ハードディスク検査装置及び方法並びにプログラム
【課題】ハードディスクの平面部及び端面(エッジ部)の同時検査に好適なディスク検査装置及び方法並びにプログラムを提供する。
【解決手段】エッジを含んだディスク表面の所定形状の検査領域部分を視野内に含む撮像手段を用いて当該検査領域部分からの反射光を撮像することにより得た取り込み画像からハードディスクのエッジ位置を検出するエッジ検出処理手段と、当該検査対象ディスクの内径、外径及び記録面領域の範囲を規定する仕様情報を取得する情報取得手段と、検出したエッジ位置と仕様情報に基づき、取り込み画像を記録面領域、非記録内周領域、非記録外周領域、外周エッジ領域、内周エッジ領域の各領域に対応したウインドウに分離するウインドウ分離手段と、各領域ごとにデータ処理を行い、塵埃の位置及び大きさの情報を得る画像解析手段と、得られた結果をモニタ画面上に表示させる表示制御手段とを備える。
【解決手段】エッジを含んだディスク表面の所定形状の検査領域部分を視野内に含む撮像手段を用いて当該検査領域部分からの反射光を撮像することにより得た取り込み画像からハードディスクのエッジ位置を検出するエッジ検出処理手段と、当該検査対象ディスクの内径、外径及び記録面領域の範囲を規定する仕様情報を取得する情報取得手段と、検出したエッジ位置と仕様情報に基づき、取り込み画像を記録面領域、非記録内周領域、非記録外周領域、外周エッジ領域、内周エッジ領域の各領域に対応したウインドウに分離するウインドウ分離手段と、各領域ごとにデータ処理を行い、塵埃の位置及び大きさの情報を得る画像解析手段と、得られた結果をモニタ画面上に表示させる表示制御手段とを備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハードディスク装置に用いられる磁気ディスクの表面及び端面の汚染状態を検査するのに好適なハードディスク検査装置及び方法並びにプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ハードディスク装置はますます記録密度が向上し、ヘッド浮上量も限りなく小さくなってきている。そのため微小なパーティクルであってもドロップアウトの原因となるばかりか、パーティクルがヘッドに噛みこみデータを損傷させる恐れも大きくなっている。さらに、記録面ばかりでなく、ディスク内周面や外周面のパーティクルも移動することによって前記の障害を起こす恐れがある。特にエッジ部分は搬送用ケースやハンドリング治具、設備のチャック等と接触することが避けられず、また角を持つことからパーティクルの発生源でもあり、それらは容易に移動することから障害発生要因となりやすい。
【0003】
また、磁気ディスクに予めサーボ信号等の情報を書き込む磁気転写技術においては、マスターディスク(転写原盤)とスレーブディスク(被転写用磁気ディスク)とを密着させる必要があるが、ディスク間に塵埃があると転写不良となる。この塵埃は、スレーブディスクの製造時や搬送時等に発生したものが当該スレーブディスクに付着して持ち込まれるものがある。このようにディスクに付着してくる塵埃については、転写工程の前に塵埃の有無を検査し、塵埃が付着しているディスクを排除することが望ましい。
【0004】
従来、ハードディスク装置に使用される磁気ディスクは、その製造工程において表面の欠陥やパーティクルの付着の有無などについて検査が行われ、レーザを使用した検査装置(特許文献1)やCCD等の撮像カメラを使用した検査装置(特許文献2,3)が実用化されている。
【特許文献1】特開2000−9453号公報
【特許文献2】特開2000−162146号公報
【特許文献3】特開平6−148088号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1は、ハードディスクの外周端面(エッジ)のみを検査する端面専用検査機に関する内容であり、同文献1に記載された装置では、ディスクの面内及び内周端面の検査ができない。面内及び内周端面(エッジ)について検査するためには、それぞれ別の検査機を設ける必要がある。また、特許文献1に記載の技術は、ディスク端面に照射したレーザ光の正反射方向の強度と、分割反射体内面での拡散反射の強度を測定するものであり、当該測定情報からディスク端面の傷など影響が少ない欠陥と、塵埃(影響が大きいもの)との分離が十分ではなく、さらに、当該技術の測定原理上、エッジ部の様子を反映した画像を得るものではないため測定結果の検証が困難である。
【0006】
一方、引用文献2,3は、ディスク片面の平面部(記録面内)のみを検査するものであり、エッジまたはエッジ近傍の検査を行うことはできない。
【0007】
上記特許文献1〜3に開示されたいずれの装置においても、ディスクの面内とエッジ部を同時に検査することはできず、また1台でディスクの両面及び端面を同時に検査することはできない。
【0008】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、ハードディスクの表面(記録面部分)及び端面(エッジ部)の同時検査や両面の同時検査に好適なディスク検査装置及び方法並びにかかる機能をコンピュータによって実現するためのプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するために本発明に係るディスク検査装置は、ハードディスクのエッジを含んだディスク表面の所定形状の検査領域部分を視野内に含み、当該検査領域部分からの反射光を撮像する撮像手段と、前記撮像手段によって取得された取り込み画像から前記ハードディスクのエッジ位置を検出する処理を行うエッジ検出処理手段と、当該検査対象のハードディスクの内径、外径及び記録面領域の範囲を規定する仕様情報を取得する情報取得手段と、前記エッジ検出処理手段により検出したエッジ位置と前記情報取得手段によって取得した仕様情報に基づき、前記取り込み画像を、記録面領域、非記録内周領域、非記録外周領域、外周エッジ領域、内周エッジ領域の各領域に対応したウインドウに分離するウインドウ分離手段と、前記ウインドウ分離手段により分離された領域ごとにデータ処理を行い、各領域について塵埃の位置及び大きさの情報を得る画像解析手段と、前記画像解析手段で得た結果をモニタ画面上に表示させる表示制御手段と、を備えたことを特徴とする。
【0010】
本発明によれば、ハードディスクの平面部及びエッジ部を同時に検査することができ、検査効率の向上を達成できる。また、ディスク上における塵埃の位置をモニタ上で目視判別することが可能である。
【0011】
本発明の一態様に係るハードディスク検査装置によれば、前記画像解析手段は、前記記録面領域についてのデータ処理手段として、非線形強調処理及び2次元微分処理を含む強調処理手段と、前記強調処理手段により得られる強調信号と前記取り込み画像と重ね合わせて2値化を行う2値化処理手段とを備えることを特徴とする。
【0012】
かかる態様によれば、塵埃等を浮き上がらせることができ、撮像素子の分解能よりも微細な塵埃を検出することができる。また、適宜の閾値の設定と2次元微分処理により、緩やかな輝度差を除去でき、テクスチャによる反射光の成分や撮影レンズ等の写り込みによる影響を除去することが可能である。
【0013】
本発明の他の態様に係るハードディスク検査装置として、前記画像解析手段は、前記外周エッジ領域及び前記内周エッジ領域についてのデータ処理手段として、モフォロジー処理手段と、前記モフォロジー処理手段の処理結果から形状を認識し、塵埃と傷を分離する形状認識処理手段と、当該形状認識手段によって分離された塵埃の情報を2値化する2値化処理手段とを備えることを特徴とするハードディスク検査装置を提供する。
【0014】
ディスクのエッジ部分は、チャック等による傷や蒸着欠陥など、塵埃(粒子)の付着以外の要因による反射が想定されるため、撮像画像の中から塵埃による反射と塵埃以外の要因による反射とを分離して検出する画像解析処理を行うことが望ましい。
【0015】
また、本発明の他の態様に係るハードディスク検査装置は、前記取り込み画像に対してネガポジ反転処理を行い、前記取り込み画像の反転画像を得る反転処理手段と、前記画像解析手段によって得られた塵埃の位置を前記反転画像上にプロットするプロット処理手段と、前記画像解析手段によって得られた塵埃の大きさを示す数値を前記プロットした各塵埃位置に対応付けて付加するラベル処理手段と、を備え、前記表示制御手段は、前記プロット処理手段によるプロット処理と前記ラベル処理手段による数値のラベル付けがなされた検査結果の画像をモニタ画面上に表示させることを特徴とする。
【0016】
かかる態様によれば、検査結果を一層分かりやすく提示することができる。なお、撮像手段によって取得された画像を処理及び解析する機能や検査結果を表示させる機能等は、プログラム(ソフトウエア)によって実現できる。
【0017】
また、本発明は前記目的を達成する方法発明を提供する。すなわち、本発明に係るハードディスクの検査方法は、ハードディスクのエッジを含んだディスク表面の所定形状の検査領域部分を視野内に含み、当該検査領域部分からの反射光を撮像する撮像工程と、前記撮像工程によって取得された取り込み画像から前記ハードディスクのエッジ位置を検出する処理を行うエッジ検出処理工程と、当該検査対象のハードディスクの内径、外径及び記録面領域の範囲を規定する仕様情報を取得する情報取得工程と、前記エッジ検出処理工程により検出したエッジ位置と前記情報取得工程によって取得した仕様情報に基づき、前記取り込み画像を、記録面領域、非記録内周領域、非記録外周領域、外周エッジ領域、内周エッジ領域の各領域に対応したウインドウに分離するウインドウ分離工程と、前記ウインドウ分離工程により分離された領域ごとにデータ処理を行い、各領域について塵埃の位置及び大きさの情報を得る画像解析工程と、前記画像解析工程で得た結果をモニタ画面上に表示させる表示制御工程と、を備えることを特徴とする。
【0018】
更に、本発明は、コンピュータを、ハードディスクのエッジを含んだディスク表面の所定形状の検査領域部分を視野内に含む撮像手段を用いて当該検査領域部分からの反射光を撮像することによって取得された取り込み画像から前記ハードディスクのエッジ位置を検出する処理を行うエッジ検出処理手段、当該検査対象のハードディスクの内径、外径及び記録面領域の範囲を規定する仕様情報を取得する情報取得手段、前記エッジ検出処理手段により検出したエッジ位置と前記情報取得手段によって取得した仕様情報に基づき、前記取り込み画像を、記録面領域、非記録内周領域、非記録外周領域、外周エッジ領域、内周エッジ領域の各領域に対応したウインドウに分離するウインドウ分離手段、前記ウインドウ分離手段により分離された領域ごとにデータ処理を行い、各領域について塵埃の位置及び大きさの情報を得る画像解析手段、前記画像解析手段で得た結果をモニタ画面上に表示させる表示制御手段、として機能させるためのプログラムを提供する。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、被検査対象のハードディスクについてエッジを含んだディスク表面の撮像画像を得てディスクの平面部とエッジ部分を同時に検査することができるため、別々の検査装置を設ける必要がなく、低コスト、省スペースで検査が可能である。
【0020】
また、面内検査とエッジ検査とで装置を分離する必要がないため、余計なディスクハンドリングを省略でき、ディスクの汚染懸念工程を削減できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、添付図面にしたがって本発明の好ましい実施の形態について詳説する。
【0022】
はじめに、本発明の実施形態に係るハードディスク検査装置に用いられるディスクのチャック装置の構成について説明する。
【0023】
〔ディスクのチャック装置の構成例〕
図1は本発明の実施形態に係るハードディスク検査装置に用いられるディスクのチャック装置の構成例を示す斜視図、図2はその側面図である。これらの図面に示したとおり、本実施形態に係るチャック装置10は、ディスク12の中心部に形成されている孔14の周縁(ディスク内周面)に接触する3本の爪16、17、18を有するチャック本体20と、該チャック本体20を回転させるモータ24とを備える。
【0024】
モータ24は、ベースプレート26に対して垂直に起立する支持プレート28に固定され、その回転軸(スピンドル30)は水平方向(重力方向に直交する方向)を向いている。スピンドル30の先端に取り付けられたチャック本体20は3本の爪16、17、18によりディスク12を垂直に立てた姿勢(ディスク面が重力方向と平行な姿勢)で保持する。
【0025】
支持プレート28には、非接触式の距離センサ32が取り付けられており、該距離センサ32によりディスク12面の位置が検出される。距離センサ32の検出信号に基づき、ディスク12が正しい位置に(正しい姿勢で)保持されているか否かを判定することができる。なお、本例ではレーザ光を照射する投光部32Aと被測定物からの反射光を受光する受光部32Bを有する光学式の距離センサ32が用いられているが、光学式に限らず、超音波式など他の方式によるものであってもよい。
【0026】
チャック本体20に設けられた3本の爪のうち、符号16、17で示した2本の爪(図1において上部に2つ横に並んで配置されるもの)は固定爪であり、残りの符号18で示した爪(図1において下部に配置されるもの)は可動爪である。以後、符号16、17の爪を「固定爪」、符号18の爪を「可動爪」と呼ぶ場合がある。
【0027】
可動爪18のアーム34の基端部は、回動軸36を介してチャック本体20に取り付けられている。可動爪18のアーム34はバネ部材(「付勢手段」に相当、本例では圧縮コイルバネを用いたが、磁気、空気圧、板バネ等も可能である。)38により図2の下方に(可動爪18を孔14の径方向に広げる方向に)付勢され、外力が加わらない状態において、可動爪18は他の固定爪16、17と同様、略水平に支持される。実際は、チャック代が必要なため可動爪18は多少傾き、水平位置からの距離で0.1mm〜0.5mm程度の傾きを持つ。
【0028】
可動爪18のアーム34の下側には、可動爪18を押し上げる手段としてシリンダ40(「爪駆動手段」に相当)が配置されている。シリンダ40のロッド42を伸ばすことにより、バネ部材38の付勢力に抗して可動爪18のアーム34を上方に押し上げることができる(図3参照)。この状態からロッド42を縮めると、バネ部材38の復元力により可動爪18は元の水平位置に戻る。バネ部材38の付勢力に抗して可動爪18を変位させる駆動手段としては、上記のシリンダ40に限定されず、他のアクチュエータや圧縮エアによる手段でもよい。
【0029】
可動爪18を揺動自在に支持する回動軸36の部分(「可動機構の摺動部」に相当)は、部材同士が擦れ合う摺動部であるため、部材の摺動によるパーティクルの発生を考慮すると、かかる摺動部がディスク12から十分に離れた位置に設けられている構造が好ましい。設計上の目安としては、ディスク12から摺動部までの距離をディスク12の(外周半径−内周半径)以上離れた位置に設けられていることが望ましく、外周半径以上離れた位置とすることがより望ましい。
【0030】
本例では、回動軸36を中心とする円弧運動によって可動爪18を揺動移動させているが、可動爪18を移動させる機構は本例に限らず、例えば、可動爪を直線運動によって移動させる機構であってもよい。
【0031】
ただし、直線運動による機構は、円弧運動の機構に比べて摺動部が大きく複雑になるので、位置の精度に制約が無ければ、本例のように円弧運動の機構の方が簡易な構造であり、パーティクルの発生も抑えやすい。
【0032】
図4は、チャック装置10の背面図(図1のA矢視図)である。
チャック本体20の外径はディスク12の孔14の直径以下であり(好ましくは、孔径よりも小さく)、3本の爪16、17、18も可能な限りディスク12の孔径の内側に収まるように配置されている。
【0033】
また、支持プレート28の上端面の高さは、チャック本体20の高さと同等又はそれよりも低い位置とし(図2参照)、該支持プレート28に固定されるモータ24も支持プレート28の上端面の高さを超えないものとする。かかる構成は、ギヤやプーリを使い、モータの軸をシフトするか、或いは、小径のモータを使うことにより実現される。
【0034】
このような構成により、図4に示すとおり、チャックされたディスク12の記録面に対して垂直な方向から見たときに、ディスク12の一部(図4において上部領域)について径方向のほぼ全域が両面とも障害物なく観察可能となる。なお、本例の場合、後述のディスク検査装置(図10)において、検査範囲となる所定角度範囲(α=45°)の記録面領域(図13における符号130)を少なくとも含む領域が障害物なく観察可能である。このため、ディスク検査装置による両面同時検査が可能であり、また、ディスクの内周縁の極めて近い領域まで検査することができる。
【0035】
図5は、チャック装置10の要部斜視図である。図示のように、各爪16、17、18は、チャック本体21とは別の材料により、別部材として製作されており、ボルト44によりチャック本体21に固定されている。
【0036】
固定爪16、17及び可動爪18として用いる爪材には、ポリベンゾイミダゾール(PBI)が好適である。ポリベンゾイミダゾールは、特にガラスのディスクに対する耐摩耗性、摺動性が高く、パーティクルの発生が殆ど無い。また、無添加での低反射率特性があり、後述するパーティクル付着の検査(高照度の照明を行う光学的検査)への影響を回避できるという利点がある。低反射率特性を得るために樹脂にカーボンを添加する方法があるが、パーティクル抑制の観点から無添加の材料を用いることが好ましい。
【0037】
各爪16、17、18は、チャック状態においてディスク12の孔の内周面のみと接触する形状とし、ディスク平面(記録面)には接触しない構成であることが望ましい。本例の爪16、17、18は、ディスク12の孔の内周に沿った部分円弧状の外周面16A、17A、18Aを有し、各爪16、17、18の円弧状の外周面16A、17A、18Aには、それぞれディスク12の孔14の周縁に当接する溝46、47、48が形成されている。この溝46、47、48により、ディスク12の保持位置及び姿勢が規制される。
【0038】
図6は可動爪18に形成された溝48の拡大図である。なお、固定爪16、17に形成される溝46、47も同様であるため、図6に示した可動爪18の溝48の説明で代表させる。
【0039】
図示のように、溝48は、断面がV字形状を有する。かかるV字型の斜面の角度はディスク12の内周エッジの面取り角度と合致しており、チャック時には該溝48にディスク12の内周エッジのチャンファー面12A、12Bが接触し、バネ部材38の付勢力で爪18が押し当てられてディスク12が保持される。図6では、説明の便宜上、深い溝48を描いているが、この溝48をあまり深くしすぎると、ディスクの平面部(記録面の領域)のうち溝で隠れる部分(検査できない領域)が多くなってしまうため、この溝48はなるべく浅い方がよい。
【0040】
