説明

ナビゲーション装置

【課題】案内点(案内対象交差点など)までの距離感を感覚的に、しかも瞬時に判断できるような表示を行うナビゲーション装置を提供する。
【解決手段】案内経路であることを示す案内オブジェクト上の点から案内点までの距離を算出し、この算出した距離に基づき案内オブジェクト上の点の表示態様を設定するオブジェクト表示制御部9と、自車位置から案内点に至る経路の画像上に案内オブジェクトを重畳して表示する表示部5と、車両の前方を撮像した実写画像を取得する実写画像取得部2とを備え、自車位置から案内点に至る経路の画像は実写画像取得部2が取得した実写画像であり、自車位置と案内点の途中地点が案内点に対してどれくらいの距離に位置しているかという情報をオブジェクト表示制御部9が設定する表示態様にて表示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナビゲーション装置に関し、特に、案内点までの距離感を感覚的に、しかも瞬時に把握できるような表示を行うナビゲーション装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自車位置周辺の地図を表示し、自車位置から目的地までの経路を演算して、演算された経路に基づいて経路案内を行うナビゲーション装置が広く普及している。このようなナビゲーション装置では、案内経路を地図画像上に他の道路とは識別可能に(例えば、色を変えたり、線幅を太くするなどして)表示したり、また案内経路上で接近中の交差点まで所定距離に達したとき、地図画像上にその交差点の案内図(例えば、交差点拡大図)を表示したりすることで、いずれの道路を走行すればよいか、また交差点でどの方向に進んだら良いかをドライバーが把握できるようになっている。
【0003】
しかし、走行中は、地図上に表示される自車位置と実際の自車位置との相対関係を把握するのが困難であり、案内された目的の交差点よりも手前で曲がったり、通過してしまったりするという問題がある。そこで、案内対象交差点までの距離をドライバーに提示するために、自車位置と案内対象交差点までの距離に応じて交差点での進行方向を示す矢印の色を変化させる技術が開示されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6−147909号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に示されている従来技術は、自車位置と案内対象交差点までの距離に応じて矢印全体の色を変化させる(例えば、自車が交差点手前300mに到達したとき矢印色を赤色、自車が交差点手前200mに到達したとき矢印色を黄色、自車が交差点手前100mに到達したとき矢印色を青色に変化させる)ものであるため、自車位置と案内対象交差点の2点間の距離を示すに過ぎず、ドライバーは自車位置と案内対象交差点の途中にある地点が交差点に対してどれくらいの距離に位置しているかという情報を得ることはできなかった。したがって、交差点からやや離れた地点(例えば交差点手前300m地点)を走行中に、どの辺りまで走れば交差点の近傍(例えば、交差点手前100m)に達するのかという目安を得られないため、交差点までの距離感を把握し難く、いつ曲がる準備をすればよいのか直感的に分かりにくいという問題があった。
【0006】
特に、実写画像に写っている経路上に矢印を重畳するなどしてドライバーが見ている実風景に近いリアルな表示で案内を行う場合においては、従来技術のように矢印全体の色が均一である表示では遠近感が掴み難く、曲がるべき交差点を特定するのが困難となる場合があった。
【0007】
また、従来技術においては、ドライバーが画面を見た瞬間においてはその時点での自車位置と案内対象交差点の2点間の距離だけしか確認できないため、例えば、交差点手前100m地点がどの辺りであるかということを、それより手前の地点(例えば、交差点手前300m地点)を走行中においては把握できず、実際に自車が交差点手前100mに到達したときに初めて把握可能となる。したがって、ドライバーは案内対象交差点までどの程度近づいたかを確認するためには絶えず矢印色の変化を確認する必要があり、それにより
ドライバーは画面を注視してしまう、もしくは、頻繁に画面を見る必要があった。
【0008】
