説明

バルーンおよびプロテーゼからの多剤送達

血管形成バルーンからおよび管腔内ステントなどのプロテーゼから治療薬を送達するための介入装具を開示する。本発明はバルーンおよび装具上に有益な薬剤を装填する方法のほか、別個の表面から薬剤を送達する方法にも関連する。本発明は第1の有益な薬剤が装填されたプロテーゼ表面および第2の有益な薬剤が装填されたバルーン表面を有する介入装具にも関する。本発明はプロテーゼ表面およびバルーン表面上に複数の有益な薬剤を装填する方法、および別個の表面から第1の有益な薬剤および第2の有益な薬剤を送達するための介入装具を製造する方法にも関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は血管形成バルーンからおよび管腔内ステントなどのプロテーゼ(prosthesis)から治療薬を送達するための介入装具に関する。本発明は前記バルーンおよび前記医療装具上に有益な薬剤を装填する方法のほか、別個の表面から該薬剤を送達させる方法にも関する。本発明は第1の有益な薬剤が装填されたプロテーゼ表面および第2の有益な薬剤が装填されたバルーン表面を有する介入装具にも関する。本発明はプロテーゼ表面およびバルーン表面に複数の有益な薬剤を装填する方法および別個の表面から第1の有益な薬剤および第2の有益な薬剤を送達させる介入装具を製造する方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
血管ステントの植え込みに伴うバルーン血管形成は、閉塞状態の血管を拡張し、その結果遠位組織を十分に潅流するように設計された手順である。バルーン上に圧着されたステントは末梢動脈を介して導入され、ガイドワイヤ上を病変部位まで進められる。バルーンを膨張させれば、プラークが圧縮されると同時にステントが植え込まれ、このステントが骨格として機能して血管をこの正常な直径まで拡張し続ける。次いで、バルーンを収縮させると、カテーテルアセンブリの除去が可能となり、ステントが適所に残って血管の開通性を維持する。
【0003】
冠状動脈バルーン血管形成に関連する場合にPCIと呼ばれるこの経皮的介入は、血管腔を正常化し、心筋虚血に伴うことが多い疼痛を緩和するのに有効である。この処置は冠状動脈の脈管構造に限定されるものではなく、腎動脈、頸動脈、腸骨動脈および浅大腿動脈などの他の血管に適用することもできる。介入の成功は一般に高いが、血管の長期開存性は元の病変部位の血管の再狭窄によって低減されることが多い。この再狭窄過程は血管の閉塞に関連して作用する種々の要因の結果であり、組織への血流および栄養送達を低減する。これらには元となっている疾患の進行に加え、サイトカインおよび細胞増殖を促進する他の成長因子の生成が挙げられる。これらの因子は単球およびマクロファージなどの種々の炎症細胞の型から生じる。炎症および細胞増殖に加えて、血管壁の中間層または外膜層からの細胞移動が、新生内膜と記載される新しい層の成長の一因となり得、この新生内膜が血管を再狭窄する。近年、ベアメタルステントの使用は、短期間では有効であるものの、高い再狭窄率を引き起こしてきた。したがって、多数の研究者がこれらの金属製骨格によって提供される有益な効果を維持しながら、再狭窄率を低減させるための技術を提供しようとしている。生体不活性ポリマーでステントを被覆することは幾分有効であったが、この分野において最も重要な進歩は、これらのポリマーに細胞増殖を阻害することが知られている薬剤を装填することであった。薬物の局所的送達のために適用される1つの一般的な技術には、本明細書に援用したBergらの米国特許第5464650号に開示されるようなステントの表面上に塗布されるポリマー担体の使用を介するものがある。このような従来の方法および製品は、一般にこの本来の目的としては十分であると考えられている。このポリマーからの薬剤の緩徐な溶出は、再狭窄過程に影響し、炎症過程および増殖過程が最も優勢であると考えられる時期に有益な濃度の有益な薬剤を供給することが知られている。いくつかの臨床試験においては、これらの薬剤溶出ステント(DES)を導入することによって、20〜30%から10%未満まで再狭窄率は低減した。しかし、多数の者がDESを受けるほぼすべての患者に長期間の血管開存性を提供すると共に繰り返して処置を受けるためにカテーテル検査室に戻る機会を最小にしながら、さらに一層再狭窄率を低減させようと試みている。ステントおよびバルーン自身を送達プラットフォームとして用いて多剤を送達することは、この目的を達成するのに役立ち得る。
【0004】
関連技術から明らかなように、介入装具に薬などの有益な薬剤を装填する従来の方法は、本明細書に参照により組み込まれるCampbellの米国特許第5649977号およびDinhらの米国特許第5591227号に開示されているように、有益な薬剤を放出することのできるポリマーでプロテーゼ全体を被覆することをしばしば要する。
【発明の開示】
【0005】
したがって、本発明は任意の方法によってバルーン表面に塗布される1つまたは複数の有益な薬剤の使用、および第2の装具のベアメタル表面に塗布されるまたは第2の装具を被覆するポリマーと共に組み込まれる1つまたは複数の有益な薬剤の塗布を提案する。バルーンからの有益な薬剤の送達は、病変部位の血管の事前拡張中に生じるか、またはステント植え込み中の装具の送達中にバルーンから生じるかのいずれかであると想定される。さらに、有益な薬剤の送達は、最終的なステントサイズの決定のためのバルーン膨張中にもバルーンから起こり得る。薬剤はポリマーからまたは装具の表面から放出されるので、プロテーゼからの有益な薬剤の送達はより長期間にわたって生じると想定される。一般に行われるように事前拡張の手順直後にまたは第2の介入処置中の適切な時間間隔以内にバルーンを病変部位で膨張させたときに、関連するプロテーゼを直接設置することができる。
【0006】
発明の要旨
本発明の目的および利点は、以下の説明に記載され、明白となり、また本発明の実施によって理解される。
【0007】
本発明のさらなる利点は、明細書および特許請求の範囲に特に指摘した方法およびシステムにより、ならびに添付図面から、実現されおよび達成される。
【0008】
一実施形態によれば、本発明は有益な薬剤を送達するシステムに関する。本システムは(薬物などの)有益な薬剤が装填された被膜を有するバルーンおよび(バルーン上の有益な薬剤と同じかまたは異なる薬物であってもよい)有益な薬剤が装填された被膜を有するプロテーゼを含む。バルーンおよびプロテーゼは個々の被膜中に2種以上の有益な薬剤を有し得る。被膜はバルーンまたはプロテーゼの表面上で連続的または不連続的であり得る。多数の有益な薬剤が本発明による送達に適している。
【0009】
別の実施形態によれば、本発明は血管疾患を治療および予防する方法に関する。本発明の方法は有益な薬剤が装填された被膜を有するバルーンの送達および有益な薬剤が装填された被膜を有するプロテーゼの送達を含む。標的部位へのバルーンおよびプロテーゼの送達は順次または同時であり得る。被覆されたプロテーゼは、被覆バルーンの前後に送達できる。バルーンから送達される有益な薬剤は、ステントから送達される薬剤と同じかまたは異なってもよい。
【0010】
他の実施形態によれば、本発明は有益な薬剤でバルーンを被覆する技術を含む血管系疾患を治療および予防する装具を提供する方法に関する。
【0011】
これらおよび他の利点を達成するため、および本発明の目的によれば、具体化され、広く記載されるように、本発明は、複数の有益な薬剤の送達のための介入装具を備える。本装具は表面を有する、管腔内で展開されるプロテーゼと、該プロテーゼ表面上に装填された第1の有益な薬剤と、プロテーゼを拡張させるバルーンと、該バルーン表面上に装填された第2の有益な薬剤とを含む。
【0012】
本発明のさらなる態様において、第1の有益な薬剤および第2の有益な薬剤は、相互に不混和性であるかまたは相互に有害であり得る。第1の有益な薬剤は第1の溶媒に溶解でき、第2の有益な薬剤は第2の溶媒に溶解でき、第1および第2の溶媒は不混和性である。同様に、第1の有益な薬剤は第2の有益な薬剤と反応し得る。第1の有益な薬剤は第2の有益な薬剤よりもより疎水性であることが可能である。また、第1の有益な薬剤はプロテーゼ上の第1の制御された軌道に沿って装填でき、第2の有益な薬剤はバルーン上の第2の制御された軌道に沿って装填できる。
【0013】
本発明のさらなる態様においては、プロテーゼまたはバルーン上に装填される前に第1の有益な薬剤と第2の有益な薬剤のうち少なくとも1つが結合剤と混合される介入装具が提供される。
【0014】
本発明の別の態様によれば、第1の有益な薬剤が、プロテーゼからの第1の有益な薬剤を送達するために第1の放出速度を有する結合剤と混合されている介入装具が提供される。第2の有益な薬剤は、バルーンからの第2の有益な薬剤を送達するために第2の放出速度を有する結合剤と混合できる。第1の放出速度は第2の放出速度と異なる。第1の有益な薬剤は第2の有益な薬剤と異なり得る。
【0015】
本発明の別の態様によれば、第1の有益な薬剤が第1の局所面密度を有し、第2の有益な薬剤が第2の局所面密度を有する介入装具が提供される。第1の局所面密度および第2の局所面密度の少なくとも一方は、プロテーゼまたはバルーンの選択された部分にわたって均一であってもよい。また、有益な薬剤の第1の局所面密度および第2の局所面密度の少なくとも一方は、プロテーゼまたはバルーンの選択された部分にわたって変化してもよい。第1の有益な薬剤の第1の局所面密度は、第2の有益な薬剤の第2の局所面密度とは異なり得る。この介入装具は、プロテーゼまたはバルーンの第1表面および第2表面の少なくとも1つの上に装填された第3の有益な薬剤をさらに含み得る。
【0016】
本発明のさらに別の態様によれば、プロテーゼがさらに基材の層をこのプロテーゼの選択された部分の上にさらに含み、第1の有益な薬剤が該基材層上に装填された介入装具が提供される。この基材層は第1の有益な薬剤を装填するためのパターンを画定する。次いで、このプロテーゼは第2の有益な薬剤が被覆バルーンと組み合わされる。
【0017】
本発明のさらなる態様によれば、プロテーゼはこのプロテーゼの中に画定された少なくとも1つの空洞を含む。この空洞は複数の有益な薬剤で充填できる。少なくとも1つの空洞は基材で少なくとも部分的に充填され、複数の有益な薬剤がこの基材に装填されることが好ましい。次いで、このプロテーゼは第2の有益な薬剤で被覆されたバルーンと組み合わされる。
【0018】
本発明は管腔内で送達されるためにプロテーゼ上に複数の有益な薬剤を装填する方法も提供し、該方法は管腔内で展開されるプロテーゼを提供する工程と、プロテーゼ上に装填される第1の有益な薬剤を提供する工程と、プロテーゼ上に装填される追加の有益な薬剤を提供する工程とを含む。次いで、このプロテーゼは第2の有益な薬剤で被覆バルーンと組み合わされる。
【0019】
本発明のさらなる態様によれば、第1の有益な薬剤提供工程によって提供される第1の有益な薬剤は、第2の有益な薬剤提供工程によって提供される第2の有益な薬剤とは不混和性である。第1の有益な薬剤提供工程によって提供される第1の有益な薬剤は第1の溶媒に溶解でき、第2の有益な薬剤提供工程によって提供される第2の有益な薬剤は第2の溶媒に溶解できる。第1の溶媒および第2の溶媒は不混和性であってもよい。第1の有益な薬剤提供工程によって提供される第1の有益な薬剤はまた、第2の有益な薬剤提供工程によって提供される第2の有益な薬剤と反応し得る。さらに、これらの分配工程は、必要に応じて、プロテーゼ上に第1の有益な薬剤の散在的パターンを、バルーン上に第2の有益な薬剤の散在的パターンを画定するように実行できる。これらの分配工程は同時に実行される。これらの分配工程は第1の有益な薬剤と第2の有益な薬剤との重なり合ったパターンを画定するようにも実行できる。