また、溝48の形態は図6の例に限定されず、例えば、図7に示すように、溝48の斜面の傾斜角度を非常に小さくして、向かい合う斜面48A、48B間の成す広がり角度を大きくした非常に浅い溝の形態も好ましい。このような形態とすることにより、ディスク12の記録面のコーナ部(符号12C、12D)まで検査することが可能となり、コーナ部12Cにおけるゴミ付着を検査することができる。
【0041】
なお、ハンドリングロボット(不図示)によるディスクハンドリングの位置決め精度が向上すれば、この溝48を省略することも可能である。
【0042】
図8は、チャック本体20の正面図(図5の矢印B方向から見た図)である。固定爪16,17及び可動爪18の位置関係は図8に示すとおりである。すなわち、これら3つの爪16、17、18はスピンドル30の中心を原点とする同一円周上に配置されており、図8で最下の位置(時計における6時の位置)に配置される可動爪18から反時計回り方向に135度回転した位置に固定爪17が配置され、可動爪18から時計回転方向に135度回転した位置に固定爪16が配置されている。
【0043】
つまり、スピンドル30の中心から2つの固定爪16、17の位置を見込む角θ1は90度であり、中心から可動爪18の位置と固定爪16(又は17)の位置を見込む角θ2は135度である。なお、ディスク取り付け時の安定性等を考慮すると、θ1<θ2であることが望ましい。
【0044】
本例のような爪配置は、後述のディスク検査装置により、1枚のディスク12を45度範囲ずつ、8回に分けてディスク面の全範囲の検査を行う場合に好適であり、また、垂直姿勢のディスク12を安定的に保持することができるという利点がある。
【0045】
図8に示すB矢視平面において、各爪16、17、18は略扇形状に形成されている。各爪16、17、18の弧(外周面の弧)の中心に対する角度βは、1回の検査範囲の角度α(本例ではα=45度)よりも僅かに小さい角度(本例では43度)とすることが好ましい。固定爪16、17及び可動爪18の配置形態と、各爪16、17、18の弧の中心に対する角度については、本例に限定されず、ディスク検査装置における1回の検査範囲の角度αと、ディスク保持の安定性の観点から決定される。
【0046】
また、本実施形態では、2つの固定爪16,17と1つの可動爪18の爪配置を例示するが、爪の数やその配置形態、可動爪と固定爪の割合とその配置バランスなどについては、多様な形態が可能である。
【0047】
上記の如く構成されたチャック装置10によってディスク12をチャックするときの動作は次のとおりである。
【0048】
ディスク12のハンドリングは、図示せぬハンドリングロボットによって行う。ハンドリングロボットは、複数の爪でディスク12を把持し、該ディスク12をチャック装置10へと搬送する。
【0049】
ハンドリングロボットによるディスク12の保持機構は特に限定されないが、例えば、本例のチャック装置10と類似の爪構造(2つの固定爪と1つの可動爪)を外周チャックに採用し、3本の爪でディスク12の外周を支持する構成とする。なお、本例のチャック装置10は内周チャック方式であることから、ハンドリングロボットは外周チャック方式を採用することが簡便であるが、ハンドリングロボットについても内周チャック方式を採用し、チャック装置10による爪16、17、18の隙間を利用して、ディスク12の受け渡しを行う態様も可能である。
【0050】
ハンドリングロボットによるディスク12の搬送動作と、チャック装置10におけるシリンダ40の動作のタイミングをとるために、ロボット側がシリンダ40を制御する構成が望ましい。すなわち、ハンドリングロボットを制御する制御装置によってシリンダ40も制御する構成とする。チャック装置10にディスク12を取り付けるときには、まず、シリンダ40のロッド42を伸ばして、可動爪18を押し上げる(図3参照)。
【0051】
この状態でハンドリングロボットがディスク12とともに近づき、ディスク12の孔14を爪16、17、18の位置に合わせ、自身の孔14に爪16、17、18が挿入されるように、ディスク12を移動させる。ディスク12を溝46、47の位置まで移動させた後、ディスク12を僅かに降下させてディスク内周面が固定爪16、17に接触する寸前(0.1mm以下の距離)で止める。ここで、ハンドリングロボットのチャックを開放すると、無理無くディスク12は自重で固定爪16、17にかかる。
【0052】
その後、ゆっくりとシリンダ40のロッド42を下げて、バネ部材38の力で可動爪18を下方へと動かし、可動爪18をディスク12の内周に接触させる。こうして、ロッド42による外力を解除することでバネ部材38の付勢力により、爪16、17、18がディスク12の内周に加圧接触し、ディスク12は安定して保持される。図9にチャック状態の要部断面図を示す。
【0053】
なお、チャック状態のディスク12を取り外すときには、上述した取り付け時とは逆の動作を行う。
【0054】
本実施形態のチャック装置10によれば、次のような作用効果が得られる。
【0055】
(1)傷やパーティクルの発生を抑制できる。
【0056】
(2)ディスク両面の同時検査が可能であり、早いサイクルタイムを実現できる。
【0057】
(3)シンプルな構造にできる。
【0058】
(4)内周エッジの近傍まで検査可能である。
【0059】
(5)ディスク12を垂直に保持するため、上方向からのクリーン空気流によるエア流を層流の状態に保ちやすく、ディスク後方の乱流を生じないのでパーティクルの付着を大幅に軽減できる。
【0060】
(6)ディスク12を垂直に保持するため、上方に配置される様々な機械構造体(メカ構造体)などから重力により落下するパーティクルの付着を回避することができる。
【0061】
(7)爪16、17、18の配置形態並びに爪材の選択により、ハンドリングロボットからのディスク受け取り安定性の向上を図ることができ、チャック時の摩擦による傷やパーティクルの発生を抑制できる。
【0062】
〔ディスク検査装置の説明〕
次に、上記したチャック装置10を用いたディスク検査装置(ディスクに付着している塵埃を検出するための検査装置)の例について説明する。
【0063】
図10は、本発明の実施形態に係るディスク検査装置の構成を示す斜視図、図11は側面図、図12は平面図である。これらの図面に示したように、このディスク検査装置100は、チャック装置10に保持されたディスク12を挟んでその両側に、カメラ102(「第1の撮像装置」に相当)、104(「第2の撮像装置」に相当)が互いに向かい合わせで配置されており、ディスク12の横方向やや斜めの位置に照明装置112、114、116、118が配置されている。符号120、122は、それぞれカメラ102、104のレンズ部である。
【0064】
照明装置112、114のペアが「第1の照明手段」に相当し、照明装置116、118のペアが「第2の照明手段」に相当する。
【0065】
なお、検査対象となるディスク12の周囲の空間は、外部からの外乱光の侵入を防止するために、検査中はカバー126で覆われる。
【0066】
カメラ102、104は、高解像度かつ電荷蓄積時間の長い撮像素子(CCDやCMOSなど)を搭載した電子撮像装置であり、本例では、電子冷却CCDカメラを用いている。
CCDはCMOSに比べて暗電流ノイズが少ない点で好ましい。また、CCDを冷却することで暗電流のノイズ成分を低減することができる。冷却温度は10℃以下であることが好ましい。温度は低いほど暗電流ノイズは減少するが、長時間の運転の際に、冷却温度を0度以下にすると氷結による問題が生じることがあるので、本例では冷却温度を1度に制御する。電荷蓄積時間は0.1秒以上とすることが好ましい。
【0067】
<照明装置の構成>
照明装置112〜118は、図13(a)に示すように、ディスク12の検査範囲(中心に対して45度の範囲のディスク上部領域)130の扇形形状と合致したパターンで照明を行うものであり、光ファイバー(「ライトガイド」に相当)132,134と、その先端に投影レンズ(不図示)を用いて照射パターン(扇形パターン)を整形し、投光部の光ファイバー132,134の端面からディスク面に対して浅い角度で斜めからパターン照明を行う(図13(b)参照)。ディスク面に対する照明光の仰角は30度以下(入射角で60度以上)であることが好ましく、本装置では仰角20度とした。
【0068】
ハードディスク用のディスク12は鏡面のため、適切な照明を行わなければ、ディスク12のエッジによる反射やブルーミング、ディスク面への写りこみ(カメラのレンズや照明光源がディスク12面に写る現象)などが起こり、高精度の検査が困難となる。
【0069】
そこで、本実施形態では、図13に示したように、検査範囲130のみに超高輝度の白色照明光(例えば、100万ルクス以上、より好ましくは200万ルクス以上)を照射し、ディスク面上の塵埃の輝度を高める一方、検査範囲130以外の不要な領域への照射を抑制することで、チャックの爪16、17、18による光の反射の抑制、ディスク12のエッジによる反射やブルーミングの抑制、並びにディスク面への写り込みを防止している。
【0070】
一般に、ディスク12の表面にはテクスチャと呼ばれる同心円状の微細な多数の線条(凹凸溝)が形成されている。本実施形態では、ディスク12に対してテクスチャの線方向(円周の接線方向)から照明光を照射する構成とする。すなわち、図13(a)の平面視でテクスチャの接線方向と平行となる照明光を照射するように照明装置112、114のペア(又は116、118)を配置する。
【0071】
また、ディスク12に対して両側から対称的に照明を行うことにより、照射領域内(照射パターン内)における輝度の均一化も図られている。なお、高輝度白色光源としては、赤外線が少なく、解像度が高い400〜550nmの光量が高いメタルハライドランプを用いることができる。
【0072】
図14は、照明装置112〜118によって照明光が照射される略扇型の照射領域の輝度分布を示す。同図における符号aで示したグラフ(二点鎖線)が照明装置112(又は116)による輝度分布を表し、符号bで示したグラフ(一点鎖線)が照明装置114(又は118)による輝度分布を表す。左右の照明装置112、114のペア(又は116と118のペア)によって照明される照射領域(扇形パターン内)の輝度分布は符号cで示すように符号aと符号bのグラフの重ね合わせとなり、全視野範囲において略一定の輝度分布となっている。
【0073】
なお、エッジ部分の検査においては、テクスチャとは別に複数の円周方向の照明が有効である。外周エッジには面取り部分が含まれており、この面取り部における塵埃の付着の有無を検査することは重要である。
【0074】
ディスク端面と面取り部分が照明でき、カメラ方向に面取り部から直接反射しない照明方向は、図15に示ように、ディスク12の円周方向に沿った方向(「外周光軸1」、「外周光軸2」)となる。また、円周方向に照明した場合、遠方側のエッジは影になるので、複数の照明(「外周光軸1」の方向と、「外周光軸2」の方向)が必要である。
【0075】
1回の撮影でカメラ102、104が撮像する領域は、図13で示した45度範囲の扇形部分である。当該領域の撮像を終えたら、ディスク12を45度回転させて、次の検査領域について撮像を行う。以後、同様にして、45度ずつ回転させながら検査領域を順次変更して撮像を行い、ディスク12の全領域について撮像を行う。
【0076】
<検査設備(システム)の説明>
図16は、ディスク検査装置を含む検査システムの構成例を示す図である。このシステム150は、カメラ102から得られる画像データの処理及びシステム全体の制御を行うコンピュータ(画像処理兼システム制御コンピュータ)152、カメラ104から得られる画像データの処理を行うコンピュータ(画像処理コンピュータ)154と、データサーバ156と、検査画像の解析処理を行うコンピュータ(解析処理コンピュータ)158とから構成される。なお、カメラ(102,104)と対応するコンピュータ(152,154)との接続手段、並びに、データサーバ156と各コンピュータ(152,154,158)との接続手段については、有線、無線を問わず、周知の通信インターフェースを用いることができる。
【0077】
画像処理兼システム制御コンピュータ152は、照明装置112〜118の制御(点灯/消灯、点灯時の照度の制御など)を行うとともに、カメラ102、104の制御(撮影タイミングや露光時間の制御など)、及びチャック装置10のモータ24の制御(ディスク12の回転による検査領域の切り替えなど)を行う。また、この画像処理兼システム制御コンピュータ152は、カメラ102から得られる画像データの一次処理(前処理)を行う。この一次処理には、検査画像と暗画像の差の情報を得るための差分処理、塵埃を強調するための非線形階調変換処理等が含まれる。
【0078】
カメラ102によって得られた検査画像の情報は、画像処理兼システム制御コンピュータ152によって一次処理され、該画像処理兼システム制御コンピュータ152からデータサーバ156へと送られて、データサーバ156上に保存される。同様に、カメラ104によって得られた検査画像の情報は、画像処理コンピュータ154によって一次処理が行われ、データサーバ156に保存される。
【0079】
解析処理コンピュータ158は、データサーバ156内に蓄積されているデータを解析する処理を行う。解析処理の例としては、記録面内領域の画像抽出、外周エッジ部の画像抽出、内周エッジ部の画像抽出、記録面内領域及び内外周のエッジ領域の領域別に各領域付着している塵埃の位置、個数、塵埃サイズの検出、ディスク全体としての塵埃付着の検査結果(合否判定など)、その他、測定解析機能として、ディスク上における塵埃の位置と塵埃のサイズを視覚的に把握容易に提示するためのマッピング機能を備える。
【0080】
上述した1視野分(45度範囲)の検査を、360度分(8枚)つなぎ合わせることにより、ディスクのどの位置にどの程度の大きさの塵埃が付着しているのかを把握することができる。解析処理コンピュータ158により、塵埃の位置、塵埃のサイズ、総個数などの情報を整理し、所定の合否判定基準との比較を行い、良/不良の判定等を行う。かかる測定結果の情報はデータサーバ156に格納される。
【0081】
なお、解析処理コンピュータ158の機能を他のコンピュータ(152や154)に搭載してもよい。
【0082】
<ソフトウエアの構成>
図17は、本例の検査システムにおける処理の流れを示す処理ブロック図である。なお、各ブロックの処理機能はソフトウエア(プログラム)によって実現される。
【0083】
まず、カメラ102(又は104)によって検査対象ディスクの撮像(1ショット;一視野分)を行い、検査対象ディスクにおける扇型の照明光照射領域(1/8ディスク領域)を含む検査画像のデジタル画像データを取り込む(#202)。
【0084】
その一方で、予めカメラ102(又は104)のレンズを覆って撮像動作を実行することによって取得した暗画像のデータを読み込み(#204)、当該暗画像に対し所定の定数を用いて輝度シフトの演算(減算)を行う(#206)。
【0085】
次いで、暗画像差分処理部(#208)において、#202のオリジナル検査画像と#204の暗画像データとを入力として、オリジナル検査画像から暗画像(暗ノイズの成分)を減算する処理(差分処理)を行う。さらに、当該差分処理後の画像データに対して、塵埃の部分を強調するために非線形塵埃強調処理部(#210)において非線形の入出力特性による変換処理(例えば、log処理)を行う。非線形塵埃強調処理部(#210)による処理後のデータは被検査画像(元画像)として保存される(#212)。
【0086】
また、当該元画像を基に、面内扇型画像抽出(#214)、外周エッジの抽出(#216)、内周エッジの抽出(#218)の各処理を実施する。
【0087】
これらの領域抽出の処理(#214〜#216)は次のようにして行う。
【0088】
まず、図18に示すように、元画像におけるディスクの外周エッジ付近の領域について処理ウインドウ160を設定し、当該処理ウインドウ160に関して周方向に沿って等間隔で複数のスキャン位置を定め、各スキャン位置で径方向に沿う直線162上をスキャンしてオブジェクトのエッジ点164を検出する。
【0089】
全てのスキャン位置についてエッジ点164を検出したら、これら検出したエッジ点164から外周円形ライン166を計算で求める。なお、このとき計算される外周円形ライン166は、図19に示すように、ディスク12の面取りされた外周端面の内側又は外側エッジ(符号12E、又は12F)の位置を計算で求めたものとなる。
【0090】
更に、この求めた外周円形ライン166から中心の位置(座標)と半径を計算して求め、ディスク形状に対応した検査領域のウインドウ(中心に対して45度範囲の扇形形状の検査ウインドウ)168を描く(図20参照)。
【0091】
図21は、上述した前処理済みの検査画像に検査ウインドウ168のラインを付加した画像例である。この検査ウインドウ168内の画像ピクセルに対して強調処理や微分処理などを行うことにより、ディスク面上の塵埃による反射(符号170A、170Bで示す画像内オブジェクト)を把握し易くなる。
【0092】
また、被検査対象物であるディスク12の設計値に基づき、扇型のウインドウ画像を図21のように、外周エッジ領域171、外側非記録面領域172、記録面領域173、内側非記録面領域174、内周エッジ領域175の5つの領域(処理ウインドウ)に区分することができる。これらの領域別に塵埃の個数などを測定できる。
【0093】
「外側非記録面領域172」、「記録面領域173」、「内側非記録面領域174」は、面内扇形画像に該当しており、当該面内扇形画像に対しては、面内粒子解析画像処理(図17の#220)が行われる。面内粒子解析画像処理(#220)は、2値化処理(#222)と粒子解析処理(#224)を含んで構成される。
【0094】
2値化処理(#222)は、画像信号のデジタル値(階調値)を所定の閾値と比較し、閾値よりも高輝度の部分を抽出する処理である。ディスク面内に塵埃があると、その塵埃によって照明光が散乱するため、塵埃の大きさに応じた輝点として画像内に映る。検出すべき塵埃のレベルに合わせて予め設定された閾値との比較により、塵埃を検知できる。この2値化処理により、塵埃に対応するピクセル(処理対象)が分離される。この2値化処理(#222)で得られた同じ輝度レベルのピクセルの結合した領域やグループのオブジェクトが「粒子」として定義される。
【0095】
粒子解析処理(#224)は、画像の粒子に関する情報を生成する解析関数を備え、粒子の位置、形状、大きさ、個数などの情報を取得する。粒子解析処理(#224)で得られた各項目の測定値のデータは測定データ(#226)としてファイルに保存される。
【0096】
一方、「外周エッジ領域」と「内周エッジ領域」は、エッジ領域に特有の課題に対応したエッジ粒子解析画像処理(#230)が行われる。すなわち、ディスクのエッジ部は、面取り部の反射や、蒸着欠陥、傷など、塵埃以外の要因が含まれているため、エッジ領域については塵埃以外の要因と塵埃(粒子)を分離し、塵埃のみを検出するための処理が行われる。内側エッジ処理は爪(16,17,18)の有無により切り替えることで、爪(16,17,18)の無い部分のみ検査を行う。
【0097】
