説明

トリアゾロピリジンカルボキサミド誘導体およびトリアゾロピリミジンカルボキサミド誘導体、これらの調製、ならびにこれらの治療的使用

本発明は、一般式(I)


(式中、AおよびXは、互いに独立して、窒素原子またはCH基であり、Rは、NR基(式中、RおよびRがこれらを持つ窒素原子とともに、酸素原子もしくは硫黄原子を組み入れることができる3環員から7環員を含むヘテロ環状基を形成する。)、NR基またはNR’−CO基であり、前記環は、ハロゲン原子、または(C−C)アルキル基、(C−C)アルコキシ基、ハロ(C−C)アルキル基もしくはハロ(C−C)アルコキシ基から選択される1つまたは複数の基で場合によって置換されており、Rは、ハロゲン原子、またはメチル基、トリフルオロメチル基、メトキシ基もしくはトリフルオロメトキシ基から選択される、1つまたは複数の基で場合によって置換されているアリール基である。)のトリアゾロピリジンカルボキサミド誘導体およびトリアゾロピリミジンカルボキサミド誘導体に関する。これらの調製方法およびこれらの治療的使用。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トリアゾロピリジンカルボキサミド誘導体およびトリアゾロピリミジンカルボキサミド誘導体、これらの調製、ならびにこれらの治療的使用に関する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0002】
本発明の対象は、式(I)
【0003】
【化1】

(式中、
AおよびXは、互いに独立して、窒素原子またはCH基であり、
は、NR基(式中、RおよびRが、これらを持つ窒素原子とともに、酸素原子もしくは硫黄原子を組み入れることができる3環員から7環員を含むヘテロ環状基を形成する。)、NR基またはNR’−CO基であり、前記環は、ハロゲン原子、または(C−C)アルキル基、(C−C)アルコキシ基、ハロ(C−C)アルキル基もしくはハロ(C−C)アルコキシ基から選択される、1つまたは複数の基で場合によって置換されており、
は、ハロゲン原子、またはメチル基、トリフルオロメチル基、メトキシ基もしくはトリフルオロメトキシ基から選択される、1つまたは複数の基で場合によって置換されているアリール基であり、
Rは、水素原子、または(C−C)アルキル基、(C−C)シクロアルキル基、(C−C)シクロアルキル(C−C)アルキル基、C(O)R’基、COR’基、SOR’基、CONR’R’’基もしくはSONR’R’’基から選択される基であり、
R’およびR’’は、互いに独立して、水素原子、または(C−C)アルキル基、(C−C)シクロアルキル基もしくは(C−C)シクロアルキル(C−C)アルキル基から選択される、1つまたは複数の基である。)
に対応する化合物である。
【0004】
式(I)の化合物は、1個または複数の不斉炭素原子を含むことができる。これらは、したがって、エナンチオマーまたはジアステレオマーの形態で存在することができる。エナンチオマーおよびジアステレオマーならびにラセミ混合物を含めたこれらの混合物も、本発明の一部である。
【0005】
式(I)の化合物は、塩基の形態または酸との付加塩の形態で存在することができる。こうした付加塩は本発明の一部である。
【0006】
これらの塩は、薬学上許容される酸で調製することができるが、例えば式(I)の化合物を精製または単離するために有用である他の酸の塩も本発明の一部である。
【0007】
式(I)の化合物は、水和物または溶媒和物の形態で、即ち1個または複数の水の分子または溶媒との会合または組合せの形態で存在することもできる。こうした水和物および溶媒和物も本発明の一部である。
【0008】
本発明の文脈において:
−tおよびzが1から7の値をとることができる「Ct−z」という表現は、t個からz個の炭素原子を含有することができる炭素系鎖または炭素系環を意味することを意図され、例えば、C1−3は、1個から3個の炭素原子を含有する炭素系鎖を特徴とすることができる;
−「ハロゲン原子」という用語は、フッ素、塩素、臭素またはヨウ素を意味することを意図される;
−「アルキル基」という用語は、直鎖または分枝の飽和脂肪族基を意味することを意図される。例として、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基などを挙げることができる;
−「シクロアルキル基」という用語は、飽和した環状脂肪族基を意味することを意図される。例として、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などを挙げることができる;
