説明

ハイブリッド気動車

【課題】簡単な構成で、燃料消費量の節減、騒音の抑制、排ガスの削減を確実に図れるハイブリッド気動車を提供する。
【解決手段】動輪Wを駆動するエンジンE、発電モータM、蓄電手段B、制御手段Cを備える気動車において、発進時には蓄電手段Bから発電モータMへ給電して発電モータMでエンジンEの駆動を補助し、力行時には発電モータMへの給電及び発電モータMにおける発電を停止させ、ブレーキ時には発電モータMで発電を行なって回生電力を蓄電手段Bに充電する。そして、発進時に蓄電手段Bから発電モータMへ給電する駆動用電力量を、蓄電手段Bに充電した回生電力量から、気動車に付属する補機Aの動作に必要とされる電力量を差し引いた余剰電力量を超えないように設定する。また、発電モータMの回転軸S2とエンジンEの駆動軸S1とを直結して一体回転するように接続する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジン(内燃機関)を動力源とする気動車において、発電機兼用のモータ(発電モータ)を備えたハイブリッド気動車に関し、詳しくは、エネルギ効率を向上させて、燃料消費量の削減を図るための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
ディーゼル機関等のエンジンを動力源とする気動車は、主として非電化区間で運転される。そのため、車両に設置される照明装置・空調装置・音声装置・通信装置・制御装置・動力機関用冷却装置・空気圧縮機(エアコンプレッサ)その他の電気機器(これらを総称して「補機」と言う)を動作させるには、別途、電池を搭載するか、あるいは、エンジンから電力を発生させることが必要である。
【0003】
図6は、気動車における従来の動力システムの一例を概略的に示すものである。動力源であるエンジンEの駆動軸S1の一端には、液体変速機等の変速機Tが接続され、変速機Tの推進軸S3に、減速機G等を介して動輪Wの車軸S4が接続される。また、エンジンEの駆動軸S1の他端側には、定速回転装置を介して、発電機Fが接続されている。そして発電機Fから、各種電気機器である補機Aへ、電力を供給するように構成されている。エンジンEには、始動を補助するためのセルモータが付設され、このセルモータに電力を供給するための蓄電池が別途設けられる。
【0004】
かかる構成の動力システムを備える従来の気動車は、発進時にはセルモータによる補助を受けてエンジンを始動させる。力行時は、エンジンEに燃料を供給し、駆動軸S1を回転駆動することにより、変速機T・推進軸S3・減速機Gを通じ、車軸S4及び動輪Wを回転駆動し、気動車が所定の走行速度に達するまで加速する。惰行時は、エンジンへアイドリング運転するのに必要な最小限の燃料を供給する。ブレーキ時にエンジンブレーキを使用する際は、エンジンへの燃料供給を停止する。
【0005】
前記従来の気動車では、補機用電力を得るため、エンジンEの駆動軸S1で、定速回転装置を介し、発電機Fの回転軸を一定速度で回転させて発電させている。つまり、補機を動作させるには、常時、発電機Fを回転駆動しなくてはならない。このため、気動車が駅に停車したときも、エンジンEを停止させずにアイドリング運転する必要があるから、燃料の消費量が多くなる。その上、アイドリングにより、停車駅のプラットホームに居る乗客に対し、排ガスや騒音の悪影響を及ぼすという問題がある。さらに、力行時にもエンジン出力の一部を発電機Fの駆動に使用するから、加速力の低下を招く。加速力の低下は、一般に、必要な加速時間を増大させて、エネルギ効率の悪化をもたらす。
【0006】
従来の気動車における前記問題点を解決するため、ブレーキに回生ブレーキを用い、ブレーキ時に発生させた回生電力を補機に供給したり、推進力に利用することで、エネルギ効率を向上させ、省燃料化を図ることが特許文献1,2で提案されている。特許文献1には、エンジン、発電機兼用モータ、及び蓄電器を備えるハイブリッド気動車について記載され、特許文献2には、エンジン、発電機兼用モータ、及びバッテリを備えるハイブリッド自動車について記載されている。
