説明

トナー供給ローラの製造方法

【課題】注型機ミキシングチャンバー内の汚染を抑制し、繰り返し成形してもローラの硬度や通気量の変動を抑制可能で、成形耐久安定性が良いトナー供給ローラの製造方法を提供する。
【解決手段】芯金外周にウレタンフォーム用材料液により形成されたウレタンフォーム層を有するトナー供給ローラの製造方法において、材料液を注型機ミキシングヘッドに備わるミキシングチャンバーの上部に設けられた材料導入口からミキシングチャンバー内部に導入する工程;材料液をミキシングチャンバー内の攪拌用ローターで混合する工程;混合された材料液を、ミキシングチャンバー下部に設けられた吐出口を経由して芯金が配置された円筒金型に導入する工程;円筒金型内の混合された材料液を硬化させる工程;及び円筒金型からトナー供給ローラを取り出す工程を有し、下部に攪拌を促進するための手段を有する攪拌用ローターを用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機等の画像形成装置において用いられるトナー供給ローラの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、複写機,プリンター,ファクシミリ等の画像形成装置においては、電子写真感光体や静電記録誘電体等からなる像担持体上に静電潜像を形成し、この静電潜像を現像装置により現像している。このような現像装置には、ホッパー内に収容された所定のトナー(現像剤)を、像担持体表面上にムラ無く均一に供給し、かつ現像後に像担持体表面上の残存トナーを掻き取るためにトナー供給ローラが内蔵されている。
【0003】
通常トナー供給ローラの製造方法としては、まず、ウレタンフォーム用円筒金型を準備し、金型からの成形品の脱型を容易にするための離型剤を円筒金型内に塗布しておく。材料導入口を二個所有するミキシングチャンバーを用い、イソシアネートとポリオール成分(ポリオール、整泡剤、触媒、水など)とをそれぞれの材料導入口からミキシングチャンバー内に流入させる。チャンバー内に流入した材料液を攪拌用ローターで剪断混合し、ウレタンの反応を促進し均一に攪拌する。この材料液を上記円筒金型に導入し、金型内で材料液を発泡及び硬化させ、円筒金型からトナー供給ローラを取り出す。こうすることによりローラ表面セルが開口したトナー供給ローラを製造することができる。なお、この開口は離型剤が塗布された成形金型内面と接することにより発泡した袋状部位(セル)が、はじけて、セル内部を露出するように、ローラ表面のセルが開口したものである。離型剤が塗布された金型表面に接した発泡部位(セル)の壁が、離型剤の作用により薄くなり、さらには、はじけて、セル内部が露出するようになると考えられる。
【0004】
通常長時間注型し、成形を繰り返し行っていると、ミキシングチャンバー内で、撹拌中にウレタン反応物の硬化が進み、ミキシングチャンバー内が硬化物で汚染される場合がある。特に材料導入口付近のミキシングチャンバー上部及びチャンバー下部とローター下部間の隙間に硬化物が蓄積しやすい。特にチャンバー下部とローター下部間の隙間はチャンバー上部と比べ攪拌効率が悪く、材料液が滞留し、チャンバー下部の吐出口付近が硬化物で汚染されやすい。吐出口付近に硬化物が経時蓄積すると、吐出口が塞がり、ミキシングチャンバー内の内圧上昇が発生し、材料導入口からチャンバー内への材料液流入量が減少することがある。この場合、円筒金型に定量の材料を導入できなくなることがある。トナー供給ローラの様な低重量の物は小さな重量バラツキでトナー供給ローラの特性である密度及び硬度、通気量が大きく変化することから、成形を繰り返し行った場合に円筒金型内への材料液導入量が異なることは抑制されることが望ましい。
【0005】
ミキシングチャンバー内の硬化物発生を抑制する方法としては、ミキシングチャンバー上部に設けられる1つの材料導入口が、他の材料導入口よりも、攪拌用ローターの回転軸近くに配置する方法が提案されている(特許文献1)。この場合、ミキシングチャンバー上部の硬化物の蓄積は抑制できるが、チャンバー内壁下部とローター下部間の隙間の蓄積物を抑制することにおいては更なる改善が望まれる。また、ミキシングチャンバー内部を頻繁に溶剤で洗浄する方法もあるが、溶剤を大量に使用するため環境上好ましくない。
