説明

ハイブリッド自動車の制御装置

【課題】外部電源で充電される車両駆動用蓄電装置を優先して補機バッテリを車両駆動用蓄電装置およびオルタネータにより充電する構成のハイブリッド自動車において、燃料節約効果を向上するとともに、車両駆動用蓄電装置が過放電状態にならないようにする。
【解決手段】車両駆動用蓄電装置10の蓄電量が所定量以上であれば、切り替え部16を車両駆動用蓄電装置10側に保持し、車両駆動用蓄電装置10の蓄電エネルギで補機バッテリ7を充電し、このとき、オルタネータカットの状態に制御してオルタネータ3が車両駆動用蓄電装置10の負荷にならないようにする。また、車両駆動用蓄電装置10の蓄電量が所定量未満に減少すれば、切り替え部16をオルタネータ3側に切り替え、補機バッテリ7の充電手段を車両駆動用蓄電装置10からオルタネータ3に切り替え、車両駆動用蓄電装置10の蓄電量のそれ以上の減少を防止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車両駆動手段としてエンジンとモータとを備えたハイブリッド自動車の制御装置に関し、詳しくは、そのハイブリッド自動車が搭載している補機バッテリの充電の制御に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、この種のハイブリッド自動車においては、いわゆるプラグイン・ハイブリッド方式のものが注目されている。
【0003】
このプラグイン・ハイブリッド方式のハイブリッド自動車においては、車両駆動用のモータの電源としてのバッテリ(2次電池)、電気二重層コンデンサ(キャパシタ)等の充電可能な車両駆動用蓄電装置を、安価な商用交流電源等の外部電源で充電できることから経済的である。
【0004】
そして、車両駆動用蓄電装置の蓄電容量の設定等に基づき、例えば、日常の買い物や送り迎え等の近距離移動はモータ出力で賄い、このモータ出力では不足する遠出をしたようなときにのみ不足分をエンジン出力で補うようにして、燃費を良くし、経済的効果を一層高めるとともに環境にやさしい構成とすることが考えられている。
【0005】
ところで、この種のハイブリッド自動車も、ヘッドランプやエアコン等の補機類は、従来のガソリン車と同様、鉛電池等からなる補機バッテリで駆動される。
【0006】
そして、補機バッテリは、一般に、エンジンに接離自在に接続されるオルタネータの回生制動時等の発電出力によって充電されるが、オルタネータがエンジンに常時接続されていると、燃費の悪化を招来する。
【0007】
そこで、補機バッテリの充電電圧が所定値以上であれば、オルタネータをエンジンから切り離してエンジン出力のオルタネータへの伝達を断ち、オルタネータカットの状態にすることが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0008】
一方、電気自動車においては、車両駆動用のモータの電源となる主バッテリをコンセントを介した外部電源で充電するとともに、前記主バッテリにより補機バッテリを充電することが行なわれている(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特許第2946738号公報([特許請求の範囲]、[発明を解決するための手段]、[発明の効果]、図1等)
【特許文献2】特開昭61−76034号公報([実施例]、図2等)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
前記プラグイン・ハイブリッド方式のもを含むこの種のハイブリッド自動車においても、搭載している補機バッテリをどのように充電するかは、燃料節約等の面から重要である。
【0010】
そして、この種のハイブリッド自動車において、前記特許文献1に記載されているように、補機バッテリの充電電圧が所定値以上であればオルタネータカットの状態にして、オルタネータ出力では補機バッテリを充電しないようにする構成と、上記特許文献2に記載されているように、外部電源で充電される主バッテリによって補機バッテリを充電する構成とを組み合わせ、補機バッテリの充電電圧が所定値以上であれば、オルタネータカットの状態で主バッテリにより補機バッテリを充電し、補機バッテリの充電電圧が所定値未満に減少すれば、エンジンにオルタネータを接続してオルタネータの発電出力で補機バッテリを充電し、安価な外部電源で充電される主バッテリによる充電を優先して主バッテリとオルタネータとで補機バッテリを充電することが考えられる。
