説明

ナノフィブリルセルロース懸濁液を製造する方法

本発明は、セルロース繊維と少なくとも1種の充填剤および/または顔料とを供給するステップ;セルロース繊維と少なくとも1種の充填剤および/または顔料とを配合するステップ;および少なくとも1種の充填剤および/または顔料の存在下で、セルロース繊維をフィブリル化するステップによるナノフィブリルセルロースの懸濁液の製造方法、ならびにこの方法によって得られるナノフィブリルセルロースの懸濁液およびこれらの使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナノフィブリルセルロース懸濁液を製造する方法およびこの方法によって得られるナノフィブリルセルロースに関する。
【背景技術】
【0002】
セルロースは、緑色植物の一次細胞壁の構造成分であり、地球上で最も一般的な有機化合物である。それは、多くの用途および産業で非常に重要である。
【0003】
セルロースは、綿、亜麻、および他の植物繊維からできている紙およびボール紙ならびに繊維製品の主要な構成物質である。セルロースは、薄い透明なフィルムであるセロファンおよび20世紀の始めから繊維製品に使用されてきた重要な繊維であるレーヨンに変えることができる。セロファンおよびレーヨンは両方とも、「再生セルロース繊維」として知られている。
【0004】
セルロース繊維は、不活性な材料のろ床を作製するために、液体ろ過でも使用される。セルロースはさらに、親水性および高吸収性スポンジを製造するために使用される。
【0005】
工業用途のために、セルロースは、木材パルプおよび綿から主に得られる。それは、ボール紙および紙を製造するために主として用いられ、程度はより少ないが、それは、多種多様な派生的製品に変えられる。
【0006】
原料としてのセルロースパルプは、木材、または麻、亜麻およびマニラ麻などの植物の茎から処理される。パルプ繊維は、セルロースおよび他の有機化合物(ヘミセルロースおよびリグニン)から主として構築される。セルロースの巨大分子(1−4グリコシド結合型β−D−グルコース分子)は、水素結合によって一緒に連結されて、結晶性および非晶性ドメインを有するいわゆる一次フィブリル(ミセル)を形成する。いつくかの一次フィブリル(約55本)は、いわゆるミクロフィブリルを形成する。これらのミクロフィブリル約250本は、フィブリルを形成する。
【0007】
フィブリルは、異なる層(これは、リグニンおよび/またはヘミセルロースを含み得る。)に配置されて、繊維を形成する。個々の繊維は、同様にリグニンによって一緒に結合される。
【0008】
製紙に用いられるパルプはしばしば、その木材を粉砕し、場合によって、そのセルロース繊維から望ましくない化合物を除去するために熱および化学反応で処理することによって得られる。
【0009】
この繊維は、粉砕され、一定の微粉度に(所望の特性に依存して)切断される。繊維の粉砕は、精砕機(円錐ロータ−ステータミル、またはディスクもしくは二重ディスク精砕機)で達成される。精砕機はまた、表面の繊維をフィブリル化し、これは、一部のフィブリルが、繊維の表面から部分的に引き出されることを意味する。これは、製紙において添加され得る顔料の良好な保持、およびしばしば、顔料への良好な接着をもたらし、また、紙の繊維間の水素結合の可能性を高めることになる。これは、機械的特性の改善をもたらす。副作用はまた、紙が、より高い密度になり、および散乱中心の大きさが光の波長の半分の許容される最適条件から離れるにつれて、光散乱の喪失のためにより透明になることである(グラシン紙および耐油紙)。
【0010】
繊維が、加えられたエネルギー下で精砕されると、細胞壁が破壊され、付着した細片、すなわち、フィブリルに引き裂かれるのにつれて、それらはフィブリル化される。この破壊が、繊維の本体からフィブリルを分離するように継続される場合、それにより、フィブリルは放出される。繊維のミクロフィブリルへの微細化は、「ミクロフィブリル化」と称される。このプロセスは、残った繊維がなくなり、ナノサイズ(太さ)のフィブリルだけが残存するまで、継続され得る。
【0011】
このプロセスがさらに進み、これらのフィブリルをますます小さいフィブリルに微細化する場合、それらは最終的に、セルロースの断片になる。一次フィブリルへの微細化は、「ナノフィブリル化」と呼ぶことができ、この2つの形態間で円滑な移行があり得る。
【0012】
しかし、従来の精砕機による達成可能な微粉度は、限定されている。また、粒子を微細化するためのいくつかの他の装置、例えば、所定の粒群の繊維を互いに分けることができるだけである、US2001/0045264に記載された毛羽立て機(fluffer)などは、セルロース繊維をナノフィブリルに微細化することができない。
【0013】
同様に、WO02/090651では、紙、板紙またはボール紙を製造する間に生じたパルプ不合格品をリサイクルする方法が記載されており、ここでは、とりわけ、繊維を含有するより清浄な不合格品、顔料および/または繊維が、ボールミルにより特定の粒度に摩砕される。しかし、ナノフィブリルへのフィブリル化は言うまでもなく、存在する繊維のフィブリル化についてまったく言及されていない。
【0014】
繊維のナノフィブリルへのさらなる微細化が望まれる場合、他の方法が必要である。
【0015】
例えば、US4,374,702には、懸濁液が、少なくとも3000psiの圧力降下および高速度せん断作用下、続いて固体表面に対して高速度の減速性衝撃下におかれる小口径のオリフィスを有する高圧ホモジナイザーに、繊維状セルロースの液体懸濁液を通すステップ、前記セルロース懸濁液が実質的に安定な懸濁液になるまで、前記懸濁液をオリフィスに通すことを繰り返すステップを含む、ミクロフィブリル化セルロースを調製する方法が記載されており、前記方法は、セルロース出発材料を実質的に化学変化させることなしに、前記セルロースをミクロフィブリル化セルロースに変える。
【0016】
US6,183,596B1には、予め叩解したパルプのスラリーを、2つ以上の粉砕機を有するラビング装置に通し、これら粉砕機は、それらを互いに擦り合わせてパルプをミクロフィブリル化して、ミクロフィブリル化セルロースを得、得られたミクロフィブリル化セルロースを高圧ホモジナイザーでさらに超ミクロフィブリル化して、超フィブリル化セルロースを得ることができるように配置されている、超ミクロフィブリル化セルロースを製造する方法が開示されている。
