説明

トリアジン誘導体類及びそれらの治療応用

本発明は、種々の状態及び疾患においてプロテインキナーゼ活性を調節するためのトリアジン誘導体類及びそれらの使用を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は概しては、様々な障害、疾患及び病態を治療するための化合物の使用に関し、より具体的にはプロテインキナーゼを調節するため及びプロテインキナーゼが介在する疾患を治療するためのトリアジン化合物の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
プロテインキナーゼは、構造的に関連があって細胞内の様々なシグナル伝達過程の調節に関与する酵素の巨大ファミリーを構成する。類似する250〜300アミノ酸の触媒ドメインを含有するプロテインキナーゼは標的タンパク質基質のリン酸化を触媒する。
【0003】
当該キナーゼはリン酸化物(phosphorylate)中の基質によってファミリーに分類され得る(例、タンパク質−チロシン、タンパク質−セリン/スレオニン、脂質、等)。チロシンのリン酸化は細胞増殖、移動、分化及び生存等の様々な生物学的過程の制御において中心的なイベントである。いくつかのファミリーの受容体チロシンキナーゼ及び非受容体チロシンキナーゼは、ATPに由来するリン酸の、特定の細胞タンパク質標的のチロシン残基への転移を触媒することによりこれらのイベントを調節する。これらの各キナーゼファミリーに一般的に対応する配列モチーフが同定されてきている[Hanks et al.,FASEB J., (1995), 9, 576-596; Knighton et al., Science, (1991), 253, 407-414; Garcia-Bustos et al., EMBO J., (1994),13:2352-2361)。当該プロテインキナーゼファミリー中のキナーゼの例としては、限定されないが、ab1、Akt、bcr−ab1、Blk、Brk、Btk、c−kit、c−Met、c−src、c−frns、CDK1、CDK2、CDK3、CDK4、CDK5、CDK6、CDK7、CDK8、CDK9、CDK10、cRafl、CSF1R、CSK、EGFR、ErbB2、ErbB3、ErbB4、Erk、Fak、fes、FGFRl、FGFR2、FGFR3、FGFR4、FGFR5、Fgr、flt−1、Fps、Frk、Fyn、Hck、IGF−1R、INS−R、Jak、KDR、Lck、Lyn、MEK、p38、PDGFR、PIK、PKC、PYK2、ros、Tie、Tie−2、TRK、Yes、及びZap70が挙げられる。
【0004】
プロテインキナーゼは非常に様々な細胞過程及び細胞機能の制御及び維持において中心的な役割を果たすことが研究により示された。例えば、キナーゼ活性は細胞増殖、活性化、及び/又は分化を制御する分子スイッチとして作用する。制御されていないキナーゼ活性又は過剰なキナーゼ活性が、良性及び悪性の増殖障害及び免疫系の不適切な活性化に起因する疾患(自己免疫疾患)、同種移植の拒絶反応、及び移植片対宿主反応を含む多くの疾患状態において観察されてきている。
【0005】
多くの疾患が、プロテインキナーゼが介在するイベントにより誘起される異常な細胞応答と関係することが報告されている。これらの疾患としては自己免疫疾患、炎症性疾患、骨疾患、代謝性疾患、神経疾患及び神経変性疾患、癌、心臓血管疾患、アレルギー及び喘息、アルツハイマー病及びホルモン関連の疾患が挙げられる。更に、VEGF−2及びTie−2等の内皮細胞特異的受容体PTKは血管形成過程に介在し、癌及び制御されていない血管新生を含む他の疾患の進行の支援に関与する。従って、治療剤として有効なプロテインキナーゼ阻害剤を見出すために、医薬品化学において相当な努力がなされてきている。
【0006】
とりわけ興味を引くキナーゼファミリーの1つは、Srcキナーゼファミリーである。Srcキナーゼは多くのタイプの細胞における増殖及び移動応答、細胞活性化、接着、運動性、及び生存、増殖因子受容体シグナル伝達、及び破骨細胞活性化に関与する(Biscardi et al., Adv. Cancer Res. (1999), 76, 61-119; Yeatman et al., Nat. Rev. Cancer (2004), 4, 470-480; Owens, D, W,; McLean et al., Mol. Biol. Cell (2000), 11, 51-64)。Srcファミリーのメンバーとしては、哺乳動物における以下の8つのキナーゼ:Src、Fyn、Yes、Fgr、Lyn、Hck、Lck、及びBlkが挙げられる(Bolen et al., Annu. Rev. Immunol, (1997), 15, 371)。これらは、分子量52〜62kDにわたる非受容体プロテインキナーゼである。全てが6つの異なる機能ドメイン:特有のドメインであるSrcホモロジードメイン4(SH4)、SH3ドメイン、SH2ドメイン、触媒ドメイン(SH1)、及びC末端調節領域から構成される共通の構造的構成によって特徴付けられる(Brown et al., Biochim Biophys Acta (1996), 1287, 121-149; Tatosyan et al. Biochemistry (Moscow) 2000, 65, 49-58)。SH4ドメインはSrc分子を細胞膜に導くミリスチル化シグナルを含有する。このSrcタンパク質特有のドメインは、特定の受容体及び標的タンパク質との特異的相互作用に関与する(Thomas et al., Annu Rev Cell Dev Biol (1997), 13, 513-609)。調節領域のSH3及びSH2は、Srcの触媒活性、局在及び標的タンパク質との結合に影響する基質タンパク質との分子内及び分子間相互作用を調節する(Pawson T., Nature (1995), 373, 573-580)。Srcファミリーの全てのタンパク質中に見られるキナーゼドメインSH1は、チロシンキナーゼ活性に関与し基質の結合に中心的な役割を持つ。SrcキナーゼのN末端半分にはそのチロシンリン酸化のための部位が含有され、Srcの触媒活性を制御する(Thomas et al., Annu Rev Cell Dev Biol (1997), 13 : 513-609)。v−Srcはキナーゼ活性の制御に関与するC末端領域中の構造的差異により、細胞性Src(c−Src)とは異なる。
【0007】
Srcファミリータンパク質のチロシンキナーゼのプロトタイプのメンバーは、元々発癌性レトロウィルス、ラウス肉腫ウィルス、RSVの形質転換タンパク質(v−Src)として同定された(Brugge et al., Nature (1977), 269, 346-348); Hamaguchi et al. (1995), Oncogene 10: 1037-1043)。ウィルスのv−Srcは、内因性チロシンキナーゼ活性を持つ通常の細胞タンパク質(c−Src)が変異し、且つ活性化した種類である(Collett et al., Proc Natl Acad Sci U S A (1978), 75, 2021-2024)。このキナーゼは、専らその基質タンパク質のチロシン残基をリン酸化する(Hunter et al., Proc Natl Acad Sci U S A (1980), 77, 1311-1315)。
【0008】
Srcは細胞質タンパク質のチロシンキナーゼであり、その活性化及び膜周縁のシグナル伝達複合体への動員が細胞運命に重要な意味合いをもつことが研究により示された。Srcタンパク質レベル及びSrcキナーゼ活性がヒト乳癌(Muthuswamy et al., Oncogene, (1995), 11, 1801-1810); Wang et al., Oncogene (1999), 18, 1227-1237; Warmuth et al., Curr. Pharm. Des. (2003), 9, 2043-2059]、結腸癌(Irby et al., Nat Genet (1999), 21, 187-190)膵臓癌(Lutz et al., Biochem Biophys Res Commun (1998), 243, 503-508]、ある種のB細胞白血病及びリンパ腫(Talamonti et al., J, Clin. Invest. (1993), 91 , 53; Lutz et al., Biochem. Biophys. Res. (1998), 243, 503; Biscardi et al., Adv. Cancer Res. (1999), 76, 61; Lynch et al., Leukemia (1993), 7, 1416; Boschelli et al., Drugs of the Future (2000), 25(7), 717)、消化管癌(Cartwright et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, (1990), 87, 558-562及びMao et al., Oncogene, (1997), 15, 3083-3090)、非小細胞肺癌(NSCLC)(Mazurenko et al., European Journal of Cancer, (1992), 28, 372-7)、膀胱癌(Fanning et al., Cancer Research, (1992), 52, 1457-62)、食道癌(Jankowski et al., Gut, (1992), 33, 1033-8)、前立腺及び卵巣癌(Wiener et al., Clin. Cancer Research, (1999), 5, 2164-70)、黒色腫及び肉腫(Bohlen et al., Oncogene, (1993), 8, 2025-2031 ; Tatosyan et al., Biochemistry (Moscow) (2000), 65, 49-58)において有意に上昇することがよく報告されてきた。更に、SrcキナーゼはEGFR、Her2/neu、PDGFR、FGFR及びVEGFRを含む複合的な発癌経路を通してシグナル伝達を調節する(Frame et al., Biochim Biophys Acta (2002), 1602, 114-130; Sakamoto et al., Jpn J Cancer Res, (2001), 92: 941-946)。
【0009】
従って、Srcのキナーゼ活性阻害を通してシグナル伝達を阻害することが細胞の腫瘍への転換を促進する異常な経路を調節する有効な手段になると予想される。Srcキナーゼ阻害剤は有用な抗がん剤であり得る(Abram et al., Exp. Cell Res., (2000), 254, 1)。srcキナーゼ阻害剤が腫瘍細胞株に対して有意な抗増殖活性を有し(M, M, Moasser et al., Cancer Res., (1999), 59, 6145; Tatosyan et al., Biochemistry (Moscow) (2000), 65, 49-58)、腫瘍形成性の表現型への細胞の形質転換を阻害する(R. Karni et al., Oncogene (1999), 18, 4654)ことが報告されている。更に、卵巣及び結腸の腫瘍細胞において発現させたアンチセンスSrcが腫瘍増殖を阻害することが示されてきた(Wiener et al., Clin. Cancer Res., (1999), 5, 2164; Staley et al., Cell Growth Diff. (1997), 8, 269)。Srcキナーゼ阻害剤は脳虚血の動物モデルにおいても有効であると報告されてきており(Paul et al. Nature Medicine, (2001), 7, 222)、このことはSrcキナーゼ阻害剤が脳梗塞後の脳損傷を制限するのに有効かもしれないことを示唆する。関節炎の骨破壊の抑制が、リウマチ滑膜細胞及び破骨細胞においてCSKを過剰発現することにより達成されてきた(Takayanagi et al., J. Clin. Invest. (1999), 104, 137)。CSK、又はC末端側Srcキナーゼは、リン酸化することによってSrc触媒活性を阻害する。これはSrc阻害により、関節リウマチに罹患している患者において特徴的な関節破壊を予防し得ることを暗示する(Boschelli et al., Drugs of the Future (2000), 25(7), 717)。
【0010】
Srcファミリーキナーゼは、他の免疫細胞受容体の下流のシグナル伝達にも重要であることが十分実証されている。FynはLckのようにT細胞におけるTCRシグナル伝達に関与する(Appleby et al., Cell, (1992), 70, 751)。Hck及びFgrは好中球の活性化につながるFcγ受容体のシグナル伝達に関与する(Vicentini et al., J. Immunol. (2002), 168, 6446)。Lyn及びSrcは、ヒスタミン及び他のアレルギー性メディエーターの放出につながるFcγ受容体のシグナル伝達にも関与する(Turner. H, 及びKinet, J-P Nature (1999), 402, B24)。これらの知見から、Srcファミリーキナーゼ阻害剤はアレルギー性疾患及び喘息の治療に有用であり得ることが示唆される。
【0011】
他のSrcファミリーキナーゼは潜在的治療標的でもある。LckはT細胞シグナル伝達において役割を持つ。Lck遺伝子を欠くマウスは、胸腺細胞を発達させるための能力が不足している。T細胞シグナル伝達の正の活性化因子としてのLckの機能により、Lck阻害剤は関節リウマチ等の自己免疫疾患の治療に有用であり得ることが示唆される(Molina et al., Nature, (1992), 357, 161)。
【0012】
HckはSrcプロテイン−チロシンキナーゼファミリーのメンバーであり、重要なHIV標的細胞であるマクロファージにおいて強く発現し、HIVに感染したマクロファージ中でそれを阻害することによって、疾患の進行を遅くし得る(Ye et al., Biochemistry, (2004), 43 (50), 15775-15784)。
【0013】
Hck、Fgr及びLynは、骨髄性白血球中のインテグリンシグナル伝達の重要なメディエーターとして同定されてきた(Lowell et al., J. Leukoc. Biol., (1999), 65, 313)。したがって、これらキナーゼメディエーターの阻害が、炎症治療に有用であり得る(Boschelli et al., Drugs of the Future (2000), 25(7), 717)。
【0014】
Sykは細胞脱顆粒及び好酸球活性化において重要な役割を果たすチロシンキナーゼであり、Sykキナーゼは様々なアレルギー性疾患、特に喘息に関係すると報告されている(Taylor et al., Mol. Cell. Biol (1995), 15, 4149)。
【0015】
BCR−ABLは、全ての慢性骨髄性白血病(CML)の患者の90%及び成人の急性リンパ芽球性白血病(ALL)の患者の15〜30%に存在する、構成的に活性のある細胞質チロシンキナーゼ、BCR−AELタンパク質をコードする。数々の研究によりBCR−ABLの活性がこのキメラタンパク質の癌誘導能に必要であることが証明されてきた。
【0016】
SrcキナーゼはB型肝炎ウィルスの複製において役割を果たす。ウィルス増殖に必要な段階で、ウィルスにコードされる転写因子HBxがSrcを活性化する(Klein et al., EMBO J. (1999), 18, 5019; Klein et al., Mol. Cell. Biol. (1997), 17, 6427)。いくつかの遺伝学的及び生化学的データにより、Srcファミリーチロシンキナーゼはc−Cblのリン酸化を介して、脂肪蓄積のための重要なシグナル中継に役立ち、肥満治療用の新しい戦略を提供する可能性があることが明瞭に示される(Sun et al., Biochemistry, (2005), 44 (44), 14455-14462)。Srcは更なるシグナル伝達経路において役割を果たすので、骨粗鬆症及び脳梗塞を含む他の疾患の治療のためのSrc阻害剤も追求されている(Susva et al., Trends Pharmacol. Sci. (2000), 21, 489-495; Paul et al., Nat. Med. (2001), 7, 222-227)。
【0017】
Srcキナーゼ活性阻害剤が骨粗鬆症(Soriano et al., Cell (1991), 64, 693; Boyce et al. J Clin. Invest (1992), 90, 1622; Owens et al., Mol. Biol. Cell (2000), 11, 51-64)、T細胞介在性の炎症(Anderson et al., Adv. Immunol. (1994), 56, 151; Goldman, F D et al. J, Clin. Invest. (1998), 102, 421)、及び脳虚血(Paul et al. Nature Medicine (2001), 7, 222)の治療において有用である可能性もある。
【0018】
更に、srcファミリーキナーゼはいくつかのタイプの細胞中でシグナル伝達に関わる。例えば、fynはIckのように、T細胞活性化に関与する。Hck及びfgrは、好中球のFeガンマ受容体介在性の酸化的破壊に関与する。Src及びlynはFcイプシロン誘導性の肥満細胞の脱顆粒において重要で、従って喘息及び他のアレルギー性疾患において役割を果たし得ると考えられている。キナーゼlynは紫外線(Hiwasa et al., FEBS Lett. (1999), 444, 173)又はイオン化放射線(Kumar et al., J Biol Chein, (1998), 273, 25654)により誘導されるDNA損傷への細胞応答に関与することが知られている。従って、lynキナーゼ阻害剤は放射線治療における増強剤として有用であり得る。
【0019】
T細胞は、免疫応答の制御においてきわめて重要な役割を果たし、病原体に対する免疫の確立にとって重要である。更にT細胞は、関節リウマチ、炎症性大腸炎、タイプI糖尿病、多発性硬化症、シェーグレン病、重症筋無力症、乾癬、及び狼瘡等の炎症性自己免疫疾患の間に頻繁に活性化される。T細胞活性化は移植片拒絶反応、アレルギー反応、及び喘息の重要な構成要因でもある。
【0020】
T細胞は特異抗原により、細胞表面上に発現しているT細胞受容体を通して活性化される。この活性化で、細胞内に発現している酵素が介在する一連の細胞内シグナル伝達カスケードが誘起される(Kane et al. Current Opinion in Immunol. (2000), 12, 242)。これらのカスケードは、インターロイキン−2(IL−2)のようなサイトカインの生産をもたらす遺伝子制御イベントを引き起こす。IL−2はT細胞活性化に必要なサイトカインであり、特異的免疫応答の拡散及び増幅を引き起こす。
【0021】
従って、Srcキナーゼと他のキナーゼ(Src kinase other kinase)は興味深い創薬標的となった(Parang et al., Expert Opin. Ther. Pat. (2005), 15, 1183-1207; Parang et al., Curr. Opin. Drug Discovery Dev. (2004), 7, 630-638)。キナーゼ関連の状態又は他の疾患の治療用に、キナーゼ活性を調節、より具体的には阻害する多くのクラスの化合物が開示されてきた。例えば、米国特許第(U.S. Pat. No, US Pat. No)6,596,746号及びPCT国際公開第05/096784A2号にはキナーゼ阻害剤としてベンゾトリアンが開示されている;PCT国際公開第01/81311号には、血管形成(angiogenisis)阻害のための置換安息香酸アミドが開示されている;米国特許第6,440,965号には神経変性疾患又は神経疾患治療における置換ピリミジン誘導体が開示されている;PCT国際公開第02/08205号には神経栄養活性を有するピリミジン誘導体が報告されている;PCT国際公開第03/014111号にはアリールピペラジン類及びアリールピペリジン類並びにそれらのメタロプロテイナーゼ阻害剤としての使用が開示されている;PCT国際公開第03/024448号にはヒストンデアセチラーゼ酵素活性阻害剤としての化合物が記載されている;PCT国際公開第04/058776号には抗血管形成活性を有する化合物が開示されている;PCT国際公開第01/94341号及び国際公開第02/16352号にはキナゾリン誘導体類のSrcキナーゼ阻害剤が開示されている。PCT国際公開第03/026666Al号及び国際公開第03/018021A1号にはキナーゼ阻害剤としてのピリミジニル誘導体類が開示されている。米国特許第6498165号にはピリミジン化合物のSrcキナーゼ阻害剤化合物が報告されている。Srcチロシンキナーゼ阻害剤としてのペプチドが最近報告されている(Kumar et al., J. Med. Chem., (2006), 49 (11), 3395-3401)。キノリンカルボニトリル類の誘導体類がSrc及びAblキナーゼの強力な二重阻害剤であると報告された(Diane et al., J. Med. Chem. (2004), 47 (7), 1599-1601)。
【0022】
多くのキナーゼ阻害剤が報告されているが、プロテインキナーゼに関係する状態の大半のための、利用可能な治療の選択肢が現在ないことを考慮すると、これらのタンパク質標的を阻害する新しい治療剤がなお大いに必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0023】
発明の要旨
従って、式(I)中に記載のトリアジン誘導体を含む抗癌剤、医薬上許容されるそれらの製剤、新規化合物の作製方法、並びに(and and)当該化合物を使用するための方法及び組成物を提供することが本発明の目的である。当該化合物及び式(I)中の化合物を含む組成物は種々の疾患の治療において役立つ。
【課題を解決するための手段】
【0024】
式(I)のトリアジン誘導体及び他の治療剤を別個の医薬製剤として調製し、続いてそれらを患者に同時に、ほぼ同時(semi-simultaneously)に、別個に又は一定の間隔で投与することにより、本明細書中に記載される併用療法が提供され得る。
【0025】
本発明は、例えば癌、及び心筋梗塞(MI)、脳梗塞、又は虚血等の血管障害といった様々な疾患、障害、及び病変の治療のための、キナーゼ阻害剤等のいくつかの化合物の使用方法を提供する。本発明中に記載のトリアジン化合物は、他の受容体及び非受容体キナーゼ活性を阻害するのに加えて、いくつか又は多くのSrcファミリーメンバーの酵素活性を阻害し得る。そのような化合物は、障害が細胞運動、接着、及び細胞周期の進行に影響する疾患の治療に加えて、関連する低酸素状態、骨粗鬆症、並びに血管透過性の上昇、炎症又は呼吸困難、腫瘍増殖、浸潤、血管形成、転移及びアポトーシスに起因するか、又はそれらに関連する状態を伴う疾患の治療にとって有益であり得る。
【0026】
本発明の別の態様においては、Srcファミリーキナーゼ活性を調節するための方法であって、当該キナーゼをキナーゼ活性の調節に十分な量の式1の化合物と接触させることを含む方法が提供される。ある変形においては、キナーゼ活性は低減される。ある変形においては、活性は阻害される。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】図1は化合物5によるSrcキナーゼの阻害を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
発明の詳細な説明
本発明は、式(I)
【0029】
【化1】

