説明

ナフトール樹脂、硬化性樹脂組成物、その硬化物、及びプリント配線基板

【課題】熱履歴後の耐熱性変化が少なく、かつ、低熱膨張性を発現し、さらに良好な溶剤溶解性を実現するナフトール樹脂を提供する。
【解決手段】α−ナフトール化合物、β−ナフトール化合物、及びホルムアルデヒドの重縮合体であって、下記特定構造式(1)


で表される3量体(x1)と、特定構造式で表される2量体(x2)と、前者が15〜35%となる割合、後者が1〜25%となる割合で含有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は得られる硬化物の熱履歴後の耐熱性変化が小さく、低熱膨張性に優れ、プリント配線基板、半導体封止材、塗料、注型用途等に好適に用いる事が出来るナフトール樹脂、硬化性樹脂組成物、これらの性能を兼備した硬化性樹脂組成物の硬化物、及びプリント配線基板に関する。
【背景技術】
【0002】
エポキシ樹脂とフェノール樹脂からなるエポキシ樹脂系硬化性樹脂組成物は、接着剤、成形材料、塗料、フォトレジスト材料、顕色材料等に用いられている他、得られる硬化物の優れた耐熱性や耐湿性などに優れる点から半導体封止材やプリント配線板用絶縁材料等の電気・電子分野で幅広く用いられている。
【0003】
これらの各種用途のうち、プリント配線板の分野では、電子機器の小型化・高性能化の流れに伴い、半導体装置の配線ピッチの狭小化による高密度化の傾向が著しく、これに対応した半導体実装方法として、はんだボールにより半導体装置と基板とを接合させるフリップチップ接続方式が広く用いられている。このフリップチップ接続方式では、配線板と半導体との間にはんだボールを配置、全体を加熱して溶融接合させる所謂リフロー方式による半導体実装方式であるため、はんだリフロー時に配線版自体が高熱環境に晒され、配線板の熱収縮により、配線板と半導体を接続するはんだボールに大きな応力が発生し、配線の接続不良を起こす場合があった。その為、プリント配線板に用いられる絶縁材料には、低熱膨張率の材料が求められている。
【0004】
加えて、近年、環境問題に対する法規制等により、鉛を使用しない高融点はんだが主流となっており、リフロー温度が高くなっている。それに伴い、リフロー時の絶縁材料の耐熱性変化による、プリント配線基板の反りに起因する、接続不良も深刻になってきている。すなわち、リフロー時の物性変化が少ない材料が求められている。
【0005】
このような要求に対応するために、例えば、ナフトールとホルムアルデヒドとエピクロルヒドリンを反応させて得られるナフトールノボラック型エポキシ樹脂を主剤とした熱硬化性樹脂組成物が、低熱膨張性等の技術課題を解決するものとして提案されている(下記特許文献1参照)。
【0006】
然し乍ら、上記ナフトールノボラック型エポキシ樹脂は一般的なフェノールノボラック型エポキシ樹脂と比較して、骨格の剛直性のために、得られる硬化物の熱膨張率の改良効果が認められるものの、近年要求されるレベルを十分満足できるものではなく、また、その硬化物が熱履歴によって耐熱性が大きく変化するために、プリント配線基板用途においてリフロー後の物性変化が大きいものであった。また、前記ナフトールノボラック型エポキシ樹脂の前駆体であるナフトールノボラック樹脂をエポキシ樹脂用硬化剤として使用しても一般的なフェノールノボラック樹脂と比較して、骨格の剛直性のために、得られる硬化物の熱膨張率の改良効果が認められるものの、近年要求されるレベルを十分満足できるものではなく、硬化物における熱履歴による耐熱性変化が大きいものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特公昭62−20206号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って、本発明が解決しようとする課題は、その硬化物において熱履歴後の耐熱性変化が少なく、かつ、低熱膨張性を発現し、さらに良好な溶剤溶解性を実現する硬化性樹脂組成物、その硬化物、熱履歴後の耐熱性変化が少なく低熱膨張性に優れるプリント配線基板、これらの性能を与えるナフトール樹脂を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決するため、鋭意検討した結果、ナフトールノボラック樹脂であって、特定構造の3量体と2量体とを所定の割合で含むものが、その硬化物において優れた低熱膨張性を発現すると共に、エポキシ樹脂用硬化剤として反応性が高まり、熱履歴後の耐熱性変化が少なくなることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
即ち、本発明は、α−ナフトール化合物、β−ナフトール化合物、及びホルムアルデヒドの重縮合体であって、下記構造式(1)
【0011】
【化1】


(式中、R及びRは、それぞれ独立して水素原子、炭素原子数1〜4の炭化水素基、炭素原子数1〜4のアルコキシ基を表す。)
で表される3量体(x1)と、
下記構造式(2)
【0012】
【化2】


(式中、R及びRは、それぞれ独立して水素原子、炭素原子数1〜4の炭化水素基、炭素原子数1〜4のアルコキシ基を表す。)
で表される2量体(x2)とを含有しており、かつ、前記3量体(x1)の含有率がGPC測定における面積比率で15〜35%となる割合であり、前記2量体(x2)の含有率がGPC測定における面積比率で1〜25%となる割合であることを特徴とするナフトール樹脂に関する。
【0013】
本発明は、更に、前記ナフトール樹脂、及びエポキシ樹脂を必須成分とすることを特徴とする硬化性樹脂組成物に関する。
【0014】
本発明は、更に、前記硬化性樹脂組成物を硬化反応させてなることを特徴とする硬化物に関する。
【0015】
本発明は、更に、前記硬化性樹脂組成物に、更に有機溶剤を配合してワニス化した樹脂組成物を、補強基材に含浸し銅箔を重ねて加熱圧着させることにより得られたプリント配線基板に関する。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、その硬化物において熱履歴後の耐熱性変化が少なく、かつ、低熱膨張性を発現し、さらに良好な溶剤溶解性を実現する硬化性樹脂組成物、その硬化物、熱履歴後の耐熱性変化が少なく低熱膨張性に優れるプリント配線基板、これらの性能を与えるナフトール樹脂を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は、実施例1で得られたナフトール樹脂(A−1)のGPCチャートである。
【図2】図2は、実施例2で得られたナフトール樹脂(A−2)のGPCチャートである。
【図3】図3は、比較合成例1で得られたナフトール樹脂(A−3)のGPCチャートである。
【図4】図4は、比較合成例2で得られたナフトール樹脂(A−4)のGPCチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明のナフトール樹脂は、α−ナフトール化合物、β−ナフトール化合物、及びホルムアルデヒドの重縮合体であって、下記構造式(1)
【0019】
【化3】


(式中、R及びRは、それぞれ独立して水素原子、炭素原子数1〜4の炭化水素基、炭素原子数1〜4のアルコキシ基を表す。)
で表される3量体(x1)と、
下記構造式(2)
【0020】
【化4】


