説明

トリゴネラ・フォエナム−グラエカム抽出物

本明細書では、トリゴネラ・フォエナム−グラエカムから得ることができる抽出物が開示される。特に、抽出物は、トリゴネラ・フォエナム−グラエカムから得られる植物材料と液体との混合物を調製する工程、該混合物を少なくとも3時間インキュベーションする工程、該混合物を加熱する工程、混合物から液体抽出物を回収する工程とを含むプロセスにより得ることができる。抽出物は、医薬組成物、消毒剤又は保存料等のさまざまなタイプの組成物の製造において有用である。医薬品は、炎症性疾患又は感染性疾患の治療又は予防のために使用することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トリゴネラ・フォエナム−グラエカム(Trigonella foenum-graecum)抽出物と、この抽出物を含む組成物とに関する。さらに本発明は、その抽出物の使用と、その抽出物を使用する方法とに関する。特に本発明は、上記抽出物を含む医薬組成物と、炎症性疾患及び感染性疾患の治療におけるその使用とに関する。本発明の別の態様は、消毒剤若しくは洗浄製品の調製のための、又は調製におけるトリゴネラ・フォエナム−グラエカム抽出物の使用に関する。
【0002】
本出願において引用される全ての特許文献及び非特許文献は、その全体が参照により本明細書に援用される。
【背景技術】
【0003】
フェヌグリーク(トリゴネラ・フォエナム−グラエカム)
ミヤコグサ(Bird's foot)、グリーク・ヘイシード(Greek hayseed)、トリゴネラ、ボックショーンセイム(bockshornsame)、メティ(Methi)及びコロハ(hu lu ba)として一般に知られるフェヌグリーク(トリゴネラ・フォエナム−グラエカム)は、統合医療分野で既知のハーブである。
【0004】
フェヌグリークは、ハーブ(葉)としても、種子としても、使用される。フェヌグリーク及びその製品は、鎮痛剤、緩下剤、泌乳刺激剤として伝統的に使用される。フェヌグリークは、アーユルベーダ医学における一般的な構成要素である。フェヌグリーク及びその製品は、脱毛症、関節炎、癌、糖尿病、胃腸障害、高コレステロール、分娩誘導、感染、炎症、泌乳刺激、リンパ節炎、筋肉痛、排尿促進、皮膚潰瘍、創傷治癒のような多様な疾患の治療のために提案されている。フェヌグリーク抽出物は、in vitroで抗菌活性及び抗線虫活性を示す(非特許文献1)。作用機構は十分に特徴づけされているわけではない。フェヌグリークの最も伝統的な効用は、その高い繊維含有量に起因し得るようである。
【0005】
FDAは、フェヌグリークを「一般に安全とみなされる(generally regarded as safe)」としてリストするが、出血、挫傷、鼓腸、下痢、胃腸障害及び低血糖等の副作用が報告されている。
【0006】
統合医療におけるハーブの使用に関するメモリアル・スローン・ケタリング癌センターのサイトで引用される参考文献によると、フェヌグリーク中において以下の物質が同定されている:アルカロイド:(焙煎によりニコチン酸を生じる)トリゴネリン(Trigonelline)、ゲンチアニン(gentianine)、カルパイン、コリン;タンパク質及びアミノ酸:4−ヒドロキシイソロイシン、ヒスチジン、リジン、アルギニン;フラボノイド:アピゲニン、ルテオリン、オリエンチン(orientin)、ビテキシン(vitexin)、ケルセチン;サポニン:グラエクニン(Graecunins)、フェヌグリンB(fenugrin B)、フェヌグリーキン(fenugreekine)、トリゴフォエノシドA〜G(trigofoenosides A-G);ステロイド性サピノーゲン(Steroidal sapinogens):ヤモゲニン(Yamogenin)、ジオスゲニン、スミラゲニン(smilagenin)、サルササポゲニン、チゴゲニン(tigogenin)、ネオチゴゲニン(neotigogenin)、ギトゲニン(gitogenin)、ネオギトゲニン(neogitogenin)、ユッカゲニン(yuccagenin);繊維:ゴム、中性デタージェント繊維;その他:クマリン、脂質、ビタミン、ミネラル。
【0007】
フェヌグリークの構成要素の一つであるサポニンはマイルドな洗剤であり、古代写本及び繊維製品をやさしく清浄する等の用途に使用される。研究においては、膜透過特性が細胞内組織化学染色の用途で使用され、抗体が膜によって細胞内タンパク質に接近することを可能にする。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Zia et al. (2001) Phytotherapy Research 15:538
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様は、トリゴネラ・フォエナム−グラエカムから得られる植物材料と液体との混合物を調製する工程、上記混合物を少なくとも3時間インキュベーションする工程、上記混合物を加熱する工程、混合物から液体抽出物を回収する工程とを含むプロセスにより得ることができる抽出物に関する。
【0010】
この抽出物は、医薬組成物、消毒剤又は保存料等のさまざまなタイプの組成物に含まれ得る。
【0011】
本発明の別の態様は、炎症性疾患又は感染性疾患の治療又は予防のための薬物の調製等における上記抽出物の使用に関する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】210nmでのクロマトグラムを示す。
【0013】
発明の詳細な説明
【0014】
本発明は、或る特定の方法により得ることができるフェヌグリーク由来の抽出物と、特に感染の治療のための上記抽出物を含む組成物とに関する。感染は、細菌性感染と、他の微生物性感染と、ウイルス性感染とを含む。好ましくは感染は、皮膚感染、粘膜、胃腸管における感染、咽頭及び口腔における感染である。上記抽出物及びその組成物の治療のための対象はヒト及び哺乳動物であり、好ましくはヒト及び家畜である。本発明は、感染により引き起こされ得る、又は感染と関連する炎症性疾患の治療にも関する。
【0015】
トリゴネラ・フォエナム−グラエカム抽出物を調製する方法
本発明の一態様は、少なくとも1種のトリゴネラ属の植物の植物材料抽出物の調製に関する。好ましい実施形態では、上記植物材料はトリゴネラ・フォエナム−グラエカムから得られる。
【0016】
本発明による上記抽出物を調製する方法は、
a.植物材料及び液体の混合物を調製すること、
b.上記混合物を少なくとも3時間インキュベーションすること、
c.上記混合物を加熱すること、
d.例えば残存する植物材料を混合物から分離することにより、混合物から液体抽出物を回収することを含む。
【0017】
