説明

トリシンアミノ酸誘導体並びにそれを含む抗ウイルス剤及び抗癌剤

【課題】トリシンよりも高い細胞浸透性、水溶性及び血中移行性を有することにより、高い組織移行性、生物学的利用能を示す新規誘導体、並びにトリシンまたは新規誘導体を含む抗ウイルス剤及び抗癌剤を提供する。
【解決手段】式1:


で表される化合物(式中、Aは任意のアミノ酸残基であり、Bは任意のアミノ酸残基であり、AとBは同じ又は異なっても良く、n=0〜4である。)。該トリシンアミノ酸誘導体は、トリシンと比較して、高い細胞浸透性、水溶性及び血中移行性を有し、体内でトリシンに加水分解され、トリシンの有する制癌作用、抗ウイルス作用を発揮する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はトリシンより高い細胞浸透性、水溶性及び血中移行性を有するトリシンアミノ酸誘導体及びそれを含む抗ウイルス剤及び抗腫瘍剤に関する。
【背景技術】
【0002】
フラボノイドの1種であるトリシン(4’,5,7−トリヒドロキシ−3’,5’−ジメトキシフラボン)(tricin(4’,5,7−trihydroxy−3’,5’−dimethoxyflavone))は、イネ科の植物に含まれ、抗酸化作用、抗癌作用、抗ウイルス作用などさまざまな生理活性を有することが確認されており、近年非常に注目されている。
例えば、非特許文献1等には、コムギの葉や穀類のヒエの子実等から単離されたトリシンが抗酸化作用を有する物質であることが報告されている。
また、米ぬか由来のトリシンが、シクロオキシゲナーゼを阻害し、小腸の発ガンを抑制すること(非特許文献2)、ヒト由来の大腸癌及び乳癌細胞に対しインビトロにおいて抗癌作用を示すこと(非特許文献3)、マウスのP388白血病モデルにおいて抗癌作用を示すこと(非特許文献4)等が報告されている。
さらに、クマザサのエキスに含まれるトリシンが抗ウイルス作用を示すことが報告されている(特許文献1)。
【0003】
インビトロの検討において多くの有用な生理活性が確認され、その臨床応用が期待される一方で、トリシンは非常に疎水性が高く、ジメチルスルホキシド(DMSO)に溶解する必要があることから、インビボにおける検討、ひいては臨床試験における患者への投与のための薬剤調製において、その使用に制限があることが予測される。
【0004】
またインビトロの検討においてトリシンの細胞浸透性は低く、このためインビボにおける組織移行性、生物学的利用能が低いことが予測される。また抗ウイルス剤として有効に作用させるためには薬剤の宿主細胞内への浸透性が要求される。したがって、高い細胞浸透性、水溶性及び血中移行性を有するプロドラッグの開発が期待されている。
【0005】
一般にフラボノイド類が経口投与された際の薬物動態については明らかでない点も多い。フラボノイドは植物中では、各種の糖が結合した配糖体として存在している。この配糖体は消化管内で腸内細菌により加水分解され、糖が取れたアグリコンが大腸で吸収されるという説が本来主流であった。しかしヒト小腸モデルであるCaco−2細胞を用い、フラボノイドの一種であるクエルセチン(quercetin)について検討を行った結果、アグリコンはグルコース配糖体に比べ10倍以上吸収されやすいことが示され、細胞浸透性が高いフラボノイド誘導体が小腸においてより効率よく吸収される可能性が示唆されている(非特許文献5)。
また、クエルセチンのアミノ酸誘導体がインビトロにおいて高い水溶性、細胞浸透性を示すことが報告されている(非特許文献6)
【0006】
本発明者は、アミノ酸が親水性基であるカルボキシル基を有すること、アミノ酸誘導体は小腸において能動的に吸収されること、また吸収された後、血中においてエステラーゼでアミノ酸が切断されても加水分解されたアミノ酸自身は無害であることに着目し、トリシンの高い細胞浸透性、水溶性及び血中移行性を有するプロドラッグとして、新規化合物であるトリシンのアミノ酸誘導体を開発した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】WO/2008/123102
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】J. Agric. Food Chem. 47: 4500-4505 (1999)
【非特許文献2】Molecular Cancer Therapeutics, 4: 1287-1292 (2005).
【非特許文献3】Cancer Epidemiol Biomarkers Prev,9:1163-70 (2000).
【非特許文献4】J Nat Prod. 44: 530-5(1981).
【非特許文献5】化学と生物 39: 213(2001).
【非特許文献6】Bioorg. Med. Lett. 17: 1164-1171(2009).
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、トリシンアミノ酸誘導体を提供することである。
本発明の他の目的は、高い細胞浸透性、水溶性及び血中移行性を有するトリシンアミノ酸誘導体を提供することである。
本発明の他の目的は、トリシンアミノ酸誘導体を含む抗ウイルス剤及び抗癌剤を提供することである。
本発明の他の目的は、トリシン又はトリシンアミノ酸誘導体を含む子宮頚癌治療用の抗癌剤を提供することである。
本発明の他の目的は、トリシン又はトリシンアミノ酸誘導体と、ガンシクロビル、アシクロビル、シドフォビル、ファムシクロビル、フォミビルセン、ホスカルネット、イドクスウリジン、ペンシクロビル、トリフルリジン、バラシクロビル、バルガンシクロビル及びビダラビンから選択される少なくとも一種とを含む、抗ウイルス剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成すべく、本発明は以下の構成を採用した。
(1)
式1:

で表される化合物(式中、Aは任意のアミノ酸残基であり、Bは任意のアミノ酸残基であり、AとBは同じ又は異なっても良く、n=0〜4である。)。
(2)Aが任意のアミノ酸残基であり、n=0又は1である上記(1)記載の化合物。
(3)Aがグリシン、アラニン、バリン、フェニルアラニン、アスパラギン酸及びグルタミン酸からなる群から選択されるアミノ酸の残基である上記(1)又は(2)記載の化合物。
(4)Aがアラニン残基であり、Bが任意のアミノ酸残基である上記(1)記載の化合物。
(5)Aがアラニン残基であり、Bがアスパラギン酸又はグルタミン酸残基である上記(1)記載の化合物。
(6)4’−O−CO−(Gly−OH)−トリシン、4’−O−CO−(Ala−OH)−トリシン、4’−O−CO−(Val−OH)−トリシン、4’−O−CO−(Phe−OH)−トリシン、4’−O−CO−(Asp−OH)−トリシン、4’−O−CO−(Gln−OH)−トリシン、4’−O−CO−(Ala−Asp−OH)−トリシン及び4’−O−CO−(Ala−Glu−OH)−トリシンからなる群から選択される上記(1)記載の化合物。
(7)上記(1)〜(6)のいずれか一に記載の化合物を含む抗ウイルス剤。
(8)対象のウイルスが、ヘルペスウイルス、サイトメガロウイルスあるいはインフルエンザウイルスである、上記7記載の抗ウイルス剤。
(9)対象のウイルスが、オセルタミビル耐性インフルエンザウイルス株、アマンタジン耐性インフルエンザウイルス株、ガンシクロビル耐性ヒトサイトメガロウイルスからなる群より選択されるウイルスである、上記(7)記載の抗ウイルス剤。
(10)経口投与用である上記7〜9のいずれか一に記載の抗ウイルス剤。
(11)上記(1)〜(6)のいずれか一に記載の化合物を含む抗癌剤。
(12)対象の癌が大腸癌または子宮頸癌である、上記(11)記載の抗癌剤。
(13)経口投与用である、上記(11)または(12)記載の抗癌剤。
(14)(A)トリシン又はそのアミノ酸誘導体、及び(B)ガンシクロビル、アシクロビル、シドフォビル、ファムシクロビル、フォミビルセン、ホスカルネット、イドクスウリジン、ペンシクロビル、トリフルリジン、バラシクロビル、バルガンシクロビル及びビダラビンからなる群から選択される少なくとも一種の化合物、を有効成分として含むことを特徴とする、抗ウイルス剤。
(15)前記(B)成分がガンシクロビルである、上記(14)に記載の抗ウイルス剤。
(16)前記ウイルスがヘルペスウイルスである、上記(14)または(15)に記載の抗ウイルス剤。
(17)前記ウイルスがサイトメガロウイルスである、上記(14)〜(16)のいずれかに記載の抗ウイルス剤。
(18)前記ウイルスが、ヒトサイトメガロウイルスである上記(14)〜(17)のいずれかに記載の抗ウイルス剤。
(19)前記(A)成分と(B)成分とのモル比が100:1〜1000:1((A)成分:(B)成分)の範囲内である、上記(14)〜(18)のいずれかに記載の抗ウイルス剤。
【発明の効果】
【0011】
本発明のトリシンアミノ酸誘導体は、トリシンよりも高い細胞浸透性、水溶性及び血中移行性を有するため、高い組織移行性、生物学的利用能を示す。また本発明のトリシンアミノ酸誘導体は経口投与によりトリシンの高い血中移行性を示すが、かなり高濃度で投与しても毒性が見られない。
以上のことより、トリシンの有する制癌作用、抗ウイルス作用に基づいて、関連する疾患の予防や治療に用いることができる。
また、本発明のトリシン又はトリシンアミノ酸誘導体並びにガンシクロビル、アシクロビル、シドフォビル、ファムシクロビル、フォミビルセン、ホスカルネット、イドクスウリジン、ペンシクロビル、トリフルリジン、バラシクロビル、バルガンシクロビル及びビダラビンからなる群から選択される少なくとも一種を含む抗ウイルス剤は、トリシンのみを有効成分とする抗ウイルス剤に比べて著しく高い抗ウイルス作用を有する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】トリシン及びトリシンアミノ酸誘導体の細胞浸透性試験の結果を示す。
【図2】雄性ラットにおけるトリシン誘導体の単回経口投与による血漿中トリシン濃度の推移を表す。
【図3】トリシン誘導体投与前の代表的なクロマトグラムを表す。Aは動物番号101、B:動物番号301を表す。
【図4】トリシン誘導体投与後30分の代表的なクロマトグラムを表す。Aは動物番号101、B:動物番号301(5倍希釈サンプル使用)を表す。
【図5】トリシン誘導体投与後2時間の代表的なクロマトグラムを表す。Aは動物番号101、B:動物番号301(2倍希釈サンプル使用)を表す。
【図6】トリシン誘導体投与後4時間の代表的なクロマトグラムを表す。Aは動物番号101(3倍希釈サンプル使用)、B:動物番号301(3倍希釈サンプル使用)を表す。
【図7】トリシン誘導体投与後8時間の代表的なクロマトグラムを表す。Aは動物番号101、B:動物番号301(3倍希釈サンプル使用)を表す。
【図8】TIG−3細胞(胎児肺繊維芽細胞)(正常細胞、コントロール)の増殖に対する、トリシンの抑制効果を表す。
【図9】CA細胞の増殖に対する、トリシンの抑制効果を表す。
【図10】CaSki細胞の増殖に対する、トリシンの抑制効果を表す。
【図11】HeLa細胞の増殖に対する、トリシンの抑制効果を表す。
【図12】SiHa細胞の増殖に対する、トリシンの抑制効果を表す。
【図13】ガンシクロビルの、コントロールに対するウイルス力価(%)を示す。
【図14】トリシン及びガンシクロビルを用いた場合、並びにトリシンのみを用いた場合の、コントロールに対するウイルス力価(%)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
<<トリシンアミノ酸誘導体>>
本発明の第一の態様は、トリシンの4’位OHにカルボキシル基を介して一または複数のアミノ酸が結合している点に特徴を有するトリシンアミノ酸誘導体である。
本発明の一般式中のAまたはBで表されるアミノ酸残基を与えるアミノ酸の例としては、アラニン(Ala)、アルギニン(Arg)、アスパラギン(Asn)、アスパラギン酸(Asp)、システイン(Cys)、グルタミン(Gln)、グルタミン酸(Glu)、グリシン(Gly)、ヒスチジン(His)、イソロイシン(Ile)、ロイシン(Leu)、リシン(Lys)、メチオニン(Met)、フェニルアラニン(Phe)、プロリン(Pro)、セリン(Ser)、スレオニン(Thr)、トリプトファン(Trp)、チロシン(Tyr)、バリン(Val)などの天然アミノ酸が挙げられる。
より好ましくは、アミノ酸はグリシン、アラニン、バリン、セリン、フェニルアラニン、チロシン、アスパラギン酸及びグルタミン酸からなる群から選択される。
さらに好ましくは、アミノ酸はグリシン、アラニン、バリン、フェニルアラニン、アスパラギン酸及びグルタミン酸からなる群から選択される。
また、上記アミノ酸はL体、D体のどちらであっても良いが、L体であることが好ましい。
【0014】
本発明において「アミノ酸残基」とは