【0030】
に示す化合物又は医薬上許容されるそれらの塩に関し、式中:
【0031】
R1は水素、ハロゲン、ヒドロキシ、アミノ、シアノ、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アルキルチオ、アリール、アリールアルキル、複素環、ヘテロアリール、ヘテロシクロアルキル、アルキルスルホニル、アルコキシカルボニル及びアルキルカルボニルを表す。
【0032】
R2は:
(i)アミノ、アルキルアミノ、アリールアミノ、ヘテロアリールアミノ;
(ii)C−Cアルキル、C−Cアルケニル、C−Cアルキニル;
(iii)複素環、ヘテロアリール;及び
(iv)式(Ia)の基
【0033】
【化2】

【0034】
(式中:Rが水素の場合、XはCHであり;又はX−RはOであり;又はRが基を表す場合、XはNである)
から選ばれる。
【0035】
は水素、C−Cアルキル、オキソであり;
は、それぞれがハロゲン、ヒドロキシ、シアノ、アミノ、−COOH及びオキソから独立に選ばれる0〜4個の置換基で置換される(a)水素、C−Cアルキル、C−Cアルケニル、C−Cアルキニル、C−C10アリール又はヘテロアリール、(C−Cシクロアルキル)C−Cアルキル、C−Cハロアルキル、C−Cアルコキシ、C−Cアルキルチオ、C−Cアルカノイル、C−Cアルコキシカルボニル、C−Cアルカノイルオキシ、モノ−及びジ−(C−Cシクロアルキル)アミノC−Cアルキル、(4〜7員の複素環)C−Cアルキル、C−Cアルキルスルホニル、モノ−及びジ−(C−Cアルキル)スルホンアミド、並びにモノ−及びジ−(C−Cアルキル)アミノカルボニルから選ばれ;
LはAr及びArを連結するためのO、CO、(CH2)、m=0〜3、NR、CONR、NRCO、S、SO、SO2、O(CH、p=1〜3、(CH2)O、n=1〜3、シクロアルキル及びヘテロシクロアルキルから選ばれる。
【0036】
Ar及びArは独立に、それぞれが;
(1)ハロゲン、ヒドロキシ、アミノ、シアノ、−COOH、−SONH、オキソ、ニトロ、及びアルコキシカルボニル;並びに
(2)それぞれがハロゲン、ヒドロキシ、シアノ、オキソ、イミノ、C−Cアルキル、C−Cアルコキシ及びC−Cハロアルキルから独立に選ばれる0〜4個の二次置換基で置換されるC−Cアルキル、C−Cアルコキシ、C−C10シクロアルキル、C−Cアルケニル、C−Cアルキニル、C−Cアルカノイル、C−Cハロアルキル、C−Cハロアルコキシ、モノ−及びジ−(C−Cアルキル)アミノ、C−Cアルキルスルホニル、モノ−及びジ−(C−Cアルキル)スルホンアミド並びにモノ−及びジ−(C−Cアルキル)アミノカルボニル、フェニルC−Cアルキル及び(4〜7員の複素環)C−Cアルキル
から独立に選ばれる0〜4個の置換基で置換されるヘテロアリール又はアリールである。
【0037】
以降の定義で上記及び開示全体で用いる種々の用語に言及する。
【0038】
本明細書中、化合物は通常標準的な命名法を用いて記載される。不斉中心を有する化合物については、(別段の定めがない限り)全ての光学異性体及びそれらの混合物が包含されると理解されるべきである。更に、炭素−炭素二重結合を伴う化合物は、Z体であってもE体であってもよく、別段の定めがない限り当該化合物の全ての異性型を本発明中に含める。化合物が様々な互変異性型で存在する場合は、列挙された化合物はいずれか特定の互変異性体に限定されず、むしろ全ての互変異生型を含むことが意図される。本明細書中、いくつかの化合物は可変基(variables;例、X、Ar)を含む一般式を用いて記載される。別段の定めがない限り、そのような式中の各可変基は他の全ての可変基と独立に定義され、且つ式中二度以上現れる可変基は全て出現のたびごとに独立に定義される。
【0039】
用語「ハロ」又は「ハロゲン」はフッ素、塩素、臭素又はヨウ素を指す。
【0040】
本明細書中、用語「アルキル」は単独での又は他の基の一部としての、別段の定めがない限り、1〜12個の炭素原子を含有する一価のアルカン(炭化水素)由来の基(radical)を指す。アルキル基は任意の利用可能な結合部位で置換されてもよい。他のアルキル基で置換されたアルキル基は「分枝鎖状アルキル基」としても言及される。例示的なアルキル基としてはメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n−ブチル、t−ブチル、イソブチル、ペンチル、ヘキシル、イソヘキシル、ヘプチル、ジメチルペンチル、オクチル、2,2,4−トリメチルペンチル、ノニル、デシル、ウンデシル、及びドデシル等が挙げられる。例示的な置換基としては以下の1以上の基が挙げられるが、これらに限定されない:アルキル、アリール、ハロ(F、Cl、Br、I等)、ハロアルキル(CCl又はCF等)、アルコキシ、アルキルチオ、ヒドロキシ、カルボキシ(−COOH)、アルキルオキシカルボニル(−C(O)R)、アルキルカルボニルオキシ(−OCOR)、アミノ(−NH2)、カルバモイル(−NHCOOR−又は−OCONHR−)、尿素(−NHCONHR−)又はチオール(−SH)。本発明のいくつかの好ましい実施形態においては、アルキル基は例えば、アミノ、モルホリン、ピペラジン、ピペリジン、アゼチジン等のヘテロシクロアルキル、ヒドロキシル、メトキシ、又はピロリジン等のヘテロアリール基で置換される。
【0041】
本明細書中、用語「シクロアルキル」は単独での又は他の基の一部としての、3〜9個、好ましくは3〜7個の炭素原子の完全飽和又は部分飽和の炭化水素環を指す。例としてはシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル及びシクロヘキシル等が挙げられる。更に、シクロアルキルは置換されていてもよい。置換シクロアルキルはハロ、アルキル、置換アルキル、アルケニル、アルキニル、ニトロ、シアノ、オキソ(=O)、ヒドロキシ、アルコキシ、チオアルキル、−CO2H、−C(=O)H、CO2−アルキル、−C(=O)アルキル、ケト、=N−OH、=N−O−アルキル、アリール、ヘテロアリール、複素環、−NR’R’’、−C(=O)NR’R’’、−CO2NR’R’’、−C(=O)NR’R’’、−NR’CO2R’’、−NR’C(=O)R’’、−SO2NR’R’’、及び−NR’SO2R’’(式中、R’及びR’’のそれぞれは水素、アルキル、置換アルキル、及びシクロアルキルから独立に選ばれるか、又はR’及びR’’は一緒になって複素環又はヘテロアリール環を形成する)よりなる群から選ばれる1、2、又は3個の置換基を有するような環を指す。
【0042】
本明細書中、用語「アルケニル」は単独での又は他の基の一部としての、2〜12個の炭素原子及び少なくとも1つの炭素−炭素二重結合を含有する直鎖状、分枝鎖状又は環上の炭化水素基を指す。そのような基の例としては、ビニル、アリル、1−プロペニル、イソプロペニル、2−メチル−1−プロペニル、1−ブテニル、2−ブテニル、3−ブテニル、1−ペンテニル、2−ペンテニル、3−ペンテニル、4−ペンテニル、1−ヘキセニル、2−ヘキセニル、3−ヘキセニル、4−ヘキセニル、5−ヘキセニル、及び1−ヘプテニル等が挙げられる。アルケニル基は利用可能ないずれかの結合部位で置換されていてもよい。アルケニル基の例示的な置換基は上記アルキル基について列挙されたものが挙げられ、且つ特にシクロプロピル、シクロペンチル及びシクロヘキシル等のC3〜C7シクロアルキル基であって、更に例えばアミノ、オキソ、ヒドロキシル等で置換されていてもよいシクロアルキル基が挙げられる。
【0043】
用語「アルキニル」は、1つ以上の炭素−炭素不飽和結合を有し、そのうちの少なくとも1つが三重結合である、直鎖又は分枝鎖アルキン基を指す。アルキニル基はC2−C8アルキニル、C2−C6アルキニル及びC2−C4アルキニル基を含み、それらはそれぞれ2〜8、2〜6又は2〜4個の炭素原子を有する。アルキニル基の例としては、エテニル、プロペニル、イソプロペニル、ブテニル、イソブテニル、ペンテニル、及びヘキセニルが挙げられる。アルキニル基は利用可能ないずれかの結合部位で置換されていてもよい。アルキニル基の例示的な置換基はアミノ、アルキルアミノ等の、上記アルキル基について列挙されたものが挙げられる。記号「C」後の下付き文字での番号は、個々の基が含有できる炭素原子数を明示する。
【0044】
用語「アルコキシ」は単独での又は他の基の一部としての、酸素の結合(−O−)を通して連結した、上記のようなアルキル基を意味する。好ましいアルコキシ基は1〜8個の炭素原子を有する。そのような基の例としては、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、イソプロポキシ、n−ブトキシ、イソブトキシ、sec−ブトキシ、tert−ブトキシ、n−ペンチルオキシ、イソペンチルオキシ、n−ヘキシルオキシ、シクロヘキシルオキシ、n−ヘプチルオキシ、n−オクチルオキシ及び2−エチルヘキシルオキシが挙げられる。
【0045】
用語「アルキルチオ」は硫黄架橋を介して結合した上記のようなアルキル基を指す。好ましいアルコキシ基及びアルキルチオ基はアルキル基がヘテロ原子架橋を介して結合するものである。好ましいアルキルチオ基は1〜8個の炭素原子有する。そのような基の例としては、メチルチオ、エチルチオ、n−プロピチオール(propythiol)、及びn−ブチルチオール等が挙げられる。
【0046】
用語「オキソ」は本明細書で使用する場合、ケト(C=O)基を指す。非芳香族炭素原子の置換基であるオキソ基は−CH2−の−C(=O)−への転換をもたらす。
【0047】
本明細書中、用語「アルコキシカルボニル」は単独での又は他の基の一部としての、カルボニル基を通して結合したアルコキシ基を意味する。アルコキシカルボニル基は式:−C(O)OR(式中、R基は直鎖又は分枝鎖C1−C6アルキル基、シクロアルキル、アリール、又はヘテロアリールである)により表される。
【0048】
本明細書中、用語「アルキルカルボニル」は単独での又は他の基の一部としての、カルボニル基即ち−C(O)Rを通して結合したアルキル基を指す。
【0049】
本明細書中、用語「アリールアルキル」は単独での又は他の基の一部としての、上記のような(ベンジル基等の)アルキル基を通して結合した芳香族環を意味する。
【0050】
本明細書中、用語「アリール」は単独での又は他の基の一部としての、単環式又は二環式芳香族環(例、フェニル、及び置換フェニル等)及び縮合した基(例、ナフチル、及びフェナントレニル等)を指す。従ってアリール基は、少なくとも6原子を有する少なくとも1つの環を含み、そのような環が最大で5つ存在し、そこには、隣接する炭素原子又は好適なヘテロ原子の間の交互の(共鳴した)二重結合を有する最大で20個の原子が含まれる。アリール基は、I、Br、F、又はCl等のハロゲン;メチル、エチル、プロピル等のアルキル;メトキシ又はエトキシ等のアルコキシ、ヒドロキシ、カルボキシ、カルバモイル、アルキルオキシカルボニル、ニトロ、アルケニルオキシ、トリフルオロメチル、アミノ、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、シアノ、アルキルS(O)m(m=O、1、2)、又はチオールを含むがこれらに限定されない1つ以上の基で置換されていてもよい。
【0051】
用語「芳香族」は非局在化により、ケクレ構造等の仮想的な局在構造よりも安定性が有意に高い、環状に結合した分子的実体を指す。
【0052】
本明細書中、用語「アミノ」は単独での又は他の基の一部としての、−NH2を指す。「アミノ」はアルキル、アリール、アリールアルキル、アルケニル、アルキニル、ヘテロアリール、ヘテロアリールアルキル、シクロへテロアルキル、シクロヘテロアルキルアルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、ハロアルキル、ヒドロキシアルキル、アルコキシアルキル、チオアルキル、カルボニル又はカルボキシル等の、同一であっても異なっていてもよい1つ又は2つの置換基で置換されていてもよい。これらの置換基はカルボン酸、本明細書中で提示するアルキル又はアリール置換基のいずれかで更に置換されていてもよい。ある実施形態においては、アミノ基はカルボキシル又はカルボニルで置換されN−アシル誘導体類又はN−カルバモイル誘導体類を形成する。
【0053】
用語「アルキルスルホニル」は硫黄原子が結合部位である式(SO2)−アルキルの基を指す。好ましくはアルキルスルホニル基は、1〜6個の炭素原子を有するC1−C6アルキルスルホニル基を含む。メチルスルホニルは1つの代表的なアルキルスルホニル基である。
【0054】
用語「ヘテロ原子」は炭素以外のいずれかの原子、例えばN、O、又はSを指す。
【0055】
本明細書中、用語「ヘテロアリール」は単独での又は他の基の一部としての、置換された、又は置換されていない、5又は6員の単環式芳香族基、9又は10員の二環式芳香族基、及び11〜14員の三環式芳香族基であって、少なくとも1つのヘテロ原子(O、S又はN)を環のうちの少なくとも1つの中に有する基を指す。ヘテロ原子を含有するヘテロアリール基の環はそれぞれ、各環中の合計ヘテロ原子数が4以下で且つ各環が少なくとも1つの炭素原子を有するという条件で、1個又は2個の酸素又は硫黄原子及び/又は1〜4個の窒素原子を含有できる。
【0056】
二環式及び三環式基を完成させる縮合環基は炭素原子のみを含んでいてもよく、且つ飽和、部分飽和、又は不飽和であってもよい。窒素及び硫黄原子は酸化されていてもよく、且つ窒素原子は4級化されていてもよい。二環式又は三環式のヘテロアリール基は少なくとも1つの完全な芳香族環を含まなければならないが、他の縮合環は芳香族でも非芳香族でもよい。ヘテロアリール基はいずれかの環の利用可能ないずれかの窒素又は炭素原子に結合していてもよい。ヘテロアリール環系はハロ、アルキル、置換アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ニトロ、シアノ、ヒドロキシ、アルコキシ、チオアルキル、−CO2H、−C(=O)H、CO2−アルキル、−C(=O)アルキル、フェニル、ベンジル、フェニルエチル、フェニルオキシ、フェニルチオ、シクロアルキル、置換シクロアルキル、複素環、ヘテロアリール、−NR’R’’、−C(=O)NR’R’’、−CO2NR’R’’、−C(=O)NR’R’’、−NR’CO2R’’、−NR’C(=O)R’’、−SO2NR’R’’、及び−NR’SO2R’’(式中、R’及びR’’は水素、アルキル、置換アルキル、及びシクロアルキルからそれぞれ独立して選ばれるか、又はR’及びR’’は一緒になって複素環又はヘテロアリール環を形成する)よりなる群から選ばれる0、1、2、又は3個の置換基を含有してもよい。
【0057】
例示的なヘテロアリール基としては、アクリジニル、アゾパニル、アゾシニル、ベンズイミダゾリル、ベンズイミダゾリニル、ベンズイソチアゾリル、ベンズイソキサゾリル、ベンゾフラニル、ベンゾチオフラニル、ベンゾチオフェニル、ベンゾキサゾリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾトリアゾリルカルバゾリル、ベンズテトラゾリル、NH−カルバゾリル、カルボリニル、クロマニル、クロメニル、シンノリニル、デカヒドロキノリニル、テトラヒドロフラン、ジヒドロイソキノリニル、ジヒドロテトラヒドロフラニル、1,4−ジオキサ−8−アザ−スピロデク−8−イル、ジチアジニル、フラニル、フラザニル、イミダゾリニル、イミダゾリジニル、イミダゾリル、インダゾリル、インドレニル、インドリニル、インドリジニル、インドリル、イソベンゾフラニル、イソクロマニル、イソインダゾリル、イソインドリニル、イソインドリル、イソチアゾリル、イソキサゾリル、イソキノリニル、モルホリニル、ナフチリジニル、オクタヒドロイソキノリニル、オキサジアゾリル、オキサゾリジニル、オキサゾリル、フェナントリジニル、フェナントロリニル、フェナジニル、フェノチアジニル、フェノキサチイニル、フェノキサジニル、フタラジニル、ピペラジニル、ピペリジニル、ピペリジニル、ピペリドニル、プテリジニル、プリニル、ピラニル、ピラジニル、ピラゾリジニル、ピラゾリニル、ピラゾリル、ピリダジニル、ピリドイミダゾリル、ピリドオキサゾリル、ピリドチアゾリル、ピリジル、ピリミジル、ピロリジニル、ピロリドニル、ピロリニル、ピロリル、キナゾリニル、キノリニル、キノキサリニル、キヌクリジニル、テトラヒドロイソキノリニル、テトラヒドロキノリニル、テトラゾリル、チアジアジニル、チアジアゾリル、チアントレニル、チアゾリル、チエノチアゾリル、チエノオキサゾリル、チエノイミダゾリル、チエニル、チオフェニル、チオモルホリニル、及び硫黄原子が酸化されたその変形体、トリアジニル、キサンテニル及び1〜4個の上記置換基で置換された前記のいずれかの基が挙げられる。