エッジ粒子解析画像処理(#230)は、加算処理(#232)、モフォロジー処理(#234),円形粒子分離処理(#236)、及び粒子解析処理(#238)を含んで構成される。
【0098】
加算処理(#232)は、外周エッジ領域の情報と内周エッジ領域の情報とを重ね合わせる処理を行う。
【0099】
モフォロジー処理(#234)は、画像間演算によって図形を変形する処理であり、ここでは、縮小→拡大の順序で処理を行う。面取り部の反射や蒸着欠陥などの傷に起因する画像部分は、エッジラインに沿った細長い帯状線であるのに対し、塵埃(粒子)に起因する画像部分は、個々の塵埃を反映して概ね円形状であるか、複数の塵埃が近接して付着している場合には各塵埃に対応する円形状が部分的に重なり合って連続する形状(数珠つなぎの形状)となる。よって、モフォロジー処理(縮小→拡大)により、面取り部の反射や蒸着欠陥などの傷に起因する画像部分は雑音成分として除去され、塵埃(粒子)による画像部分が強調されて残ることになる。なお、モフォロジー処理に代えて、又はこれと組み合わせて「縦横比」を判断する処理などを使用してもよい。
【0100】
円形粒子分離処理(#236)は、モフォロジー処理(#234)後のデータから円形粒子を分離するフィルタであり、太さが変化する数珠つながりの画像部のくびれ部分でオブジェクトを分離する処理と、個々の分離オブジェクトの円形度などから円形粒子を検出する円形検出の処理を含む。
【0101】
粒子解析処理(#238)は、オブジェクト分離された円形粒子に関する情報を生成する解析関数を備え、粒子の位置、形状、大きさ、個数などの情報を取得する。粒子解析処理(#238)で得られた各項目の測定値のデータはエッジデータ(#240)としてファイルに保存される。
【0102】
面内粒子解析画像処理(#220)の2値化処理(#222)で得られた粒子の画像と、エッジ粒子解析画像処理(#230)のオブジェクト分離処理(#236)で得られた粒子の画像とを加算処理(#250)にて重ね合わせると共に、粒子解析処理(#224、#238)にて得られた測定結果の文字情報(数値ラベル)を画面上の各粒子に割り当てて合成し(#252)、検査結果としてモニタ表示を行う(#254)。この測定結果がマッピングされた画像は、マッピング画像としてファイルに保存される(#256)。
【0103】
図22に検査結果の画像例を示す。粒子(塵埃)に付される数値ラベルは、粒子のサイズを示している。粒子サイズが許容範囲内の値であるか否か、また、粒子の付着位置などによって表示色を異ならせることが好ましい。塵埃の付着位置がエッジ領域であるか、面内領域であるかによって許容される粒子サイズが異なる設定でもよい。
【0104】
例えば、青色の数値ラベルはエッジ領域における測定結果を示す。緑色の数値ラベルは面内領域における許容範囲内(OK時)の測定結果を示す。赤色の数値ラベルは、許容範囲を超える不良判定時(NG時)の測定結果を示す。
【0105】
このような45度範囲の扇形検査領域の測定結果を360度分(8枚)つなぎ合わせることにより、図23のように、ディスク全面の測定結果を表示させることができる。
【0106】
<システムの制御例>
図24は、2台のコンピュータを用いて本システムを制御する例を示すフローチャートである。図24の左側に示したメインPCの処理は、図16中の符号152で示したコンピュータに対応しており、ディスク12の第1の面(例えば、表面)の検査を担う。また、図24の右側に示したサブPCの処理は、図16中の符号154で示したコンピュータに対応しており、ディスク12の第2の面(例えば、裏面)の検査を担う。
【0107】
本例では、画像転送及び画像処理の負荷を考慮して、表面検査用と裏面検査用の2台のコンピュータを用いて処理を交互に実行する例を述べるが、処理速度及び処理能力の高い1台のコンピュータによって、これら2台分の処理を実現することも可能である。
【0108】
図24に示すとおり、メインPCとサブPCのそれぞれを起動し(ステップS310、S410)、初期化(ステップS312、S412)を行った後、ネットワーク接続を確立する(ステップS314、S414)。
【0109】
次に、チャック装置10と各カメラ102、104との連携による検査機の動作確認を行う(ステップS316、S416)。この動作確認は予め定められているプログラムにしたがって所定の確認項目について自動的に行っても良いし、必要に応じてオペレータが数値入力などの操作を行っても良い。
【0110】
動作確認の処理に基づき検査機の動作が正常であるか否かが判断され(ステップS318、S418)、異常が確認されたら、所定の対処処理(異常処理)を行う(ステップS320、S420)。その一方で、動作が正常であることが確認されたら、自動検査の処理(ステップS322、S422)を開始する。
【0111】
詳細は後述するが、本例では、ディスク表面の撮像と、ディスク裏面の撮像とが交互に行われる。最初にメインPCによる1枚目の撮像が行われ、当該撮像後にメインPCからサブPCに対して検査開始の指令が送られ、これを受けたサブPCによって裏面の撮像が実行される。サブPCによる撮像及びその検査(画像解析処理)が終わると、当該検査結果がメインPCへと送られる。また、メインPCが処理した画像データ(被検査画像データ及びマッピング画像データ)は、サーバコンピュータに送られ、当該サーバコンピュータの記憶領域に保存される(ステップS324、S424)。
【0112】
表面及び裏面それぞれについて画像データを取得した後、チャック装置を回転駆動してディスク12を45度回転させて停止させ、上記同様に、表、裏の撮像を行い、それぞれの検査画像を解析する。こうして、ディスクを45度ずつ回転させながら、0度位置、45度位置、90度位置、135度位置、180度位置、225度位置、270度位置、315度位置の各停止位置で表裏の撮像を行い、1枚のディスクにつき、片面8枚、両面で16枚の画像データ(扇型画像)を取得する。
【0113】
全ての検査が終了したら、終了処理を行い(ステップS326、S426)、処理を終了する(ステップS330、S430)。
【0114】
次に、自動検査の処理について説明する。
【0115】
図25〜図26は自動検査の処理手順を示したフローチャートである。各図の中央のフローがメインPCによって実行されるシステムの制御フローであり、左側のフローは第1カメラ(図10の符号102に相当、「1カメ」と略記する。)の撮像及び画像処理のフロー、右側のフローは第2カメラ(図10の符号104に相当、「2カメ」と略記する。)の撮像及び画像処理のフローである。なお、本システムではメインPCがシステムの制御と1カメの処理を担う。また、2カメの処理はサブPCが担う。
【0116】
自動検査の処理がスタートすると(ステップS510)、まず、温度確認を行い(ステップS512)、前回検査データをクリアする(ステップS514)。次いで1カメ側の照明装置のペア(「照明1」と略記する。)を点灯(ON)させ、2カメ側の照明装置のペア(「照明2」と略記する。)を消灯(OFF)する(ステップS516)。所定時間(例えば、500ms)待機後に、1カメ及び2カメの起動を行い(ステップS518)、1カメに対して撮像実行の指示を与える(ステップS520)。このとき、サーバでは1カメ、2カメの専用のフォルダを作成し、検査画像の保存に備える。フォルダ名は、例えば、「サンプル名+追い番+1cam」、「サンプル名+追い番+2cam」として自動生成される。
【0117】
ステップS520の撮像指示に基づき、1カメによって0度位置(チャック装置のディスク回転制御を行うときの初期位置)の撮像を実行する(ステップS610)。1カメで撮像された画像のデータはコンピュータ(ここではメインPCが兼ねる)に転送される(ステップS612)。本例では、転送時間として2.2秒を確保する。
【0118】
コンピュータは、取り込んだ撮像画像について、図17で説明したソフトウエアによって画像処理を行い(図25のステップS614)、検査結果を画面内に合成する処理を行う(ステップS616)。こうして得られた検査結果のマッピング画像と被検査画像(元画像)をサーバの専用フォルダに保存する(ステップS618)。
【0119】
ファイル名は「サンプル名+追い番+(X,Θ)」として自動生成される。ここで(X,Θ)の「X」は1カメ、2カメの区別を示す変数であり、1カメによる画像はX=1、2カメによる画像はX=2とする。「Θ」はディスクの撮影位置(チャックによる回転位置)を特定する変数であり、Θ=0deg,45deg,90deg,…315degの8種類となる。図では、1カメによる画像を「画像1」と表記し、2カメによる画像を「画像2」と表記している。
【0120】
ステップS520にて1カメ撮像の指示を出力し、1カメによる撮像を実行した後、所定時間(例えば、500ms)待機後に、照明1をOFFし、照明2をONする(ステップS522)。そして所定時間(例えば、500ms)待機後に、2カメに対して撮像実行の指示を与える(ステップS524)。
【0121】
この撮像指示に基づき、2カメによって0度位置の撮像を実行する(ステップS710)。2カメで撮像された画像のデータはコンピュータ(ここではサブPC)に転送される(ステップS712)。本例では、転送時間として2.2秒を確保する。
【0122】
コンピュータは、取り込んだ撮像画像について、図17で説明したソフトウエアによって画像処理を行い(図25のステップS714)、検査結果を画面内に合成する処理を行う(ステップS716)。こうして得られた検査結果のマッピング画像と被検査画像(元画像)をサーバの専用フォルダに保存する(ステップS718)。
【0123】
ステップS524にて2カメ撮像の指示を出力し、2カメによる撮像を実行した後、所定時間(例えば、500ms)待機後に、照明1をONし、照明2をOFFする(ステップS526)とともに、チャック装置のモータを駆動して、45度位置へ回転させる(ステップS528)。モータ回転中に45度位置への到着を監視し(ステップS530)、所定位置への到着が確認されたらモータを停止する。
【0124】
その後、図26のステップS540へ進み、1カメに対して撮像実行の指示を与える(ステップS540)。
【0125】
このステップS540の撮像指示に基づき、1カメによって45度位置の撮像を実行する(ステップS620)。その後の所定の処理(ステップS622〜628)を経て、当該45度位置における検査結果のマッピング画像と被検査画像(元画像)をサーバの専用フォルダに保存する(ステップS628)。なお、ステップS622〜628の処理は、図25で説明したステップS612〜S618と同様であるため説明は省略する。
【0126】
図26のステップS540にて1カメ撮像の指示を出力し、1カメによる撮像を実行した後、所定時間(例えば、500ms)待機後に、照明1をOFFし、照明2をONする(ステップS542)。そして所定時間(例えば、500ms)待機後に、2カメに対して撮像実行の指示を与える(ステップS544)。
【0127】
この撮像指示に基づき、2カメによって45度位置の撮像を実行する(ステップS720)。その後の所定の処理(ステップS722〜728)を経て、当該45度位置における検査結果のマッピング画像と被検査画像(元画像)をサーバの専用フォルダに保存する(ステップS728)。なお、ステップS722〜728の処理は、図25で説明したステップS712〜S718と同様であるため説明は省略する。
【0128】
図26のステップS544にて2カメ撮像の指示を出力し、2カメによる撮像を実行した後、所定時間(例えば、500ms)待機後に、照明1をONし、照明2をOFFする(ステップS546)とともに、チャック装置のモータを駆動して、90度位置へ回転させる(ステップS548)。モータ回転中に90度位置への到着を監視し(ステップS550)、所定位置への到着が確認されたらモータを停止する。
【0129】
以後の動作について説明は省略するが、上述と同様に、1カメの撮像と2カメの撮像を交互に行い、135度位置、180度位置、225度位置、270度位置、315度位置の各位置で画像の取得と、各画像の解析による検査を行う。こうして、同様の処理が繰り返され、315度位置での撮像と画像の保存(ステップS688、S788)を終えたら、照明1及び照明2をともにOFFにする(ステップS566)。
【0130】
そして、チャック装置のモータを駆動して、0度位置へ回転させる(ステップS568)。モータ回転中に0度位置への到着を監視し(ステップS570)、所定位置への到着が確認されたらモータを停止する。
【0131】
こうして、表裏それぞれ8枚、合計16枚の検査画像を総合判定して、検査の合否(OK/NG)を判断する(ステップS572)。合否の基準は、オペレータがキーボード等の入力装置から適宜設定・変更することが可能であり、当該設定された合否基準に基づき、プログラムにしたがって検査結果が自動的に判定され、その判定結果が報知(ディスプレイに表示等)される。また、この判定結果を利用することで検査NGのディスクと検査OKのディスクとを自動的に分別するように選別装置を制御することもできる。
【0132】
<ディスク検査のフロー>
図27は、本実施形態に係るディスク検査の処理手順を示したフローチャートである。
【0133】
被検査対象のディスクをCCDカメラで撮像し(ステップS800)、取り込んだ画像のデータをCCDカメラからコンピュータ(PC)へと転送する(ステップS802)。
【0134】
コンピュータは、この取り込んだ画像から、まず、エッジサーチ処理を行う(ステップS804)。エッジサーチ処理は、ディスクの縁位置(外周エッジ位置)を検出する演算処理であり、このエッジサーチ処理によってエッジ位置が見つかれば(ステップS806でYES)、これを基にマスクウインドウを計算してウインドウ(検査ウインドウ)を設定する(ステップS808)。
【0135】
その一方、エッジサーチ処理にてエッジ位置が検出されず、ステップ806のエッジ位置判定にて「NO」判定となった場合は、サーチNGフラグをONに設定し、デフォルトマスクを適用する(ステップS807)。
【0136】
次いで、取り込んだ生画像からCCDの各画素(受光セル)の持つ暗ノイズを除去する処理を行う(ステップS810)。予め真っ黒な画像を取り込んで暗ノイズデータを取得しておき、検査画像(生画像)から当該暗ノイズデータとの差をとることにより、暗ノイズ成分を除去する。
【0137】
こうして得られた画像から「記録面(サーボ信号等が書き込まれる記録領域)」、「非記録内周領域」、「非記録外周領域」、「外周エッジ領域」、「内周エッジ領域」のそれぞれに対応する5つのウインドウに分離する処理を行う(ステップS812)。各領域はそれぞれ、図21で説明した「記録面領域173」、「内側非記録面領域174」、「外側非記録面領域172」、「外周エッジ領域171」、「内周エッジ領域175」に相当するものである。
【0138】
このウインドウ分離処理では、検査対象たるハードディスクのスペック(仕様)の情報を利用する。ハードディスクの内径R1、外径R2、記録領域はディスク中心から半径Ra〜Rbの範囲の仕様であるとする(R1<Ra<Rb<R2)。また、非記録内周領域はディスク中心から半径Rc〜Raの範囲、非記録外周領域はディスク中心から半径Rb〜Rdの範囲であるとする(R1<Rc<Ra<Rb<Rd<R2)。
【0139】
このようなスペック情報を取得する手段としては、コンピュータのキーボードやマウス等の入力装置からオペレータが手入力によって入力してもよいし、予め複数種類のディスクに対応した複数の仕様情報をコンピュータの記憶装置内に記憶させておき、検査時に該当するスペック(ディスクの種類)を選択する態様や、メモリカード等の記憶媒体から読み込む態様なども可能である。
【0140】
かかるスペック情報を参照して、取り込んだ画像に対して、ディスク中心から半径Ra〜Rbの範囲を「記録面ウインドウ」、半径Rc〜Raの範囲を「非記録内周ウインドウ」、半径Rb〜Rdの範囲を非記録外周ウインドウ、半径Rd〜Reの範囲を「外周エッジウインドウ」、半径Rf〜Rcの範囲を「内周エッジウインドウ」として設定する。ただし、ReはR2<Reを満たす所定の値であり、RfはRf<R1を満たす所定の値である。
【0141】
例えば、外径2.5インチのディスク(R1=10mm、R2=32.5mm)の場合、Ra=15mm、Rb=30mm、Re=33.0mm、Rf=9.5mmのように定められる。
【0142】
こうして5つのウインドウに分割され、各ウインドウについて処理が分岐する。以下、記録面ウインドウの処理ルーチン(ステップS820)、非記録内周ウインドウの処理ルーチン(ステップS830)、非記録外周ウインドウの処理ルーチン(ステップS840)、外周エッジウインドウの処理ルーチン(ステップS850)、内周エッジウインドウの処理ルーチン(ステップS860)、及び保存用の処理ルーチン(S880)について説明する。
【0143】
<記録面ウインドウについて>
記録面部分の画像は、必要に応じて明るさ補正(ステップS821)を行った後、非線形強調処理(ステップS822)を行い、2次元微分処理を行う(ステップS823)。なお、明るさ補正処理(ステップS821)は省略することができる。2次元微分処理(ステップS823)では、閾値の設定により、緩やかな輝度差を除去することでテクスチャや写り込みによる成分を分離することができる。
【0144】
こうして2次元微分処理(ステップS823)によって得られたデータと、微分処理前の非線形強調処理(ステップS822)で得られたデータと加算して(ステップS824)、2値化処理を行う(ステップS825)。
【0145】
その後、当該2値化画像について塵埃探索を行う(ステップS826)。ここでいう塵埃探索処理(ステップS826)は、図17で説明した粒子解析(#224)の処理に相当するものである。
【0146】
こうして、粒子の位置、形状、大きさ、個数の情報を取得し、許容範囲内(OK)であるか、許容範囲を超える不良(NG)レベルであるか否かの判定が行われる(図27のステップS828)。
【0147】
<非記録内周ウインドウ及び非記録外周ウインドウについて>
非記録内周領域及び非記録外周領域に対応する部分の画像については、それぞれ2値化処理(ステップS834)を行った後に塵埃探索を行い(ステップS836)、得られた情報から、許容範囲内(OK)であるか、許容範囲を超える不良(NG)レベルであるか否かの判定が行われる(ステップS838)。具体的な処理内容はステップS826〜S828と同様である。なお、図中の符号S832で示す工程は、入力信号を切り替えることを表している。
【0148】
<外周エッジウインドウについて>
外周エッジ部は、図17の#234で説明したように、モフォロジー処理(図27のステップS852)を行った後、形状認識処理(ステップS853)を行う。この形状認識処理(ステップS853)は、図14で説明したオブジェクト分離(円形粒子分離)処理(#236)に相当しており、例えば、楕円率(縦横比)を計算し、円形に近いものは塵埃と判断し、長細い形状のものは傷や蒸着欠陥と判断する。
【0149】