【0017】
さらに、超微細摩擦粉砕機を用いることができ、ここで、該粉砕機は、機械的せん断加工によって繊維を微粉に小さくさせる(例えば、US6,214,163B1を参照。)。
【0018】
セルロース繊維のフィブリル化に関して、克服されなければならない多くの問題がある。
【0019】
例えば、ナノフィブリルセルロースの機械的製造はしばしば、フィブリル化プロセスの間に粘度増加の問題を有する。これは、そのプロセスを完全に止めるまたは必要とされる比エネルギーを増加させ得る。
【0020】
微細化プロセスの効率は、むしろ低いことが多く、まさに切断されたが、フィブリルにフィブリル化されていないかなりの量の繊維が存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0021】
【特許文献1】米国特許出願公開第2001/0045264号明細書
【特許文献2】国際公開第02/090651号
【特許文献3】米国特許第4,374,702号明細書
【特許文献4】米国特許第6,183,596号明細書
【特許文献5】米国特許第6,214,163号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
したがって、ナノフィブリルセルロース懸濁液を製造するためのより効率的な方法を提供するための継続した必要性があり、本発明の1つの目的は、ナノフィブリルセルロース懸濁液を製造するための新規で効率的な方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0023】
パルプを含むセルロース繊維と一緒の、特定の充填剤および/または顔料の添加および共処理が、以下により詳細に説明されるように、多くの点でフィブリル化プロセスに好ましい影響を有し得ることが見出された。
【0024】
したがって、本発明の方法は、以下のステップ:
(a)セルロース繊維を供給するステップ;
(b)少なくとも1種の充填剤および/または顔料を供給するステップ;
(c)セルロース繊維と少なくとも1種の充填剤および/または顔料とを配合するステップ;
(d)少なくとも1種の充填剤および/または顔料の存在下で、セルロース繊維をフィブリル化するステップ
を特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】図1は、異なる天然重質炭酸カルシウムと一緒におよびなしでフィブリル化されたパルプ懸濁液についての°SR/通過回数を示すグラフである。
【図2】図2は、異なる充填剤/顔料と一緒にフィブリル化されたパルプ懸濁液についての°SR/通過回数を示すグラフである。
【図3】図3は、天然重質炭酸カルシウムと一緒におよびなしでボールミルにおいて粉砕されたパルプ懸濁液についての、°SR/運転時間を示すグラフである。
【図4】図4は、フィブリル化の前または後に添加される天然重質炭酸カルシウムと一緒におよびなしで粉砕されたパルプ懸濁液についての°SR/通過回数を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明の文脈におけるナノフィブリルセルロースは、一次フィブリルに少なくとも部分的に微細化されている繊維を意味する。
【0027】
この点で、本発明の文脈におけるフィブリル化は、それぞれ、繊維およびフィブリルをそれらの長軸に沿って大部分微細化し、繊維およびフィブリルの直径の減少をもたらす任意のプロセスを意味する。
【0028】
本発明の方法で使用され得るセルロース繊維は、ユーカリパルプ、トウヒパルプ、マツパルプ、ブナパルプ、麻パルプ、綿パルプ、およびこれらの混合物からなる群から選択されるパルプに含有されるようなものであり得る。この点で、クラフトパルプ、特に漂白長繊維クラフトパルプは特に好ましくあり得る。一実施形態では、このセルロース繊維のすべてまたは一部は、セルロース繊維を含む材料をリサイクルするステップに由来し得る。したがって、該バルプは、リサイクルパルプであってもよい。
【0029】
原理上、セルロース繊維のサイズは重要ではない。市販されており、それらのフィブリル化に使用される装置で処理可能である任意の繊維が、本発明で一般に有用である。それらの素性に依存して、セルロース繊維は、50mmから0.1μmの長さを有し得る。このような繊維、ならびに好ましくは20mmから0.5μm、より好ましくは10mmから1mm、典型的には2から5mmの長さを有するものは、本発明で有利に使用することができ、より長いおよびより短い繊維も有用であり得る。
【0030】
セルロース繊維は、懸濁液、特に水性懸濁液の形態で供給されることが、本発明の使用に有利である。好ましくは、このような懸濁液は、0.2から35重量%、より好ましくは0.25から10重量%、特には1から5重量%、最も好ましくは2から4.5重量%、例えば、1.3重量%または3.5重量%の固形分を有する。
【0031】
少なくとも1種の充填剤および/または顔料は、沈降炭酸カルシウム(PCC);天然重質炭酸カルシウム(GCC);ドロマイト;タルク;ベントナイト;クレー;マグネサイト;サテンホワイト;セピオライト、ハント石、珪藻土;シリケート;およびこれらの混合物からなる群から選択される。バテライト、カルサイトまたはアラゴナイト結晶構造を有し得る沈降炭酸カルシウム、ならびに/または大理石、石灰石および/もしくは白亜から選択され得る天然重質炭酸カルシウムが、特に好ましい。
【0032】
特別の実施形態では、超微細で離散した、角柱形状、偏三角形状または菱面体形状の沈降炭酸カルシウムの使用が有利であり得る。
【0033】
充填剤および/または顔料は、粉末の形態で供給され得るが、それらは、好ましくは懸濁液、例えば、水性懸濁液の形態で添加される。この場合、懸濁液の固形分は、それが、ポンプ使用可能な液体である限り、重要でない。
【0034】
好ましい実施形態では、充填剤および/または顔料の粒子は、0.5から15μm、好ましくは0.7から10μm、より好ましくは1から5μm、最も好ましくは1.1から2μmのメジアン粒径を有する。
【0035】
