説明

バー塗布装置、塗布方法、及び光学フィルムの製造方法

【課題】バー塗布直後において、塗布面に縦スジ等のムラが生じることなく、均質な塗布を行う。
【解決手段】バー塗布装置10は、走行するウエブ12に塗布液を塗布するバー16と、バー16を回転自在に支持する支持部材20と、支持部材20に対しウエブ12の走行方向の上流側と下流側に設けられた第1ブロック22と第2ブロック32とを備え、第1ブロック22は、バー16の頂点から50mm〜300mmの水平距離に位置する堰26を有している。バックアップローラ18が、バックアップローラ18の最下点と堰26の頂点までの水平距離が−45mm以上50mm以内になるよう配置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バー塗布装置、バー塗布装置を用いた塗布方法、及び光学フィルムの製造方法に係り、特に液晶表示装置に好適な品質を有する光学フィルムを製造するための塗布技術に関する。
【背景技術】
【0002】
光学補償フィルム等の光学性機能フィルムの製造における塗布では、塗布液を均一且つ薄層に塗布することが要求される。しかしながら、このような薄層塗布では、縦スジやストリーク故障を生じることが多く、従来から各種対策が検討されている。
【0003】
たとえば、塗布装置の一次側(ウエブ走行方向の上流側)液溜めに不規則な渦が発生するのを抑制するため、液溜めにおけるウエブの走行方向の長さを10mm以上50mm以下とすることが提案されている(特許文献1)。
【0004】
バー塗布装置においては、バー断面の最大半径とバー受け部断面の円弧の曲率半径との関係、バーホールド角等を規定することで、バー振動による段状塗布ムラや、バーとバー支持部材との間に発生する泡による塗布スジ故障を防止することが提案されている(特許文献2)。
【0005】
また、ウエブとバーのラップ角度を2.5〜30°にすると共に、バー断面の最大径をRbとし、バー支持部材のバー受け部断面の円弧の曲率半径をRhとしたときに、Rb/Rhが0.9〜1.0の範囲とし、バー支持部材のバーホールド角を90°以上180°以下にするバー塗布方法が提案されている(特許文献3)。
【0006】
ブレードコーターにおいて、ファウンテンノズルから塗布液を吹き出す前に、塗布液にせん断力を付与して低粘度化する方法(特許文献4)、ロッドコーターにおいて、ロッドのワイヤー間の溝に引っかかる異物や凝集物を除去するための異物除去ブラシ等をロッドバーホルダに設ける方法(特許文献5)等が提案されている。また、支持体上に塗布膜を形成した後、掻き取りローラにより余剰液を掻き取り必要膜厚を得る塗布方法において、掻き取りローラ表面の乾きに起因する塗布故障を抑制するために、掻き取りローラ表面に塗布液又は溶剤を供給する方法が提案されている(特許文献6)。
【特許文献1】特開2003−33702号公報
【特許文献2】特開2006−82059号公報
【特許文献3】特開平9−201563号公報
【特許文献4】特開平7−189169号公報
【特許文献5】特開平7−246358号公報
【特許文献6】特開平9−294956号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、一般的なバー塗布装置では、バーに対して一次側(帯状体走行方向の上流側)に液溜部から塗布液をオーバーフローさせるため堰が設けられている。特に、塗布速度の速い系では、堰からのオーバーフローする塗布液とウエブとで形成された気液界面に、同伴風の巻き込みやウエブのバタツキにより乱れが生じるおそれがある。一次側の乱れがバーの二次側でのメニスカスの乱れを生じさせ、これによりウエブの塗布面に望ましくないスジ等を発生させる問題があった。
【0008】
これに対して、特許文献1〜6に記載された塗布方法では、いずれも一次側での気液界面の乱れに起因して発生するスジ等を解決するものではなかった。
