説明

データ記録装置及びデータ記録方法

【課題】車両のメインスイッチがオフにされる直前の段階で測定対象の測定データを取得するために好適な技術を提供する。
【解決手段】データ記録装置10のシステムコントロール部11は、車両を駐車する可能性のある目的地や自宅等の特定地点を示す地点情報と、現在地を示す位置情報とをナビゲーション装置20から取得する。また、車速、ブレーキ、方向指示器、ハザードランプ、シフトポジション等の車両状態を示す車両情報をパワートレイン・ボディ系ECU群30から取得する。現在地が特定地点周辺の所定範囲内にあり、かつ、車両情報で示される車両状態が駐車の兆候を示す所定の条件に適合すると判定した時点で、測定データ検出部40から測定対象の現時点での測定データを取得し、その取得した測定データを不揮発性メモリ12に記録する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両における測定対象の消耗状態を検出したデータを記録する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両が備えるタイヤの空気圧や、車載バッテリの残電力、自動車を始動するためのキーに内蔵されたキーバッテリの残電力は、燃費や車両の性能、利便性等と密接な関係がある。例えば、タイヤの空気圧の低下が低下すれば燃費が低下し、電気自動車の走行用バッテリの残電力が低下すれば、速度や走行可能距離等の走行性能に影響する。また、キーバッテリが消耗すれば、リモコン操作が不安定になり利便性が低下する等の影響がある。そのため、タイヤの空気圧や、車載バッテリ、キーバッテリ等の消耗状態をモニタし、そのモニタリングデータを活用することはメリットがある。そして、これらの消耗状態を測定し、その測定データを記録するデータ記録装置が実用化されつつある。
【0003】
ところで、タイヤの空気圧やバッテリの残電力といった測定対象は、車両のメインスイッチ(例えばエンジンスイッチ)がオフにされて主電源が遮断されている間にも徐々に消耗していく性質がある。そのため、主電源が遮断されている間の消耗量を正確に把握するためには、車両のメインスイッチがオフにされるタイミングでの測定データを取得することが肝要である。しかし、自動車では、メインスイッチをオフにしてしまうと搭載されている機器への電源供給も遮断されてしまうため、メインスイッチがオフにされてからデータを記録しようとしても手遅れであり、メインスイッチがオフにされる直前の段階で測定データを取得する手段が必要となる。
【0004】
特許文献1では、制御装置に電源供給を行う2系統のうち一方の電源供給系統が遮断されたとき、制御装置に対する電源供給が遮断される前段階であると判断して、制御データの退避を行う技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−113804号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1で開示された技術では、電源供給が遮断される前段階であることを検知するために電源供給系統を2つ設ける必要があり、これを車両各所に配設するとなると製造コストが高くなるという問題がある。また、メインスイッチのオフ操作に連動して電源系統を遮断する場合、2つ系統のうちの一方がデータ記録に要する時間分だけ遅延して遮断する手段が必要となり、設備が複雑化してしまう。
【0007】
一方、測定データを取得するための各種センサやデータ記録装置に対してメインスイッチがオフ時にも電源を供給するようにし、メインスイッチオフ後にも測定データを記録できるようにすることも発想できるが、このような方法では暗電流(エンジン停止の状態で消費される電流)の増加を招いてしまう。暗電流が多くなれば、エンジン停止中におけるバッテリの消耗が早まるといった弊害を生ずる。また、車両の設計段階において暗電流の大きさに上限が設けられる場合もあり、消耗状態のモニタリングによる暗電流の増加がこの制限に抵触することも考えられる。よって、各種センサやデータ記録装置に対してメインスイッチがオフ時にも電源を供給することは実用的ではない。
【0008】
本発明は、上記問題を鑑みなされており、車両のメインスイッチがオフにされる直前の段階で測定対象の測定データを取得するために好適な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するためになされた請求項1に記載のデータ記録装置は、車両における測定対象の消耗状態を測定する検出装置から取得した測定データを記憶媒体に記録するデータ記録装置であって、地点情報取得手段と、位置情報取得手段と、判定手段と、記録手段とを備える。