特に好ましくは、充填剤および/または顔料の粒子は、0.03から15μm、好ましくは0.1から10μm、より好ましくは0.2から5μm、最も好ましくは0.2から4μm、例えば、1.5μmまたは3.2μmのメジアン粒径を有する。
【0036】
0.5μmより大きいd50を有する粒子について、重量メジアン粒径d50の測定のために、米国、Micromeritics社製Sedigraph5100装置を用いた。測定は、0.1重量%のNaの水溶液中で行った。試料は、高速撹拌機および超音波を用いて分散させた。d50<500を有する粒子に関して体積メジアン粒径の測定のために、英国、Malvern社製Malvern Zetasizer Nano ZSを用いた。測定は、0.1重量%のNaの水溶液中で行った。試料は、高速撹拌機および超音波を用いて分散させた。
【0037】
充填剤および/または顔料は、ポリカルボン酸および/またはこれらの塩もしくは誘導体、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸に基づくエステル、アクリルアミドまたはアクリル酸エステル(メチルメタクリレートなど)、またはこれらの混合物のホモポリマーまたはコポリマー;アルカリポリリン酸塩、ホスホン酸、クエン酸および酒石酸ならびにこれらの塩またはエステル;またはこれらの混合物のからなる群から選択されるものなどの分散剤を伴っていてもよい。
【0038】
繊維と少なくとも1種の充填剤および/または顔料との配合は、充填剤および/または顔料を、繊維に1または数ステップで添加することによって行われ得る。同様に、繊維を、充填剤および/または顔料に1または数ステップで添加し得る。充填剤および/または顔料ならびに繊維は、フィブリル化ステップの前にまたは間に全部または複数回に分けて添加され得る。しかし、フィブリル化の前の添加が好ましい。
【0039】
フィブリル化プロセスの間に、充填剤および/または顔料のサイズならびに繊維のサイズは変わり得る。
【0040】
一実施形態では、フィブリル化の前に、セルロース繊維と少なくとも1種の充填剤および/または顔料との配合物のpHは、10から12、例えば、11のpHに調整される。
【0041】
このアルカリpHへの調整は、好ましくは乳状石灰(Ca(OH))または任意の他の塩基の添加によって行われ得る。共処理後、懸濁液のpHは、約7.5から9.5、例えば、8.5に再度調整されなければならないことがあり得る。
【0042】
一般に、繊維ならびに顔料および/または充填剤の配合を含む懸濁液のpHは6以上でなければならない。
【0043】
例えば、PCCの繊維懸濁液への添加後に(これは、pHの上昇、および°SRの降下をもたらし得る。)、pHを安定化することも必要であり得る。この場合、pH増加の影響によるショッパーリーグラー度の降下を避けるために、pHは通常用いられる酸または緩衝液で再調整され得る。
【0044】
さらに、一実施形態では、該配合物は、フィブリル化の前に、2から12時間、好ましくは3から10時間、より好ましくは4から8時間、例えば、6時間保存されるが、これが、繊維の膨潤を理想的に引き起こし、フィブリル化を容易にさせ、したがって、自由度(°SR)のより早い増加、および同じ°SR自由度に対してより低い比リファイニングエネルギー消費をもたらすからである。
【0045】
繊維の膨潤は、上昇させたpHでの保存によって、ならびに例えば、銅(II)エチレンジアミン、鉄−ナトリウム−酒石酸塩またはリチウム−塩素/ジメチルアセトアミンのようなセルロース溶媒の添加によって、または当技術分野で知られている任意の他の方法によって促進し得る。
【0046】
好ましくは、乾燥重量基準での繊維対充填剤および/または顔料の重量比は、1:10から10:1、より好ましくは1:6から6:1、典型的には1:4から4:1、特に1:3から3:1、最も好ましくは1:2から2:1、例えば、1:1である。
【0047】
例えば、1つの特に好ましい実施形態では、それぞれ、パルプおよびPCCの全乾燥重量に対して、70重量%の漂白長繊維クラフトパルプが、30重量%の超微細な離散した角柱形状(または菱面体形状)のPCCの存在下でフィブリル化される。
【0048】
本発明によるセルロースフィブリル化の1つの指標は、ショッパーリーグラー度(°SR)の増加である。
【0049】
ショッパーリーグラー度(°SR)は、希釈パルプ懸濁液が、脱水され得る速度の尺度であり、Zellcheming Merblatt V/7/61によって規定されおよびISO5267/1で標準化されている。
【0050】
その値は、パルプを水に円滑に分散させ、それを封止コーンが閉じられている排水チャンバ中に入れることによって測定される。封止コーンは、排水チャンバから、繊維懸濁液の状態に依存して空気圧で持ち上げられ、水は、排水チャンバから側面出口を通って、メスシリンダー中に多かれ少なかれ迅速に流入する。水は、シリンダー中で測定され、ここで、10mlの水は、1°SRに相当し、ショッパーリーグラー度値が高いほど、繊維はより微細である。
【0051】
ショッパーリーグラー度を測定するために、そのために適した任意の装置、例えば、ベルギー国、Rycobelにより供給される「Automatic Freeness Tester」を用いることができる。
【0052】
好ましくは、ショッパーリーグラー度が、>4°SR、特に>6°SR、より好ましくは>8°SR、最も好ましくは>10°SR、とりわけ>15°SRだけ増加するまで、該配合物はフィブリル化される。
【0053】
好ましい実施形態では、>30°SR、好ましくは>45°SR、より好ましくは>50°SR、特に>60°SR、例えば、>70°SR、とりわけ>80°SRの得られた懸濁液の最終ショッパーリーグラー度が達せられるまで、繊維ならびに充填剤および/または顔料の配合物はフィブリル化される。
【0054】
特別の実施形態では、しかし、最終ショッパーリーグラー度が、<95°SRであることが好ましい。
【0055】
開始ショッパーリーグラー度は、約5から約90°SRであり得、好ましくは、それは、<10°SR、好ましくは<25°SR、より好ましくは<40°SR、例えば、<60または<75°SRである。それは、フィブリル化ステップによって生じるΔ°SRが、>4°SRである場合、80°SRより大きくてもよい。
