説明

トレイ積上げ・分離機構、およびトレイ除給材装置

【課題】構成が簡易で、確実にトレイの積上げや分離が行えるトレイ積上げ・分離機構、およびトレイ除給材装置を提供する。
【解決手段】上下動することによりトレイ2を移動させる移動部21と、移動部21により上方向へ移動するトレイ2に当接することで傾動し、自重により所定位置に戻りトレイ2を保持する保持部22と、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トレイ積上げ・分離機構、およびトレイ除給材装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、製品のメカニカルな組立作業を行う製造ラインは、複数の製造工程を備えており、製造工程ごとに必要となる部品を、PFB(パーツフィーダーボール)等で供給し、供給した部品を画像認識などによりロボット等で把持させ、必要な位置に搬送させて組立てることが行われている。
【0003】
このような製造ラインにおいては、運搬の際に部品の姿勢を維持することが必要な部品や、傷つき易い部品等に対しては、部品を収容するトレイを用いて部品の供給を行っている。その場合、組立用ロボットに把持させる位置にトレイを供給するために、部品が収容され、積上げられたトレイを順次分離する装置を用いている。また、空となったトレイを排出するために、トレイを重ねて積上げる装置を使用している。このような装置は、トレイ積上げ・分離機構を用いて行っている。
【0004】
なお、特許文献1では、ICハンドラのマガジン分離機構として、ICマガジンの下方に挿入してマガジンを支承する爪部材と、ICマガジンの底面に当接して上下にピッチ送り作動可能な昇降受台と、ICマガジンの搭載を受けてマガジンを側方に移動させるシフタ等を設けた機構が開示され、爪部材にアクチュエーターを用いてマガジンの積上げ動作を行っている。また、特許文献2では、縦積み部品の分離機構として、往路・復路が異なるヒステリシス経路の溝カムを形成した案内板と、案内板に回動自在に軸支され弾性部材により所定の回動方向に付勢され、案内板に設けられたストッパにより係止保持されたシャッター等を具備した機構が開示されている。また、特許文献3では、段積みトレイの分離・積上げ機構として、トレイ収納枠と、トレイ収納枠に沿って昇降する昇降部と、昇降部に傾動自在に立設された分離爪レバーとを有し、分離爪レバーがトレイを支持した状態で、昇降部が上昇または下降することで、トレイの分離や積上げを行うことが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭62−191321号公報
【特許文献2】特開昭60−144239号公報
【特許文献3】特開2003−252436号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1では、各構成部をシーケンス制御する必要があるため、センサー等を用いた自動制御が必要であり、制御の設計に付加が掛かることが懸念される。また、特許文献2では、カムを用いることで、構造が複雑となり調整が難しくなることが懸念される。特許文献3では、レバーを駆動させるドグや、ドグの当接する部品等、構成部品数が多く、組み立て工数に時間を要することで、コストアップになり易いという課題がある。
従って、構成が簡易で、確実にトレイの積上げや分離が行えるトレイ積上げ・分離機構、およびトレイ除給材装置が要望されていた。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上述した課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の適用例として実現することが可能である。
【0008】
[適用例1]本適用例に係るトレイ積上げ・分離機構は、上下動することによりトレイを移動させる移動部と、移動部により上方向へ移動するトレイに当接することで傾動する保持部と、を備えていることを特徴とする。
【0009】
このようなトレイ積上げ・分離機構によれば、保持部は、移動部により上方向へ移動するトレイに当接することで傾動する。このような、移動部と保持部とでトレイ積上げ・分離機構が構成できることにより、従来に比較して、トレイ積上げ・分離機構を簡易な構成で実現することができる。
【0010】
[適用例2]上記適用例に係るトレイ積上げ・分離機構において、保持部は、自重により所定位置に戻りトレイを保持することが好ましい。
【0011】
このようなトレイ積上げ・分離機構によれば、保持部は、自重により所定位置に戻ることでトレイを保持する。このような、移動部と保持部とでトレイ積上げ・分離機構が構成できることにより、従来に比較して、トレイ積上げ・分離機構を簡易な構成で実現することができる。
【0012】
