説明

トルク検出装置

【課題】回転軸に加わる回転トルクと共に回転軸の回転角度を検出可能としながら、軸方向長さの短縮要求に応え得るトルク検出装置を提供する。
【解決手段】回転軸としての第2軸1bに樹脂製の保持筒32を介して固定された回転部材としてのヨークリング3,3を備えるトルク検出部1の一側に、保持筒32の延長部に周設した大径の内歯車60と、この内歯車60に噛合する小径の外歯車61,62と、これらの回転角度を検出するための磁気センサ65,66とを備える回転角検出部6を並設する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転軸に加わる回転トルクを検出するためのトルク検出装置に関し、更に詳しくは、前記回転軸の回転角度を検出する回転角検出部を一体に備えるトルク検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ステアリングホイール等の操舵部材の回転操作に応じて操舵補助用のモータを駆動し、該モータの動力を操舵機構に加えて操舵を補助する電動パワーステアリング装置においては、操舵補助用のモータの駆動制御に用いるべく操舵部材に加えられる操舵トルクを検出する必要があり、この検出のために従来から、操舵部材と操舵機構とを連結するステアリング軸の中途に配設されたトルク検出装置が用いられている。
【0003】
このトルク検出装置は、検出対象となるステアリング軸(回転軸)を、操舵部材の側の第1軸と操舵機構の側の第2軸とに分割し、これら両軸を細径のトーションバーにより同軸上に連結して、操舵部材の回転操作によりステアリング軸に加えられる操舵トルク(回転トルク)を、トーションバーの捩れを伴って第1,第2軸間に生じる相対角変位を媒介として検出するように構成してある。
【0004】
第1,第2軸間の相対角変位の検出は、従来から種々の構成により実現されており、そのうちの一つとして、第1軸及び第2軸の一方と一体回転する円筒磁石と、この円筒磁石の外側を囲繞し、他方と一体回転するヨークリングとを回転部材として備え、これらの円筒磁石とヨークリングとの間の磁気回路の変化を、これらの外側を囲繞するように固定配置された検出手段により検出する構成としたトルク検出装置がある(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
ヨークリングは、リング形をなすヨーク本体の一側に軸方向に延びる磁極爪を周方向に複数等配してなり、夫々の磁極爪を周方向に交互に位置させた2個を1組として第1軸又は第2軸に固定されている。また円筒磁石は、ヨークリングの磁極爪と同数組の磁極を周方向に並設してある多極磁石であり、第2軸又は第1軸に外嵌固定してヨークリングの内側に位置させてある。
【0006】
このようなヨークリングと円筒磁石とは、第1,第2軸間に相対角変位が生じていない中立状態において、前者の磁極爪の夫々が、後者の周上に並ぶN,S極の境界上に整合するように周方向に位置決めしてある。これにより、ステアリング軸に操舵トルクが加わり第1,第2軸間に相対角変位が生じた場合、2個のヨークリングの磁極爪と円筒磁石の磁極との周方向の位置関係が互いに逆向きに変化し、この位置変化に応じて2個のヨークリング内に発生する磁束が変化するから、この磁束変化を検出することにより操舵トルクを知ることができる。
【0007】
なお2個1組のヨークリングは、相互間に前述した位置関係を保った状態で型成形された樹脂製の保持筒により一体化し、この保持筒の一側端部の内周に一体成形された固定用のカラーを介して第1軸又は第2軸の連結側端部に外嵌固定する取り付け構造が採用されている。円筒磁石も同様に、夫々の磁極を構成する短冊形の磁石片を周方向に複数並べ、型成形された樹脂製の保持筒により一体化して、この保持筒を介して第2軸又は第1軸に外嵌固定されている。
【特許文献1】特開2005−98821号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