−「ハロアルキル基」という用語は、1個または複数の水素原子がハロゲン原子で置換されたアルキル基を意味することを意図される;
−「アルコキシ基」という用語は、アルキル基が上記で定義した通りである−O−アルキル基を意味することを意図される;
−「ハロアルコキシ基」という用語は、1個または複数の水素原子がハロゲン原子で置換されたアルコキシ基を意味することを意図される;
−「アリール基」という用語は、6個と14個との間の炭素原子を含有する環状芳香族基を意味することを意図される。アリール基の例として、フェニルまたはナフチルを挙げることができる;
−「ヘテロ環状基」という用語は、窒素原子、酸素原子もしくは硫黄原子などの1個または複数のヘテロ原子を含む5環員から7環員を含む飽和環状基を意味することを意図される。例として、ピロリジニル基、ピペリジニル基、イミダゾリジン基、ピラゾリジン基、ジオキサン基、テトラヒドロピラニル基、ピペリドニル基、モルホリニル基、ピペラジニル基、アゼチジン基、アゼピン基、チオモルホリニル基、N−メチルピペラジニル基またはホモピペラジン基を挙げることができる;
−硫黄原子は、酸化状態(スルホキシド、スルホン)で存在することができる。
【0009】
下記で定義した通りの様々な基において、R基およびR基、AならびにXは、これらが定義されていない場合、上記したものと同じ定義を有する。
【0010】
本発明の対象である式(I)の化合物の中で、第1群の化合物は:
Aが窒素原子であり、
XがCH基である
化合物で構成される。
【0011】
本発明の対象である式(I)の化合物の中で、第2群の化合物は:
AおよびXが、CH基である
化合物で構成される。
【0012】
本発明の対象である式(I)の化合物の中で、第3群の化合物は:
が、ハロゲン原子もしくはハロアルキル基から選択される1つまたは複数の基で場合によって置換されているヘテロ環状基である
化合物で構成される。
【0013】
本発明の対象である式(I)の化合物の中で、第4群の化合物は:
が、ハロゲン原子もしくはトリフルオロメチル基から選択される1つまたは複数の基で場合によって置換されている、モルホリニル基、ピロリジニル基またはピペリジニル基である
化合物で構成される。
【0014】
上記の1つから4つの基の組合せも、本発明の一部である。
【0015】
本発明の対象である式(I)の化合物の中で、以下の化合物を挙げることができる:
−(5−モルホリン−4−イル[1,2,3]トリアゾロ[4,5−b]ピリジン−3−イル)[4−(3−トリフルオロメチル−フェニル)ピペラジン−1−イル]メタノン;
−[4−(4−メトキシフェニル)ピペラジン−1−イル](5−ピロリジン−1−イル[1,2,3]トリアゾロ[4,5−b]ピリジン−3−イル)メタノン;
−[5−(3,3−ジフルオロピロリジン−1−イル)[1,2,3]トリアゾロ[4,5−b]ピリジン−3−イル)[4−(4−トリ−フルオロメチルフェニル)ピペラジン−1−イル]メタノン;
−(5−ピロリジン−1−イル[1,2,3]トリアゾロ[4,5−b]ピリジン−3−イル)[4−(3−トリフルオロメチル−フェニル)ピペラジン−1−イル]メタノン;
−(4−フェニルピペリジン−1−イル[5−(4−トリフルオロメチルピペリジン−1−イル)[1,2,3]トリアゾロ[4,5−b]ピリジン−3−イル]メタノン;
これに続く文脈において、「保護基Pg」という用語は、一方では合成中にヒドロキシルまたはアミンなどの反応性官能基を保護することを可能にし、他方では合成の最後に無傷の反応性官能基を再生することを可能にする基を意味することを意図される。保護基の例ならびに保護および脱保護の方法も、「Protective Groups in Organic Synthesis」Greenら、第2版(John Wiley & Sons、Inc.、New York)、1991年に示されている。
【0016】
これに続く文脈において、「脱離基」という用語は、一対の電子の離脱で不均一結合を切ることによって、分子から容易に切断することができる基を意味することを意図される。この基は、したがって、例えば置換反応中に別の基で容易に置き換えることができる。こうした脱離基は、例えば、ハロゲンである、またはメタンスルホネート、ベンゼンスルホネート、p−トルエンスルホネート、トリフレート、酢酸塩等などの活性化ヒドロキシル基である。脱離基の例、およびこれらの調製の参考文献も、「Advances in Organic Chemistry」J.March、第3版、Wiley Interscience、1985年、310−316頁に示されている。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明によると、一般式(I)の化合物は、次に続くスキーム1の方法に従って調製することができる:
