説明

ナノヘテロ構造pn接合素子およびその製造方法

【課題】ナノ構造を有し、発光効率などの光電変換効率に優れたpn接合素子を提供すること。
【解決手段】p型半導体材料およびn型半導体材料のうちの一方の無機成分からなるマトリックス中に、p型半導体材料およびn型半導体材料のうちの他方の無機成分が、柱状、ジャイロイド状および層状からなる群から選択される形状で、三次元的且つ周期的に配置しており、繰り返し構造の一単位の長さの平均値が1nm〜100nmである三次元的周期構造を有しているナノヘテロ構造体と、p型半導体層と、n型半導体層と、を備えており、
前記ナノヘテロ構造体中の前記p型半導体材料と前記n型半導体材料とによって形成されているpn接合面の端部が前記p型半導体層および前記n型半導体層のうちの少なくとも一方の半導体層の表面と接触するように、前記p型半導体層と前記n型半導体層とが前記ナノヘテロ構造体を挟持していることを特徴とするナノヘテロ構造pn接合素子。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナノヘテロ構造を有するpn接合素子およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
p型半導体材料とn型半導体材料とを接合することによって形成されるpn接合素子は、一方向にのみ電気を通す性質(整流作用)や、電気エネルギーを光エネルギーに変換したり、光エネルギーを電気エネルギーに変換したりする性質(光電変換作用)を有し、ダイオードや発光素子、太陽電池といった様々な電子デバイスに使用されている。
【0003】
例えば、特開2007−294972号公報(特許文献1)には、ナノ構造体を有する基板上にpn接合構造を有する半導体発光構造物を備えている発光素子が開示されている。この発光素子は、電圧を印加することによって半導体発光構造物で発生した光子を発光素子の外部へ放出する場合に、基板に進行した光子を基板の表面に形成されたナノ構造体によって屈折または散乱させ、発光素子の外部への光子放出量を増大させて、発光素子の発光特性を向上させるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−294972号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の発光素子を構成する半導体発光構造物のpn接合構造は、p型半導体層とn型半導体層とを積層した単接合であるため、pn接合面積が小さく、半導体発光構造物自体の発光効率は必ずしも十分なものではなかった。
【0006】
本発明は、上記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、ナノ構造を有し、発光効率などの光電変換効率に優れたpn接合素子およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、ブロックコポリマーを構成する第一ポリマーブロック成分とp型半導体材料前駆体およびn型半導体材料前駆体のうちの一方の無機前駆体と、第二ポリマーブロック成分とp型半導体材料前駆体およびn型半導体材料前駆体のうちの他方の無機前駆体とをそれぞれ組み合わせて用いることにより、ブロックコポリマーの自己組織化を利用してナノ相分離構造体を形成せしめ且つ前記無機前駆体をそれぞれp型半導体材料およびn型半導体材料に変換せしめると共にブロックコポリマーを除去することによって、p型半導体材料およびn型半導体材料のうちの一方の無機成分からなるマトリックス中に他方の無機成分が所定の形状で三次元的にナノスケールの周期性をもって配置し、前記p型半導体材料と前記n型半導体材料とによって形成されたpn接合面を備えるナノヘテロ構造体が得られ、このナノヘテロ構造体がp型半導体層とn型半導体層とによって挟持されているpn接合素子が、発光効率などの光電変換効率に優れていることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明のナノヘテロ構造pn接合素子の製造方法は、
互いに混和しない少なくとも第一ポリマーブロック成分と第二ポリマーブロック成分とが結合してなるブロックコポリマーと、p型半導体材料前駆体およびn型半導体材料前駆体のうちの一方である第一無機前駆体と、p型半導体材料前駆体およびn型半導体材料前駆体のうちの他方である第二無機前駆体と、を溶媒に溶解して原料溶液を調製する第一の工程と、
少なくとも、前記第一無機前駆体が導入された前記第一ポリマーブロック成分からなる第一ポリマー相と、前記第二無機前駆体が導入された前記第二ポリマーブロック成分からなる第二ポリマー相と、が自己組織化により規則的に配置したナノ相分離構造体を形成せしめる相分離処理と、前記p型半導体材料前駆体および前記n型半導体材料前駆体をそれぞれp型半導体材料およびn型半導体材料に変換せしめる変換処理と、前記ナノ相分離構造体から前記ブロックコポリマーを除去する除去処理とを含み、前記p型半導体材料および前記n型半導体材料のうちの一方の無機成分からなるマトリックス中に前記p型半導体材料および前記n型半導体材料のうちの他方の無機成分が、柱状、ジャイロイド状および層状からなる群から選択される形状で、三次元的且つ周期的に配置しているナノヘテロ構造体を、p型半導体層およびn型半導体層のうちの一方である第一半導体層上に形成せしめる第二の工程と、
前記ナノヘテロ構造体上に、p型半導体層およびn型半導体層のうちの他方である第二半導体層を形成せしめ、前記ナノヘテロ構造体中の前記p型半導体材料と前記n型半導体材料とによって形成されているpn接合面の端部が前記p型半導体層および前記n型半導体層のうちの少なくとも一方の半導体層の面に接触しているナノヘテロ構造pn接合素子を得る第三の工程と、
を含むことを特徴とする方法である。
【0009】
前記第二の工程においては、マトリックス中に三次元的且つ周期的に配置している無機成分の形状が柱状または層状であるナノヘテロ構造体を、該ナノヘテロ構造体中の前記pn接合面が前記第一半導体層の表面に対して垂直となるように、前記第一半導体層上に形成せしめることが好ましく、前記第一半導体層上に前記原料溶液からなる層を形成せしめた後、該原料溶液からなる層の上面を、前記p型半導体材料前駆体および前記n型半導体材料前駆体のうちの少なくとも一方の無機前駆体に対する良溶媒の蒸気に曝露しながら前記相分離処理を施すことによって、前記pn接合面を前記第一半導体層の表面に対して垂直方向に形成せしめることがより好ましい。
【0010】
また、前記第三の工程においては、マトリックス中に三次元的且つ周期的に配置している無機成分の形状が柱状または層状であるナノヘテロ構造体上に、該ナノヘテロ構造体中の前記pn接合面が前記第二半導体層の表面に対して垂直となるように、前記第二半導体層を形成せしめることが好ましい。
【0011】
本発明に用いる前記第一無機前駆体と前記第一ポリマーブロック成分との溶解度パラメータの差は2(cal/cm1/2以下であることが好ましく、前記第二無機前駆体と前記第二ポリマーブロック成分との溶解度パラメータの差は2(cal/cm1/2以下であることが好ましい。
【0012】
さらに、本発明に用いる前記第一ポリマーブロック成分と前記第一無機前駆体との溶解度パラメータの差は、前記第一ポリマーブロック成分と前記第二無機前駆体との溶解度パラメータの差よりも小さいことが好ましい。また、前記第二ポリマーブロック成分と前記第二無機前駆体との溶解度パラメータの差は、前記第二ポリマーブロック成分と前記第一無機前駆体との溶解度パラメータの差よりも小さいことが好ましい。
【0013】
