説明

ドット形成用のシステム

【課題】ターゲットに微細なドットを形成することができるシステムを提供する。
【解決手段】ターゲット150に対してノズルNから液滴を吐出するヘッド10と、ヘッド10のノズルNから吐出された液滴の一部をターゲット150に対して未着にさせる装置20とを有する。ヘッド10のノズルNから吐出された液滴は、ノズルNからターゲット150に至る飛翔経路Pにおいては複数の小液滴を含む場合がある。この場合、未着にさせる手段20は、複数の小液滴の少なくとも1つをターゲット150に対して未着にさせる手段であることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘッドから吐出される液滴によりターゲットにドットを形成するためのシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
インクジェットヘッドのノズルから液滴を吐出し、紙などの記録媒体にドットを形成することにより、記録媒体に画像を形成(記録)する方法が知られている。特許文献1には、少なくとも色剤と樹脂微粒子とを含有するインクジェット用記録インクを、インクジェット記録媒体上に吐出して画像記録するインクジェット記録方法が開示されている。このインクジェット記録方法では、銀塩写真の風合いを再現するために、上記インクジェット用記録インクの一吐出動作当たりのインク液滴量を、0.5〜4.0pl(ピコリットル)とし、かつ、上記インクジェット用記録インクの粘度が、1.0<ηa/ηb≦1.8(ηaは25質量%濃縮時の25℃における粘度(mPa・s)を表し、ηbは25℃におけるインクの初期粘度(mPa・s)を表す)の関係を満たすようにしている。
【特許文献1】特開2005−88485号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
いわゆるインクジェット技術は、ほぼ正確な量の液滴をほぼ正確な位置に非接触で着弾させることができる技術である。しかも、ヘッドのノズルから吐出させる液滴は、必ずしもインクに限られるものではない。このため、インクジェット技術は、紙などの記録媒体に画像を形成するプリンタなどの分野だけでなく、他の分野においても注目されている。
【0004】
他の分野、例えば、基板などに配線を形成することが必要とされるような分野においては、近年、インクジェット技術を利用し、小さなドットを、基板などの所望のターゲット上に、出来るだけ安定した形状で形成したいという要求がある。すなわち、さらに小さなドットをターゲット上に形成することができれば、小さなドットの連続により、従来よりも微細な配線をターゲット上に形成できる可能性がある。
【0005】
しかしながら、インクジェットヘッドの1ショットでの液滴の吐出量(一吐出動作当たりの液滴量)を少なくすることには限界がある。すなわち、インクジェットヘッドを用いて吐出される液滴により形成されるドッドの最少径を小さくすることにも限界がある。例えば、ピエゾ方式のインクジェットヘッドを用いた場合、実用レベルの液の最少吐出量は、現状、1pl(ピコリットル)程度であり、この場合、空気中での1滴あたりの液滴直径は、十数μmである。この液滴が、撥液面に着弾すると、おおよそ2〜3倍に広がるため、実際に形成されるドット径は、30〜50μmとなる。
【0006】
このドット径は、プリンタによる画像形成など、用途によっては充分に適用可能なサイズではあるが、さらに小さなドットをターゲット上に形成することができれば、電子機器や半導体などの他の分野においても広く活用することができる。もちろん、プリンタなどの分野においても、さらに小さなドットを記録媒体などの所望のターゲット上に形成することができれば、さらに高品質(高画質)な画像を形成することができる。したがって、種々の分野において、ターゲットにより微細なドットを形成することができるシステムが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、ターゲットに対してノズルから液滴を吐出するヘッドと、前記ヘッドのノズルから吐出された液滴の一部にレーザーを照射し、前記液滴の液量を削減する照射ユニットと、前記ヘッドのノズルの液滴の吐出タイミングおよび前記照射ユニットのレーザーの照射タイミングを含む制御を行う制御ユニットとを有し、前記ヘッドのノズルから吐出された液滴は、前記ノズルから前記ターゲットに至る飛翔経路において複数の小液滴に分かれ、前記複数の小液滴は先頭のメイン滴と、前記メイン滴に続く複数のサテライト滴とを含み、前記制御ユニットは、前記メイン滴に前記レーザーが照射され、前記複数のサテライト滴の少なくとも一部には前記レーザーが照射されないように前記照射ユニットのレーザーの照射タイミングを制御する、システムである。
【0008】
本発明の他の態様の1つは、ターゲットに対してノズルから液滴を吐出するヘッドを有するシステムによりドットを形成する方法である。前記システムは、前記ヘッドのノズルから吐出された液滴の一部にレーザーを照射し、前記液滴の液量を削減する照射ユニットと、前記ヘッドのノズルの液滴の吐出タイミングおよび前記照射ユニットのレーザーの照射タイミングを含む制御を行う制御ユニットとを有する。
【0009】
当該方法は、さらに以下のステップを有する。
・前記制御ユニットが、前記ヘッドのノズルから液滴を吐出させ、その液滴が、前記ノズルから前記ターゲットに至る飛翔経路において、先頭のメイン滴と、前記メイン滴に続く複数のサテライト滴とを含む複数の小液滴に分かれるようにすること。
・前記照射ユニットのレーザーの照射タイミングを制御して、前記メイン滴に前記レーザーを照射し、前記複数のサテライト滴の少なくとも一部には前記レーザーを照射しないこと。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】(a)〜(g)は、インクジェットヘッドのノズルから吐出された液滴の経時変化の一例を模式的に示す図。
【図2】第1の実施形態にかかるドット形成システムを模式的に示す図。
【図3】図2のドット形成システムの一部分を模式的に示す図。
【図4】ドッド形成方法の一例を説明するためのフローチャート。
【図5】図2のドット形成システムの制御方法の一例を説明するためのフローチャート。
【図6】図2のドット形成システムの変形例を模式的に示す図。
【図7】第2の実施形態にかかるドット形成システムの一部分を模式的に示す図。
【図8】図7のドット形成システムに適用可能なディスクの一例を示す図。
【図9】図8のディスクの一部分を拡大して示す図。
【図10】図7のドット形成システムに適用可能なディスクの他の例を示す図。
【図11】図10のディスクの一部分を拡大して示す図。
【図12】図7のドット形成システムに適用可能なディスクのさらに他の例の一部分を拡大して示す図。
【図13】図12中のXIII−XIII線に沿って切断して示す断面図。
【図14】図7のドット形成システムに適用可能なディスクのさらに他の例の一部分を拡大して示す図。
【図15】図7のドット形成システムの制御方法の一例を説明するためのフローチャート。
【図16】図7のドット形成システムの変形例を模式的に示す図。
【図17】第3の実施形態にかかるドット形成システムの一部分を模式的に示す図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1の(a)〜(g)は、ピエゾ方式のインクジェットヘッド10のノズルNから吐出された液滴Dの経時変化の一例を模式的に示している。インクジェット技術は、液Lの物性値とインクジェットヘッド10の駆動条件を調整し、所望の吐出条件(吐出状態)が得られるように適正化(最適化)することにより、1つのノズルNから空気中に吐出(放出)される液Lの状態のばらつきを、おおよそ±1%以内とすることができる。このように、インクジェット技術は、非常に再現性が高く、殆どばらつきの生じないように液滴Dの形成が可能である。
【0012】
図1(a)のように、インクジェットヘッド10のノズルNから液Lを空気中に吐出(放出)すると、一般に、図1(a)〜(e)に示すように、液滴Dは、1つの丸い粒ではなく、液柱LCと呼ばれる、ある程度の長さを持った柱状の液となる。すなわち、ノズル面Fの前方(吐出方向)には、液柱LCが形成される。さらに、インクジェットヘッド10の種類、インクジェットヘッド10の駆動条件、あるいは使用する液Lの物性などによっては、ノズル面Fにおいて液柱LCとなった液滴Dは、空気中を飛翔する過程、すなわち、ノズルNからターゲット150に至る飛翔経路Pにおいて、図1(d)〜(g)に示すように、液L(液滴D)の表面張力と空気抵抗とにより、先頭の比較的大きな小液滴Ds(図1(g)では小液滴Mとして記載)と、この先頭の小液滴Ds以降の比較的小さな少なくとも1つの小液滴Ds(図1(g)では小液滴S1〜S4として記載)とに分離されながら、ターゲット150に到達する。以降、先頭に形成される小液滴Dsをメイン滴M、メイン滴M以降に生成される小液滴Dsをサテライト滴S(S1〜S4)と呼ぶ。