第1段階において、Xが上記で定義した通りである一般式(II)の化合物は、XおよびRが上記で定義した通りである一般式(III)の化合物に変換される。変換は、イソプロパノールもしくはジメチルスルホキシドなどの溶媒中またはこれらの溶媒の混合物中、炭酸カリウムまたはジイソプロピルエチルアミンなどの塩基の存在下で、RおよびRが上記で定義した通りである一般式(IV)のアミンとのアミノリシス反応の手段によって行われる。
【0018】
第2段階において、XおよびRが上記で定義した通りである一般式(III)の化合物は、一般構造(VI)のカルバモイルクロリドとの反応によって、X、R、RおよびAが上記で定義した通りである一般式(V)の化合物に変換される。反応は、N,N−ジメチルホルムアミドまたはN−メチルピロリドンなどの溶媒中、水素化ナトリウム、カリウムtert−ブトキシドまたはカリウムtert−ペントキシドなどの塩基の存在下で行われる。
【0019】
第3段階において、一般式(V)の化合物は、ニトロ基のアミノ基への還元によって、X、R、RおよびAが上記で定義した通りである一般式(VII)の化合物に変換される。反応は、文献に記載されているまたは当業者に知られている様々な方法、例えばパラジウム、白金またはニッケル、およびこれらの変異形に基づく触媒の存在下における水素化によって行うことができる。
【0020】
【化2】

【0021】
第5段階において、一般式(VII)の化合物は、ジアゾ化/閉環反応の手段によって、一般式(I)の化合物に変換される。反応は、亜硝酸塩、例えば酸性媒質中の亜硝酸ナトリウムもしくは亜硝酸カリウム、または亜硝酸イソアミルまたは亜硝酸tert−ブチルを使用し、水もしくはテトラヒドロフランなどの溶媒中またはこれらの混合物中で行うことができる。
【0022】
一般式(II)の化合物は市販されている。一般式(IV)のアミン類および一般式(VI)のカルバモイルクロリドは、これらが市販されていない場合、該文献に記載されているまたは当業者に知られている任意の方法によって調製することができる。
【0023】
次に続く実施例で、本発明の一部の化合物の調製を例証する。これらの実施例は、本発明を限定しているのではなく、例証しているにすぎない。微量分析、IRスペクトルおよびNMRスペクトル、ならびにLC−MSで、得られる化合物の構造および純度を確認する。融点(Mp)は、摂氏温度で表示される。
【実施例】
【0024】
(実施例1)
(表の化合物No.2)
[4−(4−メトキシフェニル)ピペラジン−1−イル](5−ピロリジン−1−イル[1,2,3]トリアゾロ[4,5−b]−ピリジン−3−イル)メタノン
1.1 3−ニトロ−6−ピロリジン−1−イルピリジン−2−イルアミン
2−アミノ−6−クロロ−3−ニトロピリジン1.735g(10mmol)、ピロリジン1.66ml(20mmol)ならびにジイソプロピルエチルアミン1.66ml(10mmol)の、ジメチルスルホキシド1mlとイソプロパノール5mlとの混合物中懸濁液を、封管中で20時間撹拌しながら60℃で加熱する。混合物を周囲温度に冷却し、次いで、イソプロパノール10mlで希釈する。固体をろ過によって回収し、次いで、イソプロパノール2×5mlで洗浄する。固体を水20mlで溶かす。懸濁液を30分間撹拌する。固体をろ過し、次いで、水2×5mlおよびエーテル2×5mlで洗浄し、真空下にて五酸化リンの存在下で乾燥して、生成物1.91g(9.17mmol)を鮮明な黄色粉末の形態で得る。
H−NMR(DMSO−d,δ ppm):8.15(d,1H)、7.95(m,2H)、6.15(d,1H)、3.60(m,4H)、2.00(m,4H)。
1.2 4−(4−メトキシフェニル)ピペラジン−1−カルボン酸、(3−ニトロ−6−ピロリジン−1−イルピリジン−2−イル)アミド
アルゴン雰囲気下、油中60%の水素化ナトリウム0.25g(6.25mmol)を、1.1.段階において得られる3−ニトロ−6−ピロリジン−1−イルピリジン−2−イルアミン0.520g(2.50mmol)および(1−(4−メトキシフェニル)ピペラジンおよびトリホスゲンを使用する)4−(4−メトキシフェニル)−1−ピペラジンカルボニルクロリド0.764g(1.20mmol)の、氷浴で冷却されたジメチルホルムアミド8.5ml中溶液に、少量ずつ添加する。反応混合物の撹拌を、氷浴の温度で1時間、および次いで周囲温度で2時間続ける。反応混合物を氷浴および塩化アンモニウム1M水溶液50mlで冷却し、次いで、酢酸エチル20mlを少量ずつ添加する。混合物を15分間激しく撹拌する。固体をろ過し、次いで、酢酸エチル10ml、水5mlおよびエーテル2×5mで洗浄する。これを真空下にて五酸化リンの存在下で乾燥し、生成物0.79g(1.85mmol)を鮮明な黄色粉末の形態で得る。
