説明

ネイルユニットの状態を治療するための組成物および方法

本明細書に記載された生分解性薬剤送達システムは、ネイルユニットの種々の状態の治療のためにネイルユニットおよびその周辺組織内に埋め込むために製剤化される。システムには、溶液、固体、半固体、微粒子、または結晶として製剤化され得る、温度非依存性の相変化組成物が含まれる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願との相互参照
本出願は、2004年12月10日出願の米国特許仮出願第60/593,106号に基づく優先権を主張する、2005年12月12日出願の米国特許出願第11/302,014号の一部継続出願であり、これらそれぞれの出願を参照により全体として本明細書中に組み入れる。
【0002】
分野
本明細書に記載する組成物および方法は薬剤送達の分野のものである。より具体的には、記載の組成物および方法は、ネイルユニットおよびその周辺組織への活性剤の局所送達に関する。
【背景技術】
【0003】
ヒトの爪に影響を与え得る様々な条件がある。例えば、爪は乾癬および扁平苔癬等の炎症状態;グロムス腫瘍または指の粘液様嚢胞等の爪の腫瘍;および爪周囲炎および爪真菌症等の感染症に罹患し得る。それぞれの状態の病理生理学は爪の構造および機能と密接なつながりがある。従って、爪の解剖学的構造および機能を理解することが、爪の状態の治療を開発する上で必須である。
【0004】
簡潔に言えば、ヒトの爪はいくつかの部分:爪のマトリクス、爪床、爪甲、爪郭、およびキューティクルを含むユニットとしてしばしば記載される、改変した皮膚構造である。爪のマトリクスは近位の爪郭の下にあり、爪甲を製造するネイルユニットの胚芽部分である。爪床は、半月(近位の爪郭のキューティクルに向かって突き出している通常灰白色の半月に見える爪のマトリクス部分)および下爪皮(爪の開放端の末端上皮)の間に横たわっている上皮層である。爪甲(手指の爪または足指の爪)はマトリクスによって製造され、新しい甲が形成するにつれて手指または足指の先端に向かって移動する。ネイルユニットを構成し、爪甲近位部および側部に陥入する皮膚組織は爪郭と呼ばれる。爪甲の一次機能は下にある指を保護することであるが、手指および足指の爪はまた、多くの患者にとって化粧的に重要であることが多い。
【0005】
爪の感染症は爪でよくある状態である。爪床、マトリクス、または爪甲の真菌感染症である爪真菌症は最も一般的な爪の感染症である。爪真菌症の初期の臨床的特徴は末端部の爪甲離床症(爪床からの爪甲の分離)、爪下過角化症、および栄養失調性の爪の変色である。爪真菌症に罹患した患者は通常、自分の爪の醜い外観を恥ずかしがっているが、感染症は化粧的な問題よりも重大な問題である。時には可動性が制限され、末梢の循環を間接的に低下させ、それによって静脈鬱滞および糖尿病性潰瘍等の状態を悪化させる場合がある。爪の真菌感染症はまた、体の他の部分や、可能性として他人にも広がり得る。真菌感染症は皮膚糸状菌(例えばトリコフィトン・ルブルム(Trichophyton rubrum)およびT. メンタグロフィテス(T. mentagrophytes))によって引き起こされ得るが、カンジダ種の菌、またはアスペルギルス種、スコプラリオシス・ブレビカウリス(Scopulariosis brevicaulis)、フサリウム(Fusarium)種、およびシタリジウム(Scytalidium)種等の皮膚糸状菌以外の菌による感染の場合もある。
【0006】
現在のところ、経口抗真菌剤が爪真菌症のための治療の柱である。例えば、ケトコナゾール、Sporonox(登録商標)カプセル(イトラコナゾール)(Janssen Pharmaceutica Products, L.P., Titusville, NJおよびOrtho Biotech Products, L.P., Raritan, NJ)、Lamisil(登録商標)錠(テルビナフィン塩酸塩)(Novartis Pharmaceuticals, East Hanover, NJ)、Diflucan(登録商標)錠(フルコナゾール)(Pfizer, New York, NY)、および経口グリセオフルビンが通常処方される抗真菌剤である。しかしながら、これらの経口抗真菌薬は、頭痛、腹痛、発疹、光過敏性等の多くの軽微な全身性副作用、並びに心不全および肝不全等の重大な全身性副作用と関連する。更に、フルコナゾールは、爪の真菌感染症の治療については米国食品医薬品局(FDA)に承認されていない。更にまた、経口による抗真菌治療が好ましいにもかかわらず、対応する治癒率は高くなく、また再発は一般的である。1日1回投与を少なくとも3ヶ月、あるいは週1回を9〜12ヶ月続ける長期の治療計画は、経口抗真菌治療についての患者のコンプライアンスを得にくいことにもつながっている。
【0007】
フルコナゾール、ケトコナゾール、ミコナゾール、テルビナフィン、トルナフテート、およびウンデシレンアルカノールアミド等の抗真菌剤による局所的治療は、経口的抗真菌治療が禁忌とされる患者のための代替的治療である。局所用溶液Penlac(登録商標)ネイルラッカー(シクロピロクス溶液、8%)(Dermik Laboratories, Berwyn, PA)も、近年軽度から中度の爪真菌症の局所治療についてFDAに承認されている。しかしながら、局所的投与方法は、活性剤が効率的に爪に浸透できないため、軽度を超えるネイルユニットの感染症の治療に有効であることはほとんどない。爪の化学的もしくは物理的磨耗の伴う局所治療はまた、大きな失敗でもあった。局所的抗真菌治療はまた、通常数ヶ月間爪に毎日投与することを含み、従ってコンプライアンスの問題も提起するものである。
【0008】
爪真菌症の治療のための他の投薬計画は、Birnbaum等の米国特許出願公開第2004/0062733号、およびJackson等の米国特許出願公開第2005/0042293号に記載されている。具体的には、Birnbaum等では、半固体、例えば棒状石鹸に対して手指の爪をこすりつけることによって、または下爪皮を介して爪甲の下に薬剤を注入することによって、抗真菌剤を手指の爪の下に入れる。Jackson等では、テルビナフィンの液体状もしくはペースト状の製剤を真菌感染部位の下に皮下注射する。液体もしくはペーストはその後体温に達した後に固化する。Jackson等は、これらの製剤をより少ない薬剤負荷量を用いて高用量の薬剤を短時間で送達できるものとして記載している。
【0009】
従って、ネイルユニットの状態の治療のために、抗真菌剤および他の活性剤をネイルユニットおよびその周辺組織に局所的に送達するための薬剤送達システムをもつことが望ましいであろう。また、治療を必要とするネイルユニットの部分に正確に送達され得る薬剤送達システムをもつことが望ましいであろう。同様に、治療計画を簡素化し、患者のコンプライアンスを改善する薬剤送達システムをもつことが望ましいであろう。
【発明の概要】
【0010】
本明細書に記載されているものは、ネイルユニットの状態を治療するための薬剤送達システムおよび方法である。薬剤送達システムには、ネイルユニットの状態を治療するために有用な局所的徐放性のための活性剤を有する治療的有効量の組成物が含まれる。組成物/薬剤送達システムは、通常ネイルユニット中への埋め込みのために構成されており、ネイルユニットの状態を治療するための活性剤の局所的徐放性を提供する。組成物/薬剤送達システムは、温度変化に伴う相変化をおこさないように製剤化される。
【0011】
薬剤送達システムは、固体、液体、半固体、微粒子、ナノ粒子、または結晶として製剤化することができる。担体が含まれる場合、担体の選択は通常、システムの形態、用いる特定の活性剤、および意図される治療期間等の因子に依存するであろう。しかしながら、全ての場合において、担体は生体適合性のあるものであろう。1つのバリエーションにおいて、担体は生分解性のあるものである。別のバリエーションにおいて、担体は生浸食性(bioerodible)のものである。更に別のバリエーションにおいて、担体は生体吸収性(bioabsorbable)のものである。
【0012】
限定するものではないが、爪もしくは他の組織の成長および再生を刺激するか、血管新生を刺激するか、血液の供給もしくは循環を増大させるか、および/または免疫系をモジュレートする、傷を軽減する、あるいは回復を改善するタンパク質、ペプチド、核酸、小分子、または他の因子を含む種々の活性剤が、薬剤送達システム中に組み込まれ得る。1つのバリエーションにおいて、限定するものではないが、アモロルフィン;シクロピロクス;フルシトシン;グリセオフルビン;ハロプログリン;ヨウ化カリウムピリチオンナトリウム;ウンデシレン酸;イミダゾール誘導体(限定することなくビホナゾール、ブトコナゾール、クロトリマゾール、エコナゾール、ケトコナゾール、ミコナゾール、オキシコナゾール、およびスルコナゾールを含む);トリアゾール類(限定することなくイトラコナゾール、フルコナゾール、およびテルコナゾールを含む);アリルアミン類(限定することなくナフチフィンおよびテルビナフィン、テルビナフィンFBを含む);アンフォテリシンBおよびナイスタチン等のポリエン系抗真菌抗生物質;安息香酸、サリチル酸、プロピオン酸、カプリル酸等の抗真菌性有機酸;およびこれらの誘導体を含む抗真菌剤を使用することができる。1つのバリエーションにおいて、抗真菌剤は、1種以上の更なる抗真菌剤と組み合わせることができる。別のバリエーションにおいて、抗真菌剤は、異なる薬剤クラスの1種以上の活性剤と組み合わせることができる。例えば、抗真菌剤は、限定するものではないが、抗生物質、ステロイド系抗炎症剤、鎮痛剤、または麻酔剤を含む1種以上の活性剤と組み合わせることができる。
