説明

ディスプレイ用マイクロデバイス

【課題】簡易な構成で小型化、薄型化を図ることができ、かつ生産性を向上させながら信頼性の高いディスプレイ用マイクロデバイスを提供することを目的とする。
【解決手段】高真空の中でも蒸発量が少ないシリコンオイルによって液体膨出部12を形成したことで、高真空CVD法を用いて、液体状の液体膨出部12の液表面に保護膜13を積層形成できるようにした。かくして簡易な構成で小型化、薄型化を図ることができ、また従来のようにを貼着する煩雑な組立工程を省くことができるので、その分生産性を向上させることができる。さらに、保護膜13を用いていることから、衝撃や重力などによって液体膨出部12が変形してしまうことを防止でき、一段と信頼性の高いディスプレイ用マイクロデバイス1を提供できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はディスプレイ用マイクロデバイスに関し、例えば基板表面に画素としてディスプレイ用マイクロデバイスを複数個配設することにより形成されるディスプレイ装置に適用して好適なものである。
【背景技術】
【0002】
近年、ディスプレイ装置の分野では、光の散乱を利用して表示を行う、いわゆる散乱方式のディスプレイ装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、低消費電力で表示動作するディスプレイ装置としては、例えば着色された誘電体の液体を電極間で挟み移動させ、着色の有無を視認させることで表示を行う、いわゆる液体移動方式のディスプレイ装置が知られている(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開平05−088149号公報
【特許文献2】特開平08−254962号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、これらディスプレイ装置に用いるディスプレイ用マイクロデバイスは、薄型、低電圧駆動が可能であることから、腕時計や電卓等の小型電子機器のディスプレイ装置として広い分野で使用することができる。
【0005】
そして、このような分野においては、従来よりもさらに簡易な構成で小型化、薄型化を図り、かつ生産性を向上させながら信頼性の高いディスプレイ用マイクロデバイスを提供することが望まれている。
【0006】
本発明は以上の点を考慮してなされたもので、簡易な構成で小型化、薄型化を図ることができ、かつ生産性を向上させながら信頼性の高いディスプレイ用マイクロデバイスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の請求項1記載のディスプレイ用マイクロデバイスは、一面に第1の電極を備えた基板と、CVD(Chemical Vapor Deposition)法による薄膜形成処理の際に蒸発せずに残る液体からなり、表面張力又は支持部によって前記基板の一面上から膨出した液体膨出部と、前記CVD法によって前記液体膨出部の液表面に積層形成された保護膜と、前記保護膜の表面に形成された第2の電極とを備え、前記第1の電極及び前記第2の電極間に電圧を印加することにより静電気力が発生し、該静電気力により前記保護膜を変形させることで、所定方向からの光を前記液体膨出部に透過させることを特徴とするものである。
【0008】
本発明の請求項2記載のディスプレイ用マイクロデバイスは、前記光が発光部本体内に照射される発光部を備え、前記静電気力によって前記第2の電極が前記発光部本体に接触し、前記発光部本体内に照射されている光が前記発光部本体と前記第2の電極との接触箇所から前記液体膨出部に導かれることを特徴とするものである。
【0009】
本発明の請求項3記載のディスプレイ用マイクロデバイスは、前記基板の他面に設けられ、前記CVD法によって表面に前記保護膜が積層形成された第3の電極と、前記基板の他面側における前記保護膜の表面に形成された第4の電極と、前記基板、前記第1の電極及び前記第3の電極を貫通した貫通孔とを備え、前記基板は一面又は他面のいずれかを照射面あるいは反射面として前記光を外方へ発しており、記基板の一面に形成された前記液体膨出部は、前記第1の電極及び前記第2の電極間の電圧変化と、前記第3の電極及び前記第4の電極間の電圧変化とに応じて発生する前記静電気力により、前記貫通孔を通過して前記基板の他面へ移動することを特徴とするものである。
【0010】
本発明の請求項4記載のディスプレイ用マイクロデバイスは、前記液体がシリコンオイルであることを特徴とするものである。
【0011】
本発明の請求項5記載のディスプレイ用マイクロデバイスは、前記液体が載置される載置領域以外の非載置領域の表面には、前記載置領域より撥油性が高い薄膜が形成されていることを特徴とするものである。
【0012】
本発明の請求項6記載のディスプレイ用マイクロデバイスは、前記第1の電極及び前記第2の電極が透明電極部材からなり、前記基板が透明基板部材からなり、前記保護膜が透明薄膜部材からなることを特徴とするものである。
【0013】
本発明の請求項7記載のディスプレイ用マイクロデバイスは、前記保護膜はポリパラキシリレンにより形成されていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明の請求項1記載のディスプレイ用マイクロデバイスによれば、CVD法によって成膜した保護膜は僅かな静電気力によって変形させることができるので、装置全体を簡易な構成にしつつ、所定方向からの光を液体膨出部に透過させて光を変化させることができる。また、予め形成したシート部材を液体膨出部に貼着する煩雑な組立工程を省くことができるので、その分生産性を向上させることができる。さらに、保護膜を用いることで衝撃や重力等により液体膨出部が変形してしまうことを抑制できるので、設置角度に係わらず液体膨出部を所望の形状に変形させ、当該液体膨出部に所定方向からの光を確実に透過させることができ、かくして信頼性の高いディスプレイ用マイクロデバイスを提供できる。
【0015】
