パターン寸法計測方法
【課題】
電子線シミュレーションを利用した,SEM画像によるパターン計測においては,シミュレーションの精度が非常に重要となる。シミュレーション画像と実画像のマッチングを行うためには,計測対象形状や材料を適切にモデル化し,シミュレーション画像に反映する必要がある。
【解決手段】
本発明では,SEM画像やAFMなど他の計測装置により得られた情報に基づいて,シミュレーションと実画像のマッチング計測の精度に与える影響が大きな形状や寸法を適切に設定したシミュレーション画像を用いることにより,高精度なパターン計測を実現するようにした。
電子線シミュレーションを利用した,SEM画像によるパターン計測においては,シミュレーションの精度が非常に重要となる。シミュレーション画像と実画像のマッチングを行うためには,計測対象形状や材料を適切にモデル化し,シミュレーション画像に反映する必要がある。
【解決手段】
本発明では,SEM画像やAFMなど他の計測装置により得られた情報に基づいて,シミュレーションと実画像のマッチング計測の精度に与える影響が大きな形状や寸法を適切に設定したシミュレーション画像を用いることにより,高精度なパターン計測を実現するようにした。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は半導体の製造工程においてウェハ上に形成された回路パターンの加工形状の良否を,回路パターンの電子顕微鏡画像を用いて評価する方法及びそのシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体ウェハの製造工程において,ウェハ上に多層に形成されるパターンの微細化が急速に進んでおり,それらのパターンが設計どおりにウェハ上に形成されているか否かを監視するプロセスモニタの重要性はますます増加している。中でもトランジスタゲート配線をはじめとする配線パターンは,その配線幅とデバイス動作特性に強い関連があり,その配線製造プロセスのモニタは特に重要である。
【0003】
数十ナノメートルオーダの微細配線の線幅を測定する測長ツールとしては,それらの配線を10万から20万倍の拡大倍率で撮像可能な線幅測定用の走査型電子顕微鏡(測長SEM(Scanning Electron Microscope)またはCD(Critical dimension)SEM)が従来から用いられている。このような走査型電子顕微鏡を用いた測長処理の一例が特開平11−316115号公報(特許文献1)に記載されている。特許文献1の開示例においては,測定対象配線を撮像した画像内の局所領域から,配線の信号プロファイルを配線の長手方向に加算平均した投影プロファイルを作成し,このプロファイルにおいて検出した左右の配線エッジ間の距離として配線寸法を算出している。
【0004】
しかし,非特許文献1のFig1に開示されているように,SEMの信号波形においては,その計測対象の形状が変化すると,それに応じて信号波形も変化するため計測誤差を生じるという問題がある。半導体パターンの微細化に伴い,これら計測誤差がプロセスモニタに与える影響は大きくなりつつある。このような計測誤差を低減する手法が非特許文献1および非特許文献2に開示されている。この手法では,パターン形状とSEM信号波形の関係を予めシミュレーションにより計算しておき,その結果を利用して対象形状に依存しない高精度計測を実現している。
【0005】
また、パターン材料とパターンの下地材料とで二次電子放出効率が異なるようなサンプルを計測する場合に,事前に材料のパラメタを調整することで,ライブラリマッチングによる計測精度を向上させることが,非特許文献3に開示されている。
【0006】
【特許文献1】特開平11−316115号公報
【特許文献2】特開P2007−218711号公報
【非特許文献1】J. S. Villarrubia, A. E. Vladar, J. R. Lowney, and M. T. Postek, “Scanning electron microscope analog of scatterometry,”Proc. SPIE 4689, pp. 304-312 (2002)
【非特許文献2】J. S. Villarrubia, A. E. Vladar, M. T. Postek, “A simulation study of repeatability and bias in the CD-SEM,” Proc. SPIE 5038, pp. 138-149, 2003.
【非特許文献3】M. Tanaka, J. S. Villarrubia and A. E. Vladar, “Influence of Focus Variation on Linewidth Measurements,” Proc. SPIE 5752, pp.144-155(2005)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
背景技術に示されているように,測長SEMにより半導体パターンの寸法計測を行う際には,対象パターンの形状に依存した計測誤差を発生するという問題がある。これに対して,非特許文献1および非特許文献2に開示されている手法では,パターン形状とSEM信号波形の関係を予めSEMシミュレーションにより計算しておき,その結果を利用して対象形状に依存しない高精度計測を実現している。パターン形状をパラメタにより数値化し,様々な形状のSEMシミュレーション結果をライブラリとして保存し,実波形と比較することで,正確に形状と寸法を推定することが可能である。本明細書では,以後,本手法をモデルベース計測あるいはライブラリマッチング手法と呼ぶ。このようなモデルベース計測手法においては,いかに精度の良いシミュレーションを行うかが安定で高精度な計測を実現するために重要となる。
【0008】
実画像とのマッチングに適したシミュレーション結果を得るためには,適切なパターン形状モデルの設定とシミュレーションパラメタの設定が重要である。しかしながら,最適なパターン形状モデルは,計測対象によって異なるが,これらを容易かつ適切に設定することは困難である。さらに,計測対象の材料特性などの物理パラメタを正確に求めるのは困難であるといった課題がある。
【0009】
また,ライブラリとのマッチング処理においては,適切な形状モデルを用いていても,多くのパラメタの適切な組み合せを求めるのには多くの時間が必要になるという問題がある。多くの時間を要するパラメタ空間の全探索の代わりに,各種の非線形最適化手法を用いることができるが,この場合には,局所解におちいってしまい,正しい計測結果が得られなくなる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明では,これらの課題に対して,計測対象であるサンプルの材料や形状のモデルおよびパラメタを,予め別の手段で推定した結果に基づいて推定することにより,非特許文献1および非特許文献2などに示されているようなシミュレーションを用いた計測手法の安定化,高速化,高精度化をはかる。
【0011】
本発明では,寸法計測結果に与える影響が大きい隣接パターンとの距離を,実際のSEM画像を用いて従来法での計測結果に基づいて推定し,推定された隣接パターンとの距離の条件下でシミュレーションされた波形のみを用いてライブラリマッチングを行なうことで,高精度な計測を実現する。
【0012】
また,パターン線幅についても,実際のSEM画像を用いて従来法での計測結果に基づいた推定を行い,推定された線幅の条件下でシミュレーションされた波形のみを用いてライブラリマッチングを行なうことで,高精度な計測を実現する。
さらに,予めシミュレーションにより求めておいたパターン形状とSEM画像特徴量の関係に基づいて,計測時には,対象パターンのSEM画像から得られる画像特徴量を用いて,パターン形状を推定し,その推定結果をライブラリマッチングにおける初期値として用いることで,マッチング処理を高速化・安定化して,高精度かつ高速な計測を実現する。
【0013】
さらに別の方法として,予めAFMなどの別の計測装置で得られた情報に基づいて,ライブラリマッチングにおけるパターン形状パラメタの初期値を適切に設定することで,マッチング処理を高速化・安定化して,高精度かつ高速な計測を実現する。
【0014】
また,形状モデルの最適化の課題に対しては,AFMや断面SEMなどにより得られる断面形状情報に基づいて,オペレータが容易に最適なモデルの選択とパラメタ設定が可能なグラフィカルユーザインターフェースを提供することにより,その結果,安定で高精度な計測を実現する。
【0015】
複数種類の材料から構成されるパターンを計測する場合には,事前にSEM画像を取得し,シミュレーションによる各材料の信号量が,上記実SEM画像のコントラストと一致するように,ライブラリ構築時の材料パラメタを設定することで,シミュレーションの精度を向上し,安定で高精度な計測を実現する。
【発明の効果】
【0016】
本発明により,モデルベース計測手法に用いるシミュレーションの精度が向上でき,その結果モデルベース計測手法そのものの精度も向上する。また,材料パラメタや一部の形状パラメタを事前に設定することにより,推定パラメタの数を減らすことができるため,安定な推定が可能となり,また計測に要する計算時間を短縮することができる。さらに,推定が必要なパラメタについても,適切な初期値を用いることにより,安定で高速な推定が可能となり,ひいては計測の信頼性および速度を向上することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明は,各種の荷電粒子線装置(SEM,FIB等)に適用可能であるが,以下の実施例では代表としてSEMを用いる場合を例にとって説明する。
【実施例1】
【0018】
第1の実施例では,計測対象パターン周辺のスペース,すなわち隣接パターンとの距離の違いによって生じるSEM計測の誤差を低減する方法について図1から図5を用いて説明する。本発明では予め従来手法により計測されたスペースの暫定計測結果に基づいて,ライブラリ波形マッチングにおいて用いるシミュレーション波形を,実際のパターンに合ったものに限定することで,マッチングの精度,ひいてはパターン計測精度を向上する。
【0019】
図2は,従来手法の計測課題であるスペースに依存して発生する計測誤差を説明する図である。図2(a)のグラフに示すように,パターン201とパターン202とのスペース幅Sによってエッジ部のSEM信号波形Wは右側に拡大して表示したように、大きく変化する。この現象は,スペース部から発生する2次電子が側壁に衝突するため,検出信号量が減少することによるもので,パターンが高くスペースが狭いほど顕著である。図2(b)はスペース幅Sを変化させたときに,従来法であるしきい値法(しきい値50%)による計測値をシミュレーションにより計算したものである。
【0020】
しきい値法とは,下地部分の信号量とエッジ部ピーク部分の信号量の間の任意の明るさを,下地部0,ピーク部100%としてしきい値で指定し,この指定された閾値に相当する信号量をとる位置をパターンエッジ位置とする方法である。図2(b)では,入力パターンの幅寸法W及び高さ寸法Hとは全て一定だが,計算結果はパターン201とパターン202との間のスペース幅Sによって変化している。誤差の範囲は計測対象パターンの寸法WとHに依存するが,数ナノメートルから十数ナノメートルにおよぶ恐れがある。
【0021】
一方,実際の計測対象パターンにおいては,図2(c)の矢印示すように,そのレイアウトによって,隣接パターンとの距離は様々である。図2(c)に示した例においては、パターン210,211,212のそれぞれの間の距離、S1〜S4に相当する。このことから,計測の高精度化にはスペースの影響を考慮することが重要であることがわかる。
【0022】
この課題に対する解決手段として,図1に,本発明に係るパターン計測方法の第1の実施例のSEMによる計測手順を示す。
【0023】
計測開始前に,パターンの形状,寸法,隣接パターンとの距離を様々な値に設定したSEMシミュレーションを行い,SEMシミュレーション波形をライブラリに保存しておく。シミュレーション条件の設定範囲は,計測対象パターンの製造プロセスに応じて適切な値に設定しておく。
【0024】
計測時には,まず図1(a)に示したSEM001にて,予め設定された撮像条件(倍率,照射ビームの加速電圧など)で試料のSEM像を取得する。具体的には、SEM001の電子銃101から発射された電子線102を集束レンズ103で収束させ、偏向器104でX方向及びY方向(図1において図面に垂直な平面内)に走査し、対物レンズ105で電子線の焦点を計測対象パターンが形成された試料106の表面に合わせて試料106の表面を走査して照射する。図1(a)では図示を省略してあるが、試料106はテーブルに載置されて平面内で移動可能になっており、試料106の表面の所望の領域が電子線102の照射領域に位置するように制御される。電子線102が照射された試料106の表面から発生した二次電子の一部は検出器107で検出され、電気信号に変換されて全体制御・画像処理部108に送られてSEM画像が作成され、演算部109でSEM画像を処理してパターンの寸法を算出し、結果が出力部110の画面上に表示される。全体制御・画像処理部108は、図示していない試料106を載置するテーブルを含めたSEM001全体の制御も行う。
【0025】
演算部109における処理手順を図1(b)に示す。まず、上記に説明したように全体制御・画像処理部108でSEM001を制御して計測対象パターンのSEM画像を取得する(S0001)。次に,全体制御・画像処理部108で取得したSEM画像を受けて、演算部109でこのSEM画像を処理して,計測対象パターンの寸法および計測対象パターンと隣接パターンとの距離を暫定的に計測する(S0002)。ステップ(S0002)の計測はしきい値法など,従来のエッジ検出方法を用いて行えばよい。
【0026】
次に,ステップ(S0002)で計測された隣接パターンとの距離に基づいて,予め計算しておいたSEMシミュレーション波形ライブラリの中から,ステップ(S0002)で計測した実際のスペースに対応するシミュレーション波形をマッチングに用いる波形として選択する(S0003)。
【0027】
次に,ステップ(S0003)で選択されたライブラリ波形のみを用いて,計測対象パターンの実波形とライブラリマッチングを行い,最も一致したシミュレーション波形の入力形状からパターン側壁エッジの位置と形状を推定する(S0004)。マッチングにより得られた計測対象パターンのエッジ位置および形状推定結果に基づき,ユーザが予め指定した高さに相当するパターンの寸法を算出する(S0005)。最後に得られた結果をSEM画像上への表示あるいは数値データとして出力部110の画面上に表示する(S0006)。また、出力部110からの出力は、図示していない他のデータ処理装置又は記憶装置へ送信することも出来る。
以下,図1(b)の各ステップの詳細について説明する。
(処理領域設定と従来法による初期計測)
