説明

ディスプレイ用基板

【課題】 低熱膨張性・平坦性・絶縁性・薄型・軽量・フレキシブル性・耐衝撃性・配線加工性を兼ね備えたディスプレイ用基板を提供する。
【解決手段】 金属薄板上に樹脂層及び配線密着層を有するディスプレイ用基板である。好ましくは、前記配線密着層の表面粗さは、Ry:1.0μm以下、Ra:0.1μm以下であるディスプレイ用基板であり、更に好ましくは、配線密着層は二酸化珪素または窒化珪素からなるディスプレイ用基板であり、更に好ましくは、前記樹脂層は、ガラス転移温度が150℃以上、熱膨張係数が60×10−6/℃以下、厚みが2〜500μmであるディスプレイ用基板である。
好ましくは、本発明で用いる好ましい金属薄板は鉄−ニッケル系合金であり、20〜300℃迄の熱膨張係数が11×10−6/℃以下、厚みは20〜500μmであるディスプレイ用基板である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディスプレイ用基板に関するものであり、特に、電子ペーパー、フレキシブルディスプレイ、液晶ディスプレイ(以下LCDと略記する)、有機EL、プラズマディスプレイ、フィールドエミッションディスプレイ等の所謂ブラウン管を用いない方式を採用した表示装置に利用されるディスプレイ用基板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ブラウン管を用いない薄型の表示装置に用いられるディスプレイ用基板として、ガラス、プラスチックまたは金属薄板を用いるものが知られている。LCDや有機ELに代表されるディスプレイの駆動方式は、導線を格子状に配置した単純マトリクス方式と薄膜トランジスタ(以下TFTと略記する)をスイッチング素子としたアクティブマトリクス方式があり、後者の方がコントラストが高く、反応速度が速い。
このTFTは高い寸法精度で電極材料・絶縁膜・アモルファスシリコンを高温で繰り返し積層し、フォトエッチングにより形成する。このとき基板と積層膜の熱膨張差が大きい場合、基板が歪み寸法精度が低下するといった問題があるため基板には低熱膨張性が求められる。
【0003】
また、基板表面に大きな凹凸があると、リーク電流の増加や駆動回路の断線が起こる惧れがあり、従って基板には平坦性が要求される。更に、基板上には駆動回路を形成するため絶縁性を有する必要があり、ディスプレイの高精細化に伴い配線の微細化が必要になるため、配線加工性も要求される。
これらの低熱膨張性・平坦性・絶縁性・配線加工性の4つの特性を兼ね備えた材料の一つがガラスであり、ディスプレイ用基板として広く普及している。
【0004】
しかし、ディスプレイを携帯する需要が増加し、落下などの衝撃に耐え得る耐衝撃性や薄型・軽量・フレキシブル性が要求されるようになり、ガラスに取って代わるディスプレイ用基板の検討が急務となっており、このような携帯性に優れた基板は、付加的に薄型・軽量・フレキシブル性・耐衝撃性の4つの特性を兼ね備えたものが求められる。
例えばディスプレイ用基板として、ベースフィルム上に紫外線硬化性樹脂を形成したプラスチック基板(特許文献1参照)が提案されている。
この他、金属薄板上に絶縁層を設けた基板(非特許文献1参照)が提案されている。これらの基板は薄型・軽量・フレキシブル性・耐衝撃性という点で優れたものである。
【0005】
【特許文献1】特開2003−222840号公報
【非特許文献1】IEEE ELECTRON DEVICE LETTERS,VOL.18、NO.12,DECEMBER 1997
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した従来技術のうちガラス基板を用いるものでは、薄くすると割れ易いと言った欠点があり、薄型・軽量・耐衝撃性・フレキシブル性を確保することは困難である。
特許文献1に開示されるディスプレイ用基板は、紫外線硬化性樹脂をベースフィルム上に積層し、平滑面を密着させた状態で硬化することにより、高い表面平滑性を有するプラスチック基板である。
しかし、上述のプラスチック基板は携帯性に必要な4つの特性には優れているものの、ガラス基板の持つ配線加工性に欠けている。このことは駆動回路、微細な配線パターンを形成できない惧れがあり、TFTの形成や、ディスプレイを高精細化する上で困難になる。