本発明の請求項2記載のディスプレイ用マイクロデバイスによれば、静電気力で変形させた第2の電極を発光部本体に接触させることで、発光部本体内の光を液体膨出部へ導きくことができ、かくして液体膨出部を変形させることにより光の照射方向を適宜変化させることができる。
【0016】
本発明の請求項3記載のディスプレイ用マイクロデバイスによれば、静電気力によって液体膨出部を貫通孔により基板の一面側又は他面側に移動させることで、基板から発する光あるいは基板で反射する光を液体膨出部に非透過又は透過させることができ、かくして液体膨出部を変形させることにより光を適宜調整できる。
【0017】
本発明の請求項4記載のディスプレイ用マイクロデバイスによれば、シリコンオイルは、液体であっても、CVD法による保護膜の薄膜形成処理の際に蒸発させずに液体のまま残すことができることから、液体でなる液体膨出部に保護膜を確実に積層形成することができる。
【0018】
本発明の請求項5記載のディスプレイ用マイクロデバイスによれば、液体膨出部を載置領域にのみ容易に形成できると共に、最適な液量の液体のみからなる液体膨出部を容易に形成できる。
【0019】
本発明の請求項6記載のディスプレイ用マイクロデバイスによれば、所定方向からの光を確実に液体膨出部に透過させることができる。
【0020】
本発明の請求項7記載のディスプレイ用マイクロデバイスによれば、CVD法によって確実に液体膨出部の液表面に保護膜を成膜することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下図面に基づいて本発明の実施の形態を詳述する。
【0022】
(1)散乱式ディスプレイ装置
(1−1)ディスプレイ用マイクロデバイスの構成
図1(A)及び(B)において、1は散乱式ディスプレイ装置(図示せず)の1画素(セル)を構成するディスプレイ用マイクロデバイスを示す。なお、この場合、散乱式ディスプレイ装置の全体図は省略し、ディスプレイ用マイクロデバイス1の近傍部分についてのみ説明する。
【0023】
ディスプレイ用マイクロデバイス1は、デバイス本体2と、中空状の発光部本体3a内に照射された光L1が内壁に反射しながら一方向へ進む発光部3と、当該デバイス本体2を発光部3に設置する設置部4とからなる。
【0024】
デバイス本体2は、例えば透明なガラス部材からなる基板10の一面に透明部材からなるITO(Indium Tin Oxide)電極11が設けられ、第1の電極としてのITO電極11に液体膨出部12が形成されている。液体膨出部12は、例えば透明な液体であるシリコンオイルからなり、所定量のシリコンオイルがITO電極11の表面から湾曲状に膨出するように形成されている。
【0025】
これら液体膨出部12及びITO電極11の表面には、例えば透明薄膜部材でなるポリパラキシリレン(商品名パリレン)をコーティング材料として、高真空CVD(Chemical Vapor Deposition))を用いて所定厚さで堆積してなる保護膜13が形成されている。かくして、この保護膜13は、これが液体膨出部12をITO電極11に固定し、かつ保護するようになされている。
【0026】
保護膜13の表面には、基板3に設けられたITO電極11の載置領域6aに対向し、かつ液体膨出部12を被うような可変領域を備えた透明な電極14が成膜されている。
【0027】
図1(B)に示したように、これらITO電極11と電極14とは電気的に接続されており、当該ITO電極11及び電極14間に設けられた電源部18から所定の電圧が印加されることにより電極14に静電気力を発生させ、この静電気力によって保護膜13の曲率を制御することで液体膨出部12の曲率を変化させ得る。
【0028】
このようにして、デバイス本体2は、ITO電極11及び電極14間に印加する電圧値を調整することにより、保護膜13に生じるひずみの度合いを調整し、液体膨出部12における曲率を調整することができる。
【0029】
かかる構成に加えてデバイス本体2は、液体膨出部12が発光部3側に配置されると共に、ITO電極11及び電極14間に電圧が印加されていないときに当該電極14が発光部本体3aと非接触となるように設置部4に設けられている。これにより発光部本体3aの光L1は、液体膨出部12に照射されずにそのまま発光部本体3aの内部を通過し得るようになされている。
【0030】
かかる構成に加えて、設置部4は、図1(B)に示すように、ITO電極11及び電極14間に電圧が印加されて液体膨出部12の曲率が変化して発光部本体3a側へ膨らんだとき、当該液体膨出部12の先端部分の電極14が発光部本体3aに当接するように、その高さ寸法が選定されている。
【0031】
かくして、ディスプレイ用マイクロデバイス1は、ITO電極11及び電極14間に電圧が印加され、電極14が変形して発光部本体3aに当接すると、発光部本体3aの内壁に反射しながら一方向へ進む光L1が、発光部本体3aと接触した接触箇所たる電極14から保護膜13を透過して液体膨出部12へと導かれる。
【0032】
これによりディスプレイ用マイクロデバイス1は、発光部本体3aからの光L1を液体膨出部187に透過させ、当該液体膨出部12によって光色等の各種光調整を行った光L2を基板10の他面から外方へ照射し得るようになされている。
【0033】
ここでディスプレイ用マイクロデバイス1は、液体移動式ディスプレイ装置の一画素を構成するものであることから、図2(A)及び(B)に示すように、光L2を発しないディスプレイ用マイクロデバイス1と、光L2を発するディスプレイ用マイクロデバイス1とに、適宜個別に制御することにより全体として所望の画像を表示し得る。なお、図1(A)及び(B)は図2(A)及び(B)中の小さい四角部分ER1の詳細構成を示す図面である。
【0034】
例えば、図3に示すように、デバイス本体2は、アレイ状等の所定パターンに配置される。基板10に貼着されるITO電極11は、長手方向が所定方向に延び、隣接するITO電極11と等間隔を空けて配設され、規則的な所定パターンを形成している。
【0035】
