説明

ナノ粒子及びナノ粒子複合体

【課題】ホスト分子としての機能を有しゲスト分子の分散性や表面配向性を改善し得るナノ粒子、及びこれにゲスト分子を包接させたナノ粒子複合体を提供すること。
【解決手段】ナノ粒子は、親水基と両末端のフルオロアルキル基を有する鎖状オリゴマー部位と、3次元シリカネットワーク部位と、フッ素又はケイ素を有する有機鎖とから成る。
【化1】


(式中のR’はそれぞれ独立してH又はアルキル基、Xは親水基であってそれぞれ独立してOH基、NCO基、NH基等、Rは炭素数2〜10個で分子量119〜1000のフルオロアルキル基、3D‐SNは3次元シリカネットワーク部位、Bはそれぞれ独立してO、O=C−O等、EはO、O=C−O、NH−C=O等、Gは[(CHO)−[Si(CHO]−(CHO)]等を示す)で表される構造を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規なナノ粒子及びナノ粒子複合体に係り、更に詳細には、ホスト分子としての機能を有し、特にゲスト分子の分散性や表面配向性を改善し得るナノ粒子、及びこれにゲスト分子を包接させたナノ粒子複合体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、長鎖のアルキル基を有する化合物、例えばアクリル酸エステルオリゴマーなどは分子同士が絡み合い、溶剤に溶解しにくい。これに対し、フッ素の表面エネルギーが低いことを利用して、かかる凝集を低減し、溶解性を高めることが見出されているが、溶剤及び樹脂表面への配向が十分ではない(例えば、非特許文献1〜3参照)。
【非特許文献1】H.Sawada,R.Kasai et al.,polym.Adv.Tech.,16,655(2005)
【非特許文献2】H.Sawada,J.Iidzuka et al.,J.Colloid Interface Sci.,263,1(2003)
【非特許文献3】日本学術会議 第11回界面シンポジウム 「ナノレベル構造制御フッ素系分子集合体の構築とコーティング表面改質」 弘前大学 沢田英夫(2004)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
かかる従来技術において、両末端にフルオロアルキル基を有するオリゴマーを用いると、バインダー樹脂の溶剤中への分散性及び表面配向性が向上するが、使用する樹脂種によっては、樹脂と両末端にフルオロアルキル基を有するオリゴマーとの相互作用により、表面配向性が抑制されることが多い。
【0004】
また、両末端にフルオロアルキル基を有するオリゴマーをシリカを用いてナノコンポジット化すると、更に表面配向性が向上することが知られているが、この場合でも、使用する樹脂との相互作用により、溶剤及び樹脂表面への配向性が抑制され、樹脂膜の内部に留まってしまい、樹脂膜表面における存在量が少なくなるという問題があった。
【0005】
本発明は、このような従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、ホスト分子としての機能を有しゲスト分子の分散性や表面配向性を改善し得るナノ粒子、及びこれにゲスト分子を包接させたナノ粒子複合体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意検討を重ねた結果、溶剤及び樹脂表面への配向性を向上させ得る所定の有機鎖を導入することにより、上記目的が達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
即ち、本発明のナノ粒子は、親水基と両末端のフルオロアルキル基を有する鎖状オリゴマー部位と、3次元シリカネットワーク部位と、フッ素又はケイ素を有する有機鎖とから成り、次の(1)式
【0008】
【化3】

【0009】
(式中のR’はそれぞれ独立してH又はアルキル基、Xは親水基であってそれぞれ独立してOH基、NCO基、NH基、NHR基(R:アルキル基)又はCOY基(Y:親水基)、Rは炭素数2〜10個で分子量119〜1000のフルオロアルキル基、3D‐SNは3次元シリカネットワーク部位、Bはそれぞれ独立してO、O=C−O、NH−C=O又はNR−C=O(R:アルキル基)、EはO、O=C−O、NH−C=O又はNR−C=O(R:アルキル基)、Gは[(CHO)−[Si(CHO]−(CHO)]、(CF又は(CFO)を示す。nは1≦n≦10、mは1≦m≦n、kは1≦k≦500、lは0≦l≦10、jは0≦j≦20、hは1≦h≦20を示す。)
又は(2)式
【0010】
【化4】