【0013】
薬剤送達システムは、ネイルユニットの種々の状態を治療するために使用することができる。そうしたネイルユニットの状態の例としては、限定するものではないが、感染症、炎症、および腫瘍等の医学的状態が挙げられる。爪の感染症の例としては、限定するものではないが、先端部および側部爪下の爪真菌症、エンドニクス(endonyx)爪真菌症、白色表在性(white superficial)爪真菌症、近位部爪下の爪真菌症、栄養失調性(total dystrophic)爪真菌症、カンジダ性爪真菌症、および爪周囲炎が挙げられる。爪の炎症の例としては、限定するものではないが、乾癬および扁平苔癬等の炎症性疾患に関連する状態が挙げられる。爪の腫瘍の例としては、限定するものではないが、グロムス腫瘍、指の粘液様(粘液)嚢胞、爪下外骨腫、および爪周囲血管線維腫が挙げられる。薬剤送達システムはまた、くぼみ、もろさ、または変色等の化粧的な爪の状態を治療するためにも使用することができる。1つのバリエーションにおいて、薬剤送達システムは、ネイルユニットの状態を治療する他の伝統的な方法と組み合わせて使用することができる。
【0014】
一般に、ネイルユニットの状態を治療するための方法には、治療的有効量の活性剤を有する組成物を、指の任意の部分、例えば末端部分、近位部分、および/または中央部分内に局所投与することが含まれる。薬剤送達システムは、限定するものではないが、鉗子による配置、トロカールおよび針等のコンジットを介した配置、およびシステムを皮膚中に直接入れるように設計されたアプリケーターを用いた配置を含む種々の方法を用いて配置され得る。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本明細書に記載されているものは、ネイルユニットの状態を治療するための組成物および方法である。ネイルユニットは指の末端部分(すなわち手指および足指の先端)に位置する。本明細書中で用いる用語「ネイルユニット」とは、爪のマトリクス、爪甲、爪床、爪郭、およびキューティクルの組み合わせ、および末端の節骨構造に隣接した組織をいう。こうした隣接組織の例としては、末端の指骨間関節(もしくは最末端の指骨間関節)から指の先端までの指領域の表皮組織、真皮組織、皮下組織(脂肪組織を含む)、筋肉、腱、および骨が挙げられる。本明細書中で用いる用語「ネイルユニットの状態」とは、ネイルユニットの任意の部分に影響する医学的または化粧的状態をいう。更に、本明細書中で用いる用語「治療する」、「治療している」、または「治療」とは、爪の状態の症状もしくは根本的な原因の解決または低減、爪の状態の予防、または爪の状態の後遺症の予防をいう。用語「爪」または「爪甲」は本明細書において互換可能に用いられ、手指の爪または足指の爪をいう。
【0016】
組成物は種々の形態のものであって良い。1つのバリエーションにおいて、組成物はネイルユニットの状態の局所的治療のための活性剤、および製薬上許容される担体もしくはマトリクス物質を含む。「製薬上許容される」により、生体適合性であり、かつ望ましくない顕著な生理的効果を引き起こすことなしに患者に投与することができる物質、およびそれが含まれる製剤中の他のいかなる成分とも顕著に有害な形で相互作用しない物質を意味する。別のバリエーションにおいて、組成物は純粋な結晶形態をとり、担体もしくはマトリクス物質を含まない。
【0017】
組成物はまた、一般的にはネイルユニットへの経皮送達のために、また活性剤の持続的放出のために製剤化される。組成物は任意の量の薬剤負荷量を有するように製剤化することができる。一旦投与されると、組成物は活性剤を放出し、1週間未満、少なくとも約1週間、少なくとも約2週間、少なくとも約4週間、少なくとも約8週間、もしくは少なくとも約12週間またはそれ以上の期間にわたって、ネイルユニットの状態を治療する。
【0018】
組成物
上記したように、本明細書に記載する組成物(薬剤送達システム)は、使用する特定の活性剤、治療される爪の状態の型、および患者の病歴等の因子に依存して、種々の形態、例えば固体、半固体、溶液、エマルジョン、温度非依存性相変化組成物、微粒子、ナノ粒子、結晶等をとることができる。しかしながら、全ての場合において、ネイルユニットの状態を治療するために治療的有効量の活性剤を送達できる薬剤負荷量を含有するように作製される。「治療的有効量」により、ネイルユニットの状態を治療するのに有効な活性剤の量を意味する。更に、本明細書中で使用する用語「温度非依存性相変化組成物」とは、温度変化に起因する相転移、例えば固体、半固体、および液体相間の転移をしない組成物をいう。
【0019】
本明細書に記載される薬剤送達システムは、システムが所望の薬剤負荷および放出速度論を有し、意図される爪の状態を治療する活性剤の量を送達できる限りにおいて、埋め込み部位と適合する任意の大きさ、形状、および/または体積で送達され得る。例えば、固体の薬剤送達システムは、粒子、シート、ディスク、フィラメント、ロッド等として形成することができる。固体のシステムは、約0mm3〜約20mm3の間、約5.0mm3〜約20mm3の間、約10mm3〜約20mm3の間、または約15mm3〜約20mm3の間の体積を有するように形成することができる。しかしながら、1つのバリエーションにおいて、体積は20mm3より大きくても良い。
【0020】
1つのバリエーションにおいて、薬剤送達システムは固形のインプラントとして製剤化され、一般に生体適合性の担体もしくはマトリクス物質中に分散した活性剤を含む(実施例13-19)。担体またはマトリクス物質は、任意の生体適合性のポリマー性または非ポリマー性の物質であって良い。生体適合性物質は、生分解性、生浸食性、または生体吸収性であっても良い。本明細書中で用いる用語「生体適合性」とは、標的部位において有意な組織刺激を引き起こさない担体またはマトリクス物質をいう。用語「生分解性」とは、標的部位において、酵素もしくは加水分解作用、または他のメカニズムによって経時的に分解する担体またはマトリクス物質をいう。「生浸食性」によって、担体もしくはマトリクス物質が周囲の組織液との接触によって、細胞活性または他の生理的分解メカニズムを介して経時的に腐食または分解することを意味する。「生体吸収性」によって、担体もしくはマトリクス物質が分解し、細胞、組織、または他の生理的メカニズムによって吸収されることを意味する。
【0021】
生体適合性ポリマーマトリクスを使用する場合には、マトリクス物質の選択は、所望の放出速度論、製剤の制約、治療される状態の性質等に依存して変わるであろう。考慮されるポリマーの性質としては、限定するものではないが、当該活性剤との適合性および処理温度が挙げられる。生体適合性ポリマーマトリクスは通常、薬剤送達システムの約70重量%未満、約65重量%未満、約60重量%未満、約55重量%未満、約50重量%未満、約45重量%未満、約40重量%未満、約35重量%未満、約30重量%未満、約25重量%未満、約20重量%未満、約10重量%未満、約15重量%未満、約10重量%未満、約5重量%未満、約2.5重量%未満、または約0重量%を構成する。1つのバリエーションにおいて、生体適合性ポリマーは薬剤送達システムの約0重量%を構成する。別のバリエーションにおいて、生体適合性ポリマーマトリクスは薬剤送達システムの約30重量%を構成する。
【0022】
使用可能な生体適合性ポリマーマトリクスとしては、限定するものではないが、ポリ(ラクチド)類;ポリ(グリコリド)類;ポリ(ラクチド−コ−グリコリド)類;ポリ(乳酸)類;ポリ(グリコール酸)類;ポリ(乳酸−コ−グリコール酸)類;ポリ(カプロラクトン)類;ポリ(オルトエステル)類;ポリ(ホスファゼン)類;ポリ(ホスホエステル)類;ポリ(ヒドロキシブチレート)類もしくはポリ(ヒドロキシブチレート)を含むコポリマー類;ポリ(ラクチド−コ−カプロラクトン)類;ポリカーボネート類;ポリエステルアミド類;ポリアンヒドリド類;ポリ(ジオキサノン)類;ポリ(アルキレンアルキレート)類;ポリエチレングリコールおよびポリオルトエステルのコポリマー類;生分解性ポリウレタン類;ポリ(アミノ酸)類;ポリエーテルエステル類;ポリアセタール類;ポリシアノアクリレート類;ポリ(オキシエチレン)/ポリ(オキシプロピレン)コポリマー類;またはこれらのブレンド、コポリマー、および混合物が挙げられる。