のように表されるアミノ酸から誘導される2価の基を意味する。
ここでRはアミノ酸の側鎖であり、例えばアラニンの場合RはCH3であり、アスパラギン酸の場合RはCH2COOHとなる。
【0015】
式1の

部分において、Aとn個のBはペプチド結合しており、これはより具体的には

と表される。R1及びR2はアミノ酸側鎖を表す。
【0016】
−A(B)nOHは、例えば、n=1の場合、

n=2の場合


と表される。
【0017】
(合成方法)
本発明のトリシンアミノ酸誘導体は、トリシンを原料として、上述したアミノ酸を様々な公知の手法で結合することにより製造することができる。
例えば、原料のアミノ酸のカルボキシル基を予めエステル化等により保護し、塩基存在下、ビス(4−ニトロフェニル)カーボネート等の試薬を用いて、トリシンの4’位の−OH基と反応させてもよい。アミノ酸の保護基はその後適切に脱保護を行えばよい。
なお、2以上のアミノ酸が接合した誘導体を作成する場合には、アミノ酸を1つずつ順にトリシンに結合して製造しても良く、あるいは、あらかじめ複数のアミノ酸が結合したものを作成してからトリシンに結合しても良い。
【0018】
(細胞浸透性)
MDCK細胞(イヌ腎臓尿細管上皮細胞由来の細胞株)は単層に培養するとタイトジャンクションを形成し、塩や水を能動的に輸送する。受動拡散で吸収される薬物のMDCK細胞膜透過性は、ヒトでの消化管吸収率との相関性が認められている。そこでトリシン誘導体のMDCK細胞における細胞浸透性を検討した。
様々なトリシンアミノ酸誘導体について試験した結果、いずれもトリシンより高い細胞浸透性を示した。
【0019】
(血中移行性)
トリシンアミノ酸誘導体のインビボにおける動態、特に経口投与した場合の血中移行性を検討するため、トリシン誘導体を経口で投与し、所定時間経過後採血して得られた血漿中のトリシン濃度を測定した。
トリシンを経口投与した場合には、トリシンの血中への移行は殆ど見られなかったが、トリシンアミノ酸誘導体を経口投与した試験では、最高で4448ng/mLのトリシンが検出され、血中への移行性がトリシンに比べてはるかに高いことが見出された。
トリシンアミノ酸誘導体は体内に取り込まれた後、体内でアミノ酸部分が加水分解を受けてトリシンに変化し、血中に移行していると考えられる。
細胞浸透性、血中移行性の結果から、本発明のトリシンアミノ酸誘導体は、トリシンに比べてより高い組織移行性及びより高い生物学的利用能を示すことが明らかである。
【0020】
(毒性試験)
トリシンアミノ酸誘導体を経口投与した場合の血中へのトリシンの移行性が、トリシンを投与した場合に比べてはるかに高いことから、その安全性を確認するため毒性試験を行った。その結果、雄性マウスにトリシン誘導体を単回経口投与した場合、2000mg/kgという高用量群においても、異常知見は見られなかった。また雄性マウスにトリシン誘導体を14日連続経口投与した場合の無影響量は300mg/kg/dayであり、トリシン誘導体はトリシンと同様安全な薬剤であることが示唆された。
【0021】
(抗ウイルス剤)
トリシンは、WO/2008/123102に記載されているとおり、ヘルペスウイルス、サイトメガロウイルス及びインフルエンザウイルス等に対する抗ウイルス作用を示す。
一方、本発明のトリシンアミノ酸誘導体は、高い細胞浸透性、水溶性及び血中移行性を示し、トリシンの高い血中濃度を示す。従って、本発明のトリシンアミノ酸誘導体は、抗ウイルス剤として用いることができる。
本発明の抗ウイルス剤の投与量は、用法、患者の年齢、性別、疾患の程度、その他の条件により適宜選択できる。通常、トリシンアミノ酸誘導体を1〜2000mg/kg/日程度、好ましくは5〜1000mg/kg/日程度、さらに好ましくは10〜600mg/kg/日程度の範囲となる量を目安とするのがよい。これら本発明の抗ウイルス剤は1日に1回又は2〜4回程度に分けて投与することができる。
【0022】
本発明において「ウイルス」とは、動物ウイルス、昆虫ウイルス、植物ウイルス、細菌ウイルス(バクテリオファージ)を含み、特にヒトを含む哺乳動物、鳥類等を含む動植物に対して好ましくない影響を及ぼすウイルスを意味する
本発明の抗ウイルス剤が特に有効なウイルスとしては、ヘルペスウイルス、インフルエンザウイルスが挙げられ、とりわけ、サイトメガロウイルス、特にヒトサイトメガロウイルス、サルサイトメガロウイルス、マウスサイトメガロウイルス等のサイトメガロウイルス;インフルエンザウイルスA、インフルエンザウイルスB、インフルエンザウイルスC等のヒトインフルエンザウイルスやトリインフルエンザウイルス等が挙げられる。
【0023】
本発明の抗ウイルス剤は、ヒトはもとより、ヒト以外の哺乳類、鳥類、魚貝類、甲殻類、昆虫類、両棲類、爬虫類等用の抗ウイルス剤としても有効である。従って本発明の抗ウイルス剤は、これらの動物用の抗ウイルス剤(例えば、ペット用医薬、動物用飼料、ペットフード等)として使用することができる。さらに本発明の抗ウイルス剤は、動物以外に、各種植物に対する抗ウイルス剤としても有用であり、また、防腐剤としても有用である。
【0024】
本発明の抗ウイルス剤は、各種のウイルス、特にヘルペスウイルス、とりわけ、サイトメガロウイルス、特にヒトサイトメガロウイルス;インフルエンザウイルス、特にヒトインフルエンザウイルスA、インフルエンザウイルスB、インフルエンザウイルスCやトリインフルエンザウイルスに対して高い抗ウイルス活性を有する。
本発明の抗ウイルス剤は、細胞浸透性が高く、血中移行性も高く、更に細胞毒性が低いという優れた利点に加え、耐性ウイルスに対しても優れた抗ウイルス活性を有する。
【0025】
(抗癌剤)
トリシンは、シクロオキシゲナーゼを阻害し、小腸の発ガンを抑制すること(Molecular Cancer Therapeutics, 4: 1287-1292 (2005))、ヒト由来の大腸癌及び乳癌細胞に対しインビトロにおいて抗癌作用を示すこと(Cancer Epidemiol Biomarkers Prev,9:1163-70 (2000))、マウスのP388白血病モデルにおいて抗癌作用を示すこと(J Nat Prod. 44: 530-5(1981))等が報告されている。また、トリシンは、アゾキシメタン及び硫酸デキストラン誘導性の結腸癌に有効であること報告されている(Cancer Prev Res., 2(12), 1031-1038(2009))。
また、実施例において示したとおり、トリシンは子宮頚癌細胞株の増殖を抑制することから、子宮頚癌治療用抗癌剤である。
本発明のトリシンアミノ酸誘導体は、高い細胞浸透性、水溶性及び血中移行性を有し、体内でトリシンに変換されることから、抗癌剤として用いることができる。
【0026】
本発明の抗癌剤の投与量は、用法、患者の年齢、性別、疾患の程度、その他の条件により適宜選択できる。通常、トリシンアミノ酸誘導体を1〜2000mg/kg/日程度、好ましくは5〜1000mg/kg/日程度、さらに好ましくは10〜600mg/kg/日程度の範囲となる量を目安とするのがよい。これら本発明の抗癌剤は1日に1回又は2〜4回程度に分けて投与することができる。
【0027】
本発明の抗癌剤を投与することにより治療ないしその症状を軽減できる癌としては、特に制限はなく、例えば、大腸癌、小腸癌、食道癌、胃癌、肝臓癌、胆のう・胆管癌、膵臓癌、結腸癌、直腸癌、頭頚部癌、肺癌、乳癌、子宮頚癌、卵巣癌、膀胱癌、前立腺癌、睾丸腫瘍、骨・軟部肉腫、皮膚癌、悪性リンパ腫、急性白血病、脳腫瘍、等が挙げられる。
【0028】
本発明の抗ウイルス剤及び抗癌剤は、ヒトはもとより、ヒト以外の哺乳類、鳥類、魚類、爬虫類等用の抗癌剤としても有効である。従って本発明の抗癌剤は、これらの動物用の抗癌剤(例えば、ペット用医薬、ペットフード等)として使用することができる。
【0029】
本発明の抗ウイルス剤または抗癌剤の剤型は、治療目的に応じて適宜選択できる。具体的には、錠剤、丸剤、散剤、液剤、懸濁剤、乳剤、顆粒剤、カプセル剤、軟膏等が例示できる。ここで用いられる製剤担体としては、通常の薬剤に汎用される各種のもの、例えば充填剤、増量剤、結合剤、崩壊剤、界面活性剤、滑沢剤等の希釈剤ないし賦形剤等を例示できる。
【0030】
経口投与形態としては錠剤、丸剤、粉剤、液剤、チューインガム、飴、チョコレート、パン、クッキー、煎餅、ビスケット、そば、うどん、各種ドリンク剤、ゼリー、みそ汁、スープ、ポタージュ等の食品形態が、非経口投与形態としては、注射剤、局所投与剤(クリーム、軟膏等)、座薬等が挙げられる。局所投与剤の剤型の例としては、本発明の抗癌剤を、天然繊維又は合成繊維製のガーゼ等の担体に含浸させたもの、口紅等の化粧品に含有させたもの等が挙げられる。
【0031】
錠剤の形態に成形するに際しては、担体として例えば、乳糖、白糖、塩化ナトリウム、ブドウ糖、尿素、デンプン、炭酸カルシウム、カオリン、結晶セルロース、ケイ酸等の賦形剤、水、エタノール、単シロツプ、ブドウ糖液、デンプン液、ゼラチン溶液、カルボキシメチルセルロース、セラツク、メチルセルロース、リン酸カリウム、ポリビニルピロリドン等の結合剤、乾燥デンプン、アルギン酸ナトリウム、カンテン末、ラミナラン末、炭酸水素ナトリウム、炭酸カルシウム、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類、ラウリル硫酸ナトリウム、ステアリン酸モノグリセリド、デンプン、乳糖等の崩壊剤、白糖、ステアリン酸、カカオバター、水素添加油等の崩壊抑制剤、第4級アンモニウム塩、ラウリル硫酸ナトリウム等の吸収促進剤、グリセリン、デンプン等の保湿剤、デンプン、乳糖、カオリン、ベントナイト、コロイド状ケイ酸等の吸着剤、精製タルク、ステアリン酸塩等の滑沢剤等を使用できる。更に錠剤は必要に応じ通常の剤皮を施した錠剤、例えば、糖衣錠、ゼラチン被包錠、腸溶被錠、フィルムコーティング錠、二重錠、多層錠等とすることができる。
【0032】