モフォロジー処理により画素を分離できたもの(塵埃)と、分離できないもの(画素が複数つながっているもの、つまり、傷や蒸着欠陥など)を分離した後、塵埃情報のみを残し、傷(欠陥)情報は除去する(ステップS854)。
【0150】
こうして、塵埃情報を含んだ画像について2値化を行い(ステップS855)、この2値化画像について塵埃探索(ステップS856)と判定を行う(ステップS858)。塵埃探索処理(ステップS856)は、図17で説明した粒子解析(#224)の処理に相当するものであり、判定処理(ステップS858)は、ステップS828、S838と同様である。
【0151】
<内周エッジウインドウについて>
内周エッジ部については、チャック装置10における爪16,17,18と同じ角度位置の画像であるか否かを判定し(ステップS862)、爪角度と一致していない場合(ステップS862にてNO判定時)についてのみ外周エッジ部と同様の処理(ステップS852〜S858)を行う。爪角度と一致している場合(ステップS840にてYES判定時)は、内周エッジの塵埃解析処理をスキップする。(ステップS864)。
【0152】
以上のように、各処理ウインドウについての塵埃探索とその判定結果を総合し(ステップS870)、その結果について、モニタ上に検査結果を表示することができる(ステップS872)。
【0153】
結果表示については、画像処理エンジンで検査画像へのオーバレイ表示を行う。すなわち、取り込み画像についてネガポジ反転処理を行い、これに塵埃位置をプロットし、塵埃のサイズを明示したラベルを付す。CCDカメラからの取り込み画像は黒背景に塵埃の輝点が白く光る画像であるため、検査結果のモニタ表示においては、取り込み画像をネガポジ反転させ、白の背景に黒の塵埃点の画像とする。そして、この反転画像上に、塵埃探索(ステップS826,S836,S856)で検出した塵埃の位置をプロット処理し、併せて、各塵埃の大きさを示す数値を付す。領域毎に予め定められた許容範囲内の塵埃サイズであれば、緑色又は青色のラベルを付し、許容範囲を超えるサイズの塵埃に対しては赤色のラベルを付す(図22参照)。
【0154】
こうして、塵埃情報のオーバレイ表示を加えたマッピング画像をコンピュータのディスプレイその他の表示手段にモニタ出力するとともに、画像ファイルとして保存する一方(ステップS876)、塵埃の位置及びサイズをテキストテータとして別ファイルに保存する。
【0155】
また、ステップS812において各ウインドウ分離の処理を行った際に、その元画像も保存用として画像ファイルに保存される(ステップS882)。
【0156】
本実施形態によるディスク検査装置100によれば、次のような利点がある。
【0157】
(1)最小検出能力0.1μmを達成できる。
【0158】
(2)ディスクの持ち替え(反転など)を行わず、両面同時検査が可能である。
【0159】
(3)記録面内のみならず、外周エッジ領域、内周エッジ領域についても、塵埃の付着を検査することができる。
【0160】
(4)記録面への写り込みや、ディスクのエッジやチャック装置10の爪による光の異常反射が抑制される。
【0161】
(5)ハードディスクにおける平面部とエッジ部との感度差の影響を回避することができる。ハードディスク上に付着した塵埃を撮像画像から検出する際の感度は、エッジよりも平面部の方が100倍程度高く、共通の閾値レベル設定だけでは、平面部又はエッジ部の何れか一方のみしか対応できないが、本実施形態によれば、検査画像を5つの領域に分割し、各領域について適切な画像処理を施すため、平面部及びエッジ部を同時に検査することができる。
【0162】
(6)400万画素程度の安価なCCDカメラを用いてディスク1/8領域(2.5インチディスクで約30mm角相当)を1回の撮像で検査することができる。通常、検出対象が面内上塵埃でサブμmの欠陥を1画素分に割り当てると、CCDの分解能から4mm角のエリアしか検出できない。これに対し、本実施形態によれば、撮像した画像を非線形強調及び2次元微分により強調処理を行った後、高輝度生画像と重ね合わせ2値化し、欠陥を浮かび上がらせる構成を採用したため、撮像素子の分解能よりも微細な塵埃を検出することができる。
【0163】
(7)記録面について2次元微分処理を行い、規定の閾値よりも小さい値を除去するなど、適宜の閾値の設定によって、緩やかな輝度差を除去することができる。これにより、ディスク表面のテクスチャによる余計な反射や、ディスク表面が鏡面であることによるレンズ等の背景の写り込みが塵埃検出上のノイズとなる現象を回避することができる。
【0164】
(8)エッジ部についてモフォロジー処理と形状認識処理とを組み合わせたアルゴリズムを適用したことにより、エッジ上の塵埃以外の傷、蒸着抜けといった欠陥を付着塵埃と分離することができる。
【0165】
(9)16ビットの画像データを処理することにより、一般的な8ビットの微細な塵埃情報を抽出することができる。
【0166】
(10)検査画像(生画像)を反転処理し、これに塵埃位置をプロットして、粒子サイズに応じたラベル付けを行い、検査結果をモニタ上に表示する構成にしたので、検査中にモニタ上で塵埃位置とそのサイズを目視判別できる。
【0167】
本実施形態によるディスク検査装置100による検査工程は、例えば、ハードディスク装置の磁気ディスクに、トラック位置決めのためのサーボ信号や、そのトラックのアドレス情報信号、再生クロック信号等のサーボ情報を記録するための磁気転写工程の前に行われる。
【0168】
磁気転写工程は、磁性体の微細凹凸パターンにより転写情報を担持したマスターディスク(転写原盤)と、転写を受ける磁気記録層(磁性層)を有するスレーブディスク(被転写体)とを密着させた状態で転写用磁界を印加することにより、マスターディスクの磁化パターン対応するフォーマット情報やアドレス情報が書き込まれているマスターディスクより一括転写する方法である。ディスクに塵埃が付着していると、転写不良となったり、マスターディスクの表面に傷等を発生させてしまったりするという問題がある。
【0169】
したがって、転写を行う前のスレーブディスクについて、本例のディスク検査装置を用いて塵埃の付着の有無を検査し、この検査によって塵埃の付着が確認されたスレーブディスクを製造工程から排斥する(検査合格したもののみを選別する)ことが望ましい。また、塵埃の位置、大きさが特定できるため、ポイントを絞ったクリーニングを行い、再利用することも可能である。更に、検査の直後に行えば、再検査も容易に行える。
【0170】
上述の実施形態では、本発明によるチャック装置を検査工程に用いる例を述べたが、検査工程に限らず、ディスクのクリーニング工程など、他の工程にも利用できる。例えば、本発明によるチャック装置をクリーニング工程において利用すると、垂直姿勢でディスクを保持することから、塵埃の付着を防止でき、ディスクの両面を容易にクリーニングできる。この場合のクリーニング方法としては、エア流や吸引の他、不織布等によるワイプ法やヘッドを使ったヘッドバーニッシュ法などがある。
【0171】
もちろん、本発明の適用範囲は上述の例に限定されず、ディスクの種類によらず、様々な分野に適用可能である。
【0172】
また、上述の実施形態では、コンピュータ(PC)を用いたシステム構成(図16)を例示したが、本発明の実施に際しては、マイコンを使用してROM(Read Only Memory)等に格納した検査機能のプログラムによって制御する形態も可能である。
【0173】
〔付記〕
本明細書はディスクの保持手段として好適な以下に示すチャック装置の発明の開示を含んでいる。
【0174】
(発明1):中心部に孔が形成されているディスクを保持するチャック装置であって、保持対象となるディスクに形成されている孔に挿入される複数の爪と、前記複数の爪のうち少なくとも1つを前記挿入される孔の外側に向かって付勢する付勢手段と、を有し、前記付勢手段によって前記複数の爪の外周部を前記ディスクの孔の周縁に加圧接触させることにより前記ディスクを垂直姿勢で保持することを特徴とするチャック装置。
【0175】
この発明1によれば、爪の外周部をディスク内周面に接触させることにより、ディスクを垂直姿勢で保持するため、ディスクの持ち替え(反転)なく、両面の同時検査が可能となる。また、重力によるパーティクルの付着を回避することも可能である。更に、クリーンエアのダウンフローが乱れず、ディスク周辺のクリーン度を保つことができる。
【0176】
(発明2):前記複数の爪が取り付けられているチャック本体の外径は、前記ディスクの孔径より小さいことを特徴とする発明1記載のチャック装置。
【0177】
かかる態様によれば、ディスクチャック状態でディスク面に垂直な方向から見たとき、ディスクの孔の内側にチャック本体が収容されることになるため、ディスク両面について、内周エッジの近傍まで影にならずに観察(検査)可能である。
【0178】
(発明3):前記複数の爪が取り付けられているチャック本体はスピンドルに固定されており、前記垂直姿勢で保持したディスクを回転可能であることを特徴とする発明1又は2記載のチャック装置。
【0179】
かかる態様によれば、ディスクを回転させながら、ディスクの全面を検査することができる。
【0180】
(発明4):前記複数の爪のうち少なくとも1つは、前記挿入される孔の内側に向かって移動可能な可動機構を介して取り付けられていることを特徴とする発明1乃至3の何れか1項に記載のチャック装置。
【0181】
この場合、前記可動機構の摺動部は、前記加圧接触によって保持されるディスクから該ディスクの(外周半径−内周半径)以上離れた位置に設けられていることが望ましく、外周半径以上離れた位置とすることがより望ましい。これにより、摺動部から発生するパーティクルのディスクへの付着を抑制することができる。
【0182】
(発明5):前記可動機構の摺動部は、前記加圧接触によって保持されるディスクから該ディスクの(外周半径−内周半径)以上離れた位置に設けられていることを特徴とする発明4記載のチャック装置。
【0183】
(発明6):前記付勢手段は、受動型ばねであることを特徴とする発明1乃至5の何れか1項に記載のチャック装置。
【0184】
チャック付勢力を与える手段として、金属、樹脂、エア、磁気等の受動型ばねを、チャク本体に内蔵する態様が好ましい。かかる態様によれば、外から力を加えずに、ディスクを保持することができる。
【0185】
(発明7):前記付勢手段の付勢力に抗して、前記複数の爪のうち少なくとも1つを前記挿入される孔の内側に向かって移動させる爪駆動手段を備え、前記孔に対する前記複数の爪の挿入時、又は前記加圧接触を解除する時に前記爪駆動手段により前記複数の爪のうち少なくとも1つを該孔の内側に向かって移動させることを特徴とする発明1乃至6の何れか1項に記載のチャック装置。
【0186】
(発明8):前記爪駆動手段は、前記複数の爪が取り付けられているチャック本体から離れた外部に設けられていることを特徴とする発明7記載のチャック装置。
【0187】
(発明9):前記爪は、ポリベンゾイミダゾールで製作されていることを特徴とする発明1乃至8の何れか1項に記載のチャック装置。
【0188】
ポリベンゾイミダゾールは、耐磨耗性摺動性が高く、パーティクルの発生を抑制できるとともに、無添加で低反射特性があるため、光学的検査への悪影響(写り込みなど)を回避できる。なお、ポリイミドやポリイミドアミドも耐磨耗性が高いが、摺動性、低反射性とするにはカーボン添加を要し、パーティクルの増加がある。
【0189】
(発明10):前記爪は、前記ディスクの孔の周縁に対応した円弧形状の外周部を有し、ディスク保持の状態において前記ディスクの両面の平面部分に接触せず、前記ディスクの孔の周縁に接触するのみで前記ディスクを保持することを特徴とする発明1乃至9の何れか1項に記載のチャック装置。
【0190】
かかる態様によれば、ディスク面(平面部分)へのパーティクルの付着が抑制されるとともに、ほぼ全平面部の検査が可能となる。
【0191】
(発明11):前記複数の爪として、2つの固定爪と1つの可動爪が同一円周上に配置され、中心から前記2つの固定爪の位置を見込む角は、前記中心から前記可動爪の位置と前記固定爪の位置を見込む角よりも小さいことを特徴とする発明1乃至10の何れか1項に記載のチャック装置。
【0192】
(発明12):当該チャック装置にディスクを取り付ける際、または、当該チャック装置からディスクを取り外す際に、前記2つの固定爪は同じ高さに位置し、前記可動爪は前記2つの固定爪よりも下方に位置することを特徴とする発明11に記載のチャック装置。
【0193】
かかる態様より、ディスク保持の安定性向上を図ることができ、チャック時の摩擦による傷やパーティクルの発生の抑制も達成できる。
【図面の簡単な説明】
【0194】
【図1】本発明の実施形態に係るチャック装置の斜視図
【図2】図1に示したチャック装置の側面図
【図3】可動爪の駆動機構を示した要部拡大図
【図4】図1に示したチャック装置の背面図
【図5】チャック本体の斜視図
【図6】チャック時における可動爪部分の拡大図
【図7】爪の外周面に形成される溝の他の形態例を示す図
【図8】図5のB矢視図
【図9】ディスクのチャック状態を示す断面図
【図10】ディスク検査装置の構成例を示す斜視図
【図11】図10に示したディスク検査装置の側面図
【図12】図10に示したディスク検査装置の平面図
【図13】ディスク検査装置に用いられる照明装置の説明図
【図14】照明光パターンの輝度分布を示す図
【図15】ディスクのエッジ部の照明方法を説明するために用いた説明図
【図16】ディスク検査装置を含む検査システムの構成図
【図17】本例の検査システムにおける処理の流れを示す処理ブロック図
【図18】検査画像から外周円形ラインを求める演算の説明図
【図19】ディスクの外周部分の拡大側面図
【図20】強調処理を施したウインドウ画像の例を示す図
【図21】検査画像における領域別の処理ウインドウの区分例を示す図
【図22】測定結果の画像例(1検査画像分)を示す図
【図23】測定結果の画像例(1ディスク片面全体)を示す図
【図24】検査システムの制御例を示すフローチャート
【図25】自動検査処理の手順を示すフローチャート
【図26】自動検査処理の手順を示すフローチャート
【図27】本実施形態に係るディスク検査の処理手順を示したフローチャート
【符号の説明】
【0195】
10…チャック装置、12…ディスク、14…孔、16,17…爪(固定爪)、18…爪(可動爪)、20…チャック本体、24…モータ、30…スピンドル、34…アーム、36…回動軸、38…バネ部材、40…シリンダ、42…ロッド、100…ディスク検査装置、102,104…カメラ、112,114,116,118…照明装置、132,134…光ファイバー、152…コンピュータ(画像処理兼システム制御コンピュータ)、154…コンピュータ(画像処理コンピュータ)、156…データサーバ、158…コンピュータ(解析処理コンピュータ)
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハードディスク装置に用いられる磁気ディスクの表面及び端面の汚染状態を検査するのに好適なハードディスク検査装置及び方法並びにプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ハードディスク装置はますます記録密度が向上し、ヘッド浮上量も限りなく小さくなってきている。そのため微小なパーティクルであってもドロップアウトの原因となるばかりか、パーティクルがヘッドに噛みこみデータを損傷させる恐れも大きくなっている。さらに、記録面ばかりでなく、ディスク内周面や外周面のパーティクルも移動することによって前記の障害を起こす恐れがある。特にエッジ部分は搬送用ケースやハンドリング治具、設備のチャック等と接触することが避けられず、また角を持つことからパーティクルの発生源でもあり、それらは容易に移動することから障害発生要因となりやすい。
【0003】
また、磁気ディスクに予めサーボ信号等の情報を書き込む磁気転写技術においては、マスターディスク(転写原盤)とスレーブディスク(被転写用磁気ディスク)とを密着させる必要があるが、ディスク間に塵埃があると転写不良となる。この塵埃は、スレーブディスクの製造時や搬送時等に発生したものが当該スレーブディスクに付着して持ち込まれるものがある。このようにディスクに付着してくる塵埃については、転写工程の前に塵埃の有無を検査し、塵埃が付着しているディスクを排除することが望ましい。
【0004】
従来、ハードディスク装置に使用される磁気ディスクは、その製造工程において表面の欠陥やパーティクルの付着の有無などについて検査が行われ、レーザを使用した検査装置(特許文献1)やCCD等の撮像カメラを使用した検査装置(特許文献2,3)が実用化されている。
【特許文献1】特開2000−9453号公報
【特許文献2】特開2000−162146号公報
【特許文献3】特開平6−148088号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1は、ハードディスクの外周端面(エッジ)のみを検査する端面専用検査機に関する内容であり、同文献1に記載された装置では、ディスクの面内及び内周端面の検査ができない。面内及び内周端面(エッジ)について検査するためには、それぞれ別の検査機を設ける必要がある。また、特許文献1に記載の技術は、ディスク端面に照射したレーザ光の正反射方向の強度と、分割反射体内面での拡散反射の強度を測定するものであり、当該測定情報からディスク端面の傷など影響が少ない欠陥と、塵埃(影響が大きいもの)との分離が十分ではなく、さらに、当該技術の測定原理上、エッジ部の様子を反映した画像を得るものではないため測定結果の検証が困難である。
【0006】
一方、引用文献2,3は、ディスク片面の平面部(記録面内)のみを検査するものであり、エッジまたはエッジ近傍の検査を行うことはできない。
【0007】
上記特許文献1〜3に開示されたいずれの装置においても、ディスクの面内とエッジ部を同時に検査することはできず、また1台でディスクの両面及び端面を同時に検査することはできない。
【0008】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、ハードディスクの表面(記録面部分)及び端面(エッジ部)の同時検査や両面の同時検査に好適なディスク検査装置及び方法並びにかかる機能をコンピュータによって実現するためのプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するために本発明に係るディスク検査装置は、ハードディスクのエッジを含んだディスク表面の所定形状の検査領域部分を視野内に含み、当該検査領域部分からの反射光を撮像する撮像手段と、前記撮像手段によって取得された取り込み画像から前記ハードディスクのエッジ位置を検出する処理を行うエッジ検出処理手段と、当該検査対象のハードディスクの内径、外径及び記録面領域の範囲を規定する仕様情報を取得する情報取得手段と、前記エッジ検出処理手段により検出したエッジ位置と前記情報取得手段によって取得した仕様情報に基づき、前記取り込み画像を、記録面領域、非記録内周領域、非記録外周領域、外周エッジ領域、内周エッジ領域の各領域に対応したウインドウに分離するウインドウ分離手段と、前記ウインドウ分離手段により分離された領域ごとにデータ処理を行い、各領域について塵埃の位置及び大きさの情報を得る画像解析手段と、前記画像解析手段で得た結果をモニタ画面上に表示させる表示制御手段と、を備えたことを特徴とする。
