説明

トナー供給ロールおよびその製法

【課題】生産性が高く、所望のトナー掻き取り性能が得易いトナー供給ロールおよびその製法を提供する。
【解決手段】軸体1と、この軸体1の外周面に沿って形成されたスポンジ弾性層2とを有するトナー供給ロールであって、上記スポンジ弾性層2の外周面に、軸方向に延びる帯状のスキン層Sが形成され、スポンジ弾性層2の外周面が、スキン層Sの部分もスキン層S以外の部分も同一外径に形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機,プリンター,ファクシミリ等の電子写真装置に用いられるトナー供給ロールおよびその製法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、電子写真装置における複写は、感光ドラムの表面に原稿像を静電潜像として形成し、この静電潜像にトナーを付着させてトナー像を形成し、このトナー像を複写紙上に転写定着することにより行なわれている。この複写における上記トナー像の形成は、トナー供給ロールがトナーボックスから現像ロールの表面にトナーを供給し、この現像ロールの表面のトナーを上記静電潜像に付着させることにより行われている。そして、上記静電潜像に付着されずに現像ロールの表面に残った残余のトナーは、トナー供給ロールにより掻き取られ、トナーボックスに戻された後、トナーボックス内のアジテータ(攪拌機)により攪拌され、再使用に供される。
【0003】
したがって、トナー供給ロールには、トナーを安定して現像ロールに供給するトナー供給性能に加え、現像ロールの表面に余ったトナーを確実に掻き取るトナー掻き取り性能も求められている。そこで、そのトナー掻き取り性能を向上させるために、トナー供給ロールにおけるスポンジ弾性層の外周面に、軸方向に延びる複数の凸条を周方向に所定のピッチで形成すること等が行なわれている(例えば、特許文献1参照)。このものは、上記凸条の部分の外径が、隣り合う凸条と凸条の間の凹溝の外径よりも大きくなっている。
【特許文献1】特開平11−38749号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、トナー供給ロールは、一般に、軸体と、その外周面に成形されたスポンジ弾性層とからなっており、そのスポンジ弾性層の外周面の粗面により、トナー供給性能を発揮している。そして、トナー掻き取り性能をより向上させるために、上記のようにスポンジ弾性層の外周面に凸条が形成されているのであり、その凸条の形成方法としては、下記の(1)および(2)の方法が考えられる。
(1)軸体の外周面にスポンジ弾性層を成形した後、スポンジ弾性層の外周面に、軸方向に延びる複数の凹溝を、周方向に所定のピッチで、切削加工により形成することにより、隣り合う凹溝と凹溝の間に上記凸条を発現させる。
(2)スポンジ弾性層を成形するための成形用金型として、上記凸条に対応する複数の条溝が型面(内周面)に形成された特殊な成形用金型を用いる。
【0005】
しかしながら、上記(1)の方法では、スポンジ弾性層自体が低硬度のスポンジであり、切削加工をしようとすると変形するため、切削加工が困難である。このため、切削加工を無理に行っても、加工精度の維持は困難である。しかも、その切削加工の困難性から、加工時間も長くなり、生産性が低くなる。また、上記(2)の方法では、成形用金型の作製に時間とコストがかかるうえ、成形用金型の加工技術の限界や成形時の作業性等の限界のため、実現可能な凸条配置(パターン)が制限され、所望のトナー掻き取り性能が、なかなか得られない。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みなされたもので、生産性が高く、所望のトナー掻き取り性能が得易いトナー供給ロールおよびその製法の提供をその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するため、本発明は、軸体と、この軸体の外周面に沿って形成されたスポンジ弾性層とを有するトナー供給ロールであって、上記スポンジ弾性層の外周面に、軸方向に延びる帯状のスキン層が形成され、スポンジ弾性層の外周面が、スキン層の部分もスキン層以外の部分も同一外径に形成されているトナー供給ロールを第1の要旨とする。