【0007】
また、非特許文献1に開示されるディスプレイ用基板は、ステンレス上に絶縁性の無機膜を蒸着することにより絶縁層を設けたものである。この方法は、無機膜に窒化珪素を用いることで絶縁性と配線密着性の両方を確保できるが、絶縁層の表面粗さは金属薄板に追随するため平坦性を確保し難い上、金属薄板を電気的に絶縁するには厚膜にする必要があるためコストが高くなると言った問題がある。
本発明の目的は、安価である樹脂層を設け平坦化・絶縁することにより無機膜を薄膜化し、更に配線加工性を具備したガラス基板の持つ4つの特性および携帯性に必要な4つの特性をあわせ持つディスプレイ用基板を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上述した問題に鑑みてなされたものであり、ディスプレイ用基板に要求されるの問題を検討した結果、低熱膨張性を有する金属薄板上に樹脂層を形成し、その上に配線密着層を設けた構造を採用することでこの問題を解決できることを見出し本発明に到達した。
即ち本発明は、金属薄板上に樹脂層が形成され、該樹脂層上に配線密着層を有するディスプレイ用基板である。
好ましくは、前記配線密着層の表面粗さは、Ry:1.0μm以下、Ra:0.1μm以下であるディスプレイ用基板である。
更に好ましくは、配線密着層は二酸化珪素または窒化珪素からなるディスプレイ用基板である。
更に好ましくは、前記樹脂層は、ガラス転移温度が150℃以上、熱膨張係数が60×10−6/℃以下、厚みが2〜500μmであるディスプレイ用基板である。
【0009】
好ましくは、本発明で用いる好ましい金属薄板は鉄−ニッケル系合金であり、20〜300℃迄の熱膨張係数が11×10−6/℃以下、厚みは20〜500μmであるディスプレイ用基板である。
また、上述の金属薄板は粗化処理した金属薄板であって、表面粗さは、Ry:6〜35μm、Ra:0.15〜3.0μmであるか、或いは、上記の金属薄板は金属薄板上にクロムまたはクロム系合金からなる樹脂密着層を設けたディスプレイ用基板である。
【発明の効果】
【0010】
本発明のディスプレイ用基板は、ガラス基板の持つ4つの特性および携帯性に必要な4つの特性をあわせ持ち、特に配線加工性に優れているため、これを用いて成るディスプレイは高精細かつ携帯性に優れたものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
上述したように、本発明の重要な特徴は金属薄板を用いた上で、金属薄板上に樹脂層及び配線密着層を有する構成を採用したことにある。
以下に本発明を詳しく説明する。
本発明で金属基板を用いた理由は、金属は構成元素と組成によって熱膨張率を調節できることから、所望の熱膨張特性に合わせた材質の選定の自由度が高く、塑性加工によって薄くし易く、重量も軽量であること、薄くするとフレキシブル性を有すること、衝撃に強いことなど、薄型・軽量・耐衝撃性・フレキシブル性、低熱膨張性を確保するのに最適であり、シートディスプレイ用基板として適した材料である。そのため、本発明では金属材料を基板として用いた。
なお、金属薄板の表面粗さについては、例えばRy:5μm以下、Ra:0.12μm以下に調整して、極力平坦としたものを用いても良いし、樹脂層との密着力を考慮して故意に粗くしても良い。この故意に粗くする方法については後に詳しく説明する。
【0012】
そして、本発明では上述の金属薄板上に平坦性と絶縁性を確保する目的で樹脂層を形成する。
樹脂層は、例えばトランジスタの絶縁膜は2×10V/cmまでの電界強度が求められるため、樹脂層により金属基板の表面の凹凸を平坦とすることで、リーク電流の増加を抑制し、微細配線(駆動回路)の形成を容易にすることができる。なお、好ましい樹脂層の特性や厚みについては後に詳しく述べるが、例えば厚みは、金属基板の表面粗さに応じて厚みを変化させるのも良く、同時に樹脂層の材質を金属薄板の粗さに応じて選択すると良い。
何れの方法においても、配線密着層の平坦度が保てる範囲で、樹脂層が過度に厚くならないように金属薄板の表面粗さを考慮して形成すればよいが、駆動回路の容量成分を考慮し、表示の書き換え時間に影響を及ぼさないようにするためには樹脂層の厚みは2μm以上とし、基板の薄型化・軽量化を考えると厚さは2〜50μmであることが好ましい。