【0013】
インクジェット技術の安定吐出状態では、サテライト滴Sは比較的発生しやすい。従来のインクジェット技術では、サテライト滴Sが発生しない条件を探すか、サテライト滴Sがメイン滴Mに追い付いて一体になった状態でターゲットに着弾する条件を探している。サテライト滴Sの形成は、液Lの物性値やインクジェットヘッド10の駆動条件によっても異なる。インクジェット技術では、メイン滴Mのみならず、サテライト滴Sを形成することにおいても、液Lの物性値とインクジェットヘッド10の駆動条件が所定の状態のサテライト滴Sを形成するように適正化(最適化)されているならば、サテライト滴Sの生成を含めた液滴Dの生成がなされる再現性は非常に高いことが知られている。
【0014】
以下の実施形態にかかるドット形成システム1a〜1cは、サテライト滴Sを含めたインクジェット技術の再現性の高さを利用したものであり、安定してサテライト滴Sを形成することにより、微細なドットを形成することができるものである。したがって、より安定したドットあるいは微細な配線などを形成するために、本例では、インクジェット技術により安定して発生することができるサテライト滴Sを積極的に利用して(発生させて)、微細なドットを形成するようにしている。ノズルNから吐出される液滴Dそのものを微細化したり、サテライト滴Sが発生しない吐出条件を検討するのではなく、サテライト滴Sを微細化することは、本実施形態において有効である。
【0015】
すなわち、以下のシステムにおいては、ノズルNから生成された液滴Dに含まれる小液滴Ds(メイン滴Mおよびサテライト滴S)の中で、希望する(所望する、目的とする)小液滴Dsをターゲット150に対して未着にする(トラップする)ことにより、ターゲット150に着弾する小液滴Dsを絞り込み、希望する(所望する、目的とする)残りの小液滴Dsのみをターゲット150に着弾させる。このため、ほぼ均一であって、かつ、微細なドット径のドットを形成することができる。
【0016】
なお、サテライト滴Sをより積極的に発生させるためには、種々の方法があるが、例えば、液滴Dの飛翔状態を観察しながら、以下に示すように、インクジェットヘッド10の駆動条件や吐出条件などを設定することが好ましい。また、本例では、4つのサテライト滴S(S1〜S4)が形成されるように、ヘッド10から液滴Dを吐出することを例にとって説明しているが、これは一例であり、以下に示すような条件を種々に設定することにより、形成されるサテライト滴Sの数を変えることも可能である。
【0017】
(1)ヘッドコントローラによるインクジェットヘッドの駆動条件設定
・ヘッドの駆動電圧
・ヘッドの駆動波形
(2)インクジェットヘッドから吐出される液滴の形成条件設定
・メイン滴の飛翔速度が4m/s以上であること
・インクジェットヘッドのノズル径dに対する液柱の長さWLが、WL>3dの条件を満たすこと
【0018】
なお、インクジェット技術を用いたパターン形成においては、サテライト滴Sが生成される条件では、メイン滴Mがターゲット150上に着弾した後、メイン滴Mよりも飛翔速度の遅いサテライト滴Sがターゲット150上に着弾する。このため、インクジェットヘッド10および/またはターゲット150を移動させながらドットを形成(描画)する場合、メイン滴Mの着弾位置とサテライト滴Sの着弾位置との間に差が生じる。この着弾位置の差は、インクジェットヘッド10および/またはターゲット150の移動速度(相対的な移動速度)が速ければ速いほど大きくなる。したがって、特に、産業用途にインクジェット技術を応用しようと考える場合には、この着弾位置のずれにより、目的の性能が出せないなどの問題につながる可能性がある。以下に示すシステム1a〜1cにおいては、着弾する液滴を絞ることにより、このような問題の解決も合わせて図ることが可能となる。
【0019】
すなわち、以下の実施形態にかかるドット形成システム1a〜1cによれば、希望する(所望する、目的とする)小液滴Dsのみをターゲット150に着弾させることができる。このため、ほぼ均一な微細なドット径のドットを形成することができるだけでなく、着弾位置のずれが抑制され、着弾位置の差によるドットの乱れを抑制できる。以下の実施形態にかかるドット形成システム1a〜1cによれば、産業用途にインクジェット技術を応用する際の大きな課題解決の手段となりうる。
【0020】
以下に、このシステムにかかるいくつかの実施形態のドット形成システムを説明する。これらのドット形成システムは、インクジェットヘッド10と、このインクジェットヘッド10から吐出された液滴Dの一部、例えば、複数の小液滴(メイン滴Mおよび少なくとも1つのサテライト滴S)Dsのうちの少なくとも1つをターゲット150に対して未着にさせる装置20とを有する。また、以下に説明する本実施形態のドット形成方法は、例えば、以下に説明する実施形態のドット形成システムを用いることにより実現可能である。
【0021】
図2は、第1の実施形態にかかるドット形成システム1aを模式的に示している。図3は、図2のドット形成システム1aの液滴の吐出およびトラップに関する構成を主に抜き出して模式的に示している。ドット形成システム1aの一例は、微細な模様あるいは構造を基板上あるいは記録媒体(例えば紙、用紙)に形成するための製造装置あるいはプリンタである。基板の一例は、ドットにより回路を形成する回路基板である。基板の他の例は、ドットにより微細構造を形成するMEMS基板である。基板は、半導体チップ、DNAチップなどであっても良い。記録媒体の一例は、模造防止を必要とする紙のようなものであり、目に見えにくいような微細な模様を形成することにより、模造品を判別したり、複製を抑制することが可能となる。
【0022】
このドット形成システム1aは、ターゲット、例えば、基板150に対してノズルNから液滴Dを吐出するインクジェットヘッド10と、このインクジェットヘッド10から吐出された液滴Dの一部、例えば、複数の小液滴(メイン滴Mおよび/またはサテライト滴S1〜S4)Dsのうちのいくつかを基板150に対して未着にさせる装置20とを有している。インクジェットヘッド10は、例えば、下方(鉛直方向下側)に液滴Dを吐出するように配置されている。すなわち、インクジェットヘッド10は、ノズル面Fが下側を向くように配置されている。本例では、インクジェットヘッド10として、例えば、ピエゾ方式のヘッドを用いている。
【0023】
本例の装置20は、液滴Dの一部、例えば、複数の小液滴(メイン滴Mおよび/またはサテライト滴S1〜S4)Dsのうちのいくつかが基板150に対して未着になるように、液滴Dの一部をノズルNからターゲット150に至る飛翔経路Pから除去する除去装置30を備えている。したがって、除去装置30は、一般に、飛翔経路Pを望む位置に配置され、飛翔経路Pに対し交差した位置から飛翔経路Pを通過する液滴D(例えば、メイン滴Mおよびサテライト滴S)に、以下に示す方法によりアクセスできるようになっている。典型的には、除去装置30は、ノズルNの先端から、0.2〜5.0mm程度離れた位置に設けることが好ましい。
【0024】
本例の除去装置30は、レーザーを照射する照射ユニット(照射装置)31を備えている。照射ユニット31は、インクジェットヘッド10のノズルNからの液滴Dの吐出方向と交差する方向、例えば、直交する方向(本例では、水平方向)から、レーザーを照射し、インクジェットヘッド10のノズルNから吐出された液滴Dの一部を蒸発させる。照射ユニット31は、図示していないが、半導体レーザー発光源などのレーザー光を生成するソースと、レーザー光を所定の方向に導いて外部に出力する導波管などのレーザー光を出力するため部品を含む。さらに、照射ユニット31は、この照射ユニット31の位置および照射方向、すなわち、高さ方向(Z方向)、横方向(X方向)、縦方向(Y方向)の位置を調整するための調整機構32を有している。したがって、照射ユニット31は、飛翔経路Pを通過する液滴Dのうち、経路Pの中の所定の位置を通過する液滴Dに対しレーザーが照射されるように調整することができる。
【0025】
このドット形成システム1aは、さらに、照射ユニット31により蒸発させた液滴(液滴Dの一部)の蒸気を吸収する吸収装置(気化液吸収装置)40を備えている。吸収装置40としては、例えば、蒸発した(気化した)液Lを吸気ファンなどにより吸引する機構を含むものが好ましい。
【0026】
