説明

トラクタ

【課題】操作レバーを、他の操作レバーと干渉しないように離せると共に、操作し易い位置に配置できて、全体として複数の操作レバーの操作性がよくなるようにする。
【解決手段】左右一対の後輪フェンダ間に運転席が設けられ、運転席と一方の後輪フェンダとの間に、複数の操作レバーが設けられたトラクタにおいて、
少なくとも1の操作レバーが、後輪フェンダの外面側に支持され、該操作レバーの把持部側が、後輪フェンダを貫通して、後輪フェンダの左右方向内方側に突出されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トラクタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
トラクタには、左右一対の後輪フェンダ間に運転席が配備され、運転席と一方の後輪フェンダとの間に、主変速レバー、ハンドアクセルレバー、補助コントロールレバー、副変速レバー、PTOレバー等の複数の操作レバーが設けられたものがある(例えば、特許文献1、特許文献2、特許文献3)。
この種のトラクタでは、操作レバーの操作を容易にするために、複数の操作レバーを運転席の右前部側等に集中させるように配置するのが好ましい。しかし、複数の操作レバーを運転席の右側の前部側に集中させると、複数の操作レバーが互いに近づきすぎて、操作レバーの操作がしづらくなることになる。そこで、従来では、複数の操作レバーうちのPTOレバー等を、他の操作レバーから離して配置するために、例えばPTOレバーを、運転席の左側や、運転席の後方側に配置するようにしたものもある(例えば、特許文献1、特許文献2)。この場合、PTOレバー等が、操作し易い位置である運転席の右前部側等から大きく外れるため、複数の操作レバーのうちのPTOレバー等の操作レバーの操作がしづらくなるという問題があった。
【特許文献1】特開2001−206096号公報
【特許文献2】特開2000−247240号公報
【特許文献3】特開平10−166882号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は上記問題点に鑑み、操作レバーを、他の操作レバーと干渉しないように離すことができると共に、操作し易い位置に配置できて、全体として複数の操作レバーの操作性がよくなるようにしたものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この技術的課題を解決するための本発明の技術的手段は、左右一対の後輪フェンダ間に運転席が設けられ、運転席と一方の後輪フェンダとの間に、複数の操作レバーが設けられたトラクタにおいて、
少なくとも1の操作レバーが、後輪フェンダの外面側に支持され、該操作レバーの把持部側が、後輪フェンダを貫通して、後輪フェンダの左右方向内方側に突出されている点にある。
また、本発明の他の技術的手段は、前記1の操作レバーに対応して、後輪フェンダに、左右方向外方に没入した凹み部が設けられ、操作レバーの把持部側が、凹み部を貫通して、後輪フェンダの左右方向内方側に突出されている点にある。
【0005】
また、本発明の他の技術的手段は、前記凹み部は、左右方向外方に向けて前上がりに傾斜した底壁部と、底壁部の左右方向外端部から上方に起立した側壁部とを備え、凹み部の底壁部に、挿通窓が設けられ、前記1の操作レバーの把持部側が、挿通窓に挿通されて、側壁部の左右方向内方に配置されている点にある。
また、本発明の他の技術的手段は、前記一方の後輪フェンダの外面側に、前記1の操作レバーの基部側を、左右方向外方から覆うように側部カバーが設けられ、側部カバーと一方の後輪フェンダとの間に、前記1の操作レバーの基部側を支持する支持部材が設けられている点にある。
【0006】
また、本発明の他の技術的手段は、前記1の操作レバーがPTOレバーとされ、運転席と一方の後輪フェンダとの間のPTOレバーの前方側に、主変速レバーと、副変速レバーと、ハンドアクセルレバーと、補助コントロールレバーとが設けられている点にある。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、操作レバーを、他の操作レバーと干渉しないように離すことができると共に、操作し易い位置に配置できて、全体として複数の操作レバーの操作性がよくなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明に実施した形態につき、図面に沿って具体的に説明する。
図1において、トラクタ1は、2軸4車輪形の車体2を備え、該車体2は、左右一対の前輪3と左右一対の後輪4とを備え、前輪3は操向輪であるとともに駆動可能であり、ここに四輪駆動トラクタ1とされているが、前輪3はこれに対する動力を断接して二輪駆動にすることも可能である。
