説明

ナトリウムチャネル遮断剤および浸透圧調節物質での処置により粘膜水和および粘膜クリアランスを増強する方法

本発明は、粘膜繊毛クリアランスおよび粘膜水和の増大を必要とする対象に、有効量の本明細書に記載のナトリウムチャネル遮断剤および浸透圧調節物質を投与することにより、粘膜繊毛クリアランスおよび粘膜水和の増大により改善される疾患を治療する方法および組成物に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、参照により、共に本明細書に組み込まれる、2006年9月7日に出願した米国仮出願第60/842,669号、および2006年9月18日に出願した同第60/845,171号の利益を主張する。
【0002】
本発明は、いずれかを単独で用いるよりも強力で、持続的で、安全な作用物質の生成における、高張性塩化ナトリウムなどの浸透圧調節物質を伴うナトリウムチャネル遮断剤の使用に関する。本発明は、また、これらの本発明のナトリウムチャネル遮断剤-浸透圧調節物質の組合せを用いる種々の処置方法も含む。
【背景技術】
【0003】
環境と生体との間のインターフェースにある粘膜表面は、多数の「先天的防御」、すなわち、防護機構を進化させてきた。こうした先天的防御の主要形態は、これらの表面を液体で洗浄することである。粘膜表面における液体層の量は、水(および陽イオンの対イオン)を伴う活性陰イオン(Cl-および/またはHCO3-)分泌を反映することの多い上皮液体分泌と、水および対陰イオン(Cl-および/またはHCO3-)を伴う活性Na+吸収を反映することの多い上皮液体吸収との間の均衡を反映するのが通例である。粘膜表面の多くの疾患は、分泌(過少)と吸収(比較的過多)との間の不均衡により生じる、これらの粘膜表面における防護的液体が過少であることにより引き起こされる。これらの粘膜不全を特徴付ける塩輸送過程の欠陥は、粘膜表面の上皮層に存在する。
【0004】
粘膜表面における防護的液体層を補充する1つの手法は、Na+チャネルおよび液体吸収を遮断することにより、該系を「再均衡化する」ことである。Na+および液体吸収の律速段階を媒介する上皮タンパク質は、上皮Na+チャネル(ENaC)である。ENaCは、上皮の頂端面、すなわち、粘膜表面環境間インターフェースに位置する。したがって、ENaCが媒介するNa+および液体吸収を阻害するためには、アミロリドクラスのENaC遮断剤(ENaCの細胞外ドメインから遮断する)を粘膜表面に送達し、これが重要なことだが、この部位に維持して治療的有用性を達成しなければならない。本発明は、粘膜表面における過少の液体を特徴とする疾患、ならびに、これらの疾患の治療に必要な効力の増強、粘膜吸収の低減、およびENaCからの緩慢な解離(「結合解除」または脱離)を示すよう設計される「外用」ナトリウムチャネル遮断剤について記載する。
【0005】
慢性閉塞性肺疾患は、気道表面の脱水、および肺内における粘液分泌物の貯留を特徴とする。こうした疾患の例は、嚢胞性線維症、慢性気管支炎、および原発性繊毛運動不全症または続発性繊毛運動不全症を含む。米国内で約1500万人の患者がこうした疾患に罹患し、6番目に多い死因である。貯留した粘液分泌物の蓄積を特徴とする気道または肺の他の疾患は、副鼻腔炎(上部呼吸器感染と関連する副鼻腔洞の炎症)および肺炎を含む。
【0006】
Andersonによる米国特許第5,187,028号は、マンニトールの吸入による対象における気道狭窄の誘発法(喘息感受性の評価用)および/または喀痰の誘導法について記載する。喀痰を誘導し、粘膜繊毛クリアランスを促進するのに、同じ技法を用い得ることが示唆される。示唆される物質は、塩化ナトリウム、塩化カリウム、マンニトール、およびデキストロースを含む。
【0007】
慢性気管支炎の最も一般的な致死性遺伝形態を含む慢性気管支炎(CB)、通常は肺からである生体による粘液の除去不全を反映する疾患である嚢胞性線維症(CF)が、最終的には、慢性気道感染を引き起こす。正常肺において、慢性肺内気道感染(慢性気管支炎)に対する主要防御は、気管支気道表面からの継続的な粘液クリアランスによって媒介される。健康時におけるこの機能は、潜在的に有害な毒素および病原体を肺から効果的に除去する。近年のデータは、CBおよびCFのいずれにおいても、起因問題すなわち「基本欠損」は、気道表面からの粘液除去不全であることを示す。粘液除去不全は、気道表面における液体量とムチン量との間の不均衡を反映する、気道表面の脱水を反映する。この「気道表面液」(ASL)は、主に、血漿と類似の比率における塩および水からなる(すなわち、等張性)。ムチン高分子は、通常、吸入された細菌を捕獲し、「繊毛周囲液」(PCL)と称する水様で粘性の低い溶液中を拍動する繊毛の動きにより肺から外部へ輸送する、明確な「粘液層」内に組み込まれる。病態では、気道表面におけるムチン量(過多)とASL量(過少)とに不均衡が存在し、これが、気道表面脱水を引き起こす。脱水は、粘液濃縮、PCLの潤滑活性の低下、および繊毛活動による口腔への粘液除去不全をもたらす。肺からの粘液の機械的クリアランスの低下は、慢性気道炎症、および気道表面に付着する粘液の細菌コロニー化をもたらす。CBおよびCFにおいて肺の破壊をもたらすのは、細菌の慢性的貯留、粘液により捕獲された細菌に対する局所的な抗生物質による慢性的な殺滅不全、および、その結果としての、この種の表面感染に対する生体の慢性的な炎症応答である。
【0008】
米国における現在の罹患者数は、慢性気管支炎の後天的な(主に、喫煙曝露に由来する)形態が12,000,000名であり、遺伝的形態である嚢胞性線維症が約30,000名である。ほぼ同数の両患者集団が、欧州にも存在する。アジアでは、CFは少ないが、CBの発症率は世界の他の地域と同様に高く、増加しつつある。
【0009】
現在のところ、CBおよびCFを引き起こす基本的な欠損のレベルで、これらの疾患を特異的に治療する医薬品には、満たされない大きな医療的必要が存在する。慢性気管支炎および嚢胞性線維症に対する現在の治療法は、これらの疾患の症状および/または遅発性の影響を治療することに焦点を当てる。こうして、慢性気管支炎の場合、βアゴニスト、吸入型ステロイド、抗コリン作動剤、ならびに経口のテオフィリンおよびホスホジエステラーゼ阻害剤のいずれもが開発中である。しかし、これらの薬剤のいずれも、肺からの粘液除去不全という根本的な問題を有効に治療しない。同様に、嚢胞性線維症においても、同じスペクトルの薬理作用物質が用いられる。これらの戦略は、粘着性粘液塊中で増殖する細菌を死滅させようと試みて無益であった好中球により肺内に蓄積されたDNA(Genentech社製、「Pulmozyme」)をCF肺から除去するよう設計されたより最近の戦略、および、粘着性粘液プラークから細菌を除去する肺自体の殺滅機構を増強するよう設計された吸入式抗生物質(「TOBI」)の使用により補完されている。起因病変、この場合、粘液貯留/閉塞が治療されないなら、細菌感染が慢性となり、抗菌剤療法に対してますます不応性となるのが身体の一般的原則である。こうして、CBおよびCFいずれの肺疾患に対しても満たされていない主要な治療的に必要なものは、気道粘液を再水和(すなわち、ASL量を回復/拡大)し、細菌を伴う肺からのそのクリアランスを促進する有効な手段である。
【0010】
R.C.Boucherは、米国特許第6,264,975号において、ピラジノイルグアニジンによるナトリウムチャネル遮断剤の粘膜表面の水和への使用について記載している。よく知られた利尿剤である、アミロリド、ベンザミル、およびフェナミルを典型とするこれらの化合物は有効である。しかし、これらの化合物は、(1)それほど強力でない(肺により吸入され得る薬剤量は制限されるので重要である)、(2)急速に吸収される(粘膜表面における薬剤半減期を制限する)、および(3)ENaCから遊離するという重大な欠点を克服できない。これらのよく知られた利尿剤中に具体化されたこれらの欠点の総体が、粘膜表面を水和する治療的利益を有するのには不十分な効力および/または有効半減期を粘膜表面に対して有する化合物をもたらす。
【0011】
R.C.Boucherは、米国特許第6,926,911号において、気道疾患の治療への、アミロリドなどのそれほど強力でないナトリウムチャネル遮断剤の、浸透圧調節物質を伴う使用について示唆している。この組合せは、いずれの単独治療に対しても実際的な利点をもたらさず、臨床的に有用ではない(Donaldsonら、N Eng J Med、2006年、第354巻、241〜250頁を参照されたい)。アミロリドは、気道の水分透過性を遮断し、高張性生理食塩液およびアミロリド併用の潜在的利益を無効化することが分かった。
【0012】
必要なのは、CB/CF患者の肺からの粘液クリアランスを回復するのにより有効な治療であることが明らかである。これらの新規の治療法の価値は、CF集団およびCB集団のいずれに対しても、生活の質および寿命の改善に反映されるであろう。
【0013】
体内および体表における他の粘膜表面が、それらの表面上における保護的表面液の正常な生理において示す差は微妙であるが、疾患の病態生理は、共通の主題、すなわち、過少な保護表面液を反映する。例えば、口腔乾燥(口渇)では、口腔からの持続的なNa+(ENaC)輸送媒介型液体吸収にもかかわらず、耳下腺の舌下腺および顎下線による液体分泌不全のために、口腔は液体が枯渇している。同様に、結膜表面における持続的なNa+依存型液体吸収にもかかわらず、涙腺による液体分泌不全により、乾性角結膜炎(ドライアイ)が引き起こされる。鼻副鼻腔炎および中耳炎では、CBにおける場合と同様、ムチン分泌と相対的なASL枯渇との間に不均衡が存在する。最後に、消化管では、近位小腸におけるCl-(および液体)分泌不全が、回腸末端部におけるNa+(および液体)吸収の増大と組み合わさって、遠位小腸閉塞症候群(DIOS)をもたらす。老齢患者においては、下行結腸における過剰なNa+(および体液量)吸収が、便秘および憩室炎を引き起こす。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】米国仮出願第60/842,669号
【特許文献2】米国仮出願第60/845,171号
【特許文献3】米国特許第5,187,028号
【特許文献4】米国特許第6,264,975号
【特許文献5】米国特許第6,926,911号
【特許文献6】米国特許出願第10/076,571号
【特許文献7】米国特許第6,858,615号
【特許文献8】WO2003/070182
【特許文献9】米国特許第3,313,813号
【特許文献10】米国特許第4,479,932号
【特許文献11】米国特許第4,540,564号
【特許文献12】米国特許第5,740,794号
【特許文献13】米国特許第5,654,007号
【特許文献14】米国特許第5,458,135号
【特許文献15】米国特許第5,775,320号
【特許文献16】米国特許第5,785,049号
【特許文献17】米国特許第5,622,166号
【特許文献18】米国特許第5,577,497号
【特許文献19】米国特許第5,645,051号
【特許文献20】米国特許第5,492,112号
【特許文献21】米国特許第5,826,570号
【特許文献22】米国特許第5,813,397号
【特許文献23】米国特許第5,819,726号
【特許文献24】米国特許第5,655,516号
【特許文献25】米国特許第4,501,729号
【特許文献26】米国特許第5,656,256号
【特許文献27】米国特許第5,292,498号
【特許文献28】米国特許第5,789,391号
【特許文献29】米国特許第4,389,393号
【特許文献30】米国特許第5,707,644号
【特許文献31】米国特許第4,294,829号
【特許文献32】米国特許第4,835,142号
【非特許文献】
【0015】
【非特許文献1】Donaldsonら、N Eng J Med、2006年、第354巻、241〜250頁
【非特許文献2】E.J.Cragoe、「The Synthesis of Amiloride and Its Analogs」(第3章)、「Amiloride and Its Analogs」、25〜36頁
【非特許文献3】Remington、「The Science and Practice of Pharmacy」、第II巻、1457頁(第19版、1995年)
【非特許文献4】J.S.Handlerら、Comp.Biochem.Physiol.117、301〜306頁(1997)
【非特許文献5】M.Burg、Am.J.Physiol.268、F983〜F996頁(1995)
【非特許文献6】Shek,E.ら、J.Med.Chem.19、113〜117頁(1976)
【非特許文献7】Bodor,N.ら、J.Pharm.Sci.67、1045〜1050頁(1978)
【非特許文献8】Bodor,N.ら、J.Med.Chem.26、313〜318頁(1983)
【非特許文献9】Bodor,N.ら、J.Pharm.Sci.75、29〜35頁(1986)
【非特許文献10】J.Nairn、「Solutions,Emulsions,Suspensions and Extracts」、Remington、「The Science and Practice of Pharmacy」、第86章(第19版、1995年)
【非特許文献11】Sabaterら、Journal of Applied Physiology、1999年、2191〜2196頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明の目的は、アミロリド、ベンザミル、およびフェナミルなどの化合物と比較して、より強力で、より特異的で、かつ/または、粘膜表面からの吸収が遅く、かつ/または可逆性が低いナトリウムチャネル遮断剤と合わせた浸透圧調節物質の使用を含む治療を提供することである。
【0017】
本発明の別の態様は、浸透圧増強剤と共に投与すると、アミロリド、ベンザミル、およびフェナミルなどの化合物と比較して、より強力で、かつ/または吸収が遅く、かつ/または可逆性が低いナトリウムチャネル遮断剤を用いる治療を提供することである。したがって、こうしたナトリウムチャネル遮断剤は、浸透圧調節物質と組み合わせて用いると、単独で用いたいずれの化合物と比較して、粘膜表面における薬物動態半減期を延長させるであろう。
【0018】
本発明の別の目的は、アミロリド、ベンザミル、およびフェナミルなどの化合物と比較して、粘膜表面、特に、気道表面からの吸収が遅いナトリウムチャネル遮断剤および浸透圧調節物質を併用する治療を提供することである。
【0019】
本発明の別の目的は、ナトリウムチャネル遮断剤および浸透圧調節物質を含有する組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明の目的は、粘膜繊毛クリアランスおよび粘膜水和の増大を必要とする対象に、有効量の本明細書に定義のナトリウムチャネル遮断剤および浸透圧調節物質を投与する工程を含む、粘膜繊毛クリアランスおよび粘膜水和の増大により改善される疾患を治療する方法により達成され得る。
【0021】
本発明の目的は、有効量の本明細書に定義のナトリウムチャネル遮断剤および浸透圧調節物質を、それを必要とする対象に投与する工程を含む、診断的目的で喀痰を誘導する方法によっても達成され得る。
【0022】
本発明の目的は、有効量の本明細書に定義のナトリウムチャネル遮断剤および浸透圧調節物質を、それを必要とする対象に投与する工程を含む、炭疽を治療する方法によっても達成され得る。
【0023】
本発明の目的は、有効量の本明細書に定義のナトリウムチャネル遮断剤および浸透圧調節物質を、それを必要とする対象に投与する工程を含む、病原体、特に、生物テロにおいて用いられる可能性のある病原体により引き起こされる疾患または病態に対する予防処置、曝露後予防処置、予防または治療処置の方法によっても達成され得る。
【0024】
本発明の目的は、本明細書に定義のナトリウムチャネル遮断剤および浸透圧活性化合物を含む組成物によっても達成され得る。
【0025】
本発明は、本発明についての以下の詳細な記載への参照により、よりよく理解されるため、本発明およびこれに付随する利点の多くに対するより完全な理解も容易に得られるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】ナトリウムチャネル遮断剤を伴うまたは伴わない浸透圧調節物質の表面液量に対する効果を示す図である。
【図2】マンニトールまたは化合物1の表面液量に対する効果を示す図である。
【図3】マンニトールまたは化合物1の表面液量に対する効果を示す図である。
【図4】化合物1または化合物2を伴うまたは伴わない高張性生理食塩液の表面液量に対する効果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本明細書で用いられる「本明細書に記載のナトリウムチャネル遮断剤」という用語は、その各々が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許出願第10/076,571号、米国特許第6,858,615号、およびWO2003/070182中に記載のナトリウムチャネル遮断剤を指す。該ナトリウムチャネル遮断剤のすべてのラセミ化合物、光学異性体、ジアステレオマー、互変異性体、多形体および疑似多形体、塩、ならびにラセミ混合物は、本発明に包含される。これらの出願および特許に記載のナトリウムチャネル遮断剤の具体的な例は、参照により本明細書に明確に組み込まれる。ナトリウムチャネル遮断剤は、これらの出願および特許において記載の通りに合成し得る。
【0028】
したがって、本発明において有用なナトリウムチャネル遮断剤は、式(I):
【0029】
【化1】

【0030】
[式中、
Xは、水素、ハロゲン、トリフルオロメチル、低級アルキル、非置換フェニルもしくは置換フェニル、低級アルキル-チオ、フェニル-低級アルキル-チオ、低級アルキル-スルホニル、またはフェニル-低級アルキル-スルホニルであり、
Yは、水素、ヒドロキシル、メルカプト、低級アルコキシ、低級アルキル-チオ、ハロゲン、低級アルキル、非置換単核アリールもしくは置換単核アリール、または-N(R2)2であり、
R1は、水素または低級アルキルであり、
各R2は、独立に、-R7、-(CH2)m-OR8、-(CH2)m-NR7R10、-(CH2)n(CHOR8)(CHOR8)n-CH2OR8、-(CH2CH2O)m-R8、-(CH2CH2O)m-CH2CH2NR7R10、-(CH2)n-C(=O)NR7R10、-(CH2)n-Zg-R7、-(CH2)m-NR10-CH2(CHOR8)(CHOR8)n-CH2OR8、-(CH2)n-CO2R7、または
【0031】
【化2】

