説明

ハイブリッド駆動装置

【課題】ハイブリッド駆動装置全体の軸方向寸法が拡大してしまうという問題があった。
【解決手段】動力分配装置PTの全体が分配出力部材21の径方向内側に分配出力部材21の軸方向に重複して配置され、動力分配装置PTを構成するリングギヤRが、分配出力部材21の内周面21bに当該分配出力部材21と一体的に設けられ、分配出力部材21を回転可能に支持する2つの出力軸受61、62を備え、2つの出力軸受61、62は、分配出力部材21の径方向内側で、かつ、動力分配装置PTの軸方向両側に配置されている。さらに、分配出力部材21は、リングギヤRと出力軸受62との間で、リングギヤRが一体的に設けられた第一分割部材31と、第二分割部材32とに分割され、第一分割部材31と第二分割部材32とが、一体回転するように係合されていると共に、分離可能に構成されているハイブリッド駆動装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンに駆動連結される入力部材と、回転電機と、前記入力部材のトルクを前記回転電機と分配出力部材とに分配して伝達する動力分配装置と、を備えたハイブリッド駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
上記のようなハイブリッド駆動装置として、例えば下記の特許文献1に記載された装置が既に知られている。この特許文献1に記載の装置では、当該特許文献1の図2及び図4に示されているように、動力分配装置(プラネタリギヤユニット13)の出力回転要素となるリングギヤ(R)が、円筒状に形成された分配出力部材の内周面に当該分配出力部材と一体的に形成され、分配出力部材は、入力部材(出力軸12)を包囲するように形成されたスリーブ状部材(出力軸14)に、径方向に延びるフランジ状の連結部材を介して連結されている。スリーブ状部材は分配出力部材に対して軸方向でエンジン側かつ径方向内側に配置され、スリーブ状部材の軸方向でエンジン側の端部には、出力ギヤとしてのカウンタドライブギヤ(15)が当該スリーブ状部材の外周面に形成されている。
【0003】
ケース(10)内における回転部材である回転電機(発電機モータ16)のロータや分配出力部材は、ケース等の非回転部材に対して回転可能に支持される必要があることから、これらはそれぞれロータ軸受、出力軸受により支持されている。ここで、特許文献1に記載のハイブリッド装置では、ケースとスリーブ状部材との間に出力軸受が配置され、ケースと回転電機のロータ軸との間にロータ軸受が配置されている。分配出力部材は、当該分配出力部材と一体的に形成されたリングギヤ及び動力分配装置の他の回転要素を介して回転電機のロータ軸に連結されると共に、連結部材を介してスリーブ状部材に連結されている。これにより、分配出力部材は、回転電機のロータ軸及びロータ軸受、並びに、スリーブ状部材及び出力軸受を介して、ケースに回転可能に支持されている。この際、出力軸受は比較的小径のスリーブ状部材の外周面に接して配設されることから、比較的小径の出力軸受を用いることができ、これにより出力軸受のコストを低減し、ハイブリッド駆動装置の全体の製造コストを低減することが可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−217205号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に記載のハイブリッド駆動装置では、ロータ軸受と全ての出力軸受とが、動力分配装置を挟んで軸方向の異なる位置に配置されている。このような配置に伴い、回転電機、動力分配装置、及び出力ギヤは、軸方向の幅広い範囲に亘る空間を占有することになる。そのため、ハイブリッド駆動装置全体の軸方向寸法が拡大してしまうという問題があった。
【0006】
そこで、装置全体の軸方向寸法を短縮することが可能なハイブリッド駆動装置の実現が望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る、エンジンに駆動連結される入力部材と、回転電機と、前記入力部材のトルクを前記回転電機と分配出力部材とに分配して伝達する動力分配装置と、を備えたハイブリッド駆動装置の特徴構成は、前記動力分配装置の全体が前記分配出力部材の径方向内側に前記分配出力部材と軸方向に重複して配置され、前記動力分配装置を構成すると共に内歯を有するリングギヤが、前記分配出力部材の内周面に当該分配出力部材と一体的に設けられ、前記分配出力部材を回転可能に支持する2つの出力軸受を備え、前記2つの出力軸受は、前記分配出力部材の径方向内側で、かつ、前記動力分配装置の軸方向両側に配置され、前記分配出力部材は、前記リングギヤと一方の前記出力軸受との間で、前記リングギヤが一体的に設けられた第一分割部材と、第二分割部材とに分割され、前記第一分割部材と前記第二分割部材とが、一体回転するように係合されていると共に、分離可能に構成されている点にある。
【0008】
なお、本願において、「駆動連結」とは、2つの回転要素が駆動力を伝達可能に連結された状態を指し、当該2つの回転要素が一体的に回転するように連結された状態、或いは当該2つの回転要素が一又は二以上の伝動部材を介して駆動力を伝達可能に連結された状態を含む概念として用いている。このような伝動部材としては、回転を同速で又は変速して伝達する各種の部材が含まれ、例えば、軸、歯車機構、ベルト、チェーン等が含まれる。また、このような伝動部材として、回転及び駆動力を選択的に伝達する係合要素、例えば摩擦クラッチや噛み合い式クラッチ等が含まれていてもよい。
【0009】
また、本願において、「回転電機」は、モータ(電動機)、ジェネレータ(発電機)、及び必要に応じてモータ及びジェネレータの双方の機能を果たすモータ・ジェネレータのいずれをも含む概念として用いている。
【0010】
さらに、本願において、「軸方向に重複」とは、軸方向の配置に関して2つの対象(部材)が同じ位置となる部分を少なくとも一部に有すること、言い換えると、径方向に見て重複する部分を有すること、すなわち、径方向を視線方向として当該視線方向に直交する各方向に視点を移動させた場合に、2つの対象(部材)が重なって見える視点が少なくとも一部の領域に存在することを指す。
【0011】