植物材料は、上記植物の植物全体、該植物の葉、種子若しくは根、又は該植物材料の組合せであってもよい。植物材料は、新鮮なもの、凍結させたもの、乾燥させたもの、又はそれらの組合せであり得る。好ましい実施形態では、植物材料はトリゴネラ・フォエナム−グラエカムの種子であり、最も好ましくは該植物の乾燥種子である。
【0018】
植物材料の活性成分の抽出を促進するために、該植物材料は液体中、好ましくは水中に浸漬される。液体及び植物材料の混合物は、少なくとも3時間、より好ましくは少なくとも6時間、好ましくは少なくとも12時間、例えば少なくとも24時間、インキュベーションされる。インキュベーションは通常、0℃〜45℃の温度で、適切には10℃〜40℃の温度で、実施される。
【0019】
その後、液体中で浸漬された植物材料を含む混合物は、好ましくはタンパク質の凝固温度を超える温度まで、加熱される。或る特定の一態様では混合物は煮沸される。
【0020】
本発明による混合物は、植物材料及び液体を含む。該混合物中の該植物材料と該液体との重量比は1対1、又は好ましくは植物材料はより少なく例えば重量比で1対2、又は植物材料はより少なく例えば重量比で1対3、又は植物材料はより少なく例えば重量比で1対4、又は植物材料はより少なく例えば重量比で1対5、又は植物材料はより少なく例えば重量比で1対6、又は植物材料はより少なく例えば重量比で1対7、又は植物材料はより少なく例えば重量比で1対8、又は植物材料はより少なく例えば重量比で1対9、又は植物材料はより少なく例えば重量比で1対10である。好ましい一実施形態では、上記植物材料と上記液体との重量比は1対6である。
【0021】
混合物を加熱する間に、付加的な液体が、蒸発した液体と植物材料により吸収された液体とを補うために、少なくとも一回添加されてもよい。液体は、少なくとも5分間、例えば10分間〜45分間、より好ましくは20分間〜30分間、例えば20分間、加熱される。加熱は、胚が種子から放出されたときに終了してもよく、これは混合物の粘度の増大に関連する。
【0022】
一実施形態では、混合物は、加熱する工程の前に又は後に、少なくとも3時間、好ましくは6時間を超えて、例えば12時間、又は12時間を超えて、(好ましくは−18℃で)凍結される。その後混合物は、例えば残存する植物材料を除去することによる、抽出物の回収前に、二回目の加熱に供される場合がある。この凍結する工程は、植物材料からの活性成分の放出をさらに増強すると考えられる。
【0023】
1/2kgの、種子等の植物材料に由来する最終的な濃縮抽出物の体積は、約2Lである。
【0024】
長期間の保存のために、抽出物が冷蔵される場合がある。その用途に応じ、抽出物は水で希釈されるか、又はそのまま使用されてもよい。抽出物は、溶媒の除去によりさらに濃縮されてもよい。溶媒は、膜濾過、蒸発、沈降、抽出、共沸蒸留、凍結乾燥、噴霧乾燥及びそれらの組合せ等のいずれかの適当な手段により、除去されてもよい。
【0025】
理論に拘束されるものではないが、本明細書で記載される方法は、植物材料からの1つ又は複数の活性成分の効率的な放出をもたらすと考えられる。背景技術のセクションで記載したように、植物と、トリゴネラ・フォエナム−グラエカム由来の植物材料等の植物材料とは、多様な効果を示す活性成分を含む。
【0026】
本発明の抽出物は、いずれかの適当な方法により精製され、活性成分(複数可)が単離されてもよい。したがって、抽出物は、ゲル濾過、HPCL、抽出、沈降等を使用して分画される場合がある。現在有用な方法では、抽出物はHPLCを使用して分画される。特定の一方法では、活性成分(複数可)は、以下のグラジエント(0分〜1分はHO/AcNを98:2とし、その後1分〜40分で定常勾配を使用して100%に増加させる)を使用するsize B Lichroprep RP−18(40μm〜63μm)(Merck)での基礎抽出物の逆相クロマトグラフィを実施し、5分〜10分の時間間隔で画分を収集することにより得ることができる抽出画分に含まれる。
【0027】
本発明による方法により得られる抽出物は、植物材料から抽出物中に放出される活性成分(複数可)の質及び量の観点でのプロファイルを反映すると考えられる、本明細書で記載される適応症に対し特に有用である。
【0028】
比較の目的のために、インキュベーション工程を行わずに抽出物が調製された。本発明による抽出物と比較のために調製された抽出物とのHPLC分析は、組成においてかなりの差異を示す。この分析は、実施例13で報告される。
【0029】
治療の範囲内の疾患
感染
「感染」という用語は、外来の感染性生物種による宿主生物の有害なコロニー形成を表す。感染に対する宿主の応答は、炎症である。感染性生物種は、細菌、寄生生物、真菌及びウイルスを含む。
【0030】
本発明による一態様は、感染性疾患の治療のための、本明細書で記載されるフェヌグリーク抽出物等の植物材料抽出物を含む組成物の使用に関する。
【0031】
細菌性感染
本発明との関連では「細菌性感染」は、通常は無菌である宿主組織への細菌による侵入を意味する。本発明の細菌性感染は、グラム陰性細菌若しくはグラム陽性細菌又はそれらの組合せ、又は真菌及びウイルスを含む他の感染性因子のいずれかの侵入に起因し得る。
【0032】
本発明による好ましい実施形態は、細菌性感染の治療のための、本明細書で記載されるフェヌグリーク抽出物等の植物材料抽出物を含む組成物の使用に関する。本発明による別の実施形態では、感染は、細菌性感染と真菌及びウイルス等の別の生物種による感染との組合せである。
【0033】
膿痂疹
「膿痂疹」という用語は、複数の異なる感染性皮膚疾患を表す。伝染性膿痂疹は、表在性、表皮内性、単房性、水疱膿疱性の感染である。伝染性膿痂疹は、子供において最も一般的な皮膚感染である。水疱性膿痂疹は、皮膚の表皮層が脱落し、広い面積の皮膚喪失を引き起こす、毒素に媒介される紅皮症である。一般的な膿痂疹は、既存の創傷において感染が生じるときに用いられる用語である。膿痂疹は、黄色ブドウ球菌により引き起こされる、毛嚢の膿痂疹であると考えられる毛嚢炎として現れる場合もある。膿瘡は、深層性、潰瘍性の膿痂疹感染であり、リンパ節炎と共に起こることが多い。ストレプトコッカス(streptococcal organisms)及びスタフィロコッカス(staphylococcal organisms)という2種類の主なタイプの細菌が膿痂疹を引き起こす。両方とも、環境中に、また、たいていのヒトの皮膚表面上に、通常見出される。
【0034】
本発明による一実施形態は、膿痂疹の治療のための、本明細書で記載されるフェヌグリーク抽出物を含む組成物の使用に関する。
【0035】
本発明による一実施形態では、疾患が、ストレプトコッカスによる感染と、スタフィロコッカス・アウレウス等のスタフィロコッカスによる感染により引き起こされる。
【0036】
歯周病