【0013】
また、本発明では上記の樹脂層上に配線加工性の確保を目的として、配線密着層を設ける。
これは、特許文献1のように配線を樹脂層上に直接形成した場合、密着不良により配線層が剥離し、微細な配線パターンを加工できなくなるためである。
配線密着層の好ましい材質については後述するが、その厚みについては過度に厚くする必要は無く、50〜300nm程度で十分である。
本発明では、以上の構成によりガラス基板の持つ4つの特性および携帯性に必要な4つの特性をあわせ持ち、更に優れた配線加工性を付与することができる。
【0014】
以下に、本発明で規定する好ましい構成について説明する。
上記の配線密着層の形成方法としては、例えばスパッタ法とゾルゲル法と言った方法で形成することができるが、配線密着層の形成速度や、均一で均質な配線密着層とするためにはプラズマCVDにより樹脂層上に形成するのが良い。
なお、配線密着層の表面粗さは樹脂層のそれに反映する場合が多く、配線密着層の表面粗さは、Ry:1.0μm以下、Ra:0.1μm以下であることが好ましい。この範囲内であればより確実にリーク電流の増加を抑制し、微細配線(駆動回路)の形成を容易にすることができる。より好ましくは、Ry:0.5μm以下、Ra:0.06μm以下である。
【0015】
上述した配線密着層は二酸化珪素または窒化珪素を用いることが好ましい。
この理由は、二酸化珪素または窒化珪素は、例えば配線材料であるクロムモリブデンとの密着力が強く、低熱膨張性であり、絶縁性にも優れているからである。密着層の厚みは特に規定しないが、原料コストのことを考慮すると50〜300nmであることが好ましい。
この二酸化珪素または窒化珪素の形成方法としては、上述の通りプラズマCVDにより形成すればよい。
【0016】
ディスプレイ用基板のうち、例えばTFTにおいては、その製造プロセス上、150〜300℃に加熱されることから、150℃以上のガラス転移温度を有する樹脂を選定するのが好ましい。
ガラス転移温度が低い樹脂を用いた場合、成膜プロセスの加熱により軟化、分解し、膜中に不純物が混入する惧れがある。
また熱膨張係数の大きい樹脂を用いた場合では、金属薄板との熱膨張の違いにより反りが発生しやすい。そのため、用いる樹脂は、ガラス転移温度が150℃以上、熱膨張係数が60×10−6/℃以下の樹脂であることが好ましい。
【0017】
本発明で用いる金属薄板は鉄−ニッケル系合金であることが好ましい。低熱膨張性を有する材料には、例えばタングステン、モリブデン、タンタルなどの金属があるが、薄型化し易いことや、入手のし易さなどを考えると、安価な鉄−ニッケル系合金を用いるのが良い。
なお、本発明で言う鉄−ニッケル合金とは、例えば鉄−36質量%ニッケル合金、鉄−42質量%ニッケル合金、鉄−47質量%ニッケル合金、鉄−50質量%ニッケル合金の他、鉄−31質量%ニッケル−5質量%コバルト合金、鉄−29質量%ニッケル−17質量%コバルト合金等の鉄−ニッケル−コバルト系合金や、鉄−42質量%ニッケル−6質量%クロム合金等の鉄−ニッケル−クロム系合金等、鉄とニッケルとを主成分とする合金を指す。
さらにはこれらの合金に強度を向上させる元素を適宜添加した合金を、金属薄板の素材として用いても良い。
【0018】
また、金属薄板は従来のディスプレイ用基板として用いられているガラス基板と同等の熱膨張特性を有する材料を用いることが好ましい。
上述したようにディスプレイの製造プロセス上150℃〜300℃に加熱されるため熱膨張の大きな材料を用いた場合、例えばTFTの寸法精度が悪くなりディスプレイの高精彩化は難しくなる場合がある。
また、用いられるガラスの種類によっても熱膨張特性(特に熱膨張係数)は若干異なるが、低熱膨張性が求められるため20℃〜300℃までの熱膨張係数が11×10−6/℃以下と規定する。好ましくは2〜6×10−6/℃の範囲である。
また、金属薄板の厚みとしては、軽量化、薄型化のためには薄いほど好ましい。しかし、薄すぎる場合、曲げ強度が低いため搬送・保持でき難くなること、および圧延の精度の問題や工数の増大によるコスト上昇が発生することから、厚みは20〜500μmであることが好ましい。
