説明

ハードコート層用組成物およびハードコートフィルム

【課題】ハードコート層に防汚機能を付与し、基材との高い密着性を有するとともに、優れた耐カール性、耐擦傷性、表面硬度を付与でき、汚れの除去が簡便にでき、その特性が劣化することなく常に視認性の高いハードコート層を形成できるハードコート層形成用組成物およびハードコートフィルムを提供する。
【解決手段】多官能(メタ)アクリルモノマー(A)と、水酸基を有する(メタ)アクリルモノマー(B)と、光ラジカル重合開始剤(C)と、重合性基を有する含フッ素化合物(D)と、溶剤(E)とを含み、溶剤(E)の沸点が50〜120℃であるハードコート層形成用組成物。透明基材上に、該組成物を硬化したハードコート層を有し、ハードコート層表面の表面自由エネルギーが20mN/m以下であり、膜厚が5〜25μmであるハードコートフィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば陰極管表示装置(CRT)、液晶表示装置(LCD)、プラズマディスプレイパネル(PDP)、フィールドエミッションディスプレイ(FED)のようなディスプレイの表面を保護する目的で利用される、ハードコート層形成用組成物およびハードコートフィルムに関するものである。さらに詳しくは、本発明は、基材との高い密着性を有するとともに、耐カール性に優れ、なおかつ優れた耐擦傷性、表面硬度を付与できるハードコート層形成用組成物およびハードコートフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
液晶ディスプレイ用偏光板保護フィルム、有機ELディスプレイ等に用いられる円偏光板の保護フィルムは、様々な機能を持たせるために樹脂層が形成されている。例えば帯電防止機能を持たせるための帯電防止層、反射を抑えるための反射防止層、表面硬度を向上させるためのハードコート層といったものである。特にハードコート層についてはディプレイ用途では必須になっており、ハードコート層単層で用いるだけでなく反射防止層の下層の役割も果たしており重要な技術となっている。
【0003】
例えば、特許文献1には、熱可塑性ノルボルネン系樹脂で形成された基材の表面に碁盤目剥離試験での密着性が100目中50目以上であるシリコーン系ハードコート層を有する熱可塑性ノルボルネン系樹脂から成る成形品が開示され、特許文献2には、重合性官能基を有する1種以上の有機成分と無機フィラーとを含む塗膜成分から形成されており、該有機成分の少なくとも1種が水素結合形成基を有しないものであることを特徴とするプラスチック基材フィルム用ハードコート膜が開示され、特許文献3には、透明プラスチックフィルム基材の少なくとも片面に硬化塗膜層であるハードコート層を有するハードコートフィルムであって、ハードコート層形成材料が、ウレタンアクリレート(A)、イソシアヌル酸アクリレート(B)および無機の超微粒子(C)を含むことを特徴とするハードコートフィルムが開示されている。
【0004】
これらの偏光板の保護機能としてのハードコート層を備えるハードコートフィルムは近年高硬度化の需要が非常に高くなっている。しかしながら、これら偏光板の保護フィルム用ハードコートフィルム基材として主にセルロースエステル系のフィルムが用いられるが、このフィルム基材は軟質であるため、ハードコートフィルムとしての高硬度化は非常に困難である。
【0005】
また、これらの偏光板の適用アプリケーションが液晶テレビ、ノートパソコンなどに広く広がるにつれて多様な特性が要求されるようになり、蛍光灯の映り込みが少ない反射防止機能、埃が付きにくい帯電防止機能、指紋等が拭取れる防汚機能などの特性も要求されるようになってきた。特にノートパソコンなどでは、人が使用することによって、指紋、皮脂、汗、化粧品などの汚れが付着する場合が多い。一般に、偏光板の表面エネルギーは大きいために、そのような汚れが付着しやすい。また、反射防止膜の表面には微細な凹凸があるため、汚れを除去することが容易ではない。さらに、そのような汚れが付着した部分だけ高反射となり、汚れが目立つため問題があった。
【0006】
そこで、これら汚れの問題を解決する手段として、汚れが付着しにくく、付着しても拭き取りやすい性能を持つ防汚層を光学部材の表面の形成する技術が種々提案されている。
【0007】
例えば、特許文献4には、基材の表面に、主として二酸化ケイ素からなる反射防止膜を設け、更にその表面に有機ケイ素置換基を含む化合物で処理した防汚性、耐摩擦性の反射防止物品が提案されている。特許文献5には、同様に基材表面を末端シラノール有機ポリシロキサンで被覆した防汚性、耐摩擦性のCRTフィルターが提案されている。また、特許文献6には、ポリフルオロアルキル基を含むモノ及びジシラン化合物及び、ハロゲン、アルキルまたはアルコキシのシラン化合物を含有する反射防止膜をその表面に有する防汚性・低反射性プラスチックが提案されている。
【0008】
しかしながら、従来の方法で形成された防汚層は、防汚性が不十分であり、特に、指紋、皮脂、汗、化粧品等の汚れが拭き取りにくく、また、使用とともに防汚性能が大きく低下する。このため、防汚性と耐久性に優れた防汚層の開発が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平7−97468号公報