【0023】
1つのバリエーションにおいて、グリコール酸および乳酸のコポリマーを使用する。ポリ(乳酸−コ−グリコール酸)(PLGA)コポリマー中の各モノマーの比率は0-100%、約15-85%、約25-75%、または約35-65%であり得る。必要に応じて、50/50 PLGAコポリマーを使用することができる。末端を覆った(例えば酸で覆った、もしくはエステルで覆った)または覆っていないPLGA、あるいはこの二つの形態の組み合わせを使用することもできる。
【0024】
単独、または上記の生体適合性ポリマーと組み合わせて使用し得る他のマトリクス形成物質としては、限定するものではないが、ポリエチレングリコール(PEG)、ビタミンEおよびその誘導体、ジメチルスルホン(MSM)、カルバミド、およびこれらのブレンドおよび混合物が挙げられる。キトサン、アルギン酸塩、ゼラチン等の天然多糖類も使用することができる。更に、コラーゲン、ラミニン、ヒアルロン酸等の細胞外マトリクス成分を使用することができる。1つのバリエーションにおいて、マトリクス形成物質としてPEGを使用する。薬剤送達システム中に組み込まれるこれらのマトリクス形成物質の量は、通常生体適合性ポリマーマトリクスについて記載したものと同じである。1つのバリエーションにおいて、薬剤送達システムはマトリクス形成物質として約20%のPEGを含有する。
【0025】
別のバリエーションにおいて、固体の薬剤送達システムを以下の方法で形成することができる。2gのPharmacoat 606(ヒドロキシプロピルメチルセルロース)(Shin-Etsu Chemical Co., Ltd., Tokyo, Japan)を2.0gの水で濡らす。このペーストに、以下に記載するようにして作製した約250〜約300μmのサイズ画分範囲の微粒子3.0gを添加する。十分に混合した後、得られたペーストを次にカーバープレスを使用して厚さ約0.5mmの平らなフィルムに成型する。次いでプレスされたフィルムを側壁が薄いテフロンストローを使用して約1.0mm2、約2.0mm2、または約5.0mm2のディスクに切り取る。プレスされたフィルムを最初にトリミングし、次いでそれを所望の幅に切り取ることによって、必要な長さおよび幅のフィルムから四角形のカラムを切り取ることもできる。ディスクまたは四角形のロッド様システムを続いて真空オーブン中で一晩乾燥する。
【0026】
薬剤送達システムを微粒子として製剤化する場合、上記のポリマーの任意の1種を使用することができる。例えば、PLGAを使用することができる。大きな微粒子は通常溶媒蒸発法を用いて調製される。一般に、溶媒蒸発法は、種々の異なる攪拌技術を用いて第二の相中の薬剤含有ポリマー溶液を乳化して小滴を作製することを含む。第二、もしくは連続相は、第一の相の成分にとって貧溶媒でもある低揮発性溶媒中に乳化剤を含んで構成される。揮発性の高い溶媒が第一の相から蒸発する間に、ポリマーおよび薬剤含有小滴が固化する。次いで形成したこれらの微粒子を連続相の溶媒から濾過によって分離し、洗浄して残存する乳化剤を除去する。
【0027】
連続相の体積、容器およびスターラーの形状、攪拌速度、乳化剤の濃度、不連続相の体積および粘度等は全て、最終の粒子サイズ分布に影響する重要な因子であるが、ポリマー補給物質の薬剤に対する比率、およびポリマー補給化学は、生分解性および薬剤の放出速度を規定する。微粒子のサイズは、所望の放出プロファイルまたは送達方法に合わせて調整することができる。
【0028】
半固体として製剤化する場合、薬剤送達システムは通常、半固体状エマルジョン、ゲル、またはペーストであろう。半固体状エマルジョンは水中油型または油中水型エマルジョンのいずれかである。ゲルは典型的には懸濁液型のシステムである。単相のゲルは、典型的には水性であるが、アルコールおよび場合によっては油も含有し得る液体担体全体に実質的に均一に分散したゲル化剤を含む。使用可能なゲル化剤の例としては、限定するものではないが、ポリマーのカーボマーファミリー等の架橋型アクリル酸ポリマー、例えばCarbopolの商標名で市販品が入手できるカルボキシポリアルキレン類;ポリエチレンオキシド、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンコポリマー、およびポリビニルアルコール等の親水性ポリマー類;ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、およびメチルセルロース等のセルロース系ポリマー類;トラガカントおよびキサンタンガム等のガム類;アルギン酸ナトリウム;およびゼラチンが挙げられる。均一なゲルを調製するために、アルコールまたはグリセリン等の分散剤を添加することができ、あるいは粉砕、機械的混合もしくは攪拌、またはこれらの組み合わせによってゲル化剤を分散させることができる。ペーストは、活性剤が適切な基材中に懸濁した半固体投与形態である。基材の性質に依存して、ペーストは脂肪性ペーストと、単相の水性ゲルから作製されるものとに分類される。脂肪性ペーストにおける基材は一般的にワセリンまたは親水性ワセリン等である。単相の水性ゲルから作製されるペーストは一般的にカルボキシメチルセルロース等を基材として組み込んでいる。
【0029】
活性剤
本明細書中で用いる用語「活性剤」および「薬剤」は互換可能に用いられ、爪の状態を治療するために用いる任意の物質をいう。本明細書で記載する薬剤送達システムにおいて一般的に使用する活性剤としては、限定するものではないが、鎮痛剤(麻薬性および非麻薬性鎮痛薬)、麻酔剤、抗感染剤、抗炎症剤、化学療法剤、他の小分子、およびこれらの組み合わせが挙げられる。抗感染剤は一般に抗細菌剤、抗真菌剤、抗ウイルス剤、および防腐剤を含む。抗炎症剤の例としては、非ステロイド系抗炎症剤およびステロイド系抗炎症剤が挙げられる。化学療法剤の例としては、アルカロイド、アルキル化剤、抗新生物抗生物質、および代謝拮抗物質が挙げられる。核酸、ペプチド、およびタンパク質は使用可能な別のクラスの活性剤である。
【0030】
薬剤送達システム中に組み込まれ得る抗真菌剤の例としては、アモロルフィン;シクロピロクス;フルシトシン;グリセオフルビン;ハロプログリン;ヨウ化カリウムピリチオンナトリウム;ウンデシレン酸;イミダゾール誘導体(限定することなくビホナゾール、ブトコナゾール、クロトリマゾール、エコナゾール、ケトコナゾール、ミコナゾール、オキシコナゾール、およびスルコナゾールを含む);トリアゾール類(限定することなくイトラコナゾール、フルコナゾール、およびテルコナゾールを含む);アリルアミン類(限定することなくナフチフィン、テルビナフィン、およびテルビナフィンFBを含む);アンフォテリシンBおよびナイスタチン等のポリエン系抗真菌抗生物質;安息香酸、サリチル酸、プロピオン酸、カプリル酸等の抗真菌性有機酸;およびこれらの誘導体および組み合わせが挙げられる。
【0031】
具体的な抗真菌剤の選択は当業者には容易にわかるであろう。例えば、皮膚糸状菌による爪真菌症は、皮膚糸状菌に対して有効な抗真菌剤、例えばテルビナフィンによって治療することができる。別の例として、原因となる真菌が確かでない爪真菌症の症例は、皮膚糸状菌、非皮膚糸状菌、および酵母に対して有効な抗菌スペクトルの広い抗真菌剤、例えばイトラコナゾールで治療することができる。
【0032】
活性剤は、薬剤送達システムの約30重量%より多く、約35重量%より多く、約40重量%より多く、約45重量%より多く、約50重量%より多く、約55重量%より多く、約60重量%より多く、約65重量%より多く、約70重量%より多く、約75重量%より多く、約80重量%より多く、約85重量%より多く、約90重量%より多く、約95重量%より多く、または約100重量%を占め得る。1つのバリエーションにおいて、活性剤は薬剤送達システムの100%より多く含まれる。薬剤の負荷は、高い初期薬剤放出(バースト放出)を達成するために変動させることができる。1つのバリエーションにおいて、活性剤は薬剤送達システムの約70重量%を構成する。
【0033】
活性剤のために送達される総投与量は、治療されているネイルユニットの状態の型、使用する活性剤、および治療期間等の因子に依存して異なるであろう。投与計画は、治療されているネイルユニットの状態の型、ネイルユニットの状態の重篤度、および使用する特定の活性剤等の因子にも依存するであろうが、通常は意図される治療期間にわたってネイルユニットの状態を治療できる量の活性剤の送達に関連するであろう。従って、爪真菌症の場合、投与計画は一般に、投与された抗真菌剤の組織レベルが、疑わしい感染剤に対する(in vitro試験によって得られた)最小阻害濃度(MIC)と相関するように調整されるであろう。例えば、表1に挙げるMIC濃度を、投与計画をたてるために用いることができる(Karaca等、Diagnostic Microbiology and Infectious Disease 48: 259-264 (2004)、参照によりその全体を本明細書に組み入れる)。
【表1】