歯周炎(歯周病(periodontosis)、歯周病(paradentosis)、歯槽膿漏(pyorrhea))は、歯肉炎の進行により引き起こされる、歯を支える歯根膜及び骨の炎症及び感染を含む歯の障害である。
【0037】
何年も治療しないままにしておくと、歯を支える骨の喪失と、最終的には歯の喪失とが起こる場合がある。その病状は、1つ又は複数の歯を含む場合がある。
【0038】
歯肉炎は、歯肉が赤くなり、膨張し、容易に出血する一方で、不快感がほとんど又は全くないことと関連する。歯肉炎は、歯肉の炎症を引き起こす歯上の歯垢中の細菌を放置する口内の不十分な衛生状態により、引き起こされることが多い。歯肉炎は、専門家による治療と、自宅での口内の良好なケアとにより回復させることができる。歯肉炎を治療しないままにした場合、歯垢が歯肉線の下で広がり成長する場合があり、病状が歯周炎にまで進行する場合がある。歯垢中で細菌により放出される毒素は歯肉中の炎症反応を開始し、この炎症反応は慢性化し、歯を支える骨を破壊する場合がある。歯肉が歯から分離し、感染の対象となるポケット(歯と歯肉との間の空間)を形成する。疾患が進行するにつれて、ポケットは深くなり、より多くの歯肉組織及び骨が破壊される。しばしば、この破壊的プロセスは非常に穏和な症状を有する。最終的に歯は緩くなり、抜かなければならない場合がある。
【0039】
慢性歯周炎は、最も発生頻度の高い歯周炎の形態であると認識される。慢性歯周炎は歯の支持組織内の炎症と、進行性の付着喪失及び骨喪失とを引き起こし、ポケット形成及び/又は歯肉後退を特徴とする。それは成人において一般的であり且つ成人における歯の喪失の主要な原因であるが、この疾患はいずれの年齢でも発症し得る。付着喪失の進行は通常緩徐に起こるが、迅速に進行する期間が生じ得る。
【0040】
侵襲性歯周炎は、それがなければ臨床的には健康な患者に、影響を及ぼす疾患である。一般的な特徴は、迅速な付着喪失及び骨破壊と、家族集積性とを含む。若年で発症することが多い歯周炎は、糖尿病又は骨粗しょう症等の幾つかの全身性疾患の一つに関連する(全身性疾患の顕在化としての歯周炎)。壊死性歯周病は、歯肉組織、歯根膜及び歯槽骨の壊死を特徴とする感染の別の形態である。この疾患は、HIV感染、栄養失調及び免疫抑制を含むがこれらに限定されない全身疾患に関連することが最も多い。
【0041】
細菌性歯垢の他に、歯肉の健康に影響を及ぼす他の因子は、喫煙、遺伝、妊娠、思春期、ストレス、投薬、歯ぎしり、栄養不足、糖尿病及び他の全身疾患を含む。
【0042】
歯肉炎は通常、良好なセルフケアにより消滅する。対照的に歯周炎は、専門家によるケアを繰り返すことを要する。良好な口内衛生法を使用する人は、歯肉線の下2mm〜3mm(1/12インチ)を掃除するだけでよい。歯科医は、歯石と病気の歯根表面とを徹底的に除去するスケーリング及びルートプレーニングを使用して、4mm〜6mm(1/5インチ)の深さまでポケットを掃除する場合がある。5mm(1/4インチ)以上のポケットに対しては、外科処置が必要となることが多い。歯科医又は歯周治療専門医は、歯肉線の下の歯に外科的に接近し(歯周フラップ手術)、歯を徹底的に掃除し、感染により引き起こされる骨の欠損を修正することができる。歯科医又は歯周治療専門医は、残りの歯肉が歯に堅固に再付着でき、且つその後その人が自宅で歯垢を除去できるように、感染し分離された歯肉の一部を除去することもできる(歯肉切除術)。歯科医は、特に膿瘍が発生している場合には、(テトラサイクリン又はメトロニダゾール等の)抗生物質を処方する場合がある。歯科医は、抗生物質を含浸させた材料(細糸又はゲル)を深い歯肉ポケット中に挿入し、高濃度の薬剤が病気の領域に到達することができるようにする場合もある。歯周膿瘍は骨破壊の突発を引き起こすが、外科処置及び抗生物質での即時的治療が、損傷した骨の多くが再成長することを可能にする場合がある。外科処置後に口が痛む場合、1日2回、1分間のクロルへキシジン洗口剤の使用が、一時的にブラッシング及びフロシングの代わりになり得る。
【0043】
患者がほとんどの歯の周囲に5mm(1/4インチ)以上の深さのポケットを有する場合、彼らは何年かの間に全ての歯を喪失するリスクを有するだろう。このことを認識せず、且つその患者が進行する歯周病に気づかないままである場合、何年か後に、彼らは、ほとんどの歯が突然緩くなったように感じられること、及びほとんど又は全ての歯を抜く必要があるかもしれないことに驚くかもしれない。
【0044】
歯肉炎、(侵襲性及び慢性)歯周炎、全身性疾患の顕在化としての歯周炎、及び壊死性歯周病の、テトラサイクリンを使用する医薬品全身治療は、治療中における、テトラサイクリン耐性細菌株の迅速な出現、及びカンジダ(Candida)等の低感受性の病原体の過剰増殖の発生等の多数の不利益を伴う。テトラサイクリンでの歯周感染の短期間の治療は効果がないことが多い。一般に嫌気性細菌に対する効果の高い抗菌組成物であるペニシリンは、歯周感染において重要な(例えばポルフィロモナス・ジンジバリス(P. gingivalis)のような)細菌種に対して効果がないことが示されている。
【0045】
現在使用されている外科的療法及び非外科的療法についての上述される制限及び不利益は、これらの歯の疾患の効果的な治療について未だ満たされていない要求を明らかにする。
【0046】
本発明による一実施形態は、口腔内感染の治療のための、本明細書で記載されるフェヌグリーク抽出物等の植物材料抽出物を含む組成物の使用に関する。
【0047】
本発明による高度に好ましい一実施形態は、歯肉炎、(侵襲性及び慢性)歯周炎、全身性疾患の顕在化としての歯周炎、及び壊死性歯周病等の歯周病の治療のための、本明細書で記載されるフェヌグリーク抽出物等の植物材料抽出物を含む組成物の使用に関する。
【0048】
口臭は、「モーニングブレス」等の非常に一般的な一時的疾患である。より重度且つ持続的な疾患である慢性的な口臭は、通常、或る特定のタイプの口腔細菌が持続的に過剰に存在することにより引き起こされる。慢性的な口臭は、本明細書で記載される歯周病と関連することが多い。
【0049】
本発明による一実施形態では、本明細書で記載されるフェヌグリーク抽出物等の植物材料抽出物を含む組成物は、口臭の治療のために使用される。好ましい実施形態では該口臭は慢性的な口臭である。
【0050】
咽頭炎
咽頭痛(sore throat)としても知られる咽頭炎は、嚥下に伴う又は伴わない後咽頭における疼痛である。原因のほとんどは、ウイルス性又は(連鎖球菌性咽頭炎等の)細菌性のいずれかによる感染によるものである。
【0051】
本発明による一実施形態では、本明細書で記載されるフェヌグリーク抽出物等の植物材料抽出物を含む組成物は、咽頭炎の治療のために使用される。本発明による別の実施形態では上記咽頭炎は連鎖球菌性咽頭炎である。
【0052】
ウイルス性感染