【0008】
また、本発明は、成形用金型を用いて軸体の外周面に沿ってスポンジ弾性層を形成するトナー供給ロールの製法であって、上記スポンジ弾性層の形成に先立って、上記成形用金型の型面を、スキン層が形成される部分とされない部分とに分けて表面処理するトナー供給ロールの製法を第2の要旨とする。
【0009】
すなわち、本発明のトナー供給ロールは、スポンジ弾性層の外周面に、軸方向に延びる帯状のスキン層が形成されており、スポンジ弾性層の外周面は、スキン層の部分もスキン層以外の部分も同一外径に形成されている。このスキン層は、スポンジ弾性層を成形用金型を用いて成形する際に形成されるものであり、そのスキン層の部分は、スポンジの気泡となるセルが外部に対して閉口して、いわばセルの表面開口が樹脂皮膜で被覆された状態になっており、スキン層以外の外周面部分は、上記セルの殆どが外部に開口している。そして、上記スキン層の部分は、スキン層以外の外周面部分よりも硬くなっている。このため、スポンジ弾性層の外周面において、スキン層の部分とそれ以外の外周面部分との境界で硬度の差が生じ、その境界は変形し難いため、その境界でトナーを良好に掻き取ることができる。そして、スキン層の配置(パターン)を適宜設定することにより、所望のトナー掻き取り性能を得ることができる。しかも、スポンジ弾性層の外周面は、スキン層の部分もスキン層以外の部分も同一外径に形成されているため、トナー供給ロールと接触する感光ドラムや現像ロール等の接触部材に対して、均一に接触することができ、トナー掻き取り性能やトナー供給性能等を均一にすることができる。
【0010】
上記スキン層の配置(パターン)の設定は、スポンジ弾性層を形成するための成形用金型の型面(内周面)を、スキン層が形成される部分とされない部分とに分けて表面処理する方法(例えば、フッ素樹脂等の樹脂がコーティングされた型面部分や表面粗さが大きい型面部分等はスキン層が形成されない)より行うことができる。このようにして、上記スキン層の配置(パターン)を設定することができるため、スキン層の配置(パターン)の設定自由度が高く、所望のトナー掻き取り性能が得易くなっている。しかも、スポンジからなり変形し易いために切削加工が困難なスポンジ弾性層の外周面を切削加工する必要がなく、また、スポンジ弾性層を成形するための成形用金型に条溝を形成加工するという時間とコストがかかる加工の必要もないため、トナー掻き取り性能を向上させたトナー供給ロールを生産するにあたって、その生産性を高めることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明のトナー供給ロールは、スポンジ弾性層の外周面に、軸方向に延びる帯状のスキン層が形成され、スポンジ弾性層の外周面が、スキン層の部分もスキン層以外の部分も同一外径に形成されている。これにより、スポンジ弾性層の外周面において、スキン層の部分とそれ以外の外周面部分との境界で硬度の差が生じ、その境界でトナーを掻き取ることができる。また、スポンジ弾性層の外周面が、スキン層の部分もスキン層以外の部分も同一外径に形成されているため、トナー供給ロールと接触する感光ドラムや現像ロール等の接触部材に対して、均一に接触することができ、トナー掻き取り性能やトナー供給性能等を均一にすることができる。そして、スキン層の配置(パターン)を適宜設定することにより、所望のトナー掻き取り性能を得ることができる。そのスキン層の配置(パターン)の設定は、スポンジ弾性層を形成するための成形用金型の型面を表面処理する方法により、行うことができる。このため、スキン層の配置(パターン)の設定自由度が高く、所望のトナー掻き取り性能を簡単に得ることができる。しかも、上記スキン層の配置(パターン)の設定方法は、切削加工が困難なスポンジ弾性層の外周面を切削加工する必要がなく、また、時間とコストをかけて成形用金型に条溝を形成加工したりする必要もないため、トナー供給ロールの生産性を高めることができる。