(式中、R及びRは、それぞれ独立して水素原子、炭素原子数1〜4の炭化水素基、炭素原子数1〜4のアルコキシ基を表す。)
で表される2量体(x2)とを含有しており、かつ、前記3量体(x1)の含有率がGPC測定における面積比率で15〜35%となる割合であり、前記2量体(x2)の含有率がGPC測定における面積比率で1〜25%となる割合であることを特徴としている。
【0021】
即ち、本発明のナフトール樹脂は、α−ナフトール化合物、β−ナフトール化合物、及びホルムアルデヒドを原料とする重縮合体であって、種々の樹脂構造のものを含む混合物であって、そのなかに、前記3量体(x1)と前記2量体(x2)とを所定量含むことを特徴とするものである。本発明では、該ナフトール樹脂中に前記3量体(x1)を含むことから、分子レベルでの配向性が高く、その硬化物において優れた低熱膨張性を発現すると共に、該3量体(x1)自体の反応性が高いためにプリント配線基板用途においてリフロー後の耐熱性の変化が小さいものとなる。
ここで、前記3量体(x1)の含有率は、前記したとおり、GPC測定における面積比率で15〜35%の範囲であるが、35質量%を上回る場合はナフトール樹脂の溶剤溶解性が低下する。他方、15%未満の場合には、硬化物の線膨張係数が高くなる。
【0022】
斯かる3量体(x1)は、具体的には、下記構造式(1−1)〜(1−6)
【0023】
【化5】


で表される化合物が挙げられる。これらのなかでも特に前記構造式1−1で表されるもの、即ち、前記構造式(1)におけるR及びRが、全て水素原子であるものが、硬化物における熱履歴後の耐熱性変化が小さくなる点から好ましい。
【0024】
また、本発明では、前記2量体(x2)を1%以上含むことから、硬化物の低線膨張性が優れる他、該2量体(x2)の配合量が25%以下であることから、優れた溶剤溶解性を発現することができ、プリント配線基板用ワニスとしての利用が可能となる。
【0025】
本発明のナフトール樹脂は、更に、前記3量体(x1)、前記2量体(x2)に加え、更に下記構造式(3)
【0026】
【化6】

(式中、R及びRは、それぞれ独立して水素原子、炭素原子数1〜4の炭化水素基、炭素原子数1〜4のアルコキシ基を表し、nは繰り返し単位であって2〜10の整数である。)
で表されるカリックスアレーン化合物(x3)を、ナフトール樹脂中GPC測定における面積比率で1〜40%となる割合で含有することが、硬化物における低線膨張性が一層良好なものとなる点から好ましい。
【0027】
ここで、前記構造式(3)中のR及びRは、前記構造式(1)におけるものと同義である。繰り返し単位nは、2〜10の整数であるが、本発明のナフトール樹脂の硬化物における低線膨張性が一層優れたものとなる点から、nは4であることが好ましい。
【0028】
本発明における前記3量体(x1)、前記2量体(x2)、及び前記カリックスアレーン化合物(x3)のナフトール樹脂中の含有率とは、下記の条件によるGPC測定によって計算される、本発明のナフトール樹脂の全ピーク面積に対する、前記各構造体のピーク面積の存在割合である。
<GPC測定条件>
測定装置 :東ソー株式会社製「HLC−8220 GPC」、
カラム:東ソー株式会社製ガードカラム「HXL−L」
+東ソー株式会社製「TSK−GEL G2000HXL」
+東ソー株式会社製「TSK−GEL G2000HXL」
+東ソー株式会社製「TSK−GEL G3000HXL」
+東ソー株式会社製「TSK−GEL G4000HXL」
検出器: RI(示差屈折計)
データ処理:東ソー株式会社製「GPC−8020モデルIIバージョン4.10」
測定条件: カラム温度 40℃
展開溶媒 テトラヒドロフラン
流速 1.0ml/分
標準 : 前記「GPC−8020モデルIIバージョン4.10」の測定マニュアルに準拠して、分子量が既知の下記の単分散ポリスチレンを用いた。
(使用ポリスチレン)
東ソー株式会社製「A−500」
東ソー株式会社製「A−1000」
東ソー株式会社製「A−2500」
東ソー株式会社製「A−5000」
東ソー株式会社製「F−1」
東ソー株式会社製「F−2」
東ソー株式会社製「F−4」
東ソー株式会社製「F−10」
東ソー株式会社製「F−20」
東ソー株式会社製「F−40」
東ソー株式会社製「F−80」
東ソー株式会社製「F−128」
試料 : 樹脂固形分換算で1.0質量%のテトラヒドロフラン溶液をマイクロフィルターでろ過したもの(50μl)。
【0029】
本発明のナフトール樹脂は、上記した、前記3量体(x1)、前記2量体(x2)、及びカリックスアレーン化合物(x3)の他、高分子量成分(x4)が含まれる。
【0030】
斯かる高分子量成分(x4)は、本発明のナフトール樹脂中、前記(x1)〜(x3)を除く高分子量成分であり、具体的には、下記構造式(I)
【0031】
【化7】


(式中、R及びRは、それぞれ独立して水素原子、炭素原子数1〜4のアルキル基、炭素原子数1〜4のアルコキシ基を表す。)
で表される構造ユニット(I)と、
下記、構造式(II)
【0032】
【化8】