本発明に用いる前記ブロックコポリマーが、ポリスチレン成分、ポリイソプレン成分およびポリブタジエン成分からなる群から選択される少なくとも1種の第一ポリマーブロック成分と、ポリメチルメタクリレート成分、ポリエチレンオキシド成分、ポリビニルピリジン成分およびポリアクリル酸成分からなる群から選択される少なくとも少なくとも1種の第二ポリマーブロック成分とが結合してなるものである場合、
前記第一無機前駆体としては、フェニル基、炭素数5以上の長鎖炭化水素鎖、シクロオクタテトラエン環、シクロペンタジエニル環、およびアミノ基からなる群から選択される少なくとも1つの構造を備える、有機金属化合物および有機半金属化合物のうちの少なくとも1種が好ましく、
前記第二無機前駆体としては、金属または半金属の塩、金属または半金属を含む炭素数1〜4のアルコキシド、および金属または半金属のアセチルアセトナート錯体からなる群から選択される少なくとも1種が好ましい。
【0014】
また、このような本発明の製造方法によって得ることができるようになった本発明のナノヘテロ構造pn接合素子は、p型半導体材料およびn型半導体材料のうちの一方の無機成分からなるマトリックス中に、p型半導体材料およびn型半導体材料のうちの他方の無機成分が、柱状、ジャイロイド状および層状からなる群から選択される形状で、三次元的且つ周期的に配置しており、繰り返し構造の一単位の長さの平均値が1nm〜100nmである三次元的周期構造を有しているナノヘテロ構造体と、p型半導体層と、n型半導体層と、を備えており、
前記ナノヘテロ構造体中の前記p型半導体材料と前記n型半導体材料とによって形成されているpn接合面の端部が前記p型半導体層および前記n型半導体層のうちの少なくとも一方の半導体層の表面と接触するように、前記p型半導体層と前記n型半導体層とが前記ナノヘテロ構造体を挟持していることを特徴とするものである。
【0015】
本発明のナノヘテロ構造pn接合素子において、前記マトリックス中に三次元的且つ周期的に配置している無機成分の形状が柱状または層状である場合、ナノヘテロ構造中の前記pn接合面が、前記p型半導体層および前記n型半導体層のうちの少なくとも一方の半導体層の表面に対して垂直な方向に形成されていることが好ましい。
【0016】
また、本発明のナノヘテロ構造pn接合素子において、前記p型半導体層としては、前記ナノヘテロ構造体中のp型半導体材料と同種の半導体材料および不純物元素を含有するものが好ましく、前記n型半導体層としては、前記ナノヘテロ構造体中のn型半導体材料と同種の半導体材料および不純物を含有するものが好ましい。
【0017】
なお、前記本発明の方法によって前記本発明のナノヘテロ構造pn接合素子が得られるようになる理由は必ずしも定かではないが、本発明者らは以下のように推察する。すなわち、先ず、互いに混和しないAおよびBの2種類のポリマーブロック成分が結合してなるブロックコポリマーは、ガラス転移点以上の温度で熱処理することでA相とB相とが空間的に分離したナノ相分離構造を構成する(自己組織化)。その際、ポリマーブロック成分の分子量比によって一般的に相分離構造は変化する。具体的には、A:Bの分子量比が1:1の場合には一般的に層状の層状構造をとり、分子量比が1:1からずれるにしたがい、二つの連続相が絡み合ったようなジャイロイド状構造から柱状構造へと変化してゆく。なお、図1は、ブロックコポリマーから生成されるナノ相分離構造を示す模式図であり、左から、層状構造(a)、ジャイロイド状構造(b)、柱状構造(c)をそれぞれ示しており、右側の構造ほど一般的にAの割合が高い。
【0018】
本発明のナノヘテロ構造pn接合素子の製造方法においては、先ず、上記のブロックコポリマーの自己組織化を利用して、複数の無機前駆体を三次元的にナノスケールの周期性をもって配置させる。すなわち、互いに混和しない複数のポリマーブロック成分からなるブロックコポリマーは、前述のように自己組織化によりナノスケールで相分離する。その際、本発明においては、ブロックコポリマーを構成する第一ポリマーブロック成分とp型半導体材料前駆体およびn型半導体材料前駆体のうちの一方である第一無機前駆体と、第二ポリマーブロック成分とp型半導体材料前駆体およびn型半導体材料前駆体のうちの他方である第二無機前駆体とをそれぞれ組み合わせて用い、さらには、前記第一ポリマーブロック成分との溶解度パラメータの差が2(cal/cm1/2以下である第一無機前駆体と、前記第二ポリマーブロック成分との溶解度パラメータの差が2(cal/cm1/2以下である第二無機前駆体とを組み合わせて用いることが好ましい。これにより、第一無機前駆体および第二無機前駆体はそれぞれ第一ポリマーブロック成分中および第二ポリマーブロック成分中に十分に導入された状態でブロックコポリマーの自己組織化と共にナノ相分離構造を構成し、ナノ相分離構造を所定の構造とすることによって前記無機前駆体は三次元的にナノスケールの周期性をもって配置される。
【0019】
さらに、本発明においては、前記p型半導体材料前駆体および前記n型半導体材料前駆体をそれぞれp型半導体材料およびn型半導体材料に変換せしめると共にブロックコポリマーを除去することによって、ナノ相分離構造の形状に応じてp型半導体材料およびn型半導体材料のうちの一方の無機成分からなるマトリックス中に他方の無機成分が所定の形状で三次元的に特定のナノスケールの周期性をもって配置されたナノヘテロ構造体が得られる。なお、本発明においては、前記第一無機前駆体および前記第二無機前駆体と第一ポリマーブロック成分および第二ポリマーブロック成分とをそれぞれ組み合わせて用いており、さらには、これらの溶解度パラメータの差がそれぞれ2(cal/cm1/2以下であることが好ましい。これにより、各ポリマーブロック成分に対する各無機前駆体の導入量が十分に多くなり、そのため前記p型半導体材料前駆体および前記n型半導体材料前駆体をそれぞれp型半導体材料およびn型半導体材料に変換せしめると共にブロックコポリマーを除去してもナノスケールの三次元的周期構造が十分に維持されると本発明者らは推察する。
【0020】
なお、本発明における「溶解度パラメータ」とは、ヒルデブラントによって導入された正則溶液論により定義されたいわゆる「SP値」であり、以下の式:
溶解度パラメータδ[(cal/cm1/2]=(ΔE/V)1/2
(式中、ΔEはモル蒸発エネルギー[cal]、Vはモル体積[cm]を示す。)
に基づいて求められる値である。
【0021】
また、本発明における「繰り返し構造の一単位の長さの平均値」とは、一方の無機成分からなるマトリックス中に配置されている他方の無機成分の隣接するもの同士の中心間の距離の平均値であり、いわゆる周期構造の間隔(d)に相当する。係る周期構造の間隔(d)は、以下のように小角X線回折により求められる。また、本発明に係る柱状、ジャイロイド状または層状といった構造についても、以下のように小角X線回折により測定される特徴的な回折パターンにより規定することができる。
【0022】
すなわち、小角X線回折により、柱状、ジャイロイド状、層状などの形状の構造体がマトリックス中に周期的に配置した擬似結晶格子の特徴的な格子面からのBragg反射が観察される。その際、周期構造が形成されていると回折ピークが観察され、それら回折スペクトルの大きさ(q=2π/d)の比から、柱状、ジャイロイド状、層状などの構造を特定することができる。また、係る回折ピークのピーク位置から、Braggの式(nλ=2dsinθ;λはX線波長、θは回折角を示す。)により、周期構造の間隔(d)を求めることができる。以下の表1に、各構造とピーク位置の回折スペクトルの大きさ(q)の比の関係を示す。なお、表1に示すようなピークが全て確認される必要はなく、観察されたピークから構造が特定できればよい。
