説明

ハイブリッド車両の制御装置

【課題】エンジンの出力軸をロックするための係合要素に引き摺りが発生した場合に、出力トルクの制御性低下を抑制するハイブリッド車両の制御装置を提供する。
【解決手段】エンジン12の駆動が行われている走行中において、クラッチBcrの引き摺りが発生した場合には第1電動機MG1の反力が変化させられることから、そのクラッチBcrの引き摺りトルクTdrに起因して第1電動機MG1の反力が必要以上に大きくなるのを抑制することができ、出力トルクの制御性が悪化するのを好適に防止できる。すなわち、エンジン12の出力軸をロックするためのクラッチBcrに引き摺りが発生した場合に、出力トルクの制御性低下を抑制するハイブリッド車両の電子制御装置50を提供することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハイブリッド車両の制御装置に関し、特に、エンジンの出力軸をロックするための係合要素に引き摺りが発生した場合に、出力トルクの制御性低下を抑制するための改良に関する。
【背景技術】
【0002】
第1回転要素、入力回転部材であってエンジンに連結された第2回転要素、及び出力回転部材である第3回転要素を備えた差動機構と、前記第1回転要素に連結された第1電動機と、前記第3回転要素から駆動輪までの動力伝達経路に動力伝達可能に接続された第2電動機とを、備えたハイブリッド車両が知られている。斯かるハイブリッド車両において、前記エンジンの出力軸をロックするための構成として、そのエンジンの出力軸と非回転部材との間に係合要素を設ける技術が提案されている。例えば、特許文献1に記載された動力出力装置がそれである。この技術によれば、前記エンジンの停止時(非回転時)においてそのエンジンの出力軸をロックすることで、前記第1電動機及び第2電動機を走行用の駆動源として併用することができ、モータ走行の高出力化を実現することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−138779号公報
【特許文献2】特許第3412525号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、前記従来の技術のように、前記エンジンの出力軸と非回転部材との間に例えば摩擦係合装置等の係合要素を設けた場合、何らかの原因によりその係合要素に引き摺りが発生することが考えられる。そのように、係合要素に引き摺りトルクが発生した場合、前述したような従来の技術では、エンジントルクに対して第1電動機の反力を算出するものであることから、前記係合要素の引き摺りトルクに起因して前記第1電動機の反力が必要以上に大きくなり、出力トルクの制御性が悪化するおそれがあった。このような課題は、ハイブリッド車両における制御性向上を意図して本発明者等が鋭意研究を続ける過程において新たに見出したものである。
【0005】
本発明は、以上の事情を背景として為されたものであり、その目的とするところは、エンジンの出力軸をロックするための係合要素に引き摺りが発生した場合に、出力トルクの制御性低下を抑制するハイブリッド車両の制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
斯かる目的を達成するために、本第1発明の要旨とするところは、第1回転要素、入力回転部材であってエンジンに連結された第2回転要素、及び出力回転部材である第3回転要素を備えた差動機構と、前記第1回転要素に連結された電動機と、前記エンジンの出力軸と非回転部材との間に設けられた係合要素とを、備えたハイブリッド車両の制御装置であって、前記エンジンの駆動が行われている走行中において、前記係合要素の引き摺りが発生した場合には前記電動機の反力が変化させられることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0007】
このようにすれば、前記エンジンの駆動が行われている走行中において、前記係合要素の引き摺りが発生した場合には前記電動機の反力が変化させられることから、その係合要素の引き摺りトルクに起因して前記電動機の反力が必要以上に大きくなるのを抑制することができ、出力トルクの制御性が悪化するのを好適に防止できる。すなわち、エンジンの出力軸をロックするための係合要素に引き摺りが発生した場合に、出力トルクの制御性低下を抑制するハイブリッド車両の制御装置を提供することができる。
【0008】
ここで、前記第1発明に従属する本第2発明の要旨とするところは、前記エンジンの駆動が行われている走行中において、前記係合要素の引き摺り量が大きいほど前記電動機の反力が減少させられるものである。このようにすれば、前記係合要素の引き摺りトルクに起因して前記電動機の反力が必要以上に大きくなるのを抑制することができ、出力トルクの制御性が悪化するのを実用的な態様で防止できる。
【0009】
また、前記第2発明に従属する本第3発明の要旨とするところは、前記係合要素の引き摺り量は、予め定められた関係から前記エンジンの回転速度の指令値に対する実際値の差分に基づいて算出されるものである。このようにすれば、前記係合要素の引き摺りトルクを実用的な態様で導出することができる。
【0010】
また、前記第2発明に従属する本第4発明の要旨とするところは、前記係合要素の引き摺り量は、予め定められた関係から前記係合要素の発熱量に基づいて算出されるものである。このようにすれば、前記係合要素の引き摺りトルクを実用的な態様で導出することができる。