(式中、R及びRは、それぞれ独立して水素原子、炭素原子数1〜4のアルキル基、炭素原子数1〜4のアルコキシ基を表し、mは繰り返し単位であり、0以上の整数である。)
で表される構造ユニット(II)とが、メチレン結合により結節され、高分子量化した基本構造を有するナフトール樹脂である。
【0033】
前記ナフトール樹脂をGPCにて測定した場合、GPC測定によって保持時間が長い順に、前記2量体(x2)、3量体(x1)、カリックスアレーン化合物(x3)の順に検出され、前記高分子量成分(x4)は、カリックスアレーン化合物(x3)より、保持時間の短い領域に検出される成分である。前記高分子量成分(x4)のナフトール樹脂中の存在割合は、GPC測定における面積比率で、40〜75質量%の範囲であることが該ナフトール樹脂の溶剤溶解性に優れる点から好ましい。また、前記高分子量成分(x4)の具体的構造としては、前記構造ユニット(I)と構造ユニット(II)とがメチレン結合を介して交互に結合する樹脂構造(x4−1)、及び前記構造ユニット(I)の両末端に構造ユニット(II)がメチレン結合を介して結合する樹脂構造(x4−2)が挙げられるが、本発明では低熱膨張性の点から樹脂構造(x4−2)を有するものが好ましい。なお、樹脂構造(x4−2)において、構造ユニット(II)は前記した通り、該構造の両末端に位置するが、構造ユニット(II)の2本の結合手のうちメチレン結合と結合していない結合手には水素原子が結合するものである。
【0034】
また、前記重縮合体の原料成分として、α−ナフトール化合物、β−ナフトール化合物、及びホルムアルデヒドに加え、更に他のノボラック樹脂を併用する場合には、前記高分子量成分(x4)は、前記構造ユニット(I)、前記構造ユニット(II)、及び当該他のノボラック樹脂が、相互にメチレン結合を介して結節し高分子量化したものとなる。なお、前記重縮合体の原料成分として、当該他のノボラック樹脂を製造時に併用する場合、その使用量は、原料となるα−ナフトール化合物及びβ−ナフトール化合物の総質量100質量部あたり、5〜30質量部であることが、最終的に得られるナフトール樹脂の反応性に優れる点から好ましい。
【0035】
以上詳述した本発明のナフトール樹脂は、その軟化点95〜150℃の範囲であることが、ナフトール樹脂自体の溶剤溶解性に優れる点から好ましく、よって、前記高分子量成分(x4)の分子量もナフトール樹脂の軟化点が前記範囲に入るように適宜調整すればよいが。また、前記軟化点は、低熱膨張性及び溶剤溶解性を高度に兼備できる点から、特に100〜135℃の範囲であることが好ましい。
【0036】
また、本発明のナフトール樹脂は、その水酸基当量が130〜200g/eqの範囲であることが、硬化物の低熱膨張性が良好となる点から好ましく、特に140〜160g/eqの範囲であることが好ましい。
【0037】
以上詳述した本発明のナフトール樹脂は、例えば、下記方法1又は方法2によって製造することができる。
方法1:有機溶剤及びアルカリ触媒の存在下、β−ナフトール化合物とホルムアルデヒドとを反応させ、次いで、ホルムアルデヒドの存在下、α−ナフトール化合物を加え反応させて、ナフトール樹脂を得、目的とするナフトール樹脂を得る方法。
方法2:有機溶剤及びアルカリ触媒の存在下、α−ナフトール化合物、β−ナフトール化合物、及びホルムアルデヒドを反応させてナフトール樹脂を得る方法。
【0038】
本発明では、上記方法1又は2において、反応触媒として、アルカリ触媒を用いること、及び、有機溶剤を原料成分に対して少なく使用することにより、前記3量体(x1)、前記2量体(x2)、及び前記カリックスアレーン化合物(x3)のナフトール樹脂中の存在割合を所定範囲に調整することができ、かつ、前記高分子量成分の存在比率も適性範囲となる。
【0039】
ここで用いるアルカリ触媒としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物、金属ナトリウム、金属リチウム、水素化ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等の無機アルカリ類などが挙げられる。その使用量は、原料成分であるα−ナフトール化合物、β−ナフトール化合物、及び必要により前記他のノボラック樹脂のフェノール性水酸基の総数に対して、モル基準で0.01〜2.0倍量となる範囲であることが好ましい。
【0040】
また、有機溶剤としては、メチルセロソルブ、イソプロピルアルコール、エチルセロソルブ、トルエン、キシレン、メチルイソブチルケトンなどが挙げられる。これらのなかでもとりわけ比較的重縮合体が高分子量化する点からイソプロピルアルコールが好ましい。
本発明における有機溶剤の使用量は、原料成分であるα−ナフトール化合物及びβ−ナフトール化合物、更に、他のノボラック樹脂を併用する場合には、原料となるα−ナフトール化合物及びβ−ナフトール化合物の総質量100質量部あたり、5〜30質量部の範囲であることが、前記3量体(x1)、前記2量体(x2)、及び前記カリックスアレーン化合物(x3)のナフトール樹脂中の存在割合を所定範囲に調整し易い点から好ましい。
【0041】
原料成分であるα−ナフトール化合物は、具体的には、α−ナフトール及びこれらにメチル基、エチル基、プロピル基、t−ブチル基、メトキシ基等のアルキル基が核置換した化合物等が挙げられ、また、β−ナフトール化合物は、β−ナフトール及びこれらにメチル基、エチル基、プロピル基、t−ブチル基、メトキシ基等のアルキル基が核置換した化合物等が挙げられるこれらのなかでも置換基を有しないα−ナフトール、及びβ−ナフトールが、最終的に得られるナフトール樹脂の硬化物における熱履歴後の耐熱性変化が小さくなる点から好ましい。
【0042】
一方、ここで用いるホルムアルデヒドは、水溶液の状態であるホルマリン溶液でも、固形状態であるパラホルムアルデヒドでもよい。
【0043】
前記方法1又は方法2におけるα−ナフトール化合物と、β−ナフトール化合物との使用割合は、モル比(α−ナフトール化合物/β−ナフトール化合物)が[1/0.4]〜[1/1.2]となる範囲であることが最終的に得られるナフトール樹脂中の各成分比率の調整が容易であることが好ましい。
【0044】
ホルムアルデヒドの反応仕込み比率は、α−ナフトール化合物及びβ−ナフトール化合物の総モル数に対して、ホルムアルデヒドが、モル基準で0.6〜2.0倍量となる割合であること、特に、低熱膨張性に優れる点から、0.6〜1.5倍量となる割合であることが好ましい。
【0045】
また、本発明では、前記した通り、原料成分としてα−ナフトール化合物、β−ナフトール化合物、及びホルムアルデヒドに加え、更に、他のノボラック樹脂を一部併用することができる。ここで、用いる他のノボラック樹脂としては、例えば、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂が挙げられ、これらを一部併用することにより最終的に得られるナフトール樹脂の溶剤溶解性を飛躍的に向上させることができる。これらフェノールノボラック樹脂及びクレゾールノボラック樹脂は、本発明における低線膨張性といった性能を低下させることなく、溶剤溶解性を高めることができる点から軟化点60〜120℃のものであることが好ましい。
【0046】
当該他のノボラック樹脂を原料の一部として使用する場合、前記方法1又は方法2における各原料成分の反応仕込み比率は、モル比(α−ナフトール化合物とβ−ナフトール化合物/他のノボラック樹脂中の芳香核数)が[1/0.06]〜[1/0.36]となる範囲であることが最終的に得られるナフトール樹脂中の各成分比率の調整が容易であることが好ましく、また、ホルムアルデヒドの使用量は、他のノボラック樹脂中の芳香核数、α−ナフトール化合物、β−ナフトール化合物の総モル数に対して、当該ホルムアルデヒドが、モル基準で0.6〜2.0倍量となる割合であること、特に、熱履歴時の耐熱性変化量と、溶剤溶解性とのバランスに優れる点から、0.6〜1.5倍量となる割合となる範囲であることが好ましい。
【0047】
前記方法1では、反応容器に、所定量のβ−ナフトール化合物、ホルムアルデヒド、有機溶剤、及びアルカリ触媒と仕込み、40〜100℃にて反応させ、反応終了後、α−ナフトール化合物(必要に応じて、更にホルムアルデヒド)を加え、40〜100℃の温度条件下に反応させて目的とする重縮合体を得ることができる。この場合他のノボラック樹脂を併用する場合には、α−ナフトール化合物と共に反応容器に加えることが好ましい。
【0048】
反応終了後は、反応終了後、反応混合物のpH値が4〜7になるまで中和あるいは水洗処理を行う。中和処理や水洗処理は常法にしたがって行えばよく、例えば酢酸、燐酸、燐酸ナトリウム等の酸性物質を中和剤として用いることができる。中和あるいは水洗処理を行った後、減圧加熱下で有機溶剤を留去し目的とする重縮合体を得ることができる。
【0049】
前記方法2では、反応容器に、所定量のβ−ナフトール化合物、α−ナフトール化合物、ホルムアルデヒド、有機溶剤、アルカリ触媒、及び、他のノボラック樹脂を併用する場合には該ノボラック樹脂を仕込み、40〜100℃にて反応させて目的とする重縮合体を得ることができる。この場合他のノボラック樹脂を併用する場合には、α−ナフトール化合物と共に反応容器に加えることが好ましい。
【0050】
反応終了後は、反応終了後、反応混合物のpH値が4〜7になるまで中和あるいは水洗処理を行う。中和処理や水洗処理は常法にしたがって行えばよく、例えば酢酸、燐酸、燐酸ナトリウム等の酸性物質を中和剤として用いることができる。中和あるいは水洗処理を行った後、減圧加熱下で有機溶剤を留去し目的とする重縮合体を得ることができる。
【0051】
次に、本発明の硬化性樹脂組成物は、以上詳述したナフトール樹脂とエポキシ樹脂とを必須成分とするものである。以下、本発明の硬化性樹脂組成物において、エポキシ樹脂を「エポキシ樹脂(A)」、ナフトール樹脂を「ナフトール樹脂(B)」と略記する。
【0052】
ここで用いるエポキシ樹脂(A)は、種々のエポキシ樹脂を用いることができるが、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂等のビスフェノール型エポキシ樹脂;ビフェニル型エポキシ樹脂、テトラメチルビフェニル型エポキシ樹脂等のビフェニル型エポキシ樹脂;フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、フェノール類とフェノール性水酸基を有する芳香族アルデヒドとの縮合物のエポキシ化物、ビフェニルノボラック型エポキシ樹脂等のノボラック型エポキシ樹脂;トリフェニルメタン型エポキシ樹脂;テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂;ジシクロペンタジエン−フェノール付加反応型エポキシ樹脂;フェノールアラルキル型エポキシ樹脂;ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、ナフトールアラルキル型エポキシ樹脂、ナフトール−フェノール共縮ノボラック型エポキシ樹脂、ナフトール−クレゾール共縮ノボラック型エポキシ樹脂、ジグリシジルオキシナフタレン、1,1−ビス(2,7−ジグリシジルオキシ−1−ナフチル)アルカン等の分子構造中にナフタレン骨格を有するエポキシ樹脂;リン原子含有エポキシ樹脂等が挙げられる。また、これらのエポキシ樹脂は単独で用いてもよく、2種以上を混合してもよい。
【0053】
ここで、リン原子含有エポキシ樹脂としては、9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイド(以下、「HCA」と略記する。)のエポキシ化物、HCAとキノン化合物とを反応させて得られるフェノール樹脂のエポキシ化物、フェノールノボラック型エポキシ樹脂をHCAで変性したエポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂をHCAで変性したエポキシ樹脂、また、ビスフェノールA型エポキシ樹脂を、HCAとキノン化合物とを反応させて得られるフェノール樹脂で変成して得られるエポキシ樹脂、及びビスフェニールA型エポキシ樹脂を、HCAとキノン化合物とを反応させて得られるフェノール樹脂で変成して得られるエポキシ樹脂等が挙げられる。
上記したエポキシ樹脂(A)のなかでも、特に耐熱性の点から、分子構造中にナフタレン骨格を有するエポキシ樹脂、分子構造中にリン原子を有するエポキシ樹脂が好ましく、また、溶剤溶解性の点からビスフェノール型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂が好ましい。
【0054】
本発明の硬化性樹脂組成物では、前記エポキシ樹脂(A)の硬化剤として前記ナフトール樹脂(B)の他の硬化剤(B’)を併用してもよい。かかる他の硬化剤(B’)は、アミン系化合物、アミド系化合物、酸無水物系化合物などが挙げられる。具体的には、アミン系化合物としてはジアミノジフェニルメタン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ジアミノジフェニルスルホン、イソホロンジアミン、イミダゾ−ル、BF−アミン錯体、グアニジン誘導体等が挙げられ、アミド系化合物としては、ジシアンジアミド、リノレン酸の2量体とエチレンジアミンとより合成されるポリアミド樹脂等が挙げられ、酸無水物系化合物としては、無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、無水マレイン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、無水メチルナジック酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸等が挙げられる。