ウイルス性感染は、ウイルスにより引き起こされる感染を表す。細菌と異なり、ウイルスの複製は、転写因子及び翻訳機構等の宿主の系を用いる宿主細胞に依存する。ウイルスにより引き起こされる最も一般的なヒトの疾患は、風邪、インフルエンザ、ヘルペス(cold sores)及び疣贅を含む。
【0053】
本発明による一実施形態では、本明細書で記載されるフェヌグリーク抽出物等の植物材料抽出物を含む組成物は、風邪、インフルエンザ、ヘルペス及び疣贅等のウイルス性感染の治療において使用される。
【0054】
ヘルペス
ヘルペス(口腔ヘルペス、口唇ヘルペス)は、単純ヘルペスウイルス1型(HSV−1)感染により引き起こされ、口又は唇上に位置する皮膚又は粘膜における有痛性の水疱として顕在化する。
【0055】
利用可能なヘルペスの治療はアシクロビル及びバラシクロビル等の抗ウイルス薬の使用を含み、これらは症状持続期間を低減し治癒を加速する。疾患についての治療法はない。
【0056】
本発明による好ましい一実施形態では、本明細書で記載されるフェヌグリーク抽出物等の植物材料抽出物を含む組成物は、ヘルペスの治療において使用される。
【0057】
風邪
風邪(急性ウイルス性鼻咽頭炎)は、上気道系の穏和なウイルス感染性疾患である。風邪は全てのヒトの疾患の中で最も一般的であり、その病状は典型的には数日間続き、残りの症状である咳はさらに数週間続く。個体間のウイルス伝染は効率的であり、子供、家族及び看病者は高いリスクを有する。風邪の発症率は高く、成人1人が1年の間に複数の感染を被ることがあり、子供ではさらに多くの感染を被ることがある。風邪に関連するウイルスは、ライノウイルス、コロナウイルス、また或る特定のエコーウイルス、パラミキソウイルス及びコクサッキーウイルスも含む。風邪自体は命を脅かすものではないが、免疫系を弱め、肺炎等のさらなる合併症が起こる場合がある。現在まで、風邪について証明された治療法はない。
【0058】
本発明による一実施形態では、本明細書で記載されるフェヌグリーク抽出物等の植物材料抽出物を含む組成物は、風邪の治療において使用される。
【0059】
疣贅
疣贅は、ヒトパピローマウイルス(HPV)感染と関連する、一般的な良性の表皮性病変である。疣贅は、その疾患を引き起こすパピローマウイルスの型、指、足、唇若しくはまぶた近辺等の顔、又は生殖器領域等の身体上における形態、外観において異なるさまざまな病状を表す。疣贅の例は、HPV1、HPV2、HPV4、HPV27及びHPV29により引き起こされる一般的な疣贅(尋常性疣贅)、HPV3、HPV10、HPV28及びHPV49により引き起こされる扁平疣贅、糸状疣贅又は指状疣贅、HPV1により引き起こされる手掌疣贅及び足底疣贅(疣贅、足疣贅(verruca pedis))、モザイク状疣贅、生殖器疣贅(性病疣贅、尖圭コンジローマ、尖圭疣贅)を含む。
【0060】
有痛性であることとは別に、疣贅は、疣贅の効果的な治療が存在せず、利用可能な治療が終了して数ヶ月後又は数年後に再発することが多いという、美容上問題になる場合もある。
【0061】
本発明による好ましい一実施形態では、抽出物又は該抽出物を含む組成物は、指、足、唇若しくはまぶた近辺等の顔、又は生殖器領域に位置する疣贅等の疣贅の治療のために使用される。
【0062】
目と目の周囲の領域とにおける感染
本発明による一実施形態は、目及び/又はまぶた等の目の付属器における感染の治療のための、抽出物又は該抽出物を含む組成物の使用に関する。その病状は、炎症、細菌性感染、ウイルス性感染、又はそれらの組合せを含み得る。
【0063】
炎症
炎症は、機械的傷害、又は細菌性感染、ウイルス性感染若しくは他の生物による感染に起因する組織損傷により引き起こされる防御反応である。炎症反応は、3つの主要な段階を含む。第1段階は、毛細血管の拡張による血流量の増大である。第2段階は、微小血管の構造変化と、血流からの血漿タンパク質の逸脱とである。第3段階は、内皮を介した白血球の移動と、傷害部位及び感染部位における蓄積とである。炎症反応は、炎症性メディエーターの放出から始まる。炎症性メディエーターは組織損傷部位及び感染部位で局所的に作用する溶解性で拡散性の分子であり、より離れた部位では炎症反応の結果として起こる事象に影響を及ぼす。炎症性メディエーターは、例えば細菌性産物若しくは毒素のような外来性のもの、又は傷害を受けた組織細胞、リンパ球、肥満細胞、及び血中タンパク質のような免疫系自身の内部で産生される内在性のものの場合がある。炎症性疾患は、さまざまな組織と関連する。炎症性疾患の例は、喘息、おむつ皮膚炎等の皮膚炎、座瘡、クローン病、(潰瘍性大腸炎等の)炎症性腸疾患等の胃腸管における炎症性疾患である。
【0064】
本発明による一実施形態では、本明細書で記載されるフェヌグリーク抽出物等の植物材料抽出物を含む組成物は、喘息、おむつ皮膚炎等の皮膚炎、座瘡、クローン病、(潰瘍性大腸炎等の)炎症性腸疾患等の胃腸管における炎症性疾患等の炎症を含む疾患の治療において使用される。
【0065】
本発明による好ましい一実施形態では、抽出物又は該抽出物を含む組成物は、細菌性感染と関連することが多い皮膚の一般的な炎症性疾患である座瘡(尋常性座瘡)の治療のために使用される。
【0066】
本発明による別の好ましい実施形態では、抽出物又は該抽出物を含む組成物は、細菌性感染を含む座瘡(尋常性座瘡)の治療のために使用される。
【0067】
本発明による別の好ましい実施形態では、抽出物又は該抽出物を含む組成物は、おむつ皮膚炎(おむつかぶれ)等の皮膚炎の治療のために使用される。
【0068】
創傷
「創傷」という用語は、皮膚又は(口腔粘膜、胃粘膜及び腸粘膜等の)粘膜の病変を表す。創傷は、感染、傷害又は外科処置の結果の場合がある。本発明による創傷は、慢性創傷及び潰瘍も含む。
【0069】
本発明による好ましい一実施形態は、本明細書で記載されるフェヌグリーク抽出物等の植物材料抽出物を含む組成物の使用に関し、外科処置による創傷、切開創傷、貫通創傷、穿刺創傷、擦過創傷、慢性創傷又は潰瘍等の創傷の感染の治療又は予防のために使用される。
【0070】
創傷は、咬みつきにより生ずる場合もある。ヒト及び哺乳動物(たいていはイヌ及びネコだが、リス、スナネズミ(gerbil)、ウサギ、モルモット(guinea pig)及びサルのこともある)による咬みつきはよくあることであり、時々顕著な病的状態及び身体障害を引き起こす。手、四肢及び顔が襲われることが最も多いが、ヒトの咬みつきは乳房及び生殖器を含むことが時々ある。組織外傷に加えて、咬みつく生物の口内菌叢由来の感染が主要な懸念である。
【0071】
本発明による一実施形態では、本明細書で記載されるフェヌグリーク抽出物等の植物材料抽出物を含む組成物は、ヒト又は哺乳動物、好ましくはイヌにより引き起こされる咬みつきの治療のために使用される。
【0072】
トリゴネラ・フォエナム−グラエカム抽出物を含む組成物
