説明

ハイブリッド式乾燥機

【課題】湿り空気における顕熱処理による除湿に加え、湿り空気の重要な部分を占める潜熱の処理を行うことにより、効率よく除湿を行い、結果として省エネルギー性に優れ、乾燥速度が速い乾燥機を提供する。
【解決手段】乾燥室と、冷媒が、圧縮機、凝縮器、絞り装置、蒸発器の順に循環する構成のヒートポンプ装置と、水分を吸着・脱着できるデシカント剤が担持されたデシカントロータが水分を吸着する吸着ゾーンと水分を脱着する脱着ゾーンとに仕切られてなるデシカントロータ装置とを備え、乾燥室内で乾燥対象物より水分を奪い取った水蒸気を含む乾燥用空気を、前記デシカントロータ装置の脱着ゾーン、前記ヒートポンプ装置の蒸発器、前記デシカントロータ装置の吸着ゾーン、前記ヒートポンプ装置の凝縮器の順に通過させることにより、乾燥用空気として再生し、乾燥室内へ戻す構成を有するハイブリッド式乾燥機。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、衣類乾燥や浴室乾燥、あるいは室内除湿などに用いるハイブリッド式乾燥機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、乾燥に必要な熱を電気ヒータで供給するヒータ式乾燥機が商品化されてきたが、必要な電気エネルギーを削減するためにヒートポンプ式乾燥機が提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、乾燥室内で衣類より水蒸気を奪い取った乾燥用空気をヒートポンプ装置の蒸発器へ導き除湿した後、放熱器(凝縮器)へ導き乾燥用空気として再利用する構成を有するヒートポンプ式の家庭用衣類乾燥機が提案されており、放熱器(凝縮器)を通った後の乾燥用空気の一部を外部へ排出することで乾燥機内への熱エネルギーの過剰な蓄積を回避して、ヒートポンプ装置内の冷媒圧力の異常上昇を防ぐ技術が開示されている。
【0004】
上記文献の技術では、電気ヒータによる加熱をヒートポンプによる加熱とすることで、必要な電気エネルギーを削減できるが、さらなる省エネルギーのためには、乾燥用途に適したヒートポンプ装置の改良や、適切な乾燥運転完了判断を安価に実現しなければならなかった。
【0005】
また、ヒートポンプ装置の冷媒として使われてきたHCFC冷媒(分子中に塩素、水素、フッ素、炭素の各原子を含む)や、HFC冷媒(分子中に水素、フッ素、炭素の各原子を含む)が、オゾン層破壊あるいは地球温暖化に直接的に影響するとして、これらの代替として自然界に存在する炭化水素や二酸化炭素などの自然冷媒への転換が提案されている。
【0006】
したがって、オゾン層破壊あるいは地球温暖化に直接的に影響しない冷媒を用いて、さらに地球温暖化への間接的な影響を小さくするための省エネルギー化を実現しなければならない。
【0007】
このような課題に対して、特許文献2では、さらなる省エネルギー化を実現する方式として、熱交換による熱エネルギーの有効利用によるヒートポンプ式乾燥機が提案されている。
【0008】
ヒートポンプ式乾燥機では電気エネルギーを削減し、省エネルギー化に寄与できるが特許文献2にみられるとおり、さらなる省エネルギーのための改良が必要である。また、ヒートポンプ方式での除湿は冷却による顕熱のみの操作であるため除湿のためのエネルギーが有効に利用できていない問題がある。特に、乾燥室から排気されてくる空気の相対湿度は乾燥対象物の乾燥が進むにつれて低下していくが、顕熱処理のみでは相対湿度が低下する結果、結露までの冷却に要するエネルギーをより多く使用する必要があり、乾燥速度が遅くなるという問題もある。
【特許文献1】特開平7−178289号公報