それ故に、本発明の目的は、案内対象交差点等の案内点までの距離感を感覚的に、しかも瞬時に把握できるような表示を行うナビゲーション装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明のナビゲーション装置は、案内経路であることを示す案内オブジェクト上の点から案内点までの距離を算出し、この算出した距離に基づき前記案内オブジェクト上の点の表示態様を設定するオブジェクト表示制御部と、自車位置から案内点に至る経路の画像上に前記案内オブジェクトを重畳して表示する表示部と、車両の前方を撮像した実写画像を取得する実写画像取得部とを備え、前記自車位置から案内点に至る経路の画像は前記実写画像取得部が取得した実写画像であり、自車位置と案内点の途中地点が案内点に対してどれくらいの距離に位置しているかという情報を前記オブジェクト表示制御部が設定する表示態様にて表示するものである。なお、案内点とは案内対象交差点(自車が右折、左折など進路変更を行う交差点)や目的地、経由地など、ナビゲーション装置が案内の対象とする地点を指すものである。オブジェクト表示制御部は、実写画像上に案内オブジェクトを重畳することにより、前方の実風景をそのまま映し出した実写画像上において、案内点までの距離感を感覚的に把握することができ、フロントガラス越しに見える実風景において案内点までの距離を把握することが容易となる。
【0010】
また、本発明のナビゲーション装置は、地図情報を格納する地図データベースと、自車位置と案内点との距離が所定の距離より大きい場合には実写画像に替えて地図データベースに格納した地図を表示させる案内モード切替部とをさらに備えることができる。
【0011】
実写画像上に重畳する案内オブジェクトは、透過処理を施し実写画像が透けて見えるようにする。これにより、前方の風景(前方を走る車両等)がオブジェクトに隠蔽されて見えないという状況を回避することができる。
【0012】
一例として、オブジェクト表示制御部は、案内オブジェクト上の点から案内点までの算出した距離に基づき案内オブジェクトの表示色を設定する。これにより、案内点に至るまでの途中地点が案内点に対してどれくらいの距離に位置しているかという情報も合わせて表示されるため、ドライバーは距離感を把握するための目安を得ることができ、案内点までの距離感を感覚的に、しかも瞬時に把握することが可能となる。これにより、ドライバーは常時画面を注視する必要がなくなるため、安全に運転を行うことが可能となる。さらに、案内オブジェクト上の点から案内点までの算出した距離に基づき案内オブジェクトの表示色が変化するため、表示色と距離の関係をはっきりと把握していない場合においても、感覚的に案内点までの距離を把握することが可能となる。
【0013】
好ましくは、オブジェクト表示制御部は、案内オブジェクト上の点から案内点までの算出した距離に基づき案内オブジェクトの表示色がグラデーション状に変化するように設定する。これにより、表示色が案内点までの距離に応じて連続的に変化し、さらに、交差点に近いところほど表示色が案内点に対応付けられた色に徐々に近づいていくような表示となるため、案内点までの距離感をより感覚的に把握することが可能となる。
【0014】
また、案内オブジェクト上の点から案内点までの算出した距離に基づき所定の区間ごとに表示色を変化させる場合(例えば、案内対象交差点〜交差点手前100mの区間を赤色、交差点手前100m〜200mの区間を青色となるように表示)においては、交差点近傍(この場合は交差点手前100m以内)では矢印全体が同一の表示色となるが、表示色をグラデーション状に変化するように設定することにより、矢印の表示色が案内オブジェクト上の点から案内点までの算出した距離に基づき変化するような表示を行うことが可能
となり、ドライバーは常に案内点までの距離感を把握することができる。
【0015】
また、オブジェクト表示制御部は、案内オブジェクト上の点から案内点までの算出した距離に基づき案内オブジェクト上の模様を設定するようにしてもかまわない。好ましくは、案内点までの距離が近いところほど案内オブジェクト上の模様の密度が高くなるように設定する。これにより、自車位置近傍の案内オブジェクト上の模様の密度が案内点に近づくにつれ徐々に高くなる効果が得られるので、ドライバーは案内点までの距離感を感覚的に把握することができる。
【0016】
また、オブジェクト表示制御部は、案内オブジェクト上の点から案内点までの算出した距離に基づき案内オブジェクト上の形状を設定するようにしてもかまわない。好ましくは、オブジェクト表示制御部は複数の案内オブジェクトを表示し、案内点までの距離が近いところほど案内オブジェクトのサイズが小さくなるように設定する。これにより、自車位置近傍の案内オブジェクトのサイズが案内点に近づくにつれ徐々に小さくなる効果が得られるので、ドライバーは案内点までの距離感を感覚的に把握することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明のナビゲーション装置によれば、上記説明した課題を解決するための手段からも明らかなように、案内点までの距離感を感覚的に、しかも瞬時に把握できるような表示を行える。これにより、ドライバーは常時画面を注視する必要がなくなるため、安全に運転を行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明にかかるナビゲーション装置の構成を示す図
