説明

バルブ駆動装置

【課題】 ウェイストゲートバルブ1の全閉時または全開時におけるモータ保持電流を低減することを課題とする。
【解決手段】 ウェイストゲートバルブ1の開閉制御を行う電動アクチュエータは、ロッド4の軸線方向の中心線上(ロッド軸中心線RC上)の荷重作用方向と、プレートカム17とフォロワ19との接触面上の共通接線T方向とが垂直に交差する位置関係となっている。これにより、ロッド4からプレートカム17に伝わる荷重(バルブ反力)がプレートカム17を回転させる方向に働かないようになる。したがって、ウェイストゲートバルブ1の全開時および全閉時に、ロッド4からプレートカム17に伝わる荷重(バルブ反力)に抗して、ウェイストゲートバルブ1を全開位置および全閉位置に静止状態で保持するのに必要なモータ保持電流を共に低減できるので、消費電力を抑えることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータの回転軸の回転を減速機構で減速し、減速機構の回転運動を往復直線運動に変換して、バルブを駆動するバルブ駆動装置に関するもので、特にウェイストゲートバルブ制御用アクチュエータまたはEGRバルブ制御用アクチュエータに用いて好適なバルブ駆動装置に係わる。
【背景技術】
【0002】
[従来の技術]
従来より、バルブを駆動するバルブ駆動装置として、図6および図7に示したように、電動モータ101および軸線方向に往復移動するロッド102を備えた電動アクチュエータが公知である(例えば、特許文献1参照)。
この電動アクチュエータは、電動モータ101の回転を2段減速する減速機構と、この減速機構の回転運動をロッド102の直線運動に変換する往復スライダリンク機構と、ロッド102を往復移動方向に支持する軸受103とを備えている。
減速機構は、電動モータ101の出力軸に固定されたピニオンギヤ104、ピニオンギヤ104と噛み合って回転する中間ギヤ105、およびこの中間ギヤ105と噛み合って回転する最終ギヤ106等を有している。また、中間ギヤ105は、支持軸111の外周に回転自在に取り付けられている。また、最終ギヤ106は、支持軸112の外周に回転自在に取り付けられている。
【0003】
電動アクチュエータのロッド102には、ファーストピボット113を介してトグルレバー107が連結されている。また、最終ギヤ106には、セカンドピボット114を介してトグルレバー107が連結されている。そして、ファーストピボット113は、トグルレバー107の第1嵌合孔に打ち込まれてトグルレバー107に固定されており、セカンドピボット114は、トグルレバー107の第2嵌合孔に打ち込まれてトグルレバー107に固定されている。
特許文献1に記載の電動アクチュエータは、電動モータ101が減速機構の3つのギヤ104〜106を回転させ、最終ギヤ106にセカンドピボット114を介して連結したトグルレバー107がロッド102をその軸線方向に押圧(あるいは引き戻)して最終ギヤ106の回転運動をロッド102の往復直線運動に変換するように構成されている。
ここで、108は電動アクチュエータにより開閉制御される円板状のポペットバルブである。
【0004】
[従来の技術の不具合]
ところが、特許文献1に記載の電動アクチュエータにおいては、最終ギヤ106の回転中心C1とセカンドピボット114の回転中心C2とを結んだ直線L1と、セカンドピボット114の回転中心C2とファーストピボット113の回転中心C3とを結んだ直線L2との交差角度(θ)を鋭角(<90°)にすることで、バルブ108の全閉時のリンク効率を向上させているが、ロッド102の荷重作用方向と同一方向ではないため、リンク効率の最大点で使用していない。
また、電動アクチュエータは、往復スライダリンク機構を備えた構造であるため、バルブ108の全閉位置ではリンク効率が上がるため、モータ保持電流を少なくすることができるが、バルブ108の全開位置では逆にリンク効率が落ちるため、例えばロッド102からの荷重がトグルレバー107を回転させる方向に働く可能性がある。これにより、バルブ108を全開位置に止めるために、所定の保持電流が必要となるので、バルブ全開時の消費電流が大きくなるという問題がある。
【0005】
ここで、ターボチャージャを備えた内燃機関(エンジン)の排気通路には、過給圧または排気圧が過大とならないように、タービンを迂回するバイパス通路を開閉するウェイストゲートバルブが設置されている。
このウェイストゲースバルブを駆動する電動アクチュエータのように、全閉位置から全開位置への開弁制御、あるいは全開位置から全閉位置への閉弁制御の使用頻度が多いアクチュエータに、特許文献1に記載の電動アクチュエータを適用する場合には、バルブ全開時に所定の保持電流が必要となるので、消費電流が大きくなるという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第2009/062928号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、バルブの全閉時または全開時に、ロッドからの荷重(バルブ反力)がカムを回転させる方向に働かないようにすることで、バルブの全閉時または全開時におけるモータ保持電流を低減することのできるバルブ駆動装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の発明は、モータ、減速機構、カム、フォロワおよびロッドを備え、モータの回転を減速する減速機構の回転運動をロッドの往復運動に変換してバルブを全閉方向または全開方向に駆動するバルブ駆動装置において、バルブの全閉時または全開時に、ロッドの軸線方向の中心線上の荷重作用方向と、カムとフォロワとの接触面上の共通接線方向とが垂直に交差する位置関係(構成)となっていることを特徴としている。
【0009】
請求項1に記載の発明によれば、ロッドの支軸を通じてフォロワがカムを押す力がモータ駆動時の負荷となるが、ロッドの軸線方向の中心線上の荷重作用方向と、カムとフォロワとの接触面上の共通接線方向とが垂直に交差する位置関係となっているので、ロッドからの荷重(バルブ反力)がカムを回転させる方向に働かないようになる。
したがって、バルブの全閉時または全開時に、ロッドからの荷重(バルブ反力)に抗して、バルブをバルブの全閉位置または全開位置に静止状態で保持するのに必要なモータ保持電流を低減できるので、消費電力を抑えることができる。
