説明

ニキビ治療薬

【課題】本発明は、従来よりも高い治療効果を有するニキビ治療薬を提供することを目的とする。
【解決手段】(A)イブプロフェンピコノール
(B)イソプロピルメチルフェノール
(C)サリチル酸
を含有することを特徴とするニキビ治療薬、とする。好ましくは、更にヒアルロン酸(塩)などのムコ多糖を含有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、皮膚外用剤に関する。さらに詳しくは、イブプロフェンピコノールとイソプロピルメチルフェノールとサリチル酸とを有効成分として含有するニキビ治療薬に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ニキビは尋常性ざ瘡と呼ばれ、毛穴に皮脂が詰まり、これにアクネ菌が感染し炎症を起すものである。ニキビは慢性の皮膚疾患であるが、その発症の病理の詳細はいまだ不明な点が多い。
ニキビは主として思春期に発現する皮膚疾患であったが、近年「大人にきび」と言われるように思春期後もニキビに悩ませされる人が増えてきている。また「大人にきび」「思春期にきび」によらず、顔面に発生することから、見ためにわかりやすく、かつ炎症を起すと痛みが伴うため、ファンデーション等で隠す・つぶす・触るなど悪化させる行動をしがちであり、その結果、ニキビ跡を残してしまうという問題があった。このことからもニキビは早い治癒が望まれ、より高い治療効果を有するニキビ治療薬が求められている。
ニキビ治療の有効成分としては、抗炎症剤、殺菌剤、角質軟化剤、皮脂抑制剤などが知られ、これらを組み合わせた治療薬が開発されている。
イブプロフェンピコノールは、外用の非ステロイド剤として初めて尋常性ざ瘡の効能が認められた薬剤である。抗炎症、鎮痛作用に加え、リパーゼ及び細菌自身のリパーゼ活性の抑制作用をもっていることから、イブプロフェンピコノール配合の外用剤はニキビに対して優れた効果を持つといえる。
特許文献1には、イブプロフェンピコノールの効果を高めるため、イブプロフェンピコノールとイソプロピルメチルフェノールやビタミンEを併用した水中油型エマルジョンとしたニキビ治療剤が提案されている。
一方、特許文献2には、甘草から抽出された油溶性抽出物と、角質剥離剤及び/又は抗炎症剤とを併用したニキビ治療用組成物が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−308430号公報
【特許文献2】特開平11−100324号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、従来よりも高い治療効果を有するニキビ治療薬を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討を行った結果、イブプロフェンピコノールと、イソプロピルメチルフェノールと、サリチル酸及を併用することによって、より優れたニキビ治療効果が得られることを知見し、本発明を完成した。また、さらにヒアルロン酸(塩)等のムコ多糖を添加することによって、前記薬物の刺激感を抑制し使用感に優れたニキビ治療薬が得られることを見出した。
【0006】
従って、本発明は。
<1>(A)イブプロフェンピコノール、(B)イソプロピルメチルフェノール、及び(C)サリチル酸を含有することを特徴とするニキビ治療薬。
<2>さらに、(D)ムコ多糖を含有することを特徴とする、<1>に記載のニキビ治療薬。
を提供する。
【発明の効果】
【0007】
本発明により、優れたニキビ治療効果を有し、しかも刺激感が抑制されたニキビ治療薬が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明で使用されるイブプロフェンピコノールは、医薬外用剤として使用されるものであれば特に制限なく用いることができ、例えば日本薬局方外医薬品規格に収載されているものを使用することができる。イブプロフェンピコノールの濃度は、本発明のニキビ治療薬組成物中、0.01〜10質量%の範囲であることが好ましく、より好ましくは0.1〜5.0質量%である。イブプロフェンピコノールの濃度が0.1質量%未満では、ニキビの原因菌であるアクネ菌に対する殺菌効果が弱くなるため、治療効果が十分でない場合がある。また、イブプロフェンピコノールの濃度が高いと、患部への刺激が強くなるため好ましくない。
【0009】
本発明で用いられるイソプロピルメチルフェノールは、医薬外用剤として使用されるものであれば特に制限なく用いることができる。イソプロピルメチルフェノールの濃度は、本発明のニキビ治療薬組成物中、0.01〜5質量%の範囲であることが好ましく、より好ましくは0.05〜3質量%である。イソプロピルメチルフェノールの濃度が0.01質量%未満では、ニキビの原因菌であるアクネ菌に対する殺菌効果が弱くなるため、治療効果が十分でない場合がある。また、イソプロピルメチルフェノールの濃度が高いと、患部への刺激が強くなるため好ましくない。
【0010】
本発明で用いられるサリチル酸は、医薬外用剤として使用されるものであれば特に制限なく用いることができる。本発明において、サリチル酸は、患部の皮膚の角質を軟化させ、イブプロフェンピコノールやイソプロピルメチルフェノールの患部への浸透を促進し、治療効果を高める作用を発揮する。サリチル酸の濃度は、本発明のニキビ治療薬組成物中、0.01〜5質量%の範囲であることが好ましく、より好ましくは0.05〜3質量%である。サリチル酸の濃度が0.01質量%未満では、患部の皮膚の軟化が不十分でなくニキビ治療効果の向上が十分得られない場合がある。また、サリチル酸の濃度が高いと、患部への刺激が強くなるため好ましくない。