丸剤の形態に成形するに際しては、担体として例えば、ブドウ糖、乳糖、デンプン、カカオ脂、硬化植物油、カオリン、タルク等の賦形剤、アラビアゴム末、トラガント末、ゼラチン等の結合剤、ラミナラン、カンテン等の崩壊剤等を使用できる。
カプセル剤は本発明の有効成分であるトリシンアミノ酸誘導体を上記で例示した各種の担体と混合し、硬質ゼラチンカプセル、軟質カプセル等に充填して調製される。
【0033】
本発明の抗ウイルス剤、抗癌剤中に含まれるトリシンアミノ酸誘導体の量は特に限定されず、適宜選択すればよいが、例えば、0.5〜50質量%、好ましくは1〜8質量%程度とするのがよい。
【0034】
本発明の抗ウイルス剤、抗癌剤は経口投与、非経口投与いずれでもよく、投与方法は、各製剤形態、患者の年齢、性別、患者の症状の程度、その他の条件に応じて決定される。例えば、錠剤、丸剤、散剤、液剤、懸濁剤、乳剤、顆粒剤及びカプセル剤は経口投与され、液剤は注射剤として非経口投与され、軟膏等は局所投与される。
【0035】
本発明の種々の剤型の製造には、必要に応じて着色剤、保存剤、香料、風味剤、甘味剤等や他の医薬品を配合してもよい。また、通常の医薬組成物、化粧品、皮膚用組成物等に使用される油性成分等の基材成分、保湿剤、防腐剤、安定化剤、創傷治癒剤、界面活性剤等を使用することができる。抗癌剤に水を使用する場合、水道水、天然水、精製水等、特に限定されないが、一般にイオン交換水等の高純度の水が好ましい。
【0036】
油性成分としては、スクワラン、牛脂、豚脂、馬油、ラノリン、蜜蝋等の動物性油、ユーカリ油、オリーブ油、グレープシード油、パーム油、ホホバ油、胚芽油(例えば、米胚芽油)等の植物性油、流動パラフィン、高級脂肪酸エステル(例えば、パルミチン酸オクチル、パルミチン酸イソプロピル、ミリスチン酸オクチルドデシル)、シリコーン油等の合成油、半合成油が挙げられる。ユーカリ油は刺激緩和効果があり好ましい。
【0037】
油性成分は、皮膚の保護、エモリエント性付与効果(皮膚表面を薄膜で覆い、乾燥を防ぐと共に、柔軟性、弾力性を与える効果)、さっぱり感等の要求性能に合わせて適宜組み合わせて用いられる。スクワラン、オリーブ油及びミリスチン酸オクチルドデシルの組合せは好ましい例の一つである。
【0038】
各剤形の硬さ、流動性を調節するために、ステアリン酸、ステアリルアルコール、ベヘニン酸、セタノール、ワセリン等の固体油が用いられ、好ましくはステアリン酸とセタノールが組み合わせて用いられる。
【0039】
<<抗ウイルス剤(併用剤)>>
本発明の第二の態様は、(A)トリシン又はそのアミノ酸誘導体、並びに(B)ガンシクロビル、アシクロビル、シドフォビル、ファムシクロビル、フォミビルセン、ホスカルネット、イドクスウリジン、ペンシクロビル、トリフルリジン、バラシクロビル、バルガンシクロビル及びビダラビンから選択される少なくとも一種を併用して用いることを特徴とする抗ウイルス剤(以下、抗ウイルス剤(併用剤)ということがある。)である。
【0040】
本発明において「ウイルス」とは、動物ウイルス、昆虫ウイルス、植物ウイルス、細菌ウイルス(バクテリオファージ)を含み、特にヒトを含む哺乳動物、鳥類等を含む動植物に対して好ましくない影響を及ぼすウイルスを意味する。
【0041】
本発明の抗ウイルス剤(併用剤)は、ヒトはもとより、ヒト以外の哺乳類、鳥類、魚貝類、甲殻類、昆虫類、両棲類、爬虫類等用の抗ウイルス剤としても有効である。従って本発明の抗ウイルス剤は、これらの動物用の抗ウイルス剤(例えば、ペット用医薬、動物用飼料、ペットフード等)として使用することができる。さらに本発明の抗ウイルス剤は、動物以外に、各種植物に対する抗ウイルス剤としても有用であり、また、防腐剤としても有用である。
【0042】
本発明の抗ウイルス剤(併用剤)が特に有効なウイルスとしては、ヘルペスウイルスが挙げられ、特にヒトサイトメガロウイルス(HCMV)、サルサイトメガロウイルス、マウスサイトメガロウイルス等のサイトメガロウイルスが挙げられる。これらの中でも、特にヒトサイトメガロウイルスに対して本発明の抗ウイルス剤は有効に作用する。
【0043】
<(A)成分>
本発明の抗ウイルス剤(併用剤)における有効成分は4’,5,7−トリヒドロキシ−3’,5’−ジメトキシフラボン(トリシン)又はそのアミノ酸誘導体である。トリシンは隈笹から抽出されるが、合成品や他の源から採取されたものでも良いことはいうまでもない。例えば、隈笹以外の植物、特に、イネ科に属する多くの植物、例えば、イネ(米)、コムギ(小麦)、トウモロコシ、オオムギ、ライムギ、サトウキビ、タケ、ススキ、パンパスグラス、アシ(葦、ヨシともいう)等のカヤ類の葉や茎類にも4’,5,7−トリヒドロキシ−3’,5’−ジメトキシフラボン(トリシン)が多量に含まれており抽出することができる。具体的な植物名は以下のとおりである。
イネ、コムギ、オオムギ、カラスムギ、ライムギ、キビ、アワ、ヒエ、トウモロコシ、シコクビエ、モロコシ、タケ、マコモ、サトウキビ、ハトムギ、ヨシ、ススキ、ササ、ダンチク、シロガネヨシ、シバ。
【0044】
上記植物の葉、茎等を適切な溶媒を使用して抽出し、HPLC等の分離精製手段を用いてトリシンを分離精製できる。例えば、水抽出物を濃縮し、固形物をアルコール、含水アルコール(例えば、メタノール、エタノール、含水メタノール、含水エタノール)抽出し、固形分を水に溶解し、酢酸エチルとの分配等により精製できる。
【0045】
トリシンのアミノ酸誘導体としては、上記第一の態様で記載した一般式1で表されるトリシンアミノ酸誘導体である。
【0046】
<(B)成分>
本発明の抗ウイルス剤(併用剤)は、有効成分として、前記(A)成分と共に、ガンシクロビル、アシクロビル、シドフォビル、ファムシクロビル、フォミビルセン、ホスカルネット、イドクスウリジン、ペンシクロビル、トリフルリジン、バラシクロビル、バルガンシクロビル及びビダラビンから選択される少なくとも一種を含む。これらの中でも、ガンシクロビルが特に好ましい。
【0047】
本発明の抗ウイルス剤(併用剤)は、(A)成分と(B)成分とを組み合わせることにより、トリシンを有効成分として用いる従来の抗ウイルス剤よりも著しく優れた抗ウイルス作用を発揮することが出来る。
また、主にガンシクロビルのみを有効成分とする従来の抗ウイルス剤では、ガンシクロビルを多量に使用することになるが、これは耐性ウイルスの出現や副作用(強い細胞毒性)といった問題につながる。一方、本発明の抗ウイルス剤(併用剤)ではトリシンを併用するため細胞毒性が弱く、耐性株の問題も生じにくい。さらにはガンシクロビルと比較しても同等以上の優れた抗ウイルス活性を有する。
【0048】
(A)成分と(B)成分との含有比(モル比)は本発明の効果を奏する限り特に制限されるものではないが、1:1〜1000:1((A)成分:(B)成分)、更に好ましくは10:1〜1000:1、より好ましくは100:1〜1000:1である。含有比が上記範囲内であると、(A)成分と(B)成分とが相乗効果を発揮し、それぞれの成分が有する高ウイルス作用から予想されるよりもはるかに優れた抗ウイルス作用を発揮することが出来る。
本発明の抗ウイルス剤の投与量は、用法、患者の年齢、性別、疾患の程度、その他の条件により適宜選択できる。例えば、静脈注射の場合には1日当たり、(B)成分の投与量が約0.1〜10mg程度となるように投与すればよく、経口投与の場合には1日当たり(B)成分が0.1〜50mg程度となるように投与すればよい。また、必要に応じて1日に1回又は2〜6回程度に分けて投与することが出来る。また、(A)成分と(B)成分は、それぞれを同時あるいは連続的に投与してもよい。
ガンシクロビルを含む従来の抗ウイルス剤では、例えば、成人に対し、静脈注射では1日当たり約10〜1000mg、経口投与では1日当たり約10〜5000mg程度の量のガンシクロビルを投与していた。本発明は、トリシンと併用することにより(B)成分の量を従来のガンシクロビル投与量の約100〜1000分の1に抑えることができ、細胞毒性の問題が生じにくく安全性に優れる。
【0049】
(A)成分及び(B)成分を有効成分とする本発明の抗ウイルス剤(併用剤)は、種々の形態で使用できる。例えば、粘膜保護組成物、ウイルス感染予防及び/又は治療用組成物、防腐剤、濾過装置等の抗ウイルス剤として好適である。
本発明の抗ウイルス剤(併用剤)の剤型は、液体状、固体状、気体状、ジェル状、ゲル状、エアゾール、いずれでも良い。本発明の抗ウイルス剤は、経口、非経口投与いずれの投与形態で投与してもよい。
経口投与形態としてはカプセル剤、ドライシロップ、錠剤、丸剤、粉剤、液剤等が挙げられる。
また、チューインガム、飴、各種ドリンク剤等の食品や、飲料水、調味料等の形態であってもよい。
非経口投与形態としては、例えば、点鼻用の液剤及びゲル剤、口腔スプレーなどのエアロゾルなどの鼻腔や咽頭に直接適用する点鼻適用製剤、軟膏剤、乳剤及びクリーム剤などの経皮吸収用製剤、注射剤、座薬、膣内投与形態(タンポン等)等が挙げられる。本発明の抗ウイルス剤を、天然繊維又は合成繊維製のガーゼ等の担体に含浸させたもの、口紅等の化粧品や他の形態の化粧品(ローション、オイル、石けん、化粧水、化粧クリーム等)や浴用剤に含有させたもの、美容液、シャンプー、ボディーソープ、洗顔フォーム等の半固体又は液体の形態としたものとしてもよい。点眼剤、うがい剤等の形態としてもよい。創傷部位治療用噴霧剤、咽頭部炎症治療用噴霧剤等の形態も挙げられる。
【0050】
本発明の種々の剤型の抗ウイルス剤(併用剤)の製造には、所定量の上記(A)成分及び(B)成分のほか、通常の医薬組成物、化粧品、皮膚用組成物等に使用される油性成分等の基材成分、保湿剤、防腐剤等を使用することができる。
【0051】
本発明の抗ウイルス剤(併用剤)は、(A)成分、(B)成分以外の他の抗ウイルス剤と併用してもよい。
本発明の抗ウイルス剤(併用剤)には、さらに必要に応じて安定化剤、保湿剤、創傷治癒剤、防腐剤、界面活性剤等を含有させることができる。
【実施例】
【0052】
以下に実施例を示し、本発明を具体的に説明する。
<<トリシンアミノ酸誘導体>>
[実施例1]
(化合物2:4’−O−CO−(Gly−OH)−トリシンの合成)