【0032】
であり、
R3およびR4は、各々、独立に、水素、式(A)により表される基、低級アルキル、ヒドロキシ低級アルキル、フェニル、フェニル-低級アルキル、(ハロフェニル)-低級アルキル、低級(アルキルフェニルアルキル)、低級(アルコキシフェニル)-低級アルキル、ナフチル-低級アルキル、またはピリジル-低級アルキルであり、
ただし、R3およびR4の少なくとも1つは、式(A):
【0033】
【化3】

【0034】
[式中、
各RLは、独立に、-R7、-(CH2)n-OR8、-O-(CH2)m-OR8、-(CH2)n-NR7R10、-O-(CH2)m-NR7R10、-(CH2)n(CHOR8)(CHOR8)n-CH2OR8、-O-(CH2)m(CHOR8)(CHOR8)n-CH2OR8、-(CH2CH2O)m-R8、-O-(CH2CH2O)m-R8、-(CH2CH2O)m-CH2CH2NR7R10、-O-(CH2CH2O)m-CH2CH2NR7R10、-(CH2)n-C(=O)NR7R10、-O-(CH2)m-C(=O)NR7R10、-(CH2)n-(Z)g-R7、-O-(CH2)m-(Z)g-R7、-(CH2)n-NR10-CH2(CHOR8)(CHOR8)n-CH2OR8、-O-(CH2)m-NR10-CH2(CHOR8)(CHOR8)n-CH2OR8、-(CH2)n-CO2R7、-O-(CH2)m-CO2R7、-OSO3H、-O-グルクロニド、-O-グルコース、または下記:
【0035】
【化4】

【0036】
のいずれかであり、
各oは、独立に、0〜10の整数であり、
各pは、0〜10の整数であり、
ただし、各隣接鎖におけるoおよびpの和が、1〜10であり、
各xは、独立に、O、NR10、C(=O)、CHOH、C(=N-R10)、CHNR7R10であるか、または単結合を表し、
各R5は、独立に、-(CH2)m-OR8、-O-(CH2)m-OR8、-(CH2)n-NR7R10、-O-(CH2)m-NR7R10、-(CH2)n(CHOR8)(CHOR8)n-CH2OR8、-O-(CH2)m(CHOR8)(CHOR8)n-CH2OR8、-(CH2CH2O)m-R8、-O-(CH2CH2O)m-R8、-(CH2CH2O)m-CH2CH2NR7R10、-O-(CH2CH2O)m-CH2CH2NR7R10、-(CH2)n-C(=O)NR7R10、-O-(CH2)m-C(=O)NR7R10、-(CH2)n-(Z)g-R7、-O-(CH2)m-(Z)g-R7、-(CH2)n-NR10-CH2(CHOR8)(CHOR8)n-CH2OR8、-O-(CH2)m-NR10-CH2(CHOR8)(CHOR8)n-CH2OR8、-(CH2)n-CO2R7、-O-(CH2)m-CO2R7、-OSO3H、-O-グルクロニド、-O-グルコース、または下記:
【0037】
【化5】

【0038】
のいずれかであり、
各R6は、独立に、-R7、-OR11、-N(R7)2、-(CH2)m-OR8、-O-(CH2)m-OR8、-(CH2)n-NR7R10、-O-(CH2)m-NR7R10、-(CH2)n(CHOR8)(CHOR8)n-CH2OR8、-O-(CH2)m(CHOR8)(CHOR8)n-CH2OR8、-(CH2CH2O)m-R8、-O-(CH2CH2O)m-R8、-(CH2CH2O)m-CH2CH2NR7R10、-O-(CH2CH2O)m-CH2CH2NR7R10、-(CH2)n-C(=O)NR7R10、-O-(CH2)m-C(=O)NR7R10、-(CH2)n-(Z)g-R7、-O-(CH2)m-(Z)g-R7、-(CH2)n-NR10-CH2(CHOR8)(CHOR8)n-CH2OR8、-O-(CH2)m-NR10-CH2(CHOR8)(CHOR8)n-CH2OR8、-(CH2)n-CO2R7、-O-(CH2)m-CO2R7、-OSO3H、-O-グルクロニド、-O-グルコース、または下記:
【0039】
【化6】

【0040】
のいずれかであり、
ここで、2個のR6が、-OR11であり、フェニル環において隣接し合って位置する場合、この2個のR6のアルキル部分は、共に結合して、メチレンジオキシ基を形成していてもよく、
各R7は、独立に、水素または低級アルキルであり、
各R8は、独立に、水素、低級アルキル、-C(=O)-R11、グルクロニド、2-テトラヒドロピラニル、または
【0041】
【化7】

【0042】
であり、
各R9は、独立に、-CO2R7、-CON(R7)2、-SO2CH3、または-C(=O)R7であり、
各R10は、独立に、-H、-SO2CH3、-CO2R7、-C(=O)NR7R9、-C(=O)-R7、または-CH2-(CHOH)n-CH2OHであり、
各Zは、独立に、CHOH、C(=O)、CHNR7R10、C=NR10、またはNR10であり、
各R11は、独立に、低級アルキルであり、
各gは、独立に、1〜6の整数であり、
各mは、独立に、1〜7の整数であり、
各nは、独立に、0〜7の整数であり、
各Qは、独立に、C-R5、C-R6、または窒素原子であり、ここで、環中において多くとも3個のQが窒素原子であり、少なくとも1個のQがC-R5である]
により表されるか、または、医薬として許容されるその塩である。
【0043】
式(I)により表される化合物において、Xは、水素、ハロゲン、トリフルオロメチル、低級アルキル、低級シクロアルキル、非置換フェニルもしくは置換フェニル、低級アルキル-チオ、フェニル-低級アルキル-チオ、低級アルキル-スルホニル、またはフェニル-低級アルキル-スルホニルであり得る。ハロゲンが好ましい。
【0044】
ハロゲンの例は、フッ素、塩素、臭素、およびヨウ素を含む。塩素および臭素が、好ましいハロゲンである。塩素が特に好ましい。この記載は、本開示全体で用いられる用語「ハロゲン」に適用される。
【0045】
本明細書で用いられる用語「低級アルキル」は、8個未満の炭素原子を有するアルキル基を意味する。この範囲は、1個、2個、3個、4個、5個、6個、および7個の炭素原子などの炭素原子のすべての具体的な値およびその間の部分範囲を含む。「アルキル」という用語は、例えば、直鎖アルキル基、分枝アルキル基、および環状アルキル基など、すべての種類の基を包含する。この記載は、本開示全体で用いられる用語「低級アルキル」に適用される。適切な低級アルキル基の例は、メチル、エチル、プロピル、シクロプロピル、ブチル、イソブチルなどを含む。
【0046】
フェニル基の置換基は、ハロゲンを含む。特に好ましいハロゲン置換基は、塩素および臭素である。
【0047】
Yは、水素、ヒドロキシル、メルカプト、低級アルコキシ、低級アルキル-チオ、ハロゲン、低級アルキル、低級シクロアルキル、単核アリール、または-N(R2)2であり得る。低級アルコキシ基のアルキル部分は、上記と同じである。単核アリールの例は、フェニル基を含む。フェニル基は、上記の通り、非置換基でも置換基でもよい。Yの好ましい識別式は、-N(R2)2である。各R2が水素であるこのような化合物が、特に好ましい。
【0048】
R1は、水素または低級アルキルであり得る。水素がR1に好ましい。
【0049】
各R2は、独立に、-R7、-(CH2)m-OR8、-(CH2)m-NR7R10、-(CH2)n(CHOR8)(CHOR8)n-CH2OR8、-(CH2CH2O)m-R8、-(CH2CH2O)m-CH2CH2NR7R10、-(CH2)n-C(=O)NR7R10、-(CH2)n-(Z)g-R7、-(CH2)m-NR10-CH2(CHOR8)(CHOR8)n-CH2OR8、-(CH2)n-CO2R7、または
【0050】
【化8】

【0051】
であり得る。
【0052】
R2には、水素および低級アルキル、特に、C1〜C3のアルキルが好ましい。水素が特に好ましい。
【0053】
R3およびR4は、独立に、水素、式(A)により表される基、低級アルキル、ヒドロキシ低級アルキル、フェニル、フェニル-低級アルキル、(ハロフェニル)-低級アルキル、低級(アルキルフェニルアルキル)、低級(アルコキシフェニル)-低級アルキル、ナフチル-低級アルキル、またはピリジル-低級アルキルであり得、ただし、R3およびR4の少なくとも1つは、式(A)により表される基である。
【0054】
好ましい化合物は、R3およびR4の一方が水素で、他方が式(A)により表される基である化合物である。
【0055】
式(A)においては、部分-(C(RL)2)o-x-(C(RL)2)pが、芳香環に結合したアルキレン基を規定する。変数oおよびpは、各々、0〜10の整数でよく、ただし、鎖中のoおよびpの和は、1〜10である。したがってoおよびpは、各々、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、もしくは10、またはその間の任意の部分範囲であり得る。oおよびpの和は、2〜6であることが好ましい。特に好ましい実施形態において、oおよびpの和は4である。
【0056】
アルキレン鎖であるx中の連結基は、独立に、O、NR10、C(=O)、CHOH、C(=N-R10)、CHNR7R10であり得るか、または、単結合を表す。
【0057】
したがって、xが単結合を表す場合、環に結合したアルキレン鎖は、和o+pが1〜10である式-(C(RL)2)o+p-によって表される。
【0058】
各RLは、独立に、-R7、-(CH2)n-OR8、-O-(CH2)m-OR8、-(CH2)n-NR7R10、-O-(CH2)m-NR7R10、-(CH2)n(CHOR8)(CHOR8)n-CH2OR8、-O-(CH2)m(CHOR8)(CHOR8)n-CH2OR8、-(CH2CH2O)m-R8、-O-(CH2CH2O)m-R8、-(CH2CH2O)m-CH2CH2NR7R10、-O-(CH2CH2O)m-CH2CH2NR7R10、-(CH2)n-C(=O)NR7R10、-O-(CH2)m-C(=O)NR7R10、-(CH2)n-(Z)g-R7、-O-(CH2)m-(Z)g-R7、-(CH2)n-NR10-CH2(CHOR8)(CHOR8)n-CH2OR8、-O-(CH2)m-NR10-CH2(CHOR8)(CHOR8)n-CH2OR8、-(CH2)n-CO2R7、-O-(CH2)m-CO2R7、-OSO3H、-O-グルクロニド、-O-グルコース、または下記:
【0059】
【化9】

【0060】
のいずれかであり得る。
【0061】
特に、各R7が水素である場合、好ましいRL基は、-H、-OH、-N(R2)2を含む。
【0062】
式(A)中のアルキレン鎖では、炭素原子に結合した1個のRL基が水素以外である場合、その炭素原子に結合した他のRLは水素である、すなわち式-CHRL-であることが好ましい。アルキレン鎖中の多くとも2個のRL基が水素以外であり、鎖中の他のRL基が水素であることも好ましい。アルキレン鎖中の1個のRL基のみが水素以外であり、鎖中の他のRL基が水素であることがさらに好ましい。これらの実施形態において、xは単結合を表すことが好ましい。
【0063】
本発明の別の特定の実施形態において、アルキレン鎖中のすべてのRL基は水素である。これらの実施形態において、アルキレン鎖は、式
-(CH2)o-x-(CH2)p-
によって表される。
【0064】
式(A)中の各Qは、C-R5、C-R6、または窒素原子であり、ここで、環中多くとも3個のQが窒素原子である。当然ながら、各場合において、1個のQはC-R5である。したがって、環には1個、2個、または3個の窒素原子が存在し得る。環中の窒素原子数に応じて、環には1〜4個のC-R6基が存在し得る。すなわち、環に0個、1個、2個、または3個の窒素原子が存在する場合、該環にはそれぞれ、4個、3個、2個、または1個のC-R6基が存在する。多くとも2個のQが、窒素原子であることが好ましい。多くとも1個のQが、窒素原子であることがより好ましい。1つの特定の実施形態において、窒素原子は、環の3位にある。本発明の別の実施形態において、各Qは、C-R5またはC-R6である、すなわち、環には窒素原子が存在しない。
【0065】
上述の通り、R6は水素であり得る。したがって、1個、2個、3個、または4個のR6基は、水素以外であり得る。多くとも3個のR6基は、水素以外であることが好ましい。一実施形態において、すべてのR6基は水素である。
【0066】
各gは、独立に、1〜6の整数である。したがって、各gは、1、2、3、4、5、または6であり得る。
【0067】
各mは、1〜7の整数である。したがって、各mは、1、2、3、4、5、6、または7であり得る。各nは、0〜7の整数である。したがって、各nは、0、1、2、3、4、5、6、または7であり得る。
【0068】
R5の好ましい実施形態は、-O-(CH2)m(CHOR8)(CHOR8)n-CH2OR8、-O-(CH2)m-C(=O)NR7R10、-O-(CH2)m-(Z)g-R7、および-O-(CH2)m-NR10-CH2(CHOR8)(CHOR8)n-CH2OR8である。
【0069】
好ましい実施形態において、式Iのナトリウムチャネル遮断剤は、
【0070】
【化10】

【0071】
である。この実施形態の好ましいR5は、-O-(CH2)m(CHOR8)(CHOR8)n-CH2OR8である。この実施形態の別の好ましいR5は、-O-(CH2)m-C(=O)NR7R10、である。この実施形態の別の好ましいR5は、-O-(CH2)m-(Z)g-R7である。この実施形態の別の好ましいR5は、-O-(CH2)m-NR10-CH2(CHOR8)(CHOR8)n-CH2OR8である。さらに好ましい実施形態は、下記の具体的な化合物中に見出される実施形態である。
【0072】
上述の通り、本発明は、上述のナトリウムチャネル遮断剤のすべてのラセミ化合物、光学異性体、ジアステレオマー、互変異性体、多形体および疑似多形体、塩、ならびにラセミ混合物を含む。
【0073】
本発明において用い得るナトリウムチャネル遮断剤の具体例は、
【0074】
【化11A】

【0075】
【化11B】

【0076】
【化11C】

【0077】
を含む。
【0078】
本発明は、上記で同定された、より強力で、かつ/または、粘膜表面、特に、気道表面から吸収が遅く、かつ/または、浸透圧調節物質の前、浸透圧調節物質と同時に、もしくは浸透圧調節物質の後に気道表面に投与されたアミロリド、ベンザミル、もしくはフェナミルよりもENaCとの相互作用からの可逆性がより低いナトリウムチャネル遮断剤が、単独で用いられた場合のナトリウムチャネル遮断剤または浸透圧調節物質と比較して、気道表面の水和を著しく改善するという発見に基づく。図1に示した通り、本明細書に記載のナトリウムチャネル遮断剤は、浸透圧調節物質と組み合わせた場合、単独でのいずれか一方の化合物と比較して、粘膜表面における半減期がより長い。
【0079】
本発明は、また、浸透圧調節物質と組み合わせた本明細書に記載のナトリウムチャネル遮断剤が、粘膜表面を水和させるのに必要なナトリウムチャネル遮断剤の用量を低下させることができるという発見にも基づく。この重要な特性は、浸透圧調節物質と組み合わせて用いる場合、該ナトリウムチャネル遮断剤は、受容者体内の標的とされない場所、例えば腎臓にあるナトリウムチャネルを遮断することにより、望ましくない副作用を引き起こす傾向が低いであろうことを意味する。
【0080】
ナトリウムチャネル遮断剤は、遊離塩基として調製し用いることができる。あるいは、該化合物は、医薬として許容される塩として調製し用いることができる。医薬として許容される塩とは、親化合物の所望の生物活性を保持または増強し、望ましくない毒性作用を与えない塩である。こうした塩の例は、(a)例えば、塩酸、臭化水素酸、硫酸、リン酸、硝酸などの無機酸により形成される酸付加塩、(b)例えば、酢酸、シュウ酸、酒石酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、グルコン酸、クエン酸、リンゴ酸、アスコルビン酸、安息香酸、タンニン酸、パルミチン酸、アルギニン酸、ポリグルタミン酸、ナフタレンスルホン酸、メタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、ナフタレンジスルホン酸、ポリガラクツロン酸、マロン酸、スルホサリチル酸、グリコール酸、2-ヒドロキシ-3-ナフトアート、パモ酸、サリチル酸、ステアリン酸、フタル酸、マンデリン酸、乳酸などの有機酸により形成される塩、ならびに(c)例えば、塩素、臭素、およびヨウ素の元素陰イオンから形成される塩である。
【0081】
式(I)の化合物は、当技術分野において知られる手順により合成し得る。代表的な合成手順を、以下のスキーム
【0082】
【化12】

