説明

ディーゼル組成物及びその作製法

(1)イオウ含量は10ppm未満、(2)引火点は50℃超、
(3)式
=A+10(A
[式中、Aは272ナノメートルでのUV吸光度であり、Aは310ナノメートルでのUV吸光度である。]によって求められるUV吸光度、Aは1.5未満、(4)ナフテン含量は5%超、(5)曇り点は−12℃未満、(6)窒素含量は10ppm未満、及び(7)5%蒸留点は300F超で、95%蒸留点は600F超である、ディーゼル燃料組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2008年6月19日に出願された親出願第12/142,229号の一部継続出願である。
【0002】
本発明は、石油由来の高品質ディーゼル燃料組成物及びその作製法に関する。
【背景技術】
【0003】
超低イオウディーゼル(ULSD)を含めての未燃ディーゼル燃料は、臭気が強い。ディーゼルに伴うことが多いこの臭気は不快であり、消費者がディーゼル車を購入するのを抑制する恐れがある。詳細には、特に手又は衣服にこぼれた場合、ディーゼル燃料の悪臭が長く続く恐れがある。また、ガレージ、地下室、倉庫又は家屋内に収容した装置に貯蔵されたディーゼル燃料は、その装置又は燃料を屋内に貯蔵することが望ましくないとみなされる場合がある臭気を放出する恐れがある。
【0004】
ディーゼルを利用する車両からの排ガスもまた、比較的多量であり、政府の規制を満足するために広範な後処理技術を必要とする。広範な後処理技術を備えていないより古い車両は、本発明の高品質無臭ディーゼル生成物を用いて排出ガスをより低減すべきである。
【0005】
数種の因子がディーゼル燃料の臭気の元である。その因子の一部のみを除去しても、依然として臭気が許容できないディーゼル燃料をもたらす場合がある。その因子の大部分又は全部を理解し制御することが真に低濃度の臭気又は無臭である燃料を達成するのに必要である。他の重要な考慮すべき点は、臭気の原因成分を有望な燃料から除去すると、燃料として要求される規格を必ずしもすべてもはや満たせない恐れがあることである。因子を注意深くバランスさせることによってのみ、臭気も低く、ディーゼル燃料規格も満足する燃料を製造することができる。
【0006】
ディーゼル燃料の臭気を低減又は除外するいくつかの重要な因子は、芳香族含量を調整すること、揮発性で低沸点の化合物の量を調整すること、及びディーゼル燃料中のイオウ及び他のヘテロ原子の量を制御することであることが発見された。
【0007】
関連技術の説明
Murakamiらの米国特許第5730762号には、芳香族環上にアルキル側鎖を備え、またアルキル側鎖と一緒にヘテロ窒素化合物も備えるイオウ含量が低減したディーゼル燃料が教示されている。この組成物はまた、燃料組成物の成分としてカルバゾール及びインドール化合物も含む。
【0008】
Nikanjamらの米国特許第5389112号には、芳香族含量が低く、セタン価が高いディーゼル燃料が開示されている。燃料中には、本特許に示されたグラフによって規定された最適セタン価をもたらすための制御された量の芳香族が存在する。燃料はまた、セタン向上剤も添加することもできる。組成物はまた、セタン向上剤として硝酸2−エチルヘキシルも含む。
【0009】
Russellの米国特許第5792339号には、燃料中の芳香族化合物量を調整することによって車両からの汚染物質の生成を最小化したディーゼル燃料が開示されている。組成物はまた、5.0〜8.6重量%の多環式芳香族も含む。
【0010】
Hubbardらの米国特許第6096103号には、ディーゼルエンジンにおいてイオウが少なく臭気の低いミネラルスピリットを使用することが教示されている。
【0011】
Hubbardらの米国特許第6291732号には、寒冷気候で使用するためにイオウ含量が低い芳香族ミネラルスピリットと脂肪族ミネラルスピリットのブレンドを含むディーゼル燃料が教示されている。
【0012】
Ellisらの米国特許第6893475号には、イオウ濃度が約100重量ppm未満であり、全芳香族含量が約15〜35重量%であり、多核芳香族含量が約3重量%未満である留出燃料であって、全芳香族の多核芳香族に対する比が約11超である留出燃料が開示されている。
【0013】
当技術分野で低イオウディーゼル燃料及び低排出ディーゼル燃料は公知であるが、イオウ、窒素、芳香族及び揮発性化合物の低減によって臭気が低い又は全くないように具体的に製剤されたディーゼル燃料は新規である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0014】
一実施形態では、本発明は、
(a)イオウ含量は10ppm未満、
(b)引火点(flash point)は50℃超、
(c)式
=A272+10(A310
[式中、A272は272ナノメートルでのUV吸光度であり、A310は310ナノメートルでのUV吸光度である。]によって求められるUV吸光度、Aは1.5未満、
(d)ナフテン含量は5%超、
(e)曇り点は−12℃未満、
(f)窒素含量は10ppm未満、及び
(g)5%蒸留点は300°F超、95%蒸留点は600°F超である、石油由来のディーゼル燃料組成物を対象とする。
【0015】
別の実施形態では、本発明は、
石油由来の燃料組成物を調製するための方法であって、
(a)イオウが少なくとも50ppmであり、芳香族含量が少なくとも25重量%である炭化水素原料を、VI族又は非貴金属のVIII族又はそれらの混合物を含む水素化処理触媒上で反応器系に供給し、それによって水素化処理生成物(hydrotreated product)を生成すること、
(b)水素化処理生成物を少なくとも1つの分離ユニットに供給し、それによってイオウ含量が50重量ppm未満である生成物ストリームを分離すること、
(c)生成物ストリームを貴金属水素化触媒上で水素化反応器系に供給し、それによって水素化生成物(hydrogenated product)を生成すること、及び
(d)水素化生成物を少なくとも1つの分離ユニットに供給し、それによってディーゼル生成物ストリームを生成することであって、ディーゼル生成物ストリームは、芳香族含量が7.5重量%未満、イオウ含量が10ppm未満、引火点が50℃超であることを含む上記方法を対象とする。
【0016】
別の実施形態では、本発明は、
石油由来の燃料組成物を調製するための方法であって、
(a)イオウが少なくとも50ppm、芳香族含量が少なくとも25重量%である炭化水素原料を、VI族元素又は非貴金属のVIII族元素又はそれらの混合物を含む水素化処理触媒上で第1の反応器系に供給し、それによって水素化処理生成物を生成すること、
(b)水素化処理生成物を水素化分解触媒上で第2の反応器系に供給し、それによって水素化分解生成物を生成すること、
(c)水素化分解生成物を少なくとも1つの分離ユニットに供給し、それによって水素化分解生成物を第1の生成物ストリームと第2の生成物ストリームとに分離すること、
(d)触媒を含む少なくとも1つの反応器に第2の生成物ストリームを供給してパラフィンをイソパラフィンに転換し、それによって脱ロウ生成物を生成すること、
(e)水素化触媒を含む少なくとも1つの反応器に脱ロウ生成物を供給して最終水素化し(hydrofinish:水素化仕上げし)、それによって最終水素化生成物を生成すること、
(f)最終水素化生成物を少なくとも1つの分離ユニットに供給し、それによって最終水素化生成物をディーゼル生成物ストリームと少なくとも1つの基油生成物ストリームとに分離することであって、ディーゼル生成物ストリームは、芳香族含量が7.5重量%未満、イオウ含量が10ppm未満、引火点が50℃超であることを含む上記方法を対象とする。
【0017】
別の実施形態では、本発明は、
石油由来の燃料組成物を調製するための方法であって、
(a)高活性卑金属触媒を含む反応器系に炭化水素原料を供給し、それによって炭化水素原料を水素化し、水素化生成物を生成すること、並びに
(b)水素化生成物を少なくとも1つの分離ユニットに供給し、それによって水素化生成物をナフサ生成物ストリーム、ジェット生成物ストリーム及びディーゼル生成物ストリームに分離することであって、ディーゼル生成物ストリームは、芳香族含量が7.5重量%未満、イオウ含量が10ppm未満、引火点が50℃超であることを含む上記方法を対象とする。
【0018】
別の実施形態では、本発明は、
石油由来の燃料組成物を調製するための方法であって、
(a)イオウが100重量ppm未満である炭化水素原料を高活性貴金属触媒上で反応器系に供給し、それによって水素化生成物を生成すること、及び
(b)水素化生成物を少なくとも1つの分離ユニットに供給し、それによってディーゼル生成物ストリームを生成することであって、ディーゼル生成物ストリームは、芳香族含量が7.5重量%未満、イオウ含量が10ppm未満、引火点が50℃超であることを含む上記方法を対象とする。
【0019】
別の実施形態では、本発明は、
内燃エンジンのすすを低減する方法であって、
(a)イオウ含量は10ppm未満、
(b)引火点は50℃超、
(c)式
=A272+10(A310
[式中、A272は272ナノメートルでのUV吸光度であり、A310は310ナノメートルでのUV吸光度である。]によって求められるUV吸光度、Aは1.5未満であり、
(d)ナフテン含量は5%超、
(e)曇り点は−12℃未満、
(f)窒素含量は10ppm未満、及び
(g)5%蒸留点は300°F超、95%蒸留点は600°F超である、石油由来のディーゼル燃料組成物を内燃エンジン内に射出すること、並びに、その燃料組成物を燃焼することを含む上記方法を対象とする。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】図1は、臭気と、芳香族含量と、引火点との間の関係を示す図である。
【図1a】図1aは、Pensky−Marten、ASTM D93によって測定された引火点と、ASTM D2187によって測定された5%初期沸点との間の関係を示す図である。
【図2】図2は、臭気が少ない又は全くないディーゼル燃料組成物を作製する第1の実施形態を示す図である。
【図3】図3は、臭気が少ない又は全くないディーゼル燃料組成物を作製する第2の実施形態を示す図である。
【図4】図4は、臭気が少ない又は全くないディーゼル燃料組成物を作製する第3の実施形態を示す図である。
【図5】図5は、臭気が少ない又は全くないディーゼル燃料組成物を作製する第4の実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明は、多様な改変形態及び代替形態を許容するが、それらの内の特定の実施形態を本明細書で詳細に説明するものである。しかし、特定の実施形態についての本明細書の説明は、開示された特定の形態に本発明を限定するものではなく、反対に、その意図は、添付の特許請求の範囲に規定された本発明の趣旨及び範囲内にある改変形態、等価形態及び代替形態をすべて包含するものであることを理解されたい。
