、パターン化リターダ82とが大幅に離れている場合は、視差効果が生じる。視差効果は、ディスプレイを正確に視認するための視野領域、ひいては視認者が動ける自由度を制限する。例えば、領域84および85が縦方向に伸びる、インターレースされた縦列として画像が表示される場合、視認者は、表示される画像を正確に知覚している間に上下に動く場合がある。しかし、視認者が左右に動いた場合、インターレースされた画像間においてクロストークが生じ、複数の奥行き効果が脅かされる。同様に、インターレースされた横列として画像が表示される場合、視認者は、表示される画像を正確に知覚している間に左右に動く場合がある。しかし、この場合においても、視認者が上下に動いた場合は、クロストークが生じる。
【0182】
図21(a)は、改変されたディスプレイを示している。このディスプレイは、バックライト60が平行型であり、パターン化リターダ82とミラー62との間に拡散器90が配置されている点において、図20に示されているディスプレイとは異なっている。平行バックライト(collimated backlight)60は、LCD61を介して、実質的に画面の垂線に沿うように光を向ける。平行バックライトは、例えば、"Proceedings of the International Display Workshops"、Fukuoka、Japan、December 2004、paper FMC 20-4において開示されており、周知である。適切なバックライトは、例えばオムロンから入手することができる。
【0183】
拡散器90は、表示される画像が、比較的広い視認範囲から視認可能となるようにする必要がある。拡散器90は、拡散器90を通過する光の偏光に実質的に何らの影響も与えないタイプの拡散器である。このような拡散器の例としては、例えばマイクロシャープ株式会社(英国)から入手可能な、「グリンフィルム(GRIN film)」が公知である。
【0184】
好ましくない視差効果は、また、パターン化リターダ82とLCD61の画面との距離を縮めることによって低減することができる。例えば、LCD61内のLCD基板間に、パターン化リターダ82および出口偏光子81を配置することができる。あるいは、偏光子81およびリターダ82に隣接するLCD基板を比較的薄く形成し、当該基板上または比較的薄い基板上に偏光子81を形成することができる。
【0185】
図21(b)は、改変された別のディスプレイを示している。このディスプレイは、出口偏光子81、パターン化リターダ82、および拡散器90を有しておらず、またLCD61とミラー62との間に4分の1波長板91が配置されている点において、図21(a)に示されているディスプレイとは異なっている。出口偏光子が配置されていないため、LCD61の個々の画素は、調光の偏光状態を制御して、画素が現れる奥行き面をLCD61が制御できるようにする。画素がオンである場合、偏光状態は、その画素を通過する光がディスプレイを直接介して通過するように、また、そのような光を用いる画像または連続画像が実質的にLCD61のディスプレイ面において画像奥行きを有するように、回転される。逆に、画素がオフである場合、調光は長い方の光路65を辿り、対応する画像または複数の画像がシフトされた画面に現れる。この構成では、LCD61は画素画像の奥行きを決定するが、画像の光を変調しない。従って、ディスプレイの外観は2つの画面から成り、一方の面に表示される画像は、他方の面に表示される画像の「ネガ(negative)」である。そのようなディスプレイは目立つ外観であり、広告および情報ディスプレイに応用することができる。例えば、「後方」面に投影して詳細が表示されるように、「前方」面では暗い背景の上に明るい詳細を表示することができる。
【0186】
完全に制御された画像を表示するために、入口偏光子80と平行バックライト60との間に、LCDなどのさらなる空間光変調器を配置することができる。当該さらなるLCD(図示せず)は、入口偏光子および出口偏光子を有しており、またLCDの画素が位置合わせされたLCD61と同一の画素構成を有している。上記さらなるLCDの出口偏光子は、図21(a)および図21(b)に示されている入口偏光子80によって設けることができる。
【0187】
図22は、図21(a)および図21(b)の左側に示されているディスプレイの改変を示している。この改変によると、50%ミラー62および拡散器90は、基板101上に形成された複合素子によって置き換えられている。当該素子は、基板101内に埋め込まれたレンズ102のアレイを有している。レンズ102の焦面は、基板101の上面と一致している。基板101の上面は、反射素子62を形成する高反射ミラー層によって被覆されている。レンズが球状に被覆されている場合は、レンズ102の焦点において、ミラー層内に隙間103が形成される。あるいは、レンズ102は、レンズの焦線に隙間103が形成された、円筒型に被覆されたレンズを含んでいてもよい。従ってこれらの隙間は、基板101の表面積上方における比較的小さい部分しか占有していない。
【0188】
平行光は、参照符号104に示されているように、平行バックライトからLCDを介して複合素子に入射されると、非平行となるようにレンズ102によって隙間103を介して焦点が合わせられ、そして参照符号105に示されているように透過される。逆に、参照符号106に示されているように、反射偏光子63から反射された光がミラー層62に入射すると、大部分の入射光は反射される。
【0189】
このような複合素子を用いることによって、光利用の効率、ひいてはディスプレイの輝度が大幅に改善される。図21(a)に示されている、50%ミラー62を有するディスプレイを用いた場合(実際の実施形態において生じる損失は無視する)、シフトされない画像の輝度は、LCD61によって供給される画像輝度の約50%まで低下し、奥行きがシフトされる画像の輝度は、表示される画像輝度の約25%まで低下する。図22に示されている素子を用いることによって、平行光104は、比較的高い効率(例えば約90%)で透過される。ミラー層62によって反射された光106もまた同様に、約90%という比較的高い効率で反射される。従って、シフトされない画像の輝度は、LCD61によって表示される画像の輝度の約90%であり、奥行きがシフトされる画像の輝度は約81%である。
【0190】
パターン化リターダ(例えば、図20に示されているリターダ82)、および以下に説明する実施形態に示されている様々なリターダは、様々な方法によって形成することができる。それらの一部は、図23(a)〜図23(e)に示されている。例えば、図23(a)に示されているように、リターダ機能は、リターダ機能を提供することが求められていない領域内において破壊される場合がある。図23(a)〜図23(e)は、2分の1波長リターダを示しているが、4分の1波長あるいはその他のリターダに対しても同一の原理を用いることができる。従って、参照符号107などの領域はリターダ機能を保持するが、参照符号108などの領域は、例えば紫外線(UV)放射への曝露によってリターダ機能が破壊されている。従って、まず均一なリターダ層が透過性基板109上に形成され、そして適切なマスクを介して紫外線照射に曝露されて、パターン化リターダが形成される。あるいは、図23(b)に示されているように、リターダ機能を有している必要のない領域を除去することができる。リターダ材料を除去する方法の例としては、エッチングおよびレーザ加工が挙げられる。
【0191】
パターン化リターダは、液晶材料を用いて形成することもできる。図23(c)には、第1の実施例が示されている。ガラス基板110間に、パターン化リターダが形成される。パターン化リターダは、透過性樹脂またはフォトレジスト材料112の細片とインターレースされた、あるいは交互になった、液晶材料111の細片を含んでいる。複屈折軸を所望の方向に合わせるために、ガラス基板110の対向面(facing surface)には、適切な位置合わせ層が備えられている。このような位置合わせ層(図示せず)は、任意の適切なタイプの位置合わせ層であってよく、位置合わせ方向は、公知の位置合わせ層摩擦処理あるいはその他の適切な技術によって決定することができる。
【0192】
パターン化リターダが、光の直線偏光電界ベクトルを回転させる必要がある場合、リターダの代わりに、偏光回転構成を用いることができる。例えば、液晶材料111および隣接する位置合わせ層は、90°またはその他任意の角度で偏光回転させるためのねじれネマチックセルを備えた構成とすることができる。
【0193】