【0010】
このうち、地点情報取得手段は、検出装置へ電力を供給する車両の主電源回路が遮断される可能性のある特定地点を示す地点情報を取得する。位置情報取得手段は、車両の現在地を示す位置情報を取得する。判定手段は、地点情報取得手段及び位置情報取得手段により取得した地点情報及び位置情報に基づき、車両が特定地点周辺の所定範囲内に到達したか否かを判定する。記録手段は、判定手段により車両が特定地点周辺の所定範囲内に到達したと判定されたときに、検出装置からその時点での測定データを取得し、これを記録媒体に記録する。
【0011】
本発明では、車両の駐車に伴い主電源回路が遮断される可能性のある特定地点に接近したことを主電源回路が遮断される前段階と判断し、その時点で測定データの記録を行うことを特徴とする。このようにすることで、その特定地点で駐車した場合、主電源回路が遮断される直前に予め測定データを記録しておくことができる。
【0012】
ところで、車両の主電源回路が遮断される可能性のある特定地点としては、車両が駐車する場所を指定することが考えられる。車両を駐車して乗員が降車する際、車両のメインスイッチを切ってから降車することが多いためである。そして、車両が駐車する可能性が高い場所としては、車両の移動先、すなわち目的地が挙げられる。そこで、車両に搭載されているナビゲーション装置から、そのナビゲーション装置よる経路案内の目的地を示す地点情報を特定地点の地点情報として取得するように構成するとよい(請求項2)。
【0013】
車両に搭載されたナビゲーション装置において経路案内の目的地が設定されていれば、その目的地で駐車する可能性が高いと考えられる。よって、ナビゲーション装置から目的地の地点情報を取得することで、その目的地で駐車して主電源回路が遮断される前段階で測定データを予め記録しておくことができる。また、車両に搭載されているナビゲーション装置を利用して地点情報を取得することで、地点情報の取得先を別途用意する必要がなく、ナビゲーション装置の情報資源をより有効に利用することができる。
【0014】
また、ナビゲーション装置には、遠方から帰宅する際に自宅を目的地に設定する操作を簡単にするため、自宅の位置を予め登録しておく機能を備えたものがある。そして、ナビゲーション装置に自宅の位置を登録してある車両は、当然ながらその自宅で駐車する機会が多いと考えられる。そこで、車両に搭載されているナビゲーション装置から、そのナビゲーション装置に自宅として登録されている地点を示す地点情報を前記特定地点の地点情報として取得するように構成するとよい(請求項3)。
【0015】
個人が所有する乗用車が走行中に自宅へ接近したということは、帰宅して自宅に駐車する可能性が高いと考えられる。よって、ナビゲーション装置から自宅の地点情報を取得することで、自宅で駐車して主電源回路が遮断される前段階で測定データを予め記録しておくことができる。
【0016】
また、車両に搭載されているナビゲーション装置から、そのナビゲーション装置が備える地図データベースにおける駐車場を示す地点情報を前記特定地点の地点情報として取得するように構成してもよい(請求項4)。駐車場に接近、あるいは進入した場合、その駐車場に車両を停める可能性が高いと考えられる。よって、ナビゲーション装置が備える地図データベースから駐車場の地点情報を取得することで、その駐車場で駐車して主電源回路が遮断される前段階で測定データを予め記録しておくことができる。
【0017】
また、車両に搭載されているナビゲーション装置から、そのナビゲーション装置が保有する駐車位置の履歴情報における過去の駐車位置を示す地点情報を前記特定地点の地点情報として取得するように構成してもよい(請求項5)。過去に駐車したことのある特定の場所では、その後も同じ場所で再び駐車する場合が考えられる。よって、ナビゲーション装置から過去の駐車位置の地点情報を取得することで、その場所で再び駐車して主電源回路が遮断される前段階で測定データを予め記録しておくことができる。
【0018】