【0012】
特に、上記帯状のスキン層が、複数形成され、周方向に所定のピッチで形成されている場合には、トナー掻き取り性能をより向上させることができる。
【0013】
また、上記帯状のスキン層が、ロールの中心軸に対して所定の角度傾斜している場合には、本発明のトナー供給ロールと接触する感光ドラムや現像ロール等の接触部材に対して、各帯状のスキン層は、その一部分で接触する(点接触状に接触する)ようになり、トナー供給ロールの回転に伴って、各スキン層の接触部分がトナー供給ロールの軸方向に順次移動し、スキン層との接触が連続的となる。このため、トナー供給ロールの回転に伴う振動および回転むらの発生を抑制することができる。
【0014】
そして、本発明のトナー供給ロールの製法は、上記成形用金型の型面を、スキン層が形成される部分とされない部分とに分けて表面処理するため、スキン層の配置(パターン)の設定自由度が高く、所望のトナー掻き取り性能を得易くすることができる。しかも、切削加工が困難なスポンジ弾性層の外周面を切削加工する必要がなく、また、スポンジ弾性層を成形するための成形用金型に条溝を形成加工するという時間とコストがかかる加工の必要もないため、トナー掻き取り性能を向上させたトナー供給ロールを生産するにあたって、その生産性を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
つぎに、本発明の実施の形態を図面にもとづいて詳しく説明する。
【0016】
図1は、本発明のトナー供給ロールの第1の実施の形態を示している。このトナー供給ロールは、軸体1の外周面にスポンジ弾性層2が形成されており、このスポンジ弾性層2の外周面には、複数の帯状のスキン層Sが、トナー供給ロールの中心軸と平行に、周方向に一定のピッチで形成されている。また、各帯状のスキン層Sは、略均一厚み、略均一幅に形成され、スポンジ弾性層2の一端縁から他端縁まで連続したものとなっている。そして、上記スポンジ弾性層2の外周面は、スキン層Sの部分もスキン層S以外の部分も、同一外径に形成されている。なお、図1では、理解を助けるために、上記帯状のスキン層Sを大きく図示するとともに、その本数を少なく図示している。
【0017】
このようなトナー供給ロールの製法としては、例えば、スポンジ弾性層2を形成するための成形用金型の型面を表面処理することにより、スキン層Sが形成される部分とされない部分とに分ける方法があげられる。
【0018】
上記製法のうち、成形用金型の型面を表面処理する場合について、より詳しく説明する。すなわち、まず、スポンジ弾性層2を形成するための成形用金型を準備し、その型面全体にフッ素樹脂等の樹脂をディッピング等によりコーティングする。ついで、スキン層Sを形成させる部分にコーティングされた上記樹脂を除去し、スキン層Sを形成させない部分にコーティングされた上記樹脂を残す。ここで、上記樹脂の除去方法としては、特に限定されないが、例えば、その除去部分の幅方向(周方向)に圧接する圧接片が、円盤体の外周縁に、1個ないし複数個(複数個の圧接片が相互に周方向に所定の間隔で形成されている)設けられたものを、上記成形用金型の型面の軸方向の一端から他端まで直線状に移動させることにより、その圧接片が圧接する部分の樹脂を帯状に除去する方法があげられる。その後、軸体1の外周面に、必要に応じて接着剤等を塗布し、これを上記成形用金型の中空部に同軸的に設置し、密封した後、スポンジ弾性層2の形成材料を注入し、発泡硬化させ、スポンジ弾性層2を形成する。このようにして、上記トナー供給ロールを作製することができる。
【0019】
このようして作製されたトナー供給ロールは、上記成形用金型の型面のうち樹脂がコーティングされていない部分に対応するスポンジ弾性層2の外周面部分では、スキン層Sが形成され、上記成形用金型の型面のうち樹脂がコーティングされた部分に対応するスポンジ弾性層2の外周面部分では、スキン層Sが形成されていない。
【0020】