このITO電極11には、円形状に形成された載置領域6aが所定間隔を空けて複数設けられており、これら各載置領域6aに液体膨出部12が形成され得る。
【0036】
この実施の形態の場合、載置領域6a以外のITO電極12の表面と、基板10の表面との領域(以下、これらをまとめて単に非載置領域と呼ぶ)6bには、非晶質透明フッ素樹脂からなる、ITO電極11より撥油性が高い薄膜(以下、これを撥油膜と呼ぶ)19が形成されている。
【0037】
このように非載置領域6bには、撥油膜19による撥油処理が施されていることにより、シリコンオイルの液滴がはじかれて正確に載置領域6aにのみ液体膨出部12を配置し得ると共に、表面張力により所定量のシリコンオイルのみを載置領域6a内に正確に載置し得るようになされている。
【0038】
第2の電極としての電極14は、例えば金膜等の透明電極部材により所定厚さに形成されており、長手方向がITO電極11の長手方向と直交するように配置され、隣接する電極14と等間隔を空けて配設されている。これらITO電極11と電極14とは格子状に配置され得るようになされている。
【0039】
ここで、この実施の形態の場合、図4に示すように、デバイス本体2は、ITO電極11と電極14とが格子状に配置されていることから、例えばITO電極11の第1列目La1及び第2列目La2のうち第2列目La2と、電極14の第1列目Lb1及び第2列目Lb2のうち第2列目Lb2との間に電圧を印加することにより、ITO電極11の第2列目La2と電極14の第2列目Lb2とが直接接続している1つのデバイス本体2aの液体膨出部12を大きく可変させることができる。またこのとき、デバイス本体2a以外のデバイス本体も少しではあるが変形する。これを防ぐためには、個々のデバイス本体へ直列にダイオードを挿入すればよい。
【0040】
(1−2)デバイス本体の製造手順
ここで、かかる構成のデバイス本体2は以下の手順により製造することができる。
【0041】
まず図5(A)及び図5(A)のA−A´位置での断面図である図5(B)に示すように、載置領域6aを有するITO電極11を基板10の一面に貼着し、この後図6(A)及び図6(A)のB−B´位置での断面図である図6(B)に示すように、載置領域6a以外の非載置領域6bに非晶質透明フッ素樹脂によって撥油膜19を形成して撥油処理を施す。
【0042】
実際上、非晶質透明フッ素樹脂として例えば旭硝子株式会社製のサイトップ(商品名)を用いて非載置領域6bのみに撥油膜19を形成する場合には、まず基板10をアセトンで超音波洗浄を行った後、エタノールでリンスすることにより脱脂を行い、110℃で2分間ベークを行なう。
【0043】
続いて、基板10の一面に非晶質透明フッ素樹脂の溶液からなる液膜をスピンコート法によって均一に形成し、基板10の一面を非晶質透明フッ素樹脂によってコーティング処理した後、これをベークして基板10上に撥油膜19を形成する。
【0044】
次いで、撥油膜19にアルミニウム膜を堆積させた後、当該アルミニウム膜上にフオトレジストを形成し、このフオトレジストをパターニングすることにより当該フオトレジストをマスクとしてアルミニウム膜をエッチングする。
【0045】
そして、このようにしてパターニングされたアルミニウム膜をマスクとして、撥油膜19をプラズマエツチングし、載置領域6aにおいて撥油膜19をエッチングしてITO電極11を露出させ、載置領域6a以外の非載置領域6bのみを撥油膜19で被膜する。その後、フオトレジスト及びアルミニウム膜を順次除去することにより、図6(A)及び(B)に示したように、ITO電極11の載置領域6aのみが露出し、非載置領域6bが撥油膜19で被覆された基板10が形成される。
【0046】
続いて、シリコンオイルに基板10を浸した後、スピンコート法により各載置領域6aから余分なシリコンオイルを省いて均一な液量とし、かつ撥油膜19上のシリコンオイルを遠心力で排除する。
【0047】
かくして、図7(A)及び図7(A)のC−C´位置での断面図である図7(B)に示すように、基板10上の各載置領域6aには、表面張力によりITO電極11から湾曲状に膨出した所定量のシリコンオイルからなる液体膨出部12が形成され得る。なお、スピンコート法については、検証結果を含めて下記の「(1−4)スピンコート法について」において詳述する。
【0048】
次いで、図8(A)及び図8(A)のD−D´位置での断面図である図8(B)に示すように、高真空CVD法によって非載置領域6bにおける撥油膜19の表面と、載置領域6aにおける液体膨出部12の液表面とに、透明薄膜部材としてのポリパラキシリレンからなる厚さ数[nm]程度の保護膜13を積層形成する。
【0049】
ここでシリコンオイルとしては例えばメチルフェニルシリコンオイルが好適であるが、絶縁性、透明性、耐熱性及び耐真空性に優れ、CVD(Chemical Vapor Deposition)法による薄膜形成処理の際に蒸発せずに残る液体であれば、シリコンオイルの代わりに種々の液体を用いることができる。
【0050】
シリコンオイルは、耐熱性に優れ、広い温度範囲に亘って粘度変化が少なく、蒸発量が極めて小さいことから、高真空CVD法による薄膜形成処理の際にも液体の状態を維持することができ、かくして当該高真空CVD法により液体膨出部12の液表面に保護膜13を成膜できる。
【0051】
実験によれば、シリコンオイルとして、液体において真空耐久性が10−7〜10―22[Torr]、沸点が5[Torr]で210[℃]、比重が1.065、屈折率が1.555、動粘度が37[mm2/s]であるメチルフェニルシリコンオイルを用いて液体膨出部12を形成した。
【0052】
そして、高真空CVD法を利用して、25[°C]かつ0.1[Torr]の条件下、0.5[g]のパリレンC(ポリモノクロルパラキシリレンの商品名、ユニオンカーバイド社製)を真空チャンバ(図示せず)内に30[min]間供給することにより、シリコンオイルが蒸発せずに液体膨出部12の液表面に1000[nm]程度の厚さの保護膜13を成膜できることが確認できた。
