説明

ドアシステムおよびエレベータ装置

【課題】異なる大きさのドアにカメラを設置した場合でも異物を検知するための画素数を設定する必要のないドアシステムおよびエレベータ装置を提供すること。
【解決手段】水平方向に対向した一対の縦枠と、縦枠の上端部同士を接続する上枠と、上枠に設置され縦枠および上枠で構成される出入り口近傍を撮影するカメラと、一対の縦枠のそれぞれに床面から同じ高さに設置されたマーカと、カメラの出力画像中のマーカの位置をもとにカメラからマーカまでの距離Rを算出するR演算部と、カメラの出力画像中のマーカの位置をもとに角θを算出するθ演算部と、Rおよびθから出入り口の寸法を算出する枠体寸法判定部と、出入り口の寸法から異物判定の検出画素数を算出する異物判定画素数設定部と、カメラの出力画像および検出画素数から異物の有無を判定する異物判定部と、異物判定部の出力をもとにドアの開閉動作を制御する扉駆動制御装置とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カメラの出力画像をもとにドアの開閉動作の制御を行うドアシステムおよびエレベータ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動ドアやエレベータなど、モータなどの駆動力によってドアが自動的に開閉する機器においては、ドアが閉鎖動作するときにドアとドアの間またはドアと枠の間に指や物を挟む、または、ドアが開放動作するときにドアと枠の間に指や物が引きこまれることにより、重大な事故につながる可能性がある。
【0003】
このような事故を防止するために、ドア上方にカメラを設置して出入り口近傍を撮像し、ドア閉鎖動作時に異物を検知した場合に閉鎖動作を停止させることで挟まれ事故を防止するドアシステムが提案されている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−280362号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来のドアシステムでは、上枠に設置したカメラにより出入り口近傍を撮像し、ドアに挟まれる可能性のある異物を検出している。このように上枠に設置したカメラにより出入り口近傍の異物を検出する場合、出入り口の大きさが変わると、カメラ出力画像に現れる異物の画素数が異なる。例えば、床に置かれた同じ大きさの異物がカメラに写った場合でも、小さなドアの上枠にカメラを設置した場合はカメラ出力画像に現れる異物の画素数は多くなり、大きなドアの上枠にカメラを設置した場合はカメラ出力画像に現れる異物の画素数は少なくなる。したがって、カメラを設置するドアの大きさに合わせて異物を検知するための画素数を設定しなければならないという問題があった。
【0006】
本発明は前記のような問題を解決するためになされたもので、異なる大きさのドアにカメラを設置した場合でも異物を検知するための画素数を設定する必要のないドアシステムおよびエレベータ装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によるドアシステムは、水平方向に対向した一対の縦枠と、縦枠の上端部同士を接続する上枠と、上枠に設置され縦枠および上枠で構成される出入り口近傍を撮影するカメラと、一対の縦枠のそれぞれに床面から同じ高さに設置されたマーカと、カメラの出力画像中のマーカの位置をもとにカメラからマーカまでの距離Rを算出するR演算部と、カメラの出力画像中のマーカの位置をもとに一方のマーカの端点A、カメラBおよび他方のマーカの端点Cからなる角ABCの大きさθを算出するθ演算部と、Rおよびθから出入り口の寸法を算出する枠体寸法判定部と、出入り口の寸法から異物判定の検出画素数を算出する異物判定画素数設定部と、カメラの出力画像および検出画素数から異物の有無を判定する異物判定部と、異物判定部の出力をもとにドアの開閉動作を制御する扉駆動制御装置とを備えるものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、水平方向に対向した一対の縦枠と、縦枠の上端部同士を接続する上枠と、上枠に設置され縦枠および上枠で構成される出入り口近傍を撮影するカメラと、一対の縦枠のそれぞれに床面から同じ高さに設置されたマーカと、カメラの出力画像中のマーカの位置をもとにカメラからマーカまでの距離Rを算出するR演算部と、カメラの出力画像中のマーカの位置をもとに一方のマーカの端点A、