【0023】
【表1】

【0024】
また、本発明に係る柱状、ジャイロイド状、層状といった構造を透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて特定することも可能であり、それによってその形状や周期性を判別・評価することができる。さらに、様々な方向からの観察や三次元トモグラフィーを用いることによって、三次元性をより詳しく判別することも可能である。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、p型半導体材料およびn型半導体材料のうちの一方の無機成分からなるマトリックス中に他方の無機成分が三次元的にナノスケールの周期性をもって配置したナノヘテロ構造体がp型半導体層とn型半導体層とによって挟持されている、発光効率などの光電変換特性に優れたpn接合素子を得ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】A−B型ブロックコポリマーから生成されるナノ相分離構造を示す模式図である。
【図2】本発明のナノヘテロ構造pn接合素子の好適な一実施態様を示す模式図である。
【図3】本発明のナノヘテロ構造pn接合素子の他の好適な一実施態様を示す模式図である。
【図4】本発明のナノヘテロ構造pn接合素子のさらに他の好適な一実施態様を示す模式図である。
【図5】電極を備える本発明のナノヘテロ構造pn接合素子の一実施態様を示す模式図である。
【図6】電極を備える本発明のナノヘテロ構造pn接合素子の他の一実施態様を示す模式図である。
【図7】実施例1で得られたナノヘテロ構造体の透過型電子顕微鏡写真である。
【図8】実施例2で得られたナノヘテロ構造体の透過型電子顕微鏡写真である。
【図9】従来の単接合のpn接合素子を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明をその好適な実施形態に即して詳細に説明する。
【0028】
先ず、本発明のナノヘテロ構造pn接合素子について説明する。本発明のナノヘテロ構造pn接合素子は、p型半導体材料およびn型半導体材料のうちの一方の無機成分からなるマトリックス中に、p型半導体材料およびn型半導体材料のうちの他方の無機成分が、柱状、ジャイロイド状および層状からなる群から選択される形状で、三次元的且つ周期的に配置しており、繰り返し構造の一単位の長さの平均値が1nm〜100nmである三次元的周期構造を有しているナノヘテロ構造体と、p型半導体層と、n型半導体層と、を備えているものである。
【0029】
そして、本発明のナノヘテロ構造pn接合素子においては、前記ナノヘテロ構造体中の前記p型半導体材料と前記n型半導体材料とによって形成されているpn接合面の端部が前記p型半導体層および前記n型半導体層のうちの少なくとも一方の半導体層の表面と接触するように、前記p型半導体層と前記n型半導体層とが前記ナノヘテロ構造体を挟持している。
【0030】
ここで、pn接合面の端部が前記半導体層の表面と接触している状態とは、マトリックス中に三次元的且つ周期的に配置している無機成分の形状が柱状である場合(すなわち、前記ナノヘテロ構造が柱状構造である場合)には、柱状部の長軸が前記半導体層の表面と平行でない状態を意味している。また、マトリックス中に三次元的且つ周期的に配置している無機成分の形状が層状である場合(すなわち、前記ナノヘテロ構造が層状構造である場合)には、層状部の界面(pn接合面)が前記半導体層の表面と平行でない状態を意味している。柱状部の長軸や層状部の界面が前記半導体層の表面と平行になると、pn接合面の有効面積が従来の単接合のpn接合素子と同等であり、pn接合素子の光電変換特性が十分に向上しない。
【0031】
本発明のナノヘテロ構造pn接合素子においては、従来の単接合のpn接合素子に比べてpn接合面の有効面積が増加し、光電変換特性がさらに向上するという観点から、ナノヘテロ構造が柱状構造または層状構造である場合には、ナノヘテロ構造体中の前記pn接合面は前記半導体層の表面に対して垂直な方向に形成されていることが好ましい。すなわち、前記ナノヘテロ構造が柱状構造である場合には、図2に示すように、柱状部(1b)の長軸が前記半導体層(2および/または3)の表面に対して垂直となっている状態が好ましく、また、前記ナノヘテロ構造が層状構造である場合には、図3に示すように、層状部(1c)の界面(pn接合面)が前記半導体層(2および/または3)の表面に対して垂直となっている状態が好ましい。なお、マトリックス中に三次元的且つ周期的に配置している無機成分の形状が図4に示すようなジャイロイド状ある場合(すなわち、前記ナノヘテロ構造がジャイロイド状構造である場合)には、従来の単接合のpn接合素子に比べてpn接合面の有効面積が必ず増加するため、光電変換特性も向上する。
【0032】
このような本発明のナノヘテロ構造pn接合素子は、従来の製造方法では実現することができなかったナノ構造体を備えるものであり、p型半導体材料とn型半導体材料との組み合わせについて、それらの配置、組成、構造スケールなどを様々に制御したナノヘテロ構造体を備えるものとして得ることが可能である。そのため、本発明のナノヘテロ構造pn接合素子によれば、従来の単接合のpn接合素子以上の界面増大効果、ナノサイズ効果、耐久性などの飛躍的な向上が発揮され、結果として高い光電変換特性が発揮されるようになる。
【0033】
本発明のナノヘテロ構造pn接合素子中のナノヘテロ構造体を構成するp型半導体材料およびn型半導体材料としては、それぞれ公知のpn接合素子に用いられるp型半導体材料およびn型半導体材料を用いることができ、例えば、公知の半導体材料に公知の不純物元素をドープしたものが挙げられる。前記半導体材料としては、IV族半導体(Si、Gなど)、III−V族半導体(GaAs、InP、GaNなど)、IV族化合物半導体(SiC、SiGeなど)、I−III−VI族半導体(CuInSeなどのカルコパイライト系半導体)などが挙げられる。前記p型半導体材料は、このような半導体材料にその価数より少ない価数を有する不純物元素をドープしたものであり、例えば、シリコン(Si)などの4価の元素からなる結晶にホウ素(B)などの3価の元素をドープしたもの、ガリウム(Ga)などの3価の元素からなる結晶にマグネシウム(Mg)などの2価の元素をドープしたものなどが挙げられる。また、前記n型半導体材料は、前記半導体材料にその価数より多い価数を有する不純物元素をドープしたものであり、例えば、シリコン(Si)やゲルマニウム(Ge)などの4価の元素の結晶にヒ素(As)などの5価の元素をドープしたもの、ガリウム(Ga)などの3価の元素からなる結晶にシリコン(Si)などの4価の元素をドープしたものなどが挙げられる。
【0034】
本発明のナノヘテロ構造pn接合素子は、前記ナノヘテロ構造体とp型半導体層とn型半導体層を備えるものであり、上述したように、前記ナノヘテロ構造体中のpn接合面の端部が前記p型半導体層および前記n型半導体層のうちの少なくとも一方の半導体層の表面と接触するように、p型半導体層とn型半導体層とによってナノヘテロ構造体が挟持されているものである。
【0035】
