説明

ナビゲーション装置

【課題】道路傾斜による影響を排除し取付角度を正確に求めることができるナビゲーション装置を提供することを目的とする。
【解決手段】車両に取付をした取付台に任意の角度で設置することができるナビゲーション装置1であって、互いに直交する3つの軸の各方向の加速度を検出する3軸加速度センサ4と、ナビゲーション装置1の取付角度を算出する制御部2とを備え、制御部2は、3軸加速度センサ4が車両走行中に検出した加速度の2つの軸についてそれぞれの方向の加速度である第1および第2加速度を取得し、この第1および第2加速度の絶対値の比率および加速度の極性により取付角度を算出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に取付をした取付台に任意の角度で設置することができ、3軸加速度センサを備えたナビゲーション装置に関する。
【背景技術】
【0002】
現在使用されているナビゲーション装置の多くは加速度センサおよびジャイロセンサを備える。
【0003】
加速度センサおよびジャイロセンサは、ナビゲーション装置の取付角度の大きさに応じてその出力感度が低下する。なぜならば、これらのセンサは、センサの検出軸方向に沿った物理量しか検知できないためである。つまり、センサの検出軸が、本来検出したい方向からずれていれば、その分検出されるはずの物理量が出力されなくなり、感度低下を招くことになる。
【0004】
これらの取付角度による出力感度の低下を補正しない場合、車両の位置や方位を正しく算出することができなくなってしまう。そこで、従来のナビゲーション装置は、取付角度を算出してこの角度に基づいてジャイロセンサまたは加速度センサの出力を補正している。
【0005】
一方、据え置き型のナビゲーション装置に替わり、近年、PND(Portable Navigation Device)と呼ばれるが携帯型ナビゲーション装置が車両に設置されつつある。この携帯型ナビゲーション装置は、据え置き型のナビゲーション装置と異なり、吸盤などにより車両のダッシュボード上に取付られた取付台を介して車両に設置されるものである。携帯型ナビゲーション装置はこの取付台から取り外して車両外でも使用可能(携帯可能)であるナビゲーション装置である。
【0006】
携帯型ナビゲーション装置は携帯可能であるため、頻繁に取外しと設置が繰り返される。ナビゲーション装置の取付台への設置は利用者によって行われるため、その取付角度は毎回異なり一意に定まらない。
【0007】
そこで、従来の取付角度を算出するナビゲーション装置としては、加速度センサが出力する前後方向を検知軸とする加速度の絶対値およびその極性からその取付角度を算出するものがある。
【0008】
取付角度に応じて、加速度センサの前後方向検知軸に出力される加速度の絶対値が変化するため、出力された加速度の絶対値から取付角度を算出することが可能である。
【0009】
なお、この出願の発明に関する先行技術文献としては、例えば、特許文献1が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2009−14732号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、取付角度を算出するナビゲーション装置は、加速度センサが検出する前
後方向を検知軸とする加速度の絶対値から取付角度を算出している。この算出は車両が水平な道路にある場合を前提としている。例えば、車両が傾斜のある道路上にある場合に、このような従来の取付角度の算出を行うと、道路の傾斜の角度だけ誤って取付角度を算出してしまう。
【0012】
以上のように、従来のナビゲーション装置は、道路に傾斜が存在する場合に道路の傾斜角が誤差として含まれ正しく取付角度の算出ができないという問題があった。
【0013】