H−NMR(DMSO−d,δ ppm):8.15(d,1H)、6.95(d,2H)、6.85(d,2H)、6.25(d,1H)、3.70(s,3H)、3.65(m,4H)、3.55(m,4H)、3.05(m,4H)、1.95(m,4H)。
1.3. [4−(4−メトキシフェニル)ピペラジン−1−イル](5−ピロリジン−1−イル[1,2,3]トリアゾロ−[4,5−b]ピリジン−3−イル)メタノン
1.2.段階において得られる4−(4−メトキシフェニル)ピペラジン−1−カルボン酸、(3−ニトロ−6−ピロリジン−1−イルピリジン−2−イル)アミド0.730g(1.71mmol)を、塩酸(5.14mmol)のイソプロパノール中5N溶液1.0mlとメタノール68mlとの混合物中に溶解する。炭素上10%の白金(0.17mmol)0.333gを添加する。混合物を水素雰囲気下にて30Psi(2バール)の圧力で2.5時間撹拌する。生じる生成物をろ過し、ろ液を蒸発させ、生成物0.97gを固体のすみれ色の気泡体の形態で得て、これをこのままそれに続く段階で使用する。
1.4. 該固体をテトラヒドロフラン8.5ml中に懸濁し、次いで、亜硝酸イソアミル0.30ml(2.21mmol)および酢酸ナトリウム三水和物0.694g(5.10mmol)を添加する。混合物を18時間周囲温度で撹拌する。酢酸エチル50mlおよび炭酸カリウムの0.5M水溶液25mlを添加する。沈降させることによって有機相を分離し、炭酸カリウムの0.5M水溶液25ml、次いで水25mlおよび塩化ナトリウムの飽和水溶液25mlで洗浄する。生じる生成物を硫酸ナトリウム上で乾燥させ、蒸発乾固する。酢酸エチルおよびシクロヘキサンの40:60、次いで50:50および60:40混合物で溶出が行われるシリカゲルクロマトグラフィーによって、生成物を精製する。ジクロロメタンおよび酢酸エチルの95:5、次いで90:10、85:15および80:20混合物で溶出が行われるシリカゲルクロマトグラフィーによって、得られる生成物を再精製する。生成物をイソプロパノールから再結晶させて、生成物0.175g(0.43mmol)を桃色がかった結晶の形態で得る。
融点(℃):138−140
LC−MS(m/z):408(MH+)、380(MH+−N
IR(KBr,cm−1):1704、1612
H−NMR(CDCl,δ ppm):8.05(d,1H)、6.95(d,2H)、6.90(d,2H)、6.55(d,1H)、4.05(m,2H)、3.80(m+s,5H)、3.60(m,4H)、3.25(m,4H)、2.05(m,4H)。
【0025】
次に続く表1で、本発明による化合物の一部の例の化学構造および物性を例証する。この表において:
−縦の列「塩」において、「−」は遊離塩基の形態における化合物を表す一方、「HCl」は、塩酸塩の形態における化合物を表し、
−PHはフェニル基を表し、
−Mpは摂氏温度における化合物の融点を表す。
【0026】
【表1】

【0027】
本発明による化合物は、驚くべきことに、MGL(モノアシルグリセロールリパーゼ)酵素に阻害効果を示す。MGL酵素は、様々な脂肪酸のモノグリセリドエステルの内因性誘導体の加水分解を触媒し(FEBS Letters 1998年、429、152−156頁)、特に2−アラキドノイルグリセロール(2−AG)および1(3)−アラキドノイルグリセロール(1(3)−AG)の加水分解を触媒する(J.Biol.Chem.1987年、272(48)、27218−27223頁;Proc.Natl.Acad.Sci.USA 2002年、99(16)、10819−10824頁;Biochem.Pharmacol.2004年、67、1381−1387頁;Mol.Pharmacol.2004年、66(5)、1260−1264頁)。2−AG誘導体および1−(3)−AG誘導体は、特に、カンナビノイド受容体と相互作用する(J.Biol.Chem.1999年、274(5)、2794−2801頁;J.Biol.Chem.2000年、275(1)、605−612頁;British J.Pharmacol.2001年、134、664−672頁)。
【0028】