【0010】
本発明によれば、ハードディスクの平面部及びエッジ部を同時に検査することができ、検査効率の向上を達成できる。また、ディスク上における塵埃の位置をモニタ上で目視判別することが可能である。
【0011】
本発明の一態様に係るハードディスク検査装置によれば、前記画像解析手段は、前記記録面領域についてのデータ処理手段として、非線形強調処理及び2次元微分処理を含む強調処理手段と、前記強調処理手段により得られる強調信号と前記取り込み画像と重ね合わせて2値化を行う2値化処理手段とを備えることを特徴とする。
【0012】
かかる態様によれば、塵埃等を浮き上がらせることができ、撮像素子の分解能よりも微細な塵埃を検出することができる。また、適宜の閾値の設定と2次元微分処理により、緩やかな輝度差を除去でき、テクスチャによる反射光の成分や撮影レンズ等の写り込みによる影響を除去することが可能である。
【0013】
本発明の他の態様に係るハードディスク検査装置として、前記画像解析手段は、前記外周エッジ領域及び前記内周エッジ領域についてのデータ処理手段として、モフォロジー処理手段と、前記モフォロジー処理手段の処理結果から形状を認識し、塵埃と傷を分離する形状認識処理手段と、当該形状認識手段によって分離された塵埃の情報を2値化する2値化処理手段とを備えることを特徴とするハードディスク検査装置を提供する。
【0014】
ディスクのエッジ部分は、チャック等による傷や蒸着欠陥など、塵埃(粒子)の付着以外の要因による反射が想定されるため、撮像画像の中から塵埃による反射と塵埃以外の要因による反射とを分離して検出する画像解析処理を行うことが望ましい。
【0015】
また、本発明の他の態様に係るハードディスク検査装置は、前記取り込み画像に対してネガポジ反転処理を行い、前記取り込み画像の反転画像を得る反転処理手段と、前記画像解析手段によって得られた塵埃の位置を前記反転画像上にプロットするプロット処理手段と、前記画像解析手段によって得られた塵埃の大きさを示す数値を前記プロットした各塵埃位置に対応付けて付加するラベル処理手段と、を備え、前記表示制御手段は、前記プロット処理手段によるプロット処理と前記ラベル処理手段による数値のラベル付けがなされた検査結果の画像をモニタ画面上に表示させることを特徴とする。
【0016】
かかる態様によれば、検査結果を一層分かりやすく提示することができる。なお、撮像手段によって取得された画像を処理及び解析する機能や検査結果を表示させる機能等は、プログラム(ソフトウエア)によって実現できる。
【0017】
また、本発明は前記目的を達成する方法発明を提供する。すなわち、本発明に係るハードディスクの検査方法は、ハードディスクのエッジを含んだディスク表面の所定形状の検査領域部分を視野内に含み、当該検査領域部分からの反射光を撮像する撮像工程と、前記撮像工程によって取得された取り込み画像から前記ハードディスクのエッジ位置を検出する処理を行うエッジ検出処理工程と、当該検査対象のハードディスクの内径、外径及び記録面領域の範囲を規定する仕様情報を取得する情報取得工程と、前記エッジ検出処理工程により検出したエッジ位置と前記情報取得工程によって取得した仕様情報に基づき、前記取り込み画像を、記録面領域、非記録内周領域、非記録外周領域、外周エッジ領域、内周エッジ領域の各領域に対応したウインドウに分離するウインドウ分離工程と、前記ウインドウ分離工程により分離された領域ごとにデータ処理を行い、各領域について塵埃の位置及び大きさの情報を得る画像解析工程と、前記画像解析工程で得た結果をモニタ画面上に表示させる表示制御工程と、を備えることを特徴とする。
【0018】
更に、本発明は、コンピュータを、ハードディスクのエッジを含んだディスク表面の所定形状の検査領域部分を視野内に含む撮像手段を用いて当該検査領域部分からの反射光を撮像することによって取得された取り込み画像から前記ハードディスクのエッジ位置を検出する処理を行うエッジ検出処理手段、当該検査対象のハードディスクの内径、外径及び記録面領域の範囲を規定する仕様情報を取得する情報取得手段、前記エッジ検出処理手段により検出したエッジ位置と前記情報取得手段によって取得した仕様情報に基づき、前記取り込み画像を、記録面領域、非記録内周領域、非記録外周領域、外周エッジ領域、内周エッジ領域の各領域に対応したウインドウに分離するウインドウ分離手段、前記ウインドウ分離手段により分離された領域ごとにデータ処理を行い、各領域について塵埃の位置及び大きさの情報を得る画像解析手段、前記画像解析手段で得た結果をモニタ画面上に表示させる表示制御手段、として機能させるためのプログラムを提供する。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、被検査対象のハードディスクについてエッジを含んだディスク表面の撮像画像を得てディスクの平面部とエッジ部分を同時に検査することができるため、別々の検査装置を設ける必要がなく、低コスト、省スペースで検査が可能である。
【0020】
また、面内検査とエッジ検査とで装置を分離する必要がないため、余計なディスクハンドリングを省略でき、ディスクの汚染懸念工程を削減できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、添付図面にしたがって本発明の好ましい実施の形態について詳説する。
【0022】
はじめに、本発明の実施形態に係るハードディスク検査装置に用いられるディスクのチャック装置の構成について説明する。
【0023】
〔ディスクのチャック装置の構成例〕
図1は本発明の実施形態に係るハードディスク検査装置に用いられるディスクのチャック装置の構成例を示す斜視図、図2はその側面図である。これらの図面に示したとおり、本実施形態に係るチャック装置10は、ディスク12の中心部に形成されている孔14の周縁(ディスク内周面)に接触する3本の爪16、17、18を有するチャック本体20と、該チャック本体20を回転させるモータ24とを備える。
【0024】
モータ24は、ベースプレート26に対して垂直に起立する支持プレート28に固定され、その回転軸(スピンドル30)は水平方向(重力方向に直交する方向)を向いている。スピンドル30の先端に取り付けられたチャック本体20は3本の爪16、17、18によりディスク12を垂直に立てた姿勢(ディスク面が重力方向と平行な姿勢)で保持する。
【0025】
支持プレート28には、非接触式の距離センサ32が取り付けられており、該距離センサ32によりディスク12面の位置が検出される。距離センサ32の検出信号に基づき、ディスク12が正しい位置に(正しい姿勢で)保持されているか否かを判定することができる。なお、本例ではレーザ光を照射する投光部32Aと被測定物からの反射光を受光する受光部32Bを有する光学式の距離センサ32が用いられているが、光学式に限らず、超音波式など他の方式によるものであってもよい。
【0026】
チャック本体20に設けられた3本の爪のうち、符号16、17で示した2本の爪(図1において上部に2つ横に並んで配置されるもの)は固定爪であり、残りの符号18で示した爪(図1において下部に配置されるもの)は可動爪である。以後、符号16、17の爪を「固定爪」、符号18の爪を「可動爪」と呼ぶ場合がある。
【0027】
可動爪18のアーム34の基端部は、回動軸36を介してチャック本体20に取り付けられている。可動爪18のアーム34はバネ部材(「付勢手段」に相当、本例では圧縮コイルバネを用いたが、磁気、空気圧、板バネ等も可能である。)38により図2の下方に(可動爪18を孔14の径方向に広げる方向に)付勢され、外力が加わらない状態において、可動爪18は他の固定爪16、17と同様、略水平に支持される。実際は、チャック代が必要なため可動爪18は多少傾き、水平位置からの距離で0.1mm〜0.5mm程度の傾きを持つ。
【0028】
可動爪18のアーム34の下側には、可動爪18を押し上げる手段としてシリンダ40(「爪駆動手段」に相当)が配置されている。シリンダ40のロッド42を伸ばすことにより、バネ部材38の付勢力に抗して可動爪18のアーム34を上方に押し上げることができる(図3参照)。この状態からロッド42を縮めると、バネ部材38の復元力により可動爪18は元の水平位置に戻る。バネ部材38の付勢力に抗して可動爪18を変位させる駆動手段としては、上記のシリンダ40に限定されず、他のアクチュエータや圧縮エアによる手段でもよい。
【0029】
可動爪18を揺動自在に支持する回動軸36の部分(「可動機構の摺動部」に相当)は、部材同士が擦れ合う摺動部であるため、部材の摺動によるパーティクルの発生を考慮すると、かかる摺動部がディスク12から十分に離れた位置に設けられている構造が好ましい。設計上の目安としては、ディスク12から摺動部までの距離をディスク12の(外周半径−内周半径)以上離れた位置に設けられていることが望ましく、外周半径以上離れた位置とすることがより望ましい。
【0030】
本例では、回動軸36を中心とする円弧運動によって可動爪18を揺動移動させているが、可動爪18を移動させる機構は本例に限らず、例えば、可動爪を直線運動によって移動させる機構であってもよい。
【0031】
ただし、直線運動による機構は、円弧運動の機構に比べて摺動部が大きく複雑になるので、位置の精度に制約が無ければ、本例のように円弧運動の機構の方が簡易な構造であり、パーティクルの発生も抑えやすい。
【0032】
図4は、チャック装置10の背面図(図1のA矢視図)である。
チャック本体20の外径はディスク12の孔14の直径以下であり(好ましくは、孔径よりも小さく)、3本の爪16、17、18も可能な限りディスク12の孔径の内側に収まるように配置されている。
【0033】
また、支持プレート28の上端面の高さは、チャック本体20の高さと同等又はそれよりも低い位置とし(図2参照)、該支持プレート28に固定されるモータ24も支持プレート28の上端面の高さを超えないものとする。かかる構成は、ギヤやプーリを使い、モータの軸をシフトするか、或いは、小径のモータを使うことにより実現される。
【0034】
このような構成により、図4に示すとおり、チャックされたディスク12の記録面に対して垂直な方向から見たときに、ディスク12の一部(図4において上部領域)について径方向のほぼ全域が両面とも障害物なく観察可能となる。なお、本例の場合、後述のディスク検査装置(図10)において、検査範囲となる所定角度範囲(α=45°)の記録面領域(図13における符号130)を少なくとも含む領域が障害物なく観察可能である。このため、ディスク検査装置による両面同時検査が可能であり、また、ディスクの内周縁の極めて近い領域まで検査することができる。
【0035】
図5は、チャック装置10の要部斜視図である。図示のように、各爪16、17、18は、チャック本体21とは別の材料により、別部材として製作されており、ボルト44によりチャック本体21に固定されている。
【0036】
固定爪16、17及び可動爪18として用いる爪材には、ポリベンゾイミダゾール(PBI)が好適である。ポリベンゾイミダゾールは、特にガラスのディスクに対する耐摩耗性、摺動性が高く、パーティクルの発生が殆ど無い。また、無添加での低反射率特性があり、後述するパーティクル付着の検査(高照度の照明を行う光学的検査)への影響を回避できるという利点がある。低反射率特性を得るために樹脂にカーボンを添加する方法があるが、パーティクル抑制の観点から無添加の材料を用いることが好ましい。
【0037】
各爪16、17、18は、チャック状態においてディスク12の孔の内周面のみと接触する形状とし、ディスク平面(記録面)には接触しない構成であることが望ましい。本例の爪16、17、18は、ディスク12の孔の内周に沿った部分円弧状の外周面16A、17A、18Aを有し、各爪16、17、18の円弧状の外周面16A、17A、18Aには、それぞれディスク12の孔14の周縁に当接する溝46、47、48が形成されている。この溝46、47、48により、ディスク12の保持位置及び姿勢が規制される。
【0038】
図6は可動爪18に形成された溝48の拡大図である。なお、固定爪16、17に形成される溝46、47も同様であるため、図6に示した可動爪18の溝48の説明で代表させる。
【0039】
図示のように、溝48は、断面がV字形状を有する。かかるV字型の斜面の角度はディスク12の内周エッジの面取り角度と合致しており、チャック時には該溝48にディスク12の内周エッジのチャンファー面12A、12Bが接触し、バネ部材38の付勢力で爪18が押し当てられてディスク12が保持される。図6では、説明の便宜上、深い溝48を描いているが、この溝48をあまり深くしすぎると、ディスクの平面部(記録面の領域)のうち溝で隠れる部分(検査できない領域)が多くなってしまうため、この溝48はなるべく浅い方がよい。
【0040】
また、溝48の形態は図6の例に限定されず、例えば、図7に示すように、溝48の斜面の傾斜角度を非常に小さくして、向かい合う斜面48A、48B間の成す広がり角度を大きくした非常に浅い溝の形態も好ましい。このような形態とすることにより、ディスク12の記録面のコーナ部(符号12C、12D)まで検査することが可能となり、コーナ部12Cにおけるゴミ付着を検査することができる。
【0041】
なお、ハンドリングロボット(不図示)によるディスクハンドリングの位置決め精度が向上すれば、この溝48を省略することも可能である。
【0042】
図8は、チャック本体20の正面図(図5の矢印B方向から見た図)である。固定爪16,17及び可動爪18の位置関係は図8に示すとおりである。すなわち、これら3つの爪16、17、18はスピンドル30の中心を原点とする同一円周上に配置されており、図8で最下の位置(時計における6時の位置)に配置される可動爪18から反時計回り方向に135度回転した位置に固定爪17が配置され、可動爪18から時計回転方向に135度回転した位置に固定爪16が配置されている。
【0043】
つまり、スピンドル30の中心から2つの固定爪16、17の位置を見込む角θ1は90度であり、中心から可動爪18の位置と固定爪16(又は17)の位置を見込む角θ2は135度である。なお、ディスク取り付け時の安定性等を考慮すると、θ1<θ2であることが望ましい。
【0044】
本例のような爪配置は、後述のディスク検査装置により、1枚のディスク12を45度範囲ずつ、8回に分けてディスク面の全範囲の検査を行う場合に好適であり、また、垂直姿勢のディスク12を安定的に保持することができるという利点がある。
【0045】
図8に示すB矢視平面において、各爪16、17、18は略扇形状に形成されている。各爪16、17、18の弧(外周面の弧)の中心に対する角度βは、1回の検査範囲の角度α(本例ではα=45度)よりも僅かに小さい角度(本例では43度)とすることが好ましい。固定爪16、17及び可動爪18の配置形態と、各爪16、17、18の弧の中心に対する角度については、本例に限定されず、ディスク検査装置における1回の検査範囲の角度αと、ディスク保持の安定性の観点から決定される。
【0046】
また、本実施形態では、2つの固定爪16,17と1つの可動爪18の爪配置を例示するが、爪の数やその配置形態、可動爪と固定爪の割合とその配置バランスなどについては、多様な形態が可能である。
【0047】
上記の如く構成されたチャック装置10によってディスク12をチャックするときの動作は次のとおりである。
【0048】
ディスク12のハンドリングは、図示せぬハンドリングロボットによって行う。ハンドリングロボットは、複数の爪でディスク12を把持し、該ディスク12をチャック装置10へと搬送する。
【0049】
ハンドリングロボットによるディスク12の保持機構は特に限定されないが、例えば、本例のチャック装置10と類似の爪構造(2つの固定爪と1つの可動爪)を外周チャックに採用し、3本の爪でディスク12の外周を支持する構成とする。なお、本例のチャック装置10は内周チャック方式であることから、ハンドリングロボットは外周チャック方式を採用することが簡便であるが、ハンドリングロボットについても内周チャック方式を採用し、チャック装置10による爪16、17、18の隙間を利用して、ディスク12の受け渡しを行う態様も可能である。
【0050】
ハンドリングロボットによるディスク12の搬送動作と、チャック装置10におけるシリンダ40の動作のタイミングをとるために、ロボット側がシリンダ40を制御する構成が望ましい。すなわち、ハンドリングロボットを制御する制御装置によってシリンダ40も制御する構成とする。チャック装置10にディスク12を取り付けるときには、まず、シリンダ40のロッド42を伸ばして、可動爪18を押し上げる(図3参照)。
【0051】
この状態でハンドリングロボットがディスク12とともに近づき、ディスク12の孔14を爪16、17、18の位置に合わせ、自身の孔14に爪16、17、18が挿入されるように、ディスク12を移動させる。ディスク12を溝46、47の位置まで移動させた後、ディスク12を僅かに降下させてディスク内周面が固定爪16、17に接触する寸前(0.1mm以下の距離)で止める。ここで、ハンドリングロボットのチャックを開放すると、無理無くディスク12は自重で固定爪16、17にかかる。
【0052】
その後、ゆっくりとシリンダ40のロッド42を下げて、バネ部材38の力で可動爪18を下方へと動かし、可動爪18をディスク12の内周に接触させる。こうして、ロッド42による外力を解除することでバネ部材38の付勢力により、爪16、17、18がディスク12の内周に加圧接触し、ディスク12は安定して保持される。図9にチャック状態の要部断面図を示す。
【0053】
なお、チャック状態のディスク12を取り外すときには、上述した取り付け時とは逆の動作を行う。
【0054】
本実施形態のチャック装置10によれば、次のような作用効果が得られる。
【0055】
(1)傷やパーティクルの発生を抑制できる。
【0056】
(2)ディスク両面の同時検査が可能であり、早いサイクルタイムを実現できる。
【0057】
(3)シンプルな構造にできる。
【0058】
(4)内周エッジの近傍まで検査可能である。
【0059】
(5)ディスク12を垂直に保持するため、上方向からのクリーン空気流によるエア流を層流の状態に保ちやすく、ディスク後方の乱流を生じないのでパーティクルの付着を大幅に軽減できる。
【0060】
(6)ディスク12を垂直に保持するため、上方に配置される様々な機械構造体(メカ構造体)などから重力により落下するパーティクルの付着を回避することができる。
【0061】
(7)爪16、17、18の配置形態並びに爪材の選択により、ハンドリングロボットからのディスク受け取り安定性の向上を図ることができ、チャック時の摩擦による傷やパーティクルの発生を抑制できる。
【0062】
〔ディスク検査装置の説明〕