【特許文献2】特開2000−159916号公報
【特許文献3】特開2006−106427号公報
【特許文献4】特開平1−086101号公報
【特許文献5】特開平4−338901号公報
【特許文献6】特開昭61−247743号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従来のハードコートフィルムは、指紋拭き取り性などの防汚性を付与したものが無く、また防汚性が付与されていたとしても非常に弱い防汚性能であった。そのため、指紋等の汚れが付きやすく、また一度付いてしまうと汚れが取れにくいという課題があった。さらに不十分な汚れ防止処理を施しても、一般的な紙や布で拭いただけでは、かえって汚れを全面に広げることとなり、汚染された表面は外光の反射を招き、透過光を遮り、表示特性を著しく低下させ、初期の視認性を保てないという課題があった。また、フッ素系添加剤を添加しハードコート表面に防汚特性を付与すると、通常のフッ素系添加剤には反応性基が無いためにハードコート層との密着性が十分でなく、布等で表面を拭取ると防汚成分まで拭き取れてしまうという欠点を有している。そのため一般的にはハードコート層とは別に防汚層を別途形成して防汚特性を付与しているものが多い。
【0011】
したがって本発明の目的はこのような課題を解決するもので、防汚層を別に1層設置することなく、ハードコート層に防汚機能を付与し、基材との高い密着性を有するとともに、優れた耐カール性、耐擦傷性、表面硬度を付与でき、汚れの除去が簡便にでき、その特性が劣化することなく常に視認性の高いハードコート層を形成できるハードコート層形成用組成物およびハードコートフィルムの提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
請求項1に記載の発明は、多官能(メタ)アクリルモノマー(A)と、水酸基を有する(メタ)アクリルモノマー(B)と、光ラジカル重合開始剤(C)と、重合性基を有する含フッ素化合物(D)と、溶剤(E)とを含むハードコート層形成用組成物において、前記溶剤(E)の沸点が50℃以上、120℃以下であることを特徴とするハードコート層形成用組成物である。
【0013】
請求項2に記載の発明は、前記多官能(メタ)アクリルモノマー(A)が、ウレタン(メタ)アクリレートモノマーおよび/またはオリゴマーを主成分とすることを特徴とする請求項1に記載のハードコート層形成用組成物である。
【0014】
請求項3に記載の発明は、前記多官能(メタ)アクリルモノマー(A)と前記水酸基を有する(メタ)アクリルモノマー(B)の合計に対し、前記多官能アクリレートモノマー(A)が50〜95重量%含まれることを特徴とする請求項1または請求項2記載のハードコート層形成用組成物である。
【0015】
請求項4に記載の発明は、前記重合性基を有する含フッ素化合物(D)の添加量が、前記多官能(メタ)アクリルモノマー(A)と、前記水酸基を有する(メタ)アクリルモノマー(B)の合計に対して0.01〜10重量%であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のハードコート層形成用組成物である。
【0016】
請求項5に記載の発明は、前記光ラジカル重合開始剤(C)の添加量が、前記多官能(メタ)アクリルモノマー(A)と、前記水酸基を有する(メタ)アクリルモノマー(B)の合計に対して0.01〜10重量%であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のハードコート層形成用組成物である。
【0017】
請求項6に記載の発明は、透明基材上に、請求項1〜5のいずれかに記載のハードコート層形成用組成物を硬化したハードコート層を有し、かつ、前記ハードコート層表面の表面自由エネルギーが20mN/m以下であり、且つ、前記ハードコート層の膜厚が5〜25μmであることを特徴とするハードコートフィルムである。
【0018】
請求項7に記載の発明は、前記請求項1〜5のいずれかに記載のハードコート層形成用組成物を透明基材上に塗布、乾燥、硬化工程を経てハードコートフィルムを作製する際に、前記乾燥工程の温度が50℃以上、100℃以下であることを特徴とするハードコートフィルムである。
【0019】
請求項8に記載の発明は、前記透明基材が三酢酸セルロースであることを特徴とする請求項6または7に記載のハードコートフィルムである。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、防汚層を別に1層設置することなく、ハードコート層に防汚機能を付与し、基材との高い密着性を有するとともに、優れた耐カール性、耐擦傷性、表面硬度を付与でき、汚れの除去が簡便にでき、その特性が劣化することなく常に視認性の高いハードコート層を形成できるハードコート層形成用組成物およびハードコートフィルムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明のハードコートフィルムの説明断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明者は、透明基材上のハードコート層に防汚特性の付与を検討した結果、本発明の多官能(メタ)アクリルモノマー(A)と、水酸基を有する(メタ)アクリルモノマー(B)と、光ラジカル重合開始剤(C)と、重合性基を有する含フッ素化合物(D)と、沸点が50℃以上、120℃以下である溶剤(E)とを含むハードコート層形成用組成物において、上記従来の課題を解決できることを見出したものである。