【特許文献2】特開2003−75065号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は上述した現状に鑑みて創案されたものであり、湿り空気における顕熱処理による除湿に加え、湿り空気の重要な部分を占める潜熱の処理を行うことにより、効率よく除湿を行い、結果として省エネルギー性に優れ、乾燥速度が速い乾燥機を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の上記目的は以下の手段により達成される。
(1)乾燥室と
冷媒が、圧縮機、凝縮器、絞り装置、蒸発器の順に循環する構成のヒートポンプ装置と
水分を吸着・脱着できるデシカント剤が担持されたデシカントロータが水分を吸着する吸着ゾーンと水分を脱着する脱着ゾーンとに仕切られてなるデシカントロータ装置とを備え、
乾燥室内で乾燥対象物より水分を奪い取った水蒸気を含む乾燥用空気を、前記デシカントロータ装置の脱着ゾーン、前記ヒートポンプ装置の蒸発器、前記デシカントロータ装置の吸着ゾーン、前記ヒートポンプ装置の凝縮器の順に通過させることにより、乾燥用空気として再生し、乾燥室内へ戻す構成を有するハイブリッド式乾燥機。
(2)乾燥室と
冷媒が、圧縮機、凝縮器、絞り装置、蒸発器の順に循環する構成のヒートポンプ装置と
水分を吸着・脱着できるデシカント剤が担持されたデシカントロータが水分を吸着する吸着ゾーンと水分を脱着する脱着ゾーンとに仕切られてなるデシカントロータ装置とを備え、
乾燥室内で乾燥対象物より水分を奪い取った水蒸気を含む乾燥用空気を、前記ヒートポンプ装置の凝縮器、前記デシカントロータ装置の脱着ゾーン、前記ヒートポンプ装置の蒸発器、前記デシカントロータ装置の吸着ゾーンの順に通過させることにより、乾燥用空気として再生し、乾燥室内へ戻す構成を有するハイブリッド式乾燥機。
(3)乾燥室と
冷媒が、圧縮機、2つに分離された凝縮器、絞り装置、蒸発器の順に循環する構成のヒートポンプ装置と
水分を吸着・脱着できるデシカント剤が担持されたデシカントロータが水分を吸着する吸着ゾーンと水分を脱着する脱着ゾーンとに仕切られてなるデシカントロータ装置とを備え、
乾燥室内で乾燥対象物より水分を奪い取った水蒸気を含む乾燥用空気を、前記ヒートポンプ装置の2つに分離された凝縮器のうちの一方の凝縮器、前記デシカントロータ装置の脱着ゾーン、前記ヒートポンプ装置の蒸発器、前記デシカントロータ装置の吸着ゾーン、前記ヒートポンプ装置の2つに分離された凝縮器のうちの他方の凝縮器の順に通過させることにより、乾燥用空気として再生し、乾燥室内へ戻す構成を有するハイブリッド式乾燥機。
(4)デシカント剤がポリアクリル酸塩系高分子よりなることを特徴とする(1)から(3)のいずれかに記載のハイブリッド式乾燥機。
【発明の効果】
【0011】
上記のように構成された本発明のハイブリッド式乾燥機においては、顕熱のみの処理ではなく、潜熱の処理も効率的に行うことが可能となるので、乾燥速度を速くすることができるとともに、さらなる省エネルギー化を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。図1は、本発明の第1の実施の形態であるハイブリッド式乾燥機の構成図である。図1において、7は圧縮機、8は冷媒を蒸発させ乾燥用空気を冷却除湿する蒸発器、6は冷媒の圧力差を維持するためのキャピラリチューブ等の絞り装置、11は冷媒を凝縮させ乾燥用空気を加熱する凝縮器であり、これらを順に配管接続し、冷媒を封入することにより、ヒートポンプ装置の基本構成をなす。
【0013】
10は空気中の水分を吸着し、かつ空気中に水分を脱着できるデシカント剤が担持されたロータであって、回転することにより、吸着による除湿と、脱着による再生を繰り返すデシカントロータである。また4はデシカントロータ10から水分が脱着する脱着ゾーン、12はデシカントロータ10に水分が吸着される吸着ゾーンであり、脱着ゾーン4、吸着ゾーン12は仕切り板5により仕切られ、デシカントロータ装置を構成する。脱着ゾーン4を流れる空気と吸着ゾーン12を流れる空気はほぼ対向流をなしている。
【0014】