また、成形用金型の型面に対する表面処理は、上記樹脂コーティング処理に代えて、粗面化処理でもよい。すなわち、成形用金型の型面のうち、スキン層Sを形成させる部分をマスキングした状態で、成形用金型の型面をサンドブラスト処理等することにより、上記マスキング以外の型面部分を粗面化した後、上記マスキングを取り除く。ここで、上記のように選択的にマスキングする方法としては、例えば、成形用金型の型面に、液状のサンドブラスト用マスキング剤を帯状に塗布し硬化させる方法があげられる。
【0021】
このようにして得られた成形用金型を用いて、上記と同様にしてトナー供給ロールを作製すると、上記成形用金型の型面のうち粗面化されていない部分(マスキングした部分)に対応するスポンジ弾性層2の外周面部分では、スキン層Sが形成され、上記成形用金型の型面のうち粗面化された部分に対応するスポンジ弾性層2の外周面部分では、スキン層Sが形成されていない。この方法において、スキン層Sが形成されるようにするためには、上記粗面化されない部分の十点平均粗さ(Rz)が5μm未満になるよう、上記成形用金型を作製する。また、上記粗面化処理は、スキン層Sが形成されないようにするために、粗面化した部分の十点平均粗さ(Rz)が5〜20μmの範囲になるよう行われる。なお、十点平均粗さ(Rz)は、表面粗さ計(例えば、東京精密社製のサーフコム1400D)を用いて測定することができる。
【0022】
上記いずれの方法によりスポンジ弾性層2が形成されても、図2にスポンジ弾性層2の表面部分の、軸に直交する拡大断面図を示すように、その外周面のスキン層Sの部分は、スポンジ弾性層2を形成するセルCが外部に対して閉口しており、スキン層S以外の外周面部分は、上記セルCの殆どが外部に開口している。そして、上記スキン層Sの部分は、スキン層S以外の外周面部分よりも硬くなっている。このため、スポンジ弾性層2の外周面において、スキン層Sの部分とそれ以外の外周面部分との境界で硬度の差が生じ、その境界は変形し難くなっており、その境界でトナーを掻き取ることができる。
【0023】
そして、上記いずれの方法も、スキン層Sの配置(パターン)の設定(スキン層Sの本数,ピッチ等の設定)は、樹脂コーティングやマスキング等の表面処理によるため、そのスキン層Sの配置(パターン)の設定自由度が高く、そのスキン層Sの配置(パターン)を適宜設定することにより、所望のトナー掻き取り性能を簡単に得ることができる。
【0024】
また、上記いずれの方法も、切削加工が困難なスポンジ弾性層2の外周面を切削加工する必要がないため、寸法精度を維持し易く、しかも、作製時間も短くでき、生産性を高めることができる。さらに、時間とコストをかけて成形用金型に条溝を形成加工する必要もないため、この点からも、スキン層Sの配置(パターン)の設定自由度が高く、所望のトナー掻き取り性能を簡単に得ることができる。
【0025】
しかも、上記スポンジ弾性層2の外周面は、スキン層Sの部分もスキン層S以外の部分も、同一外径であるため、トナー供給ロールと接触する感光ドラムや現像ロール等の接触部材に対して、均一に接触することができ、トナー掻き取り性能やトナー供給性能等を均一にすることができる。
【0026】
また、上記帯状のスキン層Sの大きさは、特に限定されるものではないが、各スキン層Sの厚みtは、通常、1〜100μmの範囲内に設定される。このスキン層Sの厚みtは、成形用金型を用いてスポンジ弾性層2を形成する際のスポンジ密度によって決まり、スキン層Sの厚みtを上記範囲の下限値(1μm)にする場合は、そのスポンジ密度を0.1g/cm3 程度に設定し、上限値(100μm)にする場合は、そのスポンジ密度を0.5g/cm3 程度に設定する。また、各スキン層Sの幅Wは、スキン層Sの本数にもよるが、通常、0.1〜5.0mmの範囲内に設定される。そして、スキン層Sの周方向のピッチPは、スキン層Sの本数にもよるが、通常、0.5〜5.0mmの範囲内に設定される。ここで、上記スキン層Sの厚みtは、スポンジ弾性層2を厚み方向に切断し、その断面の任意の10個所を電子顕微鏡で見て測定し、それらの平均値で表される。また、上記スキン層Sの幅Wおよびスキン層Sの周方向のピッチPは、スポンジ弾性層2の外周面を電子顕微鏡で見て測定することができる。上記幅Wは、任意の10点の測定個所の平均値(10点平均値)で表され、ピッチPは、全ピッチの平均値で表される。