ステップ(S0002)での隣接パターンとの距離計測の詳細について図3を用いて説明する。隣接パターンとの距離計測は,演算部109の画像処理ユニット1091で行われ、予め設定された領域内の画像に対して処理を行う。図3(a)は計測対象のSEM画像003に処理領域設定ウィンドウを設定する例である。画像中央の計測対象パターン004に設定された寸法計測処理領域005と,左右の隣接パターン0041および0042のエッジ間にまたがる領域に設定されたスペース計測用処理領域006および007の設定例を示している。これらの処理領域設定ウィンドウ005〜007の設定は,実際にSEM画像を見ながらオペレータが設定してもよいし,パターンの設計情報を用いれば自動的に設定することも可能である。これらのウィンドウは,計測レシピとして一度設定しておけば,他のウェハやショット上のサンプルに対しても,パターンの位置決めを行うことで自動的に設定することが可能である。
【0028】
図3(b)は計測ウィンドウに対応するx方向のSEM信号波形008を示している。図3(a)のように設定された処理領域設定ウィンドウ内005,006,007(図3(b)では0051,0061,0071が対応する領域)のSEM画像に対して処理を行うが,このとき,処理画像のS/Nを向上するための前処理として,複数のSEM信号波形を平均して用いてもよい。例えば,図3(a)のようなラインパターンであれば,局所的にはラインの長手方向の寸法やエッジ形状はあまり変わらないため,画像内の異なるy座標の複数の画素の画像データを平均して得られる波形を処理対象とすればよい。あるいは,非特許文献3に開示されているように,パターン寸法のばらつきに対応した平均処理を行ってももちろんよい。
【0029】
このように,SEM画像の処理領域が決まると,ステップS002ではこれらの領域内において,従来法でのエッジ検出を行い,計測対象パターンの寸法および隣接パターンとの距離の暫定計測を行う。一例として,図3(b)の波形に,しきい値法をしきい値50%で適用したエッジ位置抽出結果を黒点で示している。このようにして抽出されたエッジ位置間の距離を計算することにより,図3(b)のグラフに矢印で示すように,計測対象パターンの寸法および隣接パターンとの距離を暫定的に求めることができる。
【0030】
ここでは,エッジ抽出手法としてしきい値法を用いたが,他のエッジ位置決定方法として,処理時間が十分に早いものであれば,信号量ピーク位置(しきい値100%と等価),信号量の微分値の最大・最小値や,側壁部分のデータに直線を当てはめて下地明るさと交差する点など,他の一般的に用いられている計測手法を用いてももちろんよい。
【0031】
また,図3(a)の例では左右に隣接パターンがある場合の例を示したが,SEM画像の範囲内に隣接パターンが観測されない場合には,計測は行わず,代わりに設計値あるいは予め設定した値を用いて後の処理を行う。
【0032】
図2(b)に示したように,スペースに依存した計測誤差は,スペースが小さい程影響が大きい。このため,ある程度大きなスペースであれば,実際のスペース幅が正確にわからなくても,後の処理への影響は少なく問題ない。事前に,計測精度に影響を与えるスペース幅を調べておき,スペース幅に応じて,設計値を使うなど切り替えればよい。
【0033】
例えば,図2(b)において,スペース変化に対する計測誤差変動の感度が高い領域では必ずスペース計測ができる視野の画像を取得して正確なスペース値を用いればよい。感度が低い範囲であれば設計値をもちいればよいし,誤差が飽和する範囲であれば,事前に設定した固定値のシミュレーション結果を用いればよい。なお,スペースが狭い場合に設計値を用いないのは,スペースの変化に対する誤差感度が高いこととスペースが設計値どおりにできるとは限らないためである。
【0034】
(ライブラリの構築,限定)
次に,図4を用いて本発明で用いるライブラリの構築方法と,ステップS0003により暫定的に計測されたスペース幅を用いて使用するライブラリを制限する方法について説明する。このライブラリの構築は演算部109のシミュレーションユニット1092で行われる。
【0035】
図4(a)は,パターンのスペース幅(x軸)と,同パターンをスペースの暫定計測時と同じ従来法で計測した結果(y軸)の関係を示しており,図2(b)のグラフから導出できる。本グラフはシミュレーションライブラリの波形データに対して従来の計測処理を行えば容易に作成できる。図4(a)の関係がわかっていれば,ステップS0002で得られた暫定計測結果(S_meas)から実際のスペース幅(S_est)をある程度の精度で推定できる。このようにして,実際のスペース幅を推定した後,シミュレーションライブラリから推定されたスペース幅を持つパターンに限定して計測用の波形マッチングを行う。
【0036】
図4(b)を用いて,本発明のライブラリマッチングおよびライブラリ限定方法を説明する。図4(b)は,本発明で用いるシミュレーション波形ライブラリ002の例を示している。シミュレーション波形ライブラリ002にはシミュレーションの入力断面形状009とそれに対応したSEMシミュレーション波形010が記録されている。
【0037】
側壁傾斜角θの変化を正しく計測するライブラリマッチング計測を行なう場合には,図4(b)に示すように複数の異なる傾斜角θの形状についてシミュレーションを実施しておく。この例では簡単のため側壁傾斜角θが3種類の場合を示しているが,実際にはプロセス変動で生じうるパターン形状をカバーする範囲を,計測したい精度に見合う細かさでシミュレーションしておく。シミュレーションライブラリは図1の計測とは別に事前に作成しておく。本発明では,このライブラリに図4(b)の横軸に示すように,スペースSを変化させたシミュレーションも実施しておく。
【0038】
なお,図4(b)の例ではわかりやすいように2つの隣接するパターンの図で示したが,実際のライブラリ作成においては,スペース両側のシミュレーション結果は左右反転させただけの同じものになるため,隣接するパターンのどちらか片方のスペース側を計算しておけばよい。マッチング時には,マッチング対象のパターン方向によって必要に応じてシミュレーション信号を左右反転させればよい。
【0039】
本発明では,このような形状パラメタの組み合わせに対して,SEMシミュレーションを実施し,形状情報009とシミュレーション波形010を対応付けてライブラリ002に保存する。なお,図4(b)の例では,簡単のためスペースと傾斜角のみの例を表しているが,このほかにパターンのトップコーナRtやボトムコーナRbのラウンディングなどを変更したデータがライブラリに含まれていてももちろんよい(その場合には3次元以上の多次元空間となる)。
【0040】
本発明では,このライブラリ002に対して,図4(a)の処理により推定された実際のスペース幅を適用してライブラリ002を限定する。図4(b)では,推定されたスペース幅S_estがS3と一致した場合の例で,点線で囲ったように,実際のスペース幅S_estと一致するスペースで計算されたシミュレーション波形のみを選択した部分ライブラリ011をマッチング対象として用いることで,スペースに依存したSEM波形の変化を考慮した高精度な計測が実現可能となる。
【0041】
図4(b)の例では,簡単のため,単純にシミュレーション条件を選択する例を示したが,実際には事前に準備できるシミュレーション条件が限られていてライブラリ内の形状パラメタは離散値であるため,完全に一致するスペースのシミュレーションデータがあるとは限らない。このため,実際には,シミュレーションライブラリから推定値S_estに最も近いスペース条件を選択するか,あるいはS_estにおけるSEM波形を近い条件の波形を補間することで推定して用いればよい。
【0042】
シミュレーション波形の補間は波形の補間で行うことができる。例えば,スペース50nmのシミュレーション波形f_s50(x)とスペース100nmのシミュレーション波形f_s100(x)がある場合に,スペース80nmの波形f_s80(x)は線形補間によりf_s80(x) = f_s50(x) + (f_s100(x)- f_s50(x))*(80-50)/(100-50)により求めることができる。
【0043】
ライブラリのデータによっては,2つ以上のスペースパラメタの組み合わせを用いた非線形補間を行ってももちろんよい。これを利用すれば,ステップS0003で推定スペース値に対応するライブラリが無い場合には,前後のスペース値の波形を用いて,当該スペース値(S_est)に対応する波形ライブラリを上記補間処理により新たに作成して,代わりに用いればよい。
【0044】
(ライブラリマッチング)
次に,ステップS0003により限定されたシミュレーションライブラリと実際の計測対象パターンの画像の比較により,ライブラリ内で最も一致度の高い波形を選択する。このライブラリマッチングは演算部109のマッチング波形選択ユニット1093で行われる。パターンの寸法計測では,パターン両側のエッジ間の距離が計測対象により変化する(このエッジ間距離が計測対象である寸法に相当する)。このため,図3(b)の計測処理ウィンドウ005内のSEM波形全体にマッチング処理を行うと,エッジ間の距離も変化させたシミュレーション波形が必要となり,マッチングに多くの計算量が必要となる。
【0045】
そこで,本発明の計測方法では,図4(b)に示すように,1つのパターンの評価領域0051におけるSEM信号波形0082のうち処理対象エッジ周辺の処理領域012のSEM信号波形0083を局所的に切り出した後,エッジ毎にライブラリとの波形マッチング処理S0004を行う。波形マッチングは,評価対象ウィンドウ内の実SEM画像S008とエッジ部の波形が最も一致するシミュレーション波形を前記の限定されたライブラリの中から探索することで行う。このとき,シミュレーション波形のx座標も同時に推定することで,形状だけでなく,それぞれのエッジ位置も正しく求めることができる。
【0046】
マッチングの際の波形の一致度としては,例えば,波形間の差の自乗和を用いて,これを最小にするようなシミュレーション波形を選択すればよい。あるいは,離散的なライブラリに対して図4(b)でスペースを限定した処理と同様に,補間処理を行うことで,ライブラリにないパラメタについてマッチングを行うことも可能である。補間処理により連続関数として扱えれば,Levenberg- Marquardt法などの非線形最適化手法を用いてマッチングするパラメタを推定することも可能である。
【0047】
以上の手続きにより,実波形と最も一致度が高いシミュレーション条件を求めることで,各エッジの側壁断面形状およびその位置を高精度に推定することができる。図4(b)の例であれば,マッチング結果から,例えば撮像されたSEM画像の断面形状がスペースS3と側壁傾斜角θ1に近い形状であると推定され,ライブラリマッチング領域012内の部分波形とマッチしたシミュレーション波形の位置ずれ量から,SEM画像内におけるエッジ位置を求めることができる。推定されたエッジ部の側壁形状が得られるため,任意の高さにおけるパターン寸法を算出することが可能となる。この処理は演算部109のパターン寸法算出ユニット1094で行われる。
【0048】
予め計測したいサンプル高さ(トップ,ボトム,中央、ボトムからパターン高さの10%の位置など)を設定しておけば,得られた断面形状から,対応する箇所でのエッジ位置および対向するエッジ位置の差分から寸法を求めることができる(ステップS0005)。上記のように,マッチングは左右エッジで別々に行なうため,それぞれのエッジについて,適切なスペース幅でのライブラリ制限を行なってから計測を行なうことで,左右非対称なパターン形状においても正確な計測が可能となる。
【0049】
これにより、パターンの任意の位置の寸法データとパターン断面形状の情報とを出力部110の画面上に表示してユーザに提供することが出来る。また通信手段を介してデータサーバ111に出力部110からの情報を蓄積しておくことも出来る。
【0050】
以上のように,本発明の第1の実施例を用いれば,パターンの形状や隣接パターン間の距離などによらず,パターンの正確な寸法および形状計測が可能となる。本実施例においては事前準備として多くのシミュレーションが必要であるが,ライブラリ構築は,各製品プロセスについて一度やっておけば後で計算しなおす必要はないので、特に量産ラインにおいてパターン寸法、形状の計測に本発明を適用してプロセスの管理に用いた場合、本発明の効果は顕著になる。
【実施例2】
【0051】
本発明の第2の実施例について,図5を用いて説明する。図5(a)〜(c)はパターン寸法が異なる場合のSEM信号波形の違いを模式的に示している。図5(a)はパターン501の寸法が大きい場合を示し、図5(b)はパターン502の寸法が(a)の場合に比べて少し小さい場合、図5(c)はパターン503の寸法が小さい場合を示す。図5(a)〜(c)にかけてパターンの寸法が小さくなると,パターン上面部の信号量が511,512,513のように大きく変化する。これは,電子のサンプル材料内での拡散長に対して,パターン線幅が小さくなってしまうために,パターン中央に照射した電子が両側のエッジ部まで拡散し,多くの2次電子が発生してしまうためである。
【0052】
このように,パターンの寸法,材料,電子線照射条件の組み合せによっては,実施例1のスペース幅だけではなく,パターン寸法によってもエッジ部のSEM信号波形が変化してしまう。このような状況は近年の半導体パターン微細化によって無視できない影響を計測精度に与える。そこで,このような条件における計測では,左右のエッジの干渉を考慮した計測が必要となる。
【0053】
第2の実施例は,図5(a)〜(c)に示したような、スペース幅だけではなく,パターン寸法によってもエッジ部のSEM信号波形が変化してしまうという課題に対応するものであり,図5(d)を用いて説明する。なお,図5(d)の手順は,図1(b)で説明したステップS0002,0003がステップS0010,S0011と入れ替わる以外は第1の実施例の図1の手順と同じである。
【0054】
第2の実施例では,第1の実施例でスペース幅に対して行なった処理と同様に,はじめに寸法幅を変更したデータを含むライブラリを用意しておき,パターン幅をあらかじめ従来法で暫定的に計測する(S0010)。シミュレーション結果から事前に求めておいた実寸法と従来法での計測誤差の関係に基づき,暫定計測結果から実際の寸法値を予測,その結果に基づいて線幅のライブラリ条件を限定し(S0011),限定されたライブラリによりSEM実波形とのマッチングを行い(S0012),寸法計測を行ない(S0013)、計測結果を出力する(S0014)。この場合も,第1の実施例と同様に,寸法変動に対する波形変化および計測誤差の変化が小さい場合には設計値や予め指定した固定値を用いても問題ない。
【0055】
以上のように,本発明の第2の実施例を用いれば,第1の実施例で説明した効果に加えて、SEM画像内で左右のエッジが干渉するような微細パターンに対しても正確な寸法および形状計測が可能となる。また、第1の実施例で説明した場合と同様に、事前準備として多くのシミュレーションが必要であるが,ライブラリ構築は,各製品プロセスについて一度やっておけば後で計算しなおす必要はない。
【実施例3】
【0056】
第3の実施例では,ライブラリとの波形マッチングに非線形最適化を用いた場合に,マッチングを安定かつ高速にする手段について図6から図8を用いて説明する。図6(a)は,ライブラリマッチングの問題点を説明する図であり,グラフはマッチングの際の誤差空間(形状パラメタとマッチング誤差の関係)を表している。簡単のために形状パラメタはp1, p2(例えば側壁傾斜角とトップコーナラウンディングなど)の2つのみで示しているが,実際にはさらに多くのパラメタからなる多次元空間であってよい。
