パターン化された乾燥ポリマーを作製する方法およびパターン化された乾燥ポリマー
パターン化された乾燥ポリマーをポリマー溶液またはポリマー分散物から作製する方法であって、ポリマー溶液/分散物の露光区域と、ポリマー溶液/分散物の非露光区域とができるように、ポリマー溶液/分散物の上方にマスクを置く工程と、マスクをかぶったポリマー溶液/分散物に赤外線を照射する工程とを含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パターン化された乾燥ポリマーをポリマー溶液またはポリマー分散物から作製する方法、および、その方法によって作製されるパターン化された乾燥ポリマーに関連する。パターン化された乾燥ポリマーは通常、基体表面における被覆物の形態であるか、あるいは、独立型(free−standing)のシートまたはフィルムの形態である。
【0002】
本発明の方法は、パターン化された乾燥ラテックスの被覆物またはフィルムを作製するために特に有用であり、硬質ラテックス(すなわち、ポリマーが、室温を超えるガラス転移温度(Tg)を有するラテックス)および軟質ラテックス(すなわち、ポリマーが、室温よりも低いガラス転移温度(Tg)を有するラテックス)の両方に対して適用可能である。ラテックスはこの場合、水に分散される合成ポリマーコロイドとして定義される。
【背景技術】
【0003】
硬質ポリマーは、自動車産業、航空宇宙産業、輸送産業、家電産業および家具産業を含む多くの産業において、保護被覆物を作製するために使用される。硬い被覆物は、硬質ラテックスから作製することができる。トポグラフィー的にパターン化された表面を有する硬質ポリマー被覆物が数多くの異なる目的のために要求され得る。例えば、硬質ポリマー被覆物が、審美的効果を提供するために、または、掴みおよび摩擦を増大させるために、または、電磁放射線の散乱および透過に影響を及ぼすために要求され得る。軟質ラテックスが、柔軟な製造物(例えば、手袋およびコンドームなど)を作製するために使用される。再度ではあるが、トポグラフィー的にパターン化された表面が、審美的効果を提供するために、または、掴みを増大させるために要求され得る。代替的に、トポグラフィー的にパターン化された表面が、触覚による感覚を増大させるために要求され得る。軟質ラテックスのフィルムはまた、感圧性接着剤を作製するために使用される。接着性表面におけるパターン化は接着剤の粘着性および接着エネルギーを変化させることができ、また、表面に対する接着を促進させるために、または、表面に対する接着を低下させるためにそのどちらでも使用することができる。
【0004】
上記適用のほかに、トポグラフィー的にパターン化された被覆物は、例えば、海洋産業および造船産業において使用されるなどの防汚性被覆物としての適用を有する。そのうえ、特定のピッチを有する波形表面は、船体表面の流体力学的抗力を低下させることが知られている。他の可能な適用は、さらなるプライバシーのために窓を被覆するための光拡散フィルムを提供することであり、あるいは、デバイスからの光放射を増大させるために、または、他の場合には光を操作するために表面におけるマイクロレンズのアレイを提供することである。
【0005】
硬質ラテックスの場合、所与のパターンを、高温の鋳型が被覆物の融解および形状化のために被覆物の表面に押し付けられるエンボス加工プロセスによって被覆物の表面において作製することが知られている。しかしながら、そのようなエンボス加工プロセスは、脆い基体または熱に不安定な基体については適しておらず、また、広い面積にわたってはあまり実用的ではない。そのうえ、ポリマー表面が高いTgを有するならば、エンボス加工プロセスのエネルギー使用が著しくなる。
【0006】
軟質ラテックスの場合、ラテックスの液滴が、型押しパターンを生じさせるためにラテックスのベース層の表面に噴霧される2段階プロセスを使用することが知られている。しかしながら、このプロセスは時間がかかり、また、このプロセスは、特別仕立てのパターンを作製するために使用することができないので、可能であるパターンのタイプにおいて制限がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
これらの欠点を軽減しようとすることが本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
したがって、本発明は、パターン化された乾燥ポリマー(patterned dried polymer)をポリマー溶液またはポリマー分散物から作製する方法であって、ポリマー溶液/分散物の露光区域と、ポリマー溶液/分散物の非露光区域とができるように、ポリマー溶液/分散物の上方にマスクを置く工程と、マスクをかぶった(遮蔽された)ポリマー溶液/分散物に赤外線を照射する工程とを含む方法を提供する。
【0009】
本発明は、溶媒(ラテックスの場合には水)の蒸発速度がポリマー溶液/分散物の露光区域および非露光区域において異なるという事実に依拠する。蒸発速度は露光区域の方が大きい。したがって、これらの領域における固形成分含有量が、非露光区域における固形成分含有量よりも大きくなる。失われた溶媒(例えば、ラテックスの場合における水など)に取って代わるための、非露光区域から露光区域への流体流束が存在する。この流束により、ポリマー粒子/分子が流束とともに運ばれ、したがって、露光区域が非露光区域と比較して隆起する。これらの隆起部分により、所与のパターンが、生じた乾燥ポリマーの表面において形成される。
【0010】
本発明は、好適なポリマー溶液/分散物であれば、どのようなポリマー溶液/分散物に対してでも適用することができる。例えば、本発明は、溶媒(例えば、水など)に分子的に溶解されるポリマーをパターン化するために使用することができる。赤外線による局所的加熱によって引き起こされる蒸発速度における変化により、生じたポリマーフィルムの表面におけるトポグラフィー的パターンの形成がもたらされる。好適な水溶性ポリマーの例が、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(アクリル酸)、ポリ(ビニルピロリドン)、ポリ(エチレンオキシド)、ポリ(スチレンスルホナート)およびポリ(3−4エチレンジオキシチオフェン)である。
【0011】
水と同様に、他の好適な溶媒、例えば、エチルアルコールなどを使用することができる。溶媒が何であれ、ポリマーの濃度は好ましくは、0.01wt.%〜90wt.%の範囲でなければならず、より好ましくは0.1wt.%〜50wt.%の範囲でなければならず、最も好ましくは1wt.%〜15wt.%の範囲でなければならない。
【0012】
本発明はポリマー溶液に対して適用することができるが、本発明は主として、ラテックスの形態でのポリマー分散物に対して適用する。
【0013】
「湿潤」ラテックスは、典型的には直径が約100nm〜400nmであるコロイド状ポリマー粒子の水性分散物からなる。「乾燥」ラテックスが、「ラテックスフィルム形成」と通常の場合には呼ばれるプロセスによって「湿潤」ラテックスから形成される。このプロセスは下記の段階からなる:(1)水の蒸発および粒子充填;(2)粒子間の空隙を閉じるための粒子変形;ならびに(3)境界面をなくすための粒子境界をまたぐ分子の拡散。段階2は「焼結」と呼ぶことができ、段階(3)は「合体」と呼ぶことができる。ラテックスフィルムは、粒子が焼結されていないときには(光が散乱するために)濁っているが、焼結後は透明になる。
【0014】
ポリマーのガラス転移温度(Tg)よりも低い温度では、粒子は変形せず、また、分子は拡散しない。このことは、低いTgのラテックスのみが室温ではフィルム形成することを意味する。高いTgのラテックスは、ラテックスをフィルム形成させるために加熱することができる。これまで、ラテックスフィルムの加熱は、従来型の対流式オーブンを使用して行われている。しかしながら、これには、下記の欠点がある:(1)オーブンのエネルギー使用が大きいこと、(2)非常に高い温度が使用される場合を除いて、プロセスが長いこと、および、(3)フィルムが乾燥期間中に亀裂を生じさせやすいこと。
【0015】
本出願人は、ラテックスが、赤外線を使用して加熱されるならば、これらの欠点が軽減され得ることを見出している。マスクを介して赤外線を適用することはラテックスの局所的加熱を可能にし、これにより、特別仕立てのパターンを生じさせることが可能になる。用語「赤外線」は、本明細書中で使用される場合、0.7μm〜30μmの範囲における波長の放射線を意味する。
【0016】
ポリマーおよび水は赤外線を特定の特徴的波長において強く吸収する。水が赤外線を吸収するとき、水は温度が上昇する。したがって、水の蒸発速度が赤外線のもとでは増大する。このことはまた、ラテックスが赤外線にさらされるならば、ポリマー粒子が赤外線を吸収し、ポリマー粒子は温度が上昇することを意味する。その後、ポリマー粒子は軟化し、焼結および合体してフィルムを生じさせることができる。
【0017】
赤外線を使用することの主な利点は、硬質ラテックス粒子のフィルム形成を可能にし、また、湿潤ラテックスの非遮蔽領域における蒸発速度を増大させることである。また、赤外線は照射区域におけるより速い蒸発速度をもたらし、したがって、溶媒のより大きい流束をもたらす。結果として、トポグラフィー的パターンが赤外線の場合にはより強くなり、一方、蒸発が自然の状態で生じるときにはより弱くなる。これらの利点に加えて、赤外線ランプでは典型的には、対流式オーブンよりも少ないエネルギーが使用され、したがって、本発明のプロセスは、エネルギー効率が、対流式オーブンを使用する場合よりも大きい。そのうえ、本発明のプロセスは、対流式オーブンを使用する場合よりも迅速である。加えて、フィルムが乾燥期間中に亀裂を生じさせる傾向が小さくなっている。
【0018】
赤外線の使用は硬質ラテックスについて特に有用であるが、赤外線の使用は水の蒸発速度を増大させるので、軟質ラテックスについても有用である。
【0019】
したがって、ラテックスは、Tgを20℃から100℃までの範囲に有する硬質ラテックスであり得る。代替的に、ラテックスは、Tgを−50℃から20℃までの範囲に有する軟質ラテックスであり得る。
【0020】
ラテックスの温度がTgを超えて上がるにつれて、ポリマーの粘度が低下し、変形段階および拡散段階がより速くなる。温度が上がるにつれて、水がより速く蒸発する。本出願人は、水がTgよりも低い温度で蒸発するならば、フィルムの亀裂形成が生じやすく、しかし、Tgを超える温度では、フィルムは亀裂形成をそれほど生じないことを見出している。本出願人は、これは、硬い粒子がそれらの球状形状から変形しないとき、毛細管力によって生じる応力のためであると考えている。
【0021】
したがって、露光条件は好ましくは、ポリマーの温度がそのガラス転移温度よりも高くなるようにされ、より好ましくは、ポリマーの温度がそのガラス転移温度よりも少なくとも15℃高くなるようにされる。
【0022】
ポリマーの温度は、ラテックスが赤外線にさらされる条件(例えば、赤外線の波長、赤外線の強度、赤外線露光の長さ、および、赤外線源と、ラテックス被覆物との間の距離など)によって影響される。したがって、これらのパラメーターは、所望の結果を得るために必要に応じて調節することができる。
【0023】
波長は好ましくは、ポリマーおよび/または水が最大吸収係数を有する波長でなければならない。代替的に、赤外線の波長は好ましくは、0.7μm〜30μmの範囲でなければならず、より好ましくは0.7μm〜1.8μmの範囲でなければならない。