【0011】
また、前記目的を達成するために、本第5発明の要旨とするところは、第1回転要素、入力回転部材であってエンジンに連結された第2回転要素、及び出力回転部材である第3回転要素を備えた差動機構と、前記第1回転要素に連結された電動機と、前記エンジンの出力軸と非回転部材との間に設けられた係合要素とを、備えたハイブリッド車両の制御装置であって、前記エンジンのトルクから前記係合要素の引き摺りトルクの少なくとも一部を減じたトルクに相当する反力を前記電動機により出力させ、前記エンジンのトルクを前記第3回転要素に伝達することを特徴とするものである。このようにすれば、前記係合要素の引き摺りトルクに起因して前記電動機の反力が必要以上に大きくなるのを抑制することができ、出力トルクの制御性が悪化するのを好適に防止できる。すなわち、エンジンの出力軸をロックするための係合要素に引き摺りが発生した場合に、出力トルクの制御性低下を抑制するハイブリッド車両の制御装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明が好適に適用されるハイブリッド車両用駆動装置の構成を例示する骨子図である。
【図2】図1の駆動装置によるハイブリッド駆動を制御するために備えられた電気系統の要部を例示する図である。
【図3】図1の駆動装置における電子制御装置に備えられた制御機能の要部を説明する機能ブロック線図である。
【図4】図1の駆動装置に備えられた差動機構における3つの回転要素の回転速度を相対的に表すことができる共線図であり、エンジンが停止している走行状態を示している。
【図5】図1の駆動装置に備えられた差動機構における3つの回転要素の回転速度を相対的に表すことができる共線図であり、エンジンが駆動している走行状態を示している。
【図6】図1の駆動装置における記憶装置に記憶された、クラッチの引き摺りトルクを算出するための関係の一例を示す図である。
【図7】図1の駆動装置における記憶装置に記憶された、クラッチの引き摺りトルクを算出するための関係の他の一例を示す図である。
【図8】図1の駆動装置における記憶装置に記憶された、クラッチの引き摺りトルクに基づいて第1電動機の反力トルク減少量を算出するための関係の一例を示す図である。
【図9】図1の駆動装置における本実施例の制御について説明するタイムチャートである。
【図10】図1の駆動装置に備えられた電子制御装置による本実施例のハイブリッド駆動制御の要部を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明が適用されるハイブリッド車両において、好適には、前記差動機構における第3回転要素から駆動輪までの動力伝達経路に、駆動源として機能させられる第2の電動機が動力伝達可能に接続される。斯かるハイブリッド車両では、前記エンジンを停止させると共に前記電動機及び第2の電動機のうち少なくとも一方を駆動源とするモータ走行モードや、前記エンジンを駆動源としてその動力を機械的に駆動輪に伝えて走行するエンジン走行モード等、複数の走行モードの何れかが車両の走行状態に応じて選択的に成立させられる。また、前記係合要素は、好適には、前記エンジンを停止させる走行モードにおいて係合させられてそのエンジンの出力軸を非回転部材に固定(ロック)する一方、そのエンジンを駆動させる走行モードにおいては解放させられて前記出力軸の回転を許容する。
【0014】
前記係合要素は、好適には、油圧アクチュエータによってその係合状態が制御される例えば多板式の油圧式摩擦係合装置であるが、電磁アクチュエータによってその係合状態が制御される電磁式摩擦係合装置や磁粉式クラッチを前記係合要素として備えたハイブリッド車両においても、本発明は一応の効果を奏する。すなわち、本発明は、何らかの原因により引き摺りを発生させ得る係合要素をエンジンの出力軸と非回転部材との間に備えたハイブリッド車両に広く適用されるものである。また、本発明は、比較的容量の大きなバッテリを備え、家庭用電源からそのバッテリへの蓄電が可能な所謂プラグインハイブリッド車両に好適に適用される。
【0015】
以下、本発明の好適な実施例を図面に基づいて詳細に説明する。
【実施例】
【0016】
図1は、本発明が好適に適用されるハイブリッド車両用駆動装置10(以下、単に駆動装置10という)の構成を例示する骨子図である。この図1に示す駆動装置10は、FF(フロントエンジン・フロントドライブ)型車両に好適に用いられるものであって、駆動源(主動力源)であるエンジン12と、駆動輪である左右1対の車輪14l、14r(以下、特に区別しない場合には単に車輪14という)との間の動力伝達経路に、第1駆動部16、第2駆動部18、差動歯車装置20、及び左右1対の車軸22l、22r(以下、特に区別しない場合には単に車軸22という)を備えて構成されている。
【0017】
上記エンジン12は、例えば、気筒内噴射される燃料の燃焼によって駆動力を発生させるガソリンエンジン或いはディーゼルエンジン等の内燃機関である。また、上記第1駆動部16は、3つの回転要素であるサンギヤS、キャリヤCA、及びリングギヤRを有する遊星歯車装置24と、その遊星歯車装置24のサンギヤSに連結された第1電動機MG1とを、備えて構成されている。また、上記エンジン12の出力軸であるクランク軸26と、非回転部材であるハウジング(トランスアクスルハウジング)28との間には、係合要素としてのクラッチBcrが設けられている。
