説明

ハイブリッド駆動装置

【課題】大きなトルクアシストが可能でありながら、モード切替時における変速ショックの発生や装置全体のエネルギ効率の低下が抑制されたハイブリッド駆動装置を実現する。
【解決手段】入力部材Iと出力部材Oと第一回転電機MG1と第二回転電機MG2と動力分配装置PTとを備えたハイブリッド駆動装置。回転速度の順に、非回転部材Dcに固定された固定要素ES、中間出力部材Mに駆動連結された入力要素EI、及び第二回転電機MG2に駆動連結された第二回転電機連結要素EM、となる3つの回転要素を有する第一差動歯車装置PG1と、出力部材Oに駆動連結された出力要素EOと、入力要素EI及び第二回転電機連結要素EMのいずれか一方と一体的に駆動連結された一体連結要素ELと、を含む3つの回転要素を有する第二差動歯車装置PG2と、を備え、全体変速比に関して、減速モードと増速モードとを含む複数のモードを切替可能に備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンに駆動連結される入力部材と、車輪に駆動連結される出力部材と、第一回転電機と、第二回転電機と、入力部材の駆動力を第一回転電機と出力部材に駆動連結される中間出力部材とに分配する動力分配装置と、を備えたハイブリッド駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、エンジンと回転電機とを併用することにより、エンジンの燃費向上及び排出ガスの低減を図ることのできるハイブリッド車両が実用化されている。このようなハイブリッド車両に用いるハイブリッド駆動装置の一例として、エンジンに駆動連結される入力部材と、車輪に駆動連結される出力部材と、第一回転電機と、第二回転電機と、入力部材の駆動力を第一回転電機と出力部材に駆動連結される中間出力部材とに分配する動力分配装置を備え、中間出力部材の回転速度を複数の異なる変速比のうちの一つで変速して出力部材に伝達する複数のモードを切替可能に備えたハイブリッド駆動装置の構成が知られている(例えば、以下の特許文献1を参照)。
【0003】
このハイブリッド駆動装置では、動力分配装置が有する3つの回転要素のうちの2つに入力部材と第一回転電機とが駆動連結されている。入力部材を介して入力されるエンジンの駆動力は、動力分配装置により第一回転電機と中間出力部材とに分配され、中間出力部材を介して出力部材に伝達される。第二回転電機は、中間出力部材に一体的に駆動連結されており、中間出力部材を介して出力部材に伝達される駆動力に対して、トルクアシストをすることができるように構成されている。また、このハイブリッド駆動装置は、上記複数のモードを切替可能とするため、二組の遊星歯車機構を組み合わせてなる5要素の差動歯車装置と、当該差動歯車装置の5つの回転要素のうち、中間出力部材又は出力部材に駆動連結される回転要素以外の3つの回転要素を非回転部材にそれぞれ固定するための3つのブレーキと、を有する変速機構を備えている。この変速機構は、3つのブレーキを択一的に係合状態とすることにより、中間出力部材の回転速度を2つの異なる変速比で減速して出力部材に伝達する2つの減速モードとしての第1速及び第2速、及び中間出力部材の回転速度を増速して出力部材に伝達する増速モードとしての第3速、からなる3つのモード(変速段)の切替動作を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−041669号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に記載されたハイブリッド駆動装置の構成では、中間出力部材と第二回転電機とが一体回転するように駆動連結されているので、変速機構によるモード(すなわち、変速段)の切り替えが行われる際には、動力分配装置からの出力回転(中間出力部材の回転)と第二回転電機からの出力回転とが、変速機構により互いに等しい変速比で変速される。つまり、動力分配装置からの出力についての変速比(=出力部材の回転速度に対する中間出力部材の回転速度の比。以下、全体変速比と称する場合がある。)は、第二回転電機についての変速比(=出力部材の回転速度に対する第二回転電機の回転速度の比)に等しくなる。
【0006】
ところで、第二回転電機の体格を大型化させることなく第二回転電機によるアシストトルクの増大を図ろうとすれば、第二回転電機の変速比を大きくすることも考えられる。しかし、特許文献1に記載されたハイブリッド駆動装置の構成では、第二回転電機の変速比を大きくすれば、それに伴って動力分配装置からの出力についての変速比である全体変速比も同じ割合で大きくなるので、少なくとも第1速と第3速との間における全体変速比の差及び比が大きくなる。そのため、特許文献1のハイブリッド駆動装置では、第1速と第2速との間、又は、第2速と第3速との間の全体変速比の比である変速ステップも大きくなり易い。モード(変速段)間の変速ステップが大きくなると、モード(変速段)間の切替時に変速ショックが発生し易い。或いは、当該変速ショックを低減させるためのトルクを第二回転電機に出力させる必要があるため、装置全体のエネルギ効率が低下し易い。
【0007】
そこで、回転電機による大きなトルクアシストが可能でありながら、モード切替時における変速ショックの発生や装置全体のエネルギ効率の低下が抑制されたハイブリッド駆動装置の実現が望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る、エンジンに駆動連結される入力部材と、車輪に駆動連結される出力部材と、第一回転電機と、第二回転電機と、前記入力部材の駆動力を前記第一回転電機と前記出力部材に駆動連結される中間出力部材とに分配する動力分配装置と、を備えたハイブリッド駆動装置の特徴構成は、回転速度の順に、非回転部材に固定された固定要素、前記中間出力部材に駆動連結された入力要素、及び前記第二回転電機に駆動連結された第二回転電機連結要素、となる3つの回転要素を有する第一差動歯車装置と、前記出力部材に駆動連結された出力要素と、前記入力要素及び前記第二回転電機連結要素のいずれか一方と一体的に駆動連結された一体連結要素と、を含む3つの回転要素を有する第二差動歯車装置と、を備え、前記第一差動歯車装置と前記第二差動歯車装置とが協働することにより、前記中間出力部材の回転速度を減速して前記出力部材に伝達する減速モードと、前記中間出力部材の回転速度を増速して前記出力部材に伝達する増速モードと、を含む複数のモードを切替可能に備えた点にある。
【0009】
なお、本願では、「駆動連結」とは、2つの回転要素が駆動力を伝達可能に連結された状態を指し、当該2つの回転要素が一体的に回転するように連結された状態、或いは当該2つの回転要素が一又は二以上の伝動部材を介して駆動力を伝達可能に連結された状態を含む概念として用いている。このような伝動部材としては、回転を同速で又は変速して伝達する各種の部材が含まれ、例えば、軸、歯車機構、ベルト、チェーン等が含まれる。但し、各差動歯車装置の各回転要素について「駆動連結」という場合には、当該差動歯車装置が備える複数の回転要素に関して互いに他の回転要素を介することなく駆動連結されている状態を指すものとする。
また、本願では、「回転電機」は、モータ(電動機)、ジェネレータ(発電機)、及び必要に応じてモータ及びジェネレータの双方の機能を果たすモータ・ジェネレータのいずれをも含む概念として用いている。
また、本願では、「回転速度の順」は、高速側から低速側に向かう順、又は低速側から高速側に向かう順のいずれかであり、差動歯車装置の回転状態によりいずれともなり得るが、いずれの場合にも回転要素の順は変わらない。
【0010】
上記の特徴構成によれば、第二回転電機連結要素に駆動連結される第二回転電機の回転速度は、第一差動歯車装置により減速されて入力要素に駆動連結される中間出力部材に伝達され、逆に、入力要素に駆動連結される中間出力部材の回転速度は、第一差動歯車装置により増速されて第二回転電機連結要素に駆動連結される第二回転電機に伝達される。
そして、第二差動歯車装置の一体連結要素が第一差動歯車装置の入力要素と一体的に駆動連結されている場合には、減速モード及び増速モードの双方において、第二回転電機の回転速度が第一差動歯車装置により減速されて中間出力部材ひいてはこれに駆動連結される出力部材に伝達されるので、第二回転電機から出力されるトルクは増幅されて出力部材に伝達され、第二回転電機による大きなトルクアシストが可能となる。また、第二差動歯車装置の一体連結要素が第一差動歯車装置の第二回転電機連結要素と一体的に駆動連結されている場合には、少なくとも減速モードにおいて、第二回転電機の回転速度が第二差動歯車装置により減速されて出力部材に伝達されるので、第二回転電機から出力されるトルクは増幅されて出力部材に伝達され、第二回転電機による大きなトルクアシストが可能となる。
【0011】
また、第二差動歯車装置の一体連結要素が第一差動歯車装置の入力要素と一体的に駆動連結されている場合には、第二回転電機からは第一差動歯車装置により既に減速された回転が中間出力部材に伝達され、第二差動歯車装置の一体連結要素が第一差動歯車装置の第二回転電機連結要素と一体的に駆動連結されている場合には、中間出力部材からは第一差動歯車装置により既に増速された回転が第二回転電機に伝達されるので、いずれの場合にも、全体変速比(出力部材の回転速度に対する中間出力部材の回転速度の比)を、第二回転電機についての変速比(出力部材の回転速度に対する第二回転電機の回転速度の比)よりも小さくすることができる。その結果、中間出力部材と第二回転電機とが一体回転するように駆動連結された構成のハイブリッド駆動装置と比較して、減速モードと増速モードとを含む複数のモードのうちの2つのモード間の全体変速比の比である変速ステップを小さく抑えることができる。よって、モード切替時における変速ショックの発生を抑制することができる。或いは、当該変速ショックを低減させるためにアシストトルクとは別に第二回転電機から出力すべきトルクを低減することが可能となるため、装置全体のエネルギ効率が低下することもほとんどない。
【0012】
従って、上記の特徴構成によれば、回転電機による大きなトルクアシストが可能でありながら、モード切替時における変速ショックの発生や装置全体のエネルギ効率の低下が抑制されたハイブリッド駆動装置を提供することができる。
【0013】
ここで、前記減速モードでは、前記第二回転電機の回転速度が減速されて前記出力部材に伝達され、前記増速モードでは、前記第二回転電機の回転速度が、減速されて又は同速のまま前記出力部材に伝達される構成とすると好適である。
【0014】
この構成によれば、減速モードでは確実に第二回転電機による大きなトルクアシストを可能とすることができる。また、増速モードにおいても、第二回転電機から出力されるトルクを減衰させることなく出力部材に伝達して、第二回転電機による大きなトルクアシストを可能とすることができる。
【0015】
また、前記第一差動歯車装置と前記第二差動歯車装置とが協働することにより、前記中間出力部材の回転速度を同速のまま前記出力部材に伝達すると共に、前記第二回転電機の回転速度を減速して前記出力部材に伝達する同速モードを更に切替可能に備えた構成とすると好適である。
【0016】
この構成によれば、減速モードの全体変速比と増速モードの全体変速比との間の全体変速比を有することになる中間的なモードとして同速モードを更に切替可能に備えることで、減速モードと同速モードとの間、及び同速モードと増速モードとの間、でモードの切り替えを行わせることができる。この場合、減速モードと同速モードとの間、及び同速モードと増速モードとの間、のいずれにおいても変速ステップを小さく抑えることができる。また、上記の構成によれば、同速モードにおいても第二回転電機による大きなトルクアシストを可能とすることができる。従って、第二回転電機による大きなトルクアシストを行いつつ、モード切替時における変速ショックの発生をより確実に抑制することができる。
【0017】
また、前記第二差動歯車装置の3つの回転要素のうち前記一体連結要素以外の1つの回転要素と、前記第二回転電機連結要素及び前記入力要素のいずれか他方とを選択的に駆動連結する連結クラッチと、前記第二差動歯車装置の3つの回転要素のうち、前記一体連結要素及び前記出力要素以外の残余の回転要素を、非回転部材に選択的に固定するブレーキと、前記第二差動歯車装置の3つの回転要素のうちの2つの回転要素を選択的に駆動連結する直結クラッチと、の3つの係合要素のうち、少なくとも2つの係合要素を備え、当該備えられる少なくとも2つの前記係合要素が、択一的に係合状態とされる構成とすると好適である。
【0018】
この構成によれば、連結クラッチ、直結クラッチ、及びブレーキのうちの少なくとも2つの係合要素を備え、当該備えられる少なくとも2つの係合要素を択一的に係合状態とすることで、減速モードと増速モードとを、適切に切替可能に構成することができる。なお、この場合、少なくともブレーキを含む2つの係合要素を備える構成とすると好適である。また、連結クラッチ、直結クラッチ、及びブレーキの3つの係合要素を全て備え、当該備えられる3つの係合要素を択一的に係合状態とすることで、減速モードと増速モードとを含む3つのモードを、適切に切替可能に構成することができる。
【0019】
本発明に係る、エンジンに駆動連結される入力部材と、車輪に駆動連結される出力部材と、第一回転電機と、第二回転電機と、前記入力部材の駆動力を前記第一回転電機と前記出力部材に駆動連結される中間出力部材とに分配する動力分配装置と、を備えたハイブリッド駆動装置の更なる特徴構成は、回転速度の順に第一回転要素、第二回転要素、及び第三回転要素となる3つの回転要素をそれぞれ有する第一差動歯車装置及び第二差動歯車装置を備え、前記第一差動歯車装置の第一回転要素が非回転部材に固定され、第二回転要素が前記中間出力部材に駆動連結され、第三回転要素が前記第二回転電機に駆動連結され、前記第二差動歯車装置の第一回転要素が前記第一差動歯車装置の第二回転要素に一体的に駆動連結され、第二回転要素が前記出力部材に駆動連結され、前記第一差動歯車装置の第三回転要素と前記第二差動歯車装置の第三回転要素とを選択的に駆動連結する第一クラッチと、前記第二差動歯車装置の第三回転要素を非回転部材に選択的に固定するブレーキと、を備えた点にある。
【0020】
この特徴構成によれば、第二回転電機の回転速度が第一差動歯車装置により減速されて中間出力部材ひいてはこれに駆動連結される出力部材に伝達されるので、第二回転電機から出力されるトルクは増幅されて出力部材に伝達され、第二回転電機による大きなトルクアシストが可能となる。
また、この特徴構成では、ブレーキを択一的に係合状態とすることにより中間出力部材の回転速度を減速して出力部材に伝達することができ、このようにして実現されるモードを減速モードとすることができる。また、第一クラッチを択一的に係合状態とすることにより、中間出力部材の回転速度を増速して出力部材に伝達することができ、このようにして実現されるモードを増速モードとすることができる。その際、第二回転電機からは、第一差動歯車装置により既に減速された回転が中間出力部材に伝達されるので、全体変速比(出力部材の回転速度に対する中間出力部材の回転速度の比)を、第二回転電機についての変速比(出力部材の回転速度に対する第二回転電機の回転速度の比)よりも小さくすることができる。その結果、中間出力部材と第二回転電機とが一体回転するように駆動連結された構成のハイブリッド駆動装置と比較して、第二回転電機についての変速比を大きくして第二回転電機のトルクを増幅しつつ、全体変速比については変速ステップ(減速モードと増速モードとを含む複数のモードのうちの2つのモード間の全体変速比の比)を考慮して設定することができるので、変速ステップを小さく抑えることができる。よって、モード切替時における変速ショックの発生を抑制することができる。或いは、当該変速ショックを低減させるためにアシストトルクとは別に第二回転電機から出力すべきトルクを低減することが可能となるため、装置全体のエネルギ効率が低下することもほとんどない。
従って、上記の特徴構成によれば、回転電機による大きなトルクアシストが可能でありながら、モード切替時における変速ショックの発生や装置全体のエネルギ効率の低下が抑制されたハイブリッド駆動装置を提供することができる。
【0021】
本発明に係る、エンジンに駆動連結される入力部材と、車輪に駆動連結される出力部材と、第一回転電機と、第二回転電機と、前記入力部材の駆動力を前記第一回転電機と前記出力部材に駆動連結される中間出力部材とに分配する動力分配装置と、を備えたハイブリッド駆動装置の更なる特徴構成は、回転速度の順に第一回転要素、第二回転要素、及び第三回転要素となる3つの回転要素をそれぞれ有する第一差動歯車装置及び第二差動歯車装置を備え、前記第一差動歯車装置の第一回転要素が非回転部材に固定され、第二回転要素が前記中間出力部材に駆動連結され、第三回転要素が前記第二回転電機に駆動連結され、前記第二差動歯車装置の第一回転要素が前記出力部材に駆動連結され、第二回転要素が前記第一差動歯車装置の第二回転要素に一体的に駆動連結され、前記第一差動歯車装置の第三回転要素と前記第二差動歯車装置の第三回転要素とを選択的に駆動連結する第一クラッチと、前記第二差動歯車装置の第三回転要素を非回転部材に選択的に固定するブレーキと、を備えた点にある。