【0024】
露光時間が、特定のラテックス厚さおよびラテックス組成について好適である長さに調節されなければならない。好ましくは、遮蔽されたラテックスは、ラテックスが完全に乾燥するまで赤外線にさらされなければならない。
【0025】
赤外線源からのラテックスの距離が、赤外線ランプのタイプおよびポリマーの組成に依存して調節されなければならない。好ましくは、赤外線源からのラテックスの距離は1cm〜100cmの間の範囲であり、より好ましくは5cm〜30cmの間の範囲であり、最も好ましくは15cm〜25cmである。
【0026】
好ましくは、ラテックスは被覆物の形態である。好ましくは、乾燥ラテックスの厚さが、厚さが0.5μm〜1cmの間における範囲であり、より好ましくは、厚さが2μm〜1mmの間における範囲であり、最も好ましくは、厚さが10μm〜300μmの間における範囲である。
【0027】
好ましくは、ラテックスの固形分含有量が10重量パーセント〜80重量パーセントの範囲であり、好ましくは30重量パーセント〜60重量パーセントの範囲であり、より好ましくは45重量パーセント〜55重量パーセントの範囲である。
【0028】
好ましくは、ラテックスとマスクとの間の距離が、0.01mm〜10cmの範囲でなければならず、好ましくは0.1mm〜10mmの範囲でなければならず、より好ましくは0.2mm〜3mmの範囲でなければならない。ラテックスとマスクとの間の距離が大きすぎる場合は、蒸発速度が小さくなるという変化が生じ、その結果、パターン形成が阻害されるか、または、妨げられる。
【0029】
マスクにおける孔(perforations)の形状および互いに関するそれらの配置を、ラテックスの表面に生じさせられるパターンに従って変化させることができる。
【0030】
マスクにおける孔は、好適なサイズであれば、どのようなサイズのものであってもよい。例えば、孔は直径を0.01mm〜10cmの範囲に有することができ、好ましくは0.1mm〜1cmの範囲に有することができ、より好ましくは0.5mm〜5mmの範囲に有することができる。
【0031】
マスクにおける孔は、好適な形状であれば、どのような形状のものであってもよい。例えば、孔は、正方形、円形、三角形、長方形、多角形またはロゴ(logo)形状であり得る。
【0032】
マスクは、好適なサイズであれば、どのようなサイズのものであってもよい。例えば、マスクは、1mmから10mにまで及ぶ大きさを有することができ、好ましくは1cm〜1mの範囲における大きさを有することができ、より好ましくは1cm〜20cmの範囲における大きさを有することができる。
【0033】
好ましくは、マスクはラテックスを完全に覆う。
【0034】
マスクは、赤外線の透過を阻止する好適な材料であれば、どのような材料からでも作製することができる。例えば、マスクは、スチール、アルミニウム、カード、木材、プラスチックまたはガラスから作製することができる。
【0035】
マスクは、孔の周りの区域がIRに対して半透明であるように構成することができる。この区域は孔に対して形状が同じまたは異なっていてもよく、また、半透明な区域の直径は所定のサイズ範囲において与えることができる。
【0036】
小さい孔を有する、IRに対して半透明である材料から作製される第1のマスクを、この半透明なマスクよりも大きい孔を有する、IRに対して不透明な第2のマスクと重ねることができ、この場合、生じた配置は、不透明なマスクにおけるより大きい孔が、半透明なマスクにおけるより小さい孔を取り囲み、その結果、半透明な区域が、より小さい孔の周りにもたらされるようにされる。
【0037】
2つ以上のマスクを、所望のパターンを基体上に生じさせるために使用することができる。これらの複数のマスクは同じまたは異なる孔サイズおよび孔形状を有することができる。
【0038】
基体は、ポリマー溶液またはポリマー分散物の被覆物を加え、前記で記載されるマスクのいずれかを介してIRにより乾燥する前に、撥水性物質により特定のパターンで予備被覆することができる。
【0039】
ラテックスは、好適な基体であれば、どのような基体の上にも注ぐことができる。例えば、ラテックスは、ガラス、スチール、アルミニウム、プラスチック、カードまたは木材から作製される基体の上に注ぐことができる。
【0040】
ラテックスが軟質ラテックスである場合、ラテックスは、独立型(自立型)フィルムを作製するために基体から取り除くことができる。
【0041】
ラテックスは、異なる平均粒子サイズをそれぞれが有する2つ以上のラテックスの混合物を含むことができる。
【0042】
ラテックスは下記の1つ以上を含むことができる:金属ナノ粒子、半導電性粒子、着色粒子、蛍光性粒子、さらなる赤外吸収体(例えば、PEDOT:PSSとして知られているポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)/ポリ(スチレンスルホナート)など)。
【0043】
上記で示される段落は「ラテックス」について言及しているが、上記段落は、ポリマー溶液および他のポリマー分散物に対して同等にあてはまる。
【0044】
次に、本発明が、例としてのみであるが、下記の図を参照して例示される。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】図1aは、実施例1に使用されるマスクの略図を示す(これは原寸に比例して描かれていない)。図1bは、本発明の方法に従ってIR放射線にさらされる遮蔽されたラテックスを概略的に示す。
【図2】図2aは、図1aにおけるマスクを使用して作製された実施例1のフィルムを示す。図2bは、マスクを使用することなく作製された実施例1のフィルムを示す。図2cは、上部から眺められる図2aのフィルムの表面パターンを示す。図2dは、コンピューター分析とともに光学顕微鏡観察の技術の使用により図2cにおける赤色線として描かれる軌跡から得られる被覆物のトポグラフィー的プロフィルを示す。
【図3】図3aは、IR放射線に20分間さらされた実施例2のフィルムを示す。図3bは、IR放射線に35分間さらされた実施例2のフィルムを示す。
【図4】実施例3において使用される用語の意味を説明する略図である。
【図5】図5aは、50wt.%のラテックスから作製される実施例4のフィルムを示す。図5bは、30wt.%のラテックスから作製される実施例4のフィルムを示す。
【図6】チューブに巻かれた実施例5のフィルムを示す。
【図7】図7aは、マスク1を使用して作製される実施例6のフィルムを示す。図7bは、マスク5から作製される実施例6のフィルムを示す。
【図8】図8aは、マスク1を使用してポリマー溶液から作製される実施例7のフィルムを示す。図8bは、表面プロフィル計測器を使用して得られる表面トポグラフィーを示す。
【図9】図9aは、マスク1を使用してポリマー溶液から作製される実施例8のフィルムを示す。図9bは、表面プロフィル計測器を使用して得られる表面トポグラフィーを示す。
【図10a】0.33mmの湿潤フィルム厚さを有する、マスク7を使用して作製される実施例9のフィルムの表面パターンを示す。
【図10b】マスク2、マスク6およびマスク7から作製される実施例9のフィルムについて、フィルム厚さに対する山対谷の高さを示す。
【図11】実施例10のフィルムについて、フィルムからの距離に対する山対谷の高さを示す。
【図12】マスク6、マスク7、マスク8、マスク9およびマスク10から作製される実施例11のフィルムについて、中心間距離に対する山対谷の高さを示す。
【図13】実施例12のフィルムの表面パターンを示す。
【図14】図14aは、実施例13で使用されるマスクを示す。図14bは、実施例13のフィルムの表面パターンを示す。図14cは、実施例13のフィルムのトポグラフィー的プロフィルを示す。
【図15】実施例15のフィルムの表面パターンを示す。
【図16】実施例16のフィルムの表面パターンを示す。
【発明を実施するための形態】
【0046】
実施例1
湿潤ラテックスを、水に分散される、アクリル酸ブチル、メタクリル酸メチルおよびメタクリル酸のコポリマーの粒子から作製した。このラテックスは乳化重合の標準的な方法によって作製された。この湿潤ラテックスはポリマー固形成分含有量がおよそ50重量%であり、Tgが38℃である。
【0047】
ラテックスフィルムが、1gの湿潤ラテックスを、ピペットを用いてガラス基体の上に注ぐことによって形成された。生じた湿潤フィルムは0.2mmの厚さであった。マスクは、湿潤フィルムの上方2mmに置かれた。マスクは、列に配置される多数の円形の孔を有する金属シートからなった。孔のサイズおよび配置の略図が図1aに示される。マスクは、d=3mm、L=2.25mmおよびx=4.5mmを有する。
【0048】
図1bに概略的に示されるように、遮蔽されたフィルムを、250WのIRランプから放射される700nmから1.8μmにまで及ぶ波長のIR放射線に25cmの距離で30分間さらした。
【0049】
その後、実施例を繰り返したが、マスクを使用しなかった。15分のより短い放射時間が使用された。乾燥が均一であり、かつ、フィルムの表面全体から生じたので、これが、要求されたすべてのことであった。
【0050】
図2aおよび図2bは、本実施例から得られる2つの乾燥フィルムを示す。図2dは、図2cに記される線に沿って走査される図2aのフィルムの表面パターンを示す。これらの図から、図2aに示されるフィルムの表面にはパターンが存在し、この場合、このパターンは、規則的なパターンで配置される数多くの離れた隆起部分の形態を取っていることを認めることができる。
【0051】
実施例2
実施例1を、ガラス基体の代わりに、スチール基体を使用して繰り返した。IR放射線に対する露光の長さの影響を示すために、異なる露光時間が使用された。図3aは、図1aにおけるマスクにより遮蔽されるとき、フィルムをIR放射線に20分間さらすことの結果を示す。図3bは、遮蔽されたフィルムをIR放射線に35分間さらすことの結果を示す。認められ得るように、ほんの20分間だけ露光された遮蔽されたフィルムは不透明であり、亀裂を有する。したがって、露光は、フィルムが完全に乾燥するまで行われることを確実にしなければならない。
【0052】
実施例3
実施例1を、いくつかの異なるマスクを使用して繰り返した。マスクのそれぞれが、列に配置された多数の円形の孔を有する金属シートからなった。マスクの詳細は下記の通りであった(使用された用語の意味を示す略図については図4を参照のこと)。
【0053】
【表1】
【0054】
孔直径を増大させることの影響を下記の表から認めることができる:
【0055】
【表2】
【0056】
このように、孔直径を増大させることにより、被覆物における隆起部分の直径が増大する。孔直径を増大させることはまた、被覆物の隆起部分の山対谷の距離を増大させる。
【0057】
孔の中心間距離を増大させることの影響を下記の表から認めることができる:
【0058】
【表3】
【0059】
このように、孔の間隔が大きいほど、被覆物における隆起部分の山間距離が長くなる。
【0060】
また、マスク5については、ほぼ50%多い露光時間が、乾燥被覆物を生じさせるために必要であった。
【0061】
実施例4
実施例1を、2つの異なる固形分含有量を使用して、すなわち、30wt.%のラテックスおよび50wt.%のラテックスを使用して繰り返した。
【0062】
