デュアルバンド結合VCO
2つの電圧制御発信部VCO1、VCO2を備えるデュアルバンド可能電圧制御発振VCO回路において、電圧制御発振部VCO1、VCO2は、少なくとも2つの結合伝送線TL1、TL2を介して同調および接続され、伝送線[TL1、TL2)は、2つの形態のうち1つにしたがって動作して、同調された発振部(VCO1、VCO2)の組み合わせたインダクタンスと電圧制御発振回路(VCO)の発振周波数とを変動させる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、広く電圧制御発振器に関し、特に位相ノイズパフォーマンスが改善されたデュアルバンド電圧制御発振器(VCO)に関する。
【背景技術】
【0002】
無線通信システムの発展により、モノリシックに集積された低コストの低位相ノイズ電圧制御発振器(VCO)の需要が増大している。同時に、種々の周波数帯域を利用するいくつかの通信規格の発展により、研究者はマルチバンドおよびマルチスタンドの送受信機の開発を強いられている。こうして、研究者はマルチバンドVCO、特にデュアルバンドVOCの探索を強いられることとなった。かかる送受信機における主な需要の1つが、位相ノイズパフォーマンスが良好なマルチバンドVCOの必要性である。
【0003】
周知のマルチバンドVCOは様々な手法によって実現されている。周知の手法の1つは、図1a〜cに示すようにLC共振器にスイッチトキャパシタまたはスイッチトインダクタを用いることである[1]、[2]。したがって、切替器Vswitchを用いることで共振器のインダクタンスまたは静電容量が変動し、その結果、発振周波数帯域も変動する。あるいは、図2および図3に示すように共振器内の相互インダクタンスを切り替えることによって共振器の全インダクタンスを変動させることができる[3]、[4]。
【0004】
上述の周知の解決手段は全て共通の問題を抱えている。切替器の寄生抵抗がそれであり、実際の切替器あるいはスイッチト相互インダクタンスが共振器の品質因子Qを下げる。その結果、VCO全体の位相ノイズパフォーマンスが下がる。切替器の物理的サイズを大きくすることで寄生抵抗をある程度小さくすることはできるが、寄生静電容量が大きいと、チューニング周波数範囲が狭くなってしまう。
【0005】
さらに別の周知の手法は、2つの異なる周波数のVCOを組み合わせて構成し、この2つのVCOに共振器の一部を共有させるというものであった。[5]によれば、バイアス電流を切り替えることで、片方のVCOが作動し、他方が停止する。例えば、図4に示すように2つのVCOがある。VCO1の共振器は変圧器の1つのポートとキャパシタとからなり、VCO2の共振器は変圧器の2つのポートとキャパシタとからなる。したがって、2つの電圧制御発振器VCO1、VCO2は異なる発振周波数を有し、スイッチト電圧バイアスによって制御される。別の例を図5に示しており[6]、それぞれのバイアス電流Id、Icを切り替えることで、2つの電圧制御発振器VCO1、VCO2のいずれかをオンにすることができる。この2つの発振器はそれぞれの周波数で発振するため、デュアルバンドVCOが得られる。
【0006】
上述のスイッチトバイアス電流だと、VCOは一度に1つしか作動しないのだが、それでも非アクティブあるいはスタンバイ中のVCOは共振器に接続されており、その結果、オフのVCOにおけるアクティブな装置の寄生抵抗および静電容量が動作中のVCOに対してある望ましくない効果を及ぼす。
【0007】
以上の問題のため、位相ノイズパフォーマンスを小さくした改良デュアルバンド電圧制御発振器が必要なのである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は、改良デュアルバンド電圧制御発振器を提供することである。
【0009】
本発明のさらなる課題は、位相ノイズパフォーマンスを小さくしたデュアルバンド電圧制御発振器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
基本的な実施形態によれば、本発明に係るデュアルバンド可能電圧制御発振回路VCOが、2つの電圧制御発振部VCO1、VCO2を備え、電圧制御発振部VCO1、VCO2は、少なくとも2つの結合伝送線TL1、TL2を介して同調および接続されている。伝送線TL1、TL2は2つの形態のうち1つにしたがって動作して、同調された発振部(VCO1、VCO2)の組み合わせたインダクタンスを変動させ、それによって電圧制御発振回路VCOの発振周波数とを変動させることを可能とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明の効果は、
‐位相ノイズパフォーマンスが改善されたデュアルバンド電圧制御発振器
を含む。
【図面の簡単な説明】
【0012】
本発明は、そのさらなる課題および効果とともに、添付図面と併せて行う以下の説明を参照することで最も良く理解されよう。
【0013】
【図1a】図1aは、周知の再構成可能デュアルバンド電圧制御発振器の説明図である。
【図1b】図1bは、別の周知の再構成可能デュアルバンド電圧制御発振器の説明図である。
【図2】図2は、周知のスイッチト共振器の説明図である。
【図3】図3は、さらなる周知のスイッチト共振器の説明図である。
【図4】図4は、周知のデュアルバンドVCOの説明図である。
【図5】図5は、別の周知のデュアルバンドVCOの説明図である。
【図6】図6は、本発明に係るデュアルバンドVCOの一実施形態の説明図である。
【図7】図7は、本発明に係るデュアルバンドVCOの別の実施形態の説明図である。
【図8】図8は、本発明の一実施形態に係る交差結合デュアルバンドVCOの説明図である。
【図9a】図9aは、本発明の一実施形態に係るハートレーVCOの説明図である。
【図9b】図9bは、本発明の一実施形態に係るコルピッツVCOの説明図である。
【図10】図10は、本発明の一実施形態に係る差動デュアルバンドコルピッツVCOの説明図である。