本発明は、従来の問題を解決するためになされたもので、道路傾斜による影響を排除し取付角度を正確に求めることができるナビゲーション装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するために本発明のナビゲーション装置は、3軸加速度センサが車両走行中に検出した加速度の2つの軸についてそれぞれの方向の加速度である第1および第2加速度を取得し、この第1および第2加速度の絶対値の比率および加速度の極性により取付角度を算出するものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明のナビゲーション装置は、第1および第2加速度の絶対値の比率および加速度の極性により取付角度を算出する。第1および第2加速度の比率は道路の傾斜の角度に依存せず一定であるため、車両が傾斜のある道路上にある場合でもナビゲーション装置の取付角度を正確に求めることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施の形態におけるナビゲーション装置のブロック図
【図2】同装置の車室内への設置を説明するための図
【図3】同装置の車両発進時における加速度について説明するための図
【図4】同装置の動作を説明するためのフロー図
【図5】同装置の動作を説明するためのフロー図
【図6】同装置の動作を説明するためのフロー図
【図7】同装置の動作を説明するためのフロー図
【図8】同装置の動作を説明するためのフロー図
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の一実施の形態におけるナビゲーション装置について図1〜図3を参照しながら説明する。図1は本発明の一実施の形態におけるナビゲーション装置のブロック図である。また、図2は本発明の一実施の形態におけるナビゲーション装置の車室内への設置を説明するための図であり、図3は車両発進時における加速度について説明するための図である。
【0018】
図1に示すナビゲーション装置1は、制御部2、ジャイロセンサ3、3軸加速度センサ4、GPS受信機5、記憶部6、スピーカ7、および、表示部8を備える。
【0019】
制御部2は、ジャイロセンサ3、3軸加速度センサ4、およびGPS受信機5の出力に基づきナビゲーション装置1の現在位置を算出し、この算出した現在地周辺の地図情報を記憶部6から読み出す。続いて、制御部2は、この現在地周辺の地図情報に現在地を示すマークを重畳して表示部8に表示する。ナビゲーション装置1の利用者が目的地を設定している場合は、現在位置から目的地までの経路も地図情報に重畳する。また、制御部2は必要に応じてスピーカ7から音声にて目的地までの経路を案内する。
【0020】
ナビゲーション装置1は、図2および図3に示すように車両と取付台9を介して設置される。取付台9は吸盤などにより車両のダッシュボード上に取付られる。ナビゲーション装置1は、取付台9のホルダに固定される。
【0021】
最初に本発明の一実施の形態におけるナビゲーション装置について説明する際に用いる位置関係を説明する。図2のX軸は、車両が直進する方向を正方向とする軸である。このX軸を前後方向軸と呼ぶ。また、X軸の正方向を車両前方向と呼び、X軸の負方向を車両後方向と呼ぶ。
【0022】
また、図2のY軸は、X軸と垂直であって、正方向を車両を正面から見て左へ向かう方向を正方向とする軸である。このY軸を左右方向軸と呼ぶ。また、Y軸の正方向を車両左方向と呼び、Y軸の負方向を車両右方向と呼ぶ。
【0023】
また、図2のZ軸は、X軸と垂直であって、かつ、車両を正面から見て上へ向かう方向を正方向とする軸である。このZ軸を鉛直方向軸と呼ぶ。また、Z軸の正方向を車両上方向と呼び、Z軸の負方向を車両下方向と呼ぶ。
【0024】
前後方向軸、左右方向軸、および、鉛直方向軸はいずれも、地表面や車両の設置面を基準としたものではなく車両を基準とした軸である。
【0025】
次にナビゲーション装置1からみた各軸について説明する。以下説明するX’軸、Y’軸、およびZ’軸はそれぞれ3軸加速度センサ4が加速度を検知する軸である。
【0026】
図2のX’軸は、正方向をナビゲーション装置1の背面から表示部8へ向かう方向とする軸である。このX’軸を「前後方向検知軸」と呼ぶ。また、X’軸の正方向を「前検知方向」と呼び、X’軸の負方向を「後検知方向」と呼ぶ。
【0027】