上記の特徴構成によれば、動力分配装置の全体が分配出力部材の径方向内側に分配出力部材と軸方向に重複して配置されているので、軸方向で分配出力部材が占有する空間内に動力分配装置を配置することができる。したがって、動力分配装置を、分配出力部材が占有する空間内に収めて、動力分配装置、及び分配出力部材が占有する空間の軸方向長さを短縮することができる。
【0012】
ところで、2つの出力軸受が、分配出力部材の径方向内側で、かつ、動力分配装置の軸方向両側に配置されているために、分配出力部材が一体物である場合には、2つの出力軸受、及び動力分配装置の少なくとも一部を分配出力部材にあらかじめ組み付けた状態で、装置に組み付ける必要がある。そのため、装置への組み付けに際して、複数箇所の嵌合を同時に行う必要が生じるなど、組み付けの容易性が妨げられる場合がある
【0013】
しかしながら、上記特徴構成においては、分配出力部材は、リングギヤと一方の出力軸受との間で、第一分割部材と第二分割部材とに分割されている。よって、2つの出力軸受は、それぞれ第一分割部材と、第二分割部材とに分かれて設けられる。そして、第一分割部材と第二分割部材とが、一体回転するように係合されていると共に、分離可能に構成されているので、分配出力部材に設けられた複数箇所の嵌合部を、第一分割部材、動力分配装置及び一方の出力軸受からなるサブアッセンブリと、第二分割部材及び他方の出力軸受からなるサブアッセンブリと、に分けてそれぞれ個別に装置に組み付けることが可能である。また、組み付け後は、どちらか一方の分割部材を取り外すだけで動力分配装置内のプラネタリギヤを交換することができる。以上より、上記の特徴構成によれば、装置全体の軸方向寸法を短縮できると共に、装置の組み付け易さ及びメンテナンス性を向上させることができる。
【0014】
ここで、前記第一分割部材の内周面に、前記第二分割部材との係合部である第一係合部が設けられ、前記第二分割部材の外周面に、前記第一分割部材との係合部である第二係合部が設けられ、前記第一係合部は、前記第二係合部に対して径方向外側に、前記第二係合部と軸方向に重複して配置されている構成とすると好適である。
【0015】
この構成によれば、第一係合部と、第二係合部とを係合させるだけで、第一分割部材と、第二分割部材とを一体回転するように連結できる。また、内周面にリングギヤが設けられた第一分割部材の第一係合部に対して径方向内側には、第二係合部を配置することにより、軸方向に見てリングギヤと重複する位置に第二係合部を配置することができる。従って、リングギヤの径によって外径が定まる第一分割部材の第一係合部に対して、径方向外側に第二係合部を配置するのに比べて、ハイブリッド駆動装置の径方向の大きさを小さく抑えることが容易となる。
【0016】
また、前記第一係合部及び前記第二係合部のそれぞれは、互いに係合するスプライン歯を備え、前記第一係合部及び前記第二係合部のスプライン歯の少なくとも一つが、前記第一係合部と前記第二係合部との軸方向の重複領域の全体にわたって切除されている構成とすると好適である。
【0017】
この構成によれば、第一分割部材と第二分割部材とが一体回転するようにこれらをスプライン係合させることができる。また、分配出力部材の内側の油を、スプライン歯が切除された箇所を通して、分配出力部材の外側に排出することができる。すなわち、スプライン歯の切除という簡便な方法により、分配出力部材の内側の油の排出路を形成できる。これにより、分配出力部材内側に配置される動力分配装置のギヤにおける、油の引き摺り抵抗を少なくすることができる。
【0018】
また、前記第一分割部材の内周面に、前記第二分割部材との嵌合部である第一嵌合部が設けられ、前記第二分割部材の外周面に、前記第一分割部材との嵌合部である第二嵌合部が設けられ、前記第一嵌合部は、前記第二嵌合部と軸方向に重複して配置され、前記第二嵌合部に対して径方向外側から当接する状態で径方向に嵌合している構成とすると好適である。
【0019】
この構成によれば、第一分割部材と第二分割部材との軸芯精度を高めることができる。これにより、軸芯ずれによる回転時のガタツキが抑えられ、分割部材の磨耗や、ガタツキに伴うノイズ音の発生を低減することができる。
【0020】
また、前記第一分割部材の外周面に、外歯を有する出力ギヤが一体的に設けられ、前記出力ギヤは、前記リングギヤの径方向外側に前記リングギヤと軸方向に重複して配置されている構成とすると好適である。
【0021】
この構成によれば、リングギヤ、及び出力ギヤが占有する空間の軸方向長さを短縮することができる。従って、ハイブリッド駆動装置の軸方向長さを短く抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施形態に係るハイブリッド駆動装置の軸方向に直交する面におけ る断面図である。
【図2】本発明の実施形態に係るハイブリッド駆動装置のスケルトン図である。
【図3】本発明の実施形態に係るハイブリッド駆動装置の欠歯部断面図である。
【図4】本発明の実施形態に係るハイブリッド駆動装置の分解図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。図1に示すように、本発明に係るハイブリッド駆動装置1は、エンジンE及び回転電機MG1、MG2の双方を駆動力源として利用して走行可能なハイブリッド車両用の駆動装置である。本実施形態に係るハイブリッド駆動装置1は、車両に横置きされるエンジンEに対して車両の幅方向に隣接して配置されると共にエンジンEのエンジン出力軸Eoの軸方向に連結された構成の、FF(Front Engine Front Drive)車両用のハイブリッド駆動装置とされている。
【0024】
このハイブリッド駆動装置1は、いわゆる2モータスプリットタイプのハイブリッド駆動装置として構成されている。ハイブリッド駆動装置1は、エンジンEに駆動連結される入力軸Iと、第一ロータRo1を有する第一回転電機MG1と、入力軸Iに伝達されるエンジンEのトルクを第一回転電機MG1と分配出力部材21とに分配して伝達する動力分配装置PTと、を備えている。このような構成において、本実施形態に係るハイブリッド駆動装置1は、動力分配装置PTと分配出力部材21の配置構成、及び分配出力部材21が2つに分離可能に構成されている点に特徴を有する。
【0025】