上記パターン化された層は、パターン化される構成とパターン化されない構成とで切り替え可能である必要がある場合がある。図23(d)には、この形成方法の実施例が示されている。この場合、基板下方に、例えばインジウムすず酸化物(ITO)から成る、均一な透過性電極113が備えられる。基板上方は、同じ材料から成るパターン化された電極112を有している。これら電極上に形成された位置合わせ層間には、液晶層111が設けられる。上記装置によって用いられる液晶モードでは、均一な電極113とパターン化された電極112との間に電圧が印加されない場合、液晶セルが均一な2分の1波長あるいはその他のリターダとして機能する。上記電極間に電圧が印加されると、パターン化された電極に隣接する液晶分子が、液晶層の面に対して実質的に垂直に整列する。これによって、これらの領域は実質的に遅延を有さず、パターン化された電極間の隙間に隣接する部分の液晶層は実質的に何らの影響も受けずに、所望の遅延を提供し続ける。
【0194】
図23(d)に示されている構成はまた、切り替えおよびパターン化された偏光回転子を提供するために用いることができる。例えば、電極間に電圧が印加されない場合、液晶が偏光回転子として機能するように、当該液晶を整列させてねじれネマチックモードにする。電極間に電圧が印加された場合は、パターン化された電極112の領域内においてねじれネマチック構造が失われて、パターン化された偏光回転子が形成される。
【0195】
素子領域全体において、パターン化リターダまたは偏光回転子が必要とされる実施形態では、図23(e)に示されているように、光学軸をパターン化することができる。これを行うために、上記位置合わせ層のいずれか1つまたは両方をパターン化することができる。この場合、位置合わせ方向を同一にパターン化することによって、パターン化された上部位置合わせ層114および下部位置合わせ層115が設けられる。これにより、液晶領域Aは同一方向に位置合わせされ、液晶領域Bは異なる方向に位置合わせされる。このようなパターン化された位置合わせ層の形成方法は公知であり、例えばEP0887667に開示されている。
【0196】
上記のようなパターン化リターダを用いて、例えば、パターン化リターダを要する図21(a)に示されているディスプレイにおいて、その全領域において異なる遅延または偏光回転を行うことができる。しかし、領域の一部が遅延を行う必要のある一部の実施形態に対しては、図23(e)に示されているタイプのリターダを用いることもできる。例えば、パターン化リターダが2分の1波長板である場合、遅延を行う必要のない領域は、その光学軸が直線偏光の電界ベクトルに対して平行または垂直になるように配向され、遅延を行う必要のある領域の光学軸は、具体的なアプリケーションに応じて適切な異なる角度で配向される。
【0197】
パターン化リターダが、「アクティブ」遅延素子として液晶材料を用いている場合は、当該液晶材料の電気的に切り替え可能な光学効果を利用して、二重(または多重)効果をオフにすることができる。例えば、図23cに示されている実施例では、両方の基板110は、均一な透過性電極を用いて形成することができる。液晶材料111に電界を印加することによって、素子の面に対して液晶分子が実質的に垂直に整列する。これによって、上記液晶材料は、垂線に沿った入射光の偏光状態に対して実質的に何らの影響も与えない。従って、素子の全領域は、偏光に実質的に何らの影響を与えないため、全ての画素が同一面内に画像を表示する。この面は、大部分の実施形態においてより明るい画像を提供するため、シフトされない画面である。図23(d)に示されている実施例は、単一面に画像を表示する機能を有している。これは、印加電界の非存在下では、液晶層111全体が同一の状態にあるからである。図23(e)に示されている実施例にも、上記機能を備えさせることができる。これは、上記層の面に対して全ての液晶分子が実質的に垂直に整列して均一層が設けられるように、両方の基板110に均一な電極を設けることによって行うことができる。
【0198】
液晶材料を用いて、単一奥行きディスプレイに切り替える機能を必要とすることなく、パターン化リターダ(または偏光回転子)を提供する実施形態では、製造中に液晶材料を固定して、液晶材料全体に電界を印加する必要のないようにすることができる。例えば、この液晶材料は、Merckの反応性メソゲンなど、重合性液晶材料を含んでいてもよい。このような材料は、製造中に重合させて、湿度、温度、および機械的損傷に対する液晶セルの感度を低減することができる。
【0199】
図20(a)、図20(b)、図21(a)および図21(b)に示されているタイプのディスプレイは、これらが二重奥行きディスプレイである場合、各画像は、LCD61の実際の空間分解能の半分で表示される。これにより、視認者は、表示される画像内に細片を知覚する場合がある。このような細片の視認性は、画像の様々な色成分を別々にインターレースすることによって低減することができる。例えば、ディスプレイの偶数列は、シフトされない画像の赤色および緑色成分、および奥行きがシフトされる画像の青色成分を表示し、ディスプレイの奇数列は、奥行きがシフトされる画像の赤色および緑色成分、およびシフトされない画像の青色成分を表示することができる。これは、例えば、ディスプレイの素子内に波長依存性リターダを挿入することによって行うことができる。当該波長依存性リターダは、赤色および緑色に対しては2分の1波長リターダとして機能するが、青色に対しては実質的に何らの影響も与えない。このような波長依存性リターダの例は、US6,273,571に開示されている。
【0200】
図24(a)および図24(b)に示されているディスプレイは、パターン化された4分の1波長リターダ82が、均一な4分の1波長板120およびパターン化された2分の1波長リターダ121に置き換えられている点において、図20(a)および図20(b)に示されているディスプレイとは異なっている。速軸123は、4分の1波長板68の速軸74に対して垂直である。パターン化リターダ121は、光の偏光状態には実質的に何らの影響も与えない領域(例えば参照符号124)と、4分の1波長板120の速軸123に実質的に平行である速軸126を有した2分の1波長リターダとして機能する領域(例えば参照符号125)とを含んでいる。
【0201】
図24(a)および図24(b)における、4分の1波長板120とパターン化された2分の1波長リターダ121との組み合わせが、光の偏光状態に与える影響は、図20(a)および図20(b)に示されているパターン化された4分の1波長リターダ82と実質的に同じである。従って、リターダ121の領域(例えば参照符号125)を通過する光は光路65をたどり、参照符号124などの領域を通過する光は光路66をたどる。パターン化リターダ121は、例えば図23に示されている素子など、前述した素子のうちの任意の素子を含んでいてもよい。
【0202】
図25(a)、図25(b)および図26は、図24(a)および図24(b)に示されているディスプレイと同様のタイプのディスプレイを示している。本実施形態では、パターン化された2分の1波長板121は、図23(d)に示されているタイプの液晶デバイスによって統合されている。好ましくないアーチファクトが視認されないように、パターン化リターダ121上およびLCD61上には、ブラックマスク領域128が設けられている。具体的には、このようなアーチファクトは、パターン化された電極112の縁において生じ得るものであり、ブラックマスク部分はこれを視界から隠す。パターン化リターダ121上には、ディスプレイの視野角特性を向上させるために補償フィルム129が配置されている。このような補償フィルムは、液晶技術においては周知であり、その実施例は、前出のLuederの文献において説明されている。
【0203】
上記ディスプレイは、さらに、50%ミラー62が70%ミラーに置き換わっており、反射偏光子63の透過軸76の方向が90°回転されており、また、透過軸が軸76に平行であるさらなる吸収偏光子130が反射偏光子63上に配置されている点において、図24(a)および図24(b)に示されているディスプレイとは異なっている。吸収偏光子130は、ディスプレイの表面からの周辺光の反射を低減する。そのような偏光子の非存在下では、その偏光が反射偏光子63の透過軸に直交する入射光は、(例えば視認者に向かって)反射し返される。吸収偏光子103が配置されていることによって、そのような反射光を防止または大幅に軽減することができる。
【0204】
ミラー62は、入射光の約70%を透過させ、入射光の約30%を反射するように構成されている。このようなミラーは、ディスプレイによって提供される全体的な画像輝度を向上させる。具体的には、50%ミラーが配置されている場合、シフトされない画像の輝度は、理論的には(損失は無視する)、LCD61における画像輝度の50%と等しく、奥行きがシフトされる画像の輝度は、理論的には25%低減される。70%ミラーを用いることによって、シフトされない画像の輝度が70%まで上昇し、奥行きがシフトされる画像の輝度は、21%という比較的低い割合で低減する。
【0205】