【0022】
定義
HDT−「水素化処理器」を指す。
HDC−「水素化分解器」を指す。
IDW−「脱ロウ」を指す。
MUH2−「補給水素」(“makeup hydrogen”)を指す。
【0023】
水素化/水素化分解触媒はまた、「水素化触媒」又は「水素化分解触媒」とも呼ぶことができる。
【0024】
「供給物」、「原料」又は「原料ストリーム」という用語は、互換的に使用することができる。
【0025】
「ヘテロ原子」という用語は、炭素又は水素でない任意の原子を指す。典型的なヘテロ原子として、限定されないが、窒素、イオウ、リン及び酸素が挙げられる。
【0026】
「UV」という用語は、約10ナノメートル〜約400ナノメートルの範囲の波長の紫外光を指す。
【0027】
元素族の表記法(例えば、VIII族)はすべて、CAS表記法に従う。
【0028】
ディーゼル燃料組成物
本発明の一実施形態は、ディーゼル燃料組成物を対象とする。ディーゼル燃料組成物は、イオウ化合物、窒素化合物、芳香族化合物及び揮発性化合物(軽留分)を含めての多様な化合物を含む。臭気が少ない又は全くないディーゼル燃料を達成するために、ヘテロ原子含有化合物、芳香族含量及び揮発性軽留分を低減する必要があることが発見された。
【0029】
ディーゼル燃料組成物を構成するイオウ化合物の大部分を除去すると、臭気が低減したディーゼル燃料がもたらされる。さらには、ディーゼル燃料組成物がいくつかのイオウ化合物を含む場合、そのディーゼル燃料組成物の臭気が強いか否かは、そのイオウ化合物の種類によって決定されることになる。本発明のディーゼル燃料組成物の全イオウ含量は、10ppm未満、より好ましくは、6ppm未満、最も好ましくは、3ppm未満である。
【0030】
ディーゼル燃料に臭気を付与する恐れがある別の種類のヘテロ原子は、窒素である。窒素含有化合物は、窒素含有置換基を有する脂肪族若しくは芳香族炭化水素などの有機化合物であっても、アンモニウム化合物、硝酸塩及び亜硝酸塩などの無機窒素含有化合物であってもよい。したがって、本発明のディーゼル燃料組成物は、窒素含量が10ppm未満、より好ましくは、5ppm未満、最も好ましくは、1ppm未満であり得る。
【0031】
芳香族化合物は、やはりディーゼル燃料の臭気に影響を与えることが分かった他の化合物である。燃料の芳香族含量を低減させるとやはり燃料の臭気も大きく低減することが発見された。イオウ及び窒素化合物と同様に、燃料中の芳香族化合物種も臭気に影響を与える恐れがあり、一般には、全芳香族濃度が非常に低いディーゼル燃料組成物は、臭気が低減することが判明している。
【0032】
芳香族含量はまた、特定の波長、即ち、272及び310nmでのUV吸光度によって近似することもできる。芳香族化合物は、通常、272ナノメートル(nm)〜310ナノメートル(nm)の範囲の波長を有する紫外(UV)光を吸収する。したがって、A(Atotal)として与えられるUV吸光度の和は、所与のディーゼル燃料の芳香族含量と関係している。本発明者らは、本発明の無臭ディーゼル燃料組成物を得るためには、式
=A272+10(A310
[式中、A272は272nmでのUV吸光度であり、A310は310nmでのUV吸光度である。]
で与えられるAは、約1.5未満、より好ましくは、約1.0未満、最も好ましくは、約0.8未満でなければならないことを発見した。
【0033】
本発明の一実施形態では、燃料の全芳香族化合物含量は、10%未満、好ましくは、7.5%未満、より好ましくは、5%未満、最も好ましくは、2%未満、さらにより好ましくは、1%未満、さらに最も好ましくは、0.5%未満である。芳香族含量は、超臨界流体クロマトグラフィー(SFC)、ASTM D5186を使用して測定された。
【0034】
所与の原料のAを測定することによって、低臭気ディーゼル燃料を生成するためにすべき水素化処理の程度が決定される。
【0035】
臭気が少ないか又は全くない燃料を達成する際に重要又は重大であることが判明したさらなる別の因子は、燃料中の揮発性又は低沸点成分の量である。こうした成分は、ディーゼル燃料範囲の軽留分又は「フロントエンド」と呼ばれる場合が多い。前に列挙した他の成分を低減させるのと組み合わせて、ディーゼル燃料の低沸点成分を低減することによって臭気が少ないか又は全くないディーゼル燃料を取得できることが判明した。ディーゼル燃料のフロントエンドを評価するための1つの有用な手段は、ASTM D2887によって測定される燃料の初期5%沸点及び最終95%沸点を使用することである。本発明では、燃料の初期5%沸点は、300°F超、好ましくは、320°F超、より好ましくは、340°F超、最も好ましくは、375°F超であるべきである。本発明のディーゼル燃料組成物の最終95%沸点は、600°F超、好ましくは、675°F超、より好ましくは、725F超である。ディーゼル燃料の揮発性を評価する別の手段は、沸点である。本発明のディーゼル燃料組成物の沸点範囲は、好ましくは、約300°F〜約730°Fである。
【0036】
本発明のディーゼル燃料組成物の引火点は、ディーゼル規格内の引火点である。引火点は、Pensky−Martinクローズドカップ法によって測定した場合、約50℃超、好ましくは、約55℃超、より好ましくは、約60℃超、さらにより好ましくは、約70℃超、最も好ましくは約75℃超である。
【0037】
曇り点は、ロウなどの固体がディーゼル燃料中で沈殿を開始し、曇り様の外観をもたらす温度より低い温度を表わす。曇り点は、ディーゼル燃料の冷温特性の重要な指標である。本発明のディーゼル燃料は、曇り点が−12℃未満である。
【0038】
本発明のディーゼル燃料組成物は、芳香族化合物が少ないであろう。水素化処理前の原料は、相当量の芳香族種を含む場合がある。例えば、水素化処理前の原料は、少なくとも5%の芳香族を含む場合がある。原料は、少なくとも10%の芳香族を含む場合があるか又は原料は、少なくとも20%の芳香族を含む場合がある。水素化処理中に、芳香族は、水素化脱芳香族反応によって少なくとも部分的にナフテンに転換することができる。本発明に従って、本発明のディーゼル燃料組成物のナフテン含量は、5%超である。ナフテンは、水素化処理中に原料を水素化脱芳香族することから形成することができる、又は本発明のディーゼル燃料組成物が5%超のナフテン含量を有する限り、ナフテンは、水素化処理前の原料中に存在することができる。
【0039】
本発明の一実施形態では、ディーゼル燃料組成物は、イオウ含量が6ppm未満、引火点が60℃以上、窒素含量が10ppm未満、5%蒸留点が300°F超、95%蒸留点が600°F超、曇り点が−12℃未満、ナフテン含量が5%超、Aによって与えられる芳香族含量が1.5未満である。
【0040】
本発明の別の実施形態では、ディーゼル燃料組成物は、イオウ含量が6ppm未満、引火点が60℃以上、窒素含量が10ppm未満、5%蒸留点が300°F超、95%蒸留点が600°F超、曇り点が−12℃未満、ナフテン含量が5%超、Aによって与えられる芳香族含量が1.0未満である。
【0041】
本発明の別の実施形態では、ディーゼル燃料組成物は、イオウ含量が6ppm未満、引火点が60℃以上、窒素含量が10ppm未満、5%蒸留点が300°F超、95%蒸留点が600°F超、曇り点が−12℃未満、ナフテン含量が5%超、Aによって与えられる芳香族含量が0.8未満である。
【0042】
本発明のディーゼル燃料は、上記の特徴に加えて、一部の実施形態では、粘度などの他の特徴を備えることができる。粘度は、ディーゼル燃料の流動抵抗の指標であり、ディーゼル燃料油の温度が上昇するにつれて減少することになる。ディーゼル燃料が、例えば、ディーゼルエンジンで使用される場合、ディーゼル燃料の粘度は、作動の最低温度で自由に流動するのに十分な程度低く、しかもエンジン中の任意の可動部分に対して潤滑性を与えるのに十分な程度高くなければならない。粘度はまた、燃料射出スプレーの噴霧特性及び侵入特性(atomization and penetration qualities)を支配する燃料滴の大きさを決めることになる。一実施形態では、本発明のディーゼル燃料は、ASTM D445−64で測定した場合、40℃の粘度が4.1mm/cSt未満であってよい。
【0043】
本発明のディーゼル燃料は、一部の実施形態では、ASTM D4868によって測定される正味の燃焼熱(net heat of combustion)など他の特徴を備えることができる。本発明のディーゼル燃料は、正味の燃焼熱が、好ましくは、18,000Btu/lb超、より好ましくは、18,500Btu/lb超であろう。粘度及び正味の燃焼熱は、本発明のディーゼル燃料組成物の一部の実施形態の特徴を説明するものであることに留意されたい。本発明のディーゼル燃料組成物の実施形態がすべて、1つ又は複数のこうした物理的特徴を有する必要はない。さらには、好ましい範囲の外側の物理的特徴も依然として本明細書に記載され特許請求された本発明の範囲内である。
【0044】
所望であれば、本発明のディーゼル燃料組成物は、ディーゼル燃料組成物の潤滑性を改良するための添加剤を含むことができる。例えば、ディーゼルエンジンで使用される場合、一部のディーゼル燃料、特に、低イオウ含量の燃料は、エンジンの磨耗に対する保護性が限定されている。射出針(injector needle)の容器の表面をこするように接触するので、磨耗は射出針に発生する。また、内部ギア及びカムなど燃料ポンプの多様な部材が、燃料関連の問題のために、磨耗にさらされる。一部の実施形態では、ディーゼル燃料の潤滑性を増加させるために、1つ又は複数の潤滑向上剤をディーゼル燃料と混合する場合がある。通常、燃料中の潤滑向上剤の濃度は、約1〜約50,000ppm、好ましくは、約10〜約20,000ppm、より好ましくは、約25〜約10,000ppmの範囲に入る。任意の潤滑向上剤を使用することができる。こうした潤滑向上剤として、限定されないが、脂肪アルコール、脂肪酸、アミン、エトキシル化アミン、ホウ酸化エステル、他のエステル、ホスフェート、ホスファイト、ホスホネート及びそれらの混合物が挙げられる。
【0045】
ディーゼル燃料組成物の作製法
本明細書で議論するように、数種の水素化処理又は水素化又は双方の方法(一般には、水素化転換法)は、臭気が少ないか又は全くないディーゼル組成物を生成するために用いることができる。適切な水素化転換法は、炭化水素原料の芳香族含量に基づいて決定される。
【0046】
一実施形態では、水素化処理触媒(卑金属)と水素化触媒(貴金属)双方を用いることによって、本明細書で上記したディーゼル組成物を生成させる。
【0047】