さて、以上の如きトルク検出装置が配設されるステアリング軸の中途には、車両の各種の制御に用いられる舵角(操舵用の車輪の向き)を知るべく、前記ステアリング軸の回転角度を複数回転に亘って検出する回転角検出装置が配設される場合があり、この種の回転角検出装置をトルク検出装置と共に配設した場合、これらの装置がステアリング軸の中途に占める軸方向の長さが長くなるという問題がある。
【0009】
特に、ステアリング軸の中途には、所定のストロークに亘って略一定の抵抗下にてテレスコピックに短縮することにより車両の前面衝突時に加わる衝撃エネルギを吸収するエネルギ吸収機構が設けられる場合があり、この場合、エネルギ吸収に寄与するステアリング軸の短縮ストロークを長く確保するために、前述したトルク検出装置及び回転角検出装置の軸方向長さを可及的に短縮することが要求される。
【0010】
本発明は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、回転軸の回転トルクを検出するトルク検出装置の構成部品の一部を利用して回転角検出部を並設し、回転トルクと共に回転角度を検出可能としながら、軸方向長さの短縮要求に応え得るトルク検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の第1発明に係るトルク検出装置は、樹脂製の保持筒を介して回転軸に固定された回転部材を、該回転部材の外側に固定配置された検出手段により検出し、前記回転軸に加わる回転トルクを求めるようにしたトルク検出装置において、前記保持筒の一側の延長部に周設された内歯車と、該内歯車に噛合する外歯車と、該外歯車の回転角度の検出手段とを有し、該検出手段の検出結果に基づいて前記回転軸の回転角度を求める回転角検出部を並設してあることを特徴とする。
【0012】
また本発明の第2発明に係るトルク検出装置は、第1発明における内歯車が、前記保持筒と一体成形してあることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明の第1発明に係るトルク検出装置においては、トルクの検出対象となる回転軸に固定された回転部材の樹脂製の保持筒を一側に延長し、この延長部に周設した内歯車に噛合する外歯車の回転を媒介として前記回転軸の回転角度を検出する回転角検出部を設けたから、軸方向長さを最小限に抑えたコンパクトな構成により回転トルクと共に回転角度を検出することが可能となる。
【0014】
第2発明に係るトルク検出装置においては、回転角検出部を構成する内歯車を樹脂製の保持筒に一体成形したから、部品点数の削減と、組立て工数の削減とを実現することができる等、本発明は優れた効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下本発明をその実施の形態を示す図面に基づいて詳述する。図1は、本発明に係るトルク検出装置の縦断面図であり、本発明に係るトルク検出装置は、トーションバー10を介して同軸上に連結された2つの軸(第1軸1a及び第2軸1b)に加わるトルクを検出対象とするトルク検出部1を備えており、このトルク検出部1の一側に、第2軸1bの回転角度を検出対象として後述の如く構成された回転角検出部6を備えている。
【0016】
本発明に係るトルク検出装置は、トーションバー10を介して同軸上に連結された2つの軸(第1軸1a及び第2軸1b)に加わるトルクを検出対象とするトルク検出部1を備えており、このトルク検出部1の一側に、第2軸1bの回転角度を検出対象として後述の如く構成された回転角検出部6を備えている。
【0017】
トルク検出部1は、第1軸1aと一体回転する円筒磁石2と、第2軸1bと一体回転する2個一組のヨークリング3,3とを備え、更に、夫々のヨークリング3,3に発生する磁束を集める集磁リング4,4と、これらの集磁リング4,4の間に配設された2つの磁気センサ5,5とを備えている。図2は、トルク検出部1の構成部材の分解斜視図である。
【0018】