【0009】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、バー塗布において一次側での気液界面の安定化及び同伴風の巻き込みを防止することで、二次側でのウエブの塗布面にスジ等が発生するのを防止できるバー塗布装置及びそれを用いた製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的を達成するために、本発明のバー塗布装置は、走行する帯状体に塗布液を塗布するバーと、前記バーの下側に設けられ、該バーを回転自在に支持する支持部材と、前記支持部材に対し、前記帯状体の走行方向の上流側に設けられ、該支持部材との間に塗布液を供給するスリットと、前記バーから前記帯状体の走行方向における水平距離が50mm〜300mmの範囲内に頂点が位置し、塗布液をオーバーフローする堰を有する第1ブロックと、前記支持部材に対し、前記帯状体の走行方向の下流側に設けられ、該支持部材との間に塗布液を供給するスリットを有する第2ブロックと、前記堰と最下点までの水平距離が−45mm〜50mmとなるよう位置されたバックアップローラと(但し、堰の頂点に対し下流側の位置を−方向と、上流側の位置を+方向とする)、を備えたことを特徴とする。
【0011】
バーの頂点と堰の頂点までの水平距離を50mm〜300mmの範囲内とし、堰の頂点からバックアップローラの最下点までの水平距離を−45mm〜50mmの範囲内とすることで、堰とウエブの隙間からウエブに同伴される風やウエブのバタツキによるバーの一次側での気液界面の乱れを防止することができる。これにより、バーの二次側でのメニスカスの乱れが防止され、バー塗布後の塗布面に局所的な塗布ムラにより発生するスジ等を防止することができる。
【0012】
本発明のバー塗布装置は、前記発明において、前記堰の塗布液がオーバーフローする面が水平に対し45°〜100°の角度とすることができる。
【0013】
堰の面の水平に対する角度を上述の範囲としたので、堰をオーバーフローした塗布液が、塗布液の自重で堰の面を流下する。これにより、一次側での気液界面がより安定となり、二次側でのスジ等の発生を防止することができる。
【0014】
本発明のバー塗布装置は、前記発明において、前記堰の先端部の真直度は帯状体の幅方向において0.3mm/1m以下とすることができる。堰の先端部の真直度を上述の範囲とすることで一次側での気液界面を塗布幅方向で均一に形成することができる。
【0015】
本発明のバー塗布装置は、前記発明において、前記堰と前記帯状体のクリアランスが0.2mm〜4.0mmとすることができる。
【0016】
クリアランスを上述の範囲とすることで、ウエブと堰が接触してウエブに損傷が生じるのを防止しでき、堰とバーと支持部材で形成される液溜まりを均一にすることができる。
【0017】
前記目的を達成するために、本発明の塗布方法は、前記バー塗布装置の何れかを使用して、走行する帯状体に塗布液を塗布することを特徴とする。
【0018】
本発明の塗布方法によれば、バー塗布後の塗布面に局所的な塗布ムラにより発生するスジ等を防止することができる。
【0019】
前記目的を達成するために、本発明の光学フィルムの製造方法は、帯状体に形成された配向膜にラビング処理する工程と、前記ラビング処理された配向膜上に前記バー塗布装置の何れかを使用して液晶ディスコティック化合物を含有する塗布液を塗布する工程と、塗布された前記塗布液を乾燥することにより光学異方性層を形成する工程と、を備えたことを特徴とする。
【0020】
本発明の光学フィルムの製造方法によれば、塗布面にムラが生じることなく、良好な品質の光学フィルムを得ることができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、バーの一次側での気液界面の乱れに起因する二次側の塗布面でのスジ等のムラが生じることがなく、均質な塗布を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下添付図面に従って本発明の好ましい実施の形態について説明する。本発明は以下の好ましい実施の形態により説明されるが、本発明の範囲を逸脱すること無く、多くの手法により変更を行うことができ、本実施の形態以外の他の実施の形態を利用することができる。従って、本発明の範囲内における全ての変更が特許請求の範囲に含まれる。また、本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を含む範囲を意味する。
【0023】
図1は本発明が適用された実施形態のバー塗布装置の構成を模式的に示す断面図である。バー塗布装置10は、走行方向に沿って連続走行するウエブ(帯状支持体)12に塗布液を塗布する装置であり、バー16を有する塗布ヘッド14と、バー16が接触するようにウエブ12を塗布面と反対側から支持するバックアップローラ18を備えている。
【0024】