【0022】
この特徴構成によれば、第二回転電機の回転速度が第一差動歯車装置により減速されて中間出力部材ひいてはこれに駆動連結される出力部材に伝達されるので、第二回転電機から出力されるトルクは増幅されて出力部材に伝達され、第二回転電機による大きなトルクアシストが可能となる。
また、この特徴構成では、第一クラッチを択一的に係合状態とすることにより中間出力部材の回転速度を減速して出力部材に伝達することができ、このようにして実現されるモードを減速モードとすることができる。また、ブレーキを択一的に係合状態とすることにより、中間出力部材の回転速度を増速して出力部材に伝達することができ、このようにして実現されるモードを増速モードとすることができる。その際、第二回転電機からは、第一差動歯車装置により既に減速された回転が中間出力部材に伝達されるので、全体変速比(出力部材の回転速度に対する中間出力部材の回転速度の比)を、第二回転電機についての変速比(出力部材の回転速度に対する第二回転電機の回転速度の比)よりも小さくすることができる。その結果、中間出力部材と第二回転電機とが一体回転するように駆動連結された構成のハイブリッド駆動装置と比較して、第二回転電機についての変速比を大きくして第二回転電機のトルクを増幅しつつ、全体変速比については変速ステップ(減速モードと増速モードとを含む複数のモードのうちの2つのモード間の全体変速比の比)を考慮して設定することができるので、変速ステップを小さく抑えることができる。よって、モード切替時における変速ショックの発生を抑制することができる。或いは、当該変速ショックを低減させるためにアシストトルクとは別に第二回転電機から出力すべきトルクを低減することが可能となるため、装置全体のエネルギ効率が低下することもほとんどない。
従って、上記の特徴構成によれば、回転電機による大きなトルクアシストが可能でありながら、モード切替時における変速ショックの発生や装置全体のエネルギ効率の低下が抑制されたハイブリッド駆動装置を提供することができる。
【0023】
本発明に係る、エンジンに駆動連結される入力部材と、車輪に駆動連結される出力部材と、第一回転電機と、第二回転電機と、前記入力部材の駆動力を前記第一回転電機と前記出力部材に駆動連結される中間出力部材とに分配する動力分配装置と、を備えたハイブリッド駆動装置の更なる特徴構成は、回転速度の順に第一回転要素、第二回転要素、及び第三回転要素となる3つの回転要素をそれぞれ有する第一差動歯車装置及び第二差動歯車装置を備え、前記第一差動歯車装置の第一回転要素が非回転部材に固定され、第二回転要素が前記中間出力部材に駆動連結され、第三回転要素が前記第二回転電機に駆動連結され、前記第二差動歯車装置の第二回転要素が前記出力部材に駆動連結され、第三回転要素が前記第一差動歯車装置の第三回転要素に一体的に駆動連結され、前記第一差動歯車装置の第二回転要素と前記第二差動歯車装置の第一回転要素とを選択的に駆動連結する第一クラッチと、前記第二差動歯車装置の第一回転要素を非回転部材に選択的に固定するブレーキと、を備えた点にある。
【0024】
この特徴構成によれば、第二差動歯車装置の第三回転要素には第一差動歯車装置の第三回転要素と一体回転する第二回転電機が駆動連結されるので、ブレーキにより第二差動歯車装置の第一回転要素を非回転部材に選択的に固定した場合、及び第一クラッチにより第一差動歯車装置の第二回転要素と第二差動歯車装置の第一回転要素とを駆動連結した場合の双方において、第二回転電機から出力されるトルクは増幅されて出力部材に伝達され、第二回転電機による大きなトルクアシストが可能となる。
また、この特徴構成では、ブレーキを択一的に係合状態とすることにより中間出力部材の回転速度を減速して出力部材に伝達することができ、このようにして実現されるモードを減速モードとすることができる。また、第一クラッチを択一的に係合状態とすることにより、中間出力部材の回転速度を増速して出力部材に伝達することができ、このようにして実現されるモードを増速モードとすることができる。その際、中間出力部材からは第一差動歯車装置により既に増速された回転が第二回転電機に伝達されるので、全体変速比(出力部材の回転速度に対する中間出力部材の回転速度の比)を、第二回転電機についての変速比(出力部材の回転速度に対する第二回転電機の回転速度の比)よりも小さくすることができる。その結果、中間出力部材と第二回転電機とが一体回転するように駆動連結された構成のハイブリッド駆動装置と比較して、第二回転電機についての変速比を大きくして第二回転電機のトルクを増幅しつつ、全体変速比については変速ステップ(減速モードと増速モードとを含む複数のモードのうちの2つのモード間の全体変速比の比)を考慮して設定することができるので、変速ステップを小さく抑えることができる。よって、モード切替時における変速ショックの発生を抑制することができる。或いは、当該変速ショックを低減させるためにアシストトルクとは別に第二回転電機から出力すべきトルクを低減することが可能となるため、装置全体のエネルギ効率が低下することもほとんどない。
従って、上記の特徴構成によれば、回転電機による大きなトルクアシストが可能でありながら、モード切替時における変速ショックの発生や装置全体のエネルギ効率の低下が抑制されたハイブリッド駆動装置を提供することができる。
【0025】
ここで、本発明の更なる特徴構成として説明した上記3つの形態において、前記第二差動歯車装置の3つの回転要素のうちの2つの回転要素を選択的に駆動連結する第二クラッチを更に備えた構成とすると好適である。
【0026】
この構成によれば、第二クラッチを択一的に係合状態とすることにより中間出力部材の回転速度を同速のまま、又は増速モードにおける変速比(減速比)よりも小さい変速比で増速して出力部材に伝達することができ、このようにして実現されるモードをそれぞれ同速モード及び第二の増速モードとすることができる。ここで、同速モードは、減速モードの全体変速比と増速モードの全体変速比との間の全体変速比を有することになる中間的なモードとなるので、このような同速モードを更に切替可能に備える構成とすることで、減速モードと同速モードとの間、及び同速モードと増速モードとの間、でモードの切り替えを行わせることができる。この場合、減速モードと同速モードとの間、及び同速モードと増速モードとの間、のいずれにおいても変速ステップを小さく抑えることができる。よって、モード切替時における変速ショックの発生をより確実に抑制することができる。
なお、第二の増速モードは、増速モードの全体変速比よりも更に小さい全体変速比を有するモードとなるので、このような第二の増速モードを更に切替可能に備える構成とすることで、例えば車速が高くなった場合等にも全体変速比を適切に切り替えて車両を走行させることができる。
【0027】
本発明に係る、エンジンに駆動連結される入力部材と、車輪に駆動連結される出力部材と、第一回転電機と、第二回転電機と、前記入力部材の駆動力を前記第一回転電機と前記出力部材に駆動連結される中間出力部材とに分配する動力分配装置と、を備えたハイブリッド駆動装置の更なる特徴構成は、回転速度の順に第一回転要素、第二回転要素、及び第三回転要素となる3つの回転要素をそれぞれ有する第一差動歯車装置及び第二差動歯車装置を備え、前記第一差動歯車装置の第一回転要素が非回転部材に固定され、第二回転要素が前記中間出力部材に駆動連結され、第三回転要素が前記第二回転電機に駆動連結され、前記第二差動歯車装置の第二回転要素が前記出力部材に駆動連結され、第三回転要素が前記第一差動歯車装置の第三回転要素に一体的に駆動連結され、前記第二差動歯車装置の第一回転要素を非回転部材に選択的に固定するブレーキと、前記第二差動歯車装置の3つの回転要素のうちの2つの回転要素を選択的に駆動連結する第二クラッチと、を備えた点にある。
【0028】
この特徴構成によれば、第二差動歯車装置の第三回転要素には第一差動歯車装置の第三回転要素と一体回転する第二回転電機が駆動連結されるので、少なくともブレーキにより第二差動歯車装置の第一回転要素を非回転部材に選択的に固定した場合には、第二回転電機から出力されるトルクは増幅されて出力部材に伝達され、第二回転電機による大きなトルクアシストが可能となる。また、第二クラッチにより第二差動歯車装置の3つの回転要素のうちの2つの回転要素を選択的に駆動連結した場合にも、第二回転電機から出力されるトルクは減衰されることなくそのまま出力部材に伝達されるので、第二回転電機によるアシストトルクが小さくなる等の不都合もほとんどない。
また、この特徴構成では、ブレーキを択一的に係合状態とすることにより中間出力部材の回転速度を減速して出力部材に伝達することができ、このようにして実現されるモードを減速モードとすることができる。また、第二クラッチを択一的に係合状態とすることにより、中間出力部材の回転速度を増速して出力部材に伝達することができ、このようにして実現されるモードを増速モードとすることができる。その際、中間出力部材からは第一差動歯車装置により既に増速された回転が第二回転電機に伝達されるので、全体変速比(出力部材の回転速度に対する中間出力部材の回転速度の比)を、第二回転電機についての変速比(出力部材の回転速度に対する第二回転電機の回転速度の比)よりも小さくすることができる。その結果、中間出力部材と第二回転電機とが一体回転するように駆動連結された構成のハイブリッド駆動装置と比較して、第二回転電機についての変速比を大きくして第二回転電機のトルクを増幅しつつ、全体変速比については変速ステップ(減速モードと増速モードとを含む複数のモードのうちの2つのモード間の全体変速比の比)を考慮して設定することができるので、変速ステップを小さく抑えることができる。よって、モード切替時における変速ショックの発生を抑制することができる。或いは、当該変速ショックを低減させるためにアシストトルクとは別に第二回転電機から出力すべきトルクを低減することが可能となるため、装置全体のエネルギ効率が低下することもほとんどない。
従って、上記の特徴構成によれば、回転電機による大きなトルクアシストが可能でありながら、モード切替時における変速ショックの発生や装置全体のエネルギ効率の低下が抑制されたハイブリッド駆動装置を提供することができる。
【0029】
ここで、本発明の更なる特徴構成として説明した上記の形態において、前記第一差動歯車装置の第二回転要素と、前記第二差動歯車装置の第一回転要素又は第二回転要素とを選択的に駆動連結する第一クラッチを更に備えた構成とすると好適である。
【0030】
この構成によれば、第一クラッチを択一的に係合状態とすることにより中間出力部材の回転速度を同速のまま、又は増速モードにおける変速比(減速比)よりも大きい変速比で増速して出力部材に伝達することができ、このようにして実現されるモードをそれぞれ同速モード及び中間増速モードとすることができる。このように、減速モードの全体変速比と増速モードの全体変速比との間の全体変速比を有することになる中間的なモードとして同速モード又は中間増速モード(以下、代表して単に同速モードと表示する場合がある。)を更に切替可能に備える構成とすることで、減速モードと同速モードとの間、及び同速モードと増速モードとの間、でモードの切り替えを行わせることができる。この場合、減速モードと同速モードとの間、及び同速モードと増速モードとの間、のいずれにおいても変速ステップを小さく抑えることができる。よって、モード切替時における変速ショックの発生をより確実に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の第一の実施形態に係るハイブリッド駆動装置のスケルトン図である。
【図2】第一の実施形態に係るハイブリッド駆動装置のシステム構成を示す模式図である。
【図3】第一の実施形態に係る各モードでのクラッチ及びブレーキの作動状態を示す作動表である。
【図4】第一の実施形態に係るハイブリッド駆動装置における差動歯車装置の速度線図である。
【図5】本発明の第二の実施形態に係るハイブリッド駆動装置のスケルトン図である。
【図6】第二の実施形態に係る各モードでのクラッチ及びブレーキの作動状態を示す作動表である。
【図7】第二の実施形態に係るハイブリッド駆動装置における差動歯車装置の速度線図である。
【図8】本発明の第三の実施形態に係るハイブリッド駆動装置のスケルトン図である。
【図9】第三の実施形態に係る各モードでのクラッチ及びブレーキの作動状態を示す作動表である。
【図10】第三の実施形態に係るハイブリッド駆動装置における差動歯車装置の速度線図である。
【図11】本発明の第四の実施形態に係るハイブリッド駆動装置のスケルトン図である。
【図12】第四の実施形態に係る各モードでのクラッチ及びブレーキの作動状態を示す作動表である。
【図13】第四の実施形態に係るハイブリッド駆動装置における差動歯車装置の速度線図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
1.第一の実施形態
本発明の第一の実施形態について図面に基づいて説明する。図1は、本実施形態に係るハイブリッド駆動装置Hの機械的構成を示すスケルトン図である。なお、この図1は、中心軸に対称な下半分の構成を省略して示している。また、図2は、本実施形態に係るハイブリッド駆動装置Hのシステム構成を示す模式図である。なお、図2において、実線の矢印は各種情報の伝達経路を示し、破線は電力の伝達経路を示し、白抜きの矢印は油圧の伝達経路を示している。
【0033】
図1に示すように、ハイブリッド駆動装置Hは、エンジンEに駆動連結される入力軸Iと、車輪Wに駆動連結される出力軸Oと、第一回転電機MG1と、第二回転電機MG2と、入力軸Iの駆動力を第一回転電機MG1と出力軸Oに駆動連結される中間軸Mとに分配する動力分配装置PTと、を備えている。また、このハイブリッド駆動装置Hは、第一差動歯車装置PG1と第二差動歯車装置PG2とを更に備えた構成となっている。これらの構成は、車体に固定される非回転部材としての駆動装置ケースDc(以下、単に「ケースDc」という。)内に収容されている。なお、本実施形態においては、入力軸Iが本発明における「入力部材」に相当し、出力軸Oが本発明における「出力部材」に相当する。また、中間軸Mが本発明における「中間出力部材」に相当する。
【0034】
このような構成において、本実施形態に係るハイブリッド駆動装置Hは、第一差動歯車装置PG1は、回転速度の順に、ケースDcに固定された固定要素ESとしての第一リングギヤR1、中間軸Mに駆動連結された入力要素EIとしての第一キャリヤCA1、及び第二回転電機MG2に駆動連結された第二回転電機連結要素EMとしての第一サンギヤS1、となる3つの回転要素を有し、第二差動歯車装置PG2は、出力軸Oに駆動連結された出力要素EOとしての第二キャリヤCA2と、入力要素EIとしての第一キャリヤCA1と一体的に駆動連結された一体連結要素ELとしての第二サンギヤS2と、を含む3つの回転要素を有し、第一差動歯車装置PG1と第二差動歯車装置PG2とが協働することにより、中間軸Mの回転速度を減速して出力軸Oに伝達する減速モードと、中間軸Mの回転速度を増速して出力軸Oに伝達する増速モードと、を含む複数のモードを切替可能に備えた点に特徴を有する。これにより、第二回転電機MG2による大きなトルクアシストが可能でありながら、モード切替時における変速ショックの発生や装置全体のエネルギ効率の低下が抑制されたハイブリッド駆動装置Hが実現されている。以下、本実施形態に係るハイブリッド駆動装置Hについて、詳細に説明する。
【0035】
1−1.ハイブリッド駆動装置の各部の構成
図1に示すように、入力軸Iは、エンジンEに駆動連結されている。ここで、エンジンEは、燃料の燃焼により駆動される内燃機関であり、例えば、ガソリンエンジン、ディーゼルエンジン、ガスタービンエンジン等の公知の各種エンジンを用いることができる。本例では、入力軸IはエンジンEのクランクシャフト等の出力回転軸と一体的に駆動連結されている。なお、入力軸Iが、エンジンEの出力回転軸との間にダンパやクラッチ等を介して駆動連結された構成としても好適である。また、入力軸Iは、動力分配装置PTのキャリヤCA0と一体的に駆動連結されている。図2に示すように、出力軸Oは、出力用差動歯車装置DF等を介して車輪Wに駆動力を伝達可能に駆動連結されている。本例では、出力軸Oは入力軸Iと同軸上に配置されている。
【0036】
図1に示すように、第一回転電機MG1は、ケースDcに固定されたステータSt1と、このステータSt1の径方向内側に回転自在に支持されたロータRo1と、を有している。この第一回転電機MG1のロータRo1は、動力分配装置PTのサンギヤS0と一体回転するように駆動連結されている。また、第二回転電機MG2は、ケースDcに固定されたステータSt2と、このステータSt2の径方向内側に回転自在に支持されたロータRo2と、を有している。この第二回転電機MG2のロータRo2は、第一差動歯車装置PG1の第一サンギヤS1と一体回転するように駆動連結されている。第一回転電機MG1及び第二回転電機MG2は、図2に示すように、それぞれ第一インバータ22及び第二インバータ23を介して蓄電装置としてのバッテリ21に電気的に接続されている。なお、バッテリ21は蓄電装置の一例であり、キャパシタなどの他の蓄電装置を用い、或いは複数種類の蓄電装置を併用することも可能である。
【0037】