さらに、車両に搭載されているナビゲーション装置から、そのナビゲーション装置により特定された現在地を示す位置情報を取得するとよい。このようにすることで、位置情報の取得元を別途用意する必要がなく、ナビゲーション装置の情報資源をより有効に利用することができる。また、地点情報と位置情報とを併せてナビゲーション装置から取得するように構成すると更によい。
【0019】
ところで、車両が駐車して主電源回路が遮断される前段階であることを判断するには、駐車する可能性の高い特定地点へ接近したことを根拠にするだけでなく、車両状態に基づく駐車の兆候を加味して判断するように構成すれば、より確実性が増すと考えられる。
【0020】
そこで、請求項7に記載のように構成するとよい。すなわち、車両のブレーキの操作状態を示すブレーキ情報を取得するブレーキ情報取得手段を更に備える。判定手段は、ブレーキ情報取得手段により取得したブレーキ情報を加味して、現在地が特定地点周辺の所定範囲内にあり、かつ、ブレーキが稼働状態であるか否かを判定する。そして、記録手段は、現在地が特定地点周辺の所定範囲内にあり、かつ、ブレーキが稼働状態であると判定されたときに記録を行う。
【0021】
このように、駐車する可能性の高い特定地点の付近でブレーキが操作されているという状況は、その特定地点で駐車する可能性が濃厚であると考えられる。よって、特定地点への接近判定に加えブレーキの稼働状態に基づく駐車の兆候を判定することで、主電源回路が遮断される前段階であることをより確実に判断することができる。
【0022】
あるいは、駐車の兆候として車両の速度を加味してもよい。具体的には、請求項8記載のように構成するとよい。すなわち、車両の速度を示す車速情報を取得する車速情報取得手段を更に備える。判定手段は、車速情報取得手段により取得した車速情報を加味して、現在地が特定地点周辺の所定範囲内にあり、かつ、車両の速度が所定値以下であるか否かを判定する。そして、記録手段は、現在地が特定地点周辺の所定範囲内にあり、かつ、車両の速度が所定値以下であると判定されたときに記録を行う。
【0023】
このように、駐車する可能性の高い特定地点の付近で速度が低下(停止も含む)しているという状況は、その特定地点で駐車する可能性が濃厚であると考えられる。よって、特定地点への接近判定に加え速度に基づく駐車の兆候を判定することで、主電源回路が遮断される前段階であることをより確実に判断することができる。
【0024】
あるいは、駐車の兆候として車両の方向指示器やハザードランプの稼働状態を加味してもよい。方向指示器やハザードランプは、車両を停止させるときに周囲の車両に対する合図として使用されるため、車両が駐車するか否かの判断材料になり得るからである。
【0025】
具体的には、請求項9に記載のように構成するとよい。すなわち、車両の方向指示器やハザードランプの稼働状態を示す灯火情報を取得する灯火情報取得手段を更に備える。判定手段は、灯火情報取得手段により取得した灯火情報を加味して、現在地が特定地点周辺の所定範囲内にあり、かつ、方向指示器やハザードランプが稼働中であるか否かを判定する。そして、記録手段は、現在地が特定地点周辺の所定範囲内にあり、かつ、方向指示器又はハザードランプが稼働中であると判定されたときに記録を行う。
【0026】
このように、駐車する可能性の高い特定地点の付近で方向指示器やハザードランプが稼働しているという状況は、その特定地点で駐車する可能性が濃厚であると考えられる。よって、特定地点への接近判定に加え方向指示器やハザードランプの稼働状態に基づく駐車の兆候を判定することで、主電源回路が遮断される前段階であることをより確実に判断することができる。
【0027】
あるいは、駐車の兆候として変速機のシフトポジションを加味してもよい。車両を停止するために速度を落とした場合、通常であればシフトポジションは低速レンジに入るし、車両が完全に停止し駐車する際には、シフトポジションはニュートラルやパーキングレンジに入れられるため、車両が駐車するか否かの判断材料になり得るからである。
【0028】
具体的には、請求項10に記載のように構成するとよい。すなわち、変速機のシフトポジションを示すシフト情報を取得するシフト情報取得手段を更に備える。判定手段は、シフト情報取得手段により取得したシフト情報を加味して、現在地が特定地点周辺の所定範囲内にあり、かつ、シフトポジションが所定の位置になっているか否かを判定する。そして、記録手段は、現在地が特定地点周辺の所定範囲内にあり、かつ、シフトポジションが所定の位置になっていると判定されたときに記録を行う。
【0029】