【0053】
窒素雰囲気下、グリシンt−ブチルエステル塩酸塩(55.3mg, 0.33mmol)をTHF(5ml)に溶かし、氷浴で冷却しながらビス(4−ニトロフェニル)カーボネート(100.4mg, 0.33mmol)、N,N−ジイソプロピルエチルアミン(115.0μl, 0.66mmol)を加え、室温で12時間攪拌した。その後、この反応溶液にトリシン(100.0mg, 0.30mmol)、再びN,N−ジイソプロピルエチルアミン(115.0μl, 0.66mmol)を加え、室温で12時間攪拌した。反応終了をTLC(クロロホルム/メタノール=10/1)で確認後、溶媒留去した。これをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム→クロロホルム/メタノール=50/1)にて単離精製し、4’−O−CO−(Gly−OtBu)−トリシン(化合物1)(92mg, 63%)を黄色粉末として得た。
窒素雰囲気下、この4’−O−CO−(Gly−OtBu)−トリシン(化合物1)(40.0mg, 0.082mmol)をジクロロメタン(5ml)に溶かし、氷浴で冷却しながらトリフルオロ酢酸(2ml)を加え、室温で4時間攪拌した。反応終了をTLC(クロロホルム/メタノール=5/1)で確認後、溶媒留去した。これにジクロロメタン(5ml)を加え、吸引濾過して4’−O−CO−(Gly−OH)−トリシン(化合物2)(33mg, 94%)を黄色粉末として得た。
【0054】
[実施例2]
(化合物4:4’−O−CO−(Ala−OH)−トリシンの合成)

【0055】
窒素雰囲気下、アラニンt−ブチルエステル塩酸塩(59.9mg, 0.33mmol)をTHF(5ml)に溶かし、氷浴で冷却しながらビス(4−ニトロフェニル)カーボネート(100.4mg, 0.33mmol)、N,N−ジイソプロピルエチルアミン(115.0μl, 0.66mmol)を加え、室温で12時間攪拌した。その後、この反応溶液にトリシン(100.0mg, 0.30mmol)、再びN,N−ジイソプロピルエチルアミン(115.0μl, 0.66mmol)を加え、室温で12時間攪拌した。反応終了をTLC(クロロホルム/メタノール=10/1)で確認後、溶媒留去した。これをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム→クロロホルム/メタノール=50/1)にて単離精製し、4’−O−CO−(Ala−OtBu)−トリシン(化合物3)(84mg, 55%)を黄色粉末として得た。
窒素雰囲気下、この4’−O−CO−(Ala−OtBu)−トリシン(化合物3)(41.1mg, 0.082mmol)をジクロロメタン(5ml)に溶かし、氷浴で冷却しながらトリフルオロ酢酸(2ml)を加え、室温で4時間攪拌した。反応終了をTLC(クロロホルム/メタノール=5/1)で確認後、溶媒留去した。これにジクロロメタン(5ml)を加え、吸引濾過して4’−O−CO−(Ala−OH)−トリシン(化合物4)(30mg, 81%)を黄色粉末として得た。
【0056】
[実施例3]
(化合物6:4’−O−CO−(Val−OH)−トリシンの合成)

【0057】
窒素雰囲気下、バリンt−ブチルエステル塩酸塩(69.2mg, 0.33mmol)をTHF(5ml)に溶かし、氷浴で冷却しながらビス(4−ニトロフェニル)カーボネート(100.4mg, 0.33mmol)、N,N−ジイソプロピルエチルアミン(115.0μl, 0.66mmol)を加え、室温で12時間攪拌した。その後、この反応溶液にトリシン(100.0mg, 0.30mmol)、再びN,N−ジイソプロピルエチルアミン(115.0μl, 0.66mmol)を加え、室温で12時間攪拌した。反応終了をTLC(クロロホルム/メタノール=10/1)で確認後、溶媒留去した。これをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム→クロロホルム/メタノール=50/1)にて単離精製し、4’−O−CO−(Val−OtBu)−トリシン(化合物5)(94mg, 52%)を黄色粉末として得た。
窒素雰囲気下、この4’−O−CO−(Val−OtBu)−トリシン(化合物5)(44.6mg, 0.082mmol)をジクロロメタン(5ml)に溶かし、氷浴で冷却しながらトリフルオロ酢酸(2ml)を加え、室温で4時間攪拌した。反応終了をTLC(クロロホルム/メタノール=5/1)で確認後、溶媒留去した。これにジクロロメタン(5ml)を加え、吸引濾過して4’−O−CO−(Val−OH)−トリシン(化合物6)(35mg, 90%)を黄色粉末として得た。
【0058】
[実施例4]
(化合物8:4’−O−CO−(Phe−OH)−トリシンの合成)

【0059】
窒素雰囲気下、フェニルアラニンt−ブチルエステル塩酸塩(85.1mg, 0.33mmol)をTHF(5ml)に溶かし、氷浴で冷却しながらビス(4−ニトロフェニル)カーボネート(100.4mg, 0.33mmol)、N,N−ジイソプロピルエチルアミン(115.0μl, 0.66mmol)を加え、室温で12時間攪拌した。その後、この反応溶液にトリシン(100.0mg, 0.30mmol)、再びN,N−ジイソプロピルエチルアミン(115.0μl, 0.66mmol)を加え、室温で12時間攪拌した。反応終了をTLC(クロロホルム/メタノール=10/1)で確認後、溶媒留去した。これをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム→クロロホルム/メタノール=50/1)にて単離精製し、4’−O−CO−(Phe−OtBu)−トリシン(化合物7)(116mg, 61%)を黄色粉末として得た。
窒素雰囲気下、この4’−O−CO−(Phe−OtBu)−トリシン(化合物7)(47.4mg, 0.082mmol)をジクロロメタン(5ml)に溶かし、氷浴で冷却しながらトリフルオロ酢酸(2ml)を加え、室温で4時間攪拌した。反応終了をTLC(クロロホルム/メタノール=5/1)で確認後、溶媒留去した。これにジクロロメタン(5ml)を加え、吸引濾過して4’−O−CO−(Phe−OH)−トリシン(化合物8)(48mg, 80%)を黄色粉末として得た。
【0060】
[実施例5]
(化合物10:4’−O−CO−(Asp−OH)−トリシンの合成)

【0061】
窒素雰囲気下、アスパラギン酸t−ブチルエステル塩酸塩(93.0mg, 0.33mmol)をTHF(5ml)に溶かし、氷浴で冷却しながらビス(4−ニトロフェニル)カーボネート(100.4mg, 0.33mmol)、N,N−ジイソプロピルエチルアミン(115.0μl, 0.66mmol)を加え、室温で12時間攪拌した。その後、この反応溶液にトリシン(100.0mg, 0.30mmol)、再びN,N−ジイソプロピルエチルアミン(115.0μl, 0.66mmol)を加え、室温で12時間攪拌した。反応終了をTLC(クロロホルム/メタノール=10/1)で確認後、溶媒留去した。これをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム→クロロホルム/メタノール=50/1)にて単離精製し、4’−O−CO−(Asp−OtBu)−トリシン(化合物9)(106mg, 53%)を黄色粉末として得た。
窒素雰囲気下、この4’−O−CO−(Asp−OtBu)−トリシン(化合物9)(49.3mg, 0.082mmol)をジクロロメタン(5ml)に溶かし、氷浴で冷却しながらトリフルオロ酢酸(2ml)を加え、室温で4時間攪拌した。反応終了をTLC(クロロホルム/メタノール=5/1)で確認後、溶媒留去した。これにジクロロメタン(5ml)を加え、吸引濾過して4’−O−CO−(Asp−OH)−トリシン(化合物10)(36mg, 90%)を黄色粉末として得た。
【0062】
[実施例6]
(化合物12:4’−O−CO−(Glu−OH)−トリシンの合成)

【0063】
窒素雰囲気下、グルタミン酸t−ブチルエステル塩酸塩(97.6mg, 0.33mmol)をTHF(5ml)に溶かし、氷浴で冷却しながらビス(4−ニトロフェニル)カーボネート(100.4mg, 0.33mmol)、N,N−ジイソプロピルエチルアミン(115.0μl, 0.66mmol)を加え、室温で12時間攪拌した。その後、この反応溶液にトリシン(100.0mg, 0.30mmol)、再びN,N−ジイソプロピルエチルアミン(115.0μl, 0.66mmol)を加え、室温で12時間攪拌した。反応終了をTLC(クロロホルム/メタノール=10/1)で確認後、溶媒留去した。これをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム→クロロホルム/メタノール=50/1)にて単離精製し、4’−O−CO−(Glu−OtBu)−トリシン(化合物11)(124mg, 61%)を黄色粉末として得た。
窒素雰囲気下、この4’−O−CO−(Glu−OtBu)−トリシン(化合物11)(50.5mg, 0.082mmol)をジクロロメタン(5ml)に溶かし、氷浴で冷却しながらトリフルオロ酢酸(2ml)を加え、室温で4時間攪拌した。反応終了をTLC(クロロホルム/メタノール=5/1)で確認後、溶媒留去した。これにジクロロメタン(5ml)を加え、吸引濾過して4’−O−CO−(Glu−OH)−トリシン(化合物12)(34mg, 83%)を黄色粉末として得た。
【0064】
[実施例7]
(化合物14:4’−O−CO−(Ala−Asp−OH)−トリシンの合成)

【0065】
窒素雰囲気下、0℃に冷却しながらアスパラギン酸t−ブチルエステル塩酸塩(87.4mg, 0.31mmol)、4’−O−CO−(Ala−OH)−トリシン(化合物4)(140mg, 0.31mmol)、をDMF(5ml)に溶かし、1−ヒドロキシ−1H−ベンゾトリアゾール(94.9mg, 0.62mmol)、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(65.4mg, 0.34mmol)を加え、3日間攪拌した。反応終了をTLC(クロロホルム/メタノール= 10/1)で確認後、溶媒留去した。これをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム)にて単離精製し、4’−O−CO−(Ala−Asp−OtBu)−トリシン(化合物13)(68mg, 32%)を黄色粉末として得た。
窒素雰囲気下、この4’−O−CO−(Ala−Asp−OtBu)−トリシン(化合物13)(55.0mg, 0.095mmol)をジクロロメタン(5ml)に溶かし、氷浴で冷却しながらトリフルオロ酢酸(2ml)を加え、室温で4時間攪拌した。反応終了をTLC(クロロホルム/メタノール=5/1)で確認後、溶媒留去した。これにジクロロメタン(5ml)を加え、吸引濾過して4’−O−CO−(Ala−Asp−OH)−トリシン(化合物14)(42mg, 91%)を黄色粉末として得た。
【0066】
[実施例8]
(化合物16:4’−O−CO−(Ala−Glu−OH)−トリシンの合成)