50wt.%のラテックスから作製された被覆物については、フィルム面積のほぼ75%が平坦であり、25%が、およそ0.08mm〜0.2mmの高さを有する隆起部分により覆われた(図5aを参照のこと)。これに対し、30wt.%のラテックスから作製された被覆物については、被覆物の表面のほぼ90%が、0.08mm〜0.21mmの高さを有する隆起部分により覆われた(図5bを参照のこと)。
【0063】
したがって、固形成分含有量が低いほど、被覆物の隆起部分の面積が大きくなることを認めることができる。
【0064】
実施例5
湿潤ラテックスを、水に分散される、メタクリル酸メチル、アクリル酸ブチルおよびメタクリル酸から構成されるアクリルコポリマーの粒子から作製した。このラテックスは乳化重合の標準的な方法によって作製された。この湿潤ラテックスはポリマー固形成分含有量が50重量%であり、Tgが0℃である。
【0065】
ラテックスフィルムが、2.7gの湿潤ラテックスを、ピペットを用いてガラス基体の上に注ぐことによって形成された。ガラス基体の区域が5cm×7.5cmであった。生じた湿潤フィルムは200μmの厚さであった。その後、マスクが湿潤フィルムの上方に置かれた。使用されたマスクは実施例3のマスク1であった。
【0066】
遮蔽されたフィルムを、250WのIRランプからの700nmから1.8μmにまで及ぶ波長のIR放射線に25cmの距離で30分間さらした。
【0067】
生じた乾燥フィルムを基体から剥がして、独立型(自立型)の柔軟なフィルムを得た。このフィルムはチューブに巻くことができる(図6を参照のこと)。
【0068】
実施例6
実施例5を、異なるラテックスをいくつかの異なるマスクとともに使用して繰り返した。湿潤ラテックスを、水に分散される、アクリル酸モノマーのブレンド物から構成されるアクリルコポリマーの粒子から作製した。このラテックスは乳化重合の標準的な方法によって作製された。この湿潤ラテックスはポリマー固形成分含有量が45重量%であり、Tgが−10℃である。
【0069】
生じた乾燥フィルムが図7a(マスク1)および図7b(マスク5)に示される。
【0070】
実施例7
1.3wt.%の固形成分含有量のポリマー濃度を有する、水におけるポリ(3−4エチレンジオキシチオフェン)−ポリ(スチレンスルホナート)またはPEDOT−PSSのポリマー溶液(Aldrich Chemical Companyから得られる)をガラスプレートの上に注いだ。ガラスプレートの大きさは7.5cm×2.5cmであった。
【0071】
1gのPEDOT−PSS溶液を、ピペットを用いて注いだ。生じた湿潤フィルムはおよそ200μmの厚さであった。その後、マスクが湿潤フィルムの上方に置かれた。使用されたマスクは実施例3からのマスク1であった。
【0072】
遮蔽されたフィルムを、250WのIRランプからの700nmから1.8μmにまで及ぶ波長のIR放射線に25cmの距離で45分間さらした。表面突出部を規則的なパターンで有する乾燥フィルムが生じた(図8a)。被覆物のより厚い区域が図8aにおける写真ではより暗く現れる。
【0073】
図8bは、プロフィロメトリーの使用により得られるポリマーフィルムのトポグラフィー的プロフィルを示す。プロフィルの横方向距離が27mmである。表面突出部の測定された山対谷の高さが10μmを超えている。
【0074】
実施例8
分子量が1モルあたり1,300,000gであるポリ(ビニルピロリドン)(またはPVP)のポリマー粉末をSigma−Aldrich Chemical Companyから得た。
【0075】
1gのこのポリマーを9gの脱イオン水に溶解して、10wt.%の溶液を作製した。ポリマーフィルムが、1gのPVP溶液を、ピペットを用いてガラス基体(7.5cm×2.5cm)の上に注ぐことによって形成された。生じた湿潤フィルムは200μmの厚さであった。その後、マスクが湿潤フィルムの上方に置かれた。使用されたマスクは実施例3からのマスク1であった。
【0076】
遮蔽されたフィルムを、250WのIRランプからの700nmから1.8μmにまで及ぶ波長のIR放射線に25cmの距離で45分間さらした。図9aは、暗いスポットとして現れる表面突出部のパターンを有する乾燥フィルムを示す。
【0077】
図9bは、プロフィロメトリーの使用により得られるポリマーフィルムのトポグラフィー的プロフィルを示す。プロフィルの横方向距離が20mmである。測定された山対谷の高さが60μmを超えている。
【0078】
実施例9
実施例1を、同じラテックスを使用して繰り返したが、図4に示されるような孔のアレイを有する3つの異なるアルミニウムマスクを使用した。マスクの大きさが下記の表に示される:
【0079】
【表4】
【0080】
乾燥ポリマーにおける生じた隆起部分の高さに対するフィルムの初期湿潤時厚さの影響を示すために、最初の注がれたラテックスの量を変化させた。マスク2を用いて作製されるサンプルについては、初期湿潤時厚さが0.2mm〜1.2mmの範囲にあるいくつかのサンプルをガラス基体(2.5cm×5cm)の上に注いだ。これらのサンプルについて注がれたラテックスの量は0.42g〜1.6gの範囲であった。マスク6およびマスク7については、湿潤時厚さの範囲が同じであった。しかしながら、ガラス基体のサイズが3cm×2.5cmであり、注がれたラテックスの量が0.2g〜0.95gの範囲であった。
【0081】
これらの場合のすべてにおいて、マスクが湿潤フィルムの上方0.7mmの距離で置かれた。マスクがIRランプの下方16.5cmの距離で置かれた。IR放射線のもとでの放射時間が、フィルムの初期湿潤時厚さに依存して、15分〜50分の範囲であった。(より長い放射時間が、より厚いフィルムには要求される。)
【0082】
フィルムのトポグラフィーが一例として図10aに示される。像が3−Dプロファイル計測器により得られた。赤色は、より高い領域を表し、緑色および青色は、より低い領域を表す。このフィルムは、マスク7、0.33mmの湿潤フィルム厚さ、および、0.5mmの、マスクと、湿潤フィルムとの間の距離を使用して作製された。山および谷を認めることができ、山対谷の高さが102μmである。
【0083】
図10bは、ポリマー表面の隆起部分の山対谷の高さを、本実施例で使用される3つのマスクについてフィルムの初期湿潤時厚さの関数として示す。この図において、マスク2については、0.8mmまでの湿潤フィルム厚さについて、隆起部分のより大きい山対谷の高さが、フィルムの初期湿潤時厚さがより大きいときに得られることを認めることができる。初期湿潤時厚さが0.8mmを超えて増大するとき、山対谷の高さは同じままである。マスク7については、類似した一般的傾向が認められ、しかし、高さの値が、湿潤フィルム厚さが0.4mmよりも大きくなるときには平準化する。マスク6については、最も大きい山対谷の高さが、初期湿潤時厚さが0.33mmであるときに得られる。表面模様の山対谷の高さは、マスクの大きさおよび初期湿潤フィルム厚さを選ぶことにより調節することができると結論される。
【0084】
実施例10
実施例1を、同じラテックスを使用して繰り返したが、実施例9のマスク6を使用した。実験を、ポリマーフィルムの隆起部分の山対谷の高さに対する、湿潤フィルムからのマスクの距離の影響を示すために行った。マスクを0.5mm〜1.7mmの範囲における距離で湿潤フィルムの上方に置いた。
【0085】
ラテックスフィルムが、0.25gの湿潤ラテックスをガラス基体(3cm×2.5cm)の上に注ぐことによって形成された。生じた湿潤フィルムは0.33mmの厚さであった。
【0086】
マスクがIRランプの下方16.5cmに置かれた。IR放射線のもとでの放射時間がおよそ20分であった。
【0087】
図11は、フィルムからのマスクの距離に対する隆起部分の山対谷の高さを示す。この図から、フィルムからのマスクの距離が大きくなるとき、隆起部分の山対谷の高さが低くなることを認めることができる。
【0088】
実施例11
実施例1を、同じラテックスを使用して繰り返した。隆起部分の山対谷の高さに対するマスクの中心間の距離の影響を明らかにするために、一連のマスクを使用した。マスクの幾何学的大きさが下記の表に示される。
【0089】
【表5】
【0090】
これらのマスクのすべてが湿潤フィルムの上方0.5mmに置かれた。これらの場合のすべてにおいて、ラテックスフィルムが、0.25gの湿潤ラテックスをガラス基体(3cm×2.5cm)の上に注ぐことによって形成された。生じた湿潤フィルムは0.33mmの厚さであった。
【0091】
サンプルおよびマスクがIRランプの下方16.5cmの距離で置かれた。IRランプのもとでの放射時間がおよそ20分であった。
【0092】
図12は、隆起部分の山対谷の高さをマスクのそれぞれについて中心間距離の関数として示す。この図から、中心間距離が大きくなるとき、隆起部分の山対谷の高さが大きくなることを認めることができる。
【0093】
実施例12
実施例1を、同じラテックスを使用して繰り返した。2つのマスクを、2つのサイズの表面トポグラフィーを有するパターン化された乾燥ポリマー表面を得るために一緒に使用した。マスク2(これは実施例3で使用された)がマスク10(これは実施例11で使用された)の上方に直接に置かれ、これら2つのマスクは接触していた。底部マスクが湿潤フィルムの上方0.5mmに置かれた。
【0094】
ラテックスフィルムが、0.2gの湿潤ラテックスをガラス基体(3cm×2.5cm)の上に注ぐことによって形成された。生じた湿潤フィルムは0.26mmの厚さであった。
【0095】
サンプルおよびマスクがIRランプの下方16.5cmに置かれた。IR放射線のもとでの放射時間がおよそ20分であった。
【0096】
図13は、重なり合った2つのパターンを有する生じたフィルムを示す。より小さい突起物のアレイが、より大きい特徴物の上部に存在する。したがって、階層的長さスケールのテクスチャを有する表面を、好適なマスクパターンを用いて得ることができることが示される。
【0097】
実施例13
実施例1を、同じラテックスを使用して繰り返した。唯一の違いは、長い長方形の孔を有するマスクが、線状パターンを得るために使用されたことである。図14aは、使用されるアルミニウムマスクの概略を示す。白いブロックはマスクにおける孔を表す。
【0098】
ラテックスフィルムが、0.3gの湿潤ラテックスをガラス基体(2.5cm×1.5cm)の上に注ぐことによって形成された。生じた湿潤フィルムは0.53mmの厚さであった。マスクが湿潤フィルムの上方0.5mmに置かれた。マスクがIRランプの下方16.5cmに置かれた。IR放射線のもとでの放射時間がおよそ20分であった。
【0099】
生じた乾燥フィルムは線状パターンをその表面に有した。ポリマーフィルムの写真が図14bに示される。線状の尾根が表面にもたらされた。それらの長さおよび幅がマスクの長さおよび幅と類似している。
【0100】
図14cは、プロフィロメトリーにより得られる生じたパターン化フィルムのトポグラフィー的プロフィルを示す。この測定により、最大の山対谷の高さがおよそ300μmである表面波形が存在することが確認される。
【0101】
実施例14