より具体的には、図1に示すように、動力分配装置PTは、その全体が分配出力部材21の径方向内側に分配出力部材21と軸方向に重複(径方向に見て重複)して配置されると共に、内歯を有するリングギヤRが分配出力部材21の内周面21bに当該分配出力部材21と一体的に設けられている。また、分配出力部材21は、当該分配出力部材21を回転可能に支持する2つの出力軸受61、62を備えている。これら2つの出力軸受61、62は、分配出力部材21の径方向内側で、かつ動力分配装置PTの軸方向両側に配置され、分配出力部材21は、リングギヤRと一方の出力軸受62との間で、リングギヤRが一体的に設けられた第一分割部材31と、第二分割部材32とに分割されている。これらの特徴的な構成の組み合わせにより、装置全体の軸方向寸法を短縮するとともに、装置の組み付け易さ及びメンテナンス性に優れたハイブリッド駆動装置1が実現されている。以下では、本実施形態に係るハイブリッド駆動装置1について、詳細に説明する。
【0026】
1.ハイブリッド駆動装置の全体構成
まず、本実施形態に係るハイブリッド駆動装置1の全体構成について説明する。図1及び図2に示すように、入力軸IはエンジンEに駆動連結されている。ここで、エンジンEは燃料の燃焼により駆動される内燃機関であり、例えば、ガソリンエンジンやディーゼルエンジンなどの公知の各種エンジンを用いることができる。本例では、入力軸Iは、ダンパDを介して、エンジンEのクランクシャフト等のエンジン出力軸Eoに駆動連結されている。なお、入力軸IがダンパDに加えてクラッチ等を介して、或いは、ダンパDやクラッチ等を介さずに直接、エンジン出力軸Eoに駆動連結された構成としても好適である。本実施形態においては、入力軸Iが本発明における「入力部材」に相当する。
【0027】
第一回転電機MG1は、ケース2に固定された第一ステータSt1と、当該第一ステータSt1の径方向内側に回転自在に支持された第一ロータRo1と、を有している。第一ロータRo1は、動力分配装置PTのサンギヤSと一体回転するように駆動連結されている。第一回転電機MG1は、電力の供給を受けて動力を発生するモータ(電動機)としての機能と、動力の供給を受けて電力を発生するジェネレータ(発電機)としての機能とを果たすことが可能とされている。そのため、第一回転電機MG1は、不図示の蓄電装置と電気的に接続されている。本例では、蓄電装置としてバッテリが用いられている。なお、蓄電装置としてキャパシタ等を用いても好適である。本例では、第一回転電機MG1は、主に動力分配装置PTを介して入力される入力軸I(エンジンE)のトルクにより発電を行い、バッテリを充電し、或いは第二回転電機MG2を駆動するための電力を供給するジェネレータとして機能する。但し、車両の高速走行時やエンジンEの始動時等には第一回転電機MG1は力行して駆動力を出力するモータとして機能する場合もある。本実施形態においては、第一回転電機MG1が本発明における「回転電機」に相当する。
【0028】
なお、本実施形態では、同軸上に配置される入力軸I、及び回転電機MG1の回転軸心を基準として、「軸方向」、「径方向」及び「周方向」の各方向を規定している。
【0029】
本実施形態においては、動力分配装置PTは、入力軸Iと同軸上に配置されたシングルピニオン型の遊星歯車機構とされている。すなわち、動力分配装置PTは、複数のピニオンギヤを支持するキャリヤCAと、前記ピニオンギヤにそれぞれ噛み合うサンギヤS及びリングギヤRと、の3つの回転要素を有している。サンギヤSは、第一回転電機MG1の第一ロータRo1の第一ロータ軸60と一体回転するように駆動連結されている。キャリヤCAは、入力軸Iと一体回転するように駆動連結されている。リングギヤRは、分配出力部材21に一体的に形成されている。動力分配装置PTが有するこれら3つの回転要素は、回転速度の順にサンギヤS(第一回転要素)、キャリヤCA(第二回転要素)、及びリングギヤR(第三回転要素)となっている。なお、「回転速度の順」は、高速側から低速側に向かう順、又は、低速側から高速側に向かう順のいずれかであり、動力分配装置PTを構成する遊星歯車機構の回転状態によりいずれともなり得るが、いずれの場合にも回転要素の順は変わらない。
【0030】
動力分配装置PTは、入力軸Iに伝達されるエンジンEのトルクを第一回転電機MG1と分配出力部材21とに分配して伝達する。動力分配装置PTにおいては、回転速度の順で中間となるキャリヤCAに入力軸Iが駆動連結される。また、回転速度の順で一方側となるサンギヤSに第一回転電機MG1の第一ロータRo1が駆動連結され、回転速度の順で他方側となるリングギヤRが分配出力部材21に一体的に形成されている。本実施形態に係るハイブリッド駆動装置1では、回転速度の順で中間となるキャリヤCAには、入力軸Iを介してエンジンEの正方向のトルクが伝達されると共に、回転速度の順で一方側となるサンギヤSに第一ロータ軸60を介して第一回転電機MG1が出力する負方向のトルクが伝達される。第一回転電機MG1の負方向のトルクはエンジンEのトルクの反力受けとして機能し、これにより、動力分配装置PTは、入力軸Iを介してキャリヤCAに伝達されるエンジンEのトルクの一部を第一回転電機MG1に分配し、エンジンEのトルクに対して減衰されたトルクを、リングギヤRを介して分配出力部材21に伝達する。
【0031】
分配出力部材21の外周面21aには、外歯を有する出力ギヤ22が一体的に設けられている。また、本実施形態に係るハイブリッド駆動装置1は、更にカウンタギヤ機構C及び出力用差動歯車装置DFが備えられている。図2に示すように、カウンタギヤ機構Cは、当該出力ギヤ22から出力されるトルクを、出力用差動歯車装置DFに伝達する。また、カウンタギヤ機構Cは第二回転電機MG2にも駆動連結されており、当該カウンタギヤ機構Cは第二回転電機MG2から出力されるトルクも、出力用差動歯車装置DFに伝達する。出力用差動歯車装置DFは、出力軸Oを介して車輪Wに駆動連結されており、当該出力用差動歯車装置DFに入力される回転及びトルクを車輪Wに伝達する。
【0032】
ここで、第二回転電機MG2は、電力の供給を受けて動力を発生するモータ(電動機)としての機能と、動力の供給を受けて電力を発生するジェネレータ(発電機)としての機能とを果たすことが可能とされている。そのため、第二回転電機MG2も、蓄電装置としてのバッテリと電気的に接続されている。本例では、第二回転電機MG2は、主に車両を走行させるための駆動力を補助するモータとして機能する。ただし、車両の減速時等には、第二回転電機MG2は車両の慣性力を電気エネルギとして回生するジェネレータとして機能する場合もある。