カメラBおよび他方のマーカの端点Cからなる角ABCの大きさθを算出するθ演算部と、Rおよびθから出入り口の寸法を算出する枠体寸法判定部と、出入り口の寸法から異物判定の検出画素数を算出する異物判定画素数設定部と、カメラの出力画像および検出画素数から異物の有無を判定する異物判定部と、異物判定部の出力をもとにドアの開閉動作を制御する扉駆動制御装置とを備えているので、ドアの大きさによって異物を検知する画素数を設定する必要が無く、異物の検知を高精度に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施の形態1によるドアシステムの概略構成を示す図である。
【図2】本発明の実施の形態1によるドアシステムのブロック図である。
【図3】本発明の実施の形態1によるカメラの出力画像を説明するための図である。
【図4】本発明の実施の形態1によるマーカの設置位置を説明するための図である。
【図5】本発明の実施の形態1による差分画像演算部の出力画像を説明するための図である。
【図6】本発明の実施の形態1による検出領域設定部の動作を説明するための図である。
【図7】本発明の実施の形態1によるドアシステムにおける異物検知の動作を示すフローチャートである。
【図8】本発明の実施の形態1によるドアシステムがドアの開放動作を行うとき動作を示すフローチャートである。
【図9】本発明の実施の形態1によるドアシステムがドアの閉鎖動作を行うとき動作を示すフローチャートである。
【図10】本発明の実施の形態2によるカメラの出力画像を説明するための図である。
【図11】本発明の実施の形態2によるマーカ認識部の動作を説明するための図である。
【図12】本発明の実施の形態2によるマーカの検出結果と距離Rの関係を説明するための図である。
【図13】本発明の実施の形態3による検出領域設定部の動作を説明するための図である。
【図14】本発明の実施の形態4によるドアシステムのブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
実施の形態1
図1は、本発明の実施の形態1によるドアシステム10の概略構成を示したものである。自動で開閉するドア11は、枠体12の内側に形成されており、枠体12は、左右の縦枠12aおよび12bと、縦枠12aおよび12bの上端を互いに連結する上枠12cにより構成されている。マーカ20aおよび20bは、それぞれ、縦枠12aおよび12bに設置されており、マーカ20aおよび20bの下端は、床面13から高さHの位置にある。カメラ30および投光器40は、上枠12cに設置されており、画像処理装置50に接続されている。画像処理装置50、システム制御装置90、扉開閉制御装置60、および、扉駆動装置70は、直列に接続されている。システム制御装置90の出力は、警報装置80にも入力されている。
【0011】
マーカ20aおよび20bの高さ方向の長さはLであり、画像処理装置50において確実に認識するために光学的な再帰性反射の特性を有する素材であることが望ましい。再帰性反射の特性を有する素材としては、例えば、コーナーキューブなどがある。
【0012】
カメラ30は、上枠12cに下方向を撮影するように設置されており、出入り口近傍14を撮影し、画像データを画像処理装置50に出力する。ここで、画像データは2次元の画像情報であり、画素値を持った画素の集合である。画素値は、その画素に対応する出入り口近傍14の位置からの反射光量の強度に比例した値である。カメラ30は、具体的にはCCD(Charge Coupled Device)カメラやCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)カメラなどの撮像装置であり、2次元配列した画像素子と出入り口近傍14からの反射光を画像素子上に結像するレンズとを有する。カメラ30は、マーカ20aおよび20bを含む領域を撮影する。また、カメラ30は、画像処理装置50からの指示により、投光器40の点灯時に撮影した画像データと、投光器40が消灯時に撮影した画像データとを出力する。また、カメラ30に、投光器40から照射される波長の光を選択的に透過する光学フィルタを設置しても良い。カメラ30に光学フィルタを設置することにより、太陽光や他の光源による影響を抑制することができ、誤検知を減らすことができる。
【0013】
