説明

ノズルプレートの製造方法、液滴吐出ヘッドおよび液滴吐出装置

【課題】 ノズルプレートの製造工程の簡略化を図るとともに、より微細な凹凸を低コストで形成することができるノズルプレートの製造方法、液滴吐出ヘッドおよび液滴吐出装置を提供すること。
【解決手段】 液滴を吐出するためのノズル孔の周囲に微小な凹凸が形成されたノズルプレートの製造方法であって、前記凹凸の凸部または凹部に対応した凸部202A1を有する型202Aを用いて、前記凹凸の凸部とほぼ同パターンのマスク205を基板105の表面に形成する第1の工程と、マスク205を用いて基板105をエッチングすることにより、基板105の表面に微小な凹凸を形成する第2の工程とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ノズルプレートの製造方法、液滴吐出ヘッドおよび液滴吐出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液滴を吐出するための液滴吐出ヘッドとしては、例えば、インクジェットプリンタに備えられたインクジェットヘッドが知られている。インクジェットヘッドは、一般に、ノズル孔の形成されたノズルプレートと、このノズルプレートに接合され、ノズルプレートとの間でインクを収容するためのキャビティを前記ノズル孔に連通するように形成するキャビティプレートとを備え、前記ノズル孔からインク滴を吐出する(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1にかかるインクジェットヘッドにおいては、ノズルプレートにおけるノズル孔のインク吐出側の面でのインクの固着防止などの目的で、ノズル孔の周囲に撥液処理が施されている。より具体的には、特許文献1のノズルプレートは、ノズル孔の周囲に微細な凹凸を設けることにより撥液性を付与して、インクの固着などを防止している。
このようなノズルプレートの製造に際しては、基板にフォトレジストを形成し、前記凹凸に対応したフォトマスクを介して露光・現像することにより、前記フォトマスクの露光部分または非露光部分を除去して、マスクパターンを形成し、前記マスクパターンを介してエッチングを施すことにより前記微細な凹凸を形成する。
【0004】
しかし、特許文献1では、露光部分または非露光部分を洗い流すための処理工程(現像工程)が必要となるので、工程が煩雑となり、また、排液の処理などの手間がかかる。
また、フォトマスクを介して露光を行う必要があるため、露光用の光がフォトマスクで回折を生じてしまい、微細加工には限界がある。特許文献1では、電子線などの回折量の小さい光源を用いて、凹凸の微細化を図っているが、このような光源は高価であるため、製造コストが高くなり、その結果、ノズルプレートの高コスト化を招いてしまう。
【0005】
【特許文献1】国際公開第99/12740号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、ノズルプレートの製造工程の簡略化を図るとともに、より微細な凹凸を低コストで形成することができるノズルプレートの製造方法を提供すること、さらには、低コストで、ノズル孔の周囲における液滴の固着を確実に防止することができる液滴吐出ヘッドおよび液滴吐出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このような目的は、下記の本発明により達成される。
本発明のノズルプレートの製造方法は、液滴を吐出するためのノズル孔の周囲に微小な凹凸が形成されたノズルプレートの製造方法であって、
前記凹凸の凸部または凹部に対応した凸部を有する型を用いて、前記凹凸の凸部とほぼ同パターンのマスクパターンを基板の表面に形成する第1の工程と、
前記マスクパターンを用いて前記基板をエッチングすることにより、前記基板の表面に微小な凹凸を形成する第2の工程とを有することを特徴とする。
【0008】
これにより、露光・現像工程を必要とせずに、基板の表面にマスクパターンを形成することができるので、マスクパターンの形成工程が簡略化され、その結果、ノズルプレートの製造工程の簡略化を図ることができる。
また、型は繰り返し使用することができるため、型の微細加工にコストをかけることができ、より微細な凹凸を低コストで形成することができる。
【0009】
本発明のノズルプレートの製造方法では、前記第1の工程では、前記型が前記凹凸の凸部に対応した凸部を有し、前記型の凸部にマスク材料を付与した状態で、前記型を基板に押し当てることにより、前記マスク材料を前記基板に転写して、前記マスクパターンを形成することが好ましい。
これにより、型から基板へマスク材料を付与すると同時にマスクパターンが形成されるので、マスクパターンの形成工程がより簡略化され、その結果、ノズルプレートの製造工程の簡略化をより図ることができる。
【0010】
本発明のノズルプレートの製造方法では、前記第1の工程では、前記型が前記凹凸の凹部に対応した凸部を有し、前記基板の表面にマスク膜を形成し、前記型の凸部と前記基板との間で前記マスク膜にエネルギを付与することにより、前記マスク膜の一部を除去して、前記マスクパターンを形成することが好ましい。
これにより、凹凸の凸部よりも凹部の方が簡単な形状をなしている場合に、基板にマスクパターンを比較的容易に形成することができる。
【0011】
本発明のノズルプレートの製造方法では、前記エネルギとして、前記型と前記基板との間に電圧を印加することが好ましい。
これにより、型の先端を小さくするだけで、微小な開口が形成されたマスクパターンを形成することができるので、凹凸の微細化を図りつつ、型を比較的簡単に製造することができる。
【0012】
本発明のノズルプレートの製造方法では、前記型を前記基板に押し当てることによって、前記マスク膜に前記エネルギとして押圧力を印加することが好ましい。
これにより、有機膜にマスクパターンを簡単かつ精度よく形成することができる。
本発明のノズルプレートの製造方法では、第2の工程では、前記マスクパターンとともに、前記マスクパターンを介して前記基板をドライエッチングすることにより、前記凹凸を形成することが好ましい。
これにより、有機膜に形成された凹凸の形状に応じた凹凸を基板の表面に形成することができる。したがって、横断面積が底面に向け漸減した凹部を有機膜に形成することにより、横断面積が底面に向け漸減した凹部を有する凹凸を基板に形成することができる。
【0013】
本発明のノズルプレートの製造方法では、前記凸部のピッチが10nm〜10μmであることが好ましい。