また、このドット形成システム1aは、さらに、インクジェットヘッド10のノズルNから吐出された液滴Dの飛翔状態を観察する観察装置60を有している。観察装置60は、ストロボ部61と、CCDおよびズームレンズを含む液滴観察ユニット62と、モニタ63とを備えている。観察装置60により、液滴Dの飛翔状態を観察しながら、ヘッド10の駆動条件、吐出条件を変えることにより、サテライト滴Sを積極的に発生させる条件を設定することができる。また、液滴Dの一部にレーザーを照射して蒸発除去するタイミングを設定し、蒸発除去される様子を観察し、確認することができる。
【0027】
このドット形成システム1aは、さらに、インクジェットヘッド10のノズルNから液滴Dを吐出するタイミングと、除去装置30が液滴Dの一部を除去するタイミングとを同期して制御する制御装置50を有している。制御装置50は、インクジェットヘッド10の動作を制御するヘッド制御部(ヘッドコントローラ、第1の制御ユニット)51と、除去装置30が備える照射ユニット31の動作を制御する照射ユニット制御部(レーザ制御部、第2の制御ユニット)52と、観察装置60が備えるストロボ部61の動作を制御するストロボ制御部(ストロボコントローラ)58とを備えている。
【0028】
ヘッド制御部51は、インクジェットヘッド10のノズルNからの液滴Dの吐出タイミングを生成し、ノズルNから液滴を吐出するためにピエゾ素子などの駆動手段を駆動する駆動パルス(ヘッド駆動信号)Hsを供給する機能を含む制御を行う。このため、ヘッド制御部51は、駆動パルスHsの電圧、パルス形を含む、インクジェットヘッド10の駆動条件を設定する機能(制御部)を含んでいる。ストロボ制御部58は、ストロボ部61からのストロボの照射タイミングを含む制御を行う。ヘッド制御部51からヘッド10へ供給されるヘッド駆動信号(または、ヘッド駆動信号と同期したヘッド駆動同期信号)Hsは、ヘッド制御部51から、ストロボ制御部58の入力側58aに送信される。ストロボ制御部58では、ヘッド駆動信号Hsと同期したストロボ駆動信号が生成され、出力側58bから、ストロボ部61に送信される。したがって、ヘッド駆動信号Hsに同期して、ストロボ部61が発光し、インクジェットヘッド10のノズルNから吐出された液滴Dが液滴観察ユニット62により撮影され、モニタ63に、インクジェットヘッド10のノズルNから吐出された液滴Dの飛翔状態が表示される。
【0029】
照射ユニット制御部52は、照射ユニット31からのレーザーの照射タイミングを含む制御を行う。照射ユニット制御部52へは、ヘッド制御部51から直にまたはインクジェットヘッド10を介してヘッド駆動信号Hsが供給される。照射ユニット制御部52は、ヘッド駆動信号Hsに同期してレーザー駆動信号を出力する。そのため、照射ユニット制御部52は、レーザー照射の発射タイミングを決定する機能(レーザー発射タイミング制御部)と、レーザー強度(例えば、照射時間および発光強度)を設定する機能(発光時間制御部)とを含んでいる。レーザー光の伝達速度は、液滴Dの飛翔速度より早いので、一般に、レーザー光の発射タイミングは、ヘッド駆動信号Hsにより与えられる吐出タイミングよりも遅くて良く、レーザー発射タイミング制御部は、所定の遅延を加えてレーザー駆動信号を生成する。このため、ヘッド駆動信号Hsに基づき(同期して)、照射ユニット31から、所定の強度(照射時間および発光強度)のレーザー光が射出され、インクジェットヘッド10のノズルNからの液滴Dの一部にそのレーザー光が照射される。
【0030】
レーザー照射のタイミングの制御は、モニタ63上で液滴Dの飛翔状態を観察しながら行うことが可能である。また、液滴Dの一部がレーザー照射により除去される様子もモニタ63により確認することが可能である。確実に、所望の小液滴(残りの小液滴)Dsを、基板150上に着弾させることができる。
【0031】
本例のドット形成システム1aでは、除去装置30および制御装置50により、インクジェットヘッド10のノズルNからの液滴Dの吐出タイミングに同期したタイミングで照射ユニット31からのレーザーを出力し、インクジェットヘッド10のノズルNから吐出された液滴Dの一部、例えば、少なくとも1つの小液滴Dsにレーザーを当てて蒸発除去させる。したがって、ドット形成システム1aでは、インクジェットヘッド10のノズルNから液滴Dが吐出される毎に、除去装置30により、液滴Dに含まれるメイン滴Mおよび/または複数のサテライト滴S1〜S4のうちの決められた滴、例えば、メイン滴Mおよびサテライト滴S1〜S3が蒸発除去されるようにすることができる。
【0032】
このため、これらのメイン滴Mおよびサテライト滴S1〜S3は飛翔経路Pから除去され、基板150に対して未着になる。したがって、基板150には、サテライト液S4のみが着弾し、サテライト液S4のみにより、基板150の上に模様や回路などが形成される。したがって、基板150に模様や回路などを形成するジョブにおいては、インクジェットヘッド10のノズルNからサテライト液S4のみが吐出されているのと等価となる。このため、ノズルNから液滴Dを吐出するヘッド10を用いて、ノズルNから吐出される液滴Dの数分の1の液量の液滴による印刷、加工などが可能なシステム1aを提供できる。
【0033】
さらに、このシステム1aにおいては、除去装置30により蒸発させた液滴(本例では、メイン滴Mおよびサテライト滴S1〜S3)の蒸気を吸収する吸収装置(気化液吸収装置)40を備えている。レーザーにより液滴を完全に蒸発させることができれば、その気体が凝結などしないかぎり基板150に対する影響は少ないと考えられる。しかしながら、液滴の一部が蒸発したことにより、液滴がミスト化したりする可能性があり、除去対象の液滴をすべて完全に蒸発させることは難しいケースがある。このシステム1aでは、吸収装置40を用意し、ミスト化した液滴も含めて吸収除去することができる。このため、インクジェットヘッド10のノズルNから吐出された液滴Dのうちの一部(本例では、メイン滴Mおよびサテライト滴S1〜S3)は、ノズルNから基板150に至る飛翔経路Pから確実に除去(消去)でき、基板150に対する影響が表れることを抑制できる。したがって、基板150には、残りのサテライト滴S4のみを着弾させ、より確実に微細なドットを形成できる。
【0034】
なお、除去装置30は、液滴Dの一部を除去し、ターゲット150に対して未着にさせるものであればよい。すなわち、除去装置30は、メイン滴Mにレーザーを照射し、ターゲット150に対して未着にさせるものであってもよい。また、複数(n個)のサテライト滴Sが形成される場合には、除去装置30は、1〜n個のサテライト滴Sにレーザーを照射し、ターゲット150に対して未着にさせるものや、メイン滴Mと少なくとも1つのサテライト滴Sとにレーザーを照射し、ターゲット150に対して未着にさせるものであってもよい。
【0035】
また、このレーザーを用いた除去装置30は、小液滴Dsだけでなく、液柱LCの状態でも、その一部または全部を除去する(蒸発させる)ことができる。したがって、このレーザーを用いた除去装置30は、必ずしも、液滴Dが分離するのを待ってからレーザーを照射するという必要はなく、液柱LCの一部または全部を除去する場合にも有効である。
【0036】
液滴Dのうちのどの部分(小液滴Dsおよび/または液柱LC)を未着にさせるかは、例えば、制御装置50のプログラムにより、任意に設定できる。また、例えば、レーザーを照射するタイミングを変えることにより、レーザーを照射して除去する対象となる小液滴Dsおよび/または液柱LCを動的に変更することも可能である。このため、ヘッド10のノズルNからは一定の液滴Dを安定した条件で吐出させ、除去する小液滴Dsおよび/または液柱LCを変えることにより、基板150に生成される線幅を動的に制御したり、基板150に形成される構造のサイズを動的に制御することが可能となる。
【0037】
図4は、ドッド形成方法の一例を説明するためのフローチャートである。ドット形成システム1aを用いたドッド形成方法においては、まず、ステップ201において、インクジェットヘッド10のノズルNから液滴Dを吐出する。ヘッド駆動信号Hsに基づき(同期させ)、レーザー照射タイミングとなったときに、ステップ202において、照射ユニット31から液滴Dのうちのメイン滴Mおよびサテライト滴S1〜S3に向けてレーザーを照射し、液滴Dのうちのメイン滴Mおよびサテライト滴S1〜S3を飛翔経路Pから除去する。したがって、ステップ203において、残りの液滴、上記の例ではサテライト滴S4が基板150に着弾する。このようにすることにより、ノズルNより吐出された液滴Dよりも小さい、サテライト滴S4に相当するドットを、基板150に形成することができる。