投光器40は、上枠12cに下向きに設置され、カメラ30が撮影するマーカ20aおよび20bを含む出入り口近傍14を照射する。投光器40の光源は、赤外線LED(Light Emitting Diode)等の発光ダイオード、レーザダイオード、ランプ等、マーカ20aおよび20bを含む出入り口近傍14を照射できるものであればよい。また、投光器40は効率よく照射するためにレンズユニットを含んでいても良く、レンズユニットには凸型又は凹型レンズ、フレネルレンズ、円柱レンズ、円柱フレネルレンズ等の1つの又は複数を組み合わせたレンズなどがある。
【0014】
画像処理装置50は、カメラ30の出力である画像データを取得し、出入り口近傍14の異物の有無を判断する。
【0015】
図2は、本発明の実施の形態1によるドアシステムの構成を示すブロック図である。システム制御装置90は、ドアシステム全体の制御を行うものである。同期駆動部51は、システム制御装置90からの指示に従って、投光器40を動作させた状態でカメラ30を動作させ、カメラ30は投光器点灯時撮像画像を画像情報記憶部52に出力する。さらに、同期駆動部51は、投光器40を動作させない状態でカメラ30を動作させ、カメラ30は投光器消灯時撮像画像を画像情報記憶部52に出力する。差分画像演算部53は、画像情報記憶部52に記憶された投光器点灯時撮像画像と投光器消灯時撮像画像との差分画像を作成し、マーカ認識部54および異物判定部59に出力する。マーカ認識部54は、差分画像演算部53の出力である差分画像から、マーカ位置を特定し、その位置情報をθ演算部55aと検出領域設定部58とに出力する。
【0016】
カメラ30から出力される画像データの例である図3を用いて、マーカ認識部54の動作について説明する。図3では、画像データの中に、ドア11、床面13、出入り口近傍14、縦枠12aおよび12b、マーカ20aおよび20bが含まれている。マーカ20aおよび20bは、光学的な再帰性反射の特性を有する素材であるため、投光器点灯時撮像画像と投光器消灯時撮像画像とで画素値が大きく異なる。よって、投光器点灯時撮像画像と投光器消灯時撮像画像との差分画像においてマーカ20aおよび20bの部分のみが大きな値を持っており、閾値処理などによって差分画像からマーカ20aおよび20bの位置を特定できる。マーカ認識部54は、特定したマーカ20aおよび20bの画像データであるマーカ画像を、検出領域設定部58に出力する。また、特定したマーカ20aおよび20bの位置から、マーカ20aの上辺とマーカ20bの上辺の間の距離であるΔ’、および、マーカ20aの下辺とマーカ20bの下辺の間の距離であるΔを求め、θ演算部55aに出力する。ここで、投光器点灯時撮像画像と投光器消灯時撮像画像の差分画像からマーカ20aおよび20bの位置を検出しているので、外乱光の影響が抑制され、撮像画像中のマーカの位置を精度よく認識できる。
【0017】
θ演算部55aとR演算部55bの動作について、図3と図4とを用いて説明する。図3は、カメラ30から出力される画像データの例である。図4は、マーカの設置位置を説明するための図であり、出入り口近傍14を正面から見た図である。
【0018】
図3において、マーカ20aの上辺とマーカ20bの上辺の間の距離であるΔ’は、図4における角θ’に対応するものであり、マーカ20aの下辺とマーカ20bの下辺の間の距離であるΔは、図4における角θに対応する。これらの関係は、次式のように表せる。
【0019】
【数1】

【0020】
式(1)において、aはカメラの特性により決定される量であり、予めθ演算部55aに記憶しておくものとする。θ演算部55aは、式(1)によりθおよびθ’を求め、θの値を枠体寸法判定部56に出力するとともに、θおよびθ’の値をR演算部55bに出力する。
【0021】
次に、カメラ30からマーカ20aまたは20bの下端までの距離Rは、以下の式で表される。
【0022】
【数2】

【0023】
式(2)において、Lはマーカ20aおよび20bの高さ方向の長さであり、予めR演算部55bに記憶しておくものとする。R演算部55bは、式(2)によりRを求め、枠体寸法判定部56に出力する。
【0024】
枠体寸法判定部56では、以下の式を用いてドア11の高さHHと横幅JJを求める。
【0025】
【数3】

【0026】
式(3)において、Hは床面13からマーカ20aまたは20bの下端までの高さであり、予め枠体寸法判定部56に記憶しておくものとする。枠体寸法判定部56は、式(3)により求めたHHおよびJJの値を、異物判定画素数設定部57に出力する。
【0027】
