説明

ドライエッチング方法及びドライエッチング装置

【課題】特殊な装置を用いることなく、好適なエッチングレートを維持しつつ、エッチング形状の異方性を向上することができるドライエッチング方法及びドライエッチング装置を提供する。
【解決手段】SFからなるガスに、酸素を添加するとともに、SFに対する流量比を0.22以上0.67以下に調整してSixFyで表されるフッ化ケイ素ガスを添加したエッチングガスをプラズマ化して、シリコン層をエッチングする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリコン層を処理対象としたドライエッチング方法及びドライエッチング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
シリコン基板を利用した半導体素子の製造工程には、エッチングガスのプラズマにより基板にホールやトレンチを形成するドライエッチングが利用されている。シリコン基板を対象としたドライエッチングでは、エッチングガスとして、SFとOとからなる混合ガスが多用されている。この混合ガスのうち、SFの解離により生成されたプラズマ中のフッ素ラジカルは、シリコンと反応して、揮発性のSixFyを生成する。また、酸素分子、酸素原子又は酸素ラジカルは、気相中のSixFyと反応してSiOxを生成する。こうして生成されたSiOxは、ホールやトレンチの側面に堆積して、側面方向にエッチングが進行する等方性エッチングを抑制する保護膜として機能する。
【0003】
また、ホールやトレンチの側面に保護膜を形成するために、ドライエッチング装置に、保護膜の材料となるターゲットを設けて、基板にホールやトレンチを形成するエッチング工程と、ターゲットをスパッタしてそのホールやトレンチの側面に保護膜を形成する保護膜形成工程とを繰り返す方法も提案されている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−035167号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、上記した方法では、反応生成物であるSixFyとO、酸素原子又は酸素ラジカルが反応してSiOxからなる保護膜が形成されるため、ホールやトレンチの開口部付近には保護膜が形成されやすいが、該開口部よりも奥側には保護膜が形成されにくい。このため、ホールやトレンチの側面のうち、保護膜が十分に形成されていない箇所において等方的にエッチングが進行し、ホールやトレンチの形状を樽型とする、いわゆるボーイングが発生しやすくなる。特に、貫通孔(TSV:through silicon via)や深いトレンチを加工する際には、その影響が顕著となる。
【0006】
一方、上記エッチングガスのうち酸素が占める割合を増加させると、エッチングレートが急激に低下して、最終的にはエッチングが停止してしまう。このため、シリコン基板に対するエッチングレートを好適に保ちつつ、異方性の高いドライエッチング方法が求められていた。
【0007】
また、エッチング工程と保護膜形成工程とを繰り返す方法では、平滑性が高い保護膜を形成し、ホール又はトレンチの加工精度を向上することができるが、特殊な装置を必要とし、工程数が多くなる。
【0008】
本発明は、上記した実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、特殊な装置を用いることなく、好適なエッチングレートを維持しつつ、エッチング形状の異方性を向上することができるドライエッチング方法及びドライエッチング装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記問題点を解決するために、請求項1に記載の発明は、SFからなるガスに、酸素を添加するとともに、SFに対する流量比を0.22以上0.67以下に調整してSixFyで表されるフッ化ケイ素ガスを添加したエッチングガスをプラズマ化して、シリコン層をエッチングすることを要旨とする。
【0010】