ここで、仮に、請求項1に記載の発明、つまりバルブ駆動装置を、バルブを全閉位置または全開位置に駆動する使用頻度の多いアクチュエータ(例えばウェイストゲースバルブやEGRバルブを開閉制御するアクチュエータ)に適用した場合であっても、バルブの全閉時または全開時の消費電力(消費電流)が少なくなる。
【0010】
請求項2に記載の発明によれば、ロッドの軸線方向の中心線上に、カムの回転中心およびフォロワの回転中心がある位置関係(構成)となっている。これにより、バルブの全閉時または全開時に、バルブをバルブの全閉位置または全開位置に保持するのに必要なモータ保持電流を効果的に低減できるので、消費電力をより低減することができる。
【0011】
請求項3に記載の発明によれば、モータ(の出力軸)の回転を(所定の減速比となるように)減速する減速機構を、モータによって回転駆動される第1ギヤ、およびこの第1ギヤと噛み合って回転する第2ギヤによって構成している。
減速機構として、例えばモータの出力軸に固定されるピニオンギヤ、このピニオンギヤに噛み合って回転する中間ギヤ、およびこの中間ギヤに噛み合って回転する最終ギヤ等を有する2段減速ギヤ機構を用いても良い。また、減速機構として、ウォームギヤ(その他ヘリカルギヤ、スパーギヤ、出力ギヤ)等を有する多段減速ギヤ機構を用いても良い。
【0012】
請求項4に記載の発明によれば、ロッドの荷重作用方向のバルブ全閉側を基準とした場合、フォロワ、カムの回転中心、ロッドの順に設置される位置関係(構成)となっている。これにより、バルブの全閉時または全開時に、バルブをバルブの全閉位置または全開位置に保持するのに必要なモータ保持電流を効果的に低減できるので、消費電力をより低減することができる。
【0013】
請求項5に記載の発明によれば、カムの回転中心とフォロワの回転中心とを結ぶ直線と、カムの回転中心と第1ギヤの回転中心とを結ぶ直線とが略一致(略同一直線上に位置)する位置関係(構成)となっている。
ここで、第2ギヤの回転軸とカムの回転軸とを共通化(同一部品で構成)した場合、カムの回転角度と第2ギヤの作動角度とが等しくなる。
このとき、カムの回転中心とフォロワの回転中心とを結ぶ直線と、カムの回転中心(=第2ギヤの回転中心)と第1ギヤの回転中心(=第1ギヤと第2ギヤとの噛み合い位置)とを結ぶ直線とが略一致する位置関係としたことにより、カムの作動軌跡(の投影面)内に第2ギヤの作動軌跡をほぼ一致させる(入れる)ことができる。したがって、カムの作動軌跡と第2ギヤの作動軌跡とが大きく異なる装置と比べて、バルブ駆動装置の体格を小型化できるので、車両等への搭載性を向上することができる。
【0014】
請求項6に記載の発明によれば、ロッドを往復移動方向(荷重作用方向)に支持するロッド軸受を設置している。なお、ロッドに対して、バルブを閉じる側または開く側に付勢する付勢力(荷重)を発生するスプリング等のロッド付勢手段を設置しても良い。
請求項7に記載の発明によれば、バルブの動作パターンに対応した形状のカム溝を有するカムは、カム溝のバルブ全閉側端またはバルブ全開側端が、カムの回転方向の外側に開放されている。
これによって、カムのカム溝のバルブ全閉側端またはバルブ全開側端(バルブの動作パターンにおける一端)を切り欠く(開放する)。そして、切り欠いた側の作動方向(バルブ全開側を開放した場合はバルブ開方向またはバルブ全閉側を開放した場合はバルブ閉方向)にカムをオーバーターンさせることにより、ロッドをロッド軸受に差し込みながら、ロッドの支軸に回転自在に支持されるフォロワを、カム溝内に容易に挿入することが可能となる。これにより、例えば第2ギヤに一体的に装着されているカムに対する、支軸にフォロワを装着したロッドを組み付ける際の組付作業性を向上できるので、バルブ駆動装置の製造コストの上昇を抑えることができる。
【0015】
請求項8に記載の発明によれば、カムに、カム溝よりもカムの半径方向の外径側に設置された外側部、カム溝よりも前記カムの半径方向の内径側に設置された内側部、および外側部と内側部とを連結するブリッジを設けている。
ここで、カムのカム溝のバルブ全閉側端またはバルブ全開側端(バルブの動作パターンにおける一端)を切り欠く(開放する)と、切り欠いた側(開放した側)のカムの強度が低下する。そこで、例えばロッドに設けられる支軸の軸方向の一方側またはフォロワの回転軸方向の一方側、つまり支軸またはフォロワに干渉しない位置で、外側部と内側部とを連結するブリッジを設置しても良い。また、カムのカム溝における切り欠いた側(開放した側)の一部またはカム溝における全領域で、外側部と内側部とを連結するブリッジを設置しても良い。
この場合、切り欠いた側(開放した側)のカムの強度を確保することができる。
【0016】
請求項9に記載の発明によれば、バルブ駆動装置のロッドとバルブとの間に、ロッドの直線運動をバルブの回転運動に変換するリンク機構を設置している。
このリンク機構は、ロッドとバルブとを連結するレバー等を有している。
ロッドは、レバーを回転自在に支持する第1ヒンジピンを有している。例えば第1ヒンジピンは、ロッドに一体的に形成、あるいはロッドに固定されている。
バルブは、レバーを回転自在に支持する第2ヒンジピンを有している。例えば第2ヒンジピンは、バルブに一体的に形成、あるいはバルブに固定されている。
バルブ駆動装置のロッドに駆動されるバルブとは、第1ヒンジピン、レバーおよび第2ヒンジピンを介して、ロッドの荷重作用方向(往復移動方向)の先端側に連結されるヒンジバルブのことである。
この場合、バルブ駆動装置を、ウェイストゲートバルブまたはEGRバルブ等の排気ガス制御バルブを開閉制御するアクチュエータ、あるいは可変容量ターボチャージャの制御用アクチュエータとして使用することができる。
請求項10に記載の発明によれば、バルブとは、ロッドの荷重作用方向(往復移動方向)の先端側に設置されるポペットバルブのことである。
この場合、バルブ駆動装置を、EGRバルブ等の排気ガス制御バルブを開閉制御するアクチュエータとして使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】電動アクチュエータのバルブ全閉状態を示した説明図である(実施例1)。
【図2】電動アクチュエータのバルブ全閉状態を示した断面図である(実施例1)。
【図3】電動アクチュエータのバルブ全開状態を示した説明図である(実施例1)。
【図4】電動アクチュエータのバルブ全開状態を示した断面図である(実施例1)。
【図5】電動アクチュエータのバルブ全閉状態を示した説明図である(実施例2)。