【0020】
本発明の別の態様によれば、本方法はプロテーゼ上への第1の有益な薬剤分配工程の前に第1の有益な薬剤を結合剤と混合する工程と、バルーン上への第2の有益な薬剤分配工程の前に第2の有益な薬剤を結合剤と混合する工程とをさらに含み得る。発明のさらなる態様によれば、本方法はプロテーゼからの第1の有益な薬剤の送達についての第1の放出速度を有する第1の結合剤と第1の有益な薬剤を混合すると共に、バルーンからの第2の有益な薬剤の送達についての第2の放出速度を有する第2の結合剤と第2の有益な薬剤を混合する工程をさらに含み得る。第1の放出速度は第2の放出速度と異なってよく、第1の有益な薬剤は第2の有益な薬剤と異なり得る。
【0021】
本発明の別の態様によれば、第1の有益な薬剤分配工程は第1の有益な薬剤に第1の局所面密度を提供するように実行され、第2の有益な薬剤分配工程は第2の有益な薬剤に第2の局所面密度を提供するように実行される方法が提供され、第1の局所面密度および第2の局所面密度の少なくとも1つはプロテーゼまたはバルーンの選択された部分にわたって変化する。
【0022】
本発明の別の態様によれば、プロテーゼの選択された部分上に基材層を塗布する工程をさらに含む方法が提供でき、分配工程は基材層上に第1の有益な薬剤が導入するように実施される。この基材層は第1の有益な薬剤を装填するためのパターンを画定するように塗布できる。次いで、このプロテーゼは第2の有益な薬剤が塗布されたバルーンと組み合わされる。
【0023】
本発明は、有益な薬剤送達用の介入装具も含み、該有益な薬剤は、抗血栓剤、抗凝血剤、抗血小板剤、抗脂質剤、血栓溶解剤、抗増殖剤、抗炎症薬、過形成を抑制する薬剤、平滑筋細胞抑制剤、抗生物質、成長因子阻害剤、細胞接着阻害剤、細胞接着促進剤、細胞分裂抑制薬、抗線溶剤、酸化防止剤、抗新生物薬、内皮細胞の修復を促進する薬剤、抗アレルギー薬、放射線不透過性物質、ウイルスベクター、アンチセンス化合物、オリゴヌクレオチド、細胞浸透エンハンサー、血管形成剤、およびこれらを組み合わせたものから成る群から選択できる。プロテーゼは、ステント、グラフトまたはステントグラフトであってもよい。プロテーゼは、血管ステントまたは胆管ステントあるいは塞栓キャプチャー装具であってもよい。本介入装具はプロテーゼの内面または外面の少なくとも一方に塗布されるオーバーコートを含み得る。プロテーゼ被膜またはバルーン被膜は、浸漬被膜、噴霧被膜、または流体ディスペンサとしてドロップオンデマンド型印刷機、電荷偏向型印刷ヘッドのいずれでもよいインクジェットによって塗布できる。また、有益な薬剤は複数の層を塗布することによってプロテーゼまたはバルーン上に積み重ねられ得る。さらに、有益な薬剤は結合剤と混合でき、ポリマーと共にプロテーゼ上に装填もできる。該ポリマーは生体適合性であることが好ましい。例えば、このポリマーは(MPC:LMA:HPMA:TSMA)などのペンダントホスホリルコリン基を含有する巨大分子であってよい。ここで、MPCは、2−メタクリオイロキシエチルホスホリルコリンであり、LMAは、ラウリルメタクリレートであり、HPMAは、ヒドロキシプロピルメタクリレートであり、TSMAは、トリメトキシリルプロピルメタクリレートである。結合剤は複合糖類(マンニトール)、デンプン(例えば、セルロース)、コラーゲンから構成できる。一般に、該結合剤は非結晶性で、低い水溶性を有し、良好な膜形成特性、薬物を溶解させるのに用いてよい溶媒との良好な溶解性を有し、生体適合性があり、不活性(薬剤に対して、また体組織、体液等に対しても反応しない)であり、ポリマー(例えば、ヒドロゲル)であり、もしヒドロゲルでない場合、特にもし永久的にバルーンに接着されない場合(永久的に接着されない場合、ヒドロゲルを用いることができ、薬剤を吸収するのに用いることができ、バルーンを膨張させるときには、動脈内腔へと薬剤を搾り出す)は疎水性であり得、バルーンに永久的に接着されていない場合は血液溶解性は低い。
【0024】
本発明の別の態様によれば、有益な薬剤は、ドロップオンデマンド型印刷機または電荷偏向型印刷機などの、制御された軌跡に沿って離散した液滴を分配することのできる流体噴射ディスペンサを用いて介入装具に塗布できる。本発明のさらなる態様によれば、有益な薬剤は結合剤と混合できる。有益な薬剤はポリマーと共にプロテーゼ上に装填されるのが好ましい。ポリマーはホスホリコリン材料であるのが好ましい。第2の有益な薬剤は非ポリマーの膜形成賦形剤と共にバルーン上に装填されることが好ましい。
【0025】
本発明のさらに別の態様では、プロテーゼは展開されるときに管状体を有し、該管状体は長手方向軸を画定する。プロテーゼの第1表面は管状体の内面として画定され、プロテーゼの第2表面は管状体の外面として画定される。
【0026】
本発明のさらに別の態様においては、バルーンには第2の薬剤の送達がプロテーゼの近位端および遠位端を越えて延びるように第2の有益な薬剤が装填される。
【0027】
本発明のさらに別の態様においては、第2の薬剤の送達が高い薬物濃度で突発的に非常に迅速に局所的に組織まで送達されるが、プロテーゼから送達される有益な薬剤は長期の時間枠にわたって送達されるように、バルーンには第2の有益な薬剤が装填される。
【0028】
さらに本発明によれば、第1表面には抗血小板薬、アスピリン、細胞接着促進剤、内皮細胞の修復を促進する薬剤、細胞移動を促進する薬剤およびエストラジオールから成る群から選択される有益な薬剤が装填される。第2の有益な薬剤は、抗炎症薬、抗増殖剤、平滑筋の阻害物質、細胞接着促進剤、およびラパマイシン類似体ABT−578、例えば、3S,6R,7E,9R,10R,12R,14S,15E,17E,19E,21S,23S,26R,27R,34aS)−9,10,12,13,14,21,22,23,24,25,26,27,32,33,34,34a−ヘキサデカヒドロ−9,27−ジヒドロキシ−3−[(1R)−2−[(1S,3R,4R)−3−メトキシ−4−テトラゾール−1−イル]シクロヘキシル]−1−メチルエチル]−10,21−ジメトキシ−6,8,12,14,20,26−ヘキサメチル−23,27−エポキシ−3H−ピリド[2,1−c][1,4]オキサアザシクロヘントリアコンチン−1,5,11,28,29(4H,6H,31H)−ペントン;23,27−エポキシ−3H−ピリド[2,1−c][1,4]オキサアザシクロヘントリアコンチン−1,5,11,28,29(4H,6H,31H)−ペントンから成る群から選択できる。
【0029】
本発明の別の態様によれば、プロテーゼの第1表面が複数の相互接続構造部材によって画定され、プロテーゼが選択された第1組の構造部材を含み、プロテーゼの第2表面が選択された第2組の構造部材を含む、介入装具が提供される。選択された第1組の構造部材および選択された第2組の構造部材の少なくとも1つは、管状体の周縁部に延在する少なくとも1つのリング状要素を画定し得る。
【0030】
本発明は有益な薬剤の送達用の介入装具を製造する方法も提供し、該方法は第1および第2表面を有する、管腔内で展開されるプロテーゼを提供する工程と、プロテーゼから送達される第1の有益な薬剤を提供する工程と、バルーンから送達される第2の有益な薬剤を提供する工程と、プロテーゼの第1表面の少なくとも一部分に第1の有益な薬剤を装填する工程と、バルーンの少なくとも一部分に第2の有益な薬剤を装填する工程とを含む。
【0031】
上記概要および以下の詳細な説明は共に例示的なものであって、特許請求する本発明をさらに説明すること意図していることを理解されたい。
【0032】
本願明細書に組み入れ、本願明細書の一部を構成する添付図面は、本発明の方法およびシステムのさらなる理解を例示、提供するために含まれる。説明と共に添付図面は、本発明の原理を説明するのに役立つ。
【0033】
図面の簡単な説明
図1は、血管形成術およびステント留置装具を示す概略図であり、カテーテルの上のバルーンおよびバルーンを膨張させるのに用いられるシリンジシステムを示している。
図2aは、カテーテルバルーン上に圧着されたステントを示す概略図である。図2bは、カテーテルのバルーンおよびステント部分を拡大した図であり、バルーン上に影を付けて第2の有益な薬剤の被膜を表し、ステント支柱に影を付けて第1の有益な薬剤を表している。
図3は、カテーテルバルーン上に圧着されたステントの断面を示す、本発明のシステムの一実施形態の概略図である。黒い中心部分はカテーテル本体、白い部分がバルーン、四角い部分はステントの個々の支柱であり、バルーンの影の付いた部分はバルーン上の第2の有益な薬剤の被膜を表し、ステント支柱の影の部分はステント上の第1の有益な薬剤の被膜を表す。
図4は、本発明の、有益な薬剤を送達するためのシステムの実施態様を示す図である。この図は、狭窄した血管の管腔を拡張するためにバルーンからステントを送達するプロセスを示す。図4aは、送達部位における、バルーン−ステントの組み合わせを設置した状態を示す。図4bは、バルーンが膨張し、その結果血管壁に対してステントが膨張した状態を示す。図cは、バルーンを収縮させ、ステントを残して除去した後の状態を示す。
図5a−cは、本発明の、有益な薬剤の異なる局所面密度を有する第1の部分および第2の部分を有する、有益な薬剤が装填されたプロテーゼまたはステントの概略図を示し、対応する局所面密度を示すグラフである。
【0034】
発明の詳細な説明
ここで、プロテーゼ上に第1の有益な薬剤をおよびバルーン上に第2の有益な薬剤を装填する方法およびシステムの本発明の好適な実施形態を詳細に参照する。可能な限り、添付図面を通して同じ参照符号を使用して、同じ部品または同様の部品について言及する。
【0035】
本発明によれば、管腔内に有益な薬剤を送達するためのシステムが提供される。特に、本発明は第1の有益な薬剤を有するプロテーゼおよび第2の有益な薬剤を有するバルーンを含んだシステムを提供し、ここで有益な薬剤は血管疾患または他の腔内疾患を治療および予防するために送達される。
【0036】
本願明細書で用いられるように「介入装具」とは、腔内の送達および植え込みに適当な任意の装具を広く意味する。限定ではなく例示のために、このような介入装具の例として、ステント、グラフト、ステントグラフト等がある。この分野においてよく知られているように、このような装具は、1つまたは複数のプロテーゼを含んでよく、各プロテーゼは、送達のための第1の断面寸法またはプロファイル、および展開後の第2の断面寸法またはプロファイルを有する。各プロテーゼは、この分野においてよく知られているように、バルーン膨張展開技術などの知られている機械的技術によるか、電気的または熱的起動によるか、あるいは自己膨張展開技術によって配置されてよい。例示のためにこのような例を挙げると、Palmazに付与された米国特許第4733665号、Roubinらに付与された米国特許第6106548号、Gianturcoに付与された米国特許第4580568号、Pennらに付与された米国特許第5755771号、およびBorghiに付与された米国特許第6033434号があり、これら全てを本明細書に参照により組み込む。
【0037】