そして、第一回転電機MG1及び第二回転電機MG2は、それぞれ電力の供給を受けて動力を発生するモータ(電動機)としての機能と、動力の供給を受けて電力を発生するジェネレータ(発電機)としての機能を果たすことが可能とされている。ここで、第一回転電機MG1及び第二回転電機MG2は、ジェネレータとして機能する場合には、エンジンEの駆動力により発電を行い、バッテリ21を充電し、或いはモータとして機能する他方の回転電機MG1、MG2を駆動するための電力を供給する。一方、第一回転電機MG1及び第二回転電機MG2は、モータとして機能する場合には、バッテリ21に充電され、或いはジェネレータとして機能する他方の回転電機MG1、MG2により発電された電力の供給を受けて力行する。また、第二回転電機MG2は、後述するモード切替時において、第二差動歯車装置PG2の動作状態の変化に起因して出力軸Oに伝達されるトルク変動により生じ得る変速ショックを低減させるためのトルクも出力する。すなわち、第二回転電機MG2から出力軸Oまでの動力伝達系のギヤ比も考慮した上で、そのようなトルク変動量と大きさが等しく向きが反対のトルクが加算されて出力軸Oに伝達されるように、第二回転電機MG2の出力トルクが補正される。そして、第一回転電機MG1の動作制御は、主制御ユニット31からの制御指令に従って第一回転電機制御ユニット33及び第一インバータ22を介して行われ、第二回転電機MG2の動作制御は、主制御ユニット31からの制御指令に従って第二回転電機制御ユニット34及び第二インバータ23を介して行われる。
【0038】
図1に示すように、動力分配装置PTは、入力軸Iと同軸状に配置されたシングルピニオン型の遊星歯車機構により構成されている。すなわち、動力分配装置PTは、複数のピニオンギヤを支持するキャリヤCA0と、前記ピニオンギヤにそれぞれ噛み合うサンギヤS0及びリングギヤR0とを回転要素として有している。サンギヤS0は、第一回転電機MG1のロータRo1と一体回転するように駆動連結されている。キャリヤCA0は、入力軸Iと一体回転するように駆動連結されている。リングギヤR0は、動力分配装置PTの出力回転要素とされており、中間軸Mと一体回転するように駆動連結されている。この中間軸Mは、第一差動歯車装置PG1の第一キャリヤCA1と一体回転するように駆動連結されている。図4の左側の速度線図に示すように、動力分配装置PTのこれら3つの回転要素は、回転速度の順に、第一回転要素としてのサンギヤS0、第二回転要素としてのキャリヤCA0、第三回転要素としてのリングギヤR0となっている。この動力分配装置PTは、後述するように、入力軸Iの駆動力を、第一回転電機MG1と出力軸Oに駆動連結される中間軸Mと一体回転するリングギヤR0とに分配する機能を果たす。なお、本例では、中間軸Mは入力軸I及び出力軸Oと同軸上に配置されている。
【0039】
第一差動歯車装置PG1は、入力軸Iと同軸状に配置されたシングルピニオン型の遊星歯車機構により構成されている。すなわち、第一差動歯車装置PG1は、複数のピニオンギヤを支持する第一キャリヤCA1と、前記ピニオンギヤにそれぞれ噛み合う第一サンギヤS1及び第一リングギヤR1とを回転要素として有している。第一サンギヤS1は、第二回転電機MG2のロータRo2と一体回転するように駆動連結されている。従って、本実施形態においては、第一サンギヤS1が本発明における「第二回転電機連結要素EM」に相当する。第一サンギヤS1は、更に第一クラッチC1を介して第二差動歯車装置PG2の第二リングギヤR2に選択的に駆動連結される。第一キャリヤCA1は、動力分配装置PTの出力回転要素としてのリングギヤR0に駆動連結された中間軸Mと一体回転するように駆動連結されている。従って、本実施形態においては、第一キャリヤCA1が本発明における「入力要素EI」に相当する。第一キャリヤCA1は、更に第二差動歯車装置PG2の第二サンギヤS2と一体回転するように駆動連結されている。第一リングギヤR1は、ケースDcに固定されている。従って、本実施形態においては、第一リングギヤR1が本発明における「固定要素ES」に相当する。図4の右側の速度線図に示すように、第一差動歯車装置PG1のこれら3つの回転要素は、回転速度の順に、第一リングギヤR1、第一キャリヤCA1、第一サンギヤS1となっている。従って、本実施形態では、これらの第一リングギヤR1、第一キャリヤCA1、及び第一サンギヤS1が、それぞれ第一差動歯車装置PG1の「第一回転要素E1」、「第二回転要素E2」、及び「第三回転要素E3」に相当する。
【0040】
第二差動歯車装置PG2は、入力軸Iと同軸状に配置されたシングルピニオン型の遊星歯車機構により構成されている。すなわち、第二差動歯車装置PG2は、複数のピニオンギヤを支持する第二キャリヤCA2と、前記ピニオンギヤにそれぞれ噛み合う第二サンギヤS2及び第二リングギヤR2とを回転要素として有している。第二サンギヤS2は、動力分配装置PTの出力回転要素としてのリングギヤR0及びこれと一体回転する中間軸M、並びに第一差動歯車装置PG1の入力要素EIとしての第一キャリヤCA1と一体回転するように駆動連結されている。従って、本実施形態においては、第二サンギヤS2が本発明における「一体連結要素EL」に相当する。第二キャリヤCA2は、出力軸Oと一体回転するように駆動連結されている。従って、本実施形態においては、第二キャリヤCA2が本発明における「出力要素EO」に相当する。第二リングギヤR2は、ブレーキBによりケースDcに選択的に固定されると共に、第一クラッチC1を介して第二回転電機MG2のロータRo2及び第一差動歯車装置PG1の第二回転電機連結要素EMとしての第一サンギヤS1に選択的に駆動連結される。図4の右側の速度線図に示すように、第二差動歯車装置PG2のこれら3つの回転要素は、回転速度の順に、第二サンギヤS2、第二キャリヤCA2、第二リングギヤR2となっている。従って、本実施形態では、これらの第二サンギヤS2、第二キャリヤCA2、及び第二リングギヤR2が、それぞれ第二差動歯車装置PG2の「第一回転要素E1」、「第二回転要素E2」、及び「第三回転要素E3」に相当する。
【0041】
このハイブリッド駆動装置Hは、係合要素として、第一クラッチC1及びブレーキBを備えている。また、本実施形態においては、ハイブリッド駆動装置Hは、係合要素として更に第二クラッチC2を備えている。これらの係合要素としては、いずれも油圧により動作する多板式クラッチや多板式ブレーキ等の摩擦係合要素を用いることができる。
【0042】
第一クラッチC1は、第二差動歯車装置PG2の3つの回転要素のうち一体連結要素ELとしての第二サンギヤS2以外の1つの回転要素である第二リングギヤR2と、第一差動歯車装置PG1の入力要素EIとしての第一キャリヤCA1及び第二回転電機連結要素EMとしての第一サンギヤS1のうち一体連結要素ELとしての第二サンギヤS2とは一体的に駆動連結されていない方の回転要素である第一サンギヤS1と、を選択的に駆動連結するための係合要素である。この第一クラッチC1の係合状態では、第一差動歯車装置PG1の第一サンギヤS1と第二差動歯車装置PG2の第二リングギヤR2とが一体回転する状態となる。本実施形態においては、第一クラッチC1が本発明における「連結クラッチ」に相当する。
【0043】
第二クラッチC2は、第二差動歯車装置PG2が有する3つの回転要素のうちの2つの回転要素を選択的に駆動連結するための係合要素である。本実施形態では、第二クラッチC2は、第二差動歯車装置PG2が有する3つの回転要素のうち、第二サンギヤS2と第二リングギヤR2とを選択的に駆動連結する。この第二クラッチC2の係合状態では、第二サンギヤS2と第二リングギヤR2とが駆動連結され、第二差動歯車装置PG2が有する3つの回転要素の全てが一体回転する状態となる。本実施形態においては、第二クラッチC2が本発明における「直結クラッチ」に相当する。
【0044】
ブレーキBは、第二差動歯車装置PG2の3つの回転要素のうち、一体連結要素ELとしての第二サンギヤS2及び出力要素EOとしての第二キャリヤCA2以外の残余の回転要素である第二リングギヤR2を、ケースDcに選択的に固定するための係合要素である。このブレーキBの係合状態では、第二差動歯車装置PG2の第二リングギヤR2がケースDcに固定されて回転停止される。
【0045】
本実施形態では、これら3つの係合要素のうちのいずれか1つが、択一的に係合状態とされる。これにより、第一差動歯車装置PG1と第二差動歯車装置PG2とが協働することにより、中間軸Mの回転速度をそれぞれ異なる変速比(減速比、以下同様)で変速して出力軸Oに伝達する3つの異なる動作モードを切り替えて実現することができるように構成されている。この際、これらの係合要素C1、C2、Bへは、図2に示すように、主制御ユニット31からの制御指令により動作する油圧制御装置35から油圧が供給され、当該油圧により各係合要素C1、C2、Bの係合又は解放が制御される。この油圧制御装置35へは、図示しないオイルポンプにより発生した油圧が供給される。
【0046】
1−2.ハイブリッド駆動装置の制御システムの構成
図2に示すように、ハイブリッド駆動装置Hは、装置の各部を制御するための主制御ユニット31を備えている。主制御ユニット31は、エンジン制御ユニット32、第一回転電機制御ユニット33、第二回転電機制御ユニット34、及び油圧制御装置35との間で、相互に情報伝達が可能な状態で接続されている。エンジン制御ユニット32は、エンジンEの各部を制御することにより、エンジンEが所望の回転速度やトルクを出力するように制御する。第一回転電機制御ユニット33は、第一インバータ22を制御することにより、第一回転電機MG1が所望の回転速度やトルクを出力するように制御する。第二回転電機制御ユニット34は、第二インバータ23を制御することにより、第二回転電機MG2が所望の回転速度やトルクを出力するように制御する。油圧制御装置35は、図示しないオイルポンプから供給される油圧を調整し、各係合要素C1、C2、Bに分配供給することにより、各係合要素の係合又は解放を制御する。このような各係合要素の係合又は解放は、主制御ユニット31からの制御指令に基づいて行われる。
【0047】
また、主制御ユニット31は、ハイブリッド駆動装置Hを搭載する車両の各部の情報を取得するために、車両の各部に設けられたセンサ等からの情報を取得可能に構成されている。図示の例では、主制御ユニット31は、バッテリ状態検出センサSe1、車速センサSe2、及びアクセル操作検出センサSe3からの情報を取得可能に構成されている。バッテリ状態検出センサSe1は、バッテリ21の充電量等の状態を検出するためのセンサであり、例えば電圧センサや電流センサ等により構成される。車速センサSe2は、車速を検出するために出力軸Oの回転速度を検出するためのセンサである。アクセル操作検出センサSe3は、アクセルペダル24の操作量を検出するためのセンサである。
【0048】
主制御ユニット31は、各センサSe1〜Se3で取得される情報を用いて、後述する複数の動作モードの選択を行う。そして、主制御ユニット31は、油圧制御装置35を介して、第一クラッチC1、第二クラッチC2、及びブレーキBの係合状態を制御することにより、動作モードの切り替えを行う。また、主制御ユニット31は、選択された動作モードに応じて適切に車両が走行されるように、エンジン制御ユニット32、第一回転電機制御ユニット33、及び第二回転電機制御ユニット34を介して、エンジンE、第一回転電機MG1、第二回転電機MG2の動作状態を協調制御する。
【0049】
本実施形態では、主制御ユニット31は、各種制御を実行するための機能部として、バッテリ状態検出部41、モード選択部42、切替制御部43を備えている。主制御ユニット31が備えるこれらの各機能部(各手段)は、CPU等の演算処理装置を中核部材として、入力されたデータに対して種々の処理を行うための機能部がハードウエア又はソフトウエア(プログラム)或いはその両方により実装されて構成されている。また、主制御ユニット31は、記憶部44を備えており、この記憶部44内には、車速及び要求駆動力に応じて動作モードを決定するために用いられる制御マップ45が格納されている。
【0050】
バッテリ状態検出部41は、バッテリ状態検出センサSe1から出力される電圧値や電流値等の情報に基づいて、バッテリ21の充電量等のバッテリ状態を推定して検出する。ここで、バッテリ充電量は、一般にSOC(state of charge:充電状態)と呼ばれるものであり、例えば、バッテリ21の充電容量に対する充電残量の比率として求められる。
【0051】
モード選択部42は、車両の各部の状態に応じて、所定の制御マップに従い適切な動作モードの選択を行う。本実施形態においては、モード選択部42は、車速及び要求駆動力などの走行条件に応じて、後述する3つの動作モードの中から適切な動作モードを選択する。各動作モードの内容については、後で詳細に説明する。ここで、要求駆動力は、運転者が車両に対して要求する駆動力を表す値であり、アクセル操作検出センサSe3からの出力に基づいて、モード選択部42が演算して取得する。車速は、車速センサSe2により検出する。なお、モード選択の際に参照される走行条件としては、車速及び要求駆動力の他にも、バッテリ充電量、冷却水温度、油温等の各種条件を用いても好適である。
【0052】
切替制御部43は、モード選択部42により選択された動作モードに応じて油圧制御装置35の動作を制御することにより、第一クラッチC1、第二クラッチC2、及びブレーキBのそれぞれの係合又は解放を行う。これにより、切替制御部43は、ハイブリッド駆動装置Hの動作モードを切り替える制御を行う。
【0053】
1−3.切り替え可能に備えられる複数のモード
次に、本実施形態に係るハイブリッド駆動装置Hにより実現可能なモードについて説明する。図3は、各モードでの各係合要素C1、C2、Bの作動状態を示す作動表である。この図において、「●」は各係合要素が係合状態にあることを示しており、「無印」は、各係合要素が解放(係合解除)状態にあることを示している。本実施形態では、ハイブリッド駆動装置Hは、「減速モード」、「同速モード」、及び「増速モード」の3つのモードを切替可能に備えている。図3に示されている3つのモードの配列は、本実施形態では、出力軸Oの回転速度に対する中間軸Mの回転速度の比である全体変速比の順となっており、全体変速比が大きい側(図3の上側)から小さい側(図3の下側)へ向かって、減速モード、同速モード、及び増速モードの順となっている。なお、このような観点から、これら3つのモードは3つの変速段として捉えることもでき、図3及び図4においては、減速モード、同速モード、及び増速モードを、それぞれ第1速段を表す「1st」、第2速段を表す「2nd」、及び第3速段を表す「3rd」として表示又は併記している。
【0054】
図4は、本実施形態における各モードでの動力分配装置PT、並びに第一差動歯車装置PG1及び第二差動歯車装置PG2の動作状態を表す速度線図である。ここで、図4の左側に示される速度線図が動力分配装置PTの速度線図であり、図4の右側に示される速度線図が第一差動歯車装置PG1及び第二差動歯車装置PG2の速度線図である。これらの速度線図において、縦軸は、各回転要素の回転速度に対応している。すなわち、縦軸に対応して記載している「0」は回転速度がゼロであることを示しており、上側が正回転(回転速度が正)、下側が負回転(回転速度が負)である。また、並列配置された複数本の縦線のそれぞれが、動力分配装置PT、並びに第一差動歯車装置PG1及び第二差動歯車装置PG2の各回転要素に対応している。
【0055】
また、各回転要素に対応する縦線の間隔は、動力分配装置PT、第一差動歯車装置PG1、及び第二差動歯車装置PG2のそれぞれのギヤ比(サンギヤとリングギヤとの歯数比=〔サンギヤの歯数〕/〔リングギヤの歯数〕)に対応している。なお、図4の下部には、動力分配装置PT、第一差動歯車装置PG1、及び第二差動歯車装置PG2のギヤ比をそれぞれλ0、λ1、及びλ2(λ0、λ1、λ2<1)として明示している。なお、動力分配装置PT、第一差動歯車装置PG1、及び第二差動歯車装置PG2のギヤ比λ0、λ1、及びλ2の具体的な値は、エンジンE及びモータ・ジェネレータMGの特性や車両重量等を考慮して適宜設定することができる。
【0056】
図4の左側に示される速度線図においては、実線で示される直線が動力分配装置PTの動作状態を示している。また、図4の右側に示される速度線図においては、破線で示される直線が第一差動歯車装置PG1の動作状態を示し、実線で示される直線が第二差動歯車装置PG2の動作状態を示している。これらの速度線図上において、「○」は第一回転電機MG1の回転速度、「△(白三角)」は入力軸I(エンジンE)の回転速度、「△(黒三角)」は中間軸Mの回転速度、「☆」は出力軸Oの回転速度、「□」は第二回転電機MG2の回転速度、「×」はブレーキB等によるケースDcへの固定状態をそれぞれ示している。
【0057】
