説明

バッテリ搭載部のエネルギー吸収構造

【課題】側面衝突時にバッテリの運動エネルギーを効果的に吸収することができるバッテリ搭載部のエネルギー吸収構造を得る。
【解決手段】バッテリ搭載部44では、衝撃吸収ダクト46が車体フロア20側とセンターコンソールボックス40(バッテリ42側)とを連結すると共にセンターコンソールボックス40からの所定値以上の荷重fの入力時に変形することによりエネルギー吸収を行うように設定されているので、側面衝突時にセンターコンソールボックス40から衝撃吸収ダクト46へ所定値以上の荷重fが入力されると、衝撃吸収ダクト46が曲げ変形することによってセンターコンソールボックス40の運動エネルギーが吸収される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体フロア上に並列された車両用シート間にバッテリが搭載される車両に適用されるバッテリ搭載部のエネルギー吸収構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車両においては、車幅方向に並置されたフロントシートの間に、バッテリ収納用のバッテリボックスを配置している場合がある(例えば、特許文献1参照)。このようなバッテリボックスは、フロアパネルの車幅方向中央にて車両前後方向に延在するセンタトンネル上に固定されている。
【0003】
しかし、剛性の高いセンタトンネル上にバッテリボックスを固定しているため、側面衝突(側突)時にバッテリの運動エネルギーを吸収しにくい。
【特許文献1】特開2004−345447公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記事実を考慮して、側面衝突時にバッテリの運動エネルギーを効果的に吸収することができるバッテリ搭載部のエネルギー吸収構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に記載する本発明のバッテリ搭載部のエネルギー吸収構造は、車体フロア上に並列された車両用シート間にバッテリが搭載される車両に適用されるバッテリ搭載部のエネルギー吸収構造であって、前記車体フロア側と前記バッテリ側とを連結し、前記バッテリ側からの所定値以上の荷重の入力時に変形することによりエネルギー吸収を行う連結部材を備えていることを特徴とする。
【0006】
請求項1に記載する本発明のバッテリ搭載部のエネルギー吸収構造によれば、連結部材が車体フロア側とバッテリ側とを連結すると共にバッテリ側からの所定値以上の荷重の入力時に変形することによりエネルギー吸収を行うので、側面衝突時に一方側の車両用シートからバッテリ側への荷重によって、バッテリ側から連結部材へ所定値以上の荷重が入力されると、連結部材が変形することによって、バッテリの運動エネルギーが吸収される。
【0007】
請求項2に記載する本発明のバッテリ搭載部のエネルギー吸収構造は、請求項1記載の構成において、前記連結部材は、車体上下方向に離間して配置される前記車体フロア側と前記バッテリ側との間に配設されていることを特徴とする。
【0008】
請求項2に記載する本発明のバッテリ搭載部のエネルギー吸収構造によれば、連結部材は、車体上下方向に離間して配置される車体フロア側とバッテリ側との間に配設されているので、例えば、バッテリの側方に連結部材を設置できないレイアウトの車両に対しても連結部材を設置でき、連結部材の高さ寸法や厚さ寸法の設定を変えることによって、側面衝突時における連結部材の荷重−変形特性を容易に変えることができる。
【0009】
請求項3に記載する本発明のバッテリ搭載部のエネルギー吸収構造は、請求項2記載の構成において、前記バッテリを冷却するための冷却風を通すダクトの少なくとも一部が、前記バッテリの車体下方側に配置されて前記連結部材によって構成されていることを特徴とする。
【0010】
請求項3に記載する本発明のバッテリ搭載部のエネルギー吸収構造によれば、バッテリを冷却するための冷却風を通すダクトの少なくとも一部が、連結部材によって構成されているので、設置スペースに制約がある車両用シート間において、シート間スペースを有効利用してバッテリ冷却用の冷却風を通すことができる。また、ダクトと連結部材とを別体にして二重管構造状にする場合に比べ荷重−変形特性の設定がし易く、側面衝突時には、ダクトを兼ねる連結部材が変形することによって、バッテリの運動エネルギーが吸収される。