異物判定画素数設定部57は、予めカメラ30から距離Dだけ離れた被写体を撮影したときの1画素あたりの長さである「分解能」の情報を記憶しており、このカメラの分解能と、枠体寸法判定部56から出力されたHHおよびJJの値とから、床面13付近の1画素あたりの長さが求められる。次に、検出対象の大きさに応じて、カメラ30の出力画像における検出対象の画素数である異物判定画素数U1を決定し、伊津部判定部59に出力する。例えば、エレベータの出入り口近傍14において挟まれは引き込まれの可能性がある「幼児の手」や「ペットの紐」を検出対象とする場合、これらの大きさに対応した画素数を異物判定画素数U1として出力する。
【0028】
検出領域設定部58の動作について、図5および図6を用いて説明する。図5はマーカ認識部54から検出領域設定部58に入力されたマーカ画像の例であり、図6は図5の一部を拡大したものである。検出領域設定部58は、図5に示されたマーカ画像から、マーカ20bの上辺の中心点P(x、y)とマーカ20aの上辺の中心点P(x、y)を求める。ここで、基準となる点P(x、y)およびP(x、y)は、マーカ20aおよび20bの中心点や、マーカ20aおよび20bの下辺の中心点としても良いが、マーカ20aおよび20bの上辺の中心点がカメラ30に近いため、最も精度良く位置を特定することができる。
【0029】
図6は、図5におけるPおよびPの周囲を拡大した図である。検出領域設定部58は、PとPを結ぶ直線C1を求め、直線C1を含む画素群であるG1を求める。図6において、G1は斜線で示された画素群である。検出領域設定部58は、画素群G1を異物判定領域として異物判定部59に出力する。このように、異物を判定する領域をマーカ20aおよび20bの上辺の中心点を結んだ領域に限定することにより、異物の検出を出入り口近傍14に限定することができ、異物の誤検出を抑制することができる。
【0030】
次に、異物判定部59による異物判定の動作について説明する。異物判定部59では、差分画像演算部の出力である差分画像から異物判定領域G1を抽出し、この中で一定以上の値を持つ領域を抽出する。次に、抽出された領域が異物判定画素数U1に相当する場合、これを異物として検出する。異物判定部59において異物を検出した場合、異物を検出したことを示す信号をシステム制御装置90に出力する。
【0031】
以上に説明した画像処理装置50の動作の例を、図7のフローチャートを用いて説明する。画像処理装置50は、システム制御装置90の指令により、検出モードおよび設定モードの2つのモードを実行する。設定モードでは、画像情報記憶部52において投光器点灯時撮影画像z1cおよび投光器消灯時撮影画像z2cを取得し(S003、S004)、差分画像演算部53により差分画像z3cを生成する(S005)。次に、マーカ認識部54において、差分画像z3cからマーカ位置を判定する(S006)。マーカ位置から、θ演算部55aおよびR演算部55bにおいてθおよびRの値を求め、さらに、θおよびRの値から、枠体寸法判定部56においてドア11の高さと横幅を求める。この結果から、異物判定画素数設定部57において、異物判定画素数を求める(S007)。また、検出領域設定部58では、マーカ認識部54の出力から、異物判定領域G1を求める(S008)。
【0032】
一方、検出モードでは、システム制御装置90の指令により、検出動作を開始する(S009)。まず、ステップS003からS005と同様に、画像情報記憶部52および差分画像演算部53において差分画像z3aを生成する(S010、S011、S012)。次に、予め設定された時間だけ待機し(S013)、再び、画像情報記憶部52および差分画像演算部53において差分画像z3bを生成する(S010、S011、S012)。異物判定部59では、これらの異なる時刻で取得した差分画像z3aと差分画像z3bの差分画像を求める(S017)。ステップS017で求めた差分画像から異物判定領域G1の画素データを抽出し、この中で予め設定された閾値以上の値を持つ画素領域S1を抽出する(S018)。最後に、画素領域S1が異物判定画素数U1に相当する場合(S019)、これを異物ありと判定し、システム制御装置90に異物を検出したことを示す信号を出力する(S020)。ここで、投光器点灯時撮影画像と投光器消灯時撮影画像の撮影間隔を十分短時間とすることで、時間変換する太陽光やその他の外乱光による誤動作を抑制することができる。
【0033】