【0018】
前記エンジン12のクランク軸26は、前記第1駆動部16の入力軸として上記遊星歯車装置24のキャリアCAに連結されている。また、そのクランク軸26は、機械式オイルポンプ30に連結されており、前記エンジン12の駆動によりそのオイルポンプ30から後述する油圧制御回路48の元圧としての油圧が発生させられるようになっている。また、上記遊星歯車装置24のリングギヤRは、出力歯車32に連結されている。すなわち、上記遊星歯車装置24は、第1回転要素としてのサンギヤS、入力回転部材であって前記エンジン12に連結された第2回転要素としてのキャリアCA、及び出力回転部材である第3回転要素としてのリングギヤRを備えた差動機構に対応する。
【0019】
上記出力歯車32は、前記第1駆動部16の入力軸としてのクランク軸26と平行を成す中間出力軸34と一体的に設けられた大径歯車36と噛み合わされている。また、同じくその中間出力軸34と一体的に設けられた小径歯車38が、前記差動歯車装置20の入力歯車40と噛み合わされている。また、上記大径歯車36は、第2電動機MG2の出力軸42に連結された第2出力歯車44と噛み合わされている。ここで、好適には、前記第1電動機MG1及び第2電動機MG2は、何れも駆動力を発生させるモータ(発動機)及び反力を発生させるジェネレータ(発電機)としての機能を有するモータジェネレータであるが、前記第1電動機MG1は少なくともジェネレータとしての機能を備え、上記第2電動機MG2は少なくともモータとしての機能を備えるものである。
【0020】
以上のように構成された駆動装置10において、前記第1駆動部16におけるエンジン12から出力された回転は、差動機構としての前記遊星歯車装置24を介して前記出力歯車32から出力され、上記中間出力軸34に設けられた大径歯車36及びその大径歯車36よりも歯数が少ない小径歯車38を介して前記差動歯車装置20の入力歯車40に入力される。ここで、前記出力歯車32から出力された回転は、上記大径歯車36の歯数と小径歯車38の歯数とで定まる所定の減速比で減速されて前記差動歯車装置20の入力歯車40に入力される。また、その差動歯車装置20は、終減速機として機能している。
【0021】
また、前記第1駆動部16における第1電動機MG1の回転は、前記遊星歯車装置24を介して前記出力歯車32に伝達され、前記中間出力軸34に設けられた大径歯車36及び小径歯車38を介して前記差動歯車装置20の入力歯車40に伝達されるように構成されている。また、前記第2駆動部18における第2電動機MG2の回転は、前記出力軸42及び第2出力歯車44を介して前記中間出力軸34に設けられた大径歯車36に伝達され、その大径歯車36及び小径歯車38を介して前記差動歯車装置20の入力歯車40に伝達されるように構成されている。すなわち、本実施例の駆動装置10においては、前記エンジン12、第1電動機MG1、及び第2電動機MG2の何れもが走行用の駆動源として用いられ得るように構成されている。
【0022】
前記クラッチBcrは、好適には、油圧アクチュエータによって係合制御される例えば多板型の油圧式摩擦係合装置であり、好適には湿式の摩擦ブレーキである。このクラッチBcrは、図2に示す油圧制御回路48から供給される油圧に応じてその係合状態が係合乃至解放の間で制御されるようになっている。また、必要に応じてスリップ係合(半係合)させられるように構成されたものであってもよい。前記クラッチBcrが解放された状態においては、前記エンジン12のクランク軸26は非回転部材である前記ハウジング28に対して相対回転可能な状態とされる。一方、前記クラッチBcrが係合された状態においては、前記エンジン12のクランク軸26は前記ハウジング28に対して相対回転不能な状態とされる。すなわち、前記クラッチBcrの係合により、前記エンジン12のクランク軸26は前記ハウジング28に固定(ロック)されるように構成されている。
【0023】
図2は、本実施例の駆動装置10によるハイブリッド駆動を制御するために備えられた電気系統の要部を例示する図である。この図2に示すように、前記駆動装置10は、ハイブリッド駆動制御用電子制御装置50、エンジン制御用電子制御装置52、及び電動機制御用電子制御装置54を備えている。これらの電子制御装置50、52、54は、何れもCPU、ROM、RAM、及び入出力インターフェイス等から成る所謂マイクロコンピュータを含んで構成されており、RAMの一時記憶機能を利用しつつROMに予め記憶されたプログラムに従って信号処理を行うことにより前記エンジン12、第1電動機MG1、及び第2電動機MG2によるハイブリッド駆動制御、及び前記クラッチBcrの係合制御をはじめとする各種制御を実行する。ここで、本実施例においては、上記電子制御装置52が主に前記エンジン12の駆動(出力トルク)制御を、上記電子制御装置54が主に前記第1電動機MG1及び第2電動機MG2の駆動(出力トルク)制御を、上記電子制御装置50が上記電子制御装置52、54を介しての前記駆動装置10全体の駆動制御等を行う態様について説明するが、これら電子制御装置50、52、54は、必ずしも個別の制御装置として備えられたものでなくともよく、一体の制御装置として備えられたものであってもよい。また、上記電子制御装置50、52、54それぞれが更に個別の制御装置に分けて備えられたものであってもよい。