【0038】
図5は、ドット形成システム1aの制御方法の一例を説明するためのフローチャートである。制御装置50においては、まず、ステップ211において、インクジェットヘッド10のノズルNから液滴Dが吐出されることを判断する。吐出タイミングがわかると、そのタイミングに基づきステップ212において、照射ユニット31からレーザーを照射するタイミングを判断する。ステップ212において、メイン滴Mおよびサテライト滴S1〜S3に向けてレーザーを照射するタイミングとなると、ステップ213において、レーザーが照射され、それによりメイン滴Mおよびサテライト滴S1〜S3が除去される。
【0039】
以上にように、本例のドット形成システム1aおよびドット形成方法によれば、ヘッドのノズルNから吐出される液滴Dのサイズが従来と同じであっても、より微細なドットを基板150上に形成することができる。また、本例のドット形成システム1aおよびドット形成方法によれば、液滴Dのうちの所望する一部(例えば、複数の小液滴(メイン滴Mおよび/またはサテライト滴S1〜S4)Dsのうちの所望する少なくとも1つの小液滴Ds)を選択的に除去する。このため、微細なドットでありながら、精度よく大きさが制御されたドットを形成することができる。さらに、本例のドット形成システム1aおよびドット形成方法によれば、サテライト滴Sを積極的に発生させ、複数の小液滴(メイン滴Mおよび/またはサテライト滴S1〜S4)Dsのうちの所望する少なくとも1つの小液滴Dsを除去することもできるため、メイン滴とサテライト滴との着弾位置に差により生じるドットの乱れを抑制できる。
【0040】
また、本例のドット形成システム1aによれば、液滴Dの飛翔状態をモニタ63で観察しながら、インクジェットヘッド10の駆動条件の最適化を行い、液Lが所望の状態(例えば、所望のメイン滴とサテライト滴とができる状態)で安定して吐出する条件を設定することができる。さらに、ヘッド駆動信号Hsを利用することにより、液滴Dのうちの不要な部分を液滴飛翔中(飛翔経路P内)において、比較的容易に除去(トラップ)することができる。
【0041】
図6は、ドット形成システム1aの変形例を模式的に示している。直径(φ)が2μm以下の液滴Dは、空気中に浮遊してミスト化しやすい。したがって、本実施形態および以下に説明するドット形成システムおよびドット形成方法では、インクジェットヘッド10から吐出する液滴Dのサイズは、φ2〜200μm程度であることが好ましい。さらに、液滴Dのサイズが下限に近いと、飛翔経路Pの環境(重力、風など)の影響を受けやすい。また、液滴Dの一部を除去した小液滴Dsは、さらに飛翔経路Pの環境の影響を受けやすい。
【0042】
このため、図6に示したドット形成システム1aは、さらに、バッテリー70と、インクジェットヘッド10のノズルNの先方(下方)に設けられた筒状の第1の電極(帯電電極(荷電電極))71と、基板150のインクジェットヘッド10とは反対側、すなわち、下側に設けられた第2の電極(転写電極(加速電極))72とを有する。第1の電極71の上下方向における高さ位置は、例えば、ノズルNの先端と除去装置30との間とすることができる。ノズルNを第1の電極として用いることも可能である。なお、第1の電極71の上下方向における高さ位置は、除去装置30と基板150との間であってもよい。
【0043】
第1の電極71は、インクジェットヘッド10のノズルNから吐出された液滴Dを第1の電位、本例では、プラス電位(正の電位)に帯電させる。典型的には、第1の電極71は、バッテリー70の正極と接続される。第2の電極72は、バッテリー70の負極と接続されており、第2の電位、本例では、マイナス電位(負の電位)に基板150を帯電させる。基板150が導電性でなければ、基板150の裏側に第2の電極72を広げ、基板150を透過して電界が形成されるようにしても良い。なお、第1の電極71をマイナス電位、第2の電極をプラス電位としてもよい。
【0044】
この例のシステム1aでは、インクジェットヘッド10のノズルNから吐出された液滴Dはプラスに帯電し、マイナスに帯電された第2の電極の方向に引きよせられる(力が働く)。このため、微小な液滴Dsであっても、飛翔経路Pにおける空気抵抗による減速を抑制でき、飛翔液滴速度の低下を抑制できる。したがって、液滴Dの直進性を向上させることができ、ミスト化を防止し、さらに、基板150の上面のうちの、より正確な位置に、液滴Dの所望の一部(目的とする残りの液滴、本例では小液滴S4)を着弾させることができる。しかも、飛翔経路Pにおける空気の流れなどの影響を受けにくいため、安定した形状の微細なドットを形成することができる。
【0045】
本例あるいは以下に説明するドット形成システム1a〜1cでは、飛翔液滴D(飛翔小液滴Ds)のサイズが小さいことが多い。このため、ノズルNと基板150との間のギャップPが大きな場合には、空気抵抗に負けて、残りの液滴(小液滴)Dsが、基板150に着弾する前に浮遊してしまうおそれがある。したがって、飛翔液滴D(飛翔小液滴Ds)を帯電させ、飛翔経路P(空気中)において、減速を抑制または再加速させる構成をドット形成システム1a〜1cに適用することは、目的とする残りの液滴を確実に基板150に着弾させる方法として有効である。
【0046】
図7は、第2の実施形態にかかるドット形成システム1bの一部分を模式的に示している。図8は、図7のドット形成システム1bに適用可能なディスクの一例を模式的に示している。図9は、図8のディスクの一部分を拡大して示している。
【0047】
本例のドット形成システム1bは、第1の実施形態のレーザー光を用いた除去装置30の代わりに、ディスクを用いた除去装置80を備えている。除去装置80は、旋回中心を中心として放射状に所定のパターンで設けられた複数のスリット84を含むディスク(円盤)81と、このディスク81を旋回中心の周りに回転駆動させるためのモータ82とを備えている。モータ82としては、ステッピングモータやサーボモータなどの応答性が高く、回転速度を精度良く制御できるモータを用いることが好ましい。
【0048】
本例のドット形成システム1bが備える制御装置50は、照射ユニット制御部(レーザ制御部)52の代わりに、ディスク81の複数のスリット84の通過をセンサ(エンコーダ)83により検出するタイミング制御部(第3の制御ユニット)53を備えている。ヘッド制御部51は、エンコーダ83からの信号、または、タイミング制御部53からの信号に同期して吐出タイミングを定めてヘッド駆動信号Hsを出力する。そして、ディスク81により、インクジェットヘッド10のノズルNから吐出された液滴Dの一部を除去することを可能とする。制御装置50は、さらに、モータ82の回転を制御するモータ制御部59とを備えている。モータ制御部59は、エンコーダ83からの信号によりヘッド駆動信号Hsを出力するタイミングを微調整したり、ディスク81により除去する小液滴Dsに合わせて回転速度を調整したりするために、タイミング制御部53および/またはヘッド制御部51との間で信号が交換できるようになっていても良い。
【0049】
本例のシステム1bでは、タイミング制御部53からのエンコード出力により、ディスク81のスリット84がノズルNの下を通過し、飛翔経路Pを横断するタイミングが判明する。ディスク81の互いに隣り合うスリット84の間の部分(スリット84が設けられていない部分、液滴捕獲可能部分)85が飛翔経路Pを通過するタイミングが判明すると言っても良い。したがって、スリット84または捕獲可能部分85の通過と、インクジェットヘッド10のノズルNからの液滴Dの吐出タイミングとを同期させることにより、液滴捕獲可能部分85において、複数の小液滴(メイン滴Mおよび/またはサテライト滴S1〜S4)Dsのうちのいくつかを捕獲し、残りの小液滴Dsがスリット84を通過して基板150に着弾するようになっている。
【0050】
例えば、上記の説明と同様に、メイン滴Mおよびサテライト滴S1〜S3を液滴捕獲可能部分85において捕獲し、これらの小液滴Dsが基板150に対して未着になるように制御できる。サテライト滴S4のみがスリット84を通過し、基板150に着弾する。そのため、本例のシステム1bでは、センサ83からの信号は、インクジェットヘッド10の吐出開始トリガ信号として使用される。インクジェットヘッド10の吐出タイミングは、モータ制御部59により回転が制御されたディスク81から出力されるトリガ信号を制御(例えば遅延制御)することにより、比較的容易に、トラップタイミング(所望の小液滴Dsの捕獲タイミング)を最適化することができる。したがって、システム1aと同様に、液滴Dを吐出するヘッド10を用いて、液滴Dの数分の1の液量のドットを基板150に形成することが可能となる。なお、ディスク81により捕獲する液滴Dの一部(小液滴Ds)は、メイン滴Mおよびサテライト滴S1〜S3に限定されるものではなく、任意に決定できる。