イオウが少なくとも50ppm、芳香族含量が少なくとも25重量%である炭化水素原料を水素化処理触媒上で水素化処理器に供給することによって、水素化処理生成物を生成する。
【0048】
水素化処理触媒は、多量のイオウ、窒素及び/又は芳香族含有分子を含む原料の水素化転換に適している。かかる触媒は、一般に、非貴金属VIII族(CAS表記法)から選択される少なくとも1つの金属成分又はVIB族(CAS表記法)元素から選択される少なくとも1つの金属成分又はそれらの混合物を含む。VIB族元素として、クロム、モリブデン及びタングステンが挙げられる。VIII族元素として、鉄、コバルト及びニッケルが挙げられる。触媒中の金属成分(単数又は複数)の量(単数又は複数)は、適切には、全触媒100重量部当たりの金属酸化物(単数又は複数)として計算して、VIII族金属成分(単数又は複数)について約0.5重量%〜約25重量%、VIB族金属成分(単数又は複数)について約0.5重量%〜約25重量%の範囲である。但し、重量%は、硫化前の触媒重量に対するものである。触媒中の金属成分は、酸化物及び/又は硫化物形態であってよい。少なくとも1つのVIB族とVIII族金属成分との組合せが(混合)酸化物として存在する場合、その組合せは、水素化処理で適切に使用する前に硫化処理にかけることができる。適切には、触媒は、1つ又は複数のニッケル及び/又はコバルト成分並びに1つ又は複数のモリブデン及び/又はタングステン成分を含む。
【0049】
本発明の水素化処理触媒の粒子は、適切には、上記金属の有効源を担体若しくは結合剤と一緒に含浸、ブレンド又は共粉砕することによって調製される。適切な担体又は結合剤の例として、シリカ、アルミナ、粘土、ジルコニア、チタニア、マグネシア及びシリカ−アルミナが挙げられる。担体又は結合剤又は双方としてアルミナの使用が好ましい。リンなど他の成分も、所望の用途に向けて触媒粒子を調製するために所望であれば添加することができる。共粉砕する場合、ブレンドされた成分は、次いで、押出しなどによって成形し、乾燥し、最高1200°F(649℃)までの温度でか焼することによって最終触媒粒子を生成する。或いは、非晶質触媒粒子を調製する適切な等価法として、押出し、乾燥及びか焼などによって酸化物結合剤粒子を調製し、次いで、含浸などの方法を使用して酸化物粒子上に上記金属を堆積することによる方法も挙げられる。上記金属を含む触媒粒子は、次いで、水素化処理触媒として使用する前にさらに乾燥及びか焼される。
【0050】
適切な水素化処理触媒は、一般に、多孔質担体、例えば、シリカ、シリカ−アルミナ、アルミナ又はそれらの混合物上の、金属成分、適切には、VIB族若しくはVIII族金属、例えば、コバルト−モリブデン、ニッケル−モリブデンを含む。適切な水素化処理触媒の例は、市販品として、Chevron Research and Technology Co.のICR 106、ICR 120、Criterion Catalyst Co.のDN−200、Haldor Topsoe A/SのTK−555及びTK−565、UOPのHC−K、HC−P、HC−R 及びHC−T、AKZO Nobel/Nippon KetjenのKF−742、KF−752、KF−846、KF−848STARS及びKF−849、並びにProcatalyse SAのHR−438/448である。
【0051】
水素化処理操作を実施する際に使用される触媒は、当技術分野で周知である。水素化処理の一般的な説明及び水素化処理法で使用される典型的な触媒として、例えば、米国特許第4347121号及び第4810357号を参照されたい。
【0052】
本発明で用いられる水素化処理触媒は、ニッケル−モリブデン触媒、ニッケル−タングステン触媒、モリブデン−タングステン触媒、ニッケル−モリブデン−タングステン触媒及びモリブデン−コバルト触媒からなる群から選択される。好ましくは、用いられる触媒は、アルミナ担体上のニッケル−モリブデン触媒である。
【0053】
水素化処理生成物は、次いで、少なくとも1つの分離ユニットに供給され、少なくとも2つの生成物ストリーム:即ち、第1の生成物ストリーム及び第2の生成物ストリームに分離される。好ましくは、水素化処理生成物は、ナフサ生成物ストリーム、ジェット生成物ストリーム及び重質生成物ストリームに分離される。通常は、第2の生成物ストリーム又は重質生成物ストリームは、イオウ含量が50重量ppm未満である。好ましくは、水素化処理生成物は、少なくとも2つの分離ユニットに供給され、その内の1つは蒸留カラムを備える。重質生成物ストリームは、次いで、水素化反応器系に供給される。重質生成物ストリームは、貴金属水素化触媒上で水素化反応器系に供給され、それによって水素化生成物が生成する。任意選択で、異性化触媒は、水素化反応器系に供給することによって曇り点を制御することができる。次いで、水素化生成物は、少なくとも1つの分離ユニットに供給され、それによってナフサ生成物ストリーム、ジェット生成物ストリーム及びディーゼル生成物ストリームが生成する。好ましくは、水素化生成物は、少なくとも1つの分離ユニットに供給され、その内の1つは蒸留カラムを備えていてもよく、それによって芳香族含量が7.5重量%未満、イオウ含量が10ppm未満、引火点が50℃超であるディーゼル生成物ストリームが生成する。
【0054】
適切な水素化触媒は、一般に、VIII族貴金属又はその酸化物を含む。白金触媒又はパラジウム触媒又はそれらの混合物を用いることができる。任意選択で、ニッケルなどのVIII族卑金属を還元したものを水素化触媒として用いることができる。
【0055】
図2は、無臭ディーゼル燃料組成物を作製する方法をさらに示す。図2は、ストリーム100を介して工程に入り、補給水素を含むストリーム110と合わせられ、リサイクル水素を含むストリーム140と合わせられることによってストリーム115を形成する炭化水素供給物を例示する。ストリーム140の水素は、高圧分離器20のガス排出ストリーム130を圧縮することによって調製される。
【0056】
ストリーム115は、第1段水素化処理ユニット、槽10に入る前に加熱される。槽10は、好ましくは、水素化処理器として運転され、炭化水素供給物のイオウは、非常に低い濃度、好ましくは<100ppm、より好ましくは50ppm未満、最も好ましくは、<20ppmまで除去される。供給物は、少なくとも1つの触媒床の中を下方に流れる。好ましくは、供給物は、1つを越える触媒床の中を流れる。
【0057】
水素化処理排出ガスは、ストリーム120を介して槽10を出、高圧分離器、槽20中にフラッシュされる。この槽は、単純なフラッシュドラムであり、水素富化リサイクルガスストリーム130から液体炭化水素を分離する。リサイクルガスストリーム130は、リサイクルガス圧縮機30によって圧縮され、水素化処理反応器10の入口までリサイクルされる。
【0058】
高圧液体排出ストリーム150は、圧力バルブ35によって低圧、通常、60psig未満まで減圧されることによってストリーム155を形成する。ストリーム155は、低圧分離器、槽40内にフラッシュされる。この槽は、生成物ガス(ストリーム160)から液体炭化水素(ストリーム170)を分離する単純なフラッシュドラムである。
【0059】
液体排出ストリーム170は、加熱され、ストリッパー50中で、限定されないが、ディーゼル又はディーゼル/ジェットストリームを含めての数種のストリームに分離され、軽質ガス(ストリーム180)及びナフサ(ストリーム190)を除去する。任意選択として、ジェット燃料生成物、即ち、ジェット燃料の沸点範囲にある生成物(ストリーム195)は、ストリッパー50中でストリップされるか、又はディーゼル(ストリーム200)沸騰範囲の材料とストリーム200において合わせられジェット/ディーゼルストリームを生成してもよい。
【0060】
ディーゼル又はジェット/ディーゼルストリーム200は、水素化圧までポンプ圧縮され、補給水素を含むストリーム210及びリサイクル水素を含むストリーム240と合わせられ、ストリーム215を形成する。ストリーム240中の水素は、高圧分離器ガス排出ストリーム230を圧縮することによって調製される。
【0061】
ストリーム215は、水素化ユニット、槽60に入る前に加熱される。槽60は、好ましくは、高活性貴卑金属が好ましくは装入された水素化ユニットとして運転され、そこで炭化水素供給物の芳香族は、ディーゼル生成物を無臭にするのに必要な水準まで飽和される。供給物は、少なくとも1つ又は複数の触媒床の中を下方に流れる。
【0062】
通常、水素化ユニットで用いられる触媒は、シリカ又はアルミナ又はシリカ−アルミナ又はこうした担体の組合せ上に担持された貴金属を含む。触媒の分解活性は、触媒にゼオライトを添加することによって向上させることができる。
【0063】
水素化流出物は、ストリーム220を介して槽60を出、高圧分離器、槽70にフラッシュされる。この槽は、単純なフラッシュドラムであり、水素富化リサイクルガスストリーム230から液体炭化水素を分離する。リサイクルガスストリーム230は、水素化処理反応器の入口の圧力までリサイクルガス圧縮機80によって圧縮される。
【0064】
高圧液体流出ストリーム250は、低圧、通常、60psig未満まで減圧され(バルブ85)、ストリーム255を形成する。ストリーム255は、低圧分離器、槽90内にフラッシュされる。この槽は、生成物ガス(ストリーム260)から液体炭化水素(ストリーム270)を分離する単純なフラッシュドラムである。
【0065】
液体流出ストリーム270は、加熱され、少なくとも2つのストリームに分離される。軽質ガス(ストリーム280)を除去するために、液体流出ストリームは、ストリッパー95中で、(1)ナフサ(ストリーム290)、(2)ジェット燃料(ストリーム300)及び(3)無臭ディーゼル生成物(ストリーム310)に分離される。ストリッパー中で軽質成分を除去することによって、引火点は、無臭ディーゼルの限界である50℃に合格するように上昇する。
【0066】
一実施形態では、イオウが少なくとも50ppmである炭化水素原料は、上記したように水素化処理触媒上で第1の反応器系(例えば、水素化処理ユニット)に供給され、それによって水素化処理生成物が生成する。水素化処理段階の触媒系は、少なくとも2つの反応器床を有する反応器で行われる。第1の反応器床は、水素化処理触媒層及び水素化処理/水素化/水素化分解触媒層を含む少なくとも2つの触媒層を備える。任意選択で、水素化脱金属化層もまた第1の反応器床で用いることもできる。次いで、水素化生成物は、少なくとも2つの層を備える第2の反応器床に供給される。好ましくは、第2の反応器床は、水素化処理/水素化/水素化分解触媒層、水素化分解層及び水素化処理層を備える。水素化処理生成物は、触媒層上で第2の反応器床を通して供給され、それによって水素化分解生成物が生成する。