【0007】
【特許文献1】特開平10−42407号公報
【特許文献2】特開2005−94865号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1,2に記載された従来の技術は構成が複雑であり、現行の気動車への適用が難しい。本発明は、より簡単な構成で、燃料消費量の節減、騒音の抑制、排ガスの削減を確実に図れるハイブリッド気動車の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記の目的を達成するために、本発明が採用したハイブリッド気動車の特徴とするところは、請求項1に記載するように、動輪を駆動するエンジンと、発電機の機能と電動機の機能とを併せ持つ発電モータと、補機へ電力を供給するための蓄電手段と、蓄電手段から発電モータへの給電及び発電モータから蓄電手段への充電を制御する制御手段とを備える気動車において、発電モータの回転軸とエンジンの駆動軸とが一体回転するように接続され、前記制御手段は、気動車の発進時には蓄電手段から発電モータへ給電して発電モータがエンジンの駆動を補助し、気動車の力行時には蓄電手段から発電モータへの給電及び発電モータにおける発電を停止させ、気動車のブレーキ時には発電モータが発電を行なって回生ブレーキを作用させることにより発生した回生電力を蓄電手段に充電するよう動作すると共に、発進時に蓄電手段から発電モータへ給電する駆動用電力量は、蓄電手段に充電した回生電力量から、気動車に付属する補機の動作に必要とされる電力量を差し引いた余剰電力量を超えないように設定されていることである。
【0010】
前記ハイブリッド気動車において、請求項2に記載する如く、前記エンジンにおける駆動軸の一端側に動輪の駆動手段を接続し、当該駆動軸の他端側に発電モータの回転軸を直結させる構成を採用することが望ましい。ここで、動輪の駆動手段とは、エンジンの駆動軸に接続される変速機、変速機の推進軸に接続される減速機、動輪が接続される車軸等である。
【0011】
さらに前記ハイブリッド気動車において、請求項3に記載する如く、前記制御手段と補機とをインバータを介して接続し、当該インバータの直流リンク部に前記蓄電手段を接続する構成を採用することが可能である。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係るハイブリッド気動車は、発進時には、エンジンに燃料を供給してエンジンを始動させると共に、発電モータに給電してエンジン駆動を補助するので、発進時における燃料消費量を削減することができる。その結果、発進時における排ガス及び騒音が低減化する。また、エンジンと発電モータとを協働させて気動車を発進させるので、発電モータの必要出力を抑えることができる。エンジンを使用せずに、モータ駆動のみで発進させることが従来提案されているが、この場合は、出力の大きいモータを用いるか又は変速機を取り付ける必要がある。本発明によれば、大出力のモータも変速機も不要なので、コストを低く抑えられる。なお、補機への給電は、蓄電手段から行なわれる。
【0013】
気動車の力行はエンジンのみで行い、発電モータでエンジン駆動を補助することも、反対に、発電モータでの発電も行なわないように設定したことにより、エネルギ効率を向上させることができる。蓄電手段から補機へ電気エネルギを伝達する場合、損失が非常に少ないのに比べて、蓄電手段の電気エネルギをモータで運動エネルギに変換するときの伝達効率(約80%)は低い。また、エンジンで発電モータを駆動して電気エネルギに変換する効率(約78%)に比べて、エンジン出力をそのまま運動エネルギとして利用する効率(約90%)は高い。従って、蓄電手段に貯蔵した電気エネルギはできるだけ補機に使用し、エンジン出力はできるだけ推進力に使用する方が、エネルギ効率の向上につながる。このような考え方に基づき、本発明では、力行時において、発電モータでの発電を行なわず、補機への給電を蓄電手段で行うように設定した。これににより、エンジン出力の全部を推進力に使用できるので、加速力の低下を招くおそれがなく、燃料の利用効率を高めることができる。