【特許文献1】特開2002−18833号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、注型機のミキシングチャンバー下部の硬化物による汚染を抑制し、繰り返し成形しても、得られるトナー供給ローラの硬度、密度や通気量の変動を抑えることができ、成形耐久安定性が良く、又、環境に配慮したトナー供給ローラの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明により、以下の方法が提供される。
【0008】
1)芯金外周にポリエーテルポリオールとイソシアネートを主成分としたウレタンフォーム用材料液により形成されたウレタンフォーム層を有するトナー供給ローラの製造方法において、
該材料液を、注型機ミキシングヘッドに備わるミキシングチャンバーの上部に設けられた材料導入口から、該ミキシングチャンバー内部に導入する工程;
該材料液を、該ミキシングチャンバー内の攪拌用ローターで混合する工程;
混合された該材料液を、該ミキシングチャンバーの下部に設けられた吐出口を経由して、芯金が配置された円筒金型に導入する工程;
該円筒金型内の混合された該材料液を硬化させる工程;および
該円筒金型から該トナー供給ローラを取り出す工程を有し、
該攪拌用ローターとして、下部に攪拌を促進するための攪拌促進手段を有する攪拌用ローターを用いるトナー供給ローラの製造方法。
【0009】
2)該攪拌促進手段が、該攪拌用ローターの下視投影の直径線上又は半径線上に配されたブレードを1つ以上有する1)記載のトナー供給ローラの製造方法。
【0010】
3)該ブレードが回転方向に対して直線部を有する2)記載のトナー供給ローラの製造方法。
【0011】
4)該半径線上又は直径線上に配されたブレードが、回転方向に突出する形状を有する2)記載のトナー供給ローラの製造方法。
【0012】
5)該ブレードと該ミキシングチャンバーの内壁下部との隙間が1mm以下である1)〜4)の何れか一項記載のトナー供給ローラの製造方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、注型機のミキシングチャンバー下部の硬化物による汚染を抑制し、繰り返し成形しても、得られるトナー供給ローラの硬度、密度や通気量の変動を抑えることができ、成形耐久安定性が良く、又、環境に配慮したトナー供給ローラの製造方法が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、図面を用いて本発明について詳細に説明するが、本発明はこれによって限定されるものではない。
【0015】
図1に、本発明に好適に用いることのできるミキシングヘッドの例を示す。このミキシングヘッドを用いた本発明の方法の一形態は、芯金外周にポリエーテルポリオールとイソシアネートを主成分としたウレタンフォーム用材料液により形成されたウレタンフォーム層を有するトナー供給ローラの製造方法において、前記ウレタンフォーム用材料液を、注型機ミキシングヘッドに配置されたミキシングチャンバー1上部の材料導入口2aおよび2bから、ミキシングチャンバー内部(混合室7)に導入する工程;ミキシングチャンバー内部に導入された材料液をミキシングチャンバー1内の攪拌用ローター3で混合する工程;混合された材料液をミキシングチャンバー1下部の吐出口4を経由して、芯金が配置された円筒金型(不図示)に導入する工程;円筒金型内の混合された材料液を硬化させる工程;円筒金型からトナー供給ローラを取り出す工程を有する製造方法であり、用いる攪拌用ローター3は、その下部に攪拌を促進するための攪拌促進手段5を有する。材料導入口2aおよび2bから、相異なる二種の材料をそれぞれ混合室7に導入することができる。
【0016】
上記した構成によれば、ミキシングチャンバー1内で、攪拌用ローター3を回転させることにより、流入された二種類以上の材料液はチャンバー内で攪拌混合される(特には攪拌用ローター側部に設けられた攪拌羽根8により効果的に攪拌混合される)。そして、ミキシングチャンバー内の空隙を充填していき、更にミキシングチャンバー内壁下部(混合室底面)とローター下部間の隙間6を通過する際にも攪拌促進手段5により攪拌されたうえで、吐出口4から吐出される。ミキシングチャンバー内壁下部とローター下部間の通過時に攪拌促進手段5により材料液を攪拌する事により、材料液が滞留しやすいミキシングチャンバー内壁下部とローター下部間の攪拌効率を上げることができる。そして、材料の滞留を防ぎ、吐出口4付近のウレタン硬化物の蓄積進行を大幅に遅延することができる。その結果、経時によるミキシングチャンバー内の内圧の上昇を抑え、円筒金型に定量の材料を導入し、ロット毎のトナー供給ローラの密度及び硬度、通気量の変動を小さくし、安定した物性のトナー供給ローラを得ることができる。