トーションバー10は、捩りばねとして細径の丸棒の両端に、第1,第2軸1a,2aとの連結のための太径短寸の連結部11,11を備えている。第1軸1a及び第2軸1bは、軸心部に形成された連結孔にトーションバー10両端の連結部11,11を夫々内嵌し、後述の如く周方向の位置決めを行った後、各別の連結ピン12,12を打設して連結されている。このように連結された第1軸1aと第2軸1bとに回転トルクが加えられた場合、この回転トルクの作用によりトーションバー10が捩れ変形し、第1軸1aと第2軸1bとの間には、前記回転トルクに対応する大きさを有する相対角変位が生じる。なお図1中には、トーションバー10と第2軸1bの連結部のみが示されている。
【0019】
図1に示すトルク検出装置は、電動パワーステアリング装置においてステアリングホイール等の操舵部材と舵取機構とを連結するステアリング軸に加わる操舵トルクの検出手段として構成されており、図において上位置にある第1軸1aを操舵部材に連結し、下位置にある第2軸1bを操舵機構に連結して、操舵のために操舵部材に加えられる操舵トルクが第1軸1a及び第2軸1bに加わるようにしてある。
【0020】
第2軸1bは、図1中に一部を示すハウジング8内に上下2つの軸受80,81により両持ち支持されており、これらの軸受80,81間に嵌着固定されたウォームホイール82を備えている。このウォームホイール82は、図示しない操舵補助用のモータの出力端のウォームに噛合させてあり、操舵補助用のモータが駆動された場合、該モータの動力がウォームホイール82に減速伝動され、第2軸1bを介して操舵機構に操舵補助力が加えられる構成となっている。
【0021】
このような第2軸1bは、軸受80の支持部よりも上位置に連設された円筒形の連結筒13を備えており、第1軸1aの下端部は、連結筒13の内側に挿入され、この連結筒13に内嵌されたブッシュ14により同軸を保って支持されている。
【0022】
第1軸1aと一体回転する円筒磁石2は、図2に示すように、周方向に複数の磁極(各複数のN極20,20…及びS極21,21…)を並設してなる多極磁石であり、短冊形の磁石片を周方向に複数並べ、型成形された樹脂製の保持筒22により一体化して構成されており、図1に示すように、保持筒22を介して第1軸1aに外嵌固定されている。
【0023】
第2軸1bと一体回転するヨークリング3,3は、図2に示すように、リング形をなすヨーク本体30の内周縁に、軸方向に延びる複数の磁極爪31,31…を周方向に等配をなして連設してなる軟磁性体製の円環である。磁極爪31,31…は、延設端に向けて縮幅された三角形状を有しており、2個のヨークリング3,3は、夫々の磁極爪31,31…の突設側を向き合わせ、周方向に交互に並べた状態で位置決めされ、これらの外側を覆うように円筒形に型成形された樹脂製の保持筒32により一体化されている。また保持筒32の一側端部の内周には、非磁性金属からなる固定用のカラー33が一体に固設されている。このカラー33は、ヨークリング3,3と共に保持筒32の型成形に際して一体化することができる。
【0024】
このように構成されたヨークリング3,3は、第2軸1b上端の連結筒13に保持筒32を、一側のカラー33を介して外嵌することにより第2軸1bと同軸をなして固定され、図1に示すように、第1軸1aに外嵌固定された円筒磁石2の外周面にわずかなエアギャップを隔てて対向し、周方向に以下に示す位置関係が得られるように組み付けられている。
【0025】
図3は、ヨークリング3,3と円筒磁石2との周方向の位置関係の説明図である。図3(b)には、組み付け時の位置関係が示されており、ヨークリング3,3と円筒磁石2とは、前者の磁極爪31,31…が後者の周上に並ぶN極20とS極21との境界と一致するように周方向に位置決めして組み付けられている。この状態において、2個のヨークリング3,3の磁極爪31,31…は、円筒磁石2の周上において互いに相隣するN極20とS極21との間に形成される磁界内に同一の条件下にて位置することとなり、これらの磁極爪31,31…の基部を連絡するヨーク本体30,30内に生じる磁束は同一となる。
【0026】