次に、上記したチャック装置10を用いたディスク検査装置(ディスクに付着している塵埃を検出するための検査装置)の例について説明する。
【0063】
図10は、本発明の実施形態に係るディスク検査装置の構成を示す斜視図、図11は側面図、図12は平面図である。これらの図面に示したように、このディスク検査装置100は、チャック装置10に保持されたディスク12を挟んでその両側に、カメラ102(「第1の撮像装置」に相当)、104(「第2の撮像装置」に相当)が互いに向かい合わせで配置されており、ディスク12の横方向やや斜めの位置に照明装置112、114、116、118が配置されている。符号120、122は、それぞれカメラ102、104のレンズ部である。
【0064】
照明装置112、114のペアが「第1の照明手段」に相当し、照明装置116、118のペアが「第2の照明手段」に相当する。
【0065】
なお、検査対象となるディスク12の周囲の空間は、外部からの外乱光の侵入を防止するために、検査中はカバー126で覆われる。
【0066】
カメラ102、104は、高解像度かつ電荷蓄積時間の長い撮像素子(CCDやCMOSなど)を搭載した電子撮像装置であり、本例では、電子冷却CCDカメラを用いている。
CCDはCMOSに比べて暗電流ノイズが少ない点で好ましい。また、CCDを冷却することで暗電流のノイズ成分を低減することができる。冷却温度は10℃以下であることが好ましい。温度は低いほど暗電流ノイズは減少するが、長時間の運転の際に、冷却温度を0度以下にすると氷結による問題が生じることがあるので、本例では冷却温度を1度に制御する。電荷蓄積時間は0.1秒以上とすることが好ましい。
【0067】
<照明装置の構成>
照明装置112〜118は、図13(a)に示すように、ディスク12の検査範囲(中心に対して45度の範囲のディスク上部領域)130の扇形形状と合致したパターンで照明を行うものであり、光ファイバー(「ライトガイド」に相当)132,134と、その先端に投影レンズ(不図示)を用いて照射パターン(扇形パターン)を整形し、投光部の光ファイバー132,134の端面からディスク面に対して浅い角度で斜めからパターン照明を行う(図13(b)参照)。ディスク面に対する照明光の仰角は30度以下(入射角で60度以上)であることが好ましく、本装置では仰角20度とした。
【0068】
ハードディスク用のディスク12は鏡面のため、適切な照明を行わなければ、ディスク12のエッジによる反射やブルーミング、ディスク面への写りこみ(カメラのレンズや照明光源がディスク12面に写る現象)などが起こり、高精度の検査が困難となる。
【0069】
そこで、本実施形態では、図13に示したように、検査範囲130のみに超高輝度の白色照明光(例えば、100万ルクス以上、より好ましくは200万ルクス以上)を照射し、ディスク面上の塵埃の輝度を高める一方、検査範囲130以外の不要な領域への照射を抑制することで、チャックの爪16、17、18による光の反射の抑制、ディスク12のエッジによる反射やブルーミングの抑制、並びにディスク面への写り込みを防止している。
【0070】
一般に、ディスク12の表面にはテクスチャと呼ばれる同心円状の微細な多数の線条(凹凸溝)が形成されている。本実施形態では、ディスク12に対してテクスチャの線方向(円周の接線方向)から照明光を照射する構成とする。すなわち、図13(a)の平面視でテクスチャの接線方向と平行となる照明光を照射するように照明装置112、114のペア(又は116、118)を配置する。
【0071】
また、ディスク12に対して両側から対称的に照明を行うことにより、照射領域内(照射パターン内)における輝度の均一化も図られている。なお、高輝度白色光源としては、赤外線が少なく、解像度が高い400〜550nmの光量が高いメタルハライドランプを用いることができる。
【0072】
図14は、照明装置112〜118によって照明光が照射される略扇型の照射領域の輝度分布を示す。同図における符号aで示したグラフ(二点鎖線)が照明装置112(又は116)による輝度分布を表し、符号bで示したグラフ(一点鎖線)が照明装置114(又は118)による輝度分布を表す。左右の照明装置112、114のペア(又は116と118のペア)によって照明される照射領域(扇形パターン内)の輝度分布は符号cで示すように符号aと符号bのグラフの重ね合わせとなり、全視野範囲において略一定の輝度分布となっている。
【0073】
なお、エッジ部分の検査においては、テクスチャとは別に複数の円周方向の照明が有効である。外周エッジには面取り部分が含まれており、この面取り部における塵埃の付着の有無を検査することは重要である。
【0074】
ディスク端面と面取り部分が照明でき、カメラ方向に面取り部から直接反射しない照明方向は、図15に示ように、ディスク12の円周方向に沿った方向(「外周光軸1」、「外周光軸2」)となる。また、円周方向に照明した場合、遠方側のエッジは影になるので、複数の照明(「外周光軸1」の方向と、「外周光軸2」の方向)が必要である。
【0075】
1回の撮影でカメラ102、104が撮像する領域は、図13で示した45度範囲の扇形部分である。当該領域の撮像を終えたら、ディスク12を45度回転させて、次の検査領域について撮像を行う。以後、同様にして、45度ずつ回転させながら検査領域を順次変更して撮像を行い、ディスク12の全領域について撮像を行う。
【0076】
<検査設備(システム)の説明>
図16は、ディスク検査装置を含む検査システムの構成例を示す図である。このシステム150は、カメラ102から得られる画像データの処理及びシステム全体の制御を行うコンピュータ(画像処理兼システム制御コンピュータ)152、カメラ104から得られる画像データの処理を行うコンピュータ(画像処理コンピュータ)154と、データサーバ156と、検査画像の解析処理を行うコンピュータ(解析処理コンピュータ)158とから構成される。なお、カメラ(102,104)と対応するコンピュータ(152,154)との接続手段、並びに、データサーバ156と各コンピュータ(152,154,158)との接続手段については、有線、無線を問わず、周知の通信インターフェースを用いることができる。
【0077】
画像処理兼システム制御コンピュータ152は、照明装置112〜118の制御(点灯/消灯、点灯時の照度の制御など)を行うとともに、カメラ102、104の制御(撮影タイミングや露光時間の制御など)、及びチャック装置10のモータ24の制御(ディスク12の回転による検査領域の切り替えなど)を行う。また、この画像処理兼システム制御コンピュータ152は、カメラ102から得られる画像データの一次処理(前処理)を行う。この一次処理には、検査画像と暗画像の差の情報を得るための差分処理、塵埃を強調するための非線形階調変換処理等が含まれる。
【0078】
カメラ102によって得られた検査画像の情報は、画像処理兼システム制御コンピュータ152によって一次処理され、該画像処理兼システム制御コンピュータ152からデータサーバ156へと送られて、データサーバ156上に保存される。同様に、カメラ104によって得られた検査画像の情報は、画像処理コンピュータ154によって一次処理が行われ、データサーバ156に保存される。
【0079】
解析処理コンピュータ158は、データサーバ156内に蓄積されているデータを解析する処理を行う。解析処理の例としては、記録面内領域の画像抽出、外周エッジ部の画像抽出、内周エッジ部の画像抽出、記録面内領域及び内外周のエッジ領域の領域別に各領域付着している塵埃の位置、個数、塵埃サイズの検出、ディスク全体としての塵埃付着の検査結果(合否判定など)、その他、測定解析機能として、ディスク上における塵埃の位置と塵埃のサイズを視覚的に把握容易に提示するためのマッピング機能を備える。
【0080】
上述した1視野分(45度範囲)の検査を、360度分(8枚)つなぎ合わせることにより、ディスクのどの位置にどの程度の大きさの塵埃が付着しているのかを把握することができる。解析処理コンピュータ158により、塵埃の位置、塵埃のサイズ、総個数などの情報を整理し、所定の合否判定基準との比較を行い、良/不良の判定等を行う。かかる測定結果の情報はデータサーバ156に格納される。
【0081】
なお、解析処理コンピュータ158の機能を他のコンピュータ(152や154)に搭載してもよい。
【0082】
<ソフトウエアの構成>
図17は、本例の検査システムにおける処理の流れを示す処理ブロック図である。なお、各ブロックの処理機能はソフトウエア(プログラム)によって実現される。
【0083】
まず、カメラ102(又は104)によって検査対象ディスクの撮像(1ショット;一視野分)を行い、検査対象ディスクにおける扇型の照明光照射領域(1/8ディスク領域)を含む検査画像のデジタル画像データを取り込む(#202)。
【0084】
その一方で、予めカメラ102(又は104)のレンズを覆って撮像動作を実行することによって取得した暗画像のデータを読み込み(#204)、当該暗画像に対し所定の定数を用いて輝度シフトの演算(減算)を行う(#206)。
【0085】
次いで、暗画像差分処理部(#208)において、#202のオリジナル検査画像と#204の暗画像データとを入力として、オリジナル検査画像から暗画像(暗ノイズの成分)を減算する処理(差分処理)を行う。さらに、当該差分処理後の画像データに対して、塵埃の部分を強調するために非線形塵埃強調処理部(#210)において非線形の入出力特性による変換処理(例えば、log処理)を行う。非線形塵埃強調処理部(#210)による処理後のデータは被検査画像(元画像)として保存される(#212)。
【0086】
また、当該元画像を基に、面内扇型画像抽出(#214)、外周エッジの抽出(#216)、内周エッジの抽出(#218)の各処理を実施する。
【0087】
これらの領域抽出の処理(#214〜#216)は次のようにして行う。
【0088】
まず、図18に示すように、元画像におけるディスクの外周エッジ付近の領域について処理ウインドウ160を設定し、当該処理ウインドウ160に関して周方向に沿って等間隔で複数のスキャン位置を定め、各スキャン位置で径方向に沿う直線162上をスキャンしてオブジェクトのエッジ点164を検出する。
【0089】
全てのスキャン位置についてエッジ点164を検出したら、これら検出したエッジ点164から外周円形ライン166を計算で求める。なお、このとき計算される外周円形ライン166は、図19に示すように、ディスク12の面取りされた外周端面の内側又は外側エッジ(符号12E、又は12F)の位置を計算で求めたものとなる。
【0090】
更に、この求めた外周円形ライン166から中心の位置(座標)と半径を計算して求め、ディスク形状に対応した検査領域のウインドウ(中心に対して45度範囲の扇形形状の検査ウインドウ)168を描く(図20参照)。
【0091】
図21は、上述した前処理済みの検査画像に検査ウインドウ168のラインを付加した画像例である。この検査ウインドウ168内の画像ピクセルに対して強調処理や微分処理などを行うことにより、ディスク面上の塵埃による反射(符号170A、170Bで示す画像内オブジェクト)を把握し易くなる。
【0092】
また、被検査対象物であるディスク12の設計値に基づき、扇型のウインドウ画像を図21のように、外周エッジ領域171、外側非記録面領域172、記録面領域173、内側非記録面領域174、内周エッジ領域175の5つの領域(処理ウインドウ)に区分することができる。これらの領域別に塵埃の個数などを測定できる。
【0093】
「外側非記録面領域172」、「記録面領域173」、「内側非記録面領域174」は、面内扇形画像に該当しており、当該面内扇形画像に対しては、面内粒子解析画像処理(図17の#220)が行われる。面内粒子解析画像処理(#220)は、2値化処理(#222)と粒子解析処理(#224)を含んで構成される。
【0094】
2値化処理(#222)は、画像信号のデジタル値(階調値)を所定の閾値と比較し、閾値よりも高輝度の部分を抽出する処理である。ディスク面内に塵埃があると、その塵埃によって照明光が散乱するため、塵埃の大きさに応じた輝点として画像内に映る。検出すべき塵埃のレベルに合わせて予め設定された閾値との比較により、塵埃を検知できる。この2値化処理により、塵埃に対応するピクセル(処理対象)が分離される。この2値化処理(#222)で得られた同じ輝度レベルのピクセルの結合した領域やグループのオブジェクトが「粒子」として定義される。
【0095】
粒子解析処理(#224)は、画像の粒子に関する情報を生成する解析関数を備え、粒子の位置、形状、大きさ、個数などの情報を取得する。粒子解析処理(#224)で得られた各項目の測定値のデータは測定データ(#226)としてファイルに保存される。
【0096】
一方、「外周エッジ領域」と「内周エッジ領域」は、エッジ領域に特有の課題に対応したエッジ粒子解析画像処理(#230)が行われる。すなわち、ディスクのエッジ部は、面取り部の反射や、蒸着欠陥、傷など、塵埃以外の要因が含まれているため、エッジ領域については塵埃以外の要因と塵埃(粒子)を分離し、塵埃のみを検出するための処理が行われる。内側エッジ処理は爪(16,17,18)の有無により切り替えることで、爪(16,17,18)の無い部分のみ検査を行う。
【0097】
エッジ粒子解析画像処理(#230)は、加算処理(#232)、モフォロジー処理(#234),円形粒子分離処理(#236)、及び粒子解析処理(#238)を含んで構成される。
【0098】
加算処理(#232)は、外周エッジ領域の情報と内周エッジ領域の情報とを重ね合わせる処理を行う。
【0099】
モフォロジー処理(#234)は、画像間演算によって図形を変形する処理であり、ここでは、縮小→拡大の順序で処理を行う。面取り部の反射や蒸着欠陥などの傷に起因する画像部分は、エッジラインに沿った細長い帯状線であるのに対し、塵埃(粒子)に起因する画像部分は、個々の塵埃を反映して概ね円形状であるか、複数の塵埃が近接して付着している場合には各塵埃に対応する円形状が部分的に重なり合って連続する形状(数珠つなぎの形状)となる。よって、モフォロジー処理(縮小→拡大)により、面取り部の反射や蒸着欠陥などの傷に起因する画像部分は雑音成分として除去され、塵埃(粒子)による画像部分が強調されて残ることになる。なお、モフォロジー処理に代えて、又はこれと組み合わせて「縦横比」を判断する処理などを使用してもよい。
【0100】
円形粒子分離処理(#236)は、モフォロジー処理(#234)後のデータから円形粒子を分離するフィルタであり、太さが変化する数珠つながりの画像部のくびれ部分でオブジェクトを分離する処理と、個々の分離オブジェクトの円形度などから円形粒子を検出する円形検出の処理を含む。
【0101】
粒子解析処理(#238)は、オブジェクト分離された円形粒子に関する情報を生成する解析関数を備え、粒子の位置、形状、大きさ、個数などの情報を取得する。粒子解析処理(#238)で得られた各項目の測定値のデータはエッジデータ(#240)としてファイルに保存される。
【0102】
面内粒子解析画像処理(#220)の2値化処理(#222)で得られた粒子の画像と、エッジ粒子解析画像処理(#230)のオブジェクト分離処理(#236)で得られた粒子の画像とを加算処理(#250)にて重ね合わせると共に、粒子解析処理(#224、#238)にて得られた測定結果の文字情報(数値ラベル)を画面上の各粒子に割り当てて合成し(#252)、検査結果としてモニタ表示を行う(#254)。この測定結果がマッピングされた画像は、マッピング画像としてファイルに保存される(#256)。
【0103】
図22に検査結果の画像例を示す。粒子(塵埃)に付される数値ラベルは、粒子のサイズを示している。粒子サイズが許容範囲内の値であるか否か、また、粒子の付着位置などによって表示色を異ならせることが好ましい。塵埃の付着位置がエッジ領域であるか、面内領域であるかによって許容される粒子サイズが異なる設定でもよい。
【0104】
例えば、青色の数値ラベルはエッジ領域における測定結果を示す。緑色の数値ラベルは面内領域における許容範囲内(OK時)の測定結果を示す。赤色の数値ラベルは、許容範囲を超える不良判定時(NG時)の測定結果を示す。
【0105】
このような45度範囲の扇形検査領域の測定結果を360度分(8枚)つなぎ合わせることにより、図23のように、ディスク全面の測定結果を表示させることができる。
【0106】
<システムの制御例>
図24は、2台のコンピュータを用いて本システムを制御する例を示すフローチャートである。図24の左側に示したメインPCの処理は、図16中の符号152で示したコンピュータに対応しており、ディスク12の第1の面(例えば、表面)の検査を担う。また、図24の右側に示したサブPCの処理は、図16中の符号154で示したコンピュータに対応しており、ディスク12の第2の面(例えば、裏面)の検査を担う。
【0107】
本例では、画像転送及び画像処理の負荷を考慮して、表面検査用と裏面検査用の2台のコンピュータを用いて処理を交互に実行する例を述べるが、処理速度及び処理能力の高い1台のコンピュータによって、これら2台分の処理を実現することも可能である。
【0108】
図24に示すとおり、メインPCとサブPCのそれぞれを起動し(ステップS310、S410)、初期化(ステップS312、S412)を行った後、ネットワーク接続を確立する(ステップS314、S414)。
【0109】
次に、チャック装置10と各カメラ102、104との連携による検査機の動作確認を行う(ステップS316、S416)。この動作確認は予め定められているプログラムにしたがって所定の確認項目について自動的に行っても良いし、必要に応じてオペレータが数値入力などの操作を行っても良い。
【0110】
動作確認の処理に基づき検査機の動作が正常であるか否かが判断され(ステップS318、S418)、異常が確認されたら、所定の対処処理(異常処理)を行う(ステップS320、S420)。その一方で、動作が正常であることが確認されたら、自動検査の処理(ステップS322、S422)を開始する。
【0111】
詳細は後述するが、本例では、ディスク表面の撮像と、ディスク裏面の撮像とが交互に行われる。最初にメインPCによる1枚目の撮像が行われ、当該撮像後にメインPCからサブPCに対して検査開始の指令が送られ、これを受けたサブPCによって裏面の撮像が実行される。サブPCによる撮像及びその検査(画像解析処理)が終わると、当該検査結果がメインPCへと送られる。また、メインPCが処理した画像データ(被検査画像データ及びマッピング画像データ)は、サーバコンピュータに送られ、当該サーバコンピュータの記憶領域に保存される(ステップS324、S424)。
【0112】
表面及び裏面それぞれについて画像データを取得した後、チャック装置を回転駆動してディスク12を45度回転させて停止させ、上記同様に、表、裏の撮像を行い、それぞれの検査画像を解析する。こうして、ディスクを45度ずつ回転させながら、0度位置、45度位置、90度位置、135度位置、180度位置、225度位置、270度位置、315度位置の各停止位置で表裏の撮像を行い、1枚のディスクにつき、片面8枚、両面で16枚の画像データ(扇型画像)を取得する。
