説明

ドアパネル

【課題】接着剤による接合力を保持できるドアパネルを提供する。
【解決手段】外側板21と内側板23とを接着剤により接合する。内側板23の接合部27中に、接着剤34を溜めるための接着剤溜め空間67を有する接着剤溜め部68を備えている。この内側板23の接着剤溜め部68は、外側板21の一群の通気穴25と対応する場所に設けた通気用開口部30に沿って、縦方向の接合部27中に連続凸状に設ける。さらに、接着剤溜め部68は、縦方向の接合部27の中央に配置し、左右部に等しい接着代を確保する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外側板と内側板を備えたドアパネルに関する。
【背景技術】
【0002】
図18は、作業機械としての油圧ショベル10を示し、下部走行体11に上部旋回体12が旋回可能に設けられ、この上部旋回体12上にキャブ13、作業装置14、エンジンなどの動力装置15が搭載されている。動力装置15は、上部カバー16およびサイドドア17,18などにより覆われている。サイドドア17,18は、後述するヒンジにより開閉自在に取付けられ、ラッチ装置19により閉じ状態が保持される。
【0003】
作業機械のサイドドア17,18としては、外側板および内側板からなる2重構造のドアパネルがあり、このようなドアパネルを製造する場合、その内側板は、外側板に対して接着剤による接合力で固定されており、内側板と外側板の接着剤塗布による接着面は、凹凸のないフラットな面である(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平9−228412号公報(第3頁、図8)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この従来のサイドドアは、外側板と内側板の接着面がフラットな面であるため、ところによっては、接着剤が完全に押し潰されて、接着剤の残りが少なくなり、接着剤による接合力が低下する問題がある。
【0005】
特に、酷暑仕様のドアには開口部を設ける必要があるので、その開口部周辺では強度が低下し、残った接着面の面積も小さくなり、品質的に接着剤による接合力を保つことが困難になる。
【0006】
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、接着剤による接合力を保持できるドアパネルを提供することを目的とし、特に、酷暑仕様の開口部を設けた場合は、接着剤による接合力を保持できるとともに開口部周辺での強度低下を防止できるドアパネルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載された発明は、外側板と、外側板の内側面に固定される内側板とを具備し、内側板は、外側板に接着剤により接着された接合部と、接合部中に設けられ接着剤を溜める接着剤溜め空間を有する接着剤溜め部とを備えたドアパネルである。
【0008】
請求項2に記載された発明は、請求項1記載のドアパネルにおける接着剤溜め部が、縦方向の接合部中に連続的に設けられたものである。
【0009】
請求項3に記載された発明は、請求項2記載のドアパネルにおける接着剤溜め部が、接合部の中央に配置されたものである。
【0010】
請求項4に記載された発明は、請求項1乃至3のいずれか記載のドアパネルにおける外側板が、通気穴を備え、内側板は、外側板の通気穴と対応する場所に設けられた通気用開口部を備え、内側板の接着剤溜め部は、この通気用開口部に沿って接合部中に連続凸状に設けられたものである。
【0011】
請求項5に記載された発明は、請求項1乃至4のいずれか記載のドアパネルにおける接着剤溜め部の接着剤溜め空間を、高さ/幅=1/2〜1/4に形成されたほぼ円弧状の断面としたものである。
【0012】
請求項6に記載された発明は、請求項1乃至5のいずれか記載のドアパネルにおける接着剤溜め部が接合部から立上がる立上部の断面形状を、凹状の円弧断面に形成したものである。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に記載された発明によれば、外側板に接着剤により接着された内側板の接合部中に、接着剤を溜める接着剤溜め空間を有する接着剤溜め部を設けたので、外側板に内側板を押圧して密着させたとき、外側板と内側板の接合部との間から押出された接着剤は、接着剤溜め部の接着剤溜め空間に残留して、この接着剤が硬化したときの接合力を保持できる。