【0056】
ショッパーリーグラー度に注目すると、本発明による方法が、顔料および/または充填剤の非存在下で繊維懸濁液をフィブリル化するよりも非常により効率的であることも見出された。
【0057】
これは、通過回数当たりの°SRの増加によって理解され得る。フィブリル化を最適化するために、繊維懸濁液は通常、それを、フィブリ化装置を通して数回の通過を受けさせることによって処理される。
【0058】
この点で、本発明の方法によって、通過回数当たりの°SRは、繊維懸濁液だけによるよりも著しく高いことが観察され得る。
【0059】
この効果は、直ちに観察することができ、°SRのさらなる増加がもはや得られない一定回数の通過まで生じる。
【0060】
したがって、特別の実施形態では、いずれの場合にもさらなる本質的な増加が見られなくなるまでの通過回数当たりのショッパーリーグラー度の変化は、顔料および/または充填剤の非存在下でフィブリル化した繊維懸濁液に比べ、本発明の方法で大きい。
【0061】
また、既にフィブリル化した系にの顔料および/または充填剤を単に添加しても、それ自体では、顔料および/または充填剤の存在下でフィブリル化した際に観察されるほど大きなショッパーリーグラー度の増加はもたらさない。
【0062】
フィブリル化は、上記のとおりに、そのために有用な任意の装置によって行われる。好ましくは、装置は、Super Mass Colloiderなどの超微細摩擦粉砕機、精砕機、およびホモジナイザーからなる群から選択される。ホモジナイザーおよびまた超微細摩擦粉砕機におけるフィブリル化の場合に、ホモジナイザー中の懸濁液の温度は、好ましくは60℃超、より好ましくは80℃超、さらにより好ましくは90℃超である。
【0063】
本発明の別の態様は、本発明による方法によって得られるナノフィブリルセルロースの懸濁液である。
【0064】
さらに、本発明の一態様は、製紙および/または紙加工における、本発明による方法によって得られるナノフィブリルセルロースの懸濁液の有利な使用である。
【0065】
本発明によるナノフィブリルセルロース懸濁液は、紙強度を改善することができ、コーティングを施していないフリーシート紙における充填剤負荷量の増加を可能にさせ得る。
【0066】
しかし、ナノフィブリルセルロースは、それらの機械的強度特性のために、材料複合体、プラスチック、塗料、ゴム、コンクリート、セラミック、接着剤、食品などの用途、または創傷治癒用途においても有利に使用される。
【0067】
以下に記載される図面ならびに実施例および実験は、本発明を例証する役割を果たすものであって、本発明を決して限定すべきものではない。
【0068】
(実施例)
1.GCCを用いる、°SR/通過回数の増加
°SR/通過回数の進展を調べるために、25の°SRを有するユーカリパルプを最初に、GCCを添加しておよび添加しないで、4重量%の固形分において超微細摩擦粉砕機中で処理した。同様の実験を、GCCと一緒におよびなしで、1.5重量%の固形分のユーカリパルプによってホモジナイザーで行った。
【0069】
材料
GCC:Omycarb 1−AV(Omya AGから入手できる。)(存在する繊維の重量に基づいて固形分100%)。重量メジアン粒径d50=1.7μm(Sedigraph5100により測定して)。
Omycarb 10−AV(Omya AGから入手できる。)(存在する繊維の重量に基づいて固形分100%)。重量メジアン粒径d50=10.0μm(Sedigraph5100により測定して)。
パルプ:ユーカリパルプ(25°SRおよび対応する水性懸濁液のpH7.6)。
【実施例1】
【0070】
超微細摩擦粉砕機
比較実施例のために、マット(700×1000×1.5mm)当たり500gの乾燥マットの形態のユーカリパルプを用いた。その170gのパルプを40×40mmの断片に引き裂いた。3830gの水道水を添加した。この懸濁液を、10dmのバケット中、直径70mmの溶解機ディスクを用いて2000rpmで撹拌した。懸濁液を2000rpmで少なくとも15分間撹拌した。
【0071】
次いで、懸濁液を、超微細摩擦粉砕機(日本国、Masuko Sangyo Co.製Supermasscolloider(Model MKCA6−2))でフィブリル化した。粉砕機の石は、グリットクラス46(グリットサイズ297から420μm)の炭化ケイ素であった。粉砕機の石間のすき間は、供給業者によって引き渡されたマニュアルに記載されたとおりに動的0点であるように選んだ。回転粉砕機の速度は、1200rpmであるように調整した。懸濁液を数回再循環させ、試料を採取した。ショッパーリーグラー度(°SR)を、Zellcheming Merkblatt V/7/61に従って測定し、ISO5267/1で標準化した。
【0072】
本発明実施例のために、マット(700×1000×1.5mm)当たり500gの乾燥マットの形態のユーカリパルプを用いた。その170gのパルプを、40×40mmの断片に引き裂いた。160gのOmyacarb 10−AVを添加した。3830gの水道水を添加した。この懸濁液を、10dmのバケット中で直径70mmの溶解機ディスクを用いて2000rpmで撹拌した。懸濁液を2000rpmで少なくとも15分間撹拌した。懸濁液は約7.5のpHを有した。
【0073】
次いで、懸濁液を、超微細摩擦粉砕機(日本国、Masuko Sangyo Co.製Supermasscolloider(Model MKCA6−2)でフィブリル化した。粉砕機の石は、グリットクラス46(グリットサイズ297から420μm)の炭化ケイ素であった。粉砕機の石間のすき間は、供給業者によって納品されたマニュアルに記載されたとおりに動的0点であるように選んだ。回転粉砕機の速度は、1200rpmであるように調整した。懸濁液を数回再循環させ、試料を採取した。ショッパーリーグラー度(°SR)を、Zellcheming Merkblatt V/7/61に従って測定し、ISO5267/1で標準化した。追加の充填剤は、測定に対して、要求された2g/lのパルプ粘稠度のために、追加の充填剤は考慮しなかった。
【0074】