本発明による一実施形態では、植物材料抽出物、好ましくはトリゴネラ・フォエナム−グラエカム抽出物は、医薬組成物の調製のために使用される。
【0073】
本発明の抽出物の濃縮物、又は抽出物の画分も、本発明の範囲内である。特に、本質的に全ての溶媒が除去され、抽出物が乾燥粉末として存在する濃縮物が、薬物の調製のために使用される場合がある。抽出物のいくつかの画分は他の画分よりも高い効果を示すので、本発明の或る特定の態様では、医薬組成物の製造のために活性成分を含む画分を使用することが好ましい。
【0074】
トリゴネラ・フォエナム−グラエカム抽出物を含む医薬組成物は、特定の薬物の目的と投与タイプとに応じて、多数の異なる様式で処方される場合がある。好ましい投与タイプに従って組成物を処方することは、十分に当業者の範囲内である。
【0075】
本発明による抽出物を含む薬物は、例えばRemington: The Science and Practice of Pharmacy 1995, edited by E. W. Martin, Mack Publishing Company, 19th edition, Easton, Paで記載されるような、いずれかの従来の手法により調製され得る。
【0076】
薬物は、特定の剤形、目的の投与経路等に従い選択する必要がある、従来から使用されているいずれかの薬学的に許容される添加物等の薬学的に許容される添加物を含む場合がある。例えば薬学的に許容される添加物は、Nema et al, 1997で言及されるいずれかの添加物であり得る。さらに、薬学的に許容される添加物は、FDAの「不活性成分リスト(inactive ingredients list)」に記載のいずれかの許容される添加物である場合があり、このリストは例えばインターネットアドレス http://www.fda.gov/cder/drug/iig/default.htm で入手可能である。
【0077】
局所投与形態
本発明の好ましい一実施形態は、創傷、ヘルペス、疣贅、座瘡、おむつかぶれ等の局所的、表在的及び限定的領域上への局所適用のために処方される医薬組成物を提供することである。
【0078】
上述の実施形態では薬物は、軟膏、ローション、クリーム、入浴用混合物、ゲル、ペースト、乳液(milk)、懸濁液、エアロゾル、スプレー、フィルム、泡、美容液(serum)、スワブ、綿球、パッド、パッチ、粉末、ペースト、リニメント、粘性乳化液、ポリッジ、又は局所投与に適当な別の製剤として処方される場合がある。
【0079】
局所投与のためのかかる組成物は、この投与タイプに適した、キャリア、界面活性剤、保存料、安定剤、緩衝剤、賦形剤及び乳化剤等の生理学的に許容される成分をさらに含む場合がある。局所送達システムに適切な成分は、好ましくは、過剰な又は不可避な刺激又は疼痛をレシピエントにもたらさない成分から選択される。キャリアは希釈剤を含み、医薬成分を溶解し、分散させ、又は分配する媒体を提供する。
【0080】
本発明による薬物は、これらに限定されないが、水性液体基剤、非水性液体基剤、水溶性ゲル、鉱物油基剤、乳化液、軟膏、クリーム、ゲル又はローション、液体中の固体粒子の懸濁液等のキャリアを含む場合がある。
【0081】
薬剤の局所利用性は、キャリア(ゲル、クリーム − 親水性)中への溶解能と、皮膚バリア(すなわち角質層 − 疎水性)への浸透能との2つの対照的な因子に依存するので、独特な疎水性−親水性バランスを必要とする。剤形は、輸送プロセス(ビヒクルへの溶解、及び皮膚を介した拡散)のいずれか又は両方を促進するために、浸透増強剤及び可溶化剤等の添加物の添加を必要とする。アルコール、脂肪アルコール、脂肪酸、モノ−、ジ−又はトリ−グリセリド、グリセロールモノエーテル、シクロデキストリン並びに誘導体、ポリマー、生体接着性化合物(bioadhesives)、テルペン、キレート剤及び界面活性剤等の、薬剤の経皮送達を増大させる添加物が開示されている。かかる添加物を使用することは本発明の範囲内である。
【0082】
経皮送達を増大させるための、上述の方法に限定されないいずれかの方法は、本発明の範囲内である。したがって、本発明による薬物は、イオン性界面活性剤及び/又は非イオン性界面活性剤等の界面活性剤を含み得る。適切な非イオン性界面活性剤は、例えば以下を含む:脂肪アルコールエトキシレート(アルキルポリエチレングリコール);アルキルフェノールポリエチレングリコール;アルキルメルカプタンポリエチレングリコール;脂肪アミンエトキシレート(アルキルアミノポリエチレングリコール);脂肪酸エトキシレート(アシルポリエチレングリコール);ポリプロピレングリコールエトキシレート(プルロニック);脂肪酸アルキロールアミド(脂肪酸アミドポリエチレングリコール);アルキルポリグリコシド、N−アルキル−、N−アルコキシポリヒドロキシ脂肪酸アミド、特にN−メチル−脂肪酸グルカミド、ショ糖エステル;ソルビトールエステル、ソルビトールポリグリコールエーテルのエステル及びレシチン。イオン性界面活性剤は、例えば、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリン酸ナトリウム、ポリオキシエチレン−20−セチルエーテル、ラウレス−9、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)及びジオクチルスルホコハク酸ナトリウムを含む。
【0083】
アルコールは、エタノール、2−プロパノール、ポリエチレングリコール(PEG)、プロピレングリコール、グリセロール、プロパンジオール等のポリオールが挙げられるがこれらに限定されない。
【0084】
局所投与を通じて薬剤送達を増強する方法は本発明で適用される場合があり、トリゴネラ・フォエナム−グラエカム抽出物等の薬物の活性成分の、吸収を増大させること、代謝を最小化させること、及び/又は半減期を延長することのいずれかの手段を含んでいてもよい。かかる手段は、リポソーム、ISCOM、ナノ粒子、ミクロスフェア、ハイドロゲル、オルガノゲル、ポリマー又は他のマイクロカプセル化手法のタイプのトランスポーターの使用を含む。
【0085】
本発明による、局所送達のための薬物は、5重量%〜100重量%のトリゴネラ・フォエナム−グラエカム抽出物、好ましくは50重量%〜100重量%の該抽出物を含み得る。
【0086】
経口投与形態
本発明の別の好ましい実施形態は、洗口剤等の経口投与のために処方された薬物を提供することである。
【0087】
好ましい一実施形態では、薬物は、本発明による抽出物を液体中で希釈すること等により、洗口剤として処方される。
【0088】
液体は、いずれかの有用な液体の場合があるが、液体は水性液体であることが好ましいことが多い。液体は無菌であることがさらに好ましい。無菌性は、例えば濾過、照射殺菌又は加熱のようないずれかの従来の方法により与えられ得る。
【0089】