【0014】
請求項2に記載された発明によれば、縦方向の接合部中に連続的に設けられた接着剤溜め部は、柱としても機能し、上下方向の荷重に対する強度を向上できる。
【0015】
請求項3に記載された発明によれば、接合部の中央に配置された接着剤溜め部には、外側板と内側板の接合部との間から押出された接着剤が均等に残留して、内側板の接合部をバランス良く外側板に接着できる。
【0016】
請求項4に記載された発明によれば、酷暑仕様で外側板の通気穴と対応する場所に内側板の通気用開口部を設けた場合は、この通気用開口部に沿って接合部中に連続凸状に設けられた内側板の接着剤溜め部によって接着剤を残留させるので、少ない接着面積でも接着剤による接合力を保持して確実な強度向上を図ることができるとともに、通気用開口部に沿って接合部中に連続凸状に設けられた内側板の接着剤溜め部により、接合部の強度も向上して、開口部の周辺での強度低下を防止できる。
【0017】
請求項5に記載された発明によれば、高さ/幅=1/2〜1/4に形成されたほぼ円弧状断面の接着剤溜め空間は、高さが抑えられた偏平状の空間であるため、外側板と内側板の接合部との間から接着剤溜め空間に押出された接着剤が、押出された箇所に留まって固化するので、接着剤による接合力を確実に保持できる。
【0018】
請求項6に記載された発明によれば、凹状の円弧断面に形成された接着剤溜め部の立上部と、外側板との間には、漸次拡大する僅かな隙間が形成されるので、この立上部の隙間に接着剤が均一に留まりやすく、接着剤による接合力を確実に保持できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明を、図1乃至図13に示された第1実施の形態、図14および図15に示された第2実施の形態、図16および図17に示された第3実施の形態を参照しながら詳細に説明する。
【0020】
図13は、作業機械としての油圧ショベル10を示し、下部走行体11に上部旋回体12が旋回可能に設けられ、この上部旋回体12上にキャブ13、作業装置14、エンジンなどの動力装置15が搭載されている。動力装置15は、上部カバー16およびサイドドア17などにより覆われている。サイドドア17は、後述するヒンジにより開閉自在に取付けられ、後述するラッチ装置により閉じ状態が保持される。
【0021】
図3乃至図7は、一方のサイドドア17のドアパネル20を示し、図4および図7に示されるように、このドアパネル20は、外側板21と、この外側板21に対し凹凸状にプレス成形されて外側板21の内側面に凹部を固定されるとともに凸部と外側板21との間に空間22を形成する内側板23と、これらの外側板21と内側板23との間の空間22に充填された発泡材24とを具備している。
【0022】
外側板21は、内側板23の1.2〜5.0倍の板厚にする。言い換えれば、内側板23は、外側板21より薄い板厚の鉄板を用いる。例えば、外側板21を1.2mmの鉄板とした場合、内側板23は、相反する強度と加工性とを満足するために、0.6mm、0.8mmなどの鉄板を用いることが望ましい。
【0023】
発泡材24は、図7に示されるように内側板23の内面に貼付された未発泡状態のシート状の発泡素材24aを、外側板21と内側板23との間の空間22内で加熱して発泡させ、成形する。発泡素材24aは、20倍程度の体積膨張率を有する高発泡性のゴム系吸音材が望ましい。発泡素材24aの加熱は、焼付塗装用加熱設備を用いて、焼付塗装と同時に行なうことが望ましい。
【0024】
図3および図5に示されるように、外側板21には、正6角形に形成された複数の通気穴25を通気穴25各辺の結合部を介してハニカム状に集合させた通気穴集合部としてのハニカム状通気穴集合部26が、穴加工により複数組設けられている。
【0025】
図6に示されるように、内側板23は、凹状に成形されて外側板21に接合された凹部としての接合部27,28と、これらの接合部27,28に対し膨出成形された凸部29とを具備している。
【0026】
内側板23の接合部27は、外側板21のハニカム状通気穴集合部26と対応して横方向に3列形成され、これらの接合部27には、外側板21のハニカム状通気穴集合部26より大きな通気用開口部30がそれぞれ穴加工により設けられている。
【0027】
すなわち、外側板21のハニカム状通気穴集合部26と、内側板23の凹部としての接合部27に開口された通気用開口部30は、1対1で対応して複数組設けられているが、内側板23の通気用開口部30は、外側板21のハニカム状通気穴集合部26よりやや大きく形成されている。