【図11】図11は、本発明の一実施形態に係るデュアルバンドVCOの説明図である。
【図12a】図12aは、負の抵抗に対する周波数反応を示すグラフである。
【図12b】図12bは、本発明の実施形態と組み合わせて使用可能なデュアルバンド増幅器を示す。
【図13】図13は、本発明の一実施形態に係るデュアルバンド交差結合VCOを示す。
【図14a】図14aは、本発明の一実施形態に係るデュアルバンドハートレーVCOを示す。
【図14b】図14bは、本発明の一実施形態にデュアルバンドコルピッツVCOを示す。
【図15】図15は、本発明に係る作動デュアルバンドコルピッツVCOを示す。
【0014】
略語
CMOS Complementary Metal Oxide Semiconductor transistor
相補性金属酸化膜半導体トランジスタ
IC Integrated Circuit
集積回路
TL Transmission Line
伝送線
VCO Voltage Controlled Oscillator
電圧制御発振器
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明について、デュアル周波数帯域、あるいはさらに多重の周波数帯域を用いるいかなる通信技術にも適用可能な一般的集積回路スキームにおいて議論する。提案するVCOトポロジーは、例えばCMOS、バイポーラ、シリコン、GaAsなど、いかなる半導体技術においても実施可能である。かかるVCOトポロジーは、チップ上に完全に集積することも可能であるが、別個のコンポーネント、あるいはICと別個のコンポーネントとの混合で作成することも可能である。
【0016】
結合伝送線対の全インダクタンスLi(i=1,2)は、自己インダクタンスLs,jおよび相互インダクタンスM(相互インダクタンスおよびドットコンベンションのさらなる説明について付録1を参照)で定められる。伝送線は2つの動作形態、すなわち偶形態および奇形態を有する。したがって、偶形態における動作についてはLi=Ls,j+Mであり、奇形態における動作についてはLi=Ls,i−Mである。結果的に、結合伝送線TLの動作形態を制御することで、全インダクタンスを変動させることが可能であり、その結果、数式(1)にしたがって結合VCOの発振周波数を変化させることができる。
【0017】
【数1】
【0018】
本発明は、一般的に、2つの結合電圧制御発振器VCO1、VCO2に基づくデュアルバンド電圧制御発振器VCOに関する。2つの発振器は結合伝送線TLを介して同調される。結合伝送線の偶形態または奇形態を切り替えることで、発振器ごとにLC共振器のインダクタンスが変動し、組み合わせた電圧制御発振器の発振周波数帯域も変動する。さらに、結合VCOは周知の単一VCOよりも良好な位相ノイズパフォーマンスを有する。
【0019】
本発明は、少なくとも2つの結合同調電圧制御発振器VCO1、VCO2を備えた一般的な改良デュアルバンドVCOのさまざまな実施形態を開示する。発振器は相互インダクタンス結合伝送線対TL1、TL2を介して結合される。相互インダクタンス結合伝送線対TL1、TL2は、結合伝送線対TL1、TL2の動作形態を切り替え可能とするように配列されたものであり、電圧制御発振器のデュアル動作形態を提供する。
【0020】
図6および図7を参照すると、ある実施形態によれば、切り替え動作は、結合伝送線対TL1、TL2と交わる切替器Vswitchによって可能となる。示した図式においては、電圧制御発振器VCO1、VCO2それぞれは、負の抵抗器−RおよびキャパシタC、また提案するVCOにおける結合伝送線TL1、TL2で表されている。ここで、−Rは、それぞれの電圧制御発振器VCO1、VCO2の電力増幅器が与える負の抵抗を表している。切替器は結合伝送線端(図6)または結合伝送線対の中央部分(図7)に位置する。電力増幅器は、組み合わせたVCOにおける両周波数帯域、例えば偶奇両形態、を維持するに十分なゲインを有することが好ましい。
【0021】
上述のデュアルバンドVCOは、周知の解決手段と比較して位相ノイズパフォーマンスが改善された電圧制御発振器を提供する。
【0022】
設けられた切替器は結合伝送線対の動作形態を制御する。すなわち、切替器がオンの場合、結合伝送線対TL1、TL2は偶形態fevenで動作し、相互インダクタンスMは正である。その結果、結合VCOは低周波数帯域で作動する(数式1参照)。逆に、切替器がオフの場合、結合伝送線対TL1、TL2は奇形態foddで動作し、相互インダクタンスMは負である。したがって、組み合わせたVCOは高周波数帯域で作動する。
【0023】
結合伝送線TL1、TL2の相互インダクタンスMの加減によって、2つの動作形態間の周波数の差が変動する。相互インダクタンスMは、2つの結合伝送線TL1、TL2の間の距離、結合部分の長さ、伝送線の位置に依存する。言い換えると、伝送線がどれだけ離れているか、伝送線がどれだけ長いか、伝送線が同一平面上および/または重なっているかどうか、ということである。
【0024】
2つの結合VCOと相互インダクタンス誘導伝送線対とを組合せて用いることで、電圧制御発振器全体の発振周波数帯域を変動させること、および2つの単一VCOを同調させることが可能である。
【0025】
図8、9a、9bを参照すると、同調電圧制御発振器と結合伝送線との組合せの発想は、種々の電圧制御発振器およびかかる発振器の組合せに適用可能である。
【0026】
図8を参照すると、ある実施形態によって、2つの交差結合VCOが、相互インダクタンス伝送線対TLDを介して同調および結合されている。伝送線対TLDの動作形態の切り替えは、伝送線TL1、TL2の第1端、第2端にそれぞれ接続された2つの切替器VSWITCHによって可能である。
【0027】
図9aを参照すると、さらなる実施形態によって、デュアルバンドハートレー(Hartley)VCOが、2対の伝送線TLD、TLgを介して結合された2つのハートレー電圧制御発振器を備えており、2対の伝送線TLD、TLgそれぞれにはスイッチVswitchが設けられている。