【0011】
この場合、補機バッテリの充電電圧が所定値以上であれば、オルタネータカットの状態で主バッテリにより補機バッテリを充電し、この間、主バッテリに対してオルタネータは負荷とならない。そのため、前記主バッテリの蓄電エネルギの浪費が防止され、その結果、例えばプラグイン・ハイブリッド方式であれば、主バッテリの蓄積エネルギによるモータ走行可能な時間(または距離)が長くなり、燃料節約効果が高くなる。
【0012】
しかしながら、上記した組み合わせ構成の場合、補機バッテリの充電電圧の監視に基づき、補機バッテリの充電電圧によってオルタネータカットが選択的に行なわれるのであって、主バッテリによる補機バッテリの充電はそれとは無関係に行なわれる。
【0013】
そのため、せっかくオルタネータカットを行なうことで燃料を節約しても、補機バッテリの充電電圧が所定値未満に減少したときには、オルタネータが主バッテリの負荷となり、その分、主バッテリの蓄電量が減少してモータ走行可能な時間(または距離)が減る。そのため、オルタネータカットによる燃料節約効果が薄らぎ、結局、燃料節約になり難い。
【0014】
その上、前記主バッテリ等の充電可能な車両駆動用蓄電装置は、完全放電を回避等するため、最低限度の蓄電量は必ず残しておく必要があるが、上記した組み合わせ構成の場合、補機バッテリの充電電圧に注目して補機バッテリの充電電圧が所定値以上になるよう主バッテリから補機バッテリへ給電するため、場合によっては車両駆動用蓄電装置の蓄電量が過放電状態になってしまうおそれがある。
【0015】
本発明は、外部電源で充電される車両駆動用蓄電装置を優先して補機バッテリを車両駆動用蓄電装置およびオルタネータにより充電する構成のハイブリッド自動車において、燃料節約効果を向上するとともに、車両駆動用蓄電装置が過放電状態にならないようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記した目的を達成するために、本発明のハイブリッド自動車の制御装置は、エンジンと、前記エンジンに接離自在に接続されてエンジン出力で発電するオルタネータと、補機負荷の電源を形成する充電可能な補機バッテリと、車両駆動用のモータと、前記モータの電源を形成する充電可能な車両駆動用蓄電装置と、外部電源に着脱自在に接続されて前記車両駆動用蓄電装置を充電する充電器と、前記補機バッテリの充電手段を前記車両駆動用蓄電装置または前記オルタネータに切り替える切り替え部と、前記車両駆動用蓄電装置の蓄電量を監視する蓄電量監視手段と、前記蓄電量監視手段の監視出力にしたがって、前記切り替え部の切り替えを制御するとともに、前記エンジンと前記オルタネータとを接続または切り離しの状態に制御する制御手段とを備え、前記制御手段は、前記車両駆動用蓄電装置の蓄電量が所定量以上の場合、前記補機バッテリの充電手段を前記車両駆動用蓄電装置に保持し、かつ、前記エンジンと前記オルタネータとを切り離しの状態に制御し、前記車両駆動用蓄電装置の蓄電量が前記所定量未満に減少した場合、前記補機バッテリの充電手段を前記オルタネータに切り替え、かつ、前記補機バッテリの充電に対して前記エンジンと前記オルタネータとを接続の状態に制御することを特徴としている(請求項1)。
【0017】
また、本発明のハイブリッド自動車の制御装置は、エンジンと、前記エンジンに接離自在に接続されてエンジン出力で発電するオルタネータと、補機負荷の電源を形成する充電可能な補機バッテリと、車両駆動用のモータと、前記モータの電源を形成する充電可能な車両駆動用蓄電装置と、外部電源に着脱自在に接続されて前記車両駆動用蓄電装置を充電する充電器と、前記補機バッテリの充電手段を前記車両駆動用蓄電装置または前記オルタネータに切り替える切り替え部と、前記車両駆動用蓄電装置の蓄電量を監視する車両駆動側蓄電量監視手段と、前記補機バッテリの蓄電量を監視する補機側蓄電量監視手段と、前記両蓄電量監視手段の監視出力にしたがって、前記切り替え部の切り替えを制御するとともに、前記エンジンと前記オルタネータとを接続または切り離しの状態に制御する制御手段とを備え、前記制御手段は、前記車両駆動用蓄電装置の蓄電量が所定量以上の場合、前記補機バッテリの充電手段を前記車両駆動用蓄電装置に保持し、かつ、前記エンジンと前記オルタネータとを切り離しの状態に制御し、前記車両駆動用蓄電装置の蓄電量が前記所定量未満に減少した場合、前記補機バッテリの充電手段を前記オルタネータに切り替え、前記補機側蓄電量監視手段の監視に基づき前記補機バッテリの蓄電量が所定量以下になってから前記補機バッテリの充電に対して前記エンジンと前記オルタネータとを接続した状態に制御することを特徴としている(請求項2)。