【0024】
図2に示すように、上記電子制御装置50には、前記駆動装置10の各部に設けられた各種センサやスイッチ等から各種信号が供給されるようになっている。すなわち、車速センサから車速Vを表す信号、アクセル開度センサから運転者の出力要求量に対応するアクセルペダルの操作量であるアクセル開度ACCを表す信号、MG1回転速度センサから前記第1電動機MG1の回転速度NMG1を表す信号、MG2回転速度センサから前記第2電動機MG2の回転速度NMG2を表す信号、出力軸回転速度センサから前記出力歯車32の回転速度NOUTに対応する信号、ATF油温センサから前記駆動装置10の各部に供給される作動油の温度であるATF油温TATFに対応する信号、エンジン回転速度センサ56から前記エンジン12の回転速度NEに対応する信号、バッテリSOCセンサ58から図示しないバッテリ(蓄電装置)の蓄電量であるバッテリSOCに対応する信号、或いはそのバッテリSOCに応じた入出力制限値すなわち入力制限値Win及び出力制限値Woutを表す信号、及びクラッチ温度センサ60から前記クラッチBcrの温度(発熱量)Tcrに対応する信号等がそれぞれ上記電子制御装置50に供給されるようになっている。なお、上記クラッチ温度センサ60は、上記ATF油温センサにより検出されるATF油温TATFに基づいて前記クラッチBcrの温度Tcrを検出するものであってもよい。
【0025】
また、前記電子制御装置50からは、前記電子制御装置52、54へそれぞれ前記エンジン12の駆動制御、前記第1電動機MG1の駆動制御、及び前記第2電動機MG2の駆動制御を行うための指令信号が出力されるようになっている。すなわち、前記電子制御装置52に対して、エンジントルク指令として、例えばエンジン出力制御装置62(図3を参照)を介して前記エンジン12の出力を制御するための信号である、そのエンジン12の吸気管に備えられた電子スロットル弁の開度θTHを操作するスロットルアクチュエータへの駆動信号、燃料噴射装置による吸気管等への燃料供給量を制御する燃料供給量信号、或いは点火装置によるエンジン12の点火時期を指令する点火信号等が出力される。また、前記電子制御装置54に対して、MG1トルク指令及びMG2トルク指令として、第1インバータ64及び第2インバータ66(図3を参照)を介して図示しないバッテリから前記第1電動機MG1及び第2電動機MG2に対して供給される電気エネルギ等を制御するための指令信号が出力される。また、前記クラッチBcrの係合状態を制御するために、油圧制御回路48に備えられたそのクラッチBcrの油圧アクチュエータに対応する電磁制御弁に対して、その電磁制御弁からの出力圧を制御するための油圧指令信号が出力される。
【0026】
図3は、前記電子制御装置50、52、54等に備えられた制御機能の要部を説明する機能ブロック線図である。好適には、この図3に示すハイブリッド駆動制御部70及び引き摺り量算出部78は、何れも前記電子制御装置50に機能的に備えられるものであるが、これらの制御機能は、前記電子制御装置50、52、54の何れに備えられたものであってもよく、更にはそれら前記電子制御装置50、52、54とは別の制御装置に備えられたものであってもよい。また、ハイブリッド駆動制御部70に含まれるエンジン駆動制御部72が前記電子制御装置52に、第1電動機駆動制御部74及び第2電動機駆動制御部76が前記電子制御装置54に機能的に備えられるというように、それらの制御機能が前記電子制御装置50、52、54に分散的に備えられると共に各電子制御装置50、52、54相互間で情報の送受信を行うことで処理を実行するものであっても構わない。
【0027】
図3に示すハイブリッド駆動制御部70は、前記駆動装置10によるハイブリッド駆動制御を行う。具体的には、前記エンジン出力制御装置62を介して前記エンジン12の駆動を制御すると共に、前記第1インバータ64及び第2インバータ66を介して前記第1電動機MG1及び第2電動機MG2の駆動(力行)乃至発電(回生)を制御する。斯かる制御を行うために、エンジン駆動制御部72、第1電動機駆動制御部74、及び第2電動機駆動制御部76を含んでいる。以下、これらの制御機能について分説する。
【0028】
前記エンジン駆動制御部72は、基本的には、前記エンジン出力制御装置62を介して前記エンジン12の駆動を制御する。具体的には、前記エンジン12の出力が前記電子制御装置50により算出される目標エンジン出力(目標回転速度乃至目標出力トルク)となるように、前記エンジン12の吸気管に備えられた電子スロットル弁の開度θTHを操作するスロットルアクチュエータへの駆動信号、燃料噴射装置による吸気管等への燃料供給量を制御する燃料供給量信号、及び点火装置による前記エンジン12の点火時期を指令する点火信号等を、前記電子制御装置52を介して前記エンジン出力制御装置62へ供給する。
【0029】
前記第1電動機駆動制御部74は、基本的には、前記第1インバータ64を介して前記第1電動機MG1の作動を制御する。具体的には、前記第1電動機MG1の出力が前記電子制御装置50により算出される目標第1電動機出力(目標回転速度乃至目標出力トルク)となるように、図示しないバッテリと前記第1電動機MG1との間の電気エネルギの入出力を制御するための信号を、前記電子制御装置54を介して前記第1インバータ64へ供給する。