【0028】
図9bを参照すると、さらなる実施形態が、結合伝送線対TLgを介して同調および結合された2つのコルピット電圧制御発振器を備えたデュアルバンドコルピッツ(Colpitts)VCOを開示する。伝送線対の動作形態は、伝送線対の第1端同士の間に接続されたスイッチを用いて可能となる。
【0029】
加えて、図示はしていないが、本発明は、少なくとも2つのクラップ(Clapp)VCOを備えたデュアルバンド電圧制御発振器に適用することも可能である。上記VCOは全てLC共振器を有するため、インダクタまたはインダクタの一部を結合して、デュアルバンドVCOを構成することが可能である。
【0030】
図10を参照すると、本発明の一般的発想を用いて差動VCOを構成し、結合伝送線の動作形態にかかわらずに差分信号を提供することが可能である。図10に示すように、この例は、本発明に係る2つの同調デュアルバンドコルピッツVCOに基づいており、同調デュアルバンドコルピッツVCOはそれぞれ、2つの同調コルピッツVCOと、結合伝送線対TLgと、上記伝送線におけるスイッチとを備える。この実施形態では、トランジスタM1、M2が常に差動的に動作しており、そのベースまたはエミッタにおいて差分信号が提供可能である。図8に開示する交差結合デュアルバンドVCOも差分信号を伝達するものとすることができることに留意すべきである。
【0031】
本発明のさらなる実施形態および態様によれば、実際の切替器を伝送線に配列せずに、同調電圧制御発振器と結合伝送線とを用いることも等しく可能である。その代わり、各VCOの電力増幅器ゲインを様々な周波数帯域間で切り替えたり、変動させたりする。このように、組み合わせたVCOに唯一の周波数帯域で発振させることが可能である。そのためこの発振周波数では、発振条件を満たすにはVCOループゲインを1以上とすることしかできない。その周波数は結合伝送線の1つの動作形態に対応している。別の発振周波数帯域または伝送線動作形態だと、VCO発振を与えるには電力ゲインが小さすぎる。
【0032】
提案する増幅器ゲイン切り替え解決手段の単純化した図式を図11に示す。図12aのグラフに示すような、組み合わせたVCOが1つの周波数帯域で動作するように維持する電力ゲインを与えるためには、電圧制御発振器VCO1、VCO2ごとにデュアルバンド増幅器が必要である。原理的には、切り替え可能であれば、いかなるデュアルバンド増幅器を使用することも可能である。例えば、図12bにおいては、スイッチトデュアルバンド増幅器を示しており、スイッチトソース低下を用いて、様々な周波数帯域におけるゲイン制御を行う。
【0033】
この実施形態は、共振周波数fevenをもつ共振回路を構成する並列接続したインダクタLSとキャパシタCSと(切替器M2の寄生キャパシタと)を備える。
【0034】
【数2】
【0035】
したがって、切替器M2がオンの場合、共振器はfevenでインピーダンスが最大となり、fevenで増幅器のゲインを最低とする。周波数が高いと、共振器はインピーダンスが極めて低い静電容量性となり、その結果、増幅器が高いゲインを有する。この場合、電圧制御発振器はfoddの高周波数帯域で動作することとなる。また、切り替えM2がオフの場合、インダクタLsは、周波数とともにインピーダンスが増加するソース低下となり、したがって増幅器はfevenで高いゲインを、foddで低いゲインを示す。この場合、VCOはfevenの低周波数帯域で発振することとなる。
【0036】
その結果、増幅器ゲインの周波数反応を変化させることで、提案するVCOのデュアルバンド切り替えが実現される。これについては、上述の切り替え実施形態と同様に様々なVCOトポロジーに適用可能である。特に、伝送線にスイッチを設けることなく、図8〜10を参照して説明したものと同一機構の同調電圧制御発振器に適用することができる。その代わり、それぞれのVCOに設けるスイッチト電力増幅器によって切り替えが提供される。図13、14a、14bを参照すると、デュアルバンド交差結合VCO(図13)、デュアルバンドハートレーVCO(図14a)、デュアルバンドコルピッツVCO(図14b)など。
【0037】
最後に、提案するデュアルバンドVCOを用いて差動VCOを構成し、両伝送線形態の差分信号を生成することができる。図15に示すように、2つのデュアルバンドコルピッツVCOを同調して、トランジスタM1、M2のベースまたはエミッタから差分信号を取り出すことができる。また、図13のデュアルバンド交差結合VCOを用いて差分信号を提供することも可能である。
【0038】
本発明の種々の実施形態の効果は以下を含む。
結合伝送線に交わる切替器を用いる場合、切替器がオンであるかオフであるかにかかわらず、各切替器を流れる電流は非常に小さいため、切替器における電力消失は非常に小さい。つまり、切替器によるQ低下は無視できるということである。これにより、提案するVCOには、スイッチトインダクタまたはキャパシタもしくはスイッチト相互インダクタンスを用いるデュアルバンドVCOよりも位相ノイズパフォーマンスが良好であるという効果が与えられる。後者の場合は、切替器がオンの場合に切替器を大きな交流電流が流れる。これにより共振器のQが低下することがある。
【0039】
デュアルバンドスイッチト電力増幅器を用いる場合、切替器自体はVCOの共振器の一部ではない。その結果、VCOの位相ノイズは、切替器の寄生抵抗および静電容量の影響を受けやすいものではない。
【0040】
提案するVCOでは2つの結合VCOを同調させるが、これによって位相ノイズを低減させるという利点がある。対照的に、スイッチトバイアスを用いるデュアルバンドVCO[5]、[6]は、作動するVCOを1度に1つしかもたない。スタンバイ中のVCOは位相ノイズの低下には何の貢献もせず、それどころかアクティブな装置の寄生抵抗および静電容量が共振器Qを低減させ、したがって位相ノイズが増加する。
【0041】