図25(a)および図25(b)に示されているディスプレイは、リターダ121の均一な電極113とパターン化された電極112との間に電圧が印加された二重奥行きモードにある。パターン化された電極112に隣接する液晶領域では、電界を印加することによって、液晶分子が液晶層の面に対して実質的に垂直になるように配向される。従って、上記領域は、それを通過する光の偏光状態には実質的に何らの影響も与えない。パターン化された電極112間の隙間に隣接する液晶領域は、電界が印加されないため、位置合わせ層によって配向される。従って、液晶材料のこれら領域は、速軸が4分の1波長板120の速軸123に平行である2分の1波長板として機能する。従って、D画素からこれら領域を通過する光は視野領域へと直接伝播し、「切り替えられた」液晶領域を通過するT画素からの光は、より長い経路65を辿って視野領域へ伝播する。
【0206】
前述したように、液晶セルの位置合わせは、印加電界の非存在下においては、液晶材料がねじれネマチックモードにおいて直線偏光の電界ベクトルを90°回転させる偏光回転子として機能するように行われる。従って、ディスプレイの動作は前述の通りとなる。これは、パターン化された電極112に隣接する液晶領域内に電界が印加されることによって、ねじれネマチック構造が破壊されるからである。
【0207】
図26は、別の単一奥行き動作モードにある、図25(a)および図25(b)のディスプレイを示している。この動作モードでは、電極112と電極113との間に電界は印加されないため、液晶モードは、位置合わせ層および液晶材料によって決定される。この場合、素子121は、均一な2分の1波長板または偏光回転子として機能する。これによって、画像または連続画像と共にLCD61によって変調される全ての光は、直接経路66をたどって視野領域へ伝播し、画像はシフトされない画像として表示される。
【0208】
図25(a)および図25(b)に示されている装置の変形例では、図23(e)に示されているような、位置合わせがパターン化された液晶セルが用いられる。図23(e)の液晶領域A−B−A−Bは、配向が交互になった4分の1波長板として機能する。4分の1波長板120は不要である。補償フィルム129も用いられない場合は、ブラックマスク128を反射材料(例えばアルミニウムまたは銀)から形成することによって、ミラー62およびブラックマスク128の機能を組み合わせることができる。
【0209】
図27(a)および図27(b)は、図25(a)、図25(b)および図26に示されているディスプレイの変形例を示している。具体的には、ブラックマスク128および補償フィルム129は配置されていない。図27(a)および図27(b)に示されているディスプレイの動作は、図25(a)、図25(b)および図26に示されているディスプレイの動作と実質的に同じであるため、ここでの説明は省略する。
【0210】
図28は、画像輝度を高めるように構成されたディスプレイを示している。当該ディスプレイは、いくつかの点において、図25(a)に示されているディスプレイとは異なっている。4分の1波長板120は、液晶セル111と出口偏光子81との間に配置されている。液晶セル111上の部分のブラックマスク128は、部分ミラー62としての機能を有しており、またパターン化された金属反射体(例えば、アルミニウム(Al)または銀の薄層)を含んでいる。上記部分ミラーの反射部分を、LCD61内の非透過性ブラックマスク領域128と対応するように構成することによって、全体的な輝度を高めることができる。これは、ミラー62の非透過性部分が、光が全くまたはほとんど通過しない領域を覆い隠すからである。この構成では、液晶セル111は、2分の1波長板として機能する必要があり、また導波モードでは、フレデリックセルとして形成することができる。
【0211】
図29に示されているディスプレイは、反射濃度が空間的に異なる金属ミラーがミラー62として機能する点において、図28に示されているディスプレイとは異なっている。この実施例では、反射/透過濃度がそれぞれ異なる反射領域62aおよび62bが存在する。濃度は、例えば反射層を薄くすることによって、あるいはわずかに空間パターン化を行うことによって変化させることができる。このような構成は、ディスプレイ内において空間的に異なる他の構造と共に用いて、一般的なパターン化打ち込み(patterning beating)によって生じるモアレ縞を低減させるのに有用である。
【0212】
図30に示されているディスプレイは、図28に示されているディスプレイのタイプと同様であるが、4分の1波長板68の機能は液晶セル内に組み入れられている。当該セルは、透過性ポリマーの段(transparent polymer step)111aによって空間的にパターン化されている。111dなどの段は、セルの厚さ全体に伸びている。一方、111eなどの段は、下面から上方に向かって伸びており(方向は図30に示されている)、またその上面上には、反射体62の反射領域が形成されている。段111e上のセル領域および反射領域は、液晶材料が4分の1波長板111cとして機能するような厚さとなっている。領域111eおよびその上部の反射領域の厚さまたは深さは、2分の1波長板111bを提供する液晶セルを形成するような厚さとなっている。
【0213】
このような構成では、個々の部品の数量を減らす必要があり、これは少なくとも一部のアプリケーションにおいて有利である。また、「上方」または前方画素からの光路は、いかなる波長板をも通過する必要がないため、偏光誤差によって生じる損失およびクロストークが低減される。しかし別の一実施形態では、液晶材料全体に適切な電圧を印加するために、透過性ポリマー領域111dを、液晶材料および電極に置き換えることもできる。
【0214】
図31に示されているディスプレイは、4分の1波長板68が、部分反射体62を形成するパターン化されたアルミニウム領域の上方に位置する領域を含んでいる点において、図28に示されているディスプレイとは異なっている。従って、4分の1波長板領域68を通過する光は、経路65を辿る光のみであるため、偏光誤差によって生じる損失およびクロストークが低減される。
【0215】
前述の実施形態では、前方および後方(または上方または下方)の画像は、実質的に同じ空間分解能で表示される、例えば、LCD61の画素の交互の横列によって、交互の画像の細片で表示される。しかしこれは不要であり、上方の画像および下方の画像を異なる空間分解能で表示することができる。図32は、図27(a)に示されているタイプのディスプレイにおける上記の実施例を示している。この場合、下方の画像には、上方の画像の二倍の数の横列に二倍の数の画素が割り当てられる。このような構成により、下方の画像の解像度および輝度が高くなる。しかし、具体的なアプリケーションに応じて、所望の数の画素および横列を割り当てることができる。
【0216】
図33に示されているディスプレイは、4分の1波長板120と液晶セル111との間に2分の1波長板121が配置されている点において、図27(a)に示されているディスプレイとは異なっている。4分の1波長板120と2分の1波長板121とを組み合わせることによって、その組み合わせ自体が、図27(a)のディスプレイ内の4分の1波長板120と実質的に同じように機能する。しかし、波長板を組み合わせることによって無色彩反応(achromatic response)が多くなる。これは、クロストークおよび色アーチファクトを低減するのに有用である。
【0217】
ディスプレイ内においては、好ましくない様々なアーチファクトが生じ得、これによって性能が低下する場合がある。例えば、ディスプレイの部品間の界面において、フレネル反射が生じる場合がある。このような反射は、図32に示されているディスプレイでは、4分の1波長板68と部分ミラー62との界面、部分ミラー62と4分の1波長板120との界面、および4分の1波長板120と液晶セル111との界面において生じ得る。このような反射によって、損失が生じ、クロストークが増加する場合がある。これらの反射は、例えば部品間の(index-matching)、あるいは1つ以上の部品の表面に反射防止被覆を施すことによって低減することができる。
【0218】
ディスプレイ用の典型的なバックライトは、一般的に、視野領域を広くするために、比較的広い角度範囲において均一に照射するように設計されている。しかし、本願において開示されているディスプレイは、一般的に、ディスプレイの液晶セルとその他の部品との視差により、視野範囲の角度はより限定的である。従って、部分的に平行なバックライトを用いて、ディスプレイからの照明をより狭い角度範囲にすることができる。一定の入力では、このような構成によって画像輝度を高めることができる。
【0219】