【0113】
全ての検査が終了したら、終了処理を行い(ステップS326、S426)、処理を終了する(ステップS330、S430)。
【0114】
次に、自動検査の処理について説明する。
【0115】
図25〜図26は自動検査の処理手順を示したフローチャートである。各図の中央のフローがメインPCによって実行されるシステムの制御フローであり、左側のフローは第1カメラ(図10の符号102に相当、「1カメ」と略記する。)の撮像及び画像処理のフロー、右側のフローは第2カメラ(図10の符号104に相当、「2カメ」と略記する。)の撮像及び画像処理のフローである。なお、本システムではメインPCがシステムの制御と1カメの処理を担う。また、2カメの処理はサブPCが担う。
【0116】
自動検査の処理がスタートすると(ステップS510)、まず、温度確認を行い(ステップS512)、前回検査データをクリアする(ステップS514)。次いで1カメ側の照明装置のペア(「照明1」と略記する。)を点灯(ON)させ、2カメ側の照明装置のペア(「照明2」と略記する。)を消灯(OFF)する(ステップS516)。所定時間(例えば、500ms)待機後に、1カメ及び2カメの起動を行い(ステップS518)、1カメに対して撮像実行の指示を与える(ステップS520)。このとき、サーバでは1カメ、2カメの専用のフォルダを作成し、検査画像の保存に備える。フォルダ名は、例えば、「サンプル名+追い番+1cam」、「サンプル名+追い番+2cam」として自動生成される。
【0117】
ステップS520の撮像指示に基づき、1カメによって0度位置(チャック装置のディスク回転制御を行うときの初期位置)の撮像を実行する(ステップS610)。1カメで撮像された画像のデータはコンピュータ(ここではメインPCが兼ねる)に転送される(ステップS612)。本例では、転送時間として2.2秒を確保する。
【0118】
コンピュータは、取り込んだ撮像画像について、図17で説明したソフトウエアによって画像処理を行い(図25のステップS614)、検査結果を画面内に合成する処理を行う(ステップS616)。こうして得られた検査結果のマッピング画像と被検査画像(元画像)をサーバの専用フォルダに保存する(ステップS618)。
【0119】
ファイル名は「サンプル名+追い番+(X,Θ)」として自動生成される。ここで(X,Θ)の「X」は1カメ、2カメの区別を示す変数であり、1カメによる画像はX=1、2カメによる画像はX=2とする。「Θ」はディスクの撮影位置(チャックによる回転位置)を特定する変数であり、Θ=0deg,45deg,90deg,…315degの8種類となる。図では、1カメによる画像を「画像1」と表記し、2カメによる画像を「画像2」と表記している。
【0120】
ステップS520にて1カメ撮像の指示を出力し、1カメによる撮像を実行した後、所定時間(例えば、500ms)待機後に、照明1をOFFし、照明2をONする(ステップS522)。そして所定時間(例えば、500ms)待機後に、2カメに対して撮像実行の指示を与える(ステップS524)。
【0121】
この撮像指示に基づき、2カメによって0度位置の撮像を実行する(ステップS710)。2カメで撮像された画像のデータはコンピュータ(ここではサブPC)に転送される(ステップS712)。本例では、転送時間として2.2秒を確保する。
【0122】
コンピュータは、取り込んだ撮像画像について、図17で説明したソフトウエアによって画像処理を行い(図25のステップS714)、検査結果を画面内に合成する処理を行う(ステップS716)。こうして得られた検査結果のマッピング画像と被検査画像(元画像)をサーバの専用フォルダに保存する(ステップS718)。
【0123】
ステップS524にて2カメ撮像の指示を出力し、2カメによる撮像を実行した後、所定時間(例えば、500ms)待機後に、照明1をONし、照明2をOFFする(ステップS526)とともに、チャック装置のモータを駆動して、45度位置へ回転させる(ステップS528)。モータ回転中に45度位置への到着を監視し(ステップS530)、所定位置への到着が確認されたらモータを停止する。
【0124】
その後、図26のステップS540へ進み、1カメに対して撮像実行の指示を与える(ステップS540)。
【0125】
このステップS540の撮像指示に基づき、1カメによって45度位置の撮像を実行する(ステップS620)。その後の所定の処理(ステップS622〜628)を経て、当該45度位置における検査結果のマッピング画像と被検査画像(元画像)をサーバの専用フォルダに保存する(ステップS628)。なお、ステップS622〜628の処理は、図25で説明したステップS612〜S618と同様であるため説明は省略する。
【0126】
図26のステップS540にて1カメ撮像の指示を出力し、1カメによる撮像を実行した後、所定時間(例えば、500ms)待機後に、照明1をOFFし、照明2をONする(ステップS542)。そして所定時間(例えば、500ms)待機後に、2カメに対して撮像実行の指示を与える(ステップS544)。
【0127】
この撮像指示に基づき、2カメによって45度位置の撮像を実行する(ステップS720)。その後の所定の処理(ステップS722〜728)を経て、当該45度位置における検査結果のマッピング画像と被検査画像(元画像)をサーバの専用フォルダに保存する(ステップS728)。なお、ステップS722〜728の処理は、図25で説明したステップS712〜S718と同様であるため説明は省略する。
【0128】
図26のステップS544にて2カメ撮像の指示を出力し、2カメによる撮像を実行した後、所定時間(例えば、500ms)待機後に、照明1をONし、照明2をOFFする(ステップS546)とともに、チャック装置のモータを駆動して、90度位置へ回転させる(ステップS548)。モータ回転中に90度位置への到着を監視し(ステップS550)、所定位置への到着が確認されたらモータを停止する。
【0129】
以後の動作について説明は省略するが、上述と同様に、1カメの撮像と2カメの撮像を交互に行い、135度位置、180度位置、225度位置、270度位置、315度位置の各位置で画像の取得と、各画像の解析による検査を行う。こうして、同様の処理が繰り返され、315度位置での撮像と画像の保存(ステップS688、S788)を終えたら、照明1及び照明2をともにOFFにする(ステップS566)。
【0130】
そして、チャック装置のモータを駆動して、0度位置へ回転させる(ステップS568)。モータ回転中に0度位置への到着を監視し(ステップS570)、所定位置への到着が確認されたらモータを停止する。
【0131】
こうして、表裏それぞれ8枚、合計16枚の検査画像を総合判定して、検査の合否(OK/NG)を判断する(ステップS572)。合否の基準は、オペレータがキーボード等の入力装置から適宜設定・変更することが可能であり、当該設定された合否基準に基づき、プログラムにしたがって検査結果が自動的に判定され、その判定結果が報知(ディスプレイに表示等)される。また、この判定結果を利用することで検査NGのディスクと検査OKのディスクとを自動的に分別するように選別装置を制御することもできる。
【0132】
<ディスク検査のフロー>
図27は、本実施形態に係るディスク検査の処理手順を示したフローチャートである。
【0133】
被検査対象のディスクをCCDカメラで撮像し(ステップS800)、取り込んだ画像のデータをCCDカメラからコンピュータ(PC)へと転送する(ステップS802)。
【0134】
コンピュータは、この取り込んだ画像から、まず、エッジサーチ処理を行う(ステップS804)。エッジサーチ処理は、ディスクの縁位置(外周エッジ位置)を検出する演算処理であり、このエッジサーチ処理によってエッジ位置が見つかれば(ステップS806でYES)、これを基にマスクウインドウを計算してウインドウ(検査ウインドウ)を設定する(ステップS808)。
【0135】
その一方、エッジサーチ処理にてエッジ位置が検出されず、ステップ806のエッジ位置判定にて「NO」判定となった場合は、サーチNGフラグをONに設定し、デフォルトマスクを適用する(ステップS807)。
【0136】
次いで、取り込んだ生画像からCCDの各画素(受光セル)の持つ暗ノイズを除去する処理を行う(ステップS810)。予め真っ黒な画像を取り込んで暗ノイズデータを取得しておき、検査画像(生画像)から当該暗ノイズデータとの差をとることにより、暗ノイズ成分を除去する。
【0137】
こうして得られた画像から「記録面(サーボ信号等が書き込まれる記録領域)」、「非記録内周領域」、「非記録外周領域」、「外周エッジ領域」、「内周エッジ領域」のそれぞれに対応する5つのウインドウに分離する処理を行う(ステップS812)。各領域はそれぞれ、図21で説明した「記録面領域173」、「内側非記録面領域174」、「外側非記録面領域172」、「外周エッジ領域171」、「内周エッジ領域175」に相当するものである。
【0138】
このウインドウ分離処理では、検査対象たるハードディスクのスペック(仕様)の情報を利用する。ハードディスクの内径R1、外径R2、記録領域はディスク中心から半径Ra〜Rbの範囲の仕様であるとする(R1<Ra<Rb<R2)。また、非記録内周領域はディスク中心から半径Rc〜Raの範囲、非記録外周領域はディスク中心から半径Rb〜Rdの範囲であるとする(R1<Rc<Ra<Rb<Rd<R2)。
【0139】
このようなスペック情報を取得する手段としては、コンピュータのキーボードやマウス等の入力装置からオペレータが手入力によって入力してもよいし、予め複数種類のディスクに対応した複数の仕様情報をコンピュータの記憶装置内に記憶させておき、検査時に該当するスペック(ディスクの種類)を選択する態様や、メモリカード等の記憶媒体から読み込む態様なども可能である。
【0140】
かかるスペック情報を参照して、取り込んだ画像に対して、ディスク中心から半径Ra〜Rbの範囲を「記録面ウインドウ」、半径Rc〜Raの範囲を「非記録内周ウインドウ」、半径Rb〜Rdの範囲を非記録外周ウインドウ、半径Rd〜Reの範囲を「外周エッジウインドウ」、半径Rf〜Rcの範囲を「内周エッジウインドウ」として設定する。ただし、ReはR2<Reを満たす所定の値であり、RfはRf<R1を満たす所定の値である。
【0141】
例えば、外径2.5インチのディスク(R1=10mm、R2=32.5mm)の場合、Ra=15mm、Rb=30mm、Re=33.0mm、Rf=9.5mmのように定められる。
【0142】
こうして5つのウインドウに分割され、各ウインドウについて処理が分岐する。以下、記録面ウインドウの処理ルーチン(ステップS820)、非記録内周ウインドウの処理ルーチン(ステップS830)、非記録外周ウインドウの処理ルーチン(ステップS840)、外周エッジウインドウの処理ルーチン(ステップS850)、内周エッジウインドウの処理ルーチン(ステップS860)、及び保存用の処理ルーチン(S880)について説明する。
【0143】
<記録面ウインドウについて>
記録面部分の画像は、必要に応じて明るさ補正(ステップS821)を行った後、非線形強調処理(ステップS822)を行い、2次元微分処理を行う(ステップS823)。なお、明るさ補正処理(ステップS821)は省略することができる。2次元微分処理(ステップS823)では、閾値の設定により、緩やかな輝度差を除去することでテクスチャや写り込みによる成分を分離することができる。
【0144】
こうして2次元微分処理(ステップS823)によって得られたデータと、微分処理前の非線形強調処理(ステップS822)で得られたデータと加算して(ステップS824)、2値化処理を行う(ステップS825)。
【0145】
その後、当該2値化画像について塵埃探索を行う(ステップS826)。ここでいう塵埃探索処理(ステップS826)は、図17で説明した粒子解析(#224)の処理に相当するものである。
【0146】
こうして、粒子の位置、形状、大きさ、個数の情報を取得し、許容範囲内(OK)であるか、許容範囲を超える不良(NG)レベルであるか否かの判定が行われる(図27のステップS828)。
【0147】
<非記録内周ウインドウ及び非記録外周ウインドウについて>
非記録内周領域及び非記録外周領域に対応する部分の画像については、それぞれ2値化処理(ステップS834)を行った後に塵埃探索を行い(ステップS836)、得られた情報から、許容範囲内(OK)であるか、許容範囲を超える不良(NG)レベルであるか否かの判定が行われる(ステップS838)。具体的な処理内容はステップS826〜S828と同様である。なお、図中の符号S832で示す工程は、入力信号を切り替えることを表している。
【0148】
<外周エッジウインドウについて>
外周エッジ部は、図17の#234で説明したように、モフォロジー処理(図27のステップS852)を行った後、形状認識処理(ステップS853)を行う。この形状認識処理(ステップS853)は、図14で説明したオブジェクト分離(円形粒子分離)処理(#236)に相当しており、例えば、楕円率(縦横比)を計算し、円形に近いものは塵埃と判断し、長細い形状のものは傷や蒸着欠陥と判断する。
【0149】
モフォロジー処理により画素を分離できたもの(塵埃)と、分離できないもの(画素が複数つながっているもの、つまり、傷や蒸着欠陥など)を分離した後、塵埃情報のみを残し、傷(欠陥)情報は除去する(ステップS854)。
【0150】
こうして、塵埃情報を含んだ画像について2値化を行い(ステップS855)、この2値化画像について塵埃探索(ステップS856)と判定を行う(ステップS858)。塵埃探索処理(ステップS856)は、図17で説明した粒子解析(#224)の処理に相当するものであり、判定処理(ステップS858)は、ステップS828、S838と同様である。
【0151】
<内周エッジウインドウについて>
内周エッジ部については、チャック装置10における爪16,17,18と同じ角度位置の画像であるか否かを判定し(ステップS862)、爪角度と一致していない場合(ステップS862にてNO判定時)についてのみ外周エッジ部と同様の処理(ステップS852〜S858)を行う。爪角度と一致している場合(ステップS840にてYES判定時)は、内周エッジの塵埃解析処理をスキップする。(ステップS864)。
【0152】
以上のように、各処理ウインドウについての塵埃探索とその判定結果を総合し(ステップS870)、その結果について、モニタ上に検査結果を表示することができる(ステップS872)。
【0153】
結果表示については、画像処理エンジンで検査画像へのオーバレイ表示を行う。すなわち、取り込み画像についてネガポジ反転処理を行い、これに塵埃位置をプロットし、塵埃のサイズを明示したラベルを付す。CCDカメラからの取り込み画像は黒背景に塵埃の輝点が白く光る画像であるため、検査結果のモニタ表示においては、取り込み画像をネガポジ反転させ、白の背景に黒の塵埃点の画像とする。そして、この反転画像上に、塵埃探索(ステップS826,S836,S856)で検出した塵埃の位置をプロット処理し、併せて、各塵埃の大きさを示す数値を付す。領域毎に予め定められた許容範囲内の塵埃サイズであれば、緑色又は青色のラベルを付し、許容範囲を超えるサイズの塵埃に対しては赤色のラベルを付す(図22参照)。
【0154】
こうして、塵埃情報のオーバレイ表示を加えたマッピング画像をコンピュータのディスプレイその他の表示手段にモニタ出力するとともに、画像ファイルとして保存する一方(ステップS876)、塵埃の位置及びサイズをテキストテータとして別ファイルに保存する。
【0155】
また、ステップS812において各ウインドウ分離の処理を行った際に、その元画像も保存用として画像ファイルに保存される(ステップS882)。
【0156】
本実施形態によるディスク検査装置100によれば、次のような利点がある。
【0157】
(1)最小検出能力0.1μmを達成できる。
【0158】
(2)ディスクの持ち替え(反転など)を行わず、両面同時検査が可能である。
【0159】
(3)記録面内のみならず、外周エッジ領域、内周エッジ領域についても、塵埃の付着を検査することができる。
【0160】
(4)記録面への写り込みや、ディスクのエッジやチャック装置10の爪による光の異常反射が抑制される。
【0161】
(5)ハードディスクにおける平面部とエッジ部との感度差の影響を回避することができる。ハードディスク上に付着した塵埃を撮像画像から検出する際の感度は、エッジよりも平面部の方が100倍程度高く、共通の閾値レベル設定だけでは、平面部又はエッジ部の何れか一方のみしか対応できないが、本実施形態によれば、検査画像を5つの領域に分割し、各領域について適切な画像処理を施すため、平面部及びエッジ部を同時に検査することができる。
【0162】
(6)400万画素程度の安価なCCDカメラを用いてディスク1/8領域(2.5インチディスクで約30mm角相当)を1回の撮像で検査することができる。通常、検出対象が面内上塵埃でサブμmの欠陥を1画素分に割り当てると、CCDの分解能から4mm角のエリアしか検出できない。これに対し、本実施形態によれば、撮像した画像を非線形強調及び2次元微分により強調処理を行った後、高輝度生画像と重ね合わせ2値化し、欠陥を浮かび上がらせる構成を採用したため、撮像素子の分解能よりも微細な塵埃を検出することができる。
【0163】
(7)記録面について2次元微分処理を行い、規定の閾値よりも小さい値を除去するなど、適宜の閾値の設定によって、緩やかな輝度差を除去することができる。これにより、ディスク表面のテクスチャによる余計な反射や、ディスク表面が鏡面であることによるレンズ等の背景の写り込みが塵埃検出上のノイズとなる現象を回避することができる。
【0164】
(8)エッジ部についてモフォロジー処理と形状認識処理とを組み合わせたアルゴリズムを適用したことにより、エッジ上の塵埃以外の傷、蒸着抜けといった欠陥を付着塵埃と分離することができる。
【0165】
(9)16ビットの画像データを処理することにより、一般的な8ビットの微細な塵埃情報を抽出することができる。
【0166】
(10)検査画像(生画像)を反転処理し、これに塵埃位置をプロットして、粒子サイズに応じたラベル付けを行い、検査結果をモニタ上に表示する構成にしたので、検査中にモニタ上で塵埃位置とそのサイズを目視判別できる。
【0167】
本実施形態によるディスク検査装置100による検査工程は、例えば、ハードディスク装置の磁気ディスクに、トラック位置決めのためのサーボ信号や、そのトラックのアドレス情報信号、再生クロック信号等のサーボ情報を記録するための磁気転写工程の前に行われる。
【0168】
磁気転写工程は、磁性体の微細凹凸パターンにより転写情報を担持したマスターディスク(転写原盤)と、転写を受ける磁気記録層(磁性層)を有するスレーブディスク(被転写体)とを密着させた状態で転写用磁界を印加することにより、マスターディスクの磁化パターン対応するフォーマット情報やアドレス情報が書き込まれているマスターディスクより一括転写する方法である。ディスクに塵埃が付着していると、転写不良となったり、マスターディスクの表面に傷等を発生させてしまったりするという問題がある。