当業者であれば、添付の特許請求の範囲が定める本発明の範囲を逸脱することなく、本発明に様々な修正や変更を行うことができるとわかるであろう。
【0042】
参考文献
[1]A.Mazzanti,P.Uggetti,R.Battaglia,並びにF.Svelto,“Analysis and design of a dual−band reconfigurable VCO”,Proc.Of the 2004 11th IEEE Electronics,Circuits and Systems,37〜41ページ,2004年
[2]S.S.Broussev,T.A.Lehtonen,並びにN.T.Tchamov,“A wideband low phase noise LC−VCO with programmable Kvco”,IEEE Microwave and Wireless Components Letters,2007年
[3]J.Cabanillas,“Coupled−inductor multi−band VCO”,米国特許出願公開第2006/0033587(A1)号明細書
[4]R.S.Kaltenecker,“Optimum RF VCO structure”,米国特許第6943635(B1)号明細書
[5]A.Bevilacqua,F.P.Pavan,C.Sandner,A.Gerosa,並びにA.Neviani,“Transformer−based dual−mode voltage−controlled oscillators”,IEEE Trans.on Circuits and Systems−II,2007年
[6]D.Back,J.Kim,並びにS.Hong,“A dual−band(13/22−GHz)VCO based on resonant mode switching”,IEEE Microwave and Guided Wave Letters,Vol.13,No.10,443〜445ページ,2003年10月
[7]H.Jacobssonら.“Very low phase−noise fully integrated coupled VCOs”,in Proc.IEEE Radio Frequency Integrated Circuits Symp.2002,577〜585ページ
【0043】
付録1
相互インダクタンス
相互インダクタンスMは、あるインダクタを流れる電流が近くのインダクタに電圧を誘導することができるという発想である。これは、変圧器を機能させる機構として重要なものであるが、回路内の導線間に結合を引き起こす可能性もある。
【0044】
相互インダクタンスMは、2つのインダクタ間の結合の大きさでもある。回路iによる回路jに対する相互インダクタンスは、二重積分ノイマン公式で与えられる。
【0045】
【数3】
【0046】
ドットコンベンション
回路解析では、ドットコンベンションを用いて、2つの構成要素の相互インダクタンスの電圧極性を表す。(本開示の図4を参照)。
【0047】
このコンベンションについて良い考え方が2つある。
1.あるドット(どちらかのドット)に流入する電流は、もう片方のドットから「出て来よう」とする。「に」とはドットからインダクタへという意味であり、逆に「から」とはインダクタからドットへという意味である。
2.インダクタの被ドット端末に流入する電流が、もう片方のドットに正の電圧を誘導する。逆に、被ドット端末から流出する電流が、もう片方のドットに負の電圧を誘導する。
【図1(a)】
【図1(b)】
【技術分野】
【0001】
本発明は、広く電圧制御発振器に関し、特に位相ノイズパフォーマンスが改善されたデュアルバンド電圧制御発振器(VCO)に関する。
【背景技術】
【0002】
無線通信システムの発展により、モノリシックに集積された低コストの低位相ノイズ電圧制御発振器(VCO)の需要が増大している。同時に、種々の周波数帯域を利用するいくつかの通信規格の発展により、研究者はマルチバンドおよびマルチスタンドの送受信機の開発を強いられている。こうして、研究者はマルチバンドVCO、特にデュアルバンドVOCの探索を強いられることとなった。かかる送受信機における主な需要の1つが、位相ノイズパフォーマンスが良好なマルチバンドVCOの必要性である。
【0003】
周知のマルチバンドVCOは様々な手法によって実現されている。周知の手法の1つは、図1a〜cに示すようにLC共振器にスイッチトキャパシタまたはスイッチトインダクタを用いることである[1]、[2]。したがって、切替器Vswitchを用いることで共振器のインダクタンスまたは静電容量が変動し、その結果、発振周波数帯域も変動する。あるいは、図2および図3に示すように共振器内の相互インダクタンスを切り替えることによって共振器の全インダクタンスを変動させることができる[3]、[4]。
【0004】
上述の周知の解決手段は全て共通の問題を抱えている。切替器の寄生抵抗がそれであり、実際の切替器あるいはスイッチト相互インダクタンスが共振器の品質因子Qを下げる。その結果、VCO全体の位相ノイズパフォーマンスが下がる。切替器の物理的サイズを大きくすることで寄生抵抗をある程度小さくすることはできるが、寄生静電容量が大きいと、チューニング周波数範囲が狭くなってしまう。
【0005】
さらに別の周知の手法は、2つの異なる周波数のVCOを組み合わせて構成し、この2つのVCOに共振器の一部を共有させるというものであった。[5]によれば、バイアス電流を切り替えることで、片方のVCOが作動し、他方が停止する。例えば、図4に示すように2つのVCOがある。VCO1の共振器は変圧器の1つのポートとキャパシタとからなり、VCO2の共振器は変圧器の2つのポートとキャパシタとからなる。したがって、2つの電圧制御発振器VCO1、VCO2は異なる発振周波数を有し、スイッチト電圧バイアスによって制御される。別の例を図5に示しており[6]、それぞれのバイアス電流Id、Icを切り替えることで、2つの電圧制御発振器VCO1、VCO2のいずれかをオンにすることができる。この2つの発振器はそれぞれの周波数で発振するため、デュアルバンドVCOが得られる。