本願に開示されているディスプレイの少なくとも一部では、液晶モードを交互にすることができる。具体的には、従来のねじれネマチック構成の代わりに、より厚い液晶層を用いて、当該液晶層が公知のモーガン領域内において動作するようにすることができる。このような構成によって、軸上および軸より高い角度において偏光誤差が低減するため、クロストークが低減する。
【0220】
「単一画像モード」が使用可能である場合、「単一画像モード」における輝度を高めるために、部分ミラー62を、透過性の非反射モードに電気的に切り替えることができる。適切なタイプの電気的に切り替え可能なミラーは、例えば、US6,961,105に開示されている。
【0221】
図34は、本願に開示されているタイプのディスプレイが、ケーシング131である筐体内にいかにして実装されているかを示している。図34に示されている構成では、ケーシング131内に、部品80,61,81,111,112,120,62および68が実装されている。反射偏光子63および吸収偏光子130は、ケーシングの外側において、透過性ウィンドウの上方に実装されている。これによってケーシングは、反射偏光子53を部分ミラー62から離す便利な手段となり、奥行き効果を高めることができる。
【0222】
図35は、本願に開示されているディスプレイに対して用いて、ディスプレイの見かけ上の輝度を高めることのできる、画像処理技術を示している。この画像処理技術は、特に、「下方の面」内に生成された画像に対して有用である。当該技術は、画像のガンマ値の調節に依存している。ガンマ値は、画像内のグレーレベルデータと、LCDに印加される実際の電圧との対応、すなわち最終的に表示される輝度を示している。図35は、グレースケール値に対する表示輝度および線形関係を示している。図35はまた、「上昇したガンマ(increased gamma)」関数を示している。「ガンマ上昇」関数では、中間グレーレベルの表示輝度は高く、完全な黒色レベルおよび完全な白色レベルは不変である。このため、画像の見かけ上の輝度が高くなる。
【0223】
図36は、参照符号140において、公知のLCDパネルの典型的な画素配置を示している。黒色領域は非透過性であり、また黒色材料によって被覆されており、例えばトランジスタ、キャパシタおよびパネルの制御線を被覆するマスクを形成している。この構成内における全ての画素は、同一の口径比を有している。このような画素構成は、本願に開示されているディスプレイに用いることができる。しかし、この配置を参照符号141に示されているように変更して、下方の面の画像を表示する画素Lの口径比が、上方の面の画像を表示する画素Uの口径比よりも大きくなるようにすることができる。このような構成とすることによって、下方の面の画像の輝度を高くすることができる。
【0224】
図37は、参照符号142において別の画素構成を、そして参照符号140において従来の構成を示している。構成142では、全体的な口径比が維持されるように、画素の横列間における非透過領域が広くなっており、画素の縦列間における領域が狭くなっている。このような構成を用いて、ディスプレイの視野自由度を高めることができる。
【0225】
図38は、前述したタイプのディスプレイの別のアプリケーションを示している。このアプリケーションにおけるディスプレイは、狭視野角すなわち「プライベート」モードと、広視野角すなわち「パブリック」視野モードとを切り替えることができる。当該ディスプレイは、プライベート視野モードにある場合は、角度視野範囲が限定的である。このため、中央の視認者132は表示される画像を視認することができるが、軸外の視認者133は表示される画像を視認することができない。当該ディスプレイは、プライベートモードでは、LCDの「裏」にある、奥行きがシフトされる位置67において画像が視認されるように動作される。このモードは、例えば金銭に関わる情報あるいはその他の繊細な情報など、公的に閲覧するための情報ではない情報を表示するために用いることができる。公的に閲覧するための情報が表示される場合には、上記ディスプレイは、実質的にLCD61のディスプレイ表面に画像が現れるように、シフトされないモードで動作される。パブリックモードにおける角度視野範囲を十分に広くするためには、偏光光学62〜64が、LCD61のディスプレイ表面よりも広く形成される。
【0226】
前述のLCD61では、通常は、一度に一つの横列がアップデートまたはリフレッシュされる。これは、当該LCDの最上部から底部へと、フレームが完全にリフレッシュされるように行われる。LCD61が第1の画像および第2の画像あるいは連続画像を交互に表示する、時間系列的に動作されるディスプレイの場合、画像間の切り替えは、横列から横列へと行われる。この結果表示される画像の例は、図39に示されている。この場合、画像は16ミリ秒毎に変わる。これは、LCDのフレームレートである。
【0227】
これにより、ディスプレイにおいて、LCDの前の光学構造の1つ以上の素子が連続画像と同期して切り替わるという問題が生じ得る。例えば、図9(a)の実施形態に示されている2分の1波長板は、上記画像または連続画像のいずれか1つに対してオンにされる必要があり、他の画像または連続画像に対してはオフにされる必要がある。
【0228】
LCDが横列から横列へとリフレッシュされる影響を低減するために、切り替えられる関連光学素子を、個々に切り替え可能な複数のセグメントに分割することができる。これは、例えば、各セグメントがLCDの複数の横列を被覆するように行うことができる。これにより、個々のセグメントは、順々に且つその下にあるLCDの全ての横列の切り替えと同期して切り替えられる。このため、画素のリフレッシュと、その上に位置する個々のセグメントとの切り替えとの時間差は、比較的小さい。これは、図40に示されている。図40では、その状態のいずれか1つに切り替えられた光学素子のセグメントには陰影が付けられており、光学素子はこのようなセグメントを4つ有している。
【0229】
図41(a)および図41(b)は、このようなセグメント化された切り替え可能な光学素子を、独立して切り替え可能な3つの水平セグメント93,94および95を含んだ液晶セルとして有している。当該光学素子は、ガラス基板96および97を有しており、それらの間には、液晶材料から成る層を含んだ液晶セル98が形成されている。下方の基板97は、光学素子の全領域に広がる単一電極を有しており、上方の基板96は、光学素子の3つの区域を形成する3つの電極99を有している。個々の電極99は、各光学素子セグメントを独立して切り替えられるように、別々にアドレスすることができる。電極98および99は、光学素子の液晶モードのためにに、適切な位置合わせ層100を有している。
【0230】
横列から横列へとLCDをリフレッシュすることによって生じる影響を低減するためには、連続フレームのリフレッシュとリフレッシュとの間における時間周期を長くするという別の技術がある。当該技術によって、リフレッシュを行うために用いられるフレームリフレッシュ周期の長さが短くなり、横列から横列へとアップデートすることによって生じる同期誤差が低減される。
【0231】
横列から横列へとアップデートすることによって生じる影響は、また、バックライト60を、横列のリフレッシュ中にはオフにし、連続したフレームリフレッシュ周期間にはオンにすることによって低減することができる。冷陰極蛍光灯など一部のバックライトは、オンとオフとが瞬時には切り替わらない。しかし、フレーム周期への照射時間を短くすることによって同期誤差が低減し、ひいては視認者によって知覚される画像間のクロストークが低減する。
【0232】
例えば、このようなバックライトは、連続フレームリフレッシュ間における「待機時間」中、および各フレームリフレッシュ周期の開始時と終了時とにおいて、数ミリ秒、オンにすることができる。上記切り替え可能な光学素子は、バックライトがオフである間に状態を切り替える。この結果、画面の最上部と底部との付近に位置する画素に対してわずかな同期誤差が生じるが、LCD61の大部分の画素に対する誤差は実質的に皆無であるため、クロストーク性能における改善が得られる。
【0233】
本明細書に記載の全ての実施形態では、異なる奥行き画面間における画像の分離が完全ではない可能性がある。奥行きがシフトされる面Dに対する画像の一部が、実際の奥行き面Tに漏れ、T画像の一部が面Dに漏れる場合がある。このような漏れによってクロストークが生じるが、このようなクロストークは、視認者には実質的に知覚不可能である程度に低減しなければならない。例えば、T画像が暗い背景上の明るい図であり、D画像の大部分が暗い場合、視認者は、D画像上に重畳された明るい図の痕跡をわずかに視認する場合がある。
【0234】