扉開閉制御装置60は、扉駆動装置70を制御する。扉駆動装置70は、ドア11の開閉動作を行う。扉駆動装置70は、例えば、モータなどの駆動源と、その駆動源から駆動力の供給を受けてドアを開閉するためのワイヤや歯車などの駆動力伝達部材とを、有する。警報装置80は、例えば、スピーカ、照明、モニタなどを用いて、音声、ブザー音、光、映像などによって、ドア11の近くにいる人に警告を発する。システム制御装置90は、画像処理装置50、扉開閉制御装置60、および、警報装置80と接続されている。
【0034】
図8および図9のフローチャートを用いて、ドアの開閉および警報の発報の動作について説明する。図8は、ドアシステム10がドア11の閉鎖状態から開放動作を行うとき動作を説明したフローチャートである。システム制御装置90は、検出動作を開始する(S023)。システム制御装置90が画像処理装置50から異物を検出したことを示す信号を受け取った場合(S024)、異物があると判断し、警報装置80に対して警告動作の指示を行い、扉開閉制御装置60にドア11の閉鎖状態維持を指示する。警報装置80は、音の発生、発光、画像の表示等の警告動作を行い(S025)、扉開閉制御装置60は扉駆動装置70を制御してドア11が閉鎖された状態を維持する(S026)。ドア11の閉鎖状態が維持されている状態で、システム制御装置90が画像処理装置50から異物を検出したことを示す信号を再度受け取った場合(S027)、異物が出入り口近傍14に異物が引き続き存在していると判断し、警報装置80に再び警告動作を行わせ(S028)、扉開閉制御装置60を制御して、ドア11を低速にて開放する動作を開始する(S029)。その後、システム制御装置90は、画像処理装置50の検出動作を停止し(S030)、ドア11が開放状態となるまで低速にて開放する動作を継続する(S031)。
【0035】
一方、ステップS024あるいはステップS027においてシステム制御装置90が画像処理装置50から異物を検出したことを示す信号を受け取らなかった場合、異物はないと判断し、扉開閉制御装置60を制御してドア11を通常の速度で開放する動作を開始し(S032)、画像処理装置50の検出動作を停止し(S033)、ドア11が開放状態なるまで通常の速度で開放する動作を継続する(S034)。
【0036】
図8に示したフローチャートのようにドア11の開放動作を行うことにより、出入り口近傍14内に異物が存在すると判断された場合に、ドア11の開放動作を開始する前に、警報装置80が異物の存在をドア11付近の人に警告を発する。これにより、警告された人は、ドア11の近くの人や物がドア11に引き込まれる可能性があることを知ることができる。さらに、再度、異物があると判断された場合に、ドア11を低速で開放するため、人や物がドア11に引き込まれる可能性を少なくすることができる。
【0037】
図9は、ドアシステム10がドア11の開放状態から閉鎖動作を行うとき動作を説明したフローチャートである。システム制御装置90は、検出動作を開始する(S037)。システム制御装置90が画像処理装置50から異物を検出したことを示す信号を受け取った場合(S038)、異物があると判断し、扉開閉制御装置60にドア11の開放状態の維持を指示し、画像処理装置50に検出動作を継続させる。
【0038】
一方、ステップS038において画像処理装置50から異物を検出したことを示す信号を受け取らなかった場合、扉開閉制御装置60に対してドア11の閉鎖動作開始を指示する(S039)。ドア11の閉鎖動作中もシステム制御装置90は画像処理装置50に検出動作を継続させ(S040)、画像処理装置50から異物を検出したことを示す信号を受け取ら内限りはドア11の閉鎖動作を継続する(S041)。ドア11の閉鎖状態となった場合は(S042)、画像処理装置50の検出動作を停止し(S043)、動作を終了する。
【0039】
ドア11が閉鎖状態となる前にシステム制御装置90が画像処理装置50から異物を検出したことを示す信号を受け取った場合、扉開閉制御装置60を制御してドア11を開放状態に戻す(S044)。
【0040】
図9に示したフローチャートのようにドア11の閉鎖動作を行うことにより、出入り口近傍14内に異物が存在すると判断された場合に、ドア11が閉鎖動作開始前であればドア11の開放状態を維持し、ドア11が閉鎖動作中であればドア11の閉鎖動作を中断して開放状態に戻す。これにより、人や物がドア11に引き込まれる可能性を少なくすることができる。
【0041】
実施の形態2.