[適用例3]上記適用例に係るトレイ積上げ・分離機構において、保持部をトレイを保持する位置に戻す方向に付勢する付勢部を備えていることが好ましい。
【0013】
このようなトレイ積上げ・分離機構によれば、例えば、意図しない外力が保持部に加わり、保持部が自重で初期位置に戻らなかった場合等に、付勢部を備えることにより、確実に初期位置に戻せるため、トレイ積上げ・分離機構の動作の信頼性を向上させることができる。
【0014】
[適用例4]上記適用例に係るトレイ積上げ・分離機構において、移動部は、保持部に保持させるトレイの数量に対応させて、保持部より上方向にトレイを移動させることが好ましい。
【0015】
このようなトレイ積上げ・分離機構によれば、所望の数量(枚数)のトレイを保持部より上方向に移動させることで、保持部に所望の枚数のトレイを保持させることができる。このように、移動部の移動量の制御を行うことで、保持部に保持させる枚数を簡易に制御することができる。従って、移動部の移動量を制御することで、所望の枚数のトレイを積み上げることや、積み上げられたトレイを所望の枚数に分離することが簡易で確実に行える。
【0016】
[適用例5]上記適用例に係るトレイ積上げ・分離機構において、トレイを収容する収容部を備えていることが好ましい。
【0017】
このようなトレイ積上げ・分離機構によれば、収容部を備えることにより、意図しない外力がトレイに加わった場合等に、トレイがずれること等を防止できる。従って、トレイのズレ等を防止して安定した積上げ、分離を行うことができる。
【0018】
[適用例6]上記適用例に係るトレイ積上げ・分離機構において、移動部は、トレイを載置して移動させる載置部を備えていることが好ましい。
【0019】
このようなトレイ積上げ・分離機構によれば、載置部を備えることで、移動部が移動(上下動)を行う際、トレイを安定させて移動させることができる。
【0020】
[適用例7]本適用例に係るトレイ除給材装置は、移動部によりトレイを移動させる位置にトレイを送入するトレイ送入機構と、上述したいずれかのトレイ積上げ・分離機構と、を備えていることを特徴とする。
【0021】
このようなトレイ除給材装置によれば、トレイ送入機構により、トレイを移動部が移動させる位置に送入すると、トレイ積上げ・分離機構の移動部が、送入されたトレイを移動させ、保持部にトレイを積み上げることができるため、効率的にトレイの送入及び積み上げができる。また、トレイ送入機構により、送入されたトレイに対して、トレイ積上げ・分離機構の移動部が、送入されたトレイを移動させ、保持部に順番にトレイを分離して保持することができるため、効率的にトレイの送入及び分離ができる。
【0022】
[適用例8]本適用例に係るトレイ除給材装置は、保持部に保持されたトレイを送出するトレイ送出機構と、上述したいずれかのトレイ積上げ・分離機構と、を備えていることを特徴とする。
【0023】
このようなトレイ除給材装置によれば、トレイ送出機構により、保持部に積み上げられたトレイを送出することができる。従って、積み上がったトレイを次工程に送出できる。また、トレイ送出機構により、分離されたトレイを送出することができる。従って、分離されたトレイを次工程に送出できる。
【0024】
[適用例9]本適用例に係るトレイ除給材装置は、上述したトレイ送入機構と、上述したトレイ送出機構と、上述したいずれかのトレイ積上げ・分離機構と、を備えていることを特徴とする。
【0025】
このようなトレイ除給材装置によれば、前工程でのトレイを保持部に積み上げることができ、積み上がったトレイを次工程に送出できる。また、前工程でのトレイを分離することができ、分離されたトレイを次工程に送出できる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】第1実施形態に係るトレイ積上げ・分離機構を含むトレイ除給材装置を上方から見た斜視図。
【図2】トレイ積上げ・分離機構を含むトレイ除給材装置を上方から見た斜視図。
【図3】トレイ積上げ・分離機構の側面および部分断面図。
【図4】トレイ積上げ・分離機構の側面および部分断面図。
【図5】トレイ積上げ・分離機構の側面および部分断面図。
【図6】第2実施形態に係るトレイ積上げ・分離機構を示す概断面図。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、実施形態を図面に基づいて説明する。
(第1実施形態)
【0028】
図1、図2は、第1実施形態に係るトレイ積上げ・分離機構20を含むトレイ除給材装置1を上方から見た斜視図であり、トレイ送入機構30の一部も示している。また、図1(a)は、トレイ2が無い状態を示し、図1(b)は、トレイ2がトレイ送入機構30によりトレイ待機位置にセットされた状態を示している。また、図2(a)は、トレイ待機位置のトレイ2がトレイ送入機構30により、トレイ積上げ・分離機構20のトレイ送入位置にセットされた状態を示し、図2(b)は、トレイ送入位置にセットされたトレイ2がトレイ積上げ・分離機構20により、積み上げられた状態を示している。