なぜこのようなクロストークが、D画像からT画像とT画像からD画像との両方において生じ易いのかについては、多数の理由がある。偏光を操作する光学素子は、一般的に完全ではない。例えば、実際の偏光子は一般的に、一部の「不適切な偏光」を透過させ、リターダの動作は配向、波長、および処理条件に依存しており、また(時間系列的なディスプレイでは)液晶素子の切り替え時間が有限であるため、面Tと面Dとの両方から光が出るように見える時間周期が生じる。
【0235】
大部分のクロストークメカニズムによって、T画像の輝度とD画像の輝度との両方が、当初の画像データにほぼ線形に依存する。これは、ディスプレイ装置内の特定の画素の輝度を、特定の時点において二倍にすることによって、意図された奥行き面内では、上記画素からの両方の光が二倍になり、また上記時点において、意図されない奥行き面内へ上記画素から光が漏れるからである。
【0236】
従って、クロストークの問題は、行列形式によって表すことができる。これについて、以下では、時系列的なタイプのディスプレイに関して説明するが、インターレース画像および波長多重化に依存するディスプレイに対しても同様の技術を用いることができる。ディスプレイ装置に送信されるデータ値は、その画素によって表示される輝度に比例するものと仮定する。しかし、そうでない場合には、実際の「伝達関数」を考慮に入れなければならない。例えば陰極線管装置は、表示される輝度が、信号入力部へ印加される電圧の指数に比例する、指数法則反応(power-law response)を示す場合が多い。
【0237】
dを、その2つの成分が、ディスプレイ装置(CRT、LCD、あるいはその他の装置)がそれぞれモードDおよびモードTにある時間系列的な画像サイクル時に、当該ディスプレイの特定の画素に送られるデータである、ベクトルとする。使用可能なデータ値の範囲は、0〜1であるものと仮定する。ベクトルbは、2つの奥行き面の上記特定の画素において視認者が見る画像の輝度である。上述した線形性ゆえに、これら2つのベクトルは2×2行列Mの関係となる。
B=Md
上記ディスプレイを使用する際には、輝度b’を特定し、これらの輝度を示すためにディスプレイに送る必要のあるデータd’を計算する必要がある。従って、上記行列を逆にして、
d’=M−1b’
というようにd’を計算する必要がある。
【0238】
原理上は、上記計算はクロストークに合わせて調節されるため、歪みのない画像が表示される。しかし不運にも、上記計算によって、成分d’の値が、許容された範囲である[0、1]の範囲外となる。これを回避するためには、輝度b’の範囲を用いる必要がある。
【0239】
上記行列の成分は、正数である。
M =[a β]
[γ d]
奥行き面1の輝度が主にデータ成分dによって制御され、奥行き面2が主に成分dによって制御される場合は、α>β且つδ>γである。画像データdの値として考えられる全ての値は、図30(a)に示されているような単位正方形である。図30(b)は、bの値として考えられる値の範囲の結果(実線で描かれた四辺形)を示している。
【0240】
β<b<α且つγ<b<δである場合は、d’の値を許容範囲外に逸脱させることなく、両方の輝度を独立して変えることができる。これによって、b’の値が長方形Bに制限される。これらの輝度の最小値はゼロと等しくないため、コントラストの損失が生じる。
【0241】
実際には、未加工の画像データdは、
b’=β+(α−β)d
b’=g+(d−γ)d
というスケーリング演算によって輝度範囲B内にマッピングされる。
【0242】
次に、b’に逆行列M−1を適用することによって、補正されたデータd’が計算される。
【0243】
図42(a)および図42(d)は、上記処理の実施例を示している。図42(c)の下方のグラフは、クロストークを補正することなく二重奥行きディスプレイに送られた画像データの横列の1つを示している。座標xは、画面全体の距離である。本実施例では、Mの成分は、
M=[0.9 0.2]
[0.1 0.6]
となる。
【0244】
図42(c)の上方のグラフは、2つの奥行き面内における画像の輝度を示している。x=12の地点において、成分b1内にエッジが存在する。これは、データd1内には存在していない。これは、クロストークによって生じたものである。
【0245】
図42(d)は、クロストーク補正の処理を示している。許容輝度範囲内に上記成分をマッピングすることによって、データdから輝度b’が計算される。次に、b’に逆行列M−1を適用することによって、補正されたデータd’が計算される。クロストークによって画像内に生じる不要な特徴は除去されるが、ゼロ輝度が使用不可能となったことによってコントラストが損失する。
【0246】
行列Mは、ディスプレイ上における画素の光の色(赤色、緑色、または青色)および位置に依存している。クロストーク補正は、色および/または位置に依存する係数の値を用いて適用することができる。
【0247】
Mは、環境要因にも依存する場合がある。具体的には、温度は、液晶セルの切り替え時間、ひいてはクロストークに影響を与える場合がある。このため、上記ディスプレイは、クロストーク補正方法に情報を提供して、環境の変化に応じて係数を変化させる、環境センサを備えていてもよい。
【0248】
クロストーク補正に用いられる係数を制御するために、フィードバック方法を用いることができる。例えば、ディスプレイの一角における画素(おそらくカバーの裏に隠れている)は、2つの奥行き面からの光を独立して検出できるような角度で配置されたフォトダイオードによってモニタすることができる。そして、これらのフォトダイオードによって測定された輝度を用いて、クロストーク補正係数が補正される。
【0249】
場合によっては、クロストークは、上述した線形モデルの通りではない。これによって、例えば、画像Dの強度を二倍にしても、画像Tへのクロストークの強度は二倍にならないか、あるいは、画像Tへのクロストークの強度は、画像Tの輝度に依存する。この場合、クロストーク補正を適用することはできるが、面Dと面Tとの両方における画像輝度の多数の値に対してクロストークの測定を行い、両方の面における全ての輝度値において良好に機能する補正を適用しなければならない。
【0250】
図43(a)および図43(b)は、制御ボタンおよびその動作を示す、上方の画面と下方の画面との両方における画像を示している。例えば、ディスプレイの前にタッチパネルを設けて、ユーザが押したディスプレイ上の位置を検出できるようにすることができる。図43(a)は、押されていない制御ボタンを示している。当該ボタンの「最上部」は、参照符号155において示されており、上方の画面内に表示される。当該ボタンの囲い、すなわちベゼルは、下方の画面内において、参照符号156の位置に表示される。図43bは、制御ボタンが押された場合の画像を示している。この場合、制御ボタン155の最上部およびベゼル156は、両方とも下方の画面内に表示される。このような構成を用いることによって、押した時に反応する物理的な制御ボタンのより現実的な「感覚」を得ることができる。このような構成のアプリケーションの実施例としては、社内の娯楽システムまたは衛星ナビゲーションシステムを制御するための自動車用センターコンソールが挙げられる。
【0251】
本明細書においてこれまで説明した実施形態では、画面の奥行きを変化させることのできるディスプレイ、あるいは2つ以上の異なる奥行き面に画像を表示することのできるディスプレイを提供するために、ディスプレイ装置と共に光学系が用いられている。しかし、上記光学系を他の目的のために用いることができる。例えば、上記光学系を用いて、上記光学系の物理的長さよりも長い光学経路または光路を提供して、光学機器の長さを短くすることができる。
【0252】
例えば、このような光学系は、望遠ミラーあるいはその他の同様の機器に用いることができる。添付図44は、公知のタイプの天体望遠ミラー、すなわちケプラー式望遠ミラーを示している。このような望遠ミラーは、焦点距離fobを有する対物レンズ140と、焦点距離focを有する接眼レンズ141とを備えている。レンズ140および141は、同一の焦点面142を有しており、fob/focと等しい角倍率を提供する。
【0253】
高い倍率を得るためには、対物レンズ140の焦点距離fobを比較的大きくする、および/または、接眼レンズ141の焦点距離focを比較的小さくする必要がある。接眼レンズ141によって生じる光学収差によって、最小焦点距離focが数レンズ径に制限される。従って、比較的高い倍率を得るためには、対物レンズ140の焦点距離fobを長くする必要がある。上記望遠ミラーのレンズ間の全長は、上記焦点距離の和と等しい。このため、高い倍率を得るためには、上記望遠ミラーの物理的長さを大きくする必要がある。
【0254】