【0055】
本発明の硬化性樹脂組成物におけるエポキシ樹脂(A)とナフトール樹脂(B)の配合量としては、特に制限されるものではないが、得られる硬化物特性が良好である点から、エポキシ樹脂(A)のエポキシ基の合計1当量に対して、ナフトール樹脂(B)中の活性基が0.7〜1.5当量になる量が好ましい。
【0056】
また、前記エポキシ樹脂(A)の硬化剤として前記他の硬化剤(B’)を併用する場合には、各成分の配合割合は、エポキシ樹脂(A)のエポキシ基の合計1当量に対して、ナフトール樹脂(B)及び他の硬化剤(B’)の活性基の合計が0.7〜1.5当量になる割合であることが好ましい。
【0057】
また必要に応じて本発明の硬化性樹脂組成物に硬化促進剤を適宜併用することもできる。前記硬化促進剤としては種々のものが使用できるが、例えば、リン系化合物、第3級アミン、イミダゾール、有機酸金属塩、ルイス酸、アミン錯塩等が挙げられる。特に半導体封止材料用途として使用する場合には、硬化性、耐熱性、電気特性、耐湿信頼性等に優れる点から、リン系化合物ではトリフェニルフォスフィン、第3級アミンでは1,8−ジアザビシクロ−[5.4.0]−ウンデセン(DBU)が好ましい。
【0058】
以上詳述した本発明の硬化性樹脂組成物は、前記した通り、優れた溶剤溶解性を発現することを特徴としている。従って、該硬化性樹脂組成物は、上記各成分の他に有機溶剤(C)を配合することが好ましい。ここで使用し得る前記有機溶剤(C)としては、メチルエチルケトン、アセトン、ジメチルホルムアミド、メチルイソブチルケトン、メトキシプロパノール、シクロヘキサノン、メチルセロソルブ、エチルジグリコールアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等が挙げられ、その選択や適正な使用量は用途によって適宜選択し得るが、例えば、プリント配線板用途では、メチルエチルケトン、アセトン、ジメチルホルムアミド等の沸点が160℃以下の極性溶剤であることが好ましく、また、不揮発分40〜80質量%となる割合で使用することが好ましい。一方、ビルドアップ用接着フィルム用途では、有機溶剤(C)として、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、カルビトールアセテート等の酢酸エステル類、セロソルブ、ブチルカルビトール等のカルビトール類、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等を用いることが好ましく、また、不揮発分30〜60質量%となる割合で使用することが好ましい。
【0059】
また、上記熱硬化性樹脂組成物は、難燃性を発揮させるために、例えばプリント配線板の分野においては、信頼性を低下させない範囲で、実質的にハロゲン原子を含有しない非ハロゲン系難燃剤を配合してもよい。
【0060】
前記非ハロゲン系難燃剤としては、例えば、リン系難燃剤、窒素系難燃剤、シリコーン系難燃剤、無機系難燃剤、有機金属塩系難燃剤等が挙げられ、それらの使用に際しても何等制限されるものではなく、単独で使用しても、同一系の難燃剤を複数用いても良く、また、異なる系の難燃剤を組み合わせて用いることも可能である。
【0061】
前記リン系難燃剤としては、無機系、有機系のいずれも使用することができる。無機系化合物としては、例えば、赤リン、リン酸一アンモニウム、リン酸二アンモニウム、リン酸三アンモニウム、ポリリン酸アンモニウム等のリン酸アンモニウム類、リン酸アミド等の無機系含窒素リン化合物が挙げられる。
【0062】
また、前記赤リンは、加水分解等の防止を目的として表面処理が施されていることが好ましく、表面処理方法としては、例えば、(i)水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化亜鉛、水酸化チタン、酸化ビスマス、水酸化ビスマス、硝酸ビスマス又はこれらの混合物等の無機化合物で被覆処理する方法、(ii)水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化亜鉛、水酸化チタン等の無機化合物、及びフェノール樹脂等の熱硬化性樹脂の混合物で被覆処理する方法、(iii)水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化亜鉛、水酸化チタン等の無機化合物の被膜の上にフェノール樹脂等の熱硬化性樹脂で二重に被覆処理する方法等が挙げられる。
【0063】
前記有機リン系化合物としては、例えば、リン酸エステル化合物、ホスホン酸化合物、ホスフィン酸化合物、ホスフィンオキシド化合物、ホスホラン化合物、有機系含窒素リン化合物等の汎用有機リン系化合物の他、9,10−ジヒドロ−9−オキサー10−ホスファフェナントレン=10−オキシド、10−(2,5―ジヒドロオキシフェニル)―10H−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン=10−オキシド、10―(2,7−ジヒドロオキシナフチル)−10H−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン=10−オキシド等の環状有機リン化合物、及びそれをエポキシ樹脂やフェノール樹脂等の化合物と反応させた誘導体等が挙げられる。
【0064】
それらの配合量としては、リン系難燃剤の種類、硬化性樹脂組成物の他の成分、所望の難燃性の程度によって適宜選択されるものであるが、例えば、エポキシ樹脂、硬化剤、非ハロゲン系難燃剤及びその他の充填材や添加剤等全てを配合した硬化性樹脂組成物100質量部中、赤リンを非ハロゲン系難燃剤として使用する場合は0.1〜2.0質量部の範囲で配合することが好ましく、有機リン化合物を使用する場合は同様に0.1〜10.0質量部の範囲で配合することが好ましく、特に0.5〜6.0質量部の範囲で配合することが好ましい。
【0065】
また前記リン系難燃剤を使用する場合、該リン系難燃剤にハイドロタルサイト、水酸化マグネシウム、ホウ化合物、酸化ジルコニウム、黒色染料、炭酸カルシウム、ゼオライト、モリブデン酸亜鉛、活性炭等を併用してもよい。
【0066】
前記窒素系難燃剤としては、例えば、トリアジン化合物、シアヌル酸化合物、イソシアヌル酸化合物、フェノチアジン等が挙げられ、トリアジン化合物、シアヌル酸化合物、イソシアヌル酸化合物が好ましい。
【0067】
前記トリアジン化合物としては、例えば、メラミン、アセトグアナミン、ベンゾグアナミン、メロン、メラム、サクシノグアナミン、エチレンジメラミン、ポリリン酸メラミン、トリグアナミン等の他、例えば、(i)硫酸グアニルメラミン、硫酸メレム、硫酸メラムなどの硫酸アミノトリアジン化合物、(ii)フェノール、クレゾール、キシレノール、ブチルフェノール、ノニルフェノール等のフェノール化合物と、メラミン、ベンゾグアナミン、アセトグアナミン、ホルムグアナミン等のメラミン化合物およびホルムアルデヒドとの共縮合物、(iii)前記(ii)の共縮合物とフェノールホルムアルデヒド縮合物等のフェノール樹脂との混合物、(iv)前記(ii)、(iii)を更に桐油、異性化アマニ油等で変性したもの等が挙げられる。
【0068】
前記シアヌル酸化合物の具体例としては、例えば、シアヌル酸、シアヌル酸メラミン等を挙げることができる。
【0069】
前記窒素系難燃剤の配合量としては、窒素系難燃剤の種類、硬化性樹脂組成物の他の成分、所望の難燃性の程度によって適宜選択されるものであるが、例えば、エポキシ樹脂(A)、ナフトール樹脂(B)、及びその他の充填材や添加剤等全てを配合した硬化性樹脂組成物100質量部中、0.05〜10質量部の範囲で配合することが好ましく、特に0.1〜5質量部の範囲で配合することが好ましい。
【0070】
また前記窒素系難燃剤を使用する際、金属水酸化物、モリブデン化合物等を併用してもよい。
【0071】
前記シリコーン系難燃剤としては、ケイ素原子を含有する有機化合物であれば特に制限がなく使用でき、例えば、シリコーンオイル、シリコーンゴム、シリコーン樹脂等が挙げられる。
【0072】
前記シリコーン系難燃剤の配合量としては、シリコーン系難燃剤の種類、硬化性樹脂組成物の他の成分、所望の難燃性の程度によって適宜選択されるものであるが、例えば、エポキシ樹脂、硬化剤、非ハロゲン系難燃剤及びその他の充填材や添加剤等全てを配合した硬化性樹脂組成物100質量部中、0.05〜20質量部の範囲で配合することが好ましい。また前記シリコーン系難燃剤を使用する際、モリブデン化合物、アルミナ等を併用してもよい。
【0073】
前記無機系難燃剤としては、例えば、金属水酸化物、金属酸化物、金属炭酸塩化合物、金属粉、ホウ素化合物、低融点ガラス等が挙げられる。
【0074】
前記金属水酸化物の具体例としては、例えば、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、ドロマイト、ハイドロタルサイト、水酸化カルシウム、水酸化バリウム、水酸化ジルコニウム等を挙げることができる。
【0075】
前記金属酸化物の具体例としては、例えば、モリブデン酸亜鉛、三酸化モリブデン、スズ酸亜鉛、酸化スズ、酸化アルミニウム、酸化鉄、酸化チタン、酸化マンガン、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化モリブデン、酸化コバルト、酸化ビスマス、酸化クロム、酸化ニッケル、酸化銅、酸化タングステン等を挙げることができる。
【0076】
前記金属炭酸塩化合物の具体例としては、例えば、炭酸亜鉛、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、塩基性炭酸マグネシウム、炭酸アルミニウム、炭酸鉄、炭酸コバルト、炭酸チタン等を挙げることができる。
【0077】
前記金属粉の具体例としては、例えば、アルミニウム、鉄、チタン、マンガン、亜鉛、モリブデン、コバルト、ビスマス、クロム、ニッケル、銅、タングステン、スズ等を挙げることができる。
【0078】
前記ホウ素化合物の具体例としては、例えば、ホウ酸亜鉛、メタホウ酸亜鉛、メタホウ酸バリウム、ホウ酸、ホウ砂等を挙げることができる。
【0079】
前記低融点ガラスの具体例としては、例えば、シープリー(ボクスイ・ブラウン社)、水和ガラスSiO−MgO−HO、PbO−B系、ZnO−P−MgO系、P−B−PbO−MgO系、P−Sn−O−F系、PbO−V−TeO系、Al−HO系、ホウ珪酸鉛系等のガラス状化合物を挙げることができる。
【0080】
前記無機系難燃剤の配合量としては、無機系難燃剤の種類、硬化性樹脂組成物の他の成分、所望の難燃性の程度によって適宜選択されるものであるが、例えば、エポキシ樹脂、硬化剤、非ハロゲン系難燃剤及びその他の充填材や添加剤等全てを配合した硬化性樹脂組成物100質量部中、0.05〜20質量部の範囲で配合することが好ましく、特に0.5〜15質量部の範囲で配合することが好ましい。
【0081】
前記有機金属塩系難燃剤としては、例えば、フェロセン、アセチルアセトナート金属錯体、有機金属カルボニル化合物、有機コバルト塩化合物、有機スルホン酸金属塩、金属原子と芳香族化合物又は複素環化合物がイオン結合又は配位結合した化合物等が挙げられる。
【0082】
前記有機金属塩系難燃剤の配合量としては、有機金属塩系難燃剤の種類、硬化性樹脂組成物の他の成分、所望の難燃性の程度によって適宜選択されるものであるが、例えば、エポキシ樹脂、硬化剤、非ハロゲン系難燃剤及びその他の充填材や添加剤等全てを配合した硬化性樹脂組成物100質量部中、0.005〜10質量部の範囲で配合することが好ましい。
【0083】
本発明の硬化性樹脂組成物には、必要に応じて無機質充填材を配合することができる。前記無機質充填材としては、例えば、溶融シリカ、結晶シリカ、アルミナ、窒化珪素、水酸化アルミ等が挙げられる。前記無機充填材の配合量を特に大きくする場合は溶融シリカを用いることが好ましい。前記溶融シリカは破砕状、球状のいずれでも使用可能であるが、溶融シリカの配合量を高め且つ成形材料の溶融粘度の上昇を抑制するためには、球状のものを主に用いる方が好ましい。更に球状シリカの配合量を高めるためには、球状シリカの粒度分布を適当に調整することが好ましい。その充填率は難燃性を考慮して、高い方が好ましく、硬化性樹脂組成物の全体量に対して20質量%以上が特に好ましい。また導電ペーストなどの用途に使用する場合は、銀粉や銅粉等の導電性充填剤を用いることができる。
【0084】
本発明の硬化性樹脂組成物は、必要に応じて、シランカップリング剤、離型剤、顔料、乳化剤等の種々の配合剤を添加することができる。
【0085】
本発明の硬化性樹脂組成物は、上記した各成分を均一に混合することにより得られる。本発明のナフトール樹脂、硬化剤、更に必要により硬化促進剤の配合された本発明の硬化性樹脂組成物は従来知られている方法と同様の方法で容易に硬化物とすることができる。該硬化物としては積層物、注型物、接着層、塗膜、フィルム等の成形硬化物が挙げられる。
【0086】
本発明の硬化性樹脂組成物が用いられる用途としては、プリント配線板材料、樹脂注型材料、接着剤、ビルドアップ基板用層間絶縁材料、ビルドアップ用接着フィルム等が挙げられる。また、これら各種用途のうち、プリント配線板や電子回路基板用絶縁材料、ビルドアップ用接着フィルム用途では、コンデンサ等の受動部品やICチップ等の能動部品を基板内に埋め込んだ所謂電子部品内蔵用基板用の絶縁材料として用いることができる。これらの中でも、熱履歴後の耐熱性変化が小さくなる点、低熱膨張性及び溶剤溶解性に優れる点からプリント配線板材料やビルドアップ用接着フィルムに用いることが好ましい。