【0011】
本発明のニキビ治療薬には、上記の薬物の他、ムコ多糖を含有することが好ましい。ムコ多糖を併用することによって、前記薬物に由来する刺激を緩和することができ、また、保湿効果によって、本発明のにきび治療薬塗布部の皮膚をなめらかな状態に保つことができる。使用するムコ多糖としては、ヒアルロン酸及び/又はその塩、ヘパリン類似物質、コンドロイチン多硫酸及び/又はその塩等が挙げられる。前記中、ヒアルロン酸及び/又はその塩が好ましく、ヒアルロン酸ナトリウムが特に好ましい。
ムコ多糖の濃度は、本発明のニキビ治療薬組成物中、0.001〜10質量%の範囲であることが好ましく、より好ましくは0.01〜5質量%である。ムコ多糖の濃度が0.001質量%未満では、刺激緩和、塗布部の皮膚のなめらかさが十分得られない。また、ムコ多糖の濃度が高いと、ベタツキを生じるなど、使用感を損なう場合がある。
【0012】
本発明のニキビ治療薬中には、上記成分の他に、通常医薬外用剤に配合される各種成分、例えば、ニキビ治療薬に配合され得る各種薬物、界面活性剤、溶解補助剤、保湿剤、増粘剤、防腐剤、酸化防止剤、キレート剤、pH調整剤、香料、色素、紫外線吸収・散乱剤、ビタミン類、アミノ酸類、溶媒、油性基材等を配合することができる。
【0013】
本発明のニキビ治療薬は、上記成分を適切に配合することにより、各種の皮膚外用剤、例えば、クリーム、乳液、液剤(ローション、化粧水)、軟膏、硬膏、リニメント、、ジェル、プラスター、パック、スプレー、美容液等の製品形態として用いることができる。
【0014】
なお、以上のように調製したニキビ治療薬は、その剤型、製品形態によっても相違するが、1日1回〜数回を患部に適用することによって投与することができる。
【実施例】
【0015】
以下に実施例を用いて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
表1〜表4に記した剤形・組成に従って、各々公知の製造方法により、ニキビ治療薬を製造した。各サンプルについて、有効性(ニキビ改善度)、塗布部のなめらかさ、しっとり感、患部の刺激の有無を評価した。
【0016】
<ニキビ改善度>
18歳〜32歳までのニキビに悩む男女を1群30名として4週間使用させ、使用前後の症状を観察し、評価した。
化粧石けんを用いて顔面をよく洗浄した後、皮疹部に各々の皮膚外用剤を1日に2〜3回塗布した。面鞄、丘疹、膿疱の3症状について観察し、その個々の所見の程度を総合して、尋常性ざ瘡の重篤度を4週間後に観察した。
◎:30名中、症状が改善したものが、30名中24名以上
○:30名中、症状が改善したものが、30名中17名〜23名
△:30名中、症状が改善したものが、30名中11名〜16名
×:30名中、症状が改善したものが、30名中10名以下
【0017】
<使用性>
上記テスト中に、塗布に伴う使用感を、肌のなめらかさ、しっとり感の2項目についてアンケートにより、各々の項目を判定した。
【0018】
(肌のなめらかさ)
◎:肌のなめらかさがよいと判定したものが、30名中25名以上
○:肌のなめらかさがよいと判定したものが、30名中20名〜24名
△:肌のなめらかさがよいと判定したものが、30名中15名〜19名
×:肌のなめらかさがよいと判定したものが、30名中14名以下
【0019】
(しっとり感)
◎:しっとり感がよいと判定したものが、30名中25名以上
○:しっとり感がよいと判定したものが、30名中20名〜24名
△:しっとり感がよいと判定したものが、30名中15名〜19名
×:しっとり感がよいと判定したものが、30名中14名以下
【0020】
<皮膚刺激性>
上記テスト中に、塗布に伴う皮膚刺激性についてアンケートで評価し以下の判定基準において判定した。
(皮膚刺激性基準)
(+++)紅斑・浮腫・水疱がある
(++) 紅斑・水疱がある
(+) 紅斑がある
(±) わずかな紅斑がある
(-) 無紅斑
◎:評価パネル全員が(−)
○:評価パネルの27名〜29名が(−)、それ以外が(±)以上
△:評価パネルの24名〜26名が(−)、それ以外が(±)以上
×:評価パネルの23名以下
【0021】
【表1】

【0022】
【表2】

【0023】
【表3】





【0024】
【表4】




【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)イブプロフェンピコノール
(B)イソプロピルメチルフェノール
(C)サリチル酸
を含有することを特徴とするニキビ治療薬。
【請求項2】
さらに、(D)ムコ多糖を含有することを特徴とする、請求項1に記載のニキビ治療薬。



【公開番号】特開2011−11993(P2011−11993A)
【公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−155561(P2009−155561)
【出願日】平成21年6月30日(2009.6.30)
【出願人】(000006769)ライオン株式会社 (1,816)
【Fターム(参考)】