【発明の効果】
【0011】
以上説明したように、本発明に係る請求項1に記載のバッテリ搭載部のエネルギー吸収構造によれば、側面衝突時にバッテリの運動エネルギーを効果的に吸収することができるという優れた効果を有する。
【0012】
請求項2に記載のバッテリ搭載部のエネルギー吸収構造によれば、バッテリの側方に連結部材を設置できないレイアウトの車両であっても適用でき、また、荷重−変形特性の設定を容易にすることができる(即ち、チューニングを容易に行うことができる)という優れた効果を有する。
【0013】
請求項3に記載のバッテリ搭載部のエネルギー吸収構造によれば、車両用シート間のスペースを有効利用しながら、ダクトと連結部材とを別体にして二重管構造状にする場合と比べて荷重−変形特性の設定を容易にすることができるという優れた効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
[第1実施形態]
本発明におけるバッテリ搭載部のエネルギー吸収構造の第1の実施形態を図面に基づき説明する。なお、これらの図において適宜示される矢印UPは車両上方側、矢印FRは車両前方側、矢印Wは車幅方向をそれぞれ示している。
【0015】
図1には、車体前部を透視した状態で示す車両10の概略正面図が示されている。本実施形態における車両10は、例えば、ガソリンハイブリッド車、燃料電池ハイブリッド車、及び電気自動車等のような車両用シート30間にバッテリ42が搭載される車両であり、本実施形態におけるバッテリ搭載部のエネルギー吸収構造は、このような車両10に適用される構造である。図1に示されるように、車両10における車体側部12には、フロントサイドドア14によって開閉されるドア開口部16が形成されている。ドア開口部16の下縁側には、車両前後方向に沿って延在する閉断面構造の車両骨格部材であるサイドシル(ロッカということもある)18が配設されている。なお、ドア開口部16の車両前方側及び車両後方側には閉断面構造のピラー(図示省略)が略車両上下方向に沿って立設されている。
【0016】
左右一対のサイドシル18には、車体フロア20の両サイドが結合されている。より具体的には、車体フロア20の車幅方向両側の端末部20Aが車両上方側へ屈曲されてサイドシル18の車幅方向内側部分にスポット溶接されている。車体フロア20の両サイドの下面側には、フロアサイドメンバ22が車両前後方向を長手方向として配置されており、フロアサイドメンバ22より車幅方向内側には、左右一対のフロントフロアアンダーリインフォースメント24が車両前後方向を長手方向として配置されている。フロアサイドメンバ22及びフロントフロアアンダーリインフォースメント24は、いずれも長手直角方向の断面形状が逆ハット形状とされており、フロアサイドメンバ22の上端フランジ部及びフロントフロアアンダーリインフォースメント24の上端フランジ部は、それぞれスポット溶接等によって車体フロア20の下面に結合されている。また、車体フロア20の下面には、車幅方向を長手方向とする複数のフロアクロスメンバ(図示省略)が結合されている。なお、車体フロア20の前端部は、ダッシュパネル(図示省略)に結合され、車体フロア20の後端部は、車体後部側にて一対のサイドシル18を車幅方向に連結するフロアクロスメンバ(図示省略)に結合されている。
【0017】
車体フロア20上における車室26内の前部(前列)には、運転席及び助手席として車幅方向に並列された車両用シート(フロントシート)30が配設されている。車両用シート30は、車体フロア20に取り付けられるシート脚部31と、このシート脚部31に支持されて乗員の臀部及び大腿部を支持するシートクッション32と、このシートクッション32の後端部に傾倒可能に支持されて乗員の背面を支持するシートバック34と、シートバック34の上端部に上下調節可能に設けられて乗員の頭部を支持するヘッドレスト35と、を含んで構成されている。
【0018】
図2に示されるシートクッション32内には、骨格部材として機能するシートクッションフレーム(図示省略)が配設されている。前記シートクッションフレームには、シートクッションスプリング(図示省略)が掛け渡されており、前記シートクッションスプリング上にはシートクッション形状を形成するシートクッションパッド32Aが配置され、さらにシートクッションパッド32Aの表面が表皮材32Bで被覆されている。