【0028】
図8乃至図10に示されるように、外側板21の周縁部31は、内側板23の周縁部32を包みこむように折返して押しつぶすようにヘミング加工する。すなわち、外側板21は、内側板23の周縁部32を包みこむように折返し平坦に押しつぶして形成された周縁部31により内側板23の周縁部32を咬込み結合するへミング加工部33を備えている。
【0029】
図8に示されるように、内側板23の少なくとも周縁部32は、接着剤34により外側板21に接着され、この接着剤34によりへミング加工部33において外側板21と内側板23とを接合するとともにシールする。接着剤34は、粘性と熱硬化性を有するペーストタイプ構造用接着剤が望ましい。
【0030】
図9および図10に示されるように、外側板21の周縁部31にて外側板21の角部の折返し部分、および中間折曲部の折返し部分をそれぞれ切欠いて、角部切欠き溝35および中間折曲部切欠き溝36が形成されている。外側板21の角部切欠き溝35と対応する内側板23の角部は、円弧状に成形されている。
【0031】
図11は、サイドドア17の分解斜視図であり、外側板21と、この外側板21に対し位置決めされて外側板21の内側面に固定された内側板23との間で挟まれるようにして、ヒンジ取付用の内部補強板41が固定されている。
【0032】
この内部補強板41は、中央部に凹凸部が繰返し形成された凹凸接合部42が設けられ、この凹凸接合部42の一端側および他端側にヒンジ取付面部43,44がそれぞれ連続的に形成され、これらのヒンジ取付面部43,44に隣接して、一方の位置決め用嵌合部45および他方の位置決め用嵌合部46が凹溝状に形成されている。
【0033】
この内部補強板41に対し、内側板23のヒンジ取付側の凸部29には、中央部に凹凸部が繰返し形成された凹凸接合部47が設けられ、この凹凸接合部47の一端側および他端側にヒンジ取付窓48,49がそれぞれ開口され、これらのヒンジ取付窓48,49に隣接して、一方の位置決め用嵌合部51および他方の位置決め用嵌合部52が下方へ突出する突起状に形成されている。
【0034】
内部補強板41は、一方の位置決め用嵌合部45と他方の位置決め用嵌合部46の大きさが異なる。同様に、内側板23は、一方の位置決め用嵌合部51と他方の位置決め用嵌合部52の大きさが異なる。内部補強板41と内側板23の一方の対応位置にそれぞれ設けられた一方の位置決め用嵌合部45と位置決め用嵌合部51は、相互に凹凸嵌合し、内部補強板41と内側板23の他方の対応位置にそれぞれ設けられた他方の位置決め用嵌合部46と位置決め用嵌合部52は、相互に凹凸嵌合する。
【0035】
この内部補強板41の位置決め嵌合時に、内部補強板41の凹凸接合部42が、接着剤の塗布された内側板23の凹凸接合部47の裏面に密着されるとともに、内部補強板41のヒンジ取付面部43,44が内側板23のヒンジ取付窓48,49に位置合わせされるので、これらのヒンジ取付窓48,49を通して、内部補強板41のヒンジ取付面部43,44にヒンジ53,54をそれぞれ溶接付けして取付ける。
【0036】
図11に示されるように、外側板21および内側板23には、ラッチ装置を取付けるための取付穴55a,55bが設けられている。
【0037】
図12は、内部補強板41を組み込んだドアパネル20の製造方法を示し、(a)外側板21に対し凸状に膨出成形された内側板23の凸部29内に内部補強板41を位置決めして凹凸接合部42,47間に塗布された接着剤で接着する。外側板21と接合する内側板23および内部補強板41の接合部面にも、熱硬化性の接着剤34が塗布されている。(b)外側板21の周縁部31をへミング加工する途中の折曲かつ開放状態で、この外側板21の周縁部31内に接着剤塗布状態の内側板23を内部補強板41を介し嵌着して外側板21に対し内側板23および内部補強板41を位置決めする。(c)外側板21の周縁部31をへミング加工で内側板23の周縁部32を挟んで折返すことにより、外側板21の内側面に内側板23および内部補強板41を接合固定するとともにシールする。
【0038】
図12に示されるように、内側板23は、凹状に形成されて外側板21に密着された接合部27に対し、凸部29が膨出成形されているが、この凸部29の中間部に段差状の補強変形部56が形成されている。内側板23の接合部27は、接着剤34により外側板21に接着されている。凸部29および補強変形部56は、図6および図10などに示されるように凹状の接合部27に沿って無端状に形成されている。