【0006】
上述のスイッチトバイアス電流だと、VCOは一度に1つしか作動しないのだが、それでも非アクティブあるいはスタンバイ中のVCOは共振器に接続されており、その結果、オフのVCOにおけるアクティブな装置の寄生抵抗および静電容量が動作中のVCOに対してある望ましくない効果を及ぼす。
【0007】
以上の問題のため、位相ノイズパフォーマンスを小さくした改良デュアルバンド電圧制御発振器が必要なのである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は、改良デュアルバンド電圧制御発振器を提供することである。
【0009】
本発明のさらなる課題は、位相ノイズパフォーマンスを小さくしたデュアルバンド電圧制御発振器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
基本的な実施形態によれば、本発明に係るデュアルバンド可能電圧制御発振回路VCOが、2つの電圧制御発振部VCO1、VCO2を備え、電圧制御発振部VCO1、VCO2は、少なくとも2つの結合伝送線TL1、TL2を介して同調および接続されている。伝送線TL1、TL2は2つの形態のうち1つにしたがって動作して、同調された発振部(VCO1、VCO2)の組み合わせたインダクタンスを変動させ、それによって電圧制御発振回路VCOの発振周波数とを変動させることを可能とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明の効果は、
‐位相ノイズパフォーマンスが改善されたデュアルバンド電圧制御発振器
を含む。
【図面の簡単な説明】
【0012】
本発明は、そのさらなる課題および効果とともに、添付図面と併せて行う以下の説明を参照することで最も良く理解されよう。
【0013】
【図1a】図1aは、周知の再構成可能デュアルバンド電圧制御発振器の説明図である。
【図1b】図1bは、別の周知の再構成可能デュアルバンド電圧制御発振器の説明図である。
【図2】図2は、周知のスイッチト共振器の説明図である。
【図3】図3は、さらなる周知のスイッチト共振器の説明図である。
【図4】図4は、周知のデュアルバンドVCOの説明図である。
【図5】図5は、別の周知のデュアルバンドVCOの説明図である。
【図6】図6は、本発明に係るデュアルバンドVCOの一実施形態の説明図である。
【図7】図7は、本発明に係るデュアルバンドVCOの別の実施形態の説明図である。
【図8】図8は、本発明の一実施形態に係る交差結合デュアルバンドVCOの説明図である。
【図9a】図9aは、本発明の一実施形態に係るハートレーVCOの説明図である。
【図9b】図9bは、本発明の一実施形態に係るコルピッツVCOの説明図である。
【図10】図10は、本発明の一実施形態に係る差動デュアルバンドコルピッツVCOの説明図である。
【図11】図11は、本発明の一実施形態に係るデュアルバンドVCOの説明図である。
【図12a】図12aは、負の抵抗に対する周波数反応を示すグラフである。
【図12b】図12bは、本発明の実施形態と組み合わせて使用可能なデュアルバンド増幅器を示す。
【図13】図13は、本発明の一実施形態に係るデュアルバンド交差結合VCOを示す。
【図14a】図14aは、本発明の一実施形態に係るデュアルバンドハートレーVCOを示す。
【図14b】図14bは、本発明の一実施形態にデュアルバンドコルピッツVCOを示す。
【図15】図15は、本発明に係る作動デュアルバンドコルピッツVCOを示す。
【0014】
略語
CMOS Complementary Metal Oxide Semiconductor transistor
相補性金属酸化膜半導体トランジスタ
IC Integrated Circuit
集積回路
TL Transmission Line
伝送線
VCO Voltage Controlled Oscillator
電圧制御発振器
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明について、デュアル周波数帯域、あるいはさらに多重の周波数帯域を用いるいかなる通信技術にも適用可能な一般的集積回路スキームにおいて議論する。提案するVCOトポロジーは、例えばCMOS、バイポーラ、シリコン、GaAsなど、いかなる半導体技術においても実施可能である。かかるVCOトポロジーは、チップ上に完全に集積することも可能であるが、別個のコンポーネント、あるいはICと別個のコンポーネントとの混合で作成することも可能である。
【0016】
結合伝送線対の全インダクタンスLi(i=1,2)は、自己インダクタンスLs,jおよび相互インダクタンスM(相互インダクタンスおよびドットコンベンションのさらなる説明について付録1を参照)で定められる。伝送線は2つの動作形態、すなわち偶形態および奇形態を有する。したがって、偶形態における動作についてはLi=Ls,j+Mであり、奇形態における動作についてはLi=Ls,i−Mである。結果的に、結合伝送線TLの動作形態を制御することで、全インダクタンスを変動させることが可能であり、その結果、数式(1)にしたがって結合VCOの発振周波数を変化させることができる。
【0017】
【数1】
【0018】
本発明は、一般的に、2つの結合電圧制御発振器VCO1、VCO2に基づくデュアルバンド電圧制御発振器VCOに関する。2つの発振器は結合伝送線TLを介して同調される。結合伝送線の偶形態または奇形態を切り替えることで、発振器ごとにLC共振器のインダクタンスが変動し、組み合わせた電圧制御発振器の発振周波数帯域も変動する。さらに、結合VCOは周知の単一VCOよりも良好な位相ノイズパフォーマンスを有する。
【0019】