【0067】
窒素雰囲気下、0℃に冷却しながらグルタミン酸t−ブチルエステル塩酸塩(91.7mg, 0.31mmol)、4’−O−CO−(Ala−OH)−トリシン(化合物4)(140mg, 0.31mmol)、をDMF(5ml)に溶かし、1−ヒドロキシ−1H−ベンゾトリアゾール(94.9mg, 0.62mmol)、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(65.4mg, 0.34mmol)を加え、3日間攪拌した。反応終了をTLC(クロロホルム/メタノール=10/1)で確認後、溶媒留去した。これをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム)にて単離精製し、4’−O−CO−(Ala−Glu−OtBu)−トリシン(化合物15)(73mg, 33%)を黄色粉末として得た。
窒素雰囲気下、この4’−O−CO−(Ala−Glu−OtBu)−トリシン(化合物15)(55.0mg, 0.078mmol)をジクロロメタン(5ml)に溶かし、氷浴で冷却しながらトリフルオロ酢酸(2ml)を加え、室温で4時間攪拌した。反応終了をTLC(クロロホルム/メタノール=5/1)で確認後、溶媒留去した。これにジクロロメタン(5ml)を加え、吸引濾過して4’−O−CO−(Ala−Glu−OH)−トリシン(化合物16)(44mg, 96%)を黄色粉末として得た。
【0068】
実施例1〜8における出発化合物、中間体及び生成物の物理化学的性質を以下に示す。
NMR data
(トリシン)
1H NMR (400 MHz ; アセトン-d6) : δ 7.39 (s, 2H), 6.74 (s, 1H), 6.56 (d, J=2.0 Hz, 1H), 6.26 (d, J=2.0 Hz, 1H), 3.97 (s, 6H).
13C NMR (100 MHz ; アセトン-d6) : δ 183.1, 165.1, 164.9, 163.3, 158.8, 149.1 (2C), 140.9, 122.3, 105.4 (2C), 105.2, 104.7, 99.7, 94.9, 56.9 (2C).
MS (FAB) : m/z = 331 [M+H]+
【0069】
(化合物1:4’−O−CO−(Gly−OtBu)−トリシン)
1H NMR (400 MHz ; アセトン-d6) : δ 7.37 (s, 2H), 7.00 (br t, J=6.0 Hz, 1H), 6.82 (s, 1H), 6.54 (d, J=1.8 Hz, 1H), 6.24 (d, J=1.8 Hz, 1H), 3.97 (s, 6H), 3.84 (d, J=6.0 Hz, 2H), 1.46 (s, 9H).
13C NMR (100 MHz ; アセトン-d6) : δ 182.3, 168.8, 164.2, 163.4, 162.5, 158.0, 153.9, 153.7 (2C), 132.4, 129.0, 105.5, 104.7, 103.6 (2C), 99.0, 94.2, 80.9, 56.1 (2C), 43.5, 28.8 (3C).
MS (FAB) : m/z = 488 [M+H]+
【0070】
(化合物2:4’−O−CO−(Gly−OH)−トリシン)
1H NMR (400 MHz ; DMSO-d6) : δ 10.86 (br s, 1H), 8.05 (t, J=6.0 Hz, 1H), 7.34 (s, 2H), 7.09 (s, 1H), 6.56 (d, J=1.9 Hz, 1H), 6.20 (d, J=1.9 Hz, 1H), 3.85 (s, 6H), 3.72 (d, J=6.0 Hz, 2H).
13C NMR (100 MHz ; DMSO-d6) : δ 182.5, 171.7, 164.9, 163.3, 161.9, 158.0, 154.1, 153.5 (2C), 132.1, 128.9, 106.1, 104.5, 104.2 (2C), 99.5, 94.9, 56.9 (2C), 42.9.
MS (FAB) : m/z = 432 [M+H]+
【0071】
(化合物3:4’−O−CO−(Ala−OtBu)−トリシン)
1H NMR (400 MHz ; アセトン-d6) : δ 7.36 (s, 2H), 7.00 (br d, J=9.2 Hz, 1H), 6.81 (s, 1H), 6.53 (d, J=2.3 Hz, 1H), 6.23 (d, J=2.3 Hz, 1H), 4.14 (quin, J=7.3 Hz, 1H), 3.92 (s, 6H), 1.46 (s, 9H), 1.41 (d, J=7.3 Hz, 3H).
13C NMR (100 MHz ; アセトン-d6) : δ 183.2, 172.5, 165.0, 164.3, 163.3, 158.8, 154.5 (2C), 153.9, 133.3, 129.8, 106.4, 105.5, 104.5 (2C), 99.8, 95.0, 81.6, 56.9 (2C), 51.6, 28.1 (3C), 18.0.
MS (FAB): m/z = 502 [M+H]+
【0072】
(化合物4:4’−O−CO−(Ala−OH)−トリシン)
1H NMR (400 MHz ; DMSO-d6) : δ 10.86 (br s, 1H), 8.11 (d, J=7.8 Hz, 1H), 7.33 (s, 2H), 7.08 (s, 1H), 6.56 (d, J=1.9 Hz, 1H), 6.20 (d, J=1.9 Hz, 1H), 4.03 (quin, J=7.3 Hz, 1H), 3.84 (s, 6H), 1.29 (d, J=7.3 Hz, 3H).
13C NMR (100 MHz ; DMSO-d6) : δ 182.5, 174.5, 164.9, 163.3, 161.9, 158.0, 153.5 (3C), 132.2, 128.8, 106.1, 104.5, 104.2 (2C), 99.5, 94.9, 57.0 (2C), 50.0, 17.8.
MS (FAB) : m/z = 446 [M+H]+
【0073】
(化合物5: 4’−O−CO−(Val−OtBu)−トリシン)
1H NMR (400 MHz ; アセトン-d6) : δ 7.36 (s, 2H), 6.87-6.83 (m, 1H), 6.80 (s, 1H), 6.53 (d, J=2.0 Hz, 1H), 6.23 (d, J=2.0 Hz, 1H), 4.10-4.04 (m, 1H), 3.92 (s, 6H), 2.26-2.14 (m, 1H), 1.48 (s, 9H), 1.04-1.00 (m, 6H).
13C NMR (100 MHz ; アセトン-d6) : δ 182.3, 170.6, 164.2, 163.4, 162.5, 158.0, 153.6 (3C), 132.5, 128.9, 105.5, 104.7, 103.7 (2C), 99.0, 94.2, 81.0, 60.5, 56.0 (2C), 31.1, 27.4 (3C), 18.6, 17.3.
【0074】
(化合物6:4’−O−CO−(Val−OH)−トリシン)
1H NMR (400 MHz ; DMSO-d6) : δ 10.91 (br s, 1H), 8.06 (d, J=9.2 Hz, 1H), 7.38 (s, 2H), 7.12 (s, 1H), 6.59 (d, J=1.9 Hz, 1H), 6.23 (d, J=1.9 Hz, 1H), 3.95-3.88 (m, 1H), 3.88 (s, 6H), 2.15-2.08 (m, 1H), 0.96 (d, J=3.8 Hz, 3H), 0.94 (d, J=3.8 Hz, 3H).
13C NMR (100 MHz ; DMSO-d6) : δ 182.0, 172.9, 164.4, 162.9, 161.4, 157.5, 153.7, 153.0 (2C), 131.8, 128.3, 105.6, 104.0, 103.7 (2C), 99.0, 94.4, 59.8, 56.4 (2C), 30.0, 19.1, 18.0.
【0075】
(化合物7:4’−O−CO−(Phe−OtBu)−トリシン)
1H NMR (400 MHz ; アセトン-d6) : δ 7.36 (s, 2H), 7.36-7.30 (m, 4H), 7.28-7.23 (m, 1H), 6.92-6.88 (m, 1H), 6.81 (s, 1H), 6.55 (d, J=1.9 Hz, 1H), 6.24 (d, J=1.9 Hz, 1H), 4.40-4.34 (m, 1H), 3.90 (s, 6H), 3.19 (dd, J=13.7, 6.0 Hz, 1H), 3.08 (dd, J=13.7, 6.0 Hz, 1H), 1.42 (s, 9H).
13C NMR (100 MHz ; アセトン-d6) : δ 183.2, 171.2, 165.8, 164.4, 163.4, 158.9, 154.5 (2C), 153.8, 138.1, 133.2, 130.4 (2C), 129.2 (2C), 127.5, 126.9, 106.4, 104.5 (3C), 99.9, 95.0, 82.0, 57.2, 56.9 (2C), 38.3, 28.1 (3C).
MS (FAB) : m/z = 578 [M+H]+
【0076】
(化合物8:4’−O−CO−(Phe−OH)−トリシン)
1H NMR (400 MHz ; DMSO-d6) : δ 10.86 (br s, 1H), 8.15 (d, J=8.2 Hz, 1H), 7.30 (s, 2H), 7.29-7.20 (m, 5H), 7.07 (s, 1H), 6.55 (d, J=1.9 Hz, 1H), 6.19 (d, J=1.9 Hz, 1H), 4.20-4.13 (m, 1H), 3.78 (s, 6H), 3.08 (dd, J=13.7, 4.6 Hz, 1H), 2.87 (dd, J=13.7, 4.6 Hz, 1H).
13C NMR (100 MHz ; DMSO-d6) : δ 182.5, 173.5, 164.9, 163.3, 161.9, 158.0, 153.7, 153.4 (2C), 138.2, 132.2, 129.7 (2C), 128.8 (3C), 127.0, 106.1, 104.5, 104.2 (2C), 99.5, 94.9, 56.9 (2C), 56.2, 37.0.
【0077】
(化合物9:4’−O−CO−(Asp−OtBu)−トリシン)
1H NMR (400 MHz ; アセトン-d6) : δ 7.37 (s, 2H), 6.98-6.93 (m, 1H), 6.81 (s, 1H), 6.54 (d, J=2.0 Hz, 1H), 6.24 (d, J=2.0 Hz, 1H), 4.49-4.44 (m, 1H), 3.93 (s, 6H), 2.83 (dd, J=16.0, 6.0 Hz, 1H), 2.75 (dd, J=16.0, 6.0 Hz, 1H), 1.47 (s, 9H), 1.46 (s, 9H).
13C NMR (100 MHz ; アセトン-d6) : δ 182.3, 169.6, 169.5, 164.2, 163.5, 163.4, 162.5, 158.0, 153.7 (2C), 132.4, 129.1, 105.6, 104.7, 103.7 (2C), 99.0, 94.2, 81.4, 80.7, 56.1 (2C), 51.9, 37.5, 27.4 (3C), 27.3 (3C).
【0078】
(化合物10:4’−O−CO−(Asp−OH)−トリシン)
1H NMR (400 MHz ; DMSO-d6) : δ 10.90 (br s, 1H), 8.15 (d, J=8.2 Hz, 1H), 7.37 (s, 2H), 7.12 (s, 1H), 6.59 (d, J=1.9 Hz, 1H), 6.23 (d, J=1.9 Hz, 1H), 4.35 (q, J=7.8 Hz, 1H), 3.88 (s, 6H), 2.77 (dd, J=16.5, 6.7 Hz, 1H), 2.63 (dd, J=16.5, 6.7 Hz, 1H).