【0033】
2.ハイブリッド駆動装置の各部の構成
次に、本実施形態に係るハイブリッド駆動装置1の各部の機械的構成について説明する。上述した入力軸I、第一回転電機MG1、動力分配装置PT、分配出力部材21、出力ギヤ22、カウンタギヤ機構Cは、ケース2内に収容されている。図1に示すように、本実施形態においては、ケース2は、ケース本体2aと、当該ケース本体2aの軸方向一方側である軸第一方向A1側(図1における右側、以下同じ。)に取り付けられるフロントカバー2bと、ケース本体2aの軸方向他方側である軸第二方向A2側(図1における左側、以下同じ。)に取り付けられるリヤカバー(図示せず)と、に分割可能に構成されている。これらは、ボルト等の締結部材を用いて互いに締結固定される。
【0034】
ケース本体2aには、主に第一回転電機MG1が収容される。また、ケース本体2aとフロントカバー2bとの間に形成される収容空間Pには、主に入力軸I、動力分配装置PT、分配出力部材21、出力ギヤ22、カウンタギヤ機構C、が収容される。ケース本体2aは、少なくとも第一回転電機MG1の外周を覆うように異形筒状に形成されたケース周壁3と、当該ケース周壁3の軸第一方向A1側の端部開口を塞ぐ中間支持壁7と、を備えている。ケース周壁3と中間支持壁7とは一体的に形成されている。また、フロントカバー2bは、少なくとも動力分配装置PT、分配出力部材21、出力ギヤ22、カウンタギヤ機構C、の外周を覆うように異形筒状に形成された仕切壁10と、当該仕切壁10の軸第一方向A1側の端部開口を塞ぐ端部支持壁4と、を備えている。仕切壁10と端部支持壁4とは一体的に形成されている。
【0035】
端部支持壁4は、少なくとも径方向に延びる形状を有し、本実施形態では径方向及び周方向に延在している。端部支持壁4には軸方向の貫通孔が形成されており、この貫通孔に挿通される入力軸Iが端部支持壁4を貫通してケース2内に挿入されている。端部支持壁4は、入力軸Iの周囲に、軸第二方向A2側に突出する円筒状(ボス状)の軸方向突出部5を備えている。また、端部支持壁4は、更に軸方向突出部5の径方向外側の当該軸方向突出部5から所定間隔を隔てた位置に、同じく軸第二方向A2側に突出する円筒状(ボス状)の軸方向突出部6を備えている。これらの軸方向突出部5及び軸方向突出部6は、端部支持壁4と一体的に形成されている。
【0036】
中間支持壁7は、少なくとも径方向に延びる形状を有し、本実施形態では径方向及び周方向に延在している。中間支持壁7には第一回転電機MG1の第一ロータ軸60の外径よりも大きな直径をもつ軸方向の貫通孔が形成されている。この貫通孔には、ロータ軸受63を介して中間支持壁7に回転可能な状態で支持される第一ロータ軸60が挿通され、当該第一ロータ軸60は中間支持壁7を貫通して収容空間Pにおいて動力分配装置PTのサンギヤSに連結される。中間支持壁7に設けられた貫通孔の縁は、軸第一方向A1側に突出する円筒状(ボス状)の軸方向突出部8を備えている。この軸方向突出部8は、中間支持壁7と一体的に形成されている。従って、本例では、端部支持壁4と一体的に形成される軸方向突出部5及び軸方向突出部6と、中間支持壁7と一体的に形成される軸方向突出部8とが、収容空間Pにおいて互いに向かい合うように配置されている。
【0037】
入力軸Iは、エンジンEのトルクをハイブリッド駆動装置1内に入力するための軸であり、図2に示すように、軸第一方向A1側の端部においてエンジンEに連結されている。そして、図1に示すように、入力軸Iは、ケース2を貫通する状態で配設されており、端部支持壁4の軸第一方向A1側でダンパDを介してエンジンEのエンジン出力軸Eoと一体回転するように連結されている。ダンパDは、エンジン出力軸Eoの捩れ振動を減衰させつつ、当該エンジン出力軸Eoの回転を入力軸Iに伝達する装置であり、各種公知のものを用いることができる。入力軸Iは、第一ニードル軸受69を介して回転可能な状態で、端部支持壁4の軸方向突出部5に支持されている。また、端部支持壁4と入力軸Iとの間には、軸第一方向A1側への油の漏出を抑制するためのオイルシール59が配置されている。また、本実施形態では、第一回転電機MG1の第一ロータ軸60は、内径部に軸方向の貫通孔を有する管状に形成されており、当該第一ロータ軸60の貫通孔に入力軸Iの軸第二方向A2側の端部が挿入されている。この際、入力軸Iは、第二ニードル軸受70を介して回転可能な状態で第一ロータ軸60に支持されている。
【0038】
第一ロータ軸60は、第一回転電機MG1のトルクを動力分配装置PTのサンギヤSに入力する(或いは、サンギヤSに伝達されるトルクを第一回転電機MG1に入力する)ための軸であり、軸第一方向A1側の端部においてサンギヤSにスプライン連結されている。第一ロータ軸60は、ロータ軸受63を介して中間支持壁7に支持されている。
【0039】
サンギヤS及びキャリヤCAを取り囲むように、これらの径方向外側に分配出力部材21が配置されている。分配出力部材21は、収容空間Pの軸方向の略全体を占める円筒状部材である。分配出力部材21の内周面21bには、内歯を有するリングギヤRが当該分配出力部材21と一体的に形成されている。リングギヤRは、軸方向では分配出力部材21の中央部に形成されている。これにより、動力分配装置PTは、その全体が分配出力部材21の径方向内側に当該分配出力部材21と軸方向に重複(径方向に見て重複)して配置されることになる。
【0040】
分配出力部材21は、軸方向の複数箇所(ここでは、2箇所)でケース2に対して回転可能な状態で支持されている。本実施形態においては、分配出力部材21は、その軸方向両端部において当該分配出力部材21に対して径方向内側に配置される第一出力軸受61及び第二出力軸受62を介して、ケース2に対して回転可能な状態で支持されている。より具体的には、分配出力部材21は、収容空間Pにおいて互いに向かい合うように配置された端部支持壁4の軸方向突出部6と中間支持壁7の軸方向突出部8とに対して、2つの出力軸受61、62により径方向内側から回転可能に支持されている。このように、分配出力部材21を径方向内側から支持する構成を採用することで、分配出力部材21を径方向外側から支持する構成と比較して2つの出力軸受61、62を小径化することが可能となっている。本実施形態においては、第一出力軸受61と第二出力軸受62とが本発明における「2つの出力軸受」に相当する。