これにより、ノズルプレートの製造工程の簡略化および低コスト化を図りつつ、得られるノズルプレートは、ノズル孔の周囲での液滴の付着をより確実に防止することができる。
【0014】
本発明のノズルプレートの製造方法では、前記凸部の横断面形状は、ほぼ円形またはほぼ多角形をなしていることが好ましい。
これにより、ノズルプレートの製造工程の簡略化および低コスト化を図りつつ、得られるノズルプレートは、ノズル孔の周囲での液滴の付着をより確実に防止することができる。
【0015】
本発明のノズルプレートの製造方法では、前記凹凸の凹部の深さは、10nm〜10μmであることが好ましい。
これにより、ノズルプレートの製造工程の簡略化および低コスト化を図りつつ、得られるノズルプレートは、ノズル孔の周囲での液滴の付着をより確実に防止することができる。
【0016】
本発明のノズルプレートの製造方法では、前記第2の工程の後に、前記基板の凹凸が形成された面に、撥液性を化学的に付与する処理を施す工程を有することが好ましい。
これにより、ノズルプレートの製造工程の簡略化および低コスト化を図りつつ、得られるノズルプレートは、凹凸による撥液性とともに、化学的な撥液性を発揮し、ノズル孔の周囲での液滴の付着をより確実に防止することができる。
【0017】
本発明のノズルプレートの製造方法では、前記撥液性を化学的に付与する処理は、撥液性を有する材料を主材料として構成された薄膜を、前記基板の凹凸が形成された面に形成することにより行うことが好ましい。
これにより、基板に化学的に撥液性を付する処理を比較的簡単に施すことができる。
本発明のノズルプレートの製造方法では、前記撥液性を有する材料は、樹脂であることが好ましい。
これにより、基板に化学的に撥液性を付する処理をより簡単に施すことができる。
【0018】
本発明のノズルプレートの製造方法では、前記樹脂は、脱アンモニア型ウレタンモノマーの重合体であることが好ましい。
これにより、化学的に撥液性を付する処理を比較的簡単に施すことができるとともに、得られるノズルプレートは、凹凸による撥液性とともに、化学的により優れた撥液性を発揮し、ノズル孔の周囲での液滴の付着をさらに確実に防止することができる。
【0019】
本発明のノズルプレートの製造方法では、前記型は、シリコンを主材料として構成されていることが好ましい。
これにより、型から基板へより精度よくマスク材料を転写することができる。その結果、得られるノズルプレートの凹凸をより微細なものとすることができる。
本発明のノズルプレートの製造方法では、前記型は、金属ガラスを主材料として構成されていることが好ましい。
これにより、型から基板へより精度よくマスク材料を転写することができる。その結果、得られるノズルプレートの凹凸をより微細なものとすることができる。
また、金属ガラスは型の成形時における流動性に特に優れているため、型をより精度の高いものとすることができる。その結果、この点でも、得られるノズルプレートの凹凸をより微細なものとすることができる。
【0020】
本発明のノズルプレートの製造方法では、前記第1の工程に先立ち、前記基板に前記ノズル孔を形成することが好ましい。
これにより、比較的簡単にノズル孔を所望の長さおよび形状とするとともに、ノズル孔の周囲に凹凸を形成することができる。
本発明のノズルプレートの製造方法では、前記基板は、シリコンを主材料として構成されていることが好ましい。
これにより、一般にシリコンを主材料として構成されるキャビティ基板とノズルプレートとを接合した際に、キャビティ基板とノズルプレートとの間に生じる応力を低減することができ、その結果、キャビティ基板とノズルプレートとをより強固に接合することができる。また、ノズルプレートをより精度よく加工することができる。
【0021】
本発明のノズルプレートの製造方法では、前記基板は、硼珪酸ガラスを主材料として構成されていることが好ましい。
硼珪酸ガラスは、シリコンと熱膨張特性が近似しているため、一般にシリコンを主材料として構成されるキャビティ基板とノズルプレートとを接合した際に、キャビティ基板とノズルプレートとの間に生じる応力を低減することができ、その結果、キャビティ基板とノズルプレートとをより強固に接合することができる。
【0022】
本発明の液滴吐出ヘッドは、本発明の製造方法により製造されたノズルプレートを備えることを特徴とする。
これにより、低コストで、ノズル孔の周囲における液滴の固着を確実に防止することができる液滴吐出ヘッドを提供することができる。
本発明の液滴吐出装置は、本発明の液滴吐出ヘッドを備えることを特徴とする。
これにより、低コストで、ノズル孔の周囲における液滴の固着を確実に防止することができる液滴吐出装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明のノズルプレートの製造方法の実施形態を添付図面に基づいて説明する。
<第1実施形態>
まず、本発明のノズルプレートの製造方法の第1実施形態を説明する。以下、本発明のノズルプレートの製造方法の説明に先立ち、かかる製造方法によって得られるノズルプレートを備える液滴吐出装置を説明する。
本実施形態では、液滴吐出装置の一例として、インク(液体)を吐出して記録用紙に画像をプリントするインクジェットプリンタに備えられるインクジェットヘッドを説明する。
【0024】
図1は、本実施形態におけるインクジェットヘッド1の概略構成を示す分解斜視図であり、図2は、インクジェットヘッド1の概略構成を示す断面図であり、図3は、インクジェットヘッド1の上視図である。なお、図1および図2は、通常使用される状態とは上下逆に示されている。
図1に示すように、インクジェットヘッド1は、ノズルプレート(ノズル基板)10、キャビティプレート(キャビティ基板)20、電極プレート(電極基板)30が順次接合されている。なお、インクジェットヘッド1は、図2にて左右にほぼ対称な構成となっている。
【0025】
ノズルプレート10には、図1および図2に示すように、このノズルプレート10の一方の面(図1および図2にて上方側の面)に、凹部11が形成され、この凹部11に対応する領域内に、インク液滴を吐出するための多数のノズル孔12が形成されている。言い返すれば、ノズルプレート10は、凹部11により薄肉部が形成されており、その薄肉部にノズル孔12が形成されている。これにより、ノズル孔12の先端と記録用紙などの他の物体との接触によるノズル孔12の損傷が防止される。
【0026】
凹部11の底面には、ノズル孔12の先端の周囲を囲むような領域に、微細(微小)な凹凸13が形成されている。これにより、ノズル孔12の周辺におけるインクの付着・固着を防止することができる。