【0027】
上記スキン層S以外の外周面部分は、上記セルCの殆どが外部に開口しており、その平均開口径(この平均開口径は、任意の10個のセルCの開口径の平均値であり、各セルCの開口径は、電子顕微鏡による表面観察で、各セルCの任意の1個所の開口径を測定したものである。)は、特に限定されるものではないが、通常、100〜800μmの範囲に設定される。すなわち、平均開口径が100μmを下回ると、セルC内に侵入したトナーが出難くなる傾向にあり、800μmを上回ると、トナー搬送量が減少する傾向にあり、いずれの場合も画質が悪化するおそれがあるからである。そして、スポンジ弾性層2内部のセルCの平均セル径(この平均セル径は、任意の10個のセルCのセル径の平均値であり、各セルCのセル径は、上記スポンジ弾性層2を厚み方向に切断し、各セルCの任意の1個所の直径を電子顕微鏡で見て測定したものである。)は、上記平均開口径以上であり、100〜1000μmの範囲に設定されていることが好ましい。すなわち、平均セル径が100μmを下回ると、トナーがセルC内で詰まり易くなる傾向にあり、1000μmを上回ると、セルC内に侵入するトナー量が多過ぎる傾向にあり、いずれの場合も画質が悪化するおそれがあるからである。さらに、スポンジ弾性層2内部は、トナーの劣化を抑制できる点で、隣り合うセルCの境界部に存在するセル膜の全てまたは一部に上記平均開口径程度の開口部が形成されて、セルC同士が3次元的に全てまたは一部つながった連泡構造となっていることが好ましいが、そのようになっていない独泡構造となっていてもよい。
【0028】
つぎに、本発明のトナー供給ロールを構成する軸体1,スポンジ弾性層2の形成材料等について説明する。
【0029】
上記軸体1は、中実でも中空でもよく、その形成材料としては、例えば、鉄,ステンレス,アルミニウム等の金属材料、またはポリアセタール(POM),アクリロニトリルブタジエンスチレン共重合体(ABS),ポリカーボネート,ナイロン等のプラスチックがあげられる。そして、上記軸体1の外周面には、必要に応じて、接着剤やプライマー等を塗布してもよい。
【0030】
上記スポンジ弾性層2の形成材料には、軟質ポリウレタンフォームの製造に用いられるポリオール成分およびイソシアネート成分が用いられる。上記ポリオール成分としては、例えば、ポリエーテルポリオール,ポリエステルポリオール,ポリマーポリオール等があげられ、これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。上記イソシアネート成分としては、2官能以上のポリイソシアネートであれば特に限定はなく、例えば、2,4−(または2,6−)トリレンジイソシアネート(TDI)、オルトトルイジンジイソシアネート(TODI)、ナフチレンジイソシアネート(NDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、カーボジイミド変成MDI、ポリメチレンポリフェニルイソシアネート、ポリメリックポリイソシアネート等があげられ、これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。また、必要に応じて、上記ポリオール成分およびイソシアネート成分に加えて、架橋剤,発泡剤(水,低沸点物,ガス体等),界面活性剤,触媒,難燃剤,充填剤,導電性付与剤,帯電防止剤等を適宜に配合してもよい。なお、上記スポンジ弾性層2は、上記軟質ポリウレタンフォームに限定されるものではなく、それ以外の発泡ゴムでもよい。
【0031】
図3は、本発明のトナー供給ロールの第2の実施の形態を示している。このトナー供給ロールは、スポンジ弾性層2の外周面を軸方向に3つの領域に仮想的に区切り、この各領域に、短尺の複数のスキン層Sが互い違いになるよう形成されている。このトナー供給ロールの作製には、スポンジ弾性層2を形成する成形用金型として、その型面に樹脂コーティングを、上記スキン層Sの配置に対応して塗り分けたものが用いられる。それ以外は、図1に示すトナー供給ロールと同様であり、同様の部分には、同じ符号を付している。