前記p型半導体層および前記n型半導体層としては、それぞれ公知のpn接合素子のp型半導体層およびn型半導体層を採用することができる。このような半導体層は、公知の半導体材料に公知の不純物元素をドープしたものであり、前記ナノヘテロ構造体を構成するp型半導体材料およびn型半導体材料において例示したものを用いて形成されるものである。本発明において、前記p型半導体層としては、前記ナノヘテロ構造体を構成するp型半導体材料と同種の半導体材料および不純物元素を含有するものが好ましく、また、前記n型半導体層としては、前記ナノヘテロ構造体を構成するn型半導体材料と同種の半導体材料および不純物元素を含有するものが好ましい。p型半導体層とナノヘテロ構造体を構成するp型半導体材料をこのように組み合わせることによって、p型半導体層とp型半導体材料との間の障壁がなくなり、pn接合面で生成した電荷(正孔)の移動がスムーズに起こる傾向にある。また、n型半導体層とナノヘテロ構造体を構成するn型半導体材料についても同様に、電荷(電子)の移動がスムーズに起こる傾向にある。その結果、本発明のナノヘテロ構造pn接合素子は、高い光電変換性能を発揮するようになる。
【0036】
また、本発明のナノヘテロ構造pn接合素子においては、前記p型半導体層および前記n型半導体層の表面に電極が配置されていてもよい。図5〜6は、半導体層上に電極が配置された本発明のナノヘテロ構造pn接合素子の一例を示す模式図である。本発明のナノヘテロ構造pn接合素子において、電極(4)は、図5に示すように、一方の半導体層(2)においては、ナノヘテロ構造体(1)側と反対側の面に配置され、他方の半導体層(3)においては、ナノヘテロ構造体(1)側の面に配置されていてもよいし、あるいは、図6に示すように、いずれの半導体層(2および3)においても、ナノヘテロ構造体(1)側と反対側の面に配置されていてもよい。前記電極としては特に制限はないが、Au電極などの公知の金属電極、ITO透明電極などの公知の透明電極などが挙げられる。
【0037】
次に、このような本発明のナノヘテロ構造pn接合素子の製造方法について説明する。本発明のナノヘテロ構造pn接合素子の製造方法は、
互いに混和しない少なくとも第一ポリマーブロック成分と第二ポリマーブロック成分とが結合してなるブロックコポリマーと、p型半導体材料前駆体およびn型半導体材料前駆体のうちの一方である第一無機前駆体と、p型半導体材料前駆体およびn型半導体材料前駆体のうちの他方である第二無機前駆体と、を溶媒に溶解して原料溶液を調製する第一の工程と、
少なくとも、前記第一無機前駆体が導入された前記第一ポリマーブロック成分からなる第一ポリマー相と、前記第二無機前駆体が導入された前記第二ポリマーブロック成分からなる第二ポリマー相と、が自己組織化により規則的に配置したナノ相分離構造体を形成せしめる相分離処理と、前記p型半導体材料前駆体および前記n型半導体材料前駆体をそれぞれp型半導体材料およびn型半導体材料に変換せしめる変換処理と、前記ナノ相分離構造体から前記ブロックコポリマーを除去する除去処理とを含み、前記p型半導体材料および前記n型半導体材料のうちの一方の無機成分からなるマトリックス中に前記p型半導体材料および前記n型半導体材料のうちの他方の無機成分が、柱状、ジャイロイド状および層状からなる群から選択される形状で、三次元的且つ周期的に配置しているナノヘテロ構造体を、p型半導体層およびn型半導体層のうちの一方である第一半導体層上に形成せしめる第二の工程と、
前記ナノヘテロ構造体上に、p型半導体層およびn型半導体層のうちの他方である第二半導体層を形成せしめ、前記ナノヘテロ構造体中の前記p型半導体材料と前記n型半導体材料とによって形成されているpn接合面の端部が前記p型半導体層および前記n型半導体層のうちの少なくとも一方の半導体層の面に接触しているナノヘテロ構造pn接合素子を得る第三の工程と、
を含む方法である。以下に、それぞれの工程を説明する。
【0038】
[第一の工程:原料溶液調製工程]
係る工程は、以下に説明するブロックコポリマーと以下に説明する無機前駆体とを溶媒に溶解して原料溶液を調製する工程である。
【0039】
本発明で用いられるブロックコポリマーは、少なくとも第一ポリマーブロック成分と第二ポリマーブロック成分とが結合してなるものである。このようなブロックコポリマーの具体例として、繰り返し単位aを有するポリマーブロック成分A(第一ポリマーブロック成分)と、繰り返し単位bを有するポリマーブロック成分B(第二ポリマーブロック成分)と、が末端同士で結合した、−(aa…aa)−(bb…bb)−という構造をもつA−B型、A−B−A型のブロックコポリマーがある。また、1種類以上のポリマーブロック成分が中心から放射状に伸びたスター型や、ブロックコポリマーの主鎖に他のポリマー成分がぶらさがった形でもよい。
【0040】
本発明で用いられるブロックコポリマーを構成するポリマーブロック成分は、互いに混和しないものであれば、その種類に特に限定はない。したがって、本発明で用いられるブロックコポリマーは、極性がそれぞれ異なるポリマーブロック成分からなるものが好ましい。係るブロックコポリマーの具体例としては、ポリスチレン−ポリメチルメタクリレート(PS−b−PMMA)、ポリスチレン−ポリエチレンオキシド(PS−b−PEO)、ポリスチレン−ポリビニルピリジン(PS−b−PVP)、ポリスチレン−ポリフェロセニルジメチルシラン(PS−b−PFS)、ポリイソプレン−ポリエチレンオキシド(PI−b−PEO)、ポリブタジエン−ポリエチレンオキシド(PB−b−PEO)、ポリエチルエチレン−ポリエチレンオキシド(PEE−b−PEO)、ポリブタジエン−ポリビニルピリジン(PB−b−PVP)、ポリイソプレン−ポリメチルメタクリレート(PI−b−PMMA)、ポリスチレン−ポリアクリル酸(PS−b−PAA)、ポリブタジエン−ポリメチルメタクリレート(PB−b−PMMA)などが挙げられる。中でも、ポリマーブロック成分の極性の差が大きいほど導入する前駆体も極性の差が大きいものを用いることができるため、それぞれのポリマーブロック成分に前駆体を導入し易くなるという観点から、PS−b−PVP、PS−b−PEO、PS−b−PAAなどが好ましい。
【0041】
ブロックコポリマーおよびそれを構成する各ポリマーブロック成分の分子量は、本発明のpn接合素子を構成するナノヘテロ構造体の構造スケール(柱や層などのサイズや間隔)や配置に応じて適宜選択すればよい。例えば、数平均分子量が100〜1000万(より好ましくは1000〜100万)であるブロックコポリマーを用いることが好ましく、数平均分子量が小さいほど構造スケールは小さくなる傾向にある。また、各ポリマーブロック成分の数平均分子量に関しては、各ポリマーブロック成分の分子量比などを調整することにより、後述するナノ相分離構造体の形成工程において自己組織化により得られるナノ相分離構造を所望の構造とすることができ、ひいては、無機成分を所望の形態で配列した構造をもつナノヘテロ構造体が得られるようになる。また、後述する熱処理(焼成)または光照射により容易に分解されるブロックコポリマーや、溶媒により容易に除去されるブロックコポリマーを用いることが好ましい。
【0042】
本発明で用いられるp型半導体材料前駆体およびn型半導体材料前駆体は、それぞれ前述したp型半導体材料およびn型半導体材料を後述する変換処理によって形成できる無機前駆体であれば特に制限はない。具体的には、前記p型半導体材料およびn型半導体材料を構成する金属または半金属の塩(例えば、炭酸塩、硝酸塩、リン酸塩、硫酸塩、酢酸塩、塩化物、有機酸塩(アクリル酸塩など))、前記金属または前記半金属を含む炭素数1〜4のアルコキシド(例えば、メトキシド、エトキシド、プロポキシド、ブトキシド)、前記金属または前記半金属の錯体(例えば、アセチルアセトナート錯体)、前記金属または前記半金属を含む有機金属化合物または有機半金属化合物(例えば、フェニル基、炭素数5以上の長鎖炭化水素鎖、シクロオクタテトラエン環、シクロペンタジエニル環、およびアミノ基からなる群から選択される少なくとも1種の構造を備えるもの)が好ましい。このようなp型半導体材料前駆体およびn型半導体材料前駆体は、目的とするナノヘテロ構造体を構成するp型半導体材料とn型半導体材料との組み合わせに応じて、且つ、それらが前述の諸条件を満たすように1種または2種以上を適宜選択して使用される。