【0014】
本発明では、回生ブレーキ時に発電モータで発電を行なわせて蓄電手段に充電した回生電力量から、補機の動作に必要とされる電力量を差し引いた、余剰電力量を超えない範囲で、気動車の発進時に蓄電手段から発電モータへ給電する駆動用電力量を設定した。これにより、補機の動作電力を回生電力だけで確保することができる。それ故、発電モータによる発電は気動車の回生ブレーキ時に限定して行なわせ、燃料を消費するエンジン駆動時には発電を行なわないように設定することが可能なので、燃料の使用効率が向上する。また、回生電力の範囲で補機を動作させるから、気動車の停車時に、発電モータで発電を行なう必要がなくなり、アイドリング運転が不要となる。その結果、停車時における排ガスも騒音も無くせるので、乗客に与える悪影響・不快感を解消できる。
【0015】
なお請求項2に記載する如く、エンジンにおける駆動軸の一端側に動輪の駆動手段を接続し、他端側に発電モータの回転軸を直結させる構成を採用することにより、エンジンの駆動軸と発電モータの回転軸とを一体回転可能な構造とするのが容易になると共に、エンジンの一方側に駆動系統を集中して配置し、他方側に電気系統を集中して配置することができるから、動力システムを車両へ組み付ける際のレイアウトが簡単になる。
【0016】
さらに、請求項3に記載する如く、補機に接続されるインバータの直流リンク部に蓄電手段を接続する構成を採用することにより、蓄電手段に作用する負荷又は電圧の大きさに応じ、補機・制御手段・蓄電手段の三者間における通電方向が自動的に決定される。従って、蓄電手段における放電又は充電の切替を、簡単な回路構成で実施できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
図1に、本発明に係るハイブリッド気動車の動力システムの一例を示す。本例の動力システムは、動力源であるエンジンEの駆動軸S1の一端に、液体変速機等の変速機Tが接続され、変速機Tの推進軸S3に、減速機G等を介して動輪Wの車軸S4が接続される。エンジンEは、ディーゼル機関が一般的であるが、他の内燃機関も可能である。
【0018】
エンジンEの駆動軸S1の他端側には、適宜の連結手段Jにより、発電モータMの回転軸S2が接続される。発電モータMは、電力が供給されると回転軸S2を回転駆動するモータの機能を発揮し、回転軸S2が外部入力により回転駆動されると電力を発生させる発電機の機能を発揮するものである。モータとしての出力及び発電機としての容量は、気動車の運転条件やエンジンEの出力等に基づいて適宜選択される。エンジンEの駆動軸S1と発電モータMの回転軸S2とは、一体回転するように連結される。駆動軸S1と回転軸S2との間に、両者の連結を断続するクラッチを設けることも考えられるが、その場合、部材点数が多くなって機構が複雑化し、メンテナンスが必要となる等の不具合が生じる。
【0019】
発電モータMには制御手段Cが電気的に接続され、制御手段Cには、気動車に設置される各種電気機器である補機Aへ電力を供給するためのインバータI、及び、蓄電手段Bが接続される。制御手段Cは、蓄電手段Bから発電モータMへ給電したり、あるいは発電モータMで生成した電力を蓄電手段BやインバータIを介して補機Aへの供給したりするのを制御するためのものであり、場合に応じ発電モータMとの間の電気的接続を切断して、発電モータMに発電も電動も実行させないようにする。制御手段Cには、整流器あるいはインバータが備えられる。蓄電手段Bは、回生電力を充分に吸収できる容量を備えることが必要であり、リチウムイオン電池・リチウムポリマー電池・ニッケルカドミウム電池・鉛蓄電池等の二次電池を用いるのが望ましい。また、キャパシタで蓄電手段Bを構成することも考えられる。蓄電手段B又は発電モータMから供給される電力を、各種電気機器である補機Aへ、適切な状態に変換して送給するためのインバータIには、本例ではSIV(静止型インバータ)を用いた。