【図2】本発明にかかるナビゲーション装置の動作を示すフローチャート
【図3】実写表示モードの動作を示すフローチャート
【図4】3次元地図空間におけるカメラ視野空間の設定方法を示した図
【図5】道路検出処理によって検出される道路部を示した図
【図6】3次元地図空間における案内オブジェクトの配置位置を示した図
【図7】距離設定処理における距離の設定方法を示した図
【図8】案内対象交差点までの距離に応じてグラデーション状に表示色を変化させる場合の3次元地図空間における案内オブジェクトを示した(基準となる色が赤と青の2色の場合)図である
【図9】案内対象交差点までの距離に応じてグラデーション状に表示色を変化させる場合における表示部5で表示される案内オブジェクトを示した(交差点手前300m)図である
【図10】案内対象交差点までの距離に応じてグラデーション状に表示色を変化させる場合における表示部5で表示される案内オブジェクトを示した(交差点手前150m)図である
【図11】案内対象交差点までの距離に応じてグラデーション状に表示色を変化させる場合における表示部5で表示される案内オブジェクトを示した(基準となる色が赤、黄、青の3色の場合)図である
【図12】案内対象交差点までの距離に応じて所定の区間ごとに表示色を変化させる場合における表示部5で表示される案内オブジェクトを示した図
【図13】案内対象交差点までの距離に応じて表示色の濃度を変化させる場合における案内オブジェクトを示した図
【図14】案内対象交差点までの距離に応じて案内オブジェクト上の模様を変化させる場合における表示部5で表示される案内オブジェクトを示した図
【図15】案内対象交差点までの距離に応じて案内オブジェクトの形状を変化させる場合における表示部5で表示される案内オブジェクトを示した図
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明のナビゲーション装置について図面を参照しながら説明する。なお、各図面において、本発明に関係のない構成要素は省略している。図1は、本発明に係るナビゲーション装置の概略の構成を示す構成図である。ナビゲーション装置は、測位部1、実写画像取得部2、地図DB3、入力部4、表示部5、制御部6から構成される。
【0020】
測位部1は、車両に取り付けられたGPS(Global Positioning System)、ジャイロなどに代表される測位センサであり、自車位置に関する情報を取得する。実写画像取得部2は、車両の前方を撮像するためのカメラである。撮像される画像は、静止画であっても動画であってもよい。
地図DB3は、経路案内や探索に必要な地図情報を格納する手段であり、例えばHDDやDVDにより実現される。
【0021】
入力部4は、ナビゲーション装置に対して目的地に関する情報を入力するための手段であり、リモコンやタッチパネル、音声入力用のマイクなどにより構成される。
表示部5は、地図画像や実写画像を表示させる、例えば、液晶ディスプレイである。
【0022】
制御部6は、例えばCPUであり、経路探索部7、案内モード切替部8、オブジェクト表示制御部9から構成される。経路探索部7は、入力部4により入力された目的地に関する情報、測位部1により取得した自車位置情報、および、地図DB3を参照して、目的地に至る経路を探索する。案内モード切替部8は、測位部1により取得した自車位置情報と、経路探索部7により探索された案内経路を参照して、自車が次に通過する案内対象交差点までの距離を算出し、案内対象交差点までの距離が所定の距離(モード切替距離)より大きい場合には地図画像を表示し(地図表示モード)、案内対象交差点までの距離が所定の距離以下の場合には実写画像を表示する(実写表示モード)。
【0023】
オブジェクト表示制御部9は、実写表示モードにおいて、実写画像上の道路の位置に案内経路であることを示す案内オブジェクトを重畳させる。これにより、ドライバーは案内対象交差点に接近したときには、前方の実風景をそのまま映し出した実写画像を見て曲がるべき交差点を把握することが可能となる。さらに、オブジェクト表示制御部9は、自車位置と案内対象交差点の間の経路上の任意の位置から案内対象交差点までの距離を算出し、その距離に応じて案内オブジェクトの表示色を設定する。オブジェクト表示制御部9の詳細な動作については後述する。