図4の左側に示すように、動力分配装置PTは、基本的にはハイブリッド駆動装置Hが備える複数のモードの全てについて共通の状態となる。各モードにおいて、動力分配装置PTは、入力軸I(エンジンE)のトルクTeを第一回転電機MG1と出力軸Oに駆動連結される中間軸Mとに分配する。すなわち、動力分配装置PTでは、回転速度の順で中間となるキャリヤCA0が入力軸Iに一体的に駆動連結され、このキャリヤCA0に伝達される入力軸I(エンジンE)のトルクTeが回転速度の順で一方端となるサンギヤS0と他方端となるリングギヤR0とに分配される。そして、サンギヤS0には、当該サンギヤS0に分配された入力軸IのトルクTeに対する反力トルクとなる第一回転電機MG1のトルク(MG1トルク)T1が伝達される。一方、動力分配装置PTの出力回転要素としてのリングギヤR0に分配されたトルクは、当該リングギヤR0と一体回転するように駆動連結された中間軸Mに伝達される。
【0058】
この際、エンジンEは、高い効率で排ガスの少ない状態に(一般に最適燃費特性に沿うように)維持されるよう制御されつつ正方向のエンジントルクTeを出力する。また、第一回転電機MG1は、通常の走行状態では、正方向に回転しつつ負方向のMG1トルクT1を発生して発電を行う。なお、車速が高い状態では、第一回転電機MG1は、負方向に回転しつつ負方向のMG1トルクT1を発生して力行を行う場合もある。第二回転電機MG2は、第一回転電機MG1が発電する状態ではロータRo2の回転方向と同方向のトルク(MG2トルク)T2を出力して力行し、走行用の駆動力をトルクアシストする。一方、第一回転電機MG1が力行する状態では、第二回転電機MG2は、ロータRo2の回転方向とは逆方向のMG2トルクT2を発生して発電を行う。なお、この動力分配装置PTでは、反力受けとなる第一回転電機MG1の回転速度を制御することにより、入力軸Iの回転速度を無段階に変速して中間軸Mに伝達することが可能となっている。よって、以下に説明する各モードにおいては、中間軸Mの回転速度が変化するとそれに伴って出力軸Oの回転速度も変化することになるが、いずれの場合であっても動作モードが同じである限り全体変速比は一定である。
【0059】
減速モード(1st)は、第一差動歯車装置PG1と第二差動歯車装置PG2とが協働することにより、中間軸Mの回転速度を減速して出力軸Oに伝達するモードである。減速モードでは、図3に示すように、ブレーキBが係合状態とされ、第一クラッチC1及び第二クラッチC2は解放状態とされる。ブレーキBが係合されることにより、第二差動歯車装置PG2の第二リングギヤR2がケースDcに固定される。減速モードでは、図4の右側の速度線図に示すように、第一差動歯車装置PG1を表す直線と第二差動歯車装置PG2を表す直線とは別の直線となる。破線で示される第一差動歯車装置PG1においては、回転速度の順で中間となる第一キャリヤCA1に動力分配装置PTの出力回転要素としてのリングギヤR0と一体回転する中間軸Mが駆動連結される。そして、回転速度の順で一方側となる第一リングギヤR1がケースDcに固定され、回転速度の順で他方側となる第一サンギヤS1に第二回転電機MG2のロータRo2が駆動連結される。このため、入力要素EIとしての第一キャリヤCA1に駆動連結された中間軸Mには、第二回転電機連結要素EMとしての第一サンギヤS1に駆動連結された第二回転電機MG2の回転速度が減速されて伝達される。また、中間軸Mには、第二回転電機MG2のトルクT2が増幅されて伝達される。
【0060】
また、実線で示される第二差動歯車装置PG2においては、回転速度の順で中間となる第二キャリヤCA2に出力軸Oが駆動連結されている。そして、回転速度の順で一方側となる第二リングギヤR2がブレーキBによりケースDcに固定され、回転速度の順で他方側となる第二サンギヤS2に、動力分配装置PTの出力回転要素としてのリングギヤR0と一体回転する中間軸Mが駆動連結される。このため、出力要素EOとしての第二キャリヤCA2に駆動連結された出力軸Oには、一体連結要素ELとしての第二サンギヤS2に駆動連結された中間軸Mの回転速度が減速されて伝達される。また、出力軸Oには、中間軸Mのトルクが増幅されて伝達される。ここで、上記のとおり、中間軸Mには、第一差動歯車装置PG1により第二回転電機MG2の回転速度が減速されると共にトルクT2が増幅されて伝達される。従って、この減速モードでは、第二回転電機MG2の回転速度は第一差動歯車装置PG1により減速されると共に、第二差動歯車装置PG2により更に減速されて出力軸Oに伝達される。また、第二回転電機MG2のトルクT2は第一差動歯車装置PG1により増幅されると共に、第二差動歯車装置PG2により更に増幅されて出力軸Oに伝達される。
【0061】
具体的には、第一差動歯車装置PG1のギヤ比λ1と第二差動歯車装置PG2のギヤ比λ2とを用いて、第二回転電機MG2の回転速度は、λ1・λ2/{(1+λ1)・(1+λ2)}倍に変速(ここでは、減速)されて出力軸Oに伝達される。また、第二回転電機MG2のトルクT2は、(1+λ1)・(1+λ2)/(λ1・λ2)倍に増幅されて出力軸Oに伝達される。なお、中間軸Mの回転速度は、λ2/(1+λ2)倍に変速(ここでは、減速)されて出力軸Oに伝達される。従って、第二回転電機MG2の回転速度は、中間軸Mの回転速度よりも大きい割合で減速されて出力軸Oに伝達される。
【0062】
同速モード(2nd)は、第一差動歯車装置PG1と第二差動歯車装置PG2とが協働することにより、中間軸Mの回転速度を同速のまま出力軸Oに伝達するモードである。同速モードでは、図3に示すように、第二クラッチC2が係合状態とされ、第一クラッチC1及びブレーキBは解放状態とされる。第二クラッチC2が係合されることにより、第二差動歯車装置PG2の第二サンギヤS2と第二リングギヤR2とが駆動連結され、第二差動歯車装置PG2の3つの回転要素の全てが一体回転する状態となる。同速モードでは、図4の右側の速度線図に示すように、第一差動歯車装置PG1を表す直線と第二差動歯車装置PG2を表す直線とは別の直線となる。破線で示される第一差動歯車装置PG1の動作状態は、上記減速モードにおける第一差動歯車装置PG1の動作状態と同様である。このため、入力要素EIとしての第一キャリヤCA1に駆動連結された中間軸Mには、第二回転電機連結要素EMとしての第一サンギヤS1に駆動連結された第二回転電機MG2の回転速度が減速されて伝達される。また、中間軸Mには、第二回転電機MG2のトルクT2が増幅されて伝達される。
【0063】
また、実線で示される第二差動歯車装置PG2においては、3つの回転要素のうちの1つである第二サンギヤS2に動力分配装置PTの出力回転要素としてのリングギヤR0と一体回転する中間軸Mが駆動連結される。そして、第二クラッチC2が係合状態とされることにより、第二差動歯車装置PG2の3つの回転要素の全てが一体回転する状態となる。このため、出力要素EOとしての第二キャリヤCA2に駆動連結された出力軸Oには、一体連結要素ELとしての第二サンギヤS2に駆動連結された中間軸Mの回転速度がそのまま伝達される。また、出力軸Oには、中間軸Mのトルクがそのまま伝達される。従って、この同速モードでは、第二回転電機MG2の回転速度は第一差動歯車装置PG1により減速されると共に、第一差動歯車装置PG1により減速された回転がそのまま出力軸Oに伝達される。また、第二回転電機MG2のトルクT2は第一差動歯車装置PG1により増幅されると共に、第一差動歯車装置PG1により増幅されたトルクがそのまま出力軸Oに伝達される。
【0064】
具体的には、第一差動歯車装置PG1のギヤ比λ1と第二差動歯車装置PG2のギヤ比λ2とを用いて、第二回転電機MG2の回転速度は、λ1/(1+λ1)倍に変速(ここでは、減速)されて出力軸Oに伝達される。また、第二回転電機MG2のトルクT2は、(1+λ1)/λ1倍に増幅されて出力軸Oに伝達される。なお、中間軸Mの回転速度は、同速のまま(1倍に変速されて)出力軸Oに伝達される。従って、第二回転電機MG2の回転速度は、中間軸Mの回転速度よりも大きい割合で減速されて出力軸Oに伝達される。
【0065】
増速モード(3rd)は、第一差動歯車装置PG1と第二差動歯車装置PG2とが協働することにより、中間軸Mの回転速度を増速して出力軸Oに伝達するモードである。増速モードでは、図3に示すように、第一クラッチC1が係合状態とされ、第二クラッチC2及びブレーキBは解放状態とされる。第一クラッチC1が係合されることにより、第一差動歯車装置PG1の第一サンギヤS1と第二差動歯車装置PG2の第二リングギヤR2とが一体回転する状態となる。増速モードでは、図4の右側の速度線図に示すように、第一差動歯車装置PG1を表す直線と第二差動歯車装置PG2を表す直線とが同一直線状となる。破線で示される第一差動歯車装置PG1の動作状態は、上記減速モードにおける第一差動歯車装置PG1の動作状態と同様である。このため、入力要素EIとしての第一キャリヤCA1に駆動連結された中間軸Mには、第二回転電機連結要素EMとしての第一サンギヤS1に駆動連結された第二回転電機MG2の回転速度が減速されて伝達される。また、中間軸Mには、第二回転電機MG2のトルクT2が増幅されて伝達される。
【0066】
また、実線で示される第二差動歯車装置PG2においては、回転速度の順で中間となる第二キャリヤCA2に出力軸Oが駆動連結される。そして、回転速度の順で一方側となる第二サンギヤS2に動力分配装置PTの出力回転要素としてのリングギヤR0と一体回転する中間軸Mが駆動連結され、回転速度の順で他方側となる第二リングギヤR2が、第一クラッチC1を介して第一差動歯車装置PG1の第一サンギヤS1及び第二回転電機MG2と一体回転するように駆動連結される。このため、出力要素EOとしての第二キャリヤCA2に駆動連結された出力軸Oには、一体連結要素ELとしての第二サンギヤS2に駆動連結された中間軸Mの回転速度が増速されて伝達されると共に、第二回転電機MG2の回転速度が減速されて伝達される。また、出力軸Oには、第二回転電機MG2のトルクT2が増幅されて伝達される。
【0067】
具体的には、第一差動歯車装置PG1のギヤ比λ1と第二差動歯車装置PG2のギヤ比λ2とを用いて、第二回転電機MG2の回転速度は、(1+λ1+λ1・λ2)/(1+λ1+λ2+λ1・λ2)倍に変速(ここでは、減速)されて出力軸Oに伝達される。また、第二回転電機MG2のトルクT2は、(1+λ1+λ2+λ1・λ2)/(1+λ1+λ1・λ2)倍に増幅されて出力軸Oに伝達される。なお、中間軸Mの回転速度は、(1+λ1+λ1・λ2)/{λ1・(1+λ2)}倍に変速(ここでは、増速)されて出力軸Oに伝達される。従って、第二回転電機MG2の回転速度は、中間軸Mの回転速度よりも大きい割合で減速されて出力軸Oに伝達される。
【0068】
以上に説明したように、本実施形態に係るハイブリッド駆動装置Hでは、切替可能に備えられる3つの動作モードのいずれにおいても、第二回転電機MG2のトルクT2は第一差動歯車装置PG1及び第二差動歯車装置PG2により全体として増幅されて出力軸Oに伝達される。よって、第二回転電機MG2の体格を大型化させることなく第二回転電機MG2による大きなトルクアシストを可能とすることができる。なお、第二回転電機MG2によるトルクアシストを一定の大きさに維持したままで第二回転電機MG2の体格を小型化させることも可能である。
【0069】
また、本実施形態に係るハイブリッド駆動装置Hでは、切替可能に備えられる3つの動作モードのいずれにおいても、第二回転電機MG2からは第一差動歯車装置PG1により既に減速された回転が中間軸Mに伝達されるので、第二回転電機MG2の回転速度は、常に中間軸Mの回転速度よりも大きい割合で減速されて出力軸Oに伝達される。すなわち、全体変速比は、常に第二回転電機MG2についての変速比よりも小さくなる。その結果、従来から良く知られたような中間軸Mと第二回転電機MG2とが一体回転するように駆動連結された構成のハイブリッド駆動装置と比較して、第二回転電機MG2による大きなトルクアシストを可能としつつ、モード切替時における2つのモード間の全体変速比の比である変速ステップを小さく抑えることができる。よって、モード切替時に出力軸Oに伝達されるトルク変動を小さく抑えることができるので、モード切替時における変速ショックの発生を抑制することができる。或いは、当該変速ショックを低減させるために、出力軸Oに伝達されるトルク変動を打ち消すように、アシストトルクT2とは別に第二回転電機MG2から出力すべきトルクを低減することが可能となる。そのため、装置全体のエネルギ効率を低下させることもほとんどない。従って、本実施形態では、第二回転電機MG2による大きなトルクアシストが可能でありながら、モード切替時における変速ショックの発生や装置全体のエネルギ効率の低下が抑制されたハイブリッド駆動装置Hが実現されている。
【0070】
2.第二の実施形態
本発明の第二の実施形態について図面に基づいて説明する。図5は、本実施形態に係るハイブリッド駆動装置Hの機械的構成を示すスケルトン図である。なお、この図5は、図1と同様、中心軸に対称な下半分の構成を省略して示している。この図に示すように、本実施形態に係るハイブリッド駆動装置Hは、エンジンEに駆動連結される入力軸Iと、車輪Wに駆動連結される出力軸Oと、第一回転電機MG1と、第二回転電機MG2と、入力軸Iの駆動力を第一回転電機MG1と出力軸Oに駆動連結される中間軸Mとに分配する動力分配装置PTと、を駆動装置ケースDc内に収容して備える点で上記第一の実施形態と同様である。また、動力分配装置PTの構成についても同様である。但し、本実施形態においては、第二差動歯車装置PG2と第一差動歯車装置PG1や出力軸O等との具体的な連結関係が上記第一の実施形態とは異なっている。それにより、ハイブリッド駆動装置Hが切替可能に備える複数のモードにおける第一差動歯車装置PG1及び第二差動歯車装置PG2の具体的な動作状態も上記第一の実施形態とは一部異なっている。以下では、本実施形態に係るハイブリッド駆動装置Hについて、上記第一の実施形態との相違点を中心に詳細に説明する。なお、特に明記しない点については、上記第一の実施形態と同様とする。
【0071】
本実施形態に係るハイブリッド駆動装置Hは、第一差動歯車装置PG1は、回転速度の順に、ケースDcに固定された固定要素ESとしての第一リングギヤR1、中間軸Mに駆動連結された入力要素EIとしての第一キャリヤCA1、及び第二回転電機MG2に駆動連結された第二回転電機連結要素EMとしての第一サンギヤS1、となる3つの回転要素を有し、第二差動歯車装置PG2は、出力軸Oに駆動連結された出力要素EOとしての第二リングギヤR2と、入力要素EIとしての第一キャリヤCA1と一体的に駆動連結された一体連結要素ELとしての第二キャリヤCA2と、を含む3つの回転要素を有し、第一差動歯車装置PG1と第二差動歯車装置PG2とが協働することにより、中間軸Mの回転速度を減速して出力軸Oに伝達する減速モードと、中間軸Mの回転速度を増速して出力軸Oに伝達する増速モードと、を含む複数のモードを切替可能に備えた点に特徴を有する。これにより、第二回転電機MG2による大きなトルクアシストが可能でありながら、モード切替時における変速ショックの発生や装置全体のエネルギ効率の低下が抑制されたハイブリッド駆動装置Hが実現されている。
【0072】
2−1.ハイブリッド駆動装置の各部の構成
図5に示すように、第一差動歯車装置PG1は、入力軸Iと同軸状に配置されたシングルピニオン型の遊星歯車機構により構成されている。すなわち、第一差動歯車装置PG1は、複数のピニオンギヤを支持する第一キャリヤCA1と、前記ピニオンギヤにそれぞれ噛み合う第一サンギヤS1及び第一リングギヤR1とを回転要素として有している。第一サンギヤS1は、第二回転電機MG2のロータRo2と一体回転するように駆動連結されている。従って、本実施形態においては、第一サンギヤS1が本発明における「第二回転電機連結要素EM」に相当する。第一サンギヤS1は、更に第一クラッチC1を介して第二差動歯車装置PG2の第二サンギヤS2に選択的に駆動連結される。第一キャリヤCA1は、動力分配装置PTの出力回転要素としてのリングギヤR0に駆動連結された中間軸Mと一体回転するように駆動連結されている。従って、本実施形態においては、第一キャリヤCA1が本発明における「入力要素EI」に相当する。第一キャリヤCA1は、更に第二差動歯車装置PG2の第二キャリヤCA2と一体回転するように駆動連結されている。第一リングギヤR1は、ケースDcに固定されている。従って、本実施形態においては、第一リングギヤR1が本発明における「固定要素ES」に相当する。図7の右側の速度線図に示すように、第一差動歯車装置PG1のこれら3つの回転要素は、回転速度の順に、第一リングギヤR1、第一キャリヤCA1、第一サンギヤS1となっている。従って、本実施形態では、これらの第一リングギヤR1、第一キャリヤCA1、及び第一サンギヤS1が、それぞれ第一差動歯車装置PG1の「第一回転要素E1」、「第二回転要素E2」、及び「第三回転要素E3」に相当する。
【0073】