【0020】
なお本例では、制御手段CとインバータIとを連絡する直流リンク部の途中に、蓄電手段Bを接続し、制御手段Cにより、蓄電手段Bに対する負荷又は電圧の大きさを制御することにより、通電方向が自動的に決定される構成を採用してある。すなわち、発電モータMが発電を行ない制御手段C側の電圧が高くなると、蓄電手段Bに充電がなされ、発電モータMを駆動するため制御手段C側で電力が消費されるときは、蓄電手段Bから放電がなされるように構成されている。
【0021】
上に述べた動力システムは、従来の気動車と構成を共通化できる部分が多いので、従来の車両を改良して適用することが可能であり、新造する場合と比べ、はるかに低コストで実現できる。また、全体の機器構成は比較的簡素であるから、製造コストの増大を抑えることができ、小型化・軽量化が容易なので、本発明を適用したことにより気動車の走行性能を損うこともない。
【0022】
前記の如く構成された本発明に係るハイブリッド気動車の運転状況を、図2〜4を参照して説明する。気動車の停車時は、エンジンEも発電モータMも停止させ、蓄電手段Bから補機Aへ必要な電力を供給する。従って、このとき消費されるエネルギは、蓄電手段Bから補機へ給電される補機の動作用電力のみである。なお、エンジンE及び発電モータMが停止していることにより、騒音も排ガスも発生させない利点が得られる。
【0023】
図2の図(A)に示す如く、気動車の発進時は、エンジンEに燃料を供給して始動させると共に、蓄電手段Bから、補機Aへの給電と平行して、発電モータMへも給電し、発電モータMの回転軸S2で、エンジンEの駆動軸S1の回転駆動を補助する。これにより、気動車は走行を開始し加速を始める。このときの気動車の加速は発電モータMで補助されるから、エンジンEにおける燃料消費量が節減され、排ガスも騒音も低減化する。
【0024】
発進時における発電モータMへの給電量は、後述する回生ブレーキ時に蓄電手段Bが充電した回生電力量から、補機Aの動作を維持するのに必要とされる電力量を差し引いた、残りの余剰電力量を超えない範囲とする。補機消費電力量は、気動車の種類や運転条件等に基づいてほぼ正確に予測されるから、発電モータMに供給し得る余剰電力量も容易に決定することができる。
【0025】
発進後、発電モータMへの給電量が前記余剰電力量に基づく所定値に達したならば、図2の図(B)に示す如く、エンジンEのみの駆動による力行運転へ移行する。このとき、制御手段Cは、発電モータMと蓄電手段Bとの電気的接続を切断し、発電モータMへの給電も、発電モータMでの発電も行なわれないように設定する。補機Aへの給電を蓄電手段Bで行なうことにより、エンジンEの出力全部を気動車の推進に使用することができるから、燃料の消費効率に優れる。なお余剰電力量に余裕が有る場合は、力行時も発電モータMによるエンジン補助を行なうことを妨げない。
【0026】
気動車が所定速度に達したならば、図3の図(A)に示すように惰行運転へ移行する。このとき、エンジンEには、アイドリング運転に必要な最小限の燃料が供給されるだけである。補機Aへの給電は蓄電手段Bから行ない、発電モータMは、原則として、電動も発電も行なわない。但し、気動車の運転スケジュールによって、惰行時に若干の減速が許容される場合には、発電モータMで発電を行なわせることも妨げない。
【0027】
惰行運転での走行後、停車駅まで所定距離の位置に到達したならば、図3の図(B)に示す如く、回生ブレーキを作用させる。すなわち、エンジンEの駆動軸S1で発電モータMの回転軸S2を回転駆動することにより、発電モータMで発電を行なわせ、そのときに生じる抵抗力を気動車の制動力として用いる。そして、発電モータMが発生させた回生電力の一部を補機Aへ供給し、残りの大部分を蓄電手段Bに充電する。なお、気動車を目標位置へ正確に停止させるため、エンジンブレーキや空制ブレーキ等が普通は併用される。