【0053】
ここで、仮に液体膨出部12を保護膜13で被覆しなかった場合には、図9(A)に示すように、基板10を約45度に傾斜させただけで、液体膨出部12自体の自重によって下方側にシリコンオイルが集まって変形してしまう。このことは、図9(B)に示すように、傾けた基板10の裏面に格子状の模様を配置し、当該基板10越しに模様を視認すると、当該模様が変形して見えることからも確認できる。
【0054】
これに対して、上述したように液体膨出部12を保護膜13で被覆した場合には、図10(A)に示すように、基板10を約45度だけでなく、約90度にまで傾斜させても、当該保護膜13によって液体膨出部12が自重によって変形することを抑制できる。このことは、図10(B)に示すように、基板10越しに格子状の模様を視認したときに、当該模様がほとんど変形せずに視認できたことから確認できた。
【0055】
従って、このデバイス本体2は、直角等の各種角度で設けても液体膨出12がほとんど変形することなく、設置角度に係わらず液体膨出部12を所望の形状のままで利用できることが確認できた。
【0056】
次いで、図11(A)及び図11(A)のE−E´位置での断面図である図11(B)に示すように、所定のマスキング部材Mを基板10の一面側に設け、この状態のまま金を蒸着させることにより、可変領域を備えた電極14を積層形成する。
【0057】
かくして、図11(C)に示すように、液体膨出部12に対して高真空CVD法によって保護膜13を積層形成し、液体膨出部12の一方面にITO電極11を配置すると共に、他方面に保護膜13を介して電極14を配置したデバイス本体2を得ることができる。
【0058】
最後に基板10のITO電極11と電極14とを電源部18に接続することにより、各デバイス本体2における電極14を静電気力で変形させて液体膨出部12の曲率を変化させて、液体膨出部12の頂点から底部までの高さを適宜調整し得るデバイス本体2を得ることができる。
【0059】
このようなデバイス本体2は、液体膨出部12が発光部本3a側に配置されるように設置部4を介して発光部3に設置され、かくしてディスプレイ用マイクロデバイス1が製造され得る。
【0060】
(1−3)動作及び効果
以上の構成において、デバイス本体2では、液体膨出部12が耐熱性に優れ、高真空の中でも蒸発量が少ないシリコンオイルによって形成されているため、高真空状態で成膜する高真空CVD法を用いてもシリコンオイルが蒸発することなく、液体膨出部12の液表面に保護膜13を積層形成することができる。
【0061】
従って、デバイス本体2では、基板10上に液体膨出部12を所望の位置に配置させた状態のまま、保護膜13によってITO電極11に液体膨出部12を固定させることができるので、アレイ状等の種々の形状に容易に配置できる。
【0062】
また、デバイス本体2では、シート部材に比して格段的に厚みが薄い保護膜13を液体膨出部12の液表面に成膜できることから、保護膜13を格段的に薄く形成できることにより当該保護層13を静電気力で変形させることができるので、僅かな力で電極14を発光部本体3aに接触させることができ、かくして発光部本体3a内の光L1を接触箇所から容易に液体膨出部12へ透過させることができる。
【0063】
よって、デバイス本体2では、静電気力を発生させる程度の簡易な構成の駆動装置を用いて保護膜13を変形させることができるので、液体膨出部12の液量を調整するポンプや液量を調整するための流路等を必要としない分だけ装置全体を簡易な構成にでき、かくして小型電子機器のディスプレイ装置に対し簡単に集積・埋め込みが可能となる。
【0064】
さらに、このようにデバイス本体2では、保護膜13による弾性力と、静電気力とによって保護膜13を変形させることができるので、ヒステリシスを生じるような摩擦等がなく、液体膨出部12の曲率を正確に制御することができ、かくして電極14を発光部本体3aに確実に接触させて光L1を液体膨出部12へ導くことができる。
【0065】
また、デバイス本体2では、高真空CVD法を用いて液体膨出部12及び撥油膜19に保護膜13を成膜するようにしたことにより、液滴の液表面に別途シート部材を貼着する煩雑な組立工程を行う必要がないので、その分ディスプレイ用マイクロデバイス1全体の生産性を向上させることができる。
【0066】
さらに、デバイス本体2では、液体膨出部12に保護膜13を形成する際に高真空CVD法を用いることで、保護膜13の膜厚を正確に設定できると共に、当該所望の領域にのみ保護膜13を成膜でき、さらに膜厚が均一で残留応力も少ない保護膜13を成膜できる。
【0067】
さらに、デバイス本体2では、機械的強度がある保護膜13を用いていることから、衝撃や重力などによって液体膨出部12が変形してしまうことを防止できるので、設置角度に係わらず液体膨出部12の変形後にのみ電極14を発光部本体3aに接触させることができる。また、保護膜13は、発光部本体3aに電極14を接触させる動作を繰り返しても、その衝撃で破損することなく、安定して電極14を発光部本体3aに接触させることができる。
【0068】
さらに、この実施の形態の場合、デバイス本体2では、非載置領域6bに撥油膜19を成膜しておくことで、最適な液量のシリコンオイルで載置領域6aのみに液体膨出部12を形成できるので、当該液体膨出部12の外表面に設けた電極14を、液体膨出部12の変形後にのみ所望の位置で発光部本体3aと確実に接触させることができる。
【0069】
以上の構成によれば、耐熱性に優れ、高真空でも蒸発量が少ないシリコンオイルによって液体膨出部12を形成したことで、高真空CVD法を用いて、液体状の液体膨出部12の液表面に保護膜13を積層形成できるようにした。
【0070】
この結果、保護膜13を静電気力によって変形させることで、所定方向からの光L1を液体膨出部12に透過させることができるので、ポンプや液量を調整するための流路や、光の照射方向を変更させる装置等を必要としない簡易な構成にできる。かくして、このような簡易な構成で小型化、薄型化を図りつつ、所定方向からの光L1を液体膨出部12に透過させて光L1を変化させ得るディスプレイ用マイクロデバイス1を提供できる。