本発明実施例のために、マット(700×1000×1.5mm)当たり500gの乾燥マットの形態のユーカリパルプを用いた。その170gのパルプを40×40mmの断片に引き裂いた。160gのOmyacarb 10−AVを添加した。3830gの水道水を添加した。この懸濁液を、10dmのバケット中で直径70mmの溶解機ディスクを用いて2000rpmで撹拌した。懸濁液を2000rpmで少なくとも15分間撹拌した。懸濁液は約7.2のpHを有した。
【0075】
次いで、懸濁液を、超微細摩擦粉砕機(日本、Masuko Sangyo Co.製Supermasscolloider(Model MKCA6−2)でフィブリル化した。粉砕機の石は、グリットクラス46(グリットサイズ297から420μm)の炭化ケイ素であった。粉砕機の石間のすき間は、供給業者によって引き渡されたマニュアルに記載されたとおりに動的0点であるように選んだ。回転粉砕機の速度は、1200rpmであるように調整した。懸濁液を数回再循環させ、試料を採取した。ショッパーリーグラー度(°SR)を、Zellcheming Merkblatt V/7/61に従って測定し、ISO5267/1で標準化した。追加の充填剤は、測定に対して要求された2g/lのパルプ粘稠度のために、追加の充填剤は考慮しなかった。
【0076】
結果
図1は、Supermasscolloiderを通して通過回数の関数として°SRの進展を示す。GCCの添加により、通過回数当たりの装置の効率が増加することが明らかになる。
【実施例2】
【0077】
ホモジナイザー
比較実施例のために、マット(700×1000×1.5mm)当たり500gの乾燥マットの形態のユーカリパルプを用いた。その47gのパルプを40×40mmの断片に引き裂いた。2953gの水道水を添加した。この懸濁液を、5dmのバケット中で直径70mmの溶解機ディスクを用いて2000rpmで撹拌した。懸濁液を2000rpmで少なくとも15分間撹拌した。
【0078】
この懸濁液を、Homogenizer(GEA Niro Soavi NS2006L)に供給したが、その機械を通して流れなかった。
【0079】
本発明実施例のために、マット(700×1000×1.5mm)当たり500gの乾燥マットの形態のユーカリパルプを用いた。その47gのパルプを40×40mmの断片に引き裂いた。45gのOmyacarb 1−AVを添加した。2953gの水道水を添加した。この懸濁液を、5dmバケット中で直径70mmの溶解機ディスクを用いて2000rpmで撹拌した。懸濁液を2000rpmで少なくとも15分間撹拌した。
【0080】
この懸濁液を、Homogenizer(GEA Niro Soavi NS2006L)に供給した。このホモジナイザーを通しての流量は、100から200g/分であり、圧力は、200から400バールであるように調整した。懸濁液を数回再循環させ、試料を採取した。ショッパーリーグラー度(°SR)を、Zellcheming Merkblatt V/7/61に従って測定し、ISO5267/1で標準化した。追加の充填剤は、測定に対して要求された2g/lのパルプ粘稠度のために、追加の充填剤は考慮しなかった。
【0081】
結果
GCCをまったく含まなかった比較実施例は、ホモジナイザーを通して供給できなかった。GCC含有試料だけが、良好な流れ性(runnability)を示した。ホモジナイザーを通して5回および10回通過後のショッパーリーグラー値を表1に報告する。
【0082】
【表1】

【0083】
2.精砕機中PCCを用いる、°SRの増加
【実施例3】
【0084】
超微細PCC
原料
PCC:超微細角柱形状のPCC。重量メジアン粒径d50=1.14μm(Sedigraph5100で測定して)(粒子の100重量%は、直径<2μmを有し;粒子の27重量%は、直径<1μmを有する。)。
このPCCは、7.9重量%の固形分を有する水性懸濁液の形態で供給した。
パルプ:長繊維漂白クラフトパルプ(16°SRおよび対応する水性懸濁液のpH6から8)。
【0085】
水性懸濁液は、上記炭酸塩およびパルプで形成し、その結果、この懸濁液は、約4重量%の固形分、および29:71の炭酸塩:パルプの重量比を有した。
【0086】
約12.5dmのこの懸濁液を、5.4kW下でEscher Wyss R 1 L Labor−Refinerを通して9分間循環させた。
【0087】
得られた懸濁液のショッパーリーグラー(°SR)92°SRは、Zellcheming Merkblatt V/7/61に従って測定し、ISO5267/1で標準化した。
【実施例4】
【0088】
粗PCC
a)本発明による懸濁液
原料
PCC:偏三角形状のPCC。重量メジアン粒径d50=3.27μm(Sedigraph5100で測定して)(粒子の11重量%は、直径<2μmを有し;粒子の4重量%は、直径<1μmを有する。)。このPCCを、15.8%の固形分を有する水性懸濁液の形態で供給した。
パルプ:ユーカリ(38°SRおよび対応する水性懸濁液のpH6から8)。
【0089】
水性懸濁液は、上記炭酸塩およびパルプで形成し、その結果、この懸濁液は、固形分約9.8重量%、および炭酸塩:パルプの重量比75:25を有した。この懸濁液は、18°SRを示した。
【0090】
約38mのこの懸濁液を、流量63m/時間にて92kW下でMesto Refiner RF−0を通して17.5時間循環させた。
【0091】
得られた懸濁液のショッパーリーグラー(°SR)73°SRは、Zellcheming Merkblatt V/7/61に従って測定し、ISO5267/1で標準化した。
【0092】
b)比較懸濁液
原料
PCC:偏三角形状のPCC。重量メジアン粒径d50=3.27μm(Sedigraph5100で測定して)(粒子の11重量%は、直径<2μmを有し;粒子の4重量%は、直径<1μmを有する。)。このPCCを、15.8%の固形分を有する水性懸濁液の形態で供給した。
パルプ:ユーカリ(38°SRおよび対応する水性懸濁液のpH6から8)。
【0093】
水性懸濁液は、上記パルプで形成し、その結果、この懸濁液は、約4.5重量%の固形分を有した。
【0094】
この懸濁液約20mを、流量63m/時間にて92kW下でMesto Refiner RF−0を通して17.5時間循環させた。
【0095】