【0057】
等高線は計測対象の実SEM画像と各パラメタセットにおけるシミュレーション波形のマッチング誤差(例えば,差の自乗和)を示しており,理想的なケースでは極小値をひとつだけ持ち,周辺に比べて誤差が十分に小さいことが望ましい。しかしながら,実際には画像ノイズやモデルの不完全さのため,図6(a)に示すように、複数の極小値を持つことがあり,このような場合には,非線形最適化によるマッチング処理によって,偽の解を選択してしまう恐れがある。場合によっては、偽の解の方が小さな誤差を持ってしまうケースもあり,この場合は数学的に正しい解を選択しても,計測結果は正しくなくなってしまう。
【0058】
一般的に,非線形最適化においては,初期値の設定が重要であり,解に近い初期値が適切に設定されていれば,正しい解を求めることが容易となる。それに対し,不適切な初期値を与えてしまうと,誤った解を選択したり,収束に多くの時間を要したりという問題がある。そこで,第3の実施例では,この初期値を実際のパターンのSEM画像特徴量から推定することで適切な値に設定する。
【0059】
第3の実施例を,図6(b)を用いて説明する。なお,図6(b)の手順は,ステップS0002,0003がステップS0020,S0021と入れ替わる以外の(S0022〜S0024)のステップは第1の実施例の図1の手順と同じである。本実施例では,SEM画像取得後,計測対象パターンの形状をSEMの画像特徴量を用いて推定する(S0020)。次に,ステップS0020で推定された断面形状を非線形最適化の初期値に設定し(S0021),SEMの実画像とライブラリ波形のマッチング処理を行い(S0022),計測結果を得(S0023)、結果を出力する(S0024)。
【0060】
図7にステップS0020で用いる画像特徴量の例を示す。図7(a)において,特徴量f1はエッジピーク部分の幅である(以下ホワイトバンドと呼ぶ)。ホワイトバンド幅は,垂直上方からみた場合のエッジ部の見込み幅を反映する特徴量である。特徴量f2は,ホワイトバンド部において,ピーク位置より外側部の平均幅であり,ボトム部の曲率の大きさを反映する特徴量である。特徴量f3は,ホワイトバンド部において,ピーク位置より内側部の平均幅であり,トップ部の曲率の大きさを反映する特徴量である。特徴量f4は信号強度の大きさであり,図7が示すようにテーパ角の大きさを反映する特徴量である。また,絶対信号量の評価が可能なシステムであれば,ピーク部分の絶対信号量f6およびエッジ外側の最小絶対信号量f7なども用いることができる。f6は傾斜角効果により,テーパ角度に依存して変化する値であり,f7はスペースによって変化する。
【0061】
図7(b)は別の特徴量の例である。エッジピーク部の1次微分を用いて,1次微分が極値を持つ点とゼロになる点の間の距離を特徴量F1,F2,F3としている。F1はトップコーナの曲率に応じて変化する値であり,F2は側壁傾斜角,F3は裾引きに相関がある。図7(a)(b)に示すような種々の特徴量を,予めライブラリ内のSEMシミュレーション波形に対して計算しておき,計測時には実際のSEM信号波形についても同様の特徴量計算を行い,これらの関係から計測対象パターンの形状推定を行い,結果を初期値としてライブラリマッチングを行なう。
【0062】
次に,図8を用いて,これらの特徴量からパターン形状パラメタの推定を行なう方法について説明する。図8(a)は形状パラメタ空間における画像特徴量の分布を曲面801と802で示すグラフである。p1,p2は側壁傾斜角やコーナ曲率などのシミュレーション形状モデルの形状パラメタ,特徴量fA,fBは図7に示したようなSEM画像特徴量を表している。説明を簡単にするため,形状パラメタ,特徴量ともに2つずつの例を示すが,実際にはさらに多くの形状パラメタおよび特徴量を用いてもちろんよい(その場合には,4次元以上の他パラメタ空間となる)。
【0063】
図8(a)のグラフはシミュレーションライブラリの波形に対して,図7(a)(b)に示すような種々の特徴量を算出することで得ることができるため,計測時に作成する必要はない。事前に,ライブラリと同時に作成しておく。次に,計測時の実SEM画像から各画像特徴量fA_SEM,fB_SEMを算出すると,図8(b)に示す平面803と804が得られる。ライブラリの特徴量の曲面801又は802とこの平面803又は804の交点に対応する形状パラメタが計測対象パターン形状の候補となる。
【0064】
そこで図8(c)のように,この平面からの距離に応じた各パラメタの尤度関数を適当に与える。図8(c)はそれぞれのパラメタが尤もらしい確立であるので,図(c)のグラフを掛け合わせて,最大の確立をとる点を算出することで,実SEM画像の形状パラメタを推定することができる。この推定された形状パラメタを初期値として用いて,ライブラリマッチングを行なえば,偽の解におちいることなく,安定で高速なマッチング処理が可能となる。ひいては,安定で高速に高精度なパターン形状および寸法の推定が可能となる。これらの初期値設定方法に加え,(特許文献2)に開示されているような手法により,装置の検出器ゲインやオフセット,ビーム径などの装置パラメタを事前に設定してももちろんよい。適切な値に装置パラメタを設定したうえで,パターン形状パラメタの初期値を適切に設定することで,より安定で高速なパターン計測が実現可能となる。
【0065】
以上のように,本発明の第3の実施例を用いれば,安定で高速なパターン形状および寸法の計測が実現できる。
【実施例4】
【0066】
第3の実施例では,パターン形状推定の初期値をSEM画像から得られる特徴量を用いて設定した。第4の実施例では,他の計測装置による計測結果を用いてこれらの初期値を設定する。本実施例ではAFM計測を組合せて用いる方法について説明する。AFMは比較的スループットが低いため,プロセスばらつきを考慮した大量計測には向かないが,パターンの概略形状を推定するだけであれば,数スキャン程度のデータ取得で済む。そこで,本実施例では,予め計測対象パターンをAFMで計測し,得られた断面プロファイル形状に基づいて,形状パラメタの初期値あるいはマッチングを行なう形状パラメタの範囲を設定する。。
【0067】
図9に手順を示す。なお,図9の手順は,図1で説明したステップS0002,0003がステップS0030と入れ替わる以外のステップS0031〜S0033までは第1の実施例の図1に示したS0004〜S0006の手順と同じである。計測対象のSEM画像を取得した後,予め計測しておいたAFMの結果から,シミュレーションモデルに用いた形状パラメタに相当する値を直接計測して,結果をライブラリマッチングの初期値として設定する(S0030)。例えば,側壁傾斜角ならば,それぞれのエッジにおける高さ計測結果に直線フィッティングを行ない,その傾きから求めればよい。その後,これらの初期値を用いてSEM実波形とシミュレーションライブラリのマッチングを行い(S0031),寸法計測を行ない(S0032),計測結果を出力する(S0033)。これにより,第3の実施例と同様に,安定で高速な計測が可能となる。
【0068】
図9のステップS0030では,AFM計測結果に基づき,マッチングで推定される形状パラメタの初期値を決定したが,これとあわせて,マッチングを行なうパラメタの範囲を制限してもよい。パラメタ推定を行なう範囲が適切な範囲に制限されることで,マッチングの際に誤った解を選択してしまう可能性を減らすことができる。これにより,第3の実施例と同様に,安定で高速な計測が可能となる。
【0069】
また,SEM画像評価では,一般に,パターン高さの変化を知ることが困難である。そこで,AFMデータを用いれば,高さ情報を得ることができるため,第1の実施例のスペースと同様に,高さの異なるライブラリを準備し,得られた高さにライブラリを限定して計測を行なうことも可能である。この場合には,ステップS0030では,初期値ではなく,高さパラメタを固定することになる。本発明により,パターン高さが変動するような場合においても,AFMとSEMの組み合わせによって安定で,高精度な計測が実現可能となる。本実施例ではAFMを用いる場合について述べたが,Scatterometryのような光学式のパターン形状装置を用いても同様の効果が得られる。
【実施例5】
【0070】
次に,図10を用いて,第5の実施例として,本発明のパターン計測方法において用いるシミュレーションライブラリの作成方法について説明する。
【0071】
シミュレーションライブラリ作成時には,パターン形状のモデルを決めて,モデルに用いられるパラメタにより形状を数値化して表現する。例えば,図4の例では可変パラメタとして側壁の傾斜角θを使って形状を表現していた。図10(a)はこの拡張であり,パターン形状モデル1001のボトムコーナのラウンディングRbもパラメタに加えている。このパターン形状モデル1001は,計測対象プロセスで起こりうる実際のパターン形状変動に対応したものであることが望ましい。
【0072】
例えば,エッチングプロセスであれば,エッチング条件が変動しても,レジストで保護されるためトップコーナRt形状はあまり変化しないが,側壁の形状は影響を受けやすく、パターン幅Wは変化し易い。特に,ストッパ層の選択比がよくない場合などは,エッチング条件をボトム付近で切り替えるため,切り替えに相当する高さにおいて,側壁の形状が変化することが多い。このような場合には,図10(b)に示すような台形1002と1003を積み重ねた形状モデルが実際のパターンを表現するのに適している。この場合,例えば全体の高さHは成膜プロセスにより決まり,エッチングプロセスでは変化しないので,エッチングパターンの評価時にはHを設計値に固定するか,あるいは事前に膜厚計で計測した値に設定すればよい。また変化点の高さhはエッチングプロセス切り替え時の変化点であるから,実際のパターンの断面写真などから大体の値を一度決めておけばよい。
【0073】
このように,形状モデルのうちいくつかのパラメタを評価対象プロセスに適した値に固定すれば,ライブラリマッチング時の推定パラメタを減らすことができ,安定かつ高速な計測が可能となる。図10(c)はレジストパターンに適した形状モデルの例であり,台形1004とその頂点で側壁に接する楕円1005の組み合わせを用いる。例えば,H,hを事前に指定しておけばWは固定値としてθを設定するだけで楕円1005が一意に決まるため,θのみを推定パラメタとして,トップ部分のラウンディングRtの推定が不要になる。
【0074】
図10(d)はこのようなモデルの選択を,断面写真を見ながら設定できるグラフィカルユーザインターフェースの例である。例えば図10(b)のhはパターンの断面SEM写真を見れば,オペレータが容易に判断することができる。そこで,ライブラリ作成時に,事前に取得しておいた断面SEM写真1011を画面1010に表示し,その上にモデル形状を重ねて表示すれば、画面1010を見ながらマウス操作により簡単に設定することができる。
【0075】
図10(d)の例では,画面1010の左下に表示されたボタン1012で使用する断面画像を選択し,右上の画像1013の中から用いるモデルを選択する。その後,画面1010の右側中断の領域1014で、選択したモデルの形状パラメタの固定の有無や範囲を指定できる(図10(d)では、ボトム線幅1015、ピッチ1016、高さ1017を指定する場合を示す)。パラメタを選択して確定ボタン1018を押し、最後にマウス入力ボタン1019を押せば,画像上でマウスを用いて,対象パラメタを任意の値に設定できる。このようにして,実際のプロセスにあった適切なモデルの選定とパラメタの範囲設定に基づくシミュレーションライブラリが構築できる。
【0076】
なお,図10(d)では断面SEM写真の例を示したが,代わりにSTEM写真やAFMの計測結果を用いてももちろんよい。また,これらの断面情報は,実際のプロセスの変動範囲を考慮したものが望ましい。例えばレジストパターンであれば,フォーカスと露光エネルギー量を変化させて露光した複数のパターンを作成し,プロセスの正常範囲との境界条件でのパターンを用いれば,当該プロセスで発生しうるパターン形状をカバーしたシミュレーションライブラリが構築できる。
【0077】
このように,プロセスに応じたモデルの選択と,推定すべきパラメタの選択を適切に行うことができれば,シミュレーション波形と実際のSEM波形の一致度が向上し,より正確で安定な計測が可能となる。また,全てのパラメタを推定するのではなく,プロセス変動によって変化しないパラメタを固定して,推定パラメタの数を減らすことにより,推定にかかる計算時間の短縮,推定結果の安定化などの効果が得られる。
【実施例6】
【0078】
本発明のパターン計測方法において用いるシミュレーションライブラリの作成時の材料パラメタ設定方法について図11を用いて説明する。
【0079】
SEMで検出される2次電子信号量は,照射ビームの加速電圧やスキャン速度などのSEMの撮像条件と計測対象の材料によって変化する。しかしながら,材料に依存した信号量の違いを正確にシミュレーションするのは難しい。例えば,同じ二酸化ケイ素のパターンであっても,その成膜方法が異なれば,得られるSEM信号量は異なるということがしばしば起こる。
【0080】
一方で,同じ材料パターンでの形状変化に対する相対的なSEM信号波形の変化は,材料による違いが正確に再現できなくても,比較的正しくシミュレーションできるため,本発明のシミュレーション波形とのマッチングによる計測においても従来法に比べ高い計測精度を実現することができる。ところが,図5(a)〜(c)に示したように,パターン部分と下地部分で材料が異なるサンプルのSEM画像を用いる場合には高精度な計測を行なうことが困難となる。
【0081】
2次電子信号量は材料に応じて変化するため,例えば図11(a)に示すようなパターン1101の材料Aでできたパターントップ部分と材料Bでできた下地部分での信号量は異なる。例えば,図11(a)のパターン1101のSEM画像の信号波形が図11(b)のような場合に,シミュレーションの結果は図11(c)の波形のようになってしまうことがある。この場合には,材料A部分とB部分のコントラストが反転しているため,どんなにライブラリの形状パラメタを調整しても,実際の画像にマッチするシミュレーション波形を作ることはできないため,正しい計測結果を得ることが困難となる。
【0082】
本発明では,このようなサンプルを計測する場合に,事前に材料のパラメタを調整することで,ライブラリマッチングによる計測精度を向上させることができる。使用されるモデルに依存するが,通常のSEMシミュレータには材料を設定するためのパラメタがあるので,本発明ではそれを事前に調節する。例えば,非特許文献3に開示されているように,例えばSEMシミュレータMONSELにはresidual energy loss rateという,電子の散乱によるエネルギーの減衰量を調節するパラメタがあり,これを調節すると発生する2次電子信号量が変化する。他のモデルを用いたシミュレータにも,通常上記に類似したパラメタある。SEMに絶対的な2次電子効率(1次電子の照射量に対する2次電子の割合)の計測が可能なハードウェアがある場合には,計測された2次電子効率にシミュレーション結果が合うようにライブラリ作成前に予め材料パラメタを調整しておく。
【0083】