図45に示されている天体望遠ミラーは、図9(a)に示されているタイプの光学系と、反射偏光子62と、4分の1波長板68と、50%ミラー63と、円偏光子71とを有している。上記光学系は、レンズ140とレンズ141との間に配置されており、また、細長い光路65を提供できるように単一モードで動作する。反射偏光子62を対物レンズ140に隣接して配置し、円偏光子71およびミラー63を接眼レンズ141に隣接して配置することによって、倍率が同じでありながら、上記望遠ミラーの物理的長さを、図44に示されている公知の望遠ミラーの長さの約3分の1まで短くすることができる。従って、倍率性能が同じでありながら、遥かに小型の機器を得ることができる。
【0255】
光路65を形成するための前述の光学系は全て、レンズ140と141との間において用いることができる。また、図45に示されている光学系、および他の実施形態における全ての光学系は、光学光路の長さを維持しながら機器の長さを短くする他のアプリケーションにおいて用いることができる。例えば、地上望遠ミラーまたは同様の機器を得るためには、図44および図45に示されているタイプの天体望遠ミラーによって生成されたインバータ画像を逆にする必要がある。これは通常、ミラー、追加的なレンズ、あるいはプリズムによって行うことができる。図46に示されている地上望遠ミラーでは、画像を逆にするためにミラー143が用いられている。ミラー143は、図45に示されているタイプの望遠ミラーシステム内に挿入されており、4分の1波長板68と反射偏光子62との間に配置されている。これによって、一定の倍率を有する地上望遠ミラーを、遥かに小型化することができる。
【0256】
図47は、公知のタイプのデジタルカメラを図式的に示している。このカメラは、複合レンズ145を有している。複合レンズ145は、画像センサ147のセンサ面において、被写体146の画像を生成する。複合レンズ145は、カメラの縦軸148に沿って可動であるため、カメラからの様々な距離をおいて、被写体からの画像に正確に焦点を合わせることができる。複合レンズ145から画像センサ147までの距離は、少なくとも部分的には、レンズ145の焦点距離によって決定される。
【0257】
図48に示されているように、カメラの物理的長さは、本明細書において説明した任意のタイプの光学系を画像センサと複合レンズとの間に配置することによって短くすることができる。例えば、図48は、図45に示されているタイプの光学系を示している。反射偏光子62は、複合レンズ145の内端に隣接して配置されている。ミラー63および円偏光子71は、画像センサ147の前面に取り付けられている。従って、複合レンズ145の焦点距離が一定である、遥かに「短い」カメラを形成することができる。従ってこのような構成は、例えば、カメラ機能が組み込まれた移動または「携帯」電話など、小型である必要のあるアプリケーションにおいて用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0258】
【図1】従来の多重画像奥行きディスプレイ(multiple image depth display)の一例を示す断面図である。
【図2】従来の多重画像奥行きディスプレイの一例を示す断面図である。
【図3】従来の多重画像奥行きディスプレイの一例を示す断面図である。
【図4】従来の多重画像奥行きディスプレイの一例を示す断面図である。
【図5】従来の多重画像奥行きディスプレイの一例を示す断面図である。
【図6】従来の多重画像奥行きディスプレイの一例を示す断面図である。
【図7】従来の多重画像奥行きディスプレイの一例を示す断面図である。
【図8(a)】本発明の一般的な実施形態を構成するディスプレイを示す図である。
【図8(b)】奥行き追加モードおよび「無奥行き」モードを示す図である。
【図9(a)】本発明の第1の実施形態を構成するディスプレイを示す図である。
【図9(b)】本発明の第1の実施形態を構成するディスプレイを示す図である。
【図9(c)】本発明の第1の実施形態を構成するディスプレイを示す図である。
【図10(a)】上記第1の実施形態の動作を示す図である。
【図10(b)】上記第1の実施形態の動作を示す図である。
【図10(c)】上記第1の実施形態の動作を示す図である。
【図10(d)】上記第1の実施形態の動作を示す図である。
【図11】さらに変形された、本発明の第1の実施形態を構成するディスプレイを示す図である。
【図12(a)】本発明の第2の実施形態を構成するディスプレイの構造を示す図である。
【図12(b)】本発明の第2の実施形態を構成するディスプレイの動作を示す図である。
【図13(a)】ディスプレイを示す図である。
【図13(b)】ディスプレイを示す図である。
【図13(c)】本発明の第3の実施形態を構成する変形されたディスプレイを示す図である。
【図14(a)】本発明の第4の実施形態を構成するディスプレイの構造を示す図である。
【図14(b)】本発明の第4の実施形態を構成するディスプレイの動作を示す図である。
【図15(a)】カラーフィルタの性能を示す図である。
【図15(b)】上記第4の実施形態の他の一実施例を構成する変形されたディスプレイを示す図である。
【図16】本発明の第5の実施形態を構成するディスプレイを示す図である。
【図17(a)】本発明の第6の実施形態を構成するディスプレイを示す図である。
【図17(b)】本発明の第6の実施形態を構成するディスプレイを示す図である。
【図18(a)】図17(a)および図17(b)のディスプレイの第1の奥行きモードの動作を示す図である。
【図18(b)】図17(a)および図17(b)のディスプレイの第1の奥行きモードの動作を示す図である。
【図19(a)】図17(a)および図17(b)のディスプレイの第2の奥行きモードの動作を示す図である。
【図19(b)】図17(a)および図17(b)のディスプレイの第2の奥行きモードの動作を示す図である。
【図20(a)】本発明の第7の実施形態を構成するディスプレイを示す図である。
【図20(b)】本発明の第7の実施形態を構成するディスプレイを示す図である。
【図21(a)】図20(a)および図20(b)に示したディスプレイの変形例を示す図である。
【図21(b)】図20(a)および図20(b)に示したディスプレイの変形例を示す図である。
【図22】図20(a)および図20(b)のディスプレイのさらなる変形例を示す図である。
【図23】(a)〜(e)は本発明の飛び越し走査された画像実施形態において用いる光学素子の実施例を示す図である。
【図24(a)】本発明の第8の実施形態を構成するディスプレイを示す図である。
【図24(b)】本発明の第8の実施形態を構成するディスプレイを示す図である。
【図25(a)】本発明の第9の実施形態を構成するディスプレイを示す図である。
【図25(b)】本発明の第9の実施形態を構成するディスプレイを示す図である。
【図26】本発明の第9の実施形態を構成するディスプレイを示す図である。
【図27(a)】図25(a)、図25(b)および図26に示すディスプレイの一変形例を示す図である。
【図27(b)】図25(a)、図25(b)および図26に示すディスプレイの一変形例を示す図である。
【図28】図25(a)、図25(b)および図26に示すディスプレイのさらなる一変形例を示す図である。
【図29】図25(a)、図25(b)および図26に示すディスプレイのさらなる一変形例を示す図である。
【図30】図25(a)、図25(b)および図26に示すディスプレイのさらなる一変形例を示す図である。
【図31】図25(a)、図25(b)および図26に示すディスプレイのさらなる一変形例を示す図である。
【図32】図25(a)、図25(b)および図26に示すディスプレイのさらなる一変形例を示す図である。
【図33】図25(a)、図25(b)および図26に示すディスプレイのさらなる一変形例を示す図である。
【図34】図25(a)、図25(b)および図26に示すディスプレイのさらなる一変形例を示す図である。
【図35】グレースケールまたは変形されたガンマ関数を示す値に対する表示輝度を示すグラフである。
【図36】上記ディスプレイ内の使用に適したLCD画素配置を示す図である。
【図37】上記ディスプレイ内の使用に適したLCD画素配置を示す図である。
【図38】本発明の複数の実施形態を構成するディスプレイのアプリケーションを示す図である。
【図39】本発明の複数の実施形態を構成するディスプレイの動作を示す図である。
【図40】本発明の複数の実施形態を構成するディスプレイの動作を示す図である。
【図41(a)】本発明のいくつかの実施形態に適用可能な一変形例を示す図である。
【図41(b)】本発明のいくつかの実施形態に適用可能な一変形例を示す図である。
【図42(a)】本発明のいくつかの実施形態に適用可能なクロストーク補正を示す図である。
【図42(b)】本発明のいくつかの実施形態に適用可能なクロストーク補正を示す図である。
【図42(c)】本発明のいくつかの実施形態に適用可能なクロストーク補正を示す図である。
【図42(d)】本発明のいくつかの実施形態に適用可能なクロストーク補正を示す図である。