【発明の効果】
【0018】
請求項1の発明によれば、蓄電量監視手段により、補機バッテリの蓄電量ではなく、車両駆動用蓄電装置の蓄電量を監視する。
【0019】
そして、車両駆動用蓄電装置の蓄電量が所定量以上であれば、制御手段により、車両駆動用蓄電装置の蓄電エネルギで補機バッテリを充電し、このとき、エンジンとオルタネータとを切り離してオルタネータカットの状態に制御し、オルタネータが車両駆動用蓄電装置の負荷にならないようにすることができる。
【0020】
また、車両駆動用蓄電装置の蓄電量が所定量未満に減少すれば、補機バッテリの充電手段を車両駆動用蓄電装置からオルタネータに切り替え、車両駆動用蓄電装置の蓄電量のそれ以上の減少を防止することができる。そして、補機バッテリの充電に対してエンジンとオルタネータとを接続の状態に制御するため、回生制動時等のオルタネータ出力で補機バッテリを充電することができる。
【0021】
したがって、外部電源で充電される車両駆動用蓄電装置を優先して補機バッテリを車両駆動用蓄電装置およびオルタネータにより充電する構成のハイブリッド自動車において、補機バッテリの蓄電量ではなく、車両駆動用蓄電装置の蓄電量を監視し、車両駆動用蓄電装置の蓄電量に応じて補機バッテリの充電手段を車両駆動用蓄電装置またはオルタネータに切り替える構成としたため、車両駆動用蓄電装置の蓄電量が所定量に減少するまではオルタネータカットに制御して補機バッテリを車両駆動用蓄電装置で充電し、燃料節約効果を向上することができるとともに、車両駆動用蓄電装置の蓄電量が所定量に減少すると、補機バッテリをオルタネータ出力で充電し、車両駆動用蓄電装置が不用意に過放電の状態にならないようにすることができる。
【0022】
そして、車両駆動用蓄電装置の蓄電容量の設定等に基づき、例えば、日常の買い物や送り迎え等の近距離移動については車両駆動用蓄電装置の蓄電量が所定量にならない限り、走行および補機バッテリの充電をモータ出力で賄い、全くオルタネータの駆動やエンジン走行を不要にすることが可能であり、前記モータ出力では不足する遠出をしたようなときにのみ不足分をエンジン出力で補うようにして、燃費を向上することができる。
【0023】
しかも、外部電源で充電できる車両駆動用蓄電装置の蓄電エネルギを、車両走行の動力源および補機負荷の電源に用いることができるので、エンジンの駆動力を用いる機会を減らして燃料節約効果を極めて高くすることができるとともに、環境にやさしい構成にすることができる。
【0024】
さらに、仮に補機バッテリの蓄電量を監視してオルタネータカットをするのでは、車両駆動用蓄電装置の蓄電量が余っているにもかかわらず、オルタネータが駆動される事態も生じるが、本発明の場合、車両駆動用蓄電装置の蓄電量に基づき、所定量まで(換言すれば限界量まで)車両駆動用蓄電装置の蓄電エネルギを使うことができるため、安価な外部電源で充電できる車両駆動用蓄電装置の蓄電エネルギを余すことなく使用してオルタネータカットの時間を極力延ばすことができる。なお、車両駆動用蓄電装置の蓄電エネルギを極力有効利用すればよく、補機バッテリの充電に際してエンジンの燃費等を考慮する必要がなく、その分制御が簡単になる等の利点もある。
【0025】
請求項2の発明によれば、車両駆動側蓄電量監視手段により車両駆動用蓄電装置の蓄電量を監視するだけでなく、補機側蓄電量監視手段により補機バッテリの蓄電量を監視する。
【0026】
そして、車両駆動用蓄電装置の蓄電量が所定量以上であれば、請求項1の発明と同様、制御手段により、車両駆動用蓄電装置の蓄電エネルギで補機バッテリを充電し、このとき、エンジンとオルタネータとを切り離し、オルタネータカットの状態に制御し、オルタネータが車両駆動用蓄電装置の負荷にならないようにすることができる。
【0027】