また、図2のY’軸は、X’軸と垂直であって、かつ、正方向をナビゲーション装置1の表示部8を正面から見て左へ向かう方向を正方向とする軸である。このY’軸を「左右方向検知軸」と呼ぶ。また、Y’軸の正方向を「左検知方向」と呼び、Y’軸の負方向を「右検知方向」と呼ぶ。
【0028】
また、図2のZ’軸は、X’軸と垂直であって、かつ、正方向をナビゲーション装置1の表示部8を正面から見て上へ向かう方向を正方向とする軸である。このZ’軸を「上下方向検知軸」と呼ぶ。また、Z’軸の正方向を「上検知方向」と呼び、Z’軸の負方向を「下検知方向」と呼ぶ。
【0029】
図2の「ピッチ取付角度θ」は、前後方向軸に対する加速度センサの前後方向検知軸の差であり、ナビゲーション装置1のピッチ方向の取付角度である。同様に、車両左右方向軸と加速度センサの左右方向検知軸との角度の差をヨー取付角度φと、車両鉛直方向軸と加速度センサの鉛直方向検知軸との角度の差をロール取付角度ψと呼ぶ。
【0030】
図3は車両発進時における加速度出力の概略図である。道路の傾斜角度がαの所で車両が発進した際の3軸加速度センサ4の出力を表している。
【0031】
車両発進時の進行方向の加速度をAccxとすれば、3軸加速度センサ4の各軸に、取付角度に応じた加速度が出力される。前後方向検知軸に出力される加速度をΔAxと、左右方向検知軸に出力される加速度をΔAyと、鉛直方向検知軸に出力される加速度をΔAzと呼ぶ。
【0032】
なお、加速度の「絶対値」とは、ΔAx、ΔAy、ΔAzのそれぞれの出力における、ΔAxの出力量の大きさ、ΔAyの出力量の大きさ、ΔAzの出力量の大きさを指す。
【0033】
また、加速度の「極性」とは、ΔAx、ΔAy、ΔAzのそれぞれの出力におけるプラスおよびマイナスの符号のことであり、前後方向検知軸、左右方向検知軸、鉛直方向検知軸に対する出力の方向で定義される。
【0034】
制御部2は、ナビゲーション装置1の各部を制御するものである。制御部2は、図示しないCPU或いはMPUと、ROM(Read Only Memory)と、RAM(Random Access Memory)等とから構成されている。
【0035】
CPU或いはMPUが、図示しないROMに格納されるプログラムを実行することによって、図1に示される各機能ブロックの動作が制御される。また、CPU及びMPUは、プログラムの実行中、RAMを作業領域として使用する。
【0036】
記憶部6は、DRAM(Dynamic Random Access Memory)やSRAM(Static Random Access Memory)等の記憶装置からなり、制御部2の演算結果など、ナビゲーション装置1の演算結果が格納される。
【0037】
制御部2は、3軸加速度センサ4の出力を用いて、ナビゲーション装置1の車両に対する取付角度を算出する処理部である。この算出した取付角度情報は、3軸加速度センサ4およびジャイロセンサ3の出力の補正に用いられる。
【0038】
ジャイロセンサ3は、車両の鉛直方向軸を中心とする回転の角速度を検出するものである。この出力から自車の進行方向の相対的な方位変化量を算出することが可能である。また、車両の前後方向軸を中心とする回転(ロール回転方向)の角速度、および車両の左右方向軸を中心とする回転(ピッチ回転方向)の角速度を検出するジャイロセンサ3を併用することで、自車位置の補正などに応用することができる。
【0039】
3軸加速度センサ4は、前後方向検知軸の加速度、左右方向検知軸の加速度、鉛直方向検知軸の加速度を検知するものである。車両に対するナビゲーション装置の取付角度を算出するだけではなく、GPS(Global Positioning System)衛星からの電波が受信できない場合などにおいて、車両の加速度を算出することもできる。
【0040】
GPS受信機5は、複数のGPS衛星からの電波を受信し、それを復調することで受信機の絶対位置を計測するものである。なお、車両の現在位置、マップマッチング後の現在位置、速度、進行方向の測定は、GPS受信機5や後述の各種センサを単独で利用、または、複合して利用することができる。