【0023】
以下に、本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0024】
本発明のハードコート層形成用組成物を構成する多官能(メタ)アクリルモノマー(A)とは、1分子中に2個以上のアルコール性水酸基を有する多価アルコールの該水酸基が、2個以上の(メタ)アクリル酸のエステル化物となっている化合物が好ましい。その他にはアクリル系樹脂骨格に反応性のアクリル基が結合されたものを始めとして、ポリエステルアクリレート、ウレタンアクリレート、エポキシアクリレートおよびポリエーテルアクリレートなどであり、また、メラミンやイソシアヌル酸などの剛直な骨格にアクリル基を結合したものなども用いられ得るが、本発明では特にウレタン(メタ)アクリレートモノマーおよび/またはオリゴマーを用いると、ハードコート層の硬度ならびに可撓性を著しく向上させることができる。
【0025】
なお、本発明において「(メタ)アクリルモノマー」とは「アクリルモノマー」と「メタクリルモノマー」の両方を示している。たとえば、「多官能(メタ)アクリルモノマー」は「多官能アクリルモノマー」と「多官能メタクリルモノマー」の両方を示している。また、本発明の多官能(メタ)アクリルモノマー(A)および水酸基を有する(メタ)アクリルモノマー(B)はオリゴマーであっても構わない。
【0026】
本発明にて好ましい多官能(メタ)アクリルモノマー(A)としてウレタンアクリレートとしては、一般にポリエステルポリオールにイソシアネートモノマー、もしくはプレポリマーを反応させて得られた生成物に水酸基を有するアクリレートモノマーを反応させ容易に形成されるものを挙げることができる。
【0027】
具体的な例としては、ペンタエリスリトールトリアクリレートヘキサメチレンジイソシアネートウレタンプレポリマー、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートヘキサメチレンジイソシアネートウレタンプレポリマー、ペンタエリスリトールトリアクリレートトルエンジイソシアネートウレタンプレポリマー、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートトルエンジイソシアネートウレタンプレポリマー、ペンタエリスリトールトリアクリレートイソホロンジイソシアネートウレタンプレポリマー、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートイソホロンジイソシアネートウレタンプレポリマーなどを用いることができる。また、これらの単量体は、1種または2種以上を混合して使用することができる。また、これらは塗液においてモノマーであってもよいし、一部が重合したオリゴマーであってもかまわない。
【0028】
市販されている多官能アクリル系モノマーとしては三菱レイヨン株式会社;(商品名“ダイヤビーム”シリーズなど)、ナガセケムテックス株式会社;(商品名“デナコール”シリーズなど)、新中村化学工業株式会社;(商品名“NKエステル”シリーズなど)、大日本インキ化学工業株式会社;(商品名“UNIDIC”シリーズなど)、東亜合成株式会社;(商品名“アロニックス”シリーズなど)、日本油脂株式会社;(商品名“ブレンマー”シリーズなど)、日本化薬株式会社;(商品名“KAYARAD”シリーズなど)、共栄社化学株式会社;(商品名“ライトエステル”シリーズ、“ライトアクリレート”シリーズなど)などの製品を利用することができる。
【0029】
市販されているウレタン(メタ)アクリレートモノマーおよび/またはオリゴマーとしては、共栄社化学株式会社;UA−306H、UA−306T、UA−306I等、日本合成化学工業株式会社;UV−1700B、UV−6300B、UV−7600B、UV−7605B、UV−7640B、UV−7650B等、新中村化学工業株式会社;U−4HA、U−6HA、UA−100H、U−6LPA、U−15HA、UA−32P、U−324A等、ダイセルユーシービー株式会社;Ebecryl−1290、Ebecryl−1290K、Ebecryl−5129等、根上工業株式会社;UN−3220HA、UN−3220HB、UN−3220HC、UN−3220HS等の製品を利用することができる。
【0030】
本発明のハードコート層形成用組成物を構成する水酸基を有する(メタ)アクリレート化合物(B)としては、多官能(メタ)アクリレートが好ましく、多官能(メタ)アクリレート化合物であると重合性基を有する含フッ素化合物(D)との相溶性が向上し、ハードコート塗液の白濁・沈殿等の問題が発生しない。好適はヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシエチルメタアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、あるいはジペンタエリスリトールペンタアクリレートである。