また、車両駆動用蓄電装置の蓄電量が所定量未満に減少すれば、補機バッテリの充電手段を車両駆動用蓄電装置からオルタネータに切り替え、車両駆動用蓄電装置の蓄電量のそれ以上の減少を防止することができる。このとき、請求項1の発明とは異なり、補機側蓄電量監視手段の補機バッテリの蓄電量の監視に基づき、補機バッテリの蓄電量が所定量に減少してから、補機バッテリの充電に対してエンジンとオルタネータとを接続の状態に制御してオルタネータカットの状態から復帰し、回生制動時等のオルタネータ出力で車両駆動用蓄電装置を充電することができる。
【0028】
したがって、オルタネータカットからの復帰を遅らせてエンジン出力に基づくオルタネータ出力での補機バッテリの充電を抑制してエンジンの燃料消費を極力少なくし、請求項1の発明より一層燃料節約効果を高くすることができ、燃料節約効果を一層高くすることができるとともに、車両駆動用蓄電装置が不用意に過放電の状態にならないようにして補機バッテリを充電することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
つぎに、本発明をより詳細に説明するため、実施形態について、図1〜図4にしたがって詳述する。
【0030】
(一実施形態)
まず、請求項1に対応する一実施形態について図1〜図3を参照して説明する。
【0031】
図1は本発明が適用されるハイブリッド自動車1の要部のブロック図、図2はハイブリッド自動車1の走行状態と補機バッテリの充放電との関係の説明図、図3は動作説明用のフローチャートである。
【0032】
図1において、2はエンジン、3はエンジン2の出力(エンジン出力)により発電するオルタネータであり、その電機子軸がプーリー・ベルト4を介してエンジン2の出力軸に接離自在に接続されている。
【0033】
5はハイブリッド自動車1の全体動作を制御するマイクロコンピュータの車両制御ECU、6は車両制御ECU5のエンジン制御指令に基づいて動作するマイクロコンピュータのエンジン制御ECUであり、エンジン制御、オルタネータ制御によってエンジン2、オルタネータ3の動作(プーリー・ベルト4の移動を含む)を制御する。
【0034】
7はヘッドライトやエアコン等の補機負荷8の電源を形成する充電可能な補機バッテリであり、例えば12Vの鉛電池からなり、負極(−)は車体にアースされている。
【0035】
9は車両駆動用のモータであり、例えばブラシ付またはブラシレスの同期モータからなる。10はモータ9の電源を形成する充電可能な車両駆動用蓄電装置であり、例えばニッケル水素電池、リチウム・イオン電池のような充電可能なバッテリ(2次電池)または電気二重層コンデンサ(キャパシタ)等からなり、負極(−)は車体にアースされている。
【0036】
11は車両駆動用蓄電装置10とモータ9との間に設けられたインバータであり、車両制御ECU5の駆動制御によりインバータ動作(通常)またはコンバータ動作(回生)に切り替わり、インバータ動作時は車両駆動用蓄電装置10の蓄電エネルギを例えば3相の駆動パルスに変換してモータ9に給電し、コンバータ動作時はモータ9の回生発電出力を直流に変換して車両駆動用蓄電装置10に給電する。
【0037】
12は車両駆動用蓄電装置10の外部充電を制御するマイクロコンピュータの蓄電装置制御ECUであり、本発明の蓄電量監視手段を形成し、車両駆動用蓄電装置10の電圧および電流を検出して車両駆動用蓄電装置10の時々刻々の蓄電量を監視し、監視結果をCAN等の車載LANを介して車両制御ECU5に送る。また、蓄電装置制御ECU12は、車両駆動用蓄電装置10の外部充電指令に基づき、後述の充電器13の直流出力を制御して車両駆動用蓄電装置10を外部充電する。
【0038】
13は例えば100V交流を規定電圧の直流に変換して出力する充電器、14は充電器13の交流入力側のコードであり、常時は巻回等されてハイブリッド自動車1に収容され、外部充電時にのみハイブリッド自動車1から引き出される。15はコード14の先端の電源プラグであり、外部充電時に例えば住宅壁面等に設けられた100Vの商用電源コンセントに接離自在に接続される。
【0039】
16は補機バッテリ7の充電手段を車両駆動用蓄電装置10またはオルタネータ3に切り替える切り替え部であり、例えば2接点切り替えの電子アナログスイッチからなり、車両制御ECU5の補機バッテリ充電制御により、補機バッテリ7の陽極(+)をオルタネータ3の出力または車両駆動用蓄電装置10の陽極(+)に切り替えて接続する。