【0087】
ここで、本発明の硬化性樹脂組成物からプリント回路基板を製造するには、前記有機溶剤(C)を含むワニス状の硬化性樹脂組成物を、更に有機溶剤(C)を配合してワニス化した樹脂組成物を、補強基材に含浸し銅箔を重ねて加熱圧着させる方法が挙げられる。ここで使用し得る補強基材は、紙、ガラス布、ガラス不織布、アラミド紙、アラミド布、ガラスマット、ガラスロービング布などが挙げられる。かかる方法を更に詳述すれば、先ず、前記したワニス状の硬化性樹脂組成物を、用いた溶剤種に応じた加熱温度、好ましくは50〜170℃で加熱することによって、硬化物であるプリプレグを得る。この時用いる樹脂組成物と補強基材の質量割合としては、特に限定されないが、通常、プリプレグ中の樹脂分が20〜60質量%となるように調製することが好ましい。次いで、上記のようにして得られたプリプレグを、常法により積層し、適宜銅箔を重ねて、1〜10MPaの加圧下に170〜250℃で10分〜3時間、加熱圧着させることにより、目的とするプリント回路基板を得ることができる。
【0088】
本発明の硬化性樹脂組成物を導電ペーストとして使用する場合には、例えば、微細導電性粒子を該硬化性樹脂組成物中に分散させ異方性導電膜用組成物とする方法、室温で液状である回路接続用ペースト樹脂組成物や異方性導電接着剤とする方法が挙げられる。
【0089】
本発明の硬化性樹脂組成物からビルドアップ基板用層間絶縁材料を得る方法としては例えば、ゴム、フィラーなどを適宜配合した当該硬化性樹脂組成物を、回路を形成した配線基板にスプレーコーティング法、カーテンコーティング法等を用いて塗布した後、硬化させる。その後、必要に応じて所定のスルーホール部等の穴あけを行った後、粗化剤により処理し、その表面を湯洗することによって、凹凸を形成させ、銅などの金属をめっき処理する。前記めっき方法としては、無電解めっき、電解めっき処理が好ましく、また前記粗化剤としては酸化剤、アルカリ、有機溶剤等が挙げられる。このような操作を所望に応じて順次繰り返し、樹脂絶縁層及び所定の回路パターンの導体層を交互にビルドアップして形成することにより、ビルドアップ基盤を得ることができる。但し、スルーホール部の穴あけは、最外層の樹脂絶縁層の形成後に行う。また、銅箔上で当該樹脂組成物を半硬化させた樹脂付き銅箔を、回路を形成した配線基板上に、170〜250℃で加熱圧着することで、粗化面を形成、メッキ処理の工程を省き、ビルドアップ基板を作製することも可能である。
【0090】
本発明の硬化性樹脂組成物からビルドアップ用接着フィルムを製造する方法は、例えば、本発明の硬化性樹脂組成物を、支持フィルム上に塗布し樹脂組成物層を形成させて多層プリント配線板用の接着フィルムとする方法が挙げられる。
【0091】
本発明の硬化性樹脂組成物をビルドアップ用接着フィルムに用いる場合、該接着フィルムは、真空ラミネート法におけるラミネートの温度条件(通常70℃〜140℃)で軟化し、回路基板のラミネートと同時に、回路基板に存在するビアホール或いはスルーホール内の樹脂充填が可能な流動性(樹脂流れ)を示すことが肝要であり、このような特性を発現するよう上記各成分を配合することが好ましい。
【0092】
ここで、多層プリント配線板のスルホールの直径は通常0.1〜0.5mm、深さは通常0.1〜1.2mmであり、通常この範囲で樹脂充填を可能とするのが好ましい。なお回路基板の両面をラミネートする場合はスルーホールの1/2程度充填されることが望ましい。
【0093】
上記した接着フィルムを製造する方法は、具体的には、ワニス状の本発明の硬化性樹脂組成物を調製した後、支持フィルム(Y)の表面に、このワニス状の組成物を塗布し、更に加熱、あるいは熱風吹きつけ等により有機溶剤を乾燥させて硬化性樹脂組成物の層(X)を形成させることにより製造することができる。
【0094】
形成される層(X)の厚さは、通常、導体層の厚さ以上とする。回路基板が有する導体層の厚さは通常5〜70μmの範囲であるので、樹脂組成物層の厚さは10〜100μmの厚みを有するのが好ましい。
【0095】
なお、本発明における層(X)は、後述する保護フィルムで保護されていてもよい。保護フィルムで保護することにより、樹脂組成物層表面へのゴミ等の付着やキズを防止することができる。
【0096】
前記した支持フィルム及び保護フィルムは、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル等のポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート(以下「PET」と略称することがある。)、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ポリカーボネート、ポリイミド、更には離型紙や銅箔、アルミニウム箔等の金属箔などを挙げることができる。なお、支持フィルム及び保護フィルムはマッド処理、コロナ処理の他、離型処理を施してあってもよい。
【0097】
支持フィルムの厚さは特に限定されないが、通常10〜150μmであり、好ましくは25〜50μmの範囲で用いられる。また保護フィルムの厚さは1〜40μmとするのが好ましい。
【0098】
上記した支持フィルム(Y)は、回路基板にラミネートした後に、或いは加熱硬化することにより絶縁層を形成した後に、剥離される。接着フィルムを加熱硬化した後に支持フィルム(Y)を剥離すれば、硬化工程でのゴミ等の付着を防ぐことができる。硬化後に剥離する場合、通常、支持フィルムには予め離型処理が施される。
【0099】
次に、上記のようして得られた接着フィルムを用いて多層プリント配線板を製造する方法は、例えば、層(X)が保護フィルムで保護されている場合はこれらを剥離した後、層(X)を回路基板に直接接するように、回路基板の片面又は両面に、例えば真空ラミネート法によりラミネートする。ラミネートの方法はバッチ式であってもロールでの連続式であってもよい。またラミネートを行う前に接着フィルム及び回路基板を必要により加熱(プレヒート)しておいてもよい。
【0100】
ラミネートの条件は、圧着温度(ラミネート温度)を好ましくは70〜140℃、圧着圧力を好ましくは1〜11kgf/cm(9.8×10〜107.9×10N/m)とし、空気圧20mmHg(26.7hPa)以下の減圧下でラミネートすることが好ましい。
【0101】
本発明の硬化物を得る方法としては、一般的な硬化性樹脂組成物の硬化方法に準拠すればよいが、例えば加熱温度条件は、組み合わせる硬化剤の種類や用途等によって、適宜選択すればよいが、上記方法によって得られた組成物を、15〜250℃程度の温度範囲で加熱すればよい。
【0102】
従って、該ナフトール樹脂を用いることによって、ナフトール樹脂の溶剤溶解性が飛躍的に向上し、さらに硬化物とした際、熱履歴による耐熱性変化が小さく、かつ、低熱膨張率が発現でき、最先端のプリント配線板材料に適用できる。また、該ナフトール樹脂は、本発明の製造方法にて容易に効率よく製造する事が出来、目的とする前述の性能のレベルに応じた分子設計が可能となる。
【実施例】
【0103】
次に本発明を実施例、比較例により具体的に説明するが、以下において「部」及び「%」は特に断わりのない限り質量基準である。尚、150℃における溶融粘度及びGPC、NMR、MSスペクトルは以下の条件にて測定した。
【0104】
1)軟化点測定法:JIS K7234
【0105】
2)GPC:測定条件は以下の通り。
測定装置 :東ソー株式会社製「HLC−8220 GPC」、
カラム:東ソー株式会社製ガードカラム「HXL−L」
+東ソー株式会社製「TSK−GEL G2000HXL」
+東ソー株式会社製「TSK−GEL G2000HXL」
+東ソー株式会社製「TSK−GEL G3000HXL」
+東ソー株式会社製「TSK−GEL G4000HXL」
検出器: RI(示差屈折計)
データ処理:東ソー株式会社製「GPC−8020モデルIIバージョン4.10」
測定条件: カラム温度 40℃
展開溶媒 テトラヒドロフラン
流速 1.0ml/分
標準 : 前記「GPC−8020モデルIIバージョン4.10」の測定マニュアルに準拠して、分子量が既知の下記の単分散ポリスチレンを用いた。
(使用ポリスチレン)
東ソー株式会社製「A−500」
東ソー株式会社製「A−1000」
東ソー株式会社製「A−2500」
東ソー株式会社製「A−5000」
東ソー株式会社製「F−1」
東ソー株式会社製「F−2」
東ソー株式会社製「F−4」
東ソー株式会社製「F−10」
東ソー株式会社製「F−20」
東ソー株式会社製「F−40」
東ソー株式会社製「F−80」
東ソー株式会社製「F−128」
試料 : 樹脂固形分換算で1.0質量%のテトラヒドロフラン溶液をマイクロフィルターでろ過したもの(50μl)。
【0106】
3)13C−NMR:測定条件は以下の通り。
装置:日本電子(株)製 AL−400
測定モード:SGNNE(NOE消去の1H完全デカップリング法)
溶媒 :ジメチルスルホキシド
パルス角度:45℃パルス
試料濃度 :30wt%
積算回数 :10000回
4)MS :日本電子株式会社製 JMS−T100GC
【0107】
実施例1
温度計、滴下ロート、冷却管、分留管、撹拌器を取り付けたフラスコに、β−ナフトール115質量部(0.80モル)、イソプロピルアルコール130部、37質量%ホルマリン水溶液135質量部(1.66モル)、49%水酸化ナトリウム5質量部(0.06モル)を仕込み、室温から80℃まで攪拌しながら昇温し、80℃で1時間撹拌した。続いて、α−ナフトール173質量部(1.20モル)を仕込み、さらに80℃で1時間攪拌した。反応終了後、第1リン酸ソーダ10質量部を添加して中和した後、メチルイソブチルケトン600質量部加え、水150質量部で3回洗浄を繰り返した後に、加熱減圧下乾燥してナフトール樹脂(A−1)280質量部得た。得られたナフトール樹脂(A−1)の水酸基当量は153グラム/当量、軟化点は139℃であり、GPCチャートを図1に示す。GPCチャートから3量体(x1)の含有率は22.0%、2量体(x2)の含有率は3.6%、カリックスアレーン化合物(x3)の含有率は13.9%であった。
【0108】
実施例2
温度計、滴下ロート、冷却管、分留管、撹拌器を取り付けたフラスコに、β−ナフトール144質量部(1.00モル)、α−ナフトール144質量部(1.00モル)、軟化点75℃(B&R法)のクレゾールノボラック樹脂48質量部(クレゾール骨格のモル数:0.40モル)、イソプロピルアルコール150質量部、37%ホルマリン水溶液130部(1.60モル)、49%水酸化ナトリウム5質量部(0.06モル)を仕込み、室温から75℃まで攪拌しながら昇温し、80℃で2時間撹拌した。反応終了後、第1リン酸ソーダ10質量部を添加して中和した後、メチルイソブチルケトン700質量部加え、水150質量部で3回洗浄を繰り返した後に、加熱減圧下乾燥してナフトール樹脂(A−2)355質量部得た。得られたナフトール樹脂(A−2)の水酸基当量は148グラム/当量、軟化点は132℃であり、GPCチャートを図2に示す。GPCチャートから3量体(x1)の含有率は28.0%、2量体(x2)の含有率は6.4%、カリックスアレーン化合物(x3)の含有率は4.8%であった。
【0109】
比較合成例1
温度計、滴下ロート、冷却管、分留管、撹拌器を取り付けたフラスコに、α−ナフトール505質量部(3.50モル)、水158部、蓚酸5部を仕込み、室温から100℃まで45分で昇温しながら撹拌した。続いて、42質量%ホルマリン水溶液186質量部(2.45モル)を1時間要して滴下した。滴下終了後、さらに100℃で1時間攪拌し、その後180℃まで3時間で昇温した。反応終了後、200℃に昇温し加熱減圧下、水蒸気を吹き込むことによってフリーのα−ナフトールを除去してナフトール樹脂(A−3)475部を得た。得られたナフトール樹脂(A−3)の軟化点は142℃、水酸基当量は157グラム/当量であった。得られたナフトール樹脂のGPCチャートを図3に示す。GPCチャートから3量体(x1)、2量体(x2)、カリックスアレーン化合物(x3)の含有率はそれぞれ0.0%であった。
【0110】
比較合成例2
温度計、滴下ロート、冷却管、分留管、撹拌器を取り付けたフラスコに、β−ナフトール216部(1.50モル)、α−ナフトール54部(0.37モル)、イソプロピルアルコール130部、37%ホルマリン水溶液122部(1.50モル)、49%水酸化ナトリウム5部(0.06モル)を仕込み、室温から75℃まで攪拌しながら昇温し、75℃で2時間撹拌した。この後は実施例2と同様にして、目的のナフトール樹脂(A−4)270質量部を得た。得られたナフトール樹脂(A−4)の水酸基当量は154グラム/当量、軟化点は106℃であり、GPCチャートを図4に示す。GPCチャートから3量体(x1)の含有率は38.3%、2量体(x2)の含有率は40.6%、カリックスアレーン化合物(x3)の含有率は0.0%であった。
【0111】
実施例3、4及び比較例1、2[溶剤溶解性の評価]
上記各実施例及び比較合成例で得られたナフトール樹脂10質量部とメチルエチルケトン4.3質量部をサンプル瓶中、密閉状態60℃で溶解させた。その後、25℃まで冷却し、結晶が析出するか評価した。結晶が析出しない場合は○、結晶が析出した場合は×として判定した。結果を表1に示す。
【0112】
【表1】