【0051】
図10は、図7のドット形成システム1bに適用可能なディスクの他の例を模式的に示している。図11は、図10のディスクの一部分を拡大して示している。ドット形成システム1bは、ディスク81と置換して、図10および図11に示すような、ディスク86を用いることもできる。
【0052】
ディスク86は、放射状に所定のパターンで設けられた複数のスリット84と、複数のスリットの間(液滴捕獲可能部分)85にそれぞれ設けられた凹状の複数の受け部87と、ディスク86の中心あるいはその近傍に設けられた凹状の廃液集約部88と、複数の受け部87からそれぞれ廃液集約部88に向かって放射状に延びる溝状の複数の廃液流路89とを含んでいる。このようにすることにより、インクジェットヘッド10のノズルNから吐出された液滴Dの一部を、受け部87で捕獲し、受け部87で捕獲した液Lを、廃液流路89を介して、廃液集約部(ディスクの中心あるいはその近傍)88に集めることができる。なお、受け部87で捕獲した液Lを集約しやすいように、廃液流路89は、廃液集約部88に向けて傾斜していてもよい。また、廃液を良好に回収するために、廃液集約部88と廃液タンク91とをチューブ93などで接続し、その間に、ポンプ92を設けてもよい。ポンプ92によって発生する吸引力により、タンク91に廃液を集めることができる。
【0053】
図12は、図7のドット形成システム1bに適用可能なディスクのさらに他の例を模式的に示している。図13は、図12中のXIII−XIII線に沿って切断して示す断面図である。
【0054】
ディスク95は、ディスク86と同様、放射状に所定のパターンで設けられた複数のスリット84と、互いに隣り合うスリット84の間(液滴捕獲可能部分)85にそれぞれ設けられた凹状の複数の受け部87と、ディスク95の中心あるいはその近傍に設けられた凹状の廃液集約部88(図12では図示せず)と、複数の受け部87からそれぞれ廃液集約部88に向かって放射状に延びる溝状の複数の廃液流路89とを含んでいる。
【0055】
これに加え、このディスク95では、スリット84と受け部87との間(液滴捕獲可能部分85の一部)に、撥水処理が施されている。例えば、スリット84と受け部87との間には、撥水処理膜(撥水処理部)96が設けられている。また、複数の受け部87には、撥水処理膜(撥水処理部)96の側に、底側に傾斜するテーパ(テーパ部、テーパ面)97が形成されている。複数の受け部87には、親水処理が施されている。例えば、複数の受け部87には、親水処理膜(親水処理部)98が設けられている。このようにすることにより、スリット84と受け部87との間において液滴Dの一部を捕獲したとしても、捕獲した液滴Dの一部(廃液)を受け部87に集め易くすることができる。
【0056】
図14は、図7のドット形成システム1bに適用可能なディスクのさらに他の例を模式的に示している。ディスク110は、放射状に所定のパターンで設けられた複数のスリット84と、互いに隣り合うスリット84の間(液滴捕獲可能部分)85にそれぞれ設けられた凹状の複数の受け部87と、ディスク110の中心あるいはその近傍に設けられた廃液集約部(廃液集約用の空間)88と、複数の受け部87からそれぞれ廃液集約部88に向かって放射状に延びるトンネル状の複数の廃液流路89とを含んでいる。また、廃液集約部88と廃液タンク91とは、チューブ93などで接続されており、その間に、ポンプ92が設けられている。複数の受け部87は、開口(吸引口、インク吸引口、廃液吸引口)89aを介して、それぞれ、トンネル状の複数の廃液流路(廃液吸引路)89と接続されている。
【0057】
また、ディスク110の回転速度によっては、遠心力により、ディスク110の周部(周縁)に廃液が集まることがある。このため、このディスク110は、周部(周縁)に、複数の受け部87とそれぞれ連続している円周状の廃液回収溝111を有している。廃液集約部88と廃液タンク91とをチューブ93などで接続し、その間に、ポンプ92を設けることにより、廃液回収溝111に溜まった廃液を、トンネル状の複数の廃液流路(廃液吸引路)89および廃液集約用の空間88を介して、タンク91に集める(吸引する)ことができる。
【0058】
なお、他の構成は、上述した第2の実施形態のシステム1bと同様であるため、重複する説明は省略する。
【0059】
図15は、ドット形成システム1bの制御方法の一例を説明するためのフローチャートである。制御装置50は、まず、ステップ221において、ディスク81(ディスク86)を所定の速度で回転させる。エンコーダ83でディスク81のスリット84の通過を検出し、ステップ222において、ノズルNから液滴Dが吐出されたときに、飛翔経路Pを横切るディスク81により所望の小液滴Dsがキャッチ(トラップ)され、所望の小液滴Dsがディスク81を通過するタイミングになると、ステップ223において、インクジェットヘッド10のノズルNから液滴Dを吐出させる。インクジェットヘッド10の吐出タイミングと、モータ制御部59によりディスク81の回転数とを制御することにより、比較的容易に、トラップタイミング(所望の小液滴Dsの捕獲タイミング)の最適化を行うことができる。ディスク81の回転数制御は、液滴Dの飛翔観察を行いながら、位相制御を行うことにより比較的簡単に実現できる。
【0060】
以上のように、本例のドット形成システム1bおよびドット形成方法によれば、飛翔経路Pの途中において、インクジェットヘッド10のノズルNから液滴Dの一部を捕獲することができる。したがって、本例のドット形成システム1bおよびドット形成方法においても、従来と同じ大きさの液滴を吐出するヘッド10を用いて、より微細なドットを基板150上に形成できる。ディスク81の回転速度を変えたり、ノズルNから液滴を吐出するタイミングを変えたりすることにより、本例のドット形成システム1bにおいても、ノズルNから吐出される液滴Dにより形成されるドットよりも小さなドットを、再現性良く形成することができる。さらに、本例のドット形成システム1bにおいても、メイン滴Mとサテライト滴Sとの着弾位置の差により生じるドットの乱れを抑制できる。
【0061】
図16は、ドット形成システム1bの変形例を模式的に示している。このドット形成システム1bは、さらに、インクジェットヘッド10のノズルNの先方(下方)に設けられ、基板150に向けて飛翔中の液滴D(あるいは小液滴Ds)を通過させる筒状部材(液滴通過用保護部材、液滴通過用スリット部材)90を有する。筒状部材90の上下方向における高さ位置は、ノズルNの先端とディスク81との間とすることが好ましい。また、インクジェットヘッド10のノズルNから吐出された液滴Dの飛翔状態を観察できる様にするため、筒状部材90は透明部材で形成することがさらに好ましい。
【0062】
ドット形成システム1bでは、ディスク81(スリット84)の回転により、飛翔経路Pにおいて、気流が発生することがある。このような場合であっても、飛翔中の液滴D(あるいは小液滴Ds)は、筒状部材90にガードされるため、飛翔経路Pにおける空気の流れなどの影響を受けにくくなる。したがって、ディスク81(スリット84)が回転する際に発生する気流により、液滴D(あるいは小液滴Ds)の飛翔乱れが発生することを抑止できるため、より安定した形状の微細なドットを形成することができる。
【0063】
なお、筒状部材90は、第1の実施形態にかかるドット形成システム1aや、以下に説明するドット形成システム1cに適用することも可能である。さらに、筒状部材90は、第1の実施形態で説明した第1の電極71(帯電電極)として応用(適用)することも可能である。
【0064】
図17は、第3の実施形態にかかるドット形成システム1cの一部分を模式的に示している。本例のドット形成システム1cは、レーザー光を用いた第1の実施形態の除去装置30の代わりに、トラップ用インクジェットヘッド101を備えた除去装置100を有する。トラップ用ヘッド101は、基本的には、インクジェットヘッド10と同形状であって、このトラップ用インクジェットヘッド101のノズルNtから吐出させた液滴Dtを、飛翔経路Pを通過している、インクジェットヘッド10のノズルNから吐出された液滴Dの一部に衝突させることができるように配置されている。本例では、トラップ用インクジェットヘッド101は、インクジェットヘッド10と交差する、例えば、直交する方向に配置されている。また、このトラップ用インクジェットヘッド101は、このトラップ用インクジェットヘッドの位置、すなわち、高さ方向(Z方向)、横方向(X方向)、縦方向(Y方向)の位置を調整するための調整機構102を有している。