【0024】
次に本発明に係るナビゲーション装置の動作について図面を参照し説明する。図2は、本発明に係るナビゲーション装置の動作を示すフローチャートである。まず、入力部4により、ナビゲーション装置に対して目的地が設定されると(S1でYES)、経路探索部7では、測位部1により取得した自車位置情報をもとに目的地に至る経路の探索がなされる(S2)。案内モード切替部8では、自車がまだ目的地に到達していないことを確認すると(S3でNO)、自車位置から目的地に至る経路中に案内対象交差点が存在するかどうかを検索する(S4)。自車位置から目的地に至る経路中に案内対象交差点が存在しない場合(S4でNO)には、地図上の案内経路上に案内オブジェクトを重畳する地図表示モードで案内が行われる(S7)。一方、自車位置から目的地に至る経路中に案内対象交差点が存在する場合(S4でYES)には、自車位置と自車が次に通過する案内対象交差点までの距離を算出する(S5)。なお、以降では自車位置と案内対象交差点までの距離は定期的に算出されるものとする。
【0025】
次に、案内モード切替部8は、自車位置と案内対象交差点までの距離が案内モード切替距離(例えば、案内対象交差点まで300mの距離)と比べて大きいか小さいかを判定す
る(S6)。案内対象交差点までの距離が案内モード切替距離より大きい場合(S6でNO)には、地図表示モードで案内が行われる(S7)。一方、案内対象交差点までの距離が案内モード切替距離以下となった場合(S6でYES)には、実写画像取得部2により取得した実写画像を表示し実写画像上に案内オブジェクトを重畳する実写表示モードに案内を切り替える(S8)。実写表示モードにおける案内方法の詳細については後述する。案内モード切替部8は、自車が案内対象交差点を通過したことを判断すると(S9でYES)、再度どのモードで案内するかを判定し(S4〜S6)、自車位置から目的地に至る経路上に案内対象交差点が存在しない場合、および、自車位置と案内対象交差点までの距離が案内モード切替距離よりも大きい場合には、地図表示モードに案内を切り替える。一方、自車位置と案内対象交差点までの距離が案内モード切替距離以下である場合には、実写表示モードを継続する。経路案内は目的地に到着するまで(S3でYES)行われる。
【0026】
次に、実写表示モードにおける動作について図3に示すフローチャートを用いて説明する。まず、オブジェクト表示制御部9は、地図DB3に格納されている3次元地図と、実写画像取得部2の撮像方向と撮像範囲を定めるパラメータであるカメラ位置とカメラ角(水平角、仰角)と焦点距離と画像サイズを基に、3次元地図空間におけるカメラの視野空間を求める(S11)。ここで、3次元地図とは、緯度、経度、および、高さにより位置情報が表される地図のことである。カメラの視野空間は例えば図4に示すような方法で行う。3次元地図空間において、カメラ位置(視点)Eからカメラ角方向に焦点距離fだけ進んだ点(点F)を求め、そこに画像サイズに相当する横x縦yの平面(カメラ画面)を視点Eと点Fを結んだベクトルに垂直になるように設定する。次に、視点Eからカメラ画面の4隅の点とを結ぶ半直線がつくる3次元空間を求める。この3次元空間は理論上無限遠まで延びるが、視点Eから適当な距離だけ離れたところで打ち切り、それを視野空間とする。なお、3次元地図の代わりに、3次元地図から高さ情報を除いた2次元地図を用い、2次元地図空間におけるカメラの視野空間を求めるようにしてもかまわない。また、撮像方向と撮像範囲を定めるパラメータは上記のものに限らず、撮像方向と撮像範囲が定まるものであれば、画角等の他のパラメータを用いてそこから換算するようにしてもかまわない。
【0027】
次に、オブジェクト表示制御部9は、3次元地図空間内において、カメラの視野空間内に存在する道路とその位置を検出する道路検出処理を行う(S12)。道路検出処理では、3次元地図空間において、カメラの視野空間と道路領域の重なりを求める。図5に道路検出処理で検出される道路を示す。なお、図5は3次元地図空間とカメラ視野空間を上方向から見た図である。図5に示すように、視野空間に囲まれた道路(斜線で囲まれた部分)が道路検出処理によって検出される。
【0028】
次に、オブジェクト表示制御部9は、3次元地図空間において、道路検出処理により検出された道路のうち、経路探索部7により探索された案内経路に該当する道路上の位置に案内オブジェクトを配置する(S13)。図6に案内オブジェクトの配置位置を示す。なお、案内オブジェクトの形状は図6に示した矢印図形に限らず、例えば、矢印図形から先端の三角形を除いた折れ線図形を用いてもかまわない。