実施例1を、5つの異なるラテックスを使用して繰り返した。ラテックスは乳化重合の標準的な方法によって調製された。ラテックスのガラス転移温度(Tg)、粒子サイズおよび固形成分含有量は、下記の表に示される通りであった。表におけるラテックスCは、実施例1で使用される同じラテックスである。ラテックスAおよびラテックスBは、ラテックスCと同じ組成を有する。ラテックスDは、より大きい割合のアクリル酸ブチルおよびより低い割合のメタクリル酸メチルを含有することを除いて、Aと類似する組成を有しており、その結果、ラテックスDは、A、BおよびCよりも低いガラス転移温度を有する。ラテックスEは、コポリマーが1;1の重量比でのアクリル酸ブチルおよびメタクリル酸メチルから作製されたラテックスである。
【0102】
一連の40個のサンプルを、粒子サイズ、IR放射線の使用の有無、固形成分含有量、および、PEDOT:PSSとして知られているポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)/ポリ(スチレンスルホナート)の添加(これはSigma−Aldrich Companyから得られた)の影響を調べるために調製した。PEDOT:PSSは赤外線を強く吸収する。したがって、ラテックスがPEDOT:PSSを含有するとき、ラテックスの温度が赤外線下では一層上昇する。より高いラテックス温度は水のより速い蒸発速度をもたらす。PEDOT:PSSのより大きい濃度は水のより速い蒸発速度をもたらす。
【0103】
実施例11のマスク6またはマスク7のいずれかが実施例14では使用された。マスクが湿潤フィルムの上方0.7mmに置かれた。
【0104】
ラテックスフィルムが、0.4gの湿潤ラテックスをガラス基体(3cm×2.5cm)の上に注ぐことによって形成された。生じた湿潤フィルムは0.53mmの厚さであった。マスクがIRランプの下方16.5cmに置かれた。IR放射線のもとでの放射時間がおよそ20分であった。
【0105】
隆起部分の測定された山対谷の高さが下記の表に示される。本実施例は、パラメーターのそれぞれが表面トポグラフィーの山対谷の高さに対する影響を有することを示す。本実施例は、IRランプが、水の蒸発速度を増大させるために使用されないとき、平坦なポリマー表面が生じることを示す(山対谷の高さが0μmである)。したがって、トポグラフィー的にパターン化された表面を得るためには、赤外線加熱を使用することが必須であると結論づけられる。
【0106】
最大の山対谷の高さが、4wt.%のPEDOT:PSSがラテックスに添加され、かつ、ラテックスが、R=3mmおよびD=2mmを有するマスクのもとでIR放射線により照射されたときに得られた。本実施例は、広範囲の表面トポグラフィーが、プロセスパラメーターを変化させることによって得ることができることを示す。
【0107】
【表6】
【0108】
実施例15
パターン化されたフィルムを、異なる平均粒子サイズをそれぞれが有する2つのラテックスのブレンド物を使用して実施例1における手順に従って調製した。ラテックスCは、実施例14で使用されたものであり(420nmの粒子サイズを有する)、Polysciences,Inc.から、Fluoresbrite(登録商標)YG Microspheresの商品名により得られた、50nmの粒子サイズを有するポリスチレンラテックスとブレンドされた。ポリマーは蛍光色素により標識され、その結果、粒子がラテックスCの粒子から識別され得るようにされた。およそ100μLの50nmラテックスを5mLのラテックスCとブレンドした。
【0109】
ラテックスフィルムが、0.4gのブレンドされた湿潤ラテックスをガラス基体(3cm×2.5cm)の上に注ぐことによって形成された。生じた湿潤フィルムは0.53mmの厚さであった。マスク7が、湿潤フィルムの上方およそ0.7mmで、かつ、IRランプの下方およそ16.5cmに置かれた。IR放射線のもとでの放射時間がおよそ20分であった。
【0110】
図15は、顕微鏡を紫外線(UV)照明下で使用して得られる生じたフィルムの写真を示す。およそ11mm×7mmの区域が写真において示される。生じたフィルムは、蛍光性粒子の不均一な分布をポリマー被覆物の平面において横方向に有することを認めることができる。蛍光性ポリスチレンが写真ではより明るく現れる。濃度は、被覆物の隆起部分において大きくなっている。
【0111】
実施例16
この同じ手順を、ラテックスCの代わりに、(28nmの粒子サイズを有する)ラテックスEを使用して再び繰り返した。生じたフィルムの(UV照明下において顕微鏡で得られる)写真が図16に示される。およそ8mm×10mmの区域が示される。蛍光性ポリスチレン粒子がフィルムにおいて規則的間隔の領域に集中している。これらの領域が、マスクにおける孔の下であった位置に存在する。被覆物の表面がこれらの同じ位置で隆起する。
【0112】
本実施例は、異なる粒子サイズのラテックスが、フィルムを作製するためにブレンドおよび使用できることを示す。粒子が乾燥ラテックスフィルムにおいて不均一に分布する。本実施例は、被覆物の光学特性および誘電特性が周期的に調節され得る方法を実証する。
【技術分野】
【0001】
本発明は、パターン化された乾燥ポリマーをポリマー溶液またはポリマー分散物から作製する方法、および、その方法によって作製されるパターン化された乾燥ポリマーに関連する。パターン化された乾燥ポリマーは通常、基体表面における被覆物の形態であるか、あるいは、独立型(free−standing)のシートまたはフィルムの形態である。
【0002】
本発明の方法は、パターン化された乾燥ラテックスの被覆物またはフィルムを作製するために特に有用であり、硬質ラテックス(すなわち、ポリマーが、室温を超えるガラス転移温度(Tg)を有するラテックス)および軟質ラテックス(すなわち、ポリマーが、室温よりも低いガラス転移温度(Tg)を有するラテックス)の両方に対して適用可能である。ラテックスはこの場合、水に分散される合成ポリマーコロイドとして定義される。
【背景技術】
【0003】
硬質ポリマーは、自動車産業、航空宇宙産業、輸送産業、家電産業および家具産業を含む多くの産業において、保護被覆物を作製するために使用される。硬い被覆物は、硬質ラテックスから作製することができる。トポグラフィー的にパターン化された表面を有する硬質ポリマー被覆物が数多くの異なる目的のために要求され得る。例えば、硬質ポリマー被覆物が、審美的効果を提供するために、または、掴みおよび摩擦を増大させるために、または、電磁放射線の散乱および透過に影響を及ぼすために要求され得る。軟質ラテックスが、柔軟な製造物(例えば、手袋およびコンドームなど)を作製するために使用される。再度ではあるが、トポグラフィー的にパターン化された表面が、審美的効果を提供するために、または、掴みを増大させるために要求され得る。代替的に、トポグラフィー的にパターン化された表面が、触覚による感覚を増大させるために要求され得る。軟質ラテックスのフィルムはまた、感圧性接着剤を作製するために使用される。接着性表面におけるパターン化は接着剤の粘着性および接着エネルギーを変化させることができ、また、表面に対する接着を促進させるために、または、表面に対する接着を低下させるためにそのどちらでも使用することができる。
【0004】
上記適用のほかに、トポグラフィー的にパターン化された被覆物は、例えば、海洋産業および造船産業において使用されるなどの防汚性被覆物としての適用を有する。そのうえ、特定のピッチを有する波形表面は、船体表面の流体力学的抗力を低下させることが知られている。他の可能な適用は、さらなるプライバシーのために窓を被覆するための光拡散フィルムを提供することであり、あるいは、デバイスからの光放射を増大させるために、または、他の場合には光を操作するために表面におけるマイクロレンズのアレイを提供することである。
【0005】
硬質ラテックスの場合、所与のパターンを、高温の鋳型が被覆物の融解および形状化のために被覆物の表面に押し付けられるエンボス加工プロセスによって被覆物の表面において作製することが知られている。しかしながら、そのようなエンボス加工プロセスは、脆い基体または熱に不安定な基体については適しておらず、また、広い面積にわたってはあまり実用的ではない。そのうえ、ポリマー表面が高いTgを有するならば、エンボス加工プロセスのエネルギー使用が著しくなる。
【0006】
軟質ラテックスの場合、ラテックスの液滴が、型押しパターンを生じさせるためにラテックスのベース層の表面に噴霧される2段階プロセスを使用することが知られている。しかしながら、このプロセスは時間がかかり、また、このプロセスは、特別仕立てのパターンを作製するために使用することができないので、可能であるパターンのタイプにおいて制限がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
これらの欠点を軽減しようとすることが本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
したがって、本発明は、パターン化された乾燥ポリマー(patterned dried polymer)をポリマー溶液またはポリマー分散物から作製する方法であって、ポリマー溶液/分散物の露光区域と、ポリマー溶液/分散物の非露光区域とができるように、ポリマー溶液/分散物の上方にマスクを置く工程と、マスクをかぶった(遮蔽された)ポリマー溶液/分散物に赤外線を照射する工程とを含む方法を提供する。
【0009】
本発明は、溶媒(ラテックスの場合には水)の蒸発速度がポリマー溶液/分散物の露光区域および非露光区域において異なるという事実に依拠する。蒸発速度は露光区域の方が大きい。したがって、これらの領域における固形成分含有量が、非露光区域における固形成分含有量よりも大きくなる。失われた溶媒(例えば、ラテックスの場合における水など)に取って代わるための、非露光区域から露光区域への流体流束が存在する。この流束により、ポリマー粒子/分子が流束とともに運ばれ、したがって、露光区域が非露光区域と比較して隆起する。これらの隆起部分により、所与のパターンが、生じた乾燥ポリマーの表面において形成される。
【0010】
本発明は、好適なポリマー溶液/分散物であれば、どのようなポリマー溶液/分散物に対してでも適用することができる。例えば、本発明は、溶媒(例えば、水など)に分子的に溶解されるポリマーをパターン化するために使用することができる。赤外線による局所的加熱によって引き起こされる蒸発速度における変化により、生じたポリマーフィルムの表面におけるトポグラフィー的パターンの形成がもたらされる。好適な水溶性ポリマーの例が、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(アクリル酸)、ポリ(ビニルピロリドン)、ポリ(エチレンオキシド)、ポリ(スチレンスルホナート)およびポリ(3−4エチレンジオキシチオフェン)である。
【0011】
水と同様に、他の好適な溶媒、例えば、エチルアルコールなどを使用することができる。溶媒が何であれ、ポリマーの濃度は好ましくは、0.01wt.%〜90wt.%の範囲でなければならず、より好ましくは0.1wt.%〜50wt.%の範囲でなければならず、最も好ましくは1wt.%〜15wt.%の範囲でなければならない。
【0012】
本発明はポリマー溶液に対して適用することができるが、本発明は主として、ラテックスの形態でのポリマー分散物に対して適用する。
【0013】