【0039】
図1に示されるように、内側板23は、外側板21に接着剤34により接着された接合部27中に、接着剤34を溜める接着剤溜め空間67を有する接着剤溜め部68を備えている。
【0040】
この内側板23の接着剤溜め部68は、外側板21の一群の通気穴25と対応する場所に設けられた通気用開口部30に沿って、縦方向の接合部27中に連続凸状に設けられている。さらに、接着剤溜め部68は、縦方向の接合部27の中央に配置され、左右部に等しい接着代が確保されている。
【0041】
図2に示されるように、この接着剤溜め部68の接着剤溜め空間67は、高さh/幅w=1/2〜1/4に形成されたほぼ円弧状の断面であり、接着剤溜め部68が接合部27から立上がる立上部69の断面形状は、凹状の円弧断面に成形され、例えばタンジェントカーブで形成されている。高さhは、3〜8mm程度が望ましい。
【0042】
そして、内側板23の平らな接合部27の中に、接着剤の粘度を利用して留まりやすいサイズの大きさに調整された窪み状の接着剤溜め部68をレール状に成形して、接着剤34を確実に留まらせることにより、全体的な強化を図る。また、酷暑仕様として通気用開口部30を設けた場合は、その接着剤溜め部68を柱として残し、少ない接着面積での確実な強度向上を図るとともに、その接着剤溜め部68の窪み形状自体も強度の向上に貢献する。
【0043】
図6に示されるように、内側板23は、接合部27,28に対し膨出成形された凸部29を備えているが、その凸部29の中でも、通気用開口部30の上下部には、外側板21に連続的に接着された横方向の接合部27に沿って連続的に膨出成形された突状の補強用凸部29aが設けられ、さらに、この補強用凸部29aを横断する方向に凹状に強化用凹部70が形成されている。
【0044】
次に、このドアパネル20の製造工程を説明する。
【0045】
図7に示されるように内側板23の凸部29内に発泡素材24aを貼付し、図12(a)に示されるように内側板23の一側の凸部29内にヒンジ取付用の内部補強板41を接合し、さらに、内側板23の凹部としての接合部27および内部補強板41に、外側板21との接着に必要な熱硬化性の接着剤34を塗布し、図12(b)に示されるように外側板21と内側板23とを位置決めして重ね合わせ、図12(c)に示されるように外側板21の周縁部31をへミング加工で内側板23の周縁部32を挟んで折返し、折つぶすことにより、外側板21の内側面に内側板23および内部補強板41を接合する。
【0046】
そして、焼付塗装用加熱設備の加熱により、接着剤34を硬化させて外側板21に内側板23および内部補強板41を接着し、さらに、図7に示されるように焼付塗装用加熱設備の加熱により発泡素材24aを発泡させて、空間22内に発泡材24を充填し、さらに、焼付塗装用加熱設備の加熱により、外側板21および内側板23の外表面に予め吹付けられた塗料を焼付ける。
【0047】
例えば、接着剤34の熱硬化は、150℃で5分間の加熱をし、発泡材24の発泡は、150℃で20分間の加熱をし、焼付塗装は、180℃〜200℃で20分間の加熱をする。これらの加熱は、既存の焼付塗装用加熱設備を用いて行なうことができる。
【0048】
最後に、図6に示されるように、内側板23のヒンジ取付窓48,49を通して、内部補強板41のヒンジ取付面部43,44にヒンジ53,54をそれぞれ隅肉溶接などで溶接付けして取付けるとともに、外側板21および内側板23の取付穴55a,55bにラッチ装置19を取付ける。
【0049】
次に、図1乃至図13に示された第1実施の形態の効果を説明する。
【0050】
図7に示されるように、外側板21とこの外側板21より薄い内側板23とで形成された中空の閉断面構造により軽量化を図ることができるとともに、内側板23とこれより厚い(内側板23の1.2〜5.0倍の板厚を有する)外側板21とで形成された十分な高さをもった中空の閉断面構造により、外側からの衝撃に対して十分な強度を確保できる強固なドアパネルを安価に提供できる。
【0051】
さらに、外側板21と内側板23との間に充填された発泡材24により振動を吸収して、ドアパネル自体から発生する音を効果的に減衰させることができ、すなわち音の減衰効果が高く、低騒音化を図ることができる。
【0052】
図4および図6に示されるように、内側板23の凹状に成形された接合部27に対して凸部29を膨出成形することで、内側板23は、外側板21より薄い板厚であっても、凹凸構造により剛性を増すように成形して、強度を上げることができる。