このように、駐車する可能性の高い特定地点の付近でシフトポジションが低速レンジやニュートラルレンジ、パーキングレンジ等の特定の位置に入っているという状況は、その特定地点で駐車する可能性が濃厚であると考えられる。よって、特定地点への接近判定に加えシフトポジションに基づく駐車の兆候を判定することで、主電源回路が遮断される前段階であることをより確実に判断することができる。
【0030】
つぎに、上記目的を達成するためになされた請求項11に記載のデータ記録方法は、車両における測定対象の消耗状態を測定する検出装置から取得した測定データを記憶媒体に記録するデータ記録方法であって、地点情報取得手順と、位置情報取得手順と、判定手順と、記録手順とを有することを特徴とする。
【0031】
このうち、地点情報取得手順では、検出装置へ電力を供給する車両の主電源回路が遮断される可能性のある特定地点を示す地点情報を取得する。位置情報取得手順では、車両の現在地を示す位置情報を取得する。判定手順では、地点情報取得手順及び位置情報取得手順において取得した地点情報及び位置情報に基づき、車両が特定地点周辺の所定範囲内に到達したか否かを判定する。
【0032】
以上のような情報処理を、ハードウェア資源を用いて実現することにより、請求項1に係るデータ記録装置について記載したのと同様の効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】データ記録装置10及び周辺構成を含む全体構成を示すブロック図である。
【図2】データ記録処理の手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
[全体構成の説明]
図1は、本発明の一実施形態であるデータ記録装置10及び周辺構成を示すブロック図である。図1に示すように、車両に搭載されるデータ記録装置10には、指定された地図画像の表示や目的地までの経路案内を行うナビゲーション装置20と、データ記録装置10へ各種車両情報を入力するパワートレイン系及びボディ系のエレクトリックコントロールユニット群(以下、パワートレイン・ボディ系ECU群)30と、データ記録装置10へ各種測定データを入力する測定データ検出部40とが、車内LANを介して接続されている。
【0035】
データ記録装置10は、CPUや車内LAN用の通信インタフェース等を備えるマイクロコンピュータで構成されたシステムコントロール部11と、モニタ対象の測定データを記憶するための不揮発性メモリ12を備える。このデータ記録装置10は、タイヤの空気圧や車載バッテリの残電力、キーバッテリの残電力といった各測定対象の消耗状態のモニタリングデータの収集と記憶を実行する。
【0036】
このうち、システムコントロール部11は、所定のタイミングで測定データ検出部40から各測定対象の測定データを取得し、これを不揮発性メモリ12へ記録する。測定データを記録するタイミングとしては、例えば、車両のメインスイッチ(例えばエンジンスイッチ)がオンにされた直後や、一定時間、あるいは一定走行距離ごとに行うことが考えられる。また、タイヤの空気圧やバッテリの残電力は、メインスイッチがオフにされて主電源が遮断されている間にも徐々に消耗していく性質がある。そのため、主電源が遮断されている間の消耗量を正確に把握するためには、車両のメインスイッチがオフにされる直前の段階での測定データを取得する必要である。そこで、システムコントロール部11は、本発明の特徴的な処理として次のようなデータ記録処理を実行する。すなわち、各周辺構成から位置情報、地点情報、車両情報等の各種情報を取得し、その取得した情報に基づき、車両の駐車に伴い主電源回路が遮断される可能性のある特定地点に接近したか否かを判定する。そして、その特定地点に接近したことを主電源回路が遮断される前段階と判断し、その時点で測定データの記録を行う。なお、このデータ記録処理の詳細な手順については後述する。
【0037】
ナビゲーション装置20は、位置検出部21(GPS受信機、ジャイロスコープ等)、地図データ入力部22、外部メモリ23及びこれらを統括制御するナビゲーション制御部24等にとって構成された周囲のものであり、現在地付近の地図上に車両の現在地マークを表示する現在地表示処理、指定された目的地までの経路を設定する経路設定処理、経路設定処理によって設定された経路にしたがって経路案内を行う経路案内処理等の処理を実行する。また、経路案内処理に関して、ユーザの自宅の位置を予め外部メモリ23等に登録しておくことで、外出からの帰宅する際の目的地設定を簡単にする自宅登録機能や、駐車位置や移動経路を走行履歴として外部メモリ23等に記録しておく走行履歴記録機能を有する。