【0040】
そして、車両制御ECU5の補機バッテリ充電制御機能およびエンジン制御ECU6が本発明の制御手段を形成し、この制御手段は、蓄電装置ECU12の蓄電量監視出力にしたがって切り替え部16の切り替えを制御するとともに、エンジン2とオルタネータ3とを接続または切り離しの状態に制御する。
【0041】
すなわち、車両駆動用蓄電装置10の蓄電量が所定量(蓄電装置の放電時特性によって異なるが例えば満充電の30%〜40%)Raを基準にして、(a)車両駆動用蓄電装置10の蓄電量が所定量Ra以上の場合は、切り替え部16を車両駆動用蓄電装置10側の接点16aに切り替えて補機バッテリ7の充電手段を車両駆動用蓄電装置10に保持し、かつ、プーリー・ベルト4を切り離し側に移動してエンジン2とオルタネータ3とを切り離しの状態(オルタネータカット)に制御する。(b)車両駆動用蓄電装置10の蓄電量が所定量Ra未満に減少すれば、切り替え部16をオルタネータ3側の接点16bに切り替えて補機バッテリ7の充電手段をオルタネータ3に切り替え、かつ、補機バッテリ7の充電に対してエンジン2とオルタネータ3とを接続の状態に復帰制御する。具体的には、例えばアクセルペダルから足が離れる制動操作に連動してプーリー・ベルト4を接続側に移動し、エンジン2とオルタネータ3とを接続の状態に制御する。
【0042】
上記のように構成されたハイブリッド自動車1は、プラグイン・ハイブリッド方式であり、帰宅した際等に住宅壁面等に設けられた100Vの商用電源コンセントに電源プラグ15を差し込み、安価な100Vの商用交流電源により充電器13を介して車両駆動用蓄電装置10を充電することにより、例えば、日常の買い物や送り迎え等の近距離移動はモータ3の出力(モータ出力)で走行し、モータ出力では不足する遠出をしたようなときにのみ不足分をエンジン出力で賄って走行することができる。
【0043】
すなわち、近距離移動の際は、車両駆動用蓄電装置10の蓄電エネルギに基づくインバータ11の出力でモータ3を駆動し、モータ出力を駆動輪に伝えて走行する。また、遠出をしたようなときには、まず、モータ出力で走行し、車両駆動用蓄電装置10の蓄電量が残しておくべき最低量、例えば満充電の30%〜40%の所定量Raに減少すると、その後はエンジン出力で走行する。
【0044】
つぎに、補機バッテリ7の充電について説明する。
【0045】
まず、車両駆動用蓄電装置10の蓄電量が所定量Ra以上であれば、切り替え部16が車両駆動用蓄電装置10側の接点16aに保持され、補機バッテリ7は車両駆動用蓄電装置10から充電される。
【0046】
ところで、ハイブリッド自動車1が例えば図2に示すように、t1〜t2は加速、t2〜t3は定速、t3〜t4は減速、t4〜t5は加速、t5〜t6は定速、t6〜t7は減速をして走行する場合、エンジン2にオルタネータ3が接続されていると、t3〜t4、t6〜t7は減速の回生制動による充電期間Ta、Tbであり、その発電出力で補機バッテリ7を充電することができる。
【0047】
しかしながら、モータ走行中にそのような回生制動の発電出力で補機バッテリ7を充電すると、オルタネータ3も車両駆動用蓄電装置10の負荷を構成し、その分、車両駆動用蓄電装置10の蓄電エネルギの消費が多くなるため、車両駆動用蓄電装置10の蓄電量が所定量Ra以上の間、換言すれば、モータ走行中は、プーリー・ベルト4を切り離し側に移動してオルタネータ3をエンジン2から切り離し、オルタネータカットの状態に制御する。
【0048】
そのため、車両駆動用蓄電装置10の蓄電量が所定量Ra以上ある場合は、外部電源で充電された車両駆動用蓄電装置10の安価な蓄電エネルギにより補機バッテリ7が充電され、しかも、その間はオルタネータカットの状態に制御されて車両駆動用蓄電装置10の蓄電エネルギの浪費が防止され、モータ走行の時間(または距離)を極力長くしてエンジン2の駆動を抑制し、燃料節約効果を向上することができる。
【0049】
つぎに、モータ走行によって車両駆動用蓄電装置10の蓄電量が所定量Ra未満に減少し、エンジン出力での走行(エンジン走行)に切り替わるようになると、切り替え部16がオルタネータ3側の接点16bに切り替えられて補機バッテリ7の充電手段がオルタネータ3に切り替えられる。