【0034】
種々の目的のために組成物中に他の物質を含めることができる。例えば、緩衝剤および保存剤を使用することができる。使用可能な保存剤としては、限定するものではないが、重亜硫酸ナトリウム、重硫酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、塩化ベンザルコニウム、クロロブタノール、チメロサール、酢酸フェニル水銀、硝酸フェニル水銀、メチルパラベン、ポリビニルアルコールおよびフェニルエチルアルコールが挙げられる。使用可能な緩衝剤の例としては、限定するものではないが、所望の投与経路のためにFDAによって承認されているような炭酸ナトリウム、ホウ酸ナトリウム、リン酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム等が挙げられる。塩化ナトリウムおよび塩化カリウム等の電解質も組成物中に含めることができる。
【0035】
投与
1種以上の薬剤送達システムを、指の末端部分内、またはネイルユニットの任意の部分内に、鉗子、トロカールおよび針等のコンジット、およびシステムを皮膚内に直接駆動するために設計されたアプリケーターを用いた配置を含む、種々の方法によって挿入することができる。コンジットは展性があるように設計することができる。必要に応じて、コンジット、例えば針を、その一部が注入後に標的部位に残り得るように適合させることもできる。例えば、針の末端部を、針の残りの部分から分離できるように設計しても良い。
【0036】
コンジットまたはアプリケーターは、予め1以上の薬剤送達システムを搭載していても良い。1つのバリエーションにおいて、薬剤送達システムはコンジットのルーメン内にあっても良い。別のバリエーションにおいて、薬剤送達システムは、先端のとがったアプリケーターの先端に組み込まれていても、あるいはアプリケーター、例えばバネで稼動するアプリケーターと共に用いられるカートリッジ内に設置されていても良い。
【0037】
1つのバリエーションにおいて、埋め込みの方法は一般に、まず指の末端部分内の標的領域にコンジットが近づくことを含む。標的領域、例えば胚芽マトリクス内に入ると、プッシュロッド、加圧ガス、またはジェット式注入を用いて薬剤送達システムをコンジットから標的領域中に押し込むことができる。一般に、薬剤送達システムは、爪の状態に影響される領域内か、またはこれに近接して配置される。従って、爪真菌症が治療される爪の状態である場合、薬剤送達システムは通常胚芽マトリクスに、もしくはこれに近接して配置され、成長する爪の中への活性剤の取り込みを可能にする。同様に、爪周囲炎が治療される爪の状態である場合、薬剤送達システムは通常、近位の爪甲に、もしくはこれに近接して配置される。標的領域に送達された後、薬剤送達システムは温度変化による、例えば体温に達した後に相変化を起こすことはない。
【0038】
薬剤送達システムを、ネイルユニット内、または指の末端部分内に配置されるものとして記載してきたが、投与方法はそのように制限されるものではない。必要に応じて、薬剤送達システムを指の任意の部分の組織内に配置し、これらの部分に影響する状態を治療することができる。例えば、指の中央部分および/または指の近位部分内に配置することができる。指の中央部分は一般に中節骨(第二節骨)周囲の組織または構造という。指の近位部分は一般に近位節骨(第一節骨)および/もしくは中手骨周囲の組織または構造という。
【0039】
適用
記載された薬剤送達システムで治療され得るネイルユニットの状態の例としては、限定するものではないが、感染症、炎症、および腫瘍等の医学的状態が挙げられる。爪の感染症の例としては、限定するものではないが、先端部および側部爪下の爪真菌症、エンドニクス爪真菌症、白色表在性爪真菌症、近位部爪下の爪真菌症、栄養失調性爪真菌症、カンジダ性爪真菌症、および爪周囲炎が挙げられる。爪の炎症の例としては、限定するものではないが、乾癬および扁平苔癬等の炎症性疾患に関連した状態が挙げられる。爪の腫瘍の例としては、限定するものではないが、グロムス腫瘍、指の粘液様(粘液)嚢胞、爪下外骨腫、および爪周囲血管線維腫が挙げられる。薬剤送達システムはまた、くぼみ、もろさ、または変色等の化粧的なネイルユニットの状態を治療するために使用することもできる。
【0040】
(実施例)
以下の実施例は、上記の組成物の製造および使用方法をより詳細に説明するために記載する。これらの実施例はいかなる意味においても本発明の範囲を制限するために記載するものではなく、説明目的のために提供するものであることが理解される。
【0041】
他に示さない限り、実施例において使用する物質は以下に挙げる業者から入手した:Aldrich Chemicals, Milwaukee, WI
バンコマイシン
Dow Chemical, Midland, MI
HPMC
PEG 3350
Eastman Chemicals, Llangefni, Anglesey, UK
ビタミン E TPGS
EMD Chemicals, Darmstadt, Germany
EDTA
Fluka, Allentown, PA
シプロフロキサシン
JT Baker, Phillpsburg, NJ
カルバミド
Lakeshore Biomaterials, Birmingham, AL
PLGA
Norland High Molecular Weight Fish Gelatin, Cranbury, NJ
ゼラチン
Recordati Espana S.LI, Beniel (Murcia)
フルコナゾール
イトラコナゾール
Recordati S.p.A., Milano, Italy
テルビナフィン
Sigma-Aldrich, Saint Louis, MO
デキサメタゾン
ケトロラク
リドカイン
ポリ(ビニルアルコール)
Spectrum Chemical Mfr., Gardena, CA
ビタミンEサクシネート
【0042】
更に、以下の実施例は、他に示さない限り、調剤、医化学等の伝統的な技術を用いており、これらは当分野の技術範囲内のものである。こうした技術は文献で十分な説明がされている。数値(例えば量、温度等)に関して正確を期すために努力したが、ある程度の実験誤差および偏差が考慮されるべきである。他に示さない限り、「部」は重量部であり、温度は摂氏(℃)であり、圧力は海面における大気圧もしくはその近傍である。全ての成分は他に示さない限り市販のものが入手可能である。
【実施例1】
【0043】
テルビナフィン微粒子の調製およびテルビナフィンのin vitroにおける放出
既定量の薬剤テルビナフィンHCl(3.3g)を油相(ポリマー5.0g/溶媒7.0g)に添加する。ポリマーは分子量が約40,000g/molの50/50ポリ乳酸/グリコール酸であり、溶媒は塩化メチレンである。水相(23.5g)には粘度調整のために乳化剤ポリビニルアルコール(2.5g)が含まれる。およそ3滴のオクタノールを水相に添加して泡立ちを防止または最小限にする。更に、水相中への薬剤の消失を防止するために、水相を薬剤で飽和させる。
【0044】
次に、1インチのインペラミキサーを用いて連続相を約600rpmで攪拌する。次いで油相を水相にゆっくりと添加する。この混合物を約1時間攪拌し、上方に空気を通して蒸発する溶媒を除去する。10分後、スターラーの速度を400rpmに下げる。約30分後の時点で、塩化メチレンのほとんどが蒸発し、エマルジョンの小滴が固化するであろう。更に45分間攪拌を約60rpmで継続して凝集を防止する。次いで真空漏斗および濾紙を用いて固化した微粒子を水溶液から分離する。洗浄を続けて乳化剤を除去した後、微粒子を乾燥し、篩い分けする。400ミクロンより小さい粒子のみを維持する。連続相の攪拌速度を調整することによって、異なる粒子サイズのクラスの収量を調節することができる。
【0045】
次に、微粒子からのテルビナフィンの放出は以下のようにして測定することができる。上記の方法に従って作製した半径約330ミクロンの大きなテルビナフィン微粒子を、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)10mlで満たしたスクリューキャップ付きガラスバイアルに入れ、35℃の温度に維持した振とう水浴中に置く。遠心分離の後、サンプル1.0mlを指定の時点で採り、同量の新しいPBSと置き換える。次いで、分光法、HPLC、質量分析等の当分野において公知の技術で薬剤濃度についてサンプルを分析する。これらの微粒子は以下の表に示す薬剤放出プロファイルを有すると予測される:
【表2】