【0038】
さらに、ナビゲーション装置20は、位置検出部21からの入力信号を基に特定した現在地を示す情報(位置情報)や、車両が駐車する可能性の高い場所、すなわち車両の主電源回路が遮断される可能性の高い特定地点の位置を示す情報(地点情報)を、データ記録装置10のシステムコントロール部11へ送信するように構成されている。なお、車両が駐車する可能性の高い特定地点としては、経路案内の目的地や、ユーザの自宅、ナビゲーション装置20が使用する地図データベース内に登録されている駐車場、走行履歴として外部メモリ23等に記録されている過去の駐車位置等が用いられる。
【0039】
パワートレイン・ボディ系ECU群30は、エンジンや変速機等を制御する複数のパワートレイン系ECUや、灯火やブレーキ等を制御する複数のボディ系ECUからなる。パワートレイン系ECUは、各ECUの制御対象に関する情報、例えば、車速やシフトポジションを示す情報をデータ記録装置10のシステムコントロール部11へ送信するように構成されている。また、ボディ系ECUは、各ECUの制御対象に関する情報、例えば、ブレーキや、方向指示器、ハザードランプの稼働状態を示す情報をデータ記録装置10のシステムコントロール部11へ送信するように構成されている。
【0040】
測定データ検出部40は、タイヤの空気圧、車載バッテリの残電力、及びキーバッテリの残電力を検出する各種センサと、このセンサからの検出データをデータ記録装置10のシステムコントロール部11へ送信するセンサ用ECUとからなる。
【0041】
ここまででデータ記録装置10及びその周辺構成についての概略構成を説明したが、データ記録装置10のシステムコントロール部11が、特許請求の範囲における地点情報取得手段、位置情報取得手段、ブレーキ情報取得手段、車速情報取得手段、灯火情報取得手段、シフト情報取得手段、判定手段及び記録手段に相当する。また、データ記録装置10の不揮発性メモリ12が、特許請求の範囲における記憶媒体に相当する。
【0042】
[データ記録処理の説明]
図2は、データ記録装置10のシステムコントロール部11が実行するデータ記録処理の手順を示すフローチャートである。この処理は、車両のメインスイッチがオンになったときに実行される。
【0043】
システムコントロール部11は、まず、ナビゲーション装置20から経路案内の目的地に関する地点情報の取得を行い、ナビゲーション装置20において経路案内の目的地が設定されているか否かを判定する(S101)。目的地が設定されていると判定した場合(S101:YES)、ナビゲーション装置20から現在地情報の取得を行い、その取得した現在地が目的地周辺の所定範囲内であるか否かを判定する(S102)。なお、ここでいう所定範囲として、例えば、目的地へ到着するまでの間に測定データ検出部40から各測定対象の測定データを取得し、それを不揮発性メモリ12へ記録できる程度の時間的余裕のある距離とすることが考えられる。あるいは、ナビゲーション装置20がユーザに対して「間もなく目的地周辺です。」といった案内を報知するタイミングとなる接近距離と同じ範囲としてもよい。
【0044】
S102で目的地周辺の所定範囲内に到達していないと判定した場合(S102:NO)、S102の処理を繰り返す。一方、目的地周辺の所定範囲内に到達したと判定した場合(S102:YES)、S105の処理へ移行し、パワートレイン・ボディ系ECU群30から取得した車両情報が所定条件に適合するか否かを判定する(S105)。
【0045】
一方、S101でナビゲーション装置20において経路案内の目的地が設定されていないと判定した場合(S101:NO)、ナビゲーション装置20からユーザの自宅に関する地点情報の取得を行い、ナビゲーション装置20において自宅の位置が登録されているか否かを判定する(S103)。自宅の位置が登録されていないと判定した場合(S103:NO)、S101の処理へ戻る。一方、自宅の位置が登録されていると判定した場合(S103:YES)、ナビゲーション装置20から現在地情報の取得を行い、その取得した現在地が自宅周辺の所定範囲内であるか否かを判定する(S104)。なお、ここでいう所定範囲とは、例えば、自宅へ到着するまでの間に測定データ検出部40から各測定対象の測定データを取得し、それを不揮発性メモリ12へ記録できる程度の時間的余裕のある距離とすることが考えられる。