本発明は、少なくとも2つの結合同調電圧制御発振器VCO1、VCO2を備えた一般的な改良デュアルバンドVCOのさまざまな実施形態を開示する。発振器は相互インダクタンス結合伝送線対TL1、TL2を介して結合される。相互インダクタンス結合伝送線対TL1、TL2は、結合伝送線対TL1、TL2の動作形態を切り替え可能とするように配列されたものであり、電圧制御発振器のデュアル動作形態を提供する。
【0020】
図6および図7を参照すると、ある実施形態によれば、切り替え動作は、結合伝送線対TL1、TL2と交わる切替器Vswitchによって可能となる。示した図式においては、電圧制御発振器VCO1、VCO2それぞれは、負の抵抗器−RおよびキャパシタC、また提案するVCOにおける結合伝送線TL1、TL2で表されている。ここで、−Rは、それぞれの電圧制御発振器VCO1、VCO2の電力増幅器が与える負の抵抗を表している。切替器は結合伝送線端(図6)または結合伝送線対の中央部分(図7)に位置する。電力増幅器は、組み合わせたVCOにおける両周波数帯域、例えば偶奇両形態、を維持するに十分なゲインを有することが好ましい。
【0021】
上述のデュアルバンドVCOは、周知の解決手段と比較して位相ノイズパフォーマンスが改善された電圧制御発振器を提供する。
【0022】
設けられた切替器は結合伝送線対の動作形態を制御する。すなわち、切替器がオンの場合、結合伝送線対TL1、TL2は偶形態fevenで動作し、相互インダクタンスMは正である。その結果、結合VCOは低周波数帯域で作動する(数式1参照)。逆に、切替器がオフの場合、結合伝送線対TL1、TL2は奇形態foddで動作し、相互インダクタンスMは負である。したがって、組み合わせたVCOは高周波数帯域で作動する。
【0023】
結合伝送線TL1、TL2の相互インダクタンスMの加減によって、2つの動作形態間の周波数の差が変動する。相互インダクタンスMは、2つの結合伝送線TL1、TL2の間の距離、結合部分の長さ、伝送線の位置に依存する。言い換えると、伝送線がどれだけ離れているか、伝送線がどれだけ長いか、伝送線が同一平面上および/または重なっているかどうか、ということである。
【0024】
2つの結合VCOと相互インダクタンス誘導伝送線対とを組合せて用いることで、電圧制御発振器全体の発振周波数帯域を変動させること、および2つの単一VCOを同調させることが可能である。
【0025】
図8、9a、9bを参照すると、同調電圧制御発振器と結合伝送線との組合せの発想は、種々の電圧制御発振器およびかかる発振器の組合せに適用可能である。
【0026】
図8を参照すると、ある実施形態によって、2つの交差結合VCOが、相互インダクタンス伝送線対TLDを介して同調および結合されている。伝送線対TLDの動作形態の切り替えは、伝送線TL1、TL2の第1端、第2端にそれぞれ接続された2つの切替器VSWITCHによって可能である。
【0027】
図9aを参照すると、さらなる実施形態によって、デュアルバンドハートレー(Hartley)VCOが、2対の伝送線TLD、TLgを介して結合された2つのハートレー電圧制御発振器を備えており、2対の伝送線TLD、TLgそれぞれにはスイッチVswitchが設けられている。
【0028】
図9bを参照すると、さらなる実施形態が、結合伝送線対TLgを介して同調および結合された2つのコルピット電圧制御発振器を備えたデュアルバンドコルピッツ(Colpitts)VCOを開示する。伝送線対の動作形態は、伝送線対の第1端同士の間に接続されたスイッチを用いて可能となる。
【0029】
加えて、図示はしていないが、本発明は、少なくとも2つのクラップ(Clapp)VCOを備えたデュアルバンド電圧制御発振器に適用することも可能である。上記VCOは全てLC共振器を有するため、インダクタまたはインダクタの一部を結合して、デュアルバンドVCOを構成することが可能である。
【0030】
図10を参照すると、本発明の一般的発想を用いて差動VCOを構成し、結合伝送線の動作形態にかかわらずに差分信号を提供することが可能である。図10に示すように、この例は、本発明に係る2つの同調デュアルバンドコルピッツVCOに基づいており、同調デュアルバンドコルピッツVCOはそれぞれ、2つの同調コルピッツVCOと、結合伝送線対TLgと、上記伝送線におけるスイッチとを備える。この実施形態では、トランジスタM1、M2が常に差動的に動作しており、そのベースまたはエミッタにおいて差分信号が提供可能である。図8に開示する交差結合デュアルバンドVCOも差分信号を伝達するものとすることができることに留意すべきである。
【0031】
本発明のさらなる実施形態および態様によれば、実際の切替器を伝送線に配列せずに、同調電圧制御発振器と結合伝送線とを用いることも等しく可能である。その代わり、各VCOの電力増幅器ゲインを様々な周波数帯域間で切り替えたり、変動させたりする。このように、組み合わせたVCOに唯一の周波数帯域で発振させることが可能である。そのためこの発振周波数では、発振条件を満たすにはVCOループゲインを1以上とすることしかできない。その周波数は結合伝送線の1つの動作形態に対応している。別の発振周波数帯域または伝送線動作形態だと、VCO発振を与えるには電力ゲインが小さすぎる。
【0032】
提案する増幅器ゲイン切り替え解決手段の単純化した図式を図11に示す。図12aのグラフに示すような、組み合わせたVCOが1つの周波数帯域で動作するように維持する電力ゲインを与えるためには、電圧制御発振器VCO1、VCO2ごとにデュアルバンド増幅器が必要である。原理的には、切り替え可能であれば、いかなるデュアルバンド増幅器を使用することも可能である。例えば、図12bにおいては、スイッチトデュアルバンド増幅器を示しており、スイッチトソース低下を用いて、様々な周波数帯域におけるゲイン制御を行う。
【0033】
この実施形態は、共振周波数fevenをもつ共振回路を構成する並列接続したインダクタLSとキャパシタCSと(切替器M2の寄生キャパシタと)を備える。
【0034】
【数2】
【0035】