しかしながら,一般にはSEMの絶対的な2次電子効率を計測するのは難しく,SEMシミュレーションの材料パラメタ調整も容易ではない。このような場合には基準材料を定め,それに対するSEM信号量の割合が実画像とシミュレーションで一致するようにパラメタを設定する。
【0084】
例えば,図11(a)の場合であれば,例えば下地材料Bを基準として,材料Aの信号量を調整する。はじめに,スクライブライン部などの,比較的大きなパターン部分において,材料A,Bそれぞれについてエッジから離れた平坦部のSEM画像を実際に取得する。次に,カラムと試料室の間のバルブを閉めるなどして,1次電子が試料に当たらないようにして,SEM画像をとることで,センサに信号が当たっていない場合のSEM画像(暗電流)を取得する。このとき,材料A,B,およびビーム照射の無い状態のSEM画像は全て必ず同じ検出条件(ビーム条件や検出器の感度など)で取得する。次に,それぞれの画像内の適当な領域内で平均明るさを計算し,材料A,Bの明るさからそれぞれ暗電流の明るさを差し引く。その後,基準材料Bに対する材料Aの相対信号量を算出し,シミュレーション結果がこれと一致するように材料Aの材料パラメタを調整する。
【0085】
図11(d)は調整の一例である。予め計測した実信号量を左のy軸に示している。この例では基準材料にくらべ材料Aは6割程度の信号量となっている。これに対し,まずデフォルトのシミュレーション条件で材料A,基準材料Bの2次電子効率を計算する(結果は白い丸および白い四角で表示)。図11(d)では,この基準材料Bの結果(白い四角)が実画像と一致するように右のy軸をあわせて表示している。このシミュレーション結果では,実画像と異なり,材料Aの方が明るくなっている。これに対して,材料Aの材料パラメタをいくつか変更して,2次電子効率を計算した結果が曲線あり,基準材料に対する材料Aの明るさが実画像と一致する条件は黒丸で示したものとなる。
【0086】
このようにして,材料間のコントラストが実際に一致するように,相対的な材料間の明るさを調整することで,完全ではないが,ライブラリマッチングが安定かつ高精度に行なえるようになる。基準材料としては,安定で特性のよく知られているものが望ましい。半導体ウェハであれば,基板のSiなどを用いることができる。
【0087】
このように,材料のパラメタを事前に適切な値に設定しておくことで,シミュレーションとの整合性を向上することができ,その結果シミュレーションライブラリを利用したパターン計測手法においても,計測の安定性向上,精度向上が可能となる。
【0088】
また,第4の実施例のように,他の計測装置によりパターンの概略形状を計測できる場合には,平らな部分の明るさに加えて,エッジ部の信号量も合わせこむ材料パラメタを設定することも可能となる。図11(a)に示したパターンがある場合に,例えばまずAFMで概略形状を計測する。その結果に基づいて,AFM計測結果を入力形状として,いくつかの材料パラメタでシミュレーションを行い,材料Aの平らな部分(上面部)と材料Aの側壁部分の信号量の関係が実際のSEM画像に一致するパラメタを選択する。次に,これら材料Aの平坦部分とエッジ部分の信号量に対する材料Bの信号量が実際のSEM画像と一致する材料Bのパラメタを決定すればよい。
【0089】
本形態によれば,エッジ部分と平坦部における信号量の関係がより実際に近いものになり,さらなる計測の安定性向上,精度向上が可能となる。この方法を用いれば,基準サンプルがない場合においても材料パラメタを合わせこむことが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0090】
本明細書に開示されているパターン計測技術は,電子顕微鏡あるいはそれに類似した荷電粒子線装置で画像取得が行える対象であれば適用が可能である。本明細書では半導体パターンの計測について説明を行ったが,MEMSや微細工業部品などに適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0091】
【図1】本発明の第1の実施の形態の説明図である。
【図2】従来のライブラリマッチング手法の課題の説明図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態における画像処理領域設定の説明図である。
【図4】本発明の第1の実施の形態におけるライブラリ制限手法の説明図である。
【図5】従来のライブラリマッチング手法の課題と本発明の第2の実施の形態の説明図である。
【図6】従来のライブラリマッチング手法の課題と本発明の第3の実施の形態の説明図である。
【図7】本発明の第3の実施の形態で用いるSEM画像特徴量の説明図である。
【図8】本発明の第3の実施の形態における形状パラメタ推定手法の説明図である。
【図9】本発明の第4の実施の形態の説明図である。
【図10】本発明の第5の実施の形態の説明図である。
【図11】本発明の第6の実施の形態の説明図である。
【符号の説明】
【0092】
001・・・SEM 101・・・電子銃 103・・・集束レンズ 104・・・偏向器 105・・・対物レンズ 106・・・試料 107・・・検出器 108・・・全体制御・信号処理部 002・・・SEM波形シミュレーションライブラリ 003・・・SEM画像
004・・・計測対象パターン 005・・・寸法計測処理領域ウィンドウ 006・・・左側スペース計測用処理領域ウィンドウ 007・・・右側スペース計測用処理領域ウィンドウ
008・・・SEM信号波形 009・・・シミュレーション入力断面形状 010・・・SEMシミュレーション波形 011・・・SEMシミュレーション部分ライブラリ 012・・・ライブラリマッチング領域 013・・・SEM信号1次微分波形 014・・・AFM計測結果
【技術分野】
【0001】
本発明は半導体の製造工程においてウェハ上に形成された回路パターンの加工形状の良否を,回路パターンの電子顕微鏡画像を用いて評価する方法及びそのシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体ウェハの製造工程において,ウェハ上に多層に形成されるパターンの微細化が急速に進んでおり,それらのパターンが設計どおりにウェハ上に形成されているか否かを監視するプロセスモニタの重要性はますます増加している。中でもトランジスタゲート配線をはじめとする配線パターンは,その配線幅とデバイス動作特性に強い関連があり,その配線製造プロセスのモニタは特に重要である。
【0003】
数十ナノメートルオーダの微細配線の線幅を測定する測長ツールとしては,それらの配線を10万から20万倍の拡大倍率で撮像可能な線幅測定用の走査型電子顕微鏡(測長SEM(Scanning Electron Microscope)またはCD(Critical dimension)SEM)が従来から用いられている。このような走査型電子顕微鏡を用いた測長処理の一例が特開平11−316115号公報(特許文献1)に記載されている。特許文献1の開示例においては,測定対象配線を撮像した画像内の局所領域から,配線の信号プロファイルを配線の長手方向に加算平均した投影プロファイルを作成し,このプロファイルにおいて検出した左右の配線エッジ間の距離として配線寸法を算出している。
【0004】
しかし,非特許文献1のFig1に開示されているように,SEMの信号波形においては,その計測対象の形状が変化すると,それに応じて信号波形も変化するため計測誤差を生じるという問題がある。半導体パターンの微細化に伴い,これら計測誤差がプロセスモニタに与える影響は大きくなりつつある。このような計測誤差を低減する手法が非特許文献1および非特許文献2に開示されている。この手法では,パターン形状とSEM信号波形の関係を予めシミュレーションにより計算しておき,その結果を利用して対象形状に依存しない高精度計測を実現している。
【0005】
また、パターン材料とパターンの下地材料とで二次電子放出効率が異なるようなサンプルを計測する場合に,事前に材料のパラメタを調整することで,ライブラリマッチングによる計測精度を向上させることが,非特許文献3に開示されている。
【0006】
【特許文献1】特開平11−316115号公報
【特許文献2】特開P2007−218711号公報
【非特許文献1】J. S. Villarrubia, A. E. Vladar, J. R. Lowney, and M. T. Postek, “Scanning electron microscope analog of scatterometry,”Proc. SPIE 4689, pp. 304-312 (2002)
【非特許文献2】J. S. Villarrubia, A. E. Vladar, M. T. Postek, “A simulation study of repeatability and bias in the CD-SEM,” Proc. SPIE 5038, pp. 138-149, 2003.
【非特許文献3】M. Tanaka, J. S. Villarrubia and A. E. Vladar, “Influence of Focus Variation on Linewidth Measurements,” Proc. SPIE 5752, pp.144-155(2005)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
背景技術に示されているように,測長SEMにより半導体パターンの寸法計測を行う際には,対象パターンの形状に依存した計測誤差を発生するという問題がある。これに対して,非特許文献1および非特許文献2に開示されている手法では,パターン形状とSEM信号波形の関係を予めSEMシミュレーションにより計算しておき,その結果を利用して対象形状に依存しない高精度計測を実現している。パターン形状をパラメタにより数値化し,様々な形状のSEMシミュレーション結果をライブラリとして保存し,実波形と比較することで,正確に形状と寸法を推定することが可能である。本明細書では,以後,本手法をモデルベース計測あるいはライブラリマッチング手法と呼ぶ。このようなモデルベース計測手法においては,いかに精度の良いシミュレーションを行うかが安定で高精度な計測を実現するために重要となる。
【0008】
実画像とのマッチングに適したシミュレーション結果を得るためには,適切なパターン形状モデルの設定とシミュレーションパラメタの設定が重要である。しかしながら,最適なパターン形状モデルは,計測対象によって異なるが,これらを容易かつ適切に設定することは困難である。さらに,計測対象の材料特性などの物理パラメタを正確に求めるのは困難であるといった課題がある。
【0009】
また,ライブラリとのマッチング処理においては,適切な形状モデルを用いていても,多くのパラメタの適切な組み合せを求めるのには多くの時間が必要になるという問題がある。多くの時間を要するパラメタ空間の全探索の代わりに,各種の非線形最適化手法を用いることができるが,この場合には,局所解におちいってしまい,正しい計測結果が得られなくなる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明では,これらの課題に対して,計測対象であるサンプルの材料や形状のモデルおよびパラメタを,予め別の手段で推定した結果に基づいて推定することにより,非特許文献1および非特許文献2などに示されているようなシミュレーションを用いた計測手法の安定化,高速化,高精度化をはかる。
【0011】
本発明では,寸法計測結果に与える影響が大きい隣接パターンとの距離を,実際のSEM画像を用いて従来法での計測結果に基づいて推定し,推定された隣接パターンとの距離の条件下でシミュレーションされた波形のみを用いてライブラリマッチングを行なうことで,高精度な計測を実現する。
【0012】
また,パターン線幅についても,実際のSEM画像を用いて従来法での計測結果に基づいた推定を行い,推定された線幅の条件下でシミュレーションされた波形のみを用いてライブラリマッチングを行なうことで,高精度な計測を実現する。
さらに,予めシミュレーションにより求めておいたパターン形状とSEM画像特徴量の関係に基づいて,計測時には,対象パターンのSEM画像から得られる画像特徴量を用いて,パターン形状を推定し,その推定結果をライブラリマッチングにおける初期値として用いることで,マッチング処理を高速化・安定化して,高精度かつ高速な計測を実現する。
【0013】
さらに別の方法として,予めAFMなどの別の計測装置で得られた情報に基づいて,ライブラリマッチングにおけるパターン形状パラメタの初期値を適切に設定することで,マッチング処理を高速化・安定化して,高精度かつ高速な計測を実現する。
【0014】
また,形状モデルの最適化の課題に対しては,AFMや断面SEMなどにより得られる断面形状情報に基づいて,オペレータが容易に最適なモデルの選択とパラメタ設定が可能なグラフィカルユーザインターフェースを提供することにより,その結果,安定で高精度な計測を実現する。
【0015】
複数種類の材料から構成されるパターンを計測する場合には,事前にSEM画像を取得し,シミュレーションによる各材料の信号量が,上記実SEM画像のコントラストと一致するように,ライブラリ構築時の材料パラメタを設定することで,シミュレーションの精度を向上し,安定で高精度な計測を実現する。
【発明の効果】
【0016】
本発明により,モデルベース計測手法に用いるシミュレーションの精度が向上でき,その結果モデルベース計測手法そのものの精度も向上する。また,材料パラメタや一部の形状パラメタを事前に設定することにより,推定パラメタの数を減らすことができるため,安定な推定が可能となり,また計測に要する計算時間を短縮することができる。さらに,推定が必要なパラメタについても,適切な初期値を用いることにより,安定で高速な推定が可能となり,ひいては計測の信頼性および速度を向上することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明は,各種の荷電粒子線装置(SEM,FIB等)に適用可能であるが,以下の実施例では代表としてSEMを用いる場合を例にとって説明する。
【実施例1】
【0018】
第1の実施例では,計測対象パターン周辺のスペース,すなわち隣接パターンとの距離の違いによって生じるSEM計測の誤差を低減する方法について図1から図5を用いて説明する。本発明では予め従来手法により計測されたスペースの暫定計測結果に基づいて,ライブラリ波形マッチングにおいて用いるシミュレーション波形を,実際のパターンに合ったものに限定することで,マッチングの精度,ひいてはパターン計測精度を向上する。
【0019】
図2は,従来手法の計測課題であるスペースに依存して発生する計測誤差を説明する図である。図2(a)のグラフに示すように,パターン201とパターン202とのスペース幅Sによってエッジ部のSEM信号波形Wは右側に拡大して表示したように、大きく変化する。この現象は,スペース部から発生する2次電子が側壁に衝突するため,検出信号量が減少することによるもので,パターンが高くスペースが狭いほど顕著である。図2(b)はスペース幅Sを変化させたときに,従来法であるしきい値法(しきい値50%)による計測値をシミュレーションにより計算したものである。
【0020】