【0046】
S104で自宅周辺の所定範囲内に到達していないと判定した場合(S104:NO)、S104の処理を繰り返す。一方、自宅周辺の所定範囲内に到達したと判定した場合(S104:YES)、S106の処理へ移行し、パワートレイン・ボディ系ECU群30から取得した車両情報が所定条件に適合するか否かを判定する(S106)。
【0047】
なお、S105及びS106では、パワートレイン・ボディ系ECU群30からブレーキの稼働状態を示すブレーキ情報や、車両の速度を示す車速情報、方向指示器やハザードランプの稼働状態を示す灯火情報、変速機のシフトポジションを示すシフト情報等を取得し、それらの取得した車両情報で示される状態が所定の条件に適合するか否かを判定する。具体的には、ブレーキ情報の場合、ブレーキが稼働中であることが適合の条件となる。また、車速情報の場合、車両の速度が所定値以下であることが適合の条件となる。また、灯火情報の場合、方向指示器やハザードランプが稼働中であることが適合の条件となる。また、シフト情報の場合、変速機のシフトポジションが所定の位置(例えば、低速レンジやニュートラルレンジ、パーキングレンジ等)になっていることが適合の条件となる。
【0048】
なお、ブレーキ情報、車速情報、灯火情報及びシフト情報の各車両情報は、何れか1つの車両情報を取得してS105,S106での適合判定を行うような構成であってもよいし、複数の車両情報を取得して各車両情報についてS105,S106での適合判定を行うような構成であってもよい。また、後者の場合、取得した複数の車両情報のうち何れか1でも所定条件に適合するときにS105,S106で肯定判定をする構成であってもよいし、複数の車両情報が所定条件に適合するときにS105,S106で肯定判定をする構成であってもよい。
【0049】
S105で否定判定をした場合、すなわち、取得した車両情報が上記所定条件に適合しない場合(S105:NO)、S102の処理へ戻る。また、S106で否定判定をした場合、すなわち、取得した車両情報が上記所定条件に適合しない場合(S106:NO)、S104の処理へ戻る。
【0050】
一方、S105又はS106で肯定判定をした場合(S105:YES,S106:YES)、すなわち、取得した車両情報が上記所定条件に適合する場合、何れもS107へ移行し、測定データ検出部40からタイヤの空気圧、車載バッテリの残電力及びキーバッテリの残電力の各測定対象の現時点での測定データを取得する。そして、その取得した測定データを測定時刻を示す情報と共に不揮発性メモリ12の所定の記憶領域に記録し(S108)、データ記録処理を終了する。
【0051】
[効果]
上記実施形態のデータ記録装置10によれば、以下のような効果を奏する。
(1)車両が駐車する可能性が高い位置として、目的地や自宅の地点情報をナビゲーション装置20から取得することで、その場所で駐車して主電源回路が遮断される前段階で測定データを予め記録しておくことができる。また、車両に搭載されているナビゲーション装置20を利用して地点情報や位置情報を取得することで、これらの情報の取得先を別途用意する必要がなく、ナビゲーション装置20の情報資源をより有効に利用することができる。
【0052】
(2)車両が駐車して主電源回路が遮断される前段階であることを判断する際、駐車する可能性の高い特定地点へ接近したか否かを判断材料とするだけでなく、ブレーキの稼働状態、車速、方向指示器やハザードランプの稼働状態、シフトポジション等の車両状態に基づく駐車の兆候を加味して判断することができる。例えば、駐車する可能性の高い特定地点の付近でブレーキが稼働しているという状況は、その特定地点で駐車する可能性が濃厚であると考えられる。よって、特定地点に接近しているときのブレーキの稼働状態は車両が駐車するか否かの判断材料になり得る。また、駐車する可能性の高い特定地点の付近で速度が低下(停止も含む)しているという状況は、その特定地点で駐車する可能性が濃厚であると考えられる。よって、特定地点に接近しているときの車速は車両が駐車するか否かの判断材料になり得る。また、方向指示器やハザードランプは車両を停止させるときに周囲の車両に対する合図として使用される。よって、特定地点に接近にしているときの方向指示器やハザードランプの稼働状態は車両が駐車するか否かの判断材料になり得る。また、車両を停止するために速度を落とした場合、通常であればシフトポジションは低速レンジに入るし、車両が完全に停止し駐車する際には、シフトポジションはニュートラルやパーキングレンジに入れられる。よって、特定地点に接近しているときのシフトポジションは車両が駐車するか否かの判断材料になり得る。このように特定地点への接近判定と、車両状態の判定とを併せて行うことで、主電源回路が遮断される前段階であることをより確実に判断することができる。