塗布ヘッド14のバー16は、円柱状に形成されており、円周方向に一定間隔で溝が形成されているもの、ワイヤーが密に巻回されているもの、あるいは表面が平滑であるものの何れでもよい。また、バー16は、不図示の回転駆動手段に連結されており、ウエブ12の走行方向と同方向に、且つウエブ12の走行速度と略同じ速度で回転される。
【0025】
また、バー16は、ウエブ12の走行方向と反対方向に回転させてもよく、さらにはバー16の周速がウエブ12の走行速度と異なるように回転させてもよい。
【0026】
バー16は、支持部材20によって支持される。支持部材20の上部には、円弧状の溝が形成されており、この溝にバー16が回動自在に支持される。
【0027】
バー16に対してウエブ12の走行方向の上流側(すなわち、ウエブ12の進入側)に、第1ブロック22が支持部材20に対して所定の間隔で平行に設けられる。第1ブロック22と支持部材20との間にスリット24が形成される。第1ブロック22は走行方向の上流側に堰26を備えている。液溜部30が支持部材20とバー16、及び堰26により構成される。
【0028】
本実施形態では、バー16の頂点から堰26の頂点のまでの水平距離L1が、50mm〜300mmとなるよう堰26が設けられている。距離L1が50mmより短い場合には、バックアップローラがバーの頂点の極近傍に設置される可能性があるため、バーとバックアップローラの振動により接触してしまう危険が生じ、一方、距離L1が300mmより長い場合には、堰での液圧が小さくなりオーバーフローの勢いが弱くなるため乱れが起きやすくなるという問題や、また液溜り部の両端部において液が両端部よりオーバーフローすることで両端部の一次側気液界面の乱れが大きくなるという問題が生じるからである。したがって、距離L1はより好ましくは、100mm〜250mmである。
【0029】
スリット24には、塗布液の供給ライン(不図示)が接続される。供給ラインから供給された塗布液が、スリット24を介して液溜部30に供給される。液溜部30の塗布液が回転するバー16にピックアップされ、バー16にラップして連続走行するウエブ12に塗布される。なお、過剰に供給された塗布液は堰26をオーバーフローし、堰26の上流側の面26Aを流下して、回収部(不図示)により回収される。本実施形態においては、面26Aは水平に対して傾斜角度αが45°〜100°となるよう設定されることが好ましい。堰26をオーバーフローした塗布液が面26Aを自重により流下するので、一次側での乱れを防止することができるからである。したがって、傾斜角度αはより好ましくは60°〜90°である。
【0030】
また、堰26の先端部の真直度はウエブ12の幅方向において0.3mm/1m以下であることが好ましい。堰26の先端部の真直度を上述の範囲とすることで一次側での気液界面を塗布の幅方向で均一に形成することができる。より好ましくは0.2mm/1m以下である。
【0031】
バー16に対してウエブ12の走行方向の下流側には、第2ブロック32が支持部材20に対して所定の間隔で平行に設けられる。第2ブロック32と支持部材20との間にはスリット34が形成される。スリット34には、塗布液の供給ライン(不図示)が接続される。供給ラインから供給された塗布液が、バー16の乾きによる塗布故障を防止するために、バー16の下流側に供給され、バー16表面との間に塗布液ビードが形成される。塗布液の一部は塗布残液として第2ブロック32をオーバーフローして、傾斜面32Aを流下する。
【0032】
次に、バーと堰の位置関係、及び堰とバックアップローラの位置関係を、図2を参照に説明する。第1ブロック22の堰26は、バー(不図示)から水平距離L1が50mm〜300mmとなるよう設けられている。発明者らは、この堰26の頂点に対しウエブ12の走行方向の上流側を+方向として、下流側を−方向として捉えて、一次側の乱れを防止できるバックアップローラ18の位置について鋭意検討を行なった。その結果、堰26からのオーバーフローする塗布液とウエブ12とで形成される気液界面において、堰26の頂点から所定の距離範囲内にバックアップローラ18を配置することで、一次側での同伴風の巻き込みやウエブのバタツキを防止できることを見出した。
【0033】
つまり、堰26の頂点から上流方向にバックアップローラ18の最下点までの水平距離L2が50mm以下、堰26の頂点から下流方向にバックアップローラ18の最下点までの水平距離L2が−45mm以上となる範囲内にバックアップローラ18を配置することで一次側の乱れを防止できることを見出した。