【0043】
本発明で用いられる溶媒としては、用いるブロックコポリマーと第一および第二無機前駆体とを溶解できるものであればよく、特に限定されないが、例えば、アセトン、テトラヒドロフラン(THF)、トルエン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)、クロロホルム、ベンゼンなどが挙げられる。このような溶媒は、1種を単独で用いてもよく、また2種以上を混合して用いてもよい。
【0044】
なお、本明細書において、「溶解」とは、物質(溶質)が溶媒に溶けて均一混合物(溶液)となる現象であって、溶解後、溶質の少なくとも一部がイオンとなる場合、溶質がイオンに解離せず分子状で存在している場合、分子やイオンが会合して存在している場合、などが含まれる。
【0045】
本発明においては、前記第一ポリマーブロック成分と前記p型半導体材料前駆体および前記n型半導体材料前駆体のうちの一方である第一無機前駆体と、前記第二ポリマーブロック成分と前記前駆体のうちの他方である第二無機前駆体とをそれぞれ組み合わせて用い、さらには、前記第一ポリマーブロック成分との溶解度パラメータの差が2(cal/cm1/2以下である第一無機前駆体と、前記第二ポリマーブロック成分との溶解度パラメータの差が2(cal/cm1/2以下である第二無機前駆体とを組み合わせて用いることが好ましい。このような条件を満たす第一無機前駆体と第二無機前駆体とを組み合わせて用いることにより、後述するナノ相分離構造体を形成する工程において、第一ポリマーブロック成分中に第一無機前駆体が、第二ポリマーブロック成分中に第二無機前駆体がそれぞれ十分に導入された状態でブロックコポリマーの自己組織化と共にナノ相分離構造が構成され、前記無機前駆体は三次元的にナノスケールの周期性をもって配置される。
【0046】
本発明に用いる前記第一ポリマーブロック成分と前記第一無機前駆体との溶解度パラメータの差は、前記第一ポリマーブロック成分と前記第二無機前駆体との溶解度パラメータの差よりも小さいことが好ましい。また、前記第二ポリマーブロック成分と前記第二無機前駆体との溶解度パラメータの差は、前記第二ポリマーブロック成分と前記第一無機前駆体との溶解度パラメータの差よりも小さいことが好ましい。さらに、これらの両方の条件を満たすことがより好ましい。
【0047】
さらに、本発明において用いる前記第一無機前駆体は前記第二ポリマーブロック成分との溶解度パラメータの差が2(cal/cm1/2超であることが好ましい。また、前記第二無機前駆体は前記第一ポリマーブロック成分との溶解度パラメータの差が2(cal/cm1/2超であることが好ましい。さらに、これらの両方の条件を満たすことがより好ましい。
【0048】
このような条件を満たす第一無機前駆体と第二無機前駆体とを組み合わせて用いることにより、後述するナノ相分離構造体を形成する工程において、第一ポリマーブロック成分中に不純物として第二無機前駆体の一部が、また、第二ポリマーブロック成分中に不純物として第一無機前駆体の一部が導入されてしまうことがより確実に防止される傾向にあり、得られるナノヘテロ構造体におけるマトリックスを構成する無機成分の純度および/またはマトリックス中に配置される無機成分の純度がより向上する傾向にある。
【0049】
このような条件を満たす第一および第二ポリマーブロック成分と第一および第二無機前駆体との組み合わせとしては、第一ポリマーブロック成分がポリスチレン成分、ポリイソプレン成分およびポリブタジエン成分からなる群から選択される少なくとも1種の極性の小さいポリマーブロック成分であり、第二ポリマーブロック成分がポリメチルメタクリレート成分、ポリエチレンオキシド成分、ポリビニルピリジン成分およびポリアクリル酸成分からなる群から選択される少なくとも1種の極性の大きいポリマーブロック成分であり、第一無機前駆体が前記有機金属化合物および前記有機半金属化合物からなる群から選択される少なくとも1種の極性の小さい無機前駆体であり、第二無機前駆体が前記金属または前記半金属の塩、前記金属または前記半金属を含む炭素数1〜4のアルコキシド、ならびに前記金属または前記半金属のアセチルアセトナート錯体からなる群から選択される少なくとも1種の極性の大きい無機前駆体である組み合わせが好ましい。
【0050】
また、前記第一無機前駆体および前記第二無機前駆体のうちの少なくとも一方(より好ましくは両方)は、用いる溶媒との溶解度パラメータの差が2(cal/cm1/2以下であることが好ましい。このような条件を満たす第一無機前駆体および/または第二無機前駆体を用いることにより、溶媒に無機前駆体がより確実に溶解し、後述するナノ相分離構造体を形成する工程においてポリマーブロック成分中に無機前駆体がより確実に導入される傾向にある。
【0051】
さらに、得られる原料溶液における溶質(ブロックコポリマー、第一無機前駆体および第二無機前駆体)の割合は特に限定されないが、原料溶液の全量を100質量%としたときに、溶質の合計量を0.1〜30質量%程度とすることが好ましく、0.5〜10質量%とすることがより好ましい。また、ブロックコポリマーに対する第一および第二無機前駆体の使用量を調整することにより、各ポリマーブロック成分に導入される各無機前駆体の量が調整されるため、得られるナノヘテロ構造体におけるp型半導体材料とn型半導体材料との比率やこれらの構造スケール(柱や層などのサイズや間隔)などを所望の程度とすることができる。
【0052】
[第二の工程:ナノヘテロ構造体形成工程]
この工程は、以下に詳述する相分離処理と変換処理と除去処理とを含み、p型半導体材料とn型半導体材料とからなるナノヘテロ構造体を、p型半導体層およびn型半導体層のうちの一方の半導体層上に形成せしめる工程である。
【0053】
先ず、前記第一の工程において調製された原料溶液は、ブロックコポリマー、p型半導体材料前駆体およびn型半導体材料前駆体を含むものであるが、本発明においては、前記第一ポリマーブロック成分とp型半導体材料前駆体およびn型半導体材料前駆体のうちの一方である第一無機前駆体と、前記第二ポリマーブロック成分と前記前駆体のうちの他方である第二無機前駆体とをそれぞれ組み合わせて用い、さらには、前記第一ポリマーブロック成分との溶解度パラメータの差が2(cal/cm1/2以下である第一無機前駆体と、前記第二ポリマーブロック成分との溶解度パラメータの差が2(cal/cm1/2以下である第二無機前駆体とを組み合わせて用いることが好ましい。これにより、第一無機前駆体および第二無機前駆体はそれぞれ第一ポリマーブロック成分中および第二ポリマーブロック成分中に十分に導入された状態で存在する。そのため、ブロックコポリマーの自己組織化によりナノ相分離構造体を形成せしめる相分離処理により、第一無機前駆体が導入された第一ポリマーブロック成分からなる第一ポリマー相と第二無機前駆体が導入された第二ポリマーブロック成分からなる第二ポリマー相とが規則的に配置し、ナノ相分離構造を柱状構造、ジャイロイド状構造または層状構造とすることによって前記無機前駆体は三次元的にナノスケールの周期性をもって配置される。
【0054】
このような相分離処理としては、特に限定されないが、用いるブロックコポリマーのガラス転移点以上の温度で熱処理することにより、ブロックコポリマーは自己組織化され、相分離構造が得られる。
【0055】