本発明の化合物は、この分解経路を遮断し、これらの誘導体、および特に2−AGおよび/または1(3)−AGの組織濃度を増加させる。この点において、本発明の化合物は2−AGおよび/または1(3)−AG、特に、および/またはMGL酵素によって代謝される任意の他の基質が関与する病態の予防および治療に使用することができる(Progress Lipid Research 2006年、45、405−446頁)。
【0029】
本発明による化合物は、FAAH(脂肪酸アミドヒドロラーゼ)酵素に対する阻害効果をさらに有することもあり得る。FAAH酵素(Chemistry and Physics of Lipids、(2000年)、108、107−121頁)は、N−アラキドノイルエタノールアミン(アナンダミド)、N−パルミトイルエタノールアミン、N−オレオイルエタノールアミンまたはオレアミドなど、様々な脂肪酸のアミドおよびエステルの内因性誘導体の加水分解を触媒する。これらの誘導体は、とりわけカンナビノイド受容体およびバニロイド受容体と相互作用することによって、様々な薬理活性を発揮する。
【0030】
本発明の化合物は分解経路を遮断し、これらの内因性物質の組織濃度を増加させる。この点において、本発明の化合物は、内因性カンナビノイドおよび/またはFAAH酵素によって代謝される任意の他の基質が関与する病態の予防および治療に使用することができる。
【0031】
試験には、MGL酵素に対する本発明の化合物のインビトロにおける活性を測定することを含めた。
【0032】
MGLによる2−オレオイルグリセロール([H]2−OG)の加水分解の生成物を測定することに基づく放射酵素アッセイで、阻害活性を測定した。グリセロール上に標識された、[H]2−OGの加水分解の生成物は、オレイン酸および[H]グリセロールであり、MGL酵素の供給源は、小脳および延髄が除去されたマウス脳ホモジネートである。マウス脳を除去し、これらを使用するまで、またはプリセリーズ装置を使用し、5000rpm(バーティン)にて、10mM トリス−HCl、150mM NaCl、1mM EDTAの緩衝液(pH8)中4℃にて、2回5秒間で直ちにホモジネートするまで、−80℃で貯蔵する。ホモジネートの濃度を、次いで、7.5μg/μlに調節する。
【0033】
化合物の希釈系列は、100%DMSO中20mMで原液から調製する。この系列の第1希釈物を100%DMSO中で調製し、次いで、第2を酵素反応緩衝液(50mM ホスフェート、0.1%BSA)中で調製し、10倍濃縮の濃度範囲の調製物にする。試験化合物を、選択濃度にて20分間、マウス脳ホモジネート調製物でプレインキュベートする。酵素反応におけるDMSOの最終濃度は、0.1%を超えることはない。
【0034】
MGL活性のアッセイを、96ウェルマイクロプレート中、100μlの最終反応体積で行う。簡潔には、試験化合物でプレインキュベートされたタンパク質75μgを、BSA 0.1%を含有するリン酸緩衝液50mMに希釈し、20分間周囲温度で、[H]2−OGを0.027μCi/ウェル(20Ci/mmolの比活性)の量で含有する2−OG 50μMの存在下でインキュベートする。反応を停止させ、形成される生成物を、クロロホルム/メタノール(1/1)100μlを添加および混合することによって分離する。10分間撹拌した後、マイクロプレートを15分間4000gで遠心分離し、生成される[H]グリセロールを含有する水性相の30μlのアリコットを除去し、次いで、液体シンチレーション(ワラック1450マイクロベータ)によって5分間カウントする。
【0035】
MGLに関する阻害活性は、MGLの活性の50%を阻害する濃度によって起こる。
【0036】
これらの条件下、本発明の最も活性な化合物は、0.001μMと0.1μMとの間のIC50(MGLの対照酵素活性の50%を阻害する濃度)を示す。
【0037】
例えば、化合物No.1は、0.004μMのIC50を示した。
【0038】
試験には、FAAH酵素に対する本発明の化合物のインビトロにおける活性を測定することを含めた。
【0039】
FAAH(Life Science(1995年)、56、1999−2005頁およびJournal of Pharmacology and Experimented Therapeutics(1997年)、283、729−734頁)によってアナンダミドの加水分解の生成物(エタノールアミン[1−3H])を測定することに基づく放射酵素アッセイで、阻害活性を測定した。エタノールアミン上に標識された、[H]アナンダミドの加水分解の生成物は、アラキドン酸および[H]エタノールアミンであり、FAAH酵素の供給源は、小脳および延髄が除去されたマウス脳ホモジネートである。マウス脳を除去し、これらを使用するまで、またはプリセリーズ装置を使用し、5000rpm(バーティン)で、10mM トリス−HCl、150mM NaCl、1mM EDTAの緩衝液(pH8)中4℃にて、2回5秒間で直ちにホモジネートするまで、−80℃で貯蔵する。ホモジネートの濃度を、次いで、20μg/μlに調節する。