説明および解決のために、限定することなく、本発明の介入装具の例示的な実施形態を図2に概略的に示す。本発明の一態様によれば、図2に概略的に示すように、介入装具は、一般に、治療域にわたって第1の有益な薬剤の局所的送達を行うように有益な薬剤が装填されたプロテーゼと重なり合う第2の治療域にわたって送達される第2の有益な薬剤が装填されたバルーンとを備える。特に、ここにおいて具体化したように、プロテーゼは、先に記載したように血管内または冠状動脈内で送達および植え込みを行うためのステント、グラフトまたはステントグラフトであってよい。しかし、プロテーゼは有益な薬剤を装填することのできるいかなるタイプの植込型部材でもよい。バルーンはプロテーゼ、局所組織を拡張するかまたは第2の有益な薬剤を管腔壁上に置くように働き得るいかなるタイプのカテーテル系膨張性実体でもよい。
【0038】
プロテーゼは、有益な薬剤の装填の間、膨張した状態または膨張していない状態になり得る。プロテーゼの基本構造は、実質的に任意の構造設計であってよく、プロテーゼは、限定するものではないが、ステンレス鋼、「MP35N」、「MP20N」、エラスチナイト(ニチノール)、タンタル、ニッケル−チタン合金、白金−イリジウム合金、金、マグネシウム、ポリマー、セラミック、組織、またはこれらの組合せなど、任意の適当な材料から構成されてよい。「MP35N」および「MP20N」は、ペンシルバニア州ジェンキンタウンのStandard Press Steel社から入手可能なコバルト、ニッケル、クロム、およびモリブデンの合金の登録商標であることが理解される。「MP35N」」は、コバルト35%、ニッケル35%、クロム20%、およびモリブデン10%から成る。「MP20N」は、コバルト50%、ニッケル20%、クロム20%、およびモリブデン10%から成る。プロテーゼは、生体吸収性または生物学的安定性のポリマーから製造できる。いくつかの実施形態では、プロテーゼの表面は、以下に詳細に示すように、内に形成された1つまたは複数の貯蔵部または空洞を含み得る。
【0039】
プロテーゼは、この分野において知られている多くの方法のいずれかを利用して製造できる。例えば、プロテーゼは、レーザー、放電加工、化学的エッチング、または他の知られている技術を用いて機械加工された、中空の管または形成された管から製造できる。あるいは、プロテーゼは、管状部材内に巻かれたシートから製造できるか、あるいはこの分野において知られているようなワイヤまたはフィラメント構成から形成できる。
【0040】
バルーンは有益な薬剤の装填中には膨張状態または非膨張状態になり得る。また、バルーンは有益な薬剤の装填中に巻かれた状態か巻かれていない状態になり得る。バルーンの基部構造は実質的には任意の構造デザインでよく、バルーンは、限定するものではないが、ポリエステル、pTFE(Tflon)、ナイロン、Dacron、またはこれらを組み合わせたものなどの任意の適当な材料から構成できる。「Teflon」および「Dacron」はデラウェア州ウィルミントンのデュポン社から市販されているポリマーの商標であると理解されたい。いくつかの実施形態では、バルーンの表面は送達のために1つまたは複数の内に形成された貯蔵部または空洞あるいはポートを含み得る。
【0041】
バルーンはこの分野において知られている多くの方法のいずれかを利用して製造できる。例えば、バルーンは、溶液であるかまたは(レーザーまたは超音波によって)物理的にチューブに溶接されているポリマーの薄膜で被覆された中空または形成されたチューブから製造できる。次いで、バルーンの内容積は、空気または水溶液が圧力下で空間に注入されてバルーンを任意の所定の有用な形状に膨張させるように、チューブと直接接触する。バルーンの表面は、最終的なカテーテルバルーンアセンブリの外径を縮小するように巻かれうる。
【0042】
バルーンは、適切な溶媒(例えば、エタノール)中に作製された有益な薬剤の希釈溶液(必要に応じて、この溶液は複数の有益な薬剤を含んでもよい。)からの有益な薬剤が装填され、ステントがバルーン上に圧着される前に乾燥され得る。あるいは、この被膜は、ステントがこの皮膜に圧着される前の「粘着」状態後、乾燥または硬化させないことも可能であろう。これによって、バルーン上を被覆している有益な薬剤の、プロテーゼ内側への接着が可能となる。この過程はバルーン上のプロテーゼの保持性を増大させ(プロテーゼの保持の増強物として作用する。)、これによって、ステントが、冠動脈へ曲がりくねって移動する間に、血管形成バルーン上で動く可能性が減少する。この溶液は、バルーン上で膜がすぐに乾く(すなわち、ステントがバルーン上に設置される前に固くなる。)のを防ぐために、主溶媒よりも高い沸点を有すことによって乾燥時間が遅い、第2の液体(水が好ましい)を含み得る。また、二溶媒系(すなわち、エタノール−水)を使用すれば、この溶媒を、バルーンの有益な薬剤(例えば、デキサメタゾン)が定着するのに十分溶解性であるように、しかしプロテーゼ上の有益な薬剤(例えば、ABT−578、ラパマイシン、およびラパマイシン類似体)が乾燥中にプロテーゼからバルーン被膜へと浸出するほどにまたはバルーン被膜からプロテーゼ被膜へと浸出するほどに溶解性ではないように、調整することが可能となる。さらに、特にプロテーゼの管腔上の、ポリマーバリヤ、タイミング層、トップコートまたはキャップコート、またはベアメタルインタフェースの使用は、バルーン表面からプロテーゼの送達ポリマーへの薬剤の移動を阻止するのに使用できる。あるいは、バルーンからの有益な薬剤の一部はステントへと移動させられて、ステントから組織へと放出される2種の有益な薬剤の勾配を成す。結合剤は複合糖類(マンニトール)、デンプン(例えば、セルロース)、コラーゲンから構成できる。一般に、この結合剤は、非結晶性で、低い水溶性を有し、良好な膜形成特性を有し、薬物を溶解させるのに用いてよい溶媒との良好な溶解性を有し、生体適合性があり、不活性(薬剤に対して、また体組織、体液等に対しても反応しない。)であり、ポリマー(例えば、ヒドロゲル)であり、ヒドロゲルでない場合、特に永久的にバルーンに接着されていない場合(永久的に接着される場合、ヒドロゲルを用いることができ、薬剤を吸収するのに用いることができ、バルーンを膨張させたときに、動脈内腔へと薬剤を搾り出す。)は疎水性であり得、バルーンに永久的に接着されていない場合は血液溶解性が低い。
【0043】
このプロテーゼ/バルーンを組み合わせたものは、この分野で知られている多くの方法のいずれかを用いて製造できる。例えば、プロテーゼはバルーンの端部上に滑らされ、バルーン中心部で位置合わせできる。プロテーゼはプロテーゼがバルーンの端部上で滑らされるときにプロテーゼとバルーン表面との間に緊密な適合が存在するように、事前に直径を縮小できる。また、プロテーゼの送り込み中にプロテーゼが動かないことを確実にするように、プロテーゼはバルーン上に圧着できる。この過程に想定される工程は、バルーンの有益な薬剤でバルーンを浸漬コーティングまたは噴霧コーティングすること、乾燥しているか粘着性のバルーン上に、予め有益な薬剤が被覆されたプロテーゼを設置すること、およびバルーン/ステントをクリンパー内に設置して圧着させることである。
【0044】
上記のように、プロテーゼおよびバルーンは、少なくとも部分的に有益な薬剤が装填される(10a、10b、10c)。ここで用いられる場合「有益な薬剤」とは、有益な結果または有用な結果を生む化合物から成る、任意の化合物、化合物の混合物または物質組成物を意味する。有益な薬剤は、ポリマー、放射線不透過性色素または粒子などのマーカーであってもよく、または医薬および有益な薬剤を含む薬物あってもよく、または無機物もしくは有機物の薬物を含む薬剤であってもよいが、これらに限定するものではない。薬剤または薬物は、非荷電性分子、分子錯体の成分、薬理学的に許容できる塩(塩酸塩、臭化水素酸塩、硫酸塩、ラウリン酸塩、パルミチン酸塩、リン酸塩、硝酸塩、ホウ酸塩、酢酸塩、マレイン酸塩、酒石酸塩、オレイン酸塩、およびサリチル酸塩など)などの種々の形態であってよい。
【0045】
水不溶性である薬剤または薬物は、溶質として効果的に働くように水溶性の誘導体の形態で使用でき、装具から放出されると、酵素によって転換され、身体のpHまたは生物学的活性形態への代謝過程によって加水分解される。さらに、薬剤または薬物の調合物は、溶液、分散形、ペースト、粒子、顆粒、乳剤、懸濁剤、および粉剤などの種々の知られている形態を有し得る。薬剤または薬物は、必要に応じてポリマーまたは溶剤と混合されてよいか、または混合されなくてよい。
【0046】
限定のためではなく例示するために、薬物または薬剤は、抗血栓剤、抗凝血剤、抗血小板剤、血栓溶解薬、高脂血症治療薬、抗増殖剤、抗炎症薬、過形成を抑制する薬剤、平滑筋細胞の増殖阻害物質、抗生物質、成長因子阻害剤、細胞接着促進剤または細胞接着阻害剤を含み得る。他の薬物または薬剤には、抗腫瘍薬、細胞分裂抑制薬、抗線溶剤、酸化防止剤、内皮細胞の修復を促進する薬剤、抗アレルギー物質、放射線不透過性剤、ウイルスベクター、アンチセンス化合物、オリゴヌクレオチド、細胞浸透エンハンサー、血管形成剤、およびこれらの混合物があるが、これに限定するものではない。
【0047】
このような抗血栓剤、抗凝血剤、抗血小板剤および血栓溶解薬の例には、未分画ヘパリン、低分子量ヘパリン(ダルテパリン、エノキサパリン、ナドロパリン、レビパリン、アルドパリン、セルタパリンなど)、ヘパリノイド、ヒルジン、アルガトロバン、フォルスコリン、パプリプロスト、プロスタサイクリンおよびプロスタサイクリン類似体、デキストラン、D−phe−pro−arg−クロロメチルケトン(合成抗トロンビン剤)、ジピリダモール、糖タンパクIIb/IIIa(血小板膜許容体アンタゴニスト抗体)、組換え型ヒルジン、ならびに(マサチューセッツ州ケンブリッジのBiogen社のAngiomax(商標)などの)トロンビン阻害薬、ならびに[ウロキナーゼ(例えばイリノイ州ノースシカゴのAbbott Laboratories社のAbbokinase(商標)、Abbott Laboratories社の組換え型ウロキナーゼおよびプロウロキナーゼ)、組織プラスミノゲン活性化因子(カリフォルニア州南サンフランシスコのGenentech社のAlteplase(商標)およびテネクテプラーゼ(TNK−tPA)などの)血栓溶解剤がある。
【0048】
このような細胞増殖抑制剤または抗増殖剤の例には、ラパマイシンおよびこの類似体(ABT−578など、すなわち、3S,6R,7E,9R,10R,12R,14S,15E,17E,19E,21S,23S,26R,27R,34aS)−9,10,12,13,14,21,22,23,24,25,26,27,32,33,34,34a−ヘキサデカヒドロ−9,27−ジヒドロキシ−3−[(1R)−2−[(1S,3R,4R)−3−メトキシ−4−テトラゾール−1−イル]シクロヘキシル]−1−メチルエチル]−10,21−ジメトキシ−6,8,12,14,20,26−ヘキサメチル−23,27−エポキシ−3H−ピリド[2,1−c][1,4]オキサアザシクロヘントリアコンチン−1,5,11,28,29(4H,6H,31H)−ペントン;23,27−エポキシ−3Hピリド[2,1−c][1,4]オキサアザシクロヘントリアコンチン−1,5,11,28,29(4H,6H,31H)−ペントン、エバロリムス、タクロリムスおよびピメクロリムス)、アンギオペプチン、(例えばコネチカット州スタムフォードのブリストルマイヤーズスクイブ社Capoten(登録商標)およびCapozide(登録商標)などのカプトプリル、例えばニュージャージー州ホワイトハウスステーションのメルク社のPrinivil(登録商標)およびPrinzide(登録商標)などのシラザプリルまたはリシノプリルなどの)アンギオテンシン転換酵素抑制剤、(ニフェジピン、アムロジピン、シルニジピン、レルカニジピン、ベニジピン、トリフルペラジン、ジルチアゼムおよびベラパミルなどの)カルシウムチャネルブロッカー、線維芽細胞増殖因子抑制剤、魚油(ω3−脂肪酸)、ヒスタミン拮抗薬、(例えばニュージャージー州ホワイトハウスステーションのメルク社のMevacor(登録商標)などの)ロバスタチンがある。これに加え、エトポシドおよびトポテカンなどのトポイソメラーゼ阻害剤のほか、タモキシフェンなどの抗エストロゲン剤が使用されてよい。