凹凸13には、凸部13Aの表面を覆うように、化学的な撥水性を有する撥水膜13Bが形成されている。
【0027】
本実施形態では、凹凸13の凸部13Aの横断面形状は、ほぼ円形をなしている。
これにより、後述するノズルプレート10の製造工程の簡略化および低コスト化を図りつつ、得られるノズルプレート10は、ノズル孔12の周囲での液滴の付着をより確実に防止することができる。
凹凸13の凸部13Aの幅(後述する型202Aの凸部202A1の幅W)は、10nm〜10μmであるのが好ましい。
これにより、後述するノズルプレート10の製造工程の簡略化および低コスト化を図りつつ、得られるノズルプレート10は、ノズル孔12の周囲での液滴の付着をより確実に防止することができる。
【0028】
凹凸13の凸部13Aのピッチ(後述する型202Aの凸部202A1のピッチP)は、10nm〜10μmであるのが好ましい。
これにより、後述するノズルプレート10の製造工程の簡略化および低コスト化を図りつつ、得られるノズルプレート10は、ノズル孔12の周囲での液滴の付着をより確実に防止することができる。
また、凹凸13の凹部13Aの深さは、10nm〜10μmであるのが好ましい。
これにより、後述するノズルプレート10の製造工程の簡略化および低コスト化を図りつつ、得られるノズルプレート10は、ノズル孔12の周囲での液滴の付着をより確実に防止することができる。
【0029】
ノズル孔12は、ノズルプレート10の前記一方の面側に形成されたノズル部12Aと、ノズルプレート10の他方の面側に形成され、ノズル部12Aよりも横断面積の大きいノズル部12Bとを有している。これにより、ノズル孔12の流路抵抗を低減しつつ、インクの流れを整えて安定した吐出を実現することができる。
また、ノズルプレート10には、ノズルプレート10の前記一方の面に、凹部11の両側に、凹部14が形成されている。
また、ノズルプレート10のノズルプレート10の他方の面(図1および図2にて下方側の面)には、後述するインク供給口を形成するための溝15と、リザーバ50を形成するための溝16とが形成されているとともに、キャビティプレート20が接合されている。
【0030】
図2に示すように、ノズルプレート10とキャビティプレート20との間には、前述した各ノズル12に対応する独立した複数のキャビティ40と、1つのリザーバ(共通インク室)50と、このリザーバ50を各キャビティ40に連通させるインク供給口(オリフィス)60とが区画形成されている。本実施形態では、キャビティ40は、キャビティプレート20の上面に形成された溝21の壁面と、ノズルプレート10の下面とで区画形成されている。また、リザーバ50は、ノズルプレート10の下面に形成された溝16の壁面と、キャビティプレート20の上面に形成された溝22の壁面とで区画形成されている。また、インク供給口60は、ノズルプレート10の下面に形成された溝15の壁面と、キャビティプレート20の上面とで区画形成されている。
【0031】
複数のキャビティ40は、図1に示すように、それぞれ、対応するノズル孔12に連通し、短冊状(直方体状)をなしている。そして、各キャビティ40は、インク供給口60を介して、リザーバ50からインクの供給を受けるようになっている。このリザーバ50には、図示しないインクカートリッジからインクを補給するためのインク取入れ口23が連通している。
【0032】
また、キャビティプレート20は、図2に示すように、各キャビティ40の薄肉に形成された底壁部が、その厚さ方向、すなわち図2において上下方向に弾性変形(弾性変位)可能な振動板24をなしている。したがって、各キャビティ40は、この振動板24の振動(変位)により、その容積が可変であり、この容積変化によりノズル孔12からインク(液体)を液滴状に吐出するよう構成されている。
【0033】
この振動板24は、後述する電極32との間に電圧を印加する電圧印加装置70に接続されており、電圧印加装置70からの電圧により弾性変形するものである。
また、振動板24は、その下方の面に、シリコンの酸化膜(SiO)等の絶縁層(図示せず)が設けられている。これにより、振動板24と電極32との接触による短絡を好適に防止することができる。
このようなキャビティプレート20の一方の面(図1および図2にて下方側の面)に、電極プレート30が接合されている。
【0034】
電極プレート30は、キャビティプレート20側の面に、前述した各キャビティ40に対応する凹部31が形成されているとともに電極32が設けられている。言い換えすれば、電極プレート30は、電極32が、キャビティプレート20の振動板24に対し微小な空隙を隔てて対向するようになっている。
電極32は、前述した電圧印加装置70に接続されている。
【0035】
このように、本実施形態のインクジェットヘッド1は、電極32と、電極32に微小空隙を隔てて対向する振動板24とを有し、電極32と振動板24との間に、電圧を印加することにより、電極32と振動板24との間に静電引力を生じさせて、振動板24を変位させるように構成されている静電アクチュエータを備えるものである。
【0036】
以上のような構成のインクジェットヘッド1は、次のようにして駆動する。
振動板24と電極32との間に、電圧を印加すると、振動板24と電極32との間に、静電引力(クーロン力)が生じる。この静電引力により、振動板24が下方に撓んで変位して電極32に当接する。
このようにして、キャビティ40内の容積が拡大する。その際、インクには、図示しないインクカートリッジからキャビティ40へ向かう圧力(正方向への圧力)とノズル孔12からキャビティ40へ向かう圧力とが作用している。これらの圧力に対してノズル孔12にはメニスカスの表面張力が作用しているため、空気がノズル孔12からキャビティ40へ入り込むことが防止され、インクの吐出量に見合った量のインクが前記インクカートリッジからリザーバ50およびインク供給口60を介してキャビティ40へ供給される。
【0037】
このようにキャビティ40の容積が拡大された状態から、振動板24と電極32との間の電位差を急激に低下させると、振動板24は、その弾性復元力によって図中上方に復元して、初期状態となる。
これにより、キャビティ40の容積が急激に収縮される。その結果、キャビティ40を満たすインク(液体)の一部が、このキャビティ40に連通するノズル孔12からインク滴として吐出される。
【0038】
このようなインクジェットヘッド1は、例えば、次のようにして製造することができる。