【0041】
また、分配出力部材21の外周面21aには、外歯を有する出力ギヤ22が一体的に設けられている。すなわち、本実施形態においては、出力ギヤ22は、例えば、他の部材を介して分配出力部材21に径方向に連結されると共に入力軸Iを包囲するように形成される比較的小径のスリーブ状部材(例えば、特許文献1の図4等を参照)等に形成されるのではなく、分配出力部材21の外周面21aに当該分配出力部材21と一体的に形成されている。上記のとおり、本実施形態では分配出力部材21は2つの出力軸受61、62により径方向内側から支持されているので、分配出力部材21の外周面21aに形成される出力ギヤ22は、2つの出力軸受61、62による軸方向位置の制約を受けることがない。よって、このような構成では、出力ギヤ22の軸方向位置に関する自由度が非常に高くなるという利点がある。
【0042】
そこで、本実施形態では、出力ギヤ22は、分配出力部材21の内周面21bの中央部に設けられたリングギヤRと軸方向に重複(径方向に見て重複)して配置されている。加えて、本実施形態では出力ギヤ22は、軸第一方向A1側の端部に寄せて配置されているので、分配出力部材21の径方向内側において、同じく軸第一方向A1側の端部に配置された第一出力軸受61と軸方向に重複(径方向に見て重複)して配置されることになる。これにより、分配出力部材21、第一出力軸受61、及び出力ギヤ22が軸方向に並べて配置される場合と比較して、これらが配置される空間の軸方向長さが短縮化されている。
【0043】
加えて、本実施形態においては、分配出力部材21の外周面21aにおける軸第二方向A2側の端部には、外歯を有するパーキングギヤ82が形成されている。パーキングギヤ82は、分配出力部材21と一体的に形成されている。このパーキングギヤ82は不図示のロック部材と噛み合ってこれらが係合した状態で、分配出力部材21の回転を強制停止させる。一方、パーキングギヤ82が、ロック部材と噛み合わずにこれらが係合解除された状態では、分配出力部材21の回転は許容される。
【0044】
本実施形態では、パーキングギヤ82は、軸第二方向A2側の端部に配置されている。よって、分配出力部材21の径方向内側において、同じく軸第二方向A2側の端部に配置された第二出力軸受62と軸方向に重複(径方向に見て重複)して、パーキングギヤ82が配置されることになる。これにより、分配出力部材21、第二出力軸受62、及びパーキングギヤ82が軸方向に並べて配置される場合と比較して、これらが配置される空間の軸方向長さが短縮化されている。
【0045】
3.分配出力部材の構成
分配出力部材21は、上述のように内歯を有するリングギヤR、外歯を有する出力ギヤ22、及び外歯を有するパーキングギヤ82を一体的に備えた複合ギヤ構造となっている。これに加え、本願発明に係る分配出力部材21は、図1及び図3に示すように、リングギヤRと第二出力軸受62との間で、軸第一方向A1側に位置しリングギヤRが一体的に設けられた第一分割部材31と、軸第二方向A2側に位置する第二分割部材32との2つの部材に分割されている。そして、第一分割部材31と第二分割部材32とは、一体回転するように係合されると共に、分離可能に構成されている。
以下では、第一分割部材31及び第二分割部材32についてそれぞれ説明する。
【0046】
第一分割部材31は、分配出力部材21をリングギヤRと第二出力軸受62との間で分割したうちの軸第一方向A1側の部材である。第一分割部材31の外周面には、軸第一方向A1側の端部に出力ギヤ22が一体的に設けられ、第一分割部材31の内周面には、中央部にリングギヤRが一体的に設けられている。本実施形態においては、リングギヤRは、内周面に対して突出するように設けられている。また、第一分割部材31の内周面には、軸第一方向A1側の端部に、第一出力軸受61と接する軸方向の段差部23が設けられている。ここで、内周面における「軸方向の段差部」とは、第一分割部材31の軸方向の所定位置に形成され、当該位置において第一分割部材31の内径が、ステップ状に変化している部分を意味する。段差部23に対して軸第一方向A1側の部分の内径は、段差部23に対して軸第二方向A2側となる部分の内径よりも大径となるように形成されている。第一分割部材31は、この段差部23の軸第一方向A1側の大径部と、端部支持壁4の軸方向突出部6と、の間に配置された第一出力軸受61を介して、ケース2に対して回転可能に支持されている。第一出力軸受61の軸第二方向A2側の側面は、段差部23に接し、第一出力軸受61の軸第一方向A1側の側面は、端部支持壁4の軸方向突出部6に設けられた段差部に接する。これにより、第一出力軸受61の軸方向位置が定まる。
【0047】
さらに、第一分割部材31の内周面には、軸第二方向A2側の端部に、第二分割部材32との係合部である第一係合部33が設けられている。加えて、第一分割部材31の内周面には、第一係合部33の軸第一方向A1側に、第二分割部材32との嵌合部である第一嵌合部35が設けられている。本実施形態では第一嵌合部35は、第一係合部33の軸第一方向A1側に隣接して配置されている。
【0048】
より詳しくは、第一係合部33は、スプラインの内歯を備え、第一係合部33のスプラインの歯は、第一嵌合部35の内周面より径方向外側に位置するよう形成されている。言い換えると、第一嵌合部35は、内周面全体が第一係合部33のスプラインの歯よりも径方向内側に位置するよう形成されている。なお、第一係合部33は、係合状態において第二分割部材32に設けられた第二係合部34に対して径方向外側から接し、第二係合部34と軸方向に重複(径方向に見て重複)するように形成されている。また、第一嵌合部35は、第一分割部材31と第二分割部材32が係合状態にあるとき、第二分割部材32に設けられた第二嵌合部36と軸方向に重複(径方向に見て重複)し、第二嵌合部36に対して径方向外側から当接する状態で径方向に嵌合するように形成されている。
【0049】