【0034】
バックアップローラ18の最下点が堰26の頂点から上流方向に50mmより離れた場合は、ウエブのバタツキによる気液界面の乱れが生じ、バックアップローラ18の最下点が堰26の頂点から下流方向に−45mmより離れた場合は、ウエブのバタツキによる気液界面の乱れが生じると考えられるからである。
【0035】
堰26の頂点とバックアップローラ18の最下点までの距離L2は、より好ましくは−30mm〜30mmである。
【0036】
本発明において、バーと堰26の水平距離L1を50mm〜300mmとし、堰26の頂点とバックアップローラ18の最下点までの水平距離L2を−45mm〜50mmとすることにより、バーの一次側での気液界面の乱れに起因し二次側で生じるスジ等のムラを抑制し、均質な塗布を行うことができる。
【0037】
また、本発明においては、ウエブ12と堰26の隙間L3(mm)は、0.2mm〜4.0mmであることが好ましい。0.2mmより狭い場合はウエブ12と堰26と接触し、ウエブが損傷してしまうからである。一方、4.0mmより広い場合は、必要とする液溜まりを均一に形成することが難しくなるからである。
【0038】
次に、本発明に係るバー塗布装置10の適用例について説明する。図3は、本発明のバー塗布装置10を組み込んだ光学補償フィルムの製造ライン80である。
【0039】
光学補償フィルムの製造ライン80は、図3に示されるように、送出機82から予め配向膜形成用のポリマー層が形成された透明支持体であるウエブ12が送り出される。
【0040】
次に、ウエブ12はガイドローラ84によってガイドされてラビング処理装置86に送りこまれる。そして、ウエブ12のポリマー層には、ラビングローラ88によりラビング処理が施される。ラビングローラ88の下流には除塵機90が設けられており、ウエブ12の表面に付着した塵を取り除く。
【0041】
除塵機90の下流には本発明に係る塗布ヘッド14が設けられている。塗布ヘッド14に対し、ウエブ12の走行方向の上流及び下流側に、ウエブ12をバーにラップさせるためのガイドローラ84が設けられている。また、塗布ヘッド14の上方向で、堰26の近傍にバックアップローラ18が設けられている。これにより、塗布ヘッド14の一次側での乱れが抑制され、二次側でのスジ等の塗布ムラが抑制される。塗布ヘッド14によりディスコネマティック液晶を含む塗布液がウエブ12に塗布される。塗布ヘッド14の下流には、乾燥ゾーン92、加熱ゾーン94が順次設けられており、ウエブ12上の塗布液が乾燥・加熱されて液晶層が形成される。更に、この下流には紫外線ランプ96が設けられており、紫外線照射により、液晶を架橋させ、所望のポリマーが形成される。これにより、光学補償フィルムが製造され、製造された光学補償フィルムは巻取機98に巻き取られる。
【0042】
このように、本発明に係るバー塗布装置10を、光学補償フィルムの液晶層の塗布(ディスコネマティック液晶を含む塗布液の塗布)に用いるので、縦スジ等のムラのない良好な面質のフィルムを製造できる。
【0043】
本発明に使用されるウエブ12としては、紙、プラスチックフィルム、レジンコーティッド紙、合成紙等が包含される。プラスチックフィルムの材質は、たとえば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン等のビニル重合体、6,6−ナイロン、6−ナイロン等のポリアミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレート等のポリエステル、ポリカーボネート、ヘルローストリアセテート、セルロースダイアセテート等のセルロースアセテート等が使用される。またレジンコーティッド紙に用いられる樹脂としては、ポリエチレンをはじめとするポリオレフィンが代表的であるが、必ずしもこれに限定されない。ウエブの厚さも特に限定されないが、0.01mm〜1.0mm程度のものが取扱い、汎用性の見地から有利である。
【0044】
本発明に用いられる塗布液は特に限定は無く、高分子化合物の水又は有機溶媒液、顔料分散液、コロイド溶液等が適用できる。特に、薄層塗布を均一且つ高精度に行うことが求められる各種光学フィルムの塗布液、例えば、液晶性ディスコティック塗布液等が好適である。また、塗布液の粘度が高い場合、塗布膜厚や塗布速度、塗布後の乾燥速度等にもよるが、ワイヤー目或いは溝の目が消えずにバー筋故障となるため、0.5Pa・s以下が望ましい。