【0083】
に示す。これらの手順は、例えば、参照により本明細書に組み込まれる、E.J.Cragoe、「The Synthesis of Amiloride and Its Analogs」(第3章)、「Amiloride and Its Analogs」、25〜36頁に記載されている。該化合物を調製する他の方法は、例えば、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第3,313,813号に記載されている。特に、米国特許第3,313,813号に記載の方法A、B、C、およびDを参照されたい。複数のアッセイを用いて、本発明の化合物を特徴付けできる。代表的なアッセイは、以下で論じる。
【0084】
特定の理論に限定されることなしに、本発明のナトリウムチャネル遮断剤は、粘膜表面に存在する上皮ナトリウムチャネルを遮断する。本明細書に記載のナトリウムチャネル遮断剤は、粘膜表面による塩および水の吸収を低下させる。この作用は、粘膜表面における保護的液量を増加させ、該系を再均衡させ、これにより疾患を治療する。この作用は、浸透圧調節物質と組み合わせて用いる場合に増強される。
【0085】
本発明の活性浸透圧調節物質は、浸透圧活性の分子または化合物(すなわち、「浸透圧調節物質」)である。本発明の「浸透圧活性」化合物は、気道表面または肺上皮表面において膜不透過性(すなわち、基本的に非吸収性)である。本明細書で用いる「気道表面」および「肺表面」という用語は、気管支表面および細気管支表面、肺胞表面などの肺気道表面、ならびに鼻腔表面および副鼻腔表面を含む。本発明の活性化合物は、イオン性浸透圧調節物質(すなわち、塩)でもよく、非イオン性浸透圧調節物質(すなわち、糖、糖アルコール、および有機浸透圧調節物質)でもよい。天然においてラセミ化合物である活性化合物の両方のラセミ形態が、本発明において有用な活性化合物群に含まれることを特に意図する。該浸透圧活性化合物のすべてのラセミ化合物、光学異性体、ジアステレオマー、互変異性体、多形体および疑似多形体、ならびにラセミ混合物が、本発明により包含されることに注意されたい。
【0086】
イオン性浸透圧調節物質である、本発明において有用な活性浸透圧調節物質は、医薬として許容される陰イオンおよび医薬として許容される陽イオンの任意の塩を含む。陰イオンおよび陽イオンのいずれか(またはいずれも)が、それらが投与される気道表面に対して非吸収性(すなわち、浸透圧活性であるが急速な能動輸送を受けない)であることが好ましい。こうした化合物は、FDAが承認した市販塩(例えば、参照により本明細書に組み込まれる、Remington、「The Science and Practice of Pharmacy」、第II巻、1457頁(第19版、1995年)を参照されたい)に含有され、その既存の組合せを含む任意の組合せにおいて用いることのできる陰イオンおよび陽イオンを含むがこれに限定されない。
【0087】
本発明を実施するのに用いることのできる、医薬として許容される浸透圧活性陰イオンは、酢酸、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、重炭酸、重酒石酸、臭化物、エデト酸カルシウム、カンシル酸(カンファースルホン酸)、炭酸、塩化物、クエン酸、二塩酸、エデト酸、エジシル酸(1,2-エタンジスルホン酸)、エストール酸(ラウリル硫酸)、エシル酸(1,2-エタンジスルホン酸)、フマル酸、グルセプト酸、グルコン酸、グルタミン酸、グリコリルアルサニル酸(p-グリコールアミドフェニルアルソネート)、ヘキシルレソルシネート、ヒドラバミン(N,N'-ジ(デヒドロアビエチル)エチレンジアミン)、臭化水素酸、塩酸、ヒドロキシナフトアート、ヨウ化物、イセチオン酸、乳酸、ラクトビオン酸、リンゴ酸、マレイン酸、マンデル酸、メシル酸、臭化メチル、メチル硝酸、メチル硫酸、ムコ酸、ナプシル酸、硝酸、亜硝酸、パモ酸(エンボン酸)、パントテン酸、リン酸または二リン酸、ポリガラクツロン酸、サリチル酸、ステアリン酸、塩基性酢酸、コハク酸、硫酸、タンニン酸、酒石酸、テオクル酸(8-クロロテオフィリネート)、トリエチオジド、重炭酸などの各陰イオンを含むがこれらに限定されない。特に好ましい陰イオンは、塩化物、硫酸、硝酸、グルコン酸、ヨウ化物、重炭酸、臭化物、およびリン酸の各イオンを含む。
【0088】
本発明を実施するのに用いることのできる医薬として許容される陽イオンは、ベンザチン(N,N'-ジベンジルエチレンジアミン)、クロロプロカイン、コリン、ジエタノールアミン、エチレンジアミン、メグルミン(N-メチルD-グルカミン)、プロカイン、D-リシン、L-リシン、D-アルギニン、L-アルギニン、トリエチルアンモニウム、N-メチルD-グリセロールなどの有機陽イオンを含むがこれらに限定されない。特に好ましい有機陽イオンは、3炭素、4炭素、5炭素、および6炭素の有機陽イオンである。本発明の実施において有用な金属陽イオンは、アルミニウム、カルシウム、リチウム、マグネシウム、カリウム、ナトリウム、亜鉛、鉄、アンモニウムなどを含むがこれらに限定されない。特に好ましい陽イオンは、ナトリウム、カリウム、コリン、リチウム、メグルミン、D-リシン、アンモニウム、マグネシウム、およびカルシウムを含む。
【0089】
本発明を実施するのに本明細書に記載のナトリウムチャネル遮断剤と共に用い得る浸透圧活性塩の具体例は、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化コリン、ヨウ化コリン、塩化リチウム、塩化メグルミン、L-リシンクロライド、D-リシンクロライド、塩化アンモニウム、硫酸カリウム、硝酸カリウム、グルコン酸カリウム、ヨウ化カリウム、塩化第二鉄、塩化第一鉄、臭化カリウムなどを含むがこれらに限定されない。単独の塩または異なる浸透圧活性塩の組合せを用いて、本発明を実施してよい。異なる塩の組合せが好ましい。異なる塩を用いる場合、陰イオンまたは陽イオンの1つは、異なる塩の間で同一であり得る。
【0090】
本発明の浸透圧活性化合物は、また、糖、糖アルコール、および有機浸透圧調節物質などの非イオン性浸透圧調節物質も含む。本発明の実施において有用な糖および糖アルコールは、3炭素の糖(例えば、グリセロール、ジヒドロキシアセトン)、4炭素の糖(例えば、エリトロース、トレオース、およびエリトルロースのD型およびL型共に)、5炭素の糖(例えば、リボース、アラビノース、キシロース、リキソース、プシコース、フルクトース、ソルボース、およびタガトースのD型およびL型共に)、および6炭素の糖(例えば、アルトース、アロース、グルコース、マンノース、グロース、イドース、ガラクトース、およびタロースのD型およびL型共に、ならびにアロ-ヘプツロース、アロ-ヘプロース、グルコ-ヘプツロース、マンノ-ヘプツロース、グロ-ヘプツロース、イド-ヘプツロース、ガラクト-ヘプツロース、タロ-ヘプツロースのD型およびL型)を含むがこれらに限定されない。本発明の実施において有用なさらなる糖は、ラフィノース、ラフィノース系オリゴ糖、およびスタキオースを含む。本発明において有用な各糖/糖アルコールの還元形のD型およびL型のいずれも、また、本発明の範囲内の活性化合物である。例えば、グルコースは、還元すると、ソルビトールになり、したがって、本発明の範囲内では、ソルビトールおよび他の糖/糖アルコールの還元形(例えば、マンニトール、ズルシトール、アラビトール)が、本発明の活性化合物である。
【0091】
本発明の浸透圧活性化合物は、「有機浸透圧調節物質」と称する、非イオン性浸透圧調節物質ファミリーをさらに含む。「有機浸透圧調節物質」という用語は、一般に、腎臓における細胞内浸透圧を制御するのに用いられる分子を指すのに用いられる。例えば、参照により各々が本明細書に組み込まれる、J.S.Handlerら、Comp.Biochem.Physiol.117、301〜306頁(1997);M.Burg、Am.J.Physiol.268、F983〜F996頁(1995)を参照されたい。本発明者は、本発明の特定の理論に拘束されることを望まないが、これらの有機浸透圧調節物質は、気道/肺表面における細胞外体液量を制御するのに有用であると思われる。本発明において活性化合物として有用な有機浸透圧調節物質は、ポリオール、(多価アルコール)、メチルアミン、およびアミノ酸という3つの主要な化合物クラスを含むがこれに限定されない。本発明の実施において有用であると考えられるポリオール有機浸透圧調節物質は、イノシトール、ミオイノシトール、およびソルビトールを含むがこれらに限定されない。本発明の実施において有用なメチルアミン有機浸透圧調節物質は、コリン、ベタイン、カルニチン(L-型、D-型、およびDL型)、ホスホリルコリン、リソ-ホスホリルコリン、グリセロホスホリルコリン、クレアチン、およびリン酸クレアチンを含むがこれらに限定されない。本発明のアミノ酸有機浸透圧調節物質は、グリシン、アラニン、グルタミン、グルタミン酸、アスパラギン酸、プロリン、およびタウリンのD-型およびL-型を含むがこれらに限定されない。本発明の実施において有用なさらなる浸透圧調節物質は、チフロースおよびサルコシンを含むがこれらに限定されない。哺乳動物の有機浸透圧調節物質が好ましく、ヒトの有機浸透圧調節物質が最も好ましい。しかし、特定の有機浸透圧調節物質は、細菌、酵母、および海生動物起源であり、これらの化合物もまた、本発明の範囲内にある有用な活性化合物である。
【0092】
特定の状況下では、浸透圧調節物質前駆体を対象に投与してよく、したがって、これらの化合物もまた、本発明の実施において有用である。本明細書において用いられる「浸透圧調節物質前駆体」という用語は、異化または同化の代謝段階により、浸透圧調節物質に転換される化合物を指す。本発明の浸透圧調節物質前駆体は、ポリオールおよびメチルアミンの前駆体である、グルコース、グルコースポリマー、グリセロール、コリン、ホスファチジルコリン、リソ-ホスファチジルコリン、および、無機リン酸を含むがこれらに限定されない。本発明の範囲内におけるアミノ酸浸透圧調節物質の前駆体は、加水分解されて浸透圧調節物質アミノ酸、および、アミノ基転移などの代謝段階により浸透圧調節物質アミノ酸に転換され得る代謝前駆体を産出する、タンパク質、ペプチド、およびポリアミノ酸を含む。例えば、アミノ酸グルタミンの前駆体は、ポリ-L-グルタミンであり、グルタミン酸の前駆体は、ポリ-L-グルタミン酸である。
【0093】
化学的に改変された浸透圧調節物質または浸透圧調節物質前駆体もまた、本発明の範囲内において意図されている。こうした化学的改変は、浸透圧調節物質または浸透圧調節物質前駆体の効果を変更または増強する(例えば、浸透圧調節物質分子の分解を阻害する)、付加的な化学基を浸透圧調節物質(または前駆体)に連結することを含む。こうした化学的改変は、薬剤またはプロドラッグと共に用いられており、当技術分野において知られている(例えば、参照により各々が本明細書に組み込まれる、米国特許第4,479,932号および同第4,540,564号;Shek,E.ら、J.Med.Chem.19、113〜117頁(1976);Bodor,N.ら、J.Pharm.Sci.67、1045〜1050頁(1978);Bodor,N.ら、J.Med.Chem.26、313〜318頁(1983);Bodor,N.ら、J.Pharm.Sci.75、29〜35頁(1986)を参照されたい)。
【0094】
全般に、細菌増殖を促進しない、または、細菌増殖を実際に阻止または遅延させる、本発明の浸透圧活性化合物が(イオン性および非イオン性共に)好ましい。
【0095】
本発明の活性化合物、方法、および組成物は、こうした治療を必要とする対象における、慢性閉塞性気道疾患または慢性閉塞性肺疾患の処置用の治療剤として有用である。本明細書に記載の活性化合物、組成物、および方法は、また、患者における喀痰試料または粘液試料の生成を誘導するのにも用い得る。さらに、本明細書に記載の活性化合物、組成物、および方法は、患者の肺および/または気道の洗浄にも用い得る。本明細書に記載の活性化合物および組成物は、また、対象の気道に導入すべき他の活性作用物質と共に投与してもよく、実際、他の活性作用物質の媒体または担体としても機能し得る。
【0096】
本発明により治療するのに適する対象は、鳥類対象および哺乳動物対象を共に含むが、哺乳動物が好ましい。本発明により治療されることを必要とする任意の哺乳動物対象が適し、イヌ、ネコ、および獣医科が目的とする他の動物を含む。ヒト対象が好ましい。男女のヒト対象、および、発達の任意の段階(すなわち、新生児、乳児、小児、青年、成人)にあるヒト対象を、本発明により治療することができる。好ましい対象は、嚢胞性線維症、慢性気管支炎、肺気腫、原発性繊毛運動不全症および続発性繊毛運動不全症、副鼻腔炎、ならびに肺炎を含むがこれらに限定されない、慢性閉塞性気道疾患または慢性閉塞性肺疾患に罹患したヒト対象を含む。嚢胞性線維症に罹患したヒト対象が特に好ましい。
【0097】
本明細書に記載のナトリウムチャネル遮断剤および本明細書に開示の浸透圧活性化合物は、経鼻滴下剤、経鼻ミスト剤、経鼻エアゾール剤、一晩持続式の経鼻カニュレーション剤など、当技術分野で知られる任意の適切な手段により、対象の眼、鼻、ならびに、鼻腔、副鼻腔、および肺を含む気道表面などの粘膜表面に、任意の順序で投与、かつ/または、併用投与してよい。本発明の一実施形態において、本発明のナトリウムチャネル遮断剤および浸透圧活性化合物は、気管支鏡下洗浄により併用投与される。本発明の好ましい実施形態において、本発明の活性ナトリウムチャネル遮断剤および浸透圧活性化合物は、その効果が相加的となるのに十分な短時間内に、ナトリウムチャネル遮断剤が浸透圧活性化合物の独立の送達に先行または後続し得る、ナトリウムチャネル遮断剤および浸透圧活性化合物からなる呼吸域エアゾール剤、呼吸域粒子を吸入投与することにより、肺気道表面に沈着させる。呼吸域粒子は、液体でも固体でもよい。対象の肺にエアゾール粒子を投与する、多数の吸入器が知られている。本発明の別の好ましい実施形態において、ナトリウムチャネル遮断剤および浸透圧活性化合物は、本明細書に記載の通り、併用投与することができる。
【0098】
本発明のナトリウムチャネル遮断剤および浸透圧活性化合物は、それを必要とする対象に、逐次(任意の順序で)投与または併用投与する。本明細書で用いられる「併用で」という用語は、組合せ効果を生成するのに時間的に十分近接することを意味する(すなわち、「併用で」とは「同時に」でもよく、互いの前後の短時間内に生じる2つ以上の事象であってもよい)。「併用で」は、また、2つの成分の混合物または溶液としてのナトリウムチャネル遮断剤および浸透圧調節物質の送達に加え、2つの異なる噴霧器から送達される場合も包含する。その例は、Tピースにより連結された第1の噴霧器中の化合物1および第2の噴霧器中の高張性生理食塩水の送達であろう。他の活性作用物質と共に投与する場合、本発明の活性化合物は、他の活性作用物質の媒体または担体として機能してもよく、単に他の活性作用物質と併用投与してもよい。本発明の活性化合物は、気道表面に他の活性成分を投与するための乾燥媒体または液体媒体として用いてよい。こうした他の活性作用物質は、その従来の用法および用量で、他の活性作用物質の媒体または担体として役立つと考え得る本発明の活性化合物と組み合わせて、それが意図される疾患または障害を治療するために投与してよい。こうした他の任意の活性成分は、特に、気道表面の水和(すなわち、本発明の浸透圧活性化合物の活性)が、他の活性成分の活性を促進する(例えば、活性成分の取り込みを促進または増強することにより、他の活性成分の作用機序に寄与することにより、または、他の任意の機構により)場合に用いてよい。本発明の好ましい実施形態において、本発明の活性化合物が、別の活性作用物質と併用投与される場合、本発明の活性化合物は、他の活性作用物質と比較して相加的効果を有する、すなわち、本発明の活性化合物の併用投与により、他の活性作用物質の所望の効果が増強される。
【0099】
米国特許第5,740,794号、同第5,654,007号、同第5,458,135号、同第5,775,320号、および同第5,785,049号に開示の吸入器を含むがこれに限定されない、米国、カリフォルニア州、パロアルトのInhale Therapeutic Systems社により開発された吸入器(Nektar)などの吸入器を用いてよい。本出願者は、本明細書において引用されたすべての特許文献の開示が、その全体において、参照により本明細書に組み込まれることを特に意図する。米国特許第5,622,166号、同第5,577,497号、同第5,645,051号、および同第5,492,112号に開示の吸入器を含むがこれに限定されない、米国、カリフォルニア州、サンディエゴのDura Pharmaceuticals社により開発された吸入器などの吸入器もまた用いてよい。さらに、米国特許第5,826,570号、同第5,813,397号、同第5,819,726号、および同第5,655,516号に開示の吸入器を含むがこれに限定されない、米国、カリフォルニア州、ヘイワードのAradigm社により開発された吸入器などの吸入器もまた用いてよい。これらの器具は、乾燥粒子吸入器として特に適している。
【0100】
活性化合物を含む液体粒子のエアゾールは、圧力駆動式エアゾール噴霧器(L C Star)または超音波式噴霧器(Pari eFlow)などを有する任意の適切な手段により生成してよい。例えば、米国特許第4,501,729号を参照されたい。噴霧器は、狭小なベンチュリオリフィスを介する圧縮ガス、通例では、空気または酸素の加速化により、超音波攪拌により、または、多孔質プレートの振動により、活性成分の溶液または懸濁液を治療用エアゾールミストに転換する市販の機器である。噴霧機での使用に適する製剤は、液体担体中の活性成分からなり、活性成分は製剤の最大40%w/wを占めるが、20%w/w未満であることが好ましい。担体は、通例では、水(無菌の発熱物質非含有水が最も好ましい)、希釈含水アルコール溶液、またはプロピレングリコールである。ペルフルオロカーボン担体も用いてよい。任意選択の添加剤は、製剤が滅菌製造でない場合の防腐剤、例えば、ヒドロキシ安息香酸メチル、抗酸化剤、芳香剤、揮発油、緩衝剤、および界面活性剤を含む。
【0101】
活性化合物を含む固体粒子のエアゾールも同様に、任意の固体微粒子薬剤エアゾール発生器により生成することができる。対象への固体微粒子薬剤投与用のエアゾール発生器は、上記に説明した通り、呼吸域にある粒子を生成し、ヒトへの投与に適した速度で、予め定められ計量された用量の薬剤を含有する一定量のエアゾールを発生させる。固体微粒子エアゾール発生器の1つの例示的な種類は、通気器である。通気投与に適する製剤は、通気器により送達してもよく、嗅ぎ薬の形で鼻腔内に取り込んでもよい、細かく砕いた粉末を含む。通気器の場合、粉末(例えば、本明細書に記載の治療を実施するのに有効な、計量されたその用量)は、その場で穿刺または開栓される、通例では、ゼラチンまたはプラスチック製のカプセルまたはカートリッジ中に含有され、粉末は、吸入時に機器を介して吸引される空気により、または、手動ポンプにより送達される。通気器において用いられる粉末は、活性成分のみからなるか、または、活性成分、ラクトースなどの適切な粉末希釈剤、および任意選択の界面活性剤を含む粉末ブレンドからなる。活性成分は、製剤の0.1〜100%w/wを占めるのが通例である。例示的なエアゾール発生器の第2の種類は、用量計量式吸入器を含む。用量計量式吸入器とは、液化高圧ガス中の活性成分懸濁液製剤または同溶液製剤を含有するのが通例である、加圧式エアゾールディスペンサーである。使用時において、これらの機器は、計量された容量、通例では、10〜150μlを送達して、活性成分を含有する微粒子スプレーを生成するのに適合したバルブを介して、製剤を放出する。適切な高圧ガスは、特定のクロロフルオロカーボン化合物、例えば、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、およびその混合物を含む。製剤は、さらに、1つまたは複数の共溶媒、例えば、エタノール、オレイン酸またはトリオレイン酸ソルビタンなどの界面活性剤、抗酸化剤、および適切な芳香剤を含有してよい。
【0102】
エアゾールは、固体粒子または液体粒子のいずれから形成される場合であれ、毎分約10〜150リットル、より好ましくは、毎分約30〜150リットル、および、最も好ましくは、毎分約60リットルの速度で、エアゾール発生器により生成してよい。より大量の薬剤を含有するエアゾールは、より急速に投与してよい。
【0103】
本明細書に開示のナトリウムチャネル遮断剤および浸透圧活性化合物の用量は、治療される病態および対象の状態に応じて変化するが、一般には、気道表面に沈着した、約0.1または1〜約30、50、または100ミリオスモルの浸透圧調節物質であり得る。毎日の用量は、1回または複数回の単位用量投与に分割してよい。ナトリウムチャネル遮断剤化合物の用量は、治療される病態および対象の状態に応じて変化するが、一般には、対象の鼻気道表面において、約10-9、10-8、10-7〜約10-3、10-2、または10-1モル/リットル、より好ましくは、約10-7〜約10-4モル/リットルの溶解活性化合物濃度を達成するのに十分な量であり得る。投与される活性化合物の特定の製剤の溶解度に応じて、毎日の用量は、1回または複数回の単位用量投与に分割してよい。体重による毎日の用量は、ヒト対象の場合、対象の年齢および病態に応じて、約0.01、0.03、0.1、0.5、または1.0〜10または20ミリグラムの範囲の活性作用物質粒子であり得る。現在好ましい単位用量は、1日当たり2〜10回投与のレジメンで投与される、約0.5ミリグラムの活性作用物質である。用量は、任意の適切な手段(例えば、ゼラチンカプセルにカプセル化する)によるパッケージ済み単位として提供してよい。
【0104】
他の薬理(例えば、気管拡張剤)活性作用物質(「第3作用物質」)は、それを必要とする対象に、本発明のナトリウムチャネル遮断剤および浸透圧活性化合物と併用投与してよい。
【0105】
特に、気管拡張剤は、本発明のナトリウムチャネル遮断剤および浸透圧活性化合物と併用投与してよい。本発明の実施において用いることのできる気管拡張剤は、エピネフリン、イソプロテレノール、フェノテロール、アルブテレオール、テルブタリン、ピルブテロール、ビトルテロール、メタプロテレノール、イソエタリン、サルメテロール、キシナホ酸を含むがこれらに限定されないβ-アドレナリン作動性受容体アゴニストの他、臭化イプラトロピウムを含むがこれに限定されない抗コリン作動剤、ならびに、テオフィリンおよびアミノフィリンなどの化合物を含むがこれらに限定されない。これらの化合物は、本明細書に記載の活性化合物に先行して、またはこれと併用で、既知の技法に従い投与してよい。
【0106】
本発明のナトリウムチャネル遮断剤および浸透圧活性化合物と共に投与し得る他の活性成分(「第3作用物質」)は、慢性閉塞性肺疾患に罹患する対照の治療において有用であることが知られている、イオン輸送調節物質および他の活性作用物質(例えば、DNアーゼ、抗生物質、N-アセチルシステインなどのジスルフヒドリル還元化合物)を含む。
【0107】