第二差動歯車装置PG2は、入力軸Iと同軸状に配置されたシングルピニオン型の遊星歯車機構により構成されている。すなわち、第二差動歯車装置PG2は、複数のピニオンギヤを支持する第二キャリヤCA2と、前記ピニオンギヤにそれぞれ噛み合う第二サンギヤS2及び第二リングギヤR2とを回転要素として有している。第二サンギヤS2は、ブレーキBによりケースDcに選択的に固定されると共に、第一クラッチC1を介して第二回転電機MG2のロータRo2及び第一差動歯車装置PG1の第二回転電機連結要素EMとしての第一サンギヤS1に選択的に駆動連結される。第二キャリヤCA2は、動力分配装置PTの出力回転要素としてのリングギヤR0及びこれと一体回転する中間軸M、並びに第一差動歯車装置PG1の入力要素EIとしての第一キャリヤCA1と一体回転するように駆動連結されている。従って、本実施形態においては、第二キャリヤCA2が本発明における「一体連結要素EL」に相当する。第二リングギヤR2は、出力軸Oと一体回転するように駆動連結されている。従って、本実施形態においては、第二リングギヤR2が本発明における「出力要素EO」に相当する。図7の右側の速度線図に示すように、第二差動歯車装置PG2のこれら3つの回転要素は、回転速度の順に、第二リングギヤR2、第二キャリヤCA2、第二サンギヤS2となっている。従って、本実施形態では、これらの第二リングギヤR2、第二キャリヤCA2、及び第二サンギヤS2が、それぞれ第二差動歯車装置PG2の「第一回転要素E1」、「第二回転要素E2」、及び「第三回転要素E3」に相当する。
【0074】
このハイブリッド駆動装置Hは、係合要素として、第一クラッチC1及びブレーキBを備えている。また、本実施形態においては、ハイブリッド駆動装置Hは、係合要素として更に第二クラッチC2を備えている。これらの係合要素としては、いずれも油圧により動作する多板式クラッチや多板式ブレーキ等の摩擦係合要素を用いることができる。
【0075】
第一クラッチC1は、第二差動歯車装置PG2の3つの回転要素のうち一体連結要素ELとしての第二キャリヤCA2以外の1つの回転要素である第二サンギヤS2と、第一差動歯車装置PG1の入力要素EIとしての第一キャリヤCA1及び第二回転電機連結要素EMとしての第一サンギヤS1のうち一体連結要素ELとしての第二キャリヤCA2とは一体的に駆動連結されていない方の回転要素である第一サンギヤS1と、を選択的に駆動連結するための係合要素である。この第一クラッチC1の係合状態では、第一差動歯車装置PG1の第一サンギヤS1と第二差動歯車装置PG2の第二サンギヤS2とが一体回転する状態となる。本実施形態においては、第一クラッチC1が本発明における「連結クラッチ」に相当する。
【0076】
第二クラッチC2は、第二差動歯車装置PG2が有する3つの回転要素のうちの2つの回転要素を選択的に駆動連結するための係合要素である。本実施形態では、第二クラッチC2は、第二差動歯車装置PG2が有する3つの回転要素のうち、第二サンギヤS2と第二リングギヤR2とを選択的に駆動連結する。この第二クラッチC2の係合状態では、第二サンギヤS2と第二リングギヤR2とが駆動連結され、第二差動歯車装置PG2が有する3つの回転要素の全てが一体回転する状態となる。本実施形態においては、第二クラッチC2が本発明における「直結クラッチ」に相当する。
【0077】
ブレーキBは、第二差動歯車装置PG2の3つの回転要素のうち、一体連結要素ELとしての第二キャリヤCA2及び出力要素EOとしての第二リングギヤR2以外の残余の回転要素である第二サンギヤS2を、ケースDcに選択的に固定するための係合要素である。このブレーキBの係合状態では、第二差動歯車装置PG2の第二サンギヤS2がケースDcに固定されて回転停止される。
【0078】
本実施形態では、これら3つの係合要素のうちのいずれか1つが、択一的に係合状態とされる。これにより、第一差動歯車装置PG1と第二差動歯車装置PG2とが協働することにより、中間軸Mの回転速度をそれぞれ異なる変速比で変速して出力軸Oに伝達する3つの異なる動作モードを切り替えて実現することができるように構成されている。この際、これらの係合要素C1、C2、Bへは、上記第一の実施形態における図2に示すように、主制御ユニット31からの制御指令により動作する油圧制御装置35から油圧が供給され、当該油圧により各係合要素C1、C2、Bの係合又は解放が制御される。この油圧制御装置35へは、図示しないオイルポンプにより発生した油圧が供給される。
【0079】
2−2.切り替え可能に備えられる複数のモード
次に、本実施形態に係るハイブリッド駆動装置Hにより実現可能なモードについて説明する。図6は、各モードでの各係合要素C1、C2、Bの作動状態を示す作動表である。また、図7は、本実施形態における各モードでの動力分配装置PT、並びに第一差動歯車装置PG1及び第二差動歯車装置PG2の動作状態を表す速度線図である。これらの図における表記は、上記第一の実施形態における図3及び図4と同様である。また、図7の左側に示す動力分配装置PTの速度線図の状態についても、上記第一の実施形態と同様である。
【0080】
減速モード(1st)は、第一差動歯車装置PG1と第二差動歯車装置PG2とが協働することにより、中間軸Mの回転速度を減速して出力軸Oに伝達するモードである。減速モードでは、図6に示すように、第一クラッチC1が係合状態とされ、第二クラッチC2及びブレーキBは解放状態とされる。第一クラッチC1が係合されることにより、第一差動歯車装置PG1の第一サンギヤS1と第二差動歯車装置PG2の第二サンギヤS2とが一体回転する状態となる。減速モードでは、図7の右側の速度線図に示すように、第一差動歯車装置PG1を表す直線と第二差動歯車装置PG2を表す直線とが同一直線状となる。破線で示される第一差動歯車装置PG1においては、回転速度の順で中間となる第一キャリヤCA1に動力分配装置PTの出力回転要素としてのリングギヤR0と一体回転する中間軸Mが駆動連結される。そして、回転速度の順で一方側となる第一リングギヤR1がケースDcに固定され、回転速度の順で他方側となる第一サンギヤS1に第二回転電機MG2のロータRo2が駆動連結される。このため、入力要素EIとしての第一キャリヤCA1に駆動連結された中間軸Mには、第二回転電機連結要素EMとしての第一サンギヤS1に駆動連結された第二回転電機MG2の回転速度が減速されて伝達される。また、中間軸Mには、第二回転電機MG2のトルクT2が増幅されて伝達される。
【0081】
また、実線で示される第二差動歯車装置PG2においては、回転速度の順で中間となる第二キャリヤCA2に、動力分配装置PTの出力回転要素としてのリングギヤR0と一体回転する中間軸Mが駆動連結される。そして、回転速度の順で一方側となる第二リングギヤR2に出力軸Oが駆動連結され、回転速度の順で他方側となる第二サンギヤS2が、第一クラッチC1を介して第一差動歯車装置PG1の第一サンギヤS1及び第二回転電機MG2と一体回転するように駆動連結される。このため、出力要素EOとしての第二リングギヤR2に駆動連結された出力軸Oには、一体連結要素ELとしての第二キャリヤCA2に駆動連結された中間軸Mの回転速度、及び第一クラッチC1を介して第二サンギヤS2と一体回転するように駆動連結された第二回転電機MG2の回転速度、の双方が減速されて伝達される。また、出力軸Oには、中間軸Mのトルク及び第二回転電機MG2のトルクT2の双方が増幅されて伝達される。この際、第二回転電機MG2の回転速度は、中間軸Mの回転速度よりも大きい割合で減速されて出力軸Oに伝達される。また、第二回転電機MG2のトルクT2は、中間軸Mのトルクよりも大きい割合で増幅されて出力軸Oに伝達される。
【0082】
具体的には、第一差動歯車装置PG1のギヤ比λ1と第二差動歯車装置PG2のギヤ比λ2とを用いて、第二回転電機MG2の回転速度は、(λ1−λ2)/(1+λ1)倍に変速(ここでは、減速)されて出力軸Oに伝達される。また、第二回転電機MG2のトルクT2は、(1+λ1)/(λ1−λ2)倍に増幅されて出力軸Oに伝達される。なお、中間軸Mの回転速度は、(λ1−λ2)/λ1倍に変速(ここでは、減速)されて出力軸Oに伝達される。従って、第二回転電機MG2の回転速度は、中間軸Mの回転速度よりも大きい割合で減速されて出力軸Oに伝達される。
【0083】
同速モード(2nd)は、第一差動歯車装置PG1と第二差動歯車装置PG2とが協働することにより、中間軸Mの回転速度を同速のまま出力軸Oに伝達するモードである。同速モードでは、図6に示すように、第二クラッチC2が係合状態とされ、第一クラッチC1及びブレーキBは解放状態とされる。第二クラッチC2が係合されることにより、第二差動歯車装置PG2の第二サンギヤS2と第二リングギヤR2とが駆動連結され、第二差動歯車装置PG2の3つの回転要素の全てが一体回転する状態となる。同速モードでは、図7の右側の速度線図に示すように、第一差動歯車装置PG1を表す直線と第二差動歯車装置PG2を表す直線とは別の直線となる。破線で示される第一差動歯車装置PG1の動作状態は、上記減速モードにおける第一差動歯車装置PG1の動作状態と同様である。このため、入力要素EIとしての第一キャリヤCA1に駆動連結された中間軸Mには、第二回転電機連結要素EMとしての第一サンギヤS1に駆動連結された第二回転電機MG2の回転速度が減速されて伝達される。また、中間軸Mには、第二回転電機MG2のトルクT2が増幅されて伝達される。
【0084】
また、実線で示される第二差動歯車装置PG2においては、3つの回転要素のうちの1つである第二キャリヤCA2に動力分配装置PTの出力回転要素としてのリングギヤR0と一体回転する中間軸Mが駆動連結される。そして、第二クラッチC2が係合状態とされることにより、第二差動歯車装置PG2の3つの回転要素の全てが一体回転する状態となる。このため、出力要素EOとしての第二リングギヤR2に駆動連結された出力軸Oには、一体連結要素ELとしての第二キャリヤCA2に駆動連結された中間軸Mの回転速度がそのまま伝達される。また、出力軸Oには、中間軸Mのトルクがそのまま伝達される。従って、この同速モードでは、第二回転電機MG2の回転速度は第一差動歯車装置PG1により減速されると共に、第一差動歯車装置PG1により減速された回転がそのまま出力軸Oに伝達される。また、第二回転電機MG2のトルクT2は第一差動歯車装置PG1により増幅されると共に、第一差動歯車装置PG1により増幅されたトルクがそのまま出力軸Oに伝達される。
【0085】
具体的には、第一差動歯車装置PG1のギヤ比λ1と第二差動歯車装置PG2のギヤ比λ2とを用いて、第二回転電機MG2の回転速度は、λ1/(1+λ1)倍に変速(ここでは、減速)されて出力軸Oに伝達される。また、第二回転電機MG2のトルクT2は、(1+λ1)/λ1倍に増幅されて出力軸Oに伝達される。なお、中間軸Mの回転速度は、同速のまま(1倍に変速されて)出力軸Oに伝達される。従って、第二回転電機MG2の回転速度は、中間軸Mの回転速度よりも大きい割合で減速されて出力軸Oに伝達される。
【0086】
増速モード(3rd)は、第一差動歯車装置PG1と第二差動歯車装置PG2とが協働することにより、中間軸Mの回転速度を増速して出力軸Oに伝達するモードである。増速モードでは、図6に示すように、ブレーキBが係合状態とされ、第一クラッチC1及び第二クラッチC2は解放状態とされる。ブレーキBが係合されることにより、第二差動歯車装置PG2の第二サンギヤS2がケースDcに固定される。増速モードでは、図7の右側の速度線図に示すように、第一差動歯車装置PG1を表す直線と第二差動歯車装置PG2を表す直線とは別の直線となる。破線で示される第一差動歯車装置PG1の動作状態は、上記減速モードにおける第一差動歯車装置PG1の動作状態と同様である。このため、入力要素EIとしての第一キャリヤCA1に駆動連結された中間軸Mには、第二回転電機連結要素EMとしての第一サンギヤS1に駆動連結された第二回転電機MG2の回転速度が減速されて伝達される。また、中間軸Mには、第二回転電機MG2のトルクT2が増幅されて伝達される。
【0087】
また、実線で示される第二差動歯車装置PG2においては、回転速度の順で中間となる第二キャリヤCA2に、動力分配装置PTの出力回転要素としてのリングギヤR0と一体回転する中間軸Mが駆動連結される。そして、回転速度の順で一方側となる第二サンギヤS2がブレーキBによりケースDcに固定され、回転速度の順で他方側となる第二リングギヤR2に出力軸Oが駆動連結される。このため、出力要素EOとしての第二リングギヤR2に駆動連結された出力軸Oには、一体連結要素ELとしての第二キャリヤCA2に駆動連結された中間軸Mの回転速度が増速されて伝達される。また、出力軸Oには、中間軸Mのトルクが減衰されて伝達される。但し、図7の速度線図からも明らかなように、第一差動歯車装置PG1と第二差動歯車装置PG2とが協働することにより、全体としては、出力軸Oには第二回転電機MG2の回転速度が減速されて伝達される。従って、この増速モードでは、第二回転電機MG2の回転速度は第一差動歯車装置PG1により減速されると共に、第一差動歯車装置PG1により減速された回転が増速され、全体としては第二回転電機MG2の回転速度が減速されて出力軸Oに伝達される。また、第二回転電機MG2のトルクT2は第一差動歯車装置PG1により増幅されると共に、第一差動歯車装置PG1により増幅されたトルクが減衰され、全体としては第二回転電機MG2のトルクT2が増幅されて出力軸Oに伝達される。
【0088】
具体的には、第一差動歯車装置PG1のギヤ比λ1と第二差動歯車装置PG2のギヤ比λ2とを用いて、第二回転電機MG2の回転速度は、λ1・(1+λ2)/(1+λ1)倍に変速(ここでは、減速)されて出力軸Oに伝達される。また、第二回転電機MG2のトルクT2は、(1+λ1)/{λ1・(1+λ2)}倍に増幅されて出力軸Oに伝達される。なお、中間軸Mの回転速度は、(1+λ2)倍に変速(ここでは、増速)されて出力軸Oに伝達される。従って、第二回転電機MG2の回転速度は、中間軸Mの回転速度よりも大きい割合で減速されて出力軸Oに伝達される。
【0089】
以上に説明したように、本実施形態に係るハイブリッド駆動装置Hでは、切替可能に備えられる3つの動作モードのいずれにおいても、第二回転電機MG2のトルクT2は第一差動歯車装置PG1及び第二差動歯車装置PG2により全体として増幅されて出力軸Oに伝達される。よって、第二回転電機MG2の体格を大型化させることなく第二回転電機MG2による大きなトルクアシストを可能とすることができる。なお、第二回転電機MG2によるトルクアシストを一定の大きさに維持したままで第二回転電機MG2の体格を小型化させることも可能である。
【0090】
また、本実施形態に係るハイブリッド駆動装置Hでは、切替可能に備えられる3つの動作モードのいずれにおいても、第二回転電機MG2からは第一差動歯車装置PG1により既に減速された回転が中間軸Mに伝達されるので、第二回転電機MG2の回転速度は、常に中間軸Mの回転速度よりも大きい割合で減速されて出力軸Oに伝達される。すなわち、全体変速比は、常に第二回転電機MG2についての変速比よりも小さくなる。その結果、従来から良く知られたような中間軸Mと第二回転電機MG2とが一体回転するように駆動連結された構成のハイブリッド駆動装置と比較して、第二回転電機MG2による大きなトルクアシストを可能としつつ、モード切替時における2つのモード間の全体変速比の比である変速ステップを小さく抑えることができる。よって、モード切替時に出力軸Oに伝達されるトルク変動を小さく抑えることができるので、モード切替時における変速ショックの発生を抑制することができる。或いは、当該変速ショックを低減させるために、出力軸Oに伝達されるトルク変動を打ち消すように、アシストトルクT2とは別に第二回転電機MG2から出力すべきトルクを低減することが可能となる。そのため、装置全体のエネルギ効率を低下させることもほとんどない。従って、本実施形態では、第二回転電機MG2による大きなトルクアシストが可能でありながら、モード切替時における変速ショックの発生や装置全体のエネルギ効率の低下が抑制されたハイブリッド駆動装置Hが実現されている。
【0091】
3.第三の実施形態
本発明の第三の実施形態について図面に基づいて説明する。図8は、本実施形態に係るハイブリッド駆動装置Hの機械的構成を示すスケルトン図である。なお、この図8は、図1と同様、中心軸に対称な下半分の構成を省略して示している。この図に示すように、本実施形態に係るハイブリッド駆動装置Hは、エンジンEに駆動連結される入力軸Iと、車輪Wに駆動連結される出力軸Oと、第一回転電機MG1と、第二回転電機MG2と、入力軸Iの駆動力を第一回転電機MG1と出力軸Oに駆動連結される中間軸Mとに分配する動力分配装置PTと、を駆動装置ケースDc内に収容して備える点で上記第一の実施形態と同様である。また、動力分配装置PTの構成についても同様である。但し、本実施形態においては、第二差動歯車装置PG2の具体的な構成や、第二差動歯車装置PG2と第一差動歯車装置PG1や出力軸O等との具体的な連結関係が上記第一の実施形態とは異なっている。それにより、ハイブリッド駆動装置Hが切替可能に備える複数のモードにおける第一差動歯車装置PG1及び第二差動歯車装置PG2の具体的な動作状態も上記第一の実施形態とは異なっている。以下では、本実施形態に係るハイブリッド駆動装置Hについて、上記第一の実施形態との相違点を中心に詳細に説明する。なお、特に明記しない点については、上記第一の実施形態と同様とする。
【0092】