【0017】
本発明で用いるウレタンフォーム用材料液は、ポリエーテルポリオールとイソシアネートを主成分とする。例えば、ポリエーテルポリオールとイソシアネートとでウレタンフォーム用材料液の8割(質量基準)以上を占めることができる。
【0018】
前記ポリエーテルポリオールとしては特に制限は無く、ウレタンフォームの原料として従来公知の各種ポリエーテルポリオールの中から適宜選択して使用することが出来る。例えば、そのような液状のポリウレタン原料を構成するポリエーテルポリオール成分としては、一般に軟質ポリウレタンフォームの製造に用いられているポリエーテルポリエーテルポリオール、ポリエステルポリエーテルポリオール、ポリマーポリエーテルポリオール等の公知のポリエーテルポリオール類の中から適宜選択して使用することが出来、一種又は二種以上を組み合せて用いても良い。これらのポリエーテルポリオールを用いることは、耐湿熱耐久性に優れた軟質高弾性ポリウレタン製造に好適である。更に、エチレンオキシドを5モル%以上含有するポリエーテルポリエーテルポリオールを使用すると、成形性が良く好ましい。また、あらかじめポリイソシアネートと重合させたプレポリマーをポリエーテルポリオールとして用いても差し支えない。
【0019】
また、前記イソシアネートとしては特に制限は無く、ウレタンフォームの原料として従来公知の各種イソシアネートの中から、適宜選択して使用することが出来る。イソシアネートとしてポリイソシアネートを用いることができる。ポリイソシアネートとして例えば2、4−及び2、6−トリレンジイソシアネート(TDI)、トリジンジイソシアネート(TODI)、ナフチレンジイソシアネート(NDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、4、4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、及びカーボジイミド変成MDI、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート、ポリメリックポリイソシアネート等が、単独で、又は二種以上を組み合せて用いることができる。なお、前記ポリイソシアネートを公知の活性水素化合物の1種または2種以上と反応させることにより得られるイソシアネート基末端プレポリマーも、ポリイソシアネートとして使用することもできる。
【0020】
ウレタンフォーム原料のNCOインデックスは60〜120であることが好ましく、70〜100であることがより好ましい。なお、NCOインデックスとは、ポリイソシアネート中のイソシアネート基の総数をイソシアネート基と反応する活性水素の総数で除したものに100を乗じた値とする。即ち、イソシアネート基と反応する活性水素数とポリイソシアネート中のイソシアネート基が化学量論的に等しい場合にそのNCOインデックスは100となる。
【0021】
(その他のポリウレタンフォーム用原料)
ウレタンフォーム用材料液には、整泡剤、触媒、水などを適宜添加することができる。
【0022】
触媒としては特に制限は無く、ウレタンフォーム製造において従来公知の各種触媒の中から適宜選択して使用することが出来る。トリエチレンジアミン、ジメチルエタノールアミン、ビス(ジメチルアミノ)エチルエーテル等、従来公知の触媒が使用できる。
【0023】
整泡剤としては特に制限は無く、ウレタンフォーム製造において従来公知の各種整泡剤の中から適宜選択して使用することが出来る。例えばシリコーン系界面活性剤としては、東レ・ダウコーニング社製のSRX−274C(商品名)、日本ユニカ社製のL−5309(商品名)、L−520(商品名)等が使用できる。
【0024】
また、これらポリエーテルポリオール成分とイソシアネート成分とが配合されてなるウレタンフォーム原料に、更に、架橋剤、発泡剤(水、低沸点物、ガス体等)、破泡剤等を適宜添加して、反応性の発泡原料とすることができる。これらは、目標とする発泡成形後のウレタンフォーム層の構造、即ち、連続気泡型若しくは独立気泡型の何れか一方を生ぜしめ易い配合となるように適宜添加することができる。また、そのような原料には必要に応じて所望の導電性を付与するための導電性付与剤や帯電防止剤等も、公知のものが添加せしめられる。導電付与剤としては公知の物を使用することができ、例えば、カーボンブラック、グラフアイト、酸化チタン、酸化錫などの導電性の金属酸化物、Cu、Agなどの金属、これら導電性材料を粒子表面に被覆して導電化した粒子などが挙げられる。これらの導電付与剤は単独、あるいは複数種を組み合わせて用いることができる。特に、カーボンブラックは、比較的少量(質量比)の添加によって、所望の導電性を付与できる点で好ましい。その他添加剤として、難燃剤、減粘剤、顔料、安定剤、着色剤、老化防止剤、紫外線吸収剤、抗酸化剤、酸化防止剤等を必要に応じて配合することが出来る。架橋剤としてはトリエタノールアミン、ジエタノールアミン等の従来公知のものが挙げられる。