【0046】
微粒子は一般に高い初期薬剤放出(バースト放出)を提供する。これは、例えば組織に速やかに行き渡らせ、注入初期における分生子のシェディング(shedding)を防止するために望ましい。その後の薬剤放出はより低い速度となるように設計されているであろうが、抗真菌剤の適切な最小阻害濃度(MIC)および/または最小殺真菌濃度(MFC)を維持するのに十分なものであろう。
【実施例2】
【0047】
イトラコナゾール微粒子およびイトラコナゾールのin vitroにおける放出
イトラコナゾールを含有する微粒子を、実施例1に記載した方法に従って、約400ミクロンの大きさで調製する。in vitroにおける薬剤放出は実施例1と同じ方法で測定する。これらの微粒子は以下の表に示すような薬剤放出プロファイルを有すると予測される:
【表3】

【実施例3】
【0048】
シプロフロキサシン微粒子およびシプロフロキサシンのin vitroにおける放出
テルビナフィンの代わりにシプロフロキサシンを添加する以外は実施例1に記載したようにして微粒子を調製する。微粒子の大きさは約250ミクロンとすべきである。これらの微粒子は以下の表に示すような薬剤放出プロファイルを有すると予測される:
【表4】

【0049】
これらの微粒子は活性剤の高い初期バーストを提供し、これは臨床的環境において局所的に高い抗感染濃度レベルを生じるであろう。このことは、例えば外科手術の後に、手術工程の間に侵入し得る微生物が複製して創傷領域で感染を引き起こすことを防止するために望ましい。その後の薬剤放出はより低いが、手術領域での微生物の再コロニー形成を防止し得るin vitroの維持レベルを生じるには十分であろう。第7日目に、累積薬剤放出は理論的薬剤負荷量と等しくなると考えられる。
【実施例4】
【0050】
テルビナフィン固形薬剤送達システム
テルビナフィン薬剤送達システムの調製は、2.0gのMetolose SR(90SH, 100000SR, メチルセルロース, Shin-Etsu Chemical Co., Ltd., Tokyo)を2.0gの水で濡らすことによって達成することができる。このペーストに4.5gのテルビナフィンを添加する。十分に混合した後、得られたペーストを次いでカーバープレスを使用して厚さ約0.4mmの平らなフィルムに成型する。次いでプレスされたフィルムを側壁が薄いテフロンストローを使用して約1.0mm2、約2.0mm2、または約5.0mm2のディスクに切り取る。プレスされたフィルムを最初にトリミングし、次いでそれを所望の幅に切り取ることによって、必要な長さおよび幅のフィルムから四角形のカラムを切り取ることもできる。ディスクまたは四角形のロッド様システムを続いて真空オーブン中で一晩乾燥する。
【0051】
別のバリエーションにおいて、テルビナフィン薬剤送達システムを切片として形成することができる。ゼラチンの飽和水溶液を調製する。微粉化したテルビナフィンを添加してポリマー:薬剤比率が30:70の混合液とする。得られた混合液を標準的なシリコン被覆ポリエステルリリースライナーで被覆したガラスプレート上に入れる。園芸用ナイフを用いて約300mmの厚いフィルムを作製する。得られたフィルムを有するガラスプレートを真空オーブン中に置き、80℃で一晩乾燥させる。次いで得られたフィルムを所望の長さおよび幅の切片に切り取る。
【実施例5】
【0052】
バンコマイシン固形薬剤送達システム
バンコマイシン薬剤送達システムは、2.0gのMetolose SRを2.0gの水で濡らすことによって作製することができる。このペーストに3.6gのバンコマイシンを添加する。十分に混合した後、得られたペーストを次いでカーバープレスを使用して厚さ約1.0mmの平らなフィルムに成型する。次いでプレスされたフィルムを側壁が薄いテフロンストローを使用して約1.0mm2、約2.0mm2、または約5.0mm2のディスクに切り取る。プレスされたフィルムを最初にトリミングし、次いでそれを所望の幅に切り取ることによって、必要な長さおよび幅のフィルムから四角形のカラムを切り取ることもできる。ディスクまたは四角形のロッド様システムを続いて真空オーブン中で一晩乾燥する。
【0053】
別のバリエーションにおいて、バンコマイシン薬剤送達システムは、2.0gのL-HPC(LH-20, 低置換度ヒドロキシプロピルセルロース)(Shin-Etsu Chemical Co., Ltd., Tokyo, Japan)を2.0gの水で濡らすことで作製する。このペーストに3.6gのバンコマイシンを添加する。十分に混合した後、得られたペーストを次いでカーバープレスを使用して厚さ約1.0mmの平らなフィルムに成型する。次いでプレスされたフィルムを側壁が薄いテフロンストローを使用して約1.0mm2、約2.0mm2、または約5.0mm2のディスクに切り取る。プレスされたフィルムを最初にトリミングし、次いでそれを所望の幅に切り取ることによって、必要な長さおよび幅のフィルムから四角形のカラムを切り取ることもできる。ディスクまたは四角形のロッド様のシステムを続いて真空オーブン中で一晩乾燥する。
【実施例6】
【0054】
イトラコナゾール固形薬剤送達システム
イトラコナゾール薬剤送達システムは、2.0gのMetolose SRを2.0gの水で濡らすことによって作製することができる。このペーストに4.0gのイトラコナゾールを添加する。十分に混合した後、得られたペーストを次いでカーバープレスを使用して厚さ約1.0mmの平らなフィルムに成型する。次いでプレスされたフィルムを側壁が薄いテフロンストローを使用して約1.0mm2、約2.0mm2、または約5.0mm2のディスクに切り取る。プレスされたフィルムを最初にトリミングし、次いでそれを所望の幅に切り取ることによって、必要な長さおよび幅のフィルムから四角形のカラムを切り取ることもできる。ディスクまたは四角形のロッド様システムを続いて真空オーブン中で一晩乾燥する。
【実施例7】
【0055】
デキサメタゾン固形薬剤送達システム
デキサメタゾン薬剤送達システムは、2.0gのL-HPCを2.0gの水で濡らすことによって作製することができる。このペーストに4.0gのデキサメタゾンを添加する。十分に混合した後、得られたペーストを次いでカーバープレスを使用して厚さ約1.0mmの平らなフィルムに成型する。次いでプレスされたフィルムを側壁が薄いテフロンストローを使用して約1.0mm2、約2.0mm2、または約5.0mm2のディスクに切り取る。プレスされたフィルムを最初にトリミングし、次いでそれを所望の幅に切り取ることによって、必要な長さおよび幅のフィルムから四角形のカラムを切り取ることもできる。ディスクまたは四角形のロッド様システムを続いて真空オーブン中で一晩乾燥する。
【実施例8】
【0056】
リドカイン固形薬剤送達システム
リドカイン薬剤送達システムは、2.0gのMetolose SRを2.0gの水で濡らすことによって作製することができる。このペーストに2.0gのリドカインを添加する。十分に混合した後、得られたペーストを次いでカーバープレスを使用して厚さ約1.0mmの平らなフィルムに成型する。次いでプレスされたフィルムの片側に0.5重量%のCA-398-10NFのアセトン溶液を噴霧する。次いで約3.0mm×約5.0mmの切片を切り取り、真空オーブン中で一晩乾燥する。
【実施例9】
【0057】
ケトロラク固形薬剤送達システム
ケトロラク薬剤送達システムは、まずヒアルロン酸の飽和水溶液を調製することによって形成することができる。次いで微粉化したS(-)ケトロラクを溶液に添加してポリマー:薬剤比率が40:60の混合液とする。得られた混合液を標準的なシリコン被覆ポリエステルリリースライナーで被覆したガラスプレート上に入れる。園芸用ナイフを用いて混合液を広げ、約300mmの厚いフィルムを作製する。得られたフィルムを有するガラスプレートを真空オーブン中に置き、80℃で一晩乾燥させる。次いで得られたフィルムを所望の長さおよび幅の切片に切り取る。
【実施例10】
【0058】
メタドン固形薬剤送達システム
メタドン薬剤送達システムは、まずヒアルロン酸の飽和水溶液を調製することによって形成することができる。次いで微粉化したR(-)メタドンを溶液に添加してポリマー:薬剤比率が40:60の混合液とする。得られた混合液を標準的なシリコン被覆ポリエステルリリースライナーで被覆したガラスプレート上に入れる。園芸用ナイフを用いて広げ、約300mmの厚いフィルムを作製する。得られたフィルムを有するガラスプレートを真空オーブン中に置き、80℃で一晩乾燥させる。次いで得られたフィルムを所望の長さおよび幅の切片に切り取る。
【実施例11】
【0059】
デキサメタゾンおよびイトラコナゾールの組み合わせ薬剤送達システム
デキサメタゾンおよびイトラコナゾールの組み合わせ薬剤送達システムは、2.0gのAQOAT 腸溶性被覆剤(AS/HF、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート)(Shin-Etsu Chemical Co.,Ltd., Tokyo, Japan)を2gの水で濡らすことによって作製することができる。このペーストに1.5gのデキサメタゾンおよび3.5gのイトラコナゾールを添加する。十分に混合した後、得られたペーストを次いでカーバープレスを使用して厚さ約1.0mmの平らなフィルムに成型する。次いでプレスされたフィルムを、側壁が薄いテフロンストローを使用して約1.0mm2、約2.0mm2、または約5.0mm2のディスクに切り取る。プレスされたフィルムを最初にトリミングし、次いでそれを所望の幅に切り取ることによって、必要な長さおよび幅のフィルムから四角形のカラムを切り取ることもできる。ディスクまたは四角形のロッド様システムを次に真空オーブン中で一晩乾燥する。
【0060】
別のバリエーションとして、デキサメタゾンおよびイトラコナゾールの組み合わせ薬剤送達システムは、2.0gのゼラチンを2.0gの水で濡らすことによって作製することができる。このペーストに1.5gのデキサメタゾンおよび3.0gのイトラコナゾールを添加する。十分に混合した後、得られたペーストを次いでカーバープレスを使用して厚さ約1.0mmの平らなフィルムに成型する。次いでプレスされたフィルムを、側壁が薄いテフロンストローを使用して約1.0mm2、約2.0mm2、または約5.0mm2のディスクに切り取る。プレスされたフィルムを最初にトリミングし、次いでそれを所望の幅に切り取ることによって、必要な長さおよび幅のフィルムから四角形のカラムを切り取ることもできる。ディスクまたは四角形のロッド様システムを次に真空オーブン中で一晩乾燥する。
【実施例12】
【0061】
デキサメタゾンおよびシプロフロキサシンの組み合わせ薬剤送達システム
デキサメタゾンおよびシプロフロキサシンの組み合わせ薬剤送達システムは、2.0gのゼラチンを2.0gの水で濡らすことによって形成することができる。このペーストに1.5gのデキサメタゾンおよび1.5gのシプロフロキサシンを添加する。十分に混合した後、得られたペーストを次いでカーバープレスを使用して厚さ約1.0mmの平らなフィルムに成型する。次いでプレスされたフィルムを、側壁が薄いテフロンストローを使用して約1.0mm2、約2.0mm2、または約5.0mm2のディスクに切り取る。プレスされたフィルムを最初にトリミングし、次いでそれを所望の幅に切り取ることによって、必要な長さおよび幅のフィルムから四角形のカラムを切り取ることもできる。ディスクまたは四角形のロッド様システムを次に真空オーブン中で一晩乾燥する。
【実施例13】
【0062】
デキサメタゾン押し出し薬剤送達システム
デキサメタゾン、およびインヘレント粘度0.24の50/50ポリ乳酸/ポリグリコール酸コポリマーの良く混合した粉末1gを量り、バッチ押し出し装置内に充填し、95℃で1時間加熱した。次いで融解生成物を円形オリフィスを通して押し出し、直径約0.4mmのフィラメントを作製した。このフィラメントから種々の長さのサブユニットを切り取り、PBS中、pH7.4で、USP Paddle装置を使用してin vitroにおける薬剤放出について試験した。400μmの円形オリフィスを通して押し出された2.2mm長のフィラメントからのデキサメタゾンの放出を以下の表に示す:
【表5】