【0058】
好ましくは、単環式ヘテロアリール基としてはピロリル、ピラゾリル、ピラゾリニル、イミダゾリル、オキサゾリル、ジアゾリル、イソキサゾリル、チアゾリル、チアジアゾリル、S イソチアゾリル、フラニル、チエニル、オキサジアゾリル、ピリジル、ピラジニル、ピリミジニル、ピリダジニル、及びトリアジニル等が挙げられる。
【0059】
二環式へテロアリール基としては、好ましくはインドリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾジオキソリル、ベンゾキサキソリル、ベンゾチエニル、キノリニル、テトラヒドロイソキノリニル、イソキノリニル、ベンズイミダゾリル、ベンゾピラニル、インドリジニル、ベンゾフラニル、クロモニル、クマリニル、ベンゾピラニル、シンノリニル、キノキサリニル、インダゾリル、ピロロピリジル、ジヒドロイソインドリル、及びテトラヒドロキノリニル等が挙げられる。
【0060】
三環式へテロアリール基としては、好ましくはカルバゾリル、ベンジドリル、フェナントロリニル、アクリジニル、フェナントリジニル、及びキサンテニル等が挙げられる。
【0061】
本明細書では、用語「複素環」又は「ヘテロシクロアルキル」は単独での又は他の基の一部としての、環中の炭素原子の1つがO、S又はNから選ばれるヘテロ原子で置換されるシクロアルキル基(非芳香族)を指す。「複素環」は1〜3個の縮合環、ペンダント環又はスピロ環を有し、そのうちの少なくとも1つが複素環(即ち、1つ以上の環原子がへテロ原子で、残りの環原子が炭素である)である。複素環は置換されていてもよいが、これは複素環がアルキル(好ましくは、低級アルキル)、ヘテロシクロアルキル、ヘテロアリール、アルコキシ(好ましくは、低級アルコキシ)、ニトロ、モノアルキルアミノ(好ましくは、低級アルキルアミノ)、ジアルキルアミノ(好ましくは、1つのアルキルアミノ)、シアノ、ハロ、ハロアルキル(好ましくは、トリフルオロメチル)、アルカノイル、アミノカルボニル、モノアルキルアミノカルボニル、ジアルキルアミノカルボニル、アルキルアミド(好ましくは、低級アルキルアミド)、アルコキシアルキル(好ましくは、低級アルコキシ;低級アルキル)、アルコキシカルボニル(好ましくは、低級アルコキシカルボニル)、アルキルカルボニルオキシ(好ましくは、低級アルキルカルボニルオキシ)及びアリール(好ましくは、フェニル;当該アリールはハロ、低級アルキル及び低級アルコキシ基で置換されていてもよい)から独立に選ばれる1以上の基で、環の1以上の置換可能な部位で置換されてもよいことを意味する。複素環基は一般的に、安定な化合物を生じるという条件で、いずれの環原子又は置換基原子を介して結合してもよい。N−結合型複素環基は構成窒素原子を介して結合する。
【0062】
典型的には、複素環は1〜4個のへテロ原子を含み;いくつかの実施形態中では各複素環が1環当たり1個又は2個のヘテロ原子を有する。一般的に、各複素環は3〜8環員を含有し(7環員までを有する環がいくつかの実施形態で列挙される)、縮合環、ペンダント環又はスピロ環を含む複素環は典型的に、炭素原子から成り且つ窒素、酸素及び/又は硫黄から選ばれる1、2、又は3個のヘテロ原子を含有する9〜14環員を含有する。
【0063】
「複素環」基又は「ヘテロシクロアルキル基の例としては、ピペラジン、ピペリジン、モルホリン、チオモルホリン、ピロリジン、イミダゾリジン及びチアゾリドが挙げられる。
【0064】
用語「置換複素環」は、芳香族構造及び非芳香族構造の両方について、1以上の上記置換基を更に有する複素環基を指す。
【0065】
用語「置換基」は、本明細書中で用いる場合、対象とする分子内の注目する原子に共有結合する分子の部分を指す。例えば、「環置換基」は環員の原子(好ましくは、炭素又は窒素原子)に共有結合する、本明細書で論じるハロゲン、アルキル基、ハロアルキル基又は他の基等の部分であってもよい。
【0066】
用語「置換されていてもよい」とは、ヘテロアリール又は複素環基が、アルキル(好ましくは、低級アルキル)、アルコキシ(好ましくは、低級アルコキシ)、ニトロ、モノアルキルアミノ(好ましくは、1〜6個の炭素を伴う)、ジアルキルアミノ(好ましくは、1〜6個の炭素を伴う)、シアノ、ハロ、ハロアルキル(好ましくは、トリフルオロメチル)、アルカノイル、アミノカルボニル、モノアルキルアミノカルボニル、ジアルキルアミノカルボニル、アルキルアミド(好ましくは、低級アルキルアミド)、アルコキシアルキル(好ましくは、低級アルコキシ及び低級アルキル)、アルコキシカルボニル(好ましくは、低級アルコキシカルボニル)、アルキルカルボニルオキシ(好ましくは、低級アルキルカルボニルオキシ)及びアリール(好ましくはフェニル;当該アリールはハロ、低級アルキル及び低級アルコキシ基で置換されていてもよい)から独立に選ばれる1以上の基によって、環の1以上の置換可能な部位において置換されてもよいことを指す。
【0067】
2つの文字間又は記号間にないダッシュ(「−」)は、置換基の結合部位を表示するために用いられる。例えば、−CONH2は炭素原子を通して結合する。
【0068】
用語「抗癌」剤には、癌の治療に有用なあらゆる公知の剤が含まれ、アシビシン;アクラルビシン;塩酸アコダゾール;アクロニン(AcrQnine);アドゼレシン;アルデスロイキン;アルトレタミン;アンボマイシン;酢酸アメタントロン;アミノグルテチミド;アムサクリン;アナストロゾール;アントラマイシン;アスパラギナーゼ;アスペルリン;アザシチジン;アゼテパ;アゾトマイシン;バチマスタット;ベンゾデパ;ビカルタミド;塩酸ビサントレン;ビスナフィド ジメシレート;ビゼレシン;硫酸ブレオマイシン;ブレキナールナトリウム;ブロピリミン;ブスルファン;カクチノマイシン;カルステロン;カラセミド;カルベチマー;カルボプラチン;カルムスチン;塩酸カルビシン;カルゼレシン;セデフィンゴール;クロランブシル;シロレマイシン;シスプラチン;クラドリビン;クリスナトール メシレート;シクロホスファミド;シタラビン;ダカルバジン;ダクチノマイシン;塩酸ダウノルビシン;デシタビン;デキソルマプラチン;デザグアニン;デザグアニン メシレート;ジアジクオン;ドセタキセル;ドキソルビシン;塩酸ドキソルビシン;ドロロキシフェン;クエン酸ドロロキシフェン;プロピオン酸ドロモスタノロン;デュアゾマイシン;エダトレキセート;塩酸エフロルニチン;エルサミトルシン;エンロプラチン;エンプロメート;エピプロピジン;塩酸エピルビシン;エルブロゾール;塩酸エソルビシン;エストラムスチン;リン酸エストラムスチンナトリウム;エタニダゾール;ヨード化ケシ油エチルエステル(I 131);エトポシド;リン酸エトポシド;エトプリン;塩酸ファドロゾール;ファザラビン;フェンレチニド;フロクスウリジン;リン酸フルダラビン;フルオロウラシル;フルロシタビン;フォスキドン;フォストリエシンナトリウム;ゲムシタビン;塩酸ゲムシタビン;金(Au 198);ヒドロキシウレア;塩酸イダルビシン;イホスファミド;イルモフォシン;インターフェロンアルファ−2a;インターフェロンアルファ−2b;インターフェロンアルファ−n1;インターフェロンアルファ−n3;インターフェロンベータ−Ia;インターフェロンガンマ−Ib;イプロプラチン;塩酸イリノテカン;酢酸ランレオチド;レトロゾール;酢酸ロイプロリド;塩酸リアロゾール;ロメトレキソールナトリウム;ロムスチン;塩酸ロソキサントロン;マソプロコール;メイタンシン;塩酸メクロレタミン;酢酸メゲストロール;酢酸メレンゲストロール;メルファラン;メノガリル;メルカプトプリン;メトトレキセート;メトトレキセートナトリウム;メトプリン;メツレデパ;ミチンドミド;ミトカルシン;ミトクロミン;ミトギリン;ミトマルシン;マイトマイシン;ミトスペル;ミトタン;塩酸ミトキサントロン;マイコフェノール酸;ノコダゾール;ノガラマイシン;オルマプラチン;オキシスラン;パクリタキセル;ペガスパルガーゼ;ペリオマイシン;ペンタムスチン;硫酸ペプロマイシン;ペルフォスファミド;ピポブロマン;ピポスルファン;塩酸ピロキサントロン;プリカマイシン;プロメスタン;ポルフィマーナトリウム;ポルフィロマイシン;プレドニムスチン;塩酸プロカルバジン;ピューロマイシン;塩酸ピューロマイシン;ピラゾフリン;リボプリン;ログレチミド;サフィンゴール(Safmgol);塩酸サフィンゴール;セムスチン;シムトラゼン;スパルフォセートナトリウム;スパルソマイシン;塩酸スピロゲルマニウム;スピロムスチン;スピロプラチン;ストレプトニグリン;ストレプトゾシン;塩化ストロンチウム(Sr 89);スロフェヌル;タリソマイシン;タキサン;タキソイド;テコガランナトリウム;テガフール;塩酸テロキサントロン;テモポルフィン;テニポシド;テロキシロン;テストラクトン;チアミプリン;チオグアニン;チオテパ;チアゾフリン;チラパザミン;塩酸トポテカン;クエン酸トレミフェン;酢酸トレストロン;リン酸トリシリビン;トリメトレキセート;グルクロン酸トリメトレキセート;トリプトレリン;塩酸ツブロゾール;ウラシルマスタード;ウレデパ;バプレオチド;ベルテポルフィン;硫酸ビンブラスチン;硫酸ビンクリスチン;ビンデシン;硫酸ビンデシン;硫酸ビネピジン;硫酸ビングリシネート;硫酸ビンロイロシン;酒石酸ビノレルビン;硫酸ビンロシジン;硫酸ビンゾリジン;ボロゾール;ゼニプラチン;ジノスタチン;及び塩酸ゾルビシンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0069】
用語「キナーゼ」はタンパク質残基へのリン酸基の付加を触媒する任意の酵素を指す;例えば、セリン及びスレオニンキナーゼはセリン及びスレオニン残基へのリン酸基の付加を触媒する。
【0070】
用語「Srcキナーゼ」、「Srcキナーゼファミリー」、及び「Srcファミリー」は、例えばc−Src、Fyn、Yes及びLynキナーゼ並びに造血限定のキナーゼHck、Fgr、Lck及びBIkを含む、哺乳動物のSrcキナーゼファミリーに属する関連のホモログ及びアナログを指す。
【0071】
用語「治療上有効量」は、研究者、獣医、医師又は他の臨床医により追及されている組織、システム、動物又はヒトの生物学的又は医学的応答を引き出す(例、血管恒常性の回復又は維持或いは血管恒常性の(or)障害又は喪失の予防;腫瘍量の低減;疾病率及び/又は死亡率の低減)化合物又は医薬組成物の量を指す。
【0072】
用語「医薬上許容される」は、担体、希釈剤又は賦形剤に製剤の他の成分と相容性がなくてはならず、且つその受容者に有害であってはならないということを指す。
【0073】
用語「化合物の投与」又は「化合物を投与すること」は、本発明の化合物又は医薬組成物を治療を必要とする対象に与える行為を指す。
【0074】
用語「保護された」は、当該保護された部位において、望まれない副反応を不可能にするため、基が修飾された形態であることを指す。本発明の化合物に好適な保護基は当該技術の水準を考慮に入れて本出願から、及びGreene, T. W. et al., Protective Groups in Organic Synthesis, John Wiley & Sons, New York (1999)等の標準的な教科書を参照して理解されるであろう。
【0075】
本明細書中で列挙された化合物についての、用語「医薬上許容される塩」は、過度の毒性又は発癌性なく、且つ好ましくは刺激、アレルギー反応、或いは他の問題又は面倒なく、ヒト又は動物の組織と接触させて使用するのに適した酸又は塩基の塩である。そのような塩としては、アミン等の塩基性残基のミネラル塩及び有機酸塩、並びにカルボン酸等の酸性残基のアルカリ塩又は有機塩が挙げられる。具体的な医薬塩としては、塩酸、リン酸、臭化水素酸、リンゴ酸、グリコール酸、フマル酸、硫酸、スルファミン酸、スルファニル酸、ギ酸、トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、エタンジスルホン酸、2−ヒドロキシエチルスルホン酸、硝酸、安息香酸、2−アセトキシ安息香酸、クエン酸、酒石酸、乳酸、ステアリン酸、サリチル酸、グルタミン酸、アスコルビン酸、パモン酸、コハク酸、フマル酸、マレイン酸、プロピオン酸、ヒドロキシマレイン酸、ヨウ化水素酸、フェニル酢酸、及び酢酸、HOOC−(CH2)n−COOH(式中、nは1〜4である)等のアルカン酸等の塩が挙げられるが、これらに限定されない。同様に、医薬上許容される陽イオンとしてはナトリウム、カリウム、カルシウム、アルミニウム、リチウム及びアンモニウムが挙げられるが、これらに限定されない。当業者は本明細書中で提供される化合物の更なる医薬上許容される塩を把握するであろう。一般的に、医薬上許容される酸又は塩基の塩は従来の化学的方法のいずれかによって、塩基又は酸部分を含有する親化合物から合成できる。端的には、そのような塩は、これら化合物の遊離酸又は塩基形態を水中又は有機溶媒中、或いはその2つの混合物中(一般的には、エーテル、酢酸エチル、エタノール、イソプロパノール又はアセトニトリル等の非水性溶媒の使用が好ましい)で化学量論量の適切な塩基又は酸と反応させることによって調製できる。式Iの各化合物は、それが必要というわけではないが、水和物、溶媒和物又は非共有結合性の複合体として製剤化され得ることは明らかであろう。更に、様々な結晶形態及び結晶多形が本発明の範囲内である。式Iの化合物のプロドラッグもまた、本明細書中で提供される。
【0076】
用語「プロドラッグ」は、本明細書中で提供される化合物の構造的な要求を完全には満たさなくてもよいが、患者への投与後にin vivoで修飾されて式Iの化合物又は本明細書中で提供される他の式の化合物を生成する化合物を指す。例えば、プロドラッグは本明細書中で提供される化合物のアシル化誘導体であってもよい。プロドラッグとしては、いずれかの基にヒドロキシ、アミン又はチオール基が結合し、対象哺乳動物に投与した場合開裂して遊離ヒドロキシ、アミノ、又はチオール基をそれぞれ形成する化合物が挙げられる。プロドラッグの例としては、本明細書中で提供される化合物中のアルコール及びアミン官能基の酢酸塩、ギ酸塩及び安息香酸塩の誘導体類が挙げられるが、これらに限定されない。本明細書中で提供される化合物のプロドラッグは、in vivoで開裂して親化合物を生じるようにして化合物中に存在する官能基を修飾することによって調製されてもよい。
【0077】
「置換されていてもよい」基は、置換されていないか、又は1以上の利用可能な部位で水素以外で置換されている。そのような任意の置換基としては、例えば、ヒドロキシ、ハロゲン、シアノ、ニトロ、C1−C6アルキル、C2−C6アルケニル、C2−C6アルキニル、C1−C6アルコキシ、C2−C6アルキルエーテル、C3−C6アルカノン、C2−C6アルキルチオ、アミノ、モノ−又はジ−(C1−C6アルキル)アミノ、C1−C6ハロアルキル、−COOH、−CONH2、モノ−又はジ−(C1−C6アルキル)アミノカルボニル、−SO2NH2並びに/或いはモノ又はジ(C1−C6アルキル)スルホンアミド、並びに炭素環及び複素環基が挙げられる。
【0078】
任意の置換は「0〜X個の置換基で置換される」(式中、Xは可能な置換基の最大数である)との表現によっても示される。ある置換されてもよい基は、独立に選ばれた0〜2、3又は4個の置換基で置換される。
【0079】
式Iの好ましいAr1基を以下に列挙するが、置換基はここで明示される特定のものであってもよく、上記の1種以上の置換基であってもよい:
【0080】
【化3】