得られた懸濁液のショッパーリーグラー(°SR)65°SRは、Zellcheming Merkblatt V/7/61に従って測定し、ISO5267/1で標準化した。
【0096】
この懸濁液に、上記偏三角形状のPCCを、75:25の炭酸塩:パルプの重量比を得るような量で添加した。得られた懸濁液のショッパーリーグラー(°SR)25°SRは、Zellcheming Merkblatt V/7/61に従って測定し、ISO5267/1で標準化した。
【0097】
これは、フィブリル化ステップ中の炭酸カルシウムの存在が、高いショッパーリーグラー度、すなわち、セルロース繊維の効率の良いフィブリル化を得るために必須であることを明確に示す。
【0098】
3.種々の充填剤もしくは顔料および/または種々のパルプを用いる、°SR/通過回数の増加
°SR/通過回数の進展を調べるために、ユーカリまたはマツのパルプを、以下に示すとおりに充填剤または顔料を添加して、超微細摩擦粉砕機で処理した。
【0099】
原料
GCC:ポリマーアクリル酸ベース分散剤で分散させた、天然重質炭酸カルシウムの水性懸濁液、固形分50重量%)。体積メジアン粒径d50は、Malvern Zetasizer Nano ZSで測定して246nmである。
タルク:Finntalc F40(Mondo Mineralsから入手できる。)。
パルプ:乾燥マットの形態のユーカリパルプ(17から20°SR、白色度88.77%(ISO 2470−2)および対応する水性懸濁液のpH7から8)。
乾燥マットの形態のマツパルプ、17から20°SR、白色度88.19%(ISO 2470−2)および対応する水性懸濁液のpH7から8。
【実施例5】
【0100】
超微細摩擦粉砕機
以下の実施例では、乾燥マットの形態で、以下の表に示したパルプを用いた。その90gのパルプを40×40mmに引き裂いた。以下の表に示した充填剤を示した量で、2190gの水道水とともに添加した。直径70mmの溶解機ディスクを用いて、懸濁液を10dmのバケット中2000rpmで撹拌した。懸濁液をそれぞれ、2000rpmで少なくとも10分間撹拌した。
【0101】
次いで、懸濁液を、超微細摩擦粉砕機(日本国、Masuko Sangyo Co.製Supermasscolloider(Model MKCA6−2))でフィブリル化した。粉砕機の石は、グリットクラス46(グリットサイズ297から420μm)の炭化ケイ素であった。以下の試験を始める前に、粉砕機の石間のすき間を、供給業者によって引き渡されたマニュアルに記載されたとおりに動的0点であるように設定した。以下の各試験について、粉砕機間のすき間を、最初の原料が石間を通過するとすぐに、この0点から、−50μmの調整に相当する5増加分だけさらに近づけた。回転粉砕機の速度を、最初の5回の通過に対して2000rpmであるように調整し、6回目の通過に対して1500rpmおよび7回目の通過に対して1000rpmに低下させた。各通過に続いて、その後そのまま次の通過を開始する前に、最大の原料が摩擦粉砕機から抽出されることを確実にするために、摩擦粉砕機のrpmを5秒間約26000rpmに増加した。ショッパーリーグラー度(°SR)を、Zellcheming Merkblatt V/7/61に従って測定し、ISO5267/1で標準化した。測定に対して要求される2g/lのパルプ粘稠度のために、追加の充填剤は考慮しなかった。したがって、パルプの粘稠度は、試験aおよび試験bについて2g/lで一定であった。
【0102】
【表2】

【0103】
結果
図2は、Supermasscolloiderを通して通過回数の関数としての°SRの進展を示す。充填剤の添加により、ユーカリ以外の他のパルプの種類ならびにGCCおよびPCC以外の他の充填剤の種類に対しても、通過回数当たりの、装置における効率的な°SR進展がもたらされることが明らかになる。
【0104】
4.GCCと一緒におよびなしで、ボールミル中パルプを処理する、比較実施例の°SR/通過回数の増加
°SR/通過回数の進展を調べるために、本明細書で以下に示すとおりの充填剤または顔料の添加と一緒におよびなしで、ユーカリパルプをボールミル中処理した。
【0105】
原料
GCC:粉末の形態のOmyacarb 1−AV(Omya AGから入手できる。)。重量メジアン粒径d50=1.7μm(Sedigraph5100で測定して)。
パルプ:乾燥マットの形態のユーカリパルプ(17から20°SR、白色度88.77%(ISO 2470−2)および対応する水性懸濁液のpH7から8)。
【実施例6】
【0106】
ボールミル
以下の実施例では、乾燥マットの形態の以下の表に示すパルプを用いた。その88gのパルプを40×40mmの断片に引き裂いた。Omyacarb 1−AVを以下の表に示す量で500gの水道水と一緒に添加した。懸濁液をそれぞれ、直径70mmの溶解機ディスクを用いて、10dmのバケット中2000rpmで撹拌した。懸濁液をそれぞれ、2000rpmで少なくとも10分間撹拌した。
【0107】
次いで、ビーズ直径2cmを有する3500gのVeracビーズを満たした3dmの磁器製容器に、1600gの各懸濁液を導入した。容器を閉じ、24時間43rpmで回転させた。ショッパーリーグラー度(°SR)を、Zellcheming Merkblatt V/7/61に従って測定し、ISO5267/1で標準化した。測定に対して、要求される2g/lのパルプ粘稠度のために、追加の充填剤は考慮しなかった。したがって、パルプの粘稠度は、試験aおよび試験bについて、2g/lで一定であった。
【0108】
【表3】

【0109】
結果
図3は、ボールミルを通して通過回数の関数として°SRの進展を示す。充填剤の添加は、時間にわたる装置中の°SRの進展に好ましい影響を与えないことが明らかである。
【0110】
5.充填剤の有益な効果
【実施例7】
【0111】
超微細摩擦粉砕機