【0032】
そして、このトナー供給ロールは、図1に示すトナー供給ロールと同様の作用・効果を奏するうえ、トナー掻き取り性能を、各領域ごとにスキン層Sの分布密度等を変えることにより、所望の性能に設定することができるようになる。
【0033】
図4は、本発明のトナー供給ロールの第3の実施の形態を示している。このトナー供給ロールは、図1に示すトナー供給ロールにおいて、各帯状のスキン層Sがロールの中心軸に対して傾斜して形成されているものである。このトナー供給ロールを作製する場合は、スポンジ弾性層2を形成する成形用金型の型面の樹脂コーティングを部分的に除去する際に、その除去に用いる円盤体を上記成形用金型の型面の軸方向の一端から他端まで回転させながら直線状に移動させることにより、傾斜した帯状に除去することが行われる。なお、上記帯状のスキン層Sの傾斜角度は、上記弾性ロールの側面視において、任意のスキン層Sの長手方向とロールの中心軸とのなす、鋭角となる側の角度のことをいい、0度を上回り90度を下回る範囲内で設定される。また、この角度の測定は、トナー供給ロールの外周面に塗料を塗り、それを紙等の平面状体の上に転動させ、外周面を平面状に転写した転写体に基づいて行われる。それ以外は図1に示すトナー供給ロールと同様であり、同様の部分には同じ符号を付している。
【0034】
そして、このトナー供給ロールは、図1に示すトナー供給ロールと同様の作用・効果を奏するうえ、トナー掻き取り性能を、上記傾斜角度の大きさを変えることにより、所望の性能に設定することができるようになる。さらに、上記トナー供給ロールと接触する感光ドラムや現像ロール等の接触部材に対して、帯状のスキン層Sは、その一部分で接触する(点接触状に接触する)ようになり、トナー供給ロールの回転に伴って、スキン層Sの接触部分がトナー供給ロールの軸方向に順次移動し、スキン層Sとの接触が連続的となる。このため、トナー供給ロールの回転に伴う振動および回転むらの発生を抑制することができる。
【0035】
図5は、本発明のトナー供給ロールの第4の実施の形態を示している。このトナー供給ロールは、帯状のスキン層Sが螺旋状に1本だけ、スポンジ弾性層2の一端縁から他端縁まで連続して形成されているものである。それ以外は図1に示すトナー供給ロールと同様であり、同様の部分には同じ符号を付している。
【0036】
そして、このトナー供給ロールは、図4に示すトナー供給ロールと同様の作用・効果を奏する。
【0037】
上記実施の形態以外にも、スキン層Sの配置(パターン)をランダムにした形態、上記実施の形態のうちの2つ以上を組み合わせた形態等があげられる。
【0038】
つぎに、実施例について比較例と併せて説明する。
【実施例1】
【0039】
下記のように、軸体,スポンジ弾性層の形成材料等を用いて、軸体の外周面にスポンジ弾性層を形成し、図1に示すトナー供給ロールを作製した。
【0040】
〔軸体〕
直径5mmのSUM22製中実円柱状の軸体を準備した。
【0041】
〔スポンジ弾性層の形成材料の調製〕
ポリエーテルポリオール(三井化学社製、EP−828、OH価=28)を90重量部、ポリマーポリオール(三井化学社製、POP−31−28、OH価=28)を10重量部、ジエタノールアミンを2重量部、シリコン整泡剤(日本ユニカー社製、L−5309)を3重量部、水を2重量部、第三級アミン触媒(花王社製、カオライザーNo.31)を0.5重量部、第三級アミン触媒(東ソー社製、トヨキャットHX−35)を0.1重量部、DBTDLを0.1重量部、およびイソシアネート(住友バイエルウレタン社製、スミジュールVT−80、NCO%=45)を30.5重量部を配合してスポンジ弾性層の形成材料を調製した。
【0042】
〔成形用金型の型面処理〕