【0029】
次に、オブジェクト表示制御部9は、案内オブジェクト上の各点に案内対象交差点までの距離を対応付ける(距離設定処理・S14)。具体的には、図7に示すように案内対象交差点を原点として、経路に沿ってそれぞれの位置における案内対象交差点までの距離を算出する。図7は、交差点手前300mにおける案内オブジェクトを示したものであり、自車位置から案内対象交差点までの各点において、案内対象交差点までの距離が0〜300mの範囲で割り付けられる。なお、案内対象交差点の位置(原点)は、図7に示した場所に限らず、例えば矢印図形の曲折部の中心などの場所にあってもよい。また、案内オブジェクト上の点と案内対象交差点との距離を対応付けるのは、案内オブジェクトの表示様
態を決定するのに最低限必要な分だけ行えばよい。
【0030】
次に、オブジェクト表示制御部9は、距離設定処理の結果を基に、案内対象交差点までの距離に応じて案内オブジェクトに色を配色する(配色処理・S15)。配色処理は、例えば図8に示すように、案内対象交差点(交差点までの距離0m)に対応する位置においては赤色を配色し、自車位置(交差点までの距離300m)に対応する位置においては青色を配色し、その間を案内対象交差点までの距離に応じてグラデーション状に徐々に色を変化させる。これより、自車位置から案内対象交差点にかけて青色から赤色に徐々に色が変化していき、例えば図8に示すように、自車位置と案内対象交差点の中間位置(交差点まで150m地点)付近においては、赤色と青色の中間色である紫色が配色される。なお、案内オブジェクトのうち、案内対象交差点を曲がった後の道路に対応する部分(図8の範囲Aで示した部分)の色は、原点と同じ赤色を配色しても良いし、左右どちらに曲がるかによって色を変えて表示するようにしてもかまわない。
【0031】
次に、オブジェクト表示制御部9は、図4に示すカメラ画面を投影面として案内オブジェクトに対して投影変換を行う(投影処理・S16)。そして、表示部5は、実写画像取得部2で取得した実写画像上に、投影処理された案内オブジェクトを重畳し表示画面上に表示する(S17)。投影処理において案内オブジェクトが投影される投影面は、実写画像取得部2のカメラ画面と一致するため、案内オブジェクトは実写画像上に写っている道路(案内経路に該当)上に重畳される。なお、実写画像に案内オブジェクトを重畳する際に、白線検知、道路端検知等の周知の画像認識技術を用いてカメラに写っている道路の位置を検出し、案内オブジェクトの重畳位置を補正するようにしてもかまわない。実写画像モードは、実写画像表示モード終了条件(自車位置から目的地に至る経路上に案内対象交差点が存在しない、または、自車位置と案内対象交差点までの距離が案内モード切替距離よりも大きい)を満足する(S18でYES)まで継続される。
【0032】
次に、図9に交差点300m手前において表示部5で表示される表示画面の一例を示す。図9に示されている案内オブジェクトは図8で示した案内オブジェクトを実写画像上に投影したものである。図9に示すように、案内オブジェクトは、案内対象交差点付近では赤色で描画され、自車位置付近では青色に描画される。そして、自車位置と案内対象交差点の間の区間は、案内対象交差点に近いところほど赤色に近づくように、青色から赤色へグラデーション状に描画される。
【0033】
図10は、図9の状態からさらに150mほど走り、交差点手前150mの位置に到達したときの表示画面である。案内オブジェクトの色は交差点までの距離によって決まるため、図10に示すように、案内対象交差点付近では図9と同様に赤色で描画されるが、自車位置付近では交差点手前150mであることを示す紫色で描画される。そして、自車位置と案内対象交差点の間の区間は、案内対象交差点に近いところほど赤色に近づくように、紫色から赤色へグラデーション状に描画される。すなわち、交差点手前150mにおいては、図8で示した案内オブジェクトのうち範囲Bで示した部分のみが描画される。
【0034】
以上のように、経路上の任意の位置から案内対象交差点までの距離に応じて案内オブジェクトの表示色を設定することにより、案内対象交差点に至るまでの途中地点が案内対象交差点に対してどれくらいの距離に位置しているかという情報も合わせて表示されるため、ドライバーは距離感を把握するための目安を得ることができ、案内対象交差点までの距離感を感覚的に、しかも瞬時に把握することが可能となる。特に、この例のように、案内対象交差点までの距離に応じて案内オブジェクトの表示色がグラデーション状に変化するように設定される場合においては、表示色が案内点までの距離に応じて連続的に変化し、さらに、交差点に近いところほど表示色が案内点に対応付けられた色に徐々に近づいていくような表示となるため、その効果が顕著となる。