本実施形態では、第一分割部材31と第二分割部材32とを組み合わせた状態において、第一分割部材31の最外周面が、第二分割部材32の最外周面より径方向外側に位置する。このため、第一分割部材31と第二分割部材32とを組み合わせた状態において、第一分割部材31の軸第二方向A2側の端面41は、径方向外側で第二分割部材32と軸方向から見て重複しない部分を有する。
【0050】
第二分割部材32は、分配出力部材21をリングギヤRと第二出力軸受62との間で分割したうちの軸第二方向A2側の部材である。第二分割部材32の外周面には、パーキングギヤ82が一体的に設けられている。また、第二分割部材32の内周面には、軸第二方向A2側の端部に、第二出力軸受62と接する軸方向の段差部24が設けられている。段差部24に対して軸第二方向A2側の内径は、段差部24に対して軸第一方向A1側に近接する第二出力軸受62の最内周面よりも、大径となるように形成されている。第二分割部材32は、この段差部24の軸第二方向A2側の大径部と、中間支持壁7の軸方向突出部8と、の間に配置された第二出力軸受62を介して、ケース2に対して回転可能に支持されている。第二出力軸受62の軸第一方向A1側の側面は、段差部24に接し、第二出力軸受62の軸第二方向A2側の側面は、中間支持壁7の軸方向突出部8に設けられた段差部に接する。これにより、第二出力軸受62の軸方向位置が定まる。
【0051】
さらに、第二分割部材32の外周面には、軸第一方向A1側の端部に、第一分割部材31との嵌合部である第二嵌合部36が設けられている。加えて、第二分割部材32の外周面には、第二嵌合部36の軸第二方向A2側に、第一分割部材31との係合部である第二係合部34が設けられている。本実施形態では第二嵌合部36は、第二係合部34の軸第二方向A2側に隣接して配置されている。
【0052】
より詳しくは、第二嵌合部36の外径は、第二分割部材32の外周面において最も小さく、第一分割部材31の第一嵌合部35の内径と略同一の大きさとなるよう形成されている。第二係合部34は、第一係合部33のスプラインの内歯に対応する外歯が備えられており、第二係合部34のスプラインの歯は、第二嵌合部36、第二係合部34を除く第二分割部材32の外径よりも径方向内側に位置するよう形成されている。言い換えると、第二係合部34のスプラインの歯は、第二分割部材32の最外周面よりも径方向内側に位置するよう形成されている。このように第二係合部34が形成されるため、第二分割部材32の外周面には、第二係合部34の軸第二方向A2側に軸方向の段差部42を有することになる。段差部42に対して軸第二方向A2側の外径は、段差部42に対して軸第一方向A1側に近接する第二係合部34の外径及び第二嵌合部36の外径よりも、大径となるように形成されている。ここで、「第二係合部34の外径」とは、第二係合部34のスプライン外周により定まる径を意味する。
【0053】
このような構成により、第一分割部材31と第二分割部材32とを、軸心を合わせて軸方向から組み合わせることで、第一係合部33のスプライン歯と、第二係合部34のスプライン歯とが係合され、第一分割部材31と第二分割部材32との周方向の相対回転が規制され、互いに一体回転するように連結される。加えて、第一嵌合部35と第二嵌合部36が径方向に接するように嵌合するため、第一分割部材31と第二分割部材32の径方向の相対的な移動も規制される。これにより、第一分割部材31と第二分割部材32をスプラインだけで連結させた場合に比べ、軸芯精度を高めることができる。
【0054】
また、第一分割部材31と第二分割部材32とを組み合わせた状態では、第一分割部材31に一体的に設けられたリングギヤRは、第二分割部材32と径方向に重複(軸方向に見て重複)する。また、リングギヤRは、第二分割部材32の軸第一方向A1側の端面に対して軸方向に所定の間隔をあけた位置に配される。また、第一分割部材31と第二分割部材32とを組み合わせた状態において、第一分割部材31の軸第二方向A2側の端面41が第二分割部材32の段差部42に当接する。これにより、第一分割部材31と第二分割部材32の軸方向の相対的な位置関係が規定され、分配出力部材21の軸方向長さが定まる。
【0055】
なお、本願において、「径方向に重複」とは、径方向の配置に関して2つの対象(部材)が同じ位置となる部分を少なくとも一部に有すること、言い換えると、軸方向に見て重複する部分を有すること、すなわち、軸方向を視線方向として当該視線方向に直交する各方向に視点を移動させた場合に、2つの対象(部材)が重なって見える視点が少なくとも一部の領域に存在することを指す。
【0056】
次に、第一分割部材31に設けられたスプライン歯を利用して分配出力部材21の内側の油を、分配出力部材21の外側に排出する仕組みについて説明する。
ここで、本実施形態においては、第一分割部材31の第一係合部33は、スプライン歯の1つが第一係合部33と第二係合部34の領域の全体にわたって切除された欠歯部37を備えている。図3は、欠歯部37を含む軸方向に平行な断面を示している。第一分割部材31の第一嵌合部35の内周面には、欠歯部37と同じ周方向位置に油排出溝38が設けられている。油排出溝38は、第一分割部材31と第二分割部材32とが係合状態にあるとき、第一係合部33の欠歯部37と、分配出力部材21内側の空間と、を連通するように形成されている。また、第二分割部材32の段差部42には、欠歯部37と同じ周方向位置に切欠溝40が設けられている。切欠溝40は、第一分割部材31と第二分割部材32とが係合状態にあるとき、第一係合部33の欠歯部37と、分配出力部材21の外側の空間と、を連通するように形成されている。
【0057】
以上のような構成をとることにより、分配出力部材21の内側の空間は、油排出溝38、欠歯部37及び切欠溝40を通って、分配出力部材21の外側の空間と繋がっている。よって、分配出力部材21内側の空間の油は、油排出溝38、欠歯部37及び切欠溝40を通って、分配出力部材21外側の空間へと排出される。
【0058】
4.ハイブリッド駆動装置への組み付け
最後に、図4を用いて、本実施形態に係るハイブリッド駆動装置1に動力分配装置PTを組み付ける際の手順を説明する。動力分配装置PTの組み付け時には、図のように、軸第二方向A2側を下にして、ケース本体2aが配置される。この状態で、ケース本体2aに対して軸第一方向A1側から、第二分割部材32、入力軸Iと動力分配装置PTと第一分割部材31とからなるサブアッセンブリである動力分配ユニットPU、フロントカバー2bが順に組みつけられる。