【0031】
前記多官能(メタ)アクリルモノマー(A)の使用割合は、前記多官能(メタ)アクリルモノマー(A)と、前記水酸基を有する(メタ)アクリルモノマー(B)の合計に対して1〜99重量%が好ましく、50〜95重量%が更に好ましい。前記多官能(メタ)アクリルモノマー(A)の使用割合が50重量%未満の場合には、十分な硬度を有するハードコート層を得るという点で不十分な場合があり、形成されるハードコート層の鉛筆硬度が低下するなどの不都合を招く場合がある。
また、前記多官能(メタ)アクリルモノマー(A)の使用割合が95重量%を超える場合には、多官能(メタ)アクリルモノマー(A)の硬化収縮により、硬化被膜側にフィルムが大きくカールするなどの不都合を招く場合がある。また、水酸基を有する(メタ)アクリルモノマー(B)の使用割合が少ないために重合性基を有する含フッ素化合物(D)の相溶性が十分でなく、塗液の白濁化、沈殿物の発生が起きてしまい、保存安定性が良好なハードコート用組成物を得るという点で不十分な場合がある。
【0032】
本発明のハードコート層形成用組成物を構成する光ラジカル重合開始剤(C)としては、電離放射線を照射することでラジカルを発生し、アクリルモノマーの重合反応を開始する化合物が好ましい。
【0033】
光ラジカル重合開始剤(C)の具体的な例としては、アセトフェノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、p−ジメチルアセトフェノン、p−ジメチルアミノプロピオフェノン、ベンゾフェノン、2−クロロベンゾフェノン、4,4’−ジクロロベンゾフェノン、4,4’−ビスジエチルアミノベンゾフェノン、ミヒラーケトン、ベンジル、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、p−イソプロピル−α−ヒドロキシイソブチルフェノン、α−ヒドロキシイソブチルフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンなどのカルボニル化合物、テトラメチルチウラムモノスルフィド、テトラメチルチウラムジスルフィド、チオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−メチルチオキサントンなどの硫黄化合物などを用いることができる。これらの光重合開始剤は単独で使用してもよいし、2種以上組み合せて用いてもよい。
【0034】
本発明の光ラジカル重合開始剤(C)の使用量は、ハードコート層形成用組成物の前記多官能(メタ)アクリルモノマー(A)と、前記水酸基を有する(メタ)アクリルモノマー(B)の合計に対して、0.01〜10重量%が適当である。0.01重量%よりも少ない場合は電離放射線を照射した際に十分な硬化反応が進行せず、10重量%を超える場合はハードコート層下部まで十分に電離放射線が届かなくなってしまう。
【0035】
本発明のハードコート層形成用組成物を構成する重合性基を有する含フッ素化合物(D)としては、フッ素系添加剤を加えることでハードコート層表面に防汚特性を付与することが可能であるが、重合性基を有しないフッ素系添加剤では添加剤がハードコート層表面に浮いて存在する状態となるため、布等で拭くことでハードコート表面から取り去られてしまうこととなる。このことから、一度布等で表面を拭取ってしまうと、防汚性が無くなるという欠点を有している。本発明では、防汚特性を有するフッ素化合物に重合性基を持たせることで、ハードコート層形成時にフッ素系添加剤も合せて重合することとなり、布等で表面を拭いても防汚特性が維持されるという利点を有している。
【0036】
本発明の重合性基を有する含フッ素化合物(D)としては、さらに好ましくはこの重合性基が(メタ)アクリレート基を有する化合物である。これは多官能(メタ)アクリレート化合物と共重合することも可能となり、電離放射線によるラジカル重合によって高硬度化が図れるためである。
【0037】
このような本発明の重合性基を有する含フッ素化合物(D)としては、オプツールDAC(ダイキン工業(株)製)、SUA1900L10、SUA1900L6(新中村化学(株)製)、UT3971(日本合成(株)製)、ディフェンサTF3001、ディフェンサTF3000、ディフェンサTF3028(大日本インキ(株)製)、ライトプロコートAFC3000(共栄社化学(株)製)、KNS5300(信越シリコーン(株)製)、UVHC1105、UVHC8550(GE東芝シリコーン(株)製)などが挙げられる。
【0038】
本発明の重合性基を有する含フッ素化合物(D)の使用量は、ハードコート層形成用組成物の前記多官能(メタ)アクリルモノマー(A)と、前記水酸基を有する(メタ)アクリルモノマー(B)の合計に対して、0.01〜10重量%が適当である。0.01重量%よりも少ない場合は十分な防汚特性を発現せず、表面エネルギーも20mN/mよりも大きい値を示し、10重量%を超える場合は重合性モノマー、溶剤との相溶性が良くないために、塗液の白濁化、沈殿発生が起こってしまい、塗液・ハードコート層の欠陥発生などの不都合を招く場合がある。
【0039】