【図6】電動アクチュエータを示した正面図である(従来の技術)。
【図7】電動アクチュエータを示した側面図である(従来の技術)。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態を、図面に基づいて詳細に説明する。
本発明は、ロッドからの荷重(バルブ反力)に抗して、バルブをバルブの全閉位置または全開位置に静止状態で保持するのに必要なモータ保持電流を低減して消費電力を抑えるという目的を、(バルブの全閉時または全開時におけるリンク効率を上げて、)ロッドからの荷重(バルブ反力)がカムを回転させる方向に働かないようにすることで実現した。 具体的には、バルブの全閉時または全開時に、ロッドの軸線方向の中心線上の荷重作用方向と、カムとフォロワとの接触面上の共通接線方向とが垂直に交差する位置関係となっている。
また、ロッドの軸線方向の中心線上に、カムの回転中心およびフォロワの回転中心がある位置関係(構成)となっている。
さらに、ロッドの荷重作用方向のバルブ全閉側を基準とした場合、フォロワ、カムの回転中心、ロッドの順に設置される位置関係(構成)となっている。
【実施例1】
【0019】
[実施例1の構成]
図1ないし図4は本発明の実施例1を示したもので、図1および図2はウェイストゲートバルブ(ヒンジバルブ)の全閉時における電動アクチュエータの作動状態を示した図で、図3および図4はウェイストゲートバルブの全開時における電動アクチュエータの作動状態を示した図である。
【0020】
本実施例のバルブ駆動装置は、ウェイストゲートバルブ(ヒンジバルブ)1を開閉駆動する電動アクチュエータとして使用される。
ウェイストゲートバルブ1は、内燃機関(エンジン)に設置されるターボチャージャのウェイストゲート流路を開閉する排気ガス制御弁の弁体である。このウェイストゲートバルブ1は、エンジン運転時に、エンジン制御ユニット(ECU)からの制御信号に基づいて、バルブ全閉位置(図1参照)からバルブ全開位置(図3参照)に至るまでのバルブ作動範囲で回転動作されることで、ウェイストゲート流路の開口面積(排気ガス流通面積)を変更する。
ウェイストゲートバルブ1の背面(隔壁:バルブシートに着座する着座面に対して反対側の端面)には、L字状のシャフト2が一体的に設けられている。
なお、ウェイストゲートバルブ1の詳細は、後述する。
【0021】
電動アクチュエータは、ウェイストゲートバルブ1のシャフト2にリンクレバー3等のリンク機構を介して連結すると共に、軸線方向と同一方向の荷重作用方向に往復移動するロッド4を備えている。この電動アクチュエータは、ロッド4の往復移動方向(荷重作用方向)への移動量(ロッド4のストローク量)に応じてウェイストゲートバルブ1の開閉制御を行う。
電動アクチュエータは、ロッド4の他に、ロッド4をその往復移動方向に摺動自在に支持するロッド軸受(スラスト軸受)6と、ロッド4に対して、ウェイストゲートバルブ1を閉じる側(バルブ全閉側)に付勢する付勢力(スプリング荷重)を発生するコイルスプリング8と、電動アクチュエータの各構成部品を収容するアクチュエータケースとを備えている。ここで、電動アクチュエータのロッド4は、その軸線方向の先端側が、アクチュエータケースの円環状の端面よりアクチュエータケース外部側に突出している。
なお、電動アクチュエータの詳細は、後述する。
【0022】
エンジンは、複数の気筒を有する多気筒ディーゼルエンジンが採用されている。このエンジンの複数(各気筒毎)の吸気ポートには、吸入空気が流れる吸気管が接続されている。この吸気管の途中には、ターボチャージャのコンプレッサ、インタークーラ、スロットルバルブおよびインテークマニホールド等が設置されている。
また、エンジンの複数(各気筒毎)の排気ポートには、排気ガスが流れる排気管が接続されている。この排気管の途中には、エキゾーストマニホールドおよびターボチャージャのタービン等が設置されている。
【0023】
ターボチャージャは、タービンとコンプレッサとを備え、吸入空気をコンプレッサで圧縮し、圧縮された空気をエンジンの各気筒毎の燃焼室に送り込むターボ過給機である。
タービンは、渦巻形状のタービンハウジングを備えている。このタービンハウジング内には、タービンインペラ(タービンホイール)が設置されている。
コンプレッサは、渦巻形状のコンプレッサハウジングを備えている。このコンプレッサハウジング内には、コンプレッサインペラ(コンプレッサホイール)が設置されている。 また、タービンインペラとコンプレッサインペラとは、ロータシャフトによって一体となって回転するように連結されている。
ターボチャージャは、タービンインペラが排気ガスにより回転駆動されると、コンプレッサインペラも回転し、このコンプレッサインペラが吸入空気を圧縮する。
【0024】
ここで、本実施例のターボチャージャのタービンハウジングには、ウェイストゲート流路およびウェイストゲートバルブ1が設けられている。
ウェイストゲート流路は、タービンハウジングに導入された排気ガスを、タービンインペラを経由しないで、つまりタービンインペラを迂回(バイパス)してタービンインペラよりも下流側の排気通路へ流すためのバイパス通路(流体通路)である。
あるいはウェイストゲート流路は、エンジンより流出した排気ガスを、エキゾーストマニホールドの集合部よりも下流側から分岐して、ターボチャージャのタービンよりも排気ガス流方向の下流側で吸気通路に合流させる、つまり排気ガスをタービンハウジングよりバイパスさせるためのバイパス通路(流体通路)である。
【0025】
本実施例のウェイストゲート流路は、タービンハウジングの入口部の隔壁で開口した上流側連通孔(ウェイストゲートポ−ト)と、タービンハウジングの出口部の隔壁で開口した下流側連通孔とを連通する。
ウェイストゲートバルブ1は、例えばステンレス鋼等の金属材料によって円板形状に形成されている。このウェイストゲートバルブ1は、電動アクチュエータのロッド4の軸線方向の先端部に接続されて、タービンハウジングの入口部の隔壁(バルブシート)に対して着座、離脱して、ウェイストゲート流路、特にウェイストゲートポ−トを開閉する排気ガス制御弁である。
【0026】
ウェイストゲートバルブ1のシャフト2と電動アクチュエータのロッド4との間には、電動アクチュエータのロッド4の直線運動をウェイストゲートバルブ1の回転運動に変換するリンク機構が設置されている。