次に、本発明においては、相分離処理により形成されたナノ相分離構造体に対して、前記p型半導体材料前駆体および前記n型半導体材料前駆体をそれぞれp型半導体材料およびn型半導体材料に変換せしめる変換処理と、前記ナノ相分離構造体から前記ブロックコポリマーを除去する除去処理とが施される。係る変換処理により前記p型半導体材料前駆体および前記n型半導体材料前駆体をそれぞれp型半導体材料およびn型半導体材料に変換せしめると共に、係る除去処理によりブロックコポリマーを除去することによって、ナノ相分離構造の種類(形状)に応じてp型半導体材料およびn型半導体材料のうちの一方の無機成分からなるマトリックス中に他方の無機成分が柱状、ジャイロイド状または層状といった形状で三次元的に特定のナノスケールの周期性をもって配置されたナノヘテロ構造体が得られる。
【0056】
このような変換処理としては、前記無機前駆体が前記無機成分に変換される温度以上で加熱して無機成分に変換する工程であってもよいし、前記無機前駆体を加水分解するとともに脱水縮合させて無機成分に変換する工程であってもよい。
【0057】
また、除去処理としては、ブロックコポリマーが分解する温度以上で熱処理(焼成)することによってブロックコポリマーを分解する工程であってもよいが、溶媒によりブロックコポリマーを溶解して除去する工程や、紫外線などの光照射によりブロックコポリマーを分解する工程であってもよい。
【0058】
さらに、本発明における前記第二の工程においては、前記第一の工程において調製された原料溶液に対してブロックコポリマーが分解する温度以上で熱処理(焼成)を施すことによって、前記相分離処理、前記変換処理および前記除去処理を一度の熱処理で行うことができる。このように一度の熱処理により前記相分離処理、前記変換処理および前記除去処理を完結させるためには、用いるブロックコポリマーや無機前駆体の種類によっても異なるが、300〜1200℃(より好ましくは400〜900℃)で0.1〜50時間程度の熱処理を施すことが好ましい。
【0059】
このような熱処理は、不活性ガス雰囲気(例えば、窒素ガスなど)中、酸化ガス雰囲気(例えば、空気など)中、あるいは還元ガス雰囲気(例えば、水素など)中で行なってもよい。不活性ガス雰囲気中で無機前駆体を無機成分に変換せしめると共にブロックコポリマーを除去することにより、ナノスケールの三次元的周期構造がより確実に維持される傾向にある。また、酸化ガス雰囲気中で無機前駆体を無機成分に変換せしめることにより、金属または半金属の酸化物からなるp型半導体材料およびn型半導体材料を備えるナノヘテロ構造体を得ることができる。さらに、還元ガス雰囲気中で無機前駆体を無機成分に変換せしめることにより、金属または半金属からなるp型半導体材料およびn型半導体材料を備えるナノヘテロ構造体を得ることができる。このような不活性ガス雰囲気中、酸化ガス雰囲気中、あるいは還元ガス雰囲気中での熱処理の条件は特に制限されないが、300〜1200℃(より好ましくは400〜900℃)で0.1〜50時間程度の処理が好ましい。
【0060】
また、前記熱処理の後あるいは前記熱処理の際に、それぞれ公知の方法により、アルゴン雰囲気などを用いて無機成分を炭化せしめる処理、アンモニア雰囲気などを用いて無機成分を窒化せしめる処理、炭化ホウ素含有雰囲気などを用いて無機成分を硼化せしめる処理などを更に施すようにしてもよい。
【0061】
本発明のナノヘテロ構造pn接合素子の製造方法においては、このようにして得られるナノヘテロ構造体を、p型半導体層およびn型半導体層のうちの一方である第一半導体層上に形成せしめる。このとき、ナノヘテロ構造体中のp型半導体材料とn型半導体材料とによって形成されているpn接合面の端部が前記第一半導体層の表面に接触するように、ナノヘテロ構造体を第一半導体層上に形成せしめることが好ましく、場合によっては、形成せしめる必要がある。すなわち、ジャイロイド状構造のナノヘテロ構造体については特に制限はないが、柱状構造または層状構造のナノヘテロ構造体については、少なくとも、柱状部の長軸や層状部の界面が第一半導体層の表面に対して平行にならないように形成せしめる必要がある。また、柱状構造または層状構造のナノヘテロ構造体については、前記pn接合面が第一半導体層の表面に対して垂直となるように、第一半導体層上に形成せしめることがより好ましい。
【0062】
前記ナノヘテロ構造体を第一半導体層上に形成せしめる方法としては、(i)予め、前記相分離処理、前記変換処理および前記除去処理を行なって本発明にかかるナノヘテロ構造体を作製し、得られたナノヘテロ構造体を第一半導体層上に積層する方法、(ii)第一半導体層の表面に前記原料溶液を塗布して前記原料溶液からなる層を形成せしめた後、前記相分離処理、前記変換処理および前記除去処理を行なって第一半導体層上に本発明にかかるナノヘテロ構造体を直接形成せしめる方法、などが挙げられる。これらのうち、ナノヘテロ構造体と第一半導体層との密着性の観点から、方法(ii)が好ましい。また、原料溶液の塗布方法としては、ハケ塗り、スプレー法、ディッピング法、スピン法、カーテンフロー法などが挙げられる。
【0063】
また、柱状構造または層状構造のナノヘテロ構造体を形成せしめる場合、前記方法(i)においては、柱状部や層状部の端面が表面に露出し且つ柱状部の長軸や層状部の界面が表面に対して垂直となっているナノヘテロ構造体を作製し、このナノヘテロ構造体を第一半導体層上に積層することが好ましい。また、前記方法(ii)においては、前記原料溶液からなる層の上面を、p型半導体材料前駆体およびn型半導体材料前駆体のうちの少なくとも一方の無機前駆体に対する良溶媒の蒸気に曝露しながら、前記相分離処理を施すことが好ましい。これらの方法により、ナノヘテロ構造体中の前記pn接合面を第一半導体層の表面に対して垂直な方向に形成せしめることができる。前記良溶媒としては、前記原料溶液の溶媒として例示したものが挙げられる。また、前記良溶媒の蒸気に曝露する際の温度としては、前記原料溶液中の溶媒の沸点以下の温度が好ましい。曝露温度が前記上限を超えると、溶媒の揮発が速くなり、前記pn接合面を第一半導体層の表面に対して垂直な方向に形成しにくくなる傾向にある。
【0064】
本発明に用いられる前記第一半導体層は、第一半導体層そのものが基板であってもよいし、基板上に形成されているものであってもよい。第一半導体層が基板上に形成されている場合、その基板としては特に制限はないが、例えば、AU電極基板などの金属電極基板、ITO電極基板などの透明電極基板といった各種電極基板を使用することができる。このような基板上に第一半導体層を形成する方法としては特に制限はなく、例えば、化学気相蒸着法(CVD法)、有機金属気相成長法(MOCVD法)、分子線エピタキシャル法(MBE法)など公知の製膜方法が挙げられる。
【0065】
[第三の工程:半導体層形成工程]
この工程は、前記ナノヘテロ構造体上に、p型半導体層およびn型半導体層のうちの他方である第二半導体層を形成せしめる工程である。
【0066】
前記第二の工程で形成せしめたナノヘテロ構造体上に前記第二半導体層を形成せしめることによって、前記ナノヘテロ構造体がp型半導体層とn型半導体層とによって挟持された本発明のナノヘテロ構造pn接合素子を得ることができる。このとき、ナノヘテロ構造体中の前記pn接合面の端部が前記第二半導体層の表面に接触するように、第二半導体層をナノヘテロ構造体上に形成せしめることが好ましく、場合によっては、形成せしめる必要がある。すなわち、ジャイロイド状構造のナノヘテロ構造体については特に制限はないが、柱状構造または層状構造のナノヘテロ構造体上には、少なくとも、柱状部の長軸や層状部の界面が第二半導体層の表面に対して平行にならないように、前記第二半導体層を形成せしめる必要がある。また、柱状構造または層状構造のナノヘテロ構造体上には、前記pn接合面が第二半導体層の表面に対して垂直となるように、第二半導体層を形成せしめることがより好ましい。