請求項4に記載の発明は、シリコン層を有する基板を収容する処理室と、SFからなるガス、酸素及びSixFyで表されるフッ化ケイ素ガスを含有するエッチングガスを、SFに対するフッ化ケイ素ガスの流量比を0.22以上0.67以下に調整するガス供給系と、前記処理室内の前記エッチングガスをプラズマ化するプラズマ源とを備えたことを要旨とする。
【0011】
請求項1及び請求項4に記載の発明によれば、SFとシリコンとの反応によりシリコン層をエッチングする際に、SFとシリコンとの反応生成物であるSiFx等と、プラズマ中の酸素ラジカル等を反応させてSiOxを生成し、このSiOxを、ホール又はトレンチの側面に等方的なエッチングを抑制する保護膜として堆積させることができる。また、プラズマ中のSixFy(x及びyは自然数)で表されるフッ化ケイ素が解離して生成されたガス分子と酸素ラジカル等とを反応させてSiOxを生成し、上記保護膜として堆積させることができる。即ち、気相中のSixFyがSiOx等の生成に寄与することにより、ホール又はトレンチの開口部だけでなく、ホール又はトレンチの側面の全体に亘ってSiOxを堆積させることができる。またSixFyの流量比を上記範囲に調整するため、ホール又はトレンチの側面に堆積するSiOxの量を、等方的エッチングを抑制できるような十分な量にするとともに、SiOxの堆積量が過多となることによるエッチングレートの低下又はエッチングの停止が生じないようにすることができる。このため、異方性エッチングと好適なエッチングレートとを両立することができる。
【0012】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のドライエッチング方法において、前記エッチングガスのプラズマの密度が、1011cm−3以上であることを要旨とする。
請求項2に記載の発明によれば、エッチングガスのプラズマの密度が、1011cm−3以上であるため、SixFyの解離度が高まり、プラズマ中のSiOxの生成に寄与するSiFxの含有量を増加させることができる。このため、エッチングガスとして使用されるSixFyガスのうち、SiOxの生成に寄与するガスの割合を多くすることができる。
【0013】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載のドライエッチング方法において、前記フッ化ケイ素ガスは、SFからなるガス及び酸素の供給と同時又はそれらのガスの供給を開始した後に供給されることを要旨とする。
【0014】
請求項3に記載の発明によれば、少なくともSixFyが供給される際には酸素等の酸素源が存在するので、パーティクルの原因となるSiリッチな粒子の生成を抑制しつつSiOxを生成することができる。即ち、SixFyからなるガスをSFからなるガス及び酸素の供給前に供給すると、酸素源が少ない状態でSixFyガスがプラズマ中で分解されるので、Siリッチな粒子が生成され、この粒子が装置内を汚染するパーティクルの原因となる。これに対し、上記タイミングでSixFyからなるガスを供給することで、Siリッチな粒子の生成を抑制し、パーティクルの生成を抑制することができる。
【0015】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載のドライエッチング装置において、前記プラズマ源は、磁気中性線放電プラズマを生成するプラズマ源、又は誘導結合によりプラズマを生成するプラズマ源であることを要旨とする。
【0016】
請求項5に記載の発明によれば、上記プラズマ源により、高密度なプラズマを生成することができるため、SixFyの解離度が高まり、SiOxの生成に寄与するSiF等の含有量を増加させることができる。このため、エッチングガスとして使用されるSixFyガスのうち、SiOxの生成に寄与するガスの割合を多くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明のドライエッチング装置を具体化した磁気中性線放電型エッチング装置の概略図。
【図2】(a)はエッチングを実施する前の基板の端面図、(b)は同装置によってエッチングを実施した際の基板の端面図。
【図3】比較例の基板の端面図。
【図4】異なるガス組成でエッチングを実施した際のプラズマの発光スペクトルを示す。
【図5】実施例1の条件により生成されたホールの電子顕微鏡写真。