【0011】
(式中のR’はそれぞれ独立してH又はアルキル基、Xは親水基であってそれぞれ独立してOH基、NCO基、NH基、NHR基(R:アルキル基)又はCOY基(Y:親水基)、Rは炭素数2〜10個で分子量119〜1000のフルオロアルキル基、3D‐SNは3次元シリカネットワーク部位、Bはそれぞれ独立してO、O=C−O、NH−C=O又はNR−C=O(R:アルキル基)、EはO、O=C−O、NH−C=O又はNR−C=O(R:アルキル基)、Lは[(CHO)−[Si(CHO]−(CHO)]−α、(CF−α又は(CFO)−αを示し、この場合、αはCOY基(Y:親水基)、NCO基、NH基、NHR基(R:アルキル基)、R基(アルキル基)又はHである。nは1≦n≦10、mは1≦m≦n、kは1≦k≦500、lは0≦l≦10、jは0≦j≦20、hは1≦h≦20を示す。)
で表される構造を有する、ことを特徴とする。
【0012】
また、本発明のナノ粒子複合体は、上述の如きナノ粒子であるホスト分子と、このホスト分子に包接されたゲスト分子を含有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、溶剤表面への配向性を向上させ得る所定の有機鎖を導入することとしたため、ホスト分子としての機能を有しゲスト分子の分散性や表面配向性を改善し得るナノ粒子、及びこれにゲスト分子を包接させたナノ粒子複合体を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の成形品につき詳細に説明する。なお、本明細書及び特許請求の範囲において、濃度、充填量及び配合量などについての「%」は特記しない限り質量百分率を表すものとする。また、「ナノ粒子」又は「ナノ粒子複合体」とは、代表的には、その大きさがナノオーダーの粒子又は複合体を意味するが、必ずしもナノオーダーである必要はなく、粒径0.5nm〜1μm程度の大きさのものも包含するものとする。
【0015】
上述の如く、本発明のナノ粒子は、ホスト分子としての機能を有するもので、親水基と両末端のフルオロアルキル基を有する鎖状オリゴマー部位と、3次元(3D)シリカネットワーク(SN)部位と、フッ素又はケイ素を有する有機鎖とから成る。
ここで、上記鎖状オリゴマー部位は、溶剤及び樹脂表面への配向化という機能を果たし、3Dシリカネットワークは、シロキサン結合(−Si−O−)nの3次元網目構造を有し、ゲスト分子の包含という機能を果たし、フッ素又はケイ素を有する有機鎖は、典型的には、ポリシロキサン又はフルオロアルコール由来のもので、更に溶剤及び樹脂表面への配向性を向上させ得る機能を果たす。
【0016】
また、本発明のナノ粒子は、次の(1)式
【0017】
【化5】

【0018】
(式中のR’はそれぞれ独立してH又はアルキル基、Xは親水基であってそれぞれ独立してOH基、NCO基、NH基、NHR基(R:アルキル基)又はCOY基(Y:親水基)、Rは炭素数2〜10個で分子量119〜1000のフルオロアルキル基、3D‐SNは3次元シリカネットワーク部位、Bはそれぞれ独立してO、O=C−O、NH−C=O又はNR−C=O(R:アルキル基)、EはO、O=C−O、NH−C=O又はNR−C=O(R:アルキル基)、Gは[(CHO)−[Si(CHO]−(CHO)]、(CF又は(CFO)を示す。nは1≦n≦10、mは1≦m≦n、kは1≦k≦500、lは0≦l≦10、jは0≦j≦20、hは1≦h≦20を示す。)
又は(2)式
【0019】
【化6】

【0020】
(式中のR’はそれぞれ独立してH又はアルキル基、Xは親水基であってそれぞれ独立してOH基、NCO基、NH基、NHR基(R:アルキル基)又はCOY基(Y:親水基)、Rは炭素数2〜10個で分子量119〜1000のフルオロアルキル基、3D‐SNは3次元シリカネットワーク部位、Bはそれぞれ独立してO、O=C−O、NH−C=O又はNR−C=O(R:アルキル基)、EはO、O=C−O、NH−C=O又はNR−C=O(R:アルキル基)、Lは[(CHO)−[Si(CHO]−(CHO)]−α、(CF−α又は(CFO)−αを示し、この場合、αはCOY基(Y:親水基)、NCO基、NH基、NHR基(R:アルキル基)、R基(アルキル基)又はHである。nは1≦n≦10、mは1≦m≦n、kは1≦k≦500、lは0≦l≦10、jは0≦j≦20、hは1≦h≦20を示す。)
で表される構造を有する。
【0021】
(1)式、(2)式中のXにおけるY(親水基)としては、特に限定されるものではなく、それぞれ独立して、例えば、(3)式〜(6)式に示すような官能基(ヒドロキシル基、モルフォリン基、N−(1,1−ジメチル−3−オキソブチル)アミノ基、ジメチルアミノ基)の他、スルホン基、上記以外のアミノ基などを適宜選択することができる。なお、Yは同一オリゴマー分子中において同一種類である必要はない。
【0022】
【化7】