「湿潤」ラテックスは、典型的には直径が約100nm〜400nmであるコロイド状ポリマー粒子の水性分散物からなる。「乾燥」ラテックスが、「ラテックスフィルム形成」と通常の場合には呼ばれるプロセスによって「湿潤」ラテックスから形成される。このプロセスは下記の段階からなる:(1)水の蒸発および粒子充填;(2)粒子間の空隙を閉じるための粒子変形;ならびに(3)境界面をなくすための粒子境界をまたぐ分子の拡散。段階2は「焼結」と呼ぶことができ、段階(3)は「合体」と呼ぶことができる。ラテックスフィルムは、粒子が焼結されていないときには(光が散乱するために)濁っているが、焼結後は透明になる。
【0014】
ポリマーのガラス転移温度(Tg)よりも低い温度では、粒子は変形せず、また、分子は拡散しない。このことは、低いTgのラテックスのみが室温ではフィルム形成することを意味する。高いTgのラテックスは、ラテックスをフィルム形成させるために加熱することができる。これまで、ラテックスフィルムの加熱は、従来型の対流式オーブンを使用して行われている。しかしながら、これには、下記の欠点がある:(1)オーブンのエネルギー使用が大きいこと、(2)非常に高い温度が使用される場合を除いて、プロセスが長いこと、および、(3)フィルムが乾燥期間中に亀裂を生じさせやすいこと。
【0015】
本出願人は、ラテックスが、赤外線を使用して加熱されるならば、これらの欠点が軽減され得ることを見出している。マスクを介して赤外線を適用することはラテックスの局所的加熱を可能にし、これにより、特別仕立てのパターンを生じさせることが可能になる。用語「赤外線」は、本明細書中で使用される場合、0.7μm〜30μmの範囲における波長の放射線を意味する。
【0016】
ポリマーおよび水は赤外線を特定の特徴的波長において強く吸収する。水が赤外線を吸収するとき、水は温度が上昇する。したがって、水の蒸発速度が赤外線のもとでは増大する。このことはまた、ラテックスが赤外線にさらされるならば、ポリマー粒子が赤外線を吸収し、ポリマー粒子は温度が上昇することを意味する。その後、ポリマー粒子は軟化し、焼結および合体してフィルムを生じさせることができる。
【0017】
赤外線を使用することの主な利点は、硬質ラテックス粒子のフィルム形成を可能にし、また、湿潤ラテックスの非遮蔽領域における蒸発速度を増大させることである。また、赤外線は照射区域におけるより速い蒸発速度をもたらし、したがって、溶媒のより大きい流束をもたらす。結果として、トポグラフィー的パターンが赤外線の場合にはより強くなり、一方、蒸発が自然の状態で生じるときにはより弱くなる。これらの利点に加えて、赤外線ランプでは典型的には、対流式オーブンよりも少ないエネルギーが使用され、したがって、本発明のプロセスは、エネルギー効率が、対流式オーブンを使用する場合よりも大きい。そのうえ、本発明のプロセスは、対流式オーブンを使用する場合よりも迅速である。加えて、フィルムが乾燥期間中に亀裂を生じさせる傾向が小さくなっている。
【0018】
赤外線の使用は硬質ラテックスについて特に有用であるが、赤外線の使用は水の蒸発速度を増大させるので、軟質ラテックスについても有用である。
【0019】
したがって、ラテックスは、Tgを20℃から100℃までの範囲に有する硬質ラテックスであり得る。代替的に、ラテックスは、Tgを−50℃から20℃までの範囲に有する軟質ラテックスであり得る。
【0020】
ラテックスの温度がTgを超えて上がるにつれて、ポリマーの粘度が低下し、変形段階および拡散段階がより速くなる。温度が上がるにつれて、水がより速く蒸発する。本出願人は、水がTgよりも低い温度で蒸発するならば、フィルムの亀裂形成が生じやすく、しかし、Tgを超える温度では、フィルムは亀裂形成をそれほど生じないことを見出している。本出願人は、これは、硬い粒子がそれらの球状形状から変形しないとき、毛細管力によって生じる応力のためであると考えている。
【0021】
したがって、露光条件は好ましくは、ポリマーの温度がそのガラス転移温度よりも高くなるようにされ、より好ましくは、ポリマーの温度がそのガラス転移温度よりも少なくとも15℃高くなるようにされる。
【0022】
ポリマーの温度は、ラテックスが赤外線にさらされる条件(例えば、赤外線の波長、赤外線の強度、赤外線露光の長さ、および、赤外線源と、ラテックス被覆物との間の距離など)によって影響される。したがって、これらのパラメーターは、所望の結果を得るために必要に応じて調節することができる。
【0023】
波長は好ましくは、ポリマーおよび/または水が最大吸収係数を有する波長でなければならない。代替的に、赤外線の波長は好ましくは、0.7μm〜30μmの範囲でなければならず、より好ましくは0.7μm〜1.8μmの範囲でなければならない。
【0024】
露光時間が、特定のラテックス厚さおよびラテックス組成について好適である長さに調節されなければならない。好ましくは、遮蔽されたラテックスは、ラテックスが完全に乾燥するまで赤外線にさらされなければならない。
【0025】
赤外線源からのラテックスの距離が、赤外線ランプのタイプおよびポリマーの組成に依存して調節されなければならない。好ましくは、赤外線源からのラテックスの距離は1cm〜100cmの間の範囲であり、より好ましくは5cm〜30cmの間の範囲であり、最も好ましくは15cm〜25cmである。
【0026】
好ましくは、ラテックスは被覆物の形態である。好ましくは、乾燥ラテックスの厚さが、厚さが0.5μm〜1cmの間における範囲であり、より好ましくは、厚さが2μm〜1mmの間における範囲であり、最も好ましくは、厚さが10μm〜300μmの間における範囲である。
【0027】
好ましくは、ラテックスの固形分含有量が10重量パーセント〜80重量パーセントの範囲であり、好ましくは30重量パーセント〜60重量パーセントの範囲であり、より好ましくは45重量パーセント〜55重量パーセントの範囲である。
【0028】
好ましくは、ラテックスとマスクとの間の距離が、0.01mm〜10cmの範囲でなければならず、好ましくは0.1mm〜10mmの範囲でなければならず、より好ましくは0.2mm〜3mmの範囲でなければならない。ラテックスとマスクとの間の距離が大きすぎる場合は、蒸発速度が小さくなるという変化が生じ、その結果、パターン形成が阻害されるか、または、妨げられる。
【0029】
マスクにおける孔(perforations)の形状および互いに関するそれらの配置を、ラテックスの表面に生じさせられるパターンに従って変化させることができる。
【0030】
マスクにおける孔は、好適なサイズであれば、どのようなサイズのものであってもよい。例えば、孔は直径を0.01mm〜10cmの範囲に有することができ、好ましくは0.1mm〜1cmの範囲に有することができ、より好ましくは0.5mm〜5mmの範囲に有することができる。
【0031】
マスクにおける孔は、好適な形状であれば、どのような形状のものであってもよい。例えば、孔は、正方形、円形、三角形、長方形、多角形またはロゴ(logo)形状であり得る。
【0032】
マスクは、好適なサイズであれば、どのようなサイズのものであってもよい。例えば、マスクは、1mmから10mにまで及ぶ大きさを有することができ、好ましくは1cm〜1mの範囲における大きさを有することができ、より好ましくは1cm〜20cmの範囲における大きさを有することができる。
【0033】
好ましくは、マスクはラテックスを完全に覆う。
【0034】
マスクは、赤外線の透過を阻止する好適な材料であれば、どのような材料からでも作製することができる。例えば、マスクは、スチール、アルミニウム、カード、木材、プラスチックまたはガラスから作製することができる。
【0035】
マスクは、孔の周りの区域がIRに対して半透明であるように構成することができる。この区域は孔に対して形状が同じまたは異なっていてもよく、また、半透明な区域の直径は所定のサイズ範囲において与えることができる。
【0036】
小さい孔を有する、IRに対して半透明である材料から作製される第1のマスクを、この半透明なマスクよりも大きい孔を有する、IRに対して不透明な第2のマスクと重ねることができ、この場合、生じた配置は、不透明なマスクにおけるより大きい孔が、半透明なマスクにおけるより小さい孔を取り囲み、その結果、半透明な区域が、より小さい孔の周りにもたらされるようにされる。
【0037】
2つ以上のマスクを、所望のパターンを基体上に生じさせるために使用することができる。これらの複数のマスクは同じまたは異なる孔サイズおよび孔形状を有することができる。
【0038】
基体は、ポリマー溶液またはポリマー分散物の被覆物を加え、前記で記載されるマスクのいずれかを介してIRにより乾燥する前に、撥水性物質により特定のパターンで予備被覆することができる。
【0039】
ラテックスは、好適な基体であれば、どのような基体の上にも注ぐことができる。例えば、ラテックスは、ガラス、スチール、アルミニウム、プラスチック、カードまたは木材から作製される基体の上に注ぐことができる。
【0040】
ラテックスが軟質ラテックスである場合、ラテックスは、独立型(自立型)フィルムを作製するために基体から取り除くことができる。
【0041】
ラテックスは、異なる平均粒子サイズをそれぞれが有する2つ以上のラテックスの混合物を含むことができる。
【0042】
ラテックスは下記の1つ以上を含むことができる:金属ナノ粒子、半導電性粒子、着色粒子、蛍光性粒子、さらなる赤外吸収体(例えば、PEDOT:PSSとして知られているポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)/ポリ(スチレンスルホナート)など)。
【0043】
上記で示される段落は「ラテックス」について言及しているが、上記段落は、ポリマー溶液および他のポリマー分散物に対して同等にあてはまる。
【0044】
次に、本発明が、例としてのみであるが、下記の図を参照して例示される。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】図1aは、実施例1に使用されるマスクの略図を示す(これは原寸に比例して描かれていない)。図1bは、本発明の方法に従ってIR放射線にさらされる遮蔽されたラテックスを概略的に示す。
【図2】図2aは、図1aにおけるマスクを使用して作製された実施例1のフィルムを示す。図2bは、マスクを使用することなく作製された実施例1のフィルムを示す。図2cは、上部から眺められる図2aのフィルムの表面パターンを示す。図2dは、コンピューター分析とともに光学顕微鏡観察の技術の使用により図2cにおける赤色線として描かれる軌跡から得られる被覆物のトポグラフィー的プロフィルを示す。
【図3】図3aは、IR放射線に20分間さらされた実施例2のフィルムを示す。図3bは、IR放射線に35分間さらされた実施例2のフィルムを示す。
【図4】実施例3において使用される用語の意味を説明する略図である。
【図5】図5aは、50wt.%のラテックスから作製される実施例4のフィルムを示す。図5bは、30wt.%のラテックスから作製される実施例4のフィルムを示す。
【図6】チューブに巻かれた実施例5のフィルムを示す。
【図7】図7aは、マスク1を使用して作製される実施例6のフィルムを示す。図7bは、マスク5から作製される実施例6のフィルムを示す。
【図8】図8aは、マスク1を使用してポリマー溶液から作製される実施例7のフィルムを示す。図8bは、表面プロフィル計測器を使用して得られる表面トポグラフィーを示す。
【図9】図9aは、マスク1を使用してポリマー溶液から作製される実施例8のフィルムを示す。図9bは、表面プロフィル計測器を使用して得られる表面トポグラフィーを示す。
【図10a】0.33mmの湿潤フィルム厚さを有する、マスク7を使用して作製される実施例9のフィルムの表面パターンを示す。