さらに、2は乾燥対象物1が入る乾燥室(例えば、回転ドラムなど)、3は乾燥機の送風を行う送風ファン、9は蒸発器の冷却除湿により発生するドレンを排出するための排水口である。なお、図1の矢印は空気の流れを示したものである。
【0015】
次にその動作を説明する。乾燥機全体の空気は、送風ファン3により乾燥機を図中の矢印の通りに循環している。乾燥対象物1が入った乾燥室2に凝縮機11との熱交換により加熱された乾燥用空気が送られると、乾燥対象物1と乾燥用空気との相対湿度差により、乾燥対象物1から乾燥用空気へと湿度が移動し、乾燥対象物1は乾燥され、一方、乾燥用空気は相対湿度が上がる。この空気は矢印の空気の流れに従い、まずは脱着ゾーン4に導かれ、回転しているデシカントロータ10を通過する。この際、デシカントロータ10は相対湿度差の関係より水分を脱着して再生する一方、通過した空気の相対湿度をさらに高いものとする。
【0016】
次に、この相対湿度が高められた空気は蒸発器8を通過することにより、露点以下に冷却され空気中の水分が凝縮され水滴として除湿される。ただし、凝縮による除湿においては同時に温度も下げられるため、蒸発器8を通過した空気は、温度が低下し、相対湿度はほぼ飽和に近い状態となる。
【0017】
続いて、この飽和に近い相対湿度の空気は吸着ゾーン12に導かれ、回転しているデシカントロータ10を通過する。この際、デシカントロータ10の高い吸湿特性により空気中の水分の吸着が起こり、空気が除湿され、同時に吸着熱が発生するため温度も上昇する。
【0018】
そして、除湿され温度の上昇した空気は、最終ステップとして凝縮器11を通過することにより、熱交換が行われて、さらに加熱され相対湿度が低い状態となり、再び乾燥室2に送られる。このサイクルを繰り返すことにより、乾燥対象物1を効率よく乾燥することが可能となる。
【0019】
図4は本発明の第1の実施の形態であるハイブリッド式乾燥機の動作、および、該ハイブリッド式乾燥機と従来のヒートポンプ式乾燥機における除湿される空気の状態を説明する湿り空気線図である。図中、横軸は乾球温度を、縦軸は絶対湿度を示し、各斜曲線は等相対湿度線を示す。斜曲線のうち、実線は飽和湿度線、すなわちその絶対湿度における露点を示す。
【0020】
乾燥室2中で乾燥対象物1より水分が移行された乾燥用空気(状態A)は、脱着ゾーン4に導かれ、デシカントロータ10を通過する。この際デシカントロータ10から水分が脱着され、等エンタルピー線AA’に沿って湿度は上昇し、温度は低下して、湿度が飽和状態に近い状態A’となる。次いで、空気は蒸発器8に送られ、冷却されて飽和状態Bに到達し、結露を発生し、さらに飽和湿度線上BCに沿って冷却され、結果的に除湿が行われて状態Cの空気が得られる。状態Cの空気は結露による除湿が行われたため、絶対湿度は低下しているものの、相対湿度はほぼ100%に近い極めて高い湿度にある。
【0021】
この高湿度空気は、吸着ゾーン12に送られ、デシカントロータ10を通過し、等エンタルピー線CDに沿って水分を吸着されることにより、さらに絶対湿度を下げられ、かつ吸着により等エンタルピー的に温度が上昇した状態Dの空気となる。そして最終的に、凝縮器11を通り、熱交換加熱により加温され、相対湿度が低められた状態Eの空気となり、該空気が乾燥室2に送られ乾燥対象物1の乾燥に供される。このサイクルが循環空気の流れとして繰り返され、結果として乾燥対象物の乾燥が行われる。このサイクルにおける乾燥水分量は、図4中の空気Aおよび空気Eとの絶対湿度差で表すことができる。
【0022】
本発明の第1の実施の形態であるハイブリッド式乾燥機と、従来のヒートポンプ式乾燥機とについて、同じ乾燥水分量を得る前提として図4の湿り空気線図上で比較した場合、従来のヒートポンプ式乾燥機では冷却処理はAYで表され、加熱処理はYEで表されるのに対し、本発明の第1の実施の形態であるハイブリッド式乾燥機では冷却処理はA’Cで、また加熱処理はDEで表される。それぞれを比較して明らかなとおり、ハイブリッド式乾燥機は、従来のヒートポンプ式乾燥機に比べ、冷却処理および加熱処理のいずれにおいても温度差が小さくなり、そのため各処理で使用されるエネルギー量が少なくなり、結果的に優れた省エネルギー性を得ることができる。