本発明の溶剤(E)としては、溶剤の種類としては、エステル系、ケトン系、エーテル系、アルコール系、芳香族炭化水素系などの種類は特に限定されないが、沸点が50℃以上、120℃以下のものが望ましい。具体的には、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸イソブチル、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、イソブタノール、1−ブタノール、テトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、n−ヘキサン、シクロヘキサン、トルエン等を用いることができる。なお、溶媒は1種類に限定されるものではなく、複数の溶媒を混合して上記の沸点の範囲内であれば、混合溶媒としてもよい。
【0040】
これら溶剤(E)の沸点が50℃未満であると、室温において揮発してしまい、粘度上昇のために均一なハードコート層を形成することが困難となる。また、蒸発速度が速いために基材を十分に溶解する事が出来ず、ハードコート層と基材の密着性が低下してしまう。
一方、溶剤(E)の沸点が120℃を超えるであると、乾燥工程において十分に溶剤を蒸発させる事が困難となり、ハードコート層内に残留溶剤として残る事になり、その結果、鉛筆硬度が低下してしまう結果となる。
【0041】
また本発明では、ハードコート層の改質剤として、塗布性改良剤、消泡剤、増粘剤、帯電防止剤、無機系粒子、有機系粒子、有機系潤滑剤、有機高分子化合物、紫外線吸収剤、光安定剤、染料、顔料あるいは安定剤などを用いることができ、これらは活性線による反応を損なわない範囲内でハードコート層を構成する塗布層の組成物成分として使用され、用途に応じてハードコート層の特性を改良することができる。
【0042】
本発明において、上記のハードコート層形成用組成物を硬化させる方法としては、活性線、特に紫外線を照射する方法が好適であり、これらの方法を用いる場合には、前記ハードコート層形成用組成物に、光ラジカル重合開始剤を加えることにより紫外線照射にて硬化させることができる。紫外線照射においては、400nm以下の波長を含む光であれば良く、例えば超高圧水銀灯、高圧水銀灯、中圧水銀灯、低圧水銀灯、キセノンランプ、ハロゲンランプ等を用いることができる。また、必要に応じて加熱工程を加えてもよい。
【0043】
本発明で用いられるハードコート層形成用組成物には、製造時の熱重合や貯蔵中の暗反応を防止するために、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテルまたは2,5ーtーブチルハイドロキノンなどの熱重合防止剤を加えることが望ましい。熱重合防止剤の添加量は、ハードコート層形成用組成物の固形分に対し、0.005から0.05重量%が好ましい。
【0044】
本発明のハードコート層形成用組成物は、基材上に塗布しハードコート層を形成することによりハードコートフィルムとすることができる。
【0045】
ハードコート層形成用組成物の塗布方法としては、ハードコート層形成用組成物をバーコーター、アプリケーター、ドクターブレード、ロールコーター、ダイコーター、コンマーコーター等の公知の塗工手段を用いて塗布することができる。
【0046】
基材としては、透光性を有するフィルム状のものが好ましく、基材として適度の透明性、機械強度を有していれば良い。例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、三酢酸セルロース(TAC)、ジアセチルセルロース、アセチルセルロースブチレート、ポリエチレンナフタレート(PEN)、シクロオレフィンポリマー、ポリイミド、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリカーボネート(PC)等のフィルムを用いることができる。中でも、液晶ディスプレイの前面にハードコートフィルムを設ける場合、三酢酸セルロース(TAC)は光学異方性がないため、好ましく用いられる。
【0047】
本発明では、防汚特性を有するハードコートフィルムを提供するものである。図1に本発明のハードコートフィルムの説明断面図を示した。本発明のハードコートフィルムにあっては、最外層にハードコート層を備える。このとき、本発明のハードコートフィルムはハードコート層表面の表面エネルギーが20mN/m以下であるこが好ましい。
【0048】
これはハードコート層表面の防汚特性の評価方法の指標として、表面自由エネルギーがあり、この表面エネルギーによりハードコート表面の防汚性の有無・大小を推測することが出来る。この表面自由エネルギーは表面接触角から拡張Fowkesの式で求めることができ、この値が小さいほうが防汚特性が良好である。本発明のハードコートフィルムにあっては、表面エネルギーが20mN/m以下であるため、高い防汚特性を有するハードコートフィルムとすることができる。
【0049】
また、本発明のハードコートフィルムにおいて、ハードコート層表面の表面自由エネルギーは、15mN/m以上であることが好ましい。表面自由エネルギーはその値が小さいほど防汚特性の高いハードコートフィルムとすることができる。しかし、ハードコート層表面の表面自由エネルギーを15mN/m未満とした場合には、重合性基を有する含フッ素化合物(D)を相当量入れる必要があり、このとき組成物は白化し、形成されるハードコートフィルムは白っぽくなりディスプレイの表面に設けるのに適さないハードコートフィルムとなる場合がある。