【0067】
用いられる水素化分解触媒は、通常、卑金属含有触媒である。一般には、水素化分解触媒は、酸化物担持材料又は結合剤上に分解成分及び水素化成分を含む。分解成分は、非晶質分解成分及び/又は、Y型ゼオライト、超安定Y型ゼオライト、若しくは脱アルミ化ゼオライトなどのゼオライトを含むことができる。適切な非晶質分解成分は、シリカ−アルミナである。
【0068】
水素化分解触媒の水素化成分は、接触水素化活性をもたらすことが公知である元素から選択される。VIIIB族(CAS表記法)元素及び/又はVIB族(CAS表記法)元素から選択される少なくとも1つの金属成分が一般に選定される。VIB族元素として、クロム、モリブデン及びタングステンが挙げられる。VIIIB族元素として、鉄、コバルト及びニッケルが挙げられる。触媒中の水素化成分(単数又は複数)の量(単数又は複数)は、適切には、全触媒100重量部当たりの金属として計算して、VIIIB族金属成分(単数又は複数)について約0.5重量%〜約30重量%、VIB族金属成分(単数又は複数)について約0.5重量%〜約25重量%の範囲である。但し、重量%は、硫化前の触媒重量に対するものである。触媒中の水素化成分は、酸化物及び/又は硫化物形態であってよい。少なくとも1つのVIB族とVIIIB族金属成分の組合せが、(混合)酸化物として存在する場合、それは水素化分解で適切に使用する前に硫化処理にかけられることになる。適切には、触媒は、ニッケル及び/又はコバルトの1つ又は複数の成分、並びにモリブデン及び/又はタングステンの1つ又は複数の成分を含む。ニッケルとモリブデン又はニッケルとタングステンを含む触媒が、特に好ましい。
【0069】
本発明の水素化分解触媒の粒子は、水素化金属の有効源を結合剤と一緒に含浸、ブレンド又は共粉砕することによって調製することができる。適切な結合剤として、シリカ、アルミナ、粘土、ジルコニア、チタニア、マグネシア及びシリカ−アルミナが挙げられる。結合剤としてアルミナの使用が好ましい。リンなど他の成分も、所望の用途に向けて触媒粒子を調製するために所望であれば添加することができる。次いで、ブレンドされた成分は、押出しなどによって成形し、乾燥し、最高1200°F(649℃)までの温度でか焼することで最終触媒粒子を生成する。或いは、非晶質触媒粒子を調製する適切な等価法として、押出し、乾燥及びか焼などによって酸化物結合剤粒子を調製し、次いで、含浸などの方法を使用して酸化物粒子上に水素化金属を堆積することによる方法も挙げられる。水素化金属を含む触媒粒子は、次いで、水素化分解触媒として使用する前にさらに乾燥及びか焼される。
【0070】
水素化分解生成物は、次いで、少なくとも1つの分離ユニットに供給され、少なくとも2つの生成物ストリームに分離される。好ましくは、水素化分解生成物は、第1の生成物ストリーム及び第2の生成物ストリームに分離される。第1の生成物ストリームは、沸点範囲が約80°F〜約450°Fである。第2の生成物ストリームは、沸点範囲が約450°F〜約900°Fである。次いで、第2の生成物ストリームは、少なくとも1つの反応器に供給される。好ましくは、第2の生成物ストリームは、少なくとも2つの反応器、即ち、第1及び第2反応器に供給される。第1反応器は、少なくとも1つの触媒層を備える。好ましくは、第1反応器は、パラフィンをイソパラフィンに転換して脱ロウ生成物ストリームを生成するために、水素化触媒と異性化脱ロウ触媒とを含む少なくとも2つの触媒層を備える。次いで、脱ロウ生成物ストリームは、第2反応器、最終水素化反応器に供給され、それによって最終水素化流出生成物ストリームが生成する。
【0071】
通常は、異性化触媒は、中間細孔径触媒を含む。「中間細孔径」という用語は、多孔質無機酸化物がか焼形態である場合、5.3オングストローム〜6.5オングストロームの範囲の有効細孔開口部を指す。この範囲の細孔開口部を有する分子篩は、独特の分子篩特性を有する傾向がある。エリオナイト及びチャバザイトなど小細孔ゼオライトと異なり、該ゼオライトは、いくつかの分枝を有する炭化水素を分子篩の空洞空間内に収容することになる。フォージャサイト及びモルデナイトなどより大きい細孔のゼオライトと異なり、該ゼオライトは、n−アルカン及びわずかに分枝したアルカンと、例えば、第4級炭素原子を有するより大きな分枝アルカンとを区別することができる。
【0072】
分子篩の有効細孔径は、標準の吸着技法及び公知の最小動径(kinetic diameter)を有する炭化水素化合物を使用して測定することができる。該当部分が参照により本明細書に組み込まれている、Breck、Zeolite Molecular Sieves、1974(特に8章);Andersonら、J.Catalysis58、114(1979)及び米国特許第4440871号を参照されたい。
【0073】
細孔径を求めるための吸着測定を実施する際には、標準技法が使用される。特定の分子が、約10分未満で分子篩上で平衡吸着値の少なくとも95%に到達しない場合にその分子は排除されたものとみなすことが好都合である(p/po=0.5;25℃)。
【0074】
中間細孔径の分子篩は、通常は、ほとんど妨害なしで、5.3〜6.5オングストロームの動径を有する分子を収容することになる。かかる化合物の例(及びそのオングストロームでの動径)は、n−ヘキサン(4.3)、3−メチルペンタン(5.5)、ベンゼン(5.85)及びトルエン(5.8)である。約6〜6.5オングストロームの動径を有する化合物は、特定の篩に応じて、細孔中に収容することができるが、速やかには侵入せず、一部の場合では実質的に排除される。6〜6.5オングストロームの動径を有する化合物として、シクロヘキサン(6.0)、2,3−ジメチルブタン(6.1)及びm−キシレン(6.1)が挙げられる。一般には、約6.5オングストローム超の動径を有する化合物は、細孔開口部に侵入せず、したがって、分子篩格子の内部に吸収されない。かかるより大きい化合物の例として、o−キシレン(6.8)、1,3,5−トリメチルベンゼン(7.5)及びトリブチルアミン(8.1)が挙げられる。
【0075】
好ましい有効細孔径の範囲は、約5.5〜約6.2オングストロームである。
【0076】
本発明の実施で使用される中間細孔径分子篩触媒は、X線結晶学で測定される非常に特定された細孔形及び径を有することが基本である。第1には、結晶内チャネルが平行でなければならず、相互接続していてはいけない。かかるチャネルは、好都合には、1−D拡散型、より短縮して1−D細孔と呼ばれる。1−D、2−D及び3−Dとしてのゼオライト内チャネルの分類は、その分類が参照により全体として本明細書に組み込まれているNATO ASI Series、1984のF.R.Rodrigues,L.D.Rollman及びC.Naccache編纂のZeolites,Science and TechnologyでR.M.Barrerによって示されている(特に、75頁を参照されたい)。公知の1−Dゼオライトとして、カンクリナイト水和物、ローモンタイト、マッツァイト、モルデナイト及びゼオライトLが挙げられる。
【0077】
しかし、上で列挙した1−D細孔ゼオライトはいずれも本発明の実施で有用な触媒に対する第2の基本的な基準を満足しない。この第2の基本的な基準は、細孔が概して卵形でなければならないことであり、これは、細孔が、本明細書では短軸及び長軸と呼ばれる2つの等しくない軸を有していなければならないことを意味する。本明細書での卵形という用語は、特定の卵形又は楕円形であることが必要であることを意味せず、細孔が2つの等しくない軸を有することを指す。詳細には、本発明の実施で有用である触媒の1−D細孔は、従来のX線結晶学測定によって求めた場合、約3.9オングストローム〜約4.8オングストロームの短軸、及び約5.4オングストローム〜約7.0オングストロームの長軸を有していなければならない。
【0078】
本発明の方法で使用するための最も好ましい中間細孔径のシリコアルミノホスフェート分子篩はSAPO−11である。SAPO−11は、角を共有する[SiO]4面体、[AlO]4面体及び[PO]4面体[即ち、(SAl)O4面体単位]の分子骨格を備える。VIII族金属水素化成分と組み合わせると、SAPO−11は、ロウ成分を転換することによって、収率が優れ、流動点が非常に低く、粘度が小さく、粘度指数が高い潤滑油を生成する。SAPO−11は、すべての目的のために参照により本明細書に組み込まれている米国特許第5135638号に詳細に開示されている。
【0079】
本発明の方法で有用な他の中間細孔径のシリコアルミノホスフェート分子篩は、やはり米国特許第5135638号に詳細に開示されているSAPO−31及びSAPO−41である。
【0080】
ZSM−22、ZSM−23及びZSM−35など中間細孔径の非ゼオライト系分子篩と、少なくとも1つのVIII族金属とを含む触媒もやはり有用である。SAPO−11、SAPO−31、SAPO−41、ZSM−22、ZSM−23及びZSM−35のX線結晶学は、こうした分子篩が以下の長軸及び短軸:即ち、SAPO−11、長軸6.3オングストローム、短軸3.9オングストローム(Meier,W.H.、Olson,D.H.及びBaerlocher,C.、Atlas of Zeolite Structure Types、Elsevier、1996);SAPO−11、ZSM−22よりわずかに長いと考えられているSAPO−31及びSAPO−41、長軸5.5オングストローム、短軸4.5オングストローム(Kokotailo,G.T.ら、Zeolites、5、349(85));ZSM−23、長軸5.6オングストローム、短軸4.5オングストローム;ZSM−35、長軸5.4オングストローム、短軸4.2オングストローム(Meier,W.M.及びOlsen,D.H.、Atlas of Zeolite Structure Types、Butterworths、1987)を有することを示す。
【0081】
中間細孔径の分子篩は、少なくとも1つのVIII族金属との混合物で使用することができる。好ましくは、VIII族金属は、少なくとも1つの白金及びパラジウム、並びに任意選択で、モリブデン、ニッケル、バナジウム、コバルト、タングステン、亜鉛及びそれらの混合物など他の触媒活性金属からなる群から選択される。より好ましくは、VIII族金属は、少なくとも1つの白金及びパラジウムからなる群から選択される。金属量は、分子篩の約0.01重量%〜約10重量%、好ましくは、分子篩の約0.2重量%〜約5重量%の範囲である。分子篩内に触媒活性金属を導入する技法は、文献に開示され、篩調製中のイオン交換、含浸又は閉塞など、活性触媒を形成するための事前金属組込み技法及び分子篩処理は、本発明の方法で使用するのに有用である。かかる技法は、参照により本明細書に組み込まれている米国特許第3236761号、第3226339号、第3236762号、第3620960号、第3373109号、第4202996号、第4440781号及び第4710485号に開示されている。