このような磁極爪31,31…とN極20及びS極21との間の位置関係は、円筒磁石2が固定された第1軸1aとヨークリング3,3が固定された第2軸1bとの間にトーションバー10の捩れを伴って生じる相対角変位に応じて、図3(a)又は図3(c)に示すように互いに逆向きに変化する。この変化が生じた場合、一方のヨークリング3の磁極爪31,31…と他方のヨークリング3の磁極爪31,31…とには、互いに逆の極性を有する磁力線が増加し、夫々のヨーク本体30,30に正負の磁束が発生する。このとき発生する磁束の正負は、円筒磁石2とヨークリング3,3との間、即ち、第1軸1aと第2軸1bとの間に生じる相対角変位の向きに応じて定まり、磁束の密度は、前記相対角変位の大きさに対応するから、この磁束を検出することにより、第1軸1aと第2軸1bとの間の相対角変位、即ち、第1,第2軸1a,1bに加わる回転トルク(操舵トルク)を知ることができる。
【0027】
このようにヨークリング3,3に発生する磁束は、夫々に対応する集磁リング4,4により集められ、磁気センサ5,5により検出される。集磁リング4,4は、ヨークリング3,3のヨーク本体30,30の外径よりもやや大きい内径を有する軟磁性材料製の円環であり、図2に示すように、夫々から軸長方向に延び、先端を略直角外向きに屈曲させてなる各一対の集磁部40,40を周方向の対応する位置に備えている。このような集磁リング4,4は、両者の集磁部40,40の延長側を向き合わせて同軸上に配置し、夫々の対応する集磁部40,40の先端が軸方向に所定の間隙を隔てて対向するように位置決めし、これらの外側を円筒形に型成形された樹脂製の保持筒41により覆って一体化されている。
【0028】
磁気センサ5,5は、ホール素子等の磁気検知素子を用いてなり、図2に示すように、集磁リング4,4の各一対の集磁部40,40の対向部間に夫々配してある。これらの磁気センサ5、5の配置は、集磁リング4,4と共に保持筒41の型成形に際して一体化することにより正しく実現することができる。
【0029】
このように集磁リング4,4及び磁気センサ5,5を保持する保持筒41は、図1に示すように、内面に露出する集磁リング4,4の夫々をヨークリング3,3の外側に近接対向せしめてハウジング8に内嵌固定されている。これにより集磁リング4,4には、夫々の内側に近接するヨークリング3,3に発生する磁束が誘導され、夫々の誘導磁束が各一対の集磁部40,40に集束されて対向部間に漏れ出し、磁気センサ5,5により検出される。ヨークリング3,3に発生する磁束は、前述の如く、第1軸1aと第2軸1bとの間の相対角変位に対応するから、磁気センサ5,5の出力変化に基づいて第1軸1a及び第2軸1bに加わる回転トルクを求めることができる。
【0030】
なお、集磁リング4,4に各一対の集磁突起40,40を設け、夫々の対向部間に磁気センサ5,5を配してあるのは、一方をトルク検出用とし、他方をフェイル判定用とするためである。このフェイル判定は、例えば、2つ磁気センサ5,5の出力を経時的に比較し、両者間に明らかな差が存在するとき、その前後に非定常な出力変化を示している磁気センサ7がフェイル状態にあると判定する公知の手順により行われる。
【0031】
以上の如きトルク検出部1を構成するヨークリング3,3の保持筒32は、図1に示すように上方に向けて適長延長されており、この延長端には、外周に所定数の歯を有する大径円板形の内歯車60が一体に周設されている。この内歯車60は、保持筒32の型成形に際して一体に構成することができるが、別体に設けた歯車を保持筒32の端部に外嵌し、接着等の手段により一体化してもよい。なお図2においては、内部のヨークリング3,3の形状を示すべく、保持筒32の延長部、及び延長端に設けた内歯車60の図示を省略してある。
【0032】
内歯車60は、集磁リング4,4及び磁気センサ5,5の保持筒41よりも上位置においてハウジング8の周壁の一部を外向きに張り出して形成された歯車室83に臨ませてあり、この歯車室83には、第1軸1aと平行をなす軸周りでの回転自在に2つの外歯車61,62(図1には一方のみ図示)が取り付けてある。図4は、図1のIV−IV線による横断面図であり、内歯車60及び外歯車61,62の位置関係が示されている。
【0033】