【0023】
また、冷却処理における最低冷却温度を比べた場合、従来のヒートポンプ式乾燥機が温度Yであるのに対し、ハイブリッド式乾燥機ではより高い温度Cで十分であることからヒートポンプ負荷を低減させることができるメリットがある。本発明のハイブリッド式乾燥機のこれらの利点は、従来のヒートポンプ式乾燥機が、加熱・冷却という顕熱処理のみであるのに対して、デシカントロータを用いることにより潜熱処理を有効に乾燥システムに組み入れたことによるものである。
【0024】
図2は、本発明の第2の実施の形態であるハイブリッド式乾燥機の構成図である。基本構成は、本発明の第1の実施の形態と同じで、凝縮器11の配置のみが第1の実施の形態と異なり、デシカントロータ装置の脱着ゾーン4側に配置されている。
【0025】
次にその動作を説明する。乾燥機全体の空気は、送風ファン3により乾燥機を図中の矢印の通りに循環している。乾燥対象物1が入った乾燥室2に吸着ゾーン12より導かれた乾燥用空気が送られると、乾燥対象物1と乾燥用空気との相対湿度差により、乾燥対象物1から乾燥用空気へと湿度が移動し、乾燥対象物1は乾燥され、一方、乾燥用空気は相対湿度が上がる。この空気は矢印の循環空気の流れに従い、まずは凝縮器11に導かれ、熱交換により加熱されて相対湿度が低い状態となり、次に吸着ゾーン4に導かれ、回転しているデシカントロータ10を通過する。この際、デシカントロータ10は相対湿度差の関係より水分を脱着して再生する一方、通過した空気の相対湿度は高められる。
【0026】
次に、この相対湿度が高められた空気は蒸発器8を通ることにより、露点以下に冷却され空気中の水分は凝縮され水滴として除湿される。ただし、凝縮による除湿においては同時に温度も下げられるため、蒸発器8を通過した空気は、温度が低下し、相対湿度はほぼ飽和に近い状態となる。
【0027】
続いて、この飽和に近い相対湿度の空気は吸着ゾーン12に導かれ、回転しているデシカントロータ10を通過する。この際、デシカントロータ10の高い吸湿特性により空気中の水分の吸着が起こり、空気が除湿され、同時に吸着熱が発生するため温度も上昇する。このようにして得られた、高温、低湿度の空気は再び乾燥室2に送られる。このサイクルを繰り返すことにより、乾燥対象物1を効率よく乾燥することが可能となる。
【0028】
図5は本発明の第2の実施の形態であるハイブリッド式乾燥機の動作、および、該ハイブリッド式乾燥機と従来のヒートポンプ式乾燥機における除湿される空気の状態を説明する湿り空気線図である。図中、横軸は乾球温度を、縦軸は絶対湿度を示し、各斜曲線は等相対湿度線を示す。斜曲線のうち、実線は飽和湿度線、すなわちその絶対湿度における露点を示す。
【0029】
乾燥室2中で乾燥対象物1より水分が移行された乾燥用空気(状態A)は、まず凝縮器11に導かれ、熱交換加熱により加温され、相対湿度が低められた状態Fとなる。次に、脱着ゾーン4に導かれ、デシカントロータ10を通過する。この際デシカントロータ10から水分が脱着され、等エンタルピー線FF’に沿って湿度は上昇し、温度は低下して、湿度が飽和状態に近い状態F’となる。次いで、空気は、蒸発器8に送られ、冷却されて飽和状態Gに到達し、結露を発生し、さらに飽和湿度線上GHに沿って冷却され、結果的に除湿が行われて状態Hの空気が得られる。状態Hの空気は結露による除湿が行われたため、絶対湿度は低下しているものの、相対湿度はほぼ100%に近い極めて高い湿度にある。
【0030】
この高湿度空気は、吸着ゾーン12に送られ、デシカントロータ10を通過し、等エンタルピー線HEに沿って水分を吸着されることにより、さらに絶対湿度を下げられ、かつ吸着により等エンタルピー的に温度が上昇した状態Eの空気となり、該空気が乾燥室2に送られ乾燥対象物1の乾燥に供される。このサイクルが循環空気の流れとして繰り返され、結果として乾燥対象物の乾燥が行われる。このサイクルにおける乾燥水分量は、図5中の空気Aおよび空気Eとの絶対湿度差で表すことができる。