【0045】
以上、本発明に係るバー塗布装置及び塗布方法の好ましい実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、各種の態様が採り得る。
【実施例】
【0046】
以下、実施例を挙げて本発明の特徴を更に具体的に説明するが、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。本発明に係るバー塗布装置及び従来のバー塗布装置を組み込んだ図3の光学補償フィルムの製造ライン80において、塗布直後の縦スジ故障への影響を評価した。
【0047】
(実施例1)
ウエブ12は、厚さ40〜120μmのトリアセチルセルロース(フジタック、富士フィルム(株)製)の表面に長鎖アルキル変性ポバールの2重量%溶液をフィルム1m2当たり25mlになるように塗布後、60℃で1分間乾燥させて配向膜用樹脂層を形成したものを使用した。このウエブ12を、送出機82から送り出すと共に10〜50m/分で搬送しながらラビング処理装置86によって配向膜用樹脂層表面にラビング処理を行って配向膜を形成した。ラビング処理におけるラビングローラ88の押し付け圧力を、配向膜樹脂層の1cm2あたり10kgf/cm2にすると共に、回転周速を5.0m/秒とした。
【0048】
そして、配向膜用樹脂層をラビング処理して得られた配向膜上に、図1に示す実施形態に係るバー塗布装置10を使用して塗布液を塗布した。塗布液は、下記に示すディスコティック化合物TE−8のR(1)とR(2)の重量比で4:1の混合物に対し、エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリアクリレート(V♯360、大阪有機科学(株)製)を10重量%、セルロースアセテートブチレート(CAB531−1、イーストマンケミカル社製)を0.6重量%、光重合開始剤(イルガキュア907、日本チバガイギー(株)製)を3重量%、増感剤(カヤキュアーDET−X、日本化薬(株)製)を1重量%、添加し、最終的にその混合物の32重量%メチルエチルケトン溶液とした。その液晶性化合物を含む液に、さらにフッ素系界面活性剤(フルオロ脂肪族基含有共重合体、メガファックF780、大日本インキ(株)製)を0.3重量%添加し、塗布液として使用した。
【0049】
【化1】

【0050】
そして、図1に示す実施形態に係るバー塗布装置10において、支持部材20により、バー径6mm、線径80μmのワイヤーのバー16を支持し、ウエブ12を走行速度10〜50m/分で走行させながらバー16も同速で順回転させ、塗布ヘッド14から塗布液をウエブ1m2当たり5ml(湿潤膜厚5μm)になるように配向膜上に塗布した。
【0051】
バー16と堰26までの水平距離L1を50mmとし、バックアップローラ18の最下点と堰26までの水平距離L2を−45mmとし、ウエブ12と堰26との距離L3を0.2mmとした。
【0052】
(実施例2)
水平距離L2を0mm、つまり堰26上にバックアップローラ18の最下点となるよう配置した以外は、実施例1と同様にした。
【0053】
(実施例3)
水平距離L2を50mmとした以外は、実施例1と同様にした。
【0054】
(実施例4)
水平距離L1を100mmとし、距離L3を2.0mmとした以外は、実施例1と同様にした。
【0055】
(実施例5)
水平距離L2を0mmとした以外は、実施例4と同様にした。
【0056】
(実施例6)
水平距離L2を50mmとした以外は、実施例4と同様にした。
【0057】
(実施例7)
水平距離L1を200mmとし、距離L3を4.0mmとした以外は、実施例1と同様にした。
【0058】
(実施例8)
水平距離L2を0mmとした以外は、実施例7と同様にした。
【0059】
(実施例9)
水平距離L2を50mmとした以外は、実施例7と同様にした。
【0060】
(実施例10)
水平距離L1を300mmとした以外は、実施例4と同様にした。
【0061】
(実施例11)
水平距離L2を0mmとした以外は、実施例10と同様にした。
【0062】
(実施例12)
水平距離L2を50mmとした以外は、実施例10と同様にした。
【0063】
(比較例1)
水平距離L1を45mm、水平距離L2を50mm、距離L3を2.0mmとした以外は、実施例1と同様にした。