図4中に円板として略示する外歯車61,62は、内歯車60よりも小さいなる外径を有し、外周に形成された歯の数が相違させてあり、同じく円板として略示する内歯車60に周方向の異なる位置にて噛合させてある。これらの歯数は、内歯車60が複数回転に亘って回転する間に両歯車61,62の回転角度の組み合わせが一通りのみ存在するように定められている。外歯車61,62の一面には、図1及び図4中に破線により示すように磁石63,64が埋設してあり、これらの磁石63,64は、周方向に2分割して着磁された2極着磁の磁石としてある。
【0034】
図1に示すように歯車室83の側面には、外歯車61,62に夫々埋設された磁石63,64の着磁面と対向するように磁気センサ65,66が固設してあり、これらの磁気センサ65,66を検出端とし、内歯車60、外歯車61,62及び磁石63,64を構成要素として備える回転角検出部6が構成されている。
【0035】
内歯車60は、前述の如く、第2軸1bに嵌着固定された保持筒32に周設されており、第2軸1bの回転に伴って回転する。この回転は、内歯車60に噛合する2つの外歯車61,62に伝達され、これらの外歯車61,62が夫々に固設された磁石63,64と共に回転し、これらの磁石63,64の着磁面と対向配置された磁気センサ65,66は、外歯車61,62の回転に伴って周期的に変化する出力を発する。
【0036】
外歯車61,62は、前述のように設定された歯数を有しているから、磁気センサ65,66の出力は、内歯車60の複数回転、即ち、第2軸1bの複数回転に亘って互いに重なり合うことなく異なる周期にて変化する出力となるから、これらの出力を組み合わせることにより、第2軸1bの回転角度を複数回転に亘って一義に求めることができる。
【0037】
以上の実施の形態に示すトルク検出装置は、回転軸としての第2軸1bと一体回転するヨークリング3,3の樹脂製の保持筒32を一側に延長し、この延長部に周設された内歯車60に噛合する外歯車61,62の回転角度を検出することにより第2軸1bの回転角度を求めることができる回転角検出部6を構成したから、軸方向の占有長さを最小限に抑えながら、第1軸1a及び第2軸2bに加わる回転トルクと共に、第2軸1bの回転角度を検出することが可能となり、例えば、車両のステアリング軸の中途に介装されるトルク検出装置として用いた場合、衝撃エネルギの吸収ストロークの確保のための軸方向長さの短縮要求に応えることができる。
【0038】
ヨークリング3、3の保持筒32に周設される内歯車60は、ヨークリング3,3の位置決め保持のための保持筒32の型成形に際して一体成形することができ、別部品としての内歯車60が不要となることから、部品点数の削減、及び組立て工数の削減を図ることが可能となる。
【0039】
図5は、本発明に係るトルク検出装置の他の実施の形態を示す縦断面図である。この実施の形態に示すトルク検出装置は、図1に示す実施の形態と同様、トルク検出部1の一側に並設してある回転角検出部6を備える。トルク検出部1の構成及び動作は、図1に示す実施の形態と同様であり、対応する構成部材に図1と同一の参照符号を付して詳細な説明を省略する。
【0040】
トルク検出部6も、図1に示す実施の形態と同様に、内歯車60、外歯車61,62及び磁石63,64を備え、外歯車61,62に夫々埋設された磁石63,64と、これらに対向配置された磁気センサ65,66とを備えて構成されているが、図1に示す実施の形態と異なり、第1軸1aと一体回転する円筒磁石2の保持筒22を上方に延長し、この延長端に内歯車60が一体に周設され、歯車室83の側面に取付けた外歯車61,62に噛合させてある。この構成によれば、内歯車60は第1軸1aと一体回転するから、磁気センサ65,66の出力の組み合わせにより第1軸1aの回転角度を複数回転に亘って求めることができる。
【0041】
図5に示すトルク検出装置においても、回転軸としての第1軸1aと一体回転する円筒磁石2の樹脂製の保持筒22の延長部に内歯車60を周設し、この内歯車60を構成部品として含むトルク検出部6を並設したから、軸方向の占有長さを最小限に抑えながら、第1軸1a及び第2軸2bに加わる回転トルクと、第1軸1aの回転角度とを合わせてを検出することが可能となる。保持筒22に周設される内歯車60も、該保持筒22の型成形に際して一体成形することができ、部品点数の削減、及び組立て工数の削減を図ることが可能となる。