【実施例14】
【0063】
テルビナフィン押し出し薬剤送達システム−テルビナフィン負荷70%
PEGマトリクス
テルビナフィン押し出し送達システムを、まずテルビナフィンHClおよびPEGをそれぞれ70:30の比率で混合することによって作製した(混合物の総重量は0.5gであった)。この混合物をバッチ押し出し装置内に充填し、115℃で1時間加熱した。次いで融解生成物を円形オリフィスを通して押し出し、直径約0.4mmのフィラメントを作製した。このフィラメントから種々の長さのサブユニットを切り取り、サンプルあたり1.0mlを採る代わりにサンプルあたり8.0mlを採る以外は実施例1に記載したようにして、in vitroにおける薬剤放出について試験した。サンプルのpHは7.4と測定された。3.0mm長のフィラメントからのテルビナフィン放出を以下の表に示す:
【表6】

【0064】
PEG/ビタミンE TPGSマトリクス
テルビナフィン押し出し送達システムを、まずテルビナフィンHCl、PEG 3350、およびD-α-トコフェリルポリエチレングリコール1000サクシネート(ビタミンE TPGS)をそれぞれ70:15:15の比率で含有する良く混合された粉末を調製することによって作製した(混合物の総重量は0.25gであった)。この良く混合された粉末をバッチ押し出し装置内に充填し、115℃で1時間加熱した。次いで融解生成物を円形オリフィスを通して押し出し、直径約330μmのフィラメントを作製した。このフィラメントから種々の長さのサブユニットを切り取り、実施例1に記載したようにしてin vitroにおける薬剤放出について試験した。上記のように、受容媒体はPBSであり、サンプルあたり採取された体積は8mlであった。サンプルのpHは7.4であった。3.0mm長のフィラメントからのテルビナフィン放出を以下の表に示す:
【表7】

【0065】
PEG/PLGAマトリクス
テルビナフィン押し出し送達システムを、まずテルビナフィンHCl、PEG、およびPLGAのそれぞれ70:15:15の比率の混合物を調製することによって作製した(混合物の総重量は0.25gであった)。この良く混合された粉末をバッチ押し出し装置内に充填し、115℃で1時間加熱した。次いで融解生成物を円形オリフィスを通して押し出し、直径約330μmのフィラメントを作製した。このフィラメントから種々の長さのサブユニットを切り取り、実施例1に記載したようにしてin vitroにおける薬剤放出について試験した。上記のように、受容媒体はPBSであり、サンプルあたり採取された体積は8mlであった。サンプルのpHは7.4であった。3.0mm長のフィラメントからのテルビナフィン放出を以下の表に示す:
【表8】

【0066】
更に別のバリエーションにおいて、テルビナフィン押し出し送達システムを、まずテルビナフィンHCl、PLGA、およびPEGの70:20:10の比率の混合物を調製することによって作製した(混合物の総重量は0.25gであった)。この良く混合された粉末をバッチ押し出し装置内に充填し、115℃で1時間加熱した。次いで融解生成物を円形オリフィスを通して押し出し、直径約415μmのフィラメントを作製した。このフィラメントから種々の長さのサブユニットを切り取り、実施例1に記載したようにしてin vitroにおける薬剤放出について試験した。上記のように、受容媒体はPBSであり、サンプルあたり採取された体積は8mlであった。サンプルのpHは7.4であった。3.0mm長のフィラメントからのテルビナフィン放出を以下の表に示す:
【表9】

【0067】
PLGA/ビタミンEサクシネートマトリクス
テルビナフィン押し出し送達システムを、まずテルビナフィンHCl、PLGA、およびビタミンEサクシネートのそれぞれ70:27.5:2.5の比率の混合物を調製することによって作製した(混合物の総重量は0.25gであった)。この良く混合された粉末をバッチ押し出し装置内に充填し、115℃で1時間加熱した。次いで融解生成物を円形オリフィスを通して押し出し、直径約415μmのフィラメントを作製した。このフィラメントから種々の長さのサブユニットを切り取り、実施例1に記載したようにしてin vitroにおける薬剤放出について試験した。上記のように、受容媒体はPBSであり、サンプルあたり採取された体積は8mlであった。サンプルのpHは7.4であった。3.0mm長のフィラメントからのテルビナフィン放出を以下の表に示す:
【表10】

【0068】
ビタミンEサクシネート/PEG 3350マトリクス
テルビナフィン押し出し送達システムを、まずテルビナフィンHCl、ビタミンEサクシネート、およびPEG 3350のそれぞれ70:15:15の比率の混合物を調製することによって作製した(混合物の総重量は0.25gであった)。この良く混合された粉末をバッチ押し出し装置内に充填し、115℃で1時間加熱した。次いで融解生成物を円形オリフィスを通して押し出し、直径約415μmのフィラメントを作製した。このフィラメントから種々の長さのサブユニットを切り取り、実施例1に記載したようにしてin vitroにおける薬剤放出について試験した。上記のように、受容媒体はPBSであり、サンプルあたり採取された体積は8mlであった。サンプルのpHは7.4であった。3.0mm長のフィラメントからのテルビナフィン放出を以下の表に示す:
【表11】

【0069】
PLGA/ジメチルスルフォンマトリクス
テルビナフィン押し出し送達システムを、まずテルビナフィンHCl、PLGA、およびジメチルスルフォンのそれぞれ70:25:5の比率の混合物を調製することによって作製した(混合物の総重量は0.25gであった)。この良く混合された粉末をバッチ押し出し装置内に充填し、115℃で1時間加熱した。次いで融解生成物を円形オリフィスを通して押し出し、直径約415μmのフィラメントを作製した。このフィラメントから種々の長さのサブユニットを切り取り、実施例1に記載したようにしてin vitroにおける薬剤放出について試験した。上記のように、受容媒体はPBSであり、サンプルあたり採取された体積は8mlであった。サンプルのpHは7.4であった。3.0mm長のフィラメントからのテルビナフィン放出を以下の表に示す:
【表12】

【0070】
カルバミドマトリクス
テルビナフィン押し出し送達システムを、まずテルビナフィンHClおよびカルバミドのそれぞれ70:30の比率の混合物を調製することによって作製した(混合物の総重量は0.25gであった)。この良く混合された粉末をバッチ押し出し装置内に充填し、115℃で1時間加熱した。次いで融解生成物を円形オリフィスを通して押し出し、直径約415μmのフィラメントを作製した。このフィラメントから種々の長さのサブユニットを切り取り、実施例1に記載したようにしてin vitroにおける薬剤放出について試験した。上記のように、受容媒体はPBSであり、サンプルあたり採取された体積は8mlであった。サンプルのpHは7.4であった。3.0mm長のフィラメントからのテルビナフィン放出を以下の表に示す:
【表13】

【実施例15】
【0071】
テルビナフィン押し出し薬剤送達システム−テルビナフィン負荷80%
テルビナフィン押し出し送達システムは、まずテルビナフィンHClおよびマトリクス形成物質としてのPEGを80:20の比率でそれぞれ混合することによって作製した(混合物の総重量は0.5gである)。混合物をバッチ押し出し装置内に充填し、115℃で1時間加熱した。次いで融解生成物を円形オリフィスを通して押し出し、直径約0.4mmのフィラメントを作製した。このフィラメントから種々の長さのサブユニットを切り取り、サンプルあたり1.0mlを採る代わりにサンプルあたり8.0mlを採る以外は実施例1に記載したようにして、in vitroにおける薬剤放出について試験した。サンプルのpHは7.4と測定された。3.0mm長のフィラメントからのテルビナフィン放出を以下の表に示す:
【表14】