したがって、切替器M2がオンの場合、共振器はfevenでインピーダンスが最大となり、fevenで増幅器のゲインを最低とする。周波数が高いと、共振器はインピーダンスが極めて低い静電容量性となり、その結果、増幅器が高いゲインを有する。この場合、電圧制御発振器はfoddの高周波数帯域で動作することとなる。また、切り替えM2がオフの場合、インダクタLsは、周波数とともにインピーダンスが増加するソース低下となり、したがって増幅器はfevenで高いゲインを、foddで低いゲインを示す。この場合、VCOはfevenの低周波数帯域で発振することとなる。
【0036】
その結果、増幅器ゲインの周波数反応を変化させることで、提案するVCOのデュアルバンド切り替えが実現される。これについては、上述の切り替え実施形態と同様に様々なVCOトポロジーに適用可能である。特に、伝送線にスイッチを設けることなく、図8〜10を参照して説明したものと同一機構の同調電圧制御発振器に適用することができる。その代わり、それぞれのVCOに設けるスイッチト電力増幅器によって切り替えが提供される。図13、14a、14bを参照すると、デュアルバンド交差結合VCO(図13)、デュアルバンドハートレーVCO(図14a)、デュアルバンドコルピッツVCO(図14b)など。
【0037】
最後に、提案するデュアルバンドVCOを用いて差動VCOを構成し、両伝送線形態の差分信号を生成することができる。図15に示すように、2つのデュアルバンドコルピッツVCOを同調して、トランジスタM1、M2のベースまたはエミッタから差分信号を取り出すことができる。また、図13のデュアルバンド交差結合VCOを用いて差分信号を提供することも可能である。
【0038】
本発明の種々の実施形態の効果は以下を含む。
結合伝送線に交わる切替器を用いる場合、切替器がオンであるかオフであるかにかかわらず、各切替器を流れる電流は非常に小さいため、切替器における電力消失は非常に小さい。つまり、切替器によるQ低下は無視できるということである。これにより、提案するVCOには、スイッチトインダクタまたはキャパシタもしくはスイッチト相互インダクタンスを用いるデュアルバンドVCOよりも位相ノイズパフォーマンスが良好であるという効果が与えられる。後者の場合は、切替器がオンの場合に切替器を大きな交流電流が流れる。これにより共振器のQが低下することがある。
【0039】
デュアルバンドスイッチト電力増幅器を用いる場合、切替器自体はVCOの共振器の一部ではない。その結果、VCOの位相ノイズは、切替器の寄生抵抗および静電容量の影響を受けやすいものではない。
【0040】
提案するVCOでは2つの結合VCOを同調させるが、これによって位相ノイズを低減させるという利点がある。対照的に、スイッチトバイアスを用いるデュアルバンドVCO[5]、[6]は、作動するVCOを1度に1つしかもたない。スタンバイ中のVCOは位相ノイズの低下には何の貢献もせず、それどころかアクティブな装置の寄生抵抗および静電容量が共振器Qを低減させ、したがって位相ノイズが増加する。
【0041】
当業者であれば、添付の特許請求の範囲が定める本発明の範囲を逸脱することなく、本発明に様々な修正や変更を行うことができるとわかるであろう。
【0042】
参考文献
[1]A.Mazzanti,P.Uggetti,R.Battaglia,並びにF.Svelto,“Analysis and design of a dual−band reconfigurable VCO”,Proc.Of the 2004 11th IEEE Electronics,Circuits and Systems,37〜41ページ,2004年
[2]S.S.Broussev,T.A.Lehtonen,並びにN.T.Tchamov,“A wideband low phase noise LC−VCO with programmable Kvco”,IEEE Microwave and Wireless Components Letters,2007年
[3]J.Cabanillas,“Coupled−inductor multi−band VCO”,米国特許出願公開第2006/0033587(A1)号明細書
[4]R.S.Kaltenecker,“Optimum RF VCO structure”,米国特許第6943635(B1)号明細書
[5]A.Bevilacqua,F.P.Pavan,C.Sandner,A.Gerosa,並びにA.Neviani,“Transformer−based dual−mode voltage−controlled oscillators”,IEEE Trans.on Circuits and Systems−II,2007年
[6]D.Back,J.Kim,並びにS.Hong,“A dual−band(13/22−GHz)VCO based on resonant mode switching”,IEEE Microwave and Guided Wave Letters,Vol.13,No.10,443〜445ページ,2003年10月
[7]H.Jacobssonら.“Very low phase−noise fully integrated coupled VCOs”,in Proc.IEEE Radio Frequency Integrated Circuits Symp.2002,577〜585ページ
【0043】
付録1
相互インダクタンス
相互インダクタンスMは、あるインダクタを流れる電流が近くのインダクタに電圧を誘導することができるという発想である。これは、変圧器を機能させる機構として重要なものであるが、回路内の導線間に結合を引き起こす可能性もある。
【0044】
相互インダクタンスMは、2つのインダクタ間の結合の大きさでもある。回路iによる回路jに対する相互インダクタンスは、二重積分ノイマン公式で与えられる。
【0045】
【数3】
【0046】
ドットコンベンション
回路解析では、ドットコンベンションを用いて、2つの構成要素の相互インダクタンスの電圧極性を表す。(本開示の図4を参照)。
【0047】