【0081】
式Iの好ましいAr2基を以下に列挙するが、置換基はここで明示される特定のものであってもよく、上記の1種以上の置換基であってもよい:
【0082】
【化4】

【0083】
式Iの好ましいR1基を以下に列挙する:
−CH3、−CN、−CF3、−CH2CH3、−Ph、−PhCl、−PhOMe、
【0084】
好ましいLはAr1及びAr2を結合するためのO、CO、(CH2)m、m=0〜2、NR1、CONR1、NR1CO、S、SO、SO2、O(CH2)p、p=1〜2、(CH2)qO、n=1〜2、シクロアルキル及びヘテロシクロアルキルから選ばれる。
【0085】
式Iの好ましいR2基を以下に列挙する:
【0086】
【化5】

【0087】
好ましくは、本発明の化合物は式(I)の化合物であって、式中、
R1はアミノ、シアノ、C1−C6アルキル、C−C6アルコキシ、C3−C10シクロアルキル、C2−C6アルケニル、C2−C6アルキニル、C2−C6アルカノイル、C1−C6ハロアルキル、C1−C6ハロアルコキシ、モノ−及びジ−(C1−C6アルキル)アミノ、C1−C6アルキルスルホニル、モノ−及びジ−(C1−C6アルキル)スルホンアミド並びにモノ−及びジ−(C1−C6アルキル)アミノカルボニルから選ばれ;
R2は:
(i)アミノ、アルキルアミノ、アリールアミノ、ヘテロアリールアミノ;
(ii)C1−C6アルキル、C2−C6アルケニル、C2−C6アルキニル;
(iii)複素環、ヘテロアリール;及び
(iv)式:
【0088】
【化6】

【0089】
(式中:R4が水素の場合、XはCHであり;又はX−RはOであり;又はRが基を表す場合、XはNである)の基
から選ばれる。
【0090】
R3は水素、C1−C4アルキル、オキソであり;
R4は、(a)それぞれがハロゲン、ヒドロキシ、シアノ、アミノ、−COOH及びオキソから独立に選ばれる0〜4個の置換基で置換される、水素、C1−C6アルキル、C2−C6アルケニル、C2−C6アルキニル、C3−C10アリール又はヘテロアリール、(C3−C7シクロアルキル)C1−C4アルキル、C1−C6ハロアルキル、C1−C6アルコキシ、C1−C6アルキルチオ、C2−C6アルカノイル、C1−C6アルコキシカルボニル、C2−C6アルカノイルオキシ、モノ−及びジ−(C3−C8シクロアルキル)アミノC0−C4アルキル、(4〜7員の複素環)C0−C4アルキル、C1−C6アルキルスルホニル、モノ−及びジ−(C1−C6アルキル)スルホンアミド、並びにモノ−及びジ−(C1−C6アルキル)アミノカルボニルから選ばれ:
LはAr1及びAr2を結合するためのO、CO、(CH2)m、m=0〜3、NR1、CONR1、NR1CO、S、SO、SO2、O(CH2)p、p=1〜3、(CH2)qO、n=1〜3、シクロアルキル及びヘテロシクロアルキルから選ばれる。
【0091】
Ar1及びAr2は独立に、それぞれが;
(1)ハロゲン、ヒドロキシ、アミノ、シアノ、−COOH、−SO2NH2、オキソ、ニトロ、及びアミノカルボニル;並びに
(2)それぞれがハロゲン、ヒドロキシ、シアノ、オキソ、イミノ、C0−C4アルキル、C1−C4アルコキシ及びC1−C4ハロアルキルから独立に選ばれる0〜4個の二次置換基で置換されるC1−C6アルキル、C−C6アルコキシ、C3−C10シクロアルキル、C2−C6アルケニル、C2−C6アルキニル、C2−C6アルカノイル、C1−C6ハロアルキル、C1−C6ハロアルコキシ、モノ−及びジ−(C1−C6アルキル)アミノ、C1−C6アルキルスルホニル、モノ−及びジ−(C1−C6アルキル)スルホンアミド並びにモノ−及びジ−(C1−C6アルキル)アミノカルボニル;フェニルC0−C4アルキル及び(4〜7員の複素環)C0−C4アルキル
から独立に選ばれる0〜4個の置換基で置換されるヘテロアリール又はアリールである。
【0092】
より好ましくは、本発明の化合物は式(I)の化合物であり得、式中
R1はシアノ、C1−C6アルキル、C3−C10シクロアルキル、C2−C6アルケニル、C2−C6アルキニル、C3−C8アリールから選ばれ;
R2は複素環、ヘテロアリール(herteroaryl)又は式(Ia)の基:
【0093】
【化7】

【0094】
(式中:Rが水素の場合、XはCHであり;他のR4基については、XはNである)
から選ばれる。
R3は水素、C1−C4アルキル、オキソであり;
R4は、C3−C10アリール又はヘテロアリール、(C3−C7シクロアルキル)C1−C4アルキル、モノ−及びジ−(C3−C8シクロアルキル)アミノC0−C4アルキル、(4〜7員の複素環)C0−C4アルキル、C1−C6アルキルスルホニル、モノ−及びジ−(C1−C6アルキル)スルホンアミドから選ばれ;
LはAr1及びAr2を結合するためのO、CO、(CH2)m、m=0〜3、NR1、CONR1、NR1CO、S、SO、SO2、O(CH2)p、p=1〜3、(CH2)qO、n=1〜3、シクロアルキル及びヘテロシクロアルキルから選ばれる。
【0095】
Ar1及びAr2は独立に、それぞれが;
(1)ハロゲン、ヒドロキシ、アミノ、シアノ、−COOH、−SO2NH2、オキソ、ニトロ、及びアルコキシカルボニル;並びに
(2)それぞれがハロゲン、ヒドロキシ、シアノ、オキソ、イミノ、C0−C4アルキル、C1−C4アルコキシ及びC1−C4ハロアルキルから独立に選ばれる0〜4個の二次置換基で置換されるC1−C6アルキル、C−C6アルコキシ、C3−C10シクロアルキル、C2−C6アルケニル、C2−C6アルキニル、C2−C6アルカノイル、C1−C6ハロアルキル、C1−C6ハロアルコキシ、モノ−及びジ−(C1−C6アルキル)アミノ、C1−C6アルキルスルホニル、モノ−及びジ−(C1−C6アルキル)スルホンアミド並びにモノ−及びジ−(C1−C6アルキル)アミノカルボニル;フェニルC0−C4アルキル及び(4〜7員の複素環)C0−C4アルキル
から独立に選ばれる0〜4個の置換基で置換されるヘテロアリール又はアリールである。
【0096】
最も好ましくは、R4は(CH2)nYであり、nは0〜4の整数であり、Yはモルホリン−4−イル、チオモルホリン−4−イル、ピリジニル、ピリミジニル、ピペリジニル、ピペラジニル、又はピロリジニルから選ばれる。
【0097】
ひとつの実施形態によれば、本発明はAr1がチオアゾリルである式Iの化合物に関する。
【0098】
他の実施形態によれば、本発明はAr1がピリジルである式Iの化合物に関する。
【0099】
他の実施形態によれば、本発明はAr1がピリミジニルである式Iの化合物に関する。
【0100】
他の実施形態によれば、本発明はAr1がピラジニルである式Iの化合物に関する。
【0101】
他の実施形態によれば、本発明はAr1がイミダゾリルである式Iの化合物に関する。
【0102】
他の実施形態によれば、本発明はAr1がベンゾチオアゾリルである式Iの化合物に関する。
【0103】
他の実施形態によれば、本発明はAr1がベンゾ[1,2,4]トリアジニルである式Iの化合物に関する。
【0104】
他の実施形態によれば、本発明はAr1がフェニルである式Iの化合物に関する。
【0105】
他の実施形態によれば、本発明はAr2が2−メチル−6−クロロ−フェニルである式Iの化合物に関する。
【0106】
他の実施形態によれば、本発明はAr2が2,6−ジクロロフェニルである式Iの化合物に関する。
【0107】
他の実施形態によれば、本発明はAr2が2,6−ジメチルフェニルである式Iの化合物に関する。
【0108】
他の実施形態によれば、本発明はR1がメチルである式Iの化合物に関する。
【0109】
他の実施形態によれば、本発明はR1がエチルである式Iの化合物に関する。
【0110】
他の実施形態によれば、本発明はR1がトリフルオロメチルである式Iの化合物に関する。
【0111】
他の実施形態によれば、本発明はR1がCNである式Iの化合物に関する。
【0112】
他の実施形態によれば、本発明はR1がフェニルである式Iの化合物に関する。
【0113】
他の実施形態によれば、本発明はLが酸素である式Iの化合物に関する。
【0114】
他の実施形態によれば、本発明はLがCOである式Iの化合物に関する。
【0115】
他の実施形態によれば、本発明はLがNHCOである式Iの化合物に関する。
【0116】
他の実施形態によれば、本発明はLがCONHである式Iの化合物に関する。
【0117】
他の実施形態によれば、本発明はLがNHである式Iの化合物に関する。
【0118】
他の実施形態によれば、本発明はLがSである式Iの化合物に関する。
【0119】
他の実施形態によれば、本発明はLがSOである式Iの化合物に関する。
【0120】
他の実施形態によれば、本発明はLがSO2である式Iの化合物に関する。
【0121】
他の実施形態によれば、本発明はAr2−L−Ar1−NH2が:
【0122】
【化8】