【図6】実施例2の条件により生成されたホールの電子顕微鏡写真。
【図7】実施例3の条件により生成されたホールの電子顕微鏡写真。
【図8】比較例1の条件により生成されたホールの電子顕微鏡写真。
【図9】比較例2の条件により生成されたホールの電子顕微鏡写真。
【図10】実施例及び比較例の流量比におけるCDシフト量を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明のドライエッチング装置を、磁気中性線放電型エッチング装置(以下、NLD型エッチング装置)に具体化した一実施形態について、図1〜図5にしたがって説明する。
【0019】
図1に示すように、NLDエッチング装置は、略有底筒状に形成された真空槽11を有している。真空槽11はアルミニウム等の金属製であって、その内部にシリコン基板Sbを収容する処理室50を有し、処理室50の上部開口を誘電体から形成された誘電体窓12によって密閉している。
【0020】
真空槽11には、エッチングを実施する処理対象となるシリコン基板Sbを隣室から真空槽11内へ搬入するとともに、真空槽11から他の処理室へ搬送するための図示しない搬送口が設けられている。さらに、真空槽11には、真空槽11内のエッチングガスや大気等の流体を排気する排出口11dが設けられ、該排出口11dには図示しない排気装置が接続されている。また、真空槽11には、処理室50に連通するガス供給部13が設けられている。エッチングを実施する際には、このガス供給部13には、処理室50にエッチングガスを供給するガス供給系15が接続されている。
【0021】
ガス供給系15は、SF(六フッ化硫黄)からなるガスを供給する第1ガス供給源16と、O(酸素)からなるガスを供給する第2ガス供給源17と、SixFyからなるガスを供給する第3ガス供給源18とを備えている。本実施形態では、第3ガス供給源18は、SiFガスを供給する。SFガス、Oガス及びSiFガスは、各供給源16〜18から各マスフローコントローラ14によって流量を調節されながら所定のタイミングでそれぞれ送出され、処理室50に供給される直前で混合される。
【0022】
真空槽11の下部には、ステージ20が設けられている。ステージ20は、その上面が平坦に形成され、シリコン基板Sbを載置可能となっており、図示しない静電チャックを有している。また、ステージ20は、ステージ電極を兼ねており、整合回路21を介して、バイアス用高周波電源22に電気的に接続されている。整合回路21は、プラズマ生成領域とバイアス用高周波電源22からシリコン基板Sbまでの伝送路とのインピーダンスの整合を図る整合回路とブロッキングコンデンサとを含んでいる。
【0023】
また、誘電体窓12の上方には、電磁波源を構成する誘導コイルとしての2段の高周波アンテナ25が、異なる面上であって、真空槽11の中心軸の回りを周回するように積み重ねられている。
【0024】
高周波アンテナ25は、始端が真空槽11の中心軸と平行に延びる柱状の入力端子26に、その外周側に位置する終端が、中心軸と平行な方向に延びる出力端子27に電気的に並列に接続されている。
【0025】
図1に示すように、上段の高周波アンテナ25から突出する入力端子26の端部には、電磁波源を構成する高周波電源28と整合回路29とが、入力側コンデンサ31を介して接続されている。また、高周波アンテナ25には、直列に接続された直流電源DCとローパスフィルタ30とからなる直列回路とが接続されている。
【0026】
高周波電源28は、処理室50にプラズマを生成するための高周波電力、例えば13.56MHzの高周波電力を出力する。整合回路29は、負荷となる上記処理室50内のガスと、高周波アンテナ25を含む高周波電源28から真空槽11までの伝送路とのインピーダンスの整合を図る。入力側コンデンサ31は、容量の変更が可能ないわゆる可変コンデンサであって、例えば10pF〜100pFの範囲で任意に静電容量を変更する。直流電源DCは、例えば0V〜−2000kVの直流電圧を入力端子26に印加可能な電源である。またローパスフィルタ30は、直流電源DCの出力した電圧からノイズを除去する。
【0027】