【0040】
化合物の希釈系列を、100%DMSO中20mMで原液から調製する。この系列の第1希釈物を100%DMSO中で調製し、次いで、第2を酵素反応緩衝液(10mM トリス−HCl、150mM NaCl、1mM EDTA(pH8)、0.1% BSA)中で調製し、10倍濃縮の濃度範囲の調製物にする。試験化合物を、選択濃度にて20分間、マウス脳ホモジネート調製物でプレインキュベートする。酵素反応においてDMSOの最終濃度は、0.1%を超えることはない。
【0041】
FAAH活性のアッセイは、96ウェルマイクロプレート中、70μlの最終反応体積で行われる。簡潔には、試験化合物でプレインキュベートされたマウス脳ホモジネートの200μgを、BSA 0.1%を含有する10mM トリス−HCl、150mM NaCl、1mM EDTAの緩衝液(pH8)に希釈し、20分間周囲温度にて、[H]−アナンダミドを0.01μCi/ウェル(60Ci/mmolの比活性)の量で含有するアナンダミド10μMの存在下でインキュベートする。反応を停止させ、形成された生成物を、クロロホルム/メタノール(2/1)140μlを添加および混合することによって分離する。10分間撹拌した後、マイクロプレートを15分間4000gで遠心分離し、生成される[H]エタノールアミンを含有する水性相のアリコット30μlを除去し、次いで、液体シンチレーション(ワラック1450マイクロベータ)によって5分間カウントする。
【0042】
これらの条件下、本発明の最も活性な化合物は、0.001μMと0.1μMの間のIC50(FAAHの対照酵素活性の50%を阻害する濃度)を示す。
【0043】
例えば、化合物No.1は、0.01μMのIC50を示した。
【0044】
したがって、本発明による化合物が、MGLに対して選択的であるまたはMGLおよびFAAHに関して選択的混合である阻害活性を有することは明らかである。
【0045】
本発明による化合物は、したがって、薬物、特にMGL酵素、またはMGL酵素およびFAAH酵素を阻害する薬物の調製に使用することができる。
【0046】
したがって、この別の態様によると、本発明の対象は、式(I)の化合物、または薬学上許容される酸との後者の付加塩、でなければ式(I)の化合物の水和物もしくは溶媒和物を含む薬物である。
【0047】
これらの薬物は、治療法、特に:
疼痛、特に神経原性型の急性または慢性の疼痛:片頭痛、ヘルペスウイルスおよび糖尿病に伴う形態を含めた神経因性疼痛;
炎症性疾患に伴う急性または慢性の疼痛:関節炎、関節リウマチ、骨関節炎、脊椎炎、痛風、血管炎、クローン病、過敏性腸症候群;
急性または慢性の末梢疼痛;
特に化学療法に続く眩暈、嘔吐、吐き気;
摂食障害、特に、様々な性質の拒食症および悪液質;
肥満症を含めた、メタボリック症候群およびこの症状;
アテローム性動脈硬化症および冠疾患を含めた、異脂肪血症およびこの症状;
神経性および精神的病態:振盪、ジスキネジー、ジストニー、痙直、強迫性行動、トゥレット症候群、任意の性質および起源のうつ病および不安の全形態、気分障害、精神病;
急性および慢性の神経変性疾患:パーキンソン病、アルツハイマー病、老年痴呆、ハンチントン舞踏病、脳虚血ならびに頭蓋および延髄性外傷に伴う病変部、筋萎縮性側索硬化症;
てんかん;
睡眠時無呼吸を含めた睡眠障害;
循環器疾患、特に、高血圧症、心不整脈、動脈硬化症、心臓発作、心虚血;
腎虚血;
癌:良性の皮膚腫瘍、脳腫瘍および乳頭腫、前立腺腫瘍、脳腫瘍(神経膠芽腫、髄上皮腫、髄芽腫、神経芽細胞腫、胚起源の腫瘍、星状細胞腫、星状芽細胞腫、上衣細胞腫、乏突起神経膠腫、神経叢腫瘍、神経上皮腫、松果体腫、上衣芽細胞腫、悪性髄膜腫、肉腫症、悪性黒色腫、シュワン腫);
免疫系障害、特に自己免疫疾患:乾癬、エリテマトーデス、結合組織疾患またはコラーゲン疾患の疾病、シェーグレン症候群、強直性脊椎関節炎、未分化型脊椎関節炎、ベーチェット病、自己免疫性溶血貧血、多発性硬化症、筋萎縮性側索硬化症、穀粉症、移植拒絶反応、形質細胞系に発症する疾患;
アレルギー性疾患:即時型または遅延型過敏症、アレルギー性の鼻炎または結膜炎、接触性皮膚炎;
寄生虫性、ウイルス性または細菌性の感染症:AIDS、髄膜炎;