【0169】
したがって、転写を行う前のスレーブディスクについて、本例のディスク検査装置を用いて塵埃の付着の有無を検査し、この検査によって塵埃の付着が確認されたスレーブディスクを製造工程から排斥する(検査合格したもののみを選別する)ことが望ましい。また、塵埃の位置、大きさが特定できるため、ポイントを絞ったクリーニングを行い、再利用することも可能である。更に、検査の直後に行えば、再検査も容易に行える。
【0170】
上述の実施形態では、本発明によるチャック装置を検査工程に用いる例を述べたが、検査工程に限らず、ディスクのクリーニング工程など、他の工程にも利用できる。例えば、本発明によるチャック装置をクリーニング工程において利用すると、垂直姿勢でディスクを保持することから、塵埃の付着を防止でき、ディスクの両面を容易にクリーニングできる。この場合のクリーニング方法としては、エア流や吸引の他、不織布等によるワイプ法やヘッドを使ったヘッドバーニッシュ法などがある。
【0171】
もちろん、本発明の適用範囲は上述の例に限定されず、ディスクの種類によらず、様々な分野に適用可能である。
【0172】
また、上述の実施形態では、コンピュータ(PC)を用いたシステム構成(図16)を例示したが、本発明の実施に際しては、マイコンを使用してROM(Read Only Memory)等に格納した検査機能のプログラムによって制御する形態も可能である。
【0173】
〔付記〕
本明細書はディスクの保持手段として好適な以下に示すチャック装置の発明の開示を含んでいる。
【0174】
(発明1):中心部に孔が形成されているディスクを保持するチャック装置であって、保持対象となるディスクに形成されている孔に挿入される複数の爪と、前記複数の爪のうち少なくとも1つを前記挿入される孔の外側に向かって付勢する付勢手段と、を有し、前記付勢手段によって前記複数の爪の外周部を前記ディスクの孔の周縁に加圧接触させることにより前記ディスクを垂直姿勢で保持することを特徴とするチャック装置。
【0175】
この発明1によれば、爪の外周部をディスク内周面に接触させることにより、ディスクを垂直姿勢で保持するため、ディスクの持ち替え(反転)なく、両面の同時検査が可能となる。また、重力によるパーティクルの付着を回避することも可能である。更に、クリーンエアのダウンフローが乱れず、ディスク周辺のクリーン度を保つことができる。
【0176】
(発明2):前記複数の爪が取り付けられているチャック本体の外径は、前記ディスクの孔径より小さいことを特徴とする発明1記載のチャック装置。
【0177】
かかる態様によれば、ディスクチャック状態でディスク面に垂直な方向から見たとき、ディスクの孔の内側にチャック本体が収容されることになるため、ディスク両面について、内周エッジの近傍まで影にならずに観察(検査)可能である。
【0178】
(発明3):前記複数の爪が取り付けられているチャック本体はスピンドルに固定されており、前記垂直姿勢で保持したディスクを回転可能であることを特徴とする発明1又は2記載のチャック装置。
【0179】
かかる態様によれば、ディスクを回転させながら、ディスクの全面を検査することができる。
【0180】
(発明4):前記複数の爪のうち少なくとも1つは、前記挿入される孔の内側に向かって移動可能な可動機構を介して取り付けられていることを特徴とする発明1乃至3の何れか1項に記載のチャック装置。
【0181】
この場合、前記可動機構の摺動部は、前記加圧接触によって保持されるディスクから該ディスクの(外周半径−内周半径)以上離れた位置に設けられていることが望ましく、外周半径以上離れた位置とすることがより望ましい。これにより、摺動部から発生するパーティクルのディスクへの付着を抑制することができる。
【0182】
(発明5):前記可動機構の摺動部は、前記加圧接触によって保持されるディスクから該ディスクの(外周半径−内周半径)以上離れた位置に設けられていることを特徴とする発明4記載のチャック装置。
【0183】
(発明6):前記付勢手段は、受動型ばねであることを特徴とする発明1乃至5の何れか1項に記載のチャック装置。
【0184】
チャック付勢力を与える手段として、金属、樹脂、エア、磁気等の受動型ばねを、チャク本体に内蔵する態様が好ましい。かかる態様によれば、外から力を加えずに、ディスクを保持することができる。
【0185】
(発明7):前記付勢手段の付勢力に抗して、前記複数の爪のうち少なくとも1つを前記挿入される孔の内側に向かって移動させる爪駆動手段を備え、前記孔に対する前記複数の爪の挿入時、又は前記加圧接触を解除する時に前記爪駆動手段により前記複数の爪のうち少なくとも1つを該孔の内側に向かって移動させることを特徴とする発明1乃至6の何れか1項に記載のチャック装置。
【0186】
(発明8):前記爪駆動手段は、前記複数の爪が取り付けられているチャック本体から離れた外部に設けられていることを特徴とする発明7記載のチャック装置。
【0187】
(発明9):前記爪は、ポリベンゾイミダゾールで製作されていることを特徴とする発明1乃至8の何れか1項に記載のチャック装置。
【0188】
ポリベンゾイミダゾールは、耐磨耗性摺動性が高く、パーティクルの発生を抑制できるとともに、無添加で低反射特性があるため、光学的検査への悪影響(写り込みなど)を回避できる。なお、ポリイミドやポリイミドアミドも耐磨耗性が高いが、摺動性、低反射性とするにはカーボン添加を要し、パーティクルの増加がある。
【0189】
(発明10):前記爪は、前記ディスクの孔の周縁に対応した円弧形状の外周部を有し、ディスク保持の状態において前記ディスクの両面の平面部分に接触せず、前記ディスクの孔の周縁に接触するのみで前記ディスクを保持することを特徴とする発明1乃至9の何れか1項に記載のチャック装置。
【0190】
かかる態様によれば、ディスク面(平面部分)へのパーティクルの付着が抑制されるとともに、ほぼ全平面部の検査が可能となる。
【0191】
(発明11):前記複数の爪として、2つの固定爪と1つの可動爪が同一円周上に配置され、中心から前記2つの固定爪の位置を見込む角は、前記中心から前記可動爪の位置と前記固定爪の位置を見込む角よりも小さいことを特徴とする発明1乃至10の何れか1項に記載のチャック装置。
【0192】
(発明12):当該チャック装置にディスクを取り付ける際、または、当該チャック装置からディスクを取り外す際に、前記2つの固定爪は同じ高さに位置し、前記可動爪は前記2つの固定爪よりも下方に位置することを特徴とする発明11に記載のチャック装置。
【0193】
かかる態様より、ディスク保持の安定性向上を図ることができ、チャック時の摩擦による傷やパーティクルの発生の抑制も達成できる。
【図面の簡単な説明】
【0194】
【図1】本発明の実施形態に係るチャック装置の斜視図
【図2】図1に示したチャック装置の側面図
【図3】可動爪の駆動機構を示した要部拡大図
【図4】図1に示したチャック装置の背面図
【図5】チャック本体の斜視図
【図6】チャック時における可動爪部分の拡大図
【図7】爪の外周面に形成される溝の他の形態例を示す図
【図8】図5のB矢視図
【図9】ディスクのチャック状態を示す断面図
【図10】ディスク検査装置の構成例を示す斜視図
【図11】図10に示したディスク検査装置の側面図
【図12】図10に示したディスク検査装置の平面図
【図13】ディスク検査装置に用いられる照明装置の説明図
【図14】照明光パターンの輝度分布を示す図
【図15】ディスクのエッジ部の照明方法を説明するために用いた説明図
【図16】ディスク検査装置を含む検査システムの構成図
【図17】本例の検査システムにおける処理の流れを示す処理ブロック図
【図18】検査画像から外周円形ラインを求める演算の説明図
【図19】ディスクの外周部分の拡大側面図
【図20】強調処理を施したウインドウ画像の例を示す図
【図21】検査画像における領域別の処理ウインドウの区分例を示す図
【図22】測定結果の画像例(1検査画像分)を示す図
【図23】測定結果の画像例(1ディスク片面全体)を示す図
【図24】検査システムの制御例を示すフローチャート
【図25】自動検査処理の手順を示すフローチャート
【図26】自動検査処理の手順を示すフローチャート
【図27】本実施形態に係るディスク検査の処理手順を示したフローチャート
【符号の説明】
【0195】
10…チャック装置、12…ディスク、14…孔、16,17…爪(固定爪)、18…爪(可動爪)、20…チャック本体、24…モータ、30…スピンドル、34…アーム、36…回動軸、38…バネ部材、40…シリンダ、42…ロッド、100…ディスク検査装置、102,104…カメラ、112,114,116,118…照明装置、132,134…光ファイバー、152…コンピュータ(画像処理兼システム制御コンピュータ)、154…コンピュータ(画像処理コンピュータ)、156…データサーバ、158…コンピュータ(解析処理コンピュータ)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハードディスクのエッジを含んだディスク表面の所定形状の検査領域部分を視野内に含み、当該検査領域部分からの反射光を撮像する撮像手段と、
前記撮像手段によって取得された取り込み画像から前記ハードディスクのエッジ位置を検出する処理を行うエッジ検出処理手段と、
当該検査対象のハードディスクの内径、外径及び記録面領域の範囲を規定する仕様情報を取得する情報取得手段と、
前記エッジ検出処理手段により検出したエッジ位置と前記情報取得手段によって取得した仕様情報に基づき、前記取り込み画像を、記録面領域、非記録内周領域、非記録外周領域、外周エッジ領域、内周エッジ領域の各領域に対応したウインドウに分離するウインドウ分離手段と、
前記ウインドウ分離手段により分離された領域ごとにデータ処理を行い、各領域について塵埃の位置及び大きさの情報を得る画像解析手段と、
前記画像解析手段で得た結果をモニタ画面上に表示させる表示制御手段と、
を備えたことを特徴とするハードディスク検査装置。
【請求項2】
請求項1に記載のハードディスク検査装置において、
前記画像解析手段は、前記記録面領域についてのデータ処理手段として、
非線形強調処理及び2次元微分処理を含む強調処理手段と、
前記強調処理手段により得られる強調信号と前記取り込み画像と重ね合わせて2値化を行う2値化処理手段とを備えることを特徴とするハードディスク検査装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のハードディスク検査装置において、
前記画像解析手段は、前記外周エッジ領域及び前記内周エッジ領域についてのデータ処理手段として、
モフォロジー処理手段と、
前記モフォロジー処理手段の処理結果から形状を認識し、塵埃と傷を分離する形状認識処理手段と、
当該形状認識手段によって分離された塵埃の情報を2値化する2値化処理手段とを備えることを特徴とするハードディスク検査装置。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れか1項に記載のハードディスク検査装置において、
前記取り込み画像に対してネガポジ反転処理を行い、前記取り込み画像の反転画像を得る反転処理手段と、
前記画像解析手段によって得られた塵埃の位置を前記反転画像上にプロットするプロット処理手段と、
前記画像解析手段によって得られた塵埃の大きさを示す数値を前記プロットした各塵埃位置に対応付けて付加するラベル処理手段と、
を備え、前記表示制御手段は、前記プロット処理手段によるプロット処理と前記ラベル処理手段による数値のラベル付けがなされた検査結果の画像をモニタ画面上に表示させることを特徴とするハードディスク検査装置。
【請求項5】
ハードディスクのエッジを含んだディスク表面の所定形状の検査領域部分を視野内に含み、当該検査領域部分からの反射光を撮像する撮像工程と、
前記撮像工程によって取得された取り込み画像から前記ハードディスクのエッジ位置を検出する処理を行うエッジ検出処理工程と、
当該検査対象のハードディスクの内径、外径及び記録面領域の範囲を規定する仕様情報を取得する情報取得工程と、
前記エッジ検出処理工程により検出したエッジ位置と前記情報取得工程によって取得した仕様情報に基づき、前記取り込み画像を、記録面領域、非記録内周領域、非記録外周領域、外周エッジ領域、内周エッジ領域の各領域に対応したウインドウに分離するウインドウ分離工程と、
前記ウインドウ分離工程により分離された領域ごとにデータ処理を行い、各領域について塵埃の位置及び大きさの情報を得る画像解析工程と、
前記画像解析工程で得た結果をモニタ画面上に表示させる表示制御工程と、
を備えることを特徴とするハードディスク検査方法。
【請求項6】
コンピュータを、
ハードディスクのエッジを含んだディスク表面の所定形状の検査領域部分を視野内に含む撮像手段を用いて当該検査領域部分からの反射光を撮像することによって取得された取り込み画像から前記ハードディスクのエッジ位置を検出する処理を行うエッジ検出処理手段、
当該検査対象のハードディスクの内径、外径及び記録面領域の範囲を規定する仕様情報を取得する情報取得手段、
前記エッジ検出処理手段により検出したエッジ位置と前記情報取得手段によって取得した仕様情報に基づき、前記取り込み画像を、記録面領域、非記録内周領域、非記録外周領域、外周エッジ領域、内周エッジ領域の各領域に対応したウインドウに分離するウインドウ分離手段、
前記ウインドウ分離手段により分離された領域ごとにデータ処理を行い、各領域について塵埃の位置及び大きさの情報を得る画像解析手段、
前記画像解析手段で得た結果をモニタ画面上に表示させる表示制御手段、
として機能させるためのプログラム。
【請求項1】
ハードディスクのエッジを含んだディスク表面の所定形状の検査領域部分を視野内に含み、当該検査領域部分からの反射光を撮像する撮像手段と、
前記撮像手段によって取得された取り込み画像から前記ハードディスクのエッジ位置を検出する処理を行うエッジ検出処理手段と、
当該検査対象のハードディスクの内径、外径及び記録面領域の範囲を規定する仕様情報を取得する情報取得手段と、
前記エッジ検出処理手段により検出したエッジ位置と前記情報取得手段によって取得した仕様情報に基づき、前記取り込み画像を、記録面領域、非記録内周領域、非記録外周領域、外周エッジ領域、内周エッジ領域の各領域に対応したウインドウに分離するウインドウ分離手段と、
前記ウインドウ分離手段により分離された領域ごとにデータ処理を行い、各領域について塵埃の位置及び大きさの情報を得る画像解析手段と、
前記画像解析手段で得た結果をモニタ画面上に表示させる表示制御手段と、
を備えたことを特徴とするハードディスク検査装置。
【請求項2】
請求項1に記載のハードディスク検査装置において、
前記画像解析手段は、前記記録面領域についてのデータ処理手段として、
非線形強調処理及び2次元微分処理を含む強調処理手段と、
前記強調処理手段により得られる強調信号と前記取り込み画像と重ね合わせて2値化を行う2値化処理手段とを備えることを特徴とするハードディスク検査装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のハードディスク検査装置において、
前記画像解析手段は、前記外周エッジ領域及び前記内周エッジ領域についてのデータ処理手段として、
モフォロジー処理手段と、
前記モフォロジー処理手段の処理結果から形状を認識し、塵埃と傷を分離する形状認識処理手段と、
当該形状認識手段によって分離された塵埃の情報を2値化する2値化処理手段とを備えることを特徴とするハードディスク検査装置。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れか1項に記載のハードディスク検査装置において、
前記取り込み画像に対してネガポジ反転処理を行い、前記取り込み画像の反転画像を得る反転処理手段と、
前記画像解析手段によって得られた塵埃の位置を前記反転画像上にプロットするプロット処理手段と、
前記画像解析手段によって得られた塵埃の大きさを示す数値を前記プロットした各塵埃位置に対応付けて付加するラベル処理手段と、
を備え、前記表示制御手段は、前記プロット処理手段によるプロット処理と前記ラベル処理手段による数値のラベル付けがなされた検査結果の画像をモニタ画面上に表示させることを特徴とするハードディスク検査装置。
【請求項5】
ハードディスクのエッジを含んだディスク表面の所定形状の検査領域部分を視野内に含み、当該検査領域部分からの反射光を撮像する撮像工程と、
前記撮像工程によって取得された取り込み画像から前記ハードディスクのエッジ位置を検出する処理を行うエッジ検出処理工程と、
当該検査対象のハードディスクの内径、外径及び記録面領域の範囲を規定する仕様情報を取得する情報取得工程と、
前記エッジ検出処理工程により検出したエッジ位置と前記情報取得工程によって取得した仕様情報に基づき、前記取り込み画像を、記録面領域、非記録内周領域、非記録外周領域、外周エッジ領域、内周エッジ領域の各領域に対応したウインドウに分離するウインドウ分離工程と、
前記ウインドウ分離工程により分離された領域ごとにデータ処理を行い、各領域について塵埃の位置及び大きさの情報を得る画像解析工程と、
前記画像解析工程で得た結果をモニタ画面上に表示させる表示制御工程と、
を備えることを特徴とするハードディスク検査方法。
【請求項6】
コンピュータを、
ハードディスクのエッジを含んだディスク表面の所定形状の検査領域部分を視野内に含む撮像手段を用いて当該検査領域部分からの反射光を撮像することによって取得された取り込み画像から前記ハードディスクのエッジ位置を検出する処理を行うエッジ検出処理手段、
当該検査対象のハードディスクの内径、外径及び記録面領域の範囲を規定する仕様情報を取得する情報取得手段、
前記エッジ検出処理手段により検出したエッジ位置と前記情報取得手段によって取得した仕様情報に基づき、前記取り込み画像を、記録面領域、非記録内周領域、非記録外周領域、外周エッジ領域、内周エッジ領域の各領域に対応したウインドウに分離するウインドウ分離手段、
前記ウインドウ分離手段により分離された領域ごとにデータ処理を行い、各領域について塵埃の位置及び大きさの情報を得る画像解析手段、
前記画像解析手段で得た結果をモニタ画面上に表示させる表示制御手段、
として機能させるためのプログラム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【公開番号】特開2010−54281(P2010−54281A)
【公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−218222(P2008−218222)
【出願日】平成20年8月27日(2008.8.27)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年8月27日(2008.8.27)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】
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