また、上段の高周波アンテナ25から突出する出力端子27の端部は、可変コンデンサである出力側コンデンサ32に接続され、この出力側コンデンサ32及びNLDエッチング装置の筐体を介して設置電位に接続されている。尚、この出力側コンデンサ32も入力側コンデンサ31同様、その静電容量は、例えば10pF〜100pFの範囲で任意に変更可能である。
【0028】
さらに、真空槽11の側面には三段の磁場コイル35が設けられている。この磁場コイル35は、第1磁場コイル36、第2磁場コイル37及び第3磁場コイル38を有している。各磁場コイル36〜38は、真空槽11の外周に配設され、それらの中心軸が、上記中心軸とほぼ一致するように配置されている。
【0029】
第1磁場コイル36及び第3磁場コイル38には、各電力供給部(図示略)から、同一方向の電流が供給される。第2磁場コイル37には、第1磁場コイル36及び第3磁場コイル38に供給される電流の向きとは逆の電流が供給される。その結果、磁場コイル35の周方向、即ち真空槽11の周方向に沿って、ゼロ磁場領域51が形成される。ゼロ磁場領域51の中心軸方向の位置は、第2磁場コイル37の中心軸方向における位置とほぼ同じである。
【0030】
次に、本実施形態のNLD型エッチング装置の作用について説明する。図2(a)に示すように、シリコン基板Sbには、ホール(又はトレンチ)が形成される領域である被エッチング領域のみが露出するように、微細パターンを有するレジストマスクMが形成されている。
【0031】
また、NLD型エッチング装置の搬送口に接続するゲートバルブが開弁されるとともに、搬送口を介してシリコン基板Sbが処理室50に搬入される。シリコン基板Sbがステージ20上に配置されると、ゲートバルブを閉じられる。また静電チャックに内蔵された電極に所定の電圧が印加されて、静電チャック上に電荷が誘起されることで、静電チャックにシリコン基板Sbが静電吸着される。
【0032】
次いで、ガス供給部13を介して、各マスフローコントローラ14によって流量を調整されたSF、O及びSiFが処理室50内に同時に供給される。また、図示しない排気装置の駆動により、排出口11dを介して処理室50内の流体が排気され、処理室50がエッチング処理の条件に応じた圧力とされる。このエッチングガスの供給と、排気装置による真空槽11内の排気は、プラズマエッチング処理の実施中にわたり継続されるものである。
【0033】
また、図示しない電力供給部から、第1磁場コイル36及び第3磁場コイル38に同一方向の電流が供給され、第2磁場コイル37に、第1磁場コイル36及び第3磁場コイル38に供給される電流の向きとは逆の電流が供給される。この電流の供給により、処理室50には、ゼロ磁場領域51が生成される。
【0034】
さらにバイアス用高周波電源22から、例えば13.56MHzの高周波電力が、整合回路21及び入力側コンデンサ31を介して高周波アンテナ25に供給される。そして、高周波アンテナ25から出力される高周波電力が、誘電体窓12を介して、ゼロ磁場領域51が生成された処理室50に伝播され、誘導電場が生成される。そして、この誘導電場の生成により、エッチングガスを原料とする磁気中性線放電(Neutral Loop Discharge)プラズマが生成される。このプラズマ中には、SFガスが解離して生成されたSFx(x=1〜5)、酸素原子や酸素ラジカル、SiFガスが解離して生成されたSiFx(x=1〜3)等が含まれる。
【0035】
そして、バイアス用高周波電源22から基板電極ステージ20にバイアス用の高周波電力が供給される。この電力の供給により、処理室50に生成されたプラズマとシリコン基板Sbとの間に直流電圧が発生する。その結果、処理室50内に存在するプラズマ中のSFx等がシリコン基板Sbに引き込まれ、シリコン基板Sbをエッチングする。
【0036】
酸素原子や酸素ラジカルは、シリコン基板SbのSiと反応して、SiOxを生成する。反応生成物であるSiOxは、図2(b)に示すように、シリコン基板Sbのエッチングにより生成されたホールHの側面に堆積し、等方的なエッチングを抑制する保護膜Fとして機能する。また、処理室50に供給されたSiFがプラズマ中で解離して生成されたSiFxのうち、主にSiFが、酸素原子や酸素ラジカル等と反応してSiOxを生成し、ホールの側面に形成された保護膜Fを増強する。