【0049】
このような抗炎症薬の例には、コルヒチンおよびグルココルチコイド(ベタメタゾン、コルチゾン、デキサメタゾン、ブデソニド、プレドニゾロン、メチルプレドニゾロン、ヒドロコルチゾンなど)がある。非ステロイド抗炎症薬には、フルルビプロフェン、イブプロフェン、ケトプロフェン、フェノプロフェン、ナプロキセン、ジクロフェナク、ジフルニサル、アセトミノフェン、インドメタシン、スリンダク、エトドラク、ジクロフェナク、ケトロラク、メクロフェナム酸、ピロキシカムおよびフェニルブタゾンがある。
【0050】
このような抗腫瘍薬の例には、アルキル化剤(アルトレタミン、ペンダムシン、カルボプラチン、カルムスチン、シスプラチン、シクロホスファミド、ホテムスチン、イホスファミド、ロムスチン、ニムスチン、プレドニムスチンおよびトレオスルフィンなど)、抗有糸分裂剤[ビンクリスチン、ビンブラスチン、(例えばコネチカット州スタムフォードのブリストルマイヤーズスクイブ社のTAXOL(商標)などの)パクリタキセル、(独国フランクフォートのアベンティスSA社のTaxotere(登録商標)などの)ドセタキセルなど]、代謝拮抗剤(メトトレキサート、メルカプトプリン、ペントスタチン、トリメトレキサート、ゲムシタビン、アザチオプリンおよびフルオロウラシルなど)、抗生物質(例えばニュージャージー州ピーパックのファルマシアアンドアップジョン社のAdriamycin(登録商標)などの塩酸ドキソルビシンなど)、例えばコネチカット州スタムフォードのブリストルマイヤーズスクイブ社のMutamycin(登録商標)などのマイトマイシン、およびEstradiolなどの内皮細胞の修復を促進する薬剤などがある。
【0051】
この用途に使用されてよいさらなる薬物には、RPR−101511Aなどのチロシンキナーゼの阻害剤、イリノイ州ノースシカゴのAbbott Laboratories社のTricor(商標)(フェノフィブレート)などのPPAR−α作用薬、(rosiglitazaone(グラクソスミスクライン社)およびピオグリタゾン(Takeda)から成る群から選択される)PPAR−γ作用薬、(ロバスタチン、アトルバスタチン、シンバスタチン、プラバスタチン、セリバスタチンおよびフルバスタチンから成る群から選択される)HMG CoA還元酵素阻害剤、イリノイ州ノースシカゴのAbbott Laboratories社の一般式C2938ClHおよび以下の構造式を有するABT−627などのエンドセリン許容体拮抗剤、
【0052】
【化1】

イリノイ州ノースシカゴのAbbott Laboratories社の一般式C2122NOSおよび以下の構造式を有する、ABT−518などのマトリクスメタロプロテイナーゼ阻害剤、
【0053】
【化2】

パーミロラストカリウムニトロプルシド、ホスホジエステラーゼ阻害剤、プロスタグランジン阻害剤、スラミン、セロトニンブロッカー、ステロイド、チオプロテアーゼ阻害剤、トリアゾロピリミジンおよび酸化窒素などの抗アレルギー薬がある。
【0054】
上記の有益な薬剤は、予防的特性および治療上の特性が知られているが、この物質または薬剤は、一例として提供されており、限定することを意図したものではない。さらに、現在入手可能であるかまたは開発できる他の有益な薬剤は、本発明により使用するのに同じ様に適用可能である。
【0055】
希望する場合または必要に応じて、有益な薬剤は、例えば適切なポリマーまたは類似の担体である(これらに限定しない)、薬剤を運ぶか、装填するかまたは徐放を可能にするための結合剤を含み得る。「ポリマー」という用語は、ランダム、交互、ブロック、グラフト、分枝、架橋、混合物、混合物の組成物およびこれらの変形物を含む、天然または合成のいずれかの、単独重合体、共重合体、ターポリマーなどの、重合反応の製品を含むことを意図している。ポリマーは、有益な薬剤中、真正溶液であるか、飽和しているか、粒子として懸濁しているか、過飽和していてよい。ポリマーは生体適合性または生物分解性であってよい。
【0056】
限定することなく例示のために、ポリマー材料には、ホスホリルコリンが連結された巨大分子、例えば巨大分子を含むペンダントホスホリルコリン基、例えばポリ(MPC:LMA:HPMA:TSMA(ここで、MPCは2−メタクリオイロキシエチルホスホリルコリンであり、LMAはラウリルメタクリレートであり、HPMAはヒドロキシプロピルメタクリレートであり、TSMAはトリメトキシシリルプロピルメタクリレートである。)、ポリカプロラクトン、ポリ−D,L−乳酸、ポリ−L−乳酸、ポリ(ラクチド−co−グリコライド)、ポリ(ヒドロキシブチレート)、ポリ(ヒドロキシブチレート−co−バレレート)、ポリジオキサノン、ポリオルトエステル、ポリアンヒドリド、ポリ(グリコール酸)、ポリ(グリコール酸−co−トリメチレンカーボネート)、ポリホスホエステル、ポリホスホエステルウレタン、ポリ(アミノ酸)、シアノアクリレート、ポリ(トリメチレンカーボネート)、ポリ(イミノカーボネート)、ポリアルキレンオキサレート、ポリホスファゼン、ポリイミノカーボネートおよび脂肪族ポリカーボネート、フィブリン、フィブリノゲン、セルロース、スターチ、コラーゲン、Parylene(登録商標)、Parylast(登録商標)、ポリウレタン(ポリカーボネートウレタンを含む。)、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、エチレンビニルアセテート、エチレンビニルアルコール、シリコーン(ポリシロキサンおよび置換ポリシロキサンを含む。)、酸化ポリエチレン、ポリブチレンテレフタレート−co−PEG、PCL−co−PEG、PLA−co−PEG、ポリアクリレート、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド、およびこれらの混合物がある。他の適切なポリマーの非限定的な例には、熱可塑性エラストマー一般、ポリオレフィンエラストマー、EPDMゴムおよびポリアミドエラストマー、ならびに生物安定性のプラスチック材料、例えばアクリルポリマーおよびこの誘導体、ナイロン、ポリエステル、およびエポキシがある。好適には、このポリマーは、Bowersらに付与された米国特許第5705583号および米国特許第6090901号、ならびにTaylorらに付与された米国特許第6083257号(これらは全て参照により本明細書に組み込む。)に開示されたようなペンダントホスホリル基を含む。
【0057】
有益な薬剤は、溶剤を含み得る。この溶剤は、いずれかの単一の溶剤または溶剤の混合物であってもよい。限定ではなく例示のために、適切な溶剤の例は、水、脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素、アルコール、ケトン、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフラン、ジヒドロフラン、ジメチルアセトアミド、アセテート類およびこれらの混合物がある。好適には、溶剤は、エタノールである。さらに好適には、溶剤は、イソブタノールである。また、本発明の別の態様では、複数の有益な薬剤が、同じ溶剤中に溶解または分散される。限定ではなく例示のために、デキサメタゾン、エストラジオールおよびパクリタキセルが、イソブタノール中に溶解される。別の場合には、デキサメタゾン、エストラジオールおよびパクリタキセルが、エタノール中に溶解される。さらに別の例では、デキサメタゾン、エストラジオールおよびABT−578、すなわち、ラパマイシンの類似体、3S,6R,7E,9R,10R,12R,14S,15E,17E,19E,21S,23S,26R,27R,34aS)9,10,12,13,14,21,22,23,24,25,26,27,32,33,34,34a−ヘキサデカヒドロ−9,27−ジヒドロキシ−3−[(1R)−2−[(1S,3R,4R)−3−メトキシ−4−テトラゾール−1−イル]シクロヘキシル]−1−メチルエチル]−10,21−ジメトキシ−6,8,12,14,20,26−ヘキサメチル−23,27−エポキシ−3H−ピリド[2,1−c][1,4]オキサアザシクロヘントリアコンチン−1,5,11,28,29(4H,6H,31H)−ペントンが、1つの溶剤中に一緒に溶解される。この溶媒はエタノールであることが好ましい。この溶剤はイソブタノールであることがさらに好ましい。
【0058】
さらに、有益な薬剤は、単独または混合のいずれかで上記の薬物、薬剤、ポリマー、および溶剤を含む。
【0059】
有益な薬剤の局所面密度を制御するようにプロテーゼおよびバルーンの表面上に有益な薬剤を装填するために、多数の方法が使用できる。例えば、プロテーゼまたはバルーンは、有益な薬剤または複数の有益な薬剤が含浸または充填される孔または貯蔵部を含むように構成できる。これら孔は、介入装具の長さに沿った所望の局所面密度パターンに従って、孔に含まれる有益な薬剤の量に相当するか、または有益な薬剤の量を制限するような寸法にできるか、あるいは間隔を置くことができる。この場合、より大きな孔またはより緻密な間隔が、より大きな局所密度を有することが意図されるとき、そのような部分になるように提供される。あるいは、均一な孔寸法が提供できるが、この孔中に装填される有益な薬剤の量はそれに相応して制限される。さらに、必要に応じて、孔または貯蔵部から有益な薬剤を持続放出あるいは制御放出するために、生体適合性材料の膜を次いで孔または貯蔵部上に塗布できる。
【0060】
ある実施形態によれば、有益な薬剤は、プロテーゼまたはバルーン上に直接装填できるか、または別の場合には、有益な薬剤は、プロテーゼまたはバルーンの表面上に塗布された基材層に装填される。例えば、限定するものではないが、結合剤または適切なポリマーなどのベース被膜は、所望のパターンがプロテーゼまたはバルーン表面上に形成されるようにプロテーゼまたはバルーンの選択された表面に塗布される。次いで、有益な薬剤がこの基材のパターン上に直接塗布される。
【0061】
本発明の一態様では、所望のパターンは所望の制御された局所面密度に相当する。例えば、有益な薬剤のより大きな局所面密度を有することが意図されるプロテーゼまたはバルーンの部分にはより多量の基材層が塗布され、有益な薬剤のより低い局所面密度を有することが意図されるプロテーゼまたはバルーンの部分には、より少量の基材が塗布される。
【0062】
あるいは、中に有益な薬剤を保持することが可能な適当なベース被膜が、プロテーゼまたはバルーンの表面上に均一に塗布でき、次いで、該ベース被膜の選択された部分に本発明の有益な薬剤が装填できる。より多量の有益な薬剤が、より大きな局所面密度を有することが意図されるベース被膜の単位表面積に装填され、より少量の有益な薬剤が、より低い局所面密度を有することが意図される単位表面積に装填される。