【0050】
また、プーリー・ベルト4が接続側に移動し、補機バッテリ7の充電に対してエンジン2とオルタネータ3とを接続の状態に制御する。すなわち、上述したt3〜t4、t6〜t7の減速の回生制動時に、エンジン2とオルタネータ3とを接続してオルタネータ3の発電出力で補機バッテリ7を充電する。
【0051】
そのため、車両駆動用蓄電装置10の蓄電量が所定量Ra未満になると、車両駆動用蓄電装置10の蓄電エネルギは補機バッテリ7の充電にも用いられず、車両駆動用蓄電装置10は蓄電量のそれ以上の減少が確実に防止されて過放電の状態になることがない。しかも、補機バッテリ7はエンジン出力に基づくオルタネータ3の発電出力で問題なく充電される。
【0052】
なお、補機バッテリ7の上記充電を行なうため、車両制御ECU5は例えば図3のステップA1〜A3の充電のループ制御を実行する。そして、ステップA1により車両駆動用蓄電装置10の蓄電量が前記所定量以上か否かを判断し、車両駆動用蓄電装置10の蓄電量が所定量Ra以上であればステップA1からステップA2に移行し、車両駆動用蓄電装置10の蓄電量が所定量Ra未満であればステップA1からステップA3に移行することで、補機バッテリ7の上記充電の制御を行なう。
【0053】
以上のように、本実施形態の場合、例えば100Vの商用交流電源(外部電源)で充電される車両駆動用蓄電装置10を優先して補機バッテリ7を車両駆動用蓄電装置10およびオルタネータ3により充電するプラグイン・ハイブリッド方式のハイブリッド自動車1において、補機バッテリ7の蓄電量ではなく、車両駆動用蓄電装置10の蓄電量を監視し、車両駆動用蓄電装置10の蓄電量に応じて補機バッテリ7の充電手段を車両駆動用蓄電装置10またはオルタネータ3に切り替え、車両駆動用蓄電装置10の蓄電量が所定量に減少するまではオルタネータカットに制御して補機バッテリ7を車両駆動用蓄電装置10で充電し、燃料節約効果を向上することができるとともに、車両駆動用蓄電装置10の蓄電量が所定量に減少すると、補機バッテリ7をオルタネータ出力で充電し、車両駆動用蓄電装置10の蓄電量がそれ以上は減らないようにして車両駆動用蓄電装置10が過放電の状態にならないようにすることができる。
【0054】
そして、車両駆動用蓄電装置10の蓄電容量の設定等に基づき、例えば、日常の買い物や送り迎え等の近距離移動については、車両駆動用蓄電装置10の蓄電量が所定量にならない限り、走行および補機バッテリ7の充電をモータ出力で賄い、全くオルタネータ3の駆動やエンジン走行を不要にすることが可能であり、モータ出力では不足する遠出をしたようなときにのみ不足分をエンジン出力で賄って走行することができ、燃費を向上することができる。
【0055】
しかも、外部電源である安価な100Vの商用交流電源で充電できる車両駆動用蓄電装置10の蓄電エネルギを、車両走行の動力源および補機負荷8の電源に用いることができるので、エンジン2の駆動力を用いる機会を減らして燃料節約効果を極めて高くすることができるとともに、環境にやさしい構成にすることができる。
【0056】
さらに、仮に補機バッテリ7の蓄電量を監視してオルタネータカットをするのでは、車両駆動用蓄電装置10の蓄電量が余っているにもかかわらず、オルタネータ3が駆動される事態も生じるが、本実施形態の場合、車両駆動用蓄電装置10の蓄電量に基づき、所定量Raまで(換言すれば限界量まで)車両駆動用蓄電装置10の蓄電エネルギを使うことができるため、安価な商用交流電源で充電できる車両駆動用蓄電装置10の蓄電エネルギを余すことなく使用してオルタネータカットの時間を極力延ばすことができる。なお、車両駆動用蓄電装置10の蓄電エネルギを極力有効利用すればよく、補機バッテリ7の充電に際してエンジン2の燃費等を考慮する必要がなく、その分制御が簡単になる等の利点もある。
【0057】
ところで、本実施形態においては、図1からも明らかなように、切り替え部16の切り替えに基づき、補機バッテリ7にオルタネータ3、車両駆動用蓄電装置10が並列に接続される。この場合、何らかの原因で、例えば補機バッテリ7の端子接続が外れる事態が生じたとしても、オルタネータ3または車両駆動用蓄電装置10から補機負荷8に給電が継続される利点がある。また、とくにオルタネータ3をエンジン2から切り離したときに、車両駆動用蓄電装置10から補機負荷8に給電が継続されるため、オルタネータ3を機械的に切り離すことができ、オルタネータ3を電気的に切り離す場合より、車両駆動用蓄電装置10の負荷を大幅に軽減することができる利点もある。