しきい値法とは,下地部分の信号量とエッジ部ピーク部分の信号量の間の任意の明るさを,下地部0,ピーク部100%としてしきい値で指定し,この指定された閾値に相当する信号量をとる位置をパターンエッジ位置とする方法である。図2(b)では,入力パターンの幅寸法W及び高さ寸法Hとは全て一定だが,計算結果はパターン201とパターン202との間のスペース幅Sによって変化している。誤差の範囲は計測対象パターンの寸法WとHに依存するが,数ナノメートルから十数ナノメートルにおよぶ恐れがある。
【0021】
一方,実際の計測対象パターンにおいては,図2(c)の矢印示すように,そのレイアウトによって,隣接パターンとの距離は様々である。図2(c)に示した例においては、パターン210,211,212のそれぞれの間の距離、S1〜S4に相当する。このことから,計測の高精度化にはスペースの影響を考慮することが重要であることがわかる。
【0022】
この課題に対する解決手段として,図1に,本発明に係るパターン計測方法の第1の実施例のSEMによる計測手順を示す。
【0023】
計測開始前に,パターンの形状,寸法,隣接パターンとの距離を様々な値に設定したSEMシミュレーションを行い,SEMシミュレーション波形をライブラリに保存しておく。シミュレーション条件の設定範囲は,計測対象パターンの製造プロセスに応じて適切な値に設定しておく。
【0024】
計測時には,まず図1(a)に示したSEM001にて,予め設定された撮像条件(倍率,照射ビームの加速電圧など)で試料のSEM像を取得する。具体的には、SEM001の電子銃101から発射された電子線102を集束レンズ103で収束させ、偏向器104でX方向及びY方向(図1において図面に垂直な平面内)に走査し、対物レンズ105で電子線の焦点を計測対象パターンが形成された試料106の表面に合わせて試料106の表面を走査して照射する。図1(a)では図示を省略してあるが、試料106はテーブルに載置されて平面内で移動可能になっており、試料106の表面の所望の領域が電子線102の照射領域に位置するように制御される。電子線102が照射された試料106の表面から発生した二次電子の一部は検出器107で検出され、電気信号に変換されて全体制御・画像処理部108に送られてSEM画像が作成され、演算部109でSEM画像を処理してパターンの寸法を算出し、結果が出力部110の画面上に表示される。全体制御・画像処理部108は、図示していない試料106を載置するテーブルを含めたSEM001全体の制御も行う。
【0025】
演算部109における処理手順を図1(b)に示す。まず、上記に説明したように全体制御・画像処理部108でSEM001を制御して計測対象パターンのSEM画像を取得する(S0001)。次に,全体制御・画像処理部108で取得したSEM画像を受けて、演算部109でこのSEM画像を処理して,計測対象パターンの寸法および計測対象パターンと隣接パターンとの距離を暫定的に計測する(S0002)。ステップ(S0002)の計測はしきい値法など,従来のエッジ検出方法を用いて行えばよい。
【0026】
次に,ステップ(S0002)で計測された隣接パターンとの距離に基づいて,予め計算しておいたSEMシミュレーション波形ライブラリの中から,ステップ(S0002)で計測した実際のスペースに対応するシミュレーション波形をマッチングに用いる波形として選択する(S0003)。
【0027】
次に,ステップ(S0003)で選択されたライブラリ波形のみを用いて,計測対象パターンの実波形とライブラリマッチングを行い,最も一致したシミュレーション波形の入力形状からパターン側壁エッジの位置と形状を推定する(S0004)。マッチングにより得られた計測対象パターンのエッジ位置および形状推定結果に基づき,ユーザが予め指定した高さに相当するパターンの寸法を算出する(S0005)。最後に得られた結果をSEM画像上への表示あるいは数値データとして出力部110の画面上に表示する(S0006)。また、出力部110からの出力は、図示していない他のデータ処理装置又は記憶装置へ送信することも出来る。
以下,図1(b)の各ステップの詳細について説明する。
(処理領域設定と従来法による初期計測)
ステップ(S0002)での隣接パターンとの距離計測の詳細について図3を用いて説明する。隣接パターンとの距離計測は,演算部109の画像処理ユニット1091で行われ、予め設定された領域内の画像に対して処理を行う。図3(a)は計測対象のSEM画像003に処理領域設定ウィンドウを設定する例である。画像中央の計測対象パターン004に設定された寸法計測処理領域005と,左右の隣接パターン0041および0042のエッジ間にまたがる領域に設定されたスペース計測用処理領域006および007の設定例を示している。これらの処理領域設定ウィンドウ005〜007の設定は,実際にSEM画像を見ながらオペレータが設定してもよいし,パターンの設計情報を用いれば自動的に設定することも可能である。これらのウィンドウは,計測レシピとして一度設定しておけば,他のウェハやショット上のサンプルに対しても,パターンの位置決めを行うことで自動的に設定することが可能である。
【0028】
図3(b)は計測ウィンドウに対応するx方向のSEM信号波形008を示している。図3(a)のように設定された処理領域設定ウィンドウ内005,006,007(図3(b)では0051,0061,0071が対応する領域)のSEM画像に対して処理を行うが,このとき,処理画像のS/Nを向上するための前処理として,複数のSEM信号波形を平均して用いてもよい。例えば,図3(a)のようなラインパターンであれば,局所的にはラインの長手方向の寸法やエッジ形状はあまり変わらないため,画像内の異なるy座標の複数の画素の画像データを平均して得られる波形を処理対象とすればよい。あるいは,非特許文献3に開示されているように,パターン寸法のばらつきに対応した平均処理を行ってももちろんよい。
【0029】
このように,SEM画像の処理領域が決まると,ステップS002ではこれらの領域内において,従来法でのエッジ検出を行い,計測対象パターンの寸法および隣接パターンとの距離の暫定計測を行う。一例として,図3(b)の波形に,しきい値法をしきい値50%で適用したエッジ位置抽出結果を黒点で示している。このようにして抽出されたエッジ位置間の距離を計算することにより,図3(b)のグラフに矢印で示すように,計測対象パターンの寸法および隣接パターンとの距離を暫定的に求めることができる。
【0030】
ここでは,エッジ抽出手法としてしきい値法を用いたが,他のエッジ位置決定方法として,処理時間が十分に早いものであれば,信号量ピーク位置(しきい値100%と等価),信号量の微分値の最大・最小値や,側壁部分のデータに直線を当てはめて下地明るさと交差する点など,他の一般的に用いられている計測手法を用いてももちろんよい。
【0031】
また,図3(a)の例では左右に隣接パターンがある場合の例を示したが,SEM画像の範囲内に隣接パターンが観測されない場合には,計測は行わず,代わりに設計値あるいは予め設定した値を用いて後の処理を行う。
【0032】
図2(b)に示したように,スペースに依存した計測誤差は,スペースが小さい程影響が大きい。このため,ある程度大きなスペースであれば,実際のスペース幅が正確にわからなくても,後の処理への影響は少なく問題ない。事前に,計測精度に影響を与えるスペース幅を調べておき,スペース幅に応じて,設計値を使うなど切り替えればよい。
【0033】
例えば,図2(b)において,スペース変化に対する計測誤差変動の感度が高い領域では必ずスペース計測ができる視野の画像を取得して正確なスペース値を用いればよい。感度が低い範囲であれば設計値をもちいればよいし,誤差が飽和する範囲であれば,事前に設定した固定値のシミュレーション結果を用いればよい。なお,スペースが狭い場合に設計値を用いないのは,スペースの変化に対する誤差感度が高いこととスペースが設計値どおりにできるとは限らないためである。
【0034】
(ライブラリの構築,限定)
次に,図4を用いて本発明で用いるライブラリの構築方法と,ステップS0003により暫定的に計測されたスペース幅を用いて使用するライブラリを制限する方法について説明する。このライブラリの構築は演算部109のシミュレーションユニット1092で行われる。
【0035】
図4(a)は,パターンのスペース幅(x軸)と,同パターンをスペースの暫定計測時と同じ従来法で計測した結果(y軸)の関係を示しており,図2(b)のグラフから導出できる。本グラフはシミュレーションライブラリの波形データに対して従来の計測処理を行えば容易に作成できる。図4(a)の関係がわかっていれば,ステップS0002で得られた暫定計測結果(S_meas)から実際のスペース幅(S_est)をある程度の精度で推定できる。このようにして,実際のスペース幅を推定した後,シミュレーションライブラリから推定されたスペース幅を持つパターンに限定して計測用の波形マッチングを行う。
【0036】
図4(b)を用いて,本発明のライブラリマッチングおよびライブラリ限定方法を説明する。図4(b)は,本発明で用いるシミュレーション波形ライブラリ002の例を示している。シミュレーション波形ライブラリ002にはシミュレーションの入力断面形状009とそれに対応したSEMシミュレーション波形010が記録されている。
【0037】
側壁傾斜角θの変化を正しく計測するライブラリマッチング計測を行なう場合には,図4(b)に示すように複数の異なる傾斜角θの形状についてシミュレーションを実施しておく。この例では簡単のため側壁傾斜角θが3種類の場合を示しているが,実際にはプロセス変動で生じうるパターン形状をカバーする範囲を,計測したい精度に見合う細かさでシミュレーションしておく。シミュレーションライブラリは図1の計測とは別に事前に作成しておく。本発明では,このライブラリに図4(b)の横軸に示すように,スペースSを変化させたシミュレーションも実施しておく。
【0038】
なお,図4(b)の例ではわかりやすいように2つの隣接するパターンの図で示したが,実際のライブラリ作成においては,スペース両側のシミュレーション結果は左右反転させただけの同じものになるため,隣接するパターンのどちらか片方のスペース側を計算しておけばよい。マッチング時には,マッチング対象のパターン方向によって必要に応じてシミュレーション信号を左右反転させればよい。
【0039】
本発明では,このような形状パラメタの組み合わせに対して,SEMシミュレーションを実施し,形状情報009とシミュレーション波形010を対応付けてライブラリ002に保存する。なお,図4(b)の例では,簡単のためスペースと傾斜角のみの例を表しているが,このほかにパターンのトップコーナRtやボトムコーナRbのラウンディングなどを変更したデータがライブラリに含まれていてももちろんよい(その場合には3次元以上の多次元空間となる)。
【0040】
本発明では,このライブラリ002に対して,図4(a)の処理により推定された実際のスペース幅を適用してライブラリ002を限定する。図4(b)では,推定されたスペース幅S_estがS3と一致した場合の例で,点線で囲ったように,実際のスペース幅S_estと一致するスペースで計算されたシミュレーション波形のみを選択した部分ライブラリ011をマッチング対象として用いることで,スペースに依存したSEM波形の変化を考慮した高精度な計測が実現可能となる。
【0041】
図4(b)の例では,簡単のため,単純にシミュレーション条件を選択する例を示したが,実際には事前に準備できるシミュレーション条件が限られていてライブラリ内の形状パラメタは離散値であるため,完全に一致するスペースのシミュレーションデータがあるとは限らない。このため,実際には,シミュレーションライブラリから推定値S_estに最も近いスペース条件を選択するか,あるいはS_estにおけるSEM波形を近い条件の波形を補間することで推定して用いればよい。
【0042】
シミュレーション波形の補間は波形の補間で行うことができる。例えば,スペース50nmのシミュレーション波形f_s50(x)とスペース100nmのシミュレーション波形f_s100(x)がある場合に,スペース80nmの波形f_s80(x)は線形補間によりf_s80(x) = f_s50(x) + (f_s100(x)- f_s50(x))*(80-50)/(100-50)により求めることができる。
【0043】
ライブラリのデータによっては,2つ以上のスペースパラメタの組み合わせを用いた非線形補間を行ってももちろんよい。これを利用すれば,ステップS0003で推定スペース値に対応するライブラリが無い場合には,前後のスペース値の波形を用いて,当該スペース値(S_est)に対応する波形ライブラリを上記補間処理により新たに作成して,代わりに用いればよい。
【0044】
(ライブラリマッチング)
次に,ステップS0003により限定されたシミュレーションライブラリと実際の計測対象パターンの画像の比較により,ライブラリ内で最も一致度の高い波形を選択する。このライブラリマッチングは演算部109のマッチング波形選択ユニット1093で行われる。パターンの寸法計測では,パターン両側のエッジ間の距離が計測対象により変化する(このエッジ間距離が計測対象である寸法に相当する)。このため,図3(b)の計測処理ウィンドウ005内のSEM波形全体にマッチング処理を行うと,エッジ間の距離も変化させたシミュレーション波形が必要となり,マッチングに多くの計算量が必要となる。
【0045】
そこで,本発明の計測方法では,図4(b)に示すように,1つのパターンの評価領域0051におけるSEM信号波形0082のうち処理対象エッジ周辺の処理領域012のSEM信号波形0083を局所的に切り出した後,エッジ毎にライブラリとの波形マッチング処理S0004を行う。波形マッチングは,評価対象ウィンドウ内の実SEM画像S008とエッジ部の波形が最も一致するシミュレーション波形を前記の限定されたライブラリの中から探索することで行う。このとき,シミュレーション波形のx座標も同時に推定することで,形状だけでなく,それぞれのエッジ位置も正しく求めることができる。
【0046】
マッチングの際の波形の一致度としては,例えば,波形間の差の自乗和を用いて,これを最小にするようなシミュレーション波形を選択すればよい。あるいは,離散的なライブラリに対して図4(b)でスペースを限定した処理と同様に,補間処理を行うことで,ライブラリにないパラメタについてマッチングを行うことも可能である。補間処理により連続関数として扱えれば,Levenberg- Marquardt法などの非線形最適化手法を用いてマッチングするパラメタを推定することも可能である。
【0047】
以上の手続きにより,実波形と最も一致度が高いシミュレーション条件を求めることで,各エッジの側壁断面形状およびその位置を高精度に推定することができる。図4(b)の例であれば,マッチング結果から,例えば撮像されたSEM画像の断面形状がスペースS3と側壁傾斜角θ1に近い形状であると推定され,ライブラリマッチング領域012内の部分波形とマッチしたシミュレーション波形の位置ずれ量から,SEM画像内におけるエッジ位置を求めることができる。推定されたエッジ部の側壁形状が得られるため,任意の高さにおけるパターン寸法を算出することが可能となる。この処理は演算部109のパターン寸法算出ユニット1094で行われる。
【0048】