【0041】
記憶部6は、道路データ、施設データ、背景データ等の地図情報を記憶するものである。
例えば、ハードディスク、または、フラッシュメモリ等の不揮発性の記憶素子である。なお、記憶部6は予め地図情報を記憶したものでなくてもよく、携帯電話等の図示しない通信手段によって、センターから地図情報をダウンロードするものであってもよい。制御部2は記憶部6から地図情報を読み出す。
【0042】
スピーカ8は、制御部2の制御により音声にてナビゲーション装置2の利用者に目的地への経路等を案内するものである。
【0043】
表示部8は、液晶ディスプレイなどの画面を備え、制御部2の制御により車両の現在位置を示すマーク、目的地までの経路などの案内情報と共に、自車位置周辺の地図画像を画面に表示するものである。また、利用者が入力が可能なタッチパネルを備えることができる。
【0044】
取付台9は、吸盤などにより車両のダッシュボード上に取付られた台であり、ナビゲーション装置1を車両に固定するためのものである。ナビゲーション装置1は、取付台9のホルダに固定される。
【0045】
ナビゲーション装置1の利用者は、ナビゲーション装置1をこのホルダから取り外して車両の外部で使用することができる。また、利用者は再度、このホルダにナビゲーション装置1を取付して車両内で使用することも可能である。
【0046】
以上のように構成されたナビゲーション装置1について、図4〜図8を用いてその処理動作を説明する。図4〜図8は本発明の一実施の形態におけるナビゲーション装置1の動作を説明する図である。
【0047】
制御部2は、車両が走行中であるか判定を行う(S1)。制御部2は、この判定にGPS受信機5、および、3軸加速度センサ4の出力を用いる。車両が走行中であるかは、GPS受信機5から得られる速度情報から判定することが可能であるが、GPSは常時測位可能ではないため、3軸加速度センサの出力から判断することが望ましい。
【0048】
ナビゲーション装置1が起動されたら、制御部2は、3軸加速度センサ4の前後方向軸に出力される加速度、もしくは3軸全ての加速度を一定時間単位で取得し続ける。
【0049】
制御部2は、取得した加速度のバラつき幅を算出し、そのバラつき幅が一定時間の間(例えば3秒)、任意のバラつき幅に収まった場合、車両が停止していると判定し、処理をS2へ進める。制御部2は、任意のバラつき幅に収まらない場合は走行中であると判定し、処理をS3へ進める。
【0050】
任意のバラつき幅は、予め適切な値を設定しておくか、GPS受信機5から得られる速度情報がほぼ0を示す時の3軸加速度センサ4の出力幅に設定することができる。停止中であると判断した場合、制御部2は、GPS受信機5および3軸加速度センサ4から算出された自車位置情報を用いて停止した位置を記憶する。
【0051】
S1でNOのとき、制御部2は、車両停止時の3軸加速度センサ4の出力を取得する。3軸加速度センサ4から得られる出力データは、車両が走行していると判断されるまで、平均化処理を行う。
【0052】
平均化処理は、前後方向検知軸の出力、左右方向検知軸の出力、鉛直方向検知軸の出力に分けてそれぞれ実行する。平均化処理は、例えば、区間平均や移動平均などである。これら車両停止時に平均化処理された3軸加速度センサ4の出力は、停止時加速度センサ出力として記憶する。この値は、S1で停止位置が変更されるまで保持し続ける。停止位置が変更された場合は、停止時加速度センサ出力を再度算出し直して値を更新する。
【0053】
なお、停止時加速度センサ出力は、道路傾斜による重力加速度成分やデバイスが固有に持つ誤差が出力された誤差成分であり、車両の加速度とは異なる出力成分である。停止時加速度センサ出力を算出することで、これらの誤差成分を加速度センサ出力から除去することが可能となる。
【0054】
S1でYESのとき、制御部2によって、走行時の加速度センサ出力を算出する(S3)。3軸加速度センサ4より、前後方向検知軸の出力、左右方向検知軸の出力、鉛直方向検知軸の出力を取得し、それぞれに対して、S2と同様に平均化処理を実行する。これら走行時に平均化処理された加速度センサ出力は、走行時加速度センサ出力として記憶する。S1で停止位置が更新された場合は、走行時加速度センサ出力値をクリアする。