車体2は、エンジン5の後部にクラッチハウジング6を介してミッションケース7を連設することで構成されており、エンジン5及びラジエータ等のエンジン補器は天板を開閉自在としたボンネット8で被われている。
【0009】
また、車体2の後部上面には、左右一対のリフトアーム9を有する油圧昇降装置10が搭載されており、該リフトアーム9及び油圧昇降装置10を介して、作業機(本実施の形態においてはロータリ作業機)11が着脱自在にトラクタ1に装着されている。
また、図2に示す如く、油圧昇降装置10の上部には、前記作業機11の油圧制御機器に連結される複数基(本実施の形態においては3基)の補助コントロールバルブ13が積み重ねて配備されている。
図1に示す如く、油圧昇降装置10とエンジン5との間には、キャビン15が配備されており、本実施の形態のキャビン15は、左右一対の後輪4を上方から前方に亘って被う左右一対の後輪フェンダ16(左後輪フェンダ16L、右後輪フェンダ16R)と、左右一対の前支柱18と、左右一対の後支柱19と、前・後支柱18、19の中間でかつ後支柱18側に寄った後輪フェンダ16から立ち上った左右一対の中間支柱20と、これら支柱の上端を連結する箱状の天井部21とによって箱形に構成された独立装着形(車体2上に脱着自在に搭載したものをいう)である。
【0010】
また、図2及び図3に示す如く、該キャビン15は、上述の支柱の下端及び後輪フェンダ16を連結してキャビン15の底部を形成する底部板22を備え、該底部板22の後部には、平坦部23aを備えたフロアシート23が立ち上がって配備されている。
また、後輪フェンダ16は、底部板22から立ち上がって配備される立上り部16aと、該立上り部16aの上縁から車体2の外方に湾曲して延設される湾曲部16bとを有している。
図3に示す如く、キャビン15の内部には、左右一対の後輪フェンダ16の間で且つ前記フロアシート23の上方に配備された運転席26と、該運転席26と右後輪フェンダ16Rとの間に配備された操縦部27と、運転席26の前方に配備された操縦ハンドル28とを備えている。
【0011】
運転席26は、図2に示す如く、前記フロアシート23の平坦部23a上にシート支持体29を介して配備されている。
図3及び図4に示すように、操縦部27の前部には、前記車体2の主変速機構(図示省略)を操作すべくロッド及びプッシュプルケーブルを介して該主変速機構に連結された主変速レバー31と、車体2の副変速機構(図示省略)を操作すべくロッドを介して該副変速機構に連結された副変速レバー32と、手動でアクセル操作を行うべくプッシュプルケーブルを介して車体2のアクセル機構(図示省略)に連結されたハンドアクセルレバー33と、前記作業機11の油圧機器を遠隔操作すべく補助コントロールバルブ13に連結された1又は複数本(本実施の形態においては3本)の補助コントロールレバー34とが、運転席26の右後輪フェンダ16Rとの間における運転席26の前部側に集中して配備されている。
【0012】
図4〜図7において、PTOレバー36が、右後輪フェンダ16Rの外面側に支持され、PTOレバー36に対応して、右後輪フェンダ16Rに、左右方向外方に没入した凹み部40が設けられている。PTOレバー36は、円板状の取付基部37と、取付基部37から上方突出したレバー杆38と、レバー杆38の上端部に設けられた把持部39とを有している。凹み部40は、左右方向外方に向けて前上がりに傾斜した底壁部41と、底壁部41の左右方向外端部から上方に起立した側壁部42とを備え、凹み部40の底壁部41に、挿通窓43が設けられている。
【0013】
PTOレバー36の把持部39側が、挿通窓43に挿通されて、側壁部42の左右方向内方に配置され、これにより、PTOレバー36の把持部39側が、右後輪フェンダ16R(凹み部40)を貫通して、右後輪フェンダ16Rの左右方向内方側に突出されている。
右後輪フェンダ16Rの外面側に、PTOレバー36の基部側を、左右方向外方から覆うように側部カバー47が設けられ、側部カバー47と右後輪フェンダ16Rとの間に、PTOレバー36の基部側を支持する支持部材48が設けられている。
【0014】
側部カバー47は、前後方向中央側に長方板形状の覆い板部50を有すると共に、前後方向両側に左右方向内方に傾斜した前後一対の取付板部51を有している。支持部材48は、長方板形状の支持板部53と、支持板部53の上端から左右方向外方に屈曲した案内板部54と、支持板部53の下端から左右方向外方に屈曲した連結板部55と、支持板部53の前後方向両側から左右方向外方に突出した前後一対の取付部56とを備えている。
支持部材48の案内板部54には、支持板部53との間にレバー挿通窓58が形成され、また、案内板部54の前後両側に、レバー挿通窓58に対応して前後一対の係合凹部59,60が形成されている。
【0015】