【0025】
そして、混合操作の容易性や得られるポリウレタンフォームの特性の見地から、前記ポリイソシアネート、ポリエーテルポリオール、整泡剤の好適な組み合わせは、次のとおりである。すなわち、ポリイソシアネートとしては、ジフェニルメタンジイソシアネートとTDIを混合したものを用い、ポリエーテルポリオールとしては、ポリエーテルポリエーテルポリオール、整泡剤としては水溶性ポリエーテルシロキサンとを用いた組み合せである。
【0026】
ブレードは、液の混合室内壁下部に近接し、液の混合内壁下部への付着を防止し、液の攪拌を促すものである。ブレードは板状の形状を有する。その材質は特に制限は無く、金属や高分子樹脂等を用いることができる。例えば、ブレードの材質と攪拌用ローターの材質をともにSUS(ステンレス鋼)とすることが好ましい。ローター下部への固定方法としては、金属の場合、溶接が用いられる。高分子樹脂の場合、接着が用いられる。
【0027】
攪拌促進手段としては、ブレード状が好ましい。丸棒状など、ブレード状以外の形状も採用することができるが、ブレード状の拡販促進手段は剪断力が高く、混合室内壁下部に滞留する材料を、効率良く攪拌できる。
【0028】
具体的には、攪拌促進手段として、攪拌用ローター3の下視投影の直径線上又は半径線上に配された1つ以上のブレード5を採用することができる。ブレードはローターに一つ設けられても、複数設けられてもよい。
【0029】
ブレードは、例えば、ローターの下視投影の半径線上もしくは直径線上に配することができる。図2〜5にこの場合のブレード配置の例を示す。図2〜5のそれぞれにおいて、(a)はローターの側面図であり、(b)は下視投影図(ローター下方からの投影図)である。
【0030】
ローターは回転体状とされ、より具体的にはローターの外形(攪拌羽根およびブレードを除く)は、回転軸を中心軸とする円筒体と円錐体とで形成される。下視投影の直径線とは、下視投影図において、ローターの直径をなす線である。
【0031】
図2には、直径線上に配されたブレード5aを示す。詳しくは、直径線の全域にわたって延在する平板状(側面から見た場合には円錐面状のローター底面に沿う、幅がほぼ一定のV字状)のブレードを示す。
【0032】
図3には、半径線上に配されたブレード5bを示す。このブレードは、直径線の片側半分、すなわち半径線(下視投影図において、ローターの半径をなす線)部分の全域に延在する平板状(側面から見た場合にはローター底面に沿う、幅がほぼ一定の平行四辺形状)のブレードである。
【0033】
図4には、半径線上に配され、回転方向に突出する形状を有するブレード5cを示す。この例は、ローター回転方向に突出する形状(側面から見た場合にはローター底面に沿う、幅がほぼ一定の平行四辺形状)を有するブレードが半径線部分の全域に設けられた例である。直径線又は半径線上のブレードに回転方向に突出する形状を持たせることによって剪断力を変え、材料液の反応性を制御できる。突出部の形状としては凸状直線又は曲線の物などが挙げられる。また、攪拌用ローター下部のブレード数及び半径線上のブレードの長さによっても剪断力を変え、材料液の反応性を制御できる。
【0034】
図5には、半径線上に配されたブレードの長さを半径線の長さより短くしたブレード5dを示す。この例は、半径線部分の一部に平板状(側面から見た場合にはローター底面に沿う、幅がほぼ一定の平行四辺形状)のブレードが設けられた例である。
【0035】
混合しようとする材料の特性(特には反応性)に応じて、ブレードの形状および枚数を適宜使い分けることができる。混合室底部内壁とローター底面間を材料が通過する際に材料にかかる剪断力を高めたい場合には、図2に示したような直径線の全域にわたるブレードを有するローターを用いることが好ましい。材料の反応がはやく、反応を抑制したい場合は、例えば図3に示したような半径線全域にわたるブレードを有するローターを用いるのが好ましい。
【0036】