【実施例16】
【0072】
フルコナゾール押し出し薬剤送達システム−フルコナゾール負荷80%
フルコナゾール押し出し送達システムは、まずフルコナゾールおよびマトリクス形成物質としてのPEGを80:20の比率でそれぞれ混合することによって作製した(混合物の総重量は0.5gである)。混合物をバッチ押し出し装置内に充填し、115℃で1時間加熱した。次いで融解生成物を円形オリフィスを通して押し出し、直径約0.4mmのフィラメントを作製した。このフィラメントから種々の長さのサブユニットを切り取り、サンプルあたり1.0mlを採る代わりにサンプルあたり8.0mlを採る以外は実施例1に記載したようにして、in vitroにおける薬剤放出について試験した。サンプルのpHは7.4と測定された。3.0mm長のフィラメントからのテルビナフィン放出を以下の表に示す:
【表15】

【実施例17】
【0073】
イトラコナゾール押し出し薬剤送達システム
イトラコナゾール押し出し送達システムは、まずイトラコナゾールおよびマトリクス形成物質としてのPEGを80:20の比率でそれぞれ混合することによって作製した(混合物の総重量は0.5gである)。混合物をバッチ押し出し装置内に充填し、115℃で1時間加熱した。次いで融解生成物を円形オリフィスを通して押し出し、直径約0.4mmのフィラメントを作製した。このフィラメントから種々の長さのサブユニットを切り取り、サンプルあたり1.0mlを採る代わりにサンプルあたり8.0mlを採る以外は実施例1に記載したようにして、in vitroにおける薬剤放出について試験した。サンプルのpHは7.4と測定された。3.0mm長のフィラメントからのテルビナフィン放出を以下の表に示す:
【表16】

【実施例18】
【0074】
ケトロラク押し出し薬剤送達システム
活性剤S(-)ケトロラク、および平均分子量20,000g/molの50/50 ポリ乳酸/ポリグリコール酸コポリマーを50:50の比率で含有する良く混合された粉末1gをまず調製する。次いでこの良く混合された粉末をバッチ押し出し装置内に充填し、115℃で1時間加熱する。融解生成物を円形オリフィスを通して押し出し、直径約0.33mmのフィラメントを作製する。次いでこのフィラメントから種々の長さのサブユニットを切り取ることができる。
【実施例19】
【0075】
メタドン押し出し薬剤送達システム
メタドン押し出し薬剤送達システムは、まずR(-)メタドンを、平均分子量が45,000g/molの50/50 ポリ乳酸/ポリグリコール酸コポリマーと60:40の比率でそれぞれ混合することによって作製することができる(混合物の総重量は0.5gである)。よく混合した粉末をバッチ押し出し装置内に充填し、115℃で1時間加熱する。次いで融解生成物を円形オリフィスを通して押し出し、直径約0.9mmのフィラメントを作製する。次いでこのフィラメントから種々の長さのサブユニットを切り取ることができる。
【実施例20】
【0076】
クリンダマイシン押し出し薬剤送達システム
クリンダマイシン押し出し薬剤送達システムは、クリンダマイシン、および平均分子量が20,000g/molの50/50 ポリ乳酸/ポリグリコール酸コポリマーを50:50の比率で混合することによって作製することができる(混合物の総重量は0.5gである)。よく混合した粉末をバッチ押し出し装置内に充填し、115℃で1時間加熱する。次いで融解生成物を円形オリフィスを通して押し出し、直径約0.5mmのフィラメントを作製する。次いでこのフィラメントから種々の長さのサブユニットを切り取ることができる。
【実施例21】
【0077】
ガンシクロビル押し出し薬剤送達システム
ガンシクロビル、および平均分子量50,000g/molの50/50 ポリ乳酸/ポリグリコール酸コポリマーを80:20の比率でそれぞれ良く混合した粉末1gを調製する。良く混合した粉末をバッチ押し出し装置内に充填し、110℃で1時間加熱する。次いで融解生成物を円形オリフィスを通して押し出し、直径約1.1mmのフィラメントを作製する。押し出されたフィラメント部分をPharmacoat 615の3重量%水溶液に浸す。次いで被覆されたフィラメント部分を室温下で真空オーブン中で一晩乾燥する。次いでオーバーコートされたフィラメントから種々の長さのサブユニットを切り取ることができる。
【実施例22】
【0078】
デキサメタゾンおよびビタミンEの組み合わせ押し出し薬剤送達システム
デキサメタゾンおよびビタミンEの組み合わせの押し出し薬剤送達システムは、ビタミンEエステルd-α-酢酸トコフェリルをデキサメタゾン粉末と50:50の比率で混合し、次いでこの混合物を直径約0.5mmの円形オリフィスを通して50℃の温度で押し出すことによって作製することができる。次いで融解生成物を種々の長さの投与単位に分割し、一晩冷却する。
【0079】
別のバリエーションにおいて、ビタミンEエステルd-α-コハク酸トコフェリルをデキサメタゾン粉末と50:50の比率で混合し、次いで直径約0.5mmの円形オリフィスを通して90℃の温度で押し出す。次いで融解生成物を種々の長さの投与単位に分割し、一晩冷却する。
【実施例23】
【0080】
テルビナフィン液体薬剤送達システム
カルバミドおよびテルビナフィンを、70:30、60:40、50:50、40:60、および30:70の比率でそれぞれ混合し、次いで小さなHPLC用ガラスバイアル中で170℃まで加熱した。得られた液体を注入の実施可能性について試験した。試験は溶液の物理的性質を温度の関数として検討するために実施した。
【実施例24】
【0081】
遊離塩基テルビナフィン
テルビナフィンHClの水溶液をpH 7.5〜13.0で水酸化ナトリウムと反応させて遊離塩基(塩基)形態の薬剤を形成することができる。遊離塩基形態は油性の溶液にし、この形態のままで部位まで送達できる。遊離塩基および塩の混合物を使用しても良い。
【実施例25】
【0082】
テルビナフィン微粒子−テルビナフィン負荷30%未満およびテルビナフィンのin vitroにおける放出
テルビナフィンを含む微粒子は実施例1に記載の方法に従って調製する。平均的な微粒子の大きさを約50-100μmに下げるために、スターラーの速度をより速い回転数、例えば1250-1500rpmに調整することができる。サイズがより小さいこれらの微粒子は、投与方法が、例えばプッシュロッド、加圧ガス、ジェット式注入等を用いて皮膚中に、および/または皮膚を介して微粒子を押し込むことを含む場合に、より良好な浸透プロファイルを有すると予測される。更に、薬剤放出の持続時間を長くするために、より高分子量、例えば75,000g/molのポリマーを使用しても良い。薬剤放出を更に調節するために、より小さい薬剤対ポリマー比率(例えば薬剤1.5g/ポリマー5g)を用いて微粒子中の負荷量を下げても良い。次に、実施例1と同じ方法でin vitroにおける薬剤放出を測定することができる。これらの微粒子は以下の表に示すような薬剤放出プロファイルを有すると予測される。
【表17】