本明細書における本発明の活性化合物と共に、活性作用物質として投与することのできるイオン輸送調節物質は、UTP、UTP-γ-Sなどのプリノセプター(特に、P2Y2)受容体アゴニスト、ジヌクレオチドP2Y2受容体アゴニスト、およびβ-アゴニストを含む。
【0108】
本発明の化合物は、また、P2Y2受容体アゴニスト、または、医薬として許容されるその塩(本明細書では、場合によって、「活性作用物質」とも称する)とも組み合わせて用いてよい。該組成物は、P2Y2受容体アゴニスト、または、医薬として許容されるその塩(本明細書では、場合によって、「活性作用物質」とも称する)をさらに含み得る。P2Y2受容体アゴニストは、気道表面、特に、鼻気道表面による塩化物および水の分泌を刺激するのに有効な量で含まれるのが通例である。適切なP2Y2受容体アゴニストは、参照により各々が本明細書に組み込まれる、米国特許第6,264,975号、米国特許第5,656,256号、米国特許第5,292,498号の見出し9〜10に記載されている。
【0109】
本明細書に記載の製剤と組み合わせて投与することのできる他の活性成分は、核酸またはオリゴヌクレオチド、ウイルス性遺伝子導入ベクター(アデノウイルス遺伝子導入ベクター、アデノ関連ウイルス遺伝子導入ベクター、およびレトロウイルス遺伝子導入ベクターを含む)、酵素、およびインスリン、ソマトスタチン、オキシトシン、デスモプレッシン、黄体形成ホルモン放出ホルモン、ナファレリン、ロイプロリド、副腎皮質刺激ホルモン、セクレチン、グルカゴン、カルシトニン、成長ホルモン放出ホルモン、成長ホルモンなどのホルモン薬剤または生理活性タンパク質もしくは生理活性ペプチドを含む。本発明を実施するのに用い得る酵素薬剤は、DNAアーゼ(例えば、嚢胞性線維症の治療用)、α1-抗トリプシン(例えば、肺気腫の治療においてエラスターゼを阻害する)などを含むがこれらに限定されない。ステロイド剤を含む、本発明の方法での使用に適する抗炎症剤は、ジプロピオン酸ベクロメタゾン、プレドニゾン、フルニゾロン、デキサメタゾン、プレドニゾロン、コルチゾン、テオフィリン、アルブテロール、クロモリンナトリウム、エピネフリン、フルニゾリド、硫酸テルブタリン、アルファ-トコフェロール(ビタミンE)、ジパルミトイルホスファチジルコリン、サルメテロール、およびジプロピオン酸フルチカゾンを含むがこれらに限定されない。用い得る抗生物質の例は、クロラムフェニコール、アミノグリコシド、例えば、トブラマイシン、ベータ-ラクタム、例えば、アンピシリン、セファロスポリン、エリトロマイシンおよびその誘導体、クリンダマイシン、ホスホン酸抗生物質、例えば、フォスフォマイシンなどを含むがこれに限定されない。用い得る抗生物質、例えば、トブラマイシンおよびフォスフォマイシンは、組み合わせて用いてよい。適切な抗ウイルス剤は、アシクロビル、リバビリン、ガンシクロビル、およびフォスカルネットを含む。適切な抗腫瘍剤は、エトポシド、タキソール、およびシスプラチンを含むがこれらに限定されない。抗ヒスタミン剤は、ジフェンヒドラミン、およびラニタジンを含むがこれらに限定されない。ペンタミジンおよびその類似体などの抗ニューモシスチス・カリニ肺炎薬も用いてよい。リファンピン、エリスロマイシン、クロルエリスロマイシンなどの抗結核薬。2価陽イオンのキレート化剤(例えば、EGTA、EDTA)、去喀痰剤、および、粘液分泌物を遊離させるのに有用な他の作用物質(例えば、n-アセチル-L-システイン)もまた、本発明の実施において所望されるものとして投与してよい。
【0110】
本発明は、長期治療、すなわち、複合治療が治療効果の組合せを達成するよう、投与が、互いに間をおかずに2回以上反復される治療に特に有用である。例えば、投与は、週全体の各日において、週当たり2、3、4、5、6、または7回実施し得る。治療は、2、4、または6日以上の期間にわたって実施してもよく、2または4週間以上の期間にわたって毎日実施してもよく、2または4カ月以上の期間にわたって毎日実施してもよい。例えば、投与する工程は、治療される病態の持続期間にわたり、1日に3、4、5、または6回実施してよく、慢性病態は長期治療を受ける。
【0111】
本明細書に記載の化合物、組成物、および方法は、対象の肺に有効治療量の組成物を投与することにより、それを必要とする患者における肺または肺葉の洗浄に用いることができる。洗浄は、既知の技法に従い、気管支鏡を用い、所望の肺葉内にある定量(例えば、30ミリリットル〜3リットル、通例では、300ミリリットル)の流体を注入することにより実施してよい。洗浄は、単回実施でも反復実施(例えば、3回の洗浄)でもよい。注入される流体の一部を、既知の技法に従い、注入後、除去または吸引する。洗浄液は、水溶液でもよく、血液置換に用いられるペルフルオロカーボン液でもよい。
【0112】
本発明の活性化合物を含有する、固体または液体の微粒子による医薬製剤は、呼吸域サイズの粒子、すなわち、吸入時に口腔および喉頭を経て、気管支、細気管支、および(必要ならば)肺胞内に至るのに十分な小型サイズの粒子を含むべきである。細気管支は、特に、気道表面への送達に好ましい標的である。一般に、サイズが約1〜5または6ミクロン(より具体的には、サイズが約4.7ミクロン未満)の範囲の粒子は、呼吸域にある。好ましい実施形態において、粒子サイズの幾何標準偏差は、約1.7ミクロン以下である。エアゾール中に含まれる非呼吸域サイズの粒子は、咽頭に沈着し嚥下される傾向にあり、エアゾール中の非呼吸域粒子の量は、最小化するのが好ましい。経鼻投与の場合、10〜500μmの範囲にある粒子サイズは、鼻腔内の貯留を確保するのに好ましい。
【0113】
本発明による製剤の生産において、本発明のナトリウムチャネル遮断剤および浸透圧活性化合物は、とりわけ、許容される担体と混合してよい。担体は、当然ながら、製剤中の他の任意の成分と適合的であるという意味において許容され、患者に対して有害であってはならない。担体は、固体でも液体でもよく、またその両方でもよく、単位用量製剤、例えば、重量で0.5%〜99%の活性化合物を含有し得るカプセルとしての化合物と共に調合することが好ましい。本発明の製剤中には1つまたは複数の活性化合物を組み込んでよく、この製剤は、基本的に、成分の混合からなる、任意の既知の薬学技法により調製してよい。
【0114】
活性化合物の呼吸域乾燥粒子を含有する組成物は、活性化合物を乳鉢および乳棒によりすりつぶし、次いで、微粒化された組成物を400メッシュのふるいに通して、大型の凝集物を破砕または分離することにより調製してよい。例えば、塩化ナトリウムをすりつぶすと、「丸い」塩と称することの多い微粒子が生成される。
【0115】
医薬組成物は、場合によって、エアゾールの形成を促すのに役立つ分散剤を含有してもよい。適切な分散剤はラクトースであり、活性作用物質と任意の適切な比率(例えば、重量比で1対1)でブレンドしてよい。
【0116】
本明細書で用いられる「場合によって」という用語は、参照点、例えば、分散剤、医薬担体、または添加成分が存在しても不在でもよいことを意味する。
【0117】
上述は、本発明を例示するものであり、それを限定するものと理解されるべきではない。本発明は、以下の特許請求の範囲により定義されるが、これには特許請求の範囲の同等物をも含むべきである。
【0118】
本発明は、また、上述のナトリウムチャネル遮断剤および浸透圧活性化合物の特性を利用する治療法も提供する。こうして、本発明の方法により治療し得る対象は、嚢胞性線維症、原発性繊毛運動不全症、気管支拡張症、慢性気管支炎、慢性閉塞性気道疾患に罹患した患者、人工呼吸患者、急性肺炎患者などを含むがこれらに限定されない。本発明は、患者の少なくとも一方の肺に活性化合物を投与し、次いで、該患者から喀痰試料を誘導または採取することにより、患者から喀痰試料を得るのに用いてよい。本発明は、エアゾール(液体もしくは乾燥粉末)または洗浄により、呼吸粘膜表面に投与するのが通例である。
【0119】
本発明の方法により治療し得る対象は、また、補助酸素を経鼻投与される(気道表面を乾燥させる傾向があるレジメン)患者、鼻気道表面に影響を及ぼすアレルギー性疾患または反応(例えば、花粉、粉塵、動物の毛もしくは粒子、昆虫または昆虫粒子などに対するアレルギー性反応)に罹患した患者、鼻気道表面の細菌感染(例えば、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)感染などのブドウ球菌感染、インフルエンザ菌(Hemophilus influenzae)感染、肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)感染、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)感染など)に罹患する患者、鼻気道表面に影響を及ぼす炎症性疾患に罹患する患者、または副鼻腔炎(この場合、1つまたは複数の有効量の活性作用物質を投与して、副鼻腔内に充満した粘液分泌物の排出を促進する)に罹患した、もしくは鼻副鼻腔炎に複合罹患する患者も含む。本発明は、エアゾールおよび滴下剤を含む外用送達により、鼻腔〜副鼻腔表面に投与してよい。
【0120】
本発明を用いて、気道表面以外の粘膜表面を水和してよい。こうした他の粘膜表面は、消化管表面、口腔表面、生殖器〜尿道表面、眼表面または目の表面、内耳および中耳を含む。例えば、本発明の活性化合物は、有効量で、局所/外用、経口、経直腸を含む任意の適切な手段により投与してよい。
【0121】
本発明のナトリウムチャネル遮断剤および浸透圧活性化合物は、また、空気感染を治療するのにも有用である。空気感染の例は、例えば、RSVを含む。本発明のナトリウムチャネル遮断剤および浸透圧活性化合物は、また、炭疽感染を治療するのにも有用である。本発明は、本発明のナトリウムチャネル遮断剤および浸透圧活性化合物の、病原体により引き起こされる疾患または病態に対する予防的処置、曝露後の予防的処置、防止的処置または治療的処置への使用に関する。好ましい実施形態において、本発明は、ナトリウムチャネル遮断剤および浸透圧活性化合物の、生物テロにおいて用いられ得る病原体により引き起こされる疾患または病態に対する予防的処置、曝露後の予防的処置、防止的処置または治療的処置への使用に関する。
【0122】
近年では、テロ行為における生物作用物質の使用に関する懸念に取り組む各種の研究プログラムおよび生物兵器防衛対策が実施されている。これらの対策は、生物テロ、または、人々を殺し、恐怖を蔓延させ、社会を破壊するための、微生物もしくは生物毒素の使用に関する懸念に取り組むことを意図する。例えば、国立アレルギー感染症研究所(NIAID)は、生物テロ、ならびに、新興感染症および再興感染症の広範な領域における研究の必要に取り組む計画を概括する「生物兵器防衛研究のための戦略計画」を展開している。該計画によれば、米国市民の炭疽菌(Bacillus anthracis)胞子への意図的な曝露は、生物テロに対する国家全体の備えにおける空隙を明らかにした。さらに、これらの攻撃は、生物テロ作用物質により引き起こされる疾患を迅速に診断する検査、同疾患を予防するワクチンおよび免疫療法、ならびに同疾患を治癒させる薬剤および生物製剤に対する必要が満たされていないことを露呈した。
【0123】
各種の研究努力の焦点の大半は、生物テロ作用物質として潜在的に危険であると同定される病原体の生物学を調べること、こうした作用物質に対する宿主応答を調べること、感染症に対するワクチンを開発すること、こうした作用物質に対して現在得られる治療剤および現在研究されている治療剤を評価すること、ならびに、脅威を与える作用物質の徴候および症状を同定する診断法を開発することに向けられている。こうした努力は称賛に値するが、潜在的に生物テロに利用され得ると同定されている大多数の病原体を踏まえるならば、これらの努力は、いまだ、すべての可能な生物テロ脅威に対する満足のゆく応答を提供できずにいる。加えて、生物テロ作用物質として潜在的に危険であると同定された多くの病原体は、業界による治療対策または予防対策の開発への十分な経済的動機付けを提供しない。さらに、生物テロで用いられ得る各病原体に対してワクチンなどの予防対策が得られるとしても、こうしたワクチンすべてを人口全体に投与する費用は、極めて高額である。
【0124】
生物テロの各脅威に対して好適かつ有効な処置が得られるまでは、病原体からの感染の危険性を予防または軽減することのできる防止、予防または治療処置に対する大きな必要が存在する。
【0125】
本発明は、こうした予防的処置の方法を提供する。一態様において、1つまたは複数の空中病原体からの感染に対する予防的処置を必要とする個体に対して、予防的に有効な量のナトリウムチャネル遮断剤および浸透圧活性化合物を投与する工程を含む、予防的処置の方法が提供される。空中病原体の具体例は、炭疽菌である。
【0126】
別の態様では、ヒトにおいて疾患を引き起こし得る空中病原体からの感染の危険性を軽減する予防的処置の方法であって、空中病原体からの感染の危険性を有し得るが該疾患に関して無症状であるヒトの肺に、有効量のナトリウムチャネル遮断剤および浸透圧活性化合物を投与する工程を含み、有効量のナトリウムチャネル遮断剤および浸透圧活性化合物が、ヒトにおける感染の危険性を軽減するのに十分である方法が提供される。空中病原体の具体例は、炭疽菌である。
【0127】
別の態様では、空中病原体からの感染を処置する、曝露後の予防的処置または治療的処置の方法であって、空中病原体からの感染に対するこうした処置を必要とする個体の肺に、有効量のナトリウムチャネル遮断剤および浸透圧活性化合物を投与する工程を含む方法が提供される。本発明の予防的な曝露後処置、レスキュー処置、および治療的処置の方法による防護の対象となり得る病原体は、口腔、鼻腔または鼻気道を介して体内に侵入し、これにより、肺に到達し得る任意の病原体を含む。病原体は、自然発生する、またはエアゾール化による空中病原体であるのが通例である。病原体は、自然発生することもあり、病原体を環境に導入するエアゾール化もしくは他の方法の後に意図的に環境に導入されていることもある。空気中に自然には伝染しない多くの病原体が、エアゾール化されて生物テロに用いられているか、または用いられ得る。本発明の処置が有用であり得る病原体は、NIAIDにより示されるカテゴリーA、B、およびCの重点病原体を含むがこれらに限定されない。これらのカテゴリーは、疾病管理予防センター(CDC)によりまとめられた一覧に全般的に対応する。CDCが定めるカテゴリーAの作用物質は、人から人へと容易に散布され伝染し、高い死亡率をもたらす可能性があり、公衆衛生に大きな影響を及ぼす可能性を有する。カテゴリーBの作用物質は、これに次ぐ重点順位であり、散布が中等度に容易であり、中等度の有病率および低度の死亡率をもたらす作用物質を含む。カテゴリーCは、その入手可能性、生産および散布の容易さ、ならびに高度の有病率および死亡率の可能性のために、将来において大量散布用に設計され得る新興病原体からなる。これらの病原体の具体例は、炭疽菌およびペスト菌である。それに対して防護され得る、または、そこからの感染の危険性が軽減され得るさらなる病原体は、インフルエンザウイルス、ライノウイルス、アデノウイルス、および呼吸器合胞体ウイルスなどを含む。それに対して防護され得るさらなる病原体は、重症急性呼吸器症候群(SARS)を引き起こすと考えられるコロナウイルスである。
【0128】
本発明は、ヒト対象の治療に主に関するが、また、獣医科的目的で、イヌおよびネコなど他の哺乳動物対象の治療にも用い得る。
【0129】
上述の通り、本発明の組成物を調製するのに用いられる化合物は、医薬として許容される遊離塩基の形態であり得る。化合物の遊離塩基は、その塩よりも水溶液中の溶解度が一般に低いので、肺に対する活性作用物質のより緩徐な放出を提供するのには、遊離塩基組成物が用いられる。溶液中に溶解しないまま微粒子形態で肺に存在する活性作用物質は、生理的反応を誘導するのには利用されないが、徐々に溶液中に溶解する生物利用可能な薬剤の貯蔵源として役立つ。
【0130】
本発明の別の態様は、医薬として許容される担体(例えば、水性の担体溶液)中にナトリウムチャネル遮断剤を含む医薬組成物である。一般に、ナトリウムチャネル遮断剤は、粘膜表面による水の再吸収を阻害するのに有効な量で組成物中に含まれる。
【0131】
本発明の化合物は、また、P2Y2受容体アゴニストまたは医薬として許容されるその塩(本明細書では、「活性作用物質」と称する場合もある)とも組み合わせて用いてよい。該組成物は、P2Y2受容体アゴニストまたは医薬として許容されるその塩(本明細書では、「活性作用物質」と称する場合もある)をさらに含んでよい。P2Y2受容体アゴニストは、気道表面、特に、鼻気道表面による塩化物および水の分泌を刺激するのに有効な量で含まれるのが通例である。適切なP2Y2受容体アゴニストは、参照により各々が本明細書に組み込まれる、米国特許第6,264,975号、米国特許第5,656,256号、および米国特許第5,292,498号の見出し9〜10に記載されている。
【0132】
気管拡張剤も、また、本発明の化合物と組み合わせて用いることができる。これらの気管拡張剤は、エピネフリン、イソプロテレノール、フェノテロール、アルブテレオール、テルブタリン、ピルブテロール、ビトルテロール、メタプロテレノール、イソエタリン、サルメテロール、キシナホ酸を含むがこれらに限定されないβ-アドレナリン作動性受容体アゴニストの他、臭化イプラトロピウムを含むがこれに限定されない抗コリン作動剤、ならびに、テオフィリンおよびアミノフィリンなどの化合物を含むがこれらに限定されない。これらの化合物は、本明細書に記載の活性化合物の前に、または、これと併用して、既知の技法に従い投与してよい。
【0133】
本発明の別の態様は、医薬として許容される担体(例えば、水性の担体溶液)中に、上記のナトリウムチャネル遮断剤および浸透圧活性化合物を含む医薬製剤である。一般に、ナトリウムチャネル遮断剤は、気道表面および他の表面を含む粘膜表面による水の再吸収を阻害するなど、粘膜表面を処置するのに有効な量で組成物中に含まれる。
【0134】
本明細書に開示のナトリウムチャネル遮断剤および浸透圧活性化合物は、外用、経口、経直腸、経膣、眼内、および経皮などを含む任意の適切な手段により粘膜表面に投与してよい。例えば、便秘の治療には、活性化合物を、経口または経直腸で消化管粘膜表面に投与してよい。活性化合物は、経口投与の場合は滴下剤、錠剤などとして、経直腸投与または経生殖器〜尿道投与などの場合は坐薬として、滅菌生理食塩液もしくは希釈生理食塩液または外用溶液など任意の適切な形態における医薬として許容される担体と組み合わせてよい。製剤中に賦形剤を含めることによって、活性化合物の溶解度を所望に応じて増強してよい。
【0135】
本明細書に開示のナトリウムチャネル遮断剤および浸透圧活性化合物は、生理食塩液もしくは希釈生理食塩液または蒸留水など、医薬として許容される担体による活性化合物のスプレー剤、ミスト剤、または滴下剤を含む任意の適切な手段により、患者の気道表面に投与してよい。例えば、活性化合物は、その開示が全体において参照により本明細書に組み込まれる、Jacobusの米国特許第5,789,391号に記載の通りに製剤として調製し投与してよい。
【0136】
本発明を実施するために調製される固体または液体の微粒子活性作用物質は、上記の通り、呼吸域または非呼吸域サイズの粒子、すなわち、呼吸域粒子の場合は、吸入時に口腔および喉頭を経て気管支および肺胞内に至るのに十分な小型サイズの粒子、非呼吸域粒子の場合は、喉頭を経て気管支および肺胞に至るのでなく、鼻気道内に保持されるのに十分な大型サイズの粒子を含み得る。一般に、サイズが約1〜5ミクロン(より具体的には、サイズが約4.7ミクロン未満)の範囲の粒子は、呼吸域にある。非呼吸域サイズの粒子は、サイズが約5ミクロンを超え、可視的な液滴サイズを上限とする。こうして、経鼻投与の場合、10〜500μmの範囲にある粒子サイズは、鼻腔内における貯留を確保するのに用いてよい。
【0137】
本発明による製剤の生産では、活性作用物質または生理的に許容される塩もしくはその遊離塩基が、とりわけ、許容される担体と混合されるのが通例である。当然ながら、担体は、製剤中の他の任意の成分と適合的でなければならず、患者に対して有害であってはならない。担体は、固体もしくは液体またはその両方でなくてはならず、単位用量製剤、例えば、重量で0.5%〜99%の活性化合物を含有し得るカプセルとしての化合物と共に調合することが好ましい。本発明の製剤中には1つまたは複数の活性化合物を組み込んでよく、この製剤は、基本的に、成分の混合からなる任意の既知の薬学技法により調製してよい。
【0138】
微粒化した活性作用物質の呼吸域乾燥粒子または非呼吸域乾燥粒子を含有する組成物は、乾燥活性作用物質を乳鉢および乳棒によりすりつぶし、次いで、微粒化された組成物を400メッシュのふるいに通して、大型凝集物を破砕または分離することにより調製してよい。
【0139】
活性作用物質の微粒子組成物は、場合によって、エアゾールの調合を促すのに役立つ分散剤を含有してもよい。適切な分散剤はラクトースであり、活性作用物質と任意の適切な比率(例えば、重量比で1対1)でブレンドしてよい。
【0140】
本明細書に開示のナトリウムチャネル遮断剤および浸透圧活性化合物は、経鼻滴下剤、経鼻ミスト剤など、当技術分野で知られている適切な手段により、対象の鼻腔、副鼻腔、および肺を含む気道表面に投与してよい。本発明の一実施形態において、本発明の活性化合物は、気管支鏡下洗浄により投与される。本発明の好ましい実施形態において、本発明のナトリウムチャネル遮断剤および浸透圧活性化合物は、対象が吸入する、活性化合物を含む呼吸域粒子のエアゾール懸濁液を投与することにより、肺気道表面に沈着する。呼吸域粒子は、液体でも固体でもよい。対象の肺にエアゾール粒子を投与するための多数の吸入器が知られている。
【0141】
エアゾールは、固体粒子または液体粒子のいずれに由来する場合であれ、毎分約10〜150リットル、より好ましくは、毎分30〜150リットル、および、最も好ましくは、毎分約60リットルの速度で、エアゾール発生器により生成してよい。より大量の薬剤を含有するエアゾールは、より急速に投与してよい。
【0142】
本明細書に開示の活性化合物の用量は、治療される病態および対象の状態に応じて変化するが、一般には、気道表面に沈着した、約0.01、0.03、0.05、0.1〜1、5、10または20mgの医薬作用物質であり得る。毎日の用量は、1回または複数回の単位用量投与に分割してよい。目標は、肺気道表面において、10-9〜約10-4Mの医薬作用物質濃度を達成することである。
【0143】
別の実施形態において、それらは、対象が経鼻吸入する活性化合物を含む、呼吸域粒子または非呼吸域粒子(非呼吸域粒子が好ましい)のエアゾール懸濁液により投与される。呼吸域粒子または非呼吸域粒子は、液体でも固体でもよい。活性作用物質の量は、対象の気道表面において、約10-9、10-8、または10-7〜約10-3、10-2、10-1モル/リットル、および、より好ましくは、約10-9〜約10-4モル/リットルの活性作用物質溶解濃度を達成するのに十分な量であり得る。
【0144】