【0050】
また、本発明のハードコートフィルムを作製するにあたり、前記ハードコート層形成用組成物を透明基材上に塗布、乾燥、硬化工程を経てハードコートフィルムを作製しており、本発明では作製工程における乾燥工程の段階における乾燥温度が50℃以上、100℃以下であることを特徴とする。
【0051】
乾燥温度を高くすると、前記ハードコート層用形成用組成物に含まれる重合性基を有する含フッ素化合物(D)がハードコート層表面に移動しやすくなり、さらにフッ素化合物が表面上に整列、配向することから、ハードコート層表面の表面接触角と防汚性が向上することとなる。しかしながら、乾燥温度が高くなると蒸発速度が速くなるために、溶剤が基材表面を十分に溶解できなくなってしまい、その結果、ハードコート層と基材の密着性が低下してしまう。また、乾燥温度をやみくもに高くすると基材の軟化温度を上回ってしまい、基材変形、シワ等の発生の原因となってしまう。
【0052】
一方、乾燥温度を低くすると、溶剤の基材溶解速度が向上することから、ハードコート層と基材の密着性が向上するものの、基材溶解が進みすぎるとハードコート層部分の厚みが減少する事による鉛筆硬度の低下、乾燥工程におけるフッ素系添加剤のハードコート表面への移動が十分に進まず、その結果、ハードコート層表面の表面接触角、防汚性が低下してしまう。
【0053】
以上の結果より、本発明のハードコート層形成用組成物を透明基材上に塗布、乾燥、硬化工程を経てハードコートフィルムを作製する際の乾燥工程の乾燥温度は50℃以上、100℃以下が好ましい。
【0054】
塗布して得られたハードコート層の膜厚は、必要とされる硬度によりその膜厚が決定されるが、好ましい膜厚としては3〜30μm、さらに好ましくは5〜25μmである。3μm未満の膜厚では十分な硬度が得られず、一方、30μmを超えるとハードコート層の硬化収縮により基材が非常にカールしてしまい、次工程で破断等の不具合が発生してしまう。
【0055】
本発明のハードコートフィルムには、必要に応じて、機能層が設けられる。機能層は透明基材とハードコート層の間もしくはハードコート層が設けられていない側の透明基材表面に設けられる。これらの機能層としては、反射防止層、帯電防止層、防眩層、電磁波遮蔽層、赤外線吸収層、紫外線吸収層、色補正層等が挙げられる。なお、これらの機能層は単層であってもかまわないし、複数の層であってもかまわない。透明基材上にハードコート層が形成されたハードコートフィルム、及び、さらにこれらの機能層を設けたハードコートィルムは、例えば、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、CRTディスプレイといった各種のディスプレイ表面と貼りあわせることができ、耐擦傷性と防汚性に優れたディスプレイを提供することが可能となる。
【実施例】
【0056】
以下に、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例により限定されるものではない。ハードコートフィルムの性能は,下記の方法に従って評価した。
Haze:日本電色製NDH−2000を用いJIS−K7105に準じ測定を行った。
全光線透過率:日本電色製NDH−2000を用いJIS−K7105に準じ測定を行った。
鉛筆硬度:JIS−K5400に準じ評価を行った。
耐擦傷性:#0000のスチールウールを用いて250g/cmの荷重をかけながら10往復し、傷の発生の有無を確認した。
【0057】
○:キズ無し
×:キズ有り
【0058】
密着性:10x10マスのクロスカットピールテストを実施し、ハードコート層の剥離の有無を確認した。
【0059】
○:剥離無し
×:剥離有り
【0060】
防汚特性:ハードコート表面に指紋をつけ、セルロース製不織布(ペンコットM−3:旭化成(株)製)を用いて250g/cm2の荷重をかけながら指紋を拭取り、その取れ易さを目視判定にて行った。判定基準は次の通りとした。
【0061】
○:指紋を完全に拭き取ることができる
△:指紋の拭き取り跡が残る
×:指紋を拭き取ることができない
【0062】
表面エネルギー:接触角計(CA−X型:協和界面科学(株)製)を用いて、乾燥状態(20℃−65%RH)で直径1.8mmの液滴を針先に作り、これを試料(固体)の表面に接触させて液滴を作った。接触角とは、固体と液体とが接触する点における液体表面に対する接線と固体表面とがなす角であり、液体を含む側の角度で定義した。液体としては、蒸留水及びn−ヘキサデカンをそれぞれ使用した。 この2種類の溶液の接触角を元に拡張Fowkes計算式にて求めた。
【0063】
<実施例1>
厚さ80μmの三酢酸セルロースフィルム基材を用い、
ウレタンアクリレート:UA−306I(共栄社化学) 90重量部
アクリルモノマー:PE−3A(ペンタエリスリトールトリアクリレート、共栄社化学)
10重量部
開始剤:イルガキュアー184(チバスペシャリティケミカルズ) 1.5重量部
フッ素系添加剤:オプツールDAC(ダイキン工業) 0.5重量部