このリンク機構は、図1および図3に示したように、一端側が電動アクチュエータのロッド4の荷重作用方向(往復移動方向)の先端側に連結し、且つ他端側がウェイストゲートバルブ1のシャフト2の先端側(バルブ側に対して反対側)に連結したリンクレバー3等を有している。
ここで、ロッド4の荷重作用方向の先端側には、ロッド4の裏面側から打ち込まれて表面側に突出した第1ヒンジピン11が固定(または一体的に形成)されている。
また、ウェイストゲートバルブ1のシャフト2には、第1ヒンジピン11と同一方向に突出した第2ヒンジピン12が一体的に形成(または固定)されている。
【0027】
リンクレバー3は、第1ヒンジピン11の外周に回転自在に支持されている。また、リンクレバー3は、第2ヒンジピン12に固定されている。
第1ヒンジピン11は、ウェイストゲートバルブ1、リンクレバー3およびシャフト2等を回転自在に支持している。
第2ヒンジピン12は、途中で直角に屈曲したシャフト2の電動アクチュエータ側端部に固定されている。この第2ヒンジピン12は、ターボチャージャのタービンハウジングの側壁部に回転自在に支持されている。また、第2ヒンジピン12の中心は、ウェイストゲートバルブ1の回転中心となっている。
以上によって、ウェイストゲートバルブ1は、第1ヒンジピン11、リンクレバー3、第2ヒンジピン12を介して、ロッド4の荷重作用方向の先端側に連結されるヒンジバルブを構成する。
【0028】
次に、本実施例の電動アクチュエータの詳細を図1ないし図4に基づいて説明する。
電動アクチュエータは、ロッド4、スラスト軸受6、コイルスプリング8およびアクチュエータケースの他に、動力源である電動モータMと、この電動モータMの回転を2段減速する減速機構と、この減速機構の回転運動をロッド4の往復直線運動に変換する変換機構とを備えている。
減速機構は、3つの減速ギヤにより構成されている。減速機構は、電動モータMのモータシャフト(回転軸、出力軸)13に固定されたピニオンギヤ(モータギヤ)14、このピニオンギヤ14と噛み合って回転する中間ギヤ(第1ギヤ)15、およびこの中間ギヤ15と噛み合って回転する最終ギヤ(第2ギヤ)16等によって構成されている。
変換機構は、最終ギヤ16と一体的に回転するプレートカム17、このプレートカム17のカム溝18内に移動自在に挿入されるフォロワ19、およびこのフォロワ19を回転自在に支持するピボットピン20等によって構成されている。
【0029】
ここで、電動アクチュエータのアクチュエータケースは、電動モータMを収容保持するモータハウジング21と、減速機構および変換機構を回転自在に収容するギヤハウジング22と、このギヤハウジング22の開口部を塞ぐカバー(蓋体)23とを備えている。
モータハウジング21、ギヤハウジング22は、金属材料によって形成されている。また、カバー23は、金属材料または樹脂材料によって形成されている。
電動アクチュエータのロッド4は、その軸線方向と同一方向の荷重作用方向に真っ直ぐに延びている。このロッド4は、フォロワ19およびピボットピン20を介して、プレートカム17に連結するプレート(平板)状の第1ロッド24と、リンクレバー3、第1、第2ヒンジピン11、12を介して、ウェイストゲートバルブ1に連結するプレート(平板)状の第2ロッド(出力部)26と、第1ロッド24の第1連結部25と第2ロッド26の第2連結部27とを連結する断面円形状の接続ロッド(中継部)28とによって構成されている。なお、第1ロッド24、第2ロッド26および接続ロッド28は、溶接等により接続されて一体部品となっている。
【0030】
第1ロッド24は、フォロワ19およびピボットピン20を介して、プレートカム17から荷重を受ける入力部である。この第1ロッド24の一端部(第1連結部25側に対して反対側の端部)には、ピボットピン20が嵌合する嵌合孔31が形成されている。なお、ピボットピン20は、第1ロッド24の裏面側から打ち込まれて表面側に突出して第1ロッド24に接続(固定)されている。
第1連結部25は、接続ロッド28の軸線方向の一端側と溶接により接続されている。 第2ロッド26は、リンクレバー3、第1、第2ヒンジピン11、12を介して、プレートカム17から受けた荷重をウェイストゲートバルブ1のシャフト2に出力する出力部である。この第2ロッド26の他端部(第2連結部27側に対して反対側の端部)には、第1ヒンジピン11が嵌合する嵌合孔(図示せず)が形成されている。なお、第1ヒンジピン11は、第2ロッド26の裏面側から打ち込まれて表面側に突出して第2ロッド26に接続(固定)されている。
第2連結部27は、接続ロッド28の軸線方向の他端側と溶接により接続されている。
【0031】
接続ロッド28は、スラスト軸受6に摺動自在に支持されている。この接続ロッド28の外周には、コイルスプリング8から荷重作用方向のバルブ全閉側に付勢する荷重を受け止める荷重受け部である円環状のスプリングシート32が装着されている。
ここで、ギヤハウジング22の側壁よりバルブ側に位置する円筒状のベアリングホルダ33には、ロッド4の軸方向に貫通する軸受孔34が形成されている。この軸受孔34の孔壁面には、スラスト軸受6が圧入嵌合されている。
スラスト軸受6は、ロッド4の接続ロッド28をその荷重作用方向(往復移動方向)に摺動自在に支持するロッド軸受である。このスラスト軸受6の内部には、ロッド4の軸方向に貫通する貫通孔(摺動孔)が形成されている。
【0032】
また、ギヤハウジング22の側壁よりバルブ側に突出する円筒状のスプリングホルダ35内には、コイルスプリング8が伸縮自在に収容されている。
コイルスプリング8は、ロッド4に対して、ウェイストゲートバルブ1を閉じる側(バルブ全閉側)に付勢する付勢力(荷重)を発生するロッド(バルブ)付勢手段である。このコイルスプリング8の一端は、ロッド4の接続ロッド28に設けられたスプリングシート32に保持され、コイルスプリング8の他端は、ベアリングホルダ33の端部とスプリングホルダ35の端部とを連結する円環状の隔壁(閉鎖壁)36に保持されている。
これによって、電動アクチュエータのロッド4、特に第1ロッド24には、コイルスプリング8からのスプリング荷重(バルブ全閉側に付勢する荷重)が作用している。
【0033】
電動モータMは、電動アクチュエータの動力源であって、電力の供給を受けて駆動力(モータトルク)を発生する。この電動モータMは、モータハウジング21のモータ収納空間内に収容保持されている。そして、電動モータMは、ECUによって通電制御されるように構成されている。