【0123】
である式Iの化合物に関する。
【0124】
本発明の具体的な化合物の例は以下に明示する、これらの化合物である。
【0125】
【化9】

【0126】
【化10】

【0127】
【化11】

【0128】
【化12】

【0129】
【化13】

【0130】
【化14】

【0131】
【化15】

【0132】
【化16】

【0133】
【化17】

【0134】
【化18】

【0135】
【化19】

【0136】
【化20】

【0137】
他の実施形態においては、発明化合物の調製方法が提供される。本発明の化合物は、一般的には塩化シアヌルを出発物質として用い、調製できる。化合物(I)は様々な立体異性体、幾何異性体、及び互変異性体等を含有してもよい。あり得る全ての異性体及びそれらの混合物が本発明中に含められ、混合比は特に限定されない。
【0138】
本発明中式(I)のトリアジン誘導体化合物は、先行技術で公知の手順により調製できる。実例は米国特許第2005250945 A1号、米国特許第20050227983 A1号、PCT国際公開第05/007646A1号、PCT国際公開第05/007648A2号;PCT国際公開第05/003103A2号;PCT国際公開第05/011703 A1号;及び J. of Med. Chem. (2004), 47(19), 4649-4652中に見受けられ得る。出発物質はSigma- Aldrich Corp. (St, Louis, MO)等の供給業者より市販のものが入手できるか、又は市販されていて入手できる前駆体から従来のプロトコールを用いて合成され得る。例として、有機合成化学技術において公知の合成方法か、又は当業者が理解するようなそれらの変形と共に、以降のいずれかのスキームにおいて示される合成経路と同様の合成経路を使用してもよい。以降のスキーム中の各可変基は本明細書中で提供される化合物の記載と整合するいずれかの基を指す。
【0139】
以降のスキーム中、用語「還元」はニトロ官能基をアミノ官能基に還元する過程、又はエステル官能基をアルコールに変換する過程を指す。ニトロ基の還元は、触媒的水素化、SnCI2による還元及び二塩化チタンによる還元を含むがこれらに限定されない、有機合成の当業者に周知の多くの方法で実施できる。エステル基の還元は典型的には、水素化ジイソブチルアルミニウム(DIBAL)、水素化リチウムアルミニウム(LAH)、及び水素化ホウ素ナトリウムを含むが、これらに限定されない金属水素化物試薬を用いて実施される。還元方法の概説については、Hudlicky, M. Reductions in Organic Chemistry, ACS Monograph 188, 1996を参照のこと。以降のスキーム中、用語「加水分解」は、基質又は反応物と水との反応を指す。より具体的には、「加水分解」はエステル又は亜硝酸官能基のカルボン酸への変換を指す。この過程は有機合成の当業者に周知の、種々の酸又は塩基により触媒できる。
【0140】
式Iの化合物は公知の化学反応及び手順を使用することによって調製されてもよい。以降の一般的な調製方法は阻害剤合成の当業者を補助するために提示されるが、より詳細な事例が実施例を記載する実験の項に提示されている。
【0141】
複素環アミンは式II(式中、Arはヘテロアリールである)中で明示される。いくつかの複素環アミンは市販されているが、他のものは先行技術において公知の手順により調製され得る(例、米国特許第2006/0004067 Al号; J. Med. Chem. 2004, 47, 6658-6661; 国際特許国際公開第99/32106号; Katritzky, et al. Comprehensive Heterocyclic Chemistry; Permagon Press: Oxford, UK, 1984, March. Advanced Organic Chemistry, 3 " Ed.; John Wiley: New York, 1985)。
【0142】
【化21】

【0143】
例えば2−アミノ−N−(置換アリール)チアゾール−5−カルボキサミド(B)は、スキーム1に示すように、NBS存在下でのチオウレアの置換フェニル−3−エトキシアクリルアミド(A)との反応により入手可能である。次いで、化合物Bは、塩化3−エチオキシアクリロイルの置換アニリンAr−NHとの反応から作製できる。
【0144】
【化22】

【0145】
置換アニリン類は標準的な方法(March, J., Advanced Organic Chemistry, 4th Ed., John Wiley, New York (1992); Larock, R., Comprehensive Organic Transformations; John Wiley, New York (1999); PCT国際公開第99/32106号)を用いて生成してもよい。スキーム2に示すとおり、アリールアミンは一般にNi、Pd、又はPt等の金属触媒及びH或いはギ酸塩、シクロヘキサジエン、又は水素化ホウ素等の水素化物移動剤を用いてニトロアリールを還元することにより合成される。ニトロアリールはLiAlH等の強水素化物源を用いて、又はFe、Sri又はCa等の0価金属をしばしば酸性溶媒中で用いて直接的に還元されてもよい。ニトロアリール合成のためには多くの方法が存在する。
【0146】
【化23】

【0147】
ニトロアリールは一般的にHNO、又は代わりのNO源を用いて求電子芳香族ニトロ化により形成される。ニトロアリールは還元前に更に合成され得る。
【0148】
【化24】

【0149】
従って、潜在的な離脱基(例、F、Cl、Br、など)で置換されたニトロアリール類は、(スキーム3で例示される)チオラート又はフェノール塩等の求核試薬処理で置換反応を起こし得る。ニトロアリール類はUllman型カップリング反応(スキーム3)も起こし得る。
【0150】
【化25】

【0151】
スキーム4は式IIにあるようなアニリン類(式中、Lはカルボニルである)を調製するための方法の1つを示している。これらのアニリン類はアニリンの置換塩化アリールカルボニルとの反応から容易に入手できる。Friedel−Crafts反応後に容易に除去できる、アミンのアセチル保護が好ましい。これらカルボニルが結合したアニリン類は適切な還元によりメチレン又はヒドロキシルメチレンが結合したものに更に変換できる。
【0152】
【化26】

【0153】
本発明の式(III)の化合物の調製は当該技術において公知の方法により実施できる(例、J. Med. Chem. 1996, 39, 4354-4357; J. Med. Chem. 2004, 47, 600-611; J. Med. Chem. 2004, 47, 6283-6291; J. Med. Chem. 2005, 48, 1717-1720; J. Med. Chem. 2005, 48, 5570-5579; 米国特許第6340683 Bl号)。
【0154】
【化27】

【0155】
(式中、Rはアリル又はアリールであり、R、Rは置換アルキル、アリール、又は他の置換基であり;Ar、L、及びArは式(I)中で明示されたとおりである)
【0156】
スキーム4に示すとおり、トリアジン誘導体類は6−アルキル又はアリールで置換されたジクロロトリアジンのアリールアミン(Ar2−L−Ar1−NH2)との反応と、続く置換アミン(HNR)との反応から形成できる。6−アルキル又はアリールで置換されたジクロロトリアジンは当該技術において公知の方法により合成され得る(例、J. Med. Chem. 1999, 42, 805-818及びJ. Med. Chem. 2004, 47, 600-611)。又は、一般的に塩化シアヌルのGrignard試薬との反応では2,4−ジクロロ−6−R−1,3,5−トリアジンを高収率で製造できる。トリアジン誘導体類は置換アミン(HNR)の反応と、続くアリールアミン(Ar−L−Ar−NH2)との反応からも生成できる。
【0157】
【化28】

【0158】
スキーム5中に示すとおり、トリアジン誘導体は塩化シアヌルの、一連の異なる2つのアミンとの反応によっても合成でき、2,4−二置換−6−クロロ−1,3,5−トリアジン類を生じる。アミン、ヒドラジン、ヒドロキシル又は他の求核基による最後の塩素の置換は、温度を上昇させることにより達成でき三置換−1,3,5−トリアジン類を与える。
【0159】
【化29】