【0023】
なお、(1)式及び(2)式において、3D−SN部位の代表的構造を概略的に示すと、(1)式及び(2)式に表した構造は、それぞれ次の(7)式及び(8)式のように表される。
【0024】
【化8】

【0025】
【化9】

【0026】
また、本発明のナノ粒子の典型例としては、次の(9)式又は(10)式で表されるものがある。
【0027】
【化10】

【0028】
【化11】

【0029】
なお、(9)式又は(10)式において、R、E、G及びLは上記と同じものを示し、Zは次の(11)式又は(12)式で表される。
【0030】
【化12】

【0031】
【化13】

【0032】
なお、(11)式又は(12)式において、R’、R、E、G、L、m、n、k、l、j及びhは上記と同じものを示す。
【0033】
本発明のナノ粒子において、親水基(X)と両末端のフルオロアルキル基(R)を有する鎖状オリゴマー部位は、次の(13)式で表されるオリゴマー(但し、R’、R、X、m及びnは上記と同じものを示す)に由来する。
このナノ粒子では、当該オリゴマー部位の分子量が、(13)式のオリゴマーに換算して252〜100,000であることが好ましい。
分子量が252未満、又は100,000を超える場合には、本発明に適用できないことがある。
【0034】
【化14】

【0035】
次に、本発明のナノ粒子複合体について説明する。
上述の如く、本発明のナノ粒子複合体は、上記ナノ粒子複合体をホスト分子とし、このホスト分子にゲスト分子が包接されて成るものである。
ここで、ゲスト分子としては、特に限定されるものではないが、カーボンナノチューブ、カーボンナノホーン、HIVウィルス、フラーレン、磁性粒子(マグネタイト粒子)、金粒子、銀粒子、ナノダイヤモンド粒子、ヒビテン、フルオロセインなどを挙げる事ができる。更に、機能性材料として知られているフラーレン製造時の副生炭素素粒子も使用できる。
【0036】
また、本発明のナノ粒子複合体では、上記3D−SN部位をテトラエトキシシラン(TEOS)で架橋させることにより、親水基と両末端のフルオロアルキル基を有する鎖状オリゴマー部位、及びフッ素又はケイ素を有する有機鎖の付加を効果的に構築することができる。
特に、(9)式又は(10)式で表される構造を有するナノ粒子(ホスト分子)に、ゲスト分子を包接させたナノ粒子複合体に有効であり、これにより、ゲスト分子の高い表面配向化が得られる。
【0037】
本発明のナノ粒子複合体は、上述したナノ粒子(ホスト分子)が優れた分散性や表面配向性を有することから、同様の利点を有し、特に各種のゲスト分子を良好に分散させたり、表面配向させることができる。
よって、例えば、特定のゲスト分子を表面に曝して、そのゲスト分子の特性を有効に発現させることが可能になる。
【0038】
以下、上述のナノ粒子及びナノ粒子複合体の製造方法について説明する。
(両末端にフルオロアルキル基、主鎖中に親水基を有するオリゴマーの作成方法)
[パーフルオロアシルクロライドの作成]
無水パーフルオロカルボン酸(RFCOH)と塩化ベンゾイル(PhCOCl)を1:2mmolの割合で、無水パーフルオロカルボン酸の沸点又は沸点より若干高い温度で急速加熱し、室温まで冷却する。得られた粗製物を分留し、精製することでパーフルオロアシルクロライド(RCOCl)を得ることができる。
【0039】
例えば、無水パーフルオロカルボン酸としてCFCFCFCOHを用いた場合CFCFCFCOClの収率70%、無水パーフルオロカルボン酸としてCFCFCFCFCFCFCFCOHを用いた場合CFCFCFCFCFCFCFCOClの収率77%、無水パーフルオロカルボン酸としてHCFCFCOHを用いた場合HCFCFCOClの収率71%、無水パーフルオロカルボン酸としてHCFCFCFCFCOHを用いた場合HCFCFCFCFCOClの収率70%で目的とするパーフルオロアシルクロライドを得ることができる。
【0040】
[フルオロアルカノイルパーオキサイドの作成]
−5℃〜−7℃に保たれた十分な量の非極性フッ素溶剤(商品名Freon−113:CFClCFCl)中に、RCOClとNaOHとHが1:1:0.5のモル比率になるように、先ずは水1ml当たり0.12gの割合でNaOHを溶解した水酸化ナトリウム水溶液を加え、次に30%過酸化水素水を加えた上で、素早く攪拌後、−5℃〜−7℃に事前に冷却されていたRCOClを加え2分攪拌する。
その後、多少温度を上げ(但し、0℃以下)、6〜7分攪拌した後、静置することで2層に油水分離した油層を抽出することにより、目標とする生成物であるフルオロアルカノイルパーオキサイド((RFCOO))が得られる。なお、生成物の純度を上げるために、氷冷した飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で洗浄することが望ましい。
【0041】
ところで、フルオロアルカノイルパーオキサイドに用いるパーフルオロアシルクロライドは、次の(14)式で示すように、パーフルオロアシルフロライド、パーフルオロアシルブロモイド等のハロゲン化合物でも代用できる。
【0042】
【化15】