【0019】
また、シートバック34内には、骨格部材として機能するシートバックフレーム(図示省略)が配設されている。前記シートバックフレームは、下端部側が開放された正面視で逆U字形状とされ、シート幅方向における両側部の下部寄りの部位が連結ロッド(シートロッド)36によって連結されている。連結ロッド36は、パイプ状とされてシート幅方向に沿って延在し、前記シートバックフレームの補強用とされている。前記シートバックフレームは、シートバック形状を形成するシートバックパッド34Aによって覆われ、さらにシートバックパッド34Aの表面が表皮材34Bで被覆されている。
【0020】
また、シートクッション32の後端部とシートバック34の下端部とは、リクライニングロッド(シートロッド)38によって連結されている。リクライニングロッド38は、パイプ状とされてシート幅方向に沿って延在し、シートバック34をシートクッション32の後端部に対して傾倒(リクライニング)させる際の揺動中心軸となっている。
【0021】
なお、連結ロッド36及びリクライニングロッド38を含むシート骨格部(いずれも図示しないシートクッションフレーム及びシートバックフレーム)は、側突荷重に対して弾性座屈を発生しないように十分な強度を備えており、側面衝突時における衝突側からの荷重を側方へ伝達できるようになっている。
【0022】
車両用シート30間(すなわち、運転席と助手席との間)には、所定の間隔が設けられており、センターコンソールボックス(バッテリボックスということもある)40が配置されている。センターコンソールボックス40は、車両前後方向に長い箱体形状に形成されており、センターコンソールボックス40内には、車両の走行用モータ等に電源を供給するための蓄電池であるバッテリ42、及び、前記バッテリ42から供給される電圧を低圧システムに供給するために降圧するDC−DCコンバータ(図示省略)等が格納されている。このように、バッテリ42がセンターコンソールボックス40内に格納されて車両用シート30間に搭載されているので、左右のバランスがとりやすく、車室26内の居住スペースも効率良く確保されている。なお、本実施形態では、特に配置していないが、車両用シート30とセンターコンソールボックス40との間の隙間に側面衝突時にエネルギー吸収を行う衝撃吸収部材を配置してもよい。
【0023】
バッテリ42には、一例として電池(例えば、リチウム電池、ニッケル水素蓄電池、ニッケルカドミウム蓄電池等)を直列に多数接続した大容量の高圧バッテリが適用される。バッテリ42は、複数に分割されたバッテリーモジュールが複数段重ねられるように配置されて直列に接続されているが、図中では、模式的に1ブロック化して図示している。
【0024】
バッテリ42を格納したセンターコンソールボックス40が配設(搭載)されるバッテリ搭載部44には、車体フロア20側と、バッテリ42側となるセンターコンソールボックス40とを連結する連結部材としての衝撃吸収ダクト46が設けられている。なお、本実施形態では、衝撃吸収ダクト46が車体フロア20とセンターコンソールボックス40とを連結しているが、例えば、バッテリ搭載部44における車体フロア20上に被覆材が敷設(固定)されている場合には、衝撃吸収ダクト46は、車体フロア20及び前記被覆材(車体フロア20側)と、センターコンソールボックス40(バッテリ42側)と、を連結することになる。衝撃吸収ダクト46は、アルミ押出材で形成され、車体上下方向に離間して配置される車体フロア20側とセンターコンソールボックス40(バッテリ42側)との間に配設されて車両前後方向に延在し、バッテリ42の車体下方側に配置されてバッテリ42を冷却するための冷却風を通すダクト(エアダクト)の一部、換言すれば、冷却風の経路の一部を構成している。
【0025】
衝撃吸収ダクト46の車両前方側には、バッテリ42の冷却用としてブロアファン52が設けられ、ブロアファン52には、図示しないブロアモータが接続されている。ブロアファン52は、ダクト54を介して衝撃吸収ダクト46へ送風するようになっている。また、模式的な断面図である図3に示されるように、衝撃吸収ダクト46及びセンターコンソールボックス40の車両後方側には、衝撃吸収ダクト46とは別体とされた樹脂製のダクト56が配設されている。ダクト56は、衝撃吸収ダクト46に接続されると共にセンターコンソールボックス40に接続され、衝撃吸収ダクト46からの冷却風をセンターコンソールボックス40内へ送るための経路となっている(図中では、矢印Dにより冷却風の方向を示す。)。なお、衝撃吸収ダクト46をセンターコンソールボックス40の車体下方側へ配設してセンターコンソールボックス40の車体後方側へバッテリ42冷却用の送風経路を延ばすことで、送風方向の多様な設定が容易になる。