【0082】
本明細書での「金属」又は「活性金属」という用語は、元素状態、又は硫化物、酸化物及びそれらの混合物などいくつかの形態での1つ又は複数の金属を意味する。金属成分が実際に存在する状態に拘らず、その濃度は、元素状態で存在するものとして計算される。
【0083】
触媒はまた、触媒上の強酸サイトの数を低減し、それによって分解対異性化の選択性を低下させる金属を含むこともできる。マグネシウム及びカルシウムなどのIIA族金属が特に好ましい。
【0084】
本発明を実施する際には、比較的小さい結晶サイズの触媒を利用することが好ましい。適切には、平均結晶サイズは、約10μ以下、好ましくは、約5μ以下、より好ましくは、約1μ以下、さらにより好ましくは、約0.5μ以下である。
【0085】
強酸性はまた、窒素化合物、例えば、NH、又は有機窒素化合物を供給物内に導入することによって低減することができるが、全窒素含量は、50ppm未満、好ましくは、10ppm未満であるべきである。触媒の物理的形態は、用いる触媒反応器の型で決まり、顆粒又は粉末の形態でよく、望ましくは、触媒−反応体の接触を適切にするために、流動床反応用として通常シリカ若しくはアルミナ結合剤を用いてのより使いやすい形態(例えば、より大きい造粒体)、又は制御されたサイズのピル、小球、球、押出体又は他の形状体になるように圧密される。触媒は、流動触媒として、又は固定若しくは移動床で、及び1つ又は複数の反応段階で用いることができる。
【0086】
中間細孔径の分子篩触媒は、多種多様な物理的形態になるよう製造することができる。分子篩は、粉末、顆粒、又は、2メッシュ(タイラー)網を通過し、40メッシュ(タイラー)網に保持されるのに十分な粒径を有する押出体などの成型生成物の形態にすることができる。触媒が、結合剤と一緒の押出しなどによって成型される場合、シリコアルミノホスフェートは、乾燥の前に押し出してもよく、乾燥又は部分乾燥して次いで押し出してもよい。
【0087】
分子篩は、異性化工程で用いられる温度及びその他の条件に耐性のある他の材料と一緒に複合することができる。かかるマトリックス材料として、活性及び不活性材料、及び合成又は天然ゼオライト、並びに粘土、シリカ及び金属酸化物などの無機材料が挙げられる。後者は、天然であっても、シリカと金属酸化物の混合物を含めてのゼラチン状沈殿、ゾル又はゲルの形態であってもよい。不活性材料は、適切には、異性化工程での転換量を制御するための希釈剤として働くので、反応速度を制御するための他の手段を用いることなく生成物を経済的に取得することができる。分子篩は、天然粘土、例えば、ベントナイト及びカオリンの中に組み込むことができる。こうした材料、即ち、粘土、酸化物などは、部分的には、触媒用の結合剤として機能する。石油精製では、触媒は粗雑な取扱いを受ける場合が多いので、圧壊強度が良好である触媒を提供することが望ましい。これは、触媒を破壊して粉末状材料にする傾向があり、この粉末状材料が処理工程で問題を引き起こす。
【0088】
分子篩と複合できる天然粘土として、サブベントナイトを含むモンモリロナイト及びカオリン類、並びに主たる鉱物成分がハロイサイト、カオリナイト、ジオカイト、ナクライト又はアノーキサイトであるDixie、McNamee、Georgia及びFlorida粘土又は他のものとして普通に知られているカオリンが挙げられる。ハロイサイト、セピオライト及びアタパルジャイトなどの繊維状粘土もまた担体として使用することができる。かかる粘土は、採掘されたままの未加工の状態で又は最初にか焼、酸処理又は化学的改変にかけて使用することができる。
【0089】
上記の材料に加えて、分子篩は、シリカ、アルミナ、チタニア、マグネシア、シリカ−アルミナ、シリカ−マグネシア、シリカ−ジルコニア、シリカ−トリア、シリカ−ベリリア、シリカ−チタニア、チタニア−ジルコニア、並びにシリカ−アルミナ−トリア、シリカ−アルミナ−チタニア、シリカ−アルミナ−マグネシア及びシリカ−マグネシア−ジルコニアなどの3元組成物などの多孔質マトリックス材料及びマトリックス材料の混合物と複合することができる。マトリックスは、共ゲルの形態でもよい。
【0090】
本発明の方法で使用される触媒はまた、合成及び天然のフォージャサイト(例えば、X及びY)、エリオナイト及びモルデナイトなど他のゼオライトと複合することもできる。これはまた、ZSMシリーズなどの純合成ゼオライトと複合することもできる。ゼオライトの組合せもやはり、多孔質無機マトリックス中に複合化することができる。
【0091】
上で議論したように、脱ロウ生成物ストリームは、第2の生成物ストリームを異性化触媒と接触させることから得られる。脱ロウ生成物ストリームは、本明細書で既に説明したように貴金属水素化触媒を含む少なくとも1つの反応器に供給される。脱ロウ生成物ストリームは、最終水素化され、それによって最終水素化生成物ストリームが生成する。次いで、最終水素化生成物ストリームは、少なくとも1つの分離ユニットに供給され、ナフサ生成物ストリーム、ジェット生成物ストリーム、ディーゼル生成物ストリーム及び少なくとも1つの基油生成物ストリームに分離される。好ましくは、次いで、最終水素化生成物ストリームは、少なくとも1つの分離ユニットに供給され、ナフサ生成物ストリーム、ジェット生成物ストリーム、ディーゼル生成物ストリーム、第1の基油生成物ストリーム及び第2の基油生成物ストリームに分離される。好ましくは、最終水素化生成物ストリームは、その内の1つが蒸留カラムを備える少なくとも2つの分離ユニットに供給され、ナフサ生成物ストリーム、ジェット生成物ストリーム、ディーゼル生成物ストリーム並びに少なくとも1つの基油生成物ストリーム、好ましくは、少なくとも2つの基油生成物ストリーム、第1の基油生成物ストリーム及び第2の基油生成物ストリームに分離される。ディーゼル生成物ストリームは、芳香族含量が7.5重量%未満、UV@272nm+10*UV@310nmが1.5未満、イオウ含量が10ppm未満、及び引火点が50℃超である。
【0092】
図3は、無臭ディーゼル燃料組成物を作製する方法の一実施形態をさらに示す。図3は、沸点範囲が550°F〜1000°Fである炭化水素供給物を例示する。供給物、ストリーム100は、補給水素を含むストリーム110及びリサイクル水素を含むストリーム140と合わせられて、ストリーム115を形成する。ストリーム140の水素は、高圧分離器20のガス流出ストリーム130を圧縮することによって調製される。
【0093】
ストリーム115は、第1段水素化処理ユニット、槽10に入る前に加熱される。槽10は、好ましくは、炭化水素供給物のイオウ含量が、非常に低い濃度まで低減される水素化処理器として運転される。好ましくは、イオウ含量は、100ppm未満である。より好ましくは、イオウ含量は、50ppm未満であり、最も好ましくは、イオウ含量は、20ppm未満である。供給物は、少なくとも1つ又は複数の触媒床の中を下方に流動し、それによって水素化処理生成物が生成する。
【0094】
水素化処理流出生成物は、ストリーム120を介して槽10を出、第2の反応器系、水素化分解ユニット、槽15に導入される。槽15は、好ましくは、水素化分解操作条件下で運転され、流出物の粘度指数は、潤滑油に随伴する粘度指数水準、好ましくは、約98〜約150まで改良される。水素化処理流出生成物は、水素化分解触媒と接触し、それによって水素化分解生成物が生成する。
【0095】
水素化分解流出生成物は、ストリーム125を介して槽15を出、高圧分離器、槽20中にフラッシュされる。この槽は、単純なフラッシュドラムであり、水素富化リサイクルガスストリーム130から液体炭化水素を分離する。リサイクルガスストリーム130は、リサイクルガス圧縮機30で圧縮され、水素化処理反応器10の入口までリサイクルされる。
【0096】
高圧液体流出ストリーム150は、バルブ35を通して供給され、低圧、通常、60psig未満まで減圧されて、ストリーム155を形成する。ストリーム155は、低圧分離器、槽40内にフラッシュされる。この槽は生成物ガス、ストリーム160から液体炭化水素、ストリーム170を分離する単純なフラッシュドラムである。
【0097】
液体流出ストリーム170は、加熱され、ストリッパー50中で、少なくとも2つの生成物ストリームに分離されて、沸点がより高い生成物ストリームから軽質エンドガスが分離される。分離された生成物ストリームは、(1)ロウ質基油、(2)ロウ質基油/ディーゼルストリーム、(3)ジェット燃料、ストリーム195、(4)軽質エンドガス、ストリーム180、及び(5)ナフサ、ストリーム190を包含していてよい。任意選択で、ジェット燃料生成物ストリーム、ストリーム195は、ストリッパー50でストリップしても、ストリーム200でロウ質基油/ディーゼル沸点範囲の材料と合わせてもよい。
【0098】
ロウ質基油/ディーゼル、又はジェット/ディーゼル/ロウ質基油ストリーム200は、水素化に適した圧(例えば、2000〜2700psi)までポンプ圧縮され、補給水素を含むストリーム210及びリサイクル水素を含むストリーム240と合わせられて、ストリーム215を形成する。ストリーム240中の水素は、高圧分離器70のガス流出ストリーム230を圧縮することによって調製される。
【0099】
ストリーム215は、槽60の第1段に入る前に加熱される。槽60は、好ましくは、異性化脱ロウユニットとして運転される。槽60中の床は、好ましくは、高活性貴卑金属触媒が装入され、そこでストリーム200は、潤滑基油の流動点を設定するのに必要な水準まで異性化され、結果として、脱ロウ生成物、冷間流動特性に優れたディーゼル燃料組成物が得られる。
【0100】
異性化脱ロウユニットに対して適用可能な触媒は、アルミナ、シリカ、シリカ−アルミナ又はそれらの混合物上に担持されたSM−3、SSZ−32又はZSM−5或いはそれらの混合物上に担持された貴金属を含む。
【0101】
ストリーム220は、一般に、第2段最終水素化反応ユニット、槽65に入る前に冷却される。槽65は、好ましくは、水素化ユニットとして運転され、好ましくは、高活性貴卑金属触媒を装入され、そこで脱ロウ生成物の芳香族及びオレフィン性炭化水素が、低臭気を含めてのディーゼル燃料規格を満足するのに必要な水準まで水素化される。供給物は、少なくとも1つ又は複数の触媒床の中を下方に流動する。
【0102】
最終水素化ユニットに対して適用可能な触媒は、アルミナ、シリカ、シリカ−アルミナ又はそれらの混合物上に担持された、白金、パラジウム、及び、任意選択でニッケルなどの高濃度還元VIII族卑金属などの貴金属を含む。
【0103】