そして、ECUには、CPU、ROM、RAM等の機能を含んで構成される周知の構造のマイクロコンピュータが設けられている。そして、ECUは、ストロークセンサ、クランク角度センサ、アクセル開度センサ、スロットル開度センサ、過給圧センサおよび車速センサ等の各種センサのセンサ出力信号に基づいて、スロットルバルブの電動アクチュエータ、ウェイストゲートバルブ1の電動アクチュエータを制御する。
【0034】
ストロークセンサは、ロッド4のストローク量を検出するセンサであって、ロッド4と一体的に動作する部材に装着された磁石(マグネット)およびヨーク(磁性体)と、磁石向に貫通する貫通孔(摺動孔)が形成されている。
また、ギヤハウジング22の内部にストロークセンサが装着されていなくても良い。また、非接触式の磁気検出素子として、ホールICの代わりに、ホール素子単体または磁気抵抗素子(MR素子)を使用しても良い。
【0035】
減速機構は、電動モータMのトルクを変換機構に伝達する動力伝達機構を構成する。この減速機構は、上述したように、ピニオンギヤ14、中間ギヤ15および最終ギヤ16等によって構成されている。また、減速機構は、電動モータMのモータシャフト13に対して並列配置された2つの第1、第2支持軸(中間ギヤシャフト、最終ギヤシャフト)41、42を備えている。これらの中間ギヤシャフト41、最終ギヤシャフト42は、互いに並列配置されている。また、3つのギヤ14〜16は、ギヤハウジング22の減速ギヤ収納空間内において回転自在に収容されている。
【0036】
中間ギヤシャフト41は、ギヤハウジング22の第1嵌合孔に打ち込まれてギヤハウジング22の第1嵌合部に圧入固定されている。この中間ギヤシャフト41の中心軸線は、中間ギヤ15の回転中心を構成している。また、中間ギヤシャフト41の中間ギヤ15の端面より突出した突出部の外周には、円環状の周方向溝が形成されている。この周方向溝には、中間ギヤシャフト41の外周に中間ギヤ15を嵌め合わした際に、中間ギヤシャフト41からの中間ギヤ15の抜け止めを行うワッシャおよびCリングが装着されている。
【0037】
最終ギヤシャフト42は、ギヤハウジング22の第2嵌合孔43に打ち込まれてギヤハウジング22の第2嵌合部44に圧入固定されている。この最終ギヤシャフト42の中心軸線は、最終ギヤ16の回転中心を構成している。また、最終ギヤシャフト42の外周には、2つのベアリング(軸受)45を介して、最終ギヤ16が回転自在に支持されている。また、最終ギヤシャフト42の最終ギヤ16の端面より突出した突出部の外周には、円環状の周方向溝が形成されている。この周方向溝には、最終ギヤシャフト42の外周に最終ギヤ16の円筒部を嵌め合わした際に、最終ギヤシャフト42からの最終ギヤ16の抜け止めを行うワッシャおよびCリングが装着されている。
【0038】
ピニオンギヤ14は、金属材料または樹脂材料によって形成されている。このピニオンギヤ14は、モータシャフト13の外周に圧入固定されている。ピニオンギヤ14の外周には、中間ギヤ15と噛み合う複数の凸状歯(ピニオンギヤ部)51が周方向全体に形成されている。
中間ギヤ15は、金属材料または樹脂材料によって形成されており、中間ギヤシャフト41の外周に回転自在に嵌め合わされている。この中間ギヤ15は、中間ギヤシャフト41の周囲を周方向に取り囲むように設置された円筒部を有している。この円筒部の外周には、円環状の最大外径部(径大部)が一体的に形成されている。
【0039】
中間ギヤ15の径大部の外周には、ピニオンギヤ14の凸状歯51と噛み合う複数の凸状歯(大径ギヤ部)52が周方向全体に形成されている。また、円筒部(径小部)の外周には、最終ギヤ16と噛み合う複数の凸状歯(小径ギヤ部)53が周方向全体に形成されている。
最終ギヤ16は、金属材料または樹脂材料によって形成されており、2つのベアリング45を介して、最終ギヤシャフト42の外周に回転自在に嵌め合わされている。この最終ギヤ16は、最終ギヤシャフト42の周囲を周方向に取り囲むように設置された円筒部を有している。この円筒部には、円筒部の外周面より扇状に広がるフランジ54を有している。
最終ギヤ16のフランジ54の外周部には、中間ギヤ15の凸状歯53と噛み合う複数の凸状歯(扇状の大径ギヤ部)55が所定の角度分だけ扇状に形成されている。
【0040】
変換機構は、最終ギヤ16の回転運動をロッド4の直線運動に変換する運動方向変換機構である。この変換機構は、最終ギヤ16の最終ギヤシャフト42を中心にして最終ギヤ16と一体的に回転するプレートカム17、このプレートカム17のカム溝18内に移動自在に挿入されるフォロワ19、およびこのフォロワ19を回転自在に支持するピボットピン20等によって構成されている。
プレートカム17は、金属材料によって所定の形状に形成されており、最終ギヤ16のカム装着部に固定されている。なお、最終ギヤ16が樹脂材料で形成されている場合、プレートカム17は最終ギヤ16にインサート成形される。また、最終ギヤ16が金属材料で形成されている場合、最終ギヤ16とプレートカム17とを焼結金属等で一体化しても良い。このように構成することで、最終ギヤ16の回転軸とプレートカム17の回転軸とが共通化されるため、最終ギヤ16の回転中心(最終ギヤシャフト42の回転中心)とプレートカム17の回転中心とが一致する。また、最終ギヤ16の作動角度(最終ギヤ作動角)とプレートカム17の回転角度(カム回転角)とが等しくなる。
【0041】
プレートカム17のカム溝18は、ウェイストゲートバルブ1の動作パターンに対応した湾曲形状のガイド部である。プレートカム17には、カム溝18よりもプレートカム17の半径方向(ラジアル方向)の外径側に設置された外側部61、およびカム溝18よりもプレートカム17のラジアル方向の内径側に設置された内側部62が設けられている。 カム溝18のバルブ全閉側端には、外側部61と内側部62とを半円状に連結して、フォロワ19のこれ以上のバルブ全閉への移動を規制する係止壁(規制壁)63が設けられている。
【0042】
カム溝18のバルブ全開側端には、プレートカム17の回転方向の外部側に向けて開放された開口部(切欠き部)64が設けられている。なお、開口側(切り欠いた側)のプレートカム17の強度が落ちるので、フォロワ19の軸方向の一端側およびピボットピン20の軸方向の一端側で、フォロワ19およびピボットピン20と干渉しない位置に、外側部61と内側部62とを連結するブリッジ(連結部)65を設けている。
【0043】