本発明の一実施形態において、活性作用物質の微粒子組成物は、活性作用物質の遊離塩基および医薬として許容される塩を共に含有することで、活性作用物質が鼻の粘液分泌物中に溶解する際の速放および徐放を共に提供し得る。こうした組成物は、患者に早期の症状緩和、および経時的に持続する症状緩和を共に提供するのに役立つ。持続的な症状緩和は、毎日の必要な投与回数を低減することにより、活性作用物質による治療に対する患者の服薬順守を向上させると期待される。
【0145】
気道投与に適する医薬製剤は、溶液製剤、乳剤製剤、懸濁液製剤、および抽出物製剤を含む。全般に、参照により本明細書に組み込まれる、J.Nairn、「Solutions,Emulsions,Suspensions and Extracts」、Remington、「The Science and Practice of Pharmacy」、第86章(第19版、1995年)を参照されたい。経鼻投与に適する医薬製剤は、その開示が、全体において、参照により本明細書に組み込まれる、Schorの米国特許第4,389,393号、Illumの同第5,707,644号、Suzukiの同第4,294,829号、Suzukiの同第4,835,142号に記載の通りに調製してよい。
【0146】
活性化合物を含む液体粒子のミスト剤またはエアゾールは、滅菌生理食塩水または滅菌水などの医薬として許容される水性担体中の活性作用物質を含む、簡易型経鼻スプレーなど、任意の適切な手段により生成してよい。投与は、圧力駆動式エアゾール噴霧器または超音波式噴霧器によってもよい。例えば、参照により共に本明細書に組み込まれる、米国特許第4,501,729号および同第5,656,256号を参照されたい。経鼻滴下剤もしくはスプレーボトル、または噴霧器での使用に適する製剤は、液体担体中の活性成分からなり、活性成分は製剤の最大40%w/wを占めるが、20%w/w未満であることが好ましい。担体は、水(無菌の発熱物質非含有水が最も好ましい)、または希釈含水アルコール溶液であることが通例であり、塩化ナトリウムの0.12%〜0.8%溶液により作製することが好ましい。任意選択の添加剤は、製剤が滅菌製造でない場合の防腐剤、例えば、ヒドロキシ安息香酸メチル、抗酸化剤、芳香剤、揮発油、緩衝剤、浸透圧活性作用物質(例えば、マンニトール、キシリトール、エリスリトール)および界面活性剤を含む。
【0147】
微粒化した活性作用物質の呼吸域乾燥粒子または非呼吸域乾燥粒子を含有する組成物は、乾燥活性作用物質を乳鉢および乳棒によりすりつぶし、次いで、微粒化された組成物を400メッシュのふるいに通して、大型凝集物を破砕または分離することにより調製してよい。
【0148】
微粒子組成物は、場合によって、エアゾールの形成を促すのに役立つ分散剤を含有してもよい。適切な分散剤はラクトースであり、活性作用物質と任意の適切な比率(例えば、重量比で1対1)でブレンドしてよい。
【0149】
複数のアッセイを用いて、本発明の化合物を特徴付けてよい。代表的なアッセイについて、以下に述べる。
【0150】
ナトリウムチャネル遮断活性および可逆性のin vitroにおける測定
本発明の化合物の作用機序および/または効力を評価するのに用いられる1つのアッセイは、Ussingチャンバー内に取り付けた気道上皮単層を用いて、短絡回路電流下において測定した気道上皮ナトリウム電流(ISC)に対する内腔薬剤による阻害の判定を含む。ヒト、イヌ、ヒツジ、またはげっ歯動物の切除したばかりの気道から得た細胞を、0.4ミクロンの多孔質Snapwell(商標)インサート(CoStar社製)上に播種し、ホルモン添加培地中の空気液体間インターフェース(ALI)条件で培養し、Ussingチャンバー内のクレブス重炭酸リンゲル液(KBR)中に浸漬する間、ナトリウム輸送活性(ISC)についてアッセイする。すべての試験薬剤は、101/2倍(half-log)用量添加プロトコール(1×10-11M〜3×10-5M)により内腔液に添加し、ISCの累積変化(阻害)を記録する。すべての薬剤は、ジメチルスルホキシド中で1×10-2Mの濃度のストック溶液として調製し、-20℃で保存する。6つの調製液を同時に調べるのを通例とし、1回当たりに1つの調製が、化合物1を陽性対照として含む。最大濃度(5×10-5M)を投与した後、新鮮な薬剤非含有KBR液で内腔液を3回交換し、各洗浄後に結果として得られるISCを、約5分間にわたり測定する。可逆性は、3回目の洗浄後にナトリウム電流がベースライン値に復帰する百分率として定義される。電圧クランプからのすべてのデータは、コンピュータインターフェースを介して収集し、オフラインで解析する。
【0151】
すべての化合物についての用量効果関係を考察し、Graphpad Prism V3.0プログラムにより解析する。IC50値、最大有効濃度、および可逆性を計算し、過去のアミロリドおよびベンザミルのデータセットと比較する。
【0152】
吸収の薬理学的アッセイ
1.漿膜出現アッセイ
上皮の分極化を促進するホルモン添加培地中の空気液体間インターフェースにおいて成長させる、1.13cm2または4.7cm2の成長面積を有するTranswell-Colコラーゲンコート多孔質膜上に、0.25×106/cm2の密度で気管支細胞(イヌ細胞、ヒト細胞、ヒトCF細胞、ヒツジ細胞、またはげっ歯動物細胞)を播種するか、または、Mattek社製の予め播種されたヒト気管気管支細胞を用いる。空気液体間インターフェース(ALI)成長の12〜25日後に、培養物は>90%の繊毛を有すると推測され、ムチンは細胞上に蓄積する。初代気道上皮細胞調製物の完全性を確認するため、培養物の分極化完全性の指標である経上皮抵抗(Rt)および経上皮電位差(PD)を測定する。頂端面からの吸収速度を調べるには、ヒト細胞系が好ましい。漿膜出現アッセイは、100μMの初期濃度で、実験用ナトリウムチャネル遮断剤または陽性対照(アミロリド、ベンザミル、フェナミル)を頂端面に添加することにより開始される。各時点において試料系列(試料当たり5μlの容量)を、頂端部液および漿膜液の両方から採取する。HPLCを用いて、各ナトリウムチャネル遮断剤の内部蛍光を測定することにより、濃度を決定する。定量解析には、既知の濃度および純度を有する、信頼のおける参照基準物質から作成した標準曲線を用いる。消失速度のデータ解析は、非線形回帰、単相指数関数減衰を用いて実施する。
【0153】
2.ENaC遮断剤の取り込みおよび気道表面液量/深度の変化の共焦点顕微鏡アッセイ
ほぼすべてのアミロリド様分子が紫外領域で蛍光発光する。これらの分子のこの特性を用いて、x-z共焦点顕微鏡を用いて細胞取り込みを直接に測定することができる。等モル濃度の実験用化合物と、アミロリドおよび細胞内コンパートメントへの迅速な取り込みを示す化合物(ベンザミルおよびフェナミル)を含む陽性対照とを、共焦点顕微鏡の載物台上の気道培養物の頂端面上に置く。経時的に一連のx-z画像を得て、細胞内コンパートメントに蓄積する蛍光の大きさを定量し、蛍光対時間の変化としてプロットする。浸透圧調節物質を伴うまたは伴わない新規のナトリウムチャネル遮断剤の添加前に、表面液に不活性蛍光染料を添加することができ、表面液量/深度の変化を検出する。
【0154】
3.化合物代謝のin vitroアッセイ
気道上皮細胞は、経上皮吸収の過程において、薬剤を代謝する能力を有する。さらに、より可能性は低いが、特異的な外酵素活性により、薬剤が気道上皮表面上で代謝される可能性もある。表面外事象としてはおそらくより可能性が高いが、化合物は、肺疾患、例えば、嚢胞性線維症を有する患者の気道内腔を占める感染分泌物により代謝され得る。したがって、一連のアッセイを実施して、試験浸透圧調節物質および新規のナトリウムチャネル遮断剤と、ヒト気道上皮および/またはヒト気道上皮内腔産物との相互作用から生じる化合物代謝を特徴付ける。
【0155】
最初の一連のアッセイにおいて、「ASL」刺激剤としてのKBR中における試験化合物の相互作用を、T-Colインサートシステムにおいて成長させたヒト気道上皮細胞の頂端面に適用する。大半の化合物について、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いて、これらの化合物の化学種および内因性蛍光特性を分解し、試験化合物および新規の代謝物の相対量を推定することにより、代謝(新たな種の生成)を調べた。典型的なアッセイの場合、試験溶液(10μMの試験化合物を含有する25μl KBR)を上皮内腔面に置く。(1)内腔液から漿膜液へと透過する試験化合物の質量、および(2)親化合物からの代謝物の潜在的形成に対するHPLC解析用に、5〜10μlの逐次試料を、内腔コンパートメントおよび漿膜コンパートメントから得る。試験分子の蛍光特性がこうした特徴付けに不十分である場合は、放射性標識した化合物を、これらのアッセイに用いる。HPLCデータから、内腔表面上における新規の代謝化合物の消失および/または形成の速度、ならびに、基底外側液中における試験化合物および/または新規の代謝物の出現の速度を定量する。潜在的な新規の代謝物のクロマトグラフィーにおける移動を、親化合物と関連付けるデータもまた定量する。
【0156】
CF喀痰による試験化合物の潜在的な代謝を解析するため、10例のCF患者(IRB承認下)から得た、喀出されたCF喀痰の「代表的」混合物を採取した。喀痰は、十分なボルテクシングによりKBR液の1:5の混合物中に溶解した後、混合物を「原」喀痰アリコートに分割し、アリコートを超遠心分離にかけ、「上清」アリコートを得た(「原」=細胞の、「上清」=液相)。CF喀痰による化合物代謝の典型的研究には、既知質量の試験化合物を「原」CF喀痰に添加し、CF喀痰「上清」のアリコートを37℃でインキュベートした後、上記のHPLC解析による化合物の安定性/代謝の特徴付け用に、各喀痰種別からのアリコートの逐次サンプリングを行った。次いで、上記の通りに、化合物の消失、新規代謝物の形成速度、および新規代謝物のHPLC移動度の解析を行った。
【0157】
4.in vitro細胞培養モデルの気道表面液における、浸透圧調節物質を伴うまたは伴わない新規ENaC遮断剤の持続性
重量測定(秤量)手順を用いて、透過性膜支持体(Corning社製)上の空気/液体間インターフェースにおいて成長させた、初代気管支上皮培養物の内腔面液(質量/容量)を測定し、最長8時間にわたり内腔面液量の変化を記録する。浸透圧調節物質を伴うまたは伴わない、等モル濃度(0.1〜100μM)の新規または市販の選択されたナトリウムチャネル遮断剤を伴うまたは伴わない、適用された出発容量の緩衝液(クレブス-ヘンゼライト重炭酸緩衝液)を添加し、この時点において実験を開始する。次いで、選択した時点において透過性の支持体を再秤量し、質量/容量を記録する。次いで、データを解析して、8時間の時間枠の初めから終わりに至る、表面液の質量/容量変化を決定する。
【0158】
5.動物における薬剤の薬理学的効果および作用機序
参照により本明細書に組み込まれ、下記の通りに改変される、Sabaterら、Journal of Applied Physiology、1999年、2191〜2196頁に記載のin vivoモデルを用いて、即時および長時間の時間枠(5時間)にわたり、化合物が粘膜繊毛クリアランス(MCC)を増強する効果を測定することができる。
【0159】
方法
動物の準備:特製の体装具を用いて、75kgまでの成体雌ヒツジを、拘束されかつ定位された直立位に置いた。動物の頭部を固定し、経鼻挿管(内径7.5mmの気管内チューブ(ETT))(ミズーリ州、セントルイス、Mallinckrodt Medical社製)前に、鼻腔の局部麻酔(2%リドカイン)を行った。ETTのカフは、声帯のすぐ下に置いた。挿管後、MC測定が始まる前の約20分間にわたり、動物を平衡化させた。
【0160】
放射性エアゾールの投与:3.6μmの平均空力液滴径を生成するRaindrop噴霧器(カリフォルニア州、プレザントン、Nellcor Puritan Bennett社製)により、テクネチウムで放射性標識した硫黄コロイド(99mTc-SC:3.1mg/mL、約10〜15mCi)のエアゾールを発生させた。噴霧器は、ソレノイドバルブおよび圧縮空気(20psi)源からなる薬量計に接続した。噴霧器の出力は、一端を呼吸装置(マサチューセッツ州、サウスナチック、Harvard Apparatus社製)に取り付けたTピース内に導いた。システムは、呼吸装置の吸気サイクル開始時に、1秒間にわたり作動させた。1回換気量は300mLに設定し、吸気対呼気比は1:1、20呼吸/分の呼吸数で、中枢気道沈着を最大化した。ヒツジは、最長5分間にわたり、99mTc-SCエアゾールを吸い込んだ。トレーサーの沈着後、ガンマカメラを用いて、気道からの99mTc-SCクリアランスを測定した。カメラは、ヒツジを装具内におけるその自然な直立位に置いて、動物の背面上方に定位させた。画像野は、動物の脊髄と直交した。ヒツジに外部の放射性標識マーカーを置いて、ガンマカメラの正確な位置合わせを容易にした。対象領域は、ヒツジの右肺に対応する画像にわたって追跡され、カウントが記録された。カウントは、崩壊について補正され、ベースライン画像に存在する放射能百分率として表された。左肺は、肺の輪郭が胃の上に重なり、カウントが、嚥下された99mTc-SC標識粘液による影響を受ける可能性があったので、解析から除外された。すべての沈着画像は、ガンマカメラに接続されたコンピュータに保存された。プロトコールは、放射性エアゾール投与直後に得られた、ベースライン沈着画像を含んだ。ベースライン画像の取り込み後、2つの個別のプロトコールを用いる自由呼吸下のヒツジに対して、Pari LC JetPlus噴霧器を用い、4mLのH2O(媒体)、アミロリド(3mM)、またはNCE(3mM)をエアゾール投与した。
【0161】
治療プロトコール(t-ゼロ即時活性における活性評価):ベースライン沈着画像は、放射性エアゾール投与直後に得た。ベースライン画像取り込み後の時点ゼロにおいて、Pari LC JetPlus噴霧器を用い、4mL容量の媒体対照(蒸留水)、陽性対照(アミロリド)、または実験化合物を、自由呼吸下の動物にエアゾール投与した。噴霧器は、毎分8リットルの流量を有する圧縮空気により駆動した。溶液を送達する時間は、10〜12分間であった。動物は、ETTからの過剰な放射性トレーサーの吸引により引き起こされるカウントの不適切な上昇を阻止するため、総用量の送達直後に挿管解除された。一連の肺画像は、投与後最初の2時間は15分間隔で、投与後の次の6時間は1時間ごとに、8時間の総観察時間にわたり得た。少なくとも7日間の休薬期間により、異なる実験作用物質による投与セッションを分離した。
【0162】
治療プロトコール(t-4時間持続性における活性評価):標準プロトコールの以下の変更を用いて、媒体対照(蒸留水)、陽性対照化合物(アミロリドまたはベンザミル)、または試験作用物質への単回曝露後の反応持続性を評価した。時点ゼロにおいて、Pari LC JetPlus噴霧器を用い、4mL容量の媒体対照(蒸留水)、陽性対照(アミロリド)、または試験化合物を、自由呼吸下の動物にエアゾール投与した。噴霧器は、毎分8リットルの流量を有する圧縮空気により駆動した。溶液を送達する時間は、10〜12分間であった。動物は、特製の体装具内で、4時間にわたり直立位に拘束された。4時間後に、動物は、Raindrop噴霧器から、エアゾール化された99mTc-ヒト血清アルブミン(3.1mg/ml、約20mCiを含有)の単回投与を受けた。動物は、放射性トレーサーの総用量送達直後に挿管解除された。ベースラインの沈着画像は、放射性エアゾール投与直後に得た。一連の肺画像は、放射性トレーサー投与後最初の2時間(薬剤投与後4〜6時間後に当たる)は15分間隔で、投与後の次の2時間は1時間ごとに、4時間の総観察時間にわたり得た。少なくとも7日間の休薬期間により、異なる実験作用物質による投与セッションを分離した。
【0163】
統計学的解析:in vivoでのヒツジMCアッセイからのデータは、反復測定値を伴う2元ANOVAを用いて解析した後、ANCOVAを用いて保持対時間プロットの回帰直線の傾きを解析し、傾きを比較した。必要ならば、傾きデータに対して多重比較検定(ニューマン-キュールズ法)も実施する。プロトコール2から測定された傾きを、プロトコール1で得られた傾きの測定値により除し、次いで、100%を乗じることにより、保持された活性の百分率を計算することができる。
【0164】
(実施例)
本発明を一般的に記載してきたが、例示のみを目的として本明細書に提供され、別段に指定しない限り限定することを意図しない特定の具体的な実施例への参照により、さらなる理解を得ることができる。
【0165】
(実施例1)
ナトリウムチャネル遮断剤の調製
材料と方法。すべての試薬および溶媒は、Aldrich Chemical社から購入し、さらなる精製なしに用いた。NMRスペクトルは、Bruker WM 360(360MHzにおける1H NMRおよび90MHzにおける13C NMR)またはBruker AC 300(300MHzにおける1H NMRおよび75MHzにおける13C NMR)上で得た。フラッシュクロマトグラフィーは、20 psi(N2)で90gのシリカゲルカートリッジ(40M FSO-0110-040155、32〜63μm)を搭載した、Elution Solution社(PO Box 5147、Charlottesville、Virginia 22905)製のFlash Eluteθシステム上で実施した。GC解析は、Heliflexキャピラリーカラム(Alltech社製)(移動相:AT-1、長さ:10メートル、内径:0.53mm、膜厚:0.25マイクロメートル)を装備した島津製作所製GC-17上で実施した。CGパラメータ:320℃のインジェクター、320℃の検出器、FIDガス流量:40ml/分のH2、400ml/分の空気。担体ガス:16:1の分割比、15ml/分のN2流量、18cm/秒のN2流速。温度プログラムは、0〜3分間が70℃、3〜10分間が70〜300℃、10〜15分間が300℃である。
【0166】
HPLC解析は、Microsorb MV C8型カラム、100A、25cmを装備した、Gilson社製322型ポンプ、360nmにおけるUV/Vis-156型検出器上で実施した。移動相:A=0.1% TFAを有するアセトニトリル、B=0.1% TFAを有する水。勾配プログラム:1分間にわたりB:Aを95:5、次いで、7分間にわたりB:Aを20:80、次いで、1分間にわたりAを100%の後、流量:1ml/分で11分間にわたりAを100%でウォッシュアウトした。
【0167】
化合物3の合成:
無水THF(約3mmol/mLの濃度とする)中に溶解させた化合物11の溶液に、逐次、Ph3P(1.5当量)およびトリチル保護したセリンメチルエステル12(1.5当量)を添加した。室温で30分間にわたり混合液を攪拌した。次いで、この溶液に、無水THF(DIAD対THF比は、v/vで約1:1)中に溶解したDIAD溶液(1.5当量)をゆっくりと滴下した。混合液は、室温で一晩にわたり攪拌し、次いで、さらに24時間にわたり緩やかに還流させた。反応混合液は冷却し、真空下で濃縮した。反応を小スケールで実施した場合は、残留物を直接にクロマトグラフィーにかけ精製した。大スケール(11を>10g)で実施した場合は、アセトニトリルとヘキサン(1:1)との間で残留物を分離し、Ph3POを除去した。上層のヘキサン層を濃縮し、結果として得られる残留物をシリカゲルの短いパッドに通し、エチルアセテートおよびヘキサンの混合液(0〜15%)により溶出させ、所望の生成物3を得た。
【0168】
化合物4の合成:
ジクロロメタン中に溶解させた化合物3(約5mmol/mLの濃度とする)の氷/水浴中で冷却した溶液に、TFA(15〜20当量)をゆっくりと添加した。反応混合液は、該温度で2時間にわたり攪拌し、真空中で濃縮し、次いで、メタノール(2×5mL)により共蒸発させた。残留物は、さらなる精製なしに、直接に次の工程で用いることができる。
【0169】
化合物5の合成:
上記の工程から得られた未加工反応混合物をジクロロメタン中に溶解させ、氷/水浴中で冷却した。冷却した溶液に、トリエチルアミン(5当量)をゆっくりと添加した。混合液は、該温度で30分間にわたり攪拌した。次いで、該混合液の一部にBoc2O(1.5当量)を添加した。次いで、氷/水浴を除去した。反応混合液は、室温で一晩にわたり攪拌し、次いで、真空下で濃縮した。残留物は、ジクロロメタン中に取り込んだ。結果として得られる溶液は、水(3倍容量)およびブリン(3倍容量)で逐次洗浄し、無水Na2SO4により乾燥させ、最後に再び濃縮した。未加工の生成物は、さらなる精製なしに、直接に次の工程で用いることができる。
【0170】
化合物6の合成:
上記工程から得られ、MeOH中に溶解させた化合物5(約3mmol/mLの濃度とする)の氷/水浴中で冷却した溶液に、メタノールアンモニウム(7M、20〜30当量)をゆっくりと添加した。溶液は、該温度で48時間にわたり攪拌し、次いで、真空下で濃縮した。残留物は、エチルアセテートおよびヘキサン(v/vで25〜50%)の混合液で溶出させ、所望の生成物を得た。
【0171】
注:反応生成物および/またはSMの若干の分解が、この条件下で観察された。反応をより低温(-10℃など)下で実施したなら、分解を最小化することができる。しかし、より低温下では、反応がより遅延化する。
【0172】
化合物7の合成:
エタノール中に溶解させた化合物6(約5mmol/mLの濃度とする)およびPd触媒[0.1当量、10%Pa/C(50%の湿気)]の混合液を、1気圧の水素圧および室温下で5時間にわたり水素化溶解にかけた。N2によるパージ後、触媒は、真空下で濾過し、エタノール(3倍容量)で洗浄した。濾化物および洗浄液を合わせた。合わせた液を濃縮し、さらに乾燥させ、さらなる精製なしに、直接に次の工程で用いた。
【0173】
化合物8の合成:
上記の工程から得られた未加工生成物7を、絶対エタノール中に取り込んだ(約3mmol/mLの濃度とする)。70℃まで予め加熱した該溶液に、ヒューニッヒ塩基(5当量)およびCragoe化合物[1-(3,5-ジアミノ-6-クロロピラジン-2-メチル-イソチオ尿素ヒドロイオダイド)、1.1当量]を、逐次添加した。反応混合液は、該温度で3時間にわたり攪拌し、冷却し、最後に真空下で濃縮した。残留物は、クロマトグラフィーにかけ、濃縮水酸化アンモニウム、メタノール、およびジクロロメタン(v/vで0〜1%/0〜10%/100〜89%)の混合液で溶出させ、所望の生成物を得た。
【0174】
化合物2(HCl塩)の合成:
絶対エタノール中に溶解させた化合物8(約3mmol/mLの濃度とする)の溶液に、ジオキサン中の4N HCl(2当量)を添加した。最初透明な溶液を、室温で1時間にわたり攪拌したところ、その時間中に生成物が沈析し始めた。反応混合液をさらにもう1時間攪拌し、次いで、さらに1時間にわたり氷/水浴中で冷却した。固体は真空下で濾過し、冷エタノール(3倍量)で洗浄し、真空下で乾燥させた。生成物は、最終的に凍結乾燥させて、任意の残留溶媒を除去した。本方法により得られた生成物2は、融点200〜210℃、m/z=464(M+H+)で、すべての規格を満たした。
【0175】
スキーム1:化合物2の合成
【化13】