【0028】
図4は、前述した本発明ハイブリッド気動車の運転状況と、電力の消費・発電の状況とを併せてグラフ化したものである。当該グラフは、気動車が2つの駅間を走行する場合を抜き出して示すものであり、上段に気動車の発進からブレーキによる停車に至るまでの速度変化、下段に電力の消費量及び発電量の推移を示してある。なお本例では、気動車が発進してから一定速度(例えば時速20km)に達するまでの加速時間帯を「発進時」、その後、目標最高速度(例えば時速100km)に達するまでの加速時間帯を「力行時」、目標最高速度に到達した後の非加速(惰性)運転時間帯を「惰行時」、ブレーキを作用させて停車するまでの時間帯を「ブレーキ時」と区画してある。
【0029】
グラフに明示する如く、補機の動作に必要な電力は、気動車の運転状況に関わりなく、常に消費される。駅間走行中に補機が消費する電力の総量は、気動車の種類や運転状況に基づき、容易に予測することができる。(これを補機消費電力量=H1とする。)
本発明では、気動車の発進時にのみ発電モータMへ給電して、エンジンEの駆動を補助する。(この給電量を駆動用電力量=H2とする。)
力行時はエンジンEの出力のみで加速し、惰行時はエンジンEを最小限の燃料でアイドリング運転する。力行時及び惰行時のいずれの場合も、発電モータMへの給電及び発電モータMにおける発電は行なわれない。
ブレーキ時には、発電モータMにより回生ブレーキを作用させる。このとき発生する回生電力のうち、一部(H1a)は補機へ給電され、残りの大部分(H3)は蓄電手段Bに充電される。すなわち利用可能な回生電力の総量は、H1a(回生発電時の補機給電量)+H3(蓄電手段Bの充電量)となる。
【0030】
上に述べた如く、本発明のハイブリッド気動車における電力の消費は、補機動作用電源と、発進時における発電モータMの駆動とだけである。よって総消費量はH1+H2となる。
他方、発電モータMにおける発電は回生ブレーキ時のみに行なわれ、利用可能な回生電力量はH1a+H3である。
回生電力の一部H1aは、補機が消費する電力全体H1の一部として使用されるので、発電モータMの駆動に利用可能な電力量H2は、蓄電手段Bに充電される回生電力量H3から、回生発電時以外の時間帯において補機が消費する電力量(H1−H1a)を差し引いた、残りの余剰電力量H4(=H3−[H1−H1a])となる。従って、発電モータMの駆動用電力量H2が余剰電力量H4を超えないように設定(H4≧H2)することにより、蓄電手段Bに貯えた回生電力だけで、補機の動作用電力を確保することが可能となる。
その結果、回生ブレーキの動作時以外に、発電モータMで発電を行なわせる必要が無くなるから、エンジンEの出力全部を気動車の推進力に使用することができるので、燃料の利用効率が向上する。また、発進時には、余剰電力で発電モータMを駆動して、エンジンE出力を補助するから、加速性能を損なわずに燃料消費量を節減することが可能である。
【0031】
なお、余剰電力が多い場合は、それだけ発進時における発電モータMの駆動時間を長くできるから、より一層の燃料消費量の節減と、加速性能向上の効果とが得られる。
【0032】
図5は、図1に示す動力システムを備えた本発明に係る気動車と、図6に示す現行の気動車とで、2つの駅間を同じ走行曲線となるように運転した場合における燃料消費量を比較したグラフである。
運転条件は、キハ121形の気動車(車両重量は等しいものとする)を用い、駅間距離4km、最高速度100km/h。運転時間195秒、駅到着後の停車時間45秒、補機消費電力量20kWとした。
【0033】