最終水素化流出生成物ストリームは、ストリーム225を介して槽60を出、高圧分離器、槽70にフラッシュされる。この槽は、単純なフラッシュドラムであり、水素富化リサイクルガスストリーム230から液体炭化水素流出ストリームを分離する。リサイクルガスストリーム230は、リサイクルガス圧縮機80に供給され、そこで圧縮され、異性化脱ロウ反応器に供給される。
【0104】
高圧液体炭化水素流出ストリーム250は、低圧、通常、60psig未満まで減圧され(バルブ85)、トリーム255を形成する。ストリーム255は、低圧分離器、槽90内にフラッシュされる。この槽は、生成物ガス流出物、ストリーム260から液体炭化水素流出物、ストリーム270を分離する単純なフラッシュドラムである。
【0105】
液体炭化水素流出ストリーム270は、加熱され、ストリッパー95中で、最終潤滑基油、ストリーム320、ディーゼル生成物ストリーム310、ジェット生成物ストリーム295、ナフサ生成物ストリーム290及び軽質ガスストリームに分離される。ストリッパー中で、より軽質な成分を除去することによって、引火点は、無臭ディーゼルの限界である50℃超に合格するように上昇する。
【0106】
本発明の一実施形態では、イオウが少なくとも50ppm、芳香族含量が少なくとも7.5重量%である炭化水素原料は、反応器系(例えば、水素化ユニット)に供給される。この反応器系は、炭化水素原料を水素化し、それによって炭化水素原料を水素化し水素化生成物ストリームを生成するための高活性卑金属触媒を含む。水素化生成物ストリームは、少なくとも1つの分離ユニットに供給され、それによって、水素化生成物ストリームを少なくとも2つの別々の生成物ストリームに分離する。好ましくは、水素化生成物ストリームは、その内の1つが蒸留カラムを備える少なくとも2つの分離ユニットで分離される。好ましくは、水素化生成物ストリームは、少なくともナフサ生成物ストリーム、ジェット生成物ストリーム及びディーゼル生成物ストリームに分離される。ディーゼル生成物ストリームは、芳香族含量が7.5重量%未満、イオウ含量が10ppm未満、及び引火点が50℃超である。
【0107】
好ましくは、本実施形態で用いられる高活性卑金属触媒は、アルミナ、シリカ、アルミナ−シリカ、他の無機酸化物又はゼオライト担体上に担持された、VI族卑金属及びVIII族貴金属を含む。好ましくは、触媒は、少なくとも5重量%のVIII族及び5重量%のVI族金属を含む。より好ましくは、触媒は、6重量%のNi及び19重量%のタングステンを含む。最も好ましくは、触媒は、20重量%のNi及び20重量%のタングステンを含み、反応器系は、圧力が少なくとも1000psiである。
【0108】
触媒の水素化成分は、卑金属であってもよく、無機酸化物、ゼオライト又は双方中に含浸することができる。本出願では、「卑金属」(“base metal”)という用語には、1つ又は複数のニッケル、コバルト、タングステン又はモリブデンが含まれる。通常、タングステン又はモリブデンと組み合わされたニッケル又はコバルトなど、卑金属の組合せが使用され、触媒がストリームに置かれるとき又はその前に、卑金属は、通常、触媒中で硫化又は事前硫化される。「含浸」という用語は、固体が吸収できる容積を実質的に超えない容積の溶液を固体に添加し、その溶液を固体中に又は固体上に吸収させ、続いて、中間の洗浄ステップなしで溶液を固体状に乾燥させることを意味する。
【0109】
図4は、無臭ディーゼル燃料組成物を作製する方法の一実施形態をさらに示す。図4は、イオウ含有炭化水素原料ストリーム100を例示するものであり、このイオウ含有炭化水素原料ストリーム100は、リサイクルディーゼルストリーム310と合わせられてストリーム105を形成してよく、このストリーム105は、次いで、補給水素を含むストリーム110及びリサイクル水素を含むストリーム140と合わせられてストリーム115を形成する。ストリーム140の水素は、高圧分離器20のガス流出物、ストリーム130を圧縮することによって調製される。
【0110】
ストリーム115は、第1段水素化処理ユニット、槽10に入る前に加熱される。槽10は、好ましくは、原料中に含まれる原料イオウ及び窒素の双方を除去するために水素化処理器として運転される。
【0111】
水素化処理器で用いられる適切な触媒は、シリカ、アルミナ、アルミナ/シリカ−又はそれらの混合物上に担持されたVI族卑金属、VIII族貴金属又はそれらの混合物を含む。任意選択で、触媒の分解活性は、ゼオライトを添加することによって増進することができる。ストリーム115は、上記触媒(単数又は複数)と接触し、それによって水素化処理生成物ストリーム流出物が生成する。
【0112】
水素化処理生成物ストリーム流出物は、ストリーム120を介して槽10を出、好ましくは、水素化ユニットとして運転される槽20に入り、それによって水素化生成物ストリーム流出物が生成される。好ましくは、水素化ユニットは、比較的高水準の高活性卑金属触媒を送入され、水素化処理生成物ストリームの芳香族含量は、ディーゼル燃料生成物の臭気を低くするのに必要とされる濃度まで飽和される(即ち、7.5重量%未満の芳香族含量)。供給物は、少なくとも1つ又は複数の触媒床の中を下方に流動する。
【0113】
水素化生成物流出ストリームは、ストリーム125を介して槽20を出、高圧分離器、槽30中にフラッシュされる。この槽は、単純なフラッシュドラムであり、水素富化リサイクルガスストリーム130から液体炭化水素を分離する。リサイクルガスストリーム130は、リサイクルガス圧縮機によって圧縮され、水素化反応器までリサイクルされる。
【0114】
高圧液体流出ストリーム150は、バルブ35を介して供給され、低圧、通常、60psig未満まで減圧され(バルブ35)、ストリーム155を形成する。ストリーム155は、低圧分離器、槽40内にフラッシュされる。この槽は、生成物ガス(ストリーム160)から液体炭化水素流出ストリーム(ストリーム170)を分離する単純なフラッシュドラムである。
【0115】
液体炭化水素流出ストリーム170は、加熱され、ストリッパー50中で、ディーゼル生成物ストリーム又はディーゼル/ジェットストリーム生成物ストリームへと分離され、臭気が低い、軽質ガス(ストリーム180)、ナフサ生成物ストリーム(ストリーム190)、ジェット燃料生成物ストリーム(ストリーム200)及びディーゼル生成物ストリーム(ストリーム300)が除かれる。任意選択で、ディーゼル生成物ストリーム、ストリーム310の一部分は、飽和を改良するために、水素化処理反応器、水素化反応器、又は双方にリサイクルバックすることができる。ストリッパー中で、より軽質な成分を除去することによって、引火点は、無臭ディーゼルの限界である50℃超に合格するように上昇する。
【0116】
本発明の一実施形態では、イオウが100ppm未満、芳香族含量が少なくとも7.5重量%である炭化水素原料は、高活性貴金属触媒を含む反応器系(例えば、水素化ユニット)に供給され、それによって炭化水素原料が水素化し、水素化生成物が生成する。好ましくは、高活性貴金属触媒は、白金、パラジウム又はそれらの混合物など少なくとも1つのVIII族貴金属を含む。より好ましくは、高活性貴金属触媒は、0.5重量%超の少なくとも1つの貴金属を含む。最も好ましくは、高活性貴金属触媒は、少なくとも0.5重量%の白金、少なくとも0.5重量%のパラジウム又はそれらの混合物を含む。水素化生成物は、少なくとも1つの分離ユニットで分離され、それによって少なくとも2つの分離生成物ストリームが生成する。好ましくは、水素化生成物は、少なくとも2つの分離ユニットで分離され、その内の1つは蒸留カラムを備える。好ましくは、分離生成物ストリームは、少なくともナフサ生成物ストリーム、ジェット生成物ストリーム及びディーゼル生成物ストリームに分離される。ディーゼル生成物ストリームは、芳香族含量が7.5重量%未満、イオウ含量が10ppm未満、及び引火点が50℃超である。
【0117】
好ましくは、本実施形態で用いられる高活性貴金族触媒は、無機酸化物、ゼオライト又は双方中に含浸できる貴金族を含む。本出願では、「貴金族」という用語には、1つ又は複数のルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム又は白金が含まれる。「含浸」という用語は、固体が吸収できる容積を実質的に超えない容積の溶液を固体に添加し、その溶液を固体中に又は固体上に吸収させ、続いて、中間の洗浄ステップなしで溶液を固体上で乾燥させることを意味するものとする。
【0118】
図5は、無臭ディーゼル燃料組成物を作製する方法の別の実施形態をさらに示す。
【0119】
図5は、好ましくは、イオウ含量が50ppm未満である、低イオウ炭化水素原料を例示する。より好ましくは、イオウ含量は15ppm未満である。原料、ストリーム100は、リサイクルディーゼルストリーム310と組み合わせられて、ストリーム105を形成してよい。このストリーム105は、次いで、補給水素を含むストリーム110及びリサイクル水素を含むストリーム140と合わせられて、それによってストリーム115を形成する。ストリーム140の水素は、高圧分離器20のガス流出物ストリーム130を圧縮することによって調製される。
【0120】
ストリーム115は、水素化反応器、槽10に入る前に加熱される。槽10は、好ましくは、芳香族を飽和させるのに有用である水素化操作条件で運転される。
【0121】
水素化反応器用の適切な触媒は、シリカ、アルミナ、シリカアルミナ又はそれらの混合物を含む担体上に担持された貴卑金属である。触媒の分解活性は、ゼオライトを添加することによって増進することができるが、これについては本明細書で説明した。炭化水素原料は、触媒上で水素化反応器に供給され、それによって水素化生成物流出ストリームが生成する。
【0122】
水素化生成物流出ストリームは、ストリーム120を介して槽10を出、高圧分離器、槽30中にフラッシュされる。この槽は、単純なフラッシュドラムであり、水素化液体流出生成物ストリームを炭化水素ストリーム及び水素富化リサイクルガスストリーム130に分離する。リサイクルガスストリーム130は、リサイクルガス圧縮機30で圧縮され、水素化反応器入口までリサイクルされる。
【0123】
高圧液体流出ストリーム150は、低圧、通常60psig未満まで減圧され(バルブ35)、低圧液体流出ストリーム、ストリーム155を形成する。ストリーム155は、低圧分離器、槽40内にフラッシュされる。この槽は、液体流出ストリームを液体生成物流出ストリーム(ストリーム170)及び生成物ガス(ストリーム160)に分離する単純なフラッシュドラムである。
【0124】