【0176】
(実施例2)
気道表面液における表面液量に対する、浸透圧活性作用物質を伴うまたは伴わない新規のナトリウムチャネル遮断剤の効果を測定するため、in vitro細胞培養モデルを上記のアッセイ#4の通りに用いた。1.5% NaClを添加する前後に10μMの化合物1を伴うまたは伴わない、イオン性浸透圧調節物質である1.5% NaCl(高張性生理食塩液)の表面液量に対する効果を8時間にわたり測定し、等張性緩衝液(媒体)と比較した(図1)。同じ方法(アッセイ#4)を用いて、非イオン性浸透圧調節物質である4.2mg/mLおよび8.4mg/mLのマンニトールの表面液量に対する効果を測定し、化合物1および等張性緩衝液(媒体)と比較し(図2)、また、1および10μMの化合物1と組み合わせたマンニトール(4.2および8.4mg/mL)とも比較した(図3)。イオン性浸透圧調節物質である1.5% NaCl(高張性生理食塩液)を伴う化合物2の8時間にわたる表面液量の変化に対する効果を、化合物1および高張性生理食塩水(1.5% NaCl)、等張性緩衝液中の化合物1、等張性緩衝液中の化合物2、1.5% NaCl、ならびに等張性緩衝液(媒体)と比較した(図4)。
【0177】
化合物1は、
【0178】
【化14】