【0064】
(比較例2)
水平距離L1を310mmとした以外は、比較例1と同様にした。
【0065】
(比較例3)
水平距離L1を150mm、水平距離L2を−50mmとした以外は、比較例1と同様にした。
【0066】
(比較例4)
水平距離L2を55mmとした以外は、比較例3と同様にした。
【0067】
(評価方法)
評価項目は、バーの塗布直後において下流側のウエブの塗布面に発生す縦スジ状のムラを目視により評価した。
【0068】
評価レベルは、光学補償フィルムの品質評価において、製造品質レベルを十分に満たす
レベルを○、製造品質を満たすレベルを△、製造品質を満たさず不合格となるレベルを×とした3段階評価を行った。
【0069】
実施例1〜12及び比較例1〜4の結果を表1に示す。
【0070】
【表1】

【0071】
表1に示すように、バー16の頂点から堰26までの水平距離L1が50mm〜300mmを、また堰26とバックアップローラ18の最下点までの水平距離L2が−45mm〜50mmの範囲を満たす実施例1〜12では、いずれも縦スジ状のムラはほとんどなかった。これに対して、水平距離L1及び水平距離L2が本発明かかる範囲を超える比較例1〜4では、縦スジ状のムラが多く発生した。
【0072】
以上から、本発明を適用することで、塗布直後の塗布面に縦スジ状のムラが生じるのを抑制できることが確認できた。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】本発明の実施形態に係るバー塗布装置を示す概略図
【図2】図1のバー塗布装置の堰の近傍の拡大断面図である。
【図3】本実施形態のバー塗布装置を組み込んだ光学フィルムの製造ラインを示す概略図
【符号の説明】
【0074】
10・・・バー塗布装置、12・・・ウエブ、14・・・塗布ヘッド、16・・・バー、18・・・バックアップローラ、20・・・支持部材、22・・・第1ブロック、24・・・スリット、26・・・堰、26A・・・面、30・・・液溜部、32・・・第2ブロック、32A・・・傾斜面、34・・・スリット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行する帯状体に塗布液を塗布するバーと、
前記バーの下側に設けられ、該バーを回転自在に支持する支持部材と、
前記支持部材に対し、前記帯状体の走行方向の上流側に設けられ、該支持部材との間に塗布液を供給するスリットと、前記バーから前記帯状体の走行方向における水平距離が50mm〜300mmの範囲内に頂点が位置し、塗布液をオーバーフローする堰を有する第1ブロックと、
前記支持部材に対し、前記帯状体の走行方向の下流側に設けられ、該支持部材との間に塗布液を供給するスリットを有する第2ブロックと、
前記堰と最下点までの水平距離が−45mm〜50mm以内となるよう位置されたバックアップローラと、を備えたことを特徴とするバー塗布装置。
(但し、堰の頂点に対し下流側の位置を−方向と、上流側の位置を+方向とする)
【請求項2】
前記堰の塗布液がオーバーフローする面が水平に対し45°〜100°の角度を有する請求項1記載のバー塗布装置。
【請求項3】
前記堰の先端部の真直度は帯状体の幅方向において0.3mm/1m以下である請求項1又は2記載のバー塗布装置。
【請求項4】
前記堰と前記帯状体のクリアランスが0.2mm〜4.0mmである請求項1〜3のいずれか記載のバー塗布装置。
【請求項5】
請求項1〜4の何れか記載のバー塗布装置を使用して、走行する帯状体に塗布液を塗布する塗布方法。
【請求項6】
帯状体に形成された配向膜にラビング処理する工程と、
前記ラビング処理された配向膜上に請求項1〜4の何れか記載のバー塗布装置を使用して液晶ディスコティック化合物を含有する塗布液を塗布する工程と、
塗布された前記塗布液を乾燥することにより光学異方性層を形成する工程と、を備えた光学フィルムの製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2009−240995(P2009−240995A)
【公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−93088(P2008−93088)
【出願日】平成20年3月31日(2008.3.31)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】