【0160】
反応は不活性溶媒存在下で行うことが好ましい。関与する反応又は試薬に不都合な影響を有さず、且つ少なくともある程度まで試薬を溶解できる限り、使用されるべき溶媒の性質に特に制限はない。好適な溶媒の例としては、ヘキサン、ヘプタン、リグロイン及び石油エーテル等の脂肪族炭化水素類;ベンゼン、トルエン及びキシレン等の芳香族炭化水素類;ハロゲン化された炭化水素類、とりわけ塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、ジクロロエタン、クロロベンゼン及びジクロロベンゼン類等の芳香族及び脂肪族炭化水素類;ギ酸エチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル及び炭酸ジエチル等のエステル類;ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジメトキシエタン及びジエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、イソホロン及びシクロヘキサノン等のケトン類;ニトロエタン及びニトロベンゼン等の、ニトロアルカン類又はニトロアレン(nitroarane)類であってもよいニトロ化合物類;アセトニトリル及びイソブチロニトリル等のニトリル類;ホルムアミド、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ヘキサメチルホスホロトリアミド等の、脂肪酸アミド類であってもよいアミド類;並びにジメチルスルホキシド及びスルホランの等のスルホキシド類が挙げられる。
【0161】
反応は広範な範囲の温度にわたって起こり得、正確な反応温度は本発明にとって決定的に重要なわけではない。我々は一般的に、温度−50℃〜100℃で反応を実施することが好都合とみている。
【0162】
本発明は、1種以上の有効薬物及び医薬上許容される担体の製剤である物質の組成物を提供する。この関連で、本発明は対象哺乳動物へ投与するための組成物を提供し、当該組成物は式Iの化合物、又は医薬上許容されるその塩を含み得る。
【0163】
本発明の化合物の医薬上許容される塩としては、医薬上許容される無機及び有機の酸及び塩基由来のものが挙げられる。好適な酸性塩の例としては、酢酸塩、アジピン酸塩、アルギン酸塩、アスパラギン酸塩、安息香酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、重硫酸塩、酪酸塩、クエン酸塩、カンファー酸塩、カンファースルホン酸塩、シクロペンタンプロピオン酸塩、ジグルコン酸塩、ドデシルスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、ギ酸塩、フマル酸塩、グルコヘプタン酸塩、グリセロリン酸塩、グリコール酸塩、ヘミ硫酸塩、ヘプタン酸塩、ヘキサン酸塩、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、2−ヒドロキシエタンスルホン酸塩、乳酸塩、マレイン酸塩、マロン酸塩、メタンスルホン酸塩、2−ナフタレンスルホン酸塩、ニコチン酸塩、硝酸塩、シュウ酸塩、パルモ酸塩、ペクチン酸塩、過硫酸塩、3−フェニルプロピオン酸塩、リン酸塩、ピクリン酸塩、ピバル酸塩、プロピオン酸塩、サリチル酸塩、コハク酸塩、硫酸塩、酒石酸塩、チオシアン酸塩、トシル酸塩及びウンデカン酸塩が挙げられる。他の酸(例えば、シュウ酸)は、それ自体は医薬上許容できないが、本発明の化合物及び医薬上許容できるそれらの酸付加塩を得る際の中間体として有用な塩の調製において使用し得る。
【0164】
適切な塩基に由来する塩としては、アルカリ金属(例、ナトリウム及びカリウム)、アルカリ土類金属(例、マグネシウム)、アンモニウム及びN+(C1〜4アルキル)4塩が挙げられる。本発明はまた、本明細書中で開示した化合物のいずれかの塩基性窒素含有基の四級化を想定している。そのような四級化により、水溶性又は油溶性又は分散性の生成物が得られ得る。
本発明の組成物は、経口的、非経口的に、吸入噴霧により、局所的に、直腸から、鼻から、頬から、膣から、又は移植したリザーバーを介して、投与し得る。本明細書中で使用する場合、用語「非経口的」は、皮下、静脈内、筋肉内、関節内、滑液嚢内、胸骨内、髄腔内、肝内、病巣内及び頭蓋内の注射方法又は注入方法を含める。好ましくは当該組成物は、経口、腹腔内又は静脈内で投与される。
【0165】
本発明の医薬的に許容できる組成物は、経口的に許容できる任意の投薬形態(これには、カプセル、錠剤、トローチ剤、エリキシル剤、懸濁剤、シロップ剤、ウェハー剤、チューインガム、水性懸濁液又は水性溶液が含まれるが、それらに限定されない)で、経口投与し得る。
【0166】
当該経口用組成物は:微結晶セルロース、トラガカントガム又はゼラチン等の結合剤;澱粉又は乳糖等の賦形剤;アルギン酸、及びトウモロコシ澱粉等などの崩壊剤;ステアリン酸マグネシウム等の滑剤;コロイド状二酸化珪素等の流動促進剤;及び蔗糖又はサッカリン等の甘味剤;或いはペパーミント、サリチル酸メチル、又はオレンジフレーバー等のフレーバー剤等の追加の成分を含有してもよい。単位用量形態がカプセルである場合、それは脂肪油等の液体担体を更に含有してもよい。他の単位用量形態は、単位用量の物理的形態を変更する、例えば被覆剤等の他の種々の物質を含有できる。従って錠剤又は丸薬は、砂糖、シェラック、又は他の腸溶被覆剤で被覆されてもよい。シロップ剤は有効成分のほか、甘味剤としての蔗糖、及びある種の防腐剤、色素及び着色剤及び香料を含有してもよい。これらの種々の組成物を調製するのに用いられる物質は、医薬的又は獣医学的に純粋なもので、且つ使用される量において無毒であるべきである。
【0167】
非経口的な治療投与目的のため、有効成分を溶液又は懸濁液に取り込んでもよい。溶液又は懸濁液としては以下の成分:注射用の水等の滅菌希釈液、生理食塩水溶液、固定油、ポリエチレングリコール類、グリセリン、プロピレングリコール、又は他の合成溶媒類;ベンジルアルコール又はメチルパラベン類等の抗菌剤;アスコルビン酸又は亜硫酸水素ナトリウム等の抗酸化剤;エチレンジアミンテトラ酢酸等のキレート剤;酢酸塩、クエン酸塩、又はリン酸塩等の緩衝剤;塩化ナトリウム又はデキストロース等の浸透圧調整のための剤も挙げられ得る。非経口用製剤はアンプル、ガラス又はプラスチック製の使い捨てシリンジ又は複数回投与用バイアル中に収納できる。
【0168】
注射用途のために好適な医薬形態としては、滅菌溶液、分散剤、乳化剤及び滅菌された粉末が挙げられる。最終的な形態は製造及び保存条件下で安定でなくてはならない。更に、最終的な医薬形態はコンタミネーションから保護されなくてはならず、従って細菌又は真菌等の微生物の増殖を阻害できなくてはならない。単回の静脈内又は腹膜空内投与量が投与できる。或いは、長時間徐々に注入したり、又は毎日短期間複数回注入したりして利用されてもよく、典型的には1〜8日間継続する。隔日投与又は数日に1回ごとに投与しても利用され得る。
【0169】
滅菌注射用溶液は、上記に列挙されたか又は当業者に公知の他の成分を必要に応じて加えてもよい1種以上の適切な溶媒に、必要とされる量の化合物を含めることによって調製してもよい。滅菌注射用溶液は適切な溶媒中に、必要に応じて他の種々の成分と共に、必要とされる量の化合物を含めることによって調製してもよい。次いで濾過等の滅菌手段を施してもよい。典型的には分散剤は、分散媒及び必要な他の上記の成分も含有する滅菌ビヒクルに化合物を含めることによって作製される。滅菌粉末の場合、好ましい方法としては必要ないずれの成分も加えられる真空乾燥及び凍結乾燥が挙げられる。
【0170】
適切な医薬的担体としては、滅菌水、生理食塩水、デキストロース、水又は生理食塩水中のデキストロース;ひまし油1モルにつきエチレンオキシド約30〜約35モルを組み合わせたひまし油とエチレンオキシドの縮合生成物;液体の酸、低級アルカノール;トウモロコシ油等の油;脂肪酸のモノ−又はジ−グリセリド又はホスファチド(例、レシチン)等の乳化剤を伴うピーナツ油及びゴマ油等;グリコール類、ポリアルキレングリコール類;懸濁化剤(例えばカルボキシメチルセルロースナトリウム)が存在する水性溶媒;アルギン酸ナトリウム;ポリ(ビニルピロリドン)等(単独又はレシチン;ステアリン酸ポリオキシエチレン等などの好適な分散剤を伴う)が挙げられる。担体は、浸透促進剤と一緒に保存剤、安定化剤(preserving stabilizing)、湿潤剤、及び乳化剤等の佐剤を含有してもよい。述べたように、あらゆる場合において、最終的な形態は無菌でなければならず、中空針等の注射機器も容易に通過できなくてはならない。適切な溶媒又は賦形剤を選択することにより、適切な粘性を達成及び維持してもよい。その上、レシチン等の分子又は粒子コーティング剤の使用、分散剤中の粒子サイズの適切な選択、又は界面活性剤の性質を持つ物質の使用が利用されてもよい。
【0171】
本発明によれば、トリアジン誘導体類を含有する組成物及びナノ粒子形態のトリアジン誘導体類の、in vivoでの送達に有用な方法が提供され、これらは前記投与経路のいずれのためにも好適である。
【0172】
米国特許第5,916,596号、6,506,405号及び6,537,579号では、アルブミン等の生体適合性ポリマーからのナノ粒子調製が教示されている。従って本発明によれば、溶媒蒸発法により、高剪断力(例、超音波破砕、又は高圧ホモジェナイゼーション等)条件下で調製された水中油型乳剤から本発明のナノ粒子を形成する方法が提供される。
【0173】
又は、医薬的に許容できる本発明の組成物は、直腸投与用の座剤の形態で投与されてもよい。これらは剤を、室温で固体であるが直腸の温度では液体であり、従って直腸中で融解し薬物を放出する好適な非刺激性の賦形剤と混合することにより調製できる。そのような物質としては、ココアバター、蜜蝋及びポリエチレングリコール類が挙げられる。
【0174】
医薬上許容できる本発明の組成物は、治療標的が局所投与により容易に到達できる領域又は器官を含む場合(眼、皮膚、又は下部腸管の疾患が挙げられる)は特に、局所的に投与されてもよい。好適な局所製剤はこれらの各領域又は器官用に容易に調製される。
【0175】
下部腸管のための局所適用は直腸用坐剤製剤(上記参照)又は好適な浣腸製剤において達成できる。局所経皮貼付剤が使用されてもよい。
【0176】
局所適用用に、医薬上許容される組成物が、1種以上の担体中に懸濁又は溶解された有効成分を含有する好適な軟膏状に製剤化されてもよい。本発明の化合物の局所投与用の担体としては、鉱油、流動ワセリン、白色ワセリン、プロピレングリコール、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン化合物、乳化蝋及び水があげられるが、これらに限定されない。又は、医薬上許容される組成物は、1種以上の医薬上許容される担体中に懸濁又は溶解された活性成分を含有する好適なローション剤又はクリーム剤に製剤化できる。好適な担体としては、鉱油、モノステアリン酸ソルビタン、ポリソルベート60、セチルエステルワックス、セテアリルアルコール、2−オクチルドデカノール、ベンジルアルコール及び水が挙げられるが、これらに限定されない。
【0177】
眼科用使用のために、医薬上許容される組成物は、塩化ベンジルアルコニウム等の保存剤あり又はなしのいずれかで、pHが調整された等張の滅菌生理食塩水中に微粉化懸濁液として、又は好ましくは、pHが調整された等張の溶液として製剤化されてもよい。又は眼科用使用のために、医薬上許容される組成物は、ワセリン等の軟膏状に製剤化されてもよい。
【0178】
医薬上許容される本発明の組成物は、鼻エアロゾル又は吸入により投与されてもよい。そのような組成物は医薬製剤化の技術において周知の技法で調製されるし、ベンジルアルコール又は他の好適な保存剤、生体適合性を向上させるための吸収促進剤、フッ化炭素、及び/或いは他の従来の可溶化又は分散剤を使用して生理食塩水中に溶液として調製されてもよい。
【0179】
最も好ましくは、医薬上許容される本発明の組成物は、経口投与用に製剤化される。
【0180】
本発明によれば、本発明の化合物は鼻腔、副鼻腔、鼻咽頭、口腔、中咽頭、喉頭、下咽頭、唾液腺の腫瘍及び傍神経節腫を含むがこれらに限定されない、癌等の細胞増殖又は過剰増殖に関係する疾患の治療に用いられてもよい。本発明の化合物は、肝臓及び胆道系の癌(特に肝細胞癌)、腸癌、特に結腸直腸癌、卵巣癌、小細胞及び非小細胞肺癌、乳癌、肉腫(繊維肉腫、悪性線維性組織球腫、胎児性横紋筋肉腫(rhabdomysocarcoma)、平滑筋肉腫(leiomysosarcoma)、神経線維肉腫、骨肉腫、滑膜肉腫、脂肪肉腫、及び胞状軟部肉腫が挙げられる)、中枢神経系の腫瘍(特に脳腫瘍)及びリンパ腫(ホジキンリンパ腫、リンパ形質細胞様リンパ腫、濾胞性リンパ腫、粘膜関連リンパ組織リンパ腫、マントル細胞リンパ腫、B系大細胞リンパ腫、バーキットリンパ腫、及びT細胞未分化大細胞リンパ腫が挙げられる)を治療するために用いられてもよい。
【0181】
本発明の化合物及び方法は、単独か又は他の剤(例、下記の化学療法剤又はタンパク質治療剤)と組み合わせて投与するかのいずれかの場合で、例えば脳梗塞、循環器疾患、心筋梗塞、鬱血性心不全、心筋症、心筋炎、虚血性心疾患、冠動脈疾患、心臓性ショック、血管性ショック、肺高血圧症、肺水腫(心原性肺水腫を含む)、胸水滲出、関節リウマチ、糖尿病性網膜症、網膜色素変性症、及び糖尿病性網膜症及び未熟網膜症を含む網膜症、炎症性疾患、再狭窄、喘息、急性及び成人呼吸窮迫症候群(ARDS)、狼瘡、血管漏出、臓器移植、移植寛容の誘導の間に受ける虚血性又は再灌流傷害等の虚血性又は再灌流傷害からの保護;血管形成後の虚血性又は再灌流傷害;(関節リウマチ、乾癬性関節炎又は骨関節炎等の)関節炎;多発性硬化症;潰瘍性大腸炎及びクローン病を含む炎症性大腸炎;狼瘡(全身性エリテマトーデス;crythematosis);移植片対宿主病;接触過敏症、遅延型過敏症、及びグルテン感受性腸疾患(セリアック病)を含むT細胞介在性過敏性疾患;I型糖尿病;乾癬;接触性皮膚炎(ツタウルシ起因のものを含む);橋本甲状腺炎;シェーグレン症候群;グレーブス病等の自己免疫性甲状腺機能高進症;アジソン病(副腎の自己免疫疾患);多腺性自己免疫疾患(多腺性自己免疫症候群としても知られる);自己免疫性脱毛症;悪性貧血;白斑;自己免疫性下垂体機能低下症(hypopituatarism);ギラン・バレー症候群;他の自己免疫疾患;結腸癌及び胸腺腫等の、Srcファミリーキナーゼ等のキナーゼが活性化又は過剰発現されたものを含む癌、又はキナーゼ活性が腫瘍増殖又は生存を促進する癌;糸球体腎炎、血清病;蕁麻疹(uticaria); 呼吸アレルギー(喘息、花粉症、アレルギー性皮膚炎)又は皮膚アレルギー等のアレルギー性疾患;菌状息肉腫;(急性又は成人呼吸窮迫症候群及び虚血再灌流傷害(ischemialreperfusion)等の)急性炎症反応;皮膚筋炎;円形脱毛症;慢性光線過敏性皮膚炎;湿疹;ベーチェット病;掌蹠膿疱症(Pustulosis palmoplanteris);壊疽性膿皮症(Pyoderma gangrenum);セザリー症候群;アトピー性皮膚炎;全身性硬化症(systemic schlerosis);限局性強皮症;周辺肢虚血及び虚血肢疾患;骨粗鬆症、骨軟化症、副甲状腺機能高進症、パジェット病、及び腎性骨ジストロフィー等の骨疾患;化学療法又はIL−2等の免疫刺激剤により誘導される血管漏出症候群を含む血管漏出症候群;脊髄及び脳障害又は外傷;緑内障;黄斑変性症を含む網膜疾患;硝子体網膜疾患;膵臓炎;血管炎、川崎病、閉塞性血栓血管炎、ヴェーゲナー肉芽腫症及びベーチェット病を含む血管炎(vasculatides);強皮症;子癇前症;地中海貧血;カポジ肉腫;及びフォン・ヒッペル・リンドウ病等を含むがこれらに限定されない種々の疾患の治療にも有用である。
【0182】
本発明によれば本発明の化合物は、疾患又は状態がキナーゼに関係している当該疾患又は状態に罹患した哺乳動物を同定すること及び当該罹患哺乳動物に式1の化合物を含む組成物を投与することを含む、望まれない細胞増殖又は過剰増殖に関係する疾患の治療に用いられてもよい。
【0183】
本発明によれば本発明の化合物は、疾患又は状態がチロシンキナーゼに関係している当該疾患又は状態に罹患した哺乳動物を同定すること及び当該罹患哺乳動物に式1の化合物を含む組成物を投与することを含む、望まれない細胞増殖又は過剰増殖に関係する疾患の治療に用いられてもよい。
【0184】
本発明によれば本発明の化合物は、疾患又は状態がセリンキナーゼ又はスレオニンキナーゼであるキナーゼに関係している当該疾患又は状態に罹患した哺乳動物を同定すること及び当該罹患哺乳動物に式1の化合物を含む組成物を投与することを含む、望まれない細胞増殖又は過剰増殖に関係する疾患の治療に用いられてもよい。
【0185】
本発明によれば本発明の化合物は、疾患又は状態がSrcファミリーキナーゼであるキナーゼに関係している当該疾患又は状態に罹患した哺乳動物を同定すること及び当該罹患哺乳動物に式1の化合物を含む組成物を投与することを含む、望まれない細胞増殖又は過剰増殖に関係する疾患の治療に用いられてもよい。
【0186】
本発明は上記疾患及び状態に罹患した哺乳動物の治療方法も提供する。単回投与形態の組成物を製造するための担体物質と組み合わせてもよい本発明の化合物の量は治療される宿主、具体的な投与態様によって異なるであろう。好ましくは、組成物は0.01〜100mg/体重kg/日の間の阻害剤投与量をこれらの組成物を受容する患者に投与できるように製剤化すべきである。
【0187】
1つの態様において、本発明化合物は化学療法剤、抗炎症剤、抗ヒスタミン剤、化学療法剤、免疫刺激剤、治療抗体又はプロテインキナーゼ阻害剤(例、チロシンキナーゼ阻害剤)と組み合わせて、そのような治療が必要な対象に投与される。
【0188】
当該方法は1種以上の発明化合物を罹患哺乳動物に投与することを含む。当該方法はアルキル化剤、腫瘍壊死因子、挿入剤、マイクロチューブリン阻害剤、及びトポイソメラーゼ阻害剤を含む細胞毒性剤等の第二の活性薬剤の投与を更に含んでもよい。当該第二の活性薬剤は同一の組成物で共投与してもよいし、別の組成物で共投与してもよい。好適な第二の活性薬剤の例としては、アシビシン;アクラルビシン;塩酸アコダゾール;アクロニン(AcrQnine);アドゼレシン;アルデスロイキン;アルトレタミン;アンボマイシン;酢酸アメタントロン;アミノグルテチミド;アムサクリン;アナストロゾール;アントラマイシン;アスパラギナーゼ;アスペルリン;アザシチジン;アゼテパ;アゾトマイシン;バチマスタット;ベンゾデパ;ビカルタミド;塩酸ビサントレン;ビスナフィド ジメシレート;ビゼレシン;硫酸ブレオマイシン;ブレキナールナトリウム;ブロピリミン;ブスルファン;カクチノマイシン;カルステロン;カラセミド;カルベチマー;カルボプラチン;カルムスチン;塩酸カルビシン;カルゼレシン;セデフィンゴール;クロランブシル;シロレマイシン;シスプラチン;クラドリビン;クリスナトール メシレート;シクロホスファミド;シタラビン;ダカルバジン;ダクチノマイシン;塩酸ダウノルビシン;デシタビン;デキソルマプラチン;デザグアニン;デザグアニン メシレート;ジアジクオン;ドセタキセル;ドキソルビシン;塩酸ドキソルビシン;ドロロキシフェン;クエン酸ドロロキシフェン;プロピオン酸ドロモスタノロン;デュアゾマイシン;エダトレキセート;塩酸エフロルニチン;エルサミトルシン;エンロプラチン;エンプロメート;エピプロピジン;塩酸エピルビシン;エルブロゾール;塩酸エソルビシン;エストラムスチン;リン酸エストラムスチンナトリウム;エタニダゾール;ヨード化ケシ油エチルエステル(I 131);エトポシド;リン酸エトポシド;エトプリン;塩酸ファドロゾール;ファザラビン;フェンレチニド;フロクスウリジン;リン酸フルダラビン;フルオロウラシル;フルロシタビン;フォスキドン;フォストリエシンナトリウム;ゲムシタビン;塩酸ゲムシタビン;金(Au 198);ヒドロキシウレア;塩酸イダルビシン;イホスファミド;イルモフォシン;インターフェロンアルファ−2a;インターフェロンアルファ−2b;インターフェロンアルファ−n1;インターフェロンアルファ−n3;インターフェロンベータ−□a;インターフェロンガンマ−Ib;イプロプラチン;塩酸イリノテカン;酢酸ランレオチド;レトロゾール;酢酸ロイプロリド;塩酸リアロゾール;ロメトレキソールナトリウム;ロムスチン;塩酸ロソキサントロン;マソプロコール;メイタンシン;塩酸メクロレタミン;酢酸メゲストロール;酢酸メレンゲストロール;メルファラン;メノガリル;メルカプトプリン;メトトレキセート;メトトレキセートナトリウム;メトプリン;メツレデパ;ミチンドミド;ミトカルシン;ミトクロミン;ミトギリン;ミトマルシン;マイトマイシン;ミトスペル;ミトタン;塩酸ミトキサントロン;マイコフェノール酸;ノコダゾール;ノガラマイシン;オルマプラチン;オキシスラン;パクリタキセル;ペガスパルガーゼ;ペリオマイシン;ペンタムスチン;硫酸ペプロマイシン;ペルフォスファミド;ピポブロマン;ピポスルファン;塩酸ピロキサントロン;プリカマイシン;プロメスタン;ポルフィマーナトリウム;ポルフィロマイシン;プレドニムスチン;塩酸プロカルバジン;ピューロマイシン;塩酸ピューロマイシン;ピラゾフリン;リボプリン;ログレチミド;サフィンゴール(Safmgol);塩酸サフィンゴール;セムスチン;シムトラゼン;スパルフォセートナトリウム;スパルソマイシン;塩酸スピロゲルマニウム;スピロムスチン;スピロプラチン;ストレプトニグリン;ストレプトゾシン;塩化ストロンチウム(Sr 89);スロフェヌル;タリソマイシン;タキサン;タキソイド;テコガランナトリウム;テガフール;塩酸テロキサントロン;テモポルフィン;テニポシド;テロキシロン;テストラクトン;チアミプリン;チオグアニン;チオテパ;チアゾフリン;チラパザミン;塩酸トポテカン;クエン酸トレミフェン;酢酸トレストロン;リン酸トリシリビン;トリメトレキセート;グルクロン酸トリメトレキセート;トリプトレリン;塩酸ツブロゾール;ウラシルマスタード;ウレデパ;バプレオチド;ベルテポルフィン;硫酸ビンブラスチン;硫酸ビンクリスチン;ビンデシン;硫酸ビンデシン;硫酸ビネピジン;硫酸ビングリシネート;硫酸ビンロイロシン;酒石酸ビノレルビン;硫酸ビンロシジン;硫酸ビンゾリジン;ボロゾール;ゼニプラチン;ジノスタチン;及び塩酸ゾルビシン等の細胞毒性剤が挙げられるが、これらに限定されない。
【0189】
本発明によれば、化合物及び組成物は、心疾患、脳梗塞及び神経変性疾患等の非腫瘍性疾患の治療において高度に選択的な活性を達成するために他の剤と組み合わせて、準細胞毒性レベルで使用してもよい(Whitesell et al., Curr Cancer Drug Targets (2003), 3(5), 349-58)。
【0190】
発明化合物と組み合わせて投与されてもよい例示的な治療剤としては、ゲフィチニブ、エルロチニブ、及びセツキシマブ等のEGFR阻害剤が挙げられる。Her2阻害剤としては、カネルチニブ、EKB−569、及びGW−572016が挙げられる。Src阻害剤のダサチニブ、及びカソデクス(ビカルタミド)、タモキシフェン、MEK−1キナーゼ阻害剤、MARKキナーゼ阻害剤、PI3阻害剤、及びイマチニブ等のPDGF阻害剤、17−AAG及び17−DMAG等のHsp90阻害剤も挙げられる。固形腫瘍への血流を遮断することによって、癌細胞から栄養分を奪うことにより癌細胞を静止させる抗血管形成剤及び抗血管剤も挙げられる。アンドロゲン依存性腫瘍を非増殖性にもする去勢も利用されてもよい。IGF1R阻害剤、非受容体チロシンキナーゼ阻害剤及び受容体チロシンキナーゼ阻害剤、並びにインテグリンの阻害剤も挙げられる。
【0191】
本発明の医薬組成物及び方法は、更にサイトカイン、免疫刺激剤及び抗体等の他のタンパク質治療剤と組み合わせてもよい。本明細書中で用いられる場合、用語「サイトカイン」は、ケモカイン、インターロイキン、リンホカイン、モノカイン、コロニー刺激因子、及び受容体関連タンパク質、並びにそれらの機能的断片を包含する。本明細書中で用いられる場合、用語「機能的断片」は、定められた機能アッセイを通して同定される生物学的機能又は活性を有するポリペプチド又はペプチドを指す。サイトカインとしては、内皮単球活性化ポリペプチドII(EMAP−II)、顆粒球−マクロファージ−CSF(GM−CSF)、顆粒球−CSF(G−CSF)、マクロファージ−CSF(M−CSF)、IL−1、IL−2、IL−3、IL−4、IL−5、IL−6、IL−12、及びIL−13、及びインターフェロン等が挙げられ、これらは細胞又は細胞機構における特定の生物学的、形態学的、又は表現形変化に関係している。
【0192】
併用療法のための他の治療剤としては、シクロスポリン(例、シクロスポリンA)、CTLA4−Ig、ICAM−3、抗IL−2受容体(抗Tac)、抗CD45RB、抗CD2、抗CD3(OKT−3)、抗CD4、抗CD80、抗CD86等の抗体、CD40及びgpn39(即ち、CD154)に特異的な抗体等の、CD40とgp39との間の相互作用を阻害する剤、CD40及びgp39から構築された融合タンパク質(CD40Ig及びCD8gp39)、デオキシスペルグアリン(DSG)等の核移行阻害剤等のNF−κB機能の阻害剤、HM:G CoAレダクターゼ阻害剤(ロバスタチン及びシムバスタチン)等のコレステロール生合成阻害剤、イブプロフェン及びロフェコキシブ等のシクロオキシゲナーゼ阻害剤等の非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)、プレドニソン又はデキサメタゾン等のステロイド、金化合物、メトトレキセート等の抗増殖剤、FK506(タクロリムス、プログラフ)、ミコフェノール酸モフェチル、アザチオプリン及びシクロホスファミド等の細胞毒性薬、テニダプ、抗TNF抗体、可溶性TNF受容体等のTNF−a阻害剤、並びにラパマイシン(シロリムス又はラパミューン)或いはそれらの誘導体が挙げられる。
【0193】
他の治療剤が本発明の化合物と組み合わせて使用される場合、それらは例えば、米医薬品便覧(PDR)中で言及されたとおりの量で、又は当業者により別途決められた量で用いられてもよい。
【実施例】
【0194】
本発明を更に説明するために以降の実施例を提供するが、当然ながら決して本発明の範囲を限定するものと解釈してはならない。
【0195】
追記される場合を除きアルゴン雰囲気中無水条件下(即ち、乾燥溶媒)で、オーブンで乾燥した器具を使用し、且つ空気感受性物質の取り扱いにおける標準技法を用いて全ての実験を実施した。重炭酸ナトリウム(NaHCO3)及び塩化ナトリウム(ブライン)の水溶液は、飽和させた。
【0196】
薄層クロマトグラフィー(TLC)解析はMerk Kieselゲル60F254プレート上で紫外線及び/又はアニスアルデヒド、過マンガン酸カリウム又はホスホモリブデン酸浸漬により可視化して実施した。
【0197】
NMRスペクトル:1H核磁気共鳴スペクトルを500MHzで記録した。データは次のように提示する:化学シフト、多重度(s=シングレット、d=ダブレット、t=トリプレット、q=カルテット、qn=クインテット、dd=ダブルダブレット、m=マルチプレット、bs=ブロードシングレット)結合定数(J/Hz)及び積分値。結合定数はスペクトルから直接取り出して計算し、補正していない。
【0198】
低解像度マススペクトル:電気スプレー(ES+)イオン化を用いた。プロトン化親イオン(M+H)又は親ナトリウムイオン(M+Na)又は最高質量のフラグメントを提示する。他の記載がない限り解析勾配は、5分間での水中10%ACNから100%ACNまでの傾斜から成る。
【0199】
実施例1
【0200】
【化30】