13C NMR (100 MHz ; DMSO-d6) : δ 182.0, 172.3, 171.6, 164.4, 162.8, 161.4, 157.5, 153.0, 152.9 (2C), 131.7, 128.3, 105.6, 104.0, 103.8 (2C), 99.0, 94.4, 56.4 (2C), 55.8, 29.6.
【0079】
(化合物11:4’−O−CO−(Glu−OtBu)−トリシン)
1H NMR (400 MHz ; アセトン-d6) : δ 7.36 (s, 2H), 7.01-6.97 (m, 1H), 6.80 (s, 1H), 6.53 (d, J=2.0 Hz, 1H), 6.23 (d, J=2.0 Hz, 1H), 4.24-4.18 (m, 1H), 3.93 (s, 6H), 2.45-2.41 (m, 2H), 2.20-2.11 (m, 1H), 1.98-1.89 (m, 1H), 1.47 (s, 1H), 1.44 (s, 1H).
13C NMR (100 MHz ; アセトン-d6) : δ 182.3, 171.6, 170.8, 164.2, 163.5, 163.4, 162.5, 158.0, 153.6 (2C), 153.4, 132.5, 129.0, 105.5, 104.7, 103.7 (2C), 99.0, 94.2, 81.1, 79.8, 56.1 (2C), 54.4, 31.1, 27.5 (3C), 27.3 (3C).
【0080】
(化合物12:4’−O−CO−(Glu−OH)−トリシン)
1H NMR (400 MHz ; DMSO-d6) : δ 10.93 (br s, 1H), 8.15 (d, J=8.2 Hz, 1H), 7.38 (s, 2H), 7.12 (s, 1H), 6.60 (d, J=2.0 Hz, 1H), 6.24 (d, J=2.0 Hz, 1H), 4.09-4.02 (m, 1H), 3.89 (s, 6H), 2.40-2.35 (m, 1H), 2.09-2.00 (m, 1H), 1.88-1.78 (m, 1H).
13C NMR (100 MHz ; DMSO-d6) : δ 182.5, 174.3, 173.6, 164.9, 163.3, 161.9, 158.0, 153.9, 153.4 (2C), 132.3, 128.8, 106.1, 104.5, 104.2 (2C), 94.9 (2C), 56.9 (2C), 53.7, 30.4, 26.9.
【0081】
(化合物13:4’−O−CO−(Ala−Asp−OtBu)−トリシン)
1H NMR (400 MHz ; アセトン-d6) : δ 7.51 (br d, J=8.2 Hz, 1H), 7.34 (s, 2H), 7.00 (br d, J=7.3 Hz, 1H), 6.80 (s, 1H), 6.53 (d, J=1.9 Hz, 1H), 6.23 (d, J=1.9 Hz, 1H), 4.68-4.63 (m, 1H), 4.30 (quin, J=6.8 Hz, 1H), 3.91 (s, 6H), 2.74 (d, J=5.5 Hz, 2H), 1.44 (s, 9H), 1.43 (d, J=6.8 Hz, 3H), 1.40 (s, 9H).
13C NMR (100 MHz ; アセトン-d6) : δ 182.3, 171.9, 169.6 (3C), 164.3, 163.4, 162.5, 158.0, 153.6 (2C), 131.9, 129.0, 105.5, 104.7, 103.5 (2C), 99.0, 94.3, 81.3, 80.6, 56.0 (2C), 50.8, 49.5, 37.3, 27.4 (3C), 27.3 (3C), 18.1.
【0082】
(化合物14:4’−O−CO−(Ala−Asp−OH)−トリシン)
1H NMR (400 MHz ; DMSO-d6) : δ 10.91 (br s, 1H), 8.15 (d, J=8.2 Hz, 1H), 7.99 (d, J=7.8 Hz, 1H), 7.37 (s, 2H), 7.12 (s, 1H), 6.59 (d, J=2.0 Hz, 1H), 6.23 (d, J=2.0 Hz, 1H), 4.56 (q, J=7.8 Hz, 1H), 4.13 (quin, J=7.8 Hz, 1H), 3.88 (s, 6H), 2.69 (dd, J=16.5, 6.0 Hz, 1H), 2.62 (dd, J=16.5, 6.0 Hz, 1H), 1.29 (d, J=6.8Hz, 3H).
13C NMR (100 MHz ; DMSO-d6) : δ 182.0, 172.3, 172.0, 171.6, 164.4, 162.8, 161.4, 157.5, 153.0 (2C), 152.7, 131.7, 128.3, 105.6, 104.0, 103.7 (2C), 99.0, 94.4, 56.4 (2C), 50.1, 48.5, 36.0, 18.4.
【0083】
(化合物15:4’−O−CO−(Ala−Glu−OtBu)−トリシン)
1H NMR (400 MHz ; アセトン-d6) : δ 7.46 (br d, J=7.8 Hz, 1H), 7.34 (s, 2H), 6.97 (br d, J=7.8 Hz, 1H), 6.80 (s, 1H), 6.53 (d, J=1.9 Hz, 1H), 6.24 (d, J=1.9 Hz, 1H), 4.42-4.36 (m, 1H), 4.29 (quin, J=7.3 Hz, 1H), 3.90 (s, 6H), 2.34-2.30 (m, 2H), 2.14-2.05 (m, 1H), 1.92-1.82 (m, 1H), 1.45 (s, 9H), 1.43 (d, J=7.3 Hz, 3H), 1.38 (s, 9H).
13C NMR (100 MHz ; アセトン-d6) : δ 182.3, 172.1, 171.5, 170.7, 164.3, 163.4, 162.5, 158.0, 153.6 (2C), 153.1, 132.0, 128.9, 105.4, 104.7, 103.5 (2C), 99.0, 94.3, 81.2, 79.7, 56.0 (2C), 52.3, 50.7, 31.2, 27.4 (3C), 27.3 (3C), 27.2, 18.0.
【0084】
(化合物16:4’−O−CO−(Ala−Glu−OH)−トリシン)
1H NMR (400 MHz ; DMSO-d6) : δ 10.90 (br s, 1H), 8.09 (d, J=7.8 Hz, 1H), 7.98 (d, J=7.8 Hz, 1H), 7.37 (s, 2H), 7.12 (s, 1H), 6.59 (d, J=2.0 Hz, 1H), 4.28-4.22 (m, 1H), 4.12 (quin, J=7.3 Hz, 1H), 3.89 (s, 6H), 2.31-2.23 (m, 2H), 2.03-1.94 (m, 1H), 1.83-1.74 (m, 1H), 1.27 (d, J=7.3 Hz, 1H).
13C NMR (100 MHz ; DMSO-d6) : δ 182.0, 173.7, 173.1, 172.2, 164.4, 162.8, 161.4, 157.5, 153.0 (2C), 152.7, 131.7, 128.3, 105.5, 104.0, 103.7 (2C), 99.0, 94.4, 56.4 (3C), 51.1, 29.9, 26.4, 18.2.
【0085】
[実施例9]
(細胞浸透性試験)
MDCK細胞の培養液にはE−MEM 89%、非働化子ウシ血清10%、ペニスト(抗生物質)1%を混合して用いた。
12穴細胞浸透用プレートチャンバーの上層に2.7×105/cm2(300μl)でMDCK細胞をまき、下層には培養液を500μl加えた。1日37℃、CO25%で培養し、その後、上層の培養液を除去し、新しい培養液を加えた。再び、1日培養後、上下層の培養液を除去した。下層に培養液を500μl加え、上層には試験物質30μM(溶媒:PBS)を300μl加えた。1時間培養後、上下層を150 μl採取し、UV(355nm)吸収を測定した。検量線にて試験物質の細胞浸透率を算出した。細胞浸透性試験の結果として、トリシンの細胞浸透率を1とした場合の相対的細胞浸透率を図1に示す。
細胞の層の状態はルシファーイエローが透過しないことで確認した。
この結果、トリシンのアミノ酸誘導体はいずれもトリシンより高い細胞浸透性を示し、より高い組織移行性及びより高い生物学的利用能を示す可能性が示唆された。
【0086】
[参考例1]
(ラットにおけるトリシンの14日連続経口投与後の血漿中トリシン濃度)
方法
1群につき各3匹の雄性及び雌性Crl:CD(SD)系ラット(日本チャールズ・リバー株式会社)を準備し、各群にそれぞれトリシン100、300、1000mg/kg/dayを14日間反復経口投与し、投与14日目の投与前、投与後0.5、2及び4時間後に採血して得られた血漿中のトリシン濃度を測定した。
・分析法
ラット血漿中のトリシン濃度を、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)−UV法により測定した。血漿からのトリシンの抽出及びHPLCの測定条件はHong Caiらの方法(Hong Cai et al. Biomed. Chromatogr. 17, 435-439 (2003)、 Hong Cai, et al. Biomed. Chromatogr. 19, 518-522 (2005))に準じて設定し、抽出方法を一部改変して血漿中トリシン濃度を測定した。
【0087】
・採血
投与14日の投与前、投与後30分、投与後2及び4時間にヘパリン加処理血液を勁静脈より採取し、4℃下6000回転/分で10分間遠心した。得られた血漿はラットTK血漿として採血当日より使用日まで−25℃設定の冷凍庫に保存した。
・抽出方法
ラットTK血漿50μLに内部標準溶液(ケルセチン・2水和物DMSO溶液、血漿中濃度800ng/mL)10μLを添加して攪拌後、抽出溶媒(0.1mol/L酢酸/アセトン溶液)40μLを添加し、攪拌した。微量高速冷却遠心機で15000回転/分で10分間遠心分離した後、蒸留水25μLを添加して攪拌後、微量高速冷却遠心機で遠心分離し、得られた上清をHPLCに注入した。
また、ラットプール血漿(無処置の雌雄Crl:CD(SD)系由来)50μLに検量線用標準溶液(血漿中トリシン濃度:50、100、200、500、1000、2000 ng/mL)10μLを添加し、添加後はラットTK血漿と同様の操作を行ったものを検量線として使用した。
・HPLC条件
YMC Pack ODS−AM (6.0mm×150mm、株式会社ワイエムシー)カラムに、抽出後の上清40μLを注入し、カラム温度40℃、波長355nm、流速1.4mL/min、移動相は酢酸アンモニウム・酢酸(0.1mol/L、PH5.1):メタノール=2:3、分析時間10分の条件で測定した。
【0088】
結果
ラットTK血漿中のトリシン濃度の測定結果を表1及び2に示す。
いずれも定量限界(500ng/mL)以下の値であったが、雄では投与後0.5、2及び4時間の血漿中にトリシンが検出された。投与後2及び4時間ではごく軽度ながら投与量に相関した血漿中トリシン濃度が高値となる傾向がみられたが、300あるいは1000mg/kg投与群の投与後2及び4時間の血漿中トリシン濃度は同程度であり、時間経過に伴って増加ないし低下する傾向は見られなかった。これに対して、雌の100および300mg/kg投与群では投与後4時間まで血漿中にトリシンは検出されなかった。雌の1000mg/kg投与群では投与後0.5、2及び4時間の血漿中にトリシンが検出されたが、投与後0.5時間をピークとして血漿中トリシン濃度は低下する傾向にあった。
【0089】
表1:14日間反復経口投与毒性試験における雄性ラットの血漿中トリシン濃度