本実施形態に係るハイブリッド駆動装置Hは、第一差動歯車装置PG1は、回転速度の順に、ケースDcに固定された固定要素ESとしての第一リングギヤR1、中間軸Mに駆動連結された入力要素EIとしての第一キャリヤCA1、及び第二回転電機MG2に駆動連結された第二回転電機連結要素EMとしての第一サンギヤS1、となる3つの回転要素を有し、第二差動歯車装置PG2は、出力軸Oに駆動連結された出力要素EOとしての第二リングギヤR2と、第二回転電機連結要素EMとしての第一サンギヤS1と一体的に駆動連結された一体連結要素ELとしての第二サンギヤS2と、を含む3つの回転要素を有し、第一差動歯車装置PG1と第二差動歯車装置PG2とが協働することにより、中間軸Mの回転速度を減速して出力軸Oに伝達する減速モードと、中間軸Mの回転速度を増速して出力軸Oに伝達する増速モードと、を含む複数のモードを切替可能に備えた点に特徴を有する。これにより、第二回転電機MG2による大きなトルクアシストが可能でありながら、モード切替時における変速ショックの発生や装置全体のエネルギ効率の低下が抑制されたハイブリッド駆動装置Hが実現されている。
【0093】
3−1.ハイブリッド駆動装置の各部の構成
図8に示すように、第一差動歯車装置PG1は、入力軸Iと同軸状に配置されたシングルピニオン型の遊星歯車機構により構成されている。すなわち、第一差動歯車装置PG1は、複数のピニオンギヤを支持する第一キャリヤCA1と、前記ピニオンギヤにそれぞれ噛み合う第一サンギヤS1及び第一リングギヤR1とを回転要素として有している。第一サンギヤS1は、第二回転電機MG2のロータRo2と一体回転するように駆動連結されている。従って、本実施形態においては、第一サンギヤS1が本発明における「第二回転電機連結要素EM」に相当する。第一サンギヤS1は、更に第二差動歯車装置PG2の第二サンギヤS2と一体回転するように駆動連結されている。第一キャリヤCA1は、動力分配装置PTの出力回転要素としてのリングギヤR0に駆動連結された中間軸Mと一体回転するように駆動連結されている。従って、本実施形態においては、第一キャリヤCA1が本発明における「入力要素EI」に相当する。第一キャリヤCA1は、更に第一クラッチC1を介して第二差動歯車装置PG2の第二キャリヤCA2に選択的に駆動連結される。第一リングギヤR1は、ケースDcに固定されている。従って、本実施形態においては、第一リングギヤR1が本発明における「固定要素ES」に相当する。図10の右側の速度線図に示すように、第一差動歯車装置PG1のこれら3つの回転要素は、回転速度の順に、第一リングギヤR1、第一キャリヤCA1、第一サンギヤS1となっている。従って、本実施形態では、これらの第一リングギヤR1、第一キャリヤCA1、及び第一サンギヤS1が、それぞれ第一差動歯車装置PG1の「第一回転要素E1」、「第二回転要素E2」、及び「第三回転要素E3」に相当する。
【0094】
第二差動歯車装置PG2は、入力軸Iと同軸状に配置されたダブルピニオン型の遊星歯車機構により構成されている。すなわち、第二差動歯車装置PG2は、複数組のピニオンギヤを支持する第二キャリヤCA2と、互いに噛み合う一対のピニオンギヤの一方に噛み合う第二サンギヤS2及び他方に噛み合う第二リングギヤR2とを回転要素として有している。第二サンギヤS2は、第二回転電機MG2のロータRo2及び第一差動歯車装置PG1の第二回転電機連結要素EMとしての第一サンギヤS1と一体回転するように駆動連結されている。従って、本実施形態においては、第二サンギヤS2が本発明における「一体連結要素EL」に相当する。第二キャリヤCA2は、ブレーキBによりケースDcに選択的に固定されると共に、第一クラッチC1を介して動力分配装置PTの出力回転要素としてのリングギヤR0及びこれと一体回転する中間軸M、並びに第一差動歯車装置PG1の入力要素EIとしての第一キャリヤCA1に選択的に駆動連結される。第二リングギヤR2は、出力軸Oと一体回転するように駆動連結されている。従って、本実施形態においては、第二リングギヤR2が本発明における「出力要素EO」に相当する。図10の右側の速度線図に示すように、第二差動歯車装置PG2のこれら3つの回転要素は、回転速度の順に、第二キャリヤCA2、第二リングギヤR2、第二サンギヤS2となっている。従って、本実施形態では、これらの第二キャリヤCA2、第二リングギヤR2、及び第二サンギヤS2が、それぞれ第二差動歯車装置PG2の「第一回転要素E1」、「第二回転要素E2」、及び「第三回転要素E3」に相当する。
【0095】
このハイブリッド駆動装置Hは、係合要素として、第一クラッチC1及びブレーキBを備えている。また、本実施形態においては、ハイブリッド駆動装置Hは、係合要素として更に第二クラッチC2を備えている。これらの係合要素としては、いずれも油圧により動作する多板式クラッチや多板式ブレーキ等の摩擦係合要素を用いることができる。
【0096】
第一クラッチC1は、第二差動歯車装置PG2の3つの回転要素のうち一体連結要素ELとしての第二サンギヤS2以外の1つの回転要素である第二キャリヤCA2と、第一差動歯車装置PG1の入力要素EIとしての第一キャリヤCA1及び第二回転電機連結要素EMとしての第一サンギヤS1のうち一体連結要素ELとしての第二サンギヤS2とは一体的に駆動連結されていない方の回転要素である第一キャリヤCA1と、を選択的に駆動連結するための係合要素である。この第一クラッチC1の係合状態では、第一差動歯車装置PG1の第一キャリヤCA1と第二差動歯車装置PG2の第二キャリヤCA2とが一体回転する状態となる。本実施形態においては、第一クラッチC1が本発明における「連結クラッチ」に相当する。
【0097】
第二クラッチC2は、第二差動歯車装置PG2が有する3つの回転要素のうちの2つの回転要素を選択的に駆動連結するための係合要素である。本実施形態では、第二クラッチC2は、第二差動歯車装置PG2が有する3つの回転要素のうち、第二サンギヤS2と第二キャリヤCA2とを選択的に駆動連結する。この第二クラッチC2の係合状態では、第二サンギヤS2と第二キャリヤCA2とが駆動連結され、第二差動歯車装置PG2が有する3つの回転要素の全てが一体回転する状態となる。本実施形態においては、第二クラッチC2が本発明における「直結クラッチ」に相当する。
【0098】
ブレーキBは、第二差動歯車装置PG2の3つの回転要素のうち、一体連結要素ELとしての第二サンギヤS2及び出力要素EOとしての第二リングギヤR2以外の残余の回転要素である第二キャリヤCA2を、ケースDcに選択的に固定するための係合要素である。このブレーキBの係合状態では、第二差動歯車装置PG2の第二キャリヤCA2がケースDcに固定されて回転停止される。
【0099】
本実施形態では、これら3つの係合要素のうちのいずれか1つが、択一的に係合状態とされる。これにより、第一差動歯車装置PG1と第二差動歯車装置PG2とが協働することにより、中間軸Mの回転速度をそれぞれ異なる変速比で変速して出力軸Oに伝達する3つの異なる動作モードを切り替えて実現することができるように構成されている。この際、これらの係合要素C1、C2、Bへは、上記第一の実施形態における図2に示すように、主制御ユニット31からの制御指令により動作する油圧制御装置35から油圧が供給され、当該油圧により各係合要素C1、C2、Bの係合又は解放が制御される。この油圧制御装置35へは、図示しないオイルポンプにより発生した油圧が供給される。
【0100】
3−2.切り替え可能に備えられる複数のモード
次に、本実施形態に係るハイブリッド駆動装置Hにより実現可能なモードについて説明する。図9は、各モードでの各係合要素C1、C2、Bの作動状態を示す作動表である。この図9に示すように、本実施形態では、ハイブリッド駆動装置Hは、「減速モード」、「第一増速モード」、及び「第二増速モード」の3つのモードを切替可能に備えている。図9に示されている3つのモードの配列に関しては、上記第一の実施形態と同様、全体変速比の順である。図9及び図10においては、減速モード、第一増速モード、及び第二増速モードを、それぞれ第1速段を表す「1st」、第2速段を表す「2nd」、及び第3速段を表す「3rd」として表示又は併記している。また、図10は、本実施形態における各モードでの動力分配装置PT、並びに第一差動歯車装置PG1及び第二差動歯車装置PG2の動作状態を表す速度線図である。これらの図における表記は、上記第一の実施形態における図3及び図4と同様である。また、図10の左側に示す動力分配装置PTの速度線図の状態についても、上記第一の実施形態と同様である。
【0101】
減速モード(1st)は、第一差動歯車装置PG1と第二差動歯車装置PG2とが協働することにより、中間軸Mの回転速度を減速して出力軸Oに伝達するモードである。減速モードでは、図9に示すように、ブレーキBが係合状態とされ、第一クラッチC1及び第二クラッチC2は解放状態とされる。ブレーキBが係合されることにより、第二差動歯車装置PG2の第二キャリヤCA2がケースDcに固定される。減速モードでは、図10の右側の速度線図に示すように、第一差動歯車装置PG1を表す直線と第二差動歯車装置PG2を表す直線とは別の直線となる。破線で示される第一差動歯車装置PG1においては、回転速度の順で中間となる第一キャリヤCA1に動力分配装置PTの出力回転要素としてのリングギヤR0と一体回転する中間軸Mが駆動連結される。そして、回転速度の順で一方側となる第一リングギヤR1がケースDcに固定され、回転速度の順で他方側となる第一サンギヤS1に第二回転電機MG2のロータRo2が駆動連結される。このため、第二回転電機連結要素EMとしての第一サンギヤS1には、入力要素EIとしての第一キャリヤCA1に駆動連結された中間軸Mの回転速度が増速されて伝達される。
【0102】
また、実線で示される第二差動歯車装置PG2においては、回転速度の順で中間となる第二リングギヤR2に出力軸Oが駆動連結されている。そして、回転速度の順で一方側となる第二キャリヤCA2がブレーキBによりケースDcに固定され、回転速度の順で他方側となる一体連結要素ELとしての第二サンギヤS2に、第二回転電機連結要素EMとしての第一サンギヤS1が一体的に駆動連結される。この第一サンギヤS1には、上記のとおり中間軸Mの回転速度が増速されて伝達される。また、第一サンギヤS1には、第二回転電機MG2の回転速度がそのまま伝達される。このため、出力要素EOとしての第二リングギヤR2に駆動連結された出力軸Oには、第二回転電機MG2の回転速度が減速されて伝達されると共に、第一差動歯車装置PG1により増速された中間軸Mの回転速度が全体として減速されて伝達される。この際、第二回転電機MG2の回転速度は、中間軸Mの回転速度よりも大きい割合で減速されて出力軸Oに伝達される。また、出力軸Oには、第二回転電機MG2のトルクT2が増幅されて伝達される。
【0103】
具体的には、第一差動歯車装置PG1のギヤ比λ1と第二差動歯車装置PG2のギヤ比λ2とを用いて、第二回転電機MG2の回転速度は、λ2倍に変速(ここでは、減速)されて出力軸Oに伝達される。また、第二回転電機MG2のトルクT2は、1/λ2倍に増幅されて出力軸Oに伝達される。なお、中間軸Mの回転速度は、λ2・(1+λ1)/λ1倍に変速(ここでは、減速)されて出力軸Oに伝達される。従って、第二回転電機MG2の回転速度は、中間軸Mの回転速度よりも大きい割合で減速されて出力軸Oに伝達される。
【0104】
第一増速モード(2nd)は、第一差動歯車装置PG1と第二差動歯車装置PG2とが協働することにより、中間軸Mの回転速度を後述する第二増速モードの全体変速比(全体減速比)よりも大きい全体変速比で増速して出力軸Oに伝達するモードである。すなわち、第一増速モードの全体変速比は、「1」よりも小さく、かつ第二増速モードの全体変速比よりも大きい値となる。第一増速モードでは、図9に示すように、第一クラッチC1が係合状態とされ、第二クラッチC2及びブレーキBは解放状態とされる。第一クラッチC1が係合されることにより、第一差動歯車装置PG1の第一キャリヤCA1と第二差動歯車装置PG2の第二キャリヤCA2とが一体回転する状態となる。第一増速モードでは、図10の右側の速度線図に示すように、第一差動歯車装置PG1を表す直線と第二差動歯車装置PG2を表す直線とが同一直線状となる。破線で示される第一差動歯車装置PG1の動作状態は、上記減速モードにおける第一差動歯車装置PG1の動作状態と同様である。このため、第二回転電機連結要素EMとしての第一サンギヤS1には、入力要素EIとしての第一キャリヤCA1に駆動連結された中間軸Mの回転速度が増速されて伝達される。
【0105】
また、実線で示される第二差動歯車装置PG2においては、回転速度の順で中間となる第二リングギヤR2に出力軸Oが駆動連結されている。そして、回転速度の順で一方側となる第二キャリヤCA2が、第一クラッチC1を介して第一差動歯車装置PG1の第一キャリヤCA1及び中間軸Mと一体回転するように駆動連結され、回転速度の順で他方側となる一体連結要素ELとしての第二サンギヤS2に、第二回転電機連結要素EMとしての第一サンギヤS1が一体的に駆動連結される。この第一サンギヤS1には、上記のとおり中間軸Mの回転速度が増速されて伝達される。また、第一サンギヤS1には、第二回転電機MG2の回転速度がそのまま伝達される。このため、出力要素EOとしての第二リングギヤR2に駆動連結された出力軸Oには、第二回転電機MG2の回転速度が減速されて伝達されると共に、中間軸Mの回転速度が増速されて伝達される。また、出力軸Oには、第二回転電機MG2のトルクT2が増幅されて伝達される。
【0106】
具体的には、第一差動歯車装置PG1のギヤ比λ1と第二差動歯車装置PG2のギヤ比λ2とを用いて、第二回転電機MG2の回転速度は、(λ1+λ2)/(1+λ1)倍に変速(ここでは、減速)されて出力軸Oに伝達される。また、第二回転電機MG2のトルクT2は、(1+λ1)/(λ1+λ2)倍に増幅されて出力軸Oに伝達される。なお、中間軸Mの回転速度は、(λ1+λ2)/λ1倍に変速(ここでは、増速)されて出力軸Oに伝達される。従って、第二回転電機MG2の回転速度は、中間軸Mの回転速度よりも大きい割合で減速されて出力軸Oに伝達される。
【0107】
第二増速モード(3rd)は、第一差動歯車装置PG1と第二差動歯車装置PG2とが協働することにより、中間軸Mの回転速度を上記第一増速モードの全体変速比(全体減速比)よりも小さい全体変速比で増速して出力軸Oに伝達するモードである。第二増速モードでは、図9に示すように、第二クラッチC2が係合状態とされ、第一クラッチC1及びブレーキBは解放状態とされる。第二クラッチC2が係合されることにより、第二差動歯車装置PG2の第二サンギヤS2と第二キャリヤCA2とが駆動連結され、第二差動歯車装置PG2の3つの回転要素の全てが一体回転する状態となる。第二増速モードでは、図10の右側の速度線図に示すように、第一差動歯車装置PG1を表す直線と第二差動歯車装置PG2を表す直線とは別の直線となる。破線で示される第一差動歯車装置PG1の動作状態は、上記減速モードにおける第一差動歯車装置PG1の動作状態と同様である。このため、第二回転電機連結要素EMとしての第一サンギヤS1には、入力要素EIとしての第一キャリヤCA1に駆動連結された中間軸Mの回転速度が増速されて伝達される。
【0108】
また、実線で示される第二差動歯車装置PG2においては、3つの回転要素のうちの1つである一体連結要素ELとしての第二サンギヤS2に、第二回転電機連結要素EMとしての第一サンギヤS1が一体的に駆動連結される。この第一サンギヤS1には、上記のとおり中間軸Mの回転速度が増速されて伝達される。また、第一サンギヤS1には、第二回転電機MG2の回転速度がそのまま伝達される。そして、第二クラッチC2が係合状態とされることにより、第二差動歯車装置PG2の3つの回転要素の全てが一体回転する状態となる。このため、出力要素EOとしての第二リングギヤR2に駆動連結された出力軸Oには、第二回転電機MG2の回転速度がそのまま伝達されると共に、中間軸Mの回転速度が増速されて伝達される。また、出力軸Oには、第二回転電機MG2のトルクT2がそのまま伝達される。
【0109】
具体的には、第一差動歯車装置PG1のギヤ比λ1と第二差動歯車装置PG2のギヤ比λ2とを用いて、第二回転電機MG2の回転速度は、同速のまま(1倍に変速されて)出力軸Oに伝達される。また、第二回転電機MG2のトルクT2は、同じ大きさのまま(1倍に変換されて)出力軸Oに伝達される。なお、中間軸Mの回転速度は、(1+λ1)/λ1倍に変速(ここでは、増速)されて出力軸Oに伝達される。従って、中間軸Mの回転速度が増速されて出力軸Oに伝達されるのに対して、第二回転電機MG2の回転速度は同速のまま出力軸Oに伝達される。
【0110】
以上に説明したように、本実施形態に係るハイブリッド駆動装置Hでは、切替可能に備えられる3つの動作モードのうち、少なくとも減速モード及び第一増速モードにおいて、第二回転電機MG2のトルクT2は第二差動歯車装置PG2により増幅されて出力軸Oに伝達される。よって、第二回転電機MG2の体格を大型化させることなく第二回転電機MG2による大きなトルクアシストを可能とすることができる。なお、第二回転電機MG2によるトルクアシストを一定の大きさに維持したままで第二回転電機MG2の体格を小型化させることも可能である。また、第二増速モードにおいても、第二回転電機MG2のトルクT2は減衰されることなくそのまま出力軸Oに伝達されるので、第二増速モード選択時に第二回転電機MG2によるアシストトルクが小さくなる等の不都合もほとんどない。
【0111】