【0063】
本発明のさらに別の実施形態では、有益な薬剤は、プロテーゼまたはバルーンの表面上に直接塗布できる。一般に、結合剤または同じ様な成分が、十分な接着を確実にするために必要になり得る。例えば、この被覆技術は、適切な結合剤またはポリマーと有益な薬剤を混合して被覆混合物を形成し、これが、次いでプロテーゼまたはバルーンの表面上に被覆される工程を含み得る。この被覆混合物は、必要に応じて有益な薬剤のより高いまたはより低い濃度に調整され、次いでプロテーゼまたはバルーンの選択された部分に適切に塗布される。一般に、プロテーゼ用の有益な薬剤と共に用いられる結合剤は、バルーン用の有益な薬剤に用いられる結合剤とは異なるものであってよい。
【0064】
本明細書に開示した実施形態のいずれかにおいて、生体適合性材料から製造された多孔質膜または生物分解性の膜あるいは層が、必要に応じて、それが持続的に放出されるように有益な薬剤に被覆できる。
【0065】
プロテーゼまたはバルーンの表面に有益な薬剤を被覆するために、噴霧、浸漬またはスパッタリングなどの従来の被覆技術が使用でき、および適切に実行される場合にはその余もまた所望の効果を提供し得る。このような技術に関し、有益な薬剤が装填される場所および量を制御するために、知られているマスキングまたは抽出技術を用いることが望ましいか、必要となり得る。必要というわけではないが、有益な薬剤でプロテーゼまたはバルーンを被覆する前に、機械的欠陥が無いことを確実にするために、プロテーゼまたはバルーンの光学機器視角検査が利用される。欠陥のあるプロテーゼまたはバルーンは、一部は非常に高価であることもある有益な薬剤を浪費する前に捨てることができる。
【0066】
本発明の一態様によれば、管腔内に送達されるためにプロテーゼ上に有益な薬剤を装填する方法が開示される。この方法は、プロテーゼを提供する工程と、プロテーゼから送達される有益な薬剤を提供する工程と、各液滴が制御された飛跡を有する離散した液滴として有益な薬剤を分配することのできる分配要素を有する流体ディスペンサを提供する工程とを含む。この方法は、分配経路を画定するように分配要素とプロテーゼとの間に相対運動を生成する工程と、分配経路に沿って有益な薬剤をラスターフォーマットでプロテーゼの所定部分に選択的に分配する工程とをさらに含む。特に、有益な薬剤は、分配経路に沿ってラスターフォーマットで、分配要素からプロテーゼの所定の部分に選択的に分配される。本明細書で用いられる場合「ラスターフォーマット」とは、有益な薬剤の液滴の連続的または非連続的な分配パターンを意味する。
【0067】
本発明の別の態様によれば、プロテーゼ上に有益な薬剤を装填する方法は、管状部材の長さに沿って画定された中心軸を有する管状部材を含むプロテーゼを提供する工程を含む。この方法はさらに有益な薬剤を分配する工程を含む。
【0068】
本発明の別の態様によれば、追加の有益な薬剤または複数の有益な薬剤が上記のようにプロテーゼ上に装填できる。したがって、さらに本発明によれば、有益な薬剤および追加の有益な薬剤が装填されたプロテーゼを含む介入装具が提供される。
【0069】
特に、ある有益な薬剤に関して上記に詳細に記載した方法は、従来の装填技術を用いたときには通常は不所望の結果を生じる恐れのある、プロテーゼおよび/またはバルーン上への複数の有益な薬剤の装填を可能にするように修正できる。例えば、限定するものではないが、第1の有益な薬剤および第2の有益な薬剤は、この有益な薬剤が、同じ溶剤中で、または同じpHであるいは温度において溶解できるのを妨げるように、異なる物理的および/または化学的特性を有してよい。特に第1の有益な薬剤は、第2の有益な薬剤が溶解される溶剤とは混和しない溶剤中で溶解できる。あるいは、第1の有益な薬剤および第2の有益な薬剤は相互に不相溶性であってもよい。特に、第1の有益な薬剤および第2の有益な薬剤は、所望しないほど化学反応し得るか、または所望しないほど異なる放出速度(あるいは対照的に、所望しないほど同じ様な放出速度)を有してよい。また、第1および第2の有益な薬剤は、相互に対して単純に有害であってもよい。例えば、有益な薬剤の一方は、他方の有益な薬剤の効果を低下させ得る。したがって、プロテーゼまたはバルーンの同じ表面上に特定の複数の有益な薬剤を装填することが好ましいが、多くの場合、従来の装填技術を用いたときには何らかの不相溶性に起因する問題が生じ得る。本発明によれば、このような有益な薬剤を装填する方法、およびこのような有益な薬剤を送達するためにプロテーゼおよびバルーンを組み合わせた介入装具が提供される。
【0070】
上記のように、有益な薬剤は薬物およびポリマーの混合物を含み得る。本発明の方法によれば、第1および第2の有益な薬剤は、各有益な薬剤中の特定の薬物の異なる放出速度をもたらすために、異なる濃度のポリマーを有する薬物/ポリマーの混合物に相当し得る。例えば、ポリマーの濃度がより高い薬物/ポリマーの混合物は、より低い濃度の薬物/ポリマーの混合物に比べて管腔内でより遅い薬物の放出を有する。あるいは、異なる放出速度を提供するために異なるポリマー濃度を有する薬物/ポリマーの混合物を提供するのではなく、異なるポリマーまたは他の結合剤を用いて有益な薬剤を分配することも可能であり、この場合、特定のポリマーまたは結合剤は、異なる速度で有益な薬剤の送達を行うために異なる拡散率または親和性を有する。したがって、本発明によれば、複数の有益な薬剤が、活性に適切な速度で放出されることにより、本発明のプロテーゼ/バルーンの組合せが、所望の速度でプロテーゼ−バルーンの組合せから溶出する複数の有益な薬剤を有することができる。
【0071】
例えば、アニオン性の有益な薬剤に対してより高い親和性を有するカチオン性ホスホリルコリン連結ポリマーが混合され、第1の有益な薬剤として分散され、親油性ホスホリルコリン連結ポリマーが、それぞれ異なる放出速度をもたらすために第2の有益な薬剤として親油性薬物と混合され得る。
【0072】
本発明のさらに別の実施形態では、プロテーゼ/バルーンの組合せ上に装填された第1および第2の有益な薬剤の一方は、他方よりも疎水性であってよい。したがって、本発明によれば、第1および第2の有益な薬剤を含むプロテーゼ/バルーンの組合せが提供され、この場合、有益な薬剤の1つは、他方よりもより疎水性である。このようにして、疎水性の弱い有益な薬剤は、疎水性の高い有益な薬剤から分離され、これにより、より疎水性の高い有益な薬剤の放出速度が変化されない。例えば、限定するものではないが、疎水性の弱い有益な薬剤は、本明細書に開示を参照により組込む米国特許第6521658号に開示されたABT−620{1−Methyl−N−(3,4,5−トリメトキシフェニル)−1H−インドール−5−スルホンアミド};本明細書に開示を参照により組み込む米国特許第5767144号に開示されたABT−627;本明細書に開示を参照により組込む米国特許第6235786号に開示されたABT−518{[S−(R,R)]−N−[1−(2,2−ジメチル−1,3−ジオキソル−4−イル)−2−[[4−[4−(トリフルロロ−メトキシ)−フェノキシル]フェニル]スルホニル]エチル]−N−ヒドロキシホルムアミド};デキサメタゾン等であってよく、より疎水性の高い有益な薬剤は、フェノフィブレート、Tricor(商標)、またはラパマイシン類似体である、本明細書に参照により組込む米国特許第6015815号、米国特許第6329386号、PCT国際特許出願WO02/123505号およびPCT国際特許出願WO03/129215号に開示された、ABT−578、すなわち、3S,6R,7E,9R,10R,12R,14S,15E,17E,19E,21S,23S,26R,27R,34aS)−9,10,12,13,14,21,22,23,24,25,26,27,32,33,34,34a−ヘキサデカヒドロ−9,27−ジヒドロキシ−3−[(1R)−2−[(1S,3R,4R)−3−メトキシ−4−テトラゾール−1−イル]シクロヘキシル]−1−メチルエチル]−10,21−ジメトキシ−6,8,12,14,20,26−ヘキサメチル−23,27−エポキシ−3H−ピリド[2,1−c][1,4]オキサアザシクロヘントリアコンチン−1,5,11,28,29(4H,6H,31H)−ペントン;23,27−エポキシ−3H−ピリド[2,1−c][1,4]オキサアザシクロヘントリアコンチン−1,5,11,28,29(4H,6H,31H)−ペントンであってよい。
【0073】
さらに本発明によれば、上記の方法およびシステムを用いれば、プロテーゼ上に装填された第1の有益な薬剤は第1の局所面密度を有し、バルーン上に装填された第2の有益な薬剤は第2の局所面密度を有し得る。ここで用いられる場合、「面密度」とは、プロテーゼまたはバルーンの選択された部分の単位表面積当たりの有益な薬剤の量を意味する。「局所面密度」とは、プロテーゼまたはバルーンの局所的な表面積当たりの有益な薬剤の用量を意味する。第1の有益な薬剤の局所面密度および第2の有益な薬剤の局所面密度は、図5bに示したような局所面密度の段階的な変化を画定するように各々の部分にわたって均一になり得るか、または図5cに示したような局所面密度の勾配を画定するようにプロテーゼまたはバルーンの選択された部分にわたって変化できる。したがって、プロテーゼまたはバルーン本体の選択された部分に沿って変化する局所面密度を有する有益な薬剤が少なくとも部分的に装填されたプロテーゼまたはバルーンを有する介入装具が提供される。
【0074】
本発明の別の実施形態では、局所面密度は、図5cに示したようにプロテーゼまたはバルーンの選択された部分に沿って連続的な勾配として変化する。したがって、本発明の一態様では、有益な薬剤の局所面密度は、プロテーゼまたはバルーンの両端部において、プロテーゼまたはバルーンの中間部分の有益な薬剤の局所面密度とは異なる有益な薬剤の局所面密度を有するプロテーゼまたはバルーンを提供するように変化する。例示のためであり、限定するものではないが、プロテーゼの中間部分の有益な薬剤の局所面密度は、図5cに示したようにプロテーゼの近位端および遠位端の有益な薬剤の局所面密度よりも大きくなり得る。あるいは、プロテーゼの近位端および遠位端は、プロテーゼの中間部分の有益な薬剤の局所面密度よりもより大きな有益な薬剤の局所面密度を有し得る。本発明の好適な実施形態では、有益な薬剤の局所面密度の変化は、プロテーゼが管腔内に配置されたときに病変の場所に対応する。例えば、プロテーゼまたはバルーンは、プロテーゼが管腔内に展開されたときに、病変の場所に対応するプロテーゼまたはバルーンの予め選択された部分に沿って、より大きな局所面密度の有益な薬剤を有するように装填できる。したがって、標的とされる療法が本発明の介入装具を用いて達成できる。
【0075】