【図43(a)】制御ボタンをシミュレートするディスプレイのアプリケーションを示す図である。
【図43(b)】制御ボタンをシミュレートするディスプレイのアプリケーションを示す図である。
【図44】公知のタイプの天体望遠ミラーを示す図である。
【図45】本発明の第10の実施形態を構成する天体望遠ミラーを示す図である。
【図46】本発明の第11の実施形態を構成する地上望遠ミラーを示す図である。
【図47】公知のタイプのデジタルカメラを示す図である。
【図48】本発明の本発明の第12の実施形態を構成するデジタルカメラを示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の光路を設ける光学系であって、
上記第1の光路は、上記光学系の物理的長さよりも長く、
上記光学系は、互いに距離をおいて配置された第1および第2の部分反射体を含んでおり、且つ、上記第1の反射体への第1の光の入射に対して上記第1の光路を設け、
上記第1の光路は、上記第1の反射体を介して上記第2の反射体へ向かう少なくとも部分的な透過と、上記第2の反射体から上記第1の反射体へ向かう少なくとも部分的な反射と、上記第1の反射体から上記第2の反射体へ向かう少なくとも部分的な反射と、上記第2の反射体を介した少なくとも部分的な透過とを含んでおり、
上記光学系は、上記第1および第2の反射体による反射中に反射されなかった上記第1の光が、上記第2の反射体から放射されるのを実質的に防ぐように構成されており、
上記第2の部分反射体への最初の光入射は上記光学系から離れない光学系。
【請求項2】
上記第1の光の偏光を、上記第1の経路に沿って通過している間に変化させるように構成されている請求項1に記載の光学系。
【請求項3】
上記第1の光の上記偏光を、上記第1の経路に沿って通過している間に、上記第2の反射体への入射と上記第1の反射体からの反射との間において変化させるように構成されている、請求項2に記載の光学系。
【請求項4】
上記第1の経路の長さとは異なる長さの第2の光路を設けるように構成されている請求項1に記載の光学系。
【請求項5】
上記第2の光路は、上記第1の反射体を介して上記第2の反射体へ向かう少なくとも部分的な透過と、上記第2の反射体を介した少なくとも部分的な透過とを含んでいる請求項4に記載の光学系。
【請求項6】
上記第2の反射体によって透過されなかった第2の光が、上記第2の反射体から放射されるのを実質的に防ぐように構成されている請求項5に記載の光学系。
【請求項7】
上記第1の光が上記第1の光路に沿って伝播する第1のモードと、光が上記第2の光路に沿って伝播する第2のモードとの間で切り替え可能である請求項4に記載の光学系。
【請求項8】
上記第1および第2の反射体は実質的に平面請求項1に記載の光学系。
【請求項9】
上記第1および第2の反射体は実質的に平行である請求項1に記載の光学系。
【請求項10】
上記第1および第2の反射体は、反射直線偏光子および部分透過ミラーをそれぞれ含んでおり、
上記光学系は、
上記第1の反射体との間に配置された上記第2の反射体を有する円偏光子と、
上記第1の反射体と上記第2の反射体との間に配置された4分の1波長板と、
上記第1の反射体と上記円偏光子との間に配置された切り替え可能な2分の1波長板とを含んでいる請求項1に記載の光学系。
【請求項11】
上記第1および第2の反射体は、部分透過ミラーおよび少なくとも1つの反射円偏光子をそれぞれ含んでいる請求項1に記載の光学系。
【請求項12】
4分の1波長板を含んでいる請求項11に記載の光学系。
【請求項13】
切り替え可能な2分の1波長板を含んでいる請求項12に記載の光学系。
【請求項14】
請求項1から13のいずれか一項に記載の光学系を含んでいる光学機器。
【請求項15】
望遠ミラー、単眼ミラー、一対の双眼ミラーおよびカメラのうちのいずれか1つを含んでいる請求項14に記載の光学機器。
【請求項16】
第1の画像または連続画像を有する第1の光を変調するディスプレイ装置と、
上記第1の画像または連続の位置の知覚される奥行きを大きくするように構成された光学系とを含んだディスプレイであって、
上記光学系は、互いに距離をおいて配置された第1および第2の部分反射体を含んでおり、且つ、上記第1の光に対して、上記装置から視野領域へと第1の光路を設け、
上記第1の光路は、上記第1の反射体を介して上記第2の反射体へ向かう少なくとも部分的な透過と、上記第2の反射体から上記第1の反射体へ向かう少なくとも部分的な反射と、上記第1の反射体から上記第2の反射体へ向かう少なくとも部分的な反射と、上記第2の反射体を介して上記視野領域へ向かう少なくとも部分的な透過とを含んでいるディスプレイ。
【請求項17】
上記光学系は、上記第1および第2の反射体による反射中に反射されなかった上記第1の光が、上記視野領域へ透過するのを実質的に防ぐように構成されている請求項16に記載のディスプレイ。
【請求項18】
上記光学系は、上記第1の光の偏光を、上記第1の経路に沿って通過している間に変化させるように構成されている請求項16に記載のディスプレイ。
【請求項19】
上記光学系は、上記第1の光の上記偏光を、上記第1の経路に沿って通過している間に、上記第2の反射体への入射と上記第1の反射体からの反射との間において変化させるように構成されている請求項18に記載のディスプレイ。
【請求項20】
上記装置は、第2の画像または連続画像を変調するように構成されており、
上記光学系は、上記装置から上記視野領域へ、上記第1の経路の長さとは異なる長さを有する第2の光路を設け、上記第1の画像または連続の位置の知覚される奥行きとは異なる、上記第2の画像または連続の位置の知覚される奥行きを設けるように構成されている請求項16に記載のディスプレイ。
【請求項21】
上記第2の光路は、上記第1の反射体を介して上記第2の反射体へ向かう少なくとも部分的な透過と、上記第2の反射体を介して上記視野領域へ向かう少なくとも部分的な透過とを含んでいる請求項20に記載のディスプレイ。
【請求項22】
上記光学系は、上記第2の反射体によって透過されなかった上記第2の光が、上記視野領域へ透過されるのを実質的に防ぐように構成されている請求項21に記載のディスプレイ。
【請求項23】
上記ディスプレイは、上記第1の画像または連続を表示する第1のモードと、上記第2の画像または連続を表示する第2のモードとを切り替えて、知覚される画像位置の奥行きを変化させる請求項20に記載のディスプレイ。
【請求項24】
上記ディスプレイは、上記第1および第2の画像または連続を同時または時間系列的に表示して、上記第1および第2の画像または連続のうちのいずれか一方が、上記第1および第2の画像または連続の他方の上に重ね合わせられたように見せるように構成されている請求項20に記載のディスプレイ。
【請求項25】
上記第1および第2の反射体は、実質的に平面である請求項16に記載のディスプレイ。
【請求項26】
上記第1および第2の反射体は、実質的に平行である請求項16に記載のディスプレイ。
【請求項27】
上記第1および第2の反射体は、上記装置のディスプレイ表面と実質的に平行である請求項26に記載のディスプレイ。
【請求項28】
上記装置は液晶デバイスを含んでいる請求項16に記載のディスプレイ。
【請求項29】
上記第1および第2の反射体は、上記装置の画像表示領域上の実質的に全体に位置する請求項16に記載のディスプレイ。
【請求項30】
上記第1および第2の反射体は、上記装置と円偏光子との間に配置された、反射直線偏光子および部分透過ミラーをそれぞれ含んでおり、
上記光学系は、上記第1の反射体と上記第2の反射体との間に配置された4分の1波長板と、上記第1の反射体と上記円偏光子との間に配置された切り替え可能な2分の1波長板とを含んでいる請求項16に記載のディスプレイ。
【請求項31】
上記第1および第2の反射体は、部分透過ミラーおよび少なくとも1つの反射円偏光子をそれぞれ含んでいる請求項16に記載のディスプレイ。
【請求項32】
上記光学系は、4分の1波長板を含んでいる請求項31に記載のディスプレイ。
【請求項33】
上記光学系は、切り替え可能な2分の1波長板を含んでいる請求項32に記載のディスプレイ。
【請求項34】
上記第1および第2の反射体は、部分透過ミラーおよび反射直線偏光子をそれぞれ含んでおり、
上記光学系は、上記第1の反射体と上記第2の反射体との間に配置された4分の1波長板と、上記第1の反射体と上記装置との間に配置された、パターン化リターダまたは偏光回転子とを含んでいる請求項16に記載のディスプレイ。
【請求項35】
平行バックライトを含んでおり、上記光学系は拡散器を含んでいる請求項34に記載のディスプレイ。
【請求項36】
上記部分透過ミラーは、開口のアレイを有するミラーを含んでおり、
上記拡散器は、上記開口に位置合わせされたレンズのアレイを含んでいる請求項35に記載のディスプレイ。