また、本実施形態に係るハイブリッド駆動装置Hでは、切替可能に備えられる3つの動作モードのいずれにおいても、第二回転電機MG2に一体的に駆動連結された第二回転電機連結要素EMとしての第一サンギヤS1には、入力要素EIとしての第一キャリヤCA1に駆動連結された中間軸Mの回転速度が増速されて伝達されるので、第二回転電機MG2の回転速度は、常に、中間軸Mの回転速度よりも大きい割合で減速され、或いは中間軸Mの回転速度が増速されるのに対して同速のまま、出力軸Oに伝達される。すなわち、全体変速比は、常に第二回転電機MG2についての変速比よりも小さくなる。その結果、従来から良く知られたような中間軸Mと第二回転電機MG2とが一体回転するように駆動連結された構成のハイブリッド駆動装置と比較して、第二回転電機MG2による大きなトルクアシストを可能としつつ、モード切替時における2つのモード間の全体変速比の比である変速ステップを小さく抑えることができる。よって、モード切替時に出力軸Oに伝達されるトルク変動を小さく抑えることができるので、モード切替時における変速ショックの発生を抑制することができる。或いは、当該変速ショックを低減させるために、出力軸Oに伝達されるトルク変動を打ち消すように、アシストトルクT2とは別に第二回転電機MG2から出力すべきトルクを低減することが可能となる。そのため、装置全体のエネルギ効率を低下させることもほとんどない。従って、本実施形態では、第二回転電機MG2による大きなトルクアシストが可能でありながら、モード切替時における変速ショックの発生や装置全体のエネルギ効率の低下が抑制されたハイブリッド駆動装置Hが実現されている。
【0112】
4.第四の実施形態
本発明の第四の実施形態について図面に基づいて説明する。図11は、本実施形態に係るハイブリッド駆動装置Hの機械的構成を示すスケルトン図である。なお、この図11は、図1と同様、中心軸に対称な下半分の構成を省略して示している。この図に示すように、本実施形態に係るハイブリッド駆動装置Hは、エンジンEに駆動連結される入力軸Iと、車輪Wに駆動連結される出力軸Oと、第一回転電機MG1と、第二回転電機MG2と、入力軸Iの駆動力を第一回転電機MG1と出力軸Oに駆動連結される中間軸Mとに分配する動力分配装置PTと、を駆動装置ケースDc内に収容して備える点で上記第一の実施形態と同様である。また、動力分配装置PTの構成についても同様である。但し、本実施形態においては、第二差動歯車装置PG2と第一差動歯車装置PG1や出力軸O等との具体的な連結関係が上記第一の実施形態とは異なっている。それにより、ハイブリッド駆動装置Hが切替可能に備える複数のモードにおける第一差動歯車装置PG1及び第二差動歯車装置PG2の具体的な動作状態も上記第一の実施形態とは異なっている。以下では、本実施形態に係るハイブリッド駆動装置Hについて、上記第一の実施形態との相違点を中心に詳細に説明する。なお、特に明記しない点については、上記第一の実施形態と同様とする。
【0113】
本実施形態に係るハイブリッド駆動装置Hは、第一差動歯車装置PG1は、回転速度の順に、ケースDcに固定された固定要素ESとしての第一リングギヤR1、中間軸Mに駆動連結された入力要素EIとしての第一キャリヤCA1、及び第二回転電機MG2に駆動連結された第二回転電機連結要素EMとしての第一サンギヤS1、となる3つの回転要素を有し、第二差動歯車装置PG2は、出力軸Oに駆動連結された出力要素EOとしての第二キャリヤCA2と、第二回転電機連結要素EMとしての第一サンギヤS1と一体的に駆動連結された一体連結要素ELとしての第二サンギヤS2と、を含む3つの回転要素を有し、第一差動歯車装置PG1と第二差動歯車装置PG2とが協働することにより、中間軸Mの回転速度を減速して出力軸Oに伝達する減速モードと、中間軸Mの回転速度を増速して出力軸Oに伝達する増速モードと、を含む複数のモードを切替可能に備えた点に特徴を有する。これにより、第二回転電機MG2による大きなトルクアシストが可能でありながら、モード切替時における変速ショックの発生や装置全体のエネルギ効率の低下が抑制されたハイブリッド駆動装置Hが実現されている。
【0114】
4−1.ハイブリッド駆動装置の各部の構成
図11に示すように、第一差動歯車装置PG1は、入力軸Iと同軸状に配置されたシングルピニオン型の遊星歯車機構により構成されている。すなわち、第一差動歯車装置PG1は、複数のピニオンギヤを支持する第一キャリヤCA1と、前記ピニオンギヤにそれぞれ噛み合う第一サンギヤS1及び第一リングギヤR1とを回転要素として有している。第一サンギヤS1は、第二回転電機MG2のロータRo2と一体回転するように駆動連結されている。従って、本実施形態においては、第一サンギヤS1が本発明における「第二回転電機連結要素EM」に相当する。第一サンギヤS1は、更に第二差動歯車装置PG2の第二サンギヤS2と一体回転するように駆動連結されている。第一キャリヤCA1は、動力分配装置PTの出力回転要素としてのリングギヤR0に駆動連結された中間軸Mと一体回転するように駆動連結されている。従って、本実施形態においては、第一キャリヤCA1が本発明における「入力要素EI」に相当する。第一キャリヤCA1は、更に第一クラッチC1を介して第二差動歯車装置PG2の第二キャリヤCA2に選択的に駆動連結される。第一リングギヤR1は、ケースDcに固定されている。従って、本実施形態においては、第一リングギヤR1が本発明における「固定要素ES」に相当する。図13の右側の速度線図に示すように、第一差動歯車装置PG1のこれら3つの回転要素は、回転速度の順に、第一リングギヤR1、第一キャリヤCA1、第一サンギヤS1となっている。従って、本実施形態では、これらの第一リングギヤR1、第一キャリヤCA1、及び第一サンギヤS1が、それぞれ第一差動歯車装置PG1の「第一回転要素E1」、「第二回転要素E2」、及び「第三回転要素E3」に相当する。
【0115】
第二差動歯車装置PG2は、入力軸Iと同軸状に配置されたシングルピニオン型の遊星歯車機構により構成されている。すなわち、第二差動歯車装置PG2は、複数のピニオンギヤを支持する第二キャリヤCA2と、前記ピニオンギヤにそれぞれ噛み合う第二サンギヤS2及び第二リングギヤR2とを回転要素として有している。第二サンギヤS2は、第二回転電機MG2のロータRo2及び第一差動歯車装置PG1の第二回転電機連結要素EMとしての第一サンギヤS1と一体回転するように駆動連結されている。従って、本実施形態においては、第二サンギヤS2が本発明における「一体連結要素EL」に相当する。第二キャリヤCA2は、出力軸Oと一体回転するように駆動連結されている。従って、本実施形態においては、第二キャリヤCA2が本発明における「出力要素EO」に相当する。第二キャリヤCA2は、更に第一クラッチC1を介して動力分配装置PTの出力回転要素としてのリングギヤR0及びこれと一体回転する中間軸M、並びに第一差動歯車装置PG1の入力要素EIとしての第一キャリヤCA1に選択的に駆動連結される。第二リングギヤR2は、ブレーキBによりケースDcに選択的に固定される。図13の右側の速度線図に示すように、第二差動歯車装置PG2のこれら3つの回転要素は、回転速度の順に、第二リングギヤR2、第二キャリヤCA2、第二サンギヤS2となっている。従って、本実施形態では、これらの第二リングギヤR2、第二キャリヤCA2、及び第二サンギヤS2が、それぞれ第二差動歯車装置PG2の「第一回転要素E1」、「第二回転要素E2」、及び「第三回転要素E3」に相当する。
【0116】
このハイブリッド駆動装置Hは、係合要素として、第二クラッチC2及びブレーキBを備えている。また、本実施形態においては、ハイブリッド駆動装置Hは、係合要素として更に第一クラッチC1を備えている。これらの係合要素としては、いずれも油圧により動作する多板式クラッチや多板式ブレーキ等の摩擦係合要素を用いることができる。
【0117】
第一クラッチC1は、第二差動歯車装置PG2の3つの回転要素のうち一体連結要素ELとしての第二サンギヤS2以外の1つの回転要素である第二キャリヤCA2と、第一差動歯車装置PG1の入力要素EIとしての第一キャリヤCA1及び第二回転電機連結要素EMとしての第一サンギヤS1のうち一体連結要素ELとしての第二サンギヤS2とは一体的に駆動連結されていない方の回転要素である第一キャリヤCA1と、を選択的に駆動連結するための係合要素である。この第一クラッチC1の係合状態では、第一差動歯車装置PG1の第一キャリヤCA1と第二差動歯車装置PG2の第二キャリヤCA2とが一体回転する状態となる。本実施形態においては、第一クラッチC1が本発明における「連結クラッチ」に相当する。
【0118】
第二クラッチC2は、第二差動歯車装置PG2が有する3つの回転要素のうちの2つの回転要素を選択的に駆動連結するための係合要素である。本実施形態では、第二クラッチC2は、第二差動歯車装置PG2が有する3つの回転要素のうち、第二サンギヤS2と第二キャリヤCA2とを選択的に駆動連結する。この第二クラッチC2の係合状態では、第二サンギヤS2と第二キャリヤCA2とが駆動連結され、第二差動歯車装置PG2が有する3つの回転要素の全てが一体回転する状態となる。本実施形態においては、第二クラッチC2が本発明における「直結クラッチ」に相当する。
【0119】
ブレーキBは、第二差動歯車装置PG2の3つの回転要素のうち、一体連結要素ELとしての第二サンギヤS2及び出力要素EOとしての第二キャリヤCA2以外の残余の回転要素である第二リングギヤR2を、ケースDcに選択的に固定するための係合要素である。このブレーキBの係合状態では、第二差動歯車装置PG2の第二リングギヤR2がケースDcに固定されて回転停止される。
【0120】
本実施形態では、これら3つの係合要素のうちのいずれか1つが、択一的に係合状態とされる。これにより、第一差動歯車装置PG1と第二差動歯車装置PG2とが協働することにより、中間軸Mの回転速度をそれぞれ異なる変速比で変速して出力軸Oに伝達する3つの異なる動作モードを切り替えて実現することができるように構成されている。この際、これらの係合要素C1、C2、Bへは、上記第一の実施形態における図2に示すように、主制御ユニット31からの制御指令により動作する油圧制御装置35から油圧が供給され、当該油圧により各係合要素C1、C2、Bの係合又は解放が制御される。この油圧制御装置35へは、図示しないオイルポンプにより発生した油圧が供給される。
【0121】
4−2.切り替え可能に備えられる複数のモード
次に、本実施形態に係るハイブリッド駆動装置Hにより実現可能なモードについて説明する。図12は、各モードでの各係合要素C1、C2、Bの作動状態を示す作動表である。また、図13は、本実施形態における各モードでの動力分配装置PT、並びに第一差動歯車装置PG1及び第二差動歯車装置PG2の動作状態を表す速度線図である。これらの図における表記は、上記第一の実施形態における図3及び図4と同様である。また、図13の左側に示す動力分配装置PTの速度線図の状態についても、上記第一の実施形態と同様である。
【0122】
減速モード(1st)は、第一差動歯車装置PG1と第二差動歯車装置PG2とが協働することにより、中間軸Mの回転速度を減速して出力軸Oに伝達するモードである。減速モードでは、図12に示すように、ブレーキBが係合状態とされ、第一クラッチC1及び第二クラッチC2は解放状態とされる。ブレーキBが係合されることにより、第二差動歯車装置PG2の第二リングギヤR2がケースDcに固定される。減速モードでは、図13の右側の速度線図に示すように、第一差動歯車装置PG1を表す直線と第二差動歯車装置PG2を表す直線とは別の直線となる。破線で示される第一差動歯車装置PG1においては、回転速度の順で中間となる第一キャリヤCA1に動力分配装置PTの出力回転要素としてのリングギヤR0と一体回転する中間軸Mが駆動連結される。そして、回転速度の順で一方側となる第一リングギヤR1がケースDcに固定され、回転速度の順で他方側となる第一サンギヤS1に第二回転電機MG2のロータRo2が駆動連結される。このため、第二回転電機連結要素EMとしての第一サンギヤS1には、入力要素EIとしての第一キャリヤCA1に駆動連結された中間軸Mの回転速度が増速されて伝達される。
【0123】
また、実線で示される第二差動歯車装置PG2においては、回転速度の順で中間となる第二キャリヤCA2に出力軸Oが駆動連結されている。そして、回転速度の順で一方側となる第二リングギヤR2がブレーキBによりケースDcに固定され、回転速度の順で他方側となる一体連結要素ELとしての第二サンギヤS2に、第二回転電機連結要素EMとしての第一サンギヤS1が一体的に駆動連結される。この第一サンギヤS1には、上記のとおり中間軸Mの回転速度が増速されて伝達される。また、第一サンギヤS1には、第二回転電機MG2の回転速度がそのまま伝達される。このため、出力要素EOとしての第二キャリヤCA2に駆動連結された出力軸Oには、第二回転電機MG2の回転速度が減速されて伝達されると共に、第一差動歯車装置PG1により増速された中間軸Mの回転速度が全体として減速されて伝達される。この際、第二回転電機MG2の回転速度は、中間軸Mの回転速度よりも大きい割合で減速されて出力軸Oに伝達される。また、出力軸Oには、第二回転電機MG2のトルクT2が増幅されて伝達される。
【0124】
具体的には、第一差動歯車装置PG1のギヤ比λ1と第二差動歯車装置PG2のギヤ比λ2とを用いて、第二回転電機MG2の回転速度は、λ2/(1+λ2)倍に変速(ここでは、減速)されて出力軸Oに伝達される。また、第二回転電機MG2のトルクT2は、(1+λ2)/λ2倍に増幅されて出力軸Oに伝達される。なお、中間軸Mの回転速度は、λ2・(1+λ1)/{λ1・(1+λ2)}倍に変速(ここでは、減速)されて出力軸Oに伝達される。従って、第二回転電機MG2の回転速度は、中間軸Mの回転速度よりも大きい割合で減速されて出力軸Oに伝達される。
【0125】
同速モード(2nd)は、第一差動歯車装置PG1と第二差動歯車装置PG2とが協働することにより、中間軸Mの回転速度を同速のまま出力軸Oに伝達するモードである。同速モードでは、図12に示すように、第一クラッチC1が係合状態とされ、第二クラッチC2及びブレーキBは解放状態とされる。第一クラッチC1が係合されることにより、第一差動歯車装置PG1の第一キャリヤCA1と第二差動歯車装置PG2の第二キャリヤCA2とが一体回転する状態となる。同速モードでは、図13の右側の速度線図に示すように、第一差動歯車装置PG1を表す直線と第二差動歯車装置PG2を表す直線とが同一直線状となる。破線で示される第一差動歯車装置PG1の動作状態は、上記減速モードにおける第一差動歯車装置PG1の動作状態と同様である。このため、第二回転電機連結要素EMとしての第一サンギヤS1には、入力要素EIとしての第一キャリヤCA1に駆動連結された中間軸Mの回転速度が増速されて伝達される。
【0126】
また、実線で示される第二差動歯車装置PG2においては、3つの回転要素のうちの1つであって回転速度の順で中間となる第二キャリヤCA2に出力軸Oが駆動連結されていると共に、当該第二キャリヤCA2が、第一クラッチC1を介して第一差動歯車装置PG1の第一キャリヤCA1及び中間軸Mと一体回転するように駆動連結される。そして、回転速度の順で一方側となる一体連結要素ELとしての第二サンギヤS2に、第二回転電機連結要素EMとしての第一サンギヤS1が一体的に駆動連結される。この第一サンギヤS1には、上記のとおり中間軸Mの回転速度が増速されて伝達される。また、第一サンギヤS1には、第二回転電機MG2の回転速度がそのまま伝達される。このため、出力要素EOとしての第二キャリヤCA2に駆動連結された出力軸Oには、第二回転電機MG2の回転速度が減速されて伝達されると共に、中間軸Mの回転速度がそのまま伝達される。また、出力軸Oには、第二回転電機MG2のトルクT2が増幅されて伝達される。
【0127】
具体的には、第一差動歯車装置PG1のギヤ比λ1と第二差動歯車装置PG2のギヤ比λ2とを用いて、第二回転電機MG2の回転速度は、λ1/(1+λ1)倍に変速(ここでは、減速)されて出力軸Oに伝達される。また、第二回転電機MG2のトルクT2は、(1+λ1)/λ1倍に増幅されて出力軸Oに伝達される。なお、中間軸Mの回転速度は、同速のまま(1倍に変速されて)出力軸Oに伝達される。従って、第二回転電機MG2の回転速度は、中間軸Mの回転速度よりも大きい割合で減速されて出力軸Oに伝達される。
【0128】
増速モード(3rd)は、第一差動歯車装置PG1と第二差動歯車装置PG2とが協働することにより、中間軸Mの回転速度を増速して出力軸Oに伝達するモードである。増速モードでは、図12に示すように、第二クラッチC2が係合状態とされ、第一クラッチC1及びブレーキBは解放状態とされる。第二クラッチC2が係合されることにより、第二差動歯車装置PG2の第二サンギヤS2と第二キャリヤCA2とが駆動連結され、第二差動歯車装置PG2の3つの回転要素の全てが一体回転する状態となる。増速モードでは、図13の右側の速度線図に示すように、第一差動歯車装置PG1を表す直線と第二差動歯車装置PG2を表す直線とは別の直線となる。破線で示される第一差動歯車装置PG1の動作状態は、上記減速モードにおける第一差動歯車装置PG1の動作状態と同様である。このため、第二回転電機連結要素EMとしての第一サンギヤS1には、入力要素EIとしての第一キャリヤCA1に駆動連結された中間軸Mの回転速度が増速されて伝達される。
【0129】