【0113】
実施例5、6、及び比較例3、4
下記表2記載の配合に従い、エポキシ樹脂として、DIC(株)製「N−770」(フェノールノボラック型エポキシ樹脂、エポキシ当量:183g/eq)、硬化剤として(A−1)〜(A−4)、硬化促進剤として2−エチル−4−メチルイミダゾール(2E4MZ)を配合し、最終的に各組成物の不揮発分(N.V.)が58質量%となるようにメチルエチルケトンを配合して調整した。
次いで、下記の如き条件で硬化させて積層板を試作し、下記の方法で熱膨張率及び物性変化を評価した。結果を表2に示す。
【0114】
<積層板作製条件>
基材:日東紡績株式会社製 ガラスクロス「#2116」(210×280mm)
プライ数:6 プリプレグ化条件:160℃
硬化条件:200℃、40kg/cmで1.5時間、成型後板厚:0.8mm
【0115】
<熱履歴による耐熱性変化(耐熱性の変化量:ΔTg):DMA(第1回測定、第2回測定のTg差)>
粘弾性測定装置(DMA:レオメトリック社製固体粘弾性測定装置RSAII、レクタンギュラーテンション法;周波数1Hz、昇温速度3℃/min)を用いて、以下の温度条件で2回、弾性率変化が最大となる(tanδ変化率が最も大きい)温度(Tg)を測定した。