支持部材48の連結板部55に、係止凹溝61が設けられ、この係止凹溝61に、ボーデンワイヤ63のアウターワイヤ64の端部に設けたねじ軸65が挿通され、ねじ軸65に螺合する一対のナット66により連結板部55が挟持されて、アウターワイヤ64の端部が固定されている。
PTOレバー36の取付基部37は、取付ボルト69とナット70とによって、支持部材48の支持板部53に、左右軸(取付ボルト69の支軸69a)廻りに前後揺動自在に支持されている。即ち、取付ボルト69は支持部材48の支持板部53に嵌合固着され、ナット70は取付ボルト69に螺合され、PTOレバー36の取付基部37とナット70との間に座金71が介在され、取付基部37は、座金71と取付ボルト69の頭部69bとの間の取付ボルト69の支軸69aに、回動自在に外嵌され、これにより、PTOレバー36の基部側は、取付ボルト69の支軸69a廻りに前後揺動自在に支持されている。
【0016】
PTOレバー36のレバー杆38は弾性変形自在な金属杆等により構成され、特にレバー杆38の取付基板37側は小幅の板状に形成されて、左右方向に弾性変形し易くなるように構成されている。そして、レバー杆38が左右方向内側に弾性変形した状態で、PTOレバー36のレバー杆38の中途部が、案内板部54のレバー挿通窓58に上下方向に挿通されおり、PTOレバー36を前側に揺動操作したとき、レバー杆38の弾性変形の復元力によって、係合凹部59に係合し、PTOレバー36を後側に揺動操作したとき、レバー杆38の弾性変形の復元力によって、係合凹部60に係合するようになっている。
【0017】
PTOレバー36の取付基部37に連結部73が後方側に突設され、この連結部73にボーデンワイヤ63のインナーワイヤ74がU字状の連結体75を介して連結されて、PTOレバー36は、ボーデンワイヤ63を介してPTOクラッチの制御弁に連結されており、PTOレバー36を後方に揺動操作することにより、PTOクラッチをオフしてPTO軸の回転を停止し、PTOレバー36を前方に揺動操作することにより、PTOクラッチをオンして、PTO軸に回転動力を伝達するように構成されている。
側部カバー47及び支持部材48の前後両側に、前後一対の取付ステー78が設けられている。各取付ステー78は、固定板部79と第1取付板部81と第2取付板部82とを有し、固定板部79はスポット溶接等により右後輪フェンダ26Rの外面に固着され、第1取付板部81に、側部カバー47の取付板部51が重合されてボルト84及びナット85により締め付け固定され、第2取付板部82に、支持部材48の左右一対の取付部56が重合されて、ボルト87及びナット88により締め付け固定され、これにより、側部カバー47と支持部材48とは、前後一対の取付ステー78により、右後輪フェンダ16Rに固定されている。なお、ナット85は第1取付板部81に溶接等により固着され、ナット88は取付部56に溶接等により固着されている。
【0018】
PTOレバー36は、前記主変速レバー31、副変速レバー32、ハンドアクセルレバー33及び補助コントロールレバー34よりもやや左右方向外方にあって、運転席26と右後輪フェンダ16Rとの間のPTOレバー36の前方に、前記主変速レバー31と、副変速レバー32と、ハンドアクセルレバー33と、補助コントロールレバー34とが配置されている。
上記実施の形態によれば、PTOレバー36が、右後輪フェンダ16Rの外面側に支持され、PTOレバー36の把持部39側が、右後輪フェンダ16Rを貫通して、右後輪フェンダ16Rの左右方向内方側に突出されているので、PTOレバー36を運転席26の右前部側に配置しても、右後輪フェンダ16Rに近づけて配置して、運転席26の右前部側に集中させるように配置した複数の操作レバー(主変速レバー31、副変速レバー32、ハンドアクセルレバー33、補助コントロールレバー34)から極力離して配置することができる。従って、PTOレバー36を、容易に操作することができるように、運転席26の右前部側に配置できると共に、他の複数の操作レバーから離して配置することができ、PTOレバー36を他の操作レバーと干渉するおそれもなく容易に操作することができる。しかも、PTOレバー36を、運転席26の右前部側の複数の操作レバーの集中配置部分から離すことができるため、運転席26の右前部側の操作レバーの集中配置度を緩和することができ、この点から他の複数の操作レバーも操作し易くなる。従って、PTOレバー36を、他の操作レバーと干渉しないように離せると共に、操作し易い位置に配置できて、全体として複数の操作レバーの操作性がよくなる。
【0019】