【0026】
図2及び図4(A)に示されるように、衝撃吸収ダクト46は、センターコンソールボックス40の下面と面接触される平板状の上壁部46Aと、車体フロア20と面接触される平板状の下壁部46Bと、上壁部46Aと下壁部46Bとを車体上下方向に接続する平板状かつ左右一対の縦壁部46Cと、を備えており、上壁部46A、下壁部46B、及び縦壁部46Cによって車両前後方向に延在してダクトとして機能する矩形閉断面(中空断面)構造が構成されている。
【0027】
図4(A)に示されるように、上壁部46Aにて車両正面視で縦壁部46Cよりも車幅方向外側へ向けて延設された両端フランジ部146Aは、センターコンソールボックス40の下部にて車幅方向外側へ向けて延設された両端フランジ部140と重ね合わせられ、締結具(ボルト48及びナット49)により固定されている。下壁部46Bにて車両正面視で縦壁部46Cよりも車幅方向外側へ向けて延設された両端フランジ部146Bは、車体フロア20に締結具(ボルト50及びナット51)により固定されている。
【0028】
衝撃吸収ダクト46は、通常走行時には変形しない剛性を備えると共に、図4(B)に示されるように、センターコンソールボックス40(バッテリ42側)からの所定値以上の荷重fの入力時に縦壁部46Cが曲げ変形することによりエネルギー吸収を行うように設定されている。
【0029】
(作用・効果)
次に、上記実施形態の作用及び効果について説明する。
【0030】
図1に示されるように、車両10が側面衝突された場合、衝突荷重Fは、フロントサイドドア14から車両用シート30における連結ロッド36及びリクライニングロッド38へ(矢印A方向へ)伝達された後、連結ロッド36及びリクライニングロッド38からバッテリ42が格納されたセンターコンソールボックス40へ(矢印B方向へ)伝達される。これによって、センターコンソールボックス40には、倒れ込む方向、換言すれば、衝撃吸収ダクト46側への荷重fが発生する。
【0031】
ここで、バッテリ搭載部44では、衝撃吸収ダクト46が車体フロア20側とセンターコンソールボックス40(バッテリ42側)とを連結すると共にセンターコンソールボックス40(バッテリ42側)からの所定値以上の荷重fの入力時に変形することによりエネルギー吸収を行うように設定されているので、側面衝突時にセンターコンソールボックス40から衝撃吸収ダクト46へ所定値以上の荷重fが入力されると、衝撃吸収ダクト46が、図4(A)に示される状態から図4(B)に示されるように縦壁部46Cが曲げ変形することによってバッテリ42を格納したセンターコンソールボックス40の運動エネルギーが吸収(EA)される。
【0032】
倒れ込むセンターコンソールボックス40は、図1に示される反衝突側(図中の右側)の車両用シート30における連結ロッド36及びリクライニングロッド38によって支持され(図示省略)、さらに、これらの連結ロッド36及びリクライニングロッド38から反衝突側(図中の右側)のフロントサイドドア14へ(矢印C方向へ)荷重が伝達される。
【0033】
その結果、側面衝突時に車体側部12(車両側面)に加わる運動エネルギーTは、車両質量をM、衝突速度をV、衝撃吸収ダクト46によるエネルギー吸収量をEとすると、T=(1/2)MV−Eとなり、衝撃吸収ダクト46を設けない対比構造において側面衝突時に車体側部12(車両側面)に加わる運動エネルギー(T=(1/2)MV)に比べて、車体側部12(車両側面)に加わる運動エネルギーTを抑えることができる。このため、車体側部12(車両側面)における変形量も抑制することができる。補足すると、一般に、バッテリ42単体の質量は比較的大きいため(一例として、60kg)、側面衝突時にはバッテリ42が車体側部12の変形に大きな影響を与えることになるが、本実施形態によれば、衝撃吸収ダクト46がエネルギーを吸収することで、前述の通り、車体側部12(車両側面)における変形量を抑制することができる。
【0034】