【0030】
前記第2電動機駆動制御部76は、基本的には、前記第2インバータ66を介して前記第2電動機MG2の作動を制御する。具体的には、前記第2電動機MG2の出力が前記電子制御装置50により算出される目標第2電動機出力(目標回転速度乃至目標出力トルク)となるように、図示しないバッテリと前記第2電動機MG2との間の電気エネルギの入出力を制御するための信号を、前記電子制御装置54を介して前記第2インバータ66へ供給する。
【0031】
前記ハイブリッド駆動制御部70は、前記エンジン駆動制御部72、第1電動機駆動制御部74、及び第2電動機駆動制御部76を介して前記駆動装置10によるハイブリッド駆動制御を行う。例えば、予め定められて前記記憶装置68に記憶された図示しないマップから、アクセル操作量センサにより検出されるアクセル操作量ACC及び車速センサにより検出される車速V等に基づいて、前記車輪14に伝達されるべき駆動力の目標値である要求駆動力Freqを算出し、算出されたその要求駆動力Freqに応じて、低燃費で排ガス量の少ない運転となるように前記エンジン12、第1電動機MG1、及び第2電動機MG2の少なくとも1つから要求出力を発生させる。すなわち、前記エンジン12を停止させると共に前記第1電動機MG1及び第2電動機MG2のうち少なくとも一方を駆動源とするモータ走行モード(EVモード)、専ら前記エンジン12を駆動源としてその動力を機械的に前記車輪14に伝えて走行するエンジン走行モード、及び前記エンジン12及び第2電動機MG2(或いはそれに加えて第1電動機MG1)を共に駆動源として走行するハイブリッド走行モード等を、車両の走行状態に応じて選択的に成立させる。
【0032】
前記ハイブリッド駆動制御部70は、好適には、前記バッテリSOCセンサ58により検出されるバッテリSOCに基づいて、前記エンジン12が停止させられる走行モードであるモータ走行モードと、そのエンジン12の駆動が行われる走行モードであるエンジン走行モード乃至ハイブリッド走行モードとの切替制御を行う。例えば、前記バッテリSOCセンサ58により検出されるバッテリSOCが予め定められた閾値Sboより大きい場合には、前記エンジン12が停止させられる走行モードであるモータ走行モードを成立させる一方、バッテリSOCが上記閾値Sbo以下である場合には、前記エンジン12の駆動が行われる走行モードであるエンジン走行モード乃至ハイブリッド走行モードを成立させる。また、好適には、前記アクセル操作量センサにより検出されるアクセル操作量ACC及び車速センサにより検出される車速V等に基づいて斯かる走行モードの切替制御を行うものであってもよい。
【0033】
図4及び図5は、差動機構である前記遊星歯車装置24における3つの回転要素の回転速度を相対的に表すことができる共線図であり、縦線Y1〜Y3は紙面向かって左から順に縦線Y1が前記第1電動機MG1に連結された第1回転要素であるサンギヤSの回転速度を、縦線Y2が前記エンジン12に連結された第2回転要素である前記キャリアCAの回転速度を、縦線Y3が前記大径歯車36及び第2出力歯車44等を介して前記第2電動機MG2に連結された第3回転要素である前記リングギヤRの回転速度をそれぞれ示している。また、図4は前記エンジン12の駆動が行われない(エンジン12が停止させられる)走行モードであるモータ走行モードにおける各回転要素の相対速度を、図5は前記エンジン12の駆動が行われる走行モードであるエンジン走行モード乃至ハイブリッド走行モードにおける各回転要素の相対速度をそれぞれ示している。
【0034】
図4及び図5を用いて前記駆動装置10の作動について説明すると、前記遊星歯車装置24は、第1回転要素としてのサンギヤS、第2回転要素及び入力回転部材としてのキャリアCA、及び第3回転要素及び出力回転部材としてのリングギヤRを備えた差動機構に対応する。また、上記第1回転要素としてのサンギヤSが前記第1電動機MG1に連結され、第2回転要素としてのキャリアCAが前記エンジン12に連結され、第3回転要素としてのリングギヤRが前記大径歯車36及び第2出力歯車44等を介して前記第2電動機MG2に動力伝達可能に接続されることで、前記遊星歯車装置24、第1電動機MG1、及び第2電動機MG2を主体とする電気的無段変速部が構成される。
【0035】
また、図4を用いて前記モータ走行モードにおける前記駆動装置10の作動について説明すると、前記エンジン12の駆動は行われず、その回転速度は0とされる。また、好適には、前記電子制御装置50により前記油圧制御回路48を介して前記クラッチBcrが係合(完全係合)させられ、前記エンジン12のクランク軸26が非回転部材である前記ハウジング28に対して固定(ロック)される。斯かる状態においては、前記第2電動機MG2の力行トルクが車両前進方向の駆動力として前記車輪14へ伝達される。また、前記第1電動機MG1の反力トルクが車両前進方向の駆動力として前記車輪14へ伝達される。すなわち、前記第1電動機MG1の反力トルクにより、出力回転部材に対応する前記リングギヤRの回転速度が正回転方向に引き上げられる。図4の破線から実線への変化は、前記第1電動機MG1の回転速度を破線に示す値から実線に示す値に下げたとき、前記第2電動機MG2の回転速度(リングギヤRの回転速度)が引き上げられる様子を示している。すなわち、前記駆動装置10においては、前記エンジン12のクランク軸26が前記クラッチBcrによりロックされることで、前記第1電動機MG1及び第2電動機MG2を走行用の駆動源として併用することができ、例えば家庭用電源からバッテリへの蓄電が可能な所謂プラグインハイブリッド車両等において、モータ走行の高出力化を実現することができる。