【0058】
(他の実施形態)
つぎに、請求項2に対応する他の実施形態について図1および図4を参照して説明する。なお、図4は動作説明用のフローチャートである。
【0059】
そして、本実施形態の構成を図1のハイブリッド自動車1で説明すると、一実施形態の場合と異なる点は、以下の(1)〜(3)の点である。
【0060】
(1)本実施形態においては、図1の蓄電装置制御ECU12により、本発明の車両駆動側蓄電量監視手段を形成し、車両駆動用蓄電装置10の電圧および電流を検出して車両駆動用蓄電装置10の時々刻々の蓄電量を監視し、監視結果をCAN等の車載LANを介して車両制御ECU5に送る。
【0061】
(2)車両制御ECU5に補機バッテリ7の蓄電量を監視する補機側蓄電量監視手段を備え、この監視手段により、補機バッテリ7の電圧および電流を検出して補機バッテリ7の時々刻々の蓄電量を監視する。
【0062】
(3)車両制御ECU5が形成する本発明の制御手段により、前記両蓄電量監視手段の監視出力にしたがって、切り替え部16の切り替えを制御するとともに、エンジン2とオルタネータ3とを接続または切り離しの状態に制御する。具体的には、(i)車両駆動用蓄電装置10の蓄電量が所定量Ra以上の場合は、前記一実施形態の場合と同様に、切り替え部16を車両駆動用蓄電装置10側の接点16aに保持して補機バッテリ7の充電手段を車両駆動用蓄電装置10に保持し、かつ、エンジン2とオルタネータ3とを切り離しの状態(オルタネータカット)に制御しする。(ii)車両駆動用蓄電装置10の蓄電量が所定量Ra未満に減少すれば、前記一実施形態の場合と同様に、切り替え部16をオルタネータ3側の接点16bに切り替えて補機バッテリ7の充電手段をオルタネータ3に切り替えるが、オルタネータカットからの復帰については、車両駆動用蓄電装置10で充電された補機バッテリ7の蓄電エネルギを有効利用してエンジン2の燃料消費を極力少なくするため、前記補機側蓄電量監視手段の監視に基づき、補機バッテリ7の蓄電量が所定量Rb(車両駆動用蓄電装置10の所定量Raとは異なる)以下になってから補機バッテリ7の充電に対してエンジン2とオルタネータ3とを接続した状態に制御する。
【0063】
そして、車両制御ECU5は例えば図4のステップB1〜B5の充電のループ制御を実行し、ステップB1により車両駆動用蓄電装置10の蓄電量が所定量Ra以上か否かを判断し、車両駆動用蓄電装置10の蓄電量が所定量Ra以上であればステップB1からステップB2に移行し、オルタネータカットの状態で車両駆動用蓄電装置10の蓄電エネルギによって補機バッテリ7を充電し、車両駆動用蓄電装置10の蓄電量が所定量Ra未満に減少するとステップB1からステップB3に移行し、切り替え部16をオルタネータ側の接点16bに切り替え、その後、ステップB4により補機バッテリ7の蓄電量が適当な所定量Rbに減少するのをオルタネータカットの状態で待ち、補機バッテリ7の蓄電量が所定量Rbに減少すると、ステップB5に移行してオルタネータカットの状態から復帰し、回生制動時等にエンジン2とオルタネータ3との接続により、オルタネータ出力で補機バッテリ7を充電する。
【0064】
したがって、本実施形態の場合は、車両駆動用蓄電装置10の蓄電量が所定量Ra未満に減少したときに、直ちにオルタネータカットの状態から復帰してオルタネータ出力で補機バッテリ7の充電を可能にするのではなく、それまでに車両駆動用蓄電装置10の蓄電エネルギで満充電状態に充電されている補機バッテリ7の蓄電量が補機負荷8で消費されて充電が必要な所定量Rbに減少した後、オルタネータカットの状態から復帰してオルタネータ出力で補機バッテリ7の充電を可能にするため、エンジン2の燃料消費が一層少なくなり、一実施形態の場合より一層燃料節約効果を高くして一実施形態の場合と同様の効果を奏することができる。
【0065】
そして、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行なうことが可能である。
【0066】