上記のように、有益な薬剤はプロテーゼの表面上に少なくとも部分的に装填される。さらに本発明によれば、プロテーゼは、有益な薬剤が少なくとも部分的に装填された第1表面および第2表面を含む。本発明の一実施形態では、第1表面および第2表面は、プロテーゼの内面および外面に各々相当する。したがって、この特定の実施形態によれば、上記のように、有益な薬剤は、プロテーゼの内面または管腔面のほか、プロテーゼの外面にも装填される。本発明のこの態様においては、介入装具は、有益な薬剤の併用療法を標的とされる場所に提供するように設計できる。例えば、限定するものではないが、バルーン上に装填される特定の有益な薬剤は全身性放出または下流放出が意図できるが、プロテーゼ表面上に装填される特に有益な薬剤は血管の壁内に放出されることが意図される。本発明の一態様によれば、バルーンに装填される有益な薬剤には、限定するものではないが、抗血小板薬、アスピリン、細胞接着促進剤、内皮細胞の修復を促進する薬剤、細胞移動を促進する薬剤、エストラジオール、抗炎症薬、抗増殖剤、平滑筋の阻害物質、細胞接着促進剤、およびラパマイシン類似体ABT−578、すなわち、3S,6R,7E,9R,10R,12R,14S,15E,17E,19E,21S,23S,26R,27R,34aS)−9,10,12,13,14,21,22,23,24,25,26,27,32,33,34,34a−ヘキサデカヒドロ−9,27−ジヒドロキシ−3−[(1R)−2−[(1S,3R,4R)−3−メトキシ−4−テトラゾール−1−イル]シクロヘキシル]−1−メチルエチル]−10,21−ジメトキシ−6,8,12,14,20,26−ヘキサメチル−23,27−エポキシ−3H−ピリド[2,1−c][1,4]オキサアザシクロヘントリアコンチン−1,5,11,28,29(4H,6H,31H)−ペントン;23,27−エポキシ−3H−ピリド[2,1−c][1,4]オキサアザシクロヘントリアコンチン−1,5,11,28,29(4H,6H,31H)−ペントンが挙げられる。プロテーゼ上に装填される有益な薬剤には、限定するものではないが、抗血小板薬、アスピリン、細胞接着促進剤、内皮細胞の修復を促進する薬剤、細胞移動を促進する薬剤、エストラジオール、抗炎症薬、抗増殖剤、平滑筋の阻害物質、細胞接着促進剤、ロサルタン、エポサルタン、バルサルタンおよびカンデサルタンなどのアンジオテシオンII許容体拮抗薬、カルベジロールなどの降圧剤、およびラパマイシン類似体ABT−578、すなわち、3S,6R,7E,9R,10R,12R,14S,15E,17E,19E,21S,23S,26R,27R,34aS)−9,10,12,13,14,21,22,23,24,25,26,27,32,33,34,34a−ヘキサデカヒドロ−9,27−ジヒドロキシ−3−[(1R)−2−[(1S,3R,4R)−3−メトキシ−4−テトラゾール−1−イル]シクロヘキシル]−1−メチルエチル]−10,21−ジメトキシ−6,8,12,14,20,26−ヘキサメチル−23,27−エポキシ−3H−ピリド[2,1−c][1,4]オキサアザシクロヘントリアコンチン−1,5,11,28,29(4H,6H,31H)−ペントン;23,27−エポキシ−3H−ピリド[2,1−c][1,4]オキサアザシクロヘントリアコンチン−1,5,11,28,29(4H,6H,31H)−ペントンが挙げられる。
【0076】
上記のように、有益な薬剤は介入装具の長さにわたって制御された局所面密度を提供するようにプロテーゼ上に装填される。すなわち、より高い密度の有益な薬剤をプロテーゼの一部分に提供し、プロテーゼの別の部分にはより低い密度の有益な薬剤を提供することが、または恐らくは有益な薬剤を全く提供しないことが好ましい。例えば、好適な一実施形態では、より高い局所面密度が第1の部分、例えば、図5aに示したようなプロテーゼまたはバルーン10の中間部分10bに提供されると共に、より低い局所面密度の有益な薬剤が第2の部分、例えば、プロテーゼまたはバルーン10の一端または両端(10a、10b)に提供できる。本発明によれば、プロテーゼまたはバルーンの第1および第2の部分の各々は、任意の種々のパターンまたはプロテーゼまたはバルーンの選択された部分によって画定されてよい。例えば、プロテーゼの第1の部分は長手方向のコネクタによって画定できるが、これとは反対にプロテーゼの第2の部分は環状リングによって画定できるか、あるいはこれらの逆でもよい。
【0077】
あるいは、介入装具に対する有益な薬剤の分布プロファイルは、種々の所望のパターンの任意のものを含むように制御されてよい。例えば、プロテーゼまたはバルーンは、上記のように遠位端および近位端において低減された局所面密度の有益な薬剤を有し得る。このプロファイルは、複数のプロテーゼが相互に組み合わされて留置されている(例えば、分岐点においてプロテーゼが重なり合うか、または触れ合う)が、全体として低減された用量の介入装具の先端部が依然提供される場合に、有益な薬剤の不都合な用量を防止するために非常に好ましい。あるいは、ここに具体化されるように、有益な薬剤の分布プロファイルは、組み合わされた第1のプロテーゼおよび第2のプロテーゼまたは組み合わされた複数のプロテーゼの長さに沿って均一である制御された局所面密度を提供し得る。別の場合には、本発明によれば、有益な薬剤の分布プロファイルは、組み合わされた第1のプロテーゼおよび第2のプロテーゼまたは組み合わされた複数のプロテーゼの長さに沿って変化する制御された局所面密度を提供する。
【0078】
本発明の別の特徴には、上記のプロテーゼまたはバルーンの選択された部分上に基材の層を塗布する工程を含む。有益な薬剤は前述の方法に従って基材層の上に装填される。この基材層はプロテーゼまたはバルーン上に有益な薬剤を装填するためのパターンを画定することが好ましい。
【0079】
本発明は、開示した実施形態のいずれかに関し、有益な薬剤の放出をさらに制御しまたは持続させるために、有益な薬剤が装填されたプロテーゼ、バルーンまたはプロテーゼ/バルーンの組合せ上に速度制御トップコートを塗布する工程も包含する。この速度制御トップコートは、有益な薬剤が装填されたプロテーゼ、バルーンまたはプロテーゼ/バルーンの組合せ上に被膜層を塗布することによって加えられてよい。この層の厚さは、このような制御を提供するように選択される。スプレーコーティングまたは流体噴射技術によってオーバーコートが塗布されることが好ましい。ポリマーオーバーコートなどのオーバーコートを流体噴射することによって、より薄くより均一な層が得られることが有利である。しかし、他の流体ディスペンサ、蒸着、プラズマ蒸着、スプレーもしくは浸漬またはこの分野において知られている他の被覆技術など、他の従来の方法が使用されてよい。
【0080】
本発明は、開示した実施形態のいずれかに関し、特にプロテーゼの管腔側にポリマーバリヤ、タイミング層、トップコートまたはキャップコートを塗布すること、またはバルーン表面からプロテーゼの送達ポリマーへ薬剤が移動するのを阻止するのに使用されるベアメタルインタフェースを使用することも包含する。あるいは、ステントから組織へと放出される2種の有益な薬剤の勾配を創成して、バルーンからの有益な薬剤の一部はステントへと移動させ得る。
【0081】
本発明は、有益な薬剤の送達用の介入装具を製造する方法も提供する。この方法は、管腔内に展開される第1のプロテーゼを提供する工程と、組み合わされたプロテーゼおよびバルーンが、少なくとも1つの重なり合った部分を画定するように、プロテーゼと重なり合う関係で展開されるように構成されたバルーンを提供する工程と、プロテーゼには第1の有益な薬剤を装填し、バルーンには第2の有益な薬剤を装填することにより、組み合わせたプロテーゼ/バルーンの長さに沿って局所面密度を制御する工程とを含む。上に詳細に記載した方法は、このような装填工程のためのものであることが好ましい。
【0082】
本発明は有益な薬剤を送達する方法も提供する。この方法によれば、上記の本発明の介入装具の説明により詳細に記載したように、この方法は、管腔内に配置されたときに管状体を有するプロテーゼを提供する工程と、管腔内で膨張することのできるバルーンを提供する工程と、プロテーゼに第1の有益な薬剤を装填し、バルーンに第2の有益な薬剤を装填する工程と、有益な薬剤が被覆された被覆バルーンと共にプロテーゼを管腔に配置し、有益な薬剤が被覆されたプロテーゼを管腔に組み合わせて配置して、少なくとも1つの重なり合う部分を画定する工程とを含み、ここにおいて、該有益な薬剤がプロテーゼとバルーンに装填され、配置されたときにプロテーゼの長さにわたって制御された有益な薬剤の局所面密度が提供される。上記に詳細に記載された方法はこのような装填工程に好ましい。
【0083】
説明および解説であって、限定するものでないが、本発明の介入装具の例示的実施形態を図2および3に概略的に示す。本発明の一態様によれば、図2および3に概略的に示すように、本介入装具は、一般に、治療域にわたって第1の有益な薬剤の局所的送達を提供する、有益な薬剤(好適にはABT578、ラパマイシン、またはラパマイシン類似体、単独でまたはデキサメタゾンまたはエストラジオールなどの追加の薬剤と併用して)が装填されたプロテーゼ、および、第2の重なり合う治療域にわたって送達される第2の有益な薬剤(好適にはパクリタキセル、タキサン、または他のタキサン誘導体、単独でまたは追加の薬剤と併用して)を有するバルーンを含む。あるいは、プロテーゼは、治療域にわたって第1の有益な薬剤の局所的送達および第2の重なり合う治療域にわたって送達される第2の有益な薬剤(好適にはABT578、ラパマイシン、またはラパマイシン類似体、単独でまたは追加の薬剤と併用して)を有するバルーンを提供するように、有益な薬剤(好適にはパクリタキセル、タキサン、または他のタキサン誘導体、単独でまたはデキサメタゾンまたはエストラジオールなどの追加の薬剤と併用して)が装填され得る。特に、この明細書で具体化されるように、プロテーゼは、血管内または冠動脈送達および植え込みのために、先に記載したように、ステント、グラフトまたはステントグラフトであってよい。しかし、プロテーゼは有益な薬剤を装填することのできる、いずれのタイプの植込型部材であってもよい。バルーンは、プロテーゼ、局所組織を拡張しまたは第2の有益な薬剤を管腔壁上に押し付けるように働き得るいずれのタイプのカテーテル系膨張性実体であってもよい。
【0084】
本発明は、限定ではなく例示のために提供された以下に記載の実施例によって、さらに理解される。
【0085】
以下の実施例は本発明の種々の実施形態がどのように実施できるかを示するものである。「同時」とは、被覆されたプロテーゼ(例えば、ステント)が被覆バルーン上に設置され、ステントおよびバルーンが同時に所望の場所に送られることを意味する。「独立した」とは、被覆されステントが送られる前または後に、被覆バルーンが送られることを意味する。「組み合わされた」とは、有益な薬剤がバルーンおよびプロテーゼの両方から血管組織へと送達されることを意味する。
【0086】
(実施例)
【実施例1】
【0087】
ステントへの有益な薬剤または複数の有益な薬剤の装填
I.ステントへのPC1036の被覆
実験を始める前に、被覆したステントを作製する。これらのステントは3.0mm×15mmの316Lの電解研磨ステンレス鋼製ステントとする。各ステントはエタノールに溶解したホスホリルコリンポリマーPC1036(Biocompatibles社製品、英国サリー州ファーナム)ろ過溶液20mg/mLを用いて噴霧被覆する。このステントをまず空気乾燥させ、次いで70℃で16時間硬化させる。次いで、ガンマ線を<25kGyでステントに照射する。
【0088】
II.ステントへの対象薬剤の装填
これらの実験においては、有益な薬剤をステント上に装填し、溶出プロフィールを検証する。一般に、この手順は次の通りである。複数のPCで被覆したステントに、溶液からいくつかの薬剤の各々またはそれらを組み合わせたものを装填した。薬剤のこれらの溶液は通常、100%エタノール中ABT−578の2〜20mg/mLおよびデキサメタゾンの10.0mg/mLの範囲にあり、膜形成を強化するために添加された〜10%PC1036を有する。
【0089】