感染又は感染するリスクの増大を含む上述の臨床的疾患の治療のために、植物材料抽出物、好ましくはトリゴネラ・フォエナム−グラエカム抽出物を含む薬物を供給すること、及びその使用は、本発明の範囲内である。例えば、臨床的疾患は、微生物種による感染又は感染するリスクを有することを含むがこれらに限定されない。一実施形態では、トリゴネラ・フォエナム−グラエカム抽出物は、少なくとも1種類の第2の活性成分と共に同時投与される。好ましくはトリゴネラ・フォエナム−グラエカム抽出物と上記少なくとも1種類の第2の活性成分とは、同じ薬物中に存在するか、又は複数のパーツから成るキット中に供給される場合がある。好ましくは上記第2の活性成分は、抗菌物質、例えば殺菌剤、抗生物質、抗真菌剤、抗寄生生物剤又は抗ウイルス剤である。
【0090】
本発明による一実施形態では、植物材料抽出物、好ましくはトリゴネラ・フォエナム−グラエカム抽出物は練り歯磨きの構成要素である。
【0091】
トリゴネラ・フォエナム−グラエカム抽出物を含む薬物の投与
植物材料抽出物、好ましくはトリゴネラ・フォエナム−グラエカム抽出物を含む経口投与のための薬物は、水等の液体中で希釈される場合がある。該薬物は、5〜100vol/vol%の液体及び水を含む場合がある。
【0092】
本発明によると、(本発明による抽出物等の)組成物の「薬学的な有効投与量」は、治療を必要としている被験者に所望の生物学的効果を導くために必要な量を表す。
【0093】
本発明による薬物は1日に1回以上投与される場合があり、例えば1日に2回〜10回、例えば2回〜7回、例えば2回〜5回、例えば2回〜4回、例えば1日に2回〜3回の範囲で、投与される場合がある。
【0094】
本発明による薬物は、1週間以上、例えば2週間、3週間、4週間、5週間、6週間、7週間、8週間、又は8週間を超える治療期間の間、被験者に投与される場合がある。再発した被験者に対して治療が繰り返され得る。
【0095】
トリゴネラ・フォエナム−グラエカム抽出物を含む殺菌剤/消毒剤
本発明の一態様は、殺菌剤又は消毒剤としての抽出物又は該抽出物を含む組成物の使用に関する。
【0096】
したがって、本発明による一実施形態では、トリゴネラ・フォエナム−グラエカム抽出物は、感染リスクを最小化するための、外科的創傷等の生組織/生皮膚への適用のための殺菌剤/消毒剤として処方される。
【0097】
一実施形態では、植物材料抽出物、好ましくはトリゴネラ・フォエナム−グラエカム抽出物は、せっけん製品に含まれる。
【0098】
さらに好ましい実施形態では、本発明による植物材料抽出物、好ましくはトリゴネラ・フォエナム−グラエカム抽出物は、殺菌剤製品又は消毒剤製品の調製のために使用される。本発明によると、上記製品は、台所器具、冷蔵庫、冷凍庫、台所設備、床、家畜小屋又は食肉処理場の設備等の非生物物体の消毒のために使用される。
【0099】
別の好ましい一実施形態では、植物材料抽出物、好ましくはトリゴネラ・フォエナム−グラエカム抽出物、又は該抽出物を含む組成物は、コンクリート要素又はコンクリート床上の尿の染みの掃除のために使用される。
【0100】
一実施形態では、植物材料抽出物、好ましくはトリゴネラ・フォエナム−グラエカム抽出物、又は該抽出物を含む組成物は、飲料水用の消毒剤として使用される。
【0101】
さらに別の実施形態では、植物材料抽出物、好ましくはトリゴネラ・フォエナム−グラエカム抽出物、又は該抽出物を含む組成物は、レジオネラ(Legionella)に感染した貯水槽の消毒のために使用される。一実施形態では、水はスイミングプールの水である。
【0102】
食品の保存
本発明による抽出物は、挽肉及び鶏肉等の肉のような食品用の保存料として使用されてもよい。一実施形態では、抽出物は、貯蔵前に挽肉と混合される。
【実施例】
【0103】
実施例1
種子抽出物の調製
トリゴネラ・フォエナム−グラエカムの種子500gを、2Lの水中に約24時間浸漬した。予備浸漬の後、種子を30分間加熱し、残った種子を混合物から除去した。抽出物を冷却した。
【0104】
実施例2
疣贅と唇のヘルペスとの治療
実施例1による抽出物を、疣贅と唇のヘルペス(口唇ヘルペス)との治療に使用した。抽出物を、2人の女性患者(18歳及び44歳)における症状の領域に塗布した。症状は、数時間で消失した。抽出物を、足上に局在化した疣贅を患っている男性(44歳)及び女性(48歳)で試験した。針を使用して疣贅を傷つけ、抽出物を症状の領域に局所投与した。両方のケースにおいて患者は、投与のわずか数時間後には、関連する不快感から解放されたと感じた。
【0105】
実施例3
慢性歯周炎の治療
70歳の女性。65歳の時に、慢性歯周炎、関連する口臭、歯肉の出血と診断された。歯の洗浄の他には、患者は全く歯の治療を受けなかった。洗口剤として投与することにより、本発明による抽出物で患者を治療した。治療の2日後には口臭が消失し、治療の2ヶ月後には歯肉の炎症と歯肉の出血とが消失した。
【0106】
実施例4
歯周炎の治療
54歳の男性。歯科医により、口臭を伴う歯周炎と診断された。洗口剤として投与することにより、本発明による抽出物で患者を治療した。治療の数日後には口臭が消失した。数ヶ月後には歯科医により、歯周炎の消失と歯肉の治癒とが確認された。さらなる治療は必要とされなかった。
【0107】
実施例5
足の創傷
54歳の男性。加圧クレオソート処理した木材の破片による、脚の裏側の感染した創傷を、感染領域への局所投与により、本発明による抽出物で治療した。感染は1日で消失した。
【0108】
実施例6
イヌの咬みつき由来の創傷
44歳の男性を、イヌの咬みつきにより生じた創傷について治療した。咬みつきの後創傷は治癒していたが、数日後炎症が現れた。感染した部分を創傷から取り除き、本発明による抽出物を創傷に投与した。創傷の感染に伴う疼痛は直ぐに消失し、創傷は数日で適切に治癒した。
【0109】
実施例7
動物における創傷
1匹のネコと1匹のイヌとにおける感染した創傷を、本発明による抽出物で治療した。イヌを、1日2回、2日間、感染領域(直径200mm)への局所投与により治療した。創傷は適切に治癒した。ネコは重度に感染した創傷(直径約300mm)を患っていた。創傷を、1日2回、3日間の局所投与により治療した。創傷は2日〜3日で完全に治癒した。
【0110】
実施例8
軽度の創傷と掻痒との治療
肛門領域に軽度の創傷と掻痒と患うことが多い44歳の男性を、本発明による抽出物で治療した。症状領域への抽出物の局所投与は、数分で患者を掻痒から明らかにし(reveal)、創傷は約12時間で治癒した。創傷のさらなる治療は必要とされなかった。コルチゾンリニメントの局所投与は、効果がより小さかった。
【0111】
実施例9
咽頭炎の治療
咽頭炎を患っている18歳の女性。疾患の治療は、本発明による抽出物を使用する口腔及び咽頭の洗浄であった。彼女は、症状に伴う不快感から直ぐに解放されたことを報告した。