【0071】
さらに、予め形成されたシート部材を液体膨出部12に別途貼着する煩雑な組立工程を省くことができるので、その分生産性を向上させることができる。
【0072】
さらに、ヒステリシスを生じるような摩擦等がなく、液体膨出部12の曲率を正確に制御することができるので、液体膨出部12を正確に所望の形状に変形させ、当該液体膨出部12に所定方向からの光L1を確実に透過させることができる。
【0073】
また、保護膜13を用いることで衝撃や重力等により液体膨出部12が変形してしまうことを防止できるので、設置角度に係わらず液体膨出部12を正確に所望の形状に変形させ、当該液体膨出部12に所定方向からの光L1を確実に透過させることができ、かくして信頼性の高いディスプレイ用マイクロデバイス1を提供できる。
【0074】
(1−4)スピンコート法について
以下、上述したスピンコート法について説明する。ここでは、図12に示すように、例えば500[μm]の間隔を空けてアレイ状に設けられた直径1500[μm]の円形状でなる載置領域20aを有する基板20を用意し、最適な液量でなるシリコーン溶液又は流動パラフィンを載置領域20aに載置する場合について検証を行った。
【0075】
この場合、図13(A)に示すように、撥油膜20bが形成された基板20上をシリコーン溶液又は流動パラフィンで浸して、基板20上に所定厚さの液体層21を形成した。
【0076】
次いで、基板20を所定の角速度で回転させることにより、図13(B)に示すように、表面張力により湾曲状に膨出した液体膨出部22を載置領域20aのみに形成し得るようになされている。
【0077】
そして、図14(A)に示すように、直径2rが1500[μm]でなる液体膨出部22の厚さ(以下、液滴厚さと呼ぶ)tと、スピンコートの角速度との関係について、シリコーン溶液及び流動パラフィンを用いてそれぞれ調べた結果、図15に示すような関係となった。図15から基板20を低速度で回転させたときには、シリコーン溶液のほうが流動パラフィンよりも液滴厚さtが厚くなることが分かった。
【0078】
ここで、図14(A)に示したように、液体膨出部22の表面形状は球面の一部の形状となるため、断面の液滴厚さtは、直径2rと角度θとによって決められる。また、角度θには上限が存在する。角度θの上限θは、図14(B)に示すように、液体膨出部22の製作に用いられる液体と表面処理素材である撥油膜20bとの接触角の大きさで決まる。すなわちθ≦θとなる。
【0079】
ここで、角度θには下限が存在する。図14(C)及び(D)に示すように、接触角θより小さくなると、表面処理素材の真空蒸着の間、液体膨出部22と基板3との接触面の直径が2rより小さくなる。この接触角θは液体膨出部22の製作に用いられる液体と基板3の素材との接触角である。言い換えると、液体の量が少ない場合には、全体の液体パターン幅を覆うことができず、パターンされた液体を、真空に置いて安定させるときに、液体の表面張力が働き、エネルギー的に安定な形に液体を戻す。
【0080】
すなわち、角度θを基板20との接触角θになすように液体パターンの幅が小さくなる。そのため、デザインされた直径2rにするためには、液体の量がある程度多くなければならない。接触角θが角度θの下限である。すなわちθ≦θとなる。
【0081】
以上より、液体バターンの直径2rが一定のとき、スピンコート法の回転速度により液滴厚さtを調整できる範囲は、θ≦θ≦θ(θ:液体膨出部22の製作に用いられる液体と撥油膜20bである表面処理素材との接触角、θ:液体膨出部22の製作に用いられる液体と基板20との接触角)で決まる。また、撥油膜である表面処理素材が決まったら、接触角θは不変であるので、断面の液滴厚さtの最大値は直径2rに依存する。基板が決まったら、接触角θは不変であるので、断面の液滴厚さtの最小値は2rに依存する。
【0082】
(1−5)デバイス本体の変形特性
ここでは、図16(A)及び(B)に示すように、半径rが500[μm]であって、液体膨出部12の底部から頂部までの距離t1と、保護膜10及び電極14の膜厚dとが異なる3種類のデバイス本体(図16(B)及び図17中、単に(A)(B)(C)と示す)を用意し、図17に示すように、各デバイス本体(A)、(B)及び(C)で印加電圧を変化させたときの各変形率を計測した。
【0083】
なお、図16(A)におけるRは、液体膨出部12の曲率半径を示し、図17内にあるRoは、液体膨出部12の初期の曲率半径を示すものである。このとき変形率はR/Roとなる。
【0084】
図17に示した結果から膜厚dが同じである場合には、液体膨出部12の液滴厚さt1が小さい方が液体膨出部12の変形率が大きいことが分かった。また膜厚dが薄い方が液体膨出部12の変形率が大きいことが分かった。
【0085】
(2)液体移動式ディスプレイ装置
図1(A)との対応部分に同一符号を付して示す図18(A)において、30は液体移動式ディスプレイ装置の1画素を構成するディスプレイ用マイクロデバイスを示す。なお、この場合、液体移動式ディスプレイの全体図は省略し、ディスプレイ用マイクロデバイス30の近傍部分についてのみ説明する。
【0086】
ディスプレイ用マイクロデバイス30はデバイス本体31を有し、このデバイス本体31の他面側が図示しない設置部により所定の隙間を設けて基台に設置され得る。
【0087】
デバイス本体31は、照射面としての一面から外方へ光L3を照射する基板34と、基板34の一面に設けられた第1の電極としての照射側ITO電極35aと、基板164の他面に設けられた第3の電極としての非照射側ITO電極35bとを備え、これら照射側ITO電極35a及び非照射側ITO電極35bには保護膜36が被覆されている。
【0088】
ここで、照射側ITO電極35aを被覆する保護膜36には、第2の電極としての照射側電極37が被覆されており、非照射側ITO電極35bを被覆する保護膜36には、第4の電極としての非照射側電極38が被覆されている。