【0031】
本発明の第2の実施の形態であるハイブリッド式乾燥機と、従来のヒートポンプ式乾燥機とについて、同じ乾燥水分量を得る前提として図5の湿り空気線図上で比較した場合、従来のヒートポンプ式乾燥機では冷却処理はAYで表され、加熱処理はYEで表されるのに対し、本発明の第2の実施の形態であるハイブリッド式乾燥機では冷却処理はF’Hで、また加熱処理はAFで表される。それぞれを比較して明らかなとおり、ハイブリッド式乾燥機は、従来のヒートポンプ式乾燥機に比べ、冷却処理および加熱処理のいずれにおいても温度差が小さくなり、そのため各処理で使用されるエネルギー量が少なくなり、結果的に優れた省エネルギー性を得ることができる。
【0032】
また、冷却処理における最低冷却温度を比べた場合、従来のヒートポンプ式乾燥機が温度Yであるのに対し、ハイブリッド式乾燥機でははるかに高い温度Hであり、本発明の第1の実施の形態における温度Cよりもさらに高温で十分であることからヒートポンプ負荷をさらに低減させることができるメリットがある。また、このように高い冷却温度で除湿が可能であることから、冷却温度と外気との温度差を小さくできるため、システムにおける断熱が容易となり、熱ロスも少なくなるので、これらの点でも省エネルギーに寄与することができる。さらに、高い冷却温度が可能となったことから、冷媒の選択範囲も広がり、より効率の良いもの、環境負荷の小さなものを選択することが可能となるといったメリットもある。
【0033】
図3は、本発明の第3の実施の形態であるハイブリッド式乾燥機の構成を示しており、また図6は、該ハイブリッド式乾燥機の動作、および、該乾燥機と従来のヒートポンプ式乾燥機における除湿される空気の状態を説明する湿り空気線図である。本発明の第1の実施の形態および第2の形態と異なる点は、凝縮機11を2個に分割し、一方は脱着ゾーン4側に、もう一方を吸着ゾーン12側に配置した点である。この実施の形態においては、冷却温度に関しては、第1の実施の形態の状態Cよりも高温の状態Lに設定でき、最高到達温度に関しては、第2の実施の形態の状態Fよりも低温の状態Jに設定できることから、外気との温度差、装置内部の温度差が小さなものとなり、装置の耐熱性の制約が緩和され、システムの簡略化が容易である点にメリットがある。
【0034】
本発明に採用するデシカントロータは空気中の水分を吸着し、かつ空気中に水分を脱着できるデシカント剤が担持されたハニカム状あるいはコルゲート状のロータであって、回転することにより、吸着による除湿と、脱着による再生を繰り返すことができる限りにおいては特に限定はない。担持されるデシカント剤についても特に限定はなく、ゼオライト、シリカゲル、変性ゼオライト、多孔質無機材料、親水性高分子等のいずれを用いてもよい。中でも、親水性高分子、特にポリアクリル酸塩系高分子よりなるデシカント剤を用いた場合、より好ましい乾燥機とすることが可能となる。
【0035】
ポリアクリル酸塩系高分子の場合、他のデシカント剤に比べ低温での再生特性に優れていることから、ヒートポンプ装置により得られる約60℃前後の空気で効率よく再生できるため、本発明に特に適している。また、親水性高分子、特にポリアクリル酸塩系高分子は、その吸着等温線でみられるとおり、他デシカント剤に比べ相対湿度の高湿度側、すなわち、飽和相対湿度に近い領域でより高い吸湿特性を有するため、飽和相対湿度域での吸湿を必要とする本発明のハイブリッド式乾燥機においては特に好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の第1の実施の形態であるハイブリッド式乾燥機の構成を示す図である。
【図2】本発明の第2の実施の形態であるハイブリッド式乾燥機の構成を示す図である。