炎症性疾患、特に関節の疾患:関節炎、関節リウマチ、骨関節炎、脊椎炎、痛風、血管炎、クローン病、過敏性腸症候群;
骨粗鬆症;
眼症状:高眼圧症、緑内障;
肺症状:呼吸器疾患、気管支痙攣、咳嗽、喘息、慢性気管支炎、慢性閉塞性気道疾患、肺気腫;
胃腸系疾患:過敏性腸症候群、炎症性腸管障害、潰瘍、下痢;
尿失禁および膀胱の炎症
の治療および予防において使用される。
【0048】
この別の態様によると、本発明は、活性成分として本発明による化合物を含む医薬組成物に関する。これらの医薬組成物は、本発明による少なくとも1種の化合物、または前記化合物の薬学上許容される塩、水和物もしくは溶媒和物の有効量、および少なくとも1種の薬学上許容される賦形剤も含有する。
【0049】
前記賦形剤は、医薬品形態および所望の投与方法に従って、当業者に知られている通常の賦形剤から選択される。
【0050】
経口、舌下、皮下、筋肉内、静脈内、局所的、局所性、気管内、鼻腔内、経皮的または直腸投与のための本発明の医薬組成物において、上記の式(I)の活性成分またはこの可能な塩、溶媒和物もしくは水和物は、従来の医薬品賦形剤との混合物として、上記の障害もしくは疾患の予防または治療のために動物およびヒトに単位投与形態で投与することができる。
【0051】
適当な単位投与形態には、錠剤、軟または硬ゲルカプセル、粉末、顆粒および経口の液剤または懸濁液などの経口形態、舌下、バッカル、気管内、眼内、および鼻腔内の投与形態、吸入による投与のための形態、局所的、経皮的、皮下、筋肉内または静脈内の投与形態、直腸投与形態、ならびにインプラントが含まれる。局所適用に関して、本発明による化合物は、クリーム、ゲル、軟膏剤またはローション中に使用することができる。
【0052】
例として、錠剤形態における本発明による化合物の単位投与形態は、以下の成分を含むことができる:
本発明による化合物 50.0mg
マンニトール 223.75mg
クロスカルメロースナトリウム 6.0mg
コーンスターチ 15.0mg
ヒドロキシプロピルメチルセルロース 2.25mg
ステアリン酸マグネシウム 3.0mg
【0053】
この別の態様によると、本発明は、本発明による化合物、またはこの薬学上許容される塩または水和物もしくは溶媒和物の有効量の患者への投与を含む、上記に示した病態を治療するための方法にも関する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
塩基の形態または酸との付加塩の形態、さらに水和物または溶媒和物の形態の式(I)
【化1】

(式中、
AおよびXは、互いに独立して、窒素原子またはCH基であり、
は、NR基(式中、RおよびRが、これらを持つ窒素原子とともに、酸素原子もしくは硫黄原子を組み入れることができる3環員から7環員を含むヘテロ環状基を形成する。)、NR基またはNR’−CO基であり、前記環は、ハロゲン原子、または(C−C)アルキル基、(C−C)アルコキシ基、ハロ(C−C)アルキル基もしくはハロ(C−C)アルコキシ基から選択される、1つまたは複数の基で場合によって置換されており、
は、ハロゲン原子、またはメチル基、トリフルオロメチル基、メトキシ基もしくはトリフルオロメトキシ基から選択される、1つまたは複数の基で場合によって置換されているアリール基であり、
Rは、水素原子、または(C−C)アルキル基、(C−C)シクロアルキル基、(C−C)シクロアルキル(C−C)アルキル基、C(O)R’基、COR’基、SOR’基、CONR’R’’基もしくはSONR’R’’基から選択される基であり、
R’およびR’’は、互いに独立して、水素原子、または(C−C)アルキル基、(C−C)シクロアルキル基もしくは(C−C)シクロアルキル(C−C)アルキル基から選択される、1つまたは複数の基である。)
に対応する化合物。
【請求項2】
Aが窒素原子であり、
XがCH基である
ことを特徴とする、塩基の形態または酸との付加塩の形態、さらに水和物または溶媒和物の形態の、請求項1に記載の式(I)の化合物。
【請求項3】
AおよびXが、CH基である
ことを特徴とする、塩基の形態または酸との付加塩の形態、さらに水和物または溶媒和物の形態の、請求項1および2のいずれかに記載の式(I)の化合物。
【請求項4】
が、ハロゲン原子もしくはハロアルキル基から選択される1つまたは複数の基で場合によって置換されているヘテロ環状基である
ことを特徴とする、塩基の形態または酸との付加塩の形態、さらに水和物または溶媒和物の形態の、請求項1から3の一項に記載の式(I)の化合物。
【請求項5】