また、本実施形態では、衝撃吸収ダクト46は、車体上下方向に離間して配置される車体フロア20側とセンターコンソールボックス40(バッテリ42側)との間に配設されているので、例えば、図4(A)に示される衝撃吸収ダクト46における縦壁部46Cの高さ寸法や板厚寸法の設定を変えることによって、側面衝突時における衝撃吸収ダクト46の荷重−変形特性(F−S特性)を容易に変えること(即ち、チューニングを容易に行うこと)ができる。また、このような構造によれば、例えば、バッテリの側方に連結部材を設置できないレイアウトの車両に対しても連結部材を設置できる。
【0035】
また、図2に示されるように、バッテリ42を冷却するための冷却風を通すダクトの一部が、衝撃吸収ダクト46によって構成されているので、設置スペースに制約がある車両用シート30間において、シート間スペースを有効利用してバッテリ冷却用の冷却風を通すことができ、冷却風の経路の簡素化を図ることが可能になる。また、連結部材とダクトとを別体にしてセンターコンソールボックス(40)の車体下方側に配設した(例えば、二重管構造状等の)対比構造に比べて、バッテリ42が格納されたセンターコンソールボックス40を低配置化し易く、かつ、荷重−変形特性の設定がし易い。なお、バッテリ42が格納されたセンターコンソールボックス40を低位置に配置させれば、センターコンソールボックス40の重心を下げることができ、側面衝突時においてセンターコンソールボックス40が倒れ込む際のモーメントアーム長を抑えることができる。
【0036】
以上説明したように、本実施形態に係るバッテリ搭載部のエネルギー吸収構造によれば、側面衝突時にバッテリ42の運動エネルギーを効果的に吸収することができる。
【0037】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2の実施形態に係るバッテリ搭載部のエネルギー吸収構造について、図5〜図7に基づいて説明する。なお、第2の実施形態は、以下に説明する点を除いて、第1の実施形態とほぼ同様の構成となっている。よって、第1の実施形態と実質的に同様の構成部については、同一符号を付して説明を省略する。
【0038】
図5及び図6に示されるように、バッテリ搭載部44では、車体フロア20側とセンターコンソールボックス40(バッテリ42側)とが連結部材としての連結ブラケット60によって連結されている。連結ブラケット60は、アルミ押出材で形成され、車体上下方向に離間して配置される車体フロア20側とセンターコンソールボックス40(バッテリ42側)との間に配設されて車両前後方向に延在している。
【0039】
図6及び図7(A)に示されるように、連結ブラケット60は、車両正面視で略M字形状とされ、車両正面視で左右両端部に設けられて車体フロア20に締結具(ボルト50及びナット51)により固定されるフランジ部60Aと、センターコンソールボックス40の両端フランジ部140と重ね合わせられて締結具(ボルト48及びナット49)により固定される左右一対の頂壁部60Bと、車両正面視の左右両側でフランジ部60Aと頂壁部60Bとを接続する縦壁部60Cと、頂壁部60Bの車幅方向内側端部から略車体下方側へ延設された垂下部60Dと、左右一対の垂下部60Dの下端部同士を接続すると共に車体フロア20の近接位置でかつ車体フロア20に略平行に配設された底壁部60Eと、を備えている。
【0040】
連結ブラケット60は、通常走行時には変形しない剛性を備えると共に、図7(B)に示されるように、センターコンソールボックス40(バッテリ42側)からの所定値以上の荷重fの入力時に縦壁部60Cが曲げ変形すると共に底壁部60Eが車体フロア20に当接した後には垂下部60Dが曲げ変形することによりエネルギー吸収を行うように設定されている。
【0041】
このような構成によっても、第1の実施形態と同様の作用によって、側面衝突時にバッテリ42の運動エネルギーを効果的に吸収することができる。また、連結ブラケット60の高さ寸法や板厚寸法、さらには底壁部60Eの高さ位置等の設定を変えることによって、側面衝突時における連結ブラケット60の荷重−変形特性を容易に変えることができるので、荷重−変形特性のチューニングを容易に行うことが可能になる。さらに、連結ブラケット60を車両正面視で略M字形状とすることで、例えば、底壁部60Eの位置をより車体上方側へ上げれば、底壁部60Eと車体フロア20との間にダクトを配置することが可能になる等、レイアウトの自由度も高い。なお、本実施形態の場合、バッテリ42を冷却するための冷却風を通すダクトは、センターコンソールボックス40の車体前方側に配置してもよい。