ここで、エンジンの運転中、つまりウェイストゲートバルブ1を全開させる際に、フォロワ19、ピボットピン20およびロッド4がカム溝18より脱落する可能性があるので、フォロワ19、ピボットピン20およびロッド4をカム溝18に組み付けた後に、ギヤハウジング22等の固定部材にストッパを装着し、最終ギヤ16またはプレートカム17のバルブ全開方向への移動を規制することが望ましい。
また、プレートカム17のカム形状とプレートカム17の回転角度は、ウェイストゲートバルブ1を全閉位置から全開位置まで駆動するのに必要なロッドストローク量に対して決定される。
【0044】
フォロワ19は、金属材料によって円筒形状に形成されており、ピボットピン20の外周に回転自在に嵌め合わされている。このフォロワ19は、ピボットピン20の周囲を周方向に取り囲むように円筒部を有している。
ピボットピン20は、ロッド4の嵌合孔31に打ち込まれてロッド4に圧入固定されている。なお、ピボットピン20のフォロワ19の円筒部の端面より突出した突出部には、フォロワ19の抜け止めを行うために潰されて鍔状にカシメられたフランジが形成されている。
ピボットピン20の中心軸線は、フォロワ19の回転中心を構成している。このフォロワ19の回転中心は、プレートカム17の回転中心と共に、ロッド4の荷重作用方向上に設置されている。
【0045】
[実施例1の作用]
次に、本実施例のウェイストゲートバルブ1を駆動する電動アクチュエータの作動を図1ないし図4に基づいて簡単に説明する。
【0046】
ECUは、過給圧センサにより検出される過給圧が設定値に満たない場合、ウェイストゲートバルブ1が全閉状態となるように、電動モータMへの電力供給を制御する。
これによって、電動アクチュエータの構成部品が、図1および図2に示した全閉状態に止まるため、ウェイストゲートバルブ1が全閉状態を継続する。これにより、ウェイストゲート流路は閉鎖される。
この結果、エンジンより排出された排気ガスの全量は、ターボチャージャのタービンハウジングの入口部から流入してタービンインペラを回転させ、タービンハウジングの出口部から排出される。
一方、吸気管内に吸い込まれた吸入空気は、タービンインペラの回転により駆動されるコンプレッサインペラによって圧縮されて圧力(過給圧)が上昇する。そして、圧力が上昇した吸入空気は、エンジンに吸い込まれる。
【0047】
ECUは、過給圧センサにより検出される過給圧が設定値以上に上昇した場合、つまり予め設定された最大過給圧を超える場合、ウェイストゲートバルブ1が全開状態となるように、電動モータMへの電力供給を制御する。
これによって、電動モータMのモータシャフト13が全開方向に回転する。これにより、モータトルクが、ピニオンギヤ14、中間ギヤ15、最終ギヤ16に伝達される。そして、最終ギヤ16からモータトルクが伝達されたプレートカム17が、最終ギヤ16の回転に伴って所定の回転角度(最終ギヤ16の作動角度と等しい回転角度)だけ全開方向に回転する。
【0048】
すると、ピボットピン20がカム溝18を摺動(滑動)して、カム溝18の全閉位置から全開位置まで移動することにより、ロッド4がコイルスプリング8を圧縮しながらロッド4の荷重作用方向のバルブ開側に直線移動する。すると、ロッド4の直線移動に伴って第1ヒンジピン11がロッド4の荷重作用方向のバルブ開側に直線移動することにより、リンクレバー3が第2ヒンジピン12を中心にして全開方向に回転する。すると、第2ヒンジピン12の回転に伴ってウェイストゲートバルブ1も第2ヒンジピン12を中心にして全開方向に回転する。これにより、ウェイストゲートバルブ1がバルブシートより離脱して全開状態となるため、ウェイストゲート流路が開放される。
この結果、エンジンからタービンハウジングの入口部に流入した排気ガスの一部がタービンインペラをバイパスするウェイストゲート流路を通ってタービンハウジングの出口部に排出される。これにより、タービンインペラに作用する排気エネルギーが減少し、タービンインペラの回転速度が低下するので、ターボチャージャの過回転が防止される。
また、過給圧または排気圧が過大とならないようになる。また、タービンインペラの過回転に伴うタービンインペラの破損等を防止される。
【0049】
ECUは、過給圧センサにより検出される過給圧が設定値よりも低下した場合、ウェイストゲートバルブ1が全閉状態となるように、電動モータMへの電力供給を制御する。
これによって、電動モータMのモータシャフト13が全閉方向に回転する。これにより、モータトルクが、ピニオンギヤ14、中間ギヤ15、最終ギヤ16、プレートカム17に伝達される。そして、プレートカム17が、最終ギヤ16の回転に伴って所定の回転角度だけ全閉方向に回転する。
すると、ピボットピン20がカム溝18を摺動(滑動)して、カム溝18の全開位置から全閉位置まで移動することにより、ロッド4がその荷重作用方向のバルブ閉側に直線移動する。すると、ロッド4の直線移動に伴って第1ヒンジピン11がロッド4の荷重作用方向のバルブ閉側に直線移動することにより、リンクレバー3が第2ヒンジピン12を中心にして全閉方向に回転する。すると、第2ヒンジピン12の回転に伴ってウェイストゲートバルブ1も第2ヒンジピン12を中心にして全閉方向に回転する。これにより、ウェイストゲートバルブ1がバルブシートに着座して全閉状態となるため、ウェイストゲート流路が閉鎖される。
【0050】
[実施例1の特徴]
ここで、電動アクチュエータにおいては、一般的に、ウェイストゲートバルブ1の全閉時または全開時に、ロッド4のピボットピン20を通じてフォロワ19の側面がプレートカム17のカム溝18の溝側面を押す力(バルブ反力)がモータ駆動による全閉作動時または全開作動時の負荷となる。
このロッド4からの荷重(バルブ反力)がプレートカム17を、バルブ閉じ側またはバルブ開き側に回転させる方向に働くと、プレートカム17がバルブ全閉方向またはバルブ全開方向に回転する可能性があるので、ウェイストゲートバルブ1を全開位置または全閉位置で静止状態とするため、ウェイストゲートバルブ1の全開時または全閉時においても多くのモータ保持電流を必要とする。
【0051】
そこで、本実施例の電動アクチュエータにおいては、ウェイストゲートバルブ1の全開時および全閉時に、ロッド4の軸線方向の中心線上(ロッド軸中心線RC上)の荷重作用方向と、プレートカム17の側面とフォロワ19の側面との接触面上の共通接線T方向とが垂直に交差する位置関係(構成)となっている。