【0067】
ナノヘテロ構造体上に第二半導体層を形成せしめる方法としては特に制限はないが、前記ナノヘテロ構造体の表面に化学気相蒸着法(CVD法)、有機金属気相成長法(MOCVD法)、分子線エピタキシャル法(MBE法)などの公知の製膜方法を用いて第二半導体層を形成せしめることが好ましい。
【0068】
また、本発明のナノヘテロ構造pn接合素子の製造方法においては、さらに、前記第一および第二半導体層上に公知の方法により電極を形成することが好ましい。このような電極としては、Au電極などの金属電極、ITO電極などの透明電極が挙げられる。
【実施例】
【0069】
以下、実施例および比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0070】
(実施例1)
ブロックコポリマーとしてポリスチレン−b−ポリ(4−ビニルピリジン)(PS−b−P4VP、PS成分の数平均分子量:80×10、P4VP成分の数平均分子量:42×10)10gと、p型半導体材料前駆体であるMg−GaN前駆体(Mg前駆体およびGa前駆体)としてアセチルアセトナートマグネシウム(Mg(acac))0.2mgおよびアセチルアセトナートガリウム(Ga(acac))8.8gと、n型半導体材料前駆体であるSi−GaN前駆体(Si前駆体およびGa前駆体)としてフェニルシラン(PhSiH)0.3mgおよびトリスジメチルアミノガリウム(Ga(N(CH)9.6gとを1000mLのトルエンに溶解し、原料溶液を得た。
【0071】
次に、n型半導体層であるn−Si−GaN基板(SiをドープしたGaN基板、厚み:1.2μm)の表面に、得られた原料溶液を熱処理後の厚みが0.8μmとなるように塗布した後、トルエン蒸気の存在下、50℃で20時間保持して前記半導体材料前駆体を前記n型半導体層に対して垂直に配向させた。その後、アンモニア気流下、650℃で5時間熱処理することによって、前記n型半導体層上に無機構造体を作製した。なお、前記n型半導体層と無機構造体との接触面積は25mmであった。
【0072】
得られた無機構造体を透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて観察したところ、図7に示すように、n型半導体材料であるn−Si−GaN(SiをドープしたGaN)マトリックス中に、p型半導体材料である柱状のp−Mg−GaN(MgをドープしたGaN)が三次元的且つ周期的に配置しているナノヘテロ構造体(1)であることが確認された。また、ナノヘテロ構造体(1)中のpn接合面がn型半導体層(3)の表面に対して垂直に形成されていることも確認された。なお、図7中の黒色部分(n)がn−Si−GaNマトリックスであり、白色部分(p)が柱状p−Mg−GaNである。
【0073】
また、得られた無機構造体について小角X線回折測定装置(リガク社製、商品名:NANO−Viewer)を用いて小角X線回折パターンを測定したところ、周期構造の間隔(d)は32nmであり、柱状構造に特徴的な回折ピークパターン(ピーク位置の回折スペクトルの大きさ(q)の比)が確認された。
【0074】
次に、このナノヘテロ構造体の表面にCVD法によりp型半導体層としてp−Mg−GaN層(MgをドープしたGaN層)を厚みが1.2μmとなるように作製し、ナノヘテロ構造pn接合素子を得た。このナノヘテロ構造pn接合素子のp型半導体層上およびn型半導体層上にCVD法によりAu電極パッドを形成し、図5に示すナノヘテロ構造pn接合素子(発光ダイオード)を作製した。得られた発光ダイオードに50mAの順方向電流を印加したところ、発光出力は2.5mWであった。
【0075】
(実施例2)
ブロックコポリマーとして、PS成分の数平均分子量が100×10であり、P4VP成分の数平均分子量が103×10であるPS−b−P4VPを10g使用し、Mg−GaN前駆体として、Mg(acac)を0.4mgおよびGa(acac)を17.5g使用した以外は、実施例1と同様にしてn型半導体層(n−Si−GaN基板、厚み:1.2μm)上に無機構造体(厚み:0.6μm、n型半導体層との接触面積:25mm)を作製した。
【0076】
得られた無機構造体を実施例1と同様に透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて観察したところ、図8に示すように、n型半導体材料であるn−Si−GaN(SiをドープしたGaN)とp型半導体材料であるp−Mg−GaN(MgをドープしたGaN)とが交互に周期的に配置して多層構造を形成しているナノヘテロ構造体(1)であることが確認された。また、ナノヘテロ構造体(1)中のpn接合面がn型半導体層(3)の表面に対して垂直に形成されていることも確認された。なお、図8中の黒色部分(n)が層状n−Si−GaNであり、白色部分(p)が層状p−Mg−GaNである。
【0077】
また、得られた無機構造体について実施例1と同様に小角X線回折パターンを測定したところ、周期構造の間隔(d)は24nmであり、層状構造に特徴的な回折ピークパターン(ピーク位置の回折スペクトルの大きさ(q)の比)が確認された。
【0078】
次に、このナノヘテロ構造体の表面に実施例1と同様にしてp型半導体層としてp−Mg−GaN層(厚み:1.2μm)を作製し、さらに電極パッドを形成して、図5に示す発光ダイオードを作製した。得られた発光ダイオードに実施例1と同様に50mAの順方向電流を印加したところ、発光出力は2.1mWであった。
【0079】
(比較例1)
n型半導体層(n−Si−GaN基板、厚み:1.2μm)の表面に、n型半導体材料としてn−Si−GaNフィルム(SiをドープしたGaNフィルム、キャリア濃度:1.6×1018cm−3、面積:25mm、厚み:0.3μm)を積層し、さらにp型半導体材料としてp−Mg−GaNフィルム(MgをドープしたGaNフィルム、キャリア濃度:8.2×1018cm−3、面積:25mm、厚み:0.3μm)を積層した。この積層体の表面に実施例1と同様にしてp型半導体層としてp−Mg−GaN層(厚み:1.2μm)を作製し、さらに電極パッドを形成して図9に示すような発光ダイオードを作製した。得られた発光ダイオードに実施例1と同様に50mAの順方向電流を印加したところ、発光出力は0.7mWであった。
【産業上の利用可能性】
【0080】
以上説明したように、本発明によれば、p型半導体材料およびn型半導体材料のうちの一方の無機成分からなるマトリックス中に他方の無機成分が所定の形状で三次元的に所定のナノスケールで周期的に配置しているナノヘテロ構造体を、p型半導体層とn型半導体層とによって挟持しているナノヘテロ構造pn接合素子を得ることが可能となる。
【0081】
そして、このような本発明のナノヘテロ構造pn接合素子は、従来の製造方法では実現することができなかった構造を有するものであり、p型半導体材料とn型半導体材料との組み合わせについて、それらの配置、組成、構造スケールなどを様々に制御したナノヘテロ構造体として得ることが可能である。
【0082】
このようなナノヘテロ構造を有するpn接合素子は、従来の単接合のpn接合素子以上の界面増大効果、ナノサイズ効果、耐久性などの飛躍的な向上が発揮され、結果として発光効率などの光電変換特性に優れたものとなる。したがって、本発明のナノヘテロ構造pn接合素子は、発光素子や太陽電池などの光電変換素子、ダイオードやトランジスタなどの整流素子として有用である。
【符号の説明】
【0083】