溶剤:酢酸エチル(沸点77℃) 100重量部
を攪拌、混合した塗布液を、バーコート法により硬化膜厚12μmになるように塗布し、70℃にて乾燥させ、メタルハライドランプにより400mJ/cmの紫外線を照射しハードコート層を形成した。このハードコートフィルムの全光線透過率、Haze、耐擦傷性試験、鉛筆硬度、密着性、防汚特性の測定結果を表1にまとめて示す。
【0064】
<実施例2>
厚さ80μmの三酢酸セルロースフィルム基材を用い、
ウレタンアクリレート:UV−1700B(日本合成化学) 90重量部
アクリルモノマー:PE−3A(共栄社化学) 10重量部
開始剤:イルガキュアー184(チバスペシャリティケミカルズ) 1.5重量部
フッ素系添加剤:オプツールDAC(ダイキン工業) 0.5重量部
溶剤:酢酸エチル(沸点77℃) 100重量部
を攪拌、混合した塗布液を、バーコート法により硬化膜厚12μmになるように塗布し、70℃にて乾燥させ、メタルハライドランプにより400mJ/cmの紫外線を照射しハードコート層を形成した。このハードコートフィルムの全光線透過率、Haze、耐擦傷性試験、鉛筆硬度、密着性、防汚特性の測定結果を表1にまとめて示す。
【0065】
<実施例3>
厚さ80μmの三酢酸セルロースフィルム基材を用い、
ウレタンアクリレート:UA−306I(共栄社化学) 80重量部
アクリルモノマー:PE−3A(共栄社化学) 10重量部
開始剤:イルガキュアー184(チバスペシャリティケミカルズ) 1.5重量部
フッ素系添加剤:デイフェンサTF3001(DIC(株)製) 1.0重量部
溶剤:酢酸エチル(沸点77℃) 100重量部
を攪拌、混合した塗布液を、バーコート法により硬化膜厚12μmになるように塗布し、70℃にて乾燥させ、メタルハライドランプにより400mJ/cmの紫外線を照射しハードコート層を形成した。このハードコートフィルムの全光線透過率、Haze、耐擦傷性試験、鉛筆硬度、密着性、防汚特性の測定結果を表1にまとめて示す。
【0066】
<実施例4>
厚さ80μmの三酢酸セルロースフィルム基材を用い、
ウレタンアクリレート:UA−306I(共栄社化学) 90重量部
アクリルモノマー:PE−3A(共栄社化学) 10重量部
開始剤:イルガキュアー184(チバスペシャリティケミカルズ) 1.5重量部
フッ素系添加剤:オプツールDAC(ダイキン工業) 0.5重量部
溶剤:メチルイソブチルケトン(沸点117℃) 100重量部
を攪拌、混合した塗布液を、バーコート法により硬化膜厚12μmになるように塗布し、90℃にて乾燥させ、メタルハライドランプにより400mJ/cmの紫外線を照射しハードコート層を形成した。このハードコートフィルムの全光線透過率、Haze、耐擦傷性試験、鉛筆硬度、密着性、防汚特性の測定結果を表1にまとめて示す。
【0067】
<比較例1>
厚さ80μmの三酢酸セルロースフィルム基材を用い、
ウレタンアクリレート:UA−306I(共栄社化学) 90重量部
アクリルモノマー:PE−3A(共栄社化学) 10重量部
開始剤:イルガキュアー184(チバスペシャリティケミカルズ) 1.5重量部
非重合性フッ素系添加剤:メガファックF470(DIC) 1.0重量部
溶剤:酢酸エチル(沸点77℃) 100重量部
を攪拌、混合した塗布液を、バーコート法により硬化膜厚12μmになるように塗布し、70℃にて乾燥させ、メタルハライドランプにより400mJ/cmの紫外線を照射しハードコート層を形成した。このハードコートフィルムの全光線透過率、Haze、耐擦傷性試験、鉛筆硬度、密着性、防汚特性の測定結果を表1にまとめて示す。
【0068】
<比較例2>
厚さ80μmの三酢酸セルロースフィルム基材を用い、
ウレタンアクリレート:UA−306I(共栄社化学) 90重量部
アクリルモノマー:PE−3A(共栄社化学) 10重量部
開始剤:イルガキュアー184(チバスペシャリティケミカルズ) 1.5重量部
フッ素系添加剤:オプツールDAC(ダイキン工業) 0.5重量部
溶剤:ジクロロメタン(沸点40℃) 100重量部
を攪拌、混合した塗布液を、バーコート法により硬化膜厚12μmになるように塗布し、70℃にて乾燥させ、メタルハライドランプにより400mJ/cmの紫外線を照射しハードコート層を形成した。このハードコートフィルムの全光線透過率、Haze、耐擦傷性試験、鉛筆硬度、密着性、防汚特性の測定結果を表1にまとめて示す。
【0069】
<比較例3>
厚さ80μmの三酢酸セルロースフィルム基材を用い、
ウレタンアクリレート:UA−306I(共栄社化学) 90重量部
アクリルモノマー:PE−3A(共栄社化学) 10重量部
開始剤:イルガキュアー184(チバスペシャリティケミカルズ) 1.5重量部
フッ素系添加剤:オプツールDAC(ダイキン工業) 0.5重量部
溶剤:プロピレングリコールメチルエーテルアセテート(沸点121℃)100重量部
を攪拌、混合した塗布液を、バーコート法により硬化膜厚12μmになるように塗布し、70℃にて乾燥させ、メタルハライドランプにより400mJ/cmの紫外線を照射しハードコート層を形成した。このハードコートフィルムの全光線透過率、Haze、耐擦傷性試験、鉛筆硬度、密着性、防汚特性の測定結果を表1にまとめて示す。
【0070】