【請求項37】
上記パターン化リターダまたは回転子は、パターン化されていない均一な状態へ切り替え可能である、請求項33に記載のディスプレイ。
【請求項38】
上記パターン化リターダまたは回転子は、パターン化された4分の1波長板を含んでいる請求項33に記載のディスプレイ。
【請求項39】
上記パターン化リターダまたは回転子は、均一な4分の1波長板、およびパターン化された2分の1波長板またはパターン化された90°偏光回転子を含んでいる請求項34に記載のディスプレイ。
【請求項40】
上記パターン化リターダまたは回転子は液晶セルを含んでいる請求項34に記載のディスプレイ。
【請求項41】
上記液晶セルは、パターン化された電極構成を含んでいる請求項40に記載のディスプレイ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8(a)】
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【図8(b)】
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【図9(a)】
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【図9(b)】
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【図9(c)】
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【図10(a)】
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【図10(b)】
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【図10(c)】
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【図10(d)】
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【図11】
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【図12(a)】
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【図12(b)】
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【図13(a)】
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【図13(b)】
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【図13(c)】
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【図14(a)】
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【図14(b)】
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【図15(a)】
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【図15(b)】
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【図16】
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【図17(a)】
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【図17(b)】
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【図18(a)】
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【図18(b)】
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【図19(a)】
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【図19(b)】
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【図20(a)】
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【図20(b)】
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【図21(a)】
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【図21(b)】
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【図22】
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【図23】
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【図24(a)】
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【図24(b)】
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【図25(a)】
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【図25(b)】
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【図26】
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【図27(a)】
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【図27(b)】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【図40】
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【図41(a)】
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【図41(b)】
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【図42(a)】
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【図42(b)】
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【図42(c)】
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【図42(d)】
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【図43(a)】
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【図43(b)】
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【図44】
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【図45】
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【図46】
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【図47】
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【図48】
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【公表番号】特表2009−534692(P2009−534692A)
【公表日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−550094(P2008−550094)
【出願日】平成19年4月27日(2007.4.27)
【国際出願番号】PCT/JP2007/059546
【国際公開番号】WO2007/126148
【国際公開日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】