ブレード5の回転方向に対する形状について言えば、例えば図4に示すような回転方向に対して突出する形状を有するブレードを用いることによって剪断力を変え、材料の反応性を制御することができる。この場合のブレード形状としては、下視投影図において、直線で構成される凸状(三角形または五角形)でもよく、曲線で構成される凸状でもよい。
【0037】
また、攪拌用ローター下部のブレード数及びブレードの長さを調節することによっても剪断力を変え、材料の反応性を制御することができる。このために、例えば図5に示すように半径線の一部に設けられるブレードの長さを調節することができる。
【0038】
使用する材料液の特性(反応性)に合わせて、直径線上のブレード又は半径線上のブレードを適宜使い分け、またブレード枚数を適宜使い分けることができる。チャンバー内壁下部(混合室底面)とローター下部間の隙間6を通過する際の材料液の剪断を高める場合は直径線のブレードを有する攪拌用ローターを用いることが好ましい。材料液の反応がはやく、反応抑制する場合は半径線からなるブレードを有する攪拌用ローターを用いるのが好ましい。
【0039】
材料液が滞留しやすいミキシングチャンバー内壁下部とローター下部間の攪拌効率を上げるためには、攪拌用ローター3下部の直径線又は半径線からなるブレード5とミキシングチャンバー内壁下部の隙間6が1mm以下であることが好ましい。ローターの回転が阻害されない限り、この隙間は小さいほどよい。
【0040】
隙間6を説明するために、図6に攪拌用ローターおよび混合室の下部付近を部分的に拡大して示す。隙間6が1mm以下の場合、材料液が滞留しやすいミキシングチャンバー内壁下部とローター下部間の攪拌効率を上げ、材料の滞留を優れて防ぐことができ、吐出口4付近のウレタン硬化物の蓄積進行を大幅に遅延することができる。また、ウレタン硬化物の蓄積がブレード5とミキシングチャンバー内壁下部の隙間6において進行した場合でも、ブレード5により蓄積物をそぎ落とし、蓄積物量を1mm以下の厚さに規制することができるので好ましい。その結果、材料液がミキシングチャンバー下部で滞留し、チャンバー下部の吐出口4付近が硬化物で汚染されることを優れて防止できる。そして、吐出口4付近に硬化物が経時蓄積して吐出口4が塞がり、ミキシングチャンバー1内の内圧上昇が発生し、材料導入口2から材料液をチャンバー内に流入させる量が減少することを優れて防止できる。
【0041】
使用する攪拌用ローター3及び攪拌用ローター3下部に有するブレード5の材質は特に限定されない。例えば、鉄などの鋼材にニッケルやクロムなどのメッキを施した金属部材、鉄、銅、アルミニウム、ステンレス鋼などの金属部材のほか、ポリカーボネート、ポリアミドなどの合成樹脂やセラミックなどを適宜使用することができる。
【0042】
(トナー供給ローラのウレタンフォーム層の製造方法)
トナー供給ローラを製造するために、例えば、次のようにすることができる。まず円筒金型に離型剤を均一に塗布しておく。注型機ミキシングヘッドに配置されたミキシングチャンバー1上部の材料導入口2aから前記ポリエーテルポリオール、触媒及び所望により用いられる整泡剤、水、その他助剤などを均質に混合した材料液をミキシングチャンバー1内に導入する。二カ所ある材料導入口のもう一方の材料導入口2bからイソシアネートをミキシングチャンバー1内に導入する。導入された材料液を攪拌用ローター3にて混合し吐出口4を経由して金型に導入し、加熱して反応硬化させることによりウレタンフォームを形成することができる。
【0043】
前記ウレタンフォーム原料を混合する際の温度や時間については特に制限は無いが、混合温度は、通常10〜90℃、好ましくは20〜60℃の範囲であり、混合時間は、通常1秒〜10分間、好ましくは3秒〜5分間程度である。
【0044】
また、上記加熱して反応硬化させる際、ウレタンフォーム製造において従来公知の方法により、発泡させることにより、ウレタンフォームを作製することが出来る。発泡方法については特に制限は無く、発泡剤を用いる方法、機械的な撹拌により気泡を混入する方法など、いずれの方法をも用いることが出来る。この発泡時の円筒金型の温度を35〜100℃にすることが好ましく、40〜80℃にすることがより好ましい。なお、発泡倍率は、適宜定めればよく、特に制限はない。
【0045】
(トナー供給ローラ)