このコンベンションについて良い考え方が2つある。
1.あるドット(どちらかのドット)に流入する電流は、もう片方のドットから「出て来よう」とする。「に」とはドットからインダクタへという意味であり、逆に「から」とはインダクタからドットへという意味である。
2.インダクタの被ドット端末に流入する電流が、もう片方のドットに正の電圧を誘導する。逆に、被ドット端末から流出する電流が、もう片方のドットに負の電圧を誘導する。
【図1(a)】
【図1(b)】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つの電圧制御発振部(VCO1、VCO2)を備えるデュアルバンド可能電圧制御発振(VCO)回路において、
前記電圧制御発振部(VCO1、VCO2)は、少なくとも2つの結合伝送線(TL1、TL2)を介して同調および接続されており、前記伝送線(TL1、TL2)は2つの形態のうち1つにしたがって動作して、同調された前記発振部(VCO1、VCO2)の組み合わせたインダクタンスと前記電圧制御発振回路(VCO)の発振周波数とを変動させることを可能とすることを特徴とするデュアルバンド可能電圧制御発振(VCO)回路。
【請求項2】
前記伝送線(TL1、TL2)は、偶形態または奇形態で動作することを特徴とする、請求項1に記載の回路。
【請求項3】
前記伝送線(TL1、TL2)の各々は、前記伝送線に配列されて前記2つのモード間の切り替えを可能とする少なくとも1つの切替部を備えることを特徴とする、請求項1に記載の回路。
【請求項4】
2つの切替部(Vswitch)が、それぞれ前記結合伝送線(TL1、TL2)の第1端と第2端とに配列され、それぞれ前記結合伝送線(TL1、TL2)の第1端と第2端とを接続することを特徴とする、請求項3に記載の回路。
【請求項5】
前記少なくとも1つの切替部は、前記2つの結合伝送線の各々の中央部分に配列され、前記2つの結合伝送線の各々の中央部分を接続することを特徴とする、請求項3に記載の回路。
【請求項6】
切替部が、各電圧制御発振部における増幅器の電力ゲインを制御することを特徴とする、請求項1に記載の回路。
【請求項7】
前記電力ゲインは、動作における前記2つの形態のいずれか1つでVCO発振を維持することに適したものであることを特徴とする、請求項6に記載の回路。
【請求項1】
2つの電圧制御発振部(VCO1、VCO2)を備えるデュアルバンド可能電圧制御発振(VCO)回路において、
前記電圧制御発振部(VCO1、VCO2)は、少なくとも2つの結合伝送線(TL1、TL2)を介して同調および接続されており、前記伝送線(TL1、TL2)は2つの形態のうち1つにしたがって動作して、同調された前記発振部(VCO1、VCO2)の組み合わせたインダクタンスと前記電圧制御発振回路(VCO)の発振周波数とを変動させることを可能とすることを特徴とするデュアルバンド可能電圧制御発振(VCO)回路。
【請求項2】
前記伝送線(TL1、TL2)は、偶形態または奇形態で動作することを特徴とする、請求項1に記載の回路。
【請求項3】
前記伝送線(TL1、TL2)の各々は、前記伝送線に配列されて前記2つのモード間の切り替えを可能とする少なくとも1つの切替部を備えることを特徴とする、請求項1に記載の回路。
【請求項4】
2つの切替部(Vswitch)が、それぞれ前記結合伝送線(TL1、TL2)の第1端と第2端とに配列され、それぞれ前記結合伝送線(TL1、TL2)の第1端と第2端とを接続することを特徴とする、請求項3に記載の回路。
【請求項5】
前記少なくとも1つの切替部は、前記2つの結合伝送線の各々の中央部分に配列され、前記2つの結合伝送線の各々の中央部分を接続することを特徴とする、請求項3に記載の回路。
【請求項6】
切替部が、各電圧制御発振部における増幅器の電力ゲインを制御することを特徴とする、請求項1に記載の回路。
【請求項7】
前記電力ゲインは、動作における前記2つの形態のいずれか1つでVCO発振を維持することに適したものであることを特徴とする、請求項6に記載の回路。
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9(a)】
【図9(b)】
【図10】
【図11】
【図12(a)】
【図12(b)】
【図13】
【図14(a)】
【図14(b)】
【図15】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9(a)】
【図9(b)】
【図10】
【図11】
【図12(a)】
【図12(b)】
【図13】
【図14(a)】
【図14(b)】
【図15】
【公表番号】特表2011−501608(P2011−501608A)
【公表日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−530953(P2010−530953)
【出願日】平成19年10月23日(2007.10.23)
【国際出願番号】PCT/SE2007/050770
【国際公開番号】WO2009/054760
【国際公開日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【出願人】(598036300)テレフオンアクチーボラゲット エル エム エリクソン(パブル) (2,266)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年10月23日(2007.10.23)
【国際出願番号】PCT/SE2007/050770
【国際公開番号】WO2009/054760
【国際公開日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【出願人】(598036300)テレフオンアクチーボラゲット エル エム エリクソン(パブル) (2,266)
【Fターム(参考)】
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