予め計測したいサンプル高さ(トップ,ボトム,中央、ボトムからパターン高さの10%の位置など)を設定しておけば,得られた断面形状から,対応する箇所でのエッジ位置および対向するエッジ位置の差分から寸法を求めることができる(ステップS0005)。上記のように,マッチングは左右エッジで別々に行なうため,それぞれのエッジについて,適切なスペース幅でのライブラリ制限を行なってから計測を行なうことで,左右非対称なパターン形状においても正確な計測が可能となる。
【0049】
これにより、パターンの任意の位置の寸法データとパターン断面形状の情報とを出力部110の画面上に表示してユーザに提供することが出来る。また通信手段を介してデータサーバ111に出力部110からの情報を蓄積しておくことも出来る。
【0050】
以上のように,本発明の第1の実施例を用いれば,パターンの形状や隣接パターン間の距離などによらず,パターンの正確な寸法および形状計測が可能となる。本実施例においては事前準備として多くのシミュレーションが必要であるが,ライブラリ構築は,各製品プロセスについて一度やっておけば後で計算しなおす必要はないので、特に量産ラインにおいてパターン寸法、形状の計測に本発明を適用してプロセスの管理に用いた場合、本発明の効果は顕著になる。
【実施例2】
【0051】
本発明の第2の実施例について,図5を用いて説明する。図5(a)〜(c)はパターン寸法が異なる場合のSEM信号波形の違いを模式的に示している。図5(a)はパターン501の寸法が大きい場合を示し、図5(b)はパターン502の寸法が(a)の場合に比べて少し小さい場合、図5(c)はパターン503の寸法が小さい場合を示す。図5(a)〜(c)にかけてパターンの寸法が小さくなると,パターン上面部の信号量が511,512,513のように大きく変化する。これは,電子のサンプル材料内での拡散長に対して,パターン線幅が小さくなってしまうために,パターン中央に照射した電子が両側のエッジ部まで拡散し,多くの2次電子が発生してしまうためである。
【0052】
このように,パターンの寸法,材料,電子線照射条件の組み合せによっては,実施例1のスペース幅だけではなく,パターン寸法によってもエッジ部のSEM信号波形が変化してしまう。このような状況は近年の半導体パターン微細化によって無視できない影響を計測精度に与える。そこで,このような条件における計測では,左右のエッジの干渉を考慮した計測が必要となる。
【0053】
第2の実施例は,図5(a)〜(c)に示したような、スペース幅だけではなく,パターン寸法によってもエッジ部のSEM信号波形が変化してしまうという課題に対応するものであり,図5(d)を用いて説明する。なお,図5(d)の手順は,図1(b)で説明したステップS0002,0003がステップS0010,S0011と入れ替わる以外は第1の実施例の図1の手順と同じである。
【0054】
第2の実施例では,第1の実施例でスペース幅に対して行なった処理と同様に,はじめに寸法幅を変更したデータを含むライブラリを用意しておき,パターン幅をあらかじめ従来法で暫定的に計測する(S0010)。シミュレーション結果から事前に求めておいた実寸法と従来法での計測誤差の関係に基づき,暫定計測結果から実際の寸法値を予測,その結果に基づいて線幅のライブラリ条件を限定し(S0011),限定されたライブラリによりSEM実波形とのマッチングを行い(S0012),寸法計測を行ない(S0013)、計測結果を出力する(S0014)。この場合も,第1の実施例と同様に,寸法変動に対する波形変化および計測誤差の変化が小さい場合には設計値や予め指定した固定値を用いても問題ない。
【0055】
以上のように,本発明の第2の実施例を用いれば,第1の実施例で説明した効果に加えて、SEM画像内で左右のエッジが干渉するような微細パターンに対しても正確な寸法および形状計測が可能となる。また、第1の実施例で説明した場合と同様に、事前準備として多くのシミュレーションが必要であるが,ライブラリ構築は,各製品プロセスについて一度やっておけば後で計算しなおす必要はない。
【実施例3】
【0056】
第3の実施例では,ライブラリとの波形マッチングに非線形最適化を用いた場合に,マッチングを安定かつ高速にする手段について図6から図8を用いて説明する。図6(a)は,ライブラリマッチングの問題点を説明する図であり,グラフはマッチングの際の誤差空間(形状パラメタとマッチング誤差の関係)を表している。簡単のために形状パラメタはp1, p2(例えば側壁傾斜角とトップコーナラウンディングなど)の2つのみで示しているが,実際にはさらに多くのパラメタからなる多次元空間であってよい。
【0057】
等高線は計測対象の実SEM画像と各パラメタセットにおけるシミュレーション波形のマッチング誤差(例えば,差の自乗和)を示しており,理想的なケースでは極小値をひとつだけ持ち,周辺に比べて誤差が十分に小さいことが望ましい。しかしながら,実際には画像ノイズやモデルの不完全さのため,図6(a)に示すように、複数の極小値を持つことがあり,このような場合には,非線形最適化によるマッチング処理によって,偽の解を選択してしまう恐れがある。場合によっては、偽の解の方が小さな誤差を持ってしまうケースもあり,この場合は数学的に正しい解を選択しても,計測結果は正しくなくなってしまう。
【0058】
一般的に,非線形最適化においては,初期値の設定が重要であり,解に近い初期値が適切に設定されていれば,正しい解を求めることが容易となる。それに対し,不適切な初期値を与えてしまうと,誤った解を選択したり,収束に多くの時間を要したりという問題がある。そこで,第3の実施例では,この初期値を実際のパターンのSEM画像特徴量から推定することで適切な値に設定する。
【0059】
第3の実施例を,図6(b)を用いて説明する。なお,図6(b)の手順は,ステップS0002,0003がステップS0020,S0021と入れ替わる以外の(S0022〜S0024)のステップは第1の実施例の図1の手順と同じである。本実施例では,SEM画像取得後,計測対象パターンの形状をSEMの画像特徴量を用いて推定する(S0020)。次に,ステップS0020で推定された断面形状を非線形最適化の初期値に設定し(S0021),SEMの実画像とライブラリ波形のマッチング処理を行い(S0022),計測結果を得(S0023)、結果を出力する(S0024)。
【0060】
図7にステップS0020で用いる画像特徴量の例を示す。図7(a)において,特徴量f1はエッジピーク部分の幅である(以下ホワイトバンドと呼ぶ)。ホワイトバンド幅は,垂直上方からみた場合のエッジ部の見込み幅を反映する特徴量である。特徴量f2は,ホワイトバンド部において,ピーク位置より外側部の平均幅であり,ボトム部の曲率の大きさを反映する特徴量である。特徴量f3は,ホワイトバンド部において,ピーク位置より内側部の平均幅であり,トップ部の曲率の大きさを反映する特徴量である。特徴量f4は信号強度の大きさであり,図7が示すようにテーパ角の大きさを反映する特徴量である。また,絶対信号量の評価が可能なシステムであれば,ピーク部分の絶対信号量f6およびエッジ外側の最小絶対信号量f7なども用いることができる。f6は傾斜角効果により,テーパ角度に依存して変化する値であり,f7はスペースによって変化する。
【0061】
図7(b)は別の特徴量の例である。エッジピーク部の1次微分を用いて,1次微分が極値を持つ点とゼロになる点の間の距離を特徴量F1,F2,F3としている。F1はトップコーナの曲率に応じて変化する値であり,F2は側壁傾斜角,F3は裾引きに相関がある。図7(a)(b)に示すような種々の特徴量を,予めライブラリ内のSEMシミュレーション波形に対して計算しておき,計測時には実際のSEM信号波形についても同様の特徴量計算を行い,これらの関係から計測対象パターンの形状推定を行い,結果を初期値としてライブラリマッチングを行なう。
【0062】
次に,図8を用いて,これらの特徴量からパターン形状パラメタの推定を行なう方法について説明する。図8(a)は形状パラメタ空間における画像特徴量の分布を曲面801と802で示すグラフである。p1,p2は側壁傾斜角やコーナ曲率などのシミュレーション形状モデルの形状パラメタ,特徴量fA,fBは図7に示したようなSEM画像特徴量を表している。説明を簡単にするため,形状パラメタ,特徴量ともに2つずつの例を示すが,実際にはさらに多くの形状パラメタおよび特徴量を用いてもちろんよい(その場合には,4次元以上の他パラメタ空間となる)。
【0063】
図8(a)のグラフはシミュレーションライブラリの波形に対して,図7(a)(b)に示すような種々の特徴量を算出することで得ることができるため,計測時に作成する必要はない。事前に,ライブラリと同時に作成しておく。次に,計測時の実SEM画像から各画像特徴量fA_SEM,fB_SEMを算出すると,図8(b)に示す平面803と804が得られる。ライブラリの特徴量の曲面801又は802とこの平面803又は804の交点に対応する形状パラメタが計測対象パターン形状の候補となる。
【0064】
そこで図8(c)のように,この平面からの距離に応じた各パラメタの尤度関数を適当に与える。図8(c)はそれぞれのパラメタが尤もらしい確立であるので,図(c)のグラフを掛け合わせて,最大の確立をとる点を算出することで,実SEM画像の形状パラメタを推定することができる。この推定された形状パラメタを初期値として用いて,ライブラリマッチングを行なえば,偽の解におちいることなく,安定で高速なマッチング処理が可能となる。ひいては,安定で高速に高精度なパターン形状および寸法の推定が可能となる。これらの初期値設定方法に加え,(特許文献2)に開示されているような手法により,装置の検出器ゲインやオフセット,ビーム径などの装置パラメタを事前に設定してももちろんよい。適切な値に装置パラメタを設定したうえで,パターン形状パラメタの初期値を適切に設定することで,より安定で高速なパターン計測が実現可能となる。
【0065】
以上のように,本発明の第3の実施例を用いれば,安定で高速なパターン形状および寸法の計測が実現できる。
【実施例4】
【0066】
第3の実施例では,パターン形状推定の初期値をSEM画像から得られる特徴量を用いて設定した。第4の実施例では,他の計測装置による計測結果を用いてこれらの初期値を設定する。本実施例ではAFM計測を組合せて用いる方法について説明する。AFMは比較的スループットが低いため,プロセスばらつきを考慮した大量計測には向かないが,パターンの概略形状を推定するだけであれば,数スキャン程度のデータ取得で済む。そこで,本実施例では,予め計測対象パターンをAFMで計測し,得られた断面プロファイル形状に基づいて,形状パラメタの初期値あるいはマッチングを行なう形状パラメタの範囲を設定する。。
【0067】
図9に手順を示す。なお,図9の手順は,図1で説明したステップS0002,0003がステップS0030と入れ替わる以外のステップS0031〜S0033までは第1の実施例の図1に示したS0004〜S0006の手順と同じである。計測対象のSEM画像を取得した後,予め計測しておいたAFMの結果から,シミュレーションモデルに用いた形状パラメタに相当する値を直接計測して,結果をライブラリマッチングの初期値として設定する(S0030)。例えば,側壁傾斜角ならば,それぞれのエッジにおける高さ計測結果に直線フィッティングを行ない,その傾きから求めればよい。その後,これらの初期値を用いてSEM実波形とシミュレーションライブラリのマッチングを行い(S0031),寸法計測を行ない(S0032),計測結果を出力する(S0033)。これにより,第3の実施例と同様に,安定で高速な計測が可能となる。
【0068】
図9のステップS0030では,AFM計測結果に基づき,マッチングで推定される形状パラメタの初期値を決定したが,これとあわせて,マッチングを行なうパラメタの範囲を制限してもよい。パラメタ推定を行なう範囲が適切な範囲に制限されることで,マッチングの際に誤った解を選択してしまう可能性を減らすことができる。これにより,第3の実施例と同様に,安定で高速な計測が可能となる。
【0069】
また,SEM画像評価では,一般に,パターン高さの変化を知ることが困難である。そこで,AFMデータを用いれば,高さ情報を得ることができるため,第1の実施例のスペースと同様に,高さの異なるライブラリを準備し,得られた高さにライブラリを限定して計測を行なうことも可能である。この場合には,ステップS0030では,初期値ではなく,高さパラメタを固定することになる。本発明により,パターン高さが変動するような場合においても,AFMとSEMの組み合わせによって安定で,高精度な計測が実現可能となる。本実施例ではAFMを用いる場合について述べたが,Scatterometryのような光学式のパターン形状装置を用いても同様の効果が得られる。
【実施例5】
【0070】
次に,図10を用いて,第5の実施例として,本発明のパターン計測方法において用いるシミュレーションライブラリの作成方法について説明する。
【0071】
シミュレーションライブラリ作成時には,パターン形状のモデルを決めて,モデルに用いられるパラメタにより形状を数値化して表現する。例えば,図4の例では可変パラメタとして側壁の傾斜角θを使って形状を表現していた。図10(a)はこの拡張であり,パターン形状モデル1001のボトムコーナのラウンディングRbもパラメタに加えている。このパターン形状モデル1001は,計測対象プロセスで起こりうる実際のパターン形状変動に対応したものであることが望ましい。
【0072】
例えば,エッチングプロセスであれば,エッチング条件が変動しても,レジストで保護されるためトップコーナRt形状はあまり変化しないが,側壁の形状は影響を受けやすく、パターン幅Wは変化し易い。特に,ストッパ層の選択比がよくない場合などは,エッチング条件をボトム付近で切り替えるため,切り替えに相当する高さにおいて,側壁の形状が変化することが多い。このような場合には,図10(b)に示すような台形1002と1003を積み重ねた形状モデルが実際のパターンを表現するのに適している。この場合,例えば全体の高さHは成膜プロセスにより決まり,エッチングプロセスでは変化しないので,エッチングパターンの評価時にはHを設計値に固定するか,あるいは事前に膜厚計で計測した値に設定すればよい。また変化点の高さhはエッチングプロセス切り替え時の変化点であるから,実際のパターンの断面写真などから大体の値を一度決めておけばよい。
【0073】
このように,形状モデルのうちいくつかのパラメタを評価対象プロセスに適した値に固定すれば,ライブラリマッチング時の推定パラメタを減らすことができ,安定かつ高速な計測が可能となる。図10(c)はレジストパターンに適した形状モデルの例であり,台形1004とその頂点で側壁に接する楕円1005の組み合わせを用いる。例えば,H,hを事前に指定しておけばWは固定値としてθを設定するだけで楕円1005が一意に決まるため,θのみを推定パラメタとして,トップ部分のラウンディングRtの推定が不要になる。
【0074】
図10(d)はこのようなモデルの選択を,断面写真を見ながら設定できるグラフィカルユーザインターフェースの例である。例えば図10(b)のhはパターンの断面SEM写真を見れば,オペレータが容易に判断することができる。そこで,ライブラリ作成時に,事前に取得しておいた断面SEM写真1011を画面1010に表示し,その上にモデル形状を重ねて表示すれば、画面1010を見ながらマウス操作により簡単に設定することができる。