図5のグラフから、本発明気動車は、現行気動車に比べて、発進時から最高速度に達するまでの力行時及び惰行運転時を通じ、燃料消費量を節減できることが分かる。この燃料消費量の差異は、次のような理由による。本発明気動車にあっては、発進時から惰行時までの間、補機への給電は蓄電手段で行なう。発進時に発電モータでエンジン駆動を補助しており、力行時はエンジン出力の全部を推進力に使用することができ、惰行時の燃料消費量はアイドリング運転に必要な最小限にとどめられる。これに対し、現行気動車は、発進時から停車時に至るまで、常にエンジン出力の一部を発電に使用するので、それだけ余分に燃料を消費する。さらに駅停車時において、本発明気動車では補機への給電を蓄電手段で行なうから、エンジン及び発電モータを停止させることができ、よって燃料の消費がなされないのに対し、現行気動車は、補機給電のためエンジンを駆動するアイドリング運転を必要とするから燃料消費を伴う。
以上のような差異に基づき、本発明気動車は、現行気動車に比べて、約20%程度の燃料節減を達成できる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明に係るハイブリッド気動車の動力システムの構成を概略的に示す平面図である。
【図2】本発明に係るハイブリッド気動車の動力システムの構成を概略的に示す平面図であって、図(A)は発進時の動作状況、図(B)は力行時の動作状況を説明するものである。
【図3】本発明に係るハイブリッド気動車の動力システムの構成を概略的に示す平面図であって、図(A)は惰行時の動作状況、図(B)はブレーキ時の動作状況を説明するものである。
【図4】本発明に係るハイブリッド気動車の運転状況の一例、及び、電力の消費及び発電の推移状況の一例を示すグラフである。
【図5】本発明気動車と現行気動車の燃料消費状況を比較して示すグラフである。
【図6】従来の気動車(現行気動車)における動力システムの構成を概略的に示す平面図である。
【符号の説明】
【0035】
A 補機
B 蓄電手段
C 制御手段
E エンジン
G 減速機
I インバータ
J 連結手段
M 発電モータ
S1 駆動軸
S2 回転軸
S3 推進軸
S4 車軸
T 変速機
W 動輪

【特許請求の範囲】
【請求項1】
動輪を駆動するエンジンと、発電機の機能と電動機の機能とを併せ持つ発電モータと、補機へ電力を供給するための蓄電手段と、蓄電手段から発電モータへの給電及び発電モータから蓄電手段への充電を制御する制御手段とを備える気動車において、
発電モータの回転軸とエンジンの駆動軸とが一体回転するように接続され、
前記制御手段は、気動車の発進時には蓄電手段から発電モータへ給電して発電モータがエンジンの駆動を補助し、気動車の力行時には蓄電手段から発電モータへの給電及び発電モータにおける発電を停止させ、気動車のブレーキ時には発電モータが発電を行なって回生ブレーキを作用させることにより発生した回生電力を蓄電手段に充電するよう動作すると共に、
発進時に蓄電手段から発電モータへ給電する駆動用電力量は、蓄電手段に充電した回生電力量から、気動車に付属する補機の動作に必要とされる電力量を差し引いた余剰電力量を超えないように設定されていることを特徴とするハイブリッド気動車。
【請求項2】
前記エンジンにおける駆動軸の一端側に動輪の駆動手段が接続され、当該駆動軸の他端側に発電モータの回転軸を直結させた請求項1に記載するハイブリッド気動車。
【請求項3】
前記制御手段と補機とがインバータを介して接続され、当該インバータの直流リンク部に前記蓄電手段を接続した請求項1又は2に記載するハイブリッド気動車。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−137691(P2010−137691A)
【公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−315320(P2008−315320)
【出願日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【出願人】(000196587)西日本旅客鉄道株式会社 (202)
【Fターム(参考)】