成形用金型の型面全体にフッ素樹脂(ダイキン社製、タフコート)をディッピングによりコーティングした。ついで、スキン層を形成させる部分にコーティングされた上記フッ素樹脂を除去し、スキン層を形成させない部分にコーティングされた上記フッ素樹脂を残した。そのフッ素樹脂の除去方法として、その除去部分の幅方向(周方向)に圧接する圧接片が、円盤体の外周縁に、除去する帯状の本数の数だけ設けられたものを、上記成形用金型の型面の軸方向の一端から他端まで直線状に移動させることにより、その圧接片が圧接する部分のフッ素樹脂を帯状に除去する方法を採用した。この各帯状の除去幅は1.0mm、その除去ピッチは1.5mmとした。上記除去幅は、上記円盤体の圧接片の圧接幅に基づき、除去ピッチは、上記円盤体の圧接片のピッチに基づくものである。
【0043】
〔トナー供給ロールの作製〕
上記成形用金型に軸体を同軸的にセットし、成形空間内に上記スポンジ弾性層の形成材料を充填した後、その成形金型をオーブン内に入れ、発泡硬化させ(60℃×30分間)ることにより、軸体の外周面にスポンジ弾性層(厚み5.5mm、外径16mm)を形成した。このスポンジ弾性層の外周面には、複数の帯状のスキン層が、ロールの中心軸と平行に、周方向に所定のピッチで形成されていた。各帯状のスキン層の厚みは30μm、各帯状のスキン層の幅は1.0mm、スキン層の周方向のピッチは1.5mmであった。このようにして、トナー供給ロール得た。なお、上記スキン層の厚み,幅は、電子顕微鏡で見てそれぞれ10個所ずつ測定し、その平均値をとり、ピッチは、全ピッチの平均値とした。
【実施例2】
【0044】
上記実施例1において、成形用金型の型面処理におけるフッ素樹脂の除去幅および除去ピッチを変えることにより、スポンジ弾性層の外周面に形成される各帯状のスキン層の幅を0.5mm、スキン層の周方向のピッチを1.0mmとした。それ以外は、上記実施例1と同様にした。
【実施例3】
【0045】
上記実施例1において、成形用金型の型面処理におけるフッ素樹脂の除去幅および除去ピッチを変えることにより、スポンジ弾性層の外周面に形成される各帯状のスキン層の幅を3.0mm、スキン層の周方向のピッチを6.0mmとした。それ以外は、上記実施例1と同様にした。
【0046】
〔比較例1〕
上記実施例1において、成形用金型の型面にコーティングしたフッ素樹脂を除去することなく、スポンジ弾性層を形成し、トナー供給ロール得た。このスポンジ弾性層の外周面には、スキン層が形成されていなかった。それ以外は、上記実施例1と同様にした。
【0047】
〔比較例2〕
上記実施例1において、成形用金型の型面にフッ素樹脂をコーティングすることなく、スポンジ弾性層を形成し、トナー供給ロール得た。このスポンジ弾性層の外周面には、全体にスキン層が形成されていた。それ以外は、上記実施例1と同様にした。
【0048】
〔比較例3〕
上記比較例1で得られたトナー供給ロールの外周面に、軸と平行に複数の凹溝(幅500μm、深さ500μm)を、周方向に所定のピッチ(2mm)で、切削加工により形成することにより、隣り合う凹溝と凹溝の間に凸条を発現させた。それ以外は、上記比較例1と同様にした。
【0049】
〔寸法精度〕
このようにして得られた実施例1〜3および比較例1〜3の各トナー供給ロールの外径および振れをレーザー寸法測定機(キーエンス社製、LS−5000型)を用いて測定した。その結果、振れが0.2mm以下のものを○、0.2mmを越えるものを×と評価し、下記の表1に併せて表記した。
【0050】
〔トナー供給性能〕
また、上記各トナー供給ロールをトナーカートリッジに組み込み、そのトナーカートリッジを、カラーレーザープリンター(ヒューレットパッカード社製、カラーレーザージェット4500)にセットし、画像出しを行った。そして、トナー供給性能について評価を行った。この評価は、上記画像出しの画像について、画像濃度レベルを目視により行った。その結果、画像濃度レベルが充分であるのものはトナー供給性能に優れるとして○、画像濃度レベルが低いのものはトナー供給性能に劣るとして×と評価し、下記の表1に併せて表記した。
【0051】
〔トナー掻き取り性能〕