【0053】
図8および図9に示されるように、内側板23の周縁部32を包みこむように外側板21の周縁部31を折返し押しつぶして形成されたヘミング加工部により、内側板23より板厚の厚い外側板21であっても、一定形状のヘミング加工部33を得ることができ、安定した品質の折返結合部を得ることができる。
【0054】
すなわち、外側板21の周縁部により内側板23の周縁部を咬込み結合するへミング加工部33は、内側板23の周縁部を包みこむように折返して平坦に押しつぶされたので、外側板21の折曲げ加工部を円形断面に膨出させる従来のへミング仕上より、外側板21のへミング加工部33の形状を安定させ、均一な品質を保つことができる。
【0055】
このとき、外側板21の角部および中間折曲部では外側板21の周縁部を折返す加工も容易でないが、図9および図10に示されるように角部切欠き溝35により外側板21の角部の折返し部分を切欠いたので、また中間折曲部切欠き溝36により外側板21の中間折曲部の折返し部分を切欠いたので、外側板21の角部および中間折曲部でも、外側板21の周縁部31を折返して平坦に押しつぶす加工を容易にかつ正確にできる。
【0056】
図8に示されるように、外側板21と内側板23とを、接着剤34による接着と、外側板21のへミング加工部33とにより、確実に一体化できる。
【0057】
図9に示されるように、外側板21の角部切欠き溝35と対応する内側板23の角部を円弧状に成形したので、内側板23の角部が外側板21の角部切欠き溝35から突出することを防止できる。
【0058】
図10に示されるように、内側板23の通気用開口部30は、外側板21のハニカム状通気穴集合部26より大きく設けられたので、外側板21の内側面に内側板23を一体化する際に製造上の公差が生じても、すなわち、プレス成形品の形状公差の大きさにより外側板21および内側板23の位置合わせが正確でなくても、外側板21のハニカム状通気穴集合部26は、通気用開口部30の範囲内でずれるので、内側板23が外側板21のハニカム状通気穴集合部26を塞ぐことを防止でき、外側板21および内側板23の通気用の開口面積が損なわれることがなく、所定の開口面積を確保できるとともに、外側板21および内側板23の位置合わせを容易にでき、製造時の作業性も向上できる。
【0059】
複数組のハニカム状通気穴集合部26および通気用開口部30により、十分な通気用の開口面積を確保できる。
【0060】
外側板21および内側板23の2重構造のドアパネルにおいて、内側板23の限られた通気用開口部30に対し、外側板21にハニカム状に高密度に開口可能な通気穴25により、開口面積効率の高いハニカム状通気穴集合部26を形成できるとともに、このハニカム状通気穴集合部26は、正6角形に形成された複数の通気穴25を通気穴各辺の結合部を介してハニカム状に集合させたので、各通気穴25間の結合部強度を確保しつつ、その結合部を細くして流体抵抗を小さくすることが可能であり、通気穴25間の結合部が空気流れを阻害することに因る乱流の発生を、丸穴や4角穴を集合させた通気穴集合部より低減できる。
【0061】
図11に示されるように、ドアパネル20の外側板21に対して内側板23が膨出された凸部29にて内側板23と外側板21との間で固定された内部補強板41によって、凸部29での強度を補強でき、特に、この内部補強板41は、内側板23に対し凹凸嵌合により位置決めされたので、製造時に凹凸嵌合しておきさえすれば、正確に内部補強板41の位置を制御でき、最も効率的に補強が効いてくる位置に内部補強板41を正確に位置決め固定することができる。
【0062】
すなわち、一方の位置決め用嵌合部45,51の凹凸嵌合と他方の位置決め用嵌合部46,52の凹凸嵌合とにより、内側板23に対する長尺の内部補強板41の位置決めを容易かつ確実にできる。
【0063】
一方の位置決め用嵌合部45,51と他方の位置決め用嵌合部46,52は大きさが異なるので、内部補強板41の向きが異なると、内側板23の位置決め用嵌合部51,52と内部補強板41の位置決め用嵌合部45,46の位置合わせができなくなることから、方向性を有する内部補強板41を内側板23内に正確に組込むことができる。
【0064】
内側板23に開口されたヒンジ取付窓48,49を通して内部補強板41のヒンジ取付面部43,44にヒンジ53,54を溶接付したので、内側板23にヒンジ53,54を取付ける場合よりもヒンジ53,54の取付強度を向上できる。