【0055】
S3の次に、制御部2は、3軸加速度センサ4の各検知軸に出力される車両の加速度を算出する(S4)。制御部2の処理動作の詳細を図5を用いて説明する。
【0056】
制御部2は、停止時加速度センサ出力を参照(S41)し、続いて、走行時加速度センサ出力を参照(S42)する。続いて、制御部2は、走行時加速度センサ出力と停止時加速度センサ出力の差分を算出する(S43)。走行時加速度センサ出力の、前後方向検知軸の出力、左右方向検知軸の出力、鉛直方向検知軸の出力をAx(走行)、Ay(走行)、Az(走行)、と定義し、停止時加速度センサ出力の、前後方向検知軸の出力、左右方向検知軸の出力、鉛直方向検知軸の出力をAx(停止)、 Ay(停止),Az(停止)と定義すれば、図4のΔAx、ΔAy、ΔAz、は以下の演算で算出される。
ΔAx=Ax(走行)−Ax(停止) ・・・式(1)
ΔAy=Ay(走行)−Ay(停止) ・・・式(2)
ΔAz=Az(走行)−Az(停止) ・・・式(3)
3軸加速度センサ4はデバイスに起因する一定量の固有の誤差を持っており、この誤差を「デバイス起因オフセット誤差」と呼ぶ。なお、デバイス起因オフセット誤差は温度によって変化する。
【0057】
走行時加速度センサ出力および停止時加速度センサ出力には、どちらにも等量のデバイス起因オフセット誤差が含まれている。ただし、長時間経過すると温度の影響により、デバイス起因オフセット誤差が変動するため等量とはならない。
【0058】
また、停止時加速度センサ出力の更新間隔が短い限り、どちらの出力にも等量の重力加速度成分が含まれる。ただし、停止時加速度センサ出力の更新間隔が長くなると、道路傾斜変化の影響により、出力に含まれる重力加速度成分の大きさが等量とはならない。
【0059】
従って、両者の差分を取ることで、これらの影響を除去することが可能となり、ΔAx、ΔAy、ΔAzには車両の加速度のみが出力される。
【0060】
制御部2は、ここで得られたΔAx、ΔAy、ΔAzを電圧値から加速度単位系に変換を行う(S44)。なお、このΔAx、ΔAy、およびΔAzのうちいずれか2つの加速度が第1および第2加速度に相当する。
【0061】
S3の次に、制御部2は、現在の走行位置が、前回停止した位置から何メートル進んでいるか判定し、その結果に応じて取付角度の算出を制御する。現在の走行位置はGPS受信機5および3軸加速度センサ4の出力から算出する(S5)。
【0062】
前回停止した位置は、S1で記憶した停止位置を用いる。両者の差分をとり、走行距離が閾値メートル以内(例えば、10メートル)であれば、制御部2は処理をS6へ進める。走行距離が閾値メートル以上であればS8へ進める。
【0063】
S5でYESのとき、制御部2は、ピッチ取付角度を算出する(S6)。S6の詳細を図6のフロー図を用いて説明する。
【0064】
制御部2は、S44で算出した、加速度センサの前後方向検知軸に出力される車両加速
度ΔAxを取得する(S61)。続いて、制御部2は、S44で算出した、加速度センサの鉛直方向検知軸に出力された車両加速度ΔAzを取得する(S62)。
【0065】
これらΔAx、ΔAzは、車両の進行方向の加速度Accxに対して、次のような関係を持つ。なお、以下の式(4)および(5)は、ピッチ取付角度に対して、ヨー取付角度およびロール取付角度が小さい場合の簡略式である。厳密式は複雑な上、取付角度が複合しない限り簡略式と等価である。取付角度が複合する場合は後に説明するS11にて補正を行う。
ΔAx=Accx・cosθ・・・式(4)
ΔAz=Accx・sinθ・・・式(5)
この式(4)、式(5)をピッチ取付角度θで解くと式(6)で表される。
θ=arctan(ΔAx/ΔAz) ・・式(6)
式(6)で得られたピッチ取付角度θは、制御部2によって、オフセット起因誤差および道路傾斜の影響が取り除かれているため、精度の良い結果が得られる。
【0066】
S6の次に、制御部2は、ヨー取付角度φを算出する(S7)。S7の詳細を図7のフロー図を用いて説明する。