【0201】
エチル β−エトキシアクリレート(26.50g、183mmol)及び2N水酸化ナトリウム(110mL、220mmol)の混合物を2時間還流して0℃に冷却した。真空下水を除去し黄色固体をトルエンにより粉末にして蒸発させβ−エトキシアクリル酸ナトリウム(25g、97%)を得た。β−エトキシアクリル酸(thoxyacrylate)ナトリウム(10.26g、74.29mmol)及び塩化チオニル(25mL、343mmol)の混合物を2時間還流し、蒸発させて塩化β−エトキシアクリロイルの粗精製生成物を得、精製せず用いた。塩化3−エトキシアクリロイルの冷却攪拌THF(100mL)溶液中に2−クロロ−6−メチルアニリン(6.2mL、50.35mmol)及びピリジン(9ml、111mmol)を加えた。次いで混合物を加温し、室温で一晩攪拌した。0〜10℃で水を加え、EtOAcで抽出した。有機層をCuSO(3×50mL)で洗浄し結果生じる溶液をシリカゲルのパッドを通し、真空下濃縮して固体を得た。固体をトルエンで希釈し0℃で維持した。固体を真空濾過によって回収し、水で洗浄、乾燥し、5.2g(収率43%)の化合物1、(E)−N−(2−クロロ−6−メチルフェニル)−3−エトキシアクリルアミド)を得た。1H NMR (500 Hz, CDCl3) δ 1.26 (t, 3H, J=7 Hz), 2.15 (s, 3H), 3.94 (q, 2H, J=7 Hz), 5.58 (d, 1H, J=12.4 Hz), 7.10-7.27 (m, 2H, J=7.5 Hz), 7.27-7.37 (d, 1H, J=7.5 Hz), 7.45(d, 1H, J=12.4 Hz); ESI-MS: (Cl2H14C1NO2)の計算値 239, 実測値 240 MH+)。
【0202】
実施例2
【0203】
【化31】

【0204】
1,4−ジオキサン(100mL)/水(70mL)中の化合物1(5.30g、22.11mmol)の混合物に−10〜0℃でNBS(4.40g、24.72mmol)を加えた。スラリーを加温して20〜22度で3時間攪拌した。チオウレア(1.85g、26.16mmol)を加えて混合物を100℃に加熱した。2時間後、結果生じる溶液を20〜22℃に冷却し濃水酸化アンモニウム(6mL)を滴下で加えた。結果生じるスラリーを真空下約半分の体積にまで濃縮し、0〜5℃に冷却した。固体を真空濾過によって回収し、冷水で洗浄し、乾燥して5.4g(収率90%)の化合物2を濃黄色固体として得た。1H NMR (500 MHz, DMSO-d6) δ 2.19 (s, 3H), 7.09-7.29 (m, 2H, J=7.5), 7.29-7.43 (d, 1H, J=7,5), 7.61 (s, 2H), 7.85 (s, 1H), 9.63 (s, 1H); ESI-MS: (C11H10ClN3OS)の計算値 267, 実測値 268 MH+)。
【0205】
実施例3
【0206】
【化32】

【0207】
臭化メチルマグネシウムのエーテル溶液(3M、30ml、90mmole)を、攪拌した塩化シアヌル(3.91g、21.20mmole)の無水ジクロロメタン溶液に−10℃で滴下で加えた。加え終えた後、反応混合物を−5℃で4時間攪拌し、その後で当該反応物の温度が10℃未満に留まるような速度で滴下で水を加えた。室温に加温した後、反応混合物を追加の水及び塩化メチレンで希釈し、セライト(cilite)のパッドに通した。有機層を乾燥し、蒸発させて4の2,4−ジクロロ−6−メチル−l,3,5−トリアジンを黄色固体(3.02g、87%)として得た。1H NMR (CDCl3) δ 2.70 (s, 3H)。
【0208】
実施例4
【0209】
【化33】

【0210】
化合物3(560mg、3.41mmole)、ジイソプロピルアミン(1.00ml、5.74mmole)及び化合物2(700mg、2.65mmole)のTHF(40mL)溶液を0℃で30分間、次いで室温で2時間攪拌した。反応混合物に水を加え、水性混合物をEtOAcで2回抽出した。混合抽出物をブラインで洗浄、乾燥し、真空中で蒸発させた。カラムクロマトグラフィーにより化合物4を淡黄色固体(350mg、33%)として得た。1H NMR (500 MHz, DMSO-d6) δ 2.19 (s, 3H), 2.49 (s, 3H), 7.36-7.58 (m, 3H), 8.23 (br, 1H), 9.61 (br, 1H), 11.63 (br, 1H); ESI-MS: (C15H12Cl2N6OS)の計算値 394, 実測値 395 (MH+)。
【0211】
実施例5
【0212】
【化34】

【0213】
1,4−ジオキサン(15mL)中の4(100mg、0.25mmol)、ジイソプロピルエチルアミン(0.08mL、0,50mmol)、及び1−(2−ヒドロキシエチル)ピペラジン(100mg、0.77mmol)の混合物を12時間還流した。混合物を真空下濃縮し、水を加えた。固体を濾過で回収し、HO、水性MeOH、及びEtO(2×)を順次用いて粉末にし、真空中で乾燥し、5を淡黄色固体(55g、45%)として得た。1H NMR (500 MHz, DMSO-d6) δ11.97 (br s, 1H), 10.00 (s, 1H), 8.28 (s, 1H), 7.40 (d, J = 7.6 Hz, 1H), 7.29-7.24 (m, 2H), 4.45 (t, J = 5.4 Hz, 1H), 3.87-3.81 (m, 4H), 3.52 (q, J = 6.0 Hz, 2H), 2.46 (m, 4H), 2.42 (t, J = 6.0Hz, 2H), 2.30 (s, 3H), 2.23 (s, 3H), ESI-MS : (C21H25ClN8O2S)の計算値 488, 実測値 489 (MH+)。
【0214】
実施例6
【0215】
【化35】

【0216】
化合物5の調製において用いた手順と同一の手順により化合物6を調製した。淡黄色固体を得た(収率42%)。ESI-MS: (C24H24ClN9OS)の計算値 521, 実測値 522 (MH+)。
【0217】
実施例7
【0218】
【化36】

【0219】
化合物5の調製において用いた手順と同一の手順により化合物7を調製した。淡黄色固体を得た(収率92%)。ESI-MS: (C20H23ClN8OS)の計算値 458, 実測値 459 (MH+)。
【0220】
実施例8
【0221】
【化37】

【0222】
化合物5の調製において用いた手順と同一の手順により化合物8を調製した。淡黄色固体を得た(収率94%)。ESI-MS: (C19H20ClN7O2S)の計算値 445, 実測値 446 (MH+)。
【0223】
実施例9
【0224】
【化38】

【0225】
化合物4の調製において用いた手順と同一の手順により化合物9を調製した。淡黄色固体を得た(収率98%)。1H NMR (500 MHz, DMSO-d6) δ 2.40 (s, 3H), 7.00 (d, J = 8.9 Hz, 2H), 7.07 (m, 2H), 7.41 (d, J = 8.9 Hz, 2H), 7.63 (d, J = 8.2 Hz, 1H), 7.72 (d, J = 8.5 Hz, 1H), 10.68 (br, 1H); ESI-MS: (C16H12Cl2N4O)の計算値 346, 実測値 347 (MH+)。
【0226】
実施例10
【0227】
【化39】

【0228】
化合物5の調製において用いた手順と同一の手順により化合物10を調製した。白色固体を得た(収率91%)。1H NMR (500 MHz, DMSO-d6)δ9.64 (s, 1H), 7.73 (d, J = 8.9 Hz, 2H), 7.40 (d, J = 8.9 Hz, 2H), 7.01-6.96 (m, 4H), 4.45 (t, J = 5.4 Hz, 1H), 3.73 (m, 4H), 3.52 (q, J = 6.1 Hz, 2H), 2.44 (m, 4H), 2.40 (t, J= 6.3 Hz, 2H), 2.21 (s, 3H). ESI-MS: (C22H25ClN6O2)の計算値 440, 実測値 441 (MH+)。
【0229】
実施例11
【0230】
【化40】

【0231】
化合物5の調製において用いた手順と同一の手順により化合物11を調製した。白色固体を得た(収率96%)。1H NMR (500 MHz, DMSO-d6)δ9.69 (br, s, 1H), 8.17 (d, J= 6.2 Hz, 2H), 7.75 (d, J= 8.9 Hz, 2H), 7.40 (d, J = 8.9 Hz, 2H), 7.02-6.98 (m, 4H), 6.84 (d, J= 6.2 Hz, 2H), 3.87 (m, 4H), 3.42 (m, 4H), 2.24 (s, 3H). ESI-MS: (C25H24ClN7O)の計算値 473, 実測値 474 (MH+)。
【0232】
実施例12
【0233】
【化41】