【図10b】マスク2、マスク6およびマスク7から作製される実施例9のフィルムについて、フィルム厚さに対する山対谷の高さを示す。
【図11】実施例10のフィルムについて、フィルムからの距離に対する山対谷の高さを示す。
【図12】マスク6、マスク7、マスク8、マスク9およびマスク10から作製される実施例11のフィルムについて、中心間距離に対する山対谷の高さを示す。
【図13】実施例12のフィルムの表面パターンを示す。
【図14】図14aは、実施例13で使用されるマスクを示す。図14bは、実施例13のフィルムの表面パターンを示す。図14cは、実施例13のフィルムのトポグラフィー的プロフィルを示す。
【図15】実施例15のフィルムの表面パターンを示す。
【図16】実施例16のフィルムの表面パターンを示す。
【発明を実施するための形態】
【0046】
実施例1
湿潤ラテックスを、水に分散される、アクリル酸ブチル、メタクリル酸メチルおよびメタクリル酸のコポリマーの粒子から作製した。このラテックスは乳化重合の標準的な方法によって作製された。この湿潤ラテックスはポリマー固形成分含有量がおよそ50重量%であり、Tgが38℃である。
【0047】
ラテックスフィルムが、1gの湿潤ラテックスを、ピペットを用いてガラス基体の上に注ぐことによって形成された。生じた湿潤フィルムは0.2mmの厚さであった。マスクは、湿潤フィルムの上方2mmに置かれた。マスクは、列に配置される多数の円形の孔を有する金属シートからなった。孔のサイズおよび配置の略図が図1aに示される。マスクは、d=3mm、L=2.25mmおよびx=4.5mmを有する。
【0048】
図1bに概略的に示されるように、遮蔽されたフィルムを、250WのIRランプから放射される700nmから1.8μmにまで及ぶ波長のIR放射線に25cmの距離で30分間さらした。
【0049】
その後、実施例を繰り返したが、マスクを使用しなかった。15分のより短い放射時間が使用された。乾燥が均一であり、かつ、フィルムの表面全体から生じたので、これが、要求されたすべてのことであった。
【0050】
図2aおよび図2bは、本実施例から得られる2つの乾燥フィルムを示す。図2dは、図2cに記される線に沿って走査される図2aのフィルムの表面パターンを示す。これらの図から、図2aに示されるフィルムの表面にはパターンが存在し、この場合、このパターンは、規則的なパターンで配置される数多くの離れた隆起部分の形態を取っていることを認めることができる。
【0051】
実施例2
実施例1を、ガラス基体の代わりに、スチール基体を使用して繰り返した。IR放射線に対する露光の長さの影響を示すために、異なる露光時間が使用された。図3aは、図1aにおけるマスクにより遮蔽されるとき、フィルムをIR放射線に20分間さらすことの結果を示す。図3bは、遮蔽されたフィルムをIR放射線に35分間さらすことの結果を示す。認められ得るように、ほんの20分間だけ露光された遮蔽されたフィルムは不透明であり、亀裂を有する。したがって、露光は、フィルムが完全に乾燥するまで行われることを確実にしなければならない。
【0052】
実施例3
実施例1を、いくつかの異なるマスクを使用して繰り返した。マスクのそれぞれが、列に配置された多数の円形の孔を有する金属シートからなった。マスクの詳細は下記の通りであった(使用された用語の意味を示す略図については図4を参照のこと)。
【0053】
【表1】
【0054】
孔直径を増大させることの影響を下記の表から認めることができる:
【0055】
【表2】
【0056】
このように、孔直径を増大させることにより、被覆物における隆起部分の直径が増大する。孔直径を増大させることはまた、被覆物の隆起部分の山対谷の距離を増大させる。
【0057】
孔の中心間距離を増大させることの影響を下記の表から認めることができる:
【0058】
【表3】
【0059】
このように、孔の間隔が大きいほど、被覆物における隆起部分の山間距離が長くなる。
【0060】
また、マスク5については、ほぼ50%多い露光時間が、乾燥被覆物を生じさせるために必要であった。
【0061】
実施例4
実施例1を、2つの異なる固形分含有量を使用して、すなわち、30wt.%のラテックスおよび50wt.%のラテックスを使用して繰り返した。
【0062】
50wt.%のラテックスから作製された被覆物については、フィルム面積のほぼ75%が平坦であり、25%が、およそ0.08mm〜0.2mmの高さを有する隆起部分により覆われた(図5aを参照のこと)。これに対し、30wt.%のラテックスから作製された被覆物については、被覆物の表面のほぼ90%が、0.08mm〜0.21mmの高さを有する隆起部分により覆われた(図5bを参照のこと)。
【0063】
したがって、固形成分含有量が低いほど、被覆物の隆起部分の面積が大きくなることを認めることができる。
【0064】
実施例5
湿潤ラテックスを、水に分散される、メタクリル酸メチル、アクリル酸ブチルおよびメタクリル酸から構成されるアクリルコポリマーの粒子から作製した。このラテックスは乳化重合の標準的な方法によって作製された。この湿潤ラテックスはポリマー固形成分含有量が50重量%であり、Tgが0℃である。
【0065】
ラテックスフィルムが、2.7gの湿潤ラテックスを、ピペットを用いてガラス基体の上に注ぐことによって形成された。ガラス基体の区域が5cm×7.5cmであった。生じた湿潤フィルムは200μmの厚さであった。その後、マスクが湿潤フィルムの上方に置かれた。使用されたマスクは実施例3のマスク1であった。
【0066】
遮蔽されたフィルムを、250WのIRランプからの700nmから1.8μmにまで及ぶ波長のIR放射線に25cmの距離で30分間さらした。
【0067】
生じた乾燥フィルムを基体から剥がして、独立型(自立型)の柔軟なフィルムを得た。このフィルムはチューブに巻くことができる(図6を参照のこと)。
【0068】
実施例6
実施例5を、異なるラテックスをいくつかの異なるマスクとともに使用して繰り返した。湿潤ラテックスを、水に分散される、アクリル酸モノマーのブレンド物から構成されるアクリルコポリマーの粒子から作製した。このラテックスは乳化重合の標準的な方法によって作製された。この湿潤ラテックスはポリマー固形成分含有量が45重量%であり、Tgが−10℃である。
【0069】
生じた乾燥フィルムが図7a(マスク1)および図7b(マスク5)に示される。
【0070】
実施例7
1.3wt.%の固形成分含有量のポリマー濃度を有する、水におけるポリ(3−4エチレンジオキシチオフェン)−ポリ(スチレンスルホナート)またはPEDOT−PSSのポリマー溶液(Aldrich Chemical Companyから得られる)をガラスプレートの上に注いだ。ガラスプレートの大きさは7.5cm×2.5cmであった。
【0071】
1gのPEDOT−PSS溶液を、ピペットを用いて注いだ。生じた湿潤フィルムはおよそ200μmの厚さであった。その後、マスクが湿潤フィルムの上方に置かれた。使用されたマスクは実施例3からのマスク1であった。
【0072】
遮蔽されたフィルムを、250WのIRランプからの700nmから1.8μmにまで及ぶ波長のIR放射線に25cmの距離で45分間さらした。表面突出部を規則的なパターンで有する乾燥フィルムが生じた(図8a)。被覆物のより厚い区域が図8aにおける写真ではより暗く現れる。
【0073】
図8bは、プロフィロメトリーの使用により得られるポリマーフィルムのトポグラフィー的プロフィルを示す。プロフィルの横方向距離が27mmである。表面突出部の測定された山対谷の高さが10μmを超えている。
【0074】
実施例8
分子量が1モルあたり1,300,000gであるポリ(ビニルピロリドン)(またはPVP)のポリマー粉末をSigma−Aldrich Chemical Companyから得た。
【0075】
1gのこのポリマーを9gの脱イオン水に溶解して、10wt.%の溶液を作製した。ポリマーフィルムが、1gのPVP溶液を、ピペットを用いてガラス基体(7.5cm×2.5cm)の上に注ぐことによって形成された。生じた湿潤フィルムは200μmの厚さであった。その後、マスクが湿潤フィルムの上方に置かれた。使用されたマスクは実施例3からのマスク1であった。
【0076】
遮蔽されたフィルムを、250WのIRランプからの700nmから1.8μmにまで及ぶ波長のIR放射線に25cmの距離で45分間さらした。図9aは、暗いスポットとして現れる表面突出部のパターンを有する乾燥フィルムを示す。
【0077】
図9bは、プロフィロメトリーの使用により得られるポリマーフィルムのトポグラフィー的プロフィルを示す。プロフィルの横方向距離が20mmである。測定された山対谷の高さが60μmを超えている。
【0078】
実施例9
実施例1を、同じラテックスを使用して繰り返したが、図4に示されるような孔のアレイを有する3つの異なるアルミニウムマスクを使用した。マスクの大きさが下記の表に示される:
【0079】
【表4】
【0080】
乾燥ポリマーにおける生じた隆起部分の高さに対するフィルムの初期湿潤時厚さの影響を示すために、最初の注がれたラテックスの量を変化させた。マスク2を用いて作製されるサンプルについては、初期湿潤時厚さが0.2mm〜1.2mmの範囲にあるいくつかのサンプルをガラス基体(2.5cm×5cm)の上に注いだ。これらのサンプルについて注がれたラテックスの量は0.42g〜1.6gの範囲であった。マスク6およびマスク7については、湿潤時厚さの範囲が同じであった。しかしながら、ガラス基体のサイズが3cm×2.5cmであり、注がれたラテックスの量が0.2g〜0.95gの範囲であった。
【0081】
これらの場合のすべてにおいて、マスクが湿潤フィルムの上方0.7mmの距離で置かれた。マスクがIRランプの下方16.5cmの距離で置かれた。IR放射線のもとでの放射時間が、フィルムの初期湿潤時厚さに依存して、15分〜50分の範囲であった。(より長い放射時間が、より厚いフィルムには要求される。)
【0082】
フィルムのトポグラフィーが一例として図10aに示される。像が3−Dプロファイル計測器により得られた。赤色は、より高い領域を表し、緑色および青色は、より低い領域を表す。このフィルムは、マスク7、0.33mmの湿潤フィルム厚さ、および、0.5mmの、マスクと、湿潤フィルムとの間の距離を使用して作製された。山および谷を認めることができ、山対谷の高さが102μmである。
【0083】
図10bは、ポリマー表面の隆起部分の山対谷の高さを、本実施例で使用される3つのマスクについてフィルムの初期湿潤時厚さの関数として示す。この図において、マスク2については、0.8mmまでの湿潤フィルム厚さについて、隆起部分のより大きい山対谷の高さが、フィルムの初期湿潤時厚さがより大きいときに得られることを認めることができる。初期湿潤時厚さが0.8mmを超えて増大するとき、山対谷の高さは同じままである。マスク7については、類似した一般的傾向が認められ、しかし、高さの値が、湿潤フィルム厚さが0.4mmよりも大きくなるときには平準化する。マスク6については、最も大きい山対谷の高さが、初期湿潤時厚さが0.33mmであるときに得られる。表面模様の山対谷の高さは、マスクの大きさおよび初期湿潤フィルム厚さを選ぶことにより調節することができると結論される。
【0084】
実施例10