【0067】
制御部2は、S44で算出した加速度センサの前後方向検知軸に出力された車両加速度ΔAxを取得する(S71)。S71に続いて、制御部2は、S44で算出した加速度センサの左右方向検知軸に出力された車両加速度ΔAyを取得する。これらΔAx、ΔAyは、車両の進行方向加速度Accxに対して、次のような関係を持つ。なお、以下の式は、ヨー取付角度φに対して、ピッチ取付角度θおよびロール取付角度ψが小さい場合の簡略式である。
ΔAx=Accx・cosφ・・・式(7)
ΔAy=−Accx・sinφ・・・式(8)
この式(7)、式(8)をヨー取付角度φで解くと式(9)で表される。
φ=arctan(ΔAy/ΔAz) ・・式(9)
S5でNOのとき、または、S7の終了後、制御部2は車両にかかる遠心力加速度を算出し、この結果に応じて取付角度の算出を制御する(S8)。
【0068】
ここで、遠心力加速度は、GPS受信機5およびジャイロセンサ3の出力を使用する。遠心力加速度は、GPS受信機5から得られた速度と、ジャイロセンサ3から得られたヨー方向の角速度の積より求める。遠心力加速度が一定値以上を出力された場合、制御部2は処理をS9へ進める。遠心力加速度が一定値以内に収まる場合、制御部2は処理をS10へ進める。
【0069】
S8でYESのとき、制御部2は、ロール取付角度ψを算出する(S9)。
【0070】
ナビゲーション装置1にロール取付角度ψのみが存在する場合、ロール取付角度ψの大きさにかかわらず、3軸加速度センサ4の各軸に出力される車両の進行方向加速度Accxの比率は一定となる。従って、制御部2は、3軸加速度センサ4の各軸に出力されるAccxの比率からロール取付角度ψを算出できない。
【0071】
そこで、ロール取付角度ψの場合は、3軸加速度センサ4の各軸に出力される車両の左右方向加速度Accyの比率より算出を行う。車両の左右方向加速度Accyは、通常の走行状態ではほぼ0であるが、交差点右左折時や大きなカーブ等で遠心力が発生した場合に大きく出力される。
【0072】
車両の左右方向加速度Accyが車両の進行方向加速度Accxに比べて十分大きいと
判断される場合、3軸加速度センサ4の各軸に出力される加速度は、車両の左右方向加速度Accyによるものとみなすことができる。ロール取付角度ψと加速度センサの各軸に出力されるAccyの比率との間には依存関係が認められるので、ロール取付角度ψの算出が可能となる。
【0073】
S9の詳細について図8のフロー図を用いて説明する。制御部2は、まず、S44で算出した加速度センサの左右方向検知軸に出力された車両加速度ΔAyを取得する(S91)。続いて、制御部2は、S44で算出した加速度センサの鉛直方向検知軸に出力された車両加速度ΔAzを取得する(S92)。
【0074】
これらΔAy、ΔAzは、車両の左右方向加速度Accyに対して、次のような関係を持つ。なお、以下の式は、ロール取付角度ψに対して、ピッチ取付角度θおよびヨー取付角度φが小さい場合の簡略式である。
ΔAy=Accy・cosψ・・・式(10)
ΔAz=−Accy・sinψ・・・式(11)
この式(10)、式(11)をロール取付角度ψで解くと式(12)で表される。
ψ=arctan(ΔAz/ΔAy) ・・式(12)
S8でNOのとき、または、S9の終了後、制御部2は、ピッチ取付角度θ、ヨー取付角度φ、ロール取付角度ψのうち、いずれか2つ以上の取付角度がナビゲーション装置1に存在しているか否かを判定する(S10)。
【0075】
具体的には、制御部2は、ピッチ取付角度θ、ヨー取付角度φ、および、ロール取付角度ψのいずれか2つの角度がそれぞれについて閾値角度以上(例えば、5度)であるかを判断する。いずれか2つの角度がそれぞれについて閾値角度以上である場合を「複合している」という。
【0076】
閾値角度を越えた取付角度の数が2つ以上の場合は、制御部2は処理をS11へ進める。閾値角度を越えた取付角度の数が2つ以下の場合は、制御部2は処理をS12へ進める。
【0077】