【0112】
実施例10
ブタの傷(Pig sore)
約100cmの面積の傷を有するブタに対し、水と実施例1による抽出物との1:1混合物を噴霧した。治療の24時間後、傷上に膜ができた。浸出及び感染はなかった。1日1回、4日間の治療の繰り返しの後、傷は治癒した。
【0113】
実施例10
悪臭の除去
実施例1に従い製造された抽出物を、悪臭の除去のために使用することに成功した。ネオプレン製の靴と靴のインナーソールとを、本発明による抽出物の希釈液(水で希釈)中に浸漬し、乾燥した。抽出物の濃縮物を靴及びソールに塗布した。処置後、悪臭の表れはなかった。
【0114】
コンクリート上の尿の染み(イヌの尿)を、クロリンと一般的な家庭用洗浄剤とで洗浄したが、悪臭をうまく除去できなかった。抽出物の希釈液での染みの洗浄は、悪臭を完全に除去した。抽出物を、24時間を超えても効果のある制汗剤として使用することにも成功した。
【0115】
実施例11
挽肉の保存
数滴の本発明による抽出物を50gの挽肉に添加した。処理した肉と、対応する未処理の挽肉試料とを、冷蔵して放置した。2日間の冷蔵後、未処理の肉試料からはひどい悪臭が観察された。処理した肉は、5日間、悪臭はなく新鮮なようであった。6日目に、処理した試料から悪臭が観察された。
【0116】
実施例12
歯周炎に対する臨床的プロトコル
【0117】
研究における登録:
歯周炎の診断基準案を満たす20人の被験者(ボランティア)を、研究において登録する。
【0118】
研究:
研究を、二重盲検プラセボ対照方式で実施する。被験者を、A群及びB群の2群(各群においてn=10)に分割する。被験者に、本発明による抽出物を使用する1日2回の2分間の洗口を含む自己治療の指示をする。治療期間は3ヶ月である。被験者は、治療期間を通して経験した症状のタイミング、タイプ及び重症度に気づいたときには、日記をつける。
【0119】
投与:
A群は、本発明による抽出物を投与される。B群は、プラセボを投与される。
【0120】
研究の評価:
被験者の日記をレビューし研究者による統計的解析に供し、研究の開始時の疾患との関係で症状の重症度を決定する。
【0121】
実施例13
比較用抽出物
トリゴネラ・フォエナム−グラエカムの種子500gを2Lの水中で約30分間加熱し、残った種子を混合物から除去した。抽出物を冷却した。
【0122】
実施例1の抽出物と実施例13の抽出物とを、UV検出及び光散乱によるHPLC分析に供した。
【0123】
抽出物試料を水で5倍希釈し、0.45μmのナイロンフィルターにより濾過した。分析は、10.6mMのギ酸/メタノールを溶離液として(ギ酸は、15分間は98%、30分後には65%までグラジエント、60分後には0%までグラジエント)使用するSynergi Polar−RP 80A(250×4.6mm、4μm、番号16)で実施し、光散乱により検出した。
【0124】
以下の表1は、クロマトグラムの選択したトップ(tops)を開示する。
【0125】
【表1】

【0126】
実施例14
トリゴネラ・フォエナム−グラエカムの種子500gを、2.5Lの水中に約24時間浸漬した。予備浸漬の後、種子を20分間加熱し、残った種子を混合物から除去した。抽出物を冷却した。
【0127】
水性抽出物を最初にセルロースフィルター(0.45μm)により、その後ポリアミド樹脂(Sigma-Aldrich/Supelco製のDPA−6S)により濾過し、例えばポリフェノール性化合物を除去した。これにより、乾燥物質含有量は約14.5mg/mLから約8.5mg/mLまで低減した。
【0128】
抽出物中の残りの成分を、その後、size B Lichroprep RP−18(40μm〜63μm)(Merck)での逆相クロマトグラフィを使用して、6つの画分に分離した。1mLの濃縮植物抽出物を、以下のグラジエント(0分〜1分はHO/AcNを98:2とし、その後1分〜40分で定常勾配を使用してAcNを100%に増加させる)を使用してカラム上に注入した。溶出した成分を、ダイオードアレイ検出(200nm〜600nm)を使用して検出した。図1は210nmでのクロマトグラムを示す。以下の時間間隔(5分〜10分、10分〜15分、15分〜17.5分、17.5分〜21分、21分〜24分、24分〜27分)で6つの画分を収集した。3回の注入の繰り返しからプールした画分を採取し、ロータリーエバポレータを使用して乾燥させ、6つの画分を0.5mLのミリQ水に再溶解させ、濃度において約5倍に濃縮された画分を得た。
【0129】
トリゴネラ・フォエナム−グラエカム由来の6つのHPLC画分と、基礎抽出物とを、
単純ヘルペスウイルス(HSV)2型に対する抗ウイルス活性について分析した。
【0130】
画分をウイルスと混合し(1:1混合物中において、1×10プラーク形成単位)、室温で15分間インキュベーションした。混合物を10倍段階希釈してベロ細胞培養液に添加し、細胞における細胞変性効果によりウイルスの複製をモニタリングした。
【0131】
感染2日後、基礎混合物で処理した培養液中では、ウイルスの複製の5倍の低減が観察された。3番〜6番の画分の効果は観察されなかった。2番の画分では軽度の効果が現れたが、1番の画分はウイルスの複製を約100倍低減した。
【0132】
この実験に基づき、トリゴネラ・フォエナム−グラエカムが抗ウイルス活性を有すること、及びこの活性は1番のHPLC画分に存在することを結論付ける。
【0133】
実施例15
実施例14に従い作製された1番の画分を、ベロ細胞中のHSV−1(Stain Mclntyre)に対する抗ウイルス活性の試験のために使用した。
【0134】
画分をウイルスと混合し(1:1混合物中において、1×10プラーク形成単位)、室温で15分間インキュベーションした。混合物をベロ細胞培養液に添加し、細胞における細胞変性効果によりウイルスの複製をモニタリングした。ブランク試験を実施し、その際その画分又は1番の画分のいずれかを除外した。
【0135】
感染2日後、ウイルスと1番の画分との混合物を含む容器中ではベロ細胞の増殖が観察された。ブランク試験では、ウイルスを添加したが1番の画分は添加しなかった容器中では細胞死が観察されたのに対し、1番の画分を添加したがウイルスは添加しなかった容器中では細胞増殖が観察された。
【0136】
この実験に基づき、1番の画分の内容物は抗ウイルス活性を有すること、及び1番の画分の内容物はベロ細胞に対して毒性を有しないことを結論付ける。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a.トリゴネラ・フォエナム−グラエカムから得られる植物材料と液体との混合物を調製する工程と、
b.前記混合物を少なくとも3時間インキュベーションする工程と、
c.前記混合物を加熱する工程と、
d.混合物から液体抽出物を回収する工程と、