図4ないし図6は、それぞれ、インクジェットヘッド1の製造方法を説明するための図(縦断面図)であり、図7は、基板の表面の微細加工のための微細凹凸加工装置200の概略構成を示す図であり、図8は、微細凹凸加工装置200に備えられた型の概略構成を示す図であり、図9は、微細凹凸加工装置200による微細加工の工程を説明するための図である。なお、以下では、説明の便宜上、図5ないし図9中の上側を「上」、下側を「下」と言う。
【0039】
(ノズルプレート10の製造工程)
[A1] まず、ガラスやシリコンなどを主材料として構成された基板105を用意する。
基板105がシリコンを主材料として構成されていると、一般にシリコンを主材料として構成されるキャビティプレート20と熱膨張特性が等しいため、キャビティプレート20とノズルプレート10とを接合した際に、キャビティプレート20とノズルプレート10との間に生じる応力を低減することができ、その結果、キャビティプレート20とノズルプレート10とをより強固に接合することができる。また、ノズルプレート10をより精度よく加工することができる。
【0040】
また、基板105が硼珪酸ガラスを主材料として構成されていると、硼珪酸ガラスは、シリコンと熱膨張特性が近似しているため、一般にシリコンを主材料として構成されるキャビティプレート20とノズルプレート10とを接合した際に、キャビティプレート20とノズルプレート10との間に生じる応力を低減することができ、その結果、キャビティプレート20とノズルプレート10とをより強固に接合することができる。
【0041】
そして、図4(A)に示すように、基板105の一方の面に、ノズル孔12の12Aを形成する領域を除いてノズルプレート10の平面形状に対応するように、例えば、クロムや金、アルミニウム等の金属マスク106を形成する。
金属マスク106(金属膜)の成膜方法としては、真空蒸着、スパッタリング(低温スパッタリング)、イオンプレーティング等の乾式メッキ法、電解メッキ、無電解メッキ等の湿式メッキ法、溶射法、金属箔の接合等が挙げられる。なお、以下の各工程における金属膜の成膜においても、同様の方法を用いることができる。
【0042】
次に、図4(B)に示すように、金属マスク106を介して、基板105の前記一方の面をエッチングして、凹部107を形成する。
エッチング方法としては、例えば、プラズマエッチング、リアクティブイオンエッチング、ビームエッチング、光アシストエッチング等の物理的エッチング法、ウエットエッチング等の化学的エッチング法等のうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。なお、以下の各工程におけるエッチングにおいても、同様の方法を用いることができる。
その後、金属マスク106を除去し、図4(C)に示すように、基板105の前記一方の面に、ノズル孔12のノズル部12Bと溝15、16とを形成する領域を除いてノズルプレート10の平面形状に対応するように、例えば、クロムや金、アルミニウム等の金属マスク108を形成する。
【0043】
次に、図4(D)に示すように、金属マスク108を介して、基板105の前記一方の面をエッチングして、溝15、16を形成する。
その後、金属マスク108を除去し、図4(E)に示すように、基板105の他方の面に、凹部11、14を形成する領域を除いてノズルプレート10の平面形状に対応するように、例えば、クロムや金、アルミニウム等の金属マスク109を形成する。
【0044】
次に、図4(F)に示すように、金属マスク109を介して、基板105の前記一方の面をエッチングして、凹部11、14を形成する。その後、金属マスク109を除去して、基板105は、図4(G)に示すような形態になる。
このときノズル孔12が形成される。このように、後述する微細凹凸加工(第1の工程)に先立ち、基板105にノズル孔12を形成するので、比較的簡単にノズル孔12を所望の長さおよび形状とするとともに、ノズル孔12の周囲に凹凸13を形成することができる。
【0045】
図4(G)に示すような基板105に対し、凹部11の底面に微細凹凸加工を施して凹凸13を形成した後に、基板105の凹凸13が形成された面に撥水性を化学的に付与する処理を施して撥水膜13Bを形成して、ノズルプレート10を得る。この微細凹凸加工は、金属マスク109を除去する前に行ってもよい。なお、この微細凹凸加工については、後で詳述する。
【0046】
このように、微細凹凸加工(第2の工程)の後に、基板105の凹凸13が形成された面に、撥液性を化学的に付与する処理を施すので、ノズルプレート10の製造工程の簡略化および低コスト化を図りつつ、得られるノズルプレート10は、凹凸13による撥液性とともに、撥水膜13Bによる化学的な撥液性を発揮し、ノズル孔12の周囲での液滴の付着をより確実に防止することができる。
【0047】
前記撥液性を化学的に付与する処理は、特に限定されないが、例えば、ノズルプレート10(基板105)の表面の改質、撥液性を有する材料を主材料として構成された薄膜の形成などが挙げられる。
中でも、撥液性を有する材料を主材料として構成された薄膜の形成により撥水膜13Bを形成すると、ノズルプレート10(基板105)に化学的に撥液性を付する処理を比較的簡単に施すことができる。
【0048】
また、前記撥液性を有する材料としては、撥液性を付与することができるものであれば、特に限定されず、例えば、各種有機材料および各種無機材料を用いることができるが、樹脂であると、ノズルプレート10(基板105)に化学的に撥液性を付する処理をより簡単に施すことができる。
前記樹脂は、脱アンモニア型ウレタンモノマーの重合体であるのが好ましい。例えば、前記樹脂としてパラックコート(登録商標)などを用いるのが好ましい。これにより、化学的に撥液性を付する処理を比較的簡単に施すことができるとともに、得られるノズルプレート10は、凹凸13による撥液性とともに、撥水膜13Bが化学的により優れた撥液性を発揮し、ノズル孔12の周囲でのインク液滴の付着をさらに確実に防止することができる。
【0049】
以上の工程により、ノズルプレート10が得られる。
なお、前述の工程では、ノズル孔12の形成をエッチングにより形成したが、これに限定されない。
例えば、ノズル孔12の形成は、基板105にレーザを照射することにより行うことができる。この場合、比較的簡単にノズル孔12を形成することができる。
【0050】
また、ノズル孔12の形成は、基板105におけるノズル孔12の形成予定部位の表面にレーザ光を照射して変性させた後に、ウエットエッチングにより行うと、比較的精度よく、かつ、比較的短時間にノズル孔12を形成することができる。