*:定量限界(500ng/mL)以下であることから参考値である。
【0090】
表2:14日間反復経口投与毒性試験における雌性ラットの血漿中トリシン濃度

*:定量限界(500ng/mL)以下であることから参考値である。
【0091】
[実施例10]
(雄性ラットにおけるトリシン誘導体の単回経口投与による毒性試験及びトリシンの血漿中濃度推移)
方法
1群につき各3匹の雄性Crl:CD(SD)系ラット(日本チャールズ・リバー株式会社)を準備し、各群にそれぞれトリシン濃度として0mg/kg(対照群)、100、300および1000mg/kgに相当するトリシン誘導体、化合物16(4’−O−CO−(Ala−Glu−OH)−トリシン)を単回投与し、投与前、投与後30分、2時間、4時間および8時間に採血して得られた血漿中のトリシン濃度の推移について検討した。
【0092】
・観察、測定及び検査項目
a.一般状態観察
全例について動物の生死、外観、行動等を投与日(0日)の投与前、投与直後、投与後30分、2時間、4時間及び8時間の各採血時点に観察した。
b.体重測定
全例について動物の体重を、投与日の投与前に、電子式上皿天秤を用いて測定し、1g単位で記録した。
【0093】
・分析法
ラット血漿中のトリシン濃度を、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)−UV法により測定した。血漿からのトリシンの抽出及びHPLCの測定条件はHong Caiらの方法(Hong Cai et al. Biomed. Chromatogr. 17, 435-439 (2003)、 Hong Cai, et al. Biomed. Chromatogr. 19, 518-522 (2005))に準じて設定し、抽出方法を一部改変して血漿中トリシン濃度を測定した。
【0094】
・採血
投与日の投与前、投与後30分、2時間、4時間および8時間に勁静脈からヘパリン加処理血液を採取し、4℃下6000回転/分で10分間遠心した。得られた血漿はラットTK血漿として採血当日より使用日まで−25℃設定の冷凍庫に保存した。
・抽出方法
ラットTK血漿50μlに内標準溶液(1.25μg/lケルセチン・2水和物DMSO溶液)10μlを添加し混合後、抽出溶媒(0.1mol/L酢酸/アセトン溶液)40μlを添加し攪拌した。10℃下15000回転/分で10分間遠心した。蒸留水50μlを添加後攪拌し、10℃下15000回転/分で10分間遠心した。遠心後の上清を採取し、得られた上清をHPLCに注入した。
・HPLC条件
YMC Pack ODS−AM(4.6mm×150mm、株式会社ワイエムシー)カラムに、抽出後の上清400μLを注入し、カラム温度40℃、波長355nm、流速1.4mL/min、移動相は酢酸アンモニウム溶液:メタノール=2:3、分析時間10分の条件で測定した。
【0095】
結果
・一般状態
一般状態の成績を表3に示す。
各投与群とも、投与日の投与前ならびに投与後30分、2時間、4時間および8時間の各採血時点で一般状態に異常は認められなかった。
・体重
投与前日及び投与日の体重を表4に示す。
投与前日に比べて投与日の体重はいずれの投与群とも増加しており、投与日までの体重増加は順調であった。
したがってトリシン同様、トリシン誘導体は安全性の高い薬物と推測される。
【0096】
・血漿内トリシン濃度
血漿中トリシン濃度の推移を図2及び表5に示す。また代表的なクロマトグラムを図3〜7に示す。
100mg/kg投与群の血漿中トリシン濃度推移では、投与後30分で増加し、投与後2時間で低下した後、投与後4時間で再び増加を示す二峰性の推移が認められた。投与後30分に比べ、投与後4時間のトリシン濃度は約3.6倍高値であった。投与後8時間で血漿中濃度は低下したが、投与後30分と同程度のトリシンが検出された。
【0097】
300mg/kg投与群の血漿中濃度推移においても、投与後30分と4時間をピークとする二峰性の推移が認められたが、100mg/kg投与群とは異なり、投与後30分と4時間の血漿中濃度はほぼ同程度であった。100mg/kg投与群に比べて、投与後30分の血漿中トリシン濃度は約4.2倍、投与後2時間で約2.5倍高値であり、ほぼ投与量に応じた増加を示した。しかしながら、投与後4時間の濃度は約1.1倍、投与後8時間は約1.4倍であり、投与後4時間以降の血漿中濃度には100mg/kg投与群と大きな差は認められなかった。
【0098】
1000mg/kg投与群の血漿中濃度推移でも、投与後30分で増加し、投与後2時間で低下した後、投与後4時間で再び増加を示す二峰性の推移が認められた。投与後30分の値は、多糖四群と異なり投与後4時間よりも約1.6倍高値であり、100mg/kg投与群の約6.4倍300mg/kg投与群の約1.5倍高値であった。また、投与後8時間の濃度は、同群の投与後4時間あるいは300mg/kg投与群の投与後4時間と同程度の値であった。
薬物動態学的パラメーターでは、1000mg/kg投与群のCmaxは高値であったが、100及び300mg/kg投与群は同程度の値であった、Tmaxは投与量の増加に応じて短くなる傾向が見られた。またAUC0-8は100mg/kg投与群に比べて300および1000mg/kg投与群はそれぞれ約1.5及び2.1倍高値であった。
【0099】
トリシン誘導体の100、300および1000mg/kg投与群において、投与後30分の血漿中濃度及びAUC0-8では用量相関性の増加が認められ、いずれの投与群とも投与後30分及び投与後4時間をピークとする二峰性の推移を示したことから、腸管循環による再吸収の可能性が示唆された。
また、トリシン誘導体の100、300および1000mg/kg投与群の投与後4時間の血漿中濃度はいずれも同程度の値であり、1000mg/kg投与群では投与後4時間と投与後8時間の血漿中濃度に差はなく、いずれも高値であった。このことから大量投与に伴う腸管からの吸収遅延が生じている可能性が示唆された。
なお、比較としてラットにトリシンを14日連続経口投与し、同様に血漿中濃度推移を測定したが、最高でも61ng/mLのトリシンしか検出されなかった。トリシン誘導体を経口投与した本試験では最高で4448ng/mLのトリシンが検出されており、血中への移行性はトリシンに比べてはるかに高いことが検証された。
【0100】
表3:雄性ラットへのトリシン誘導体の単回経口投与試験における一般状態

N:異常所見無し
【0101】
表4:雄性ラットへのトリシン誘導体の単回経口投与試験における体重の推移

【0102】
表5:雄性ラットへのトリシン誘導体の単回経口投与試験における血漿中トリシン濃度

【0103】
[実施例11]
(マウスにおけるトリシン誘導体の単回経口投与による毒性試験)
方法
1群につき各5匹の雄性及び雌性Crlj:CD1(ICR)系マウス(日本チャールズ・リバー株式会社)を準備し、各群にそれぞれトリシン濃度として0mg/kg(対照群)、500mg/kg(低用量群)、1000mg/kg(中用量群)および2000mg/kg(高用量群)に相当するトリシン誘導体、化合物16(4′−O−CO−(Ala−Glu−OH)−トリシン)を単回経口投与した。
【0104】
・観察、測定及び検査項目
a.一般状態観察
全例について動物の生死、外観、行動等を投与開始日を投与0日として起算し、投与1日から投与13日までは午前及び午後の少なくとも1日2回、投与後14日は午前中に1回観察した。
b.体重測定
全例について動物の体重を、投与1、3、5、7、10及び14日に、電子式上皿天秤を用いて測定し、0.1g単位で記録した。
c.剖検所見
全例について投与14日に安楽死させ、全身の器官・組織を肉眼的に観察し、必要な臓器・組織を固定・保存した。
【0105】
結果
・一般状態
対照群及びいずれの投与群においても、投与期間中に異常は認められなかった。
・体重推移
体重推移を表6に示す。各投与群共に投与期間中に対照群と比較して有意な差は認められなかった。
・剖検所見
対照群及びいずれの投与群においても、異常所見は認められなかった。
以上より、トリシン誘導体のマウスへの単回経口投与毒性試験において、一般状態、体重推移及び剖検所見では被験物質投与に関連した変化は認められなかった。
【0106】
表6−1:雄性マウスへのトリシン誘導体の単回経口投与毒性試験における体重の推移

【0107】
表6−2:雌性マウスへのトリシン誘導体の単回経口投与毒性試験における体重の推移

【0108】
[実施例12]
(雄性マウスにおけるトリシン誘導体の14日連続経口投与による毒性試験)
方法
1群につき各5匹の雄性Crlj:CD1(ICR)系マウス(日本チャールズ・リバー株式会社)を準備し、各群にそれぞれトリシン濃度として0mg/kg(対照群)、300および1000mg/kg/dayに相当するトリシン誘導体、化合物16(4’−O−CO−(Ala−Glu−OH)−トリシン)を14日間反復経口投与した。
【0109】
・観察、測定及び検査項目
a.一般状態観察
全例について動物の生死、外観、行動等を、投与開始日を投与1日として起算し、投与1日から投与14日の翌日の剖検日まで、午前及び午後の1日2回観察した。
b.体重測定
全例について動物の体重を、投与1、2、7、10及び14日の投与前及び剖検日に、電子式上皿天秤を用いて測定し、0.1g単位で記録した。
c.摂餌量
全例について摂餌量を、投与1、2、7、10及び14日の投与前に、電子式上皿天秤を用いて測定し、0.1g単位で記録した。投与開始前日に適当量を測定後ケージ毎に給与しその後は測定日に残量及び給与量を測定する。以下の式により摂餌量を算出する。
摂餌量(g/マウス/日)=(給与量(g/マウス)−残量(g/マウス))/測定日間の日数(日)
【0110】
d.血液学的検査
全例について剖検時に採血し、赤血球数(RBC)、ヘマトクリット値(HCT)、ヘモグロビン濃度(HGB)、平均赤血球容積(MCV)、平均赤血球ヘモグロビン量(MCH)、平均赤血球ヘモグロビン濃度(MCHC)、血小板数(Platelet)、白血球数(WBC)について自動血球分析装置XT−2000 iV(シスメックス社)を用いて測定した。
e.血液化学的検査
全例について剖検時に採血し、AST、ALT、アルカリホスファターゼ(ALP)、グルコース(Glucose)、尿素窒素(UN)、クレアチニン(Crea)、総蛋白(TP)について自動分析装置7080形(日立ハイテクノロジーズ社)を用いて測定した。
f.剖検所見
全例について投与14日の翌日に安楽死させ、全身の器官・組織を肉眼的に観察し、必要な臓器・組織を固定・保存した。
g.器官重量
全例について剖検時に電子式上皿天秤を用いて脳、心臓、配、肝臓、腎臓(左右)、脾臓、副腎(左右)、精巣(左右)について重量を測定して記録した。以下の式から相対重量を算出した。
相対重量(%)=(絶対重量(g)/剖検日体重(g))×100
【0111】
結果
・一般状態
一般状態の成績を表7に示す。対照群及び300mg/kg投与群では、投与期間中に異常は認められなかった。
1000mg/kg投与群では、1例で投与8日にのみ軟便が1回認められたのみであり、被験物質投与との関連性はないと判断した。
・体重推移
体重推移を表8に示す。各投与群共に投与期間中に対照群と比較して有意な差は認められなかった。
【0112】
・摂餌量
摂餌量を表9に示す。300mg/kg投与群では投与7日に対照群と比較して有意な高値が認められたが、用量依存性もないことから毒性学的な意義はないと考えられた。
1000mg/kg投与群では、対照群と比較して有意な変化は認められなかった。
・血液学的検査
各投与群共に投与期間中に対照群と比較して有意な差は認められなかった。
・血液化学的検査
各投与群共に投与期間中に対照群と比較して有意な差は認められなかったが、1000mg/kg投与群の1例でAST及びALTの高値が認められた。
【0113】
・剖検所見
剖検所見を表10に示す。対照群では異常所見は認められなかった。
300mg/kg投与群では雄1例に左右の精巣に小型化が認められたが、用量依存性のない変化であった。
1000mg/kg投与群では異常所見は認められなかった。
・器官重量
器官重量の成績を表11に示す。
300mg/kg投与群では、対照群と比較して有意な変化は認められなかった。
【0114】
1000mg/kg投与群では、肝臓の絶対及び相対重量に有意な高値が認められた。肝機能検査項目のAST及びALTが高値を示したのは1例のみであり、統計学的な有意差を伴わないことから、代謝酵素等の誘導による重量増加の可能性が考えられた。
他に、心臓の絶対重量に有意な低値が認められたが、相対重量の有意差を伴うものではなく毒性学的な意義はないと推察された。
1000mg/kg投与群で肝臓重量の増加が認められているが、一般状態、体重推移、摂餌量、血液学的検査、血液化学的検査及び剖検所見では被験物質投与に関連した変化は認められなかった。
以上より、本試験条件下におけるトリシン誘導体の無影響量は、現在のところ300mg/kg/dayと推察された。
【0115】
表7:雄性マウスへの14日連続経口投与毒性試験における一般状態