【0042】
なお以上の実施の形態においては、ヨークリング3,3の保持筒32又は円筒磁石2の保持筒22を上方に延長し、この延長部に内歯車60を設けてあるが、保持筒32又は保持筒22を下方に延長し、この延長部に内歯車60を設けて、この内歯車60、外歯車61,62、磁石63,64及び磁気センサ65,66を備える回転検出部6を、集磁リング4,4及び磁気センサ5,5を備えるトルク検出部1よりも下位置に配するようにしてもよい。また内歯車60は、保持筒32の両端部、保持筒32の中央部等、保持筒32の長さ範囲内の適宜の位置に設けることができる。
【0043】
また以上の実施の形態においては、磁石63,64を外歯車61,62に固定してあるが、例えば、外歯車61,62の回転軸を適宜に延長し、この延長端に設けた回転板に磁石63,64を固定して、これらの磁石63,64が外歯車61,62と一体回転するように構成してもよい。この場合、軸長方向寸法の短縮要求に応えながら、磁石63,64及び磁気センサ65,66をトルク検出部1から離して配置することができ、トルク検出部1との磁気的な相互干渉を排除して、回転トルク及び回転角度の安定した検出が可能となる。
【0044】
また以上の実施の形態においては、内歯車60を大径歯車とし、外歯車61,62を小径歯車としてあるが、これとは逆に、内歯車60を小径歯車とし、外歯車61,62を大径歯車としてもよく、内歯車60と外歯車61,62とは、前述したように、内歯車60が複数回転に亘って回転する間に両歯車61,62の回転角度の組み合わせが一通りのみ存在する歯数を定めてあればよい。
【0045】
更に以上の実施の形態においては、操舵部材と舵取機構とを連結するステアリング軸に加わる操舵トルクの検出手段としての適用例について述べたが、本発明に係るトルク検出装置は、回転軸に加わる回転トルクと共に回転軸の回転角度を検出することが要求される用途全般に適用可能であり、その他、特許請求の範囲に記載した事項の範囲内において種々変更した形態にて実施することが可能であることは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明に係るトルク検出装置の縦断面図である。
【図2】トルク検出部の構成部材の分解斜視図である。
【図3】ヨークリングと円筒磁石との周方向の位置関係の説明図である。
【図4】図1のIV−IV線による横断面図である。
【図5】本発明に係るトルク検出装置の他の実施の形態を示す縦断面図である。
【符号の説明】
【0047】
1a 第1軸(回転軸)、1b 第2軸(回転軸)、2 円筒磁石(回転部材)、3 ヨークリング(回転部材)、4 集磁リング(検出手段)、5 磁気センサ(検出手段)、
6 回転角検出部、60 内歯車、61,62 外歯車、65,66 磁気センサ(検出手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂製の保持筒を介して回転軸に固定された回転部材を、該回転部材の外側に固定配置された検出手段により検出し、前記回転軸に加わる回転トルクを求めるようにしたトルク検出装置において、
前記保持筒の一側の延長部に周設された内歯車と、該内歯車に噛合する外歯車と、該外歯車の回転角度の検出手段とを有し、該検出手段の検出結果に基づいて前記回転軸の回転角度を求める回転角検出部を並設してあることを特徴とするトルク検出装置。
【請求項2】
前記内歯車は、前記保持筒と一体成形してある請求項1記載のトルク検出装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−271565(P2007−271565A)
【公開日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−100443(P2006−100443)
【出願日】平成18年3月31日(2006.3.31)
【出願人】(000001247)株式会社ジェイテクト (7,053)
【Fターム(参考)】