また、ノズル孔12の形成は、ドライエッチングにより行うと、特に高い精度でノズル孔12を形成することができる。
また、ノズル孔12の形成は、基板105の一方の面にプレス成形により穴部(ノズル部12A、12B)を形成した後に、基板105を他方の面側から研磨して、前記穴部を貫通させることにより行うことができる。この場合、比較的精度よくノズル孔12を形成するとともに、ノズル孔12の長さを所望のものとすることができる。
【0051】
(キャビティプレートの製造工程)
[A2] 一方、シリコンを主材料として構成された基板110を用意する。
次に、図5(H)に示すように、基板110の全周面に、熱酸化処理により、酸化膜111(SiO膜)を形成する。
熱酸化処理の方法としては、特に限定されず、スチーム酸化、ウェット酸化、ドライ酸化、高圧酸化、希釈酸素酸化等のうち1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。例えば、スチーム酸化の場合には、水蒸気を含有する酸素存在雰囲気下で行う。
【0052】
次に、図5(I)に示すように、基板110の前記一方の面側の酸化膜111のうち、溝21、22を形成する領域と、ノズルプレート10の平面形状の外周に対応する領域とを除去する。このとき、溝22に対応する領域については、酸化膜の膜厚の半分程度だけ除去する。
次に、図5(J)に示すように、基板110の他方の面側の酸化膜111を除去し、基板110の下面に、不純物をドープし、不純物拡散層112を形成する。
【0053】
この不純物拡散層112は、得られるインクジェットヘッドにおいて振動板24を構成するものである。また、この不純物拡散層112は、エッチング液に対するエッチング速度が基板110と異なるので、後工程で行う基板110のエッチングに際して、エッチングの停止層として機能する。
したがって、この不純物拡散層112の厚さを制御することによって、所望の厚さの振動板24を形成することができる。また、不純物拡散層112は、基板110に比べて低抵抗であることから、特に、振動板24となる部分においては、共通電極として良好な導電性が得られる。
【0054】
次に、図5(K)に示すように、基板110の前記他方の面、すなわち不純物拡散層112の表面に、酸化膜(SiO膜)113を形成する。
この酸化膜113の形成方法としては、前述した、金属膜の形成方法と同様のものを用いることができる。
次に、図5(L)に示すように、基板110の前記他方の面側の酸化膜113のうち、インク取入れ口23を形成する領域と、ノズルプレート10の平面形状の外周に対応する領域とを除去する。
【0055】
次に、図5(M)に示すように、酸化膜111、113を介して、基板110の両面を途中までエッチングする。
そして、図5(N)に示すように、基板110の前記一方の面側の酸化膜111をその膜厚の半分だけエッチングした後に、酸化膜111、113を介して、基板110の両面をエッチングして、溝21、22、インク取入れ口23を形成するとともに、キャビティプレート20の外周を形成する。
次に、図5(O)に示すように、酸化膜111、113を除去して、キャビティプレート20を得る。
【0056】
(電極プレート30の製造工程)
[A3] 一方、ガラスを主材料として構成された基板114を用意する。
そして、図6(P)に示すように、基板114の一方の面に、例えば、クロムや金、アルミニウム等により金属膜115を形成する。
次に、図6(Q)に示すように、基板114の前記一方の面側の金属膜115のうち、凹部31を形成する領域を除去して、金属マスク116を形成する。
【0057】
次に、図6(R)に示すように、この金属マスク116を介して、基板114の前記一方の面側をエッチングして、凹部31を形成する。
そして、金属マスク116を除去した後、図6(S)に示すように、基板114の前記一方の面に、ITO等からなる導電膜117を形成する。
導電膜117の形成方法としては、前述した、金属膜の形成方法と同様のものを用いることができる。
次に、図6(T)に示すように、導電膜117の一部を除去して、電極32を形成する。
次に、図6(U)に示すように、基板114に、ドリル等を用いて、インク供給孔33を形成して、電極プレート30を得る。
【0058】
(各プレートの接合工程)
前述のようにして得られた、ノズルプレート10、キャビティプレート20、電極基板30を直接接合、陽極接合、接着接合などにより接合して、図1および図2に示すようなインクジェットヘッドを得る。
(基板105の表面への微細凹凸加工)
ここで、ノズルプレート10の製造工程における基板105の表面に対する微細凹凸加工について図7ないし図9に基づき詳細に説明する。なお、図7ないし図9では、説明の便宜上、寸法等を適宜変更して模式的に示している。また、以下では、図7および図9中、上側を「上」または「上方」、下側を「下」または「下方」として説明する。
【0059】
この微細凹凸加工には、微細な凹凸13の凸部13Aと同パターンのマスクパターンを基板105の表面に形成するために、図7に示すような微細凹凸加工装置200を用いる。
微細凹凸加工装置200は、図7に示すように、図4(G)に示すような基板105を保持する保持体201と、微細な凹凸13の凸部13Aに対応した型を有する型本体202とを備え、これらが上下方向で接離するように相対的に移動可能となっている。
保持体201は、基板105を保持する基板ホルダ201Aと、基板ホルダ201Aを支持しこれを水平方向に移動可能なアクチュエータ201Bとを有している。
【0060】
基板ホルダ201Aは、基板105の下面(凹部11が形成されている面とは逆側の面)を下方から支持するとともに、基板105を水平方向での移動を防止するように固定する機能を有するものである。この基板ホルダ201Aに保持された基板105は、凹部11、すなわち凹凸13が形成されるべき部位が上方に向け露出する。
アクチュエータ201Bは、基板105を支持しこれを水平方向に微小距離ずつ移動可能な微動アクチュエータ201B1と、微動アクチュエータ201B1を支持しこれを水平方向に比較的大きな距離ずつ移動可能な粗動アクチュエータ201B2とからなる。
【0061】
このようなアクチュエータ201Bでは、型本体202に対する基板105の水平方向での位置を、粗動アクチュエータ201B2を作動させることによりおおよそ合わせた後に、微動アクチュエータ201B1を作動させることにより正確に合わせる。これらのアクチュエータ201B1、201B2は、駆動制御装置203によって駆動を制御される。