また、電動アクチュエータにおいては、ロッド軸中心線RC上に、プレートカム17の回転中心COおよびフォロワ19の回転中心FOがある位置関係(構成)となっている。 また、電動アクチュエータにおいては、ロッド4の荷重作用方向のバルブ全閉側を基準とした場合、つまりロッド4の荷重作用方向のバルブ全閉側に位置するフォロワ19を先頭にして、フォロワ19、プレートカム17の回転中心CO、ロッド4の接続ロッド28の順に設置される位置関係(構成)となっている。
【0052】
以上のような構造によって、ウェイストゲートバルブ1の全開時および全閉時に、ロッド4を通じて、カム溝18に挿入されるフォロワ19がプレートカム17のカム溝18の溝側面を押す力がモータ駆動時の負荷となっているが、ロッド軸中心線RC上の荷重作用方向と、プレートカム17の側面とフォロワ19の側面との接触面上の共通接線T方向とが垂直に交差する位置関係となっているので、ロッド4からカム17に伝わる荷重(バルブ反力)がプレートカム17を回転させる方向に働かないようになる。
【0053】
したがって、ウェイストゲートバルブ1の全開時および全閉時に、ロッド4からプレートカム17に伝わる荷重(バルブ反力)に抗して、ウェイストゲートバルブ1を全開位置および全閉位置に静止状態で保持するのに必要なモータ保持電流を共に低減できるので、消費電力を抑えることができる。
ここで、本実施例のように、ウェイストゲートバルブ1を全閉位置および全開位置に駆動する使用頻度の多い電動アクチュエータに適用した場合であっても、ウェイストゲートバルブ1の全閉時および全開時の消費電力(消費電流)を低減することができる。
【0054】
また、本実施例の電動アクチュエータにおいては、プレートカム17の回転中心COとフォロワ19の回転中心FOとを結ぶ直線と、プレートカム17の回転中心COと中間ギヤ15の回転中心CGOとを結ぶ直線とが略一致する位置関係(構成)となっている。
ここで、最終ギヤ16の回転軸とプレートカム17の回転軸とを共通化(同一部品で構成)した場合、最終ギヤ16の作動角度とプレートカム17の回転角度とが等しくなる。 このとき、プレートカム17の回転中心COとフォロワ19の回転中心FOとを結ぶ直線L1と、プレートカム17の回転中心(=最終ギヤ16の回転中心)COと中間ギヤ15の回転中心CGO(=中間ギヤ15の凸状歯53と最終ギヤ16の凸状歯55との噛み合い位置)とを結ぶ直線L2とが略一致する位置関係としたことにより、プレートカム17の作動軌跡の投影面内に最終ギヤ16の作動軌跡をほぼ一致させる(入れる)ことができる。したがって、プレートカム17の作動軌跡と最終ギヤ16の作動軌跡とが大きく異なる装置と比べて、電動アクチュエータの体格を小型化できるので、自動車等の車両のエンジンルームへの搭載性を向上することができる。
【0055】
ここで、本実施例のプレートカム17には、ウェイストゲートバルブ1の動作パターンに対応した湾曲形状のカム溝18が形成されている。そして、カム溝18のバルブ全開側端は、プレートカム17の回転方向の外側に開放されている。
これによって、プレートカム17のカム溝18のバルブ全開側端(ウェイストゲートバルブ1の動作パターンにおける一端)を切り欠く。そして、切り欠いた側の作動方向(バルブ全開側端を開放した場合はバルブ開方向)にプレートカム17をオーバーターンさせることにより、ロッド4をスラスト軸受6に差し込みながら、ピボットピン20に装着されたフォロワ19を、カム溝18内に容易に挿入することが可能となる。これにより、最終ギヤ16に一体的に装着されているプレートカム17に対する、ピボットピン20にフォロワ19を装着したロッド4を組み付ける際の組付作業性を向上できるので、電動アクチュエータの製造コストの上昇を抑えることができる。
【0056】
ここで、上述したように、カム溝18のバルブ全開側端を切り欠くと、切り欠いた側のプレートカム17の強度が低下する。そこで、ロッド4に設けられるピボットピン20の軸方向の一方側またはフォロワ19の回転軸方向の一方側、つまりピボットピン20またはフォロワ19に干渉しない位置で、外側部61と内側部62とをブリッジ65によって連結している。この場合、切り欠いた側のプレートカム17の強度を確保することができる。
本実施例では、カム溝18における切り欠いた側の一部で外側部61と内側部62とを連結するブリッジ65を設けているが、カム溝18における全領域で外側部61と内側部62とを連結するブリッジ65を設けても良い。
【実施例2】
【0057】
図5は本発明の実施例2を示したもので、EGRバルブを駆動する電動アクチュエータを示した図である。
【0058】
エンジンには、エンジンの排気ガス中に含まれる有害物質(NOx等)の低減を図るという目的で、エンジンの排気ガスの一部であるEGRガスを排気管から吸気管に還流させるための排気ガス還流管(EGRガスパイプ)を備えた排気ガス還流装置(EGR装置)が設置されている。EGRガスパイプの途中には、排気ガス流量制御弁が設置されている。
排気ガス流量制御弁は、EGRパイプの内部を流れるEGRガスの流量を可変制御するEGRバルブ5と、ロッド4のストローク量に応じてEGRバルブ5を開閉制御するバルブ駆動装置である電動アクチュエータとを備えている。
【0059】
EGRバルブ5は、EGRガスパイプの内部に設置されたバルブシート71に対して着座、離脱して排気ガス流路(EGRガス流路)72を閉鎖、開放する弁体である。
電動アクチュエータは、実施例1と同様に、ロッド4、電動モータM、減速機構(3つの減速ギヤ:ピニオンギヤ14、中間ギヤ15、最終ギヤ16)と、変換機構(プレートカム17、フォロワ19、ピボットピン20)と、スラスト軸受6と、コイルスプリング8と、これらを収容するアクチュエータケース(モータハウジング21、ギヤハウジング22、カバー23)とを備えている。
ロッド4は、実施例1と異なり、第1ロッド24および接続ロッド28等を有している。接続ロッド28の軸線方向の先端側には、排気ガス流量制御弁の弁体であるEGRバルブ5が接続されている。このEGRバルブ5は、電動アクチュエータのロッド4の軸線方向(荷重作用方向)の先端に設置されたポペットバルブである。また、EGRバルブ5は、その円板状部(バルブ頭部)の背面側が、バルブシートに着座するように構成されている。
なお、排気ガス流量制御弁を、排気管の排気通路とEGRガスパイプのEGRガス流路72との分岐部に設置しても良く、また、吸気管の吸気通路とEGRガスパイプのEGRガス流路72との合流部に設置しても良い。
【0060】
[変形例]