本発明の実施の形態2によるドアシステム10を実施の形態1によるドアシステム10と比べると、マーカ20aおよび20bが特定のパターン模様を持つマーカ21aおよび21bに変わっている以外は、同じである。
【0042】
本発明の実施の形態2によるドアシステム10では、マーカ21aおよび21bが特定のパターン模様を持っており、画像処理装置50のマーカ認識部54において画像データ中のパターンを抽出し、R演算部55bがマーカ認識部54において抽出されたパターンの長さからカメラからマーカまでの距離Rを求めている。
【0043】
図10は、本発明の実施の形態2によるカメラ30から出力される画像データの例である。図10に示すように、マーカ21aおよび21bのピッチパターンのピッチ間隔は、矢印22の方向に向かって、すなわち、カメラ30に近づくにつれて単調に増加している。本発明の実施の形態2においては、マーカ認識部54は、差分画像演算部53の出力からマーカ21aおよび21bのピッチパターンを認識し、ピッチ間隔を抽出する。
【0044】
図11は、マーカ認識部54において抽出されたピッチ間隔の例である。横軸は図10における矢印22の方向の画素数、縦軸は画素値を表している。図12は、d(i)、d(i+1)、d(i+2)の3つの画素数とカメラからマーカまでの距離Rとの関係を、示している。横軸は、(i)、(i+1)、(i+2)それぞれのピッチの位置を示しており、縦軸は、検出されたd(i)、d(i+1)、d(i+2)の画素数を示している。例えば、カメラからマーカまでの距離が比較的短いR1のときは、d(i)、d(i+1)、d(i+2)のそれぞれの値は大きくなり、なおかつ、d(i+2)とd(i)との差であるピッチ間隔増加率I(R=R1)も大きくなる。カメラからマーカまでの距離が比較的長いR3のときは、d(i)、d(i+1)、d(i+2)のそれぞれの値は小さくなり、なおかつ、d(i+2)とd(i)との差であるピッチ間隔増加率I(R=R3)も小さくなる。マーカ認識部54は、上記のようにして求められたピッチ間隔増加率Iを、R演算部55bに出力する。
【0045】
R演算部55bでは、マーカ認識部54の出力であるピッチ間隔増加率Iと、θ演算部の出力であるθとから、カメラからマーカまでの距離Rを求める。
【0046】
このように、画像データにおけるピッチパターンの画素数を元にカメラからマーカまでの距離Rを求めることにより、マーカ21aおよび21bの一部が汚れた場合においてもカメラからマーカまでの距離Rを精度良く求めることができる。
【0047】
実施の形態3.
本発明の実施の形態3によるドアシステム10を実施の形態1によるドアシステム10と比べると、検出領域設定部58による異物判定領域の設定方法が異なる。図13は、本発明の実施の形態3による検出領域設定部58の動作を説明するための図である。検出領域設定部58は、マーカ20bの上辺の中心点P(x、y)とマーカ20aの上辺の中心点P(x、y)を結ぶ直線C1を求める。次に直線C1を中心として図13の縦軸方向に2N+1画素の範囲を異物判定領域G2とする。ここで、Nは、検出領域設定部58に予め設定されている値である。
【0048】
このように、異物判定領域を広く設定することにより、出入り口近傍14において幅広く異物検知を行うことが可能となる。また、出入り口近傍14においてドア11と直交する方向に細長い形状の異物がある場合でも、検出することが可能となる。
【0049】
実施の形態4.
図14は、本発明の実施の形態4によるドアシステム10の概略構成を示したものである。図14を実施の形態1によるドアシステム10の概略構成である図2と比べると、マーカ20aおよび20bが、カメラ30と同期して自発光するマーカ22aおよび22bに変わった以外は、同じである。
【0050】
本発明の実施の形態4によるドアシステム10では、同期駆動部51は、システム制御装置90からの指示に従って、マーカ22aおよび22bを発光させた状態でカメラ30を動作させ、カメラ30はマーカ発光時撮像画像を画像情報記憶部52に出力する。さらに、同期駆動部51は、マーカ22aおよび22bを発光させない状態でカメラ30を動作させ、カメラ30はマーカ消灯時撮像画像を画像情報記憶部52に出力する。なお、マーカ22aおよび22bから発光される光の波長は単色であることが望ましく、カメラ30にマーカ22aおよび22bから発光される波長の光を選択的に透過するフィルタを設けることにより、太陽光などの外乱光の影響を抑制することができる。
【0051】
実施の形態5.