また、上記画像出しの画像について、濃淡むらの有無を目視により評価し、トナー掻き取り性能の評価を行った。その結果、濃淡むらが確認できないものはトナー掻き取り性能に優れるとして○、濃淡むらが軽微なものはトナー掻き取り性能が少し劣るとして△、濃淡むらが明確に確認できるものはトナー掻き取り性能に劣るとして×と評価し、下記の表1に併せて表記した。
【0052】
【表1】

【0053】
上記表1の結果より、実施例1〜3のトナー供給ロールを組み込んだカラーレーザープリンターによる画像は、画像濃度レベルが充分であり、しかも、濃淡むらがなく、トナー供給性能およびトナー掻き取り性能に優れていることがわかる。これに対して、比較例1のトナー供給ロールを組み込んだカラーレーザープリンターによる画像には、軽微な濃淡むらがあり、トナー掻き取り性能に少し劣っていた。また、比較例2のトナー供給ロールを組み込んだカラーレーザープリンターによる画像は、画像濃度レベルが著しく低く、トナー供給性能に劣っていた。しかも、濃淡むらも明確に確認でき、トナー掻き取り性能も劣っていた。また、比較例3のトナー供給ロールを組み込んだカラーレーザープリンターによる画像は、トナー供給ロールの振れが原因の軽微な濃淡むらがあり、トナー掻き取り性能に少し劣っていた。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明のトナー供給ロールの第1の実施の形態を模式的に示す斜視図である。
【図2】上記トナー供給ロールの表面部分を模式的に示す、軸に直交する拡大断面図である。
【図3】本発明のトナー供給ロールの第2の実施の形態を模式的に示す斜視図である。
【図4】本発明のトナー供給ロールの第3の実施の形態を模式的に示す斜視図である。
【図5】本発明のトナー供給ロールの第4の実施の形態を模式的に示す斜視図である。
【符号の説明】
【0055】
1 軸体
2 スポンジ弾性層
S スキン層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸体と、この軸体の外周面に沿って形成されたスポンジ弾性層とを有するトナー供給ロールであって、上記スポンジ弾性層の外周面に、軸方向に延びる帯状のスキン層が形成され、スポンジ弾性層の外周面が、スキン層の部分もスキン層以外の部分も同一外径に形成されていることを特徴とするトナー供給ロール。
【請求項2】
上記帯状のスキン層が、複数形成され、周方向に所定のピッチで形成されている請求項1記載のトナー供給ロール。
【請求項3】
上記帯状のスキン層が、ロールの中心軸に対して所定の角度傾斜している請求項1または2記載のトナー供給ロール。
【請求項4】
成形用金型を用いて軸体の外周面に沿ってスポンジ弾性層を形成するトナー供給ロールの製法であって、上記スポンジ弾性層の形成に先立って、上記成形用金型の型面を、スキン層が形成される部分とされない部分とに分けて表面処理することを特徴とするトナー供給ロールの製法。
【請求項5】
上記成形用金型の型面に対する表面処理が、樹脂をコーティングする部分としない部分とに分ける方法であり、樹脂がコーティングされた部分ではスキン層が形成されず、樹脂がコーティングされていない部分ではスキン層が形成されるようにした請求項4記載のトナー供給ロールの製法。
【請求項6】
上記成形用金型の型面に対する表面処理が、粗面に形成する部分としない部分とに分ける方法であり、粗面に形成された部分ではスキン層が形成されず、粗面に形成されていない部分ではスキン層が形成されるようにした請求項4記載のトナー供給ロールの製法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−227512(P2006−227512A)
【公開日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−44230(P2005−44230)
【出願日】平成17年2月21日(2005.2.21)
【出願人】(000219602)東海ゴム工業株式会社 (1,983)
【Fターム(参考)】