S10でYESのとき、制御部2は、閾値角度を越えたと判断された取付角度の組合せに応じて、ピッチ取付角度θ、ヨー取付角度φ、および、ロール取付角度ψの補正を行う(S11)。
【0078】
式(4)、(5)、(7)、(8)、(10)、(11)は厳密な式ではないため、取付角度のいずれか2つ以上が大きな角度を持つ場合、算出精度が低下する。そのため、必要に応じて取付角度を補正する必要がある。
【0079】
取付角度の表現は、角度算出に使用する座標系によって異なるが、本実施の形態では、z−y−xの回転座標系を採用する。厳密な式を用いると、ヨー取付角度φ、ピッチ取付角度θ、ロール取付角度ψと、ΔAx、ΔAy、ΔAzの間には以下の関係式が成り立つ。遠心力加速度が発生している場合は、これに車両の左右方向加速度Accyが加わり、更に複雑な式となるが、ここではAccy=0とする以下の式を厳密式とする。
ΔAx=Accx(cosφ・cosθ)・・・式(13)
ΔAy=Accx(cosφ・sinθ・sinψ−sinφ・cosψ)・・・式(14)
ΔAz=Accx(cosφ・sinθ・cosψ+sinφ・sinψ)・・・式(15)
制御部2は、式(13)、式(14)、式(15)の関係を利用して取付角を補正する。補正の対象となる取付角度は、ヨー取付角度φ、ピッチ取付角度θ、ロール取付角度ψのうち
、取付角が閾値角以上となるものの組合せによって決定する。
【0080】
例えば、ロール取付角度ψが0で、ヨー取付角度φ、ピッチ取付角度θが閾値角以上の場合は、ヨー取付角度φのみが補正の対象となる。ピッチ取付角度θが補正の対象とならない理由は、ロール取付角度ψが0の場合、簡略式と厳密式のどちらを用いても算出結果が同じとなるためである。
【0081】
上記の場合、厳密式を用いてヨー取付角度φの補正を行うと、その補正式は式(16)のように表される。この式は、ロール取付角度ψを0とした上で、式(13)、式(14)をヨー取付角度φで解くと式(16)で表される。
φ=−arctan(ΔAy/ΔAx・cosθ) ・・式(16)
簡略式によるヨー取付角度の算出式(9)と比べて、cosθに依存する点が異なる。ピッチ取付角度θが小さい場合は影響が小さいが、θが大きい場合は、厳密式を用いることで正しい取付角度に補正される。
【0082】
制御部2は、閾値角以上となる取付角度の組合せが上記の例と異なる場合も、同様な考え方で取付角度の補正を実行する。
【0083】
S11の次に、制御部2は、S11で補正されたヨー取付角度φ、ピッチ取付角度θ、ロール取付角度ψを記憶部6に記憶する(S12)。
【0084】
ヨー取付角度φ、ピッチ取付角度θ、および、ロール取付角度ψが新たに算出された場合は、記憶部6に格納された取付角度を用いて平均化処理を施し、記憶部6の取付角情報を更新する。
【0085】
記憶部6に格納された取付角度は、3軸加速度センサ4、および、ジャイロセンサ3の少なくとも1つの感度補正に使用される。また、他軸の感度誤差の補正に利用することもできる。ここで、他軸の感度誤差とは、3軸加速度センサ4の出力に含まれる、本来検知したい方向の加速度と異なる方向の加速度成分である。例えば、3軸加速度センサ4の前後方向検知軸に、車両左右方向の加速度が出力される場合等である。
【0086】
以上のように本発明の一実施の形態におけるナビゲーション装置は、2つの軸における加速度の絶対値の比率および加速度の極性により取付角度を算出する。2つの軸における加速度の比率は道路の傾斜の角度に依存せず一定であるため、車両が傾斜のある道路上にある場合でもナビゲーション装置1の取付角度を正確に求めることができるという効果を奏する。
【0087】
なお、本実施の形態において、取付角度を算出に用いる2つ軸の加速度として、車両が停止している状態から走行を開始した際の加速度を用いることは、とりわけ以下のような効果がある。
【0088】
長時間走行すると3軸加速度センサ4の出力は温度の影響によりオフセットが発生するため、取付角度を算出に用いる2つ軸の加速度に誤差があらわれる。しかし、車両が停止している状態から走行を開始した際の加速度を用いることでこの誤差の影響を除外できるという効果を奏する。なぜならば、発進直前と発進直後で時間的な差異がないため、温度に起因するオフセット誤差の変動による影響を無視できるからである。