【0036】
また、図5を用いて前記エンジン走行モード乃至ハイブリッド走行モードにおける前記駆動装置10の作動について説明すると、前記キャリアCAに入力される前記エンジン12の出力トルクに対して、前記第1電動機MG1による反力トルクが前記サンギヤSに入力されると、その第1電動機MG1は発電機として機能させられる。また、前記リングギヤRの回転速度(出力軸回転速度)が一定である場合には、前記第1電動機MG1の回転速度を上下に変化させることにより、前記エンジン12の回転速度NEを連続的に(無段階に)変化させることができる。すなわち、前記エンジン12の回転速度NEを例えば燃費が最もよい回転速度に設定する制御を、前記第1電動機MG1の力行制御乃至反力制御により実行することができる。この種のハイブリッド形式は、機械分配式あるいはスプリットタイプと称される。
【0037】
ここで、前記駆動装置10のように、前記エンジン12のクランク軸26と非回転部材であるハウジング28との間に油圧式摩擦係合装置であるクラッチBcrを設けた構成においては、何らかの原因(異常)によりそのクラッチBcrに引き摺りが発生することが考えられる。すなわち、例えば前記エンジン12の駆動が行われる走行モードである前記エンジン走行モード乃至ハイブリッド走行モード等において、本来であれば前記クラッチBcrが解放(完全解放)されるべきところをそのクラッチBcrに摩擦力(伝達トルク)が発生し、前記ハウジング28に対してクランク軸26が引き摺られる状態となることが考えられる。そのように、前記クラッチBcrに引き摺りが発生した場合、図5に一点鎖線で示すように前記エンジン12の回転速度がその引き摺りトルク分だけ低下し、結果として前記第1電動機MG1の反力トルクが必要以上に大きくなって出力トルクの制御性が低下するおそれがある。すなわち、前記クラッチBcrの引き摺りによりエンジン回転速度NEが低下させられた状態において、前記第1電動機MG1の反力トルクに変化がない場合(引き摺りが発生しない場合と同じ反力トルクが発生させられている場合)には、出力回転部材である前記リングギヤRの回転速度(第2電動機MG2の回転速度)が目標値よりも大きくなる等、出力トルクが所望の値から逸脱するおそれがある。
【0038】
上記従来技術の不具合を前提として、本実施例の駆動装置10においては、前記エンジン12の駆動が行われている走行中において、前記クラッチBcrの引き摺り量に応じて前記第1電動機MG1の反力が変化させられる。すなわち、図3に示す前記引き摺り量算出部78は、前記エンジン12の駆動が行われている走行中において、係合要素である前記クラッチBcrの引き摺り量を算出する。好適には、予め記憶装置68に記憶された関係から、前記駆動装置10の駆動状態を示す関係値に基づいて、前記クラッチBcrの引き摺り量としての引き摺りトルクTcrを算出する。この引き摺りトルクTcrは、例えば前記クラッチBcrの引き摺りによる伝達トルクに相当する。
【0039】
図6は、前記記憶装置68に記憶された、前記クラッチBcrの引き摺りトルクTcrを算出するための関係の一例を示す図である。前記記憶装置68には、例えばこの図6に示すように、前記エンジン12の回転速度の指令値に対する実際値の差分(回転速度差分値)ΔNEと前記クラッチBcrの引き摺りトルクTcrとの関係が予め記憶されており、前記引き摺り量算出部78は、斯かる関係から前記エンジン12の回転速度差分値ΔNEに基づいて前記クラッチBcrの引き摺り量を算出する。また、図6に示す関係は、前記エンジン12の回転速度差分値ΔNEが大きいほど前記クラッチBcrの引き摺りトルクTcrが大きくなるように予め定められている。ここで、前記エンジン12の回転速度の指令値に対する実際値の差分ΔNEとは、前記クラッチBcrに引き摺りが発生していない場合に前記電子制御装置50から供給される指令値(エンジントルク指令)に応じて達成される前記エンジン12の回転速度NE0(指令値に対応する理想値)と、例えば前記クラッチBcrに引き摺りが発生している場合に前記エンジン回転速度センサ56により検出される前記エンジン12の回転速度NE(実測値)との差(ΔNE=NE0−NE)であり、換言すれば、前記電子制御装置50から供給される指令値に対するエンジン回転速度の理想値と実測値との差分である。すなわち、前記引き摺り量算出部78は、好適には、予め定められた図6に示すような関係から、前記エンジン12の回転速度の指令値に対する実際値の差分値ΔNEに基づいて、前記クラッチBcrの引き摺り量としての引き摺りトルクTcrを算出する。
【0040】