実施例1を、同じラテックスを使用して繰り返したが、実施例9のマスク6を使用した。実験を、ポリマーフィルムの隆起部分の山対谷の高さに対する、湿潤フィルムからのマスクの距離の影響を示すために行った。マスクを0.5mm〜1.7mmの範囲における距離で湿潤フィルムの上方に置いた。
【0085】
ラテックスフィルムが、0.25gの湿潤ラテックスをガラス基体(3cm×2.5cm)の上に注ぐことによって形成された。生じた湿潤フィルムは0.33mmの厚さであった。
【0086】
マスクがIRランプの下方16.5cmに置かれた。IR放射線のもとでの放射時間がおよそ20分であった。
【0087】
図11は、フィルムからのマスクの距離に対する隆起部分の山対谷の高さを示す。この図から、フィルムからのマスクの距離が大きくなるとき、隆起部分の山対谷の高さが低くなることを認めることができる。
【0088】
実施例11
実施例1を、同じラテックスを使用して繰り返した。隆起部分の山対谷の高さに対するマスクの中心間の距離の影響を明らかにするために、一連のマスクを使用した。マスクの幾何学的大きさが下記の表に示される。
【0089】
【表5】
【0090】
これらのマスクのすべてが湿潤フィルムの上方0.5mmに置かれた。これらの場合のすべてにおいて、ラテックスフィルムが、0.25gの湿潤ラテックスをガラス基体(3cm×2.5cm)の上に注ぐことによって形成された。生じた湿潤フィルムは0.33mmの厚さであった。
【0091】
サンプルおよびマスクがIRランプの下方16.5cmの距離で置かれた。IRランプのもとでの放射時間がおよそ20分であった。
【0092】
図12は、隆起部分の山対谷の高さをマスクのそれぞれについて中心間距離の関数として示す。この図から、中心間距離が大きくなるとき、隆起部分の山対谷の高さが大きくなることを認めることができる。
【0093】
実施例12
実施例1を、同じラテックスを使用して繰り返した。2つのマスクを、2つのサイズの表面トポグラフィーを有するパターン化された乾燥ポリマー表面を得るために一緒に使用した。マスク2(これは実施例3で使用された)がマスク10(これは実施例11で使用された)の上方に直接に置かれ、これら2つのマスクは接触していた。底部マスクが湿潤フィルムの上方0.5mmに置かれた。
【0094】
ラテックスフィルムが、0.2gの湿潤ラテックスをガラス基体(3cm×2.5cm)の上に注ぐことによって形成された。生じた湿潤フィルムは0.26mmの厚さであった。
【0095】
サンプルおよびマスクがIRランプの下方16.5cmに置かれた。IR放射線のもとでの放射時間がおよそ20分であった。
【0096】
図13は、重なり合った2つのパターンを有する生じたフィルムを示す。より小さい突起物のアレイが、より大きい特徴物の上部に存在する。したがって、階層的長さスケールのテクスチャを有する表面を、好適なマスクパターンを用いて得ることができることが示される。
【0097】
実施例13
実施例1を、同じラテックスを使用して繰り返した。唯一の違いは、長い長方形の孔を有するマスクが、線状パターンを得るために使用されたことである。図14aは、使用されるアルミニウムマスクの概略を示す。白いブロックはマスクにおける孔を表す。
【0098】
ラテックスフィルムが、0.3gの湿潤ラテックスをガラス基体(2.5cm×1.5cm)の上に注ぐことによって形成された。生じた湿潤フィルムは0.53mmの厚さであった。マスクが湿潤フィルムの上方0.5mmに置かれた。マスクがIRランプの下方16.5cmに置かれた。IR放射線のもとでの放射時間がおよそ20分であった。
【0099】
生じた乾燥フィルムは線状パターンをその表面に有した。ポリマーフィルムの写真が図14bに示される。線状の尾根が表面にもたらされた。それらの長さおよび幅がマスクの長さおよび幅と類似している。
【0100】
図14cは、プロフィロメトリーにより得られる生じたパターン化フィルムのトポグラフィー的プロフィルを示す。この測定により、最大の山対谷の高さがおよそ300μmである表面波形が存在することが確認される。
【0101】
実施例14
実施例1を、5つの異なるラテックスを使用して繰り返した。ラテックスは乳化重合の標準的な方法によって調製された。ラテックスのガラス転移温度(Tg)、粒子サイズおよび固形成分含有量は、下記の表に示される通りであった。表におけるラテックスCは、実施例1で使用される同じラテックスである。ラテックスAおよびラテックスBは、ラテックスCと同じ組成を有する。ラテックスDは、より大きい割合のアクリル酸ブチルおよびより低い割合のメタクリル酸メチルを含有することを除いて、Aと類似する組成を有しており、その結果、ラテックスDは、A、BおよびCよりも低いガラス転移温度を有する。ラテックスEは、コポリマーが1;1の重量比でのアクリル酸ブチルおよびメタクリル酸メチルから作製されたラテックスである。
【0102】
一連の40個のサンプルを、粒子サイズ、IR放射線の使用の有無、固形成分含有量、および、PEDOT:PSSとして知られているポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)/ポリ(スチレンスルホナート)の添加(これはSigma−Aldrich Companyから得られた)の影響を調べるために調製した。PEDOT:PSSは赤外線を強く吸収する。したがって、ラテックスがPEDOT:PSSを含有するとき、ラテックスの温度が赤外線下では一層上昇する。より高いラテックス温度は水のより速い蒸発速度をもたらす。PEDOT:PSSのより大きい濃度は水のより速い蒸発速度をもたらす。
【0103】
実施例11のマスク6またはマスク7のいずれかが実施例14では使用された。マスクが湿潤フィルムの上方0.7mmに置かれた。
【0104】
ラテックスフィルムが、0.4gの湿潤ラテックスをガラス基体(3cm×2.5cm)の上に注ぐことによって形成された。生じた湿潤フィルムは0.53mmの厚さであった。マスクがIRランプの下方16.5cmに置かれた。IR放射線のもとでの放射時間がおよそ20分であった。
【0105】
隆起部分の測定された山対谷の高さが下記の表に示される。本実施例は、パラメーターのそれぞれが表面トポグラフィーの山対谷の高さに対する影響を有することを示す。本実施例は、IRランプが、水の蒸発速度を増大させるために使用されないとき、平坦なポリマー表面が生じることを示す(山対谷の高さが0μmである)。したがって、トポグラフィー的にパターン化された表面を得るためには、赤外線加熱を使用することが必須であると結論づけられる。
【0106】
最大の山対谷の高さが、4wt.%のPEDOT:PSSがラテックスに添加され、かつ、ラテックスが、R=3mmおよびD=2mmを有するマスクのもとでIR放射線により照射されたときに得られた。本実施例は、広範囲の表面トポグラフィーが、プロセスパラメーターを変化させることによって得ることができることを示す。
【0107】
【表6】
【0108】
実施例15
パターン化されたフィルムを、異なる平均粒子サイズをそれぞれが有する2つのラテックスのブレンド物を使用して実施例1における手順に従って調製した。ラテックスCは、実施例14で使用されたものであり(420nmの粒子サイズを有する)、Polysciences,Inc.から、Fluoresbrite(登録商標)YG Microspheresの商品名により得られた、50nmの粒子サイズを有するポリスチレンラテックスとブレンドされた。ポリマーは蛍光色素により標識され、その結果、粒子がラテックスCの粒子から識別され得るようにされた。およそ100μLの50nmラテックスを5mLのラテックスCとブレンドした。
【0109】
ラテックスフィルムが、0.4gのブレンドされた湿潤ラテックスをガラス基体(3cm×2.5cm)の上に注ぐことによって形成された。生じた湿潤フィルムは0.53mmの厚さであった。マスク7が、湿潤フィルムの上方およそ0.7mmで、かつ、IRランプの下方およそ16.5cmに置かれた。IR放射線のもとでの放射時間がおよそ20分であった。
【0110】
図15は、顕微鏡を紫外線(UV)照明下で使用して得られる生じたフィルムの写真を示す。およそ11mm×7mmの区域が写真において示される。生じたフィルムは、蛍光性粒子の不均一な分布をポリマー被覆物の平面において横方向に有することを認めることができる。蛍光性ポリスチレンが写真ではより明るく現れる。濃度は、被覆物の隆起部分において大きくなっている。
【0111】
実施例16
この同じ手順を、ラテックスCの代わりに、(28nmの粒子サイズを有する)ラテックスEを使用して再び繰り返した。生じたフィルムの(UV照明下において顕微鏡で得られる)写真が図16に示される。およそ8mm×10mmの区域が示される。蛍光性ポリスチレン粒子がフィルムにおいて規則的間隔の領域に集中している。これらの領域が、マスクにおける孔の下であった位置に存在する。被覆物の表面がこれらの同じ位置で隆起する。
【0112】
本実施例は、異なる粒子サイズのラテックスが、フィルムを作製するためにブレンドおよび使用できることを示す。粒子が乾燥ラテックスフィルムにおいて不均一に分布する。本実施例は、被覆物の光学特性および誘電特性が周期的に調節され得る方法を実証する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
パターン化された乾燥ポリマーをポリマー溶液またはポリマー分散物から作製する方法であって、
ポリマー溶液/分散物の露光区域と、ポリマー溶液/分散物の非露光区域とができるように、前記ポリマー溶液/分散物の上方にマスクを置く工程と、
前記マスクをかぶったポリマー溶液/分散物に赤外線を照射する工程と
を含む方法。
【請求項2】
前記パターン化された乾燥ポリマーがラテックスの形態でのポリマー分散物から作製される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ラテックスが、Tgを20℃〜100℃の範囲に有する硬質ラテックスである、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記ラテックスが、Tgを−50℃〜20℃の範囲に有する軟質ラテックスである、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記露光条件が、前記ポリマーの温度がそのガラス転移温度よりも高くなるようにされることである、先行する請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記露光条件が、前記ポリマーの温度がそのガラス転移温度よりも少なくとも15℃高くなるようにされることである、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記赤外線の波長が0.7μm〜30μmの範囲であり、より好ましくは0.7μm〜1.8μmの範囲である、先行する請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
前記赤外線の波長が、前記ポリマーが最大吸収係数を有する波長と実質的に同じであるか、または、水が前記赤外線を強く吸収する波長と実質的に同じである、先行する請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
前記マスクをかぶったラテックスが、前記ラテックスが完全に乾燥するまで前記赤外線にさらされる、請求項2〜8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