【0053】
[変形例]
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に何ら限定されるものではなく様々な態様にて実施することが可能である。
【0054】
上記実施形態においては、主電源が遮断される可能性のある場所、すなわち、車両が駐車する可能性のある特定地点として、経路案内の目的地や自宅場所を採用した事例について説明した。これ以外にも、例えば、ナビゲーション装置20から、地図データベースにおける駐車場の位置を示す情報を特定地点の地点情報として取得してもよい。駐車場に接近、あるいは進入した場合、その駐車場に車両を停める可能性が高いと考えられる。よって、ナビゲーション装置20から駐車場の地点情報を取得し、その地点情報に基づいて図2のS103やS104、あるいはS105やS106の処理と同様の判定を行うことで、その駐車場で駐車して主電源回路が遮断される前段階で測定データを予め記録しておくことができる。
【0055】
あるいは、ナビゲーション装置20が外部メモリ23等に保有する駐車位置の履歴情報における過去の駐車位置を示す情報を特定地点の地点情報として取得してもよい。過去に駐車したことのある特定の場所では、その後も同じ場所で再び駐車する場合が考えられる。よって、ナビゲーション装置20から過去の駐車位置の地点情報し、その地点情報に基づいて図2のS103やS104、あるいはS105やS106の処理と同様の判定を行うことで、その場所で再び駐車して主電源回路が遮断される前段階で測定データを予め記録しておくことができる。
【0056】
なお、地図データベース内の駐車場や走行履歴内の過去の駐車位置等の特定地点の地点情報は、上記実施形態における目的地や自宅といった特定地点の地点情報と併せて利用する構成とすることが考えられる。
【符号の説明】
【0057】
10…データ記録装置、11…システムコントロール部、12…不揮発性メモリ、20…ナビゲーション装置、21…位置検出部、22…地図データ入力部、23…外部メモリ、24…ナビゲーション制御部、30…パワートレイン・ボディ系ECU群、40…測定データ検出部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両における測定対象の消耗状態を測定する検出装置から取得した測定データを記憶媒体に記録するデータ記録装置であって、
前記検出装置へ電力を供給する車両の主電源回路が遮断される可能性のある特定地点を示す地点情報を取得する地点情報取得手段と、
車両の現在地を示す位置情報を取得する位置情報取得手段と、
前記地点情報取得手段及び位置情報取得手段により取得した地点情報及び位置情報に基づき、車両が前記特定地点周辺の所定範囲内に到達したか否かを判定する判定手段と、
前記判定手段により車両が前記特定地点周辺の所定範囲内に到達したと判定されたときに、前記検出装置からその時点での測定データを取得し、これを前記記録媒体に記録する記録手段とを備えること
を特徴とするデータ記録装置。
【請求項2】
請求項1に記載のデータ記録装置において、
前記地点情報取得手段は、車両に搭載されているナビゲーション装置から、そのナビゲーション装置よる経路案内の目的地を示す地点情報を前記特定地点の地点情報として取得すること
を特徴とするデータ記録装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のデータ記録装置において、
前記地点情報取得手段は、車両に搭載されているナビゲーション装置から、そのナビゲーション装置に自宅として登録されている地点を示す地点情報を前記特定地点の地点情報として取得すること
を特徴とするデータ記録装置。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3の何れか1項に記載のデータ記録装置において、
前記地点情報取得手段は、車両に搭載されているナビゲーション装置から、そのナビゲーション装置が備える地図データベースにおける駐車場を示す地点情報を前記特定地点の地点情報として取得すること