【0065】
また、除去装置100は、さらに、トラップ用インクジェットヘッド101のノズルNtから吐出された液滴Dtおよびインクジェットヘッド10のノズルNから吐出された液滴Dの一部を回収するための液滴回収部材(ガター部材)103を備えている、液滴回収部材103は、トラップ用インクジェットヘッド101のノズルNtと対向する位置に配置されている。
【0066】
さらに、本例のドット形成システム1cが備える制御装置50は、照射ユニット制御部(レーザ制御部)52の代わりに、トラップ用インクジェットヘッド101の動作を制御するトラップヘッド用制御部(トラップ用ヘッドコントローラ、第4の制御ユニット)54を備えている。トラップヘッド用制御部54は、ヘッド駆動信号Hsを利用してトラップ用インクジェットヘッド101の吐出タイミングを決定する(遅延する)機能(制御部)と、トラップ用インクジェットヘッド101の駆動条件を設定する機能(制御部)とを含んでいる。トラップヘッド用制御部54は、ヘッド制御部51と電気的に接続されており、ヘッド10におけるヘッド駆動信号Hsが入力される。
【0067】
ドット形成システム1cは、上記の例と同様に、メイン滴Mと、サテライト滴S1〜S3を除去するように制御することができる。また、上記のシステムでも可能であるが、システム1cは、インクジェットヘッド10のノズルNから吐出された液滴Dの一部として、例えば、メイン滴Mを回収するように、制御装置50により制御できる。すなわち、トラップ用インクジェットヘッド101のノズルNtから吐出された液滴Dtを、メイン滴M(インクジェットヘッド10のノズルNから吐出され、その後、メイン滴Mとして分離した状態で飛翔経路Pを飛翔している小液滴Ds)に衝突させるように、制御装置50により制御されている。なお、除去する液滴Dの一部(小液滴Ds)は、メイン滴Mに限定されるものではなく、任意に決定できる。
【0068】
本例のドット形成システム1cの制御方法は、基本的には、第1の実施形態のドット形成システム1aの制御方法と同様である。すなわち、まず、インクジェットヘッド10のノズルNから液滴Dを吐出させる。ヘッド駆動信号Hsに基づき(同期させ)、トラップ用インクジェットヘッド101の吐出タイミングとなったときに、トラップ用インクジェットヘッド101のノズルNtから液滴Dtを吐出させ、液滴Dの一部(例えば、メイン滴M)に衝突させる。このようにすることにより、トラップ用インクジェットヘッド101のノズルNtから吐出された液滴Dtおよびインクジェットヘッド10のノズルNから吐出された液滴Dの一部(例えば、メイン滴M)は、飛翔経路Pから外れるように向きが変えられ、トラップ用インクジェットヘッド101のノズルNtと対向する位置に配置されている液滴回収部材103に回収(捕獲)される。残りの液滴Ds(サテライト滴S1〜S4)は、基板150に着弾し、ドットが形成される。なお、他の構成は、上述した第1の実施形態のシステム1aと同様であるため、重複する説明は省略する。
【0069】
以上のように、本例のドット形成システム1cは、トラップ用インクジェットヘッド101のノズルNtから吐出された液滴Dtを、インクジェットヘッド10のノズルNから吐出された液滴Dの一部に衝突させることにより、ノズルNから基板150に至る飛翔経路Pから外れるように、インクジェットヘッド10のノズルNから吐出された液滴Dの一部の向きを変えることができる。したがって、従来と同じ大きさの液滴Dを吐出するヘッド10を用いて、より微細なドットを基板150上に形成することができる。また、本例のドット形成システム1cにおいても、飛翔経路Pから衝突除去(トラップ)する小液滴を変えることにより、液滴Dにより形成されるドットよりも小さなドットであってサイズが精度良く制御されたドットを基板150に形成することができる。さらに、本例のドット形成システム1cにおいても、メイン滴Mとサテライト滴Sとの着弾位置の差により生じるドットの乱れを抑制できる。
【0070】
上記に記載されたシステムは、ターゲットに対してノズルから液滴を吐出するヘッドと、前記ヘッドのノズルから吐出された液滴の一部を前記ターゲットに対して未着にさせる手段とを有する。前記ヘッドのノズルから吐出された液滴は、前記ノズルから前記ターゲットに至る飛翔経路においては複数の小液滴を含み、前記未着にさせる手段は、前記複数の小液滴の少なくとも1つを前記ターゲットに対して未着にさせることが望ましい。前記未着にさせる手段は、前記ヘッドのノズルから吐出された液滴の一部を、前記ターゲットに対して未着にさせるように、前記ノズルから前記ターゲットに至る飛翔経路から除去する手段を含み、前記ヘッドのノズルから液滴を吐出するタイミングと、前記除去する手段が前記ヘッドのノズルから吐出された液滴の一部を除去するタイミングとを同期して制御する手段をさらに有することが望ましい。
【0071】
前記除去する手段は、前記ヘッドのノズルから吐出された液滴の一部を蒸発させるためのレーザーを照射する照射ユニットを備えていてもよい。前記照射ユニットは、前記ヘッドのノズルからの液滴の吐出方向と交差する方向からレーザーを照射し、前記ヘッドのノズルから吐出された液滴の一部を蒸発させることが望ましい。さらに、蒸発させた液滴の蒸気を吸収する手段を有することが望ましい。
【0072】
前記制御する手段は、前記ヘッドのノズルからの液滴の吐出タイミングを含む制御を行う第1の制御ユニットと、前記照射ユニットからのレーザーの照射タイミングを含む制御を行う第2の制御ユニットとを備えていることが有効である。
【0073】
前記除去する手段は、放射状に所定のパターンで設けられた複数のスリットを含むディスクと、このディスクを回転駆動させるためのモータとを備えていてもよい。前記ディスクは、さらに、前記複数のスリットの間にそれぞれ設けられた凹状の複数の受け部と、中心あるいはその近傍に設けられた凹状の廃液集約部と、前記複数の受け部からそれぞれ前記廃液集約部に向かって放射状に延びる溝状の複数の廃液流路とを含むことが望ましい。また、前記制御する手段は、前記ヘッドのノズルからの液滴の吐出タイミングを含む制御を行う第1の制御ユニットと、前記ディスクの前記複数のスリットの通過をセンサにより検出して、前記ディスクが前記ヘッドのノズルから吐出された液滴の一部を除去するタイミングをエンコード出力する第3の制御ユニットとを備えていることが望ましい。
【0074】
前記除去する手段は、前記ヘッドと交差する方向に配置されたトラップ用ヘッドであって、当該トラップ用ヘッドのノズルから吐出された液滴を前記ヘッドのノズルから吐出された液滴の一部に衝突させるためのトラップ用ヘッドと、前記トラップ用ヘッドのノズルから吐出された液滴および前記ヘッドのノズルから吐出された液滴の一部を回収するための液滴回収部材とを備えていてもよい。前記制御する手段は、前記ヘッドのノズルからの液滴の吐出タイミングを含む制御を行う第1の制御ユニットと、前記トラップ用ヘッドのノズルからの液滴の吐出タイミングを含む制御を行う第4の制御ユニットとを備えていることが望ましい。請求項1ないし12のいずれかにおいて、前記ヘッドのノズルから吐出された液滴の飛翔状態を観察する手段をさらに有することが望ましい。
【0075】
このシステムは、前記ヘッドのノズルの先方に設けられた第1の電極であって、前記ヘッドのノズルから吐出された液滴を第1の電位に帯電させる第1の電極と、前記ターゲットの前記ヘッドとは反対側に設けられた第2の電極であって、第2の電位に帯電された第2の電極とをさらに有することが有効である。また、システムは、前記ヘッドのノズルの先方に設けられ、前記ターゲットに向けて飛翔中の液滴を通過させる筒状部材をさらに有することが望ましい。
【0076】
上記では、ヘッドのノズルから吐出された液滴の一部を未着にさせる手段によりターゲットに対して未着にさせ、残りの液滴を前記ターゲットに着弾させることを含む、ドット形成方法が開示されている。前記ヘッドのノズルから吐出された液滴は、前記ノズルから前記ターゲットに至る飛翔経路においては複数の小液滴を含み、前記着弾させることは、前記複数の小液滴の少なくとも1つを前記ターゲットに対して未着にさせ、残りの小液滴を前記ターゲットに着弾させることを含むことが望ましい。前記着弾させることは、前記ヘッドのノズルから吐出された液滴の一部を蒸発させ、残りの液滴をターゲットに着弾させることを含むことが望ましい。また、前記着弾させることは、前記ヘッドのノズルから吐出された液滴の一部を捕獲し、残りの液滴をターゲットに着弾させることを含むことが望ましい。また、前記着弾させることは、前記ヘッドのノズルから吐出された液滴の一部を、前記ノズルから前記ターゲットに至る飛翔経路から外れるように向きを変え、残りの液滴をターゲットに着弾させることを含むことが望ましい。