【0037】
エッチングによる反応生成物であるSiOxは、エッチングが進行している底面付近に多く存在するが、プラズマ中(気相中)のSiFxは、局所的に滞留することなく、ホールHの側面付近に到達し、同じく側面に到達した酸素原子や酸素ラジカルと反応してSiOxを生成する。このため、プラズマ中(気相中)のSiFxにより生成されたSiOxは、ホールHの側面全体に亘って堆積することとなる。
【0038】
また上記したように、SiFガスは、SFガス及びOガスの供給と同時に処理室50へ供給されるので、パーティクルの原因となるSiリッチな粒子の生成を抑制しつつ、SiOxを生成することができる。即ち、SiFからなるガスをSFからなるガス及びOからなるガスの供給前に供給すると、酸素源が少ない状態でSiFガスが分解されるので、Siリッチな粒子が生成され、この粒子が処理室50内を汚染するパーティクルの原因となる。これに対し、Oガスの供給と同時にSiFからなるガスを供給することで、Siリッチな粒子の生成を抑制し、パーティクルの生成を抑制することができる。
【0039】
このようなエッチングを実施する際、SFガスに対するSiFガスの流量比が、0.22以上0.67以下であることが好ましい。SiFガスの流量比が0.22未満になると、ホールHの側面に堆積するSiOxの量が不足して、エッチング形状の異方性を向上することができない。このため、SiFガスの流量比が0.22未満である場合、図3に示すように、ホールHの開口部付近の内径が大きくなり、ホールHの側面が湾曲するボーイングが発生する等、ホールHの垂直性が低下してしまう。
【0040】
SiFガスの流量比が、0.67を超えると、シリコン基板Sbのエッチングに直接寄与するSFxが不足気味となるか、又はSiOxの堆積量が過剰となり、エッチングレートが低下するか、若しくはエッチングが停止してしまう。
【0041】
なお、上述したようにエッチングガスとしてSiFを添加しなくても、SFとSiとの反応により、SiOxの供給源となるSiFxは生成されるが、SiFをエッチングガスとして添加すると、プラズマ中のSiFxの生成量は増加する。図4中太線(上側のスペクトル)で示すように、SF、O及びSiFからなるエッチングガスを用いてシリコン基板Sbをエッチングした場合、プラズマのスペクトルでは、SiF(437nm)に相当する強いピークがみられた。一方、図4中細線(下側のスペクトル)で示すように、SF及びOからなるエッチングガスを用いてシリコン基板Sbをエッチングした場合、プラズマのスペクトルでは、前者のスペクトルに比べSiFに相当するピークの強度が小さかった。
【0042】
さらに、エッチングを実施する際、Oガスは、SiFガスの流量に対して5%以上添加することが好ましい。Oガスの添加量をその範囲とすると、適度な量のSiOxを生成することができる。
【0043】
また、プラズマ密度は、1011cm−3以上であることが好ましい。プラズマ密度が、1011cm−3以上である場合、プラズマ中のSiFの解離度が高まり、SiOxの生成に寄与するSiFxの量を多くすることができる。即ち、処理室50に供給されたSiFのうち、SiOxの生成に寄与する割合を多くすることができる。このSiFxは、プラズマ中の酸素原子又は酸素ラジカルと反応してSiOxを生成し、ホールの側壁の保護膜を増強する。
【0044】
そしてSFガスに対するSiFガスの流量比を0.22以上0.67以下といった比率を保持してエッチングを継続して実施していくと、シリコン基板Sbに所望の深さを有するホールHが形成される。このように形成されたホールHは、側面に形成されたSiOxからなる保護膜Fが適量化されているため、開口部付近のボーイングが抑制されて、ホールHの異方性(垂直性)が維持される。
【0045】
シリコン基板Sbに所望の深さのホールHを形成すると、レジストマスクMを除去する工程で、保護膜Fも除去する。
次に、実施例及び比較例を挙げて、上記実施形態について具体的に説明する。
(実施例1)