試験eからgは、グリットクラス46(グリットサイズ297から420μm)の炭化ケイ素の石を取り付けた、超微細摩擦粉砕機(日本国、Masuko Sangyo Co.製Supermasscolloider(Model MKCA6−2))で処理した。粉砕機の石間のすき間を、「−50」μm(供給業者によって引き渡されたマニュアルに記載されたとおりの、動的0点)に調整した。回転粉砕機の速度を、通過1回から5回に対して2000rpm、通過6回に対して1500rpmおよび通過7回に対して1000rpmに設定した。ショッパーリーグラー度測定用の試料は、粉砕前、通過5回、6回および7回後に採取した。ショッパーリーグラー度(°SR)は、Zellcheming Merkblatt V/7/61に従って測定し、ISO5267/1で標準化した。測定に対して、要求される2g/lのパルプ粘稠度のために、追加の充填剤は考慮しなかった。したがって、パルプの粘稠度は、試験aおよび試験bについて、2g/lで一定であった。
【0112】
原料
Omyacarb 1 AV Omyacarb 1−AV(Omya AGから入手できる。);高純度の白大理石から製造した微細炭酸カルシウム粉末;重量メジアン粒径d50は、Sedigraph5100で測定して、1.7μmである。
ユーカリパルプ 乾燥マット、白色度:88.77%(ISO 2470−2)、対応するパルプ懸濁液のpH7から8および°SR 17から20。
【0113】
試験e):
溶解機ディスク(d=70mm)を取り付けたPendraulik撹拌機を用いて、乾燥90gのユーカリパルプ、2910gの水道水および90gのOmyacarb 1AV(1:1パルプ対充填剤、乾燥/乾燥)を、少なくとも10分間混合した。この混合物を、その対応する段落で上記したとおりにSupermasscolloiderで処理した。試料を採取し、その対応する段落で上記したとおりに測定した。
【0114】
試験f)(比較試験):
溶解機ディスク(d=70mm)を取り付けたPendraulik撹拌機を用いて、乾燥90gのユーカリパルプおよび2910gの水道水を、2000rpmで少なくとも10分間混合した。この混合物を、その対応する段落において上記したのとおりに、Supermasscolloiderで処理した。試料を採取し、その対応する段落において上記したとおりに測定した。
【0115】
試験g)(比較試験):
フィブリル化後に添加した90gのOmyacarb 1 AV以外は、試験f)と同じ。
【0116】
結果
図4は、充填剤(試験f)の非存在下で製造したナノセルロース懸濁液への充填剤(試験g)の添加は、°SR値の増加をもたらすが、急な変化はもたらさない(これは、効率の増加がないことを意味する。)ことを示す。
【0117】
しかし、充填剤(試験e)の存在下で製造したナノセルロース懸濁液は、比較試験(gおよびf)と比較して、°SRのより高い増加を示す。
【0118】
6.製紙におけるナノフィブリルセルロース懸濁液の使用
23°SRの自由値を有する、80%のブナおよび20%のマツから構成される、木材および繊維の乾燥60gの硫酸化ペーストを、10dmの水に希釈する。この希釈液に、Omyacarb 1−AVを用いて実施例1に従って製造された、乾燥1.5gのナノフィブリルセルロース懸濁液、ならびに微結晶で菱面体の粒子形状および0.8μmの重量メジアン粒径d50(Sedigraph5100で測定して)を有する予め分散させた天然重質炭酸カルシウム(大理石)の62重量%懸濁液を添加する。後者は、最終の紙重量に基づいて、30±0.5%の全充填剤含有量を得るような量で添加する。撹拌15分間後、および紙の乾燥重量に対して、0.06乾燥重量%のポリアクリルアミド保持助剤の添加後に、75g/mの坪量を有するシートを、Rapid−Kothen式手動シート成形機を用いて形成する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)セルロース繊維を供給するステップ;
(b)少なくとも1種の充填剤および/または顔料を供給するステップ;
(c)セルロース繊維と少なくとも1種の充填剤および/または顔料とを配合するステップ;
(d)少なくとも1種の充填剤および/または顔料の存在下で、セルロース繊維をフィブリル化するステップ
を特徴とする、ナノフィブリルセルロース懸濁液の製造方法。
【請求項2】
セルロース繊維が、ユーカリパルプ、トウヒパルプ、マツパルプ、ブナパルプ、麻パルプ、綿パルプ、およびこれらの混合物からなる群から選択されるパルプに含有されるものであることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
セルロース繊維が、クラフトパルプ、特に漂白長繊維クラフトパルプに含有されるものであることを特徴とする、請求項1または2のいずれか一項に記載の方法。
【請求項4】
セルロース繊維が、好ましくは0.2から35重量%、より好ましくは0.25から10重量%、特に1から5重量%、最も好ましくは2から4.5重量%、例えば、1.3重量%または3.5重量%の固形分含有量を有する懸濁液の形態で供給されることを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
充填剤および/または顔料が、沈降炭酸カルシウム;天然重質炭酸カルシウム;ドロマイト;タルク;ベントナイト;クレー;マグネサイト;サテンホワイト;セピオライト;ハント石;珪藻土;シリケート;およびこれらの混合物からなる群から選択されることを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
充填剤および/または顔料が、沈降炭酸カルシウム(好ましくは、バテライト、カルサイトまたはアラゴナイト結晶構造を有する。);天然重質炭酸カルシウム(好ましくは、大理石、石灰石および/または白亜から選択される。);および/またはこれらの混合物からなる群から選択されることを特徴とする、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
沈降炭酸カルシウムが、超微細で離散した、角柱形状、偏三角形状または菱面体形状の沈降炭酸カルシウムであることを特徴とする、請求項5または6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
充填剤および/または顔料が、0.03から15μm、好ましくは0.1から10μm、より好ましくは0.2から5μm、最も好ましくは0.2から4μm、例えば、1.5μmまたは3.2μmのメジアン粒径を有することを特徴とする、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