【0179】
である。
【0180】
化合物2は、
【0181】
【化15】

【0182】
である。
【0183】
(実施例3)
上皮イオンチャネル(CFTRおよびENaC)の異常な欠損に基づくCF肺疾患の病態生理モデルは、粘膜繊毛クリアランス(MCC)の低下をもたらす気道表面液(ASL)の枯渇を、慢性呼吸器感染の主要原因として説明する。近年、CF患者における1日3〜4回の7%高張性生理食塩液からなるエアゾール療法は、安全であり、一過性にASLを増大させ、MCCを増強し、肺機能を改善することが示されている1、2。高張性生理食塩液と組み合わせた、上記の化合物1を用いるナトリウム吸収の阻害が、ASL量の増大を延長させることにより、高張性生理食塩液の作用持続性を著明に改善する、という仮説を調べた。初代イヌ気管支上皮(CBE)を、透過性膜支持体上における空気液体間インターフェースにおいて成長させ、重量測定法を用いて、上皮表面における緩衝液量の変化を測定した。CBEの頂端面に50μLの等張性緩衝液を添加した後、8時間以内に85±12%(n=27)が吸収された。50μLの1.5% NaCl溶液のCBE表面への添加は、108±6.3%(n=4)の容量増加(8時間以内に初期添加量の50.2±19%(n=4)に減少した)をもたらす一過性の浸透圧膨張を引き起こした。10μMの化合物1のみを用いても、8時間超にわたって、容量枯渇を著明に阻害した(74.7±8.7%)。しかし、化合物1(10μM)を、前後における1.5% NaCl溶液の投与と組み合わせると、132±13%(n=12)の容量膨張をもたらし、これは8時間維持された。まとめると、高張性生理食塩液を化合物1と組み合わせることにより、ASL量の増加が生じるのみでなく、この効果の持続が8時間を超えて著明に延長されたことが見出された。この結果に基づき、高張性生理食塩液/化合物1エアゾールの併用療法は、本明細書に記載のCFおよび他の病態の治療に有用な治療手法であり得る。
(参考文献)
1. Elkins et al (2006) N Engl J Med 354,229-240.
2. Donaldson et al (2006) N Engl J Med 354,241-250.

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粘膜繊毛クリアランスおよび粘膜水和の増大を必要とする対象に、有効量の浸透圧調節物質および式(I):
【化1】

[式中、
Xは、水素、ハロゲン、トリフルオロメチル、低級アルキル、非置換フェニルもしくは置換フェニル、低級アルキル-チオ、フェニル-低級アルキル-チオ、低級アルキル-スルホニル、またはフェニル-低級アルキル-スルホニルであり、
Yは、水素、ヒドロキシル、メルカプト、低級アルコキシ、低級アルキル-チオ、ハロゲン、低級アルキル、非置換単核アリールもしくは置換単核アリール、または-N(R2)2であり、
R1が、水素または低級アルキルであり、
各R2は、独立に、-R7、-(CH2)m-OR8、-(CH2)m-NR7R10、-(CH2)n(CHOR8)(CHOR8)n-CH2OR8、-(CH2CH2O)m-R8、-(CH2CH2O)m-CH2CH2NR7R10、-(CH2)n-C(=O)NR7R10、-(CH2)n-Zg-R7、-(CH2)m-NR10-CH2(CHOR8)(CHOR8)n-CH2OR8、-(CH2)n-CO2R7、または
【化2】

であり、
R3およびR4は、各々、独立に、水素、式(A)により表される基、低級アルキル、ヒドロキシ低級アルキル、フェニル、フェニル-低級アルキル、(ハロフェニル)-低級アルキル、低級-(アルキルフェニルアルキル)、低級(アルコキシフェニル)-低級アルキル、ナフチル-低級アルキル、またはピリジル-低級アルキルであり、
ただし、R3およびR4の少なくとも1つは、式(A):
【化3】

[式中、
各RLは、独立に、-R7、-(CH2)n-OR8、-O-(CH2)m-OR8、-(CH2)n-NR7R10、-O-(CH2)m-NR7R10、-(CH2)n(CHOR8)(CHOR8)n-CH2OR8、-O-(CH2)m(CHOR8)(CHOR8)n-CH2OR8、-(CH2CH2O)m-R8、-O-(CH2CH2O)m-R8、-(CH2CH2O)m-CH2CH2NR7R10、-O-(CH2CH2O)m-CH2CH2NR7R10、-(CH2)n-C(=O)NR7R10、-O-(CH2)m-C(=O)NR7R10、-(CH2)n-(Z)g-R7、-O-(CH2)m-(Z)g-R7、-(CH2)n-NR10-CH2(CHOR8)(CHOR8)n-CH2OR8、-O-(CH2)m-NR10-CH2(CHOR8)(CHOR8)n-CH2OR8、-(CH2)n-CO2R7、-O-(CH2)m-CO2R7、-OSO3H、-O-グルクロニド、-O-グルコース、または下記:
【化4】

のいずれかであり、
各oは、独立に、0〜10の整数であり、
各pは、0〜10の整数であり、
ただし、各隣接鎖におけるoおよびpの和は、1〜10であり、
各xは、独立に、O、NR10、C(=O)、CHOH、C(=N-R10)、CHNR7R10であるか、または単結合を表し、
各R5は、独立に、-(CH2)m-OR8、-O-(CH2)m-OR8、-(CH2)n-NR7R10、-O-(CH2)m-NR7R10、-(CH2)n(CHOR8)(CHOR8)n-CH2OR8、-O-(CH2)m(CHOR8)(CHOR8)n-CH2OR8、-(CH2CH2O)m-R8、-O-(CH2CH2O)m-R8、-(CH2CH2O)m-CH2CH2NR7R10、-O-(CH2CH2O)m-CH2CH2NR7R10、-(CH2)n-C(=O)NR7R10、-O-(CH2)m-C(=O)NR7R10、-(CH2)n-(Z)g-R7、-O-(CH2)m-(Z)g-R7、-(CH2)n-NR10-CH2(CHOR8)(CHOR8)n-CH2OR8、-O-(CH2)m-NR10-CH2(CHOR8)(CHOR8)n-CH2OR8、-(CH2)n-CO2R7、-O-(CH2)m-CO2R7、-OSO3H、-O-グルクロニド、-O-グルコース、または下記:
【化5】

のいずれかであり、
各R6は、独立に、-R7、-OR11、-N(R7)2、-(CH2)m-OR8、-O-(CH2)m-OR8、-(CH2)n-NR7R10、-O-(CH2)m-NR7R10、-(CH2)n(CHOR8)(CHOR8)n-CH2OR8、-O-(CH2)m(CHOR8)(CHOR8)n-CH2OR8、-(CH2CH2O)m-R8、-O-(CH2CH2O)m-R8、-(CH2CH2O)m-CH2CH2NR7R10、-O-(CH2CH2O)m-CH2CH2NR7R10、-(CH2)n-C(=O)NR7R10、-O-(CH2)m-C(=O)NR7R10、-(CH2)n-(Z)g-R7、-O-(CH2)m-(Z)g-R7、-(CH2)n-NR10-CH2(CHOR8)(CHOR8)n-CH2OR8、-O-(CH2)m-NR10-CH2(CHOR8)(CHOR8)n-CH2OR8、-(CH2)n-CO2R7、-O-(CH2)m-CO2R7、-OSO3H、-O-グルクロニド、-O-グルコース、または下記:
【化6】

のいずれかであり、
ここで、2個のR6が、-OR11であり、フェニル環において隣接し合って位置する場合、この2個のR6のアルキル部分は、共に結合して、メチレンジオキシ基を形成していてもよく、
各R7は、独立に、水素または低級アルキルであり、
各R8は、独立に、水素、低級アルキル、-C(=O)-R11、グルクロニド、2-テトラヒドロピラニル、または
【化7】

であり、
各R9は、独立に、-CO2R7、-CON(R7)2、-SO2CH3、または-C(=O)R7であり、
各R10は、独立に、-H、-SO2CH3、-CO2R7、-C(=O)NR7R9、-C(=O)-R7、または-CH2-(CHOH)n-CH2OHであり、
各Zは、独立に、CHOH、C(=O)、CHNR7R10、C=NR10、またはNR10であり、
各R11は、独立に、低級アルキルであり、
各gは、独立に、1〜6の整数であり、
各mは、独立に、1〜7の整数であり、
各nは、独立に、0〜7の整数であり、
各Qは、独立に、C-R5、C-R6、または窒素原子であり、ここで、環中において多くとも3個のQが窒素原子であり、少なくとも1個のQがC-R5である]
により表される基である]
により表されるナトリウムチャネル遮断剤、またはすべてのその光学異性体、ジアステレオマー、およびラセミ混合物を含む、医薬として許容されるその塩を投与する工程を含む、粘膜繊毛クリアランスおよび粘膜水和の増大により改善される疾患を治療する方法。
【請求項2】
式Iにより表されるナトリウムチャネル遮断剤が、
【化8】

である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
R5が、-O-(CH2)m(CHOR8)(CHOR8)n-CH2OR8、-O-(CH2)m-C(=O)NR7R10、-O-(CH2)m-(Z)g-R7、または-O-(CH2)m-NR10-CH2(CHOR8)(CHOR8)n-CH2OR8である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
式(I)により表されるナトリウムチャネル遮断剤が、下記:
【化9A】

【化9B】

のいずれかである、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
疾患が、慢性気管支炎、気管支拡張症、嚢胞性線維症、副鼻腔炎、膣乾燥、ドライアイ、シェーグレン病、遠位腸閉塞症候群、乾燥皮膚、食道炎、口渇(口腔乾燥)、鼻部脱水、喘息、原発性繊毛運動不全症、中耳炎、慢性閉塞性肺疾患、肺気腫、肺炎、憩室炎、鼻副鼻腔炎、および空気感染からなる群から選択される1つまたは複数の病態である、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
粘膜繊毛クリアランスおよび粘膜水和の増大を必要とする対象に、有効量の浸透圧調節物質および式(I):
【化10】

[式中、
Xは、水素、ハロゲン、トリフルオロメチル、低級アルキル、非置換フェニルもしくは置換フェニル、低級アルキル-チオ、フェニル-低級アルキル-チオ、低級アルキル-スルホニル、またはフェニル-低級アルキル-スルホニルであり、
Yは、水素、ヒドロキシル、メルカプト、低級アルコキシ、低級アルキル-チオ、ハロゲン、低級アルキル、非置換単核アリールもしくは置換単核アリール、または-N(R2)2であり、
R1は、水素または低級アルキルであり、
各R2は、独立に、-R7、-(CH2)m-OR8、-(CH2)m-NR7R10、-(CH2)n(CHOR8)(CHOR8)n-CH2OR8、-(CH2CH2O)m-R8、-(CH2CH2O)m-CH2CH2NR7R10、-(CH2)n-C(=O)NR7R10、-(CH2)n-Zg-R7、-(CH2)m-NR10-CH2(CHOR8)(CHOR8)n-CH2OR8、-(CH2)n-CO2R7、または
【化11】

であり、
R3およびR4は、各々、独立に、水素、式(A)により表される基、低級アルキル、ヒドロキシ低級アルキル、フェニル、フェニル-低級アルキル、(ハロフェニル)-低級アルキル、低級(アルキルフェニルアルキル)、低級(アルコキシフェニル)-低級アルキル、ナフチル-低級アルキル、またはピリジル-低級アルキルであり、
ただし、R3およびR4の少なくとも1つは、式(A):
【化12】

[式中、
各RLは、独立に、-R7、-(CH2)n-OR8、-(CH2)m-OR8、-(CH2)n-NR7R10、-O-(CH2)m-NR7R10、-(CH2)n(CHOR8)(CHOR8)n-CH2OR8、-O-(CH2)m(CHOR8)(CHOR8)n-CH2OR8、-(CH2CH2O)m-R8、-O-(CH2CH2O)m-R8、-(CH2CH2O)m-CH2CH2NR7R10、-O-(CH2CH2O)m-CH2CH2NR7R10、-(CH2)n-C(=O)NR7R10、-O-(CH2)m-C(=O)NR7R10、-(CH2)n-(Z)g-R7、-O-(CH2)m-(Z)g-R7、-(CH2)n-NR10-CH2(CHOR8)(CHOR8)n-CH2OR8、-O-(CH2)m-NR10-CH2(CHOR8)(CHOR8)n-CH2OR8、-(CH2)n-CO2R7、-O-(CH2)m-CO2R7、-OSO3H、-O-グルクロニド、-O-グルコース、または下記:
【化13】

のいずれかであり、
各oは、独立に、0〜10の整数であり、
各pは、0〜10の整数であり、
ただし、各隣接鎖におけるoおよびpの和は、1〜10であり、
各xは、独立に、O、NR10、C(=O)、CHOH、C(=N-R10)、CHNR7R10であるか、または単結合を表し、
各R5は、独立に、-(CH2)m-OR8、-O-(CH2)m-OR8、-(CH2)n-NR7R10、-O-(CH2)m-NR7R10、-(CH2)n(CHOR8)(CHOR8)n-CH2OR8、-O-(CH2)m(CHOR8)(CHOR8)n-CH2OR8、-(CH2CH2O)m-R8、-O-(CH2CH2O)m-R8、-(CH2CH2O)m-CH2CH2NR7R10、-O-(CH2CH2O)m-CH2CH2NR7R10、-(CH2)n-C(=O)NR7R10、-O-(CH2)m-C(=O)NR7R10、-(CH2)n-(Z)g-R7、-O-(CH2)m-(Z)g-R7、-(CH2)n-NR10-CH2(CHOR8)(CHOR8)n-CH2OR8、-O-(CH2)m-NR10-CH2(CHOR8)(CHOR8)n-CH2OR8、-(CH2)n-CO2R7、-O-(CH2)m-CO2R7、-OSO3H、-O-グルクロニド、-O-グルコース、または下記:
【化14】

のいずれかであり、
各R6は、独立に、-R7、-OR11、-N(R7)2、-(CH2)m-OR8、-O-(CH2)m-OR8、-(CH2)n-NR7R10、-O-(CH2)m-NR7R10、-(CH2)n(CHOR8)(CHOR8)n-CH2OR8、-O-(CH2)m(CHOR8)(CHOR8)n-CH2OR8、-(CH2CH2O)m-R8、-O-(CH2CH2O)m-R8、-(CH2CH2O)m-CH2CH2NR7R10、-O-(CH2CH2O)m-CH2CH2NR7R10、-(CH2)n-C(=O)NR7R10、-O-(CH2)m-C(=O)NR7R10、-(CH2)n-(Z)g-R7、-O-(CH2)m-(Z)g-R7、-(CH2)n-NR10-CH2(CHOR8)(CHOR8)n-CH2OR8、-O-(CH2)m-NR10-CH2(CHOR8)(CHOR8)n-CH2OR8、-(CH2)n-CO2R7、-O-(CH2)m-CO2R7、-OSO3H、-O-グルクロニド、-O-グルコース、または下記:
【化15】