【0062】
型本体202は、凹凸13の凸部13Aに対応した型202Aと、型202Aを保持する型ホルダ202Bとを有する。
型202Aは、図7および図8に示すように、形成されるべき凹凸13の凸部13Aに対応した凸部202A1が形成されている。すなわち、この凸部202A1は、その横断面形状がほぼ円形をなしている。
【0063】
また、凸部202A1の先端には、マスク材料204が離脱可能に付着している。
マスク材料204としては、エッチングに耐性があり、かつ、型202Aから基板105への転写が可能であるものであれば、特に限定されず、各種有機材料や各種無機材料を用いることができる。
型202Aの凸部202A1の形成方法は、特に限定されないが、例えば、化学的エッチング、機械的エッチング、研磨処理、物質の選択的な堆積等を用いることができる。
【0064】
特に、本発明において、型202Aの凸部202A1の形成方法としては、いわゆるナノインプリント法に用いるのと同様に、電子線を用いたリソグラフィーが好適に用いられる。これにより、直径100nm以下の凸部を形成することができる。この場合、型の構成材料として、金属または半導体などの導電性材料を用いる。
また、単層のカーボンナノチューブを選択成長させることによっても、型202Aの凸部202A1を形成することができる。この場合、型202Aの凸部202A1の加工寸法をさらに小さくすることができる。
【0065】
また、型202Aの構成材料は、型を成形でき、かつ、型としての機能を発揮できるものであれば、特に限定されなず、各種材料を用いることができるが、型202Aは、シリコンや、結晶粒が実質的に存在しない材料を主材料として構成されているのが好ましい。これにより、型202Aから基板105へより精度よくマスク材料を転写することができる。その結果、得られるノズルプレート10の凹凸13をより微細なものとすることができる。
【0066】
前記結晶粒が実質的に存在しない材料は、金属ガラスであるのが好ましい。すなわち、型202Aは、金属ガラスを主材料として構成されているのが好ましい。
これにより、型202Aから基板105へより精度よくマスク材料を転写することができる。その結果、得られるノズルプレート10の凹凸13をより微細なものとすることができる。
【0067】
また、金属ガラスは型202Aの成形時における流動性に特に優れているため、型202Aをより精度の高いものとすることができる。その結果、この点でも、得られるノズルプレート10の凹凸13をより微細なものとすることができる。
このような微細凹凸加工装置200を用いて、基板105の表面に凹凸13を形成するには、以下のようにして行う。
【0068】
(第1の工程)
基板105に凹凸加工を施すに際しては、まず、前述した微小凹凸加工装置200を用いて、凹凸13に対応したマスクを基板105の表面に形成する。
具体的には、まず、図9(A)に示すように、基板105と型202Aとが離間した状態で、少なくとも型202Aの凸部202A1の先端に、マスク材料204を供給する。このとき、マスク材料204は、液状、固体状、ゲル状、粉状などいずれの状態であってもよい。
【0069】
次に、図9(B)に示すように、基板105と型202Aとを接触または近接させて、型202Aの凸部202A1の先端に付着したマスク材料204を、基板105の凹部11の底面に接触させる。
そして、図9(C)に示すように、基板105と型202Aとを離間させて、型202Aの凸部202A1の先端に付着したマスク材料204を、基板105の凹部11の底面に転写する。これにより、凹凸13の凸部13Aとほぼ同パターンのマスク205(マスクパターン)が基板105の表面に形成される。その後、マスク材料204が液状やゲル状などである場合には、マスク205を硬化させる。
【0070】
(第2の工程)
前述したマスク205を介して、基板105をエッチングすることにより、微細な凹凸13が基板105の凹部11の底面に形成されて、ノズルプレート10を得る。その際、前記エッチングとしてドライエッチングを用いると、より微細な凹凸13を得ることができる。
以上説明したように、ノズルプレート10のノズル孔12の液滴吐出側の面に凹凸13が形成される。
【0071】
上述したように、本実施形態のノズルプレート10の製造方法は、凹凸13の凸部13Aに対応した凸部202A1と有する型202Aを用いて、凸部13Aとほぼ同パターンのマスク205(マスクパターン)を基板105の表面に形成する第1の工程と、マスク205を用いて基板105をエッチングすることにより、基板105の表面に凹凸13を形成する第2の工程とを有する。
【0072】
これにより、露光・現像工程を必要とせずに、基板105の表面にマスク205を形成することができるので、マスク205の形成工程が簡略化され、その結果、ノズルプレート10の製造工程の簡略化を図ることができる。
また、型202Aは繰り返し使用することができるため、型202Aの微細加工にコストをかけることができ、より微細な凹凸13を低コストで形成することができる。
【0073】
特に、本実施形態では、第1の工程で、型202Aが凹凸13の凸部13Aに対応した凸部202A1を有し、型202Aにマスク材料204を付与した状態で、型202Aを基板105に接触させることにより、マスク材料204を基板105に転写して、マスク205を形成する。
これにより、型202Aから基板105へマスク材料204を付与すると同時にマスク205が形成されるので、マスクの形成工程がより簡略化され、その結果、ノズルプレート10の製造工程の簡略化をより図ることができる。
以上のようにして、第1実施形態のインクジェットヘッド1が製造される。
【0074】
<第2実施形態>
次に、本発明のノズルプレートの第2実施形態について図10ないし図12に基づいて説明する。以下、第2実施形態について、前述した第1実施形態との違いを中心に説明し、同様の事項についてはその説明を省略する。
図10は、基板の表面の微細加工のための微細凹凸加工装置200の概略構成を示す図であり、図11は、微細凹凸加工装置200に備えられた型の概略構成を示す図であり、図12は、微細凹凸加工装置200による微細加工の工程を説明するための図である。なお、図10ないし図12では、説明の便宜上、寸法等を適宜変更して模式的に示している。また、以下では、図10および図12中、上側を「上」または「上方」、下側を「下」または「下方」として説明する。
【0075】
本実施形態のノズルプレートの製造方法は、微細な凹凸13に対応したマスク205を基板105の表面に形成する方法が異なる以外は、第1実施形態のノズルプレートの製造方法と同様である。