前記赤外線源からの前記ラテックスの距離が1cm〜100cmの間の範囲であり、より好ましくは5cm〜30cmの間の範囲であり、最も好ましくは15cm〜20cmである、請求項2〜9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
前記ラテックスが被覆物の形態であり、前記乾燥した被覆物の厚さが、厚さが0.5μm〜1cmの間における範囲であり、より好ましくは、厚さが2μm〜1mmの間における範囲であり、最も好ましくは、厚さが10μm〜300μmの間における範囲である、請求項2〜10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
前記ラテックスの固形成分含有量が10重量パーセント〜80重量パーセントの範囲であり、好ましくは30重量パーセント〜60重量パーセントの範囲であり、より好ましくは45重量パーセント〜55重量パーセントの範囲である、請求項2〜11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
前記ラテックスと前記マスクとの間の距離が0.01mm〜10cmの範囲であり、好ましくは0.1mm〜10mmの範囲であり、より好ましくは0.2mm〜3mmの範囲である、先行する請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
前記マスクが、直径が0.01mm〜10cmの範囲、好ましくは0.1mm〜1cmの範囲、より好ましくは0.5mm〜5mmの範囲である孔を有する、先行する請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
前記マスクが、正方形、円形、長円形、三角形、長方形、菱形、多角形またはロゴ形状である孔を有する、先行する請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項16】
前記マスクが、1mmから10mにまで及ぶ大きさ、好ましくは1cm〜1mの範囲における大きさ、より好ましくは1cm〜20cmの範囲における大きさを有する、先行する請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項17】
前記マスクが前記ラテックスを完全に覆う、請求項2〜16のいずれかに記載の方法。
【請求項18】
前記マスクが、赤外線の透過を阻止する物質から作製される、請求項2〜17のいずれかに記載の方法。
【請求項19】
前記ラテックスが、ガラス、スチール、アルミニウム、金属合金、プラスチック、カードまたは木材から作製される基体の上に注がれる、請求項2〜18のいずれかに記載の方法。
【請求項20】
前記ラテックスが、独立型フィルムを作製するために前記基体から取り除かれる、請求項4に従属する場合の請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記ラテックスが、異なる平均粒子サイズをそれぞれが有する2つ以上のラテックスの混合物を含む、請求項2〜20のいずれかに記載の方法。
【請求項22】
前記ラテックスが、金属ナノ粒子、半導電性粒子、着色粒子、蛍光性粒子、さらなる赤外吸収体のうちの1つ以上を含む、請求項2〜21のいずれかに記載の方法。
【請求項23】
パターン化されたポリマーを、実質的には本明細書中に記載されるような、または、実施例に示されるようなポリマー溶液またはポリマー分散物から作製する方法。
【請求項24】
請求項1〜23のいずれかに記載の方法によって調製される、パターン化された乾燥ポリマー。
【請求項25】
実施例のいずれか1つに記載の、パターン化された乾燥ポリマー。
【請求項1】
パターン化された乾燥ポリマーをポリマー溶液またはポリマー分散物から作製する方法であって、
ポリマー溶液/分散物の露光区域と、ポリマー溶液/分散物の非露光区域とができるように、前記ポリマー溶液/分散物の上方にマスクを置く工程と、
前記マスクをかぶったポリマー溶液/分散物に赤外線を照射する工程と
を含む方法。
【請求項2】
前記パターン化された乾燥ポリマーがラテックスの形態でのポリマー分散物から作製される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ラテックスが、Tgを20℃〜100℃の範囲に有する硬質ラテックスである、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記ラテックスが、Tgを−50℃〜20℃の範囲に有する軟質ラテックスである、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記露光条件が、前記ポリマーの温度がそのガラス転移温度よりも高くなるようにされることである、先行する請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記露光条件が、前記ポリマーの温度がそのガラス転移温度よりも少なくとも15℃高くなるようにされることである、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記赤外線の波長が0.7μm〜30μmの範囲であり、より好ましくは0.7μm〜1.8μmの範囲である、先行する請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
前記赤外線の波長が、前記ポリマーが最大吸収係数を有する波長と実質的に同じであるか、または、水が前記赤外線を強く吸収する波長と実質的に同じである、先行する請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
前記マスクをかぶったラテックスが、前記ラテックスが完全に乾燥するまで前記赤外線にさらされる、請求項2〜8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
前記赤外線源からの前記ラテックスの距離が1cm〜100cmの間の範囲であり、より好ましくは5cm〜30cmの間の範囲であり、最も好ましくは15cm〜20cmである、請求項2〜9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
前記ラテックスが被覆物の形態であり、前記乾燥した被覆物の厚さが、厚さが0.5μm〜1cmの間における範囲であり、より好ましくは、厚さが2μm〜1mmの間における範囲であり、最も好ましくは、厚さが10μm〜300μmの間における範囲である、請求項2〜10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
前記ラテックスの固形成分含有量が10重量パーセント〜80重量パーセントの範囲であり、好ましくは30重量パーセント〜60重量パーセントの範囲であり、より好ましくは45重量パーセント〜55重量パーセントの範囲である、請求項2〜11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
前記ラテックスと前記マスクとの間の距離が0.01mm〜10cmの範囲であり、好ましくは0.1mm〜10mmの範囲であり、より好ましくは0.2mm〜3mmの範囲である、先行する請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
前記マスクが、直径が0.01mm〜10cmの範囲、好ましくは0.1mm〜1cmの範囲、より好ましくは0.5mm〜5mmの範囲である孔を有する、先行する請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
前記マスクが、正方形、円形、長円形、三角形、長方形、菱形、多角形またはロゴ形状である孔を有する、先行する請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項16】
前記マスクが、1mmから10mにまで及ぶ大きさ、好ましくは1cm〜1mの範囲における大きさ、より好ましくは1cm〜20cmの範囲における大きさを有する、先行する請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項17】
前記マスクが前記ラテックスを完全に覆う、請求項2〜16のいずれかに記載の方法。
【請求項18】
前記マスクが、赤外線の透過を阻止する物質から作製される、請求項2〜17のいずれかに記載の方法。
【請求項19】
前記ラテックスが、ガラス、スチール、アルミニウム、金属合金、プラスチック、カードまたは木材から作製される基体の上に注がれる、請求項2〜18のいずれかに記載の方法。
【請求項20】
前記ラテックスが、独立型フィルムを作製するために前記基体から取り除かれる、請求項4に従属する場合の請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記ラテックスが、異なる平均粒子サイズをそれぞれが有する2つ以上のラテックスの混合物を含む、請求項2〜20のいずれかに記載の方法。
【請求項22】
前記ラテックスが、金属ナノ粒子、半導電性粒子、着色粒子、蛍光性粒子、さらなる赤外吸収体のうちの1つ以上を含む、請求項2〜21のいずれかに記載の方法。
【請求項23】
パターン化されたポリマーを、実質的には本明細書中に記載されるような、または、実施例に示されるようなポリマー溶液またはポリマー分散物から作製する方法。
【請求項24】
請求項1〜23のいずれかに記載の方法によって調製される、パターン化された乾燥ポリマー。
【請求項25】
実施例のいずれか1つに記載の、パターン化された乾燥ポリマー。
【図10b】
【図11】
【図12】
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10a】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図11】
【図12】
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10a】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公表番号】特表2013−509479(P2013−509479A)
【公表日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−535914(P2012−535914)
【出願日】平成22年10月18日(2010.10.18)
【国際出願番号】PCT/GB2010/001923
【国際公開番号】WO2011/051648
【国際公開日】平成23年5月5日(2011.5.5)
【出願人】(510044040)ザ ユニバーシティー オブ サリー (3)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年10月18日(2010.10.18)
【国際出願番号】PCT/GB2010/001923
【国際公開番号】WO2011/051648
【国際公開日】平成23年5月5日(2011.5.5)
【出願人】(510044040)ザ ユニバーシティー オブ サリー (3)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]