上記したNLD型エッチング装置を用いて、以下の条件でエッチングを行った。シリコン基板Sbに、エッチングマスクとして膜厚1μmのTEOSを積層し、ウエハ開口率は1.5%で形成し、そのシリコン基板Sbに対して、以下の条件でエッチングを実施して、深さ50μm程度のホールを形成した。尚、SFに対するSiFの流量比は、0.22である。
【0046】
・エッチングガス SF:O:SiF
・流量(SF:O:SiF) 225sccm:50sccm:50sccm
・真空槽内の圧力 6.65Pa
・アンテナパワー 1000W
・バイアス用高周波電力(周波数) 50W(2MHz)
・基板温度 −20℃
・エッチング時間 10分
上記条件でエッチングを実施した際のホールの電子顕微鏡写真を図5に示す。ホールの異方性が維持されている。
(実施例2)
実施例1の条件のうち、SFに対するSiFの流量比を好適な範囲の下限値とし、その他の条件は実施例1と同様にしてエッチングを実施した。各ガスの流量を以下に示す。尚、SFに対するSiFの流量比は、0.44である。
・流量(SF:O:SiF) 225sccm:50sccm:100sccm
上記条件でエッチングを実施した際のホールの電子顕微鏡写真を図6に示す。開口部付近でのボーイングが見られず、ホールの異方性が維持された。
(実施例3)
実施例1の条件のうち、SFに対するSiFの流量比を好適な範囲の下限値とし、その他の条件は実施例1と同様にしてエッチングを実施した。各ガスの流量を以下に示す。尚、SFに対するSiFの流量比は、0.67である。
・流量(SF:O:SiF) 225sccm:50sccm:150sccm
上記条件でエッチングを実施した際のホールの電子顕微鏡写真を図7に示す。ホールの異方性が維持されている。
(比較例1)
エッチングガスにSiFを添加せず、その他の条件は実施例1と同様にしてエッチングを実施した。各ガスの流量を以下に示す。
・流量(SF:O:SiF) 225sccm:50sccm:0sccm
上記条件でエッチングを実施した際のホールの電子顕微鏡写真を図8に示す。開口付近で等方的にエッチングが進んだことがわかる。
(比較例2)
実施例1の条件のうち、SiFの流量比を変更し、その他の条件は実施例1と同様にしてエッチングを実施した。各ガスの流量を以下に示す。
・流量(SF:O:SiF) 225sccm:50sccm:200sccm
上記条件でエッチングを実施した際のホールの電子顕微鏡写真を図9に示す。エッチングが途中で停止し、所望の深さが得られなかった。
【0047】
また、実施例3の流量比と比較例1の流量比とで、直径5μmのホールと直径10μmのホールとを形成し、基板中央とエッジ部とでCDシフト量(エッチングマスクの寸法とホールの寸法との差分)の平均値を測定した。その結果を図10に示す。
【0048】
基板中央部では、各ホールの両方において、SiFの流量が150sccmの場合の方がCDシフト量が小さくなった。基板エッジ部でも同様な傾向がみられた。
上記実施形態のドライエッチング装置及びドライエッチング方法によれば、以下のような効果を得ることができる。
【0049】
(1)上記実施形態では、SixFyで表されるフッ化ケイ素ガスを、SFに対する流量比が0.22以上0.67以下となるように添加したエッチングガスを、プラズマ化して、シリコン基板Sbをエッチングした。このため、SFを原料とするSFxとSiとを反応させてエッチングする際に、反応生成物であるSiFxと酸素ラジカル等とを反応させて、ホール又はトレンチの側面にSiOxが堆積される。また、処理室50に供給された気相中のフッ化ケイ素ガスは、気相中の酸素原子又は酸素ラジカル等と反応することにより、SiOxの生成に寄与することができる。このようにプラズマ中にSiFx等が含まれることにより、ホール又はトレンチの開口部だけでなく、全体的にSiOxを堆積させることができるので、ボーイングの発生を抑制し、エッチング形状の異方性を向上することができる。また、SiFガスの流量比を上記範囲に調整するため、シリコン基板Sbのエッチングに直接寄与するSFxを不足させることなく、ホールHの側面に堆積するSiOxの量を適量化することができる。このため、異方性エッチングと良好なエッチングレートとを両立することができる。