また、実線で示される第二差動歯車装置PG2においては、3つの回転要素のうちの1つである一体連結要素ELとしての第二サンギヤS2に、第二回転電機連結要素EMとしての第一サンギヤS1が一体的に駆動連結される。この第一サンギヤS1には、上記のとおり中間軸Mの回転速度が増速されて伝達される。また、第一サンギヤS1には、第二回転電機MG2の回転速度がそのまま伝達される。そして、第二クラッチC2が係合状態とされることにより、第二差動歯車装置PG2の3つの回転要素の全てが一体回転する状態となる。このため、出力要素EOとしての第二キャリヤCA2に駆動連結された出力軸Oには、第二回転電機MG2の回転速度がそのまま伝達されると共に、中間軸Mの回転速度が増速されて伝達される。また、出力軸Oには、第二回転電機MG2のトルクT2がそのまま伝達される。
【0130】
具体的には、第一差動歯車装置PG1のギヤ比λ1と第二差動歯車装置PG2のギヤ比λ2とを用いて、第二回転電機MG2の回転速度は、同速のまま(1倍に変速されて)出力軸Oに伝達される。また、第二回転電機MG2のトルクT2は、同じ大きさのまま(1倍に変換されて)出力軸Oに伝達される。なお、中間軸Mの回転速度は、(1+λ1)/λ1倍に変速(ここでは、増速)されて出力軸Oに伝達される。従って、中間軸Mの回転速度が増速されて出力軸Oに伝達されるのに対して、第二回転電機MG2の回転速度は同速のまま出力軸Oに伝達される。
【0131】
以上に説明したように、本実施形態に係るハイブリッド駆動装置Hでは、切替可能に備えられる3つの動作モードのうち、少なくとも減速モード及び同速モードにおいて、第二回転電機MG2のトルクT2は第二差動歯車装置PG2により増幅されて出力軸Oに伝達される。よって、第二回転電機MG2の体格を大型化させることなく第二回転電機MG2による大きなトルクアシストを可能とすることができる。なお、第二回転電機MG2によるトルクアシストを一定の大きさに維持したままで第二回転電機MG2の体格を小型化させることも可能である。また、増速モードにおいても、第二回転電機MG2のトルクT2は減衰されることなくそのまま出力軸Oに伝達されるので、増速モード選択時に第二回転電機MG2によるアシストトルクが小さくなる等の不都合もほとんどない。
【0132】
また、本実施形態に係るハイブリッド駆動装置Hでは、切替可能に備えられる3つの動作モードのいずれにおいても、第二回転電機MG2に一体的に駆動連結された第二回転電機連結要素EMとしての第一サンギヤS1には、入力要素EIとしての第一キャリヤCA1に駆動連結された中間軸Mの回転速度が増速されて伝達されるので、第二回転電機MG2の回転速度は、常に、中間軸Mの回転速度よりも大きい割合で減速され、或いは中間軸Mの回転速度が増速されるのに対して同速のまま、出力軸Oに伝達される。すなわち、全体変速比は、常に第二回転電機MG2についての変速比よりも小さくなる。その結果、従来から良く知られたような中間軸Mと第二回転電機MG2とが一体回転するように駆動連結された構成のハイブリッド駆動装置と比較して、第二回転電機MG2による大きなトルクアシストを可能としつつ、モード切替時における2つのモード間の全体変速比の比である変速ステップを小さく抑えることができる。よって、モード切替時に出力軸Oに伝達されるトルク変動を小さく抑えることができるので、変速ショックの発生を抑制することができる。或いは、当該変速ショックを低減させるために、出力軸Oに伝達されるトルク変動を打ち消すように、アシストトルクT2とは別に第二回転電機MG2から出力すべきトルクを低減することが可能となる。そのため、装置全体のエネルギ効率を低下させることもほとんどない。従って、本実施形態では、第二回転電機MG2による大きなトルクアシストが可能でありながら、モード切替時における変速ショックの発生や装置全体のエネルギ効率の低下が抑制されたハイブリッド駆動装置Hが実現されている。
【0133】
〔その他の実施形態〕
(1)上記の各実施形態においては、ハイブリッド駆動装置Hが、(a)第二差動歯車装置PG2の3つの回転要素のうち一体連結要素EL以外の1つの回転要素と、入力要素EI及び第二回転電機連結要素EMのうち一体連結要素ELとは一体的に駆動連結されていない方の回転要素とを選択的に駆動連結する連結クラッチとしての第一クラッチC1、(b)第二差動歯車装置PG2の3つの回転要素のうち、一体連結要素EL及び出力要素EO以外の残余の回転要素を、ケースDcに選択的に固定するブレーキB、及び(c)第二差動歯車装置PG2の3つの回転要素のうちの2つの回転要素を選択的に一体回転させる直結クラッチとしての第二クラッチC2、の3つの係合要素を全て備え、これら3つの係合要素が、択一的に係合状態とされる場合を例として説明した。また、それにより、ハイブリッド駆動装置Hが、実現可能な動作モードとして、減速モード及び増速モードを含む3つのモードを切替可能に備えている場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されない。すなわち、上記3つの係合要素のうち、ブレーキBを含む2つの係合要素のみを備えた構成とし、当該備えられる少なくとも2つの係合要素が、択一的に係合状態とされる構成とすることも、本発明の好適な実施形態の一つである。
【0134】
例えば上記第一の実施形態、上記第二の実施形態、及び上記第三の実施形態において、直結クラッチとしての第二クラッチC2を取り除いて連結クラッチとしての第一クラッチC1及びブレーキBのみを備えた構成とすると共に、減速モード及び増速モード(上記第三の実施形態においては、第一増速モード)の2つのモードのみを切替可能に備えた構成とすることができる。また例えば上記第三の実施形態において、連結クラッチとしての第一クラッチC1を取り除いて直結クラッチとしての第二クラッチC2及びブレーキBのみを備えた構成とすると共に、減速モード及び第二増速モードの2つのモードのみを切替可能に備えた構成とすることができる。また例えば上記第四の実施形態において、連結クラッチとしての第一クラッチC1を取り除いて直結クラッチとしての第二クラッチC2及びブレーキBのみを備えた構成とすると共に、減速モード及び増速モードの2つのモードのみを切替可能に備えた構成とすることができる。
【0135】
(2)上記の各実施形態においては、ハイブリッド駆動装置Hが、実現可能な動作モードとして、減速モード、同速モード、及び増速モードの3つのモード、又は、減速モード、第一増速モード、及び第二増速モードの3つのモードを切替可能に備えている場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されない。すなわち、ハイブリッド駆動装置Hが4つ以上のモードを切替可能に備えた構成とすることも、本発明の好適な実施形態の一つである。
この場合、例えば上記第三の実施形態において説明したハイブリッド駆動装置Hの構成において、第一差動歯車装置PG1の固定要素ESとしての第一リングギヤR1を、非回転部材としてのケースDcに選択的に固定可能とすると共に、第一差動歯車装置PG1の3つの回転要素のうちの2つを選択的に駆動連結可能な構成とすることによって、4つのモードを切替可能に備えた構成を実現することができる。具体的には、第一差動歯車装置PG1の第一リングギヤR1をケースDcに選択的に固定する第二のブレーキ(第二ブレーキ)と、第一差動歯車装置PG1の3つの回転要素のうちの2つを選択的に駆動連結して、第一差動歯車装置PG1が有する3つの回転要素の全てを一体回転させるための第二の直結クラッチ(第三クラッチ)と、を更に備えた構成とすれば良い。この構成では、上記第二ブレーキを解放すると共に上記第三クラッチを係合させた状態で、第一クラッチC1又は第二クラッチC2を更に係合させることで、上記第三の実施形態において説明した3つのモード以外の第四のモードとして、第一差動歯車装置PG1と第二差動歯車装置PG2とが協働することにより中間軸Mの回転速度を同速のまま出力軸Oに伝達する同速モードを更に実現可能とすることができる。
【0136】
(3)上記の各実施形態において説明した各差動歯車装置の具体的構成及び連結関係、並びに差動歯車装置の各回転要素に対する摩擦係合要素の配置構成は単なる例示であり、上記以外の構成によっても本発明の構成を実現することが可能な全ての構成が、本発明の範囲に含まれる。
【0137】
(4)上記の各実施形態においては、第一差動歯車装置PG1及び第二差動歯車装置PG2が、いずれも遊星歯車機構により構成されている場合を例として説明した。しかし、本発明における差動歯車装置(第一差動歯車装置PG1及び第二差動歯車装置PG2の一方又は双方)の構成は、遊星歯車機構に限定されない。すなわち、例えば複数の傘歯車を組み合わせた構成等のように、他の形態の歯車機構を用いて差動歯車装置を構成することも、本発明の好適な実施形態の一つである。
【産業上の利用可能性】
【0138】
本発明は、エンジンに駆動連結される入力部材と、車輪に駆動連結される出力部材と、第一回転電機と、第二回転電機と、入力部材の駆動力を第一回転電機と出力部材に駆動連結される中間出力部材とに分配する動力分配装置と、を備えたハイブリッド駆動装置に好適に利用することができる。
【符号の説明】
【0139】
H ハイブリッド駆動装置
E エンジン
I 入力軸(入力部材)
M 中間軸(中間出力部材)
O 出力軸(出力部材)
MG1 第一回転電機
MG2 第二回転電機
PT 動力分配装置
PG1 第一差動歯車装置
S1 第一サンギヤ
CA1 第一キャリヤ
R1 第一リングギヤ
PG2 第二差動歯車装置
S2 第二サンギヤ
CA2 第二キャリヤ
R2 第二リングギヤ
Dc 駆動装置ケース(非回転部材)
C1 第一クラッチ(連結クラッチ)
C2 第二クラッチ(直結クラッチ)
B ブレーキ
EI 入力要素
EO 出力要素
ES 固定要素
EM 第二回転電機連結要素
EL 一体連結要素
E1 第一回転要素
E2 第二回転要素
E3 第三回転要素


【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンに駆動連結される入力部材と、車輪に駆動連結される出力部材と、第一回転電機と、第二回転電機と、前記入力部材の駆動力を前記第一回転電機と前記出力部材に駆動連結される中間出力部材とに分配する動力分配装置と、を備えたハイブリッド駆動装置であって、
回転速度の順に、非回転部材に固定された固定要素、前記中間出力部材に駆動連結された入力要素、及び前記第二回転電機に駆動連結された第二回転電機連結要素、となる3つの回転要素を有する第一差動歯車装置と、
前記出力部材に駆動連結された出力要素と、前記入力要素及び前記第二回転電機連結要素のいずれか一方と一体的に駆動連結された一体連結要素と、を含む3つの回転要素を有する第二差動歯車装置と、を備え、
前記第一差動歯車装置と前記第二差動歯車装置とが協働することにより、前記中間出力部材の回転速度を減速して前記出力部材に伝達する減速モードと、前記中間出力部材の回転速度を増速して前記出力部材に伝達する増速モードと、を含む複数のモードを切替可能に備えたハイブリッド駆動装置。
【請求項2】
前記減速モードでは、前記第二回転電機の回転速度が減速されて前記出力部材に伝達され、
前記増速モードでは、前記第二回転電機の回転速度が、減速されて又は同速のまま前記出力部材に伝達される請求項1に記載のハイブリッド駆動装置。
【請求項3】
前記第一差動歯車装置と前記第二差動歯車装置とが協働することにより、前記中間出力部材の回転速度を同速のまま前記出力部材に伝達すると共に、前記第二回転電機の回転速度を減速して前記出力部材に伝達する同速モードを更に切替可能に備えた請求項1又は2に記載のハイブリッド駆動装置。
【請求項4】
前記第二差動歯車装置の3つの回転要素のうち前記一体連結要素以外の1つの回転要素と、前記入力要素及び前記第二回転電機連結要素のいずれか他方とを選択的に駆動連結する連結クラッチと、
前記第二差動歯車装置の3つの回転要素のうち、前記一体連結要素及び前記出力要素以外の残余の回転要素を、非回転部材に選択的に固定するブレーキと、
前記第二差動歯車装置の3つの回転要素のうちの2つの回転要素を選択的に駆動連結する直結クラッチと、の3つの係合要素のうち、少なくとも2つの係合要素を備え、
当該備えられる少なくとも2つの前記係合要素が、択一的に係合状態とされる請求項1から3のいずれか一項に記載のハイブリッド駆動装置。
【請求項5】
エンジンに駆動連結される入力部材と、車輪に駆動連結される出力部材と、第一回転電機と、第二回転電機と、前記入力部材の駆動力を前記第一回転電機と前記出力部材に駆動連結される中間出力部材とに分配する動力分配装置と、を備えたハイブリッド駆動装置であって、
回転速度の順に第一回転要素、第二回転要素、及び第三回転要素となる3つの回転要素をそれぞれ有する第一差動歯車装置及び第二差動歯車装置を備え、
前記第一差動歯車装置の第一回転要素が非回転部材に固定され、第二回転要素が前記中間出力部材に駆動連結され、第三回転要素が前記第二回転電機に駆動連結され、
前記第二差動歯車装置の第一回転要素が前記第一差動歯車装置の第二回転要素に一体的に駆動連結され、第二回転要素が前記出力部材に駆動連結され、
前記第一差動歯車装置の第三回転要素と前記第二差動歯車装置の第三回転要素とを選択的に駆動連結する第一クラッチと、前記第二差動歯車装置の第三回転要素を非回転部材に選択的に固定するブレーキと、を備えたハイブリッド駆動装置。
【請求項6】
エンジンに駆動連結される入力部材と、車輪に駆動連結される出力部材と、第一回転電機と、第二回転電機と、前記入力部材の駆動力を前記第一回転電機と前記出力部材に駆動連結される中間出力部材とに分配する動力分配装置と、を備えたハイブリッド駆動装置であって、
回転速度の順に第一回転要素、第二回転要素、及び第三回転要素となる3つの回転要素をそれぞれ有する第一差動歯車装置及び第二差動歯車装置を備え、
前記第一差動歯車装置の第一回転要素が非回転部材に固定され、第二回転要素が前記中間出力部材に駆動連結され、第三回転要素が前記第二回転電機に駆動連結され、
前記第二差動歯車装置の第一回転要素が前記出力部材に駆動連結され、第二回転要素が前記第一差動歯車装置の第二回転要素に一体的に駆動連結され、
前記第一差動歯車装置の第三回転要素と前記第二差動歯車装置の第三回転要素とを選択的に駆動連結する第一クラッチと、前記第二差動歯車装置の第三回転要素を非回転部材に選択的に固定するブレーキと、を備えたハイブリッド駆動装置。
【請求項7】
エンジンに駆動連結される入力部材と、車輪に駆動連結される出力部材と、第一回転電機と、第二回転電機と、前記入力部材の駆動力を前記第一回転電機と前記出力部材に駆動連結される中間出力部材とに分配する動力分配装置と、を備えたハイブリッド駆動装置であって、
回転速度の順に第一回転要素、第二回転要素、及び第三回転要素となる3つの回転要素をそれぞれ有する第一差動歯車装置及び第二差動歯車装置を備え、
前記第一差動歯車装置の第一回転要素が非回転部材に固定され、第二回転要素が前記中間出力部材に駆動連結され、第三回転要素が前記第二回転電機に駆動連結され、
前記第二差動歯車装置の第二回転要素が前記出力部材に駆動連結され、第三回転要素が前記第一差動歯車装置の第三回転要素に一体的に駆動連結され、
前記第一差動歯車装置の第二回転要素と前記第二差動歯車装置の第一回転要素とを選択的に駆動連結する第一クラッチと、前記第二差動歯車装置の第一回転要素を非回転部材に選択的に固定するブレーキと、を備えたハイブリッド駆動装置。
【請求項8】
エンジンに駆動連結される入力部材と、車輪に駆動連結される出力部材と、第一回転電機と、第二回転電機と、前記入力部材の駆動力を前記第一回転電機と前記出力部材に駆動連結される中間出力部材とに分配する動力分配装置と、を備えたハイブリッド駆動装置であって、
回転速度の順に第一回転要素、第二回転要素、及び第三回転要素となる3つの回転要素をそれぞれ有する第一差動歯車装置及び第二差動歯車装置を備え、
前記第一差動歯車装置の第一回転要素が非回転部材に固定され、第二回転要素が前記中間出力部材に駆動連結され、第三回転要素が前記第二回転電機に駆動連結され、
前記第二差動歯車装置の第二回転要素が前記出力部材に駆動連結され、第三回転要素が前記第一差動歯車装置の第三回転要素に一体的に駆動連結され、
前記第二差動歯車装置の第一回転要素を非回転部材に選択的に固定するブレーキと、前記第二差動歯車装置の3つの回転要素のうちの2つの回転要素を選択的に駆動連結する第二クラッチと、を備えたハイブリッド駆動装置。
【請求項9】
前記第二差動歯車装置の3つの回転要素のうちの2つの回転要素を選択的に駆動連結する第二クラッチを更に備えた請求項5から7のいずれか一項に記載のハイブリッド駆動装置。
【請求項10】
前記第一差動歯車装置の第二回転要素と、前記第二差動歯車装置の第一回転要素又は第二回転要素とを選択的に駆動連結する第一クラッチを更に備えた請求項8に記載のハイブリッド駆動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2011−105101(P2011−105101A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−261170(P2009−261170)
【出願日】平成21年11月16日(2009.11.16)
【出願人】(000100768)アイシン・エィ・ダブリュ株式会社 (3,717)
【Fターム(参考)】