なお、前記実施の形態では、PTOレバー36が、後輪フェンダ16の外面側に支持され、PTOレバー36の把持部39側が、右後輪フェンダ16Rを貫通して、右後輪フェンダ16Rの左右方向内方側に突出されているが、PTOレバー36に代えて、主変速レバー31、副変速レバー32、ハンドアクセルレバー33又は補助コントロールレバー34を、右後輪フェンダ16Rの外面側に支持し、該操作レバーの把持部側を、右後輪フェンダ16Rを貫通させて、右後輪フェンダ16Rの左右方向内方側に突出するようにしてもよい。また、1本のPTOレバー36に限らず、複数本の操作レバーを、後輪フェンダ16の外面側に支持し、該操作レバーの把持部側を、後輪フェンダ16を貫通させて、後輪フェンダ16の左右方向内方側に突出されるようにしてもよい。
【0020】
さらに、PTOレバー36等の操作レバーを、右後輪フェンダ16Rに代えて、左後輪フェンダ16Lの外面側に支持し、該操作レバーの把持部側を、左後輪フェンダ16Lを貫通して、左後輪フェンダ16Lの左右方向内方側に突出するようにしてもよい。この場合、運転席26の左側において、PTOレバー36等の操作レバーを、操作し易い場所である運転席26の前部側に配置できると共に、他の複数の操作レバーから離して配置することができ、PTOレバー36等の操作レバーを、他の操作レバーと干渉するおそれもなく容易に操作することができる。しかも、PTOレバー36等の操作レバーを、運転席26の前部側の複数の操作レバーの集中配置部分から離すことができるため、運転席26の前部側の操作レバーの集中配置度を緩和することができ、この点から他の複数の操作レバーも操作し易くなる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の一実施形態を示すトラクタの左側面図である。
【図2】同トラクタの後輪とその近傍を拡大して示す側面図である。
【図3】同キャビン内部の平面図である。
【図4】同操縦部部分の側面図である。
【図5】同PTOレバー部分の側面図である。
【図6】同図4のA−A線断面図である。
【図7】同図4のB−B線断面図である。
【符号の説明】
【0022】
1 トラクタ
16L 左後輪フェンダ
16R 右後輪フェンダ
26 運転席
31 主変速レバー
32 副変速レバー
33 ハンドアクセルレバー
34 補助コントロールレバー
36 PTOレバー
39 把持部
40 凹み部
41 底壁部
42 側壁部
43 挿通窓
47 側部カバー
48 支持部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右一対の後輪フェンダ(16)間に運転席(26)が設けられ、運転席(26)と一方の後輪フェンダ(16)との間に、複数の操作レバーが設けられたトラクタにおいて、
少なくとも1の操作レバー(36)が、後輪フェンダ(16)の外面側に支持され、該操作レバー(36)の把持部(39)側が、後輪フェンダ(16)を貫通して、後輪フェンダ(16)の左右方向内方側に突出されていることを特徴とするトラクタ。
【請求項2】
前記1の操作レバー(36)に対応して、後輪フェンダ(16)に、左右方向外方に没入した凹み部(40)が設けられ、操作レバー(36)の把持部(39)側が、凹み部(40)を貫通して、後輪フェンダ(16)の左右方向内方側に突出されていることを特徴とする請求項1に記載のトラクタ。
【請求項3】
前記凹み部(40)は、左右方向外方に向けて前上がりに傾斜した底壁部(41)と、底壁部(41)の左右方向外端部から上方に起立した側壁部(42)とを備え、凹み部(40)の底壁部(41)に、挿通窓(43)が設けられ、前記1の操作レバー(36)の把持部(39)側が、挿通窓(43)に挿通されて、側壁部(42)の左右方向内方に配置されていることを特徴とする請求項2に記載のトラクタ。
【請求項4】
前記一方の後輪フェンダ(16)の外面側に、前記1の操作レバー(36)の基部側を、左右方向外方から覆うように側部カバー(47)が設けられ、側部カバー(47)と一方の後輪フェンダ(16)との間に、前記1の操作レバー(47)の基部側を支持する支持部材(48)が設けられていることを特徴とする請求項1に記載のトラクタ。
【請求項5】
前記1の操作レバー(36)がPTOレバーとされ、運転席(26)と一方の後輪フェンダ(16)との間のPTOレバー(36)の前方側に、主変速レバー(31)と、副変速レバー(32)と、ハンドアクセルレバー(33)と、補助コントロールレバー(34)とが設けられていることを特徴とするトラクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−306236(P2006−306236A)
【公開日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−130429(P2005−130429)
【出願日】平成17年4月27日(2005.4.27)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】