本発明により得られるトナー供給ローラは、このようなウレタンフォームを用い、円筒状芯金の外周面を前記ウレタンフォームで被覆して弾性体層を形成することにより製造することができる。芯金は、通常、鉄にメッキを施したものやステンレス鋼などからなる例えば直径が4〜6mm、長さが200〜400mmのものを用いることができる。用途によっては、導電性や半導電性、或いは絶縁性の塗料により、その外側を塗装してもよい。トナー供給ローラの外径は特に限定されず、その目的によりさまざまな外径を有するものとすることができるが、一般的には10〜20mmの外径(ウレタンフォーム層形成部)を有する。芯金とウレタンフォームとの接合方法については特に限定されないが、芯金を予め円筒金型内部に配設しウレタンフォーム用原料を注型し硬化する方法を用いることが出来る。この接着層としては、接着剤やホットメルトシートなどの公知の材料を用いることが出来る。
【実施例】
【0046】
以下に実施例及び比較例を挙げて、本発明について具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例のみに限定されるものではない。
【0047】
また、本発明には、以下の実施例の他にも、更には上記した具体的記述以外にも、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて、当業者の知識に基づいて、種々なる変更、修正、改良等を加え得るものであることが理解されるべきである。
【0048】
[実施例1〜5、比較例1]
実施例および比較例でA−2002型低圧発泡機(商品名:東邦機械工業(株)製)を注型機として使用した。この注型機は、ポリオール成分貯蔵タンクおよびイソシアネート成分貯蔵タンク、図1に示すようなミキシングヘッド、ならびにチラー(ミキシングヘッド、貯蔵タンクを均一温度に保つためのもの)を有する。
【0049】
ミキシングヘッドは複数(二つ)の材料を混合するための混合室(ミキシングチャンバー内部)7と、混合室内で回転し、複数の材料を混合するローター3とを有し、不図示の温度調整手段が配設される。
【0050】
実施例1、3、4および5においては、攪拌用ローター下部に、攪拌用ローターの下視投影の直径線上に配されたブレード(図2に示す5a)を1枚設けた。実施例2においては、攪拌ローター下部に、攪拌用ローターの下視投影の半径線上に配されたブレード(図3に示す5b)を1枚設けた。比較例1では、ブレードは設けなかった。
【0051】
各実施例においてブレードと混合室底面との隙間6を表1に示すようにした。比較例1においては、ローターの底面と混合室底面との隙間を1mmとした。
【0052】
攪拌用ローターを回転させながら、表1に示す組成のポリオール成分(ポリエーテルポリオール、整泡剤、触媒、水など)を一方の導入口2aよりミキシングチャンバー1へ供給した。また、イソシアネートをもう一方の導入口2bから、NCOインデックス100となるようにミキシングチャンバー1へ供給した。そして、攪拌用ローターにより攪拌しながら、60℃に温調したトナー供給ロール用成形型(予め芯金が配置された円筒金型)に導入して外径14mm(ウレタンフォーム層形成部)のトナー供給ローラを製造し、各種物性を評価した。
【0053】
【表1】

【0054】
ポリエーテルポリオールにはFA−703(商品名。三洋化成(株)製)、触媒にはToyoCat−MR(商品名。東ソー(株)製三級アミン触媒)、整泡剤にはL5366(商品名。日本ユニカー(株)製シリコーン系整泡剤)、イソシアネートには、コロネート1021(商品名。日本ポリウレタン(株)製混合物[TDI(トリレン・ジイソシアネート)/MDI(ジフェニルメタンジイソシアネート)/他=80/8/12(質量比)]、NCO%=44.5)を用いた。
【0055】
成形型は、ワックス系離型剤を成形型内面にコートして用いた。離型剤にはワックス系離型剤(フリリース600(商品名:ネオス(株)製))を用いた。
【0056】
〔総合評価〕
ミキシングヘッドからウレタンフォーム材料液を吐出開始した直後に成形して得たトナー供給ローラと、2時間連続吐出後に成形して得たトナー供給ローラの質量、硬度、通気量の変動幅を算出した。質量変動幅が0.1g以下、硬度変動幅が10g/mm以下、通気量変動幅0.2L/min以下の3つの条件全てを満たす場合○、いずれか一つでも満たさない物を×とした。
【0057】
〔硬度〕
長さ50mm、幅10mmの平板を、トナー供給ローラの芯金の中心軸とこの平板の幅方向中心線とが平行になるように、トナー供給ローラのスポンジ層に接し、この平板を10mm/分の速度で押し込み、1.0mm圧縮したときの荷重を測定した。この荷重によりこのトナー供給ローラのスポンジ層の硬度を評価した。