【0089】
また、走行中に道路傾斜αが変化する場合、取付角度を算出に用いる2つ軸の加速度による誤差があらわれるが、取付角の算出を発進直後に限定することで、道路傾斜の変化の影響も除外することができるという効果を奏する。なぜならば、車両の停止時と発進時の
道路傾斜角度は同じであるためである。
【産業上の利用可能性】
【0090】
本発明は、車両に取付をした取付台に任意の角度で設置することができ、3軸加速度センサを備えたナビゲーション装置等として有用である。
【符号の説明】
【0091】
1 ナビゲーション装置
2 制御部
3 ジャイロセンサ
4 3軸加速度センサ
5 GPS受信機
6 記憶部
7 スピーカ
8 表示部
9 取付台

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に取付をした取付台に任意の角度で設置することができるナビゲーション装置であって、
互いに直交する3つの軸の各方向の加速度を検出する3軸加速度センサと、
前記ナビゲーション装置の取付角度を算出する制御部とを備え、
前記制御部は、前記3軸加速度センサが車両走行中に検出した加速度の2つの軸についてそれぞれの方向の加速度である第1および第2加速度を取得し、この第1および第2加速度の絶対値の比率および加速度の極性により取付角度を算出することを特徴とするナビゲーション装置。
【請求項2】
前記制御部は、第1および第2加速度として、車両が停止している状態から走行を開始した際の加速度を用いることを特徴とする請求項1に記載のナビゲーション装置。
【請求項3】
前記制御部は、第1および第2加速度の絶対値の比率についてアークタンジェントの演算を行うことで取付角度を算出することを特徴とする請求項1に記載のナビゲーション装置。
【請求項4】
前記制御部は、さらに車両停止中に3軸加速度センサの出力を所定時間平均してオフセット値を算出し、第1および第2加速度の値からこのオフセット値を減算してから取付角度を算出することを特徴とする請求項1に記載のナビゲーション装置。
【請求項5】
前記制御部は、取付角度として、車両の上下方向を軸とした前記ナビゲーション装置の回転角度をヨー取付角度と、車両を正面から見て左右方向を軸とした前記ナビゲーション装置の回転角度をピッチ取付角度と、車両の前後方向を軸とした前記ナビゲーション装置の回転角度をロール取付角度とし、このヨー取付角度、ピッチ取付角度、およびロール取付角度の少なくとも1つを算出することを特徴とする請求項1に記載のナビゲーション装置。
【請求項6】
車両の上下方向を軸とした前記ナビゲーション装置の回転であるヨー回転方向についての角速度を算出するジャイロセンサと、
車両の進行方向の速度を検出する速度検出部をさらに備え、
前記制御部は、前記速度検出部が検出した車両の進行方向の速度と、前記ジャイロセンサが算出した角速度との積である遠心力加速度を算出し、この遠心力加速度の絶対値が
所定の値以上であるときに、ロール取付角度の算出を行うことを特徴とする請求項5に記載のナビゲーション装置。
【請求項7】
前記制御部は、算出したヨー取付角度、ピッチ取付角度、およびロール取付角度のうち少なくとも2つが所定の閾値以上の角度を満たす場合に、
所定の閾値以上の角度を満した2つの角度の演算結果の比率から、ヨー取付角度、ピッチ取付角度、およびロール取付角度に対する補正量を算出し、その補正量を用いて各々の取付角度を再計算することを特徴とする請求項5に記載のナビゲーション装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2011−209162(P2011−209162A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−78400(P2010−78400)
【出願日】平成22年3月30日(2010.3.30)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】