1:ナノヘテロ構造体、1a:マトリックス部、1b:柱状部、1c:層状部、1d:ジャイロイド状部、2:p型半導体層(またはn型半導体層)、3:n型半導体層(またはp型半導体層)、4:電極、5:pn接合層、5a:p型半導体材料(またはn型半導体材料)、5b:n型半導体材料(またはp型半導体材料)、n:柱状n型半導体材料、n:層状n型半導体材料、p:p型半導体材料マトリックス、p:層状p型半導体材料。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
p型半導体材料およびn型半導体材料のうちの一方の無機成分からなるマトリックス中に、p型半導体材料およびn型半導体材料のうちの他方の無機成分が、柱状、ジャイロイド状および層状からなる群から選択される形状で、三次元的且つ周期的に配置しており、繰り返し構造の一単位の長さの平均値が1nm〜100nmである三次元的周期構造を有しているナノヘテロ構造体と、p型半導体層と、n型半導体層と、を備えており、
前記ナノヘテロ構造体中の前記p型半導体材料と前記n型半導体材料とによって形成されているpn接合面の端部が前記p型半導体層および前記n型半導体層のうちの少なくとも一方の半導体層の表面と接触するように、前記p型半導体層と前記n型半導体層とが前記ナノヘテロ構造体を挟持していることを特徴とするナノヘテロ構造pn接合素子。
【請求項2】
前記マトリックス中に三次元的且つ周期的に配置している無機成分の形状が柱状または層状であり、
ナノヘテロ構造中の前記pn接合面が、前記p型半導体層および前記n型半導体層のうちの少なくとも一方の半導体層の表面に対して垂直な方向に形成されていることを特徴とする請求項1に記載のナノヘテロ構造pn接合素子。
【請求項3】
前記p型半導体層が、前記ナノヘテロ構造体中のp型半導体材料と同種の半導体材料および不純物元素を含有するものであることを特徴とする請求項1または2に記載のナノヘテロ構造pn接合素子。
【請求項4】
前記n型半導体層が、前記ナノヘテロ構造体中のn型半導体材料と同種の半導体材料および不純物を含有するものであることを特徴とする請求項1〜3のうちのいずれか一項に記載のナノヘテロ構造pn接合素子。
【請求項5】
互いに混和しない少なくとも第一ポリマーブロック成分と第二ポリマーブロック成分とが結合してなるブロックコポリマーと、p型半導体材料前駆体およびn型半導体材料前駆体のうちの一方である第一無機前駆体と、p型半導体材料前駆体およびn型半導体材料前駆体のうちの他方である第二無機前駆体と、を溶媒に溶解して原料溶液を調製する第一の工程と、
少なくとも、前記第一無機前駆体が導入された前記第一ポリマーブロック成分からなる第一ポリマー相と、前記第二無機前駆体が導入された前記第二ポリマーブロック成分からなる第二ポリマー相と、が自己組織化により規則的に配置したナノ相分離構造体を形成せしめる相分離処理と、前記p型半導体材料前駆体および前記n型半導体材料前駆体をそれぞれp型半導体材料およびn型半導体材料に変換せしめる変換処理と、前記ナノ相分離構造体から前記ブロックコポリマーを除去する除去処理とを含み、前記p型半導体材料および前記n型半導体材料のうちの一方の無機成分からなるマトリックス中に前記p型半導体材料および前記n型半導体材料のうちの他方の無機成分が、柱状、ジャイロイド状および層状からなる群から選択される形状で、三次元的且つ周期的に配置しているナノヘテロ構造体を、p型半導体層およびn型半導体層のうちの一方である第一半導体層上に形成せしめる第二の工程と、
前記ナノヘテロ構造体上に、p型半導体層およびn型半導体層のうちの他方である第二半導体層を形成せしめ、前記ナノヘテロ構造体中の前記p型半導体材料と前記n型半導体材料とによって形成されているpn接合面の端部が前記p型半導体層および前記n型半導体層のうちの少なくとも一方の半導体層の面に接触しているナノヘテロ構造pn接合素子を得る第三の工程と、
を含むことを特徴とするナノヘテロ構造pn接合素子の製造方法。
【請求項6】
前記第二の工程において、マトリックス中に三次元的且つ周期的に配置している無機成分の形状が柱状または層状であるナノヘテロ構造体を、該ナノヘテロ構造体中の前記pn接合面が前記第一半導体層の表面に対して垂直となるように、前記第一半導体層上に形成せしめることを特徴とする請求項5に記載のナノヘテロ構造pn接合素子の製造方法。
【請求項7】
前記第一半導体層上に前記原料溶液からなる層を形成せしめた後、該原料溶液からなる層の上面を、前記p型半導体材料前駆体および前記n型半導体材料前駆体のうちの少なくとも一方の無機前駆体に対する良溶媒の蒸気に曝露しながら前記相分離処理を施すことによって、前記pn接合面を前記第一半導体層の表面に対して垂直方向に形成せしめることを特徴とする請求項6に記載のナノヘテロ構造pn接合素子の製造方法。
【請求項8】
前記第三の工程において、マトリックス中に三次元的且つ周期的に配置している無機成分の形状が柱状または層状であるナノヘテロ構造体上に、該ナノヘテロ構造体中の前記pn接合面が前記第二半導体層の表面に対して垂直となるように、前記第二半導体層を形成せしめることを特徴とする請求項5〜7のうちのいずれか一項に記載のナノヘテロ構造pn接合素子の製造方法。
【請求項9】
前記第一無機前駆体と前記第一ポリマーブロック成分との溶解度パラメータの差が2(cal/cm1/2以下であり、前記第二無機前駆体と前記第二ポリマーブロック成分との溶解度パラメータの差が2(cal/cm1/2以下であることを特徴とする請求項5〜8のうちのいずれか一項に記載のナノヘテロ構造pn接合素子の製造方法。
【請求項10】
前記第一ポリマーブロック成分と前記第一無機前駆体との溶解度パラメータの差は、前記第一ポリマーブロック成分と前記第二無機前駆体との溶解度パラメータの差よりも小さいことを特徴とする請求項5〜9のうちのいずれか一項に記載のナノヘテロ構造pn接合素子の製造方法。
【請求項11】
前記第二ポリマーブロック成分と前記第二無機前駆体との溶解度パラメータの差は、前記第二ポリマーブロック成分と前記第一無機前駆体との溶解度パラメータの差よりも小さいことを特徴とする請求項5〜10のうちのいずれか一項に記載のナノヘテロ構造pn接合素子の製造方法。
【請求項12】
前記ブロックコポリマーが、ポリスチレン成分、ポリイソプレン成分およびポリブタジエン成分からなる群から選択される少なくとも1種の第一ポリマーブロック成分と、ポリメチルメタクリレート成分、ポリエチレンオキシド成分、ポリビニルピリジン成分およびポリアクリル酸成分からなる群から選択される少なくとも少なくとも1種の第二ポリマーブロック成分とが結合してなるものであり、
前記第一無機前駆体が、フェニル基、炭素数5以上の長鎖炭化水素鎖、シクロオクタテトラエン環、シクロペンタジエニル環、およびアミノ基からなる群から選択される少なくとも1つの構造を備える、有機金属化合物および有機半金属化合物のうちの少なくとも1種であり、
前記第二無機前駆体が、金属または半金属の塩、金属または半金属を含む炭素数1〜4のアルコキシド、および金属または半金属のアセチルアセトナート錯体からなる群から選択される少なくとも1種である、
ことを特徴とする請求項5〜11のうちのいずれか一項に記載のナノヘテロ構造pn接合素子の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図9】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−65664(P2013−65664A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−202937(P2011−202937)
【出願日】平成23年9月16日(2011.9.16)
【出願人】(000003609)株式会社豊田中央研究所 (4,200)
【Fターム(参考)】