【0050】
(2)NLDエッチング装置により生成されるプラズマの密度は、1011cm−3以上であるため、プラズマ中のフッ化ケイ素の解離度が高まり、SiOxの生成に寄与するSiFxの含有量を増加させることができる。このため、処理室50に供給されるフッ化ケイ素ガスのうち、SiOxの生成に寄与するガスの割合を多くすることができる。
【0051】
(3)フッ化ケイ素ガスを、SFガス及びOガスの供給と同時に処理室50へ供給したため、パーティクルの原因となるSiリッチな粒子の生成を抑制しつつSiOxを生成することができる。即ち、フッ化ケイ素ガスを、SFからなるガス及びOからなるガスの供給前に供給すると、酸素源が少ない状態でSiFガスが分解されるので、Siリッチな粒子が生成され、この粒子が処理室50内を汚染するパーティクルの原因となる。これに対し、酸素源が存在する処理室50にSiFからなるガスを供給することで、Siリッチな粒子の生成を抑制し、パーティクルの生成を抑制することができる。
【0052】
尚、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
・上記実施形態では、シリコン基板SbにホールHを形成したが、トレンチ等を形成してもよい。また、シリコン層と他の材質の層を積層した多層構造としてもよい。
【0053】
・上記実施形態では、本発明のドライエッチング装置を、NLD型エッチング装置に具体化したが、誘導結合型プラズマ源のみを有するエッチング装置に具体化することも可能である。
【0054】
・上記実施形態では、プラズマ密度を1011cm−3以上としたが、ホール又はトレンチの深さや内径に応じて、プラズマ密度を1011cm−3未満とすることも可能である。
【0055】
・上記実施形態では、SiFガスを、SFガス及びOガスの供給と同時に処理室50へ供給したが、SFガス及びOガスを供給した後に供給してもよい。
・上記実施形態では、SixFyガスとしてSiFガスを用いたが、これ以外のガスを使用してもよい。
【符号の説明】
【0056】
15…ガス供給系、25…プラズマ源を構成する高周波アンテナ、28…プラズマ源を構成する高周波電源、50…処理室、Sb…シリコン基板。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
SFからなるガスに、酸素を添加するとともに、SFに対する流量比を0.22以上0.67以下に調整してSixFyで表されるフッ化ケイ素ガスを添加したエッチングガスをプラズマ化して、シリコン層をエッチングするドライエッチング方法。
【請求項2】
前記エッチングガスのプラズマの密度が、1011cm−3以上である請求項1に記載のドライエッチング方法。
【請求項3】
前記フッ化ケイ素ガスは、SFからなるガス及び酸素の供給と同時又はそれらのガスの供給を開始した後に供給される請求項1又は2に記載のドライエッチング方法。
【請求項4】
シリコン層を有する基板を収容する処理室と、
SFからなるガス、酸素及びSixFyで表されるフッ化ケイ素ガスを含有するエッチングガスを、SFに対する前記フッ化ケイ素ガスの流量比を0.22以上0.67以下に調整するガス供給系と、
前記処理室内の前記エッチングガスをプラズマ化するプラズマ源とを備えたことを特徴とするドライエッチング装置。
【請求項5】
前記プラズマ源は、磁気中性線放電プラズマを生成するプラズマ源、又は誘導結合によりプラズマを生成するプラズマ源である請求項4に記載のドライエッチング装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図10】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−21258(P2013−21258A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−155554(P2011−155554)
【出願日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【出願人】(000231464)株式会社アルバック (1,740)
【Fターム(参考)】