【0075】
図10(d)の例では,画面1010の左下に表示されたボタン1012で使用する断面画像を選択し,右上の画像1013の中から用いるモデルを選択する。その後,画面1010の右側中断の領域1014で、選択したモデルの形状パラメタの固定の有無や範囲を指定できる(図10(d)では、ボトム線幅1015、ピッチ1016、高さ1017を指定する場合を示す)。パラメタを選択して確定ボタン1018を押し、最後にマウス入力ボタン1019を押せば,画像上でマウスを用いて,対象パラメタを任意の値に設定できる。このようにして,実際のプロセスにあった適切なモデルの選定とパラメタの範囲設定に基づくシミュレーションライブラリが構築できる。
【0076】
なお,図10(d)では断面SEM写真の例を示したが,代わりにSTEM写真やAFMの計測結果を用いてももちろんよい。また,これらの断面情報は,実際のプロセスの変動範囲を考慮したものが望ましい。例えばレジストパターンであれば,フォーカスと露光エネルギー量を変化させて露光した複数のパターンを作成し,プロセスの正常範囲との境界条件でのパターンを用いれば,当該プロセスで発生しうるパターン形状をカバーしたシミュレーションライブラリが構築できる。
【0077】
このように,プロセスに応じたモデルの選択と,推定すべきパラメタの選択を適切に行うことができれば,シミュレーション波形と実際のSEM波形の一致度が向上し,より正確で安定な計測が可能となる。また,全てのパラメタを推定するのではなく,プロセス変動によって変化しないパラメタを固定して,推定パラメタの数を減らすことにより,推定にかかる計算時間の短縮,推定結果の安定化などの効果が得られる。
【実施例6】
【0078】
本発明のパターン計測方法において用いるシミュレーションライブラリの作成時の材料パラメタ設定方法について図11を用いて説明する。
【0079】
SEMで検出される2次電子信号量は,照射ビームの加速電圧やスキャン速度などのSEMの撮像条件と計測対象の材料によって変化する。しかしながら,材料に依存した信号量の違いを正確にシミュレーションするのは難しい。例えば,同じ二酸化ケイ素のパターンであっても,その成膜方法が異なれば,得られるSEM信号量は異なるということがしばしば起こる。
【0080】
一方で,同じ材料パターンでの形状変化に対する相対的なSEM信号波形の変化は,材料による違いが正確に再現できなくても,比較的正しくシミュレーションできるため,本発明のシミュレーション波形とのマッチングによる計測においても従来法に比べ高い計測精度を実現することができる。ところが,図5(a)〜(c)に示したように,パターン部分と下地部分で材料が異なるサンプルのSEM画像を用いる場合には高精度な計測を行なうことが困難となる。
【0081】
2次電子信号量は材料に応じて変化するため,例えば図11(a)に示すようなパターン1101の材料Aでできたパターントップ部分と材料Bでできた下地部分での信号量は異なる。例えば,図11(a)のパターン1101のSEM画像の信号波形が図11(b)のような場合に,シミュレーションの結果は図11(c)の波形のようになってしまうことがある。この場合には,材料A部分とB部分のコントラストが反転しているため,どんなにライブラリの形状パラメタを調整しても,実際の画像にマッチするシミュレーション波形を作ることはできないため,正しい計測結果を得ることが困難となる。
【0082】
本発明では,このようなサンプルを計測する場合に,事前に材料のパラメタを調整することで,ライブラリマッチングによる計測精度を向上させることができる。使用されるモデルに依存するが,通常のSEMシミュレータには材料を設定するためのパラメタがあるので,本発明ではそれを事前に調節する。例えば,非特許文献3に開示されているように,例えばSEMシミュレータMONSELにはresidual energy loss rateという,電子の散乱によるエネルギーの減衰量を調節するパラメタがあり,これを調節すると発生する2次電子信号量が変化する。他のモデルを用いたシミュレータにも,通常上記に類似したパラメタある。SEMに絶対的な2次電子効率(1次電子の照射量に対する2次電子の割合)の計測が可能なハードウェアがある場合には,計測された2次電子効率にシミュレーション結果が合うようにライブラリ作成前に予め材料パラメタを調整しておく。
【0083】
しかしながら,一般にはSEMの絶対的な2次電子効率を計測するのは難しく,SEMシミュレーションの材料パラメタ調整も容易ではない。このような場合には基準材料を定め,それに対するSEM信号量の割合が実画像とシミュレーションで一致するようにパラメタを設定する。
【0084】
例えば,図11(a)の場合であれば,例えば下地材料Bを基準として,材料Aの信号量を調整する。はじめに,スクライブライン部などの,比較的大きなパターン部分において,材料A,Bそれぞれについてエッジから離れた平坦部のSEM画像を実際に取得する。次に,カラムと試料室の間のバルブを閉めるなどして,1次電子が試料に当たらないようにして,SEM画像をとることで,センサに信号が当たっていない場合のSEM画像(暗電流)を取得する。このとき,材料A,B,およびビーム照射の無い状態のSEM画像は全て必ず同じ検出条件(ビーム条件や検出器の感度など)で取得する。次に,それぞれの画像内の適当な領域内で平均明るさを計算し,材料A,Bの明るさからそれぞれ暗電流の明るさを差し引く。その後,基準材料Bに対する材料Aの相対信号量を算出し,シミュレーション結果がこれと一致するように材料Aの材料パラメタを調整する。
【0085】
図11(d)は調整の一例である。予め計測した実信号量を左のy軸に示している。この例では基準材料にくらべ材料Aは6割程度の信号量となっている。これに対し,まずデフォルトのシミュレーション条件で材料A,基準材料Bの2次電子効率を計算する(結果は白い丸および白い四角で表示)。図11(d)では,この基準材料Bの結果(白い四角)が実画像と一致するように右のy軸をあわせて表示している。このシミュレーション結果では,実画像と異なり,材料Aの方が明るくなっている。これに対して,材料Aの材料パラメタをいくつか変更して,2次電子効率を計算した結果が曲線あり,基準材料に対する材料Aの明るさが実画像と一致する条件は黒丸で示したものとなる。
【0086】
このようにして,材料間のコントラストが実際に一致するように,相対的な材料間の明るさを調整することで,完全ではないが,ライブラリマッチングが安定かつ高精度に行なえるようになる。基準材料としては,安定で特性のよく知られているものが望ましい。半導体ウェハであれば,基板のSiなどを用いることができる。
【0087】
このように,材料のパラメタを事前に適切な値に設定しておくことで,シミュレーションとの整合性を向上することができ,その結果シミュレーションライブラリを利用したパターン計測手法においても,計測の安定性向上,精度向上が可能となる。
【0088】
また,第4の実施例のように,他の計測装置によりパターンの概略形状を計測できる場合には,平らな部分の明るさに加えて,エッジ部の信号量も合わせこむ材料パラメタを設定することも可能となる。図11(a)に示したパターンがある場合に,例えばまずAFMで概略形状を計測する。その結果に基づいて,AFM計測結果を入力形状として,いくつかの材料パラメタでシミュレーションを行い,材料Aの平らな部分(上面部)と材料Aの側壁部分の信号量の関係が実際のSEM画像に一致するパラメタを選択する。次に,これら材料Aの平坦部分とエッジ部分の信号量に対する材料Bの信号量が実際のSEM画像と一致する材料Bのパラメタを決定すればよい。
【0089】
本形態によれば,エッジ部分と平坦部における信号量の関係がより実際に近いものになり,さらなる計測の安定性向上,精度向上が可能となる。この方法を用いれば,基準サンプルがない場合においても材料パラメタを合わせこむことが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0090】
本明細書に開示されているパターン計測技術は,電子顕微鏡あるいはそれに類似した荷電粒子線装置で画像取得が行える対象であれば適用が可能である。本明細書では半導体パターンの計測について説明を行ったが,MEMSや微細工業部品などに適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0091】
【図1】本発明の第1の実施の形態の説明図である。
【図2】従来のライブラリマッチング手法の課題の説明図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態における画像処理領域設定の説明図である。
【図4】本発明の第1の実施の形態におけるライブラリ制限手法の説明図である。
【図5】従来のライブラリマッチング手法の課題と本発明の第2の実施の形態の説明図である。
【図6】従来のライブラリマッチング手法の課題と本発明の第3の実施の形態の説明図である。
【図7】本発明の第3の実施の形態で用いるSEM画像特徴量の説明図である。
【図8】本発明の第3の実施の形態における形状パラメタ推定手法の説明図である。
【図9】本発明の第4の実施の形態の説明図である。
【図10】本発明の第5の実施の形態の説明図である。
【図11】本発明の第6の実施の形態の説明図である。
【符号の説明】
【0092】
001・・・SEM 101・・・電子銃 103・・・集束レンズ 104・・・偏向器 105・・・対物レンズ 106・・・試料 107・・・検出器 108・・・全体制御・信号処理部 002・・・SEM波形シミュレーションライブラリ 003・・・SEM画像
004・・・計測対象パターン 005・・・寸法計測処理領域ウィンドウ 006・・・左側スペース計測用処理領域ウィンドウ 007・・・右側スペース計測用処理領域ウィンドウ
008・・・SEM信号波形 009・・・シミュレーション入力断面形状 010・・・SEMシミュレーション波形 011・・・SEMシミュレーション部分ライブラリ 012・・・ライブラリマッチング領域 013・・・SEM信号1次微分波形 014・・・AFM計測結果
【特許請求の範囲】
【請求項1】
パターンの形状,寸法,隣接パターンとの間隔をパラメタとしてSEMシミュレーションを行い,該SEMシミュレーションにより得られたシミュレーション波形をライブラリに保存し、
計測対象パターンのSEM画像を取得し、
該取得したSEM画像を処理して計測対象パターンの特徴量を求め、
該求めた計測対象パターンの特徴量に基づいて前記ライブラリの中から前記計測対象パターンの特徴量に対応するシミュレーション波形のグループをマッチングに用いる波形として選択し、
該選択したマッチングに用いるシミュレーション波形のグループと計測対象パターンのSEM画像から得られる信号波形とのライブラリマッチングを行って最も一致したシミュレーション波形から前記計測対象パターンの形状情報を推定し、
該推定した計測対象パターンの形状情報に基づいて前記計測対象パターンの寸法を算出し、
前記推定した形状情報と算出したパターンの寸法の情報とを画面上にSEM画像と一緒に表示あるいは数値データとして出力する
ことを特徴とするSEM画像を用いたパターン寸法計測方法。
【請求項2】
前記SEM画像を処理して求める計測対象パターンの特徴量は、前記計測対象パターンに隣接するパターンとの間隔又は前記計測対象パターンの寸法であることを特徴とする請求項1記載のSEM画像を用いたパターン寸法計測方法。
【請求項3】
パターンの形状,寸法,隣接パターンとの間隔をパラメタとしてSEMシミュレーションを行い,該SEMシミュレーションにより得られたシミュレーション波形をライブラリに保存するステップと、
該シミュレーション結果から複数の画像特徴量を算出し,上記複数の形状入力パラメタと上記画像特徴量の関係を保存しておくステップと,
計測対象パターンのSEM画像を取得し、該取得したSEM画像を処理して計測対象パターンの特徴量を算出するステップと,
該算出された画像特徴量と上記形状入力パラメタと画像特徴量の関係を用いて計測対象パターンの形状パラメタを推定するステップと,
該推定された形状入力パラメタの情報を用いてライブラリデータの中からSEM画像と最も波形形状が一致するシミュレーション条件を求めるステップと、
該シミュレーション条件により計測対象パターンの断面形状および寸法を推定するステップと
を有することを特徴とするSEM画像を用いたパターン寸法計測方法。
【請求項4】
前記ライブラリデータの中からSEM画像と最も波形形状が一致するシミュレーション条件を求めるステップにおいて、前記推定した形状入力パラメタの情報を初期値として非線形最適化手法を用いて前記ライブラリデータの中からSEM画像と最も波形形状が一致するシミュレーション条件を求めることを特徴とする請求項3記載のSEM画像を用いたパターン寸法計測方法。
【請求項5】
SEM画像を用いたパターンの計測方法であって、
パターンの形状,寸法,隣接パターンとの間隔をパラメタとしてSEMシミュレーションを行い、該SEMシミュレーションにより得られたシミュレーション波形をライブラリに保存するステップと、
前記計測対象パターンの断面概略形状を計測するステップと、
該計測された断面概略形状から形状入力パラメタを算出するステップと、
計測対象パターンのSEM画像を取得するステップと,
前記算出した形状入力パラメタの情報を用いてライブラリデータの中から前記取得したSEM画像の信号波形と最も波形形状が一致するシミュレーション条件を求めるステップと、
該シミュレーション条件から計測対象パターンの断面形状および寸法を推定するステップと
を有することを特徴とするSEM画像を用いたパターン寸法計測方法。
【請求項6】
前記計測対象パターンの断面概略形状を計測するステップにおいて、前記断面概略形状は、AFMあるいはスキャッタロメトリを用いて求めた計測対象パターンの断面概略形状であることを特徴とする請求項5記載のSEM画像を用いたパターン寸法計測方法。
【請求項7】
前記ライブラリデータの中からSEM画像と最も波形形状が一致するシミュレーション条件を求めるステップにおいて、前記算出した形状入力パラメタの情報を初期値として非線形最適化手法を用いて前記ライブラリデータの中からSEM画像と最も波形形状が一致するシミュレーション条件を求めることを特徴とする請求項5記載のSEM画像を用いたパターン寸法計測方法。
【請求項8】
前記SEMシミュレーションを、予め計測対象パターンの概略形状を数値データでモデル化し,該パターン形状の計測範囲に対応した複数の異なる側壁形状,寸法,隣接パターン間の距離の組み合せを形状入力パラメタとして実行することを特徴とする請求項1または3または5の何れかに記載のSEM画像を用いたパターン寸法計測方法。
【請求項9】
パターンの形状,寸法,隣接パターンとの間隔をパラメタとしてSEMシミュレーションを行い,該SEMシミュレーションにより得られたシミュレーション波形をライブラリに保存するシミュレーション手段と、
SEM装置で取得した計測対象パターンのSEM画像を処理して計測対象パターンの特徴量を求めるSEM画像処理手段と、
該SEM画像処理手段で求めた計測対象パターンの特徴量に基づいて前記シミュレーション手段のライブラリの中から前記計測対象パターンの特徴量に対応するシミュレーション波形のグループをマッチングに用いる波形として選択するマッチング波形選択手段と、