温度条件
第1回測定:35℃から275℃まで3℃/分で昇温
第2回測定:35℃から330℃まで3℃/分で昇温
それぞれ得られた温度差をΔTgとして評価した。
【0116】
<熱膨張率>
積層板を5mm×5mm×0.8mmのサイズに切り出し、これを試験片として熱機械分析装置(TMA:セイコーインスツルメント社製「SS−6100」)を用いて、圧縮モードで熱機械分析を行った。
測定条件
測定架重:88.8mN
昇温速度:10℃/分で2回
測定温度範囲:−50℃から300℃
上記条件での測定を同一サンプルにつき2回実施し、2回目の測定における、40℃から60℃の温度範囲における平均線膨張率を熱膨張係数として評価した。
【0117】
【表2】


表2中の略号は以下の通りである。
N−770:フェノールノボラック型エポキシ樹脂(DIC(株)製「N−770」、エポキシ当量:183g/eq)
2E4MZ:硬化促進剤(2−エチル−4−メチルイミダゾール)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
α−ナフトール化合物、β−ナフトール化合物、及びホルムアルデヒドの重縮合体であって、下記構造式(1)
【化1】


(式中、R及びRは、それぞれ独立して水素原子、炭素原子数1〜4の炭化水素基、炭素原子数1〜4のアルコキシ基を表す。)
で表される3量体(x1)と、
下記構造式(2)
【化2】