【0019】
本発明において、金属薄板と樹脂層との密着力が十分でない場合において、密着力を向上させる好ましい方法が2つある。
その第1は、金属薄板の樹脂層と接する面を粗化処理する方法である。しかし、この場合、表面が粗れ過ぎると樹脂層で平坦とするのが困難になる場合があったり、過度に樹脂層の厚みが厚くなったりするため、表面粗さはRy:6〜35μm、Ra:0.15〜3.0μmであることが好ましい。
【0020】
この粗化処理の方法としては、例えば浸漬揺動処理と言った方法で行うと良い。
第2の方法としては、金属薄板上に樹脂密着層を設けてもよい。樹脂密着層としては、一般的に樹脂と密着力の強いクロムまたはクロム系合金を用いるのが好ましい。このクロムまたはクロム系合金を形成させることで密着力を向上させることができる。
この時の厚さは20〜120nm程度であれば良く、本発明で言うクロム系合金とはクロムを主成分とした合金であればよく、代表的なものとしてクロムモリブデン合金がある。そして、これらのクロム系合金は例えばスパッタ法と言った方法で金属薄板上に形成させることができる。
【実施例】
【0021】
以下の実施例で本発明を更に詳しく説明する。
(実施例1)
薄型、軽量、耐衝撃性、フレキシブル性、低熱膨張性を確保するため、20〜300℃迄の熱膨張係数が4.3×10−6/℃の熱膨張係数を持った厚さ150μmの鉄−42質量%ニッケル系合金薄板を用意し、アルカリ脱脂液及び希塩酸を用いて洗浄し、本発明となる金属基板Aとした。また、比較例のために前記金属薄板Aと同じ物である金属薄板Bを採取した。
次に金属薄板A、Bに対して平坦性と絶縁性を確保するための樹脂層を形成した。まずポリイミドワニスをスピンコーターを用いて塗布し、大気中140℃で60分間予備乾燥し、更に250℃で30分、350℃で60分間乾燥することにより硬化を行い樹脂層を形成した。なお用いたポリイミドワニスのガラス転移温度は400℃、熱膨張係数は5×10−6/℃であった。
この樹脂層の厚みをレーザー顕微鏡で測定したところ、金属薄板A、Bは何れも10.6μmであった。
なお、金属薄板Bは、この時点でディスプレイ用基板Bとした。
【0022】
金属薄板Aには樹脂層上にプラズマCVD法で、窒化珪素を蒸着して配線密着層を形成し、配線加工性を確保して本発明のディスプレイ用基板Aとした。なお配線密着層の厚みは300nmとした。
配線密着層を形成したディスプレイ用基板Aの表面粗さ(配線密着層の表面粗さ)を725×635μmの範囲で干渉型レーザー顕微鏡を用いて測定した結果、Ry:0.429μm、Ra:0.057μmであった。
【0023】
上述したディスプレイ用基板A、Bを用いて、それぞれのディスプレイ用基板上に厚さ120μmのクロムモリブデン配線層をスパッタ法により形成し、フォトエッチングにより配線パターンを形成すると、本発明の金属薄板Aを用いたディスプレイ用基板では2μmのライン/スペースまで加工可能であり、精細度300ppiでTFTを形成した結果正常に作動した。
一方、金属基板Bを用いたディスプレイ用基板ではフォトエッチングにより配線パターンを形成すると、ライン/スペースの最小加工寸法は50μmであった。これは、配線密着層が形成されてないため配線加工性に劣る結果となり、精細度300ppiでTFTを形成したが作動しなかった。
【0024】
(実施例2)
薄型、軽量、耐衝撃性、フレキシブル性、低熱膨張性を確保するため、20〜300℃迄の熱膨張係数が4.3×10−6/℃の熱膨張係数を持った厚さ150μmの鉄−42質量%ニッケル系合金薄板を用意し、アルカリ脱脂液及び希塩酸を用いて洗浄し、本発明となる金属薄板Cとした。
上記の金属薄板Cを用いて、樹脂層を形成する面を浸漬揺動処理により粗化して、これを金属薄板Dとした。更に前記の金属薄板Cを用いて、樹脂密着層となるクロムモリブデン合金をスパッタ法で形成し、これを金属薄板Eとした。なお、クロムモリブデン合金の樹脂密着層の厚さは120μmであった。
金属薄板C及び金属薄板Dについては、樹脂層を形成する面の表面粗さを測定した。結果を表1に示す。
【0025】
【表1】

【0026】