【0029】
図3、図4、図5は、トレイ積上げ・分離機構20の側面および部分断面図である。また、図3、図4、図5は、トレイ積上げ・分離機構20の動作を順番に示している。図3(a)は、トレイ2がトレイ送入位置にセットされた状態を示し、図3(b)は、図3(a)の状態での保持部22の周辺の部分拡大図を示し、図3(c)は、トレイ送入位置にセットされたトレイ2を上方に移動させて、保持部22に当接した状態を示し、図3(d)は、図3(c)の状態での保持部22の周辺の部分拡大図を示す。
【0030】
図4(a)は、上方に移動するトレイ2が保持部22を傾動させる状態を示し、図4(b)は、図4(a)の状態での保持部22の周辺の部分拡大図を示し、図4(c)は、上方に移動するトレイ2と保持部22との当接が外れた状態(所定距離移動した状態)を示し、図4(d)は、図4(c)の状態での保持部22の周辺の部分拡大図を示す。また、図5(a)は、上方に移動したトレイ2が保持部22に載置された状態(積み上げられた状態)を示し、図5(b)は、図5(a)の状態での保持部22の周辺の部分拡大図を示す。
【0031】
なお、図3〜図5は、保持部22に初期的にトレイ2が複数枚積み上げられている状態を基本として示し、この状態で、更に、次のトレイ2を積み上げる状態を示している。図1〜図5を参照して、トレイ積上げ・分離機構20の構成と動作を説明する。
【0032】
本実施形態のトレイ除給材装置1は、複数の製造工程を備えたメカニカルな組立作業を行う製造ラインの中の、1つの製造工程を担う装置として組まれている。そして、トレイ除給材装置1は、図示省略する別のトレイ除給材装置を用いて、その工程で必要となる部品をトレイに収容して供給した後の、空となったトレイ2を回収するために、空のトレイ2を順次積上げてストックする装置として組まれている。なお、積上げたトレイ2が所定数量となった場合、本実施形態では、作業者により回収(除材)される。
【0033】
なお、トレイ2に収容される部品は、本実施形態では、図示省略する円柱形状を有するローラーをコアとしてその外周に熱転写による印刷が行われるテープ状の印刷用テープが幾重にも巻回されたものである。なお、この部品を印刷用テープと称した場合、図示省略する別のトレイ除給材装置を用いて、トレイ2で供給された印刷用テープは、ロボットにより順次把持されて、印刷用テープを収容するケース等に順次組み込まれる。なお、本実施形態のトレイ除給材装置1は、このロボットの組み込み動作で、空となったトレイ2を回収する装置として使用されている。
【0034】
本実施形態を説明する図面は、説明の便宜上、XYZ直交座標系を用いて示す。詳細には、図1において、トレイ除給材装置1の後側から手前方向をY軸方向(+Y方向)とする。また、Y軸方向に直交して、トレイ除給材装置1の左方向から右方向をX軸方向(+X方向)、X軸方向およびY軸方向に直交し、トレイ除給材装置1の高さ方向をZ軸方向(+Z方向)とする。なお、+X方向を右方向(−X方向を左方向)、+Y方向を前方向(−Y方向を後方向)、+Z方向を上方向(−Z方向を下方向)として、適宜使用する。
【0035】
最初に、トレイ除給材装置1の概構成を説明する。
本実施形態のトレイ除給材装置1は、トレイ積上げ・分離機構20と、トレイ送入機構30とを有して構成されている。なお、本実施形態のトレイ除給材装置1は、上述したように、空のトレイ2を除去(除材)するために回収する動作を行う装置であるため、トレイ除給材装置1をトレイ除材装置1と略称して以降使用する。また、本実施形態のトレイ積上げ・分離機構20は、上述したように、空のトレイ2を除材するためにトレイ2を積上げる動作を行う機構であるため、トレイ積上げ・分離機構20をトレイ積上げ機構20と略称して以降使用する。
【0036】
なお、トレイ2は、平面視矩形状をなし、収容する部品の高さ以上の高さを有して形成される収容部2Aと、その周縁部には鍔部2Bを備えている。また、トレイ2は、収容部2Aの上部領域が一部重なる状態で、積み重ねる(積み上げる)ことが可能となっている。
【0037】
トレイ積上げ機構20は、トレイ2の積上げ方向(+Z方向)に上下動(Z軸方向の動作)することによりトレイ2を移動させる移動部21を備えている。また、トレイ積上げ機構20は、移動部21により上方向(+Z方向)へ移動するトレイ2に当接することで傾動すると共に、自重により所定位置に戻りトレイ2を保持する保持部22を備えている。
【0038】
トレイ除材装置1は、図1に示すように、トレイ送入機構30とトレイ積上げ機構20とを保持すると共に連結させるベースフレーム11を備え、また、このベースフレーム11を支える脚部12を備えて大略構成される。ベースフレーム11は、トレイ送入機構30からトレイ積上げ機構20に送られるトレイ2を案内する3つの板状の案内板111(111A,111B,111C)を備えている。