【0059】
より詳細には、ケース本体2aには、第一回転電機MG1が組みつけられており、ロータ軸受63を介して第一ロータ軸60が固定されている。第一ロータ軸60には、第二ニードル軸受70が嵌め込まれると共に、サンギヤSを備えた円筒状部材がスプライン結合されている。その状態から、まず、第二分割部材32に取り付けられた第二出力軸受62が、ケース本体2aの軸方向突出部8に嵌め込まれる。次に、入力軸Iと動力分配装置PTと第一分割部材31と第一出力軸受61とからなる動力分配ユニットPUを組み付ける。ここで、動力分配ユニットPUは、第一分割部材31に設けられた動力分配装置PTのリングギヤRと、入力軸Iと一体的に形成されたキャリヤCAに支持されたプラネタリギヤとが係合するようにあらかじめ組み付けられているとともに、第一出力軸受61が第一分割部材31に嵌合されてなるサブアッセンブリである。動力分配ユニットPUを組み付ける際、入力軸Iは、第一ロータ軸60に設けられた貫通孔に挿入され、第二ニードル軸受70の内周面に嵌合する。また、第一分割部材31の第一係合部33及び第一嵌合部35は、それぞれ第二分割部材32の第二係合部34及び第二嵌合部36と係合及び嵌合する。また、動力分配装置PTのプラネタリギヤは、サンギヤSと係合する。最後に、フロントカバー2bが組み付けられ、フロントカバー2bとケース本体2aとはボルトで締結される。このとき、入力軸Iは、フロントカバー2bに設けられた貫通孔に挿入され、第一ニードル軸受69の内周面に嵌合する。また、第一分割部材31に設けられた第一出力軸受61は、フロントカバー2bの軸方向突出部6の外周面に嵌め込まれる。
【0060】
ここで、分配出力部材21が分割されていなかった場合には、動力分配装置PTをケース本体2aに組み付ける際、第二出力軸受62とサンギヤSを備えた円筒状部材とを同時に嵌め込む必要があり、組み付けの容易さが妨げられる可能性がある。これに対して、本実施形態に係る発明のように、分配出力部材21を、リングギヤRが一体的に設けられた第一分割部材31と、第二分割部材32とに分割することで、第二出力軸受62とサンギヤSを備えた円筒状部材とを別々に嵌め込むことが可能となり、組み付けの容易性が向上する。また、このような構成をとれば、第一分割部材31と第二分割部材32を分離するだけで、動力分配装置PT及び入力軸Iを交換することが可能となり、メンテナンス性にも優れたハイブリッド駆動装置1を実現できる。
【0061】
〔その他の実施形態〕
最後に、本発明に係るハイブリッド駆動装置の、その他の実施形態について説明する。なお、以下のそれぞれの実施形態で開示される特徴構成は、その実施形態でのみ適用されるものではなく、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される特徴構成と組み合わせて適用することも可能である。
【0062】
(1)上記の実施形態においては、係合部及び嵌合部は、第一分割部材31の内周面及び第二分割部材32の外周面に設けられる場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されない。すなわち、例えば、第一分割部材31の外周面に第一係合部33及び第一嵌合部35が設けられ、第二分割部材32の内周面に第二係合部34及び第二嵌合部36が設けられる構成とすることも、本発明の好適な実施形態の1つである。
【0063】
(2)上記の実施形態においては、第一分割部材31及び第二分割部材32に、係合部33、34に加えて、嵌合部35、36が設けられる場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されない。すなわち、例えば、第一分割部材31及び第二分割部材32に、嵌合部35、36が設けられず、係合部33、34のみが設けられる構成とすることも、本発明の好適な実施形態の1つである。
【0064】
(3)上記の実施形態においては、第一係合部33及び第二係合部34のそれぞれが、互いにスプライン歯を備える場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されない。すなわち、例えば、第一係合部33及び第二係合部34の一方にキーが設けられ、第一係合部33及び第二係合部34の他方にキーに対応したキー溝が設けられた構成とすることも、本発明の好適な実施形態の1つである。また、例えば第一係合部33及び第二係合部34を貫通するボルト穴を設け、第一分割部材31の径方向外側からボルトで第一係合部33及び第二係合部34を固定する構成とすることも、本発明の好適な実施形態の1つである。
【0065】
(4)上記の実施形態においては、第一係合部33のスプライン歯の1つが、第一係合部33と第二係合部34の領域の全体にわたって切除されている場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されない。すなわち、例えば、第二係合部34のスプライン歯の1つ、又は第一係合部33及び第二係合部34のスプライン歯の複数が、第一係合部33と第二係合部34の領域の全体にわたって切除されている構成とすることも、本発明の好適な実施形態の1つである。なお、このような場合には、スプライン歯が切除されている箇所に対応する油排出溝38及び切欠溝40を設ける必要がある。
【0066】
(5)上記の実施形態においては、分配出力部材21の内側の油を排出するために、第二分割部材32に切欠溝40が設けられる場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されない。すなわち、例えば、第一分割部材31の軸第二方向A2側の端面41に切欠溝40を設けることも、本発明の好適な実施形態の1つである。同様に、油排出溝38に関しても、当該油排出溝38を第一分割部材31に設けずに、第二分割部材32の第二嵌合部36に設けても良い。また、例えば第一分割部材31のスプライン歯を、第二分割部材32の最外周面よりも径方向外側に位置する部分を有するように形成すれば、切欠溝40を設けずに、分配出力部材21の内側の空間の油を、外側に排出できる。したがって、第一分割部材31又は第二分割部材32に切欠溝40を設けない構成とすることも、本発明の好適な実施形態の1つである。
【0067】