充填剤および/または顔料が、ポリカルボン酸および/またはそれらの塩もしくは誘導体、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸などに基づくエステル、アクリルアミドもしくはアクリル酸エステル、またはこれらの混合物のホモポリマーまたはコポリマー;アルカリポリリン酸塩、ホスホン酸、クエン酸および酒石酸およびこれらの塩またはエステル;またはこれらの混合物からなる群から選択される分散剤を伴っていることを特徴とする、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
繊維と少なくとも1種の充填剤および/または顔料との配合が、1または数ステップで充填剤および/または顔料を繊維にまたは繊維を充填剤および/または顔料に添加することによって行われる、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
充填剤および/もしくは顔料ならびに/または繊維が、前記フィブリル化ステップ(d)の前または間に、好ましくは前記フィブリル化ステップ(d)の前に全部または複数回に分けて添加されることを特徴とする、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
フィブリル化の前に、セルロース繊維と少なくとも1種の充填剤および/または顔料との配合物のpHが、10から12、例えば、11のpHに調整されることを特徴とする、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
フィブリル化の後に、前記懸濁液中のpHが、約7.5から9.5、例えば、8.5に再調整される、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記配合物が、フィブリル化の前に、2から12時間、好ましくは3から10時間、より好ましくは4から8時間、例えば、6時間保存されることを特徴とする、請求項1から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
銅(II)エチレンジアミン、鉄−ナトリウム−酒石酸塩またはリチウム−塩素/ジメチルアセタミンなどのセルロース溶媒が、フィブリル化の前に、前記配合物に添加されることを特徴とする、請求項1から14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
乾燥重量基準で繊維対充填剤および/または顔料の重量比が、1:10から10:1、好ましくは1:6から6:1、さらにより好ましくは1:4から4:1、特に1:3から3:1、最も好ましくは1:2から2:1、例えば、1:1であることを特徴とする、請求項1から15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
それぞれ、パルプおよびPCCの全乾燥重量に対して、70重量%の漂白長繊維クラフトパルプが、30重量%の超微細で離散した角柱形状の(または菱面体形状の)PCCの存在下でフィブリル化されることを特徴とする、請求項1から16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記配合物が、ショッパーリーグラー度が>4°SR、好ましくは>6°SR、より好ましくは>8°SR、最も好ましくは>10°SR、特に>15°SRだけ増加するまでフィブリル化されることを特徴とする、請求項1から17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
繊維ならびに充填剤および/または顔料の配合物が、>30°SR、好ましくは>45°SR、より好ましくは>50°SR、特に>60°SR、例えば、>70°SR、とりわけ>80°SRの最終ショッパーリーグラー度が到達されるまでフィブリル化されることを特徴とする、請求項1から18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
フィブリル化装置における「SR/通過回数」の増加が、セルロース繊維が、顔料および/または充填剤の不存在下でフィブリル化される場合の「SR/通過回数」よりも、顔料および/または充填剤の存在下でより高いことを特徴とする、請求項1から19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記フィブリル化が、ホモジナイザー中および超微細摩擦粉砕機中の懸濁液の温度が、好ましくは60℃を超える、より好ましくは80℃を超える、さらにより好ましくは90℃を超える、超微細摩擦粉砕機、精砕機、およびホモジナイザーからなる群から選択される装置で行われることを特徴とする、請求項1から20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
請求項1から21のいずれか一項に記載の方法によって得られるナノフィブリルセルロース懸濁液。
【請求項23】
紙製造および/または紙加工における、請求項22に記載のナノフィブリルセルロース懸濁液の使用。
【請求項24】
材料複合材、プラスチック、塗料、ゴム、コンクリート、セラミックス、接着剤、食品などの用途または創傷治癒用途における、請求項22に記載のナノフィブリルセルロース懸濁液の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2012−522145(P2012−522145A)
【公表日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−502646(P2012−502646)
【出願日】平成22年3月30日(2010.3.30)
【国際出願番号】PCT/EP2010/054231
【国際公開番号】WO2010/112519
【国際公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【出願人】(505018120)オムヤ・デイベロツプメント・アー・ゲー (31)
【Fターム(参考)】