【0042】
[第3実施形態]
次に、本発明の第3の実施形態に係るバッテリ搭載部のエネルギー吸収構造について、図8〜図10に基づいて説明する。なお、第3の実施形態は、以下に説明する点を除いて、第1の実施形態とほぼ同様の構成となっている。よって、第1の実施形態と実質的に同様の構成部については、同一符号を付して説明を省略する。
【0043】
図8及び図9に示されるように、バッテリ42が格納されたセンターコンソールボックス40の下部側方には、車体フロア20側とセンターコンソールボックス40(バッテリ42側)とを連結する連結部材としての連結ブラケット62が左右一対設けられている。一対の連結ブラケット62は、アルミ押出材で形成され、車両正面視で逆L字形状及びL字形状とされて車両前後方向に延在している。
【0044】
図9及び図10(A)に示されるように、一対の連結ブラケット62は、車体フロア20に接着若しくは溶接、又は締結等により固定される平板状の水平部62Aと、水平部62Aの車幅方向内側端部にて車体上方側へ直角に屈曲されてセンターコンソールボックス40の下部側面に接着又は締結等により固定される平板状の垂直部62Bと、を備えている。水平部62Aには、板厚方向に貫通した円孔(貫通孔)64が水平部62Aの長手方向(車両前後方向)に沿って複数形成されている。
【0045】
円孔64と円孔64との間の接続部162Aは、水平部62Aの一般面に沿う方向でかつ長手方向に直角な方向(すなわち、車幅方向)への所定値以上の引っ張り荷重が作用した場合に伸び変形して破断する部分となっている。また、水平部62Aは、複数の円孔64が形成されることで、剛性が低下しており、車幅方向への圧縮荷重が作用した場合に車両正面視で波状に湾曲して圧縮変形し易い構造になっている。これにより、連結ブラケット62は、通常走行時には変形しない剛性を備えると共に、図10(B)に示されるように、センターコンソールボックス40(バッテリ42側)からの所定値以上の荷重fの入力時に変形することによりエネルギー吸収を行うようになっている。
【0046】
上記構成によれば、側面衝突時にセンターコンソールボックス40(バッテリ42側)からの所定値以上の荷重fが入力された場合、一対の垂直部62Bが倒れ込むように変形しながら、一方側(図中左側の衝突側)の水平部62Aに車幅方向への引っ張り荷重を作用させると共に、他方側(図中右側の反衝突側)の水平部62Aに車幅方向への圧縮荷重を作用させる。これによって、一方側(衝突側)の水平部62Aが伸び変形後に破断し、他方側(反衝突側)の水平部62Aが圧縮変形する。その結果として、側面衝突時にバッテリ42の運動エネルギーを効果的に吸収することができる。
【0047】
[実施形態の補足説明]
なお、上記第1の実施形態では、図4(A)に示されるように、衝撃吸収ダクト46は、上壁部46A、下壁部46B、及び縦壁部46Cによって、バッテリ42を冷却するための冷却風の通路とされる矩形閉断面を形成しているが、前記冷却風を通すダクトの少なくとも一部を構成する連結部材における長手直角方向の閉断面形状は、例えば、第1の実施形態における上壁部46Aの形状を、第2の実施形態における図7(A)に示される連結ブラケット60の頂壁部60B、垂下部60D、及び底壁部60Eのような形状に置き換えた閉断面形状等のように他の閉断面形状であってもよい。
【0048】
また、上記第1の実施形態では、衝撃吸収ダクト46が、バッテリ42を冷却するための冷却風を通すダクトの一部を構成しているが、前記ダクトを兼ねる連結部材は、バッテリを冷却するための冷却風を通すダクトの全部を構成していてもよい。
【0049】
さらに、第1の実施形態における衝撃吸収ダクト46における縦壁部46C(図4(A)参照)や第2の実施形態における連結ブラケット60における縦壁部60C及び垂下部60D(図7(A)参照)には、例えば、センターコンソールボックス40(バッテリ42側)から衝撃吸収ダクト46や連結ブラケット60(連結部材)への所定値以上の荷重fの入力時に縦壁部46C、60Cや垂下部60Dを座屈させる起点となる屈曲部や薄肉部等のような弱化部を設けてもよい。このようにすれば、変形タイミングや変形モードを安定させることができる。
【0050】