次に金属薄板C、D、Eに対して平坦性と絶縁性を確保するための樹脂層を形成した。まず紫外線硬化型樹脂のワニスをスピンコーターを用いて塗布し、大気中、100℃で5分間加熱することにより予備乾燥させた。その後、1500mJ/cmで紫外線を照射することにより硬化した後、大気中、230℃で30分間乾燥し、樹脂層を形成した。
なお、用いた紫外線硬化型樹脂のガラス転移温度は230℃、熱膨張係数は60×10−6/℃であった。
この樹脂層の厚みをレーザー顕微鏡で測定したところ、何れも8.6μmであった。なお、金属薄板Cは、この時点でディスプレイ用基板Cとした。
【0027】
次に上記金属薄板D、Eの樹脂層上にプラズマCVD法で、窒化珪素を蒸着して配線密着層を形成し、配線加工性を確保して本発明のディスプレイ用基板D、Eとした。なお配線密着層の厚みは何れも300nmとした。
配線密着層を形成したディスプレイ用基板D、Eの表面粗さ(配線密着層の表面粗さ)を725×635μmの範囲で干渉型レーザー顕微鏡を用いて測定した結果を表2に示す。
また、上記の樹脂層と金属薄板との密着力を碁盤目テープ法(JIS K 5400に準ずる)により測定した。結果を表3に示す。
【0028】
【表2】

【0029】
【表3】

【0030】
上述したディスプレイ用基板D、Eを用いて、それぞれのディスプレイ用基板上に厚さ120μmのクロムモリブデン合金製の配線層をスパッタ法により形成し、フォトエッチングにより配線パターンを形成すると、本発明の金属薄板D、Eを用いたディスプレイ用基板では2μmのライン/スペースまで加工可能であり、精細度300ppiでTFTを形成した結果正常に作動した。
一方、金属基板Cを用いたディスプレイ用基板ではフォトエッチングにより配線パターンを形成すると、ライン/スペースの最小加工寸法は20μmであった。これは、配線密着層が形成されないため、配線加工性に劣る結果となり、精細度300ppiでTFTを形成したが作動しなかった。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明を用いることにより、低熱膨張性・平坦性・絶縁性・薄型・軽量・フレキシブル性・耐衝撃性・配線密着性を兼ね備えたディスプレイ用基板が得られるため、今後需要の増大が予想される携帯用ディスプレイにとって、欠くことのできない技術となる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属薄板上に樹脂層が形成され、該樹脂層上に配線密着層を有することを特徴とするディスプレイ用基板。
【請求項2】
前記配線密着層の表面粗さは、Ry:1.0μm以下、Ra:0.1μm以下であることを特徴とする請求項1に記載のディスプレイ用基板。
【請求項3】
配線密着層は二酸化珪素または窒化珪素からなることを特徴とする請求項1または2に記載のディスプレイ用基板。
【請求項4】
前記樹脂層は、ガラス転移温度が150℃以上、熱膨張係数が60×10−6/℃以下、厚みが2〜50μmであることを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載のディスプレイ用基板。
【請求項5】
前記金属薄板は鉄−ニッケル系合金であり、20〜300℃迄の熱膨張係数が11×10−6/℃以下、厚みは20〜500μmであることを特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載のディスプレイ用基板。
【請求項6】
請求項1乃至5の何れかに記載の金属薄板は粗化処理した金属薄板であって、表面粗さは、Ry:6〜35μm、Ra:0.15〜3.0μmであることを特徴とするディスプレイ用基板。
【請求項7】
請求項1乃至5の何れかに記載の金属薄板は金属薄板上にクロムまたはクロム系合金からなる樹脂密着層を設けたことを特徴とするディスプレイ用基板。

【公開番号】特開2006−3775(P2006−3775A)
【公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−182264(P2004−182264)
【出願日】平成16年6月21日(2004.6.21)
【出願人】(000005083)日立金属株式会社 (2,051)
【Fターム(参考)】