のいずれかであり、
ここで、2個のR6が、-OR11であり、フェニル環において隣接し合って位置する場合、この2個のR6のアルキル部分は、共に結合して、メチレンジオキシ基を形成していてもよく、
各R7は、独立に、水素または低級アルキルであり、
各R8は、独立に、水素、低級アルキル、-C(=O)-R11、グルクロニド、2-テトラヒドロピラニル、または
【化16】

であり、
各R9は、独立に、-CO2R7、-CON(R7)2、-SO2CH3、または-C(=O)R7であり、
各R10は、独立に、-H、-SO2CH3、-CO2R7、-C(=O)NR7R9、-C(=O)-R7、または-CH2-(CHOH)n-CH2OHであり、
各Zは、独立に、CHOH、C(=O)、CHNR7R10、C=NR10、またはNR10であり、
各R11は、独立に、低級アルキルであり、
各gは、独立に、1〜6の整数であり、
各mは、独立に、1〜7の整数であり、
各nは、独立に、0〜7の整数であり、
各Qは、独立に、C-R5、C-R6、または窒素原子であり、ここで、環中において多くとも3個のQが窒素原子であり、少なくとも1個のQがC-R5である]
により表される基である]
により表されるナトリウムチャネル遮断剤、またはすべてのその光学異性体、ジアステレオマー、およびラセミ混合物を含む、医薬として許容されるその塩を投与する工程を含む、喀痰を誘導する方法。
【請求項7】
ナトリウムチャネル遮断剤が、浸透圧調節物質の投与に先行して投与される、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
ナトリウムチャネル遮断剤が、浸透圧調節物質の投与との併用で投与される、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
ナトリウムチャネル遮断剤が、浸透圧調節物質の投与に後続して投与される、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
浸透圧調節物質が、高張性生理食塩液である、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
浸透圧調節物質が、マンニトールである、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
浸透圧調節物質が、呼吸域サイズの微粒化された粒子として送達される塩化ナトリウムである、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記有効量の浸透圧調節物質およびナトリウムチャネル遮断剤が、製剤を鼻腔または肺気道に送達する能力を有する機器を用いるエアゾール化により投与され、エアゾールが呼吸域サイズである、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
(a)式(I):
【化17】

[式中、
Xは、水素、ハロゲン、トリフルオロメチル、低級アルキル、非置換フェニルもしくは置換フェニル、低級アルキル-チオ、フェニル-低級アルキル-チオ、低級アルキル-スルホニル、またはフェニル-低級アルキル-スルホニルであり、
Yは、水素、ヒドロキシル、メルカプト、低級アルコキシ、低級アルキル-チオ、ハロゲン、低級アルキル、非置換単核アリールもしくは置換単核アリール、または-N(R2)2であり、
R1は、水素または低級アルキルであり、
各R2は、独立に、-R7、-(CH2)m-OR8、-(CH2)m-NR7R10、-(CH2)n(CHOR8)(CHOR8)n-CH2OR8、-(CH2CH2O)m-R8、-(CH2CH2O)m-CH2CH2NR7R10、-(CH2)n-C(=O)NR7R10、-(CH2)n-Zg-R7、-(CH2)m-NR10-CH2(CHOR8)(CHOR8)n-CH2OR8、-(CH2)n-CO2R7、または
【化18】

であり、
R3およびR4は、各々、独立に、水素、式(A)により表される基、低級アルキル、ヒドロキシ低級アルキル、フェニル、フェニル-低級アルキル、(ハロフェニル)-低級アルキル、低級(アルキルフェニルアルキル)、低級(アルコキシフェニル)-低級アルキル、ナフチル-低級アルキル、またはピリジル-低級アルキルであり、
ただし、R3およびR4の少なくとも1つは、式(A):
【化19】

[式中、
各RLは、独立に、-R7、-(CH2)n-OR8、-O-(CH2)m-OR8、-(CH2)n-NR7R10、-O-(CH2)m-NR7R10、-(CH2)n(CHOR8)(CHOR8)n-CH2OR8、-O-(CH2)m(CHOR8)(CHOR8)n-CH2OR8、-(CH2CH2O)m-R8、-O-(CH2CH2O)m-R8、-(CH2CH2O)m-CH2CH2NR7R10、-O-(CH2CH2O)m-CH2CH2NR7R10、-(CH2)n-C(=O)NR7R10、-O-(CH2)m-C(=O)NR7R10、-(CH2)n-(Z)g-R7、-O-(CH2)m-(Z)g-R7、-(CH2)n-NR10-CH2(CHOR8)(CHOR8)n-CH2OR8、-O-(CH2)m-NR10-CH2(CHOR8)(CHOR8)n-CH2OR8、-(CH2)n-CO2R7、-O-(CH2)m-CO2R7、-OSO3H、-O-グルクロニド、-O-グルコース、
【化20】

であり、
各oは、独立に、0〜10の整数であり、
各pは、0〜10の整数であり、
ただし、各隣接鎖におけるoおよびpの和は、1〜10であり、
各xは、独立に、O、NR10、C(=O)、CHOH、C(=N-R10)、CHNR7R10であるか、または単結合を表し、
各R5は、独立に、-(CH2)m-OR8、-O-(CH2)m-OR8、-(CH2)n-NR7R10、-O-(CH2)m-NR7R10、-(CH2)n(CHOR8)(CHOR8)n-CH2OR8、-O-(CH2)m(CHOR8)(CHOR8)n-CH2OR8、-(CH2CH2O)m-R8、-O-(CH2CH2O)m-R8、-(CH2CH2O)m-CH2CH2NR7R10、-O-(CH2CH2O)m-CH2CH2NR7R10、-(CH2)n-C(=O)NR7R10、-O-(CH2)m-C(=O)NR7R10、-(CH2)n-(Z)g-R7、-O-(CH2)m-(Z)g-R7、-(CH2)n-NR10-CH2(CHOR8)(CHOR8)n-CH2OR8、-O-(CH2)m-NR10-CH2(CHOR8)(CHOR8)n-CH2OR8、-(CH2)n-CO2R7、-O-(CH2)m-CO2R7、-OSO3H、-O-グルクロニド、-O-グルコース、または下記:
【化21】

のいずれかであり、
各R6は、独立に、-R7、-OR11、-N(R7)2、-(CH2)m-OR8、-O-(CH2)m-OR8、-(CH2)n-NR7R10、-O-(CH2)m-NR7R10、-(CH2)n(CHOR8)(CHOR8)n-CH2OR8、-O-(CH2)m(CHOR8)(CHOR8)n-CH2OR8、-(CH2CH2O)m-R8、-O-(CH2CH2O)m-R8、-(CH2CH2O)m-CH2CH2NR7R10、-O-(CH2CH2O)m-CH2CH2NR7R10、-(CH2)n-C(=O)NR7R10、-O-(CH2)m-C(=O)NR7R10、-(CH2)n-(Z)g-R7、-O-(CH2)m-(Z)g-R7、-(CH2)n-NR10-CH2(CHOR8)(CHOR8)n-CH2OR8、-O-(CH2)m-NR10-CH2(CHOR8)(CHOR8)n-CH2OR8、-(CH2)n-CO2R7、-O-(CH2)m-CO2R7、-OSO3H、-O-グルクロニド、-O-グルコース、または下記:
【化22】

のいずれかであり、
ここで、2個のR6が、-OR11であり、フェニル環において隣接し合って位置する場合、この2個のR6のアルキル部分は、共に結合して、メチレンジオキシ基を形成していてもよく、
各R7は、独立に、水素または低級アルキルであり、
各R8は、独立に、水素、低級アルキル、-C(=O)-R11、グルクロニド、2-テトラヒドロピラニル、または
【化23】

であり、
各R9は、独立に、-CO2R7、-CON(R7)2、-SO2CH3、または-C(=O)R7であり、
各R10は、独立に、-H、-SO2CH3、-CO2R7、-C(=O)NR7R9、-C(=O)-R7、または-CH2-(CHOH)n-CH2OHであり、
各Zは、独立に、CHOH、C(=O)、CHNR7R10、C=NR10、またはNR10であり、
各R11は、独立に、低級アルキルであり、
各gは、独立に、1〜6の整数であり、
各mは、独立に、1〜7の整数であり、
各nは、独立に、0〜7の整数であり、
各Qは、独立に、C-R5、C-R6、または窒素原子であり、ここで、環中において多くとも3個のQが窒素原子であり、少なくとも1個のQがC-R5である]
により表される基である]
によって表されるナトリウムチャネル遮断剤、またはすべてのその光学異性体、ジアステレオマー、およびラセミ混合物を含む、医薬として許容されるその塩と、
(b)浸透圧活性化合物と
を含む組成物。
【請求項15】
式Iにより表されるナトリウムチャネル遮断剤が、
【化24】

である、請求項14に記載の組成物。
【請求項16】
R5が、-O-(CH2)m(CHOR8)(CHOR8)n-CH2OR8、-O-(CH2)m-C(=O)NR7R10、-O-(CH2)m-(Z)g-R7、または-O-(CH2)m-NR10-CH2(CHOR8)(CHOR8)n-CH2OR8である、請求項15に記載の組成物。
【請求項17】
式(I)により表されるナトリウムチャネル遮断剤が、下記:
【化25A】

【化25B】

のいずれかである、請求項14に記載の組成物。
【請求項18】
(c)医薬として許容される担体をさらに含む、請求項14から17のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項19】
(c)P2Y2受容体アゴニスト、および、場合によって、(d)医薬として許容される担体をさらに含む、請求項14から17のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項20】
(c)気管拡張剤、および、場合によって、(d)医薬として許容される担体をさらに含む、請求項14から17のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項21】
(c)抗生物質、および、場合によって、(d)医薬として許容される担体をさらに含む、請求項14から17のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項22】
抗生物質が、トブラマイシン、フォスフォマイシン、またはその組合せである、請求項21に記載の組成物。
【請求項23】
粘膜繊毛クリアランスおよび粘膜水和の増大により改善される疾患の治療用の医薬品の製造における、請求項14から17のいずれか一項に記載の組成物の使用。
【請求項24】
本明細書に記載の組成物または方法。
【請求項25】
粘膜繊毛クリアランスおよび粘膜水和の増大を必要とする対象に、有効量の浸透圧調節物質および式(I):
【化26】

[式中、
Xは、水素、ハロゲン、トリフルオロメチル、低級アルキル、非置換フェニルもしくは置換フェニル、低級アルキル-チオ、フェニル-低級アルキル-チオ、低級アルキル-スルホニル、またはフェニル-低級アルキル-スルホニルであり、
Yは、水素、ヒドロキシル、メルカプト、低級アルコキシ、低級アルキル-チオ、ハロゲン、低級アルキル、非置換単核アリールもしくは置換単核アリール、または-N(R2)2であり、
R1は、水素または低級アルキルであり、
各R2は、独立に、-R7、-(CH2)m-OR8、-(CH2)m-NR7R10、-(CH2)n(CHOR8)(CHOR8)n-CH2OR8、-(CH2CH2O)m-R8、-(CH2CH2O)m-CH2CH2NR7R10、-(CH2)n-C(=O)NR7R10、-(CH2)n-Zg-R7、-(CH2)m-NR10-CH2(CHOR8)(CHOR8)n-CH2OR8、-(CH2)n-CO2R7、または
【化27】

であり、
R3およびR4は、各々、独立に、水素、式(A)により表される基、低級アルキル、ヒドロキシ低級アルキル、フェニル、フェニル-低級アルキル、(ハロフェニル)-低級アルキル、低級(アルキルフェニルアルキル)、低級(アルコキシフェニル)-低級アルキル、ナフチル-低級アルキル、またはピリジル-低級アルキルであり、
ただし、R3およびR4の少なくとも1つは、式(A):
【化28】

[式中、
各RLは、独立に、-R7、-(CH2)n-OR8、-O-(CH2)m-OR8、-(CH2)n-NR7R10、-O-(CH2)m-NR7R10、-(CH2)n(CHOR8)(CHOR8)n-CH2OR8、-O-(CH2)m(CHOR8)(CHOR8)n-CH2OR8、-(CH2CH2O)m-R8、-O-(CH2CH2O)m-R8、-(CH2CH2O)m-CH2CH2NR7R10、-O-(CH2CH2O)m-CH2CH2NR7R10、-(CH2)n-C(=O)NR7R10、-O-(CH2)m-C(=O)NR7R10、-(CH2)n-(Z)g-R7、-O-(CH2)m-(Z)g-R7、-(CH2)n-NR10-CH2(CHOR8)(CHOR8)n-CH2OR8、-O-(CH2)m-NR10-CH2(CHOR8)(CHOR8)n-CH2OR8、-(CH2)n-CO2R7、-O-(CH2)m-CO2R7、-OSO3H、-O-グルクロニド、-O-グルコース、または下記:
【化29】

のいずれかであり、
各oは、独立に、0〜10の整数であり、
各pは、0〜10の整数であり、
ただし、各隣接鎖におけるoおよびpの和は、1〜10であり、
各xは、独立に、O、NR10、C(=O)、CHOH、C(=N-R10)、CHNR7R10であるか、または単結合を表し、
各R5は、独立に、-(CH2)m-OR8、-O-(CH2)m-OR8、-(CH2)n-NR7R10、-O-(CH2)m-NR7R10、-(CH2)n(CHOR8)(CHOR8)n-CH2OR8、-O-(CH2)m(CHOR8)(CHOR8)n-CH2OR8、-(CH2CH2O)m-R8、-O-(CH2CH2O)m-R8、-(CH2CH2O)m-CH2CH2NR7R10、-O-(CH2CH2O)m-CH2CH2NR7R10、-(CH2)n-C(=O)NR7R10、-O-(CH2)m-C(=O)NR7R10、-(CH2)n-(Z)g-R7、-O-(CH2)m-(Z)g-R7、-(CH2)n-NR10-CH2(CHOR8)(CHOR8)n-CH2OR8、-O-(CH2)m-NR10-CH2(CHOR8)(CHOR8)n-CH2OR8、-(CH2)n-CO2R7、-O-(CH2)m-CO2R7、-OSO3H、-O-グルクロニド、-O-グルコース、または下記:
【化30】

のいずれかであり、
各R6は、独立に、-R7、-OR11、-N(R7)2、-(CH2)m-OR8、-O-(CH2)m-OR8、-(CH2)n-NR7R10、-O-(CH2)m-NR7R10、-(CH2)n(CHOR8)(CHOR8)n-CH2OR8、-O-(CH2)m(CHOR8)(CHOR8)n-CH2OR8、-(CH2CH2O)m-R8、-O-(CH2CH2O)m-R8、-(CH2CH2O)m-CH2CH2NR7R10、-O-(CH2CH2O)m-CH2CH2NR7R10、-(CH2)n-C(=O)NR7R10、-O-(CH2)m-C(=O)NR7R10、-(CH2)n-(Z)g-R7、-O-(CH2)m-(Z)g-R7、-(CH2)n-NR10-CH2(CHOR8)(CHOR8)n-CH2OR8、-O-(CH2)m-NR10-CH2(CHOR8)(CHOR8)n-CH2OR8、-(CH2)n-CO2R7、-O-(CH2)m-CO2R7、-OSO3H、-O-グルクロニド、-O-グルコース、または下記:
【化31】

のいずれかであり、
ここで、2個のR6が、-OR11であり、フェニル環において隣接し合って位置する場合、この2個のR6のアルキル部分は、共に結合して、メチレンジオキシ基を形成していてもよく、
各R7は、独立に、水素または低級アルキルであり、
各R8は、独立に、水素、低級アルキル、-C(=O)-R11、グルクロニド、2-テトラヒドロピラニル、または
【化32】

であり、
各R9は、独立に、-CO2R7、-CON(R7)2、-SO2CH3、または-C(=O)R7であり、
各R10は、独立に、-H、-SO2CH3、-CO2R7、-C(=O)NR7R9、-C(=O)-R7、または-CH2-(CHOH)n-CH2OHであり、
各Zは、独立に、CHOH、C(=O)、CHNR7R10、C=NR10、またはNR10であり、
各R11は、独立に、低級アルキルであり、
各gは、独立に、1〜6の整数であり、
各mは、独立に、1〜7の整数であり、
各nは、独立に、0〜7の整数であり、
各Qは、独立に、C-R5、C-R6、または窒素原子であり、ここで、環中において多くとも3個のQが窒素原子であり、少なくとも1個のQがC-R5である]
によって表されるナトリウムチャネル遮断剤、またはすべてのその光学異性体、ジアステレオマー、およびラセミ混合物を含む、医薬として許容されるその塩を投与する工程を含む、病原体により引き起こされる疾患または病態に対する予防的処置、曝露後の予防的処置、防止的処置または治療的処置の方法。
【請求項26】
病原体が、炭疽菌またはペスト菌である、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
病原体により引き起こされる疾患または病態に対する予防的処置、曝露後の予防的処置、防止的処置または治療的処置用の医薬品の製造における、請求項14から17のいずれか一項に記載の組成物の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2010−502738(P2010−502738A)
【公表日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−527584(P2009−527584)
【出願日】平成19年9月7日(2007.9.7)
【国際出願番号】PCT/US2007/077880
【国際公開番号】WO2008/031028
【国際公開日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【出願人】(505131980)パリオン・サイエンシィズ・インコーポレーテッド (11)
【Fターム(参考)】