例えば、外部電源は100V以外の商用交流電源や専用の交流電源さらには直流電源であってもよい。
【0067】
また、図1の各部の構成等はどのようであってもよい。
【0068】
そして、本発明は、プラグイン・ハイブリッド方式のハイブリッド自動車以外の種々の方式のハイブリッド自動車にも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】本発明の一実施形態のハイブリッド自動車の要部のブロック図である。
【図2】図1のハイブリッド自動車の走行状態と補機バッテリの充放電との関係の説明図である。
【図3】図1のハイブリッド自動車の動作説明用のフローチャートである。
【図4】本発明の他の実施形態のハイブリッド自動車の動作説明用のフローチャートである。
【符号の説明】
【0070】
1 ハイブリッド自動車
2 エンジン
3 オルタネータ
5 車両制御ECU
6 エンジン制御ECU
7 補機バッテリ
9 モータ
10 車両駆動用蓄電装置
12 蓄電装置制御ECU
16 切り替え部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンと、
前記エンジンに接離自在に接続されてエンジン出力で発電するオルタネータと、
補機負荷の電源を形成する充電可能な補機バッテリと、
車両駆動用のモータと、
前記モータの電源を形成する充電可能な車両駆動用蓄電装置と、
外部電源に着脱自在に接続されて前記車両駆動用蓄電装置を充電する充電器と、
前記補機バッテリの充電手段を前記車両駆動用蓄電装置または前記オルタネータに切り替える切り替え部と、
前記車両駆動用蓄電装置の蓄電量を監視する蓄電量監視手段と、
前記蓄電量監視手段の監視出力にしたがって、前記切り替え部の切り替えを制御するとともに、前記エンジンと前記オルタネータとを接続または切り離しの状態に制御する制御手段とを備え、
前記制御手段は、前記車両駆動用蓄電装置の蓄電量が所定量以上の場合、前記補機バッテリの充電手段を前記車両駆動用蓄電装置に保持し、かつ、前記エンジンと前記オルタネータとを切り離しの状態に制御し、前記車両駆動用蓄電装置の蓄電量が前記所定量未満に減少した場合、前記補機バッテリの充電手段を前記オルタネータに切り替え、かつ、前記補機バッテリの充電に対して前記エンジンと前記オルタネータとを接続の状態に制御することを特徴とするハイブリッド自動車の制御装置。
【請求項2】
エンジンと、
前記エンジンに接離自在に接続されてエンジン出力で発電するオルタネータと、
補機負荷の電源を形成する充電可能な補機バッテリと、
車両駆動用のモータと、
前記モータの電源を形成する充電可能な車両駆動用蓄電装置と、
外部電源に着脱自在に接続されて前記車両駆動用蓄電装置を充電する充電器と、
前記補機バッテリの充電手段を前記車両駆動用蓄電装置または前記オルタネータに切り替える切り替え部と、
前記車両駆動用蓄電装置の蓄電量を監視する車両駆動側蓄電量監視手段と、
前記補機バッテリの蓄電量を監視する補機側蓄電量監視手段と、
前記両蓄電量監視手段の監視出力にしたがって、前記切り替え部の切り替えを制御するとともに、前記エンジンと前記オルタネータとを接続または切り離しの状態に制御する制御手段とを備え、
前記制御手段は、前記車両駆動用蓄電装置の蓄電量が所定量以上の場合、前記補機バッテリの充電手段を前記車両駆動用蓄電装置に保持し、かつ、前記エンジンと前記オルタネータとを切り離しの状態に制御し、前記車両駆動用蓄電装置の蓄電量が前記所定量未満に減少した場合、前記補機バッテリの充電手段を前記オルタネータに切り替え、前記補機側蓄電量監視手段の監視に基づき前記補機バッテリの蓄電量が所定量以下になってから前記補機バッテリの充電に対して前記エンジンと前記オルタネータとを接続した状態に制御することを特徴とするハイブリッド自動車の制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−302852(P2008−302852A)
【公開日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−153009(P2007−153009)
【出願日】平成19年6月8日(2007.6.8)
【出願人】(000002967)ダイハツ工業株式会社 (2,560)
【Fターム(参考)】