【0035】
また、実写画像上の道路(案内経路に該当)の位置に案内オブジェクトを重畳することにより、前方の実風景をそのまま映し出した実写画像上において、案内対象交差点までの距離感を感覚的に把握することができ、フロントガラス越しに見える実風景において案内対象交差点までの距離を把握することが容易となる。この場合、表示部5で表示される画像は、自車が道路上に引かれた案内オブジェクト上を走行していくような表示となる。上述の例で言えば、交差点手前300mの地点では、自車の前には案内オブジェクトの青色で描画された部分があり、赤色で描画されている部分は遠くに見える。そして、案内対象交差点に近づくにつれ、自車が案内オブジェクト上を走行するかのように表示が変更されていく。上述の例で言えば、案内対象交差点が近づくにつれ自車付近の案内オブジェクトの色は赤色に近づいていき、さらに赤色で描画されている部分が徐々に接近してくる。このような表示がなされることにより、交差点までの遠近感を直感的に把握しやすくなり、また、どの位置を走っていても案内対象交差点までの距離を瞬時に把握することが可能となる。
【0036】
なお、好ましくは、実写画像上に重畳する案内オブジェクトは、透過処理を施し背景が透けて見えるようにする。これにより、前方の風景(前方を走る車両等)が案内オブジェクトに隠蔽されて見えないという状況を回避することができる。
【0037】
なお、上述の例では、配色処理において、基準となる色として赤色(案内対象交差点)と青色(自車位置)の2色のみを用い、その間は中間的な色によって補間するとしたが、基準として使用する色は2色に限らない。例えば、図11に示すように、赤色、黄色、青色の3色を基準として用いて、交差点に近づくにつれ、自車位置付近の色が青色→黄色→赤色に徐々に変化するようにしてもかまわない。
【0038】
また、配色処理において設定する色はグラデーション状の表示でなくてもかまわない。例えば、図12に示すように、案内対象交差点〜交差点手前100mの区間を赤色、交差点手前100m〜200mの区間を黄色、交差点手前200m〜300mの区間を青色となるように表示してもかまわない。
【0039】
また、上述の例のように色相を変化させる場合のほか、色の明度、彩度、濃度、コントラスト等のパラメータを変化させるようにしてもかまわない。図13は、色の濃度を変化させた場合の表示画面である。図13に示すように、交差点が近づくにつれ、徐々に色の濃い領域が近づいてくるような効果が得られる。
【0040】
また、色のほかに、案内オブジェクトの模様を変化させるようにしてもよい。図14に、案内対象交差点までの距離に応じて案内オブジェクトの模様を変化させる場合の表示画面を示す。図14に示すように、交差点に近い位置ほど案内オブジェクト内部の模様(横線)の間隔が狭くなるように設定することにより、自車位置近傍のオブジェクト上の模様の密度が案内点に近づくにつれ徐々に高くなる効果が得られるので、ドライバーは案内点までの距離感を感覚的に認識することができる。
【0041】
また、案内オブジェクトの形状を変化させるようにしてもよい。図15に示すように、案内表示が複数の案内オブジェクトから構成されている場合に、交差点に近い位置にあるオブジェクトほどサイズが小さくするようにすれば、図14の場合と同様にドライバーは交差点までの距離感を感覚的に認識できる。なお、案内オブジェクトの模様や形状は、交差点までの距離に応じて変化するものであれば、上述の例に限らずどのようなものであってもかまわない。また、上述したように案内オブジェクトの表示色、模様、形状をそれぞれ単独で変化させる場合に限らず、これらを組み合わせた表示を行ってもかまわない。
【0042】
なお、上述の例では案内点は案内対象交差点であるとして説明を行ったが、これに限らず、目的地や経由地であってもかまわない。この場合、例えば目的地300mのところに達したときに、上述の案内対象交差点の場合と同様に実写表示モードに案内を切り替え、案内オブジェクトの色や形状、模様を目的地までの距離に応じて変化させることにより、目的地までの距離をドライバーに感覚的に分かりやすく表示する。
【0043】