薬液を装填する前にステントの重量を測定する。各薬剤を約10μg/mL装填するために、等量のABT−578およびデキサメタゾンの溶液を管理された方法でステント上に装填する。ステントを乾燥して、ステントの重量を再測定して総薬剤装填量を決定する。装填済みの乾燥ステントを冷蔵庫内に保管し、光か保護する。
【0090】
III.ステントからの薬剤の抽出
各薬剤に関し、3本のステントを用いて、上記手順によって装填された薬剤の総量を評価する。これらのステントを50%エタノール、50%水の溶液6mLに浸漬し、20分間、超音波処理する。抽出溶液中の薬剤濃度をHPLCによって分析する。
【実施例2】
【0091】
バルーンへの有益な薬剤または複数の有益な薬剤の装填
I.薬剤装填用のバルーンの作製
複数のバルーン(Jomed社、15mm×3.0mm)を巻いて、カテーテルの最終的なクロッシングプロファイルを最小にする。必要に応じて、バルーンをエタノールで洗浄する。
【0092】
II.バルーンへの対象薬剤の装填
これらの実験においては、有益な薬剤をバルーン上に装填する。一般に、この手順は次の通りである。複数のバルーン(Jomed社、15mm×3.0mm)に溶液からパクリタキセルを装填する。このパクリタキセル溶液は通常、100%エタノール中パクリタキセル2〜20mg/mLの範囲にある。
【0093】
薬液を装填する前にバルーンの重量を測定する。約200〜600μgのパクリタキセルを装填するために、バルーンをパクリタキセル溶液に浸漬する。バルーンを管理された方法で取り出し、乾燥を制御する。ステントを乾燥させて、バルーンの重量を再測定して総薬剤装填量を決定する。装填済みの乾燥したバルーンを室温で保管し、光から保護する。
【0094】
III.バルーンからの薬剤の抽出
各薬剤に関し、3個のバルーンを用いて、上記手順によって装填された薬剤の総量を評価する。これらのバルーンを50%エタノール、50%水の溶液6mLに浸漬し、20分間、超音波処理する。抽出溶液中の薬剤濃度をHPLCによって分析する。
【実施例3】
【0095】
有益な薬剤で被覆されたバルーン上への有益な薬剤で被覆されたステントの圧着
ABT−578を装填し、PC1036をトップコートとした複数のステントを、パクリタキセルで被覆済みのカテーテルバルーンの端部の上に設置する。バルーンの放射線不透過性マーカーの中央にステントを置き、Machine Solutions社の薬剤溶出ステントクリンパーを用いてバルーン上に圧着する。次いで、このステント−バルーン最終製品をリーク試験し、目視検査により最終製品の品質を確認する。次いで、このカテーテルアセンブリをTyvek社製の袋にパッケージングし、ラベルを付け、ETOで滅菌する。
【実施例4】
【0096】
プロテーゼ上の第1の有益な薬剤およびバルーン上の第2の有益な薬剤の同時的な併用送達
この実施例は第2の有益な薬剤で被覆されたバルーンを用いる少なくとも1つの有益な薬剤を含んだステントの送達を説明する。この実施例においては、プロテーゼを少なくとも1つの有益な薬剤で被覆し、第2の有益な薬剤で被覆済みの血管形成バルーン上に設置する。この完成したシステムを末梢血管を介して体内に挿入し、治療の標的となる病変まで進める。病変部位に設置後、第2の有益な薬剤を含んだ血管形成バルーンを膨張させれば、これと同時に該第2の薬剤が送達されると共に第1の有益な薬剤を含んだプロテーゼが配置される。この併用送達は直接ステント術とときに言われる技術を使用する。この場合、病変部位の血管の事前拡張がなく、有益な薬剤各々の送達は同じ時間間隔の間に始まる。あるいは、この同時送達は未被膜バルーンまたは被膜バルーンを用いた事前拡張の後に完了できる。プロテーゼの配置が完了すると、バルーンは収縮されて身体から除去され、プロテーゼは適所に残って第1の有益な薬剤を経時的に送達し続ける。プロテーゼまたはバルーン上の有益な薬剤は同じでも、異なってもよい。
【実施例5】
【0097】
プロテーゼ上の第1の有益な薬剤およびバルーン上の第2の有益な薬剤の独立した併用送達
1つまたは複数の有益な薬剤で被覆されているがプロテーゼを含まないバルーンを身体に挿入し、病変部位まで進めて、この場所で膨張させて血管を拡張する。この技術は一般に事前拡張と記載される。病変部位への第2の有益な薬剤の送達は、このバルーンが膨張すると同時に進行する。次いで、バルーンを収縮させて身体から除去する。このとき、第2の介入装具、つまり有益な薬剤を含まないが、1つまたは複数の有益な薬剤で被覆されたプロテーゼを含んだ第2のバルーンが末梢血管を介して導入される。事前拡張した病変部位で第2のバルーンが膨張すると、プロテーゼが拡張されて1つまたは複数の有益な薬剤を病変部位に送達し始める。次いで、第2のバルーンを身体から除去する。
【実施例6】
【0098】
プロテーゼ上の第1の有益な薬剤とバルーンからの第2の有益な薬剤の膨張後の送達との独立した組み合わされた送達
この手順は有益な薬剤を含まないバルーンを用いて、第1の有益な薬剤を含んだプロテーゼを送達することを必要とする。この場合、薬物が装填されたプロテーゼを含んだバルーンカテーテルを病変部位まで進め、膨張させて装具を送達し、有益な薬剤の送達を開始する。次いで、バルーンを収縮させ、身体から除去する。このとき、第2の有益な薬剤で被覆された第2のバルーンを末梢血管に挿入し、病変部位まで進める。次いで、第2のバルーンを膨張させて、さらに、先に設置されたステントを拡張させるか、または第2の有益な薬剤または多剤を病変部位まで送達させる。プロテーゼまたはバルーン上の有益な薬剤は同じでも、異なってもよい。
【実施例7】
【0099】
ステント内再狭窄の治療のためのバルーン上の第2の有益な薬剤の送達
この介入は、ステントまたは複数のステントが予め設置されている再狭窄が生じた病変部位において、第2の有益な薬剤で被覆されたバルーンを用いた血管の拡張がかかわっている。このように、以前に介入が失敗した血管の再狭窄は、追加のプロテーゼまたはプロテーゼを同じ部位に設置することなく十分に治療できる。
【0100】
当業者には理解されるように、上記実施例は、複数のステント、例えば「触れ合う」ステントまたは重なり合うステントを送達することが好ましい状況に対処するように適合できる。
【図面の簡単な説明】
【0101】
【図1】血管形成術およびステント留置装具を示す概略図であり、カテーテルの上のバルーンおよびバルーンを膨張させるのに用いられるシリンジシステムを示している。
【図2a】カテーテルバルーン上に圧着されたステントを示す概略図である。
【図2b】カテーテルのバルーンおよびステント部分を拡大した図であり、バルーン上に影を付けて第2の有益な薬剤の被膜を表し、ステント支柱に影を付けて第1の有益な薬剤を表している。
【図3】カテーテルバルーン上に圧着されたステントの断面を示す、本発明のシステムの一実施形態の概略図である。黒い中心部分はカテーテル本体、白い部分がバルーン、四角い部分はステントの個々の支柱であり、バルーンの影の付いた部分はバルーン上の第2の有益な薬剤の被膜を表し、ステント支柱の影の部分はステント上の第1の有益な薬剤の被膜を表す。
【図4a】本発明の、有益な薬剤を送達するためのシステムの実施態様を示す図であり、狭窄した血管の管腔を拡張するためにバルーンからステントを送達するプロセスを示し、送達部位における、バルーン−ステントの組み合わせを設置した状態を示す。
【図4b】本発明の、有益な薬剤を送達するためのシステムの実施態様を示す図であり、狭窄した血管の管腔を拡張するためにバルーンからステントを送達するプロセスを示し、バルーンが膨張し、その結果血管壁に対してステントが膨張した状態を示す。
【図4c】本発明の、有益な薬剤を送達するためのシステムの実施態様を示す図であり、狭窄した血管の管腔を拡張するためにバルーンからステントを送達するプロセスを示し、バルーンを収縮させ、ステントを残して除去した後の状態を示す。
【図5a】本発明の、有益な薬剤の異なる局所面密度を有する第1の部分および第2の部分を有する、有益な薬剤が装填されたプロテーゼまたはステントの概略図を示し、対応する局所面密度を示すグラフである。
【図5b】本発明の、有益な薬剤の異なる局所面密度を有する第1の部分および第2の部分を有する、有益な薬剤が装填されたプロテーゼまたはステントの概略図を示し、対応する局所面密度を示すグラフである。
【図5c】本発明の、有益な薬剤の異なる局所面密度を有する第1の部分および第2の部分を有する、有益な薬剤が装填されたプロテーゼまたはステントの概略図を示し、対応する局所面密度を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)治療有効量の第1の有益な薬剤により少なくとも部分的に被覆された外面を有するバルーンと、
b)治療有効量の第2の有益な薬剤により少なくとも部分的に被覆された表面を有する、送達または植込型プロテーゼと
を備え、血管疾患治療および予防に有用である、
有益な薬剤を送達するシステム。
【請求項2】
前記バルーンが血管形成バルーンである請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記プロテーゼがステントである請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記プロテーゼが前記バルーン上に圧着されている請求項3に記載のシステム。
【請求項5】
前記プロテーゼが、前記バルーン上の前記被膜によって、前記バルーン上に少なくとも部分的に保持されている請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記ステントが自己拡張型ステントである請求項3に記載のシステム。
【請求項7】
前記バルーン上の前記被膜が、前記第1の有益な薬剤のための担体をさらに含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
前記担体が、複合糖類(マンニトール)、デンプン(セルロース)、コラーゲンおよびポリマー材料から成る群から選択される、請求項6に記載のシステム。
【請求項9】
前記プロテーゼ上の前記被膜が、前記第2の有益な薬のための担体をさらに含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項10】
前記第2の有益な薬剤のための前記担体が、ホスホリルコリン、ポリカプロラクトン、ポリ−D,L−乳酸、ポリ−L−乳酸、ポリ(ラクチド−co−グリコライド)、ポリ(ヒドロキシブチレート)、ポリ(ヒドロキシブチレート−co−バレレート)、ポリジオキサノン、ポリオルトエステル、ポリアンヒドリド、ポリ(グリコール酸)、ポリ(グリコール酸−co−トリメチレンカーボネート)、ポリホスホエステル、ポリホスホエステルウレタン、ポリ(アミノ酸)、シアノアクリレート、ポリ(トリメチレンカーボネート)、ポリ(イミノカーボネート)、ポリアルキレンオキサレート、ポリホスファゼン、ポリイミノカーボネート、および脂肪族ポリカーボネート、フィブリン、フィブリノゲン、セルロース、スターチ、コラーゲン、Parylene(登録商標)、Parylast(登録商標)、ポリウレタン、ポリカーボネートウレタン、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、エチレンビニルアセテート、エチレンビニルアルコール、シリコーン、ポリシロキサン、置換ポリシロキサン、酸化ポリエチレン、ポリブチレンテレフタレート−co−PEG、PCL−co−PEG、PLA−co−PEG、ポリアクリレート、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド、熱可塑性エラストマー、ポリオレフィンエラストマー、EPDMゴム、ポリアミドエラストマー、生物安定性プラスチック、アクリルポリマー、ナイロン、ポリエステル、エポキシ、およびこれらの誘導体または組合せから成る群から選択される、請求項9に記載のシステム。