(6)上記の実施形態においては、分配出力部材21の内側の油を排出するために、第一分割部材31に設けられたスプライン歯を利用した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されない。すなわち、例えば、第一分割部材31又は第二分割部材32の少なくとも一方に、径方向に貫通するように穴あけ加工をして設けた油排出孔が設けられる構成とすることも、本発明の好適な実施形態の1つである。また、分配出力部材21の内側の油を排出するための機構を有しない構成とすることも、本発明の好適な実施形態の1つである。
【0068】
(7)上記の実施形態においては、分配出力部材21が、リングギヤRと第二出力軸受62との間で、分割されている場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されない。すなわち、例えば、分配出力部材21が、リングギヤRと第一出力軸受61との間で、分割されている構成とすることも、本発明の好適な実施形態の1つである。この場合には、軸第二方向A2側の部材が本発明における第一分割部材31に相当し、軸第一方向A1側の部材が第二分割部材32に相当する。
【0069】
(8)上記の実施形態においては、出力ギヤ22が、第一分割部材31の外周面に設けられている場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されない。すなわち、例えば、出力ギヤ22が、第二分割部材32の外周面に設けられた構成とすることも、本発明の好適な実施形態の1つである。
【0070】
(9)上記の実施形態においては、出力ギヤ22が、リングギヤRと軸方向に重複(径方向に見て重複)して配置されている場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されない。すなわち、例えば、出力ギヤ22が、リングギヤRと軸方向に全く重複しない位置に配置されている構成とすることも、本発明の好適な実施形態の1つである。
【0071】
(10)上記の実施形態においては、パーキングギヤ82が、第二分割部材32の外周面に設けられている場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されない。すなわち、例えば、パーキングギヤ82が、第一分割部材31の外周面に設けられた構成とすることも、本発明の好適な実施形態の1つである。
【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明は、エンジンに駆動連結される入力部材と、回転電機と、前記入力部材のトルクを前記回転電機と分配出力部材とに分配して伝達する動力分配装置と、を備えたハイブリッド駆動装置に好適に利用することができる。
【符号の説明】
【0073】
1 :ハイブリッド駆動装置
21 :分配出力部材
21a :外周面
21b :内周面
22 :出力ギヤ
31 :第一分割部材
32 :第二分割部材
33 :第一係合部
34 :第二係合部
35 :第一嵌合部
36 :第二嵌合部
37 :欠歯部
61 :第一出力軸受(出力軸受)
62 :第二出力軸受(出力軸受)
E :エンジン
I :入力軸(入力部材)
MG1 :第一回転電機(回転電機)
PT :動力分配装置
R :リングギヤ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンに駆動連結される入力部材と、回転電機と、前記入力部材のトルクを前記回転電機と分配出力部材とに分配して伝達する動力分配装置と、を備えたハイブリッド駆動装置であって、
前記動力分配装置の全体が前記分配出力部材の径方向内側に前記分配出力部材と軸方向に重複して配置され、
前記動力分配装置を構成すると共に内歯を有するリングギヤが、前記分配出力部材の内周面に当該分配出力部材と一体的に設けられ、
前記分配出力部材を回転可能に支持する2つの出力軸受を備え、
前記2つの出力軸受は、前記分配出力部材の径方向内側で、かつ、前記動力分配装置の軸方向両側に配置され、
前記分配出力部材は、前記リングギヤと一方の前記出力軸受との間で、前記リングギヤが一体的に設けられた第一分割部材と、第二分割部材とに分割され、
前記第一分割部材と前記第二分割部材とが、一体回転するように係合されていると共に、分離可能に構成されているハイブリッド駆動装置。
【請求項2】
前記第一分割部材の内周面に、前記第二分割部材との係合部である第一係合部が設けられ、
前記第二分割部材の外周面に、前記第一分割部材との係合部である第二係合部が設けられ、
前記第一係合部は、前記第二係合部に対して径方向外側に、前記第二係合部と軸方向に重複して配置されている請求項1に記載のハイブリッド駆動装置。
【請求項3】
前記第一係合部及び前記第二係合部のそれぞれは、互いに係合するスプライン歯を備え、
前記第一係合部及び前記第二係合部のスプライン歯の少なくとも一つが、前記第一係合部と前記第二係合部との軸方向の重複領域の全体にわたって切除されている請求項2に記載のハイブリッド駆動装置。
【請求項4】
前記第一分割部材の内周面に、前記第二分割部材との嵌合部である第一嵌合部が設けられ、
前記第二分割部材の外周面に、前記第一分割部材との嵌合部である第二嵌合部が設けられ、
前記第一嵌合部は、前記第二嵌合部と軸方向に重複して配置され、前記第二嵌合部に対して径方向外側から当接する状態で径方向に嵌合している請求項1から3のいずれか一項に記載のハイブリッド駆動装置。
【請求項5】
前記第一分割部材の外周面に、外歯を有する出力ギヤが一体的に設けられ、
前記出力ギヤは、前記リングギヤの径方向外側に前記リングギヤと軸方向に重複して配置されている請求項1から4のいずれか一項に記載のハイブリッド駆動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−76576(P2012−76576A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−222962(P2010−222962)
【出願日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(000100768)アイシン・エィ・ダブリュ株式会社 (3,717)
【Fターム(参考)】