【0039】
案内板111は、それぞれ離間して設置される。また、案内板111は、それぞれ平行で水平に設置される。その両側に位置する案内板111A,111Bの外側面には、保持部22を傾動自在に固定する固定部112がそれぞれ設置されている。また、案内板111A,111Bの外側面には、積み上げられるトレイ2の外周を案内する収容部としての収容枠24がフレーム状に上方に延びて設置される。なお、収容枠24は、トレイ積上げ機構20を構成している。
【0040】
なお、保持部22は、図1(a)、図3(b)に示すように、2つの金属板221と1つの回転軸222から構成され、回転軸222を中心に2つの金属板221が回転自在となる、いわゆる蝶番と同様に構成されている。また、保持部22は、各固定部112の上面112aの前後に1つずつ設置され、計4つ設置されている。また、金属板221において、外側となる一方の金属板221Bは、固定部112の上面112aに3箇所固定ネジ113で固定される。また、内側となる他方の金属板221Aは、回転軸222を中心として、固定部112の上面112aより上方向に対して、回動自在(傾動自在)となるように設置されている。
【0041】
また、固定部112の内側面には、各金属板221Aの中央下部に相対して、溝部112Aが形成されている。溝部112Aには、図3(b)に示すように、保持部22(金属板221A)を初期位置に戻す方向に付勢する付勢部としてのバネ23が設置されている。保持部22(金属板221A)の初期位置とは、本実施形態では固定部112の上面112aとなる。
【0042】
バネ23は、図3(b)に示すように、引っ張りコイルばねで構成される。詳細には、バネ23は、バネ本体231と、バネ本体231の両端部となる引っ掛け部232,233とで構成される。そして、一方の引っ掛け部232が溝部112A側面に設置されたバネ固定ネジ114に引っ掛けられ、他方の引っ掛け部233が金属板221Aに形成される孔2211(図1(a)参照)に引っ掛けられて設置される。
【0043】
移動部21は、図1(a)に示すように、ベースフレーム11の下方向に設置されるシリンダー211(図3参照)と、シリンダー211の駆動に従動して、トレイ2を載置して移動(上下動)させる載置部としての載置板216とを備えている。載置板216は、離間した案内板111に挟まれる状態で設置されている。
【0044】
図3(a)に示すように、詳細には、シリンダー211は、ベースフレーム11に固定される第1案内板212に固定されている。また、シリンダー211のロッド211Aの上端部は、第2案内板213に固定されている。従って、第2案内板213はロッド211Aの上下する動作に従動して上下動を行う。
【0045】
また、ロッド211Aの両側で、第1案内板212と第2案内板213との間には、ロッド211Aの動作に従動する2つの第1ガイド軸214が伸縮自在に設置される。これにより、ロッド211Aが、上下動した場合、2つの第1ガイド軸214が従動して伸縮(上下動)することにより、第2案内板213は、水平を保った状態で上下動を行うことができる。
【0046】
また、第2案内板213の第1ガイド軸214に相対する上部には、それぞれ第2ガイド軸215が設置され、この2つの第2ガイド軸215の上端部には、上述した載置板216が設置される。この移動部21の構成により、シリンダー211が駆動し、ロッド211Aが上下動することに従動して、第1ガイド軸214が伸縮し、第2案内板213が上下動を行う。また、第2案内板213の上下動に第2ガイド軸215が従動して載置板216を上下動させる。
【0047】
トレイ送入機構30は、ベースフレーム11の後端部に設置されて、案内板111に沿って前後移動を行う。トレイ送入機構30は、案内板111の下方向に設置される移動部としての移動板31と、移動板31の上面で、離間した案内板111に挟まれる位置に垂設される押圧部としての押圧ピン32を備えている。なお、押圧ピン32は、上下方向に伸縮自在に設置されており、トレイ2をトレイ積上げ機構20に送る場合には、案内板111の上面より突出し、送った後、トレイ送入機構30の初期位置(図1(a)の位置)に戻る場合には、案内板111の上面より突出しない。
【0048】
次に、トレイ除給材装置1の動作を説明する。
トレイ除材装置1は、図1(b)に示すように、図示省略するトレイ送入機構により、右方向から空のトレイ2がトレイ送入機構30部分の案内板111上に移動する。この状態が、トレイ待機位置にトレイ2がセットされた状態となる。次に、トレイ送入機構30を構成する図示省略する駆動源としてのシリンダーが駆動することにより、移動板31が案内板111に沿って前方に移動を開始する。このとき、押圧ピン32は、トレイ2の後側の鍔部2Bを前方に押圧することで、トレイ2を前方に移動させる。