(式中、R及びRは、それぞれ独立して水素原子、炭素原子数1〜4の炭化水素基、炭素原子数1〜4のアルコキシ基を表す。)
で表される2量体(x2)とを含有しており、かつ、前記3量体(x1)の含有率がGPC測定における面積比率で15〜35%となる割合であり、前記2量体(x2)の含有率がGPC測定における面積比率で1〜25%となる割合であることを特徴とするナフトール樹脂。
【請求項2】
前記3量体(x1)、前記2量体(x2)に加え、更に下記構造式(3)
【化3】

(式中、R及びRは、それぞれ独立して水素原子、炭素原子数1〜4の炭化水素基、炭素原子数1〜4のアルコキシ基を表し、nは繰り返し単位であって2〜10の整数である。)
で表されるカリックスアレーン化合物(x3)を、ナフトール樹脂中GPC測定における面積比率で1〜40%となる割合で含有する請求項1記載のナフトール樹脂。
【請求項3】
水酸基当量が130〜200g/eqの範囲にあるものである請求項1又は2記載のナフトール樹脂。
【請求項4】
請求項1〜3の何れか1つに記載のナフトール樹脂、及びエポキシ樹脂を必須成分とすることを特徴とする硬化性樹脂組成物。
【請求項5】
請求項4記載の硬化性樹脂組成物を硬化反応させてなることを特徴とする硬化物。
【請求項6】
請求項4記載の硬化性樹脂組成物に、更に有機溶剤を配合してワニス化した樹脂組成物を、補強基材に含浸し銅箔を重ねて加熱圧着させることにより得られたプリント配線基板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−67697(P2013−67697A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−205955(P2011−205955)
【出願日】平成23年9月21日(2011.9.21)
【出願人】(000002886)DIC株式会社 (2,597)
【Fターム(参考)】