【0043】
(両末端にフルオロアルキル基、主鎖中に親水基を有するオリゴマーの作成方法)
フッ素系溶剤(商品名AK−225:1,1−ジクロロ−2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロパンと1,3−ジクロロ−1,2,2,3,3−ペンタフルオロプロパンの1:1混合溶剤)35g中に、フルオロアルカノイルパーオキサイド、例えばパーフルオロ−2−メチル−3−オキサヘキサノイルパーオキサイド5mmolを加えた溶液に、親水基を有するモノマー、例えばアクリロイルモルフォリン(=ACMO)を24mmolとフッ素系溶剤(AK−225)50gの混合溶液を加え、窒素雰囲気下45℃にて5時間撹拌する。撹拌後、溶剤を蒸発させることで、ビス(パーフルオロ−1−メチル−2−オキサペンチレイティド)ACMOオリゴマー4.55gを得ることができる。
反応式を以下の(15)式に示す。
【0044】
【化16】

【0045】
また、両末端にフルオロアルキル基を有し、主鎖中に親水基を有するオリゴマーとしては、上記以外に、フルオロアルカノイルパーオキサイドとして、例えば(CFCFCFCOO)、(CFCFCFCFCFCFCFCOO)、(HCFCFCOO)、(HCFCFCFCFCOO)、(HCFCFCFCFCFCOO)、(COCF(CF)CFOCF(CF)COO)、(COCF(CF)COO)等の化合物などが使用でき、親水基を含有するモノマーとしては、上記以外に、例えば、N,N−ジメチルアクリルアミド(=DMAA)、アクリル酸(=ACA)、N−(1,1−ジメチル−3−オキソイソブチル)アクリルアミド(=DOBAA)などの化合物が使用できる。親水基を含有するモノマーを以下の(16)式に示す。
【0046】
【化17】

【0047】
(ナノ粒子の作成方法)
両末端にフルオロアルキル基を有する樹脂(ACA)0.6gを撹拌しながらエタノール17.6gに溶解する。その中にテトラエトキシシラン(和光純薬製)1.5g、ポリジメチルシロキサン(サイラプレーンFM4411(チッソ製))1.5g、コロイダルシリカ(10nm:日産化学製)メタノール溶液を加える。暫く撹拌した後、0.2Nアンモニア水1.0gを添加し、30分撹拌する。
【0048】
上記方法により作製したナノ粒子については、以下のようにPMMA(ポリメタクリル酸メチル)膜に含有させ、分散性や表面配向性を確認することができる。
【実施例】
【0049】
以下、本発明を実施例及び比較例により更に詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0050】
(実施例1)
[ナノ粒子を含有するPMMA膜の調製]
PMMA樹脂1gをTHF(テトラヒドロフラン)溶媒に溶解し、撹拌しながら、上記ナノ粒子0.015gを添加し、30分撹拌した。しかる後、室温で冷却し、PMMA膜として成形した。
【0051】
(比較例1)
PMMA樹脂1.49gをTHR溶媒20mlに溶解し、攪拌しながら、オリゴマー0.015gを添加し、30分攪拌した。しかる後、室温で冷却し、PMMA膜として成形した。
【0052】
(比較例2)
PMMA樹脂1.49gをTHR溶媒20mlに溶解し、攪拌しながら、オリゴマー+ナノコンポジット0.015gを添加し、30分攪拌した。しかる後、室温で冷却し、PMMA膜として成形した。
【0053】
[表面配向の確認]
各例のPMMA膜についてドデカンによる接触角測定を実施し、各例のPMMA膜の表面、裏面の接触角を測定し、表面配向の度合いを確認した。接触角が大きいほど、フルオロ基を多数有することを意味する。得られた結果を表1に示す。
【0054】
【表1】