【0049】
図2(a)に示すように、トレイ送入機構30の動作により、トレイ2は、トレイ送入位置にセットされた状態となる。なお、このとき、図示省略するトレイ送入機構により、次のトレイ2が、トレイ待機位置にセットされる。トレイ送入位置までトレイ2を移動させたトレイ送入機構30は、押圧ピン32を縮めて初期位置に戻るため、次のトレイ2とぶつかることはない。
【0050】
なお、図2(a)に示ように、トレイ2がトレイ送入位置にセットされた状態は、図3(a),(b)の状態と同様であり、以降では、図3〜図5を参照して、トレイ積上げ機構20の動作説明を行う。
【0051】
図3(a),(b)に示すように、トレイ2がトレイ送入位置にセットされた場合、次に、トレイ積上げ機構20が動作を開始する。トレイ積上げ機構20の駆動源としてのシリンダー211が駆動することにより、載置板216がトレイ送入位置のトレイ2を載置し、上方向(+Z方向)に移動(上昇)を開始する。
【0052】
図3(c),(d)に示すように、載置板216によりトレイ2が上昇した場合、載置されたトレイ2の上部が保持部22(金属板221A)の下面側に当接し、更に金属板221Aを上方向に押し続ける。そして、載置板216に載置されたトレイ2は、金属板221Aを上方向に押すと共に、金属板221Aの上部に積み上げられている複数のトレイ2を押上げる。
【0053】
載置板216に載置されたトレイ2の押し上げる力が、バネ23の付勢力、及び金属板221Aと金属板221Aが載置する積み上げられたトレイ2との重量に勝った場合、金属板221Aは、図4(a),(b)に示すように、回転軸222を中心に、固定部112の上面112a(初期位置)から上方向に傾動する。また、載置板216に載置されたトレイ2は、金属板221Aの傾動により、金属板221Aに積み上げられていた最下段のトレイ2の下側に重ねられて更に上昇する。
【0054】
この動作により、金属板221Aは、上昇するトレイ2の外形に当接しながら傾動し、最後は、トレイ2の鍔部2Bに当接した後、トレイ2から外れる。金属板221Aは、トレイ2の当接から外れた場合、図4(c),(d)に示すように、金属板221A自体の自重と、バネ23による付勢力とにより、初期位置に戻る。
【0055】
なお、載置板216は、図4(c),(d)に示すように、金属板221Aとの当接が外れても上方向に所定距離だけ移動する。この所定距離は、金属板221Aがトレイ2との当接から外れ、確実に初期位置に戻ることができる距離、および、確実にトレイ2が積み上げられる距離として設定されている。
【0056】
載置板216は、所定距離移動した後、下方向(−Z方向)に移動(下降)を開始する。載置板216の下降に伴い、積み上げられたトレイ2も下降する。そして、図5(a),(b)に示すように、初期位置に戻った金属板221Aの上面に、最下段のトレイ2が当接する。なお、載置板216は下降を続けるため、載置板216に載置された積み上げられたトレイ2は、金属板221Aに載置される。下降を続けた載置板216は、載置板216の初期位置に戻り、その動作を停止する。この動作により、積み上げられた複数のトレイ2は、金属板221Aの上面に載置(保持)される。
【0057】
図2(b)に示すように、トレイ除材装置1は、金属板221A(保持部22)の上面に、トレイ2が積み上げられて保持された後、また、新たなトレイ2が、トレイ送入機構30により、トレイ送入位置にセットされ、上述したトレイ積上げ機構20の動作が繰り返えされる。また、トレイ2は、収容枠24に案内されながら、積み上げられる。
【0058】
なお、積み上げられたトレイ2の数量(枚数)が、所定の枚数となった場合、収容枠24のフレームに高さを変えて設置される複数のセンサー4により検出され、ブザーなどにより、設置された高さ毎に、所定の枚数になったことを報音する。本実施形態では、このブザー音により、作業者が積み上げられたトレイ2を排出させる。
【0059】
上述した第1実施形態によれば、以下の効果が得られる。
本実施形態のトレイ積上げ機構20によれば、トレイ2の積み上げ方向(Z軸方向)に上下動することによりトレイ2を移動させる移動部21と、移動部21により上方向へ移動するトレイ2に当接することで傾動し、自重により所定位置に戻りトレイ2を保持する保持部22と、保持部22を所定位置に戻す方向に付勢するバネ23とを備えている。
【0060】
この構成により、保持部22は、移動部21により上方向へ移動するトレイ2に当接することで傾動し、また、保持部22の自重およびバネ23の付勢力により所定位置に戻ることでトレイ2を保持する。このような、移動部21と保持部22とバネ23とでトレイ積上げ機構20が構成できることにより、従来に比較して、トレイ積上げ機構20を簡易な構成で実現することができる。
【0061】