【0077】
上記では、ターゲットに対してノズルから液滴を吐出(放出)するヘッドと、このヘッドのノズルから吐出(放出)された液滴の一部をターゲットに対して未着にさせる手段とを有するシステムが開示されている。このシステムによれば、ヘッドのノズルから吐出された液滴の一部を、未着にさせる手段により、ターゲットに対して未着にさせるため、ターゲットには残りの液滴が着弾する。したがって、このシステムによれば、ターゲットに着弾する液量は、ヘッドの1ショットでの液滴の吐出量(一吐出動作当たりの液滴量)よりも少なくでき、ヘッドの吐出量よりもターゲットに着弾する液量を少なくすることができる。このため、ヘッドから吐出される液滴によるドットよりも微細なドットをターゲット上に形成することができる。
【0078】
ターゲットに対してヘッドのノズルから液滴を吐出する技術の典型的なものはインクジェット技術である。このインクジェット技術のメリットの1つは再現性が高いことである。すなわち、使用する液の物性値とヘッド側の駆動条件とを制御することにより、1つのノズルから空気中に吐出(放出)される液滴のばらつきを小さくでき、安定した結果が得られる。したがって、このシステムによれば、ヘッドとして、インクジェットヘッドを用い、さらに、ヘッドのノズルから吐出された液滴の一部を、未着にさせる手段によって、同じ条件でターゲットに対して未着にさせることにより、微細なドットを、高い再現性で、ターゲット上に形成することができる。
【0079】
未着にさせる手段の典型的なものは、複数の小液滴の一部を未着にさせることである。ヘッドの種類、ヘッドの駆動条件、あるいは使用する液の物性などによっては、ヘッドのノズルから吐出された液滴が、ノズルからターゲットに至る飛翔経路において、複数の小液滴を含む場合がある。この場合、未着にさせる手段は、ノズルから吐出された液滴の一部である複数の小液滴の少なくとも1つを、ターゲットに対して未着にさせるようにすることが好ましい。上述したように、インクジェット技術のメリットは再現性が高いことである。したがって、ヘッドのノズルから吐出された液滴が、ノズルからターゲットに至る飛翔経路において、複数の小液滴を含む状況(状態)の再現性も非常に高い。1つの(一塊の)液滴の一部をターゲットに対して未着にさせるよりも、複数に分かれた小液滴の少なくとも1つをターゲットに対して未着にさせる方が、容易であって再現性も高いことが多い。したがって、より微細なドットを、ターゲット上に、比較的容易に、高い再現性で形成することができる。
【0080】
このシステムにおいて、未着にさせる手段は、ヘッドのノズルから吐出された液滴の一部を、ターゲットに対して未着にさせるように、ノズルからターゲットに至る飛翔経路から除去する手段を含むことが好ましい。未着にさせる手段は、ターゲットを飛翔経路から退避するように移動させ、ヘッドのノズルから吐出された液滴の一部をターゲットに対して未着にさせるような手段を含む。しかしながら、ターゲットの方が液滴に対して一般に面積が大きく、質量も大きい。したがって、ヘッドのノズルから吐出された液滴の一部を飛翔経路から除去する手段の方が、ターゲットを移動することに対して(ターゲットを移動する手段よりも)タイミング調整が容易であり、そのための機構も簡易にできる。
【0081】
ヘッドのノズルから吐出された液滴の一部を飛翔経路から除去する手段の典型的なものは、ヘッドのノズルから吐出された液滴の一部を飛翔経路の途中で蒸発(消滅)させる手段、ヘッドのノズルから吐出された液滴の一部を飛翔経路の途中で捕獲する手段、ヘッドのノズルから吐出された液滴の一部を飛翔経路から外れるように向きを変える手段である。
【0082】
このシステムは、さらに、ヘッドのノズルから液滴を吐出するタイミングと、除去する手段がヘッドのノズルから吐出された液滴の一部を除去するタイミングとを同期して制御する手段を有することが好ましい。ヘッドのノズルからの液滴の吐出を、センサ、画像処理などにより検出して、除去する手段を起動しても良い。吐出するタイミングと、除去するタイミングとを同期して制御する手段を採用することにより、そのために液滴をモニタリングする機能を省略してもよく、微細ドットの再現性も向上しやすい。
【0083】
除去する手段の一形態は、ヘッドのノズルから吐出された液滴の一部を蒸発させるためのレーザーを照射する照射ユニットを備えているものである。ヘッドのノズルから吐出された液滴の一部を、照射ユニットから照射するレーザーにより、ノズルからターゲットに至る飛翔経路の途中で蒸発(消滅)させる(蒸発(消滅)させるようにトラップする)ことができる。この場合、照射ユニットは、ヘッドのノズルからの液滴の吐出方向と交差する方向からレーザーを照射し、ヘッドのノズルから吐出された液滴の一部を蒸発させることが好ましい。また、この場合、このシステムは、さらに、蒸発させた液滴の蒸気を吸収する手段を有することが好ましい。一旦、蒸発させた液滴がターゲットなどに付着するなどの影響を抑制できる。
【0084】
除去する手段が照射ユニットを備えている場合、制御する手段は、ヘッドのノズルからの液滴の吐出タイミングを含む制御を行う第1の制御ユニットと、照射ユニットからのレーザーの照射タイミングを含む制御を行う第2の制御ユニットとを備えていることが好ましい。ヘッドのノズルからの液滴の吐出タイミングと、照射ユニットからのレーザーの照射タイミングとを同期させ、液滴のうちのある一定の一部を除去するように、システムを制御することができる。照射タイミングに対して吐出タイミングを同期させてもよいが、液滴よりもレーザーの方が高速であり、射出制御が容易であることが多いため、吐出タイミングに対して照射タイミングを同期させることがさらに好ましい。
【0085】
除去する手段の他の形態の1つは、放射状に所定のパターンで設けられた複数のスリットを含むディスクと、このディスクを回転駆動させるためのモータとを備えているものである。ヘッドのノズルから吐出された液滴の一部を、ディスク(より詳しくは、互いに隣り合うスリットの間の部分、スリットが設けられていない部分、液滴捕獲可能部分)により、ノズルからターゲットに至る飛翔経路の途中で捕獲する(捕獲するようにトラップする)ことができ、ターゲットには、スリットを通過した残りの液滴を着弾させることができる。この場合、ディスク上(ディスクの周部)に捕獲した液が溜まるため、ディスクは、さらに、複数のスリットの間にそれぞれ設けられた凹状の複数の受け部と、中心あるいはその近傍に設けられた凹状の廃液集約部と、複数の受け部からそれぞれ廃液集約部に向かって放射状に延びる溝状(凹状)の複数の廃液流路とを含むことが好ましい。ヘッドのノズルから吐出された液滴の一部を、スリットの間に設けられた受け部で捕獲し、受け部で捕獲した液を、廃液流路を介して、廃液集約部(ディスクの中心あるいはその近傍)に集めることができる。
【0086】
除去する手段がディスクとモータとを備えている場合、制御する手段は、ヘッドのノズルからの液滴の吐出タイミングを含む制御を行う第1の制御ユニットと、ディスクの複数のスリットの通過をセンサにより検出して、ディスクが液滴の一部を除去(捕獲)するタイミングをエンコード出力する第3の制御ユニットとを備えていることが好ましい。ヘッドのノズルからの液滴の吐出タイミングと、ディスクが液滴の一部を除去(捕獲)するタイミング、すなわち、吐出タイミングと、スリットの間の部分(液滴捕獲可能部分)の通過タイミングとを同期させ、液滴のうちのある一定の一部を捕獲するように、システムを制御することができる。この場合、吐出タイミングに対して、液滴捕獲可能部分の通過タイミング(ディスクが液滴の一部を除去可能なタイミング)あるいはスリットの通過タイミング(ディスクが残りの液滴を通過させることが可能なタイミング)を同期させてもよい。しかしながら、液滴よりもディスクの方が遅く、慣性モーメントも大きいので、基本的には、液滴捕獲可能部分の通過タイミング(ディスクが液滴の一部を除去可能なタイミング)あるいはスリットの通過タイミング(ディスクが残りの液滴を通過させることが可能なタイミング)に対して、吐出タイミングを同期させる方が好ましい。
【0087】
除去する手段のさらに他の形態の1つは、ヘッドと交差する方向に配置されたトラップ用ヘッドであって、このトラップ用ヘッドのノズルから吐出された液滴をヘッドのノズルから吐出された液滴の一部に衝突させるためのトラップ用ヘッドと、トラップ用ヘッドのノズルから吐出された液滴およびヘッドのノズルから吐出された液滴の一部を回収するための液滴回収部材(ガター部材)とを備えているものである。トラップ用ヘッドのノズルから吐出された液滴をヘッドのノズルから吐出された液滴の一部に衝突させることにより、ヘッドのノズルから吐出された液滴の一部を、ノズルからターゲットに至る飛翔経路から外れるように向きを変え、液滴回収部材において捕獲することができる。