【0089】
照射側ITO電極35aと保護膜36との間には、液体膨出部40が形成されており、この液体膨出部40は、基板34と、照射側ITO電極35aと、非照射側ITO電極35bとを貫通した貫通孔41を通過して他面側の非照射側ITO電極35b及び保護膜36間の空間に移動し得るようになされている。
【0090】
なお、この実施の形態の場合、液体膨出部40を形成する液体としては、CVD法による薄膜形成処理の際に蒸発せずに残る液体であれば良く、シリコンオイルや流動パラフィン等この他種々の液体を用いるようにしても良い。
【0091】
実際上、照射側ITO電極35a及び照射側電極37間に電圧が印加されず、非照射側ITO電極35b及び非照射側電極38間に電圧が印加された場合には、図18(A)に示すように、非照射側電極38が液体膨出部40を非照射側ITO電極35b側へ押すことにより、当該液体膨出部40の液体が照射側ITO電極35a側へ貫通孔41を通過して移動し、当該照射側ITO電極35a及び保護膜36間に液体膨出部40が形成される。
【0092】
かくして基板34の一面から発する光L3は、液体膨出部40を透過することにより、当該液体膨出部40によって光色等が変化した光L4に変わり、外方へ照射される。
【0093】
これに対して、照射側ITO電極35a及び照射側電極37間に電圧が与えられ、非照射側ITO電極35b及び非照射側電極38間に電圧が与えられない場合には、図18(B)に示すように、照射側電極37が液体膨出部40を照射側ITO電極35a側へ押すことにより、当該液体膨出部40の液体が非照射側ITO電極35b側へ貫通孔41を通過して移動し、当該非照射側ITO電極35b及び保護膜36間に液体膨出部40が形成される。
【0094】
かくして基板34の一面側へ発する光L3は、液体膨出部40を透過せずに、保護膜36及び照射側電極37のみを透過した光L5となり、そのまま外方へ照射される。
【0095】
ところで、このようなディスプレイ用マイクロデバイス30は、液体移動式ディスプレイ装置の1画素を構成するものである。従って、図19(A)及び(B)に示すように、液体膨出部40に光L3を透過せて光L4を発するディスプレイ用マイクロデバイス30と、液体膨出部40に光L3を透過させずに光L5を発するディスプレイ用マイクロデバイス30とに、各ディスプレイ用マイクロデバイス30を適宜個別に制御することにより全体として所望の画像を表示し得る。なお、図18(A)及び(B)は図19(A)及び(B)中の四角部分ER2の詳細構成を示す図面である。
【0096】
次にこのようなディスプレイ用マイクロデバイス30の製造方法について以下簡単に説明する。先ず始めに、基板34の一面に所定バターンの照射側ITO電極35aが貼着されると共に、他面に所定バターンの非照射側ITO電極35bが貼着される。
【0097】
これら基板34、照射側ITO電極35a及び非照射側ITO電極35bには、厚みを貫通した貫通孔171が形成される。なお、基板34には液体膨出部40が形成される載置領域を除き撥油膜(図示せず)が被膜されている。そして、図20(A)に示すように、照射側ITO電極35aの載置領域には、上述したスピンコート法により液体膨出部40が形成され得る。
【0098】
次いで、図20(B)に示すように、高真空CVD法によりポリパラキシリレンからなる保護膜36が液体膨出部40の液表面と、照射側ITO電極35a及び非照射側ITO電極35bの表面とに積層形成される。その後、照射側ITO電極35a側の保護膜36には照射側電極37が設けられ、非照射側ITO電極35b側の保護膜36には非照射側電極38が設けられ、かくしてディスプレイ用マイクロデバイス30が製造され得る。
【0099】
以上の構成において、ディスプレイ用マイクロデバイス30では、静電気力によって液体膨出部40を貫通孔41により基板34の一面又は他面に移動させることで、基板34から発する光L3を液体膨出部40に透過又は非透過させることができ、かくして液体膨出部40を変形させることにより光L4又は光L5に適宜調整できる。
【0100】
また、ディスプレイ用マイクロデバイス30では、高真空CVD法を用いて液体膨出部40、照射側ITO電極35a及び非照射側ITO電極35bに保護膜36を成膜するようにしたことにより、光を変化させる液体膨出部40の液表面に予め形成したシート部材を貼着する煩雑な組立工程を省き、簡易な構成にできるので、その分生産性を向上させることができる。
【0101】
また、ディスプレイ用マイクロデバイス30は、液体膨出部40に保護膜36を形成する際に高真空CVD法を用いることで、保護膜36の膜厚を正確に設定できると共に、当該所望の領域にのみ保護膜36を正確に成膜でき、さらに膜厚が均一で残留応力も少ない保護膜36を成膜できる。
【0102】
さらに、耐熱性に優れ、高真空でも蒸発量が少ない液体によって液体膨出部40を形成したことで、高真空CVD法を用いて、液体膨出部40の液表面に保護膜36を積層形成できるので、所定の厚みを有したシート部材を用いない分だけ、小型化、薄型化を図ることができる。
【0103】
さらに、ディスプレイ用マイクロデバイス30では、機械的強度がある保護膜36を用いていることから、衝撃や重力などによって保護膜36で被覆した液体膨出部40が変形してしまうことを防止できるので、設置角度に係わらず液体膨出部40を基板34の一面側又は他面側へ正確に移動させることができ、かくして基板から発する光L3を光L4又は光L5に適宜調整できる。また、保護膜36は、液体膨出部40を押圧する動作を繰り返しても、その衝撃で破損することなく、基板34から発する光L3を安定して光L4又は光L5に適宜調整できる信頼性の高いディスプレイ用マイクロデバイス30を提供し得る。
【0104】