また、本実施形態では、バネ23を用いているため、特に、意図しない外力が保持部22に加わった場合等においても、確実に初期位置に戻せるため、トレイ積上げ機構20の動作の信頼性を向上させることができる。
【0062】
また、保持部22に、従来のようにアクチュエーター等を用いる必要がなく、それに伴い、センサーの数量も削減することができる。併せて、保持部22と移動部21との動作のタイミングを制御するプログラム等も不必要となることで簡素化でき、トレイ積上げ機構20を正確で確実に動作させることができる。また、簡易な構成で、センサーの数量も削減でき、プログラムも簡素化できるため、トレイ積上げ機構20の設計工数、メンテナンス工数の削減を図ることができる。
【0063】
本実施形態のトレイ積上げ機構20によれば、収容枠24を備えることにより、意図しない外力がトレイ2に加わった場合等に、トレイ2がずれること等を防止できる。従って、トレイ2のズレ等を防止して安定した積み上げを行うことができる。
【0064】
本実施形態のトレイ積上げ機構20によれば、載置板216を備えることで、移動部21が移動を行う際、トレイ2を安定させて移動させることができる。
【0065】
本実施形態のトレイ除材装置1によれば、トレイ送入機構30により、トレイ2を移動部21が移動させる位置(トレイ送入位置)に送入すると、トレイ積上げ機構20の移動部21が、送入されたトレイ2を移動させ、保持部22にトレイ2を積み上げることができるため、効率的にトレイ2の送入及び積み上げができる。
(第2実施形態)
【0066】
図6は、第2実施形態に係るトレイ積上げ・分離機構50を示す概断面図である。また、図6は、トレイ積上げ・分離機構50の動作を説明する図であり、必要な構成部材を簡略化して図示している。また、図6(a)は、トレイ2が積み上げられた状態を示す図であり、図6(b)は、トレイ2が上昇する図であり、図6(c)は、トレイ2が所定位置まで上昇した図であり、図6(d)は、トレイ2が分離された図である。
【0067】
本実施形態のトレイ除給材装置5は、トレイ積上げ・分離機構50、及びトレイ送出機構(図示省略)を有して構成されている。なお、本実施形態のトレイ除給材装置5は、部品が収容されたトレイ2を供給(給材)するために積み重ねられたトレイ2を分離する動作を行う装置であるため、トレイ除給材装置5をトレイ給材装置5と略称して以降使用する。また、本実施形態のトレイ積上げ・分離機構50は、部品の収容されたトレイ2を給材するために、積み上げられたトレイ2を1枚ずつ分離する動作を行う機構である。従って、トレイ積上げ・分離機構50をトレイ分離機構50と略称して以降使用する。
【0068】
なお、本実施形態のトレイ分離機構50は、第1実施形態のトレイ積上げ機構20と同様に構成されている。異なるのは、トレイ2を順次積み上げる動作を行なわせるか、積み重ねられたトレイ2を順次分離させる動作を行なわせるかの違いである。従って、移動部21の移動距離を異ならせることにより、どちらにも基本的に対応させることができる。図6を参照して、トレイ分離機構50の構成と動作を説明する。
【0069】
上述したように、本実施形態のトレイ分離機構50は、第1実施形態のトレイ積上げ機構20と構成が同様となる。従って、トレイ分離機構50は、移動部51と保持部52を備えている。そして、移動部51は、本実施形態では、トレイ2を分離する方向(Z軸方向)に上下動することによりトレイ2を移動させる。また、保持部52は、本実施形態では、移動部51により上方向(+Z方向)へ移動するトレイ2に当接することで傾動すると共に、自重により所定位置に戻り、分離されたトレイ2を保持する。
【0070】
また、保持部52の構成は、第1実施形態と同様となるため、詳細は省略する。また、移動部51の構成も、第1実施形態と同様となるため、詳細は省略する。なお、図6においては、保持部52及び移動部51の構造を簡略化しているため、保持部52(金属板221と回転軸222)、バネ23、固定部112、移動部51(シリンダー211、載置板216)のみを図示している。
【0071】
図6(a)に示すように、載置板216には、供給するトレイ2が積み重ねられて載置される。なお、この状態では、積み重ねられたトレイ2の最上部のトレイ2は、保持部52の高さより低くなっている。この状態で、シリンダー211が駆動することにより、載置板216が上方向(+Z方向)に移動(上昇)を開始する。
【0072】
載置板216が積み重ねられたトレイ2を上昇させることで、最上段に位置するトレイ2の外形に、保持部52(金属板221A)が当接する。そして、載置板216が上昇を続けることにより、トレイ2の押し上げる力が、バネ23の付勢力、及び金属板221Aの重量に勝った場合、金属板221Aは、図6(b)に示すように、回転軸222を中心に、固定部112の上面112a(初期位置)から上方向に傾動する。