【0065】
図12に示されるように、外側板21の周縁部31をへミング加工する途中の折曲かつ開放状態で外側板21の周縁部31内に接着剤塗布状態の内側板23を内部補強板41を介し嵌着して位置決めし、外側板21の周縁部31をへミング加工で内側板23の周縁部32を挟んで折返すことにより外側板21の内側面に内側板23および内部補強板41を固定したので、外側板21のへミング加工途中の周縁部31を内側板23の位置決めに有効利用しながら、外側板21に対し凹凸状に成形された内側板23の凸部29での強度を内部補強板41により確保できるドアパネルの製造方法を提供できる。
【0066】
図7に示されるように、外側板21と内側板23とで形成される中空の閉断面構造により十分な強度を確保できるとともに、内側板23は、外側板21に密着された接合部27に対し膨出成形された凸部29の中間部に補強変形部56を段差状に形成したので、このような段差状部がないものに比べて強度の向上を図ることができ、ドアパネル全体の強度を向上できる。
【0067】
図6に示されるように、接合部27と、この接合部27に沿って無端状に形成された凸部29および補強変形部56は、相互に補強し合って、内側板23の強度を全体にわたって向上させることができる。
【0068】
図1および図2に示されるように、外側板21に接着剤34により接着された内側板23の接合部27中に、接着剤34を溜める接着剤溜め空間67を有する接着剤溜め部68を設けたので、外側板21に内側板23を押圧して密着させたとき、外側板21と内側板23の接合部27との間から押出された接着剤34は、接着剤溜め部68内の接着剤溜め空間67に残留して、この接着剤34が硬化したときの接合力を保持できる。
【0069】
縦方向の接合部27中に連続的に設けられた接着剤溜め部68は、サイドドアとして用いるときに上下方向の柱としても機能し、上下方向の荷重に対する強度を向上できる。
【0070】
接合部27の中央に配置された接着剤溜め部68には、外側板21と接合部27との間から押出された接着剤が均等に残留して、内側板23の接合部27をバランス良く外側板21に接着できる。
【0071】
酷暑仕様で外側板21の一群の通気穴25と対応する場所に内側板23の通気用開口部30を設けた場合は、この通気用開口部30に沿って接合部27中に連続凸状に設けられた内側板23の接着剤溜め部68によって接着剤34を残留させるので、少ない接着面積でも接着剤34による接合力を保持して確実な強度向上を図ることができるとともに、通気用開口部30に沿って接合部27中に連続凸状に設けられた内側板23の接着剤溜め部68により、接合部27の強度も向上して、開口部の周辺での強度低下を防止できる。
【0072】
高さ/幅=1/2〜1/4に形成されたほぼ円弧状断面の接着剤溜め空間67は、高さが抑えられた偏平状の空間であるため、外側板21と内側板23の接合部27間から接着剤溜め空間67に押出された接着剤34が、押出された箇所に留まって固化するので、接着剤34による接合力を確実に保持できる。
【0073】
図2に示されるように、凹状の円弧断面に形成された接着剤溜め部68の立上部69と、外側板21との間には、漸次拡大する僅かな隙間が形成されるので、この立上部69の隙間に接着剤34が均一に留まりやすく、接着剤34による接合力を確実に保持できる。
【0074】
図6に示されるように、外側板21に連続的に接着された内側板23の接合部27に沿って、連続的に膨出成形された突状の補強用凸部29aにより、外側板21に接着された内側板23の強度を向上させる補強ができるとともに、補強用凸部29aを横断する方向に凹状に形成された強化用凹部70により、補強用凸部29aによる補強をより強固なものにすることができ、要するに、相互に交差する方向性の補強用凸部29aと強化用凹部70とで内側板23に複雑な凹凸形状を付けることにより、内側板23の補強をより強固なものにすることができる。
【0075】
次に、図14および図15は、本発明の第2実施の形態を示し、この実施の形態は、要するに、図1乃至図13に示された実施の形態における酷暑対策用の外側板21のハニカム状通気穴集合部26および内側板23の通気用開口部30を有さないサイドドア17であり、内側板23の接合部27は、広い面積で外側板21の裏面に接着されるので、強度は向上している。接着剤溜め部68などの他の構造は、図1乃至図13に示された実施の形態と同様であるから、同一符号を付して、その説明を省略する。