本実施形態の微細凹凸加工装置200は、型202Aの凸部202A2が凹凸13の凹部に対応した凸部202A2を有している。また、本実施形態では、マクス材料206を、型202Aの凸部202A2の先端に付与せずに、基板105の表面(上方の面)に供給してある。
【0076】
マスク材料206としては、エッチングに耐性があり、かつ、後述する電圧印加装置207による電圧を受けて除去可能であるものであれば、特に限定されず、各種有機材料や各種無機材料を用いることができる。
また、基板105と型202Aとには、これらの間に電圧を印加する電圧印加装置207が接続されている。
このような微細凹凸加工装置200を用いて、基板105の表面に凹凸13を形成するには、以下のようにして行う。
【0077】
(第1の工程)
基板105に凹凸加工を施すに際しては、まず、前述した微小凹凸加工装置200を用いて、凹凸13の凸部とほぼ同パターンのマスクパターンを基板105の表面に形成する。
具体的には、まず、図12(A)に示すように、基板105と型202Aとが離間した状態で、基板105の上面に、マスク材料206を供給する。
【0078】
次に、図12(B)に示すように、基板105と型202Aとをマスク材料206を介して接触または近接させた状態で、電圧印加装置207により、型202Aの凸部202A2の先端と基板105との間のマスク材料206に電圧を印加して、凸部202A2と同パターンとなるようにマスク材料206を部分的に除去する。これにより、開口206Aが形成される。
そして、図12(C)に示すように、基板105と型202Aとを離間させて、型202Aの凸部202A1に対応した形状、すなわち、凹凸13の凸部13Aとほぼ同パターンのマスク材料206(マスクパターン)が基板105の表面に形成される。
【0079】
(第2の工程)
前述したマスク材料206を介して、基板105をエッチングすることにより、微細な凹凸13が基板105の凹部11の底面に形成されて、ノズルプレート10を得る。
以上説明したように、ノズルプレート10のノズル孔12の液滴吐出側の面に凹凸13が形成される。
【0080】
本実施形態では、第1の工程で、型202Aが凹凸13の凹部に対応した凸部202A2を有し、基板105の表面にマスク材料206を供給し、型202Aと基板105との間でマスク材料206にエネルギを付与することにより、マスク材料206の一部を除去して、マスク材料206を形成する。
これにより、凹凸13の凸部13Aよりも凹部の方が簡単な形状をなしている場合に、基板105にマスク材料206を比較的容易に形成することができる。
【0081】
特に、本実施形態では、前記エネルギとして、型202Aと基板105との間に電圧を印加するので、型202Aの先端を小さくするだけで、微小な開口が形成されたマスク材料206を形成することができるので、凹凸13の微細化を図りつつ、型202Aを比較的簡単に製造することができる。
なお、本発明のノズルプレートの製造方法は、前述したような型を用いて、微細な凹凸13を形成するものであれば、特に限定されない。例えば、第2実施形態において、型202Aと基板105との間に付与するエネルギは、電圧に限らず、型202Aを基板105を押し当てる力(押圧力)、熱エネルギ、光エネルギ、電子線、磁場等でもよい。
型202Aを基板105に押し当てることによって前記エネルギを付与する場合、マスク材料206とともに、マスク材料206を介して基板105をドライエッチングすることにより、凹凸13を形成するのが好ましい。その際、マスク材料206として有機膜を用いる。
これにより、有機膜に形成された凹凸の形状に応じた凹凸を基板105の表面に形成することができる。したがって、横断面積が底面に向け漸減した凹部を有機膜に形成することにより、横断面積が底面に向け漸減した凹部を有する凹凸を基板105に形成することができる。
【0082】
また、基板105をシリコンなどを主材料として構成した場合には、型202Aと基板105との間に予めマスク材料を介在させずに、型202Aから基板105へエネルギを付与することによって、基板105の上面に、凹凸13の凸部13Aと同パターンの酸化膜を形成し、これをマスクとして用いることもできる。
また、前述の第1、2実施形態では、ノズルプレート10の凹凸13の凸部の横断面形状が円形をなすものについて説明したが、凹凸13が撥水作用を発揮するものであれば、前記凹部の形状はこれに限定されない。例えば、凹凸13の凸部の横断面形状は、3角形、4角形、5角形などの多角形であってもよいし、これを反転したような形状であってもよい。また、凹凸13の凸部の横断面形状は、線状をなしていてもよい。したがって、型202Aの形状もこれに対応して、様々な形状を取りうることは言うまでもない。
【0083】
また、本発明によって製造されたノズルプレートを備える液滴吐出ヘッド(上述の実施形態では、インクジェットヘッド1)から吐出する吐出対象液(液滴)としては、特に限定されず、例えば以下のような各種の材料を含む液体(サスペンション、エマルション等の分散液を含む)とすることができる。すなわち、カラーフィルタのフィルタ材料を含むインク、有機EL(Electro Luminescence)装置におけるEL発光層を形成するための発光材料、電子放出装置における電極上に蛍光体を形成するための蛍光材料、PDP(Plasma Display Panel)装置における蛍光体を形成するための蛍光材料、電気泳動表示装置における泳動体を形成する泳動体材料、基板の表面にバンクを形成するためのバンク材料、各種コーティング材料、電極を形成するための液状電極材料、2枚の基板間に微小なセルギャップを構成するためのスペーサを構成する粒子材料、金属配線を形成するための液状金属材料、マイクロレンズを形成するためのレンズ材料、レジスト材料、光拡散体を形成するための光拡散材料などである。
【0084】
また、本発明によって製造されたノズルプレートを備える液滴吐出装置において、液滴を吐出する対象となる液滴受容物は、記録用紙のような紙に限らず、フィルム、織布、不織布等の他のメディアや、ガラス基板、シリコン基板等の各種基板のようなワークであってもよい。
また、本発明によって製造されたノズルプレートは、ノズルプレートを備える、あらゆる方式(形態)の液滴吐出装置に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】本発明の第1実施形態にかかるインクジェットヘッドの概略構成を示す分解斜視図である。