を特徴とするデータ記録装置。
【請求項5】
請求項ないし請求項4の何れか1項に記載のデータ記録装置において、
前記地点情報取得手段は、車両に搭載されているナビゲーション装置から、そのナビゲーション装置が保有する駐車位置の履歴情報における過去の駐車位置を示す地点情報を前記特定地点の地点情報として取得すること
を特徴とするデータ記録装置。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5の何れか1項に記載のデータ記録装置において、
前記位置情報取得手段は、車両に搭載されているナビゲーション装置から、そのナビゲーション装置により特定された現在地を示す位置情報を取得すること
を特徴とするデータ記録装置。
【請求項7】
請求項1ないし請求項6の何れか1項に記載のデータ記録装置において、
車両のブレーキの操作状態を示すブレーキ情報を取得するブレーキ情報取得手段を更に備え、
前記判定手段は、前記ブレーキ情報取得手段により取得したブレーキ情報を加味して、現在地が前記特定地点周辺の所定範囲内にあり、かつ、ブレーキが稼働状態であるか否かを判定し、
前記記録手段は、現在地が前記特定地点周辺の所定範囲内にあり、かつ、ブレーキが稼働状態であると判定されたときに前記記録を行うこと
を特徴とするデータ記録装置。
【請求項8】
請求項1ないし請求項7の何れか1項に記載のデータ記録装置において、
車両の速度を示す車速情報を取得する車速情報取得手段を更に備え、
前記判定手段は、前記車速情報取得手段により取得した車速情報を加味して、現在地が前記特定地点周辺の所定範囲内にあり、かつ、車両の速度が所定値以下であるか否かを判定し、
前記記録手段は、現在地が前記特定地点周辺の所定範囲内にあり、かつ、車両の速度が所定値以下であると判定されたときに前記記録を行うこと
を特徴とするデータ記録装置。
【請求項9】
請求項1ないし請求項8の何れか1項に記載のデータ記録装置において、
車両の方向指示器やハザードランプの稼働状態を示す灯火情報を取得する灯火情報取得手段を更に備え、
前記判定手段は、前記灯火情報取得手段により取得した灯火情報を加味して、現在地が前記特定地点周辺の所定範囲内にあり、かつ、方向指示器やハザードランプが稼働中であるか否かを判定し、
前記記録手段は、現在地が前記特定地点周辺の所定範囲内にあり、かつ、方向指示器又はハザードランプが稼働中であると判定されたときに前記記録を行うこと
を特徴とするデータ記録装置。
【請求項10】
請求項1ないし請求項9の何れか1項に記載のデータ記録装置において、
変速機のシフトポジションを示すシフト情報を取得するシフト情報取得手段を更に備え、
前記判定手段は、前記シフト情報取得手段により取得したシフト情報を加味して、現在地が前記特定地点周辺の所定範囲内にあり、かつ、シフトポジションが所定の位置になっているか否かを判定し、
前記記録手段は、現在地が前記特定地点周辺の所定範囲内にあり、かつ、シフトポジションが所定の位置になっていると判定されたときに前記記録を行うこと
を特徴とするデータ記録装置。
【請求項11】
車両における測定対象の消耗状態を測定する検出装置から取得した測定データを記憶媒体に記録するデータ記録方法であって、
前記検出装置へ電力を供給する車両の主電源回路が遮断される可能性のある特定地点を示す地点情報を取得する地点情報取得手順と、
車両の現在地を示す位置情報を取得する位置情報取得手順と、
前記地点情報取得手順及び位置情報取得手順において取得した地点情報及び位置情報に基づき、車両が前記特定地点周辺の所定範囲内に到達したか否かを判定する判定手順と、
前記判定手順において車両が前記特定地点周辺の所定範囲内に到達したと判定されたときに、前記検出装置からその時点での測定データを取得し、これを前記記録媒体に記録する記録手順とを有すること
を特徴とするデータ記録方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−80767(P2011−80767A)
【公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−230703(P2009−230703)
【出願日】平成21年10月2日(2009.10.2)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】