【請求項11】
有益な薬剤を実質的に含まないバルーンをさらに含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項12】
前記第1の有益な薬剤が前記第2の薬剤と同じである、請求項1に記載のシステム。
【請求項13】
前記プロテーゼの表面には治療有効量の2種以上の有益な薬剤が装填される、請求項1に記載のシステム。
【請求項14】
前記第1の有益な薬剤および前記第2の有益な薬剤が、抗血栓剤、抗凝血剤、抗血小板剤、抗脂質剤、血栓溶解剤、抗増殖剤、抗炎症薬、過形成を抑制する薬剤、平滑筋細胞抑制剤、抗生物質、成長因子阻害剤、細胞接着阻害剤、細胞接着促進剤、細胞分裂抑制薬、抗線溶剤、酸化防止剤、抗新生物薬、内皮細胞の修復を促進する薬剤、抗アレルギー物質、ウイルスベクター、核酸、モノクローナル抗体、アンチセンス化合物、オリゴヌクレオチド、細胞浸透エンハンサー、放射線不透過性物質マーカー、HMG CoA還元酵素阻害剤、プロドラッグ、およびこれらの組合せから成る群から個々に選択される、請求項1に記載のシステム。
【請求項15】
前記HMG CoA還元酵素阻害剤が、アトルバスタチン、シンバスタチン、プラバスタチン、ロバスタチン、セリバスタチン、フルバスタチンから成る群から選択される請求項9に記載のシステム。
【請求項16】
前記第1および第2の有益な薬剤が、インドメタシン、サリチル酸フェニル、ビンブラスチン、ABT−627(アトラセンタン)、ABT−578、テストステロン、プロゲスチロン、パクリタキセル、タキサン、シクロスポリンA、ビンクリスチン、カルベジロール、ビンデシン、ジピリダモール、メトトレキサート、葉酸、トロンボスポンジン模倣剤、エストラジオール、デキサメタゾン、メトリザミド、イオパミドール、イオヘキソール、イオプロミド、イオビトリドール、イオメプロール、イオペントール、イオベルソール、イオキシラン、イオジキサノール、イオトロラン、ラパマイシン、ラパマイシン誘導体、ピメクロリムス、エベロリムス、フェノフィブレート、カルベジロール、タキソテレス、タクロリムス、ペルオキシソーム増殖因子活性化許容体γ(PPAR−γ)作用薬、パリカルシトール、ブチル化ヒドロキシトルエン、ブチル化ヒドロキシアニソール、ビタミンE、ダナゾール、プロブコール、トコフェロール、トコトリエノールおよびプロドラッグ、類似体、誘導体、ならびにこれらの組合せから成る群から個々に選択される、請求項1に記載のシステム。
【請求項17】
前記PPAR−γ作用薬がチアゾリジネジオンである、請求項16に記載のシステム。
【請求項18】
前記有益な薬剤が、医薬として有用なペプチドまたは患者細胞内の対象遺伝子を制御するのに用いるアンチセンスオリゴヌクレオチドをコードする核酸である、請求項1に記載のシステム。
【請求項19】
追加のプロテーゼをさらに含む請求項1に記載のシステム。
【請求項20】
前記バルーン上の前記被膜が不連続である、請求項1に記載のシステム。
【請求項21】
前記バルーン上の前記被膜がパターンを形成している、請求項1に記載のシステム。
【請求項22】
前記バルーン上の前記被膜の長さが、前記バルーン上に圧着された前記プロテーゼの長さを越えて延在している、請求項4に記載のシステム。
【請求項23】
前記被覆バルーンが、前記ステントの植え込み後送達されて、前記ステントの最終的なサイズが達成される、請求項6に記載のシステム。
【請求項24】
前記第1の有益な薬剤が、前記バルーン上の前記被膜から前記プロテーゼ上の前記被膜内に移される、請求項1に記載のシステム。
【請求項25】
前記プロテーゼ上の前記被膜が、前記バルーン上の前記被膜から前記プロテーゼ上の前記被膜への前記第1の有益な薬剤の移動に対するバリア、または前記プロテーゼ上の前記被膜から前記バルーン上の前記被膜への前記第2の有益な薬剤の移動に対するバリヤを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項26】
前記バリヤがポリマーである請求項25に記載のシステム。
【請求項27】
前記ポリマー成分が、ホスホリルコリン、ポリカプロラクトン、ポリ−D,L−乳酸、ポリ−L−乳酸、ポリ(ラクチド−co−グリコライド)、ポリ(ヒドロキシブチレート)、ポリ(ヒドロキシブチレート−co−バレレート)、ポリジオキサノン、ポリオルトエステル、ポリアンヒドリド、ポリ(グリコール酸)、ポリ(グリコール酸−co−トリメチレンカーボネート)、ポリホスホエステル、ポリホスホエステルウレタン、ポリ(アミノ酸)、シアノアクリレート、ポリ(トリメチレンカーボネート)、ポリ(イミノカーボネート)、ポリアルキレンオキサレート、ポリホスファゼン、ポリイミノカーボネート、および脂肪族ポリカーボネート、フィブリン、フィブリノゲン、セルロース、スターチ、コラーゲン、Parylene(登録商標)、Parylast(登録商標)、ポリウレタン、ポリカーボネートウレタン、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、エチレンビニルアセテート、エチレンビニルアルコール、シリコーン、ポリシロキサン、置換ポリシロキサン、酸化ポリエチレン、ポリブチレンテレフタレート−co−PEG、PCL−co−PEG、PLA−co−PEG、ポリアクリレート、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド、熱可塑性エラストマー、ポリオレフィンエラストマー、EPDMゴム、ポリアミドエラストマー、生物安定性プラスチック、アクリルポリマー、ナイロン、ポリエステル、エポキシ、およびこれらの誘導体または組合せから成る群から選択される請求項26に記載のシステム。
【請求項28】
請求項1に記載のシステムを用いて、血管疾患を治療および予防する方法。
【請求項29】
前記第1の有益な薬剤が前記プロテーゼ上の前記被膜から標的部位へと送達される、請求項24に記載のシステム。
【請求項30】
前記バルーン上の前記被膜が複数の有益な薬剤を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項31】
前記プロテーゼ上の前記被膜が複数の有益な薬剤を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項32】
a)治療有効量の第1の有益な薬剤で少なくとも部分的に被覆された外面を有するバルーンを送達する工程と、
b)治療有効量の第2の有益な薬剤で少なくとも部分的に被覆された表面を有するプロテーゼを送達する工程と
を含む、血管疾患を治療および予防する方法。
【請求項33】
前記第1の有益な薬剤が、前記第2の薬剤と同じではない請求項40に記載の方法。
【請求項34】
工程aおよび工程bが同時に実行される請求項40に記載の方法。
【請求項35】
前記バルーンが、前記バルーン上の前記被膜によって前記プロテーゼに付着される請求項42に記載の方法。
【請求項36】
工程aおよび工程bが順次実行される請求項40に記載の方法。
【請求項37】
工程aが工程bの前に実行され、前記バルーンが血管形成術中に送達される請求項40に記載の方法。
【請求項38】
未被覆バルーンを用いる工程をさらに含む請求項40に記載の方法。
【請求項39】
工程bが工程aの前に実行される請求項40に記載の方法。
【請求項40】
前記プロテーゼが自己拡張型ステントである請求項47に記載の方法。
【請求項41】
前記被覆バルーンが、前記被覆ステントの最終的なサイズ決定のために用いられる請求項48に記載の方法。
【請求項42】
前記第1の有益な薬剤が、前記プロテーゼ上の前記被膜から標的部位へと送達される請求項24に記載のシステム。
【請求項43】
a)有益な薬剤を供給する工程と、
b)前記有益な薬剤を前記バルーン上に被覆する工程と
を含む、血管疾患を治療および予防する装具を提供する方法。
【請求項44】
前記被覆工程が、浸漬、噴霧、層化、塗装、または噴射によって達成される請求項60に記載の方法。
【請求項45】
前記有益な薬剤が溶液から被覆される請求項60に記載の方法。
【請求項46】
前記溶液が少なくとも1種の溶媒を含む請求項62に記載の方法。
【請求項47】
前記少なくとも1種の溶媒が、水、アルコール類、ジクロロメタン、ジメチルスルホキシド、エタノール、イソプロピルアルコール、イソブチルアルコール、テトラヒドロフラン、アルカン類、ジメチルホルムアミド、およびこれらの混合物から成る群から選択される、請求項63に記載の方法。
【請求項48】
前記被覆バルーンに連結して使用するためのプロテーゼを提供する工程をさらに含む、請求項60に記載の方法。
【請求項49】
前記バルーン上の前記被膜の完全な乾燥または硬化前に、前記被覆バルーン上に前記プロテーゼを装備することによって、前記プロテーゼの保持性を強化する工程をさらに含む、請求項60に記載の方法。

【図1】
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【図2a】
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【図2b】
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【図3】
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【図4a】
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【図4b】
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【図4c】
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【図5a】
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【図5b】
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【図5c】
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【公表番号】特表2007−529285(P2007−529285A)
【公表日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−504176(P2007−504176)
【出願日】平成17年3月17日(2005.3.17)
【国際出願番号】PCT/US2005/009310
【国際公開番号】WO2005/089855
【国際公開日】平成17年9月29日(2005.9.29)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TEFLON
【出願人】(391008788)アボット・ラボラトリーズ (650)
【氏名又は名称原語表記】ABBOTT LABORATORIES
【Fターム(参考)】