【図2】図1に示すインクジェットヘッドの縦断面図である。
【図3】図1に示すインクジェットヘッドの上視図である。
【図4】インクジェットヘッドの製造工程を説明するための図である。
【図5】インクジェットヘッドの製造工程を説明するための図である。
【図6】インクジェットヘッドの製造工程を説明するための図である。
【図7】本発明の第1実施形態におけるノズルプレートの製造工程における微細凹凸加工に用いる装置の概略構成を示す図である。
【図8】図7の装置に備えられた型の概略構成を示す図である。
【図9】本発明の第1実施形態におけるノズルプレートの製造工程における微細凹凸加工を説明するための図である。
【図10】本発明の第2実施形態におけるノズルプレートの製造工程における微細凹凸加工に用いる装置の概略構成を示す図である。
【図11】図10の装置に備えられた型の概略構成を示す図である。
【図12】本発明の第2実施形態におけるノズルプレートの製造工程における微細凹凸加工を説明するための図である。
【符号の説明】
【0086】
1……インクジェットヘッド 10……ノズルプレート 11……凹部 12……ノズル孔 12A、12B……ノズル部 13……凹凸 13A……凸部 13B……撥水膜 14……凹部 15、16……溝 20……キャビティプレート 21、22……溝 23……インク取入れ口 24……振動板 30……電極プレート 31……凹部 32……電極 33……インク供給孔 40……キャビティ 50……リザーバ 60……インク供給口 70……電圧印加装置 105……基板 106……金属マスク 107……凹部 108……金属マスク 109……金属マスク 110……基板 111、113……酸化膜 112……不純物拡散層 114……基板 115……金属膜 116……金属マスク 117……導電膜 200……微細凹凸加工装置 201……保持体 201A……基板ホルダ 201B……アクチュエータ 201B1……微動アクチュエータ 201B2……粗動アクチュエータ 202A……型 202A1、202A2……凸部 202B……型ホルダ 203……駆動制御装置 204……マスク材料 205……マスク 206……マスク材料 206A……開口 207……電圧印加装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液滴を吐出するためのノズル孔の周囲に微小な凹凸が形成されたノズルプレートの製造方法であって、
前記凹凸の凸部または凹部に対応した凸部を有する型を用いて、前記凹凸の凸部とほぼ同パターンのマスクパターンを基板の表面に形成する第1の工程と、
前記マスクパターンを用いて前記基板をエッチングすることにより、前記基板の表面に微小な凹凸を形成する第2の工程とを有することを特徴とするノズルプレートの製造方法。
【請求項2】
前記第1の工程では、前記型が前記凹凸の凸部に対応した凸部を有し、前記型の凸部にマスク材料を付与した状態で、前記型を基板に押し当てることにより、前記マスク材料を前記基板に転写して、前記マスクパターンを形成する請求項1に記載のノズルプレートの製造方法。
【請求項3】
前記第1の工程では、前記型が前記凹凸の凹部に対応した凸部を有し、前記基板の表面にマスク膜を形成し、前記型の凸部と前記基板との間で前記マスク膜にエネルギを付与することにより、前記マスク膜の一部を除去して、前記マスクパターンを形成する請求項1に記載のノズルプレートの製造方法。
【請求項4】
前記エネルギとして、前記型と前記基板との間に電圧を印加する請求項3に記載のノズルプレートの製造方法。
【請求項5】
前記型を前記基板に押し当てることによって、前記マスク膜に前記エネルギとして押圧力を印加する請求項3に記載のノズルプレートの製造方法。
【請求項6】
第2の工程では、前記マスクパターンとともに、前記マスクパターンを介して前記基板をドライエッチングすることにより、前記凹凸を形成する請求項5に記載のノズルプレートの製造方法。
【請求項7】
前記凸部のピッチが10nm〜10μmである請求項1ないし6のいずれかに記載のノズルプレートの製造方法。
【請求項8】
前記凸部の横断面形状は、ほぼ円形またはほぼ多角形をなしている請求項1ないし7のいずれかに記載のノズルプレートの製造方法。
【請求項9】
前記凹凸の凹部の深さは、10nm〜10μmである請求項1ないし8のいずれかに記載のノズルプレートの製造方法。
【請求項10】
前記第2の工程の後に、前記基板の凹凸が形成された面に、撥液性を化学的に付与する処理を施す工程を有する請求項1ないし9のいずれかに記載のノズルプレートの製造方法。
【請求項11】
前記撥液性を化学的に付与する処理は、撥液性を有する材料を主材料として構成された薄膜を、前記基板の凹凸が形成された面に形成することにより行う請求項10に記載のノズルプレートの製造方法。
【請求項12】
前記撥液性を有する材料は、樹脂である請求項11に記載のノズルプレートの製造方法。
【請求項13】
前記樹脂は、脱アンモニア型ウレタンモノマーの重合体である請求項12に記載のノズルプレートの製造方法。
【請求項14】
前記型は、シリコンを主材料として構成されている請求項1ないし13のいずれかに記載のノズルプレートの製造方法。
【請求項15】
前記型は、金属ガラスを主材料として構成されている請求項1ないし14のいずれかに記載のノズルプレートの製造方法。
【請求項16】
前記第1の工程に先立ち、前記基板に前記ノズル孔を形成する請求項1ないし15のいずれかに記載のノズルプレートの製造方法。
【請求項17】
前記基板は、シリコンを主材料として構成されている請求項1ないし16のいずれかに記載のノズルプレートの製造方法。
【請求項18】
前記基板は、硼珪酸ガラスを主材料として構成されている請求項1ないし16のいずれかに記載のノズルプレートの製造方法。
【請求項19】
請求項1ないし18のいずれかに記載の製造方法により製造されたノズルプレートを備えることを特徴とする液滴吐出ヘッド。
【請求項20】
請求項19に記載の液滴吐出ヘッドを備えることを特徴とする液滴吐出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2006−1215(P2006−1215A)
【公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−181864(P2004−181864)
【出願日】平成16年6月18日(2004.6.18)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】