数値は動物数を示す。
【0116】
表8:雄性マウスへのトリシン誘導体の14日連続経口投与毒性試験における体重の推移

【0117】
表9:雄性マウスへのトリシン誘導体の14日連続経口投与毒性試験における摂餌量

【0118】
表10:雄性マウスへのトリシン誘導体の14日連続経口投与毒性試験における剖検知見

数値は動物数を示す。
【0119】
表11:雄性マウスへのトリシン誘導体の14日連続経口投与毒性試験における器官重量





:対照群に対しp≦0.05 (Dunnett’s test)
※※:対照群に対しp≦0.01 (Dunnett’s test)
【0120】
[実施例13]
(加水分解試験)
トリシンアミノ酸誘導体のエステル結合の加水分解性について、細胞内の加水分解酵素を用いて試験を行った。
MDCK細胞(1.33×106細胞)の溶解物をマニュアル(Harlow, E.; Lane, D. Antibodies: A Laboratory Manual. Cold Spring Harbor, NY: Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1988, p 449.)に従い作成した。
細胞溶解物によりトリシンアミノ酸誘導体を処理して、トリシンを放出するのに必要な時間(t1/2:半減期)を測定した(Cai, H.; Verschoyle, R. D.; Steward, W. P.; Gescher, A. J. Determination of the flavone tricin in human plasma by high-performance liquid chromatography. Biomed. Chromatogr. 2003, 17, 435-439.)。
トリシン-Ala-Glu誘導体の半減期は165分であった。細胞内でトリシンアミノ酸誘導体からトリシンに変換されることが明らかである。
なお、トリシン-Ala-Glu誘導体の半減期(165分)は、類似構造のケルセチン-Ala-Glu誘導体の半減期(110分)よりかなり長い値を示した。トリシンアミノ酸誘導体は、3’位及び5’位のメトキシ基により立体障害を受け、酵素活性部位に対する親和性が低くなり、加水分解半減期が長くなったものと考えられる。
【0121】
[実施例14]
(子宮頚癌細胞株増殖試験)
トリシンの子宮頚癌細胞株の増殖に対するトリシンの影響を調べるため、以下の実験を行った。
細胞株は以下のものを使用した。
(i) TIG-3株 胎児肺繊維芽細胞(正常細胞、コントロールとして)
(ii)CA株 HPV- p53-(子宮頚癌細胞株)
(“Establishment of a HPV and p53-mutation-nagative human cell line (CA) derived from a squamous carcinoma of the uterine cervix”, Keiichi Isaka et al., Gynecologic Oncology 92, 15-21 (2004)参照)
(iii)CaSki株 HPV16型高コピー p53+(子宮頚癌細胞株)
(iv)HeLa株 HPV18型 p53+(子宮頚癌細胞株)
(v)SiHa株 HPV16型低コピー p53+(子宮頚癌細胞株)
【0122】
上記各細胞株を、トリシン添加24時間前に96well プレートに4,000個/1well 播種し、通常培養条件(37℃、5%CO2)下にて前培養を行った。
トリシンをDMSOで溶解し、最終濃度0、1、10、50μMとなるよう培養液に添加した
【0123】
トリシンを添加した後、7日目まで、24時間毎に、CellTiter96(登録商標)Non-Radioactive Cell Proliferation Assayに準じたプロトコルにてアッセイ、測定を行った。
より具体的には、15μlの染色液を各ウェルに添加し、37℃で、加湿されたCO2インキュベーター内でインキュベートを行った。その後100μlの溶解/停止液を各ウェルに添加した。なお、終了まで培養液の交換は行わずにアッセイを行った。
着色されたホルマザン産物の570nmの吸光度を、マルチウェル分光光度計(SpectraMax 190分光光度計(Molecular Device社製))で測定した。参照波長として630〜750nmの波長を用いた。解析ソフトは、Softmax(登録商標)Pro5(Molecular Device社製)を用いた。
培養時間と吸光度の関係を図8〜12に示す。
図8〜12から明らかなとおり、子宮頚癌細胞株4種および胎児肺繊維芽細胞株全てにおいて、トリシン濃度(0μM〜50μM)依存で細胞増殖は抑えられた。
以上の結果より、トリシンが子宮頸癌に対して優れた抗癌作用を示すことがわかる。
高い細胞浸透性を示し、また体内でトリシンに変化してトリシンの高い血中濃度を与えるトリシンアミノ酸誘導体についても同様に、子宮頸癌に対して優れた抗癌作用を示すことが明らかである。
【0124】
<<抗ウイルス剤(併用剤)のヘルペスウイルスに対する抗ウイルス作用>>
[実施例15]
本発明の抗ウイルス剤(併用剤)のヘルペスウイルスに対する抗ウイルス作用を以下の方法により調べた。
<方法>
24ウェルのプレートに単層培養されたヒト胎児線維芽細胞(HEL細胞)にヒトサイトメガロウイルス(Towne株)(1Moi)を1時間吸着・感染させた後、ガンシクロビル0.0001μMとトリシン(0、0.01、0.03又は0.1μM)とを含む培養液を加え、5%炭酸ガス培養器にて培養をスタートさせた。
ウイルス感染後5日目の上清を取り出し、プラークアッセイ実験を行った。
顕微鏡にて細胞変性効果(CPE)の有無・状況を観察し、コントロール(トリシン、ガンシクロビル共に0μM)のウイルス力価を100とした場合の、各試料のコントロールに対する相対的なウイルス力価(%)を求めた。その結果を表12及び図13に示す。
【0125】
[比較例1]
トリシン(0、0.01、0.03、0.1μM)及びガンシクロビル(0.0001μM)を含む培養液に代えて、トリシンのみ(0、0.01、0.03又は0.1μM)を含む培養液を用いた以外は実施例15と同様の方法により実験を行った。その結果を表12及び図13に示す。
【0126】
表12:トリシン及びGCVを組み合わせて用いた場合及びトリシンのみを用いた場合の抗ウイルス作用

【0127】
[参考例2]
参考として、ガンシクロビル単独を有効成分として用いた場合のヘルペスウイルスに対する抗ウイルス作用を以下の方法により調べた。実験は、4’,5,7−トリヒドロキシ−3’,5’−ジメトキシフラボン(0、0.01、0.03、0.1μM)及びガンシクロビル(0.0001μM)を含む培養液に代えて、ガンシクロビル(0、0.00001、0.0001、0.001、0.01、0.1又は1μM)を含む培養液を用いた以外は実施例15と同様の方法により行った。その結果を表13及び図14に示す。
【0128】
表13:ガンシクロビル(GCV)のみを用いた場合の抗ウイルス作用

【0129】
表12の結果から、トリシンとガンシクロビルを組み合わせて用いた本発明の抗ウイルス剤では、トリシン単独を用いた場合に比べて抗ウイルス活性が顕著に向上することが分かる。
また、本発明の抗ウイルス剤(併用剤)の細胞変性効果は、ガンシクロビル0.0001μMによる細胞変性効果とトリシンによる細胞変性効果とから予想し得る結果よりもはるかに優れたものであることが分かる。例えば、トリシン0.01μMのみを用いた場合の相対的ウイルス力価は約75%であり、ガンシクロビル0.0001μMのみを用いた場合の相対的ウイルス力価は約62%である。これらの値から予想し得るトリシンとガンシクロビル(0.0001μM)との組み合わせ製剤の効果は47%前後である(0.75×0.62により算出した)。しかしながら、本発明の抗ウイルス剤(1)による実際の相対的ウイルス力価は約31%であり、予想し得る数値よりもはるかに低い相対的ウイルス力価が得られた。この結果から、トリシンとガンシクロビルは相乗効果を発揮し、組み合わせることにより通常考えられるよりも著しく優れた抗ウイルス作用が得られることが分かる。
さらに、本発明の抗ウイルス剤は、ガンシクロビル単独を同濃度で用いた場合と比べても同等以上の優れた抗ウイルス作用を有しており、ガンシクロビルの問題点(細胞毒性、耐性)をも改善しうる新たな抗ウイルス剤として使用することが出来る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式1:

で表される化合物
(式中、Aは任意のアミノ酸残基であり、Bは任意のアミノ酸残基であり、AとBは同じ又は異なっても良く、n=0〜4である。)。
【請求項2】
Aが任意のアミノ酸残基であり、n=0又は1である請求項1記載の化合物。
【請求項3】
Aがグリシン、アラニン、バリン、フェニルアラニン、アスパラギン酸及びグルタミン酸からなる群から選択されるアミノ酸の残基である、請求項1又は2記載の化合物。
【請求項4】
Aがアラニン残基であり、Bが任意のアミノ酸残基である請求項1記載の化合物。
【請求項5】
Aがアラニン残基であり、Bがアスパラギン酸又はグルタミン酸残基である請求項1記載の化合物。
【請求項6】
4’−O−CO−(Gly−OH)−トリシン、
4’−O−CO−(Ala−OH)−トリシン、
4’−O−CO−(Val−OH)−トリシン、
4’−O−CO−(Phe−OH)−トリシン、
4’−O−CO−(Asp−OH)−トリシン、
4’−O−CO−(Gln−OH)−トリシン、
4’−O−CO−(Ala−Asp−OH)−トリシン又は
4’−O−CO−(Ala−Glu−OH)−トリシン
からなる群から選択される請求項1記載の化合物。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の化合物を含む抗ウイルス剤。
【請求項8】
対象のウイルスが、ヘルペスウイルス、サイトメガロウイルスあるいはインフルエンザウイルスである、請求項7記載の抗ウイルス剤。
【請求項9】
対象のウイルスが、オセルタミビル耐性インフルエンザウイルス株、アマンタジン耐性インフルエンザウイルス株、ガンシクロビル耐性ヒトサイトメガロウイルスからなる群より選択されるウイルスである、請求項7記載の抗ウイルス剤。
【請求項10】
経口投与用である請求項7〜9のいずれか一項に記載の抗ウイルス剤。
【請求項11】
トリシン又は請求項1〜6のいずれか一項に記載の化合物を含む抗癌剤。
【請求項12】
対象の癌が大腸癌または子宮頸癌である、請求項11記載の抗癌剤。
【請求項13】
経口投与用である、請求項11または12記載の抗癌剤。
【請求項14】
(A)トリシン又は請求項1〜6のいずれか一項に記載の化合物、及び
(B)ガンシクロビル、アシクロビル、シドフォビル、ファムシクロビル、フォミビルセン、ホスカルネット、イドクスウリジン、ペンシクロビル、トリフルリジン、バラシクロビル、バルガンシクロビル及びビダラビンからなる群から選択される少なくとも一種の化合物、
を有効成分として含むことを特徴とする、抗ウイルス剤。
【請求項15】
前記(B)成分がガンシクロビルである、請求項14に記載の抗ウイルス剤。
【請求項16】
前記ウイルスがヘルペスウイルスである、請求項14又は15に記載の抗ウイルス剤。
【請求項17】
前記ウイルスがサイトメガロウイルスである、請求項14〜16のいずれか一項に記載の抗ウイルス剤。
【請求項18】
前記ウイルスが、ヒトサイトメガロウイルスである請求項14〜17のいずれか一項に記載の抗ウイルス剤。
【請求項19】
前記(A)成分と(B)成分とのモル比が100:1〜1000:1((A)成分:(B)成分)の範囲内である、請求項14〜18のいずれか一項に記載の抗ウイルス剤。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2011−173877(P2011−173877A)
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−18475(P2011−18475)
【出願日】平成23年1月31日(2011.1.31)
【出願人】(594155551)
【Fターム(参考)】