本実施例では、本発明のバルブ駆動装置として、ウェイストゲートバルブ1を開閉制御するウェイストゲートバルブ制御用の電動アクチュエータに適用しているが、本発明のバルブ駆動装置として、ロッドが往復直線運動し、レバーを介してバルブの回転運動に変換され、バルブの開閉状態を制御する可変容量ターボチャージャ制御用の電動アクチュエータに適用しても良い。
本実施例では、プレートカム17のカム溝18のバルブ動作パターンのバルブ全開側端をプレートカム回転方向の外部側へ開放するように、カム溝18のバルブ全開側端を開放しているが、プレートカム17のカム溝18のバルブ動作パターンのバルブ全閉側端をプレートカム回転方向の外部側へ開放するように、カム溝18のバルブ全閉側端を開放しても良い。
【0061】
また、本実施例では、バルブ駆動装置により駆動されるバルブ構造として、ヒンジバルブまたはポペットバルブを採用している。つまりバルブ駆動装置により駆動されるバルブ構造に関係なく、電動アクチュエータ等のバルブ駆動装置として構成できる。なお、EGRバルブ5の他に、流体流量を制御する流量制御バルブ制御用の電動アクチュエータ等のバルブ駆動装置としても使用できる。例えばウェイストゲートバルブ1の開度を連続的または段階的に変更することで、ウェイストゲート流路を通る排気ガスの流量を調整して過給圧を制御するようにしても良い。
また、エンジンとして、ディーゼルエンジンだけでなく、ガソリンエンジンを用いても良い。
【符号の説明】
【0062】
M 電動モータ(動力源)
1 ウェイストゲートバルブ
2 ウェイストゲートバルブのシャフト
3 リンク機構のリンクレバー
4 電動アクチュエータのロッド
5 EGRバルブ
6 スラスト軸受(ロッド軸受)
8 コイルスプリング(付勢手段)
11 リンク機構の第1ヒンジピン
12 リンク機構の第2ヒンジピン
14 減速機構のピニオンギヤ
15 減速機構の中間ギヤ(第1ギヤ)
16 減速機構の最終ギヤ(第2ギヤ)
17 変換機構のプレートカム
18 プレートカムのカム溝
19 変換機構のフォロワ
20 変換機構のピボットピン
61 プレートカムの外側部
62 プレートカムの内側部
64 カム溝の開口部(切欠き部)
65 プレートカムのブリッジ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)バルブを駆動する動力源であるモータと、
(b)このモータの回転を減速する減速機構と、
(c)前記バルブの動作パターンに対応した形状のカム溝を有し、
前記減速機構の回転に伴って回転するカムと、
(d)前記カム溝に移動自在に挿入されるフォロワと、
(e)このフォロワを回転自在に支持する支軸を有し、
一端側が前記フォロワおよび前記支軸を介して前記カムに連結され、他端側が前記バルブに連結され、軸線方向に往復移動するロッドと
を備え、
前記ロッドの軸線方向と同一方向の荷重作用方向(往復移動方向)への移動量に応じて前記バルブの開閉制御を行うバルブ駆動装置であって、
前記バルブの全閉時または全開時に、前記ロッドの軸線方向の中心線上の荷重作用方向と、前記カムと前記フォロワとの接触面上の共通接線方向とが垂直に交差する位置関係となっていることを特徴とするバルブ駆動装置。
【請求項2】
請求項1に記載のバルブ駆動装置において、
前記ロッドの軸線方向の中心線上に、前記カムの回転中心および前記フォロワの回転中心がある位置関係となっていることを特徴とするバルブ駆動装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のバルブ駆動装置において、
前記減速機構は、前記モータによって回転駆動される第1ギヤ、およびこの第1ギヤと噛み合って回転する第2ギヤを有していることを特徴とするバルブ駆動装置。
【請求項4】
請求項3に記載のバルブ駆動装置において、
前記ロッドの荷重作用方向のバルブ全閉側を基準とした場合、前記フォロワ、前記カムの回転中心、前記ロッドの順に設置される位置関係となっていることを特徴とするバルブ駆動装置。
【請求項5】
請求項3または請求項4に記載のバルブ駆動装置において、
前記カムの回転中心と前記フォロワの回転中心とを結ぶ直線と、前記カムの回転中心と前記第1ギヤの回転中心とを結ぶ直線とが略一致する位置関係となっていることを特徴とするバルブ駆動装置。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5のうちのいずれか1つに記載のバルブ駆動装置において、
前記ロッドを往復移動方向に支持するロッド軸受を備えたことを特徴とするバルブ駆動装置。
【請求項7】
請求項6に記載のバルブ駆動装置において、
前記カムは、前記カム溝のバルブ全開側端またはバルブ全閉側端が、前記カムの回転方向の外側に開放されていることを特徴とするバルブ駆動装置。
【請求項8】
請求項7に記載のバルブ駆動装置において、
前記カムは、前記カム溝よりも前記カムの半径方向の外径側に設置された外側部、前記カム溝よりも前記カムの半径方向の内径側に設置された内側部、および前記外側部と前記内側部とを連結するブリッジを有していることを特徴とするバルブ駆動装置。
【請求項9】
請求項1ないし請求項8のうちのいずれか1つに記載のバルブ駆動装置において、
前記ロッドと前記バルブとの間に設置されて、前記ロッドの直線運動を前記バルブの回転運動に変換するリンク機構を備え、
前記リンク機構は、前記ロッドと前記バルブとを連結するレバーを有し、
前記ロッドは、前記レバーを回転自在に支持する第1ヒンジピンを有し、
前記バルブは、前記レバーを回転自在に支持する第2ヒンジピンを有し、
前記バルブとは、前記第1ヒンジピン、前記レバーおよび前記第2ヒンジピンを介して、前記ロッドの荷重作用方向の先端側に連結されるヒンジバルブのことであることを特徴とするバルブ駆動装置。
【請求項10】
請求項1ないし請求項8のうちのいずれか1つに記載のバルブ駆動装置において、
前記バルブとは、前記ロッドの荷重作用方向の先端側に設置されるポペットバルブのことであることを特徴とするバルブ駆動装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2011−247399(P2011−247399A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−124435(P2010−124435)
【出願日】平成22年5月31日(2010.5.31)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】