【0055】
なお、実施例1で用いたナノ粒子に、以下に説明するフラーレン又はフラーレン製造時の副生炭素粒子を包接させても、分散性や表面配向性が向上することが分かった。
【0056】
フラーレンとしては、C60に限定されるものではなく、それ以上の高次フラーレン、例えばC70、C74、C76、C78、C78、C80、C82、…(これらフラーレンの炭素数は”孤立5員環則”に従う)でもよい。
【0057】
フラーレン製造時の副生炭素粒子は、燃焼法と呼ばれるフラーレン製造方法で生成される副生炭素粒子などを意味し、以下の全ての性質を満足する炭素材料である。
【0058】
(1)有機溶媒に不溶であり、且つCuKα線を使用したX線回折測定結果における回折角が3〜30°の範囲内で、最も強いピークが回折角10〜18°の範囲に存在する。
【0059】
(2)有機溶媒に不溶な性質として、室温にて炭素材料に90質量倍の1,2,4−トリメチルベンゼンを加えて、攪拌、濾過した後、150℃で10時間真空乾燥した後の炭素材料の質量差が5%以下である。
【0060】
(3)励起波長5145Åでのラマンスペクトル分析において、バンドG1590±20cm−1とバンドD1340±40cm−1にピークを有し、それぞれのバンドのピーク強度をI(G)及びI(D)とした際、ピーク強度比I(D)/I(G)が0.4〜1.0の範囲である。
【0061】
(4)CuKα線を使用したX線回折角23〜27°にピークが存在しない。
【0062】
(5)窒素吸着法で測定される比表面積が10m/g以上200m/g未満であり、300Å以下の径の細孔容積に対する10Å以下の径の細孔容積の割合が10%未満である。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明のナノ粒子やナノ粒子複合体は、撥水性のフルオロアルキル基及び親水基を有するオリゴマー部位を表面に配向させることが可能であるので、塗膜に適用すれば防汚機能を有する塗膜を実現できる。
また、塗料や樹脂製品(自動車用部品、建材及びフェンス等の屋外製品)への応用が考えられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
親水基と両末端のフルオロアルキル基を有する鎖状オリゴマー部位と、3次元シリカネットワーク部位と、フッ素又はケイ素を有する有機鎖とから成り、次の(1)式
【化1】

(式中のR’はそれぞれ独立してH又はアルキル基、Xは親水基であってそれぞれ独立してOH基、NCO基、NH基、NHR基(R:アルキル基)又はCOY基(Y:親水基)、Rは炭素数2〜10個で分子量119〜1000のフルオロアルキル基、3D‐SNは3次元シリカネットワーク部位、Bはそれぞれ独立してO、O=C−O、NH−C=O又はNR−C=O(R:アルキル基)、EはO、O=C−O、NH−C=O又はNR−C=O(R:アルキル基)、Gは[(CHO)−[Si(CHO]−(CHO)]、(CF又は(CFO)を示す。nは1≦n≦10、mは1≦m≦n、kは1≦k≦500、lは0≦l≦10、jは0≦j≦20、hは1≦h≦20を示す。)
又は(2)式
【化2】

(式中のR’はそれぞれ独立してH又はアルキル基、Xは親水基であってそれぞれ独立してOH基、NCO基、NH基、NHR基(R:アルキル基)又はCOY基(Y:親水基)、Rは炭素数2〜10個で分子量119〜1000のフルオロアルキル基、3D‐SNは3次元シリカネットワーク部位、Bはそれぞれ独立してO、O=C−O、NH−C=O又はNR−C=O(R:アルキル基)、EはO、O=C−O、NH−C=O又はNR−C=O(R:アルキル基)、Lは[(CHO)−[Si(CHO]−(CHO)]−α、(CF−α又は(CFO)−αを示し、この場合、αはCOY基(Y:親水基)、NCO基、NH基、NHR基(R:アルキル基)、R基(アルキル基)又はHである。nは1≦n≦10、mは1≦m≦n、kは1≦k≦500、lは0≦l≦10、jは0≦j≦20、hは1≦h≦20を示す。)
で表される構造を有する、ことを特徴とするナノ粒子。
【請求項2】
上記(1)式又は(2)式において、鎖状オリゴマー部位の分子量が252〜100,000であることを特徴とする請求項1に記載のナノ粒子。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のナノ粒子であるホスト分子と、このホスト分子に包接されたゲスト分子を含有することを特徴とするナノ粒子複合体。

【公開番号】特開2008−69230(P2008−69230A)
【公開日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−248075(P2006−248075)
【出願日】平成18年9月13日(2006.9.13)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成18年3月13日 社団法人 日本化学会発行の「日本化学会第86春季年会−講演予稿集1」に発表
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【出願人】(504229284)国立大学法人弘前大学 (162)
【Fターム(参考)】