【図3】本発明の第3の実施の形態であるハイブリッド式乾燥機の構成を示す図である。
【図4】本発明の第1の実施の形態であるハイブリッド式乾燥機の動作、および、該ハイブリッド式乾燥機と従来のヒートポンプ式乾燥機における除湿される空気の状態を説明する湿り空気線図である。
【図5】本発明の第2の実施の形態であるハイブリッド式乾燥機の動作、および、該ハイブリッド式乾燥機と従来のヒートポンプ式乾燥機における除湿される空気の状態を説明する湿り空気線図である。
【図6】本発明の第3の実施の形態であるハイブリッド式乾燥機の動作、および、該ハイブリッド式乾燥機と従来のヒートポンプ式乾燥機における除湿される空気の状態を説明する湿り空気線図である。
【符号の説明】
【0037】
1 乾燥対象物
2 乾燥室
3 送風ファン
4 デシカントロータ装置の脱着ゾーン
5 仕切り板
6 絞り装置
7 圧縮機
8 蒸発器
9 排水口
10 デシカントロータ
11 凝縮器
12 デシカントロータ装置の吸着ゾーン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
乾燥室と
冷媒が、圧縮機、凝縮器、絞り装置、蒸発器の順に循環する構成のヒートポンプ装置と
水分を吸着・脱着できるデシカント剤が担持されたデシカントロータが水分を吸着する吸着ゾーンと水分を脱着する脱着ゾーンとに仕切られてなるデシカントロータ装置とを備え、
乾燥室内で乾燥対象物より水分を奪い取った水蒸気を含む乾燥用空気を、前記デシカントロータ装置の脱着ゾーン、前記ヒートポンプ装置の蒸発器、前記デシカントロータ装置の吸着ゾーン、前記ヒートポンプ装置の凝縮器の順に通過させることにより、乾燥用空気として再生し、乾燥室内へ戻す構成を有するハイブリッド式乾燥機。
【請求項2】
乾燥室と
冷媒が、圧縮機、凝縮器、絞り装置、蒸発器の順に循環する構成のヒートポンプ装置と
水分を吸着・脱着できるデシカント剤が担持されたデシカントロータが水分を吸着する吸着ゾーンと水分を脱着する脱着ゾーンとに仕切られてなるデシカントロータ装置とを備え、
乾燥室内で乾燥対象物より水分を奪い取った水蒸気を含む乾燥用空気を、前記ヒートポンプ装置の凝縮器、前記デシカントロータ装置の脱着ゾーン、前記ヒートポンプ装置の蒸発器、前記デシカントロータ装置の吸着ゾーンの順に通過させることにより、乾燥用空気として再生し、乾燥室内へ戻す構成を有するハイブリッド式乾燥機。
【請求項3】
乾燥室と
冷媒が、圧縮機、2つに分離された凝縮器、絞り装置、蒸発器の順に循環する構成のヒートポンプ装置と
水分を吸着・脱着できるデシカント剤が担持されたデシカントロータが水分を吸着する吸着ゾーンと水分を脱着する脱着ゾーンとに仕切られてなるデシカントロータ装置とを備え、
乾燥室内で乾燥対象物より水分を奪い取った水蒸気を含む乾燥用空気を、前記ヒートポンプ装置の2つに分離された凝縮器のうちの一方の凝縮器、前記デシカントロータ装置の脱着ゾーン、前記ヒートポンプ装置の蒸発器、前記デシカントロータ装置の吸着ゾーン、前記ヒートポンプ装置の2つに分離された凝縮器のうちの他方の凝縮器の順に通過させることにより、乾燥用空気として再生し、乾燥室内へ戻す構成を有するハイブリッド式乾燥機。
【請求項4】
デシカント剤がポリアクリル酸塩系高分子よりなることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のハイブリッド式乾燥機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−285225(P2009−285225A)
【公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−141770(P2008−141770)
【出願日】平成20年5月30日(2008.5.30)
【出願人】(000004053)日本エクスラン工業株式会社 (58)
【Fターム(参考)】