液体炭化水素流出ストリーム170は、加熱され、ストリッパー50中で、ディーゼル生成物ストリーム又はディーゼル/ジェットストリーム生成物ストリームへと分離され、臭気が低い、軽質ガス(ストリーム180)、ナフサ生成物ストリーム(ストリーム190)、ジェット燃料生成物ストリーム(ストリーム200)及びディーゼル生成物ストリーム(ストリーム300)が除かれる。任意選択で、ディーゼル生成物ストリーム、ストリーム300の一部分は、飽和を改良するために、水素化処理反応器、水素化反応器、又は双方にリサイクルバックすることができる。ストリッパー中で、より軽質な成分を除去することによって、引火点は、無臭ディーゼルの限界である50℃超に合格するように上昇する。
【0125】
無臭ディーゼルの利点
本明細書で説明された方法から生成する無臭ディーゼル燃料を使用することによって、従来の超低イオウディーゼルを用いた場合に、燃焼室で生成するすすに比較して燃焼室のすすが減少することも発見された。
【0126】
本発明の一実施形態は、本明細書で説明された方法によって生成するディーゼル燃料組成物を用いることによって、内燃エンジンのすすを低減する方法を対象とする。
【0127】
本発明の別の実施形態は、(1)イオウ含量は10ppm未満、(2)引火点は50℃超、
(3)式
=A+10(A
[式中、Aは272ナノメートルでのUV吸光度であり、Aは310ナノメートルでのUV吸光度である。]によって求められるUV吸光度、Aは1.5未満、(4)ナフテン含量は5%超、(5)曇り点は−12℃未満、(6)窒素含量は10ppm未満、及び(7)5%蒸留点は300F超、95%蒸留点は600F超である、ディーゼル燃料組成物を用いることによって、内燃エンジンのすすを低減する方法を対象とする。
【0128】
本発明の無臭ディーゼルを用いると、粒子状物質が低減するとみなすことができる。
【0129】
他の実施形態は、当業者には明白であろう。
【0130】
以下の実施例は、本発明の特定の実施形態を例示するために提供されるものであり、如何なる点においても本発明の範囲を限定するものとみなすべきではない。
【実施例】
【0131】
(例1)
例1は、図2に対応する。図2に例示したのと同様の無臭ディーゼルを生成するために、以下の工程を追跡する。イオウが10260ppm、沸点範囲が約257F〜約759F、SFC(超臨界流体クロマトグラフィー、ASTM D5186)法によって測定した場合、芳香族含量が31重量%である炭化水素原料を、触媒系を含む反応器に、液時空間速度(LHSV)3.0[1/時間]で供給した。触媒系は、非酸性の大表面積アルミナ担体上の、リンを助触媒としたVI族及びVIII族金属触媒を含む選択された水素化処理触媒を含んでいた。全金属は、20重量%であった。詳細には、水素化処理触媒は、リンを助触媒とし、アルミナ上に担持されたニッケル及びモリブデンを含む。水素化処理反応器の温度は、659Fであった。水素320scfを消費した。水素4700scfbを水素化処理器にリサイクルした。水素の平均圧は、860psiであった。次いで、水素化処理生成物を、水素化触媒を備える水素化ユニットに供給した。水素化触媒は、シリカ/アルミナ担体上の白金/パラジウムを含んでいた。水素化反応器の温度は、580Fであった。水素420scfを消費した。2915scfbを水素化反応器にリサイクルした。水素の平均圧は、1363psiであった。
【0132】
表1に示すように、2段階の反応工程によって、臭気が0.5未満、生成物ストリーム中の芳香族が検出不能の%、沸点範囲が約403F〜約768である炭化水素生成物がもたらされた。
【表1】

【0133】
(例2)
例2は、図3に対応する。図3に例示したのと同様の無臭ディーゼルを生成するために、以下の工程を追跡した。炭化水素原料は、2つの反応器床に分散した数種の触媒層を備えた第1の反応器に炭化水素原料を供給することによって水素化処理し、それによって水素化処理生成物が生成した。第1の反応器床では、第1層は、ニッケル及びモリブデンを含み、リンを助触媒とした脱金属触媒を備えていた。第2層は、例1で説明したのと同様な水素化処理層を備えていた。第3層は、アルミナ担体上でニッケル/モリブデンを含み、リンを助触媒とした水素化処理/水素化/水素化分解触媒を備えていた。水素化分解原料である水素化処理生成物は、イオウが少なくとも19600ppm、沸点範囲が約594F〜約971Fであった。水素化分解原料は、液時空間速度(LHSV)0.7[1/時間]で、触媒系を備えた第2の反応器床反応器に供給した。第2の反応器床では、第1触媒層は、アルミナ担体上でニッケル/モリブデンを含み、リンを助触媒とした水素化処理/水素化/水素化分解触媒を備えていた。第2層は、シリカ/アルミナ担体上でニッケル/モリブデン/y−ゼオライトを含む水素化分解触媒を備えていた。第3層は、本明細書で説明したように、別の水素化処理触媒層を備えていた。反応器の水素化分解区画の温度は、724Fであった。水素の平均圧は、2700psiであった。ガスリサイクル速度は、5000scfbであった。沸点範囲が約600F〜約1010Fである水素化分解生成物は、2つの生成物、即ち、ロウ状220N生成物及びロウ状100N生成物に分離した。ロウ状220N生成物は、沸点範囲が約640F〜約1010Fであり、ロウ状100N生成物は、沸点範囲が約600F〜約920Fであった。次いで、ロウ状100N生成物は、温度が625Fである脱ロウ反応器に供給し、それによって脱ロウ生成物が生成した。脱ロウ反応器は、アルミナ担体上に白金及び60重量%のSSZ−32を含む触媒を備えていた。次いで、脱ロウ生成物は、シリカ/アルミナ担体上で白金/パラジウム触媒を備え、温度が494Fである最終水素化反応器に供給した。最終水素化生成物は、沸点範囲が約240F〜約900Fであった。最終水素化生成物は、少なくとも3つの生成物ストリーム:即ち、(1)沸点範囲が約595F〜約900Fである100N基油;(2)沸点範囲が約540F〜約710Fである60N基油;及び沸点範囲が約250F〜約665Fである無臭ディーゼル生成物に分離した。
【0134】
表2に示すように、水素化分解/脱ロウ/最終水素化反応工程によって、臭気が0.5未満、生成物ストリーム中の芳香族が0.5重量%未満であり、沸点範囲が約255F〜約660Fである炭化水素生成物がもたらされた。
【0135】
無臭ディーゼル生成物は、ディーゼル生成物に臭気を加えない濃度で、キシレンに溶解した潤滑添加剤を添加することができる。
【表2−1】


【表2−2】

【0136】
(例3)
例3A及び3Bは、図4に対応する。図4に例示したのと同様に、無臭ディーゼルを生成するために、例3Aを例示する以下の工程を追跡した。イオウが10171ppm、沸点範囲が約257F〜約759F、SFC(超臨界流体クロマトグラフィー、ASTM D5186)によって測定した場合、芳香族含量が少なくとも31重量%である炭化水素原料は、液時空間速度(LHSV)0.52[1/時間]で、多層触媒系を備える反応器に供給した。多層触媒系の第1層は、アルミナ担体上でリンを助触媒としたニッケル/モリブデン層を備えていた。そして、多層触媒系の第2層は、シリカ/アルミナ担体上でニッケル/モリブデン/y−ゼオライトを備えていた。反応器の温度は、673Fであった。水素1660scfbを消費した。水素8640scfbを反応器にリサイクルした。反応器の平均圧は、2254psiであった。原料は、上記触媒上で反応器に供給し、それによって反応生成物が生成した。反応生成物は、蒸留して2つのストリーム:即ち、(1)ディーゼル生成物ストリーム及び(2)ナフサ/ジェット生成物ストリームとした。ディーゼル生成物ストリームは、イオウ含量が6ppm、全UV吸光度が0.0052、沸点範囲が328F〜約692°F、計算引火点がフロントエンド蒸留(front end distillation)から72°Cであった。
【0137】
例3Bは、高活性卑金属触媒を使用することによって無臭ディーゼルを生成する単一段階工程の第2ランを例示する。イオウが10171ppm、沸点範囲が約257F〜約759F、SFC(超臨界流体クロマトグラフィー、ASTM D5186)によって測定した場合、芳香族含量が少なくとも31重量%である炭化水素原料は、液時空間速度(LHSV)0.52[l/時間]で、触媒系を備える反応器に供給した。触媒系は、4つの触媒層を備える多層触媒系を備えていた。第1層は、アルミナ担体上でリンを助触媒としたニッケル/モリブデン層を備えていた。そして、第2層は、シリカ/アルミナ担体上でニッケル/モリブデン/y−ゼオライト触媒を備えていた。第3層は、シリカ/アルミナ担体上でニッケル/タングステン/y−ゼオライト触媒を備えていた。そして、第4層は、アルミナ担体上でリンを助触媒としたニッケル/モリブデン層を備えていた。反応器の温度は、673Fであった。水素1710scfbを消費した。水素8610scfbを反応器にリサイクルした。反応器の平均圧は、2254psiであった。原料は、上記触媒上で反応器に供給し、それによって反応生成物が生成した。反応生成物は、蒸留して2つのストリーム:即ち、(1)ディーゼル生成物ストリーム及び(2)ナフサ/ジェット生成物ストリームとした。ディーゼル生成物ストリームは、イオウ含量が6ppm、全UV吸光度が0.0047、沸点範囲が296°F〜約673°F、計算引火点がフロントエンド蒸留から58°Cであった。
【0138】
表3に示されるように、単一段階反応工程によって、臭気が0.5未満である炭化水素生成物がもたらされた。無臭ディーゼル生成物は、ディーゼル生成物に臭気を加えない濃度で、キシレンに溶解した潤滑添加剤を添加することができる。
【表3−1】


【表3−2】


【表3−3】

【0139】
(例4)
例4A及び4Bは、図5に対応する。図5に例示したのと同様に、無臭ディーゼルを生成するために、例4A及び4Bを例示する以下の工程を追跡した。炭化水素原料は、原料中のイオウ含量を低減するために水素化処理した。用いた水素化処理法は、例1で説明した方法に類似している。イオウ含量が6ppm未満、全UV吸光度が1.8774である水素化処理生成物は、シリカ/アルミナ担体上で0.5重量%の白金及び0.5重量%のパラジウムを含む高活性貴金属を含む触媒系に供給した。反応器の温度は、580Fであった。リサイクル水素2915scfbを反応器に供給した。水素420scfbを消費した。反応器の平均圧は、1600psiであった。原料は、上記触媒上で反応器に供給し、それによって反応生成物が生成した。反応生成物は、蒸留して2つのストリーム:即ち、(1)ディーゼル生成物ストリーム及び(2)ジェット生成物ストリームとした。ディーゼル生成物ストリームは、イオウ含量が6ppm未満、全UV吸光度が0.0038、沸点範囲が403F〜約768F、計算引火点が120℃であった。
【0140】
例4Bは、例4Aと同じ卑金属触媒を使用することによって無臭ディーゼルを生成する工程の第2ランを例示する。
【0141】