【0073】
なお、載置板216は、以降も所定距離上昇を続けることにより、図6(c)に示すように、金属板221Aが、最上段に位置するトレイ2の鍔部2Bに当接した後、このトレイ2から金属板221Aが外れる。この位置で載置板216の上昇は停止する。なお、所定距離は、金属板221Aがトレイ2との当接から外れ、確実に初期位置に戻ることができる距離、および、確実に最上段のトレイ2が分離できる距離として設定されている。
【0074】
金属板221Aが最上段のトレイ2の鍔部2Bから外れた場合、金属板221Aは、回動して初期位置に戻る。また併せて、載置板216が下方向(−Z方向)への移動(下降)を開始する。この金属板221Aと載置板216との動作により、最上段のトレイ2は、図6(d)に示すように、初期位置に戻った金属板221Aの上面に載置される。また、載置板216は、最上段以外の積み重ねられたトレイ2を載置したまま、載置板216の初期位置に戻って、動作を停止する。
【0075】
この一連のトレイ分離機構50の動作により、積み重ねられたトレイ2の最上段の1枚のトレイ2を最上段以外のトレイ2と分離でき、保持部52に保持させることができる。
【0076】
なお、分離されたトレイ2は、次工程のロボットによる把持を行わせる位置に、図示省略するトレイ送出機構により送出される。
【0077】
上述した第2実施形態によれば、第1実施形態と同様の効果が得られる他に以下の効果が得られる。
本実施形態のトレイ分離機構50によれば、トレイ2を分離する方向(Z軸方向)に上下動(Z軸方向の動作)することによりトレイ2を移動させる移動部51と、移動部51により上方向(+Z方向)へ移動するトレイ2に当接することで傾動すると共に、自重により所定位置に戻り、分離されたトレイ2を保持する保持部52を備えている。
【0078】
この構成により、保持部52は、移動部51により上方向へ移動するトレイ2に当接することで傾動し、また、保持部52の自重およびバネ23の付勢力により所定位置に戻ることでトレイ2を保持する。このような、移動部51と保持部52とバネ23とでトレイ分離機構50が構成できることにより、従来に比較して、トレイ分離機構50を簡易な構成で実現することができる。
【0079】
また、本実施形態では、バネ23を用いているため、特に、意図しない外力が保持部52に加わった場合等においても、確実に初期位置に戻せるため、トレイ分離機構50の動作の信頼性を向上させることができる。
【0080】
また、保持部52に、従来のようにアクチュエーター等を用いる必要がなく、それに伴い、センサーの数量も削減することができる。併せて、保持部52と移動部51との動作のタイミングを制御するプログラム等も不必要となることで簡素化でき、トレイ分離機構50を正確で確実に動作させることができる。また、簡易な構成で、センサーの数量も削減でき、プログラムも簡素化できるため、トレイ分離機構50の設計工数、メンテナンス工数の削減を図ることができる。
【0081】
本実施形態のトレイ分離機構50によれば、載置板216を備えることで、移動部51が移動を行う際、トレイ2を安定させて移動させることができる。
【0082】
本実施形態のトレイ分離機構50によれば、移動部51は、保持部52に保持させる1枚のトレイ2に対応させて、保持部52より上方向に所定距離移動するようにトレイ2を移動させている。言い換えると、移動部51は、保持部52に保持させる1枚のトレイ2に対応させて、保持部52より上方向に位置するようにトレイ2を移動させている。これにより、保持部52に保持させる1枚のトレイ2に対応させて移動部51の上下動の制御を行うことで、1枚のトレイ2を保持部52より上方向に位置するように移動させ、保持部52に保持させることができる。従って、移動部の移動量を制御することで、1枚のトレイ2の分離を簡易で確実に行える。
【0083】
なお、上述した第1、第2実施形態に限定されず、その要旨を逸脱しない範囲において種々の変更や改良などを加えて実施することが可能である。変形例を以下に述べる。
【0084】
前記第1実施形態のトレイ除材装置1は、トレイ積上げ機構20と、空のトレイ2をトレイ積上げ機構20に供給するトレイ送入機構30を備えている。しかし、これに限られず、トレイ除材装置1は、トレイ送入機構30で積み上げられたトレイ2を、送出するトレイ送出機構を備えていてもよい。これにより、トレイ積上げ機構20で積み上げられたトレイ2を作業者が回収する必要がなくなり、積み上げられたトレイ2を次工程に送出できる。
【0085】
また、トレイ除材装置1は、トレイ送入機構30とトレイ積上げ機構20とトレイ送出機構とを備えていてもよい。これにより、前工程でのトレイ2を保持部22に積み上げることができ、積み上がったトレイ2を次工程に送出できる。
【0086】