さらにまた、上記第2、第3の実施形態における連結部材としての連結ブラケット60、62は、図6及び図9に示されるように、車両前後方向に連続して延在しているが、連結部材は、例えば、車両前後方向に断続的に(不連続に)分割されて配置されてもよい。
【0051】
なお、上記第3の実施形態では、図9に示されるように、連結ブラケット62の水平部62Aには、複数の円孔64が水平部62Aの長手方向(車両前後方向)に沿って複数形成されているが、水平部62Aには、例えば、円孔64の代わりに車幅方向に延びるスリットを複数形成する等のように他の脆弱構造を適用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るバッテリ搭載部のエネルギー吸収構造が適用された車両の車体前部を透視した状態で示す概略正面図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係るバッテリ搭載部のエネルギー吸収構造を示す斜視図である。
【図3】図1の3−3線に沿う拡大断面を模式的に示す断面図である。
【図4】本発明の第1の実施形態における衝撃吸収ダクトを荷重入力前後の状態で示す斜視図である。図4(A)は、センターコンソールボックスからの所定値以上の荷重が入力される前の状態を示す。図4(B)は、センターコンソールボックスからの所定値以上の荷重が入力された後の状態を示す。
【図5】本発明の第2の実施形態に係るバッテリ搭載部のエネルギー吸収構造が適用された車両の車体前部を透視した状態で示す概略正面図である。
【図6】本発明の第2の実施形態に係るバッテリ搭載部のエネルギー吸収構造を示す斜視図である。
【図7】本発明の第2の実施形態における連結ブラケットを荷重入力前後の状態で示す正面図である。図7(A)は、センターコンソールボックスからの所定値以上の荷重が入力される前の状態を示す。図7(B)は、センターコンソールボックスからの所定値以上の荷重が入力された後の状態を示す。
【図8】本発明の第3の実施形態に係るバッテリ搭載部のエネルギー吸収構造が適用された車両の車体前部を透視した状態で示す概略正面図である。
【図9】本発明の第3の実施形態に係るバッテリ搭載部のエネルギー吸収構造を示す斜視図である。
【図10】本発明の第3の実施形態における連結ブラケットを荷重入力前後の状態で示す斜視図である。図10(A)は、センターコンソールボックスからの所定値以上の荷重が入力される前の状態を示す。図10(B)は、センターコンソールボックスからの所定値以上の荷重が入力された後の状態を示す。
【符号の説明】
【0053】
10 車両
20 車体フロア
30 車両用シート
42 バッテリ
44 バッテリ搭載部
46 衝撃吸収ダクト(連結部材、ダクト)
54 ダクト
56 ダクト
60 連結ブラケット(連結部材)
62 連結ブラケット(連結部材)
f センターコンソールボックスからの所定値以上の荷重(バッテリ側からの所定値以上の荷重)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体フロア上に並列された車両用シート間にバッテリが搭載される車両に適用されるバッテリ搭載部のエネルギー吸収構造であって、
前記車体フロア側と前記バッテリ側とを連結し、前記バッテリ側からの所定値以上の荷重の入力時に変形することによりエネルギー吸収を行う連結部材を備えていることを特徴とするバッテリ搭載部のエネルギー吸収構造。
【請求項2】
前記連結部材は、車体上下方向に離間して配置される前記車体フロア側と前記バッテリ側との間に配設されていることを特徴とする請求項1記載のバッテリ搭載部のエネルギー吸収構造。
【請求項3】
前記バッテリを冷却するための冷却風を通すダクトの少なくとも一部が、前記バッテリの車体下方側に配置されて前記連結部材によって構成されていることを特徴とする請求項2記載のバッテリ搭載部のエネルギー吸収構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−35094(P2009−35094A)
【公開日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−200366(P2007−200366)
【出願日】平成19年8月1日(2007.8.1)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】