【0076】
次に、図16および図17は、本発明の第3実施の形態を示し、この実施の形態は、要するに、図1乃至図15に示された実施の形態における段差状の補強変形部56を有さないサイドドア17を示し、接着剤溜め部68などの他の構造は、図1乃至図15に示された実施の形態と同様であるから、同一符号を付して、その説明を省略する。
【0077】
本発明は、図13または図18に示された油圧ショベルなどの作業機械のドアパネルに利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】本発明に係るドアパネルの第1実施の形態を示すもので、内側板に形成した接着剤溜め部を破断した斜視図である。
【図2】同上ドアパネルの接着剤溜め部の断面図である。
【図3】同上ドアパネルの外面図である。
【図4】図3のIV−IV線断面図である。
【図5】同上ドアパネルの外面側の斜視図である。
【図6】同上ドアパネルの内面側の斜視図である。
【図7】同上ドアパネルの拡大断面図である。
【図8】同上ドアパネルのヘミング加工部の断面図である。
【図9】同上ドアパネルのヘミング加工部の内面図である。
【図10】同上ドアパネルの内面側の拡大斜視図である。
【図11】同上ドアパネルの分解斜視図である。
【図12】同上ドアパネルの内部補強板の装着工程を示す断面図であり、(a)は内側板内に内部補強板を位置決めして接着した断面図であり、(b)は外側板のへミング加工途中の周縁部内に内側板および内部補強板を位置決めした断面図であり、(c)は外側板をへミング加工して内側板および内部補強板を接合固定した断面図である。
【図13】同上ドアパネルを備えた作業機械の平面図である。
【図14】本発明に係るドアパネルの第2実施の形態を示す外面側の斜視図である。
【図15】同上ドアパネルの内面側の斜視図である。
【図16】本発明に係るドアパネルの第3実施の形態を示す内面図である。
【図17】図16のX VII−X VII線断面図である。
【図18】作業機械の概要を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0079】
21 外側板
23 内側板
25 通気穴
27 接合部
30 通気用開口部
34 接着剤
67 接着剤溜め空間
68 接着剤溜め部
69 立上部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外側板と、
外側板の内側面に固定される内側板とを具備し、
内側板は、
外側板に接着剤により接着された接合部と、
接合部中に設けられ接着剤を溜める接着剤溜め空間を有する接着剤溜め部とを備えた
ことを特徴とするドアパネル。
【請求項2】
接着剤溜め部は、縦方向の接合部中に連続的に設けられた
ことを特徴とする請求項1記載のドアパネル。
【請求項3】
接着剤溜め部は、接合部の中央に配置された
ことを特徴とする請求項2記載のドアパネル。
【請求項4】
外側板は、通気穴を備え、
内側板は、外側板の通気穴と対応する場所に設けられた通気用開口部を備え、
内側板の接着剤溜め部は、この通気用開口部に沿って接合部中に連続凸状に設けられた
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか記載のドアパネル。
【請求項5】
接着剤溜め部の接着剤溜め空間は、高さ/幅=1/2〜1/4に形成されたほぼ円弧状の断面である
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか記載のドアパネル。
【請求項6】
接着剤溜め部が接合部から立上がる立上部の断面形状は、凹状の円弧断面に形成された
ことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか記載のドアパネル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2009−84797(P2009−84797A)
【公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−252535(P2007−252535)
【出願日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【出願人】(000190297)キャタピラージャパン株式会社 (1,189)
【Fターム(参考)】