が、ハロゲン原子もしくはトリフルオロメチル基から選択される1つまたは複数の基で場合によって置換されている、モルホリニル基、ピロリジニル基またはピペリジニル基である
ことを特徴とする、塩基の形態または酸との付加塩の形態、さらに水和物または溶媒和物の形態の、請求項1から4の一項に記載の式(I)の化合物。
【請求項6】
化合物が
−(5−モルホリン−4−イル[1,2,3]トリアゾロ[4,5−b]ピリジン−3−イル)[4−(3−トリフルオロメチル−フェニル)ピペラジン−1−イル]メタノン;
−[4−(4−メトキシフェニル)ピペラジン−1−イル](5−ピロリジン−1−イル[1,2,3]トリアゾロ[4,5−b]ピリジン−3−イル)メタノン;
−[5−(3,3−ジフルオロピロリジン−1−イル)[1,2,3]トリアゾロ[4,5−b]ピリジン−3−イル)[4−(4−トリ−フルオロメチルフェニル)ピペラジン−1−イル]メタノン;
−(5−ピロリジン−1−イル[1,2,3]トリアゾロ[4,5−b]ピリジン−3−イル)[4−(3−トリフルオロメチル−フェニル)ピペラジン−1−イル]メタノン;
−(4−フェニルピペリジン−1−イル[5−(4−トリフルオロメチルピペリジン−1−イル)[1,2,3]トリアゾロ[4,5−b]ピリジン−3−イル]メタノン。
から選択されることを特徴とする、請求項1から5の一項に記載の式(I)の化合物。
【請求項7】
一般式(VII)
【化2】

(式中、
、R、XおよびAは、請求項1に記載した式(I)において定義した通りである。)
の化合物を、亜硝酸塩の作用下でジアゾ化/閉環反応の手段によって一般式(I)の化合物に変換することを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載の式(I)の化合物を調製する方法。
【請求項8】
請求項1から6のいずれか一項に記載の式(I)の化合物、またはこの化合物の薬学上許容される酸との付加塩、または別法として式(I)の化合物の水和物もしくは溶媒和物を含むことを特徴とする薬物。
【請求項9】
請求項1から6のいずれか一項に記載の式(I)の化合物、またはこの化合物の薬学上許容される塩、水和物もしくは溶媒和物、および少なくとも1種の薬学上許容される賦形剤も含むことを特徴とする医薬組成物。
【請求項10】
内在性2−アラキドノイルグリセロール(2−AG)および内在性1(3)−アラキドノイルグリセロール、および/またはMGL酵素によって代謝される任意の他の基質が関与する病態の治療および予防において使用する薬物の調製のための、請求項1から6のいずれか一項に記載の式(I)の化合物の使用。
【請求項11】
内因性アナンダミドおよび/またはFAAH酵素によって代謝される任意の他の基質が関与する病態の治療および予防において使用する薬物の調製のための、請求項1から6のいずれか一項に記載の式(I)の化合物の使用。
【請求項12】
急性または慢性疼痛、眩暈、嘔吐、吐き気、摂食障害、メタボリック症候群、異脂肪血症、神経性および精神的病態、急性または慢性神経変性疾患、てんかん、睡眠障害、循環器疾患、腎虚血、癌、免疫系障害、アレルギー性疾患、寄生虫性、ウイルス性または細菌性感染症、炎症性疾患、骨粗鬆症、眼症状、肺症状、胃腸系疾患、尿失禁ならびに膀胱の炎症を予防または治療する際に使用する薬物の調製のための、薬学上許容される塩基、水和物または溶媒和物の形態における、請求項1から6のいずれか一項に記載の式(I)の化合物の使用。
【請求項13】
急性または慢性疼痛、眩暈、嘔吐、吐き気、摂食障害、メタボリック症候群、異脂肪血症、神経性および精神的病態、急性または慢性神経変性疾患、てんかん、睡眠障害、循環器疾患、腎虚血、癌、免疫系障害、アレルギー性疾患、寄生虫性、ウイルス性または細菌性感染症、炎症性疾患、骨粗鬆症、眼症状、肺症状、胃腸系疾患、尿失禁ならびに膀胱の炎症の予防または治療のための、薬学上許容される塩基、水和物または溶媒和物の形態における、請求項1から6のいずれか一項に記載の式(I)の化合物。

【公表番号】特表2010−524904(P2010−524904A)
【公表日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−503547(P2010−503547)
【出願日】平成20年4月16日(2008.4.16)
【国際出願番号】PCT/FR2008/000532
【国際公開番号】WO2008/145839
【国際公開日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【出願人】(504456798)サノフイ−アベンテイス (433)
【Fターム(参考)】