【0234】
攪拌した化合物2(100mg、0.37mmole)、及び塩化シアヌル(35mg、0.19mmole)のTHF(5mL)溶液に、ナトリウムt−ブトキシド(125mg、1.30mmol)のTHF(1mL)溶液を0℃で加え、混合物を室温で1.5時間攪拌した。希塩酸(1N、1mL)を反応混合物に加え、混合物を濃縮した。濾過後、固体をアセトン、水、により洗浄し、乾燥して化合物12を黄色固体(50mg、40%)として得た。ESI-MS: (C25H18Cl3N9O2S2)の計算値 645, 実測値 646 (MH+)。
【0235】
実施例13
【0236】
【化42】

【0237】
攪拌した化合物2(200mg、0.75mmole)、ジイソプロピルアミン(0.26ml、1.49mmole)及び塩化シアヌル(134mg、0.73mmole)のTHF(10mL)溶液を0℃で1時間攪拌した。2−ヒドロキシエチル−1−ピペラジン(l00mg、0.77mmole)を0℃で加え、混合物を室温で一晩攪拌した。反応混合物に水を加え、濃縮した。濾過後、固体をアセトン、水により洗浄し、乾燥して化合物13を黄色固体として得た(200mg、52%)。ESI-MS: (C20H22Cl2N8O2S)の計算値 508, 実測値 509 (MH+)。
【0238】
実施例14
【0239】
【化43】

【0240】
攪拌した化合物3(170mg、0,62mmole)、ジイソプロピルアミン(0.20ml、1.08mmole)及び塩化シアヌル(100mg、0.54mmole)のTHF(10mL)溶液を0℃で1時間攪拌した。4−ピリジル−1−ピペラジン(180mg,1.10mmole)を0℃で加え、混合物を室温で一晩攪拌した。反応混合物に水を加え、濃縮した。濾過後、固体を水、THFにより洗浄し、乾燥して化合物14を黄色固体(200mg、48%)として得た。ESI-MS: (C32H33ClN12OS)の計算値 668, 実測値 669 (MH+)。
【0241】
実施例15
【0242】
本実施例では化合物5のSrcキナーゼアッセイを説明する(Boschelli et al., J. Med. Chem.; 2004; 47(7) pp 1599 - 1601を参照)。端的には、阻害アッセイのための適切な酵素濃度を決めるために、Srcキナーゼ(Upstate Cat # 14-326, Lot 28234AU)を滴定して25μMのSrctideペプチド基質(

、ここで太字のチロシンはリン酸化されたアミノ酸を指す)及び50μMのATPと30℃で60分間インキュベートした。リン酸化生成物をHitHunter p34cdc2 EFC kinase assay(DiscoveRx、Product Code 90-0062、Lot 06G2408)を用いて検出した。
【0243】
阻害剤IC50値は至適キナーゼ濃度(キナーゼEC50)で化合物を滴定して決定した。上記と同一のアッセイ条件を用い、キナーゼ活性への化合物の効果はHitHunter EFC kinase assay(DiscoveRx)により決定した。
図1:化合物5によるSrcキナーゼの阻害。
【0244】
実施例16
【0245】
本実施例では、本発明のいくつかの化合物がin vitroでMX−1(ヒト乳癌)細胞の増殖を阻害することを実証する。
【0246】
細胞毒性アッセイはPromega CellTiter Blue Cell Viability Assayを用いて定量した。端的には、細胞(5000細胞/ウェル)を10%FBSで補完したRPMI1640培地中に96ウェルマイクロタイタープレート上でプレーティングし、加湿、5%CO雰囲気中、37℃でインキュベートした。24時間後、細胞をDMSO中の様々な濃度の化合物に曝露し、更に72時間培養した。100ulの培地を除去し、20ulのPromega CellTiter Blue試薬をそれぞれのウェルに加え震盪して混合した。37℃で、加湿、5%CO雰囲気中で4時間インキュベートした後、プレートを544ex/620emで読み取った。生成した蛍光は生細胞数に比例する。生成した蛍光を薬物濃度に対してプロットした後、IC50を結果生じる非線形回帰の半減期として計算した。データを表2中に示す。
【0247】
【表1−1】

【0248】
【表1−2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】

【化1】

(式中:
R1は水素、ハロゲン、ヒドロキシ、アミノ、シアノ、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アルキルチオ、アリール、アリールアルキル、複素環、ヘテロアリール、ヘテロシクロアルキル、アルキルスルホニル、アルコキシカルボニル及びアルキルカルボニルを表し、
R2は:
(ii)アミノ、アルキルアミノ、アリールアミノ、ヘテロアリールアミノ;
(ii)C−Cアルキル、C−Cアルケニル、C−Cアルキニル;
(iii)複素環、ヘテロアリール;及び
(iv)式(Ia)の基
【化2】

(式中:Rが水素の場合、XはCHであり;又はX−RはOであり;又はRが基を表す場合、XはNである)
から選ばれ、
は水素、C−Cアルキル、オキソであり;
R4は、(a)それぞれがハロゲン、ヒドロキシ、シアノ、アミノ、−COOH及びオキソから独立に選ばれる0〜4個の置換基で置換される水素、C−Cアルキル、C−Cアルケニル、C−Cアルキニル、C−C10アリール又はヘテロアリール、(C−Cシクロアルキル)C−Cアルキル、C−Cハロアルキル、C−Cアルコキシ、C−Cアルキルチオ、C−Cアルカノイル、C−Cアルコキシカルボニル、C−Cアルカノイルオキシ、モノ−及びジ−(C−Cシクロアルキル)アミノC−Cアルキル、(4〜7員の複素環)C−Cアルキル、C−Cアルキルスルホニル、モノ−及びジ−(C−Cアルキル)スルホンアミド、及びモノ−及びジ−(C−Cアルキル)アミノカルボニルから選ばれ;
LはAr及びArを連結するためのO、CO、(CH2)、m=0〜3、NR、CONR、NRCO、S、SO、SO2、O(CH、p=1〜3、(CH2)O、n=1〜3、シクロアルキル及びヘテロシクロアルキルから選ばれ、
Ar及びArは独立に、それぞれが;
(1)ハロゲン、ヒドロキシ、アミノ、シアノ、−COOH、−SONH、オキソ、ニトロ、及びアルコキシカルボニル;並びに
(2)それぞれがハロゲン、ヒドロキシ、シアノ、オキソ、イミノ、C−Cアルキル、C−Cアルコキシ及びC−Cハロアルキルから独立に選ばれる0〜4個の二次置換基で置換されるC−Cアルキル、C−Cアルコキシ、C−C10シクロアルキル、C−Cアルケニル、C−Cアルキニル、C−Cアルカノイル、C−Cハロアルキル、C−Cハロアルコキシ、モノ−及びジ−(C−Cアルキル)アミノ、C−Cアルキルスルホニル、モノ−及びジ−(C−Cアルキル)スルホンアミド並びにモノ−及びジ−(C−Cアルキル)アミノカルボニル;フェニルC−Cアルキル及び(4〜7員の複素環)C−Cアルキル
から独立に選ばれる0〜4個の置換基で置換されるヘテロアリール又はアリールである)
の化合物又は医薬上許容されるそれらの塩。
【請求項2】
Arがチオアゾリルである、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
Arがピリジルである、請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
Arがピリミジニルである、請求項1に記載の化合物。
【請求項5】
Arがピラジニルである、請求項1に記載の化合物。
【請求項6】
Arがイミダゾリルである、請求項1に記載の化合物。
【請求項7】
Arがベンゾチオアゾリルである、請求項1に記載の化合物。
【請求項8】
Arがベンゾ[1,2,4]トリアジニルである、請求項1に記載の化合物。
【請求項9】
【化3】

【化4】

よりなる群から選択される化合物又はそれらの医薬上許容される形態。
【請求項10】
請求項1の化合物又は医薬上許容されるその塩、水和物、溶媒和物、結晶型塩及びそれらの個々のジアステレオマーを作製するための方法。
【請求項11】
少なくとも1種の請求項Iの化合物又は医薬上許容されるその塩、水和物、溶媒和物、結晶型塩及びそれらの個々のジアステレオマー、並びに医薬上許容される担体を含む医薬組成物。
【請求項12】
経口、非経口、静脈内、及びそれらの組み合わせより成る群から選択される投与経路を介する送達に適した組成物である、請求項11に記載の医薬組成物。
【請求項13】
経口投与に適した組成物である、請求項11に記載の医薬組成物。
【請求項14】
非経口投与に適した組成物である、請求項11に記載の医薬組成物。
【請求項15】
望ましくない細胞増殖又は過剰増殖の特徴がある哺乳動物における疾患又は状態を治療するための方法であって、当該疾患又は状態に罹患した哺乳動物を同定すること及び当該罹患哺乳動物に請求項1に記載の化合物を含む組成物を投与することを含む、方法。
【請求項16】
疾患又は状態が癌、脳梗塞、鬱血性心不全、虚血又は再灌流傷害、関節炎又は他の関節症、網膜症又は硝子体網膜症、黄斑変性症、自己免疫疾患、血管漏出症候群、炎症性疾患、浮腫、移植片拒絶反応、火傷、或いは急性又は成人呼吸窮迫症候群である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
疾患又は状態が癌である、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
疾患又は状態が自己免疫疾患である、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
疾患又は状態が脳梗塞である、請求項16に記載の方法。
【請求項20】
疾患又は状態が関節炎である、請求項16に記載の方法。
【請求項21】
疾患又は状態が炎症性疾患である、請求項16に記載の方法。
【請求項22】
疾患又は状態がキナーゼに関係する、請求項16に記載の方法。
【請求項23】
キナーゼがチロシンキナーゼである、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
キナーゼがセリンキナーゼ又はスレオニンキナーゼである、請求項22に記載の方法。
【請求項25】
キナーゼがSrcファミリーのキナーゼである、請求項22に記載の方法。
【請求項26】
前記癌が、肝臓及び胆道系の癌、小腸癌、結腸直腸癌、卵巣癌、小細胞及び非小細胞肺癌、乳癌、肉腫、繊維肉腫、悪性線維性組織球腫、胎児性横紋筋肉腫(rhabdomysocarcoma)、平滑筋肉腫(leiomysosarcoma)、神経線維肉腫、骨肉腫、滑膜肉腫、脂肪肉腫、及び胞状軟部肉腫、中枢神経系の腫瘍、脳腫瘍、及びホジキンリンパ腫、リンパ形質細胞様リンパ腫、濾胞性リンパ腫、粘膜関連リンパ組織リンパ腫、マントル細胞リンパ腫、B系大細胞リンパ腫、バーキットリンパ腫、及びT細胞未分化大細胞リンパ腫を含むリンパ腫並びにそれらの組み合わせよりなる群から選ばれる、請求項17に記載の方法。
【請求項27】
前記罹患哺乳動物に、アシビシン;アクラルビシン;塩酸アコダゾール;アクロニン(AcrQnine);アドゼレシン;アルデスロイキン;アルトレタミン;アンボマイシン;酢酸アメタントロン;アミノグルテチミド;アムサクリン;アナストロゾール;アントラマイシン;アスパラギナーゼ;アスペルリン;アザシチジン;アゼテパ;アゾトマイシン;バチマスタット;ベンゾデパ;ビカルタミド;塩酸ビサントレン;ビスナフィド ジメシレート;ビゼレシン;硫酸ブレオマイシン;ブレキナールナトリウム;ブロピリミン;ブスルファン;カクチノマイシン;カルステロン;カラセミド;カルベチマー;カルボプラチン;カルムスチン;塩酸カルビシン;カルゼレシン;セデフィンゴール;クロランブシル;シロレマイシン;シスプラチン;クラドリビン;クリスナトール メシレート;シクロホスファミド;シタラビン;ダカルバジン;ダクチノマイシン;塩酸ダウノルビシン;デシタビン;デキソルマプラチン;デザグアニン;デザグアニン メシレート;ジアジクオン;ドセタキセル;ドキソルビシン;塩酸ドキソルビシン;ドロロキシフェン;クエン酸ドロロキシフェン;プロピオン酸ドロモスタノロン;デュアゾマイシン;エダトレキセート;塩酸エフロルニチン;エルサミトルシン;エンロプラチン;エンプロメート;エピプロピジン;塩酸エピルビシン;エルブロゾール;塩酸エソルビシン;エストラムスチン;リン酸エストラムスチンナトリウム;エタニダゾール;ヨード化ケシ油エチルエステル(I 131);エトポシド;リン酸エトポシド;エトプリン;塩酸ファドロゾール;ファザラビン;フェンレチニド;フロクスウリジン;リン酸フルダラビン;フルオロウラシル;フルロシタビン;フォスキドン;フォストリエシンナトリウム;ゲムシタビン;塩酸ゲムシタビン;金(Au 198);ヒドロキシウレア;塩酸イダルビシン;イホスファミド;イルモフォシン;インターフェロンアルファ−2a;インターフェロンアルファ−2b;インターフェロンアルファ−n1;インターフェロンアルファ−n3;インターフェロンベータ−Ia;インターフェロンガンマ−Ib;イプロプラチン;塩酸イリノテカン;酢酸ランレオチド;レトロゾール;酢酸ロイプロリド;塩酸リアロゾール;ロメトレキソールナトリウム;ロムスチン;塩酸ロソキサントロン;マソプロコール;メイタンシン;塩酸メクロレタミン;酢酸メゲストロール;酢酸メレンゲストロール;メルファラン;メノガリル;メルカプトプリン;メトトレキセート;メトトレキセートナトリウム;メトプリン;メツレデパ;ミチンドミド;ミトカルシン;ミトクロミン;ミトギリン;ミトマルシン;マイトマイシン;ミトスペル;ミトタン;塩酸ミトキサントロン;マイコフェノール酸;ノコダゾール;ノガラマイシン;オルマプラチン;オキシスラン;パクリタキセル;ペガスパルガーゼ;ペリオマイシン;ペンタムスチン;硫酸ペプロマイシン;ペルフォスファミド;ピポブロマン;ピポスルファン;塩酸ピロキサントロン;プリカマイシン;プロメスタン;ポルフィマーナトリウム;ポルフィロマイシン;プレドニムスチン;塩酸プロカルバジン;ピューロマイシン;塩酸ピューロマイシン;ピラゾフリン;リボプリン;ログレチミド;サフィンゴール(Safimgol);塩酸サフィンゴール;セムスチン;シムトラゼン;スパルフォセートナトリウム;スパルソマイシン;塩酸スピロゲルマニウム;スピロムスチン;スピロプラチン;ストレプトニグリン;ストレプトゾシン;塩化ストロンチウム(Sr 89);スロフェヌル;タリソマイシン;タキサン;タキソイド;テコガランナトリウム;テガフール;塩酸テロキサントロン;テモポルフィン;テニポシド;テロキシロン;テストラクトン;チアミプリン;チオグアニン;チオテパ;チアゾフリン;チラパザミン;塩酸トポテカン;クエン酸トレミフェン;酢酸トレストロン;リン酸トリシリビン;トリメトレキセート;グルクロン酸トリメトレキセート;トリプトレリン;塩酸ツブロゾール;ウラシルマスタード;ウレデパ;バプレオチド;ベルテポルフィン;硫酸ビンブラスチン;硫酸ビンクリスチン;ビンデシン;硫酸ビンデシン;硫酸ビネピジン;硫酸ビングリシネート;硫酸ビンロイロシン;酒石酸ビノレルビン;硫酸ビンロシジン;硫酸ビンゾリジン;ボロゾール;ゼニプラチン;ジノスタチン;及び塩酸ゾルビシンよりなる群から選ばれる前記第二活性薬剤を投与することを更に含む、請求項15に記載の方法。

【図1】
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【公表番号】特表2010−513313(P2010−513313A)
【公表日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−541616(P2009−541616)
【出願日】平成19年12月14日(2007.12.14)
【国際出願番号】PCT/US2007/087576
【国際公開番号】WO2008/076883
【国際公開日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【出願人】(508293025)アブラクシス バイオサイエンス、インコーポレイテッド (3)
【Fターム(参考)】