図7は、前記記憶装置68に記憶された、前記クラッチBcrの引き摺りトルクTcrを算出するための関係の他の一例を示す図である。前記記憶装置68には、例えばこの図7に示すように、前記クラッチBcrの温度(発熱量)TcrとそのクラッチBcrの引き摺りトルクTcrとの関係が予め記憶されており、前記引き摺り量算出部78は、斯かる関係から前記クラッチ温度センサ60により検出される前記クラッチBcrの発熱量Tcrに基づいてそのクラッチBcrの引き摺り量を算出する。ここで、図7に示す関係は、前記クラッチBcrの発熱量Tcrが大きいほどそのクラッチBcrの引き摺りトルクTcrが大きくなるように予め定められている。すなわち、前記引き摺り量算出部78は、好適には、予め定められた図7に示すような関係から、前記クラッチ温度センサ60により検出される前記クラッチBcrの発熱量Tcrに基づいて、そのクラッチBcrの引き摺り量としての引き摺りトルクTcrを算出する。
【0041】
前記ハイブリッド駆動制御部70は、前記エンジン12の駆動が行われている走行中において、前記クラッチBcrの引き摺り量に応じて前記第1電動機MG1の反力トルクを変化させる。好適には、予め記憶装置68に記憶された図8に示すような関係から、前記引き摺り量算出部78により算出される前記クラッチBcrの引き摺りトルクTcrに基づいて前記第1電動機MG1の反力トルク減少値ΔTMG1を導出する。ここで、図8に示す関係は、前記クラッチBcrの引き摺りトルクTcrが大きいほど前記第1電動機MG1の反力トルク減少量ΔTMG1が大きくなるように定められている。すなわち、前記ハイブリッド駆動制御部70は、好適には、前記エンジン12の駆動が行われている走行中において、前記引き摺り量算出部78により算出される前記クラッチBcrの引き摺りトルクTcrに基づいて、その引き摺りトルクTcrが大きいほど前記第1電動機MG1の反力トルクを減少させるハイブリッド駆動制御(電動機反力補正制御)を行う。換言すれば、前記エンジン12のトルクTEから前記クラッチBcrの引き摺りトルクTdrの少なくとも一部を減じたトルクに相当する反力を前記第1電動機MG1により出力させることで、前記エンジン12のトルクを前記リングギヤRに伝達する制御を行う。
【0042】
図9は、前記電子制御装置50による本実施例の制御について説明するタイムチャートである。この図9に示す制御は、前記エンジン12の駆動が行われている走行モードに対応し、前記クラッチBcrの係合油圧は0とされると共に、バッテリSOCは閾値Sboより大きい値となっている。先ず、時点t1において、前記クラッチBcrに引き摺りが発生し、そのクラッチBcrの引き摺りトルクTcrの漸増が開始されると共に、前記エンジン12の回転速度NEの漸減が開始されている。また、このエンジン12の回転速度NEの漸減に応じて、前記第1電動機MG1のトルクTMG1及び回転速度NMG1が共に漸減させられる。すなわち、前記第1電動機MG1の反力トルクが増加させられる。次に、時点t2において、前記クラッチBcrに引き摺りに応じた補正制御として、その引き摺り量に応じて前記第1電動機MG1の反力トルクを減少させる制御が開始される。すなわち、時点t2におけるクラッチBcrの引き摺りトルクTcrに基づいて前記第1電動機MG1の反力トルクの減少量ΔNMG1が算出され、時点t2から時点t3までの間、前記第1電動機MG1の反力トルクがその算出された減少量ΔNMG1に基づいて漸減させられる。換言すれば、図9のタイムチャートに示すように、前記第1電動機MG1のトルクが正方向に漸増させられる。これにより、時点t3においては、前記エンジン12の回転速度NEが前記クラッチBcrに引き摺りが発生する前の値に戻る。このように、本実施例の制御においては、前記引き摺り量算出部78により算出される前記クラッチBcrの引き摺りトルクTcrに基づいて前記第1電動機MG1の反力トルクを低減させることで、前記エンジン12の動作点を本来の値(クラッチに引き摺りが発生していない場合の値)に戻すことができ、前記駆動装置10における出力トルクの制御性を向上させることができる。
【0043】
図10は、前記電子制御装置50によるハイブリッド駆動制御の要部を説明するフローチャートであり、所定の周期で繰り返し実行されるものである。
【0044】
先ず、ステップ(以下、ステップを省略する)S1において、前記バッテリSOCセンサ58により検出されるバッテリSOCが予め定められた閾値Sboよりも大きいか否かが判断される。このS1の判断が肯定される場合には、S2において、前記駆動装置10の走行モードとしてモータ走行モードが設定され、S3において、前記エンジン12が停止させられ、前記クラッチBcrが係合させられると共に、前記第1電動機MG1及び第2電動機MG2の少なくとも一方を駆動源とするモータ走行モードのハイブリッド駆動制御が実行された後、本ルーチンが終了させられるが、S1の判断が否定される場合には、S4において、前記駆動装置10の走行モードとしてエンジン走行モードが設定される。この走行モードにおいては、前記エンジン12が走行用の駆動源として用いられると共に、前記第1電動機MG1等により発電が行われる。次に、S5において、予め定められた関係から前記エンジン12の回転速度差分値ΔNE或いはクラッチ発熱量Tcr等に基づいて前記クラッチBcrの引き摺りトルクTdrが検出(算出)される。次に、S6において、S5にて算出された前記クラッチBcrの引き摺りトルクTcrに基づいて前記第1電動機MG1の反力トルクを低減させるMG1反力制御補正が実行される。次に、S7において、S6にて補正された前記第1電動機MG1の反力トルクに対応して、前記エンジン12を駆動源とするエンジン走行モードの駆動制御が実行された後、本ルーチンが終了させられる。以上の制御において、S1〜S4、S6、及びS7が前記ハイブリッド駆動制御部70の動作に、S5が前記引き摺り量算出部78の動作にそれぞれ対応する。