【0083】
本明細書において引用した全ての文献、特許、および特許出願は、個々の文献、特許、または特許出願が、参照により組み込まれることを特定して個別に示されるのと同じ程度に、全ての目的のために参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。上記の組成物および方法は、明瞭な理解の目的のための説明および例としてやや詳しく記載したが、特許請求の範囲の精神および範囲から逸脱することなく、これらに対して特定の変更および改変を行うことができることは、当業者であれば本明細書の記載に照らして容易に理解されるであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
持続的放出のための治療的有効量の活性剤を含有する組成物を含む、ネイルユニットの状態を治療するための薬剤送達システムであって、該組成物が指への局所的投与のために構成された温度非依存性相変化組成物である、該薬剤送達システム。
【請求項2】
ネイルユニットの状態が真菌感染である、請求項1記載の薬剤送達システム。
【請求項3】
真菌感染が爪真菌症である、請求項2記載の薬剤送達システム。
【請求項4】
組成物が微粒子を含有する、請求項1記載の薬剤送達システム。
【請求項5】
組成物が液体として製剤化されている、請求項1記載の薬剤送達システム。
【請求項6】
液体が水溶液である、請求項5記載の薬剤送達システム。
【請求項7】
液体が非水性の溶液である、請求項5記載の薬剤送達システム。
【請求項8】
液体が懸濁液である、請求項5記載の薬剤送達システム。
【請求項9】
組成物が半固体として製剤化されている、請求項1記載の薬剤送達システム。
【請求項10】
半固体がゲルまたはペーストである、請求項9記載の薬剤送達システム。
【請求項11】
組成物が固体として製剤化されている、請求項1記載の薬剤送達システム。
【請求項12】
組成物が結晶形態の活性剤を含有する、請求項1記載の薬剤送達システム。
【請求項13】
活性剤が鎮痛剤、麻酔剤、抗感染剤、抗炎症剤、化学療法剤、核酸、ペプチド、タンパク質、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項1記載の薬剤送達システム。
【請求項14】
活性剤が抗感染剤を含む、請求項13記載の薬剤送達システム。
【請求項15】
抗感染剤が抗細菌剤、抗真菌剤、抗ウイルス剤、防腐剤、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項14記載の薬剤送達システム。
【請求項16】
活性剤が抗真菌剤を含む、請求項15記載の薬剤送達システム。
【請求項17】
抗真菌剤が、アモロルフィン、シクロピロクス、フルシトシン、グリセオフルビン、ハロプログリン、ヨウ化カリウムピリチオンナトリウム、ウンデシレン酸、イミダゾール誘導体、トリアゾール誘導体、アリルアミン、ポリエン系抗真菌抗生物質、抗真菌性有機酸、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項16記載の薬剤送達システム。
【請求項18】
イミダゾール誘導体がビホナゾール、ブトコナゾール、クロトリマゾール、エコナゾール、ケトコナゾール、ミコナゾール、オキシコナゾール、スルコナゾール、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項17記載の薬剤送達システム。
【請求項19】
トリアゾール誘導体がイトラコナゾール、フルコナゾール、テルコナゾール、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項17記載の薬剤送達システム。
【請求項20】
アリルアミンがナフチンを含む、請求項17記載の薬剤送達システム。
【請求項21】
アリルアミンがテルビナフィンを含む、請求項20記載の薬剤送達システム。
【請求項22】
ポリエン系抗真菌抗生物質がアンフォテリシンBまたはナイスタチンを含む、請求項17記載の薬剤送達システム。
【請求項23】
抗真菌性有機酸が安息香酸、サリチル酸、プロピオン酸、カプリル酸、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項17記載の薬剤送達システム。
【請求項24】
活性剤が抗炎症剤を含む、請求項16記載の薬剤送達システム。
【請求項25】
活性剤が抗真菌剤および抗炎症剤を含む、請求項1記載の薬剤送達システム。
【請求項26】
抗真菌剤がイトラコナゾールを含み、抗炎症剤がデキサメタゾンを含む、請求項25記載の薬剤送達システム。
【請求項27】
30重量%未満の活性剤を含有する、請求項1記載の薬剤送達システム。
【請求項28】
更に製薬上許容される担体を含有する、請求項1記載の薬剤送達システム。
【請求項29】
製薬上許容される担体が生体適合性ポリマーを含む、請求項1記載の薬剤送達システム。
【請求項30】
生体適合性ポリマーが、ポリ(ラクチド)類;ポリ(グリコリド)類;ポリ(ラクチド−コ−グリコリド)類;ポリ(乳酸)類;ポリ(グリコール酸)類;ポリ(乳酸−コ−グリコール酸)類;ポリ(カプロラクトン)類;ポリ(オルトエステル)類;ポリ(ホスホエステル)類;ポリ(ホスファゼン)類;ポリ(ヒドロキシブチレート)類もしくはポリ(ヒドロキシブチレート)を含むコポリマー類;ポリ(ラクチド−コ−カプロラクトン)類;ポリカーボネート類;ポリエステルアミド類;ポリアンヒドリド類;ポリ(ジオキサノン)類;ポリ(アルキレンアルキレート)類;ポリエチレングリコール類;生分解性ポリウレタン類;ポリ(アミノ酸)類;ポリエーテルエステル類;ポリアセタール類;ポリシアノアクリレート類;ポリ(オキシエチレン)/ポリ(オキシプロピレン)コポリマー類;およびこれらのブレンドおよびコポリマーからなる群より選択される、請求項29記載の薬剤送達システム。
【請求項31】
生体適合性ポリマーがポリエチレングリコールを含む、請求項30記載の薬剤送達システム。
【請求項32】
ポリエチレングリコールがポリエチレングリコール3350を含む、請求項31記載の薬剤送達システム。
【請求項33】
製薬上許容される担体が生分解性ポリマーを含む、請求項28記載の薬剤送達システム。
【請求項34】
生分解性ポリマーがポリ(乳酸−コ−グリコール酸)(PLGA)コポリマーを含む、請求項33記載の薬剤送達システム。
【請求項35】
組成物が指への注入に適合している、請求項1記載の薬剤送達システム。
【請求項36】
持続的放出のための治療的有効量の活性剤を含有する温度非依存性相変化組成物を指に投与することを含む、ネイルユニットの状態の治療方法。
【請求項37】
ネイルユニットの状態が真菌感染である、請求項36記載の方法。
【請求項38】
真菌感染が爪真菌症である、請求項37記載の方法。
【請求項39】
上記指が末端部分および近位部分を含む、請求項36記載の方法。
【請求項40】
末端部分が爪甲、爪郭、およびマトリクスを有するネイルユニットを含む、請求項39記載の方法。
【請求項41】
組成物をマトリクス内に投与する、請求項40記載の方法。
【請求項42】
組成物を爪郭内に投与する、請求項40記載の方法。
【請求項43】
上記指が更に中央部分を含む、請求項39記載の方法。
【請求項44】
組成物を指の中央部分内に投与する、請求項43記載の方法。
【請求項45】
指が手の指である、請求項36記載の方法。
【請求項46】
指が足の指である、請求項36記載の方法。
【請求項47】
組成物をコンジットを介する注入によって投与する、請求項36記載の方法。
【請求項48】
コンジットが針を含む、請求項47記載の方法。
【請求項49】
針の一部が組成物の注入後に指内に留まるように構成されている、請求項48記載の方法。
【請求項50】
組成物を加圧ガスを用いて投与する、請求項36記載の方法。
【請求項51】
アプリケーターを用いて組成物を指内に押し込む、請求項36記載の方法。
【請求項52】
組成物が微粒子を含有する、請求項36記載の方法。
【請求項53】
加圧ガスを用いて微粒子を投与する、請求項52記載の方法。
【請求項54】
組成物が液体として製剤化されている、請求項36記載の方法。
【請求項55】
液体が水溶液を含む、請求項54記載の方法。
【請求項56】
液体が非水性の溶液を含む、請求項54記載の方法。
【請求項57】
液体が懸濁液を含む、請求項54記載の方法。
【請求項58】
組成物が半固体として製剤化されている、請求項36記載の方法。
【請求項59】
半固体がゲルまたはペーストである、請求項58記載の方法。
【請求項60】
組成物が固体として製剤化されている、請求項36記載の方法。
【請求項61】
組成物が結晶形態の活性剤を含有する、請求項36記載の方法。
【請求項62】
活性剤が鎮痛剤、麻酔剤、抗感染剤、抗炎症剤、化学療法剤、核酸、ペプチド、タンパク質、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項36記載の方法。
【請求項63】
活性剤が抗感染剤を含む、請求項62記載の方法。
【請求項64】
抗感染剤が抗細菌剤、抗真菌剤、抗ウイルス剤、防腐剤、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項63記載の方法。
【請求項65】
活性剤が抗真菌剤を含む、請求項64記載の方法。
【請求項66】
抗真菌剤が、アモロルフィン、シクロピロクス、フルシトシン、グリセオフルビン、ハロプログリン、ヨウ化カリウムピリチオンナトリウム、ウンデシレン酸、イミダゾール誘導体、トリアゾール誘導体、アリルアミン、ポリエン系抗真菌抗生物質、抗真菌性有機酸、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項65記載の方法。
【請求項67】
イミダゾール誘導体がビホナゾール、ブトコナゾール、クロトリマゾール、エコナゾール、ケトコナゾール、ミコナゾール、オキシコナゾール、スルコナゾール、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項66記載の方法。
【請求項68】
トリアゾール誘導体がイトラコナゾール、フルコナゾール、テルコナゾール、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項66記載の方法。
【請求項69】
アリルアミンがナフチンを含む、請求項66記載の方法。
【請求項70】
アリルアミンがテルビナフィンを含む、請求項66記載の方法。
【請求項71】
ポリエン系抗真菌抗生物質がアンフォテリシンBまたはナイスタチンを含む、請求項66記載の方法。
【請求項72】
抗真菌性有機酸が安息香酸、サリチル酸、プロピオン酸、カプリル酸、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項66記載の方法。
【請求項73】
活性剤が抗炎症剤を含む、請求項62記載の方法。
【請求項74】
活性剤が抗真菌剤および抗炎症剤を含む、請求項62記載の方法。
【請求項75】
抗真菌剤がテルビナフィンを含み、抗炎症剤がデキサメタゾンを含む、請求項74記載の方法。
【請求項76】
組成物が30重量%未満の活性剤を含有する、請求項36記載の方法。

【公表番号】特表2009−538307(P2009−538307A)
【公表日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−512117(P2009−512117)
【出願日】平成19年5月22日(2007.5.22)
【国際出願番号】PCT/US2007/012243
【国際公開番号】WO2007/139804
【国際公開日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(508346479)タリマ セラピューティクス,インコーポレーテッド (1)
【Fターム(参考)】