なお、この実施の形態の場合には、一面を照射面として機能させて一面から外方へ光を照射する基板34を適用したが、本発明はこれに限らず、一面を反射面として機能させて外方からの光を一面で反射させる基板を適用しても良い。この場合、例えば図19(A)及び(B)においては、液体膨出部40を透過させて光が反射するディスプレイ用マイクロデバイス30と、液体膨出部40を透過させずに光が反射するディスプレイ用マイクロデバイス30とに、各ディスプレイ用マイクロデバイス30を適宜個別に制御することにより、全体として反射型の液体移動式ディスプレイ装置を構成することができる。
【0105】
(3)他の実施の形態
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、種々の変形実施が可能である。例えば光色等を変更できる蛍光ビーズや量子ドット等この他種々の光変更部材を、ディスプレイ用マイクロデバイス1の液体膨出部12内や、ディスプレイ用マイクロデバイス30の液体膨出部40内に入れても良い。
【0106】
さらに、図11(B)との対応部分に同一符号を付して示す図21のデバイス本体50のように、ITO電極11の外周領域にも撥油膜51を設け、ITO電極11の表面を撥油膜51の表面よりも低く形成するようにしても良い。
【0107】
この場合、基板10におけるITO電極11では、撥油膜51にとり囲まれた窪み部分が載置領域52となることから、窪んだ分だけ載置領域52のみにシリコンオイルを一段と容易に載置させることができる。
【0108】
実際上、パターニングされたアルミニウム膜をマスクとして、撥油膜51をプラズマエツチングし、図22(A)に示すように、ITO電極11の外周領域を除いて中央領域のみを露出させた載置領域52を形成し、当該ITO電極11の外周領域を撥油膜51で被覆する。
【0109】
これにより、図22(B)に示すように、載置領域52に滴下した所定量のシリコンオイルを、スピンコート法により各載置領域52から余分なシリコンオイルを省いて均一な液量とする際、撥油膜51がとり囲んだ窪んだ各載置領域52にシリコンオイルが留まり易くなり、各載置領域52に液体膨出部12を容易に形成できる。
【0110】
さらに、上述したデバイス本体2の実施の形態においては、透明電極部材からなる第1の電極及び第2の電極として、ITO電極4と、金膜からなる電極14とを適用するようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、種々の透明電極部材からなる第1の電極及び第2の電極を適用するようにしても良い。
【0111】
さらに、上述した実施の形態においては、透明基板部材からなる基板として、透明で硬質なガラス部材からなる基板10、34を適用するようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、フレキシブル構造を有する透明基板部材等この他種々の基板部材からなる基板を適用するようにしても良い。例えば、基板34については、ポリイミド基板の上にITO電極、有機EL(有機エレクトロルミネッセンス)層、アルミ薄膜電極を形成したもので良い。この場合、有機EL層が発光し、アルミ電極が反射膜となりポリイミド基板側から光が出射される。アルミ電極を薄くし、基板両面から光が出射されるようにもできる。ポリイミド基板は柔軟性があるため、フレキシブルなディスプレイ装置が実現できる。
【0112】
さらに、上述した実施の形態においては、保護膜として、ポリパラキシリレンからなる保護膜13,36を適用するようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、絶縁性、光透過性、柔軟性があり、かつ常温から200度程度の温度でCVD蒸着できる材料により形成された保護膜であれば良い。
【0113】
さらに、上述した実施の形態においては、CVD法として、高真空CVD法を適用するようにした場合について述べたが本発明はこれに限らず、熱CVD法や光CVD法、プラズマCVD法等この他種々のCVD法を適用するようにしても良い。
【0114】
さらに、上述した実施の形態において、液体として、主としてシリコンオイルを適用するようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、流動パラフィンやグリセリン等のように室温での蒸気圧が0.1[Torr]より低い液体であればこの他種々の液体を適用するようにしても良い。要はCVD法による薄膜形成処理の際に蒸発せずに残る液体であれば良い。
【0115】
なお、ここで液体は、室温での蒸気圧が0.1[Torr]より高いと、CVD法による薄膜形成処理の際に蒸発量が多くなる。従って液体は、CVD法による薄膜形成処理の際に蒸発せずに残るように、室温での蒸気圧が0.1[Torr]より低いことが好ましい。
【0116】
さらに、上述した実施の形態において、液体の表面張力によって基板10、34上から膨出した液体膨出部12、40を形成するようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、基板上に支持部でとり囲んだ領域を形成し、当該領域に液体を入れて支持部によって液体を基板10、34上から膨出させて、液体膨出部を形成するようにしても良い。
【0117】
さらに、上述した実施の形態において、撥油性が高い薄膜としての撥油膜を形成する材料として、サイトップ(登録商標)やC、自己組織化単分子膜(Self-assembled Monolayer:SAM)等この他種々の材料を用いても良い。
【0118】
なお、上述した液体移動式ディスプレイ装置の実施の形態において、基板34の一面を光が発する照射面とした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、基板34の他面や、当該基板34の一面及び他面の両面を光が発する照射面あるいは反射面としても良い。
【図面の簡単な説明】
【0119】
【図1】光拡散式ディスプレイ装置におけるディスプレイ用マイクロデバイスの構成を示す概略図である。
【図2】複数設けられたディスプレイ用マイクロデバイスの動作の様子を示す概略図である。
【図3】本発明によるディスプレイ用マイクロデバイスの一部を分解した構成を示す概略図である。