表4に示されるように、単一段階反応工程によって、臭気が0.5未満である炭化水素生成物がもたらされた。無臭ディーゼル生成物は、ディーゼル生成物に臭気を加えない濃度で、キシレンに溶解した潤滑添加剤を添加することができる。
【表4】

【0142】
(例5)
例5は、図5に対応する。図5に例示したのと同様に、無臭ディーゼルを生成するために、以下の工程を追跡した。イオウが6.2ppm、沸点範囲が約231F〜約750F、SFC(超臨界流体クロマトグラフィー、ASTM D5186)によって測定した場合、芳香族含量が22.2重量%である炭化水素原料は、液時空間速度(LHSV)2.6[1/時間]で、触媒系を備える反応器に供給した。触媒系は、例4で用いられるのと同じ高活性貴金属触媒を備えていた。反応器の温度は、603Fであった。水素836scfbを消費した。水素3080scfbを反応器にリサイクルした。反応器の平均圧は、1610psiであった。原料は、上記触媒上で反応器に供給し、それによって反応生成物である中間生成物A及びBが生成した。中間生成物A及びBは、2つの別々のランの結果であった。中間生成物AもBも、イオウ含量が6ppm未満、全UV吸光度がそれぞれ、0.0044及び0.0031、沸点範囲がそれぞれ、165F〜約750F及び約135F〜約736F、計算引火点がそれぞれ、38℃及び32℃であった。次いで、中間生成物Bは、蒸留範囲が約317F〜約744°Fである蒸留カラムに供給し、それによってイオウ含量が6ppm未満、全UV吸光度が0.0047、芳香族含量が1.5未満、ASTM方法 D4529で求めた正味燃焼熱が18,875KBTU/lbである無臭ディーゼル生成物が生成した。
【0143】
無臭ディーゼル生成物は、ディーゼル生成物に臭気を加えない濃度で、キシレンに溶解した潤滑添加剤を添加することができる。
【表5】

【0144】
(例6)
例2で調製したのと同様な無臭ディーゼル燃料組成物19.7mgは、燃焼室に投入した。燃料は、7秒間燃焼室に投入し、次いでスパークプラグで点火した。投入時において、室圧は、1560バールであった。燃焼室は、約15%の酸素を含み、残部が不活性ガスであるガスで満たした。燃焼室のガス密度は、22.8kg/mであった。燃焼室の温度は、1000Kであり、燃焼室の圧力は、60バールであった。燃焼室は、4ストロークディーゼルエンジンの1気筒バージョンであった。インジェクタは、第2世代Bosch Common−Railであり、ノズル直径(1孔)が0.090mm、ノズル形状がKS1.5/0.86であった。
【0145】
すす(soot)の厚さの測定は、燃焼室の光学的に測定可能な区画で実施した。燃焼サイクルの終了時で、無臭ディーゼル燃料組成物は、以下の結果であった。
【表6】

【0146】
表6で明らかなように、例2で調製した無臭ディーゼルでは、超低イオウディーゼルを燃焼した場合に残留するすすより無臭ディーゼルの燃焼でもたらされるすすのほうが少ない。したがって、本発明の無臭ディーゼルを用いた場合、粒子状物質が低減するとみなすことができる。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)イオウ含量は10ppm未満、
(b)引火点は50℃超、
(c)式
=A+10(A
[式中、Aは272ナノメートルでのUV吸光度であり、Aは310ナノメートルでのUV吸光度である。]によって求められるUV吸光度、Aは1.5未満であり、
(d)ナフテン含量は5%超、
(e)曇り点は−12℃未満、
(f)窒素含量は10ppm未満、及び
(g)5%蒸留点は300F超、95%蒸留点は600F超である、石油由来のディーゼル燃料組成物。
【請求項2】
イオウ含量が6ppm未満である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
ASTM D2887によって測定された5%蒸留点が320°F超である、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
ASTM D2887によって測定された5%蒸留点が340°F超である、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
ASTM D2887によって測定された5%蒸留点が375°F超である、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
潤滑添加剤パッケージをさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
潤滑添加剤パッケージがモノカルボキシル脂肪酸、アミド、エステル又はそれらの混合物を含む、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
沸点範囲が約300°F〜約730°Fである、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
芳香族含量が10重量%未満である、請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
40℃の粘度が4.1mm/Cst未満である、請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
正味の燃焼熱が18,000Btu/lb超である、請求項1に記載の組成物。
【請求項12】
石油由来の燃料組成物を調製するための方法であって、
(a)イオウが少なくとも50ppmであり、芳香族含量が少なくとも25重量%である炭化水素原料を、VI族又は非貴金属のVIII族又はそれらの混合物を含む水素化処理触媒上で反応器系に供給し、それによって水素化処理生成物を生成すること、
(b)水素化処理生成物を少なくとも1つの分離ユニットに供給し、それによってイオウ含量が50重量ppm未満である生成物ストリームを分離すること、
(c)生成物ストリームを貴金属水素化触媒上で水素化反応器系に供給し、それによって水素化生成物を生成すること、及び
(d)水素化生成物を少なくとも1つの分離ユニットに供給し、それによってディーゼル生成物ストリームを生成することであって、ディーゼル生成物ストリームは、芳香族含量が7.5重量%未満、イオウ含量が10ppm未満、引火点が50℃超であることを含む上記方法。
【請求項13】
水素化処理触媒が、ニッケル−モリブデン触媒、ニッケル−タングステン触媒、モリブデン−タングステン触媒、ニッケル−モリブデン触媒、及びモリブデン−コバルト触媒からなる群から選択される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
水素化触媒が、白金、パラジウム又はそれらの混合物を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
石油由来の燃料組成物を調製するための方法であって、
(a)イオウが少なくとも50ppm、芳香族含量が少なくとも25重量%である炭化水素原料を、VI族元素又は非貴金属のVIII族元素又はそれらの混合物を含む水素化処理触媒上で第1の反応器系に供給し、それによって水素化処理生成物を生成すること、
(b)水素化処理生成物を水素化分解触媒上で第2の反応器系に供給し、それによって水素化分解生成物を生成すること、
(c)水素化分解生成物を少なくとも1つの分離ユニットに供給し、それによって水素化分解生成物を第1の生成物ストリームと第2の生成物ストリームとに分離すること、
(d)触媒を含む少なくとも1つの反応器に第2の生成物ストリームを供給してパラフィンをイソパラフィンに転換し、それによって脱ロウ生成物を生成すること、
(e)水素化触媒を含む少なくとも1つの反応器に脱ロウ生成物を供給して最終水素化し、それによって最終水素化生成物を生成すること、
(f)最終水素化生成物を少なくとも1つの分離ユニットに供給し、それによって最終水素化生成物をディーゼル生成物ストリームと少なくとも1つの基油生成物ストリームとに分離することであって、ディーゼル生成物ストリームは、芳香族含量が7.5重量%未満、イオウ含量が10ppm未満、引火点が50℃超であることを含む上記方法。
【請求項16】
石油由来の燃料組成物を調製するための方法であって、
(a)高活性卑金属触媒を含む反応器系に炭化水素原料を供給し、それによって炭化水素原料を水素化し、水素化生成物を生成すること、並びに
(b)水素化生成物を少なくとも1つの分離ユニットに供給し、それによって水素化生成物を、ナフサ生成物ストリーム、ジェット生成物ストリーム及びディーゼル生成物ストリームに分離することであって、ディーゼル生成物ストリームは、芳香族含量が7.5重量%未満、イオウ含量が10ppm未満、引火点が50℃超であることを含む上記方法。
【請求項17】
高活性卑金属触媒が、VI族卑金属及びVIII族貴金属を含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
石油由来の燃料組成物を調製するための方法であって、
(a)イオウが100重量ppm未満である炭化水素原料を高活性貴金属触媒上で反応器系に供給し、それによって水素化生成物を生成すること、
(b)水素化生成物を少なくとも1つの分離ユニットに供給し、それによってディーゼル生成物ストリームを生成することであって、ディーゼル生成物ストリームは、芳香族含量が7.5重量%未満、イオウ含量が10ppm未満、引火点が50℃超であることを含む上記方法。
【請求項19】
高活性貴金属触媒が、白金、パラジウム又はそれらの混合物を含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
請求項1に記載の燃料組成物を内燃エンジン内に射出すること、及びその燃料組成物を燃焼することを含む、内燃エンジンのすすを低減する方法。


【図1】
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【図1a】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2013−514433(P2013−514433A)
【公表日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−544584(P2012−544584)
【出願日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際出願番号】PCT/US2010/058697
【国際公開番号】WO2011/084278
【国際公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【出願人】(503148834)シェブロン ユー.エス.エー. インコーポレイテッド (258)
【Fターム(参考)】