<比較例4>
厚さ80μmの三酢酸セルロースフィルム基材を用い、
ウレタンアクリレート:UA−306I(共栄社化学) 90重量部
アクリルモノマー:PE−3A(ペンタエリスリトールトリアクリレート、共栄社化学)
10重量部
開始剤:イルガキュアー184(チバスペシャリティケミカルズ) 1.5重量部
フッ素系添加剤:オプツールDAC(ダイキン工業) 0.5重量部
溶剤:酢酸エチル(沸点77℃) 100重量部
を攪拌、混合した塗布液を、バーコート法により硬化膜厚12μmになるように塗布し、40℃にて乾燥させ、メタルハライドランプにより400mJ/cmの紫外線を照射しハードコート層を形成した。このハードコートフィルムの全光線透過率、Haze、耐擦傷性試験、鉛筆硬度、密着性、防汚特性の測定結果を表1にまとめて示す。
【0071】
<比較例5>
厚さ80μmの三酢酸セルロースフィルム基材を用い、
ウレタンアクリレート:UA−306I(共栄社化学) 90重量部
アクリルモノマー:PE−3A(ペンタエリスリトールトリアクリレート、共栄社化学)
10重量部
開始剤:イルガキュアー184(チバスペシャリティケミカルズ) 1.5重量部
フッ素系添加剤:オプツールDAC(ダイキン工業) 0.5重量部
溶剤:酢酸エチル(沸点77℃) 100重量部
を攪拌、混合した塗布液を、バーコート法により硬化膜厚12μmになるように塗布し、130℃にて乾燥させ、メタルハライドランプにより400mJ/cmの紫外線を照射しハードコート層を形成した。このハードコートフィルムの全光線透過率、Haze、耐擦傷性試験、鉛筆硬度、密着性、防汚特性の測定結果を表1にまとめて示す。
【0072】
以上の実施例1から4及び比較例1から5の評価結果を以下の表1にまとめて示す。
【0073】
【表1】

【0074】
実施例1から4と比較例1を比べると、重合性基を有する含フッ素化合物を用いることで、十分な防汚特性、表面エネルギーを有しているハードコートフィルムを作製できることが分る。
【0075】
さらに、実施例1から4と比較例2から5を比べると、重合性基を有する含フッ素化合物を用いることで、十分な防汚特性、表面エネルギーを有するだけでなく、溶剤、乾燥温度によって、さらに鉛筆硬度と密着性も両立しているハードコートフィルムを作製できることが分かる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多官能(メタ)アクリルモノマー(A)と、水酸基を有する(メタ)アクリルモノマー(B)と、光ラジカル重合開始剤(C)と、重合性基を有する含フッ素化合物(D)と、溶剤(E)とを含むハードコート層形成用組成物において、前記溶剤(E)の沸点が50℃以上、120℃以下であることを特徴とするハードコート層形成用組成物。
【請求項2】
前記多官能(メタ)アクリルモノマー(A)が、ウレタン(メタ)アクリレートモノマーおよび/またはオリゴマーを主成分とすることを特徴とする請求項1に記載のハードコート層形成用組成物。
【請求項3】
前記多官能(メタ)アクリルモノマー(A)と前記水酸基を有する(メタ)アクリルモノマー(B)の合計に対し、前記多官能アクリレートモノマー(A)が50〜95重量%含まれることを特徴とする請求項1または請求項2記載のハードコート層形成用組成物。
【請求項4】
前記重合性基を有する含フッ素化合物(D)の添加量が、前記多官能(メタ)アクリルモノマー(A)と、前記水酸基を有する(メタ)アクリルモノマー(B)の合計に対して0.01〜10重量%であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のハードコート層形成用組成物。
【請求項5】
前記光ラジカル重合開始剤(C)の添加量が、前記多官能(メタ)アクリルモノマー(A)と、前記水酸基を有する(メタ)アクリルモノマー(B)の合計に対して0.01〜10重量%であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のハードコート層形成用組成物。
【請求項6】
透明基材上に、請求項1〜5のいずれかに記載のハードコート層形成用組成物を硬化したハードコート層を有し、かつ、前記ハードコート層表面の表面自由エネルギーが20mN/m以下であり、且つ、前記ハードコート層の膜厚が5〜25μmであることを特徴とするハードコートフィルム。
【請求項7】
前記請求項1〜5のいずれかに記載のハードコート層形成用組成物を透明基材上に塗布、乾燥、硬化工程を経てハードコートフィルムを作製する際に、前記乾燥工程の温度が50℃以上、100℃以下であることを特徴とするハードコートフィルム。
【請求項8】
前記透明基材が三酢酸セルロースであることを特徴とする請求項6または7に記載のハードコートフィルム。

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2010−174125(P2010−174125A)
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−17816(P2009−17816)
【出願日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】