本発明の実施の形態5によるドアシステム10を実施の形態1によるドアシステム10と比べると、マーカ20aおよび20bが取り外し可能である以外は、同じである。
【0052】
本発明の実施の形態5によるドアシステム10では、マーカ20aおよび20bとして取り外し可能なものと用いる。例えば、表面は光学的な再帰性反射の特性を有する素材で
あり、裏面は粘着性を備えるものとする。本発明の実施の形態5によるドアシステム10では、ドアシステム10の据え付け時または保守作業時のみ、マーカ20aおよび20bを所定の位置に設置し、画像処理装置50に対して設定モードを実行し、設定モードの実行が完了した後にマーカ20aおよび20bを取り外す。
【0053】
このように、マーカ20aおよび20bを取り外し可能とすることにより、マーカが汚れることによりマーカの認識精度が低下するといったことを防ぐことができる。また、ドアシステムの意匠上の影響も排除できる。
【符号の説明】
【0054】
12a 縦枠
12b 縦枠
12c 上枠
20a マーカ
20b マーカ
30 カメラ
55a θ演算部
55b R演算部
56 枠体寸法判定部56
57 異物判定画素数設定部
59 異物判定部
60 扉開閉制御装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水平方向に対向した一対の縦枠と、
前記縦枠の上端部同士を接続する上枠と、
前記上枠に設置され前記縦枠および前記上枠で構成される出入り口近傍を撮影するカメラと、
前記一対の縦枠のそれぞれに床面から同じ高さに設置されたマーカと、
前記カメラの出力画像中の前記マーカの位置をもとに前記カメラから前記マーカまでの距離Rを算出するR演算部と、
前記カメラの出力画像中の前記マーカの位置をもとに一方の前記マーカの端点A、前記カメラBおよび他方の前記マーカの端点Cからなる角ABCの大きさθを算出するθ演算部と、
前記Rおよび前記θから前記出入り口の寸法を算出する枠体寸法判定部と、
前記出入り口の寸法から異物判定の検出画素数を算出する異物判定画素数設定部と、
前記カメラの出力画像および前記検出画素数から異物の有無を判定する異物判定部と、
前記異物判定部の出力をもとにドアの開閉動作を制御する扉駆動制御装置と
を備えるドアシステム。
【請求項2】
カメラ撮影時に出入り口近傍を照射する投光器を備えることを特徴とする請求項1に記載のドアシステム。
【請求項3】
マーカは光学的な再帰性反射の特性を有することを特徴とする請求項1または2に記載のドアシステム。
【請求項4】
マーカはカメラ撮影時に自発光することを特徴とする請求項1に記載のドアシステム。
【請求項5】
マーカはカメラに近づくにつれてピッチが単調に増加するピッチパターンを有することを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載のドアシステム。
【請求項6】
マーカは取り外し可能であることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載のドアシステム。
【請求項7】
異物判定部はカメラによって異なる時刻に取得した画像の差分画像および検出画素数から異物の有無を判定することを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載のドアシステム。
【請求項8】
異物判定部の出力をもとに警報を発する警報装置をさらに備えたことを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載のドアシステム。
【請求項9】
警報装置はドアが閉鎖動作中に異物判定部で異物があると判定された場合に警告を発することを特徴とする請求項8に記載のドアシステム。
【請求項10】
扉駆動制御装置はドアが開放動作中に異物判定部で異物があると判定された場合にドアの開放動作停止または反転動作の制御を行うことを特徴とする請求項1から9のいずれか1項に記載のドアシステム。
【請求項11】
扉駆動制御装置はドアが閉鎖動作中に異物判定部で異物があると判定された場合にドアの閉鎖動作停止または反転動作の制御を行うことを特徴とする請求項1から10のいずれか1項に記載のドアシステム。
【請求項12】
請求項1から11のいずれか1項に記載のドアシステムを備えたエレベータ装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate


【公開番号】特開2012−214285(P2012−214285A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−81925(P2011−81925)
【出願日】平成23年4月1日(2011.4.1)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】