該マッチング波形選択手段で選択したマッチングに用いるシミュレーション波形のグループと計測対象パターンのSEM画像から得られる信号波形とのライブラリマッチングを行って最も一致したシミュレーション波形から前記計測対象パターンの形状情報を推定するパターン形状情報推定手段と、
該パターン形状情報推定手段で推定した計測対象パターンの形状情報に基づいて前記計測対象パターンの寸法を算出するパターン寸法算出手段と、
前記パターン形状情報推定手段で推定した形状情報と前記パターン寸法算出手段で算出したパターンの寸法の情報とを画面上にSEM画像と一緒に表示あるいは数値データとして出力する出力手段と
を備えたことを特徴とするSEM画像を用いたパターン寸法計測装置。
【請求項10】
前記SEM画像処理手段でSEM画像を処理して求める計測対象パターンの特徴量は、前記計測対象パターンに隣接するパターンとの間隔又は前記計測対象パターンの寸法であることを特徴とする請求項9記載のSEM画像を用いたパターン寸法計測装置。
【請求項11】
パターンの形状,寸法,隣接パターンとの間隔をパラメタとしてSEMシミュレーションを行い,該SEMシミュレーションにより得られたシミュレーション波形をライブラリに保存するシミュレーション手段と、
該シミュレーション手段におけるシミュレーション結果から複数の画像特徴量を算出し,上記複数の形状入力パラメタと上記画像特徴量の関係を保存しておく画像特徴量算出手段と,
SEM装置で取得した計測対象パターンのSEM画像における画像特徴量を算出し,該算出された画像特徴量と,上記形状入力パラメタと画像特徴量の関係を用いて,計測対象パターンの形状パラメタを推定するパターン形状パラメタ推定手段と,
該パターン形状パラメタ推定手段で推定された形状入力パラメタの情報を用いてライブラリデータの中からSEM画像と最も波形形状が一致するシミュレーション条件を求めるシミュレーション条件決定手段と、
該シミュレーション条件決定手段で求めたシミュレーション条件により計測対象パターンの断面形状および寸法を推定するパターン断面形状・寸法推定手段と
を備えることを特徴とするSEM画像を用いたパターン寸法計測装置。
【請求項12】
前記シミュレーション条件決定手段は、前記パターン形状パラメタ推定手段で推定した形状入力パラメタの情報を初期値として非線形最適化手法を用いて前記ライブラリデータの中からSEM画像と最も波形形状が一致するシミュレーション条件を求めることを特徴とする請求項11記載のSEM画像を用いたパターン寸法計測装置。
【請求項13】
SEM画像を用いたパターンの計測装置であって、
パターンの形状,寸法,隣接パターンとの間隔をパラメタとしてSEMシミュレーションを行い、該SEMシミュレーションにより得られたシミュレーション波形をライブラリに保存するシミュレーション手段と、
前記計測対象パターンの断面概略形状情報を入力する断面概略形状情報入力手段と、
該断面概略形状情報入力手段に入力された断面概略形状情報から形状入力パラメタを算出する形状入力パラメタ算出手段と、
SEM装置で取得した計測対象パターンのSEM画像を受けて前記形状入力パラメタ算出手段で算出した形状入力パラメタの情報を用いて前記シミュレーション手段のライブラリデータの中から前記計測対象パターンのSEM画像の信号波形と最も波形形状が一致するシミュレーション条件を求めるシミュレーション条件決定手段と、
該シミュレーション条件決定手段で求めたシミュレーション条件から計測対象パターンの断面形状および寸法を推定するパターン断面形状・寸法推定手段と
を備えたことを特徴とするSEM画像を用いたパターン寸法計測装置。
【請求項14】
前記シミュレーション条件決定手段は、前記形状入力パラメタ算出手段で算出した形状入力パラメタの情報を初期値として非線形最適化手法を用いて前記ライブラリデータの中からSEM画像と最も波形形状が一致するシミュレーション条件を求めることを特徴とする請求項13記載のSEM画像を用いたパターン寸法計測装置。
【請求項15】
前記断面概略形状情報入力手段は、前記断面概略形状として、AFMあるいはスキャッタロメトリを用いて求めた計測対象パターンの断面概略形状を入力することを特徴とする請求項13記載のSEM画像を用いたパターン寸法計測装置。
【請求項16】
前記シミュレーション手段は、前記SEMシミュレーションを、予め計測対象パターンの概略形状を数値データでモデル化し,該パターン形状の計測範囲に対応した複数の異なる側壁形状,寸法,隣接パターン間の距離の組み合せを形状入力パラメタとして実行することを特徴とする請求項9または11または13の何れかに記載のSEM画像を用いたパターン寸法計測装置。
【請求項1】
パターンの形状,寸法,隣接パターンとの間隔をパラメタとしてSEMシミュレーションを行い,該SEMシミュレーションにより得られたシミュレーション波形をライブラリに保存し、
計測対象パターンのSEM画像を取得し、
該取得したSEM画像を処理して計測対象パターンの特徴量を求め、
該求めた計測対象パターンの特徴量に基づいて前記ライブラリの中から前記計測対象パターンの特徴量に対応するシミュレーション波形のグループをマッチングに用いる波形として選択し、
該選択したマッチングに用いるシミュレーション波形のグループと計測対象パターンのSEM画像から得られる信号波形とのライブラリマッチングを行って最も一致したシミュレーション波形から前記計測対象パターンの形状情報を推定し、
該推定した計測対象パターンの形状情報に基づいて前記計測対象パターンの寸法を算出し、
前記推定した形状情報と算出したパターンの寸法の情報とを画面上にSEM画像と一緒に表示あるいは数値データとして出力する
ことを特徴とするSEM画像を用いたパターン寸法計測方法。
【請求項2】
前記SEM画像を処理して求める計測対象パターンの特徴量は、前記計測対象パターンに隣接するパターンとの間隔又は前記計測対象パターンの寸法であることを特徴とする請求項1記載のSEM画像を用いたパターン寸法計測方法。
【請求項3】
パターンの形状,寸法,隣接パターンとの間隔をパラメタとしてSEMシミュレーションを行い,該SEMシミュレーションにより得られたシミュレーション波形をライブラリに保存するステップと、
該シミュレーション結果から複数の画像特徴量を算出し,上記複数の形状入力パラメタと上記画像特徴量の関係を保存しておくステップと,
計測対象パターンのSEM画像を取得し、該取得したSEM画像を処理して計測対象パターンの特徴量を算出するステップと,
該算出された画像特徴量と上記形状入力パラメタと画像特徴量の関係を用いて計測対象パターンの形状パラメタを推定するステップと,
該推定された形状入力パラメタの情報を用いてライブラリデータの中からSEM画像と最も波形形状が一致するシミュレーション条件を求めるステップと、
該シミュレーション条件により計測対象パターンの断面形状および寸法を推定するステップと
を有することを特徴とするSEM画像を用いたパターン寸法計測方法。
【請求項4】
前記ライブラリデータの中からSEM画像と最も波形形状が一致するシミュレーション条件を求めるステップにおいて、前記推定した形状入力パラメタの情報を初期値として非線形最適化手法を用いて前記ライブラリデータの中からSEM画像と最も波形形状が一致するシミュレーション条件を求めることを特徴とする請求項3記載のSEM画像を用いたパターン寸法計測方法。
【請求項5】
SEM画像を用いたパターンの計測方法であって、
パターンの形状,寸法,隣接パターンとの間隔をパラメタとしてSEMシミュレーションを行い、該SEMシミュレーションにより得られたシミュレーション波形をライブラリに保存するステップと、
前記計測対象パターンの断面概略形状を計測するステップと、
該計測された断面概略形状から形状入力パラメタを算出するステップと、
計測対象パターンのSEM画像を取得するステップと,
前記算出した形状入力パラメタの情報を用いてライブラリデータの中から前記取得したSEM画像の信号波形と最も波形形状が一致するシミュレーション条件を求めるステップと、
該シミュレーション条件から計測対象パターンの断面形状および寸法を推定するステップと
を有することを特徴とするSEM画像を用いたパターン寸法計測方法。
【請求項6】
前記計測対象パターンの断面概略形状を計測するステップにおいて、前記断面概略形状は、AFMあるいはスキャッタロメトリを用いて求めた計測対象パターンの断面概略形状であることを特徴とする請求項5記載のSEM画像を用いたパターン寸法計測方法。
【請求項7】
前記ライブラリデータの中からSEM画像と最も波形形状が一致するシミュレーション条件を求めるステップにおいて、前記算出した形状入力パラメタの情報を初期値として非線形最適化手法を用いて前記ライブラリデータの中からSEM画像と最も波形形状が一致するシミュレーション条件を求めることを特徴とする請求項5記載のSEM画像を用いたパターン寸法計測方法。
【請求項8】
前記SEMシミュレーションを、予め計測対象パターンの概略形状を数値データでモデル化し,該パターン形状の計測範囲に対応した複数の異なる側壁形状,寸法,隣接パターン間の距離の組み合せを形状入力パラメタとして実行することを特徴とする請求項1または3または5の何れかに記載のSEM画像を用いたパターン寸法計測方法。
【請求項9】
パターンの形状,寸法,隣接パターンとの間隔をパラメタとしてSEMシミュレーションを行い,該SEMシミュレーションにより得られたシミュレーション波形をライブラリに保存するシミュレーション手段と、
SEM装置で取得した計測対象パターンのSEM画像を処理して計測対象パターンの特徴量を求めるSEM画像処理手段と、
該SEM画像処理手段で求めた計測対象パターンの特徴量に基づいて前記シミュレーション手段のライブラリの中から前記計測対象パターンの特徴量に対応するシミュレーション波形のグループをマッチングに用いる波形として選択するマッチング波形選択手段と、
該マッチング波形選択手段で選択したマッチングに用いるシミュレーション波形のグループと計測対象パターンのSEM画像から得られる信号波形とのライブラリマッチングを行って最も一致したシミュレーション波形から前記計測対象パターンの形状情報を推定するパターン形状情報推定手段と、
該パターン形状情報推定手段で推定した計測対象パターンの形状情報に基づいて前記計測対象パターンの寸法を算出するパターン寸法算出手段と、
前記パターン形状情報推定手段で推定した形状情報と前記パターン寸法算出手段で算出したパターンの寸法の情報とを画面上にSEM画像と一緒に表示あるいは数値データとして出力する出力手段と
を備えたことを特徴とするSEM画像を用いたパターン寸法計測装置。
【請求項10】
前記SEM画像処理手段でSEM画像を処理して求める計測対象パターンの特徴量は、前記計測対象パターンに隣接するパターンとの間隔又は前記計測対象パターンの寸法であることを特徴とする請求項9記載のSEM画像を用いたパターン寸法計測装置。
【請求項11】
パターンの形状,寸法,隣接パターンとの間隔をパラメタとしてSEMシミュレーションを行い,該SEMシミュレーションにより得られたシミュレーション波形をライブラリに保存するシミュレーション手段と、
該シミュレーション手段におけるシミュレーション結果から複数の画像特徴量を算出し,上記複数の形状入力パラメタと上記画像特徴量の関係を保存しておく画像特徴量算出手段と,
SEM装置で取得した計測対象パターンのSEM画像における画像特徴量を算出し,該算出された画像特徴量と,上記形状入力パラメタと画像特徴量の関係を用いて,計測対象パターンの形状パラメタを推定するパターン形状パラメタ推定手段と,
該パターン形状パラメタ推定手段で推定された形状入力パラメタの情報を用いてライブラリデータの中からSEM画像と最も波形形状が一致するシミュレーション条件を求めるシミュレーション条件決定手段と、
該シミュレーション条件決定手段で求めたシミュレーション条件により計測対象パターンの断面形状および寸法を推定するパターン断面形状・寸法推定手段と
を備えることを特徴とするSEM画像を用いたパターン寸法計測装置。
【請求項12】
前記シミュレーション条件決定手段は、前記パターン形状パラメタ推定手段で推定した形状入力パラメタの情報を初期値として非線形最適化手法を用いて前記ライブラリデータの中からSEM画像と最も波形形状が一致するシミュレーション条件を求めることを特徴とする請求項11記載のSEM画像を用いたパターン寸法計測装置。
【請求項13】
SEM画像を用いたパターンの計測装置であって、
パターンの形状,寸法,隣接パターンとの間隔をパラメタとしてSEMシミュレーションを行い、該SEMシミュレーションにより得られたシミュレーション波形をライブラリに保存するシミュレーション手段と、
前記計測対象パターンの断面概略形状情報を入力する断面概略形状情報入力手段と、
該断面概略形状情報入力手段に入力された断面概略形状情報から形状入力パラメタを算出する形状入力パラメタ算出手段と、
SEM装置で取得した計測対象パターンのSEM画像を受けて前記形状入力パラメタ算出手段で算出した形状入力パラメタの情報を用いて前記シミュレーション手段のライブラリデータの中から前記計測対象パターンのSEM画像の信号波形と最も波形形状が一致するシミュレーション条件を求めるシミュレーション条件決定手段と、
該シミュレーション条件決定手段で求めたシミュレーション条件から計測対象パターンの断面形状および寸法を推定するパターン断面形状・寸法推定手段と
を備えたことを特徴とするSEM画像を用いたパターン寸法計測装置。
【請求項14】
前記シミュレーション条件決定手段は、前記形状入力パラメタ算出手段で算出した形状入力パラメタの情報を初期値として非線形最適化手法を用いて前記ライブラリデータの中からSEM画像と最も波形形状が一致するシミュレーション条件を求めることを特徴とする請求項13記載のSEM画像を用いたパターン寸法計測装置。
【請求項15】
前記断面概略形状情報入力手段は、前記断面概略形状として、AFMあるいはスキャッタロメトリを用いて求めた計測対象パターンの断面概略形状を入力することを特徴とする請求項13記載のSEM画像を用いたパターン寸法計測装置。
【請求項16】
前記シミュレーション手段は、前記SEMシミュレーションを、予め計測対象パターンの概略形状を数値データでモデル化し,該パターン形状の計測範囲に対応した複数の異なる側壁形状,寸法,隣接パターン間の距離の組み合せを形状入力パラメタとして実行することを特徴とする請求項9または11または13の何れかに記載のSEM画像を用いたパターン寸法計測装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2009−198339(P2009−198339A)
【公開日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−40817(P2008−40817)
【出願日】平成20年2月22日(2008.2.22)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年2月22日(2008.2.22)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【Fターム(参考)】
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