前記第2実施形態のトレイ給材装置5は、トレイ分離機構50を備えている。しかし、これに限られず、トレイ分離機構50に部品が収容されるトレイ2を送入するトレイ送入機構や、トレイ分離機構50で分離されたトレイ2を次工程に送出するトレイ送出機構を備えていてもよい。これにより、作業者が、トレイ2を送入や送出する必要がなくなる。
【0087】
前記第2実施形態のトレイ分離機構50は、移動部51と保持部52とにより、積み重ねられたトレイのうち、最上段の1枚のトレイ2を分離して保持させている。しかし、分離する枚数は1枚に限られない。複数枚を分離させるには、複数枚に対応した、移動部51の移動量を設定し、保持部52より上方向に分離したい複数枚が位置するようにトレイ2を移動させることでよい。従って、保持部52に所定枚数のトレイ2を分離保持させる場合には、その枚数に対応する移動部51の移動量を設定し、保持部52より上方向に所定数のトレイ2が位置するように移動させることでよい。
【0088】
前記第1実施形態のトレイ積上げ機構20は、保持部22(金属板221A)を初期位置に戻す方向に付勢する付勢部としてのバネ23を有している。しかし、バネ23を有していなくてもよい。その場合には、傾動した金属板221Aは、トレイ2との当接から外れた場合には、自重により初期位置に戻ることができるため、意図しない外力が加わらない限り、第1実施形態と同様の効果を奏することができる。このことは、第2実施形態においても同様となる。
【0089】
前記第1実施形態のトレイ積上げ機構20は、空のトレイ2を積み上げているが、これに限られず、部品が収容されたトレイを積み上げることでもよい。
【0090】
前記第2実施形態のトレイ給材装置5は、トレイ分離機構50と、トレイ送出機構とを備えているが、部品が収容されて積み重ねられたトレイ2を、トレイ分離機構50に送入するトレイ送入機構を備えていてもよい。
【符号の説明】
【0091】
1,5…トレイ除給材装置、2…トレイ、20,50…トレイ積上げ・分離機構、21,51…移動部、22,52…保持部、23…バネ、24…収容枠、30…トレイ送入機構。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下動することによりトレイを移動させる移動部と、
前記移動部により上方向へ移動する前記トレイに当接することで傾動する保持部と、
を備えていることを特徴とするトレイ積上げ・分離機構。
【請求項2】
請求項1に記載のトレイ積上げ・分離機構であって、
前記保持部は、自重により所定位置に戻り前記トレイを保持することを特徴とするトレイ積上げ・分離機構。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のトレイ積上げ・分離機構であって、
前記保持部を前記トレイを保持する位置に戻す方向に付勢する付勢部を備えていることを特徴とするトレイ積上げ・分離機構。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載のトレイ積上げ・分離機構であって、
前記移動部は、前記保持部に保持させる前記トレイの数量に対応させて、前記保持部より上方向に前記トレイを移動させることを特徴とするトレイ積上げ・分離機構。
【請求項5】
請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載のトレイ積上げ・分離機構であって、
前記トレイを収容する収容部を備えていることを特徴とするトレイ積上げ・分離機構。
【請求項6】
請求項1〜請求項5のいずれか一項に記載のトレイ積上げ・分離機構であって、
前記移動部は、前記トレイを載置して移動させる載置部を備えていることを特徴とするトレイ積上げ・分離機構。
【請求項7】
前記移動部により前記トレイを移動させる位置に前記トレイを送入するトレイ送入機構と、
請求項1〜請求項6のいずれか一項に記載のトレイ積上げ・分離機構と、を備えていることを特徴とするトレイ除給材装置。
【請求項8】
前記保持部に保持された前記トレイを送出するトレイ送出機構と、
請求項1〜請求項6のいずれか一項に記載のトレイ積上げ・分離機構と、を備えていることを特徴とするトレイ除給材装置。
【請求項9】
請求項7に記載のトレイ送入機構と、
請求項8に記載のトレイ送出機構と、
請求項1〜請求項6のいずれか一項に記載のトレイ積上げ・分離機構と、を備えていることを特徴とするトレイ除給材装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−1473(P2013−1473A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−131907(P2011−131907)
【出願日】平成23年6月14日(2011.6.14)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】