【0088】
除去する手段がトラップ用ヘッドと液滴回収部材とを備えている場合、制御する手段は、ヘッドのノズルからの液滴の吐出タイミングを含む制御を行う第1の制御ユニットと、トラップ用ヘッドのノズルからの液滴の吐出タイミングを含む制御を行う第4の制御ユニットとを備えていることが好ましい。ヘッドの液滴の吐出タイミングと、トラップ用ヘッドの液滴の吐出タイミングとを同期させ、ヘッドから吐出された液滴のうちのある一定の一部を除去するように(飛翔経路から外れるように)、システムを制御することができる。この場合、トラップ用ヘッドの液滴の吐出タイミングに対して、ヘッドの液滴の吐出タイミングを同期させてもよく、ヘッドの液滴の吐出タイミングに対して、トラップ用ヘッドの液滴の吐出タイミングを同期させてもよい。
【0089】
また、ヘッドのノズルから吐出された液滴の一部をターゲットに対して未着にさせるためには、ヘッドのノズルから吐出された液滴の飛翔状態を観察できることは有効である。したがって、このシステムは、ヘッドのノズルから吐出された液滴の飛翔状態を観察する手段をさらに有することが好ましい。液滴の飛翔状態を観察する手段を設けることにより、安定した形状の微細なドットを形成することができる。
【0090】
また、このシステムは、ヘッドのノズルの先方に設けられた第1の電極であって、ヘッドのノズルから吐出された液滴を第1の電位に帯電させる第1の電極と、ターゲットのヘッドとは反対側に設けられた第2の電極であって、第2の電位に帯電された第2の電極とをさらに有することが望ましい。ヘッドのノズルから吐出された液滴は、第1の電位に帯電し、第2の電位に帯電された第2の電極の方向に引きよせられるため、ヘッドのノズルから吐出された液滴の飛翔経路(空気中)における減速を抑制または再加速でき、液滴飛翔の直進性を向上できる。このため、より正確な位置に、残りの液滴を着弾させることができる。特に、ヘッドのノズルから吐出された液滴が飛翔経路において複数の小液滴を含む場合は、飛翔経路における直進性を向上することにより、飛翔経路における空気の流れなどの影響を受けにくくなり、安定した微細なドットを形成することができる。
【0091】
また、このシステムは、ヘッドのノズルの先方に設けられ、ヘッドのノズルからターゲットに向けて飛翔中の液滴を通過させる筒状部材をさらに有していてもよい。飛翔中の液滴は、筒状部材にガードされ、飛翔経路における空気の流れなどの影響を受けにくくなる。したがって、安定した形状の微細なドットを形成することができる。
【0092】
上記に開示された方法の1つは、ヘッドのノズルから吐出された液滴の一部を未着にさせる手段によりターゲットに対して未着にさせ、残りの液滴をターゲットに着弾させること(着弾させる工程)を含む、ドット形成方法である。このドット形成方法によれば、従来よりも微細なドットをターゲット上に形成することができる。
【0093】
上記着弾させること(着弾させる工程)の一形態は、以下の工程を含む。
(a1)ヘッドのノズルから吐出された液滴の一部を蒸発させ、残りの液滴をターゲットに着弾させること。
【0094】
上記着弾させること(着弾させる工程)の他の形態は、以下の工程を含む。
(a2)ヘッドのノズルから吐出された液滴の一部を捕獲し、残りの液滴をターゲットに着弾させること。
【0095】
上記着弾させること(着弾させる工程)のさらに他の形態は、以下の工程を含む。
(a3)ヘッドのノズルから吐出された液滴の一部を、ノズルからターゲットに至る飛翔経路から外れるように向きを変え、残りの液滴をターゲットに着弾させること。
【0096】
また、ヘッドのノズルから吐出された液滴が、ノズルからターゲットに至る飛翔経路において、複数の小液滴を含む場合、上記着弾させること(着弾させる工程)は、以下の工程を含むことが好ましい。
(b)複数の小液滴の少なくとも1つをターゲットに対して未着にさせ、残りの小液滴をターゲットに着弾させること。
【0097】
なお、上述した実施形態にかかるドット形成システム1a〜1cは、液Lとしてインクを用い、目的の記録媒体(ターゲット)150に、画像、文字などを含む微細な模様を高品質(高画質)で記録できる。また、これらのシステム1a〜1cは、導電性を有する液Lを用い、目的の基板(ターゲット)150に微細な配線を形成(描画)する際や、微細なドットを形成する際にも好適であり、ICタグなどの微細な配線を安価に作成することが要求される製品の製造装置として適している。したがって、これらのシステム1a〜1cにおいてノズルNから吐出される液Lは、いわゆるインク(色のある液体)に限定されるものではない。使用する液Lは、有色であっても無色であってもよい。また、使用する液Lは、透明であっても不透明であってもよい。目的の基板(ターゲット)150に微細な配線を形成する場合には、例えば、ITO微粒子を溶媒に分散させたもの(いわゆるITOインク)などを用いることができる。
【0098】
ノズルから液滴を吐出するヘッドは、ピエゾ方式のヘッドに限定されるものではなく、サーマル方式のヘッドなどであってもよい
【符号の説明】
【0099】
1a〜1c ドット形成システム、 10 ヘッド(インクジェットヘッド)
20 未着にする装置(未着にする手段)
30 除去装置(除去する手段)、 31 照射ユニット
40 吸収装置(蒸発させた液滴の蒸気を吸収する手段)
50 制御装置(制御する手段)、 51 ヘッド制御部(第1の制御ユニット)
52 照射ユニット制御部(第2の制御ユニット)
53 タイミング制御部(第3の制御ユニット)
54 トラップヘッド用制御部(第4の制御ユニット)
60 観察装置(観察する手段)
71 第1の電極、 72 第2の電極
80 除去装置(除去する手段)、 81、86 ディスク
82 モータ、 84 スリット、 87 受け部
88 廃液集約部、 89 廃液流路
100 除去装置(除去する手段)、
101 トラップ用ヘッド(トラップ用インクジェットヘッド)
103 液滴回収部材、 150 基板(ターゲット)
D 液滴、 N ヘッドのノズル、 P 飛翔経路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ターゲットに対してノズルから液滴を吐出するヘッドと、
前記ヘッドのノズルから吐出された液滴の一部にレーザーを照射し、前記液滴の液量を削減する照射ユニットと、
前記ヘッドのノズルの液滴の吐出タイミングおよび前記照射ユニットのレーザーの照射タイミングを含む制御を行う制御ユニットとを有し、
前記ヘッドのノズルから吐出された液滴は、前記ノズルから前記ターゲットに至る飛翔経路において複数の小液滴に分かれ、前記複数の小液滴は先頭のメイン滴と、前記メイン滴に続く複数のサテライト滴とを含み、
前記制御ユニットは、前記メイン滴に前記レーザーが照射され、前記複数のサテライト滴の少なくとも一部には前記レーザーが照射されないように前記照射ユニットのレーザーの照射タイミングを制御する、システム。
【請求項2】
ターゲットに対してノズルから液滴を吐出するヘッドを有するシステムによりドットを形成する方法であって、
前記システムは、前記ヘッドのノズルから吐出された液滴の一部にレーザーを照射し、前記液滴の液量を削減する照射ユニットと、
前記ヘッドのノズルの液滴の吐出タイミングおよび前記照射ユニットのレーザーの照射タイミングを含む制御を行う制御ユニットとを有し、
当該方法は、
前記制御ユニットが、前記ヘッドのノズルから液滴を吐出させ、その液滴が、前記ノズルから前記ターゲットに至る飛翔経路において、先頭のメイン滴と、前記メイン滴に続く複数のサテライト滴とを含む複数の小液滴に分かれるようにすることと、
前記照射ユニットのレーザーの照射タイミングを制御して、前記メイン滴に前記レーザーを照射し、前記複数のサテライト滴の少なくとも一部には前記レーザーを照射しないこととを有する、方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2011−131598(P2011−131598A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−11305(P2011−11305)
【出願日】平成23年1月21日(2011.1.21)
【分割の表示】特願2007−291535(P2007−291535)の分割
【原出願日】平成19年11月9日(2007.11.9)
【出願人】(598086589)株式会社マイクロジェット (16)
【Fターム(参考)】