を含むプロセスにより得ることができる抽出物。
【請求項2】
前記植物材料は、植物全体、葉、種子及び根から成る群から選択される、請求項1に記載の抽出物。
【請求項3】
前記植物材料は前記植物の種子である、請求項2に記載の抽出物。
【請求項4】
前記種子は前記植物の乾燥種子である、請求項2に記載の抽出物。
【請求項5】
前記混合物を少なくとも6時間インキュベーションする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の抽出物。
【請求項6】
前記混合物を加熱する工程は煮沸する工程である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の抽出物。
【請求項7】
前記混合物を少なくとも5分間煮沸する、請求項1〜6のいずれか一項に記載の抽出物。
【請求項8】
前記加熱する工程の間に少なくとも1回さらなる液体を添加する、請求項1〜7のいずれか一項に記載の抽出物。
【請求項9】
前記液体は水性である、請求項1〜8のいずれか一項に記載の抽出物。
【請求項10】
前記インキュベーションした混合物を工程cによる加熱処理の前に凍結する、又は前記加熱処理した混合物を凍結する付加的な工程を含む、請求項1〜9のいずれか一項に記載の抽出物。
【請求項11】
前記混合物を少なくとも3時間凍結する、請求項10に記載の抽出物。
【請求項12】
前記付加的な工程は、請求項10又は11で規定される混合物を凍結すること、及び工程1.cを繰り返すことを含む、請求項10に記載の抽出物。
【請求項13】
抽出画分であって、以下のグラジエント(0分〜1分はHO/AcNを98:2とし、その後1分〜40分で定常勾配を使用してAcNを100%に増加させる)を使用してsize B Lichroprep RP−18(40μm〜63μm)(Merck)で請求項1〜12のいずれか一項に記載の抽出物の逆相クロマトグラフィを実施すること、及び5分〜10分の時間間隔で該画分を収集することにより得ることができる、抽出画分。
【請求項14】
溶媒の除去により濃縮されている、請求項1〜13のいずれか一項に記載の抽出物又は抽出画分。
【請求項15】
前記溶媒は、膜濾過、蒸発、沈降、抽出、共沸蒸留、凍結乾燥、噴霧乾燥及びそれらの組合せから成る群から選択される方法により部分的に又は完全に除去されている、請求項14に記載の抽出物。
【請求項16】
請求項1〜15のいずれか一項に記載の抽出物を含む組成物。
【請求項17】
前記組成物は医薬組成物である、請求項16に記載の組成物。
【請求項18】
消毒剤である、請求項16に記載の組成物。
【請求項19】
保存料である、請求項16に記載の組成物。
【請求項20】
炎症性疾患の治療用の医薬組成物の調製のための、請求項1〜15のいずれか一項に記載の抽出物の使用。
【請求項21】
前記炎症性疾患は、おむつ皮膚炎、座瘡、喘息、胃腸管における炎症性疾患とから成る群から選択される、請求項20に記載の使用。
【請求項22】
感染性疾患の治療又は予防用の医薬組成物の調製のための、請求項1〜15のいずれか一項に記載の抽出物の使用。
【請求項23】
前記感染性疾患は単純ヘルペスである、請求項22に記載の使用。
【請求項24】
前記感染性疾患は、感染した創傷、外科処置による創傷、膿痂疹、スタフィロコッカス・アウレウス感染等のスタフィロコッカス感染、口腔内感染、歯周病、目又は目の付属器における感染、風邪、ヘルペス、疣贅、咽頭炎から成る群から選択される、請求項22に記載の使用。
【請求項25】
前記歯周病は、歯肉炎、歯周炎及び口臭から選択される、請求項24に記載の使用。
【請求項26】
前記医薬組成物は、洗口剤、チューインガム、練り歯磨き、バーム、絆創膏、唇用軟膏、スプレー、軟膏、ゲル、カプセル、ドロップ又はタブレットとして処方される、請求項20〜25のいずれか一項に記載の使用。
【請求項27】
皮膚;台所、食肉処理場、トイレ及び家畜小屋等の設備;冷蔵庫若しくは冷凍庫等の台所機器;水;水容器;病人の臭いを有する住居、又はコンクリート要素の消毒用の組成物の調製のための、請求項1〜15のいずれか一項に記載の抽出物の使用。
【請求項28】
肉、鶏肉及びそれらの製品等の食品の保存用の組成物の調製のための、請求項1〜15のいずれか一項に記載の抽出物の使用。
【請求項29】
炎症性疾患の治療又は予防の方法であって、炎症性疾患に罹患した患者に、該疾患を治癒又は軽減するのに十分な量の、請求項1に記載の抽出物を含む量の医薬組成物を投与する、治療又は予防の方法。
【請求項30】
前記炎症性疾患は、おむつ皮膚炎、座瘡、喘息、又は胃腸管における炎症性疾患から選択される、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
感染性疾患の治療又は予防の方法であって、感染に罹患した個人に、該疾患を治癒又は軽減するのに十分な量の請求項1に記載の抽出物を含む量の医薬組成物を投与する、治療又は予防の方法。
【請求項32】
前記感染性疾患は、感染した創傷、外科処置による創傷、膿痂疹、スタフィロコッカス・アウレウス感染等のスタフィロコッカス感染、口腔内感染、歯周病、目又は目の付属器における感染、風邪、ヘルペス、単純ヘルペス、疣贅、咽頭炎から成る群から選択される、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記医薬組成物は、洗口剤、チューインガム、練り歯磨き、バーム、絆創膏、唇用軟膏、スプレー、軟膏、ゲル、カプセル、ドロップ又はタブレットとして処方される、請求項29又は31に記載の方法。
【請求項34】
消毒方法であって、皮膚;台所、食肉処理場、トイレ及び家畜小屋等の設備;冷蔵庫、冷凍庫等の台所機器;水;水容器;又はコンクリート要素に、感染のリスクを低減するのに十分な量の請求項1に記載の抽出物を含む消毒剤を塗布する、消毒方法。
【請求項35】
食品の保存方法であって、該食品の劣化を遅らせるのに十分な量の、請求項1に記載の抽出物を含む保存料で該食品を処理する、保存方法。

【図1】
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【公表番号】特表2010−527326(P2010−527326A)
【公表日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−502420(P2010−502420)
【出願日】平成20年4月14日(2008.4.14)
【国際出願番号】PCT/DK2008/050086
【国際公開番号】WO2008/125120
【国際公開日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【出願人】(509278623)ヴィ−バイオテック ホールディング エーピーエス (1)
【Fターム(参考)】