また、実写表示モードで表示する実写画像は、前方を撮像したカメラにより取得するとしたが、HDDに保存、もしくは、通信により取得した交差点映像であってもかまわない。また、上述の例では、実写表示画面に案内オブジェクトを重畳して案内を行う場合について説明を行ったが、地図表示画面の案内経路上に案内オブジェクトを重畳する場合に本発明を適用し、案内オブジェクトの色や形状、模様を案内点までの距離に応じて変化させるようにしてもかまわない。この場合においても、ドライバーは距離感を把握するための目安を得ることができるため、案内点までの距離感を感覚的に、しかも瞬時に把握することが可能となる。特に、ドライバーが実際に見るであろうリアルな風景を再現したドライバー視点地図表示での案内に本発明を適用した場合においては、その効果が顕著となる。また、実写画像と地図画像を2画面表示して、それぞれの画像において本発明を適用するようにしてもかまわない。なお、上述の例では、カメラは自動車に取り付けられているとしたが、これに限らず、携帯電話等の移動体に取り付けられていてもよい。
【0044】
以上、本発明を詳細に説明してきたが、前述の説明はあらゆる点において本発明の例示にすぎず、その範囲を限定しようとするものではない。本発明の範囲を逸脱することなく種々の改良や変形ができることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明のナビゲーション装置は、案内点までの距離感を感覚的に、しかも瞬時に把握できるような表示を行えるという効果を有し、車両内に設置されるカーナビゲーション装置や、携帯電話などの移動体におけるナビゲーション装置等としても利用できる。
【符号の説明】
【0046】
1 測位部
2 実写画像取得部
3 地図DB
4 入力部
5 表示部
6 制御部
7 経路探索部
8 案内モード切替部
9 オブジェクト表示制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
案内経路であることを示す案内オブジェクト上の点から案内点までの距離を算出し、この算出した距離に基づき前記案内オブジェクト上の点の表示態様を設定するオブジェクト表示制御部と、
自車位置から案内点に至る経路の画像上に前記案内オブジェクトを重畳して表示する表示部と、
車両の前方を撮像した実写画像を取得する実写画像取得部とを備え、
前記自車位置から案内点に至る経路の画像は前記実写画像取得部が取得した実写画像であり、
自車位置と案内点の途中地点が案内点に対してどれくらいの距離に位置しているかという情報を前記オブジェクト表示制御部が設定する表示態様にて表示することを特徴とするナビゲーション装置。
【請求項2】
地図情報を格納する地図データベースと、
前記自車位置と前記案内点との距離が所定の距離より大きい場合には前記実写画像に替えて前記地図データベースに格納した地図を表示させる案内モード切替部とをさらに備えたことを特徴とする請求項1に記載のナビゲーション装置。
【請求項3】
前記オブジェクト表示制御部は、前記案内オブジェクトを前記実写画像が透けて見えるように表示することを特徴とする請求項1に記載のナビゲーション装置。
【請求項4】
前記オブジェクト表示制御部は、前記算出した距離に基づき前記案内オブジェクトの表示色を設定することを特徴とする請求項1に記載のナビゲーション装置。
【請求項5】
前記オブジェクト表示制御部は、前記算出した距離に基づき前記案内オブジェクトの表示色がグラデーション状に変化するように設定することを特徴とする請求項4に記載のナビゲーション装置。
【請求項6】
前記オブジェクト表示制御部は、前記算出した距離に基づき前記案内オブジェクト上の模様を設定することを特徴とする請求項1に記載のナビゲーション装置。
【請求項7】
前記オブジェクト表示制御部は、前記算出した距離が近いところほど前記案内オブジェクト上の模様の密度が高くなるように設定することを特徴とする請求項6に記載のナビゲーション装置。
【請求項8】
前記オブジェクト表示制御部は、前記算出した距離に基づき前記案内オブジェクトの形状を設定することを特徴とする請求項1に記載のナビゲーション装置。
【請求項9】
前記オブジェクト表示制御部は、複数の案内オブジェクトを表示するものであり、案内点までの距離が近いところほど前記案内オブジェクトのサイズが小さくなるように設定することを特徴とする請求項8に記載のナビゲーション装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2011−185951(P2011−185951A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−135020(P2011−135020)
【出願日】平成23年6月17日(2011.6.17)
【分割の表示】特願2005−310771(P2005−310771)の分割
【原出願日】平成17年10月26日(2005.10.26)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】