【0045】
このように、本実施例によれば、前記エンジン12の駆動が行われている走行中において、係合要素であるクラッチBcrの引き摺りが発生した場合には前記第1電動機MG1の反力が変化させられることから、そのクラッチBcrの引き摺りトルクTdrに起因して前記第1電動機MG1の反力が必要以上に大きくなるのを抑制することができ、出力トルクの制御性が悪化するのを好適に防止できる。すなわち、エンジン12の出力軸をロックするためのクラッチBcrに引き摺りが発生した場合に、出力トルクの制御性低下を抑制するハイブリッド車両の電子制御装置50を提供することができる。
【0046】
また、前記エンジン12の駆動が行われている走行中において、前記クラッチBcrの引き摺り量が大きいほど前記第1電動機MG1の反力が減少させられるものであるため、前記クラッチBcrの引き摺りトルクに起因して前記第1電動機MG1の反力が必要以上に大きくなるのを抑制することができ、出力トルクの制御性が悪化するのを実用的な態様で防止できる。
【0047】
また、前記クラッチBcrの引き摺りトルクTdrは、予め定められた関係から前記エンジン12の回転速度NEの指令値に対する実際値の差分ΔNEに基づいて算出されるものであるため、前記クラッチBcrの引き摺りトルクTdrを実用的な態様で導出することができる。
【0048】
また、前記クラッチBcrの引き摺りトルクTdrは、予め定められた関係から前記クラッチBcrの発熱量Tcrに基づいて算出されるものであるため、前記クラッチBcrの引き摺りトルクTdrを実用的な態様で導出することができる。
【0049】
また、本実施例によれば、前記エンジン12のトルクTEから前記クラッチBcrの引き摺りトルクTdrの少なくとも一部を減じたトルクに相当する反力を前記第1電動機MG1により出力させ、前記エンジン12のトルクを前記リングギヤRに伝達するものであることから、前記クラッチBcrの引き摺りトルクTdrに起因して前記第1電動機MG1の反力が必要以上に大きくなるのを抑制することができ、出力トルクの制御性が悪化するのを好適に防止できる。すなわち、エンジン12の出力軸をロックするためのクラッチBcrに引き摺りが発生した場合に、出力トルクの制御性低下を抑制するハイブリッド車両の電子制御装置50を提供することができる。
【0050】
以上、本発明の好適な実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲内において種々の変更が加えられて実施されるものである。
【符号の説明】
【0051】
12:エンジン、24:遊星歯車装置(差動機構)、26:クランク軸(出力軸)、28:ハウジング(非回転部材)、50:ハイブリッド駆動制御用電子制御装置、Bcr:クラッチ(係合要素)、CA:キャリア(第2回転要素)、MG1:第1電動機、S:サンギヤ(第1回転要素)、R:リングギヤ(第3回転要素)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1回転要素、入力回転部材であってエンジンに連結された第2回転要素、及び出力回転部材である第3回転要素を備えた差動機構と、前記第1回転要素に連結された電動機と、前記エンジンの出力軸と非回転部材との間に設けられた係合要素とを、備えたハイブリッド車両の制御装置であって、
前記エンジンの駆動が行われている走行中において、前記係合要素の引き摺りが発生した場合には前記電動機の反力が変化させられることを特徴とするハイブリッド車両の制御装置。
【請求項2】
前記エンジンの駆動が行われている走行中において、前記係合要素の引き摺り量が大きいほど前記電動機の反力が減少させられるものである請求項1に記載のハイブリッド車両の制御装置。
【請求項3】
前記係合要素の引き摺り量は、予め定められた関係から前記エンジンの回転速度の指令値に対する実際値の差分に基づいて算出されるものである請求項2に記載のハイブリッド車両の制御装置。
【請求項4】
前記係合要素の引き摺り量は、予め定められた関係から前記係合要素の発熱量に基づいて算出されるものである請求項2に記載のハイブリッド車両の制御装置。
【請求項5】
第1回転要素、入力回転部材であってエンジンに連結された第2回転要素、及び出力回転部材である第3回転要素を備えた差動機構と、前記第1回転要素に連結された電動機と、前記エンジンの出力軸と非回転部材との間に設けられた係合要素とを、備えたハイブリッド車両の制御装置であって、
前記エンジンのトルクから前記係合要素の引き摺りトルクの少なくとも一部を減じたトルクに相当する反力を前記電動機により出力させ、前記エンジンのトルクを前記第3回転要素に伝達することを特徴とするハイブリッド車両の制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−52791(P2013−52791A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−192967(P2011−192967)
【出願日】平成23年9月5日(2011.9.5)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】