【図4】ITO電極と電極との電気的な接続の様子を示す概略図である。
【図5】デバイス本体の製造手順(1)を示す概略図である。
【図6】デバイス本体の製造手順(2)を示す概略図である。
【図7】デバイス本体の製造手順(3)を示す概略図である。
【図8】デバイス本体の製造手順(4)を示す概略図である。
【図9】液体膨出部に保護膜を成膜していない基板を傾斜させたときの様子を示す概略図である。
【図10】液体膨出部に保護膜を成膜した基板を傾斜させたときの様子を示す概略図である。
【図11】デバイス本体の製造手順(5)を示す概略図である。
【図12】載置領域及び非載置領域の配置関係を示す概略図である。
【図13】スピンコート法の説明に供する概略図である。
【図14】液体膨出部の断面図、液体膨出部の製作に用いられる液体と保護膜になる表面処理素材との接触角、液体膨出部の角度、液体膨出部の製作に用いられる液体と基板との接触角の説明に供する概略図である。
【図15】スピンコート角速度及び液滴厚さの関係を示すグラフである。
【図16】液体膨出部の底部から頂部までの距離と、保護膜及び電極の膜厚とが異なる3種類のデバイス本体の説明に供する概略図と、表である。
【図17】印加電圧と、変形率との関係を示すグラフである。
【図18】液体移動式ディスプレイ装置におけるディスプレイ用マイクロデバイスの構成を示す概略図である。
【図19】複数設けられた他のディスプレイ用マイクロデバイスの動作の様子を示す概略図である。
【図20】液体移動式ディスプレイ装置におけるディスプレイ用マイクロデバイスの一部製造手順を示す概略図である。
【図21】他の実施の形態によるデバイス本体の構成を示す概略図である。
【図22】他の実施の形態によるITO電極と撥油膜との構成と、液体膨出部を形成したときの構成を示す概略図である。
【符号の説明】
【0120】
1,30 ディスプレイ用マイクロデバイス
10,34 基板
11 ITO電極(第1の電極)
12,40 液体膨出部
13,36 保護膜
14 電極(第2の電極)
19 撥油膜(薄膜)
35a 照射側ITO電極(第1の電極)
35b 非照射側ITO電極(第3の電極)
37 照射側電極(第2の電極)
38 非照射側電極(第4の電極)
41 貫通孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一面に第1の電極を備えた基板と、
CVD(Chemical Vapor Deposition)法による薄膜形成処理の際に蒸発せずに残る液体からなり、表面張力又は支持部によって前記基板の一面上から膨出した液体膨出部と、
前記CVD法によって前記液体膨出部の液表面に積層形成された保護膜と、
前記保護膜の表面に形成された第2の電極とを備え、
前記第1の電極及び前記第2の電極間に電圧を印加することにより静電気力が発生し、該静電気力により前記保護膜を変形させることで、所定方向からの光を前記液体膨出部に透過させる
ことを特徴とするディスプレイ用マイクロデバイス。
【請求項2】
前記光が発光部本体内に照射される発光部を備え、
前記静電気力によって前記第2の電極が前記発光部本体に接触し、前記発光部本体内に照射されている光が前記発光部本体と前記第2の電極との接触箇所から前記液体膨出部に導かれる
ことを特徴とする請求項1記載のディスプレイ用マイクロデバイス。
【請求項3】
前記基板の他面に設けられ、前記CVD法によって表面に前記保護膜が積層形成された第3の電極と、
前記基板の他面側における前記保護膜の表面に形成された第4の電極と、
前記基板、前記第1の電極及び前記第3の電極を貫通した貫通孔とを備え、
前記基板は一面又は他面のいずれかを照射面あるいは反射面として前記光を外方へ発しており、
記基板の一面に形成された前記液体膨出部は、前記第1の電極及び前記第2の電極間の電圧変化と、前記第3の電極及び前記第4の電極間の電圧変化とに応じて発生する前記静電気力により、前記貫通孔を通過して前記基板の他面へ移動する
ことを特徴とする請求項1記載のディスプレイ用マイクロデバイス。
【請求項4】
前記液体がシリコンオイルである
ことを特徴とする請求項1〜3のうちいずれか1項記載のディスプレイ用マイクロデバイス。
【請求項5】
前記液体が載置される載置領域以外の非載置領域の表面には、前記載置領域より撥油性が高い薄膜が形成されている
ことを特徴とする請求項1〜4のうちいずれか1項記載のディスプレイ用マイクロデバイス。
【請求項6】
前記第1の電極及び前記第2の電極が透明電極部材からなり、前記基板が透明基板部材からなり、前記保護膜が透明薄膜部材からなる
ことを特徴とする請求項1〜5のうちいずれか1項記載のディスプレイ用マイクロデバイス。
【請求項7】
前記保護膜はポリパラキシリレンにより形成されている
ことを特徴とする請求項1〜6のうちいずれか1項記載のディスプレイ用マイクロデバイス。

【図3】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図11】
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【図17】
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【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図9】
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【図10】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公開番号】特開2008−310126(P2008−310126A)
【公開日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−158685(P2007−158685)
【出願日】平成19年6月15日(2007.6.15)
【出願人】(504137912)国立大学法人 東京大学 (1,942)
【Fターム(参考)】