【0058】
〔通気量〕
通気量は図7に示す構成の測定装置を用いて測定した。トナー供給ローラの外径(14mm)より若干小さな内径(13mm)を有する円筒9にトナー供給ローラを圧入した後、かかる円筒9の一端を大気に晒す一方、その他端を流量計10を介して真空ポンプ11に接続した。次いで、円筒9の真空ポンプ11に接続された側の圧力を圧力計12にて計測して、それが125Paになるように、真空ポンプ11を作動させ、その時の空気流量を流量計10で測定し、目的とする通気量を得た。
【0059】
【表2】

【0060】
実施例1〜5は、ミキシングチャンバー1に配置された材料液の攪拌用ローター3の下部に材料液を更に攪拌する手段(ブレード5)を有していることから、チャンバー下部とローター下部間の攪拌効率を高くし、材料の滞留を防ぐことができる。そして、吐出口4付近のウレタン硬化物の蓄積進行を大幅に遅延するため、ミキシングヘッドから吐出開始し直後に成形したトナー供給ローラと2時間連続吐出後に成形したトナー供給ローラの質量(従って密度)、硬度、通気量の変動幅が小さい。
【0061】
比較例1はミキシングチャンバー1に配置された材料液の攪拌用ローター3の下部に材料液を更に攪拌する手段を有していない。このため、チャンバー下部とローター下部間が1mmであるが、攪拌効率が低く、吐出開始直後の成型品と2時間連続吐出後の成型品の質量(密度)、硬度、通気量の変動が大きい。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明に好適に用いることのできる攪拌用ローターを備えるミキシングヘッドを示す模式図である。
【図2】攪拌用ローターの例を示す模式図である。
【図3】攪拌用ローターの別の例を示す模式図である。
【図4】攪拌用ローターの別の例を示す模式図である。
【図5】攪拌用ローターの別の例を示す模式図である。
【図6】ブレードとミキシングチャンバー内壁下部の隙間を説明するための部分拡大図である。
【図7】トナー供給ローラのポリウレタンスポンジ層の通気量の測定手法を説明するための模式図である。
【符号の説明】
【0063】
1 ミキシングチャンバー
2 材料導入口
3 攪拌用ローター
4 吐出口
5 ブレード
5a 直径線ブレード
5b 半径線ブレード
5c 凸状突出ブレード
5d 半径線短ブレード
6 ブレード5と内壁下部の隙間
7 混合室
8 攪拌羽根
9 円筒
10 流量計
11 真空ポンプ
12 圧力計

【特許請求の範囲】
【請求項1】
芯金外周にポリエーテルポリオールとイソシアネートを主成分としたウレタンフォーム用材料液により形成されたウレタンフォーム層を有するトナー供給ローラの製造方法において、
該材料液を、注型機ミキシングヘッドに備わるミキシングチャンバーの上部に設けられた材料導入口から、該ミキシングチャンバー内部に導入する工程;
該材料液を、該ミキシングチャンバー内の攪拌用ローターで混合する工程;
混合された該材料液を、該ミキシングチャンバーの下部に設けられた吐出口を経由して、芯金が配置された円筒金型に導入する工程;
該円筒金型内の混合された該材料液を硬化させる工程;および
該円筒金型から該トナー供給ローラを取り出す工程を有し、
該攪拌用ローターとして、下部に攪拌を促進するための攪拌促進手段を有する攪拌用ローターを用いるトナー供給ローラの製造方法。
【請求項2】
該攪拌促進手段が、該攪拌用ローターの下視投影の直径線上又は半径線上に配されたブレードを1つ以上有する請求項1記載のトナー供給ローラの製造方法。
【請求項3】
該ブレードが回転方向に対して直線部を有する請求項2記載のトナー供給ローラの製造方法。
【請求項4】
該半径線上又は直径線上に配されたブレードが、回転方向に突出する形状を有する請求項2記載のトナー供給ローラの製造方法。
【請求項5】
該ブレードと該ミキシングチャンバーの内壁下部との隙間が1mm以下である請求項1〜4の何れか一項記載のトナー供給ローラの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−20524(P2008−20524A)
【公開日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−190279(P2006−190279)
【出願日】平成18年7月11日(2